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1. WO2008120747 - 医療用熱交換器及び人工心肺装置

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明 細 書

発明の名称 医療用熱交換器及び人工心肺装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013  

発明の開示

発明が解決しようとする課題

0014   0015   0016  

課題を解決するための手段

0017   0018   0019   0020  

発明の効果

0021  

図面の簡単な説明

0022   0023  

発明を実施するための最良の形態

0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069  

産業上の利用可能性

0070  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

明 細 書

医療用熱交換器及び人工心肺装置

技術分野

[0001]
 本発明は、熱交換器、特に人工心肺装置等の医療機器に用いるのに適した医療用熱交換器、及びそれを備えた人工肺装置に関する。

背景技術

[0002]
 心臓手術等においては、手術中の患者の呼吸機能及び循環機能を代行するために、人工心肺装置が使用されている。また、手術中は患者の酸素消費量を減少させるため、患者の体温を低下させて、それを維持する必要がある。このため、人工心肺装置は、熱交換部を備え、これによって患者から取り出した血液の温度調整を行っている。
[0003]
 ここで、図14を用いて、従来例の人工心肺装置の構成を説明する。図14は、従来例の人工心肺装置の概略構成を示す断面図である。この人工心肺装置は、血液の温度調整を行う熱交換部(熱交換器)130と、ガス交換部(人工肺)131とを備えている。
[0004]
 熱交換部130とガス交換部131とは、ハウジング122に収容されている。ハウジング122の熱交換部130に対応する部分には、熱交換用の冷温水を導入するための冷温水供給ポート123と、冷温水を排出するための冷温水排出ポート124とが設けられている。ハウジング122のガス交換部131に対応する部分には、酸素ガスを導入するためガス供給ポート125と、血液中の二酸化炭素等を排出するためのガス排出ポート126とが設けられている。
[0005]
 熱交換部130は、ハウジング102の内部に、互いに並列に配置された複数本の金属製の管体101を備えている。各管体101は、冷温水供給ポート123と冷温水排出ポート124とに連通し、その内部には冷温水が流される。また、ハウジング102の上面には、患者から脱血した血液を導入するための導入口106が設けられておいる。熱交換部130によって熱交換された血液は、ガス交換部131へと流れる。
[0006]
 また、熱交換部130の内部には、シール部材103(形成された領域にドットによるハッチングを施すことによって図示)が設けられている。シール部材103は、熱交換部130内部を管体101の表面と接触しながら流れる血液をシールすることにより、導入口106から導入された血液の血液流路108を形成する。シール部材103の形成は、複数本の管体101の両側の開口端が塞がれないように、管体間に樹脂材料を充填することによって行われている。
[0007]
 ガス交換部131は、中空糸シート105を複数枚積層することに形成されている。中空糸シート105は、複数本の中空糸を横糸によって束ねて形成されている。ガス交換部131の内部にもシール部材104(形成された領域にドットによるハッチングを施すことによって図示)が設けられている。シール部材104は、ガス交換部131の内部を、中空糸シート105を構成する中空糸の表面と接触しながら流れる血液をシールすることにより、ガス交換部131の内部に血液流路113を形成する。
[0008]
 シール部材104の形成は、中空糸シート105を構成する中空糸の両側の開口端が塞がれないように、中空糸間に樹脂材料を充填することによって行われている。ガス供給ポート125とガス排出ポート126とは、中空糸シート105を構成する中空糸によって連通している。
[0009]
 このような構成により、熱交換部130の血液流路108を通って熱交換された血液は、ガス交換部131の血液流路113へと流れ込み、そこで、中空糸に接触する。このとき、血液には、中空糸を流れる酸素ガスが取り込まれる。また、酸素ガスが取り込まれた血液は、ハウジング122に設けられた血液排出口107から、外部に排出され、患者に返血される。一方、血液中の二酸化炭素は、中空糸膜105に取り込まれ、その後、ガス排出ポート126から人工心肺装置の外部に排出される。
[0010]
 また、人工心肺装置を使用する場合は、予め、血液回路から空気や異物を除去し、ガス交換部131の中空糸を液体と馴染ませるために、生理食塩水等のプライミング液でプライミングが行われ、その後、血液循環が行われる。但し、プライミングを行っていても、血液循環中に血液に空気が混入することはあるため、人工心肺装置に空気を除去するための機能を備えることが求められている。また、このような機能を備えていれば、短期間でプライミングを終了できるため、緊急医療において有効となる。このため、従来から、空気を除去する機能を備えた種々の人工心肺装置が提案されている(特許文献1~特許文献3参照。)。
[0011]
 例えば、特許文献1に開示の人工心肺装置では、熱交換部の管体として中空糸が用いられている。中空糸の側壁は、多孔質膜と、その外側を覆う薄いシリコンゴムの膜とで形成されており、気体に対してのみ透過性を有している。また、この人工心肺装置では、中空糸の内側を流れる冷温水の圧力が、中空糸の外側を流れる血液の圧力よりも低く設定される。それにより、血液中の空気は、中空糸の側壁から中空糸の内部に取り込まれ、血液から分離される。
[0012]
 また、特許文献2及び3に開示された人工心肺装置では、熱交換部は複数本の金属製の管体を有しているが、図14の例と異なり、血液が管体内部を流れ、冷温水が管体の表面を流れるように構成されている。また、熱交換部は、管体の入口側に、血液を一時的に貯留させる空間と、血液を旋回させながら空間内に流入させる流入口とを備えている。
[0013]
 特許文献2及び3の人工心肺装置の熱交換部においては、血液の旋回によって生じた遠心力により血液と空気とが分離され、空気が除去された血液のみが熱交換部の管体へと送られる。更に、特許文献3においては、熱交換部は、管体の出口側にも血液を一時的に貯留させる空間を備え、この空間の壁面には外部と連通できる弁が設けられている。特許文献3の熱交換部によれば、空気の除去がより確実に行われる。
特許文献1 : 特開平8-24333号公報
特許文献3 : 特開平11-47269号公報
特許文献2 : 特公平6-14965号公報

発明の開示

発明が解決しようとする課題

[0014]
 特許文献1に開示された人工心肺装置においては、熱交換部を構成する管体に、熱交換と空気除去との両方を行わせる必要がある。このため、空気除去性能と、熱交換性能との両方を同時に向上させることが難しく、空気除去性能を重視した場合は、熱交換性能が低下してしまう。また、反対に、熱交換性能を重視した場合は、空気除去性能が低下してしまう。
[0015]
 また、特許文献2及び3の人工心肺装置においては、血液を細い管体の内部に流す必要がある。このため、管体内部で、血栓が生成され易く、それによって熱交換部における熱交換率も低下してしまうという問題がある。また、特許文献2及び3の人工心肺装置では、構造が複雑となるため、製造コストが高いという問題もある。
[0016]
 本発明は、上記問題を解消し、熱交換率の低下を抑制しつつ、空気の除去を行い得る医療用熱交換器及び人工心肺装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0017]
 本発明の医療用熱交換器は、内腔に熱媒体液を流通させる複数本の管体と、前記管体の各々の外側を通過する血液流路を管軸方向における中央部に形成し、両端は露出させて前記複数本の管体を封止したシール部材と、前記シール部材により封止された前記管体を収容したハウジングとを備える。
[0018]
 上記課題を解決するため、疎水性及び通気性を有する複数本の中空糸によって形成され、前記ハウジング内における前記血液流路の入口側または出口側の少なくとも一方に、前記血液流路を流れる液体が通過するように配置された中空糸膜を更に備える。前記ハウジングは、前記中空糸膜を形成する前記中空糸の各々の開口端を外部に露出させる開口部を備え、前記開口部の内側と前記中空糸との間の隙間はシールされている。
[0019]
 本発明の人工心肺装置は、第1血液流路を有する熱交換部と、第2血液流路を有するガス交換部とを備える。前記熱交換部では前記第1血液流路を流れる血液に対する熱交換を行い、前記ガス交換部では前記第2血液流路を流れる血液に対するガス交換を行うように構成される。前記第1血液流路と前記第2血液流路とは連通して、両血液流路を通して液体が流通可能である。前記熱交換部は、内腔に熱媒体液を流通させる複数本の管体と、前記管体の各々の外側を通過する血液流路を管軸方向における中央部に形成し、両端は露出させて前記複数本の管体を封止した第1シール部材と、前記第1シール部材により封止された前記管体を収容したハウジングとを備える。前記ガス交換部は、疎水性及び通気性を有する複数本の中空糸によって形成された第1中空糸膜と、前記複数本の中空糸をその外表面に接触して横断するように前記第2血液流路を形成して前記第1中空糸膜を封止し前記中空糸の両端は露出させた第2シール部材とを備える。
[0020]
 上記課題を解決するため、前記熱交換部は、疎水性及び通気性を有する複数本の中空糸によって形成され、前記ハウジング内における前記第1血液流路の入口側または出口側の少なくとも一方に、前記第1血液流路を流れる液体が通過するように配置された第2中空糸膜を更に備える。前記ハウジングは、前記第2中空糸膜を形成する前記中空糸の各々の開口端を外部に露出させる開口部を備え、前記開口部の内側と前記中空糸との間の隙間はシールされている。

発明の効果

[0021]
 上記構成の医療用熱交換器は、血液流路の入口側または出口側の少なくとも一方に設けられた中空糸膜により、熱交換器内部の空気や、熱交換対象となる流体(例えば、血液等)に混入している空気を外部に放出することができる。その結果、熱交換性能を維持して、十分な空気除去性能を得ることができ、熱交換対象となる流体を旋回させる必要もない。

図面の簡単な説明

[0022]
[図1] 図1は、本発明の実施の形態1における医療用熱交換器の概略構成を示す斜視図である。
[図2] 図2は、同熱交換器を備えた人工心肺装置の概略構成を示す断面図である。
[図3] 図3は、同熱交換器にキャップ部材を設けた人工心肺装置の外観を示す斜視図である。
[図4] 図4は、キャップ部材を取り付けた状態の同熱交換器を示す断面斜視図である。
[図5] 図5は、同熱交換器に別のキャップ部材を取り付けた状態を示す断面斜視図である。
[図6] 図6は、本発明の実施の形態2における医療用熱交換器の概略構成を示す斜視図である。
[図7] 図7は、同熱交換器を備えた人工心肺装置の概略構成を示す断面図である。
[図8] 図8は、同熱交換器にキャップ部材を設けた人工心肺装置の外観を示す斜視図である。
[図9] 図9は、本発明の実施の形態3における医療用熱交換器の概略構成を示す斜視図である。
[図10] 図10は、同医療用熱交換器を備えた人工心肺装置の概略構成を示す断面図である。
[図11] 図11は、同医療用熱交換器にキャップ部材を設けた人工心肺装置の外観を示す斜視図である。
[図12] 図12は、キャップ部材を取り付けた状態の同熱交換器を示す断面斜視図である。
[図13] 図13は、同熱交換器に別のキャップ部材を取り付けた状態を示す断面斜視図である。
[図14] 図14は、従来例の人工心肺装置の概略構成を示す断面図である。

符号の説明

[0023]
 1A、1B、1C 熱交換器
 2 管体
 3 中空糸膜
 4 中空糸
 5 ハウジング
 5a、5b 開口部
 6 シール部材
 7 第1血液流路
 8 導入口
 9 排出口
 10、11 中空糸用の開口部
 12 カバー
 13 冷温水供給口
 14 カバー
 15 冷温水排出口
 16 キャップ部材
 17 本体
 17a 貫通孔
 17b 内部空間
 18 シート部材
 19 チューブ
 20 ガス交換部
 21 中空糸層
 22 中空糸
 23 血液の流路
 24 シール部材
 25 ハウジング
 26 導入口
 27 排出口
 28 カバー
 29 ガス供給口
 30 カバー
 31 ガス排出口
 32、33 ハウジング
 34、39 キャップ部材
 35、36 キャップ
 35a、36a 空間
 35b、36b 貫通孔
 37 ブリッジ部材
 38 シート部材
 40 チューブ
 40a 連結チューブ
 40b 通気チューブ

発明を実施するための最良の形態

[0024]
 本発明は、上記構成を基本として以下のような態様をとることができる。
[0025]
 すなわち、上記構成の医療用熱交換器、または人工心肺装置の前記熱交換部において、前記ハウジングの前記開口部に取り付けられ、且つ、前記開口部を封止するキャップ部材を更に備えていることが好ましい。それにより、プライミング終了後に開口部をキャップ部材で封止すれば、中空糸膜を構成する中空糸内部が開放状態でなくなるため、中空糸膜における血漿漏出の発生が抑制される。この態様は、空気の除去が終了し、空気の混入よりも血漿漏出の発生が問題となる状況において有効である。
[0026]
 また、上記構成の医療用熱交換器、または人工心肺装置において、前記中空糸膜として、複数本の中空糸をシート状に束ねて形成した中空糸シートを複数枚積み重ねて形成したものを用いることができる。また、この場合、前記中空糸が、ポリプロピレンの多孔質体によって形成され、前記中空糸膜が、3枚~5枚の前記中空糸シートを積み重ねて形成されているのが良い。
[0027]
 以下、本発明の実施の形態における医療用熱交換器及び人工心肺装置について、図面を参照して説明する。
[0028]
 (実施の形態1)
 本発明の実施の形態1における医療用熱交換器及び人工心肺装置の構成について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施の形態における熱交換器1Aの概略構成を示す斜視図である。図2は、本実施の形態における熱交換器1Aを備えた人工心肺装置の概略構成を示す断面図である。
[0029]
 図1においては、熱交換器1Aの一部は、断面によって示されている。図1に示す熱交換器1Aは、患者から脱血した血液の温度調整に用いられ、図2に示す人工心肺装置の熱交換部として機能する。
[0030]
 図1及び図2に示すように、熱交換器1Aは、図14に示した従来の医療用の熱交換器と同様に、複数本の管体2と、管体2を収容するハウジング5と、シール部材6とを備えている。複数本の管体2は、ステンレス等の金属によって形成されており、その内部には、温度調整用の冷温水が流される。シール部材6はハウジング5の内部に、複数本の管体2の各々の外側を通過する第1血液流路7を管軸方向における中央部に形成し、両端は露出させて、複数本の管体6を封止している。血液やプライミング液等は、管体2の内腔を流れる冷温水からはシール部材6により隔離され、第1血液流路7を複数本の管体2の外表面に接触しながら流れる。
[0031]
 熱交換器1Aの第1血液流路7には、主に血液が流されるが、その他、プライミング液や薬剤が流される場合もある。また、本実施の形態では、ハウジング5は、第1血液流路7に対応する位置に、血液をハウジング5内に導入するための導入口8と、熱交換後の血液を排出するための排出口9とを備えている。更に、ハウジング5は、管体2の開口端に対向する位置に二つの開口部5a及び5bを備えている。シール部材6は、開口部5a及び5b付近において、管体2の端部間の隙間に樹脂材料を充填することによって形成されている。
[0032]
 管体2の一方の開口端が露出している開口部5aは、冷温水を導入するための冷温水供給口13が設けられたカバー12によって塞がれている。管体2の他方の開口端が露出している他方の開口部5b(図2参照)は、冷温水を排出するための冷温水排出口15が設けられたカバー14によって塞がれている。
[0033]
 また、図2に示すように、本実施の形態における人工心肺装置は、図1に示した熱交換器1Aからなる熱交換部と、ガス交換部20とを備えている。第1血液流路7から流出した血液は、排出口9から排出され、その後、ガス交換部20(図2参照)に流入する。ガス交換部20は、図14に示した従来例の人工心肺装置のガス交換部と同様に構成されており、中空糸層21を備えている。中空糸層21は、複数本の中空糸22を束ねて形成した中空糸シートを、複数枚重ね合わせて構成されており、ハウジング25の内部に収容されている。
[0034]
 また、ガス交換部20のハウジング25の内部にも、シール部材24が設けられている。シール部材24の形成は、各中空糸22の両側の開口端が塞がれないように、中空糸22間に樹脂材料を充填することによって行われている。シール部材24によって、ガス交換部20の内部にも、第2血液流路23が形成される。この第2血液流路は、熱交換器1Aの第1血液流路7と連通している。
[0035]
 更に、ハウジング25の各中空糸22の両側の開口端に対向する部分には、一対の開口部が設けられている。また、このうち、一方の開口部は、ガス供給口29が設けられたカバー28によって塞がれており、他方の開口部は、ガス排出口31が設けられたカバー30によって塞がられている。
[0036]
 図1及び図2に示すように、本実施の形態における熱交換器1A及び人工心肺装置は、上述のように、基本構成は従来例と同様である。但し、本実施の形態においては、熱交換器1Aは、ハウジング5内の第1血液流路7の出口側に、疎水性及び通気性を有する複数本の中空糸4によって形成された中空糸膜3を備えている点で、従来例の熱交換器と異なっている。第1血液流路7から流出した血液は、第1血液流路7の出口側の中空糸膜3を通過した後に、ガス交換部20に流入する。
[0037]
 更に、熱交換器1Aにおいて、ハウジング5は、中空糸膜3を形成する各中空糸4の開口端を外部に露出させるための開口部10を備えている。図示されていない中空糸4の開口端も外部に露出させるため、図示されている部分の反対側にも開口部10が設けられている。また、各中空糸4の両方の端部の外面と、開口部10の内面との間にできる隙間には樹脂材料が充填されており、血液が開口部10から漏洩しないようになっている。
[0038]
 このような構成により、本実施の形態によれば、導入口8から血液等の流体を導入すると、熱交換器1Aのハウジング5内に存在している空気や、導入された流体に混入している空気(気泡)は、中空糸膜3に送られ、外部に放出される。例えば、生理食塩水等のプライミング液を流入させるプライミング時において、プライミング液によって押し出された空気は、中空糸膜3によって、熱交換器1Aの外部に放出される。この結果、プライミング操作の簡便化及び迅速化が図られる。
[0039]
 従って、本実施の形態では、熱交換用の管体2に空気除去機能を付加する必要がなく、管体2として中空糸を用いる必要は無い。管体2としては、熱伝導率の高い金属製のパイプを利用できる。更に、本実施の形態では、熱交換対象となる血液を旋回させる必要もない。従って、本実施の形態によれば、熱交換率の低下を抑制できる。
[0040]
 中空糸膜3は、複数本の中空糸4を束ねて中空糸シートを形成し、その中空糸シートを複数枚積み重ねて形成されている。中空糸シートの積み重ね枚数は、流入抵抗や空気除去能力を考慮して適宜設定できる。例えば、熱交換器1Aにおけるプライミング量の増加を抑える点からは、3枚~5枚程度とするのが良い。
[0041]
 中空糸膜3は、中空糸シートを積み重ねることによって形成されている点で、ガス交換部20を構成する中空糸層21と同様の積層構造を有する。本実施の形態では、中空糸層21は、1枚~20枚、好ましくは3枚~5枚の中空糸シートを備えている。
[0042]
 中空糸膜3を構成する中空糸4は、通気性及び疎水性を備えたもの、つまり、気体のみを通し、液体を通さない側壁を備えたものであれば良い。例えば、中空糸膜3を構成する中空糸4は、ガス交換部20を構成する中空糸22と同様のものであっても良い。具体的には、中空糸4としては、ポリプロピレンの多孔質体、又はポリメチルペンテンの多孔質体によって形成された中空糸が挙げられる。
[0043]
 上記2種類の中空糸のうち、空気除去能力の点からは、ポリプロピレンの多孔質体によって形成された中空糸が好ましい。一方、血液との長期にわたる接触が予想されるのであれば、ポリメチルペンテンの多孔質体によって形成された中空糸が好ましい。ポリメチルペンテンを用いれば、中空糸4の表面に「スキン層」と呼ばれる孔が緻密な層を形成でき、長期に渡って血液と接触することによって生じる結晶漏出の発生を抑制できる。
[0044]
 なお、プライミング操作が終了した後に、熱交換器1A内に血液が導入されるが、その際に、血液によって中空糸4の疎水性が失われ、その結果、血漿漏出が生じる場合がある。従って、本実施の形態においては、血漿漏出に対処する手段が講じられることが好ましい。
[0045]
 血漿漏出とは、中空糸の表面の疎水性が、血液中のタンパク質によって失われ、その後、中空糸4の内部に血液が滲み込み、血液が漏れることをいう。本実施の形態では、熱交換器1Aの中空糸膜3を構成する中空糸4の内部の圧力は、空気除去の必要性から、流入する血液の圧力よりも低く設定される(大気圧)。従って、中空糸4においては、ガス交換部20の中空糸層21を構成する中空糸21に比べて、血漿漏出が生じ易い。なお、プライミング液のようにタンパク質を含まない液体を流す場合は、中空糸の表面の疎水性が失われることはなく、血漿漏出のような問題が生じることはない。
[0046]
 このため、熱交換器1Aは、以下の図3~図5に示すキャップ部材16を備えているのが好ましい。キャップ部材16は、特に、熱交換器1Aの中空糸膜3が、ポリプロピレンの多孔質体の中空糸によって形成されていて、血漿漏出が発生しやすい場合に有効である。キャップ部材16による血漿漏出の抑制について図3~図5を用いて説明する。
[0047]
 図3は、キャップ部材16を備えた人工心肺装置の外観を示す斜視図である。図4は、図3に示すキャップ部材16を取り付けた状態の熱交換器を示す断面斜視図である。図5は、他の形態のキャップ部材16を取り付けた状態の熱交換器を示す断面斜視図である。
[0048]
 図3及び図4に示すように、キャップ部材16は、熱交換器1Aのハウジング5に設けられた開口部10に、それを塞ぐようにして取り付けられる。本実施の形態においては、キャップ部材16の取り付けは、プライミングが終了した後に行われる。
[0049]
 キャップ部材16は、開口部10の形状に合わせて形成された蓋状の本体17と、本体17の内側に配置されたシート部材18とを備えている。シート部材18は、シリコンゴム等の弾性材料によって形成されている。従って、キャップ部材16を開口部に取り付けると、中空糸膜3を構成する中空糸4の開口端は、シート部材18によって密閉状態となり、開口部10は封止された状態となる。
[0050]
 このため、キャップ部材16を取り付けると、中空糸4は、開放状態でなくなり、中空糸4における流体の出入りは困難な状態となる。この結果、中空糸4が血液に長期にわたって接触し、その疎水性が失われたとしても、血液は、中空糸4の側壁の孔からその内部に侵入できず、血漿漏出は抑制される。
[0051]
 キャップ部材16は、図5に示す態様のものであっても良い。図5に示す例では、キャップ部材は、シート部材18(図4参照)の代わりに、チューブ19を備えている。チューブ19は、本体17に設けられた貫通孔17aによって、本体17の内側の空間17bと連通している。
[0052]
 図5に示すキャップ部材16を単に配置しただけの場合、開口部10は封止された状態になく、中空糸4は、キャップ部材16が配置されていない場合と同様に、チューブ19を通して大気に対して開放状態にある。しかし、図5に示すように、チューブ19をクランプし、チューブ19を閉塞させると、開口部10は封止された状態となり、中空糸4は、開放状態でなくなる。この場合も、中空糸4における流体の出入りは困難な状態となり、血漿漏出は抑制される。図5に示すキャップ部材16を用いれば、利用者は、開口部10の封止及び非封止を簡単な操作で行うことができる。
[0053]
 (実施の形態2)
 本発明の実施の形態2における熱交換器及び人工心肺装置の構成について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、本実施の形態における熱交換器1Bの概略構成を示す斜視図である。図7は、本実施の形態における熱交換器1Bを備えた人工心肺装置の概略構成を示す断面図である。図6及び図7において、図1及び2に示した実施の形態1における熱交換器及び人工心肺装置の要素と同一の要素については、同一の参照符号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
[0054]
 本実施の形態の熱交換器1Bにおいては、中空糸膜3が、ハウジング32内における第1血液流路7の入口側に配置されている。ハウジング32は、中空糸膜3を形成する各中空糸4の開口端を外部に露出させるための開口部11を備えている。中空糸膜3の構成、及び中空糸膜3を収容するためのハウジング32の構成は、図1及び図2に示した実施の形態1の場合と同様である。導入口8からハウジング32内に導入された血液は、入口側の中空糸膜3を通過した後に第1血液流路7に流入する。
[0055]
 このような構成により、導入口8から血液等の流体を導入すると、熱交換器1Bのハウジング32内に存在している空気や、導入された流体に混入している空気(気泡)は、先ず、中空糸膜3に接触し、これを介して外部に排出される。従って、例えば、生理食塩水等のプライミング液を流入させるプライミング時において、中空糸膜3によって、予め熱交換器1Bの内部から空気を除去することができる。この結果、プライミング操作の簡便化及び迅速化が図られる。また、熱交換器1Bは、プライミング終了後の血液循環中において、血液に空気が混入している場合にも有効であり、混入している空気を排除することができる。
[0056]
 本実施の形態において、中空糸膜3は、実施の形態1と同様に構成することができる。また、図3~図5に示した実施の形態1と同様の、血漿漏出に対処する手段が講じられることが好ましい。すなわち、熱交換器1Bは、図8に示すキャップ部材17を備えているのが好ましい。図8は、本実施の形態における、キャップ部材を備えた人工心肺装置の外観を示す斜視図である。図8において、図3に示した熱交換器1Aの要素と同一の要素については、同一の参照符号を付して、説明を簡略化する。
[0057]
 キャップ部材17を取り付けた状態の熱交換器1Bは、図4に示したキャップ部材を取り付けた状態の熱交換器1Aと同様であり、従って、図4も参照して説明する。図8及び図4に示すように、キャップ部材16は、熱交換器1Bのハウジング32に設けられた開口部10に、それを塞ぐようにして取り付けられる。本実施の形態においては、キャップ部材16の取付は、プライミングが終了した後に行われる。
[0058]
 キャップ部材16は、図5に示した態様のものであっても良い。図5に示した例では、キャップ部材は、シート部材18(図4参照)の代わりに、チューブ19を備えている。図5に示すキャップ部材16を用いれば、利用者は、開口部10の封止及び非封止を簡単な操作で行うことができる。
[0059]
 (実施の形態3)
 本発明の実施の形態3における熱交換器及び人工心肺装置の構成について、図9及び図10を用いて説明する。図9は、本実施の形態における熱交換器1Cの概略構成を示す斜視図である。図10は、本実施の形態における熱交換器1Cを備えた人工心肺装置の概略構成を示す断面図である。なお、図9及び図10において、図1及び図2に示した実施の形態1、あるいは図6及び図7に示した実施の形態2における熱交換器1A、1B及び人工心肺装置の要素と同一の要素については、同一の参照符号を付して、説明を簡略化する。
[0060]
 図9及び図10に示すように、本実施の形態における熱交換器1Cにおいては、中空糸膜3は、ハウジング33内における第1血液流路7の入口側及び出口側の両方に配置されている。また、ハウジング33は、入口側及び出口側に配置された各中空糸4の開口端を外部に露出させるために、開口部10及び開口部11を備えている。
[0061]
 本実施の形態においては、導入口8からハウジング5内に導入された血液は、入口側の中空糸膜3を通過して第1血液流路7に流入した後、出口側の中空糸膜3を通過してから、排出口9からガス交換部20(図10参照)内へと流入する。
[0062]
 このように、本実施の形態では、熱交換器1C内の第1血液流路7の入口側と出口側との両方で、空気の除去が行われる。本実施の形態は、特に、プライミング時において、熱交換器1Cの内部に貯留している空気を除去するのに有効である。また、プライミング後においては、流体中に混入された気泡の除去がより確実に行われることとなる。
[0063]
 図9及び図10に示すように、本実施の形態においては、入口側の中空糸膜3と、出口側の中空糸膜3とは、同一の中空糸膜であるが、これに限定されるものではない。本実施の形態では、中空糸の形成材料や、中空糸シートの枚数等が、入口側と出口側とで異なる態様であっても良い。
[0064]
 また、本実施の形態3においても、熱交換器1C及び人工心肺装置は、実施の形態1及び2の場合と同様に、キャップ部材を備えているのが好ましい。本実施の形態において用いられるキャップ部材について図11~図13を用いて説明する。
[0065]
 図11は、本実施の形態における、キャップ部材34を備えた人工心肺装置の外観を示す斜視図である。図12は、キャップ部材34を取り付けた状態の熱交換器を示す断面斜視図である。図13は、他の態様のキャップ部材39を取り付けた状態の熱交換器を示す断面斜視図である。
[0066]
 図11及び図12に示すキャップ部材34は、図3及び図4に示したキャップ部材16を2つ用意し、これらを連結することによって形成されている。具体的には、キャップ部材34は、開口部10及び11のそれぞれ取り付けられるキャップ35及び36を備えている。キャップ35とキャップ36とは、ブリッジ部材37によって連結されている。また、キャップ35及び36のそれぞれの内部には、シート部材38が配置されている。
[0067]
 従って、図12に示すように、ハウジング33の開口部10及び11に整合するようにシート部材38を取り付けると、両方の中空糸膜3において各中空糸は開放状態でなくなる。よって、本実施の形態においても、両方の中空糸膜3の各中空糸4が血液に長期にわたって接触し、その疎水性が失われたとしても、血液は、中空糸4の側壁の孔からその内部に侵入できず、血漿漏出は抑制される。
[0068]
 また、本実施の形態においては、図13に示す態様のキャップ部材39を用いることもできる。図13に示すキャップ部材39は、図5に示したキャップ部材16と同様に、シート部材38を備えておらず、代わりに、チューブ40を備えている。チューブ40は、キャップ35の内側の空間35aとキャップ36の内側の空間36aとつなぐ連結チューブ40aと、連結チューブ40aから分岐した通気チューブ40bとを備えている。通気チューブ40bの開口端は開放状態となっている。
[0069]
 従って、図13に示す態様においても、図5に示した態様と同様に、通気チューブ40bをクランプし、通気チューブ40bを閉塞させると、開口部10は封止された状態となり、中空糸4は、開放状態でなくなる。この場合も、中空糸4における流体の出入りは困難な状態となり、血漿漏出は抑制される。図13に示すキャップ部材39を用いれば、図5に示したキャップ部材16の場合と同様に、利用者は、開口部10及び11の封止及び非封止を簡単な操作で行うことができる。

産業上の利用可能性

[0070]
 本発明の医療用熱交換器によれば、熱交換率を低下させることなく、空気除去機能を付与することができ、人工心肺装置用の熱交換器として有用である。

請求の範囲

[1]
 内腔に熱媒体液を流通させる複数本の管体と、
 前記管体の各々の外側を通過する血液流路を管軸方向における中央部に形成し、両端は露出させて前記複数本の管体を封止したシール部材と、
 前記シール部材により封止された前記管体を収容したハウジングとを備えた医療用熱交換器において、
 疎水性及び通気性を有する複数本の中空糸によって形成され、前記ハウジング内における前記血液流路の入口側または出口側の少なくとも一方に、前記血液流路を流れる液体が通過するように配置された中空糸膜を更に備え、
 前記ハウジングは、前記中空糸膜を形成する前記中空糸の各々の開口端を外部に露出させる開口部を備え、前記開口部の内側と前記中空糸との間の隙間はシールされていることを特徴とする医療用熱交換器。
[2]
 前記ハウジングの前記開口部に取り付けられ、且つ、前記開口部を封止するキャップ部材を更に備えている請求項1に記載の医療用熱交換器。
[3]
 前記中空糸膜が、複数本の中空糸をシート状に束ねて形成した中空糸シートを複数枚積み重ねて形成されている請求項1に記載の医療用熱交換器。
[4]
 前記中空糸は、ポリプロピレンの多孔質体によって形成され、
 前記中空糸膜は、3枚~5枚の前記中空糸シートを積み重ねて形成されている請求項3に記載の医療用熱交換器。
[5]
 第1血液流路を有する熱交換部と、第2血液流路を有するガス交換部とを備え、前記熱交換部では前記第1血液流路を流れる血液に対する熱交換を行い、前記ガス交換部では前記第2血液流路を流れる血液に対するガス交換を行うように構成され、前記第1血液流路と前記第2血液流路とは連通して、両血液流路を通して液体が流通可能であり、
 前記熱交換部は、内腔に熱媒体液を流通させる複数本の管体と、前記管体の各々の外側を通過する血液流路を管軸方向における中央部に形成し、両端は露出させて前記複数本の管体を封止した第1シール部材と、前記第1シール部材により封止された前記管体を収容したハウジングとを備え、
 前記ガス交換部は、疎水性及び通気性を有する複数本の中空糸によって形成された第1中空糸膜と、前記複数本の中空糸をその外表面に接触して横断するように前記第2血液流路を形成して前記第1中空糸膜を封止し前記中空糸の両端は露出させた第2シール部材とを備えた人工心肺装置において、
 前記熱交換部は、疎水性及び通気性を有する複数本の中空糸によって形成され、前記ハウジング内における前記第1血液流路の入口側または出口側の少なくとも一方に、前記第1血液流路を流れる液体が通過するように配置された第2中空糸膜を更に備え、
 前記ハウジングは、前記第2中空糸膜を形成する前記中空糸の各々の開口端を外部に露出させる開口部を備え、前記開口部の内側と前記中空糸との間の隙間はシールされていることを特徴とする人工心肺装置。
[6]
 前記熱交換部における前記ハウジングの前記開口部に取り付けられ、且つ、前記開口部を封止するキャップ部材を更に備えている請求項5に記載の人工心肺装置。
[7]
 前記中空糸膜が、複数本の中空糸をシート状に束ねて形成した中空糸シートを複数枚積み重ねて形成されている請求項5に記載の人工心肺装置。
[8]
 前記中空糸は、ポリプロピレンの多孔質体によって形成され、
 前記中空糸膜は、3枚~5枚の前記中空糸シートを積み重ねて形成されている請求項7に記載の人工心肺装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]