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1. WO2008117721 - ラインパイプ用ベンド管の製造方法およびラインパイプ用ベンド管

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明 細 書

発明の名称 ラインパイプ用ベンド管の製造方法およびラインパイプ用ベンド管

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

発明の開示

0010   0011   0012   0013   0014  

発明を実施するための最良の形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056  

実施例

0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067  

産業上の利用可能性

0068  

請求の範囲

1   2  

明 細 書

ラインパイプ用ベンド管の製造方法およびラインパイプ用ベンド管

技術分野

[0001]
 本発明は、ベンド管の製造方法及びベンド管に関し、さらに詳しくは、ラインパイプに用いられるベンド管の製造方法及びラインパイプ用ベンド管に関する。

背景技術

[0002]
 パイプラインは、油井やガス井から産出される石油や天然ガスを輸送する。従来、パイプラインを構成する鋼管(ラインパイプ)には、主として炭素鋼が適用されていた。
[0003]
 しかしながら、近年の井戸の深井化に伴い、ラインパイプのうちギャザリングライン及びフローラインと呼ばれる部分は、従来よりも高温高圧の腐食環境に曝されるようになった。また、これらの部分は硫化水素ガスや炭酸ガス等の腐食性ガスを含む生産流体を輸送しなければならない。そのため、ギャザリングラインやフローラインに使用されるラインパイプは、優れた耐炭酸ガス腐食性及び耐硫化物応力腐食割れ性(以下、硫化物応力腐食割れをSSCという)を要求されるようになった。
[0004]
 そこで、上述の要求を満たす鋼管として、ラインパイプ用マルテンサイト系ステンレス鋼管が開発された。ラインパイプ用マルテンサイト系ステンレス鋼は、たとえば、特許第3156170号公報に開示されている。
[0005]
 ラインパイプ用マルテンサイト系ステンレス鋼管は、Moの添加により表面に不動態皮膜を形成し、かつ、C含有量を0.01%未満にすることにより、優れた耐炭酸ガス腐食性及び耐SSC性を有する。また、Cの代わりとなるオーステナイト形成元素として、Niを多量に含有することにより、C含有量が低くても組織をマルテンサイトに維持できる。さらに、C含有量が低いため、溶接時に加工硬化が発生しにくく、優れた溶接性を有する。そのため、ラインパイプ用マルテンサイト系ステンレス鋼管は、ギャザリングライン及びフローラインでの使用に適する。
[0006]
 ところで、パイプラインは、直線状のラインパイプ(いわゆる直管)だけでなく、敷設される地形に応じて、曲線部分を有するラインパイプ、つまりベンド管を含む。
[0007]
 従来のパイプラインに適用されてきた炭素鋼からなるベンド管の一般的な製造方法は以下のとおりである。まず、直管を熱間で曲げ加工してベンド管とする。その後、ベンド管に対して焼入れ焼戻しを実施する。熱間での曲げ加工により、ベンド管の強度や靭性等の機械特性が低下するため、焼入れ焼戻しにより機械特性を改善する。
[0008]
 上述のとおり、近年の井戸の深井化により、炭素鋼に代えて、ラインパイプ用マルテンサイト系ステンレス鋼がギャザリングラインやフローラインに適用され始めている。そのため、従来の炭素鋼からなるベント管に代えて、ラインパイプ用マルテンサイト系ステンレス鋼からなるベンド管が要求され始めている。
[0009]
 しかしながら、ラインパイプ用マルテンサイト系ステンレス鋼のベンド管を従来の炭素鋼ベンド管と同様の製造条件で製造した場合、製造されたベンド管の耐SSC性が低い場合がある。

発明の開示

[0010]
 本発明の目的は、マルテンサイト系ステンレス鋼からなり、優れた耐SSC性を有するラインパイプ用ベンド管の製造方法及びそのベンド管を提供することである。
[0011]
 本発明者は、マルテンサイト系ステンレス鋼からなるラインパイプ用ベンド管の耐SSC性が低下する原因について調査した。調査の結果、本発明者は、曲げ加工後の焼入れ焼戻し処理における焼戻し温度が、耐SSC性の低下に起因していると考えた。そこで、種々の焼戻し温度でベンド管を製造した結果、焼戻し温度を950℃未満とすれば、製造されたベンド管が優れた耐SSC性を有することを知見した。
[0012]
 本発明は以上の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[0013]
 本発明によるラインパイプ用のベンド管の製造方法は、質量%で、C:0.009%以下、Mn:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Ti:0.01~0.2%、V:0.01~0.10%、Al:0.001~0.1%、N:0.1%以下、Ni:4.0~8.0%、Cr:9.0~15.0%、Mo:1.5~7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなる鋼管を準備する工程と、鋼管を曲げ加工してベンド管とする工程と、ベンド管を950℃未満の焼入れ温度で焼入れする工程と、焼入れされたベント管を焼戻しする工程とを備える。
[0014]
 本発明によるラインパイプ用のベンド管は、質量%で、C:0.009%以下、Mn:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Ti:0.01~0.2%、V:0.01~0.10%、Al:0.001~0.1%、N:0.1%以下、Ni:4.0~8.0%、Cr:9.0~15.0%、Mo:1.5~7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなる。本発明のラインパイプ用ベンド管はさらに、曲げ加工された後、950℃未満の焼入れ温度で焼入れされることを特徴とする。

発明を実施するための最良の形態

[0015]
 以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
[0016]
 1.ラインパイプ用ベンド管の化学組成
[0017]
 ラインパイプ用ベンド管はマルテンサイト系ステンレス鋼からなり、その化学組成は以下のとおりである。以降、元素に関する%は質量%を意味する。
[0018]
 C:0.009%以下
[0019]
 炭素(C)は、溶接施工時に溶接熱影響部(HAZ)の硬度を上昇し、鋼の靭性及び耐食性を低下する。したがって、C含有量はなるべく少ない方が好ましい。そこで、C含有量は0.009%以下とする。
[0020]
 Mn:1.0%以下
[0021]
 マンガン(Mn)は鋼の強度を向上する。しかしながら、Mnを過剰に含有すれば、靭性が低下する。したがって、Mn含有量は1.0%以下である。好ましいMn含有量は0.2%以上である。
[0022]
 Si:1.0%以下
[0023]
 珪素(Si)は、鋼を脱酸する。しかしながら、Si含有量が1.0%を超えると、鋼の靭性が低下する。したがって、Si含有量は1.0%以下である。好ましいSi含有量は0.05%以上である。
[0024]
 P:0.04%以下
[0025]
 燐(P)は不純物である。Pは、鋼の靭性を低下する。したがって、P含有量はなるべく少ない方が好ましい。そこで、P含有量は0.04%以下とする。
[0026]
 S:0.005%以下
[0027]
 硫黄(S)は不純物である。Sは、鋼の熱間加工性を低下する。したがって、S含有量はなるべく少ない方が好ましい。そこで、S含有量は0.005%以下とする。
[0028]
 Ti:0.01~0.2%
[0029]
 V:0.01~0.10%
[0030]
 チタン(Ti)及びバナジウム(V)は、鋼中のNやCと炭窒化物を形成することで、溶接施工時の溶接熱影響部の硬度上昇を抑制する。しかしながら、これらの元素を過剰に含有すれば、その効果が飽和する。さらに、Ni等の元素と化合物を形成して、硬度を上昇する。したがって、Ti含有量は0.01~0.2%とし、V含有量は0.01~0.10%とする。好ましいTi含有量は0.05~0.15%であり、好ましいV含有量は、0.02~0.10%である。
[0031]
 Al:0.001~0.1%
[0032]
 アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。しかしながら、Alを過剰に含有すれば、鋼中の介在物が増加し、鋼の耐食性が低下する。したがって、Al含有量は0.001~0.1%である。
[0033]
 N:0.1%以下
[0034]
 窒素(N)は不純物である。Nは硫化物応力腐食割れ感受性を高める。したがって、N含有量は少ない方が好ましい。そこで、N含有量は0.1%以下とする。好ましいN含有量は、0.02%以下である。
[0035]
 Ni:4.0~8.0%
[0036]
 ニッケル(Ni)は、鋼の強度、耐食性及び熱間加工性を向上する。しかしながら、Niを過剰に含有すれば、その効果は飽和する。したがって、Ni含有量は4.0~8.0%である。
[0037]
 Cr:9.0~15.0%
[0038]
 クロム(Cr)は耐食性被膜を形成し、鋼の耐食性を向上する。しかしながら、Crを過剰に含有すれば、Moとの相乗効果によりフェライトが生成され、強度が低下する。したがって、Cr含有量は9.0~15.0%である。
[0039]
 Mo:1.5~7.0%
[0040]
 モリブデン(Mo)は、硫化水素に対する耐食性を向上する。特に、溶接熱影響部の耐食性を改善する。しかしながら、Moを過剰に含有すれば、Crとの相乗効果によりフェライトが生成され、強度が低下する。したがって、Mo含有量は1.5~7.0%である。好ましいMo含有量は2.0~7.0%である。
[0041]
 なお、残部はFe及び不純物からなる。
[0042]
 2.ベンド管の製造方法
[0043]
 ベンド管の製造方法の一例を以下に説明する。ベンド管の製造方法は、直線状のラインパイプ用鋼管を準備する工程(鋼管準備工程)と、直線状のラインパイプ用鋼管を曲げ加工する工程(曲げ加工工程)と、曲げ加工された鋼管(ベンド管)を焼入れする工程(焼入れ工程)と、焼入れされたベンド管を焼戻しする工程(焼戻し工程)とを備える。以下、それぞれの工程を説明する。
[0044]
 [鋼管準備工程]
[0045]
 上記化学組成のラインパイプ用鋼管を準備する。ラインパイプ用鋼管は、たとえば、以下の方法により製造される。上記化学組成の鋼を溶製し、連続鋳造法によりビレットにする。製造されたビレットを穿孔圧延してラインパイプ用鋼管にする。上述の方法では、ラインパイプ用鋼管として継目無鋼管を製造したが、サブマージドアーク溶接(SAW)、メタルイナートガス溶接(MIG)及びタングステンイナートガス溶接(TIG)等を含む種々の溶接法により溶接された溶接管を製造してもよい。
[0046]
 [曲げ加工工程]
[0047]
 準備された直線状のラインパイプ用鋼管を曲げ加工して、ベンド管にする。曲げ加工の一例として、高周波加熱による曲げ加工について説明する。
[0048]
 直線状のラインパイプ用鋼管を高周波コイル内に挿入する。高周波コイルに挿入されたラインパイプ用鋼管の一端を、水平に回転するアーム(ベンディングアーム)に挟む。その後、ラインパイプ用鋼管を、鋼管の他端から管軸方向に徐々に押し込む。鋼管が押し込まれることにより、ベンディングアームが回転し、これにより、鋼管は高周波コイルで部分的に加熱されながら徐々に曲げ加工される。曲げ加工時、鋼管のうち、高周波コイルにより加熱された部分の温度範囲は930~970℃である。
[0049]
 上述の説明では、高周波加熱による曲げ加工を説明したが、他の熱間曲げ加工によりベンド管を製造してもよい。
[0050]
 [焼入れ工程]
[0051]
 焼入れ工程は、本発明で最も重要な工程である。本発明では、焼入れ温度を950℃未満とする。焼入れ温度を950℃以上とすれば、焼入れ焼戻し後のベンド管の耐SSC性が低下し、SSCが発生するためである。その理由は定かではないが、上記化学組成のベンド管を950℃以上の焼入れ温度で均熱した場合、鋼中に2次生成物が発生し、この2次生成物が耐SSC性を低下するものと推定される。生成される2次生成物は定かではないが、Fe Mo等のラーベス相化合物が考えられる。以上より、焼入れ温度は950℃未満とする。好ましい焼入れ温度は945℃以下であり、さらに好ましい焼入れ温度は940℃以下である。
[0052]
 一方、焼入れ温度が低すぎれば、必要な強度が得られない。したがって、焼入れ温度は800℃以上にする。好ましい焼入れ温度は850℃以上であり、さらに好ましい焼入れ温度は890℃以上である。なお、好ましい均熱時間は、45分以上であり、さらに好ましい均熱時間は50~60分である。
[0053]
 上記焼入れ温度で均熱されたベンド管は、周知の冷却速度で室温まで冷却される。冷却方法は、水冷であっても、ミスト冷却であってもよい。
[0054]
 [焼戻し工程]
[0055]
 ベンド管を焼入れ後、周知の焼戻しを実施する。焼戻し温度は、たとえば、600℃~700℃であり、好ましい均熱時間は、45~60分である。
[0056]
 以上の製造工程により製造されたラインパイプ用ベンド管は、優れた耐SSC性を有する。なお、上述の条件で焼入れ焼戻しされたベンド管の降伏強度は550MPa~725MPaとなる。

実施例

[0057]
 表1に示す化学組成のマルテンサイト系ステンレス鋼を溶製し、複数の丸ビレットを製造した。
[表1]


[0058]
 製造された複数の丸ビレットを穿孔圧延し、直線状の複数の継目無鋼管を製造した。各継目無鋼管を高周波加熱により曲げ加工して、複数のベンド管を製造した。このとき、高周波加熱による加熱温度は950℃であった。
[0059]
 各ベンド管を表2に示す焼入れ温度及び焼戻し温度で焼入れ焼戻しして、外径219.1mm、肉厚12.7mm、曲がり部の曲率半径5DRのラインパイプ用ベンド管とした。
[表2]


[0060]
 試験番号1、3及び4のベンド管に対する焼入れ温度は本発明の範囲内であった。一方、試験番号2のベンド管の焼入れ温度は、本発明の上限を超えた。
[0061]
 [引張試験]
[0062]
 試験番号1~4のベンド管の各々から、引張試験片を採取し、引張試験を実施した。具体的には、各ベンド管から平行部の外径が8.9mmである丸棒試験片を採取した。採取された丸棒試験片に対して、常温で引張試験を実施した。引張試験により得られた降伏強度(MPa)を表1中の「YS」欄に、引張強度(MPa)を表2中の「TS」欄にそれぞれ示す。引張試験の結果、試験番号1~4のベンド管の降伏強度は、いずれも550MPa~725MPaの範囲内であった。
[0063]
 [SSC試験]
[0064]
 各ベンド管から、幅10mm、厚さ2mm及び長さ75mmの平滑4点曲げ試験片を採取した。採取された4点曲げ試験片を用いて、硫化水素を含む試験液中で4点曲げ試験を実施した。具体的には、試験液として、5質量%のNaClと0.5質量%の氷酢酸(CH COOH)とを含む水溶液(NACE-TM0177で規定されるSolution A)を準備した。試験中の4点曲げ試験片への付加応力は、歪みゲージ法で90%の実降伏応力とした。また、試験中、分圧0.004(bar)のH Sガスと分圧0.996(bar)のCO ガスとで構成される混合ガスを試験液に吹き込んだ。試験温度は、25±1℃、試験時間は720時間とした。
[0065]
 試験後、試験片のSSCの有無を目視で観察した。表2中の「SSC」中の「有り」は、SSCが発生したことを示し、「無し」はSSCが発生しなかったことを示す。
[0066]
 表2を参照して、試験番号1、3及び4は、焼入れ温度が本発明の範囲内であったため、SSCが発生しなかった。一方、試験番号2は、焼入れ温度が本発明の上限を超えたため、SSCが発生した。
[0067]
 以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。

産業上の利用可能性

[0068]
 本発明によるラインパイプ用ベンド管は、ラインパイプに利用可能である。

請求の範囲

[1]
 質量%で、C:0.009%以下、Mn:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Ti:0.01~0.2%、V:0.01~0.10%、Al:0.001~0.1%、N:0.1%以下、Ni:4.0~8.0%、Cr:9.0~15.0%、Mo:1.5~7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなる鋼管を準備する工程と、
 前記鋼管を曲げ加工してベンド管とする工程と、
 前記ベンド管を950℃未満の焼入れ温度で焼入れする工程と、
 焼入れされたベント管を焼戻しする工程とを備えたことを特徴とするラインパイプ用ベンド管の製造方法。
[2]
 質量%で、C:0.009%以下、Mn:1.0%以下、Si:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.005%以下、Ti:0.01~0.2%、V:0.01~0.10%、Al:0.001~0.1%、N:0.1%以下、Ni:4.0~8.0%、Cr:9.0~15.0%、Mo:1.5~7.0%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、曲げ加工された後、950℃未満の焼入れ温度で焼入れされたことを特徴とするラインパイプ用ベンド管。