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1. WO2010061625 - 新規化合物、及びその利用

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明 細 書

発明の名称 新規化合物、及びその利用

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

非特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012   0013  

課題を解決するための手段

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022  

発明の効果

0023  

図面の簡単な説明

0024  

発明を実施するための形態

0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087  

実施例

0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202   0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209   0210   0211   0212   0213   0214   0215   0216   0217   0218   0219   0220   0221   0222   0223   0224   0225   0226   0227   0228   0229   0230   0231   0232   0233   0234   0235   0236   0237   0238   0239   0240   0241   0242   0243   0244   0245   0246   0247   0248   0249   0250   0251   0252  

産業上の利用可能性

0253  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34   35   36   37   38   39   40   41   42   43   44   45   46   47   48   49   50   51   52  

明 細 書

発明の名称 : 新規化合物、及びその利用

技術分野

[0001]
 本発明は、新規化合物、及び当該化合物の利用に関するものである。より詳細には、当該化合物を含む発光素子に関するものである。

背景技術

[0002]
 りん光発光する金属錯体を発光材料とした有機発光素子(以下「OLEDs」と称する:Organic Light-Emitting Devices)は、蛍光発光材料より発光効率が著しく高いため注目を集めている。
[0003]
 上記発光材料となる、白金、オスミウム又はイリジウムを含む重金属錯体のなかで、イリジウム錯体は最も発光効率が高い。
[0004]
 しかし、高パフォーマンスのOLEDsは、4,4′-N,N′-ジカルバゾール-ビフェニル(以下「CBP」と称する)等の発光ホストを基材とし、そこにイリジウム錯体(発光ドーパント)をドープしたものであって、かつ該イリジウム錯体が低濃度でかつ一定濃度以内(例えば、6重量%から10重量%の範囲内)となるよう正確にコントロールしなければ得られない。
[0005]
 つまり、高パフォーマンスのOLEDsの製造には、発光ドーパントのドープ量を最適化するために慎重な工程制御がもとめられる。さらに、このOLEDsを長期に使用すれば、発光ホストと発光ドーパントとが相分離を起こすという問題も有する。
[0006]
 そこで、発光ホストに発光ドーパントをドープするタイプのOLEDs(以下「ドープ型OLEDs」)に代えて、ドープしないタイプのOLEDs(以下「非ドープ型OLEDs」)の開発も進められている。実用上充分なパフォーマンスを示す非ドープ型OLEDsが開発できれば、上記したドープ量の厳密な制御や相分離の問題から解放される。
[0007]
 なお、従来の発光ドーパントを用いて非ドープ型OLEDsを作製しても、最高性能なドープ型OLEDsと比較すれば、得られる輝度及び発光効率の点で約1桁以上パフォーマンスが劣る(非特許文献1参照)。この問題は、りん光発光材料に共通する特徴である、キャリア(電荷)の移動が極めて少ないこと、又は発光材料による自己消光、の少なくとも一方に起因すると考えられる。
[0008]
 そこで、非特許文献2~5に記載のように、非ドープ型OLEDsに適した新規なりん光発光材料の開発が進められている。
[0009]
 また、非特許文献6に記載のように、立体制御スペーサをりん光発光材料に導入し、自己消光を低減する試みもなされている。

先行技術文献

非特許文献

[0010]
非特許文献1 : S. Lamanskyら: J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 4304.
非特許文献2 : Y. Wangら:Appl. Phys. Lett. 2001, 79, 449.
非特許文献3 : R. J. Holmesら:Appl. Phys. Lett 2003, 83, 3818.
非特許文献4 : Y. H. Songら:Adv. Func. Mater. 2004, 14, 1221.
非特許文献5 : Z. W. Liuら:Adv. Func. Mater. 2006, 16, 1441.
非特許文献6 : H. Z. Xieら:Adv. Mater. 2001, 13, 1245.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 しかしながら、非特許文献2~5に記載のりん光発光材料の多くは合成経路が非常に複雑なうえに、実用レベルからは程遠いパフォーマンスしか得られていないという問題を有する。
[0012]
 また、非特許文献6に記載のりん光発光材料も合成が容易とはいえず、またそのパフォーマンスは実用上充分なレベルとはいえないという問題を有する。
[0013]
 本願発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、発光ドーパントとしてはもちろん、単独で使用した場合でも実用上充分な発光特性を示す新規化合物及びその利用を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0014]
 本願発明者等は上記課題を解決するために鋭意検討をおこなった。その結果、特定の構造を有する補助配位子を使用することで、優れたりん光発光特性を示す化合物が得られることを見出し、本願発明を完成させるに至った。
[0015]
 すなわち、本発明に係る化合物は、上記課題を解決するために、下記の一般式(1)で表される化合物であることを特徴としている。これによれば、発光ドーパントとしてはもちろん、単独で使用した場合でも実用上充分な発光特性を示す新規化合物を提供することができるという効果を奏する。
[0016]
[化1]


(一般式(1)中、C^N(Aで示す箇所)はシクロメタル化配位子を表し、Mは遷移金属原子を表す。X1及びX2は互いに独立して窒素原子;酸素原子;硫黄原子;又はリン原子を表す。R1及びR2は互いに独立して、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;アリール基;アラルキル基;又はエーテル基;を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。R3は、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;アルケニル基;アルキニル基;アリール基;アラルキル基;脂肪族、芳香族又は環状のアミノ基;ホスフィノ基;ボリル基;アルキルチオ基;アリールチオ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;エーテル基;又はイミノ基;を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。m及びnはいずれも1以上の整数であり、mとnとの合計は、Mに配位することができる配位子の最大数以下である。)
 本発明に係る化合物は、下記の一般式(2)又は(3)で表される化合物であることがより好ましい。
[0017]
[化2]


(一般式(2)中、M、X1、X2、R1、R2、R3、m及びnの定義は、上記一般式(1)と同じである。R11~R18は互いに独立して、水素原子;ハロゲン原子;又は炭素数1~10個の炭化水素基;を表し、炭化水素基に含まれる少なくとも一つの水素はハロゲン原子で置換されていてもよく、炭化水素基が2個以上の炭素原子を含む場合に当該炭素原子の一部が硫黄原子又は窒素原子で置換されていてもよく、炭化水素基同士が互いに連結して環を形成してもよい。)
[0018]
[化3]


(一般式(3)中、M、X1、X2、R1、R2、R3、m及びnの定義は、上記一般式(1)と同じである。X3は硫黄原子又は酸素原子を表す。R19~R26は互いに独立して、水素原子;ハロゲン原子;又は炭素数1~10個の炭化水素基;を表し、炭化水素基に含まれる少なくとも一つの水素はハロゲン原子で置換されていてもよく、炭化水素基が2個以上の炭素原子を含む場合に当該炭素原子の一部が硫黄原子又は窒素原子で置換されていてもよく、炭化水素基同士が互いに連結して環を形成してもよい。)
 本発明に係る化合物は、上記一般式中で、Mがイリジウムを表し、X1及びX2が窒素原子を表すことがより好ましい。
[0019]
 本発明に係る化合物は、上記一般式中で、さらにX3が硫黄原子を表すことがより好ましい。
[0020]
 本発明に係る発光方法は、上記化合物に電圧を印加して、発光させることを特徴としている。
[0021]
 本発明に係る発光素子は、一対の電極と、該一対の電極間に配された発光材料を含む発光層とを含んでなる発光素子であって、当該発光層が本発明に係る化合物を含んでなることを特徴としている。これによれば、実用上充分な発光特性を示す発光素子を提供することができる。
[0022]
 本発明に係る発光素子は、発光材料として本発明に係る化合物のみを含んでなることがより好ましい。これによれば、発光層の形成が容易で、かつ、品質劣化の虞が低減された発光素子を提供することができる。

発明の効果

[0023]
 本発明に係る化合物及びその利用によれば、発光ドーパントとしてはもちろん、単独で使用した場合でも実用上充分な発光特性を示す新規化合物、当該化合物を用いた発光方法、及び発光素子を提供することができるという効果を奏する。

図面の簡単な説明

[0024]
[図1] 図1(a)・(b)は、本発明に係る化合物の結晶パッキングを説明する概略図である。
[図2] 図2は、脱気したジクロロメタン中又は固相状態で観察した、本発明に係る化合物のUV-Vis吸収スペクトルとPLスペクトルとを示すグラフである。
[図3] 図3は、本発明に係る有機発光素子(OLEDsI~IV)の構造と、当該有機発光素子を構成する材料の化学構造とを示す説明図である。
[図4] 図4は、6Vの駆動電圧を印加した際のOLEDsI~IVのELスペクトルを示すグラフである。
[図5] 図5は、OLEDsI~IVの輝度-電圧特性の測定結果を示すグラフである。
[図6] 図6は、OLEDsI~IVの電流密度-発光効率の関係を示すグラフである。
[図7] 図7は、本発明に係る別の化合物の結晶パッキングを説明する概略図である。
[図8] 図8は、本発明に係る別の化合物のUV-vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図9] 図9は、本発明に係る別の化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図10] 図10は、10000cd/m の輝度における本発明に係る別の有機発光素子(OLEDsV~VIII)のELスペクトルを示すグラフである。
[図11] 図11は、OLEDsV~VIIIの電流密度-外部量子効率の関係を示すグラフである。
[図12] 図12は、OLEDsV~VIIIの電流密度-発光効率の関係を示すグラフである。
[図13] 図13は、OLEDsV~VIIの輝度-電流密度-電圧特性の関係を示すグラフである。
[図14] 図14は、さらに別の素子の電流密度-電界の関係を示すグラフである。
[図15] 図15は、脱気したジクロロメタン中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルとPLスペクトルとを示すグラフである。
[図16] 図16は、固相状態で観察した、図15における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図17] 図17は、脱気したジクロロメタン中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルとPLスペクトルとを示すグラフである。
[図18] 図18は、脱気したジクロロメタン中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルとPLスペクトルとを示すグラフである。
[図19] 図19は、固相状態で観察した、図18における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図20] 図20は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図21] 図21は、クロロホルム中で観察した、図20における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図22] 図22は、固相状態で観察した、図20における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図23] 図23は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図24] 図24は、クロロホルム中で観察した、図23における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図25] 図25は、固相状態で観察した、図23における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図26] 図26は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図27] 図27は、クロロホルム中で観察した、図26における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図28] 図28は、固相状態で観察した、図26における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図29] 図29は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図30] 図30は、クロロホルム中で観察した、図29における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図31] 図31は、固相状態で観察した、図29における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図32] 図32は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図33] 図33は、クロロホルム中で観察した、図32における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図34] 図34は、固相状態で観察した、図32における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図35] 図35は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図36] 図36は、クロロホルム中で観察した、図35における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図37] 図37は、固相状態で観察した、図35における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図38] 図38は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図39] 図39は、クロロホルム中で観察した、図38における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図40] 図40は、固相状態で観察した、図38における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図41] 図41は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図42] 図42は、クロロホルム中で観察した、図41における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図43] 図43は、固相状態で観察した、図41における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図44] 図44は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図45] 図45は、クロロホルム中で観察した、図44における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図46] 図46は、固相状態で観察した、図44における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図47] 図47は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図48] 図48は、クロロホルム中で観察した、図47における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図49] 図49は、固相状態で観察した、図47における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図50] 図50は、クロロホルム中で観察した、本発明に係る別の化合物のUV-Vis吸収スペクトルを示すグラフである。
[図51] 図51は、クロロホルム中で観察した、図50における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。
[図52] 図52は、固相状態で観察した、図50における化合物のPLスペクトルを示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0025]
 以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
[0026]
 〔本発明に係る新規化合物〕
 本発明に係る新規化合物は、以下の一般式(1)に示す構造を有するものである。
[0027]
[化4]


 ここで、上記一般式(1)中、C^N(以下Aとする)はシクロメタル化配位子を表す。なお、Aが複数ある場合(後述するmが2以上の整数の場合)には、複数のAは、同一のシクロメタル化配位子を表してもよく、互いに異なるシクロメタル化配位子を表してもよい。新規化合物の合成の容易さ、及び当該化合物の発光特性を増強する観点からは、複数のAは、同一のシクロメタル化配位子であることが好ましい。なお、シクロメタル化配位子の部分は、本発明に係る新規化合物において専ら発光現象に直接関わる部分(発光性の配位子)として機能する。すなわち、励起3重項からの発光(りん光発光)が生じる部分として機能する。
[0028]
 上記のシクロメタル化配位子としては、金属錯体の発光現象に直接関わることが知られている何れの配位子をも採用することができ、所望する発光特性(発光波長など)に応じて適宜選択すればよい。特に限定されるものではないが、具体的には例えば、下記の化学式(4)の(a)~(q)に示すシクロメタル化配位子が挙げられる。なお、化学式(4)中において芳香族環又は複素環又はその他の炭素上にある水素原子は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基;炭素数が1~20個、好ましくは1~6個のアルキル基等の炭化水素基;炭素数が1~20個、好ましくは1~6個のハロゲン化アルキル基等のハロゲン化炭化水素基;アミノ基;アルコキシ基;チオアルコキシ基;芳香族環、複素環、或いは、飽和又は不飽和の炭化水素環;等の置換基により置換されてもよい。さらに、化学式(4)に示すシクロメタル化配位子は、1~数個の芳香族環、複素環、或いは、飽和又は不飽和の炭化水素環等の環状構造をさらに備えた構造であってもよい。
[0029]
[化5]


 また、一般式(1)中、R1-X1-C(R3)-X2-R2にて表される部位は、本発明に係る新規化合物の立体制御に関わる補助配位子として機能していると推定される。さらに、X1、X2が有する孤立電子対により、潜在的な正孔輸送能も持つと推定される。なお、この補助配位子が複数ある場合(後述するnが2以上の整数の場合)には、複数の補助配位子は同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
[0030]
 従来は補助配位子として、アセチルアセトナト配位子(acetylacetonate:acacと称する)が汎用されていたが、本発明では上記補助配位子を採用することで、自己消光の発生が最小限に抑制され、かつ電荷輸送能力が増強された新規なりん光発光物質(本発明の新規化合物)を極めて簡単な合成方法により提供することができる。これにより、発光ドーパントとしてはもちろん、単独で使用した場合でも、実用上充分な発光特性を示す新規な発光材料を提供することができる。
[0031]
 一般式(1)中、X1及びX2は互いに独立して窒素原子(N);酸素原子(O);硫黄原子(S);又はリン原子(P);を表し、中ではX1及びX2の双方が窒素原子を表すアミジナート構造若しくはグアニジナト構造、又は少なくとも何れか一方がリン原子を表すホスフィジナト構造であるものが好ましい。
[0032]
 また、一般式(1)中、R1及びR2は互いに独立して、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;アリール基;アラルキル基;又はエーテル基;を表す。ここでアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の炭素数1~10個の直鎖状又は分岐状のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が例示される。アリール基としては、例えば、フェニル基、等が例示される。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、等が例示される。エーテル基としては、例えば、ジエチルエーテル基、エチルメチルエーテル基、シクロペンチルメチルエーテル基、シクロヘキシルメチルエーテル基、フェニルメチルエーテル基、等が例示される。なお、これらの基はいずれも、例えば炭素数1~4個のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1~4個のハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。これらの例示の中では、ハロゲン化されていてもよいイソブチル基若しくはイソプロピル基、置換基を有していてもよいシクロヘキシル基、置換基を有していてもよいアリール基、が好ましい。また、X1又はX2がリン原子である場合、このリン原子には2つのR1又はR2が結合していてもよい。このとき、2つのR1のそれぞれ、又は2つのR2のそれぞれは、互いに同じであってもよく、又は互いに異なるものであってもよい。
[0033]
 また、一般式(1)中、R3は、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;アルケニル基;アルキニル基;アリール基;アラルキル基;脂肪族、芳香族又は環状のアミノ基;ホスフィノ基;ボリル基;アルキルチオ基;アリールチオ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;エーテル基;又はイミノ基;を表す。ここでアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の炭素数1~10個の直鎖状又は分岐状のアルキル基や、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が例示される。アルケニル基としては例えばフェニルビニル基、等が例示される。アルキニル基としては例えばフェニルアセチル基、等が例示される。アリール基としては、例えば、フェニル基、インデニル基、フルオレニル基、ナフチル基、チオフェニル基、ピリジル基、等が例示される。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、等が例示される。脂肪族のアミノ基としては、例えば、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジアリルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基、等が例示される。芳香族のアミノ基としては、例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、等が例示される。環状のアミノ基としては、例えば、カルバゾリル基、インドリル基、等が例示される。ボリル基としては、例えば、フェニルボリル等が例示される。アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基等が例示される。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、イソプロピロキシ基、t―ブトキシ基等が例示される。アリールオキシ基としては、例えば、フェニルオキシ基等が例示される。エーテル基としては、例えば、ジエチルエーテル基、エチルメチルエーテル基、シクロペンチルメチルエーテル基、シクロヘキシルメチルエーテル基、フェニルメチルエーテル基、等が例示される。イミノ基としては、例えば、イソプロピルイミノ基、等が例示される。なお、これらの基はいずれも、例えば炭素数1~4個のアルキル基、ハロゲン基、炭素数1~4個のハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。これらの例示の中では、ハロゲン化されていてもよいイソブチル基、置換基を有していてもよいシクロヘキシル基、置換基を有していてもよいアリール基、が好ましく、この中でも置換基を有していてもよいアリール基がより好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基が特に好ましい。
[0034]
 すなわち、上記の補助配位子として特に好ましいものは、1)X1、X2の双方が窒素原子を表すアミジナート構造若しくはグアニジナト構造、又は少なくとも何れか一方がリン原子を表すホスフィジナト構造を有し、かつ、2)R1及びR2が互いに独立してハロゲン化されていてもよいイソブチル基、イソプロピル基若しくはtertブチル基、置換基を有していてもよいシクロヘキシル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はエーテル基の何れかであり、かつ、3)R3が置換基を有していてもよいフェニル基、ジフェニルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジトリエチルシリルアミノ基、カルバゾリル基、フルオレニル基、又はイソプロピルイミノ基であるものが挙げられる。
[0035]
 また、上記一般式(1)中、中心金属Mは、遷移金属原子から任意に選択される金属であり、例えば、イリジウム(Ir)、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、タリウム、鉛、ビスマス、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、金、銀、等が挙げられ、中ではイリジウム、オスミウム又は白金のいずれかが好ましく、イリジウムがより好ましい。
[0036]
 また、上記一般式(1)中、m及びnはいずれも1以上の整数であり、mとnとの合計は、中心金属Mに配位することができる配位子の最大数以下、好ましくは当該最大数と同数である。中心金属Mの種類にもよるが、より優れた発光特性を得るためにはnが1であり、mが(中心金属Mに配位することができる配位子の最大数-1)であることが好ましい。例えば、中心金属Mがイリジウムの場合、mとnとの合計は3以下になるので、nが1であり、mが2であることが好ましい。
[0037]
 さらに、上記一般式(1)で表される本発明に係る新規化合物は、以下の一般式(2)で表されるものが好ましい。
[0038]
[化6]


 上記一般式(2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18(以下、R11~18と総称)は互いに独立して、水素原子;ハロゲン原子;又は炭素数1~10個の炭化水素基;を表す。ここで、当該炭化水素基に含まれる炭素数は好ましくは1~5個である。また、当該炭化水素基に含まれる少なくとも一つの水素原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。また、当該炭化水素基が2個以上の炭素原子を含む場合に、当該炭素原子の一部が硫黄原子又は窒素原子の少なくとも一方で置換されていてもよい。さらに、炭化水素基同士(より好ましくは、隣接する炭化水素基であるR11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR17、R17とR18から選択される少なくとも一組)は互いに連結して、芳香族環、飽和又は不飽和の炭化水素環(芳香族環を除く)、或いは、硫黄原子及び/又は窒素原子(ヘテロ原子)を含んだ複素環を構成してもよい。
[0039]
 また、上記一般式(2)中の、M、m、n、R1、R2、R3、X1、及びX2の定義は、一般式(1)にて説明したものと同一である。
[0040]
 上記一般式(2)で示される新規化合物のうち、より好ましいものは、1)R11~R18が互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~5個の炭化水素基を表し、かつ、2)Mがイリジウムであり、3)mが2でnが1であり、かつ、4)X1、X2の双方が窒素原子を表すアミジナート構造若しくはグアニジナト構造、又は少なくとも何れか一方がリン原子を表すホスフィジナト構造を有し、かつ、5)R1及びR2が互いに独立してハロゲン化されていてもよいイソブチル基、イソプロピル基若しくはtertブチル基、置換基を有していてもよいシクロヘキシル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はエーテル基の何れかであり、かつ、6)R3が置換基を有していてもよいフェニル基、ジフェニルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジトリエチルシリルアミノ基、カルバゾリル基、フルオレニル基、又はイソプロピルイミノ基であるものである。
[0041]
 このような新規化合物として、特に限定されるものではないが、具体的には例えば、以下の化学式(5)に記載の化合物が挙げられる。なお、化学式(5)の(a)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピルベンズアミジン)を(ppy) 2Ir(dipba)と、化学式(5)の(b)に示す新規化合物ビス(7,8-ベンゾキノリナト)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピルベンズアミジン)を(bzq) 2Ir(dipba)と称する。(ppy) 2Ir(dipba)、(bzq) 2Ir(dipba)は順に、シクロメタル化配位子としてフェニルピリジン、ベンゾキノリンを用いたものである。また、何れの新規化合物も、N,N’-ジイソプロピルベンズアミジン(アミジナート構造を有する化合物)を補助配位子として用いたものである。
[0042]
[化7]


 この他にも、例えば以下の化学式(8)~(21)に記載の化合物が挙げられる。
[0043]
[化8]


 化学式(8)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピル-N”,N”-ジフェニルグアニジン)を、Ir(ppy) 2didpgと称する。
[0044]
[化9]


 化学式(9)に示す新規化合物ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)ピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピル-N”,N”-ジフェニルグアニジン)を、Ir(dfppy) 2didpgと称する。
[0045]
[化10]


 化学式(10)に示す新規化合物ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)ピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピルベンズアミジン)を、Ir(dfppy) 2dipbaと称する。
[0046]
[化11]


 化学式(11)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジターシャリブチルベンズアミジン)を、Ir(ppy) 2tbu-baと称する。
[0047]
[化12]


 化学式(12)に示す新規化合物ビス(7,8-ベンゾキノリナト)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピル-N”,N”-ジフェニルグアニジン)を、Ir(bzq) 2dip-dpgと称する。
[0048]
[化13]


 化学式(13)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピル-N”,N”-ジアリルグアニジン)を、Ir(ppy) 2(dipdg)と称する。
[0049]
[化14]


 化学式(14)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピル-N”,N”-ジエチルグアニジン)を、Ir(ppy) 2(dipdeg)と称する。
[0050]
[化15]


 化学式(15)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピル-N”,N”-ジイソブチルグアニジン)を、Ir(ppy) 2(dipdbg)と称する。
[0051]
[化16]


 化学式(16)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピル-N”,N”-ジイソプロピルグアニジン)を、Ir(ppy) 2dipgdipと称する。
[0052]
[化17]


 化学式(17)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピル-N”,N”-ビス(トリメチルシリル)グアニジン)を、Ir(ppy) 2dip-dtmsgと称する。
[0053]
[化18]


 化学式(18)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピルカルバゾリルアミジン)を、Ir(ppy) 2dip-cbzgと称する。
[0054]
[化19]


 化学式(19)に示す新規化合物ビス(2-(2,4-ジフルオロフェニル)ピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピルカルバゾリルアミジン)を、Ir(ppy) 2dip-cbzgと称する。
[0055]
[化20]


 化学式(20)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピルフルオレニルアミジン)を、Ir(ppy) 2dip-flaと称する。
[0056]
[化21]


 化学式(21)に示す新規化合物ビス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピルジフェニルホスフィジン)を、Ir(ppy) 2dip-dppと称する。
[0057]
 或いは、上記一般式(1)で表される本発明に係る新規化合物は、以下の一般式(3)で表されるものが好ましい。
[0058]
[化22]


 上記一般式(3)中、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25及びR26(以下、R19~26と総称)は互いに独立して、水素原子;ハロゲン原子;又は炭素数1~10個の炭化水素基;を表す。ここで、当該炭化水素基に含まれる炭素数は好ましくは1~5個である。また、当該炭化水素基に含まれる少なくとも一つの水素原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。また、当該炭化水素基が2個以上の炭素原子を含む場合に、当該炭素原子の一部が硫黄原子又は窒素原子の少なくとも一方で置換されていてもよい。さらに、炭化水素基同士(より好ましくは、隣接する炭化水素基であるR19とR20、R20とR21、R21とR22、R23とR24、R24とR25、R25とR26から選択される少なくとも一組)は互いに連結して、芳香族環、飽和又は不飽和の炭化水素環(芳香族環を除く)、或いは、硫黄原子及び/又は窒素原子(ヘテロ原子)を含んだ複素環を構成してもよい。
[0059]
 上記一般式(3)中の、X3は硫黄原子又は酸素原子を表す。
[0060]
 また、上記一般式(2)中の、M、m、n、R1、R2、R3、X1、及びX2の定義は、一般式(1)にて説明したものと同一である。
[0061]
 上記一般式(3)で示される新規化合物のうち、より好ましいものは、1)R19~R26が互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~5個の炭化水素基を表し、かつ、2)Mがイリジウムであり、3)mが2でnが1であり、かつ、4)X1、X2の双方が窒素原子を表すアミジナート構造を有し、かつ、5)R1及びR2が互いに独立してハロゲン化されていてもよいイソブチル基若しくはイソプロピル基、置換基を有していてもよいシクロヘキシル基、置換基を有していてもよいアリール基、又はエーテル基の何れかであり、かつ、6)R3が置換基を有していてもよいフェニル基であり、かつ、7)X3が硫黄原子を表すものである。
[0062]
 このような新規化合物として、特に限定されるものではないが、具体的には例えば、以下の化学式(6)に記載の化合物が挙げられる。なお、化学式(6)に示す新規化合物ビス(フェニルベンゾチオゾラート)イリジウム(III)(N,N’-ジイソプロピルベンズアミジン)を(bt) 2Ir(dipba)と称する。(bt) 2Ir(dipba)は、シクロメタル化配位子としてフェニルベンゾチアゾールを用い、補助配位子としてN,N’-ジイソプロピルベンズアミジンを用いたものである。
[0063]
[化23]


 〔製造方法〕
 本発明に係る化合物は、上記のシクロメタル化配位子を中心金属Mに配位させて一次金属錯体を得る工程(1)と、次いで、補助配位子を当該一次金属錯体に配位させて本発明に係る化合物を得る工程(2)と、を含んでなる方法により製造される。この方法は、二段階の配位形成という簡単な反応であり、かつ簡単な化学構造の補助配位子を用いるために、発光特性に優れた化合物を従来より容易に合成できるという利点がある。
[0064]
 上記の一次金属錯体を得る工程(1)は、例えば、中心金属Mのハロゲン化物(金属塩化物など)とシクロメタル化配位子とを、両者が充分に配位する程度の時間及び条件で共存させればよく、例えば、M. Nonoyama, Bull. Chem. Soc. Jpn. 1974, 47, 767.等に記載の公知の方法を参照して行うことができる。
[0065]
 工程(1)では、中心金属Mのハロゲン化物1当量に対して、過剰量のシクロメタル化配位子を共存させればよく、より具体的には、一般式(1)中のmに相当する当量以上のシクロメタル化配位子を共存させればよい。例えば、中心金属Mがイリジウムである場合には、イリジウムのハロゲン化物1当量に対して、2当量以上、より好ましくは2.5~3当量のシクロメタル化配位子を共存させればよい。
[0066]
 工程(1)は、中心金属Mのハロゲン化物及びシクロメタル化配位子に対して反応性を有しない溶媒中で行うことができ、このような溶媒として例えば、2-メトキシエタノール、テトラヒドロフラン(THF)、エトキシエタノール、等が挙げられる。また、必要に応じて、これら溶媒と水とを混合したものを溶媒として用いることもできる。さらに、必要に応じて、溶媒の還流を行ってもよい。
[0067]
 工程(1)の反応温度、反応圧力は常温・常圧でよいが、上記した溶媒の還流を行う場合などは、例えば溶媒の蒸発が可能な温度及び圧力下で行ってもよい。
[0068]
 上記の工程(2)は、例えば、工程(1)で得られた一次金属錯体と補助配位子とを、両者が充分に配位する程度の時間及び条件で共存させればよい。なお、補助配位子は、一般式(1)中、R1-X1-C(R3)-X2-R2にて表される配位子を指し、市販品を購入する、又は公知の合成方法を参照した合成によって容易に入手可能である。
[0069]
 工程(2)では、中心金属Mのハロゲン化物1当量に対して、過剰量の補助配位子を共存させればよく、より具体的には、一般式(1)中のnに相当する当量以上の補助配位子を共存させればよい。例えば、中心金属Mがイリジウムである場合には、当該イリジウム1当量に対して、1当量以上、より好ましくは1.5~2当量の補助配位子を共存させればよい。
[0070]
 工程(2)は、中心金属Mのハロゲン化物及び補助配位子に対して反応性を有しない溶媒中で行うことができ、このような溶媒として例えば、2-メトキシエタノール、テトラヒドロフラン、エトキシエタノール、等が挙げられる。また、必要に応じて、これら溶媒と水とを混合したものを溶媒として用いることもできる。さらに、必要に応じて、溶媒の還流を行ってもよい。
[0071]
 工程(2)の反応温度、反応圧力は常温・常圧でよいが、上記した溶媒の還流を行う場合などは、例えば溶媒の蒸発が可能な温度及び圧力下で行ってもよい。また、生成物の酸化を防止するために、工程(2)はアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
[0072]
 また、工程(1)及び(2)に加えて、反応生成物を精製する工程、その他の工程を適宜含むこともできる。
[0073]
 中心金属Mがイリジウムであり、補助配位子としてN,N’-ジイソプロピルベンズアミジンを用いた場合の合成スキームの概略を一例として以下の一般式(7)に示す。なお、この合成スキームの理解のために、後述する実施例の記載も参酌できる。
[0074]
[化24]


 〔新規化合物の用途〕
 本発明に係る新規化合物の用途の一例として、有機発光素子(OLEDs:Organic Light-Emitting Devices)の発光材料が挙げられる。また、発光する性質を利用した検出マーカーとしての用途も考えられる。当該新規化合物は、例えば、1)補助配位子中のX1及びX2が持つ孤立電子対により潜在的な正孔輸送能を持つと考えられる点、2)補助配位子による立体制御により、新規化合物内或いは新規化合物間における発光部位(シクロメタル化配位子)同士の相互作用が低減されると考えられる点、などの発光材料として有利な特徴を備える。
[0075]
 また、後述の実施例にも示すとおり、1)電圧印加により室温下でも実用上充分なりん光を発光すること、2)当該りん光の発光寿命が極めて短く、自己消光が最低限に抑制されること、3)比較的低電圧の印加で発光すること(発光効率がよいこと)、4)比較的高密度電流下でも発光効率が低下しにくく耐久性に優れること等の特性を示し、電圧印加による発光材料として特に適している。より具体的には、有機エレクトロルミネセンス(EL)素子等の発光材料、電圧印加による発光の有無を指標に対象物を検出する検出マーカー等として特に適している。
[0076]
 有機EL表示パネル(有機EL素子の一例)は、液晶表示パネルと比較して、高速応答で動画再生に適しており、かつより薄型化が可能という特徴を有する。その反面、電圧印加による発光材料の劣化や、発光効率等が大きな課題となっている。特に、表示パネルを高精細化すれば各画素が小さくなるので、実用上充分な輝度を確保するために、より高電圧を発光材料に印加する必要が生じるという問題がある。そこで、本発明に係る新規化合物を発光材料として用いれば、例えば、製品寿命が長く、発光効率に優れ低消費電力で、かつ高精細(例えばVGA以上)な有機EL表示パネルの提供が可能となる。
[0077]
 本発明はさらに、一対の電極と、この電極間に配された発光材料を含む発光層とを含んでなり、当該発光層が本発明に係る化合物を含んでなる発光素子(有機EL素子)を提供する。以下、有機EL素子について具体的に説明する。
[0078]
 上記有機EL素子における電極は、正極と負極とを少なくとも含んでなる。正極は特に限定されないが、通常、発光層の光を外に取り出すために、ITO(Indium-Tin Oxide)等の透明電極が用いられる。
[0079]
 上記負極は特に限定されないが、例えば、アルミニウム電極を用いることができる。上記正極および負極の厚さは特に限定されないが、例えば、50nm以上400nm以下、好ましくは100nm以上300nm以下の範囲内である。上記正極および負極の抵抗値は、例えば5Ω以上50Ω以下、好ましくは10Ω以上30Ω以下の範囲内である。
[0080]
 上記発光層は、発光材料として本発明に係る化合物を含んでなる。当該発光層は蒸着法、キャストフィルム法等、薄膜を形成するための公知の方法で形成することができ、中でも蒸着法が好ましい。発光層の厚さは特に限定されないが、例えば、20nm以上40nm以下、好ましくは30nm以上40nm以下の範囲内である。
[0081]
 上記発光層は発光材料として本発明に係る化合物のみを含んでもよく、発光材料として他の化合物をさらに含んでいてもよい。例えば、本発明に係る化合物を発光ドーパントとし、発光ホスト中にドープする構成であってもよい。
[0082]
 本発明に係る化合物を発光ドーパントとする場合、発光ドーパントと発光ホストとの含有比は、所望する発光特性に応じて適宜設定すればよい。特に限定されないが、発光材料に占める発光ドーパントの割合を10重量%以上80重量%以下の範囲内とすることが好ましく、20重量%以上40重量%以下の範囲内とすることがより好ましい。なお、発光ホストとしては4,4′-N,N′-ジカルバゾール-ビフェニル(CBP)等の公知のものを適宜利用すればよい。
[0083]
 本発明の化合物(発光ドーパント)を発光ホスト中にドープする構成をとれば、発光ホストの種類又はドープ量に応じて発光特性(発光波長等)を適宜変更することができる。
[0084]
 一方、本発明に係る化合物のみを発光材料として用いる場合には、1)発光層の形成が容易であり、かつ、2)発光ドーパントと発光ホストとの相分離の問題が生じない(すなわち品質劣化の虞が低減される)という利点がある。また、実施例も参照されるように、非ドープ型OLEDsはドープ型OLEDsに遜色のない特性を示す。なお、発光ホストに発光ドーパントをドープするタイプのOLEDsをドープ型OLEDsと称し、一種類の発光材料のみからなる(ドープ構造をとらない)OLEDsを非ドープ型OLEDsと称する。
[0085]
 なお、上記の非ドープ型構造をとる場合は、本発明の化合物に含まれるシクロメタル化配位子の種類を変更することにより発光特性(発光波長等)を適宜変更できる。例えば、実施例に記載の(ppy) 2Ir(dipba)、(bzq) 2Ir(dipba)、(bt) 2Ir(dipba)は、順に、非ドープ型OLEDsとしては最も優れた黄色発光(EL)、オレンジ発光(EL)、赤色発光(EL)を示す。
[0086]
 上記有機EL素子は、発光層での正孔及び電子の再結合を促進するために、必要に応じて公知材料からなる正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等をさらに含んでもよい。有機EL素子がこれらの層を全て含む場合、基板/電極(正極)/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/電極(負極)の順に積層される。
[0087]
 本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例
[0088]
 次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[0089]
 〔実施例1:(ppy) 2Ir(dipba)及び(bzq) 2Ir(dipba)の合成、その構造の解析〕
 (合成反応全般について)
 特に言及しない限り、市販の材料は精製せずにそのまま使用した。洗浄又は合成時の溶媒として用いるヘキサンは、窒素雰囲気下でナトリウムとベンゾフェノンとを共存させて無水へキサンを蒸留して得たものを用いた。合成反応に用いるガラス製器具、シリンジ、及び磁性攪拌棒等は、対流式オーブン中で4時間以上乾燥させた。
[0090]
 合成反応のモニターは、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて行った。具体的には、市販のTLCプレート(Silica gel 60 F254,メルク社)を利用し、波長254nm及び365nmの紫外光のもとでスポットを観察した。合成反応により得られたイリジウム錯体の精製は、シリカゲル60G(silica gel 60G,粒径5~40μm,メルク社)を充填したシリカカラムクロマトグラフィーを用いて行った。
[0091]
 (シクロメタル化Ir(III)μ-塩化物架橋前駆物質の合成)
 一般式C^N Ir(μ-Cl) IrC^N で表されるシクロメタル化Ir(III)μ-塩化物架橋二量体(一次金属錯体)は、Nonoyamaらの手法(M.Nonoyama, Bull. Chem. Soc. Jpn. 1974, 47, 767.を参照)を改良した方法に従い合成した。
[0092]
 具体的には、2-メトキシエタノールと水とを3:1の割合で含む溶媒中で、IrCl .nH O(7mmol,2.5g)と2.5当量のシクロメタル化配位子(2.8gのフェニルピリジン、又は3.2gのベンゾキノリン)とを共存させて、6~7時間または24時間還流した。次いで、反応混合物を室温まで冷却した後に加水し、反応生成物を沈降させた。
[0093]
 次いで、沈降物(反応生成物)を含む反応混合物をブフナーロートでろ過した。次いで、ろ過にて得られた残留物をヘキサンとエチルエーテルとで数回洗浄して粗精製物を得た。フェニルピリジン配位子を含むμ-塩化物架橋二量体の収率は85%、ベンゾキノリン配位子を含むμ-塩化物架橋二量体の収率は82%または80%であった。
[0094]
 ((ppy) 2Ir(dipba)及び(bzq) 2Ir(dipba)の合成)
 容積50mlのフラスコにヘキサン溶媒(10ml)を入れ、当該溶媒中で1-ブロモベンゼン(65mg,0.4mmol)と2.6mol/lのn-BuLiとを共存させて、約1時間攪拌し、1-ブロモベンゼンのリチウム化を行った。次いで、得られたフェニルリチウムを、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(50mg,0.4mmol)中に滴下した。滴下中は溶液をすばやく30分以上攪拌して、無色透明の溶液を得た。当該溶液には反応生成物としてリチウムN,N’-ジイソプロピルベンズアミジナート(補助配位子)が含まれる。
[0095]
 容積50mlの他のフラスコに、上記の対応するμ-塩化物架橋二量体であるテトラキス(2-フェニルピリジン-C ,N’)(μ-ジクロロ)-ジイリジウム、又はテトラキス(7,8-ベンゾキノリナト-C ,N’)(μ-ジクロロ)-ジイリジウムをとり、ここに上記で得られた無色透明の溶液を滴下して、80℃で8時間、アルゴン雰囲気下で反応させた。なお、μ-塩化物架橋二量体の使用量はいずれも0.2mmolであり、フェニルピリジンを含む架橋二量体では220mgに、ベンゾキノリンを含む架橋二量体では230mgに相当する。
[0096]
 続いて、反応物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を蒸発させた。その後、加熱したジエチルエーテルで反応残留物を3回洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体(ppy) 2Ir(dipba)と(bzq) 2Ir(dipba)とをそれぞれ74%、68%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体を質量分析及びNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す。
(ppy) 2Ir(dipba):
MS: m/z 705 (M +). Anal. Calcd for C 35H 36IrN 4: C, 59.64; H, 5.15; N, 7.95 Found: C, 59.76; H, 5.09; N, 7.88. 1H NMR (300 MHz, CDCl 3, δ): 9.36 (d, J = 5.70, 2H), 7.87 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.72 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.56 (d, J = 8.1, 2H), 7.39 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 7.26-7.20 (m, 5H), 6.77 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.66 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.36 (d, J = 7.8 Hz, 2H), 3.24-3.16 (m, 2H), 0.67 (d, J = 6.3, 2H), -0.09 (d, J = 6.3, 2H); 13C NMR (CDCl 3, δ): 24.39, 24.66, 47.94, 117.83, 119.29, 121.13, 123.51, 127.90, 128.16, 128.86, 131.98, 135.24, 137.07, 144.11, 150.92, 156.05, 169.75, 174.63.
(bzq) 2Ir(dipba):
MS: m/z 753 (M +). Anal. Calcd for C 39H 36IrN 4: C, 62.21; H, 4.82; N, 7.44. Found: C, 62.12; H, 4.78; N, 7.55. 1H NMR (300 MHz, CDCl 3,δ): 9.63 (d, J = 5.10, 2H), 8.19 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.74 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.62 (t, J = 7.2, 2H), 7.60 (d, J = 9.0 Hz, 2H), 7.44-7.33 (m, 5H), 7.30 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 6.91 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 6.38 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 3.23-3.16 (m, 2H), 0.65 (d, J = 6.0 Hz, 2H), -0.47 (d, J = 6.0 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl 3, δ): 24.04, 24.86, 48.05, 117.01, 120.50, 122.89, 126.01, 128.01, 128.19, 128.62, 129.07, 129.37, 133.76, 134.30, 136.92, 142.04, 149.74, 152.54, 159.66, 175.13.
 (単結晶エックス線回折分析)
 エックス線構造解析に適した(ppy) 2Ir(dipba)及び(bzq) 2Ir(dipba)の単結晶を得て、その構造を単結晶エックス線回折分析により確認した。エックス線回折データは、R-Axis Rapid diffractometer(Mo Kα radiation, graphite monochromator)(株式会社リガク製の商品名)を用いてΨ回転スキャンモードにて取得した。構造決定は、SHELXTL5.01vを用いた直接法で行った後に、F に対するフルマトリックス最小二乗法により精密化した。
[0097]
 図1(a)は、(ppy) 2Ir(dipba)の結晶パッキング(crystal packing)を、図1(b)は、(bzq) 2Ir(dipba)の結晶パッキングを説明する概略図である。アミジナート(補助配位子)により立体制御がなされるために、これら2種類のイリジウム錯体はいずれも、固相状態で分子間相互作用が無視できる程である。
[0098]
 すなわち、図1(a)(b)に示すように、(bzq) 2Ir(dipba)の結晶では、隣接分子のベンゾキノリン芳香族環同士にわずかな重なりしか見られず、これら隣接する芳香族環同士の平面間距離は約3.3Åである。一方、(ppy) 2Ir(dipba)の結晶では、隣接分子のフェニルピリジン配位子間に重なりは見られない。また、(ppy) 2Ir(dipba)では隣接分子のフェニルピリジン平面間の垂直距離は3.9Åであり、(bzq) 2Ir(dipba)の場合と比較してより長い。いずれのイリジウム錯体も、隣接分子間に働く相互作用により不所望な3重項-3重項崩壊が回避又は低減される傾向にあり、特に固相状態の(ppy) 2Ir(dipba)ではその傾向が強く現れる。この点については後述する。
[0099]
 〔実施例2:(ppy) 2Ir(dipba)及び(bzq) 2Ir(dipba)における吸収、フォトルミネセンス(PL)、及び電気化学的測定〕
 (吸収、PL、及び電気化学的測定の方法)
 (1)電気化学的測定
 電気化学的測定は、BAS 100W Bioanalytical electrochemical work station (Bioanalytical Systems Inc, 米国)を用いて行った。より具体的には、白金棒を動作電極(working electrode)に、白金線を補助電極(auxiliary electrode)に採用し、参照電極として多孔質ガラスを芯としたAg/Ag 電極を採用し、フェロセン/フェロセニウム対に対して標準化し、スキャンレートを100mV/sとしてサイクリック・ボルタンメトリーにより行った。なお、この測定は、電解質であるBu NPF を0.1mol/lの濃度で含むCH Cl 溶媒中で行った。
[0100]
 (2)吸収スペクトル及びPLスペクトル
 吸収スペクトルはUV-2550 UV-visスペクトロメータ(株式会社島津製作所製の商品名)を用いて取得した。PLスペクトルは、励起源としてキセノンアークランプを備えたLS-55蛍光スペクトロメータ(パーキンエルマー(Perkin-Elmer)社製の商品名)を用いて記録した。使用した溶媒はいずれも、凍結-ポンプ-融解(freeze-pump-thaw)サイクルを三回行い脱気した。
[0101]
 (3)発光の量子収率
 PLの量子収率は、1mol/l硫酸中の硫酸キニーネを標準(Φ =0.546)として測定した。
[0102]
 (4)発光寿命
 低温下での発光寿命は、真空かつ77Kの温度下で、凍結ガラス発光サンプル(frozen glass emission samples)として測定した。この凍結ガラス発光サンプルは、液体窒素で満たされ石英窓を備えたデュアー瓶中に、濃度が約10 -5mol/lのイリジウム錯体溶液(溶媒は、脱気したエタノール/メタノール(体積比4:1)混合物)を含んだ石英管を挿入することにより準備した。
[0103]
 その他の発光寿命は、マイクロ秒単位で、Quanta Ray DCR-3 pulsed Nd:YAG レーザシステム(パルス出力355nm,6ns:Newport社製の商品名)を用いて測定した。
[0104]
 (吸収、PL、及び電気化学的測定の結果)
[0105]
[表1]


 (1)電気化学的測定
 電気化学的測定の結果を表1に示す。表1中で、還元ポテンシャルは、最適な吸収を示すオンセット波長から見積もった。また、参考までに、後述する実施例3で用いた材料NPB、CBP、BCP、ALQに関して文献値を記載した。
[0106]
 なお、CH Cl 溶媒中では、還元ポテンシャルは-2.7Vから-3.5Vの間しか測定できないという制約があったため、本発明のイリジウム錯体ついては酸化ポテンシャルのみを得た。
[0107]
 酸化ポテンシャルは、(ppy) 2Ir(dipba)が0.23V、(bzq) 2Ir(dipba)が0.26Vであった。これらイリジウム錯体はいずれも、acacを補助配位子とした従来の錯体((ppy) 2Ir(acac)及び(bzq) 2Ir(acac))、又はacacを補助配位子とした他のIr(C^N) 錯体(C^Nはシクロメタル化配位子)と比較して酸化ポテンシャルがより低く、すなわち相対的に容易に酸化されやすいことを示している(以下の文献参照。S. Jungら, Eur. J. Inorg. Chem. 2004, 17, 3415.; A. B. Tamayoら, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 7377.; S. Lamanskyら,Inorg. Chem. 2001, 40, 1704.)。アミジナート配位子は電子供与能力が非常に高いという特性を有し、その結果、酸化ポテンシャルが非常に低下していると考えられる。
[0108]
 したがって、これらの新規なイリジウム錯体のエネルギーギャップは非常に小さくなり、当該錯体のHOMOエネルギーレベル(以下「HOMO」と称する)は、(ppy) 2Ir(acac)、(bzq) 2Ir(acac)、又はacacを補助配位子とした他のIr(C^N) 錯体と比較してより高い。例えば、(ppy) 2Ir(dipba)の真空状態でのHOMOは-4.78eVであり、(ppy) 2Ir(acac)(HOMO=-5.0eV(文献値))やIr(ppy) 3(HOMO=-5.2eV(文献値))より高い。つまり、本発明に係る新規なイリジウム錯体は、そのアナログと比較してより優れた正孔輸送能力を有することを示す。
[0109]
 (2)吸収スペクトル及びPLスペクトル
 図2は、脱気したジクロロメタン中又は固相状態で観察した、新規なイリジウム錯体のUV-Vis吸収スペクトルとPLスペクトルとを示す。360nm下における強い吸収バンドは、シクロメタル化配位子上でスピンが許容されたπ-π*遷移が関与している。低エネルギーにおけるブロードな吸収バンドは、金属-配位子電荷移動(MLCT:metal-ligand charge transfer)に特有なものである。これら新規なイリジウム錯体はいずれも、黄色、又はオレンジ-赤の範囲で強力な発光(PL)を示す。ジクロロメタン中での(ppy) 2Ir(dipba)、及び(bzq) 2Ir(dipba)の発光は、順に543nm、572nmの波長で極大値を示した。
[0110]
 一方で、これらイリジウム錯体の粉末状態(固相状態の一態様)での発光は、溶液状態(すなわちジクロロメタン中)でのスペクトルと比較してレッドシフトした。具体的には、粉末状態での(ppy) 2Ir(dipba)、及び(bzq) 2Ir(dipba) の発光は、順に553nm、596nmの波長で極大値を示した。
[0111]
 この現象には、発色団となる配位子間の分子間相互作用も関与していると考えられる。上記レッドシフトの程度は、(bzq) 2Ir(dipba)が(ppy) 2Ir(dipba)より大きいが、これは(bzq) 2Ir(dipba)では二量体ユニットにわずかにπ電子同士の重複が存在することと関係すると考えられる。
[0112]
 (3)発光の量子収率
 りん光発光の量子収率を指すCH Cl 溶液中でのΦ pは、(ppy) 2Ir(dipba)が0.30で、(bzq) 2Ir(dipba)が0.41であった。この値は、従来のイリジウム錯体であるIr(ppy) 3のΦ p(0.4)に匹敵する。
[0113]
 しかし、Ir(ppy) 3は粉末状態でほぼPLを示さないが、この新規なイリジウム錯体は、粉末状態で、鮮明な黄色又はオレンジ色のPLを大気中でさえも示す。すなわち、これら新規なイリジウム錯体は固相状態で、発光の自己消光がほぼ起こらないことを示す。
[0114]
 (4)発光寿命
 りん光の発光寿命は、3重項-3重項崩壊の重要なファクターの一つである。りん光の発光寿命が長いほど、その材料は潜在的により多くの3重項-3重項崩壊を持つことが知られている。固相状態において、(ppy) 2Ir(dipba)及び(bzq) 2Ir(dipba)のりん光の発光寿命は、順に0.14μs、0.12μsであり、極めて短い。すなわち、これらの新規なイリジウム錯体はいずれも、非常に高いりん光発光を示し、相対的に発光寿命が短く、かつ固相状態においても自己消光は非常に弱くしか現れないことが示された。
[0115]
 加えて、(ppy) 2Ir(dipba)及び(bzq) 2Ir(dipba)の低温(77K)下での発光寿命は、順に、0.28、0.60μsであった。この値は、(ppy) 2Ir(acac)及び(bzq) 2Ir(acac)の発光寿命(順に3.2、23.3μs)より短い(S. Lamanskyら:Inorg. Chem. 2001, 40, 1704を参照)。この結果は、(ppy) 2Ir(dipba)分子間及び(bzq) 2Ir(dipba)分子間の発光部位同士の相互作用の低減に、アミジナートスペーサが非常に重要な役割を果たすことを示唆する。
[0116]
 〔実施例3:(ppy) 2Ir(dipba)又は(bzq) 2Ir(dipba)を用いたOLEDsの製造、エレクトロルミネセンス(EL)の測定〕
 (非ドープ型OLEDsの作製)
 本発明に係るイリジウム錯体の発光特性を理解するため、これら錯体を用いた非ドープ型OLEDs(ここではダイオード)I及びIIIを製造した。まず、一面がITO(正極になる)で被覆されたガラス基板(シート抵抗:20Ω/cm )を、エタノール、アセトン及び洗浄剤にて超音波洗浄した。次いで、ITOの膜上に有機物材料であるN,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(1-ナフチル)-1,1’-ジフェニル-4,4’-ジアミン(NPB)、イリジウム錯体(OLEDsIは(ppy) 2Ir(dipba)、OLEDsIIIは(bzq) 2Ir(dipba))、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)、トリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム(AlQ)を、この順に、約3.5×10 -4Paの圧力下、1.0Å/sのレートで熱蒸着した。NPB、イリジウム錯体、BCP、AlQそれぞれの膜厚は、順に、30nm、35nm、10nm、25nmである。
[0117]
 続いて、AlQの膜上に、厚さ0.5nmのフッ化リチウム(LiF)層を0.2Å/sのレートで真空蒸着した。最後にアルミニウム電極(負極になる)を別の真空チャンバー内で、10Å/sのレートで真空蒸着し、ダイオードを作製した。
[0118]
 上記ダイオードのアクティブ領域の大きさは、2×3mm であった。なお、上記NPB層は正孔輸送層として、イリジウム錯体層は発光層として、BCP層は正孔阻止層として、ALQ層は電子輸送層として、LiF層は電子注入層として機能している。これら材料の化学構造と、OLEDsの構造とを図3に示す。
[0119]
 (ドープ型OLEDsの作製)
 一方、本発明に係るイリジウム錯体を発光ドーパントとし、発光ホストであるCBPにドープして、ドープ型OLEDsII及びIVを製造した。ドープ型OLEDsII及びIVの発光層の厚さはいずれも35nmで、順に、発光ドーパントとして(ppy) 2Ir(dipba)、(bzq) 2Ir(dipba)を含む。いずれの場合も、発光ドーパントと発光ホストとの含有比は7重量%:93重量%である。なお、この発光層は、約3.5×10 -4Paの圧力下、1.0Å/sのレートで材料を熱蒸着して作製した。また、発光層以外の各層の構成及び作製方法は、上記非ドープ型OLEDsI及びIIIと共通である。
[0120]
 (OLEDsI~IVのエレクトロルミネッセンス(EL)の測定)
 作製されたOLEDsI~IVの、ELスペクトル、輝度-電流密度-電圧特性は、室温において、Spectrascan PR-650分光光度計(PHOTO REASERCH社製の商品名)と、コンピュータ制御直流電流電源Keithley model 2400電圧電流源(computer-controlled direct-current power supply Keithley model 2400 voltage-current source)との組み合わせを用いて測定した。
[0121]
 (結果)
 OLEDsI~IVはいずれも、印加した駆動電圧(3V~16V)に関わらず、黄色又はオレンジの発光を示した。
[0122]
 図4は、6Vの駆動電圧を印加した際の、OLEDsI~IVのELスペクトルを示す。発光層がイリジウム錯体のみからなるOLEDsI・IIIは順に黄色、オレンジ色の光を発光し、発光ピークは順に552nm、596nmであった。これは固相状態でのイリジウム錯体のPLスペクトルに近く(図2参照)、OLEDsの作製・その駆動に際してイリジウム錯体の化学変化は起こっていないことを示す。また、6Vの駆動電圧を印加した際の、OLEDsI・IIIのCIE色度座標(x,y)は、順に(0.44,0.55)、(0.58,0.42)である。
[0123]
 ドープ型OLEDsII・IVのELスペクトルの極大は、順に、544nm、572nmであり、非ドープ型OLEDsI・IIIと比べてブルーシフトした。これは、発光ドーパントを発光ホスト基材に導入したことで、発光ドーパントが局在化した効果であると考えられる。分光学的な特徴では、CIE色度座標がOLEDsIIでは(0.40,0.58)に、OLEDsIVでは(0.51,0.47)にシフトした。OLEDsI~IVではいずれも、NPB、CBP、ALQからの特徴的な発光は見られなかった。すなわち、OLEDsI~IVの発光が、専らイリジウム錯体の3重項励起状態に由来することを示唆している。
[0124]
 図5は、OLEDsI~IVの輝度-電圧特性の測定結果を示す。ドープ型OLEDsII及びIVと比較して、非ドープ型OLEDsI及びIIIの駆動電圧はより低くなる。具体的には、OLEDsI及びIIIでは、1cd/m 2の発光輝度を実現するために2.4V以下のターンオン電圧の印加で足り、そのEL強度はオン電圧(onset voltage)付与後、急速に上昇する。すなわち、低印加電圧で高発光が可能なため、発光効率に優れている。
[0125]
 OLEDsIは、3.2Vの電圧印加により100cd/m 2の輝度に達し、OLEDsIIIは、3.7Vの電圧印加により100cd/m 2の輝度に達する。これは、低パワー駆動の表示デバイスに必要とされる典型的な条件を満たす。
[0126]
 OLEDsI及びIIIは、いずれも8.0Vの電圧印加にてピーク輝度に達する。OLEDsI及びIIIのピーク輝度は、それぞれ、45770cd/m 2、15240cd/m 2である。一方、OLEDsII及びIVでは、当該ピーク輝度と同等の輝度を実現するために、より高電圧(それぞれ、14.5V、11.5V)の印加を必要とする。
[0127]
 OLEDsI及びIIIで駆動電圧がより低くなる理由の一つとして、(ppy) 2Ir(dipba)及び(bzq) 2Ir(dipba)のE gが狭いことが考えられる(表1参照)。(ppy) 2Ir(dipba)及び(bzq) 2Ir(dipba)のHOMOレベルはCBPより高く、これはNPBからイリジウム錯体に直接、正孔注入を行う(OLEDsI及びIIIの形態)ほうが、NPBからCBPに正孔注入を行う(OLEDsII及びIVの形態)よりもエネルギー的により好ましいことを示唆する。すなわち、正孔輸送層を構成するNPBと、イリジウム錯体との間で直接、正孔輸送することが、発光体での効率的な正孔-電子輸送に重要である。
[0128]
 図6は、OLEDsI~IVの電流密度―発光効率の関係を示す。全てのOLEDsは優れたEL特性を示すが、とりわけOLEDsI及びIIIがより優れている。OLEDsI及びIIIの最大パワー効率は、それぞれ、32.5 lm/W、14.8 lm/Wである。また、非ドープ型のOLEDsI及びIIIは、全ての電流密度の範囲内で、対応するドープ型のOLEDsと比較してより高いパワー効率を示す。
[0129]
 OLEDsI及びIIIは、発明者らの知る限りにおいて、非ドープ型OLEDsとして最高の効率を示す(次の文献を参照。(1)Y. Wangら:Appl. Phys. Lett. 2001, 79, 449-451.、(2)R. J. Holmesら:Appl. Phys. Lett 2003, 83, 3818-3820.、(3)Y. H. Songら:Adv. Func. Mater. 2004, 14, 1221-1226.、(4)Z. W. Liuら:Adv. Func. Mater. 2006, 16, 1441-1448.)。
[0130]
 さらに、OLEDsIのパワー効率(最大32.5 lm/W)は、これまで報告されたIr(ppy) 3又は(ppy) 2Ir(acac)をドープしたOLEDsの中で最高の効率を示すものにさえ匹敵する(次の文献を参照。(1)Baldo, M. A.ら:Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4-6.、(2)Adachiら:J. Appl. Phys. 2001, 90, 5048-5051.、(3)Lamansky, S.ら:J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 4304-4312.、(4)Nazeeruddin, M. K.ら:J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 8790-8797.)。また、OLEDsIのパワー効率は、電流密度が10mA/cm 2~100mA/cm 2の範囲内において、常に10 lm/Wを超えた値を維持するという優れた特性を示す。
[0131]
 さらに、広範囲な電流密度(0.1mA/cm 2~100mA/cm 2)と輝度(OLEDsIでは20~20000cd/m 2、OLEDsIIIでは20~10000cd/m 2)において、OLEDsI及びIIIの発光効率の低下は比較的少ない。具体的には、OLEDsIでは20cd/Aを超え、OLEDsIIIでは10cd/Aを超えており、いずれも非常に高いレベルを維持する。
[0132]
 高電流密度及び高輝度下で発光効率の低下が緩やかなことは、OLEDsI及びIIIが非常に耐久性に優れることを示唆しており、その理由は、1)安定した電荷-キャリアバランスと、発光層内で生じた3重項励起子の効率的な閉じ込めの効果、及び、2)イリジウム錯体に導入されたアミジナート(補助配位子)によりエミッタ(発光体)の中心同士が隔離されたことで、3重項-3重項崩壊の効率が低下したことに帰すると考えられる。
[0133]
 この優れたELパフォーマンスにより、これら二種類の新規イリジウム錯体は、例えば、アクティブマトリクスディスプレイやイルミネーションシステムなどのエミッタとして利用することができる。
[0134]
 また、本発明に係る上記非ドープ型OLEDsI及びIIIのパワー効率は、1mA/cm 2を超える電流密度では、対応するドープ型OLEDsII及びIVと同等の高レベルを維持した(図6参照)。
[0135]
 OLEDsI及びIIIのパワー効率が優れる理由の一つに、その駆動電圧が極めて低い点が挙げられる。加えて、本発明に係る新規なイリジウム錯体を単独でエミッタとして用いると、優れた正孔輸送能力と、抑制された自己消光特性とを示す点が挙げられる。さらに、いずれのイリジウム錯体も3重項状態の寿命が極めて短く、これは高効率なOLEDsの製造に有利な特徴点になる。
[0136]
 〔実施例4:(bt) 2Ir(dipba)の合成、その構造の解析〕
 合成反応全般については上記実施例1における説明を準用できる。
[0137]
 (シクロメタル化Ir(III)μ-塩化物架橋前駆物質の合成)
 シクロメタル化Ir(III)μ-塩化物架橋二量体(一次金属錯体)である[(bt) 2Ir(μ-Cl)] 2は、上述のNonoyamaらの手法を改良した方法に従い合成した。
[0138]
 具体的には、2-メトキシエタノールと水とを3:1の割合で含む溶媒中で、IrCl .nH O(7mmol,2.5g)と2.5当量のシクロメタル化配位子(3.8gのフェニル-2-ベンゾチオゾラート)とを共存させて、6~7時間還流した。次いで、反応混合物を室温まで冷却した後に加水し、反応生成物を沈降させた。
[0139]
 次いで、沈降物(反応生成物)を含む反応混合物をブフナーロートでろ過した。次いで、ろ過にて得られた残留物をヘキサンとエチルエーテルとで数回洗浄して粗精製物を得た。[(bt) 2Ir(μ-Cl)] 2の収率は95%であった。
[0140]
 ((bt) 2Ir(dipba)の合成)
 容積50mlのフラスコにヘキサン溶媒(10ml)を入れ、当該溶媒中で1-ブロモベンゼン(65mg,0.4mmol)と2.6mol/lのn-BuLi(0.15ml)とをアルゴン雰囲気下で共存させて、約1時間攪拌し、1-ブロモベンゼンのリチウム化を行った。次いで、得られたフェニルリチウムを、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(50mg,0.4mmol)中に滴下した。滴下中は溶液をすばやく30分以上攪拌して、無色透明の溶液を得た。当該溶液には反応生成物としてリチウムN,N’-ジイソプロピルベンズアミジナート(補助配位子)が含まれる。
[0141]
 容積50mlの他のフラスコに、上記のμ-塩化物架橋二量体である[(bt) 2Ir(μ-Cl)] 2(0.2mmol、235mg)を含むヘキサン溶媒(15ml)をとり、ここに上記で得られた無色透明の溶液を滴下して、80℃で8時間、反応させた。
[0142]
 続いて、反応物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を蒸発させた。その後、ジエチルエーテル(20ml)で反応残留物を3回洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体(bt) 2Ir(dipba)を46%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体を質量分析及びNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す。
MS: m/z 816 (M +). Anal. Calcd for C 39H 35IrN 4S 2: C, 57.40; H, 4.32; N, 6.87. Found: C, 57.47; H, 4.35; N, 6.98. 1H NMR (300 MHz, CDCl 3) δ 9.20 (d, J=8.1 Hz, 2H), 7.94 (d, J=7.8 Hz, 2H), 7.62-7.67 (m, 4H), 7.52 (t, J=7.8 Hz, 2H), 7.29-7.36 (m, 3H), 7.18 (d, J=6.9 Hz, 2H), 6.78 (t, J=7.8 Hz, 2H), 6.60 (t, J=7.5 Hz, 2H), 6.47 (d, J=7.8 Hz, 2H), 3.36 (m, 2H), 0.58 (d, J=6.3 Hz, 6H), -0.17 (d, J=6.3 Hz, 6H).
 (単結晶エックス線回折分析)
 エックス線構造解析に適した(bt) 2Ir(dipba)の単結晶を得て、その構造を単結晶エックス線回折分析により確認した。エックス線回折データは、R-AXIS RAPID diffractometer(Mo Kα radiation, graphite monochromator)を用いてΨ回転スキャンモードにて取得した。構造決定は、SHELXTL5.01vを用いた直接法で行った後に、F に対するフルマトリックス最小二乗法により精密化した。水素原子の位置は、等方的に、計算し精密化した。
[0143]
 図7は、(bt) 2Ir(dipba)の結晶パッキングを説明する概略図である。図7に示すように、(bt) 2Ir(dipba)の結晶では、隣接分子のπ-π同士にわずかな重なりしか見られず、これら隣接するπ-π面同士の平面間距離は約3.44Åである。このように(bt) 2Ir(dipba)の固相状態では、アミジナート(補助配位子)間における強力な分子間相互作用が存在しないため、不所望な自己消光の問題が低減している。
[0144]
 〔実施例5:(bt) 2Ir(dipba)における吸収、フォトルミネセンス(PL)、及び電気化学的測定〕
 電気化学的測定、吸収スペクトル及びPLスペクトル、並びに発光の量子収率の測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0145]
 (吸収、PL、及び電気化学的測定の結果)
[0146]
[表2]


 (1)電気化学的測定
 電気化学的測定の結果を表2に示す。比較目的のために、同じ条件下で(bt) 2Ir(acac)のデータも測定した。
[0147]
 この新規イリジウム錯体(bt) 2Ir(dipba)は、CH Cl 溶媒中で、1つの酸化波長を示し、還元波長は検出されなかった。
[0148]
 LUMOは何れの錯体も互いに同等のレベルであった。しかしながら、新規な錯体(bt) 2Ir(dipba)では、acacを補助配位子とした従来の錯体(bt) 2Ir(acac)と比較して、HOMOがより高くなり、HOMO-LUMOエネルギーギャップ(E )がより小さくなっている。すなわち、(bt) 2Ir(dipba)の真空状態でのHOMOは-4.88eVであり、(bt) 2Ir(acac)のHOMO(-5.32eV)より高い。また、(bt) 2Ir(dipba)の真空状態でのエネルギーギャップは2.07Vであり、(bt) 2Ir(acac)のエネルギーギャップ(2.23V)より小さい。それゆえ、新規なイリジウム錯体(bt) 2Ir(dipba)は、飽和赤色発光領域において光を発光する。
[0149]
 酸化ポテンシャルは0.21Vであった。(bt) 2Ir(acac)では、酸化ポテンシャルは0.61Vであった。(bt) 2Ir(dipba)は、(bt) 2Ir(acac)と比較して酸化ポテンシャルがより低く、すなわち相対的に容易に酸化されやすいことを示している。アミジナート配位子は電子供与能力が非常に高いという特性を有し、その結果、酸化ポテンシャルが非常に低下していると考えられる。
[0150]
 (2)吸収スペクトル及びPLスペクトル
 図8は、脱気したジクロロメタン中で観察した、新規なイリジウム錯体である(bt) 2Ir(dipba)のUV-Vis吸収スペクトルを示す。360nm下における強い吸収バンドは、シクロメタル化配位子上でスピンが許容されたπ-π*遷移が関与している。低エネルギーにおけるブロードな吸収バンドは、金属-配位子電荷移動(MLCT)に特有なものである。
[0151]
 図9は、脱気したジクロロメタン中又は固相フィルムで観察した、(bt) 2Ir(dipba)のPLスペクトルを示す。(bt) 2Ir(dipba)はジクロロメタン中及び固相フィルム中何れにおいても、赤の強力な発光(PL)を示す。609-616nmにおいて発光の極大値を示している。
[0152]
 (3)発光の量子収率
 りん光発光の量子収率を指すCH Cl 溶液中でのΦ pは、およそ0.10であった。
[0153]
 (bt) 2Ir(dipba)は、きれいな薄膜状態において、鮮明な赤色(616nm)のPLを大気中でさえも示す。すなわち、この新規なイリジウム錯体は固相状態で、発光の自己消光がほぼ起こらないことを示す。
[0154]
 〔実施例6:(bt) 2Ir(dipba)を用いたOLEDsの製造、エレクトロルミネセンス(EL)の測定〕
 (非ドープ型OLEDsの作製)
 本発明に係るイリジウム錯体の発光特性を理解するため、(bt) 2Ir(dipba)を用いた非ドープ型OLEDs(ここではダイオード)VIIIを製造した。OLEDsVIIIの製造方法は、イリジウム錯体として(bt) 2Ir(dipba)を用いた以外は、上記実施例3に示す非ドープ型OLEDsの作製方法と同じである。なお、全ての有機物は、勾配昇華により精製した。
[0155]
 このダイオードのアクティブ領域の大きさは、2×3mm であった。上記NPB層は正孔輸送層として、イリジウム錯体層は発光層として、BCP層は正孔阻止層として、ALQ層は電子輸送層として、LiF層は電子注入層として機能している。
[0156]
 (ドープ型OLEDsの作製)
 一方、本発明に係るイリジウム錯体 (bt) 2Ir(dipba)を発光ドーパントとし、発光ホストであるCBPにドープして、ドープ型OLEDsV,VI及びVIIを製造した。構造は非ドープ型であるOLEDsVIIIと同じであるが、発光層として、7mol%(OLEDsV)、15mol%(OLEDsVI)、又は30mol%(OLEDsVII)の(bt) 2Ir(dipba)がドープされているCBPを用いている点で異なる。
[0157]
 (OLEDsV~VIIIのエレクトロルミネッセンス(EL)の測定)
 作製したOLEDsV~VIIIの、ELスペクトル、輝度-電流密度-電圧特性は、上記実施例3における測定方法と同様の方法により測定した。
[0158]
 (結果)
 OLEDsV~VIIIはいずれも、印加した駆動電圧のいかんに関わらず、明るい赤色の発光を示した。
[0159]
 図10は、輝度が10000cd/m の際のOLEDsV~VIIIのELスペクトルを示す。また、このときの発光ピーク及びCIE色度座標を表3に示す。ドーパントの濃度が低いドープ型OLEDsV及びVI(それぞれ、7mol%及び15mol%)では、オレンジ色がかった赤色の光を発光し、発光ピークはそれぞれ608nm及び610nmであった。これに対し、ドーパントの濃度が高いドープ型OLEDsVII(30mol%)では、純粋な赤色の光を発光した。非ドープ型であるOLEDsVIIIでもほぼ同じく、純粋な赤色の光を発光した。発光ピークはそれぞれ615nm及び617nmであった。さらにOLEDsVII・VIIIのCIE色度座標(x,y)は、順に(0.64,0.36)、(0.65,0.35)であった。これは米国テレビジョン方式委員会(NTSC)が要求している標準の赤色(0.67,0.33)に非常に近い値である。
[0160]
[表3]


 図11は、OLEDsV~VIIIの外部量子効率の測定結果を示す。図12は、OLEDsV~VIIIのパワー効率の測定結果を示す。
[0161]
 OLEDsV~VIIIはいずれも、1cd/m の発光輝度を実現するために、3.3V以下の比較的低いターンオン電圧で足り、そのEL強度はオン電圧付与後、急速に上昇する。すなわち、低電圧印加で高輝度発光が可能なため、発光効率に優れている。
[0162]
 中でも、ドープ濃度が30mol%であるOLEDsVIIが最も優れており、ターンオン電圧が2.5%で足り、9Vの電圧印加により30160cd/m の最大輝度に達する。また、3.8Vの電圧印加により15.4%の最大外部量子効率が得られ、このときの輝度は227cd/m であった。OLEDsVIIでは、2.8Vの電圧印加においてパワー効率が18.4 lm/Wに達した。これは発明者らの知る限りにおいて、飽和型の赤色のOLEDsとして最高の効率を示す(次の文献を参照。(1)J. P. Duanら:Adv. Mater. 2003, 15, 224.、(2)C.-H. Chienら:Adv. Func. Mater. 2008, 18, 1430.)
 さらに、これらのOLEDsが発光層のドープ濃度による影響を比較的受けない点も着目される。例えば、OLEDsV(7mol%ドープ)及びVI(15mol%ドープ)において、ELパフォーマンスの減少は全くみられず、ピーク効率値は同等の高レベルを維持していた。具体的には、OLEDsV及びVIのパワー効率はそれぞれ、18.2 lm/W及び18.4 lm/Wであり、外部量子効率はそれぞれ、12%及び12.8%であった。
[0163]
 (bt) 2Ir(dipba)の濃度がさらに増加すると(>30mol%)、効率が低下する結果となる。これは、高ドープ濃度の発光中心における自己消光効果が増加するためである。それでもなお、非ドープ型であるOLEDsVIIIのパフォーマンスは注目に値する。すなわち、4.2Vの駆動電圧により100cd/m の充分な赤色輝度及び優れた効率(8.1cd/Aの輝度効率、7.3%の外部量子効率、6 lm/Wのパワー効率)が見事に得られる。OLEDsVIIIにおけるピーク効率(8.4cd/Aの最大輝度効率、7.5%の最大外部量子効率、6.1 lm/Wの最大パワー効率)は、これまで報告されている非ドープ型の低分子りん光発光体として最高の効率である(次の文献を参照。(1)Y. H. Songら:Adv. Func. Mater. 2004, 14, 1221.、(2)Z. W. Liuら:Adv. Func. Mater. 2006, 16, 1441.、(3)J. Q. Dingら:Wang, Adv. Func. Mater. 2008, 18, 2754.)。非ドープ型のOLEDsVIIIにおけるこのような注目に値するELパフォーマンスの増強からすると、発光イリジウム錯体(bt) 2Ir(dipba)は発光ホストを用いなくても効率的に電荷を輸送できることが示唆される。
[0164]
 図13は、OLEDsV~VIIの電流密度-輝度-電圧特性をプロットしたグラフである。図13に示されるように、ドープレベルが上昇すると駆動電圧が低くなる傾向にある。また、(bt) 2Ir(dipba)が電荷輸送の役割を果たしていると考えられる。
[0165]
 以上のように、発光イリジウム錯体(bt) 2Ir(dipba)を用いれば、高効率及び低駆動電圧である純粋赤色OLEDsを、幅広い範囲のドープ濃度又は非ドープ型のいずれにおいても製造できる。
[0166]
 (単一キャリア素子の作製)
 (bt) 2Ir(dipba)でのELパフォーマンスの飛躍的な向上は、発光層内における安定した電荷-キャリアバランス及び効率的な再結合に帰すると考えられる。そこで、発光層での電荷注入及びキャリア輸送の両方についてさらに理解を深めるために、単一キャリア素子を作製した。この素子は、Al/アクティブ分子層/Al、又はITO/アクティブ分子層/Auの構造を有する。キャリアが電子のみ(electron-only)の素子における電極として、仕事関数が小さい金属(Al)を用いている。また、キャリアが正孔のみ(hole-only)の素子における電極として、仕事関数が大きい金属(Au)又は金属酸化物(ITO)を用いている。なお比較目的のために、電子のみ、正孔のみのいずれの素子においても、アクティブ分子層として(bt) 2Ir(dipba)を用いた素子、及び(bt) 2Ir(acac)を用いた素子の両方の種類の素子を作製した。
[0167]
 (単一キャリア素子の電流密度及び輝度の測定)
 図14は、各素子における電流密度-電界特性を測定した結果を示すグラフである。キャリアが正孔のみの素子の場合、(bt) 2Ir(dipba)を用いた素子及び(bt) 2Ir(acac)を用いた素子の間で大差はなかった。しかしながら、キャリアが電子のみの素子の場合、(bt) 2Ir(dipba)を用いた素子における電流密度は、(bt) 2Ir(acac)を用いた素子における電流密度に比べはるかに大きかった。これは、dipba配位子におけるより強力なπ結合能力に起因するものと考えられる。これによって、隣接する分子間での電子のホップがより容易になると考えられる。
[0168]
 通常、有機EL材料における電子の移動度は、正孔の移動度よりも数オーダーのレベルで低いものである。そのため、OLEDsのパフォーマンスのさらなる向上は、(bt) 2Ir(dipba)を用いた素子のように、EL素子における効率的な電子の移動及びEL素子への効率的な電子注入によるところが大きい。(bt) 2Ir(dipba)を用いた素子では、正孔及び電子の間での広範囲にわたる量的コントラストを低減でき、その結果、発光層内のキャリアバランスが優れたものとなる。
[0169]
 上述のように(bt) 2Ir(dipba)の酸化ポテンシャル(0.21V)は(bt) 2Ir(acac)の酸化ポテンシャル(0.61V)のよりもはるかに小さく、また(bt) 2Ir(dipba)のHOMOは(bt) 2Ir(acac)のHOMOよりも大きい。そのため、アミジナート配位イリジウム錯体(bt) 2Ir(dipba)は正孔を直接捕捉する能力に長けていると考えられる。(bt) 2Ir(dipba)を用いた素子におけるELパフォーマンスの顕著な増大は、部分的にはこの優れた能力によるものである。この結果、(bt) 2Ir(dipba)を用いたOLEDsの発光層内において、より多くの正孔と電子とが効率的に再結合して3重項励起子を生じさせることができる。
〔実施例7:Ir(ppy) 2didpgの合成、Ir(ppy) 2didpgにおける吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 合成反応全般については上記実施例1における説明を準用できる。なお、後述する実施例8~20についても同様である。
[0170]
 (Ir(ppy) 2didpgの合成)
 アルゴン雰囲気下において、容積100mlのフラスコに、ジフェニルアミン(67mg、0.4mmol)を含む10mlのTHF、及びn-BuLiのヘキサン溶液(2.77M、0.4mmol、0.14ml)を加え、室温で約2時間攪拌した。その後、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(50mg,0.4mmol)を、この反応液に滴下した。反応液をすばやく2時間攪拌した後、この反応液を、[(ppy) 2Ir(μ-Cl)] 2(0.2mmol,220mg)を含む15mlのTHF中に滴下して、80℃で12時間攪拌した。
[0171]
 続いて、反応物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を蒸発させた。次いで、反応物を5mlのトルエンに加えた後、トルエンを蒸発させた。その後、得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(ppy) 2didpgを80%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, CDCl 3, rt) δ= 9.20 (d, 2H, py-H), 7.86 (d, py-H, 2H), 7.75 (t, 4H, dph-o), 7.54 (d, 2H, Ph-H), 7.25 (m, 4H, dph-m), 7.00 (m, 4H, py-H and Ph-H), 6.76 (t, 2H, dph-p), 6.64 (t,2H, Ph-H), 6.31 (d, 2H, Ph-H), 3.58 (b, 2H, C-H), 0.42 (d, 6H, -CH 3), 0.086 (d, 6H, -CH 3)。
[0172]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0173]
 図15は、脱気したジクロロメタン中で観察した、Ir(ppy) 2didpgのUV-vis吸収スペクトル及びPLスペクトルを示した図である。ジクロロメタン中での発光は、540nmの波長で極大値を示した。
[0174]
 図16は、固相状態で観察した、Ir(ppy) 2didpgのPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、530nmの波長で極大値を示した。
[0175]
 〔実施例8:Ir(dfppy) 2didpgの合成、Ir(dfppy) 2didpgにおける吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (シクロメタル化Ir(III)μ-塩化物架橋前駆物質の合成)
 シクロメタル化Ir(III)μ-塩化物架橋二量体(一次金属錯体)である[(dfppy) 2Ir(μ-Cl)] 2を以下の方法により合成した。
[0176]
 まず、2-エトキシエタノールと水とを3:1の割合で含む溶媒中で、IrCl ・H O(2.35mmol,0.702g)と2-(2,4-ジフルオロフェニル)ピリジン(10.5mmol,2.00g)とを共存させて、140℃で24時間還流した。次いで、反応混合物を冷却し、反応生成物を沈降させた。
[0177]
 次いで、沈降物(反応生成物)を含む反応混合物をろ過した。次いで、ろ過にて得られた残留物をアセトン(60ml):エタノール(60ml)の溶液で洗浄して粗精製物を得た。粗精製物をn-ヘキサン(10ml):トルエン(25ml)の溶液で再結晶化して、黄色の結晶を得た。μ-塩化物架橋二量体の収率は70%であった。なお、得られた産物をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz in CDCl 3, rt) δ= 9.15 (d, 2H), 8.32 (d, 2H), 7.86 (dd, 2H), 6.84 (dd, 2H), 6.36 (dd, 2H), 5.34 (dd, 2H)。
[0178]
 (Ir(dfppy) 2didpgの合成)
 アルゴン雰囲気下において、容積100mlのフラスコに、ジフェニルアミン(67mg、0.4mmol)を含む10mlのTHF、及びn-BuLiのヘキサン溶液(2.77M、0.4mmol、0.14ml)を加え、室温で約2時間攪拌した。その後、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(50mg,0.4mmol)を、この反応液に滴下した。反応液をすばやく2時間攪拌した後、この反応液を、[(dfppy) 2Ir(μ-Cl)] 2(0.2mmol,220mg)を含む15mlのTHF中に滴下して、80℃で12時間攪拌した。
[0179]
 続いて、反応物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を蒸発させた。得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(dfppy) 2didpgを65%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, CDCl 3, rt): δ = 9.15 (d, 2H), 8.30 (d, 2H), 7.87 (t, 2H), 7.30 (m, 5H), 7.14 (m, 5H), 7.08 (t, 2H), 6.33-6.25 (m, 2H), 5.70 (dd, 2H), 3.61-3.53 (m, 2H), 0.42 (d, 6H), 0.11 (d, 6H)。
[0180]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0181]
 図17は、Ir(ppy) 2dipbaのUV-vis吸収スペクトル及びPLスペクトルを示した図である。発光は524nmの波長で極大値を示した。
[0182]
 〔実施例9:Ir(dfppy) 2dipbaの合成、Ir(dfppy) 2dipbaにおける吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(dfppy) 2dipbaの合成)
 容積100mlのフラスコに、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(50mg,0.4mmol)を含む10mlのTHFを加え、フェニルリチウムのヘキサン溶液(Ph-Li:0.21ml,0.4mmol)を滴下した。反応液をすばやく室温で2時間攪拌した後、この反応液を、[(dfppy) 2Ir(μ-Cl)] 2(0.2mmol,229mg)を含む15mlのTHF中に滴下して、80℃で12時間攪拌した。
[0183]
 続いて、反応物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を蒸発させた。その後、得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(dfppy) 2dipbaを70%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, CDCl 3, rt): δ = 9.32 (d, 2H), 8.29 (d, 2H), 7.81 (t, 2H), 7.44 (m, 2H), 7.29 (m, 5H), 6.32 (dtd, 2H), 5.75 (dd, 2H), 3.23-3.16 (m, 2H), 0.67 (d, 6H), -0.08 (d, 6H)。
[0184]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0185]
 図18は、脱気したジクロロメタン中で観察した、Ir(dfppy) 2dipbaのUV-vis吸収スペクトル及びPLスペクトルを示した図である。ジクロロメタン中での発光は、535nmの波長で極大値を示した。
[0186]
 図19は、固相状態で観察した、Ir(dfppy) 2dipbaのPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、510nmの波長で第1の極大値を示し、540nmの波長で第2の極大値を示した。各極大値の強度は、第1の極大値の方が大きかった。
[0187]
 〔実施例10:Ir(ppy) 2tbu-baの合成、Ir(ppy) 2tbu-baにおける吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(ppy) 2tbu-baの合成)
 容積100mlのフラスコに、N,N’-ジ-tert-ブチルカルボジイミド(62mg,0.4mmol)を含む10mlのTHFを加え、フェニルリチウムのヘキサン溶液(Ph-Li:0.21ml,0.4mmol)を滴下した。反応液をすばやく室温で2時間攪拌した後、この反応液を、[(ppy) 2Ir(μ-Cl)] 2(0.2mmol,220mg)を含む15mlのTHF中に滴下して、80℃で12時間攪拌した。
[0188]
 続いて、反応物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を蒸発させた。その後、得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(ppy) 2tbu-baを70%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300MHz, C 6D 6, rt): δ= 9.65 (d, 2H), 7.53-7.46 (m, 4H), 7.38 (t, 2H), 7.11-7.02 (m, 6H), 6.81-6.72 (m, 5H), 6.66 (d,2H), 0.73 (s, 18H)。
[0189]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0190]
 図20は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2tbu-baのUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0191]
 図21は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2tbu-baのPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、545nmの波長で極大値を示した。
[0192]
 図22は、固相状態で観察した、Ir(ppy) 2tbu-baのPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、543nmの波長で極大値を示した。
[0193]
 〔実施例11:Ir(bzq) 2dip-dpgの合成、Ir(bzq) 2dip-dpgにおける吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(bzq) 2dip-dpgの合成)
 アルゴン雰囲気下において、容積100mlのフラスコに、ジフェニルアミン(67mg、0.4mmol)を含む10mlのTHF、及びn-BuLiのヘキサン溶液(2.77M、0.4mmol、0.14ml)を加え、室温で約2時間攪拌した。その後、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(50mg,0.4mmol)を、この反応液に滴下した。反応液をすばやく2時間攪拌した後、この反応液を、[(bzq) 2Ir(μ-Cl)] 2(0.2mmol,230mg)を含む15mlのTHF中に滴下して、80℃で12時間攪拌した。
[0194]
 続いて、反応物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を蒸発させた。得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(bzq) 2dip-dpgを80%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, CDCl 3, rt):δ = 9.50 (d, 2H), 8.28 (d, 2H), 7.76-7.61 (m,5H), 7.29 (t, 5H), 7.21 (t, 5H), 7.03-6.92 (tt, 5H), 6.36 (d,2H), 3.56 (m,2H), 0.44 (d,6H), -0.31 (d, 6H)。
[0195]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0196]
 図23は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(bzq) 2dip-dpgのUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0197]
 図24は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(bzq) 2dip-dpgのPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、565nmの波長で極大値を示した。
[0198]
 図25は、固相状態で観察した、Ir(bzq) 2dip-dpgのPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、567nmの波長で極大値を示した。
[0199]
 〔実施例12:Ir(ppy) 2(dipdg)の合成、Ir(ppy) 2(dipdg)における吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(ppy) 2(dipdg)の合成)
 ジフェニルアミン(67mg、0.4mmol)を含むTHFの代わりにジアリルアミン(39mg,0.4mmol)を含むTHFを用いた以外は実施例7と同様の方法により、合成を行った。
[0200]
 トルエンを蒸発させた後、得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(ppy) 2(dipdg)を50%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, C 4D 8O, rt): δ =9.20 (d, 2H), 7.95 (t,2H), 7.80 (t, 2H), 7.60 (t, 2H), 7.20 (m, 2H), 6.70 (t, 2H), 6.50 (t,2H), 6.30 (d,2H), 6.15 (d, 2H), 4.95 (m, 2H), 3.65 (m, 2H), 1.65 (d, 4H), 0.72 (d, 6H), 0.61 (d, 6H)。
[0201]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0202]
 図26は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2(dipdg)のUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0203]
 図27は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2(dipdg)のPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、536nmの波長で極大値を示した。
[0204]
 図28は、固相状態で観察した、Ir(ppy) 2(dipdg)のPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、548nmの波長で極大値を示した。
[0205]
 〔実施例13:Ir(ppy) 2(dipdeg)の合成、Ir(ppy) 2(dipdeg)における吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(ppy) 2(dipdeg)の合成)
 ジフェニルアミン(67mg、0.4mmol)を含むTHFの代わりにジエチルアミン(29mg,0.4mmol)を含むTHFを用いた以外は実施例7と同様の方法により、合成を行った。
[0206]
 トルエンを蒸発させた後、得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(ppy) 2(dipdeg)を60%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, CDCl 3, rt): δ = 9.25 (d, 2H), 7.95 (d, 2H), 7.75 (t, 2H), 7.56 (d, 2H), 7.20 (t,2H), 6.66 (t, 2H), 6.49 (t, 2H), 6.23(d, 2H), 3.75-3.67 (m, 2H), 3.23-3.02 (m, 4H), 1.11 (t, 6H), 0.77 ( d, 6H), -0.012 (d, 6H)。
[0207]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0208]
 図29は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2(dipdeg)のUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0209]
 図30は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2(dipdeg)のPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、546nmの波長で極大値を示した。
[0210]
 図31は、固相状態で観察した、Ir(ppy) 2(dipdeg)のPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、566nmの波長で極大値を示した。
[0211]
 〔実施例14:Ir(ppy) 2(dipdbg)の合成、Ir(ppy) 2(dipdbg)における吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(ppy) 2(dipdbg)の合成)
 ジフェニルアミン(67mg、0.4mmol)を含むTHFの代わりにジイソブチルアミン(52mg,0.4mmol)を含むTHFを用いた以外は実施例7と同様の方法により、合成を行った。
[0212]
 トルエンを蒸発させた後、得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(ppy) 2(dipdbg)を65%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, C 4D 8O, rt): δ =9.25 (d, 2H), 7.92 (d, 2H), 7.74 (t, 2H), 7.54 (d, 2H), 7.20-7.16 (m, 2H), 6.64 (t, 2H), 6.51 (t, 2H), 6.22 (d, 2H), 3.84 (m, 2H), 2.96-2.85 (m, 4H), 1.93-1.85 ( m, 2H), 0.94 (dd, 12H), 0.85 (d, 12 H)。
[0213]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0214]
 図32は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2(dipdbg)のUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0215]
 図33は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2(dipdbg)のPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、548nmの波長で極大値を示した。
[0216]
 図34は、固相状態で観察した、Ir(ppy) 2(dipdbg)のPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、558nmの波長で極大値を示した。
[0217]
 〔実施例15:Ir(ppy) 2(dipgdip)の合成、Ir(ppy) 2(dipdbg)における吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(ppy) 2(dipgdip)の合成)
 ジフェニルアミン(67mg、0.4mmol)を含むTHFの代わりにジイソプロピルアミン(40mg,0.4mmol)を含むTHFを用いた以外は実施例7と同様の方法により、合成を行った。
[0218]
 トルエンを蒸発させた後、得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(ppy) 2(dipgdip)を70%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, C 6D 6, rt): δ =9.35 (d, 2H), 7.52 (d, 2H), 7.41 (d, 2H), 7.02 (t, 2H), 6.87-6.73 (m, 6H), 6.67 (t, 2H), 3.93-3.88 (m, 2H), 3.48-3.44 (m, 2H), 1.20(t, 12 H), 1.10 (d, 6H), 0.25 (d, 6H)。
[0219]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0220]
 図35は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2(dipgdip)のUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0221]
 図36は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2(dipgdip)のPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、548nmの波長で極大値を示した。
[0222]
 図37は、固相状態で観察した、Ir(ppy) 2(dipgdip)のPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、560nmの波長で極大値を示した。
[0223]
 〔実施例16:Ir(ppy) 2dip-dtmsgの合成、Ir(ppy) 2dip-dtmsgにおける吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(ppy) 2dip-dtmsgの合成)
 容積100mlのフラスコに、リチウム(ビス-トリメチルシリル)アミド(67mg,0.4mmol)を含む10mlのTHFを加え、30分間攪拌した。その後、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(50mg,0.4mmol)を、この溶液に滴下した。反応液をすばやく2時間攪拌した後、この反応液を、[(ppy) 2Ir(μ-Cl)] 2(0.2mmol,220mg)を含む15mlのTHF中に滴下して、80℃で12時間攪拌した。
[0224]
 続いて、反応物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を蒸発させた。次いで、反応物を5mlのトルエンに加えた後、トルエンを蒸発させた。その後、得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(ppy) 2dip-dtmsgを70%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, C 6D 6, rt): δ =9.45 (d, 2H), 7.50 (d, 2H), 7.43(d, 2H), 7.09(t, 2H), 6.85-6.71 (m, 6H), 6.64 (d, 2H), 3.93-3.88 (m, 2H), 1.09 (d, 6H), 0.34 (d, 6H), 0.28 (s, 18H)。
[0225]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0226]
 図38は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2dip-dtmsgのUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0227]
 図39は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2dip-dtmsgのPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、535nmの波長で極大値を示した。
[0228]
 図40は、固相状態で観察した、Ir(ppy) 2dip-dtmsgのPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、548nmの波長で極大値を示した。
[0229]
 〔実施例17:Ir(ppy) 2dip-cbzgの合成、Ir(ppy) 2dip-cbzgにおける吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(ppy) 2dip-cbzgの合成)
 ジフェニルアミン(67mg、0.4mmol)を含むTHFの代わりにカルバゾール(67mg,0.4mmol)を含むTHFを用いた以外は実施例7と同様の方法により、合成を行った。
[0230]
 トルエンを蒸発させた後、得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(ppy) 2dip-cbzgを75%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, CDCl 3, rt): δ = 9.59 (d, 2H), 8.09 (d, 2H), 7.94 (d, 2H), 7.84 (t, 2H), 7.62 (dd, 4H), 7.50-7.38 (m, 6H), 6.84 (t, 2H), 6.73 (t, 2H), 6.42 (d, 2H), 3.06-3.02 (m, 2H), 0.64 (d, 6H), -0.06 (d, 6H)。
[0231]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0232]
 図41は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2dip-cbzgのUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0233]
 図42は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2dip-cbzgのPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、530nmの波長で極大値を示した。
[0234]
 図43は、固相状態で観察した、Ir(ppy) 2dip-cbzgのPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、512nmの波長で極大値を示した。
[0235]
 〔実施例18:Ir(dfppy) 2dip-cbzgの合成、Ir(dfppy) 2dip-cbzgにおける吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(dfppy) 2dip-cbzgの合成)
 アルゴン雰囲気下において、容積100mlのフラスコに、カルバゾール(67mg、0.4mmol)を含む10mlのTHF、及びn-BuLiのヘキサン溶液(2.77M、0.4mmol、0.14ml)を加え、室温で約2時間攪拌した。その後、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(50mg,0.4mmol)を、この反応液に滴下した。反応液をすばやく2時間攪拌した後、この反応液を、[(dfppy) 2Ir(μ-Cl)] 2(0.2mmol,220mg)を含む15mlのTHF中に滴下して、80℃で12時間攪拌した。
[0236]
 続いて、反応物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を蒸発させた。得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(dfppy) 2dip-cbzgを70%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, CD 2Cl 2, rt): δ = 9.45 (d, 2H), 8.25 (d, 2H), 7.99 (d, 2H), 7.84 (t, 2H), 7.49-7.37 (m, 6H), 7.20 (dt, 2H), 6.29 (t, 2H), 5.71 (dd, 2H), 2.95-2.89 (m, 2H), 0.54 (d, 6H), -0.17(d, 6H)。
[0237]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0238]
 図44は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(dfppy) 2dip-cbzgのUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0239]
 図45は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(dfppy) 2dip-cbzgのPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、495nmの波長で極大値を示した。
[0240]
 図46は、固相状態で観察した、Ir(dfppy) 2dip-cbzgのPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、518nmの波長で極大値を示した。
[0241]
 〔実施例19:Ir(ppy) 2dip-flaの合成、Ir(ppy) 2dip-flaにおける吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(ppy) 2dip-flaの合成)
 アルゴン雰囲気下において、容積100mlのフラスコに、フルオレン(66mg、0.4mmol)を含む10mlのTHF、及びn-BuLiのヘキサン溶液(2.77M、0.4mmol、0.14ml)を加え、室温で約2時間攪拌した。その後、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(50mg,0.4mmol)を、この反応液に滴下した。反応液をすばやく2時間攪拌した後、この反応液を、[(ppy) 2Ir(μ-Cl)] 2(0.2mmol,220mg)を含む15mlのTHF中に滴下して、80℃で12時間攪拌した。
[0242]
 続いて、反応物を室温まで冷却した後、減圧下で溶媒を蒸発させた。得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(ppy) 2dip-flaを60%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, CDCl 3, rt): δ = 9.46 (d, 1H), 9.22 (d, 1H), 7.92 (d, 1H), 7.78-7.74 (m, 5H), 7.68 (t, 1H), 7.61 (t, 3H), 7.48-7.40 (m, 4H), 7.37(d, 2H), 6.81(t, 1H), 6.70 (dd, 2H), 6.59 (t, 1H), 6.34 (dd, 2H), 4.93(s, 1H), 4.13-4.09 (m, 1H), 2.16-2.12 (m, 1H), 0.88 (d, 3H), 0.35 (d, 3H), 0.09 (d, 3H), -0.74 (d, 3H)。
[0243]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0244]
 図47は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2dip-flaのUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0245]
 図48は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2dip-flaのPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、545nmの波長で極大値を示した。
[0246]
 図49は、固相状態で観察した、Ir(ppy) 2dip-flaのPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、553nmの波長で極大値を示した。
[0247]
 〔実施例20:Ir(ppy) 2dip-dppの合成、Ir(ppy) 2dip-dppにおける吸収及びフォトルミネッセンスの測定〕
 (Ir(ppy) 2dip-dppの合成)
 フルオレン(66mg、0.4mmol)を含むTHFの代わりにジフェニルホスフィン(74mg,0.4mmol)を含むTHFを用いた以外は実施例19と同様の方法により、合成を行った。
[0248]
 得られた産物をジエチルエーテルで洗浄して、本発明に係る新規なイリジウム錯体Ir(ppy) 2dip-dppを60%の収率で得た。なお、得られた新規なイリジウム錯体をNMR分析し、目的物であることを確認した。以下に分析の結果を示す;
1H NMR (300 MHz, CDCl 3, rt): δ = 8.70 (d, 1H), 8.60 (d, 1H), 7.82 (d, 1H), 7.55-7.65 (m, 3H), 7.35-7.48 (m, 2H), 7.38 (d, 2H), 7.14 (d, 1H), 7.08 (d, 2H), 6.90(t, 1H), 6.62-6.75 (m, 5H), 6.35-6.60 (m, 6H), 5.95 (t, 1H), 4.13 (m, 1H), 3.61(m, 1H), 0.90 (d, 3H), 0.61 (d, 3H), 0.45 (d, 3H), 0.15 (d, 3H)。
[0249]
 (吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定)
 吸収スペクトル及びPLスペクトルの測定は、実施例2と同様にしておこなった。
[0250]
 図50は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2dip-dppのUV-vis吸収スペクトルを示した図である。
[0251]
 図51は、クロロホルム溶液中で観察した、Ir(ppy) 2dip-dppのPLスペクトルを示した図である。クロロホルム溶液中での発光は、558nmの波長で極大値を示した。
[0252]
 図52は、固相状態で観察した、Ir(ppy) 2dip-dppのPLスペクトルを示した図である。固相状態での発光は、548nmの波長で極大値を示した。

産業上の利用可能性

[0253]
 本発明によれば、発光ドーパントとしてはもちろん、単独で使用した場合でも実用上充分な発光特性を示す新規化合物、当該化合物を用いた発光方法、及び発光素子を提供することができる。本発明は、例えば、検出マーカー、又は有機エレクトロルミネセンス素子の発光材料として好適に利用可能である。

請求の範囲

[請求項1]
 下記の一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
[化1]


(一般式(1)中、C^N(Aで示す箇所)はシクロメタル化配位子を表し、Mは遷移金属原子を表す。
 X1及びX2は互いに独立して窒素原子;酸素原子;硫黄原子;又はリン原子を表す。
 R1及びR2は互いに独立して、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;アリール基;アラルキル基;又はエーテル基;を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
 R3は、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;アルケニル基;アルキニル基;アリール基;アラルキル基;脂肪族、芳香族又は環状のアミノ基;ホスフィノ基;ボリル基;アルキルチオ基;アリールチオ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;エーテル基;又はイミノ基;を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
 m及びnはいずれも1以上の整数であり、mとnとの合計は、Mに配位することができる配位子の最大数以下である。)
[請求項2]
 下記の一般式(2)で表されることを特徴とする化合物。
[化2]


(一般式(2)中、Mは遷移金属原子を表す。
 X1及びX2は互いに独立して窒素原子;酸素原子;硫黄原子;又はリン原子;を表す。
 R1及びR2は互いに独立して、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;アリール基;アラルキル基;又はエーテル基;を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
 R3は、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;アルケニル基;アルキニル基;アリール基;アラルキル基;脂肪族、芳香族又は環状のアミノ基;ホスフィノ基;ボリル基;アルキルチオ基;アリールチオ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;エーテル基;又はイミノ基;を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
 R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17及びR18は互いに独立して、水素原子;ハロゲン原子;又は炭素数1~10個の炭化水素基;を表し、炭化水素基に含まれる少なくとも一つの水素はハロゲン原子で置換されていてもよく、炭化水素基が2個以上の炭素原子を含む場合に当該炭素原子の一部が硫黄原子又は窒素原子で置換されていてもよく、炭化水素基同士が互いに連結して環を形成してもよい。
 m及びnはいずれも1以上の整数であり、mとnとの合計は、Mに配位することができる配位子の最大数以下である。)
[請求項3]
 下記の一般式(3)で表されることを特徴とする化合物。
[化3]


(一般式(3)中、Mは遷移金属原子を表す。
 X1及びX2は互いに独立して窒素原子;酸素原子;硫黄原子;又はリン原子;を表す。
 X3は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
 R1及びR2は互いに独立して、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;アリール基;アラルキル基;又はエーテル基;を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
 R3は、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基;アルケニル基;アルキニル基;アリール基;アラルキル基;脂肪族、芳香族又は環状のアミノ基;ホスフィノ基;ボリル基;アルキルチオ基;アリールチオ基;アルコキシ基;アリールオキシ基;エーテル基;又はイミノ基;を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
 R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25及びR26は互いに独立して、水素原子;ハロゲン原子;又は炭素数1~10個の炭化水素基;を表し、炭化水素基に含まれる少なくとも一つの水素はハロゲン原子で置換されていてもよく、炭化水素基が2個以上の炭素原子を含む場合に当該炭素原子の一部が硫黄原子又は窒素原子で置換されていてもよく、炭化水素基同士が互いに連結して環を形成してもよい。
 m及びnはいずれも1以上の整数であり、mとnとの合計は、Mに配位することができる配位子の最大数以下である。)
[請求項4]
 上記一般式(1)又は(2)中で、Mがイリジウムを表し、X1及びX2が窒素原子を表すことを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の化合物。
[請求項5]
 上記一般式(3)中で、Mがイリジウムを表し、X1及びX2が窒素原子を表し、X3が硫黄原子を表すことを特徴とする請求項3に記載の化合物。
[請求項6]
 請求項1から5の何れか一項に記載の化合物に電圧を印加して、当該化合物を発光させることを特徴とする発光方法。
[請求項7]
 一対の電極と、該一対の電極間に配された発光材料を含む発光層とを含んでなる発光素子であって、
 上記発光層が請求項1から5の何れか一項に記載の化合物を含んでなることを特徴とする発光素子。
[請求項8]
 上記発光層が発光材料として請求項1から5の何れか一項に記載の化合物のみを含んでなることを特徴とする請求項7に記載の発光素子。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

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[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

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[ 図 25]

[ 図 26]

[ 図 27]

[ 図 28]

[ 図 29]

[ 図 30]

[ 図 31]

[ 図 32]

[ 図 33]

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[ 図 35]

[ 図 36]

[ 図 37]

[ 図 38]

[ 図 39]

[ 図 40]

[ 図 41]

[ 図 42]

[ 図 43]

[ 図 44]

[ 図 45]

[ 図 46]

[ 図 47]

[ 図 48]

[ 図 49]

[ 図 50]

[ 図 51]

[ 図 52]