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1. WO2009044811 - 垂直磁気記録媒体の製造方法および磁気記録再生装置

Document

明 細 書

発明の名称 垂直磁気記録媒体の製造方法および磁気記録再生装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

発明の開示

発明が解決しようとする課題

0010  

課題を解決するための手段

0011   0012   0013  

発明の効果

0014  

図面の簡単な説明

0015   0016  

発明を実施するための最良の形態

0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039  

実施例

0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046  

産業上の利用可能性

0047  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

図面

1   2A   2B   2C   3  

明 細 書

垂直磁気記録媒体の製造方法および磁気記録再生装置

技術分野

[0001]
 本発明は、垂直磁気記録媒体の製造方法、およびこの磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置に関するものである。

背景技術

[0002]
 近年、磁気ディスク装置、可撓性ディスク装置、磁気テープ装置等の磁気記録装置の適用範囲は著しく増大され、その重要性が増すと共に、これらの装置に用いられる磁気記録媒体について、その記録密度の著しい向上が図られつつある。特にMRヘッド、およびPRML技術の導入以来、面記録密度の上昇はさらに激しさを増し、近年ではさらにGMRヘッド、TuMRヘッドなども導入され1年に30~40%ものペースで増加を続けている。
[0003]
 このように、磁気記録媒体については今後更に高記録密度化を達成することが要求されており、そのために磁気記録層の高保磁力化と高信号対雑音比(SNR)、高分解能を達成することが要求されている。これまで広く用いられてきた長手磁気記録方式においては、線記録密度が高まるにつれて、磁化の遷移領域の隣接する記録磁区同士がお互いの磁化を弱めあおうとする自己減磁作用が支配的になるため、それを避けるために磁気記録層をどんどん薄くして形状磁気異方性を高めてやる必要がある。
[0004]
 その一方で、磁気記録層の膜厚を薄くしていくと、磁区を保つためのエネルギー障壁の大きさと熱エネルギーの大きさが同レベルに近づいてきて、記録された磁化量が温度の影響によって低減される現象(熱揺らぎ現象)が無視できなくなり、これが線記録密度の限界を決めてしまうといわれている。
[0005]
 このような中、長手磁気記録方式の線記録密度改良に答える技術として最近ではAFC(AnTi FerromagneTic Coupling )媒体が提案され、長手磁気記録で問題となる熱磁気低減の問題を回避しようという努力がなされている。
[0006]
 また、今後一層の面記録密度を実現するための有力な技術として注目されているのが垂直磁気記録技術である。従来の長手磁気記録方式が、媒体を面内方向へ磁化させるのに対し、垂直磁気記録方式では媒体面に垂直な方向に磁化させることを特徴とする。このことにより、長手磁気記録方式で高線記録密度を達成する妨げとなる自己減磁作用の影響を回避することができ、より高密度記録に適していると考えられている。また一定の磁性層膜厚を保つことができるため、長手磁気記録で問題となっている熱磁気低減の影響も比較的少ないと考えられている。
[0007]
 垂直磁気記録媒体は、非磁性基板上にシード層、中間層、磁気記録層、保護層の順に成膜されるのが一般的である。また、保護層まで成膜した上で、表面に潤滑層を塗布する場合が多い。また、多くの場合、軟磁性裏打ち層とよばれる磁性膜がシード層の下に設けられる。中間層は磁気記録層の特性をより高める目的で形成される。またシード層は中間層、磁気記録層の結晶配向を整えると同時に磁性結晶の形状を制御する働きをすると言われている。
[0008]
 優れた特性を有する垂直磁気記録媒体を製造するためには、磁気記録層の磁性結晶粒間の磁気的な交換相互作用を制御することが重要である。交換相互作用が強すぎるとノイズ成分が増加するため記録再生特性が劣化する。一方、交換相互作用が弱すぎると、熱揺らぎ特性の劣化を招く。従来一般的に用いられているグラニュラ構造では、強磁性であるCo合金結晶の周りを非磁性の酸化物や窒化物の結晶粒界が囲んでおり、この粒界により磁性結晶粒間の交換相互作用が制御されている。
 ただし、グラニュラ構造においては、粒界幅が不均一になることで交換相互作用も不均一になってしまうため制御が困難である。そこでグラニュラ構造をとる磁気記録層の上に酸化物や窒化物による粒界をもたない磁気記録層を成膜することで、膜面内方向の交換相互作用を一様にし、記録再生特性を向上させている(特許文献1)。しかしながら、酸化物や窒化物による粒界を持たない磁気記録層も、シード層、中間層、グラニュラ磁気記録層と積層されることでできる表面凹凸により、完全に一様な連続膜ではなく、1つ1つの結晶粒が分離しているものも存在するため、交換相互作用にもばらつきができている。
[0009]
 今後の記録再生特性の向上のため、磁気記録層の膜面内方向の交換相互作用を一様にする、記録再生特性に優れた垂直磁気記録媒体を得る必要がある。この問題を解決しかつ安易に製造が可能な垂直磁気記録媒体が要望されていた。
特許文献1 : 特開2004-310910号公報

発明の開示

発明が解決しようとする課題

[0010]
 本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、グラニュラ磁気記録層上の酸化物や窒化物による粒界をもたない磁気記録層の表面を平坦化し、交換相互作用を一様にすることで、高密度の情報の記録再生が可能な垂直磁気記録媒体の製造方法、および磁気記録再生装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0011]
 上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
(1)非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層、配向制御層、2層以上の磁気記録層、及び保護層を有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、前記非磁性基板側に強磁性の結晶粒と非磁性である酸化物または窒化物の結晶粒界とから構成されるグラニュラ構造を有する第一磁気記録層を成膜する工程、強磁性の結晶粒のみから構成される第二磁気記録層を成膜する工程、第一磁気記録層と第二磁気記録層との間に位置する、第一磁気記録層の表面凹凸を低減する表面凹凸制御層を設ける工程、前記第二磁気記録層の表面粗さRaを2nm未満とするために前記非磁性基板を加熱する工程を含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
(2)前記表面凹凸制御層の膜厚が0.5nm~3nmの範囲内であることを特徴とする(1)に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(3)前記表面凹凸制御層の少なくとも1層が、面心立方構造をとることを特徴とする(1)または(2)に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(4)前記表面凹凸制御層の少なくとも1層が、さらに六方最密構造をとることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(5)前記表面凹凸制御層の少なくとも1層が、面心立方構造を有する元素群のうち少なくとも1種を主成分とし、体心立方構造を有する元素群から選ばれる元素との合金材料からなり、(111)結晶面配向する結晶構造と、面心立方構造と体心立方構造の混合による層状不整格子を併せもつことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[0012]
(6)前記表面凹凸制御層の少なくとも1層が、面心立方構造を有する元素群のうち少なくとも1種を主成分とし、六方最密構造を有する元素群から選ばれる元素との合金材料からなり、(111)結晶面配向する結晶構造と、面心立方構造と六方最密構造の混合による層状不整格子を併せもつことを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(7)前記表面凹凸制御層の少なくとも1層がCo合金であり、Coが40原子%以上含まれ、Crが10原子%以下であることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(8)前記表面凹凸制御層成膜前に、前記非磁性基板を90~170℃の範囲内で加熱することを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(9)前記表面凹凸制御層成膜後に、前記非磁性基板を150~250℃の範囲内で加熱することを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
(10)3秒~10秒の範囲内で前記非磁性基板を加熱することを特徴とする(1)乃至(9)のいずれかに記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[0013]
(11)磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、磁気記録媒体が(1)乃至(10)のいずれかに記載の方法で製造された磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。

発明の効果

[0014]
 本発明によれば、グラニュラ磁気記録層上の酸化物や窒化物による粒界をもたない磁気記録層の表面を平坦化し、交換相互作用を一様にすることで、高記録密度特性に優れた垂直磁気記録媒体を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] 本発明の垂直磁気記録媒体の断面構造を示す図である。
[図2A] 保磁力分散の求め方を説明する説明図である。図2Aは、通常の手法により求めた媒体のM-H曲線またはθ -H曲線を表す図である。これをAループとして図中(a)で表す。
[図2B] 保磁力分散の求め方を説明する説明図である。図2Bは、磁化が飽和した状態から外部磁界を減少させ、Mまたはθ が0となる点aで外部磁界の掃引方向を逆転させ、再び磁化が飽和するまで外部磁界を増加させることにより得られた曲線を表す図である。これをBループとして図中(b)で表す。
[図2C] 保磁力分散の求め方を説明する説明図である。図2Cは、Aループ及びBループから保磁力分散を求める方法を説明する図である。
[図3] 本発明の垂直磁気記録再生装置の構造を示す図である。

符号の説明

[0016]
 1  非磁性基板
 2  軟磁性裏打ち層
 3  シード層
 4  中間層
 5  第一磁気記録層
 6  表面凹凸制御層
 7  第二磁気記録層
 8  保護層
 100  磁気記録媒体
 101  媒体駆動部
 102  磁気ヘッド
 103  ヘッド駆動部
 104  記録再生信号系

発明を実施するための最良の形態

[0017]
 本発明の内容を具体的に説明する。
[0018]
 本発明の製造方法により製造される垂直磁気記録媒体100は、図1に示すように、非磁性基板1上に少なくとも軟磁性裏打ち層2、直上の膜の配向性を制御する配向制御層を構成するシード層3及び中間層4、磁化容易軸(結晶c軸)が非磁性基板に対し主に垂直に配向した第一磁気記録層5、表面凹凸制御層6、第二磁気記録層7、保護層8を有する垂直磁気記録媒体である。またこれらの配向制御層は、今後のさらなる記録密度の向上が期待される、ECC媒体や、ディスクリートトラックメデイア、パターンメディアのような新しい垂直記録媒体においても適用可能である。
[0019]
 本発明の磁気記録媒体に使用される非磁性基板としては、Alを主成分とした例えばAl-Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、アモルファスガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、サファイア、石英、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。中でもAl合金基板や結晶化ガラス、アモルファスガラス等のガラス製基板を用いられることが多い。ガラス基板の場合、ミラーポリッシュ基板やRa<1(Å)のような低Ra基板などが好ましい。軽度であれば、テクスチャが入っていても構わない。
[0020]
 磁気ディスクの製造工程においては、まず非磁性基板の洗浄・乾燥が行われるのが通常であり、本発明においても各層の密着性を確保する見地からもその形成前に洗浄、乾燥を行うことが望ましい。洗浄については、水洗浄だけでなく、エッチング(逆スパッタ)による洗浄も含まれる。また、基板サイズも特に限定しない。
[0021]
 次に、垂直磁気記録媒体の各層について説明する。
[0022]
 軟磁性裏打ち層は多くの垂直磁気記録媒体に設けられている。媒体に信号を記録する際、ヘッドからの記録磁界を導き、磁気記録層に対して記録磁界の垂直成分を効率よく印加する働きをする。材料としてはFeCo系合金、CoZrNb系合金、CoTaZr系合金などいわゆる軟磁気特性を有する材料ならば使用することができる。軟磁性裏打ち層は、アモルファス構造であることが特に好ましい。アモルファス構造とすることで、表面粗さ:Raが大きくなることを防ぎ、ヘッドの浮上量を低減することが可能となり、さらなる高記録密度化が可能となるためである。また、これら材料を用いた軟磁性層単層を軟磁性裏打ち層とする場合だけでなく、軟磁性層2層の間にRuなどの極薄い非磁性薄膜をはさみ、軟磁性層間にAFCを持たせたものも多く用いられるようになっている。軟磁性裏打ち層の総膜厚は20(nm)~120(nm)程度であるが、記録再生特性とOW特性とのバランスにより適宜決定される。
[0023]
 配向制御層は複数層から構成し、非磁性基板側からシード層、中間層と呼ぶ。シード層の働きとしては、中間層や磁気記録層の粒径と結晶配向性の制御にある。シード層の材料としては、Taや面心立方構造の(111)結晶面配向するNi、Ni-Nb、Ni-Ta、Ni-V、Ni-WなどNi合金が好ましい。
また、軟磁性裏打ち層がアモルファス構造をとる場合でも、材料や成膜条件によって表面粗さ:Raが大きくなることがあるため、軟磁性裏打ち層とシード層の間に非磁性のアモルファス層を成膜することでRaを下げ、磁気記録層の配向を向上させることができる。
[0024]
 中間層の材料は、磁気記録層と同様に六方最密構造をとる、RuやRe、またはそれらの合金が好ましい。中間層の働きは、磁気記録層の配向を制御することにあるので、六方最密構造をとらなくても磁気記録層の配向を制御できる材料であれば、何らの制限もなく用いることができる。配向制御層の総厚は記録再生特性と書き込み特性とのバランスから5(nm)以上20(nm)以下であることが好ましい。 また、本発明の磁気記録層では、グラニュラ構造を有する磁気記録層を用いるが、中間層の表面凹凸が大きいと非磁性の酸化物や窒化物の結晶粒界への偏析が促進される。そのため、中間層の成膜時のガス圧が3(Pa)以上であることが好ましく、より好ましくは10(Pa)以上である。
[0025]
 本発明の磁気記録層としては、酸化物や窒化物の粒界を持つ第一磁気記録層、その上に表面凹凸制御層、さらにその上に酸化物や窒化物の粒界を持たない第二磁気記録層の順に積層されている。第一磁気記録層の材料としてはCoCrPt-O、CoCrPtRu-O、CoCrPt-SiO 、CoCrPt-Cr 、CoCrPt-TiO 2、CoCrPt-ZrO 2、CoCrPt-Nb 5、CoCrPt-Ta 5、 CoCrPt-B 3、CoCrPt-WO 2、CoCrPt-WO 3、CoCrPt-RuO などを挙げることができる。酸化物を2種以上添加することも可能である。また、酸化物の代わりに窒化物を用いることも可能である。
[0026]
 第一磁気記録層を形成する磁性結晶粒子の平均粒径は3nm以上12nm以下が好ましい。平均粒界幅は0.3nm以上2.0nm以下であることが好ましい。平均結晶粒径および平均粒界幅は平面TEM観察像を用いて算出することができる。また、第一磁気記録層中に存在する酸化物の総量は3~15(モル%が)好ましい。酸化物の添加量の総量がこの範囲であると、良好なグラニュラ構造を形成することができる。
[0027]
 本発明の表面凹凸制御層は、第一磁気記録層の表面の凹凸をできるだけ小さくし、その上に成膜される第二磁気記録層がより一様な連続膜になることで、第二磁気記録層の面内方向の交換相互作用が一様になるために用いられる。本発明の表面凹凸制御層は、表面の平坦化の効果を上げるため低ガス圧で成膜されることが好ましい。また、表面凹凸を小さくするには、できるだけ表面凹凸制御層の膜厚を厚くすることが効果的である。ただし、表面凹凸制御層の膜厚がある膜厚を超えると、第一磁気記録層と第二磁気記録層間の(垂直方向の)交換相互作用が強磁性的結合から反強磁性的結合に変化してしまい、第二磁気記録層の交換相互作用を一様化する効果が消失してしまう。そこで本発明では、熱エネルギーによる表面凹凸制御層の平坦化の向上のため、非磁性基板加熱のプロセスを導入することが好ましい。
[0028]
 本発明の非磁性基板を加熱する工程は、表面凹凸制御層の平坦化を可能とする限り、特にその工程順序は限定されるものではない。例えば、表面凹凸制御層を成膜する前に非磁性基板を加熱してもよいし、あるいは表面凹凸制御層を成膜した後に非磁性基板を加熱してもよい。また、表面凹凸制御層を成膜する前後において非磁性基板を継続的に加熱することもできる。しかし、加熱温度の制御を容易にして表面凹凸制御層の平坦化を効率的に行うことができる点では、表面凹凸制御層を成膜した後に加熱工程を設けることが好ましい。
[0029]
 非磁性基板の加熱温度に関しては、表面凹凸制御層の成膜後の加熱の場合、加熱直後の基板温度は150~250℃の範囲に制御することが好ましく、より好ましくは180~230℃の範囲に制御する。この範囲よりも低い温度領域では平坦化の効果が期待できず、この範囲よりも高い温度領域では表面凹凸制御層の下の第一磁気記録層にまで熱エネルギーが伝わり、磁性結晶粒と酸化物や窒化物による粒界から形成されるグラニュラ構造が維持できなくなる。また、表面凹凸制御層成膜前の加熱の場合には、第1磁気記録層のグラニュラ構造が壊れる恐れがあることから比較的低い温度範囲に設定することが必要であり、具体的には加熱直後の基板温度を90~170℃の範囲に制御することが好ましい。
[0030]
 また、本発明の非磁性基板を加熱する工程は、アルゴンガスに酸素や窒素ガスを添加した混合ガスを導入して行うことが好ましい。このような混合ガスの導入下で非磁性基板を加熱すると、第1磁気記録層のグラニュラ構造が壊れにくくなる。
[0031]
 本発明の非磁性基板の加熱時間は、3秒~10秒の範囲内とすることが、前述の効果を発現させるために好ましい。
[0032]
 本発明の表面凹凸制御層の材料としては六方最密構造の(002)最密面と等価な(111)結晶面を持つ面心立方構造をとるものが好ましい。また、面心立方構造と六方最密構造の表面凹凸制御層を組み合わせることも好ましい。さらに、面心立方構造を有する元素群のうち少なくとも1種を主成分とし、面心立方構造と六方最密構造または体心立方構造の混合による層状不整格子(積層欠陥)を併せもつ材料も好ましい。その他では、Co合金であり、Coが40(原子%)以上含まれて、Crが10(原子%)以下のものを用いることが可能である。Crが10(原子%)以上含まれるものの場合、加熱によって長手磁気記録媒体のようにCrの粒界への偏析が促進され、平坦化の効果が小さくなる。またこの場合のCo合金は、上記の効果を発現させるために、より好ましくは、Coを40原子%~75原子%の範囲内、Crを0~10原子%の範囲内とする。
[0033]
 本発明の第二磁気記録層は、平坦化された表面凹凸制御層の上に成膜されることで、下の膜の結晶粒の分離度合いによらず連続膜になるため、面内方向の交換相互作用が一様になる。第二磁気記録層の材料としては、CoCrPt、CoCrPtB、CoCrPtB-Xなどが用いられる。また、ECC媒体で用いられるような軟磁性材料も用いることが可能である。
[0034]
 交換相互作用の一様性を評価する方法として、磁化反転の分布を表す保磁力分散:ΔHc/Hcがある。保磁力分散は、VSMもしくはKerr測定器により求めることができる。図2Aに示すように、通常の手法により媒体のM-H曲線またはθ -H曲線を求める。これをAループとし、図2A及び図2Cにおいて符号(a)で示す。図2Bに示すように、磁化が飽和した状態から外部磁界を減少させ、Mまたはθ が0となる点aで外部磁界の掃引方向を逆転させ、再び磁化が飽和するまで外部磁界を増加させる。これにより得られた曲線をBループとし、図面2B及び図2Cにおいて符号(b)で示す。磁化が飽和した状態から外部磁界を減少させる過程で外部磁界が0となる点をbとする。図2Cに示すように、点bと原点との中間点を点cとし、ここからH軸に平行な線を引き、この平行線とAループ(図中(a))との交点をdとし、平行線とBループ(図中(b))との交点をeとし、点dと点eの差をΔHcとする。これを媒体のHcで割ることで保磁力分散:ΔHc/Hcを得る。一様な交換相互作用を得るためにはΔHc/Hcの値として0.25以下になることが好ましい。
[0035]
 以上の各層の成膜には通常DCマグネトロンスパッタリング法またはRFスパッタリング法が用いられる。RFバイアス、DCバイアス、パルスDC、パルスDCバイアス、O ガス、H Oガス、H ガス、N ガスを用いることも可能。そのときのスパッタリングガス圧力は各層ごとに特性が最適になるように適宜決定されるが、一般に0.1~30(Pa)程度の範囲にコントロールされる。媒体の性能を見ながら調整される。
[0036]
 保護層はヘッドと媒体との接触によるダメージから媒体を保護するためのものであり、カーボン膜、SiO 膜などが用いられるが、多くの場合はカーボン膜が用いられる。膜の形成にはスパッタリング法、プラズマCVD法などが用いられるが、近年ではプラズマCVD法が用いられることが多い。マグネトロンプラズマCVD法も可能である。膜厚は1(nm)~10(nm)程度であり、好ましくは2(nm)~6(nm)程度、さらに好ましくは2(nm)~4(nm)である。
[0037]
 図3は、上記垂直磁気記録媒体を用いた垂直磁気記録再生装置の一例を示すものである。図3に示す磁気記録再生装置は、図1に示す構成の磁気記録媒体100と、磁気記録媒体100を回転駆動させる媒体駆動部101と、磁気記録媒体100に情報を記録再生する磁気ヘッド102と、この磁気ヘッド102を磁気記録媒体100に対して相対運動させるヘッド駆動部103と、記録再生信号処理系104とを備えて構成されている。
[0038]
 記録再生信号処理系104は、外部から入力されたデ-タを処理して記録信号を磁気ヘッド102に送り、磁気ヘッド102からの再生信号を処理してデ-タを外部に送ることができるようになっている。
[0039]
 本発明の磁気記録再生装置に用いる磁気ヘッド12には、再生素子として異方性磁気抵抗効果(AMR)を利用したMR(Magneto ResisTance)素子だけでなく、巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用したGMR素子、トンネル効果を利用したTuMR素子などを有した、より高記録密度に適した磁気ヘッドを用いることができる。

実施例

[0040]
 以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
(実施例1、比較例1)
 HD用ガラス基板をセットした真空チャンバをあらかじめ1.0×10 -5(Pa)以下に真空排気した。
[0041]
 次に、この基板上にスパッタリング法を用いて軟磁性裏打ち層としてCo10Ta5Zrを20(nm)、Ruを0.6(nm)、Co10Ta5Zrを20(nm)をガス圧0.6(Pa)のAr雰囲気中で成膜した。次にシード層として、Ni10Wを0.6(Pa)で8(nm)、中間層としてRuをガス圧0.6(Pa)で10(nm)、さらに10(Pa) で10(nm)、Ar雰囲気中でそれぞれ成膜した。
[0042]
 第一磁気記録層として、91(Co15Cr20Pt)-9(SiO ) (mol%)を5(Pa) で10(nm)、Ar雰囲気中で成膜した。表面凹凸制御層としては、Pt、PdとRuの積層構造、Pt50Cr、Pt50Ti、Co30Taをガス圧0.6(Pa)で、0.6、0.6/0.4、1.2、1.2、1.8(nm)成膜した(実施例1-1~5)。その後、基板を200℃、8秒間の条件下で加熱し、第二磁気記録層としてCo20Cr15Pt5Bを7(nm)、ガス圧0.6(Pa)のAr雰囲気中で成膜した。比較例としては、表面凹凸制御層なし(基板加熱ありなし)、Pt、PdとRuの積層構造、Pt50Cr、Pt50Ti、Co30Taをガス圧0.6(Pa)で、0.6、0.6/0.4、1.2、1.2、1.8(nm)成膜後、基板加熱せずに第二磁気記録層を成膜した(比較例1-1~7)。さらに保護層としてC膜を成膜して垂直磁気記録媒体とした。
[0043]
 得られた垂直磁気記録媒体(実施例1-1~5と比較例1-1~7)について、潤滑剤を塗布し、米国GUZIK社製リードライトアナライザ1632及びスピンスタンドS1701MPを用いて、記録再生特性の評価を行った。その後、Kerr測定装置により静磁気特性の評価をおこなった。また、断面TEM画像から、第二磁気記録層の表面凹凸を観察した。
[0044]
 それぞれの測定から実施例と比較例について、高信号雑音比:SNR、保磁力:Hc、逆磁区核形成磁界:-Hn、ΔHc/Hc、第二磁気記録層表面のRaの結果を表1に一覧表にして示した。なお、表1中では表面凹凸制御層の結晶構造について、面心立方構造をfcc、六方最密構造をhcp、体心立方構造をbccと略記した。
[0045]
 表1より、実施例ではΔHc/Hc、Raともに比較例よりも小さな値が得られており、平坦化により交換相互作用の分散が抑えられたことでSNRが向上していると思われる。凹凸制御層がない場合の加熱ありの条件が加熱なしの条件よりもRaが小さいにも拘らずΔHc/Hcが改善しないのは、第二磁気記録層であるCoCrPtBのCrが加熱により偏析することで、交換相互作用の分散が大きくなったためと考えられる。
[0046]
[表1]


産業上の利用可能性

[0047]
 本発明による垂直磁気記録媒体の製造方法および該磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置は、情報技術の分野において利用可能であり、高い産業上の利用可能性を有する。

請求の範囲

[1]
 非磁性基板上に、少なくとも裏打ち層、配向制御層、2層以上の磁気記録層、及び保護層を有する垂直磁気記録媒体の製造方法であって、前記非磁性基板側に強磁性の結晶粒と非磁性である酸化物または窒化物の結晶粒界とから構成されるグラニュラ構造を有する第一磁気記録層を成膜する工程、強磁性の結晶粒のみから構成される第二磁気記録層を成膜する工程、第一磁気記録層と第二磁気記録層との間に位置する、第一磁気記録層の表面凹凸を低減する表面凹凸制御層を設ける工程、前記第二磁気記録層の表面粗さRaを2nm未満とするために前記非磁性基板を加熱する工程を含むことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
[2]
 前記表面凹凸制御層の膜厚が0.5nm~3nmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[3]
 前記表面凹凸制御層の少なくとも1層が、面心立方構造をとることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[4]
 前記表面凹凸制御層の少なくとも1層が、さらに六方最密構造をとることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[5]
 前記表面凹凸制御層の少なくとも1層が、面心立方構造を有する元素群のうち少なくとも1種を主成分とし、体心立方構造を有する元素群から選ばれる元素との合金材料からなり、(111)結晶面配向する結晶構造と、面心立方構造と体心立方構造の混合による層状不整格子を併せもつことを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[6]
 前記表面凹凸制御層の少なくとも1層が、面心立方構造を有する元素群のうち少なくとも1種を主成分とし、六方最密構造を有する元素群から選ばれる元素との合金材料からなり、(111)結晶面配向する結晶構造と、面心立方構造と六方最密構造の混合による層状不整格子を併せもつことを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[7]
 前記表面凹凸制御層の少なくとも1層がCo合金であり、Coが40原子%以上含まれ、Crが10原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[8]
 前記表面凹凸制御層成膜前に、前記非磁性基板を90~170℃の範囲内で加熱することを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[9]
 前記表面凹凸制御層成膜後に、前記非磁性基板を150~250℃の範囲内で加熱することを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[10]
 3秒~10秒の範囲内で前記非磁性基板を加熱することを特徴とする請求項9に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
[11]
 磁気記録媒体と、該磁気記録媒体に情報を記録再生する磁気ヘッドとを備えた磁気記録再生装置であって、磁気記録媒体が請求項1に記載の方法で製造された磁気記録媒体であることを特徴とする磁気記録再生装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2A]

[ 図 2B]

[ 図 2C]

[ 図 3]