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1. WO2010071121 - ジアミン誘導体の製造方法

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明 細 書

発明の名称 ジアミン誘導体の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009  

課題を解決するための手段

0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045  

実施例

0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : ジアミン誘導体の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、活性化血液凝固第X因子(FXa)の阻害作用を示し、血栓性疾患の予防および/または治療薬として有用な化合物の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 活性化血液凝固第X因子(FXa)の阻害作用を示し、血栓性疾患の予防および/または治療薬として有用な化合物として、下記の式(A)
[0003]
[化1]


[0004]
で表されるN -(5-クロロピリジン-2-イル)-N -((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド p-トルエンスルホン酸 一水和物(以下、化合物Aと称する場合がある。)が知られている(特許文献1~特許文献8)。
[0005]
 化合物Aを得る方法としては、例えば、下記の式(B)
[0006]
[化2]


[0007]
で表される化合物Aのフリー体(以下、化合物Bと称する場合がある。)とp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を混ぜて含水エタノール中から晶析させる方法が知られている(特許文献1~特許文献8)。これらの文献には、化合物Bから化合物Aを得る工程においてp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を段階的に添加することについて何ら記載されていない。

先行技術文献

特許文献

[0008]
特許文献1 : 国際公開第03/000657号パンフレット
特許文献2 : 国際公開第03/000680号パンフレット
特許文献3 : 国際公開第03/016302号パンフレット
特許文献4 : 国際公開第04/058715号パンフレット
特許文献5 : 国際公開第05/047296号パンフレット
特許文献6 : 国際公開第07/032498号パンフレット
特許文献7 : 国際公開第08/129846号パンフレット
特許文献8 : 国際公開第08/156159号パンフレット

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 本発明者が化合物Aの工業的製造を試みたところ、化合物Bから化合物Aを得る工程は、溶媒から化合物Aを晶析させるときの母液への化合物Aのロスが多く、また、製造ロット毎に収率が異なり、大きいときで各ロットの収率の間に約6%もの差がでることがあった。医薬品の効率的な製造という観点からは、上記のような母液へのロスや収率のばらつきは好ましくなく、これらを改善し、安定して高い収率で化合物Aを製造することが求められていた。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、化合物Bを溶媒に溶解するときにp-トルエンスルホン酸の量を抑え、化合物Aを晶析するときにp-トルエンスルホン酸の量を増やすという工業的製造に適した極めて簡便な手法によって、化合物Bの分解が抑制されかつ母液への化合物Aのロスが減り、ばらつきなく安定した高い収率で化合物Aが得られることを見出した。

発明の効果

[0011]
 本発明によれば、p-トルエンスルホン酸またはその水和物を分割添加することで、ばらつきなく安定した高い収率で化合物Bから化合物Aを合成することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 図1は、化合物Aを晶析させる条件(含水率10%のエタノール、10℃)においてp-トルエンスルホン酸一水和物の量を変動させた場合の、化合物Aの溶解度を示す。縦軸は、化合物Aの溶解度(mg/ml)を、横軸はp-トルエンスルホン酸一水和物のモル当量(対化合物B)を示す。
[図2] 図2は、化合物Bを溶解させる条件(含水率30%のエタノール、70℃)においてp-トルエンスルホン酸一水和物の量を変動させた場合の、化合物Bの安定性を示す。図2は、最初(0時間)の化合物Bの量を100%とした場合の、各時間経過(hr、横軸)における化合物B量の変化(%、縦軸)を示す。

発明を実施するための形態

[0013]
 すなわち、本発明は、以下:
[1](a)溶媒中、式(B)
[0014]
[化3]


[0015]
で表される化合物と、当該式(B)で表される化合物に対して1モル当量未満のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を、加温下で混合する工程、
(b)冷却下で、当該混合液にp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を追加する工程であって、
ここで、該追加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物は、工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物との総モル当量が、工程(a)の式(B)で表される化合物に対して1モル当量以上になるような量で追加され、次いで、
(c)晶析することにより式(A)
[0016]
[化4]


[0017]
で表される化合物を得る工程、
を包含する、式(A)で表される化合物の製造方法;
[2] 工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物が、式(B)で表される化合物に対して0.5モル当量以上1.0モル当量未満である、[1]に記載の方法;
[3] 工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物が、式(B)で表される化合物に対して0.8モル当量以上1.0モル当量未満である、[1]または[2]に記載の方法;
[4] 工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物と工程(b)で追加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物の総モル当量が、工程(a)の式(B)で表される化合物に対して1.0モル当量以上3.0モル当量以下である、[1]~[3]のいずれか1に記載の方法;
[5] 工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物と工程(b)で追加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物の総モル当量が、工程(a)の式(B)で表される化合物に対して1.0モル当量以上1.2モル当量以下である、[1]~[4]のいずれか1に記載の方法;
[6] 溶媒が、アルコールまたは含水アルコールである、[1]~[5]のいずれか1に記載の方法;
[7] 溶媒が、含水エタノールである、[1]~[6]のいずれか1に記載の方法;
[8] 含水エタノールの含水率が、0%超50%以下である、[1]~[7]のいずれか1に記載の方法;
[9] p-トルエンスルホン酸 一水和物を用いる、[1]~[8]のいずれか1に記載の方法;
[10] 溶媒の量が、化合物Bに対して5倍~30倍(V/W)である、[1]~[9]のいずれか1に記載の方法;
[11] 工程(a)の加温温度が60℃~80℃である、[1]~[10]のいずれか1に記載の方法;
[12] 工程(b)の冷却温度が-20℃~40℃である、[1]~[11]のいずれか1に記載の方法、
に関する。
[0018]
 以下に本発明の方法について詳述する。
[0019]
[化5]


[0020]
 式(B)で表される、N -(5-クロロピリジン-2-イル)-N -((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド(N 1-(5-Chloropyridin-2-yl)-N 2-((1S,2R,4S)-4-[(dimethylamino)carbonyl]-2-{[(5-methyl-4,5,6,7-tetrahydrothiazolo[5,4-c]pyridine-2-yl)carbonyl]amino}cyclohexyl)ethanediamide)は、化合物Aのフリー体であり、世界保健機関(WHO)には、国際一般名称(International Nonproprietary Names、INN):エドキサバン(edoxaban)、N-(5-クロロピリジン-2-イル)-N’-[(1S,2R,4S)-4-(N,N-ジメチルカルバモイル)-2-(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロ[1,3]チアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-カルボキサミド)シクロヘキシル]オキサミド(N-(5-chloropyridin-2-yl)-N’-[(1S,2R,4S)-4-(N,N-dimethylcarbamoyl)-2-(5-methyl-4,5,6,7-tetrahydro[1,3]thiazolo[5,4-c]pyridine-2-carboxamido)cyclohexyl]oxamide)として登録されている。
[0021]
 工程(a)は、化合物Bとp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物から化合物Aを得る工程である。
[0022]
 従来の方法によると、化合物Bから化合物Aを得る工程の収率は比較的良好であったものの、化合物Aの母液へのロスが大きく、また、製造ロット毎に収率が異なり、大きいときで各ロットの収率の間に約6%もの差がでることがあった。鋭意検討した結果、本発明者は、化合物Bとp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を溶媒中で加熱混合させるときにp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物が化合物Bに対して過剰モル当量存在すると、その過剰分に伴って化合物Bの分解が促進されることを見出した。さらに、本発明者は、化合物Aを冷却下で晶析させるとき、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物の量が化合物Bに対して過剰モル当量であると、化合物Aの溶解度が下がることを見出した。
[0023]
 本発明者は、これらの知見から、化合物Bとp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を溶媒中で加熱混合させるときは、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物の量を化合物Bよりも少ないモル当量で存在させて化合物Bの分解を回避し、化合物Aを晶析させるときは、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を追加して、その総モル当量が化合物Bに対して過剰になるようにして化合物Aの溶解度を下げ、化合物Aの母液へのロスを小さくし、それにより製造ロット毎に安定してかつ高い収率で化合物Aを得るという方法を開発した。
[0024]
 本発明の利点の一つは、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を分割添加するという極めて簡便な方法によって、工業的に安定した高い収率で化合物Aが得られることにある。
[0025]
 本発明は、化合物Bを溶媒中、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物と加温下で混合させ、次いで、冷却下でp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を追加し、その後晶析することによって、化合物Aで表される化合物を製造する方法であって、加温下で混合するときは、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を化合物Bに対して1モル当量未満にし、冷却下で晶析するときは、加温下で添加されたp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物との総モル当量が加温下で添加した化合物Bに対して1モル当量以上になるように、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を追加することを特徴とする、方法に関する。
[0026]
 本明細書において、工程(a)の「溶媒中、式(B)で表される化合物と、当該式(B)で表される化合物に対して1モル当量未満のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を、加温下で混合する工程」とは、溶媒中、化合物Bと、化合物Bに対して1モル当量未満のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を加温下で混合することを意味する。図2で示されるように、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を化合物Bに対して1モル当量未満にすることで、化合物Bの分解が抑制される。「1モル当量未満のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物」とは、本工程に添加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物が、本工程に添加される化合物Bに対して1モル当量未満であることを意味する。「1モル当量未満のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物」とは、具体的には、例えば、本工程に添加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物が、本工程に添加される化合物Bに対して0.5モル当量以上1.0モル当量未満のことをいい、好ましくは、当該量が0.6モル当量以上1.0モル当量未満、0.7モル当量以上1.0モル当量未満、または0.8モル当量以上1.0モル当量未満、0.95モル当量以上1.0モル当量未満のことをいう。
[0027]
 化合物Bおよびp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を溶媒に添加する順序は特に限定されないが、好ましくは、溶媒に化合物Bを添加した後、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物が添加される。p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物は、本工程において1モル当量未満添加される限り、一度に添加されてもよいし複数回に分けて添加されてもよく、好ましくは、一度に添加される。
[0028]
 加温するタイミングは特に限定されず、混合の前であっても途中であっても後半であってもよいが、好ましくは、溶媒に化合物Bおよびp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を添加した後、加温する。加温の温度は、特に限定されないが、例えば、室温~80℃であり、好ましくは、60℃~80℃である。加温する時間は特に限定されず、化合物Bが溶解するまで加温すればよい。
[0029]
 化合物Bとp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を混合するとき、化合物Bは溶解されていてもよいしスラリー状であってもよいが、好ましくは加熱により溶解されている。
[0030]
 本明細書において、工程(b)の「冷却下で、当該混合液にp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を追加する工程」とは、混合液を冷却しながらあるいは冷却後、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を当該混合液に追加することをいう。
[0031]
 本明細書において、工程(b)の「該追加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物は、工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物との総モル当量が、工程(a)の式(B)で表される化合物に対して1モル当量以上になるような量で追加され」とは、工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物と工程(b)において追加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物の、工程(a)で添加された化合物Bに対する総モル当量が、1以上になるような量で、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物が追加されることをいう。図1で示されるように、晶析溶媒(例えば、10%含水エタノール溶媒)において、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を化合物Bに対して1モル当量以上にすることで、化合物Aの溶解度を下げることができる。
[0032]
 「工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物との総モル当量が、工程(a)の式(B)で表される化合物に対して1モル当量以上になるような量で追加」されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物とは、具体的には、例えば、工程(a)及び工程(b)で添加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物の総モル当量が、工程(a)の式(B)で表される化合物を基準として1.0モル当量以上3.0モル当量以下、好ましくは1.0モル当量以上2.0モル当量、より好ましくは1.0モル当量以上1.5モル当量以下、さらにより好ましくは1.0モル当量以上1.2モル当量以下、さらにまたなお好ましくは1.0モル当量以上1.1モル当量以下となるような量で追加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物のことをいう。
[0033]
 例えば、工程(a)でp-トルエンスルホン酸 一水和物を0.95モル当量添加していた場合、工程(a)および工程(b)で添加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物との総モル当量(対工程(a)の化合物B)を1モル当量以上にするためには、工程(b)で0.05モル当量(対工程(a)の化合物B)以上のp-トルエンスルホン酸 一水和物が添加されることになる。
[0034]
 追加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物は、工程(a)の化合物Bに対する当該総モル当量が最終的に1モル当量以上になる限り、一度に添加されてもよいし複数回に分けて添加されてもよく、好ましくは、一度に添加される。
[0035]
 晶析溶媒を冷却するタイミングは、特に限定されず、冷却しながらあるいは冷却後、好ましくは、冷却後、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を追加すればよい。冷却温度は特に限定されないが、例えば、-20℃~50℃であり、好ましくは、-20℃~40℃である。
[0036]
 本発明の方法において、p-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を分割して添加する回数は、2回以上であれば特に限定されないが、好ましくは2回である。
[0037]
 本発明の方法の溶媒は、特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸フェニル等のエステル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;アセトニトリル、N,N,-ジメチルホルムアミド、N,N,-ジメチルアセトアミド等の含窒素溶媒またはこれらの混合溶媒が挙げられる。本工程に用いる溶媒として、好ましくは、アルコールまたは水とアルコールの混合溶媒(含水アルコールと称する場合がある。)が挙げられ、より好ましくは、エタノールまたは水とエタノールの混合溶媒(含水エタノールと称する場合がある。)が挙げられる。
[0038]
 本発明の方法の溶媒として含水アルコール(好ましくは、含水エタノール)を使用する場合、含水率は、特に限定されないが、例えば、0%より多くから50%の割合であり、好ましくは、5%以上35%以下である。本発明の方法の溶媒として含水アルコール(好ましくは、含水エタノール)を使用する場合、加温するときと冷却するときで含水率を変えることが好ましく、例えば、加温するときに25%以上35%以下の含水アルコール(例えば、25%以上35%以下の含水エタノール)を用い、冷却するときに5%以上25%以下の含水アルコール(例えば、5%以上25%以下の含水エタノール)を用いることが好ましい。
[0039]
 本発明の方法の溶媒の量は、特に限定されないが、例えば、化合物Bに対して5倍~50倍(V/W(容量/重量))であり、好ましくは、5倍~30倍(V/W)である。
[0040]
 このようにして得られた化合物Aは、高い活性化血液凝固第X因子(FXa)阻害作用を示すことから、血液凝固抑制剤、血栓又は塞栓の予防及び/又は治療剤として有用である。化合物Aは、ヒトを含む哺乳類のための医薬、活性化血液凝固第Xa因子阻害剤、血液凝固抑制剤、血栓または塞栓の予防剤および/または治療剤、血栓性疾患の予防薬および/または治療薬、例えば、脳梗塞、脳塞栓、心筋梗塞、狭心症、不安定狭心症、急性冠症候群(ACS)、肺梗塞、肺塞栓、非弁膜性心房細動(NVAF)に伴う血栓塞栓症もしくは発作、深部静脈血栓症、汎発性血管内凝固症候群、人工弁/関節置換後の血栓形成、股関節全置換術(THR)後の血栓塞栓症、血行再建後の血栓形成および再閉塞、体外循環時の血栓形成、採血時の血液凝固、バージャー病、全身性炎症性反応症候群(SIRS)に伴う血栓塞栓症または多臓器不全(MODS)に伴う血栓塞栓症の予防剤および/または治療剤、あるいはこれら予防剤および/または治療剤の医薬品原体として有用である。
[0041]
 化合物Aを有効成分として含む医薬は、好ましくは、化合物Aと1種又は2種以上の製剤用添加物とを含む医薬組成物の形態で提供される。本発明の医薬の投与形態は特に制限されず、経口的又は非経口的に投与することができるが、好ましくは、経口的に投与される。
[0042]
 上記の医薬組成物の製造に用いる薬理学的、製剤学的に許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤または粘着剤を挙げることができるが、これらに限定されることはない。
[0043]
 経口投与に適する製剤の例としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、油性ないし水性の懸濁液等を例示できる。また、非経口投与に適する製剤としては、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤または貼付剤を挙げることができる。
[0044]
 本発明の医薬の投与量は特に限定されず、患者の年齢、体重、症状などの種々の条件に応じて適宜選択することができるが、有効成分を成人1日当たり1mg~1000mg、好ましくは5mg~500mg、より好ましくは5mg~300mg、さらにより好ましくは、5mg~100mgを、1日当り1回~数回好ましくは1日当り1回または2回、症状に応じて投与することが望ましい。
[0045]
 以下に実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例
[0046]
 以下の実施例において、p-トルエンスルホン酸一水和物をTsOH・H Oと表記する場合がある。
[0047]
 (実施例1)N -(5-クロロピリジン-2-イル)-N -((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド(化合物B)の合成
 化合物Bは、特許文献1~8に記載の方法に準じて合成した。
[0048]
 (実施例2)N -(5-クロロピリジン-2-イル)-N -((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド p-トルエンスルホン酸 一水和物(化合物A)の合成
 N -(5-クロロピリジン-2-イル)-N -((1S,2R,4S)-4-[(ジメチルアミノ)カルボニル]-2-{[(5-メチル-4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジン-2-イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド(150g)、エタノール(735ml)、水(315ml)の混液にTsOH・H O(49.5g)を加えて70℃に加熱した。溶解液をフィルター濾過し、フィルターを15%含水エタノール(300ml)とエタノール(150ml)で洗浄した。次いで濾過母液と洗浄液の混液を徐冷し、TsOH・H O(7.8g)とエタノール(2100ml)を加えた。10℃で1時間攪拌後、結晶を濾取し、標題化合物を188.9g得た。
[0049]
 (試験例1)
 化合物Aを晶析する条件(含水率10%のエタノール、10℃)においてTsOH・H Oの量を変動させた場合の、化合物Aの溶解度を測定した。具体的には、含水率10%のエタノール10mlに化合物A、化合物BまたはTsOH・H Oを以下の組み合わせで加えて、10℃でスラリー攪拌し、結晶を濾取した後の濾過母液に含まれる化合物Aの含量をHPLC(カラム:Shiseido CAPCELL PAK CN UG120(4.6×250mm)、カラム温度:40℃、流速:1.0ml/min.、移動相:アセトニトリル:0.02M リン酸緩衝液(pH 7.0)=30:70)で測定した。
[0050]
[表1]


[0051]
*1ここでいう「化合物Bに対するTsOH・H Oモル当量」とは、化合物Bの物質量と化合物Aの一部として存在する化合物Bの物質量の和に対する、TsOH・H Oの物質量と化合物Aの一部として存在するTsOH・H Oの物質量の和の比のことをいう。
[0052]
 結果を図1に示す。
[0053]
 化合物Aは、化合物Bに対するTsOH・H Oモル当量が1.00モル当量である場合を基準として、TsOH・H Oの量がこれより多い場合には、溶解度が下がり、TsOH・H Oの量がこれより少ない場合には溶解度が上がることが見出された。
[0054]
 (試験例2)
 化合物Bを溶媒に溶解する条件(含水率30%のエタノール、70℃)においてTsOH・H Oの量を変動させた場合の、化合物Bの安定性を測定した。具体的には、化合物B 1.0gに含水率30%のエタノール7mlとTsOH・H Oを以下の組み合わせで加え、70℃で溶解させ、一定時間毎に化合物Bの含量をHPLC「カラム:Shiseido CAPCELL PAK CN UG120(4.6×250mm)、カラム温度:40℃、流速:1.0ml/min.、移動相:アセトニトリル:0.02M リン酸緩衝液(pH7.0)=30:70」で測定した。
[0055]
[表2]


[0056]
 結果を図2に示す。
[0057]
 化合物Bを溶解する条件において、TsOH・H Oが1.0モル当量(対化合物B)より多いと、その過剰分に伴って分解(化合物Bの含量低下)が促進され、1.0モル当量より少ないと分解が抑制されていることが判明した。
[0058]
 (試験例3)
 試験例1および試験例2の結果をふまえ、高温下で化合物Bを溶解するときには、分解が促進するp-トルエンスルホン酸過剰状態を回避し、晶析のときには低温下でp-トルエンスルホン酸過剰状態にして化合物Aの溶解度を下げれば、結果として工程(a)の収率向上に繋がると考え、この考えを反映したp-トルエンスルホン酸分割法を試行した。
[0059]
 具体的には、化合物B 10.0gに水21mlとエタノール49mlとTsOH・H O 3.30g(化合物Bに対して0.95モル当量)を加えて70℃で溶解した。溶解液をフィルター濾過し、フィルターを水3mlとエタノール17mlの混液で洗浄した。次いで濾過母液と洗浄液の混液を徐冷し、TsOH・H O 521mg(化合物Bに対して0.15モル当量)とエタノール150mlを加えた。10℃で攪拌し、晶析している化合物Aを濾取して収率を求めた。また、化合物Bには2つのロットを用い、再現性を評価した。比較対象として、化合物B10.0gに水21mlとエタノール49mlとTsOH・H O 3.47g(化合物Bに対して1.0モル当量)を加えて70℃で溶解した。溶解液をフィルター濾過し、フィルターを水3mlとエタノール17mlの混液で洗浄した。次いで濾過母液と洗浄液の混液を徐冷し、エタノール150mlを加えた。10℃で攪拌し、晶析している化合物Aを濾取して収率を求めた。
[0060]
 母液ロスは、結晶として析出せず母液中に残存した化合物Aのことを意味する。表1の母液ロス(%)とは、母液中に残存した化合物Aの重量を化合物Bの重量に換算し、そしてその重量を反応開始前の化合物Bの重量に対する比(%)として算出した。
[0061]
 結果を表3に示す。
[0062]
[表3]


[0063]
*1:対化合物B
*2:対化合物B
 TsOH・H Oを分割添加することで化合物Bのロットが異なっても再現性よく化合物Aが高い収率で得られることが判明した。
 

請求の範囲

[請求項1]
(a)溶媒中、式(B)
[化1]


で表される化合物と、当該式(B)で表される化合物に対して1モル当量未満のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を、加温下で混合する工程、
(b)冷却下で、当該混合液にp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物を追加する工程であって、
ここで、該追加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物は、工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物との総モル当量が、工程(a)の式(B)で表される化合物に対して1モル当量以上になるような量で追加され、次いで、
(c)晶析することにより式(A)
[化2]


で表される化合物を得る工程、
を包含する、式(A)で表される化合物の製造方法。
[請求項2]
工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物が、式(B)で表される化合物に対して0.5モル当量以上1.0モル当量未満である、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物が、式(B)で表される化合物に対して0.8モル当量以上1.0モル当量未満である、請求項1または請求項2に記載の方法。
[請求項4]
工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物と工程(b)で追加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物の総モル当量が、工程(a)の式(B)で表される化合物に対して1.0モル当量以上3.0モル当量以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
[請求項5]
工程(a)のp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物と工程(b)で追加されるp-トルエンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸 一水和物の総モル当量が、工程(a)の式(B)で表される化合物に対して1.0モル当量以上1.2モル当量以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
[請求項6]
溶媒が、アルコールまたは含水アルコールである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
[請求項7]
溶媒が、含水エタノールである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
[請求項8]
含水エタノールの含水率が、0%超50%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
[請求項9]
p-トルエンスルホン酸 一水和物を用いる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
[請求項10]
溶媒の量が、化合物Bに対して5倍~30倍(V/W)である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
[請求項11]
工程(a)の加温温度が60℃~80℃である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
[請求項12]
工程(b)の冷却温度が-20℃~40℃である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]