処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

出願の表示

1. WO2010070943 - 亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法

Document
注: テキスト化された文書

明 細 書

発明の名称 亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

発明の開示

0004  

図面の簡単な説明

0005  

発明を実施するための最良の形態

0006  

実施例

0007  

産業上の利用可能性

0008  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、プレス成形時の摺動抵抗が小さく優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板を安定して製造する方法および亜鉛系めっき鋼板に関するものである。

背景技術

[0002]
 亜鉛系めっき鋼板は、自動車車体用途を中心に広範な分野で広く利用されている。そのような用途での亜鉛系めっき鋼板は、プレス成形を施されて使用に供される。しかし、亜鉛系めっき鋼板は、冷延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有する。これはプレス金型での亜鉛系めっき鋼板の摺動抵抗が冷延鋼板に比べて大きいことが原因である。すなわち、金型とビードでの摺動抵抗が大きい部分で亜鉛系めっき鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起こりやすい。
 ここで、溶融亜鉛めっき処理後合金化処理を施す合金化溶融亜鉛めっき鋼板はその他の亜鉛系めっき鋼板と比較して溶接性および塗装性に優れることから、自動車車体用途としてはより好適に用いられている。
 合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板に亜鉛めっきを施した後、加熱処理を行い、鋼板中のFeとめっき層中のZnが拡散し合金化反応が生じることにより、Fe−Zn合金相を形成させたものである。このFe−Zn合金相は、通常、Γ相、δ 相、ζ相からなる皮膜であり、Fe濃度が低くなるに従い、すなわち、Γ相→δ 相→ζ相の順で、硬度ならびに融点が低下する傾向がある。このため、摺動性の観点からは、高硬度で、融点が高く凝着の起こりにくい高Fe濃度の皮膜が有効であり、プレス成形性を重視する合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、皮膜中の平均Fe濃度を高めに製造されている。
 しかしながら、高Fe濃度の皮膜では、めっき−鋼板界面に硬くて脆いΓ相が形成されやすく、加工時に界面から剥離する現象、いわゆるパウダリングが生じやすい問題を有している。
 上記の問題を解決する方法として、特許文献1および特許文献2には、亜鉛系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理、または加熱処理を施すことにより、ZnOを主体とする酸化膜を形成させて溶接性、加工性を向上させる技術が開示されている。
 しかしながら、特許文献1および2の技術を合金化溶融亜鉛めっき鋼板に適用した場合、合金化溶融亜鉛めっき鋼板はAl酸化物が存在することにより、表面の反応性が劣る、そして表面の凹凸が大きいためにプレス成形性の改善効果を安定して得ることはできない。即ち、表面の反応性が低いため、電解処理、浸漬処理、塗布酸化処理及び加熱処理等を行っても、所定の皮膜を表面に形成することは困難であり、反応性の低い部分、すなわち、Al酸化物量が多い部分では膜厚が薄くなってしまう。また、表面の凹凸が大きいため、プレス成型時にプレス金型と直接接触するのは表面の凸部となるが、凸部のうち膜厚の薄い部分と金型との接触部での摺動抵抗が大きくなり、プレス成形性の改善効果が十分には得られない。
 そこで、特許文献3では、鋼板を溶融亜鉛めっき後、加熱処理により合金化し、さらに調質圧延を施した後に、pH緩衝作用を有する酸性溶液と接触させ、1~30秒保持し、水洗することで、めっき表層に酸化物層を形成させる技術を開示している。
 同じく合金化処理を施さない溶融亜鉛めっき鋼板の表面平坦部に均一に酸化物層を形成させる手法として、特許文献4では、調質圧延後の溶融亜鉛めっき鋼板を、pH緩衝作用を有する酸性溶液と接触させ、その後、鋼板表面に酸性溶液の液膜が形成された状態で所定時間保持した後水洗、乾燥する方法が開示している。
また、電気亜鉛めっき鋼板の表面に均一に酸化物層を形成される方法としては、電気亜鉛めっき鋼板を、pH緩衝作用を有する酸性溶液もしくは酸性の電気亜鉛めっき浴と接触させ、その後に所定時間保持した後水洗、乾燥する特許文献5の方法が有効である。
特許文献1 : 特開昭53−60332号公報
特許文献2 : 特開平2−190483号公報
特許文献3 : 特開2003−306781号公報
特許文献4 : 特開2004−3004号公報
特許文献5 : 特開2005−248262号公報
[0003]
 上記特許文献3~5に開示されている技術を適用した場合、従来の製造条件においては良好なプレス成形性を得ることができる。しかし、近年のさらなる高速での製造条件においては、酸性溶液との接触後の保持時間が十分に確保されないため、形成される酸化物層が薄くなり、良好なプレス成形性が得られない場合があることが明らかになった。
 このような問題点を解決するためには、酸性溶液との接触から水洗までの距離を長くことが有効であるが、そのためのスペースを確保しなければならず空間的制約を受けることになる。
 本発明は、かかる事情に鑑み、優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板を高速での製造条件においても省スペースで安定的に製造することが可能な製造方法および優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板を提供することを目的とする。

発明の開示

[0004]
 本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、以下の知見を得た。
 特許文献3~5の技術では、亜鉛めっきから溶出した亜鉛イオンを酸化亜鉛として表面に生成させているため、亜鉛イオンの溶出時間が全体の酸化膜生成時間を長くしていることが判明した。そこで、酸化膜を形成するために接触する溶液に亜鉛イオンを含有させれば、亜鉛イオンの溶出時間が不要となり、全体の酸化膜生成時間を短縮できると考えた。しかし、単に溶液に亜鉛イオンを含有させても酸化膜の生成は充分に起こらなかった。この理由は、特許文献3~5の技術では、亜鉛が溶出する際に同時に起こる水素イオンの還元で表面近傍のpHが上昇して亜鉛酸化物が生成しやすい環境になっているのに対して、単に溶液に亜鉛イオンを含有させただけでは表面近傍のpHの上昇が起こらず亜鉛酸化物が生成しやすい環境が形成されないためであると考えられる。そこで、亜鉛を含有する水溶液に亜鉛系めっき鋼板を接触させた後、弱アルカリ液に接触させて表面近傍のpHを上昇させることを考案した。
 本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
 [1]鋼板表面に酸化物層を形成する亜鉛系めっき鋼板の製造方法であって、鋼板表面に、亜鉛イオン濃度として1~100g/lの範囲で亜鉛を含有する水溶液を接触させ、次いで、pH6~14の水溶液に接触させた後、水洗・乾燥を行うことを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
 [2]前記[1]において、前記亜鉛イオン濃度が5~100g/lの範囲であり、前記水溶液のpHが7~13であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
 [3]前記[1]または[2]において、前記亜鉛を含有する溶液は、pHが1~6であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
 [4]前記[1]~[3]のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法により製造され、金属成分としては亜鉛を主体として含む酸化物層を鋼板表面に平均厚さ10nm以上形成したことを特徴とする亜鉛系めっき鋼板。
 なお、本発明において、亜鉛系めっき鋼板とは、亜鉛を主成分とする皮膜を表面に形成させためっき鋼板であり、溶融亜鉛めっき鋼板(略してGI鋼板と称す)、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(略してGA鋼板と称す)、電気亜鉛めっき鋼板(略してEG鋼板と称す)、蒸着亜鉛めっき鋼板やFe、Al、Ni、MgCo等の合金元素を含有する合金亜鉛めっき鋼板等が含まれる。

図面の簡単な説明

[0005]
 図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。
 図2は、図1中のビード形状・寸法を示す概略斜視図である。

発明を実施するための最良の形態

[0006]
 本発明によれば、高速での製造条件においても、省スペースで、プレス成形時の摺動抵抗が小さく優れたプレス成形性を有する亜鉛系めっき鋼板を安定して製造できる。
 例えば、GA鋼板を製造する際には、鋼板に溶融亜鉛めっきを施した後に、さらに加熱し合金化処理が施されるが、この合金化処理時の鋼板−めっき界面の反応性の差により、GA鋼板表面には凹凸が存在する。しかしながら、合金化処理後には、通常、材料確保のために調質圧延が施され、この調質圧延時のロールとの接触により、めっき表面は平滑化され凹凸が緩和される。従って、プレス成形時には、金型がめっき表面凸部を押しつぶすのに必要な力が低下し、摺動特性を向上させることができる。
 GA鋼板表面の平坦部は、プレス成形時に金型が直接接触する部分であるため、金型との凝着を防止する硬質かつ高融点の物質が存在することが、摺動性の向上には重要である。この点では、表層に酸化物層を存在させることは、酸化物層が金型との凝着を防止するため、摺動特性の向上に有効である。
 実際のプレス成形時には、表層の酸化物は摩耗し、削り取られるため、金型と被加工材の接触面積が大きい場合には、十分に厚い酸化物層の存在が必要である。めっき表面には合金化処理時の加熱により酸化物層が形成されているものの、調質圧延時のロールとの接触により大部分が破壊され、新生面が露出しているため、良好な摺動性を得るためには調質圧延以前に厚い酸化物層を形成しなければならない。また、このことを考慮に入れて、調質圧延前に厚い酸化物層を形成させたとしても、調質圧延時に生じる酸化物層の破壊を避けることはできないため、平坦部の酸化物層が不均一に存在し、良好な摺動性を安定して得ることはできない。
 このため、調質圧延が施されたGA鋼板、特にめっき表面平坦部に、均一に酸化物層を形成する処理を施すと良好な摺動性を安定的に得ることができる。
 亜鉛系めっきの表面に均一に酸化物層を形成させる手法としては、亜鉛系めっき鋼板を、pH緩衝作用を有する酸性溶液と接触させ、その後、鋼板表面に酸性溶液の液膜が形成された状態で所定時間保持した後水洗、乾燥する方法が有効である。しかしながら、上述した通り、近年のさらなる高速での製造条件においては、酸性溶液との接触後の保持時間が十分確保されないため、形成される酸化物層が薄くなり、良好なプレス成形性が得られない場合がある。これを解決するために酸性溶液との接触から水洗までの距離を長くことが有効であるが、そのためのスペースを確保しなければならず空間的制約を受けることになる。
 そこで、本発明では、亜鉛系めっき鋼板を、亜鉛イオンを含む水溶液に接触させた後、更に弱アルカリ水溶液と接触させることによってpHの上昇を強制的に起こすことを考案した。このように、亜鉛イオンを含む水溶液に接触させた後、更に弱アルカリ水溶液と接触させることは、本発明において、重要な要件であり、特徴である。そして、これにより、省スペースで空間的制約を受けずに良好なプレス成形性を確保するために十分な酸化物層を形成させることができる。
 この酸化物層形成メカニズムについては明確ではないが、次のように考えることができる。亜鉛系めっき鋼板を、亜鉛イオンを含む水溶液に接触させて、鋼板表面が亜鉛イオンを含む水溶液に覆われる状態で、弱アルカリ水溶液に接触させると、鋼板表面の亜鉛イオンを含む水溶液中のpHが上昇し、酸化物(水酸化物)が安定となるpH領域に到達する。この結果、亜鉛めっき鋼板表面に安定となった酸化物層が形成すると考えられる。
 以上より、本発明においては、亜鉛系めっき鋼板表面に酸化物層を形成するに際して、鋼板表面に亜鉛を含む水溶液を接触させ、次いで、弱アルカリの、すなわちpH6~14の水溶液に接触させ後、水洗・乾燥を行うこととする。
 弱アルカリ水溶液として、本発明ではpHを6~14とする。亜鉛は両性金属であるためにpHが低すぎても高すぎても溶解する。そのため、酸化物層を形成させるためには亜鉛系めっき鋼板表面の水溶液を弱アルカリ性にする必要がある。好ましくはpHは7~13、より好ましくはpHは9~11である。
 また、水溶液中の亜鉛濃度としては、亜鉛イオンの濃度として1~100g/lの範囲とする。亜鉛イオン濃度が1g/l未満であると、十分なZnが供給されずに酸化物層の形成がおこらなくなる。一方、100g/lを超えると形成される酸化物層に含まれる硫酸濃度が高くなり、その後に行われる化成処理工程で酸化物が溶解したときに処理液を汚染することが懸念される。好ましくは、5~100g/lの範囲とする。
 また、安定な亜鉛化合物を酸化物層として形成させるためには、亜鉛イオンを硫酸塩として添加するのが好ましい。硫酸塩として添加した場合、形成される酸化物層に硫酸イオンが取り込まれ、酸化物層を安定させる効果があると思われる。
 また、亜鉛を含む水溶液のpHは特に規定しないが、好ましくは1~6である。pHが6を超える場合には水溶液中でZnイオンは沈殿(水酸化物の形成)し、鋼板表面に酸化物として形成されなくなる場合がある。一方、pHが1より低い場合は、亜鉛の溶解が促進され、めっき付着量の減少だけでなく、めっき皮膜に亀裂が生じ加工時に剥離が生じやすくなる。さらに、上記pH範囲1~6の中でもpHが高い場合は、弱アルカリ水溶液と接触した際に酸化物が安定なpHまで速やかに上昇するため、酸化物の形成には有利になる。そのため、より好ましくはpHが4~6の範囲とする。
 特許文献3で用いられる溶液は酸性であることと、pH緩衝作用を有することを特徴としている。しかし、本発明は亜鉛イオンを含む水溶液を使用するため、水溶液のpHを低くしてZnの溶解を十分に起こさなくても、十分な酸化物層を形成させることができる。また、弱アルカリ水溶液と接触させる際にpHの上昇が速やかに起こった方が酸化物の形成には有利であると思われる。ゆえに、pH緩衝作用は必ずしも必須ではない。
 本発明では、鋼板表面に接触する水溶液中に亜鉛を含有していれば、摺動性に優れた酸化物層を安定して形成できるため、水溶液中にその他の金属イオンや無機化合物などを不純物として、あるいは故意に含有していても本発明の効果が損なわれるものではない。そして、N、P、B、Cl、Na、Mn、Ca、Mg、Ba、Sr、Siなどが酸化物層中に取り込まれても、本発明の効果が損なわれない限り適用可能である。
 以上より、本発明の亜鉛系めっき鋼板の表面には亜鉛を必須成分として含み、平均厚さが10nm以上の酸化物層が得られることになる。
 なお、本発明における酸化物層とは、金属成分として亜鉛を主体として含んだ酸化物及び/又は水酸化物などからなる層のことである。このような金属成分として亜鉛を主体として含む酸化物層の平均厚さが10nm以上であることが必要である。酸化物層の平均厚さが10nm未満に薄くなると摺動抵抗を低下させる効果が不十分となる。一方、Znを必須成分として含む酸化物層の平均厚さが100nmを越えると、プレス加工中に皮膜が破壊し摺動抵抗が上昇し、また溶接性が低下する傾向にあるため好ましくない。
 亜鉛系めっき鋼板を、亜鉛を含む水溶液に接触させる方法には特に制限はなく、めっき鋼板を水溶液に浸漬する方法、めっき鋼板に水溶液をスプレーする方法、塗布ロールを介して水溶液をめっき鋼板に塗布する方法等があり、最終的に薄い液膜状で鋼板表面に存在することが望ましい。これは、鋼板表面に存在する水溶液の量が多いと、次工程のアルカリ処理でめっき表面のpH上昇が均一に速く起こり難くなるためである。この観点から、鋼板表面に形成する酸性溶液膜を50g/m 以下に調製することが好ましく有効である。なお、溶液膜量の調整は、絞りロール、エアワイピング等で行うことができる。
 また、本発明に係る亜鉛系めっき鋼板には、例えば溶融めっき法、電気めっき法、蒸着めっき法、溶射法などの各種の製造方法によるものがあり、めっき組成として純Znのほか、Zn−Fe、Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Mgなどがある。しかし、本発明の実施においては、Znを主成分とする亜鉛系めっき鋼板であれば、Znの溶解が起こり、酸化物層を形成させることができるので、めっきの種類を限定するものではない。

実施例

[0007]
 次に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
 板厚0.8mmの冷延鋼板上に、付着量が45g/m 、Al濃度が0.20質量%の溶融亜鉛めっきを施した後に、調質圧延を行ったGI鋼板を作製した。また、板厚0.8mmの冷延鋼板上に、常法の合金化溶融亜鉛めっき法により、片面当たりのめっき付着量が45g/m 、Fe濃度が10質量%、Al濃度が0.20質量%のめっき皮膜を形成し、更に調質圧延を行ったGA鋼板を作製した。また、0.8mmの冷延鋼板上に、常法の電気亜鉛めっき法により、片面当たりのめっき付着量が30g/m のめっき皮膜を有するEG鋼板を作製した。
引き続き、上記により得られたGI鋼板、GA鋼板およびEG鋼板を、表1に示す様々な濃度の硫酸亜鉛溶液に浸漬し、取り出した後にpHを調整した水酸化ナトリウム水溶液に浸漬もしくは水酸化ナトリウム水溶液をスプレーした。浸漬またはスプレー時間は1秒間とし、浸漬またはスプレー終了後1秒以内に水洗・乾燥を行なった。また、水酸化ナトリウム水溶液による処理を行う前に、ゴム製のロールで表面の硫酸亜鉛溶液を絞る試験も行った。
 なお、一部、比較のために、上記において亜鉛を含まない溶液に浸漬し水酸化ナトリウム処理を行った試験、水酸化ナトリウム水溶液での処理を行わなかった試験、調質圧延後、浸漬処理を行わない試験、硫酸を用いて亜鉛イオンを含む水溶液のpHを調整した試験も実施した。
 また、従来技術として、酢酸ナトリウムを30g/l含有するpH1.5で50℃の水溶液に浸漬し、浸漬終了後に付着した水溶液量を10g/m に調整した後、1~30秒保持する試験も行なった。
 次に、以上のように作製した鋼板について、めっき表層の調圧部および未調圧部の酸化物層の膜厚を測定するとともに、プレス成形性を簡易的に評価する手法として摩擦係数の測定を行った。なお、測定方法は以下の通りである。
 (1)プレス成形性評価試験(摩擦係数測定試験)
プレス成形性を評価するために、各供試材の摩擦係数を以下のようにして測定した。
 図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。同図に示すように、供試材から採取した摩擦係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されている。スライドテーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5が設けられ、これを押上げることにより、ビード6による摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取付けられている。上記押付力を作用させた状態でスライドテーブル3をレール9沿って水平移動させるための摺動抵抗力Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテーブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑油として、スギムラ化学社製のプレス用洗浄油プレトンR352Lを試料1の表面に塗布して試験を行った。
 図2は使用したビードの形状・寸法を示す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に押し付けられた状態で摺動する。図2に示すビード6の形状は幅10mm、試料の摺動方向長さ12mm、摺動方向両端の下部は曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押し付けられるビード下面は幅10mm、摺動方向長さ3mmの平面を有する。摩擦係数測定試験は下に示す2条件で行った。
 [条件1]
 図2に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):100cm/minとした。
 [条件2]
 図2に示すビードを用い、押し付け荷重N:400kgf、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移動速度):20cm/minとした。
供試材とビードとの間の摩擦係数μは、式:μ=F/Nで算出した。
 (2)酸化物層の厚さ(酸化膜厚)の測定
 膜厚が96nmの熱酸化SiO 膜が形成されたSiウエハを参照物質として用い、蛍光X線分析装置でO・Kα X線を測定することで、SiO 換算の酸化層の平均厚さを求めた。分析面積は30mmφである。
 以上より得られた試験結果を表1に示す。
[表1]


 表1に示す試験結果から下記事項が明らかとなった。
 No.10~13、15~26、28、29、31~54は、亜鉛イオンを本発明の範囲内の濃度で含んだ水溶液を用いた本発明例である。10nm以上の酸化物層を形成して、摩擦係数も低い値を示している。また、弱アルカリ水溶液との接触方法は浸漬およびスプレーによらず摩擦係数の低下をもたらしている。
 No.28、29、31、32は硫酸を用いて亜鉛イオンを含む水溶液のpHを低下させた本発明例であるが、pHが低い場合でも十分な酸化物層が形成して、摩擦係数の低下が確認された。
 No.21、22、41、42、51、52は、弱アルカリ水溶液に接触させる前に、Znイオンを含む水溶液をゴムロールで絞った例であるが、Znイオンを含む水溶液に接触すれば、ロール絞りの有無に関わらずに、酸化物層が形成されて、摩擦係数が低下した。
 No.1は溶液による処理を行っていないため、平坦部に摺動性を向上させるのに十分な酸化膜が形成されず、摩擦係数が高い。
 No.2~6は従来技術(比較例)である、処理液浸漬終了後に1~30秒保持した結果である。酸化膜は保持時間と共に増加し、20nm以上の酸化膜厚は保持時間5秒以上で、30nm以上の酸化膜厚は保持時間30秒以上で得られている。
 No.7~9はZnを含まない溶液(酢酸ナトリウム溶液)を用いた比較例である。酸化膜厚が10nm未満で本発明の範囲外であり、摩擦係数は高い。
 No.14、27、30は、弱アルカリ水溶液での処理を行わない比較例であり、亜鉛イオンを含む水溶液との接触だけでは十分な酸化膜は形成されず効果が得られなかった。
 上記の実施例の結果から明らかなように、従来技術であるNo.2~6では処理液浸漬終了後に5秒以上保持しなければ20nm以上の酸化膜厚は得られず、同じく30秒以上保持しなければ30nm以上の酸化膜厚が得られないのに対して、本発明例では従来技術の保持時間に該当するアルカリ液浸漬またはアルカリ液スプレー時間は1秒と大幅な短縮が可能となっている。製造設備を想定すると、本発明が適用されるのは鋼帯の高速連続製造設備であり、その製造速度は鋼帯の移動速度で毎分180m程度である。従って、従来技術では処理液浸漬終了後の保持設備長として15~90mを必要としていたのに対して、本発明では最小3m程度のアルカリ液浸漬またはアルカリ液スプレー設備を必要とするだけであり、設備のコンパクト化が実現可能である。
 すなわち、特許文献3~5に開示されている技術では高速での製造条件において、酸性溶液との接触後に十分な保持時間を確保するために、酸性溶液との接触から水洗までの距離を確保しなければならなかったが、本試験結果は亜鉛イオンを含む水溶液との接触後に、スプレー装置のみを配置することで、良好な摺動特性が得られることを示しており、本発明が高速での製造条件においても省スペースで安定的な製造が可能であることを示しているといえる。

産業上の利用可能性

[0008]
 本発明の亜鉛系めっき鋼板はプレス成形性に優れることから、自動車車体用途を中心に広範な分野で適用できる。また、本発明の亜鉛系めっき鋼板の製造方法は短時間処理で必要な厚さの酸化膜を生成させることが可能であり、製造設備のコンパクト化が可能である。

請求の範囲

[請求項1]
 鋼板表面に酸化物層を形成する亜鉛系めっき鋼板の製造方法であって、鋼板表面に、亜鉛イオン濃度として1~100g/lの範囲で亜鉛を含有する水溶液を接触させ、次いで、pH6~14の水溶液に接触させた後、水洗・乾燥を行うことを特徴とする亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[請求項2]
 前記亜鉛イオン濃度が5~100g/lの範囲であり、前記水溶液のpHが7~13であることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[請求項3]
 前記亜鉛を含有する溶液は、pHが1~6であることを特徴とする請求項1または2に記載
の亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
[請求項4]
 請求項1~3のいずれか一項に記載の亜鉛系めっき鋼板の製造方法により製造され、金属成分としては亜鉛を主体として含む酸化物層を鋼板表面に平均厚さ10nm以上形成したことを特徴とする亜鉛系めっき鋼板。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]