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1. (WO2008117703) 複合光導波路
Document

明 細 書

発明の名称 複合光導波路

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

発明の開示

発明が解決しようとする課題

0004   0005   0006   0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015  

発明の効果

0016  

図面の簡単な説明

0017   0018  

発明を実施するための最良の形態

0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22  

明 細 書

複合光導波路

技術分野

[0001]
 本発明は、シリコン基板上に形成された光導波路に関するものである。

背景技術

[0002]
 シリコン単結晶基板上に電子回路を形成することができるが、シリコン単結晶基板上に更に光集積回路を形成することが可能であれば、電子回路と光回路とをモノリシックに集積化することができる。このようなことを意図して、シリコン酸化膜の誘電体分離層を介して作製されたシリコン・オン・インシュレータ(以下「SOI」という)基板を用いたシリコン細線を近赤外光の光導波路として用いて、レーザ光の発振や超高速光変調器についての研究開発が非常に活発となっている。これは、電子集積回路として現在最も多用されている半導体材料であるシリコンを光集積回路にも使用することで、他の化合物半導体材料等に比べて多くの利点が得られると考えられるからである。
[0003]
 例えば、非特許文献1には、シリコン単結晶基板上にシリコン酸化膜層(1μm厚)を介して形成されたシリコン薄層を加工し、断面積が0.11μm (=0.48μm×0.22μm)である単結晶シリコンからなる極微小断面積の細線状導波路を作製し、この狭小断面積のシリコン細線導波路空間に高密度に光を閉じ込めることにより、2光子吸収を誘起し数ピコ秒の超高速光変調が可能なことが実証されている。このように、シリコン基板上にシリコン酸化膜の誘電体層を介して形成されたSOI基板を加工して光導波路に用いるデバイスには大きな将来性が期待されている。
特許文献1 : 特開平11-242125公報
特許文献2 : 米国特許第6,277,662号明細書
特許文献3 : 米国特許第6,753,589号明細書
特許文献4 : 米国特許第6,222,974号明細書
特許文献5 : 米国特許第6,493,496号明細書
特許文献6 : 特開昭57-41823号公報
非特許文献1 : T. K. Liang et al., OpticsExpress 13, 7298-7303 (2005)
非特許文献2 : Laser Focus World Japan 2005.12pp63-65
非特許文献3 : Laser Focus World Japan 2006.01pp52-54
非特許文献4 : K. Imai et al., IEEE Trans.Electron Devices ED-31 297-302 (1984)
非特許文献5 : K. Imai, Solid State Electronics, 24, 159-164 (1981)
非特許文献6 : K. Imai et al., J. Cryst. Growth, 63, 547-553 (1983)
非特許文献7 : S. Nagata et al., Appl. Phys.Lett. 72, 2945-2947 (1998)
非特許文献8 : S. Nagata et al., Appl. Phys.Lett. 82, 2559-2561 (2003)

発明の開示

発明が解決しようとする課題

[0004]
 しかしながら、光ファイバ等による外部光回路とシリコン細線導波路との間の光結合効率が非常に小さいことが実用上の重要課題である。光結合効率が小さい第1の理由は、シリコン細線導波路の断面積(前記先例では0.11μm )そのものがシングルモード光ファイバのコア径(約10μmφ、面積は約78μm )に比較して非常に小さいこと、更に外部光との結合がこの断面積の小さなシリコン導波路の断面を通じてなされていることである。第2の理由は、シリコンの屈折率が略3.5と大きく、シリカ光ファイバのコア部の屈折率約1.5に対し大きな差があることである。この小さな光結合効率を改善するため多くの方法が検討されている(例えば非特許文献3を参照)。
[0005]
 図22は、非特許文献1,2に報告されているSOI基板上に作製されたシリコン細線光導波路の基本構成を示す図である。同図(a)は、光導波路の断面図を示す。同図(b)は、同図(a)中のA-A'線に沿った屈折率分布を示す。同図(b)において、横軸は厚さ方向の位置を示し、縦軸は屈折率を示す。また、同図(b)における縦軸は、屈折率が大きくなる方向を下方向としている。この図に示される構成のものは、シリコン基板100の一方の主面上に単層のシリカ層170が形成されてSOI基板とされ、このシリカ層170の上にシリコン細線300が形成されている。シリコン細線300の屈折率は、シリカ層170の屈折率より大きい。なお、同図(b)に示された酸化膜332,332'は、シリコン細線300の表面が酸化され不可避的に形成される緻密なシリカ層であり、シリカ層170の屈折率と等しい屈折率を有する。なお、同図(a)に示す符号350は、シリコン細線300とその周囲のシリカ層である酸化膜332,332’とを含めたものとして示している。
[0006]
 シリカ層170は、単層であっても、シリコン細線300を誘電的にシリコン基板100から分離する機能を有している。即ち、シリカ層170に光を導波させる必要性がない場合には、シリコン基板100とシリコン細線300との間の誘電体分離膜は、屈折率が異なる複数層の酸化膜を積層して光導波路機能を有する構造とする必要性は全く無い。非常に狭小な断面積を持つシリコン細線300と外部光源との光結合に際し、シリコン細線300に入射できずシリカ層170に流入した光は、シリカ層170内を拡散して伝搬して、シリコン基板100およびシリコン細線300の両者に吸収される可能性がある。
[0007]
 しかし、シリコン基板100がシリカ層170と接する面積は、シリコン細線300がシリカ層170と接する面積に比べ圧倒的に大きいので、シリカ層170に漏れた光は、実質的にシリコン細線300には吸収されず、シリコン基板100側に吸収されることになる。従って、外部光源とシリコン細線300との光結合は、基本的には非常に狭小なシリコン細線300の断面を通じてのみとなる。
[0008]
 本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、外部光回路との間の光結合の効率が優れた複合光導波路を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明に係る複合光導波路は、シリコン基板の一方の主面の側の凹部領域内に各々シリカを主成分とする第1領域および第2領域を有し、第1領域に近接して延在する半導体からなる第3領域が設けられており、凹部領域において相対的に第1領域が内側に存在するとともに第2領域が外側に存在し、第1領域の屈折率が第2領域の屈折率より大きく、第3領域の屈折率が第1領域の屈折率より大きい。
[0010]
 本発明に係る複合光導波路は、第1領域と第3領域との間に第4領域が更に設けられ、第4領域の屈折率が第1領域の屈折率より小さく、第4領域の厚さが第2領域の厚さより小さいのが好適である。第1領域と第3領域との間に第4領域が更に設けられ、第4領域の屈折率が第1領域の屈折率より大きいのも好適である。第1領域および第2領域が多孔質シリカからなるのも好適である。第1領域と第3領域との間に第4領域が更に設けられ、第4領域が半導体の熱酸化により形成されたものであり、第1領域および第2領域が多孔質シリカからなり、第4領域の屈折率が第1領域の屈折率に等しいか又は大きいのも好適である。また、第3領域が結晶質であってもよいし、第3領域が非晶質であってもよい。また、第1領域と第2領域との間に、シリカを主成分とする第5領域が更に設けられ、第5領域の屈折率が第1領域の屈折率より小さく、第5領域の屈折率が第2領域の屈折率より大きいのも好適である。
[0011]
 なお、この複合光導波路において、第1領域、第2領域及び第5領域それぞれは、元々はシリコン基板の一部であった凹部領域が選択的に陽極酸化等により改質されたものであってもよく、その改質の結果として、多孔質シリコン領域であってもよいし、多孔質シリカ領域であってもよいし、緻密シリカ領域であってもよい。また、第1領域、第2領域及び第5領域それぞれは、不純物が添加されることにより屈折率が調整されていてもよいし、多孔度または空孔率が調整されることにより屈折率が調整されていてもよい。
[0012]
 この複合光導波路では、シリコン基板の凹部領域内に形成された各々シリカを主成分とする第1領域および第2領域は、第1領域をコアとし第2領域をクラッドとする光導波路として機能し得る。また、第2領域を外部クラッドとし第1領域を内部クラッドとして第3領域も光導波路のコアとして機能し得る。第1領域に入射した光は、低屈折率の第2領域の障壁によりシリコン基板への結合が抑制され、高屈折率の第3領域と強く結合することができる。また、第1領域、第2領域及び第5領域は、第1領域をコアとし第2領域を外部クラッドとし第5領域を内部クラッドとする光導波路として機能し得る。このダブルクラッド導波路構造においては、低屈折率の外部クラッドである第2領域は光がシリコン基板と結合するのを阻止する障壁として機能している。内部クラッドである第5領域とコアである第1領域を合わせた広い断面積をもつ領域に入射した光は、第5領域と第1領域が接合する広い接合面を介して屈折率の大きい第1領域に高密度に集光される。第1領域と第3領域との接合面面積は小さいが、先ず、第1領域に光を高密度に集光することによりこの高密度に集光した光が高屈折率の第3領域とより強く結合することになる。
[0013]
 また、この複合光導波路では、第1領域の断面積を定める深さ及び幅(例えば数十μm)の寸法をシングルモード光ファイバのコア径よりも充分大きくすることができる。また、第1領域の材料は基本的にシリカであることから、第1領域の屈折率はシリカ光ファイバの屈折率と同程度である。従って、この複合光導波路は、外部光回路としての光ファイバ等との光結合が容易となる。
[0014]
 この複合光導波路では、シリカを主成分とする第1領域および第2領域により形成されたシリカ導波路は、2次元的な光閉じ込め構造をも形成している。この様に、シリカ領域は複層であり、2次元的な光閉じ込め構造を有しているシリカ導波路のコア部としての第1領域に近接して半導体細線導波路としての第3領域が形成されている。
[0015]
 第3領域(半導体導波路部)はシリカ導波路の第1領域(コア部)に近接して接合しており、且つ、第3領域(半導体導波路部)の屈折率が第1領域(シリカコア部)の屈折率より大きいことから、両者間の光結合は両者の接合界面を通じて行われる。即ち、両者が接合している界面の全面積を通じて光結合が行われることとなる。

発明の効果

[0016]
 非常に狭小な断面積を持つ半導体細線光導波路への外部からの導入光の結合に際し、断面積が充分に大きく且つ屈折率がシリカファイバと同程度であるシリカ導波路に一旦外部光を受光し、シリカ導波路のコアと近接した半導体細線導波路の接合界面を通じて光を結合する新しい方式が提案され、半導体細線導波路への外部光の実効的な光結合効率が大きく増加し、結合が飛躍的に容易となった。

図面の簡単な説明

[0017]
[図1] 本実施形態に係る複合光導波路の構成を示す図である。
[図2] シリカの空孔率をパラメータとし、シリカ中にドープした高屈折率不純物濃度と屈折率との関係を示すグラフである。
[図3] 本実施形態に係る複合光導波路の屈折率分布の他の例を示す図である。
[図4] シリカと空孔との2成分を想定し、空孔率と屈折率との関係を示すグラフである。
[図5] 多孔質シリコンおよびシリコン細線それぞれの酸化特性の概要を纏めた図表である。
[図6] 本実施形態に係る複合光導波路を製造する第1の方法を説明する工程図である。
[図7] 第1の方法により製造された複合光導波路の光学特性を模式的に示す図である。
[図8] 本実施形態に係る複合光導波路を製造する第2の方法を説明する工程図である。
[図9] 本実施形態に係る複合光導波路を製造する第3の方法を説明する工程図である。
[図10] 本実施形態に係る複合光導波路を製造する第4の方法を説明する工程図である。
[図11] 本実施形態に係る複合光導波路の第1変形例の構成および陽極酸化用マスクを示す図である。
[図12] 本実施形態に係る複合光導波路の第2変形例の構成および陽極酸化用マスクを示す図である。
[図13] 本実施形態に係る複合光導波路の第3変形例の構成を示す図である。
[図14] 本実施形態に係る複合光導波路の第4変形例の構成を示す図である。
[図15] 実験例の製造方法を説明する工程図である。
[図16] 光がシリカまたはシリコンの内部を伝搬する場合の光の消滅係数の波長依存性を示すグラフである。
[図17] 窒化アルミニウム(AlN)を半導体細線とする複合光導波路の製造方法を説明する工程図である。
[図18] 非晶質シリコン(a-Si)を半導体細線とする複合光導波路の製造方法を説明する工程図である。
[図19] 他の実施形態に係る複合光導波路の構成を示す図である。
[図20] 他の実施形態に係る複合光導波路を製造する第1の方法を説明する工程図である。
[図21] 他の実施形態に係る複合光導波路の屈折率分布の例を示す図である。
[図22] SOI基板上に作製されたシリコン細線光導波路の従来例の基本構成を示す図である。

符号の説明

[0018]
 100…シリコン基板、110…炭素薄膜、112…開口部、120…第5領域(多孔質シリコン領域)、121…第1領域(多孔質シリコン領域)、122…第2領域(多孔質シリコン領域)、125…金属不純物がドープされた第1領域、130…第5領域(緻密シリカ領域)、131…第1領域(緻密シリカ領域)、132…第2領域(緻密シリカ領域)、140…第5領域(多孔質シリカ領域)、141…第1領域(多孔質シリカ領域)、142…第2領域(多孔質シリカ領域)、300…シリコン細線(第3領域)、332…酸化膜(第4領域)、350…シリコン細線導波路、500…n-型窒化アルミニウム領域(第3領域)、600…非晶質半導体領域(第3領域)。

発明を実施するための最良の形態

[0019]
 以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[0020]
 図1は、本実施形態に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図(a)は、複合光導波路の平面図を示す。同図(b)は、複合光導波路の断面図を示す。同図(c)は、同図(b)中のA-A'線に沿った屈折率分布を示す。同図(c)において、横軸は厚さ方向の位置を示し、縦軸は屈折率を示す。また、同図(c)における縦軸では、屈折率が大きくなる方向が下方向となっている。これは、屈折率が異なる媒体を光が伝搬する場合、光は屈折率の大きい媒体に沿う性質を有しているからである。
[0021]
 この図に示される複合光導波路は、シリコン基板100の一方の主面の側の凹部領域内に各々シリカを主成分とする第1領域131および第2領域132が形成されている。凹部領域において相対的に、コア領域である第1領域131が内側に存在するとともに、クラッド領域である第2領域132が外側に存在する。第1領域131の屈折率は第2領域132の屈折率より大きい。したがって、シリコン基板100の凹部領域内に形成された各々シリカを主成分とする第1領域131および第2領域132は、第1領域131をコアとし第2領域132をクラッドとする光導波路として機能し得る。
[0022]
 また、本実施形態に係る複合光導波路は、第1領域131に対して光結合可能に近接して長手方向に延在する半導体からなる第3領域としてのシリコン細線300が設けられている。シリコン細線300の屈折率は第1領域131の屈折率より大きい。このシリコン細線300も、光導波路のコアとして機能し得る。
[0023]
 ただし、シリコン細線導波路350は、単結晶のシリコン細線300と、その外周部を覆う薄い第4領域としての酸化膜332とを有している。また、シリコン基板100の単結晶領域と第2領域132との間に薄い酸化膜333が形成されている。この酸化膜332,333は、多孔質シリコンを酸化して第1領域131及び第2領域132を形成する際の酸化性雰囲気によりシリコン細線300の表面やシリコン基板100の表面が酸化され不可避的に形成される緻密なシリカ層である。
[0024]
 同図(c)は、波長1.5μmにおける屈折率の厚み方向の分布を示す。ここで、本実施形態に係る複合光導波路の主な用途が光通信波長帯の光の伝搬や制御となるであろうと想定して、専門書(Handbook of Optical Properties of Solids, Edited by Edward D. Palik, Academic Press)を参照し、波長1.5μmにおける屈折率を用いた。
[0025]
 シリコン基板100及びシリコン細線300は、非常に大きな屈折率3.48を有している。シリコン細線300表面の酸化により形成された酸化膜のうち第1領域131と接する側には酸化膜332が形成され、表面側には酸化膜332'が形成される。また、シリコン基板100と第2領域132との界面にも酸化膜333が形成される。これらの酸化膜332,332',333は、シリコン基板100やシリコン細線300が熱的に酸化されたもので、基本的に緻密な酸化膜であり、波長1.5μmにおける屈折率が1.444であると解される。また、第1領域131および第2領域132それぞれも緻密化されたシリカであり、屈折率を上昇させる為の不純物が第1領域131に添加されている。コア領域R1は、第1領域131から構成される。緻密シリカWG領域R2は、第1領域131、第2領域132及び酸化膜333から構成される。シリカ領域R3は、緻密シリカWG領域R2及び酸化膜332から構成される。
[0026]
 同図(a),(b)に示されるように、シリカ導波路のコア領域である第1領域131の基板側には、屈折率の小さなクラッド領域である第2領域132が存在する。相対的に屈折率の大きい第1領域131に入射した光は、より屈折率の小さな第2領域132の障壁により2次元的に閉じ込められる。又、第1領域131とシリコン細線300との間にも酸化膜332の障壁が存在する。
[0027]
 しかし、後述するように第2領域132が充分厚ければ、第1領域131からシリコン基板100への光の漏洩は阻止される。一方、熱酸化膜である酸化膜332の膜厚が薄い場合、光は、酸化膜332の障壁を漏洩してシリコン細線300に流れ込むことができる。この様にして、第1領域131に入射した光とシリコン基板100との間の光結合を阻止しながら、第1領域131とシリコン細線300との間には光結合を保持することができる。
[0028]
 本発明の他の実施形態では、緻密化されたシリカに替えて多孔質シリカを第1領域(コア領域)および第2領域(クラッド領域)に用いることもできる。このことについて図2を用いて説明する。図2は、シリカの空孔率をパラメータとし、シリカ中にドープした高屈折率不純物濃度と屈折率との関係を示すグラフである。同図は、緻密なシリカの屈折率を1.444とし、高屈折率不純物単体の屈折率を2.0とし、多孔質シリカ中の空孔の屈折率を1.0として、加成則により屈折率を計算したものである。
[0029]
 ここで、加成則とは、各構成要素であるシリカ,高屈折率不純物および空孔の各成分の単体屈折率をn とし、各成分の濃度をc として、観察する光の波長に比べ各要素が非常に微細な寸法(本実施形態に用いる多孔質シリカの場合は数ナノメートルサイズ)で均等に混ざり合っている場合に、全体の屈折率nが近似式「n=Σn ・c /Σc 」で表されるとするものである。
[0030]
 図2では、多孔質シリカの空孔率をパラメータとし、不純物濃度を変数として、屈折率を計算してある。空孔率および不純物濃度がともにゼロである緻密なシリカ(点C)の屈折率は1.444である。一方、空孔率が15%であって不純物濃度がゼロである多孔質シリカ(点A)の屈折率は1.377となる。更に、空孔率が15%であって高屈折率不純物濃度が8モル%である多孔質シリカ(点B)の屈折率は1.422と計算される。
[0031]
 上記の各屈折率を用いて、図1(c)における屈折率構成と同等の関係を構成した例を図3に示す。図3は、本実施形態に係る複合光導波路の屈折率分布の他の例を示す図である。ドープした多孔質シリカより構成されるコア領域である第1領域141とシリコン基板100との間には、ノンドープ多孔質シリカより構成されるクラッド領域である第2領域142が存在する。第2領域142は、第1領域141に入射した光がシリコン基板100に漏洩するのを阻止する。
[0032]
 一方、第3領域としてのシリコン細線300の周囲にも第4領域としての酸化膜332が酸化条件に応じて形成されている。この酸化膜332は、基本的に緻密な膜であり、屈折率は1.444である。酸化膜332の屈折率は、第1領域141の屈折率に比べ大きな値を持つ。このため、酸化膜332は、第1領域141とシリコン細線300との間に存在していても、第1領域141に入射した光が屈折率の非常に大きなシリコン細線300と結合する障壁とはならない。こうして、第1領域141に入射した光は、シリコン細線300と直接に強く結合することになる。また、図3に示されるように、多孔質シリカ(Oxidized Porous Silicon(OPS))からなるOPSWG領域R4は、第1領域141及び第2領域142から構成される。シリカ領域R5は、OPSWG領域R4及び酸化膜332,333から構成される。
[0033]
 ここで、図1(c)と図3との関係について説明する。図3に示す多孔質シリカ導波路の屈折率大小関係は、多孔質シリカに高屈折率不純物がドープされているか否かにより作製されている。図3の第1領域141および第2領域142それぞれは、図2の点Bおよび点Aの関係で示されている。この様な多孔質シリカ物質を例えば1100℃以上の水蒸気酸化条件で更なる酸化処理を行うと、シリカには流動性が現れ空孔が排除され多孔質シリカが緻密化される。多孔質シリカが緻密化されると、点Aは点Cに移り、点Bは点Dに移ることになる。この様にして多孔質シリカが緻密化された状態が図1(c)に相当する。
[0034]
 また、本実施形態では、高屈折率不純物を用いなくとも、多孔質シリカの空孔率を制御することによって、シリカのコア領域とクラッド領域との間に屈折率差を形成して、図3と同様の屈折率の関係を得ることができる。このことについて図4を用いて説明する。図4は、シリカと空孔との2成分を想定し、空孔率と屈折率との関係を示すグラフである。ここでも、前記と同様に加成則により屈折率を計算した。
[0035]
 例えば、多孔質シリカの空孔率が15%であるときは、屈折率は1.377となり、緻密な熱酸化膜の屈折率1.444に比べ充分に小さくなる。図3の第2領域142を構成する多孔質シリカの空孔率を例えば15%とし、第1領域141を構成する多孔質シリカの空孔率を15%よりも小さく設定すれば、第1領域141の屈折率は、第2領域142の屈折率より大きくなり、且つ、シリコン細線300表面に形成された緻密シリカの酸化膜332の屈折率より小さくなる。図4中、点P1はクラッドを示し、点P2は熱酸化膜を示し、範囲R6は、コア形成可能な範囲を示す。
[0036]
 上記のような屈折率分布が作り込まれた複合光導波路を考える。シリコン細線300の表面に存在する緻密な酸化膜332の屈折率1.444は第1領域141の屈折率より大きい。従って、緻密なシリカ層である酸化膜332は、シリカ導波路の第1領域141に入射した光が屈折率の非常に大きいシリコン細線300と直接結合する障壁にはなり得ない。一方、第2領域142の屈折率は第1領域141の屈折率より小さいため、第1領域141に閉じ込められた光がシリコン基板100に流れ込むことは充分に阻止される。
[0037]
 ここで、多孔質シリコンおよびシリコン細線それぞれの酸化特性に関して類似点と相違点の概要を説明する。図5は、多孔質シリコンおよびシリコン細線それぞれの酸化特性の概要を纏めた図表である。この図には、上記した多孔質シリコンと、多孔質シリコンに密着して作製されているシリコン細線とが、雰囲気の酸化条件を強めることにより酸化が進む様子の概要が総括して示されている。
[0038]
 多孔質シリコン(Porous Silicon)は、シリコン基板を陽極にして弗酸溶液中で電流を流す陽極酸化により作製される。このようにして作製される多孔質シリコンの性質は、陽極酸化の各種パラメータにより大きく変化する。多孔度および細孔径が主に多孔質シリコンの性質を分ける因子である。ここで、多孔質シリコンとは、直径が数ナノメートルの結晶性を保持したシリコンの細い柱(以下「シリコン細柱」と言う。)である固体部分と、これらのシリコン細柱間に存在する直径がほぼ同程度の細孔と、を含む全体の領域と定義する。また、多孔質シリコンの多孔度とは、単位体積の多孔質シリコン中に占める細孔の容積割合と定義される。
[0039]
 本実施形態においてシリコン基板100として用いられるp-型基板から作製される多孔質シリコン領域の内部には、直径が数ナノメートルであるが多孔質シリコン領域の表面から多孔質シリコン領域の底である基板との接触面まで貫通した細孔と、この細孔とほぼ同程度のナノサイズの単結晶的原子配列を保持したシリコンの細い柱(シリコン細柱)とから構成されている。
[0040]
 非特許文献7,8に記載された技術では、ナノサイズの細孔と金属有機物分子との相互作用が細孔のサイズに大きく依存することを利用し、細孔の径を精密に制御した複層の多孔質シリコン層を積層して作り、金属有機物分子を特定の多孔質シリコン層に選択的にドープできることを利用して、屈折率の大きなコア領域と小さなクラッド領域とを有する光導波路を作製するものである。
[0041]
 多孔質シリコンを酸化する場合、酸化性雰囲気中の酸素は、細孔を通じ多孔質シリコン領域の奥深くまで供給される。そうしてシリコン細柱の全表面から酸化が進む。ナノサイズのシリコン細柱は、酸化性雰囲気では細柱の全表面から酸化される。約300℃の酸化雰囲気中では細柱最表面の単原子層が酸化されSiO になる。
[0042]
 更に酸化温度が上昇すると、シリコン細柱の全表面から細柱内部に向かい酸化が進み、温度800℃程度に達すると、酸化はシリコン細柱の中心部まで及び、シリコン細柱内のシリコン原子は全て酸素と結合しSiO となる。なお、細柱全体が酸化される温度(全酸化温度)は細柱の太さに依存し、細柱の径が太くなるとこの全酸化温度は高くなる。多孔質シリコン領域内の全てのシリコン原子が酸化されても構造は多孔質であり、この状態をOxidized Porous Silicon(OPS)と言う。
[0043]
 シリコンを酸化してSiO に変えると、体積は約2.2倍に増加する。多孔質シリコンを酸化してシリカに変えると、SiO としての固体部分の体積が増加し、多孔質シリコン状態では細孔として存在した容積の一部を固体が埋める。しかし、依然として空孔部分が存在するため、多孔質シリカと言われる。従って、多孔質シリコンの酸化により形成された多孔質シリカにおいて空孔部の占める容積の割合(本明細書では「空孔率」と言う)は、多孔質シリコン状態での多孔度に比べ小さくなる。しかし、多孔質シリカの空孔率は多孔質シリコンの多孔度に依存するため、光導波路用に複層の多孔質シリコンを作製する場合、各層の多孔度および厚みを制御しておくことにより、光導波路材料としての多孔質シリカの空孔率および厚みを調整することができる。
[0044]
 多孔質シリカを緻密化するには、水蒸気を含む酸化条件で温度1100℃程度以上に加熱すればよい。この様にして緻密化されたシリカ膜は、シリコンの熱酸化膜とよく似た性質を有することが既に実証されている。このように、多孔質シリコンにおいては温度800℃より酸化温度を上昇した場合、多孔質シリカは約1100℃程度まで多孔質状態を保持している。酸化温度が1100℃程度以上で且つ水蒸気が酸素気流に添加されると、多孔質シリカに流動性が表れ、多孔質シリカは緻密なシリカとなる。
[0045]
 これに対して、第3領域としてのシリコン細線300は、光導波路のコアとして用いられる小断面積の細線状シリコンである。シリコン細線300のサイズは、用法により異なるが、一辺が0.数μmから数μmの程度である。それでも、前記した多孔質シリコン細柱のナノサイズに比べれば、ミクロンサイズであるシリコン細線は2桁から3桁程度大きい。
[0046]
 通常デバイス等で使用されるシリコンの酸化膜SiO はサブミクロンの厚みである。ミクロンサイズのシリコン細柱の酸化はシリコン単結晶の酸化と同等に扱われると考えられる。温度300℃程度ではシリコン細線最表面の単原子層が酸化される。温度800℃程度になると、その酸化条件に応じた膜厚(~数nm)に成長する。更に温度を上げた状態では、シリコン集積回路技術の基礎として詳細なデータが集積されており、酸化性雰囲気が強くなるに従って酸化膜厚が増加する。この酸化膜は基本的に緻密な酸化膜である。
[0047]
 多孔質シリコン上に残存させたシリコン細線は、シリコン基板の主面表面側からは勿論、シリコン細線を支える多孔質シリコン側からも同等に酸化され、図1や図3の酸化膜332,332'が形成される。酸化膜332'は後の工程等で取り除く可能性があるが、酸化膜332を除去すると、シリコン細線300もリフトオフ除去されることになる。本実施形態で、シリコン細線300がシリカ導波路のコア領域である第1領域131または第1領域141に近接しているとは、シリコン細線材料が酸化された酸化膜332の介在を認めるものである。
[0048]
 以上までに本発明に係る複合光導波路の実施形態の基本的な構成について説明してきたが、本発明は他の様々な変形例も可能である。また、本実施形態に係る複合光導波路は様々な方法により製造することが可能である。以下では、本実施形態(または変形例)に係る複合光導波路を製造する方法について説明し、また、変形例の構成についても説明する。
[0049]
 本実施形態に係る複合光導波路を製造する第1の方法について説明する。図6は、本実施形態に係る複合光導波路を製造する第1の方法を説明する工程図である。
[0050]
 第1の製造方法では、初めに、p-型シリコン基板100の一方の主面上に約100nm厚の炭素薄膜110を形成し、更に、その上に約1.5μm厚のレジストを塗布する。そして、フォトマスクを用いた露光によりレジストパターンを形成し、酸素を主体としたリアクティブ・イオン・エッチング(RIE)により炭素薄膜110に所望の開口部112を形成して、その後にレジストを除去する(同図(a))。この開口部112が形成された炭素薄膜110を、選択陽極酸化で用いるマスク層とする。
[0051]
 このとき、酸素プラズマに対するエッチング速度はレジストの方が炭素薄膜110より大きいが、炭素薄膜110の膜厚が薄いため、炭素薄膜110を支障なくパタニングすることができる。なお、開口部112の幅wと、2つの開口部112の間にある炭素薄膜113の幅dとの関係については、所定の組合せ寸法が用いられる。
[0052]
 続いて、多孔質シリコン領域を選択的に形成する。すなわち、多孔質シリコン領域の成長とともに多孔質シリコンとシリコン結晶との界面の面積に比例して化成電流を増加させるパルス電流化成法を用いて、炭素薄膜110にパタニングが施されたp-型シリコン基板100を陽極とし、対向する白金電極を陰極として、両極間に第1の所定濃度の弗酸溶液を保持し、シリコン基板100を陽極酸化(化成)して、深さ約15μmの多孔質シリコンの第1領域121を形成する。次いで、弗酸溶液濃度を第2の所定濃度に変更し、第2の界面電流密度を用い、約5μm厚の多孔質シリコンの第2領域122を形成する(同図(b))。本工程に於いて、弗酸濃度、化成電流密度および化成深さそれぞれを所定の値に制御すれば、2つの開口部112の間にある炭素薄膜113のほぼ中央部に、シリコン単結晶よりなるシリコン細線300を残存させることができる。
[0053]
 続いて、チタンの金属有機化合物分子(Ti-MO)を選択的にドープする。すなわち、前記工程により第1領域121および第2領域122が形成されたシリコン基板100をTi-MO含有溶液に浸漬し、第1領域121にTi-MO分子を選択的にドープする。これにより、第1領域121はチタンの有機金属分子が選択ドープされた領域125となるが、第2領域122にはほとんどチタンがドープされることなく制御できる(同図(c))。
[0054]
 続いて、シリコン基板100の酸化処理を行う。すなわち、前記工程によりチタンが選択ドープされたシリコン基板100に対して、酸素気流中で温度300℃にて1時間の熱処理を行い、これにより、Ti-MOの有機成分を多孔質シリコン中から除去するとともに、多孔質シリコン内部のシリコン細柱表面に単原子層の酸化層を形成して多孔質シリコン構造を安定化する。次いで、温度800℃の酸化処理にて、領域125及び第2領域122それぞれの内部のシリコン細柱を細柱の内部まで完全酸化する。この工程により、多孔質シリコン領域は酸化されて多孔質シリカとなる。すなわち、多孔質シリコンの領域125は多孔質シリカの第1領域141(コア領域)となり、多孔質シリコンの第2領域122は多孔質シリカの第2領域142(クラッド領域)となる(同図(d))。
[0055]
 この状態は、図3に示した多孔質シリカ導波路を用いた複合光導波路の状態となる。この酸化工程により、シリコン細線300の全ての表面には、酸化条件に応じた厚さの図5で説明した緻密な酸化膜332が形成される。本明細書では、図1および図3に示すように、シリコン細線300と細線周囲の酸化膜332を合わせた領域をシリコン細線導波路350として示す。また、第2領域132,142とシリコン基板100との界面にも図3に示した酸化膜333が形成されるが、この酸化膜は本実施形態において図示しない。
[0056]
 その後に更に、水蒸気を添加した酸素気流中で温度1200℃にて1時間の酸化を行い、多孔質シリカを緻密化し、屈折率が相対的に大きい第1領域131、屈折率が相対的に小さい第2領域132を形成する。この酸化工程により、シリコン細線300の全ての表面には、より強い酸化条件に応じた厚さの図1で説明した緻密な酸化膜332が形成される。
[0057]
 これまでに説明した第1の方法により実際に複合光導波路を製造し、その複合光導波路の光学特性を調べた。図7は、第1の方法により製造された複合光導波路の光学特性を模式的に示す図である。同図(a)は、複合光導波路の平面図を示す。同図(b)は、複合光導波路の断面図を示す。
[0058]
 同図(c)は、長さ15mmに切断した複合光導波路に対し、落射照明および透過照明を併用した光学顕微鏡で観察した像を模式的に示す。第2領域132は暗く見え、このことは、この部分を透過照明光が透過していないことを示している。第1領域131のうちシリコン細線導波路350から離れた領域131'は明るく見え、このことは、この部分を透過照明光が透過していることを示している。これに対して、第1領域131のうちシリコン細線導波路350の周辺領域150は、透過光強度が減少して、暗く観察された。
[0059]
 同図(d)は、前記した長さ15mmの複合光導波路に対し、波長633nmのヘリウムネオンレーザ光を透過させた場合のニアーフィールドパターンを示す。シリコン基板100および第2領域132それぞれは、前記レーザ光が透過せず、暗く観察された。第1領域131のうちシリコン細線導波路350から離れた領域131'は明るく観察された。これに対して、第1領域131のうちシリコン細線導波路350の周辺領域150'は、第1領域131内にあるにもかかわらず暗く観察された。第1領域131内で暗く観察される領域は、顕微鏡の白色可視光透過照明の場合にも、ヘリウムネオンレーザ光の観察にも、同様に見られた。
[0060]
 同図(e)は、前記した長さ15mmの複合光導波路に対してバッファード弗酸にてエッチし、シリコン基板100表面の酸化膜を除去するとともに、緻密なシリカ導波路を構成する第1領域131および第2領域132それぞれの表面をエッチし、シリコン細線導波路350をリフトオフにより除去した試料を作製し、この試料に対して落射照明および透過照明を併用した顕微鏡観察の結果を示す。同図(c)及び(d)で暗く見えた周辺領域150,150'は無くなり、第1領域131の全体が明るく観察された。
[0061]
 上記観察結果は以下のように解釈される。顕微鏡の可視透過照明の白色光および波長633nmのヘリウムネオンレーザ光は、単結晶シリコンのバンドギャップエネルギー1.1eVより大きなフォトンエネルギーを有する。この様な短波長の光が光路15mmの長い導波路を伝搬する間に、その光が比較的薄い酸化膜332を漏洩してシリコン細線300と結合し、シリコン細線300に流れ込み吸収されたことを示している。即ち、図1(c)に示すように、第2領域132の厚さに比べ酸化膜332の厚さが比較的小さいならば、シリコンのバンドギャップエネルギーに比べ光子エネルギーの大きな光も酸化膜332の障壁を漏洩してシリコン細線300と結合し、吸収されたことを示していると解釈される。なお、専門書によると、温度1200℃水蒸気加湿酸化1時間の処理によりシリコン表面に形成される緻密な熱酸化膜の厚さは約0.8μmと見積もられる。本実施例の場合、シリコン細線表面に形成された酸化膜332の厚さも同程度と考えられる。
[0062]
 次に、本実施形態に係る複合光導波路を製造する第2の方法について説明する。図8は、本実施形態に係る複合光導波路を製造する第2の方法を説明する工程図である。
[0063]
 第2の製造方法では、初めに、p-型シリコン基板100の一方の主面上に約1μm厚のn-型シリコン層210をエピタキシャル成長させる。次に、フォトリソグラフィによりn-型シリコン層210に対し幅30μmの互いに平行な2つの開口212を形成して、2つの開口212の間に独立した約4μm幅の細長いn-型シリコンの細線領域210'を形成する(同図(a))。
[0064]
 続いて、前記処理を施したシリコン基板100上に約100nm厚の炭素薄膜110を積層し、フォトリソグラフィにより炭素薄膜110に対し約4μm幅の開口212を細線領域210'の両側に形成して、この炭素薄膜110を選択陽極酸化で用いるマスク層とする(同図(b))。
[0065]
 続いて、第1の製造方法と同様に、陽極酸化により2層構成の多孔質シリコンの第1領域121及び第2領域122を作製し、チタン有機金属化合物分子を第1領域121へ選択的にドープする(同図(c))。ここで重要なことは、陽極酸化により多孔質シリコンを形成する際には、荷電子としての正孔が必要であることである。p-型領域では荷電子として多数の正孔が存在するが、n-型領域では正孔は存在しない。この特性により、p-型領域は選択的に多孔質シリコンとなるが、n-型領域は陽極酸化されることなくその特性を保持する。この選択性のため、細線領域210'はシリコン結晶のまま残存する。
[0066]
 そして、前記の処理を行ったシリコン基板100を酸素気流中で1時間温度300℃の処理を行った後、温度900℃で1時間の酸化処理を行うことにより、多孔質シリコンを酸化し、多孔質シリカに変換する(同図(d))。このようにして、ドープされた多孔質シリカの第1領域141と非ドープ多孔質シリカの第2領域142とを形成するとともに、独立したシリコン細線導波路350を、ドープした多孔質シリカの第1領域141に近接して作製することができる。
[0067]
 この製造方法において、仮に、残存するn-型シリコン層210がシリカ導波路の第1領域141,142の表面に残存したり接触したりすると、シリカ導波路中の光がn-型シリコン層210と直接結合する不都合を誘起する。しかし、この製造方法において、光導波路として機能するシリコン細線導波路350を除くn-型シリコン層210がシリカ導波路の第1領域141,142の表面上に残存したり接触したりすることを回避することができる。なお、選択陽極酸化のマスク層として機能した炭素薄膜110は、温度900℃の酸化処理により燃焼により自然消滅する。この第2の製造方法によっても、関与する各材料間で図3に例示したような屈折率構成を有する複合型光導波路を製造することができる。
[0068]
 次に、本実施形態に係る複合光導波路を製造する第3の方法について説明する。図9は、本実施形態に係る複合光導波路を製造する第3の方法を説明する工程図である。
[0069]
 第3の製造方法では、初めに、p-型シリコン基板100の一方の主面上に約1μm厚のn-型シリコン層210をエピタキシャル成長させる。次に、イオン注入により、n-型シリコン層210のうちの一部の領域220を選択的にp-型に変換し、2つのp-型の領域220の間に紙面垂直方向に細長いn-型の細線領域210'を残す(同図(a))。
[0070]
 続いて、前記したシリコン基板100の主面上に約100nm厚の炭素薄膜110を積層し、次にフォトリソグラフィにより炭素薄膜110に対し約4μm幅の開口部112を細線領域210'の両側に形成して、この炭素薄膜110を選択陽極酸化で用いるマスク層とする(同図(b))。
[0071]
 続いて、第1の製造方法と同様に、陽極酸化により2層構成の多孔質シリコンの第1領域121及び第2領域122を作製し、チタン有機金属化合物分子を第1領域121へ選択的にドープする(同図(c))。ここで重要なことは、2箇所のp-型の領域220を合わせた幅228を、多孔質シリカからなる第2領域122の幅227に比べ大きく取っておくことである。このようにすることにより、p-型に変換された領域220は、陽極酸化の進展とともに自己整合的に多孔質シリコン化される。その結果、n-型シリコン層210は、多孔質シリコンの第1領域121及び第2領域122上に残存することは無い。
[0072]
 そして、前記の処理を行ったシリコン基板100を酸素気流中で1時間に亘り温度300℃の処理を行った後、温度900℃で1時間の酸化処理を行うことにより、多孔質シリコンを酸化し、多孔質シリカに変換する(同図(d))。このようにして、ドープされた多孔質シリカの第1領域141と非ドープ多孔質シリカの第2領域142とを形成するとともに、独立したシリコン細線導波路350をドープした多孔質シリカの第1領域141に近接して作製することができる。
[0073]
 また、光導波路として機能するシリコン細線導波路350を除くエピ領域であるn-型シリコン層210がシリカ導波路の第1領域141,142の表面を覆ったり接触したりすることをなくすこともできる。この製造方法において、仮に、n-型シリコン層210がシリカ導波路の第1領域141,142の表面を覆ったり接触したりすると、シリカ導波路中の光がn-型シリコン層210と直接結合する不都合を誘起する。そこで、この製造方法において、残存するp-型の領域220が第2の多孔質シリカの第2領域142の両側に僅かに残る程度に、p-型の領域220の幅を設定することが望ましい。なお、選択陽極酸化のマスク層として機能した炭素薄膜110は、温度900℃の酸化処理により燃焼により自然消滅する。
[0074]
 次に、本実施形態に係る複合光導波路を製造する第4の方法について説明する。図10は、本実施形態に係る複合光導波路を製造する第4の方法を説明する工程図である。
[0075]
 第4の製造方法では、初めに、p-型シリコン基板100の一方の主面上にレジストマスクを形成して、プロトンイオン注入により基板100の主面上の一部の領域221をn-型に変換する(同図(a))。その後は、前記の製造方法と同様に、シリコン基板100の主面上に約100nm厚の炭素薄膜110を積層し、次にフォトリソグラフィにより炭素薄膜110に対し幅約4μmの開口部112をn-型の領域221の両側に形成して、この炭素薄膜110を選択陽極酸化で用いるマスク層とする(同図(b))。
[0076]
 続いて、第1の製造方法と同様に、陽極酸化により2層構成の多孔質シリコンの第1領域121及び第2領域122を作製し、チタン有機金属化合物分子を第1領域121へ選択的にドープする(同図(c))。この処理を経たシリコン基板100を温度900℃で酸化雰囲気中で処理することにより、多孔質シリコンを多孔質シリカに変換する。このようにして、多孔質シリカの第2領域142および第1領域141を形成するとともに、第1領域141に近接したシリコン細線導波路350を有する複合光導波路を形成することができる(同図(d))。
[0077]
 上記のようにイオン注入によりn-型化した領域221を結晶のまま残し、第1領域141上にシリコン細線導波路350を形成することができる。なお、プロトンイオン注入によりn-型化した領域は、多孔質シリコンを酸化する際の温度800℃の熱処理を経ると再度p-型に復帰する。シリコン細線導波路350をn-型に変えた方が望ましい場合は、V族のドナー不純物をイオン注入すればよい。
[0078]
 次に、本実施形態に係る複合光導波路の第1変形例の構成について説明するとともに、その複合光導波路を製造する方法について説明する。この第1変形例の複合光導波路の製造方法は、前述の第1の製造方法と略同様であるが、選択陽極酸化時にマスク層として用いられる炭素薄膜110の形状の点で相違する。したがって、第1変形例の複合光導波路は、このマスク形状に応じた構成を有している。
[0079]
 図11は、本実施形態に係る複合光導波路の第1変形例の構成および陽極酸化用マスクを示す図である。同図(a)は、複合光導波路の製造工程中の選択陽極酸化時にマスク層として用いられる炭素薄膜110のパターンを示す平面図である。同図(a)で、p-型シリコン基板100の主面上にマスク層として形成される炭素薄膜110は白色領域として示され、また、この炭素薄膜110に設けられた開口部112(すなわち、p-型シリコン基板100が露出している領域)はクロスハッチング領域として示されている。この図に示されるように、一方の開口部112は、一定幅で所定方向に延在して設けられている。これに対して、他方の開口部112は、上記の所定方向に沿って幅が次第に広くなる部分を有している。
[0080]
 このような開口部112が形成された炭素薄膜110を用いて、前述の第1の製造方法と同様にして選択陽極酸化を行う。また、これ以降も、第1の製造方法と同様にして、不純物選択ドープ、予備酸化、酸化および緻密化処理の各工程を行う。同図(b)は、このようにして製造される複合光導波路の平面図であり、また、同図(c)は、この複合光導波路の断面図である。
[0081]
 このようにして製造される複合光導波路では、シリコン細線導波路350は、一定幅で所定方向に延在して設けられている。これに対して、第1領域131は、上記の所定方向に沿って幅が次第に広くなる部分を有している。すなわち、シリコン細線導波路350の近傍を主導波路135とし、この主導波路135から離れた導波路部を脇導波路136とすることができる。例えば、主導波路135近傍ではシリコン細線導波路350を伝搬すべき信号光を入力し、脇導波路136には信号光を増幅するための励起光や信号光を制御するための制御光を別途入力することが可能となる。
[0082]
 次に、本実施形態に係る複合光導波路の第2変形例の構成について説明するとともに、その複合光導波路を製造する方法について説明する。この第2変形例の複合光導波路の製造方法は、前述の第1の製造方法と略同様であるが、選択陽極酸化時にマスク層として用いられる炭素薄膜110の形状の点で相違する。したがって、第2変形例の複合光導波路は、このマスク形状に応じた構成を有している。
[0083]
 図12は、本実施形態に係る複合光導波路の第2変形例の構成および陽極酸化用マスクを示す図である。同図(a)は、複合光導波路の製造工程中の選択陽極酸化時にマスク層として用いられる炭素薄膜110のパターンを示す平面図である。同図(a)で、p-型シリコン基板100の主面上にマスク層として形成される炭素薄膜110は白色領域として示され、また、この炭素薄膜110に設けられた開口部112(すなわち、p-型シリコン基板100が露出している領域)はクロスハッチング領域として示されている。この図に示されるように、一方の開口部112は、一定幅で所定方向に延在して設けられている。これに対して、他方の開口部112は、一定幅で所定方向に延在して設けられている部分と、その途中から斜め方向に延在して設けられている部分とを有している。
[0084]
 このような開口部112が形成された炭素薄膜110を用いて、前述の第1の製造方法と同様にして選択陽極酸化を行う。また、これ以降も、第1の製造方法と同様にして、不純物選択ドープ、予備酸化、酸化および緻密化処理の各工程を行う。同図(b)は、このようにして製造される複合光導波路の平面図であり、また、同図(c)は、この複合光導波路の断面図である。
[0085]
 このようにして製造される複合光導波路では、シリコン細線導波路350は、一定幅で所定方向に延在して設けられている。これに対して、第1領域131は、一定幅で所定方向に延在して設けられている部分と、その途中から斜め方向に延在して設けられている部分とを有している。すなわち、シリコン細線導波路350の延在方向に沿う導波路部を主導波路135とし、この主導波路135から分岐した導波路部を枝導波路137とすることができる。例えば、主導波路135には信号光L1を入出力し、枝導波路137には励起光や制御光等の光L2を主導波路と分離した形で入力することができる。
[0086]
 次に、本実施形態に係る複合光導波路の第3変形例の構成について説明する。この第3変形例の複合光導波路の製造方法は、前述の第1の製造方法と略同様であるが、選択陽極酸化時にマスク層として用いられる炭素薄膜110の形状の点で相違する。したがって、第3変形例の複合光導波路は、このマスク形状に応じた構成を有している。また、第3変形例の複合光導波路は、シリコン細線導波路350のパターンの点でも相違する。
[0087]
 図13は、本実施形態に係る複合光導波路の第3変形例の構成を示す図である。同図(a)は、複合光導波路の平面図であり、また、同図(b)は、平面図に示すB-B'に沿った断面図である。この図に示されるように、黒い太線で示されるシリコン細線導波路350は、第2領域142で囲まれた第1領域141の上で渦巻き状に延在し、両端がシリコン基板100の端面にまで達している。このような構成の複合光導波路は、p-型シリコン基板100上に形成したn-型シリコン層210によりシリコン細線パターンを形成し、その後に選択陽極酸化用マスクパターンを適宜形成し、前記のように工程を進めれば、製造することができる。
[0088]
 このような構成の複合光導波路では、信号光L1の入力端子と出力端子とを互いに分離し、且つ、制御光や励起光等の光L2を別の部分から入力することができる。入力された制御光や励起光等の光L2は、屈折率の大きな第1領域141内に2次元的に閉じ込められる。これらの光は、第1領域141内を伝搬中に、図3に示すごとく、シリコン細線導波路350と強く結合する。
[0089]
 次に、本実施形態に係る複合光導波路の第4変形例の構成について説明する。この第4変形例の複合光導波路は、前述の第3変形例と略同様の構成であるが、第1領域141(コア領域)および第2領域142(クラッド領域)それぞれの形状の点で相違する。
[0090]
 図14は、本実施形態に係る複合光導波路の第4変形例の構成を示す図である。同図(a)は、複合光導波路の平面図であり、また、同図(b)は、平面図に示すC-C'に沿った断面図である。この図に示されるように、黒い太線で示されるシリコン細線導波路350は、第2領域142で囲まれた第1領域141の上で渦巻き状に延在し、両端がシリコン基板100の端面にまで達している。また、第1領域141は、シリコン細線導波路350の渦巻き部分が形成された中央部と、シリコン細線導波路350の両端面それぞれに繋がる部分が形成された導入部とに区分され、これらの間をシリコン基板100が分離している。すなわち、図中の右側で点線で囲まれた部分の領域400は、シリコン基板100と低屈折率のシリカの第2領域142により構成されている。図中の左側にも同様の構成部分がある。
[0091]
 このような構成の複合光導波路では、信号光L1の入力端子と出力端子とを互いに分離し、且つ、制御光や励起光等の光L2を別の部分から入力することができる。加えて、信号光L1の入出力端子と、制御光や励起光等の光L2の入力端とを、領域400により分離することができる。この領域400は、屈折率の極めて大きなシリコン基板100の一部が主面にまで達していて、且つ、その表面を屈折率の小さな第2領域142により周囲を囲まれた構造をしている。このような構造は強い光シールドとして機能する。第1領域141を伝搬する光が第2領域142の障壁を越えた場合、屈折率の極めて大きなシリコン基板100に強く吸収されてしまう。光のアースとして機能することが期待される。
[0092]
 次に、本実施形態に係る複合光導波路の製造方法と対比されるべき実験例の製造方法について説明する。図15は、実験例の製造方法を説明する工程図である。この図に示される実験例の製造方法では、図8に示した第2の製造方法と比較して、選択陽極酸化のマスク層としての炭素薄膜110を使用しない点で相違している。
[0093]
 実験例の製造方法では、初めに、p-型シリコン基板100の一主面上にn-型シリコン層210を堆積し、互いに平行な方向に延在する2つの開口212を形成するとともに、独立したシリコンの細線領域210’を形成する(同図(a))。その後、選択陽極酸化のマスク層としての炭素膜を使用することなく、陽極酸化により多孔質シリコンの第1領域121と第2領域122の複層を形成する(同図(b))。
[0094]
 ここで注意すべき点は、選択陽極酸化のマスク層である炭素薄膜110を使用しない本実験例の場合、多孔質シリコンの第1領域121及び第2領域122の表面上にn-型シリコン層210が残存することである。後の熱処理工程等を終えデバイス化する際には、同図(c)中の領域215は除去されていることが好ましい。もし、同図(c)の領域215に対応する部分のシリコン領域が残存していれば、シリカ導波路の第1領域141に閉じ込められた光は、本来のシリコン細線導波路350とのみでなく、領域215とも強く結合する。従って、領域215は、少なくとも第1領域141の上部からは完全に除去されていることが好ましい。
[0095]
 このような実験例の製造方法と比べて、本実施形態に係る複合光導波路の製造方法では、選択陽極酸化のマスク層としての炭素薄膜110を使用することで、第1領域141の上部において領域215が除去されるので、シリカ導波路の第1領域141に閉じ込められた光はシリコン細線導波路350とのみ強く結合することができる。
[0096]
 以上までは、本実施形態に係る複合光導波路の第3領域(半導体細線)の材料としてシリコンを用いる場合につき説明した。しかし、本発明においては、半導体細線に適した材料としてはシリコンのみに限られるものではない。以下に、他の半導体材料の有用性に付き説明する。
[0097]
 図16は、光がシリカまたはシリコンの内部を伝搬する場合の光の消滅係数の波長依存性を示すグラフである。同図において、バンド間吸収による消滅係数の波長依存性のうち、シリカのそれを実線370で、シリコンのそれを点線372で示す。また、赤外吸収によるシリカの消滅係数を実線371で示す。この図に示されるように、シリカ材料が透明である光の波長範囲(SiO 透明域R7)は、約0.16μmの遠紫外域から約4μmの近赤外域と広い範囲である。一方、シリコンが透明である波長範囲は、シリコンのバンドギャップエネルギーより小さな光子エネルギーを有する1.1μmより長波長の範囲である。
[0098]
 本実施形態に係る複合光導波路の材料としてシリカとシリコンとの組合せを用いた場合、複合光導波路が伝搬可能な波長範囲は、シリカおよびシリコンの両者がともに透明な波長範囲(両材料透明域R8)に限られる。即ち、その波長範囲は約1.1μmから約4μmであり、比較的狭い赤外域の波長範囲に限られることになる。
[0099]
 本実施形態では、以下に説明するように、必要に応じて第3領域の半導体材料を変更することにより、組み合わせる半導体材料の特性に応じて、複合光導波路で使用できる波長範囲を可視域から紫外域にまで拡大することができる。
[0100]
 バンドギャップエネルギーの大きな半導体材料(例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、前記両者の混晶であるAl Ga 1-xN、炭化珪素(SiC)等)は、シリコン基板上にエピタキシャル成長させることが可能である。また、選択エピタキシャル成長も可能であり、シリコン基板上の所望の部分のみに単結晶エピタキシャル領域を残し、その他の非所望部の膜を除去することもできる。また、これらの材料は、ドーピングにより伝導性を制御することも可能であり、エピタキシャル膜をn-型にすることもできる。更に、これらの材料は、化学的にも極めて安定であり、高濃度弗酸を用いて多孔質シリコンを形成する陽極酸化工程にも耐えられる。また、酸化雰囲気への耐性にも優れ、多孔質シリコンをシリカに酸化する工程に対しても極く表面層が酸化されるのみである。
[0101]
 図17は、窒化アルミニウム(AlN)を半導体細線とする複合光導波路の製造方法を説明する工程図である。初めに、p-型シリコン基板100上の所望の位置にn-型窒化アルミニウム領域500を形成する(同図(a))。続いて、選択陽極酸化で用いるマスク層として、開口部112を有する炭素薄膜110を形成する(同図(b))。続いて、前述した第2の製造方法と同様に2層の多孔質シリコンの第1領域121及び第2領域122をシリコン基板100中に形成する(同図(c))。そして、このシリコン基板100を酸化することにより、多孔質シリコンの第1領域121をシリカの第1領域131(コア領域)とするとともに、多孔質シリコンの第2領域122をシリカの第2領域132(クラッド領域)として、第1領域131及び第2領域132からなるシリカ導波路を形成し、このシリカ導波路上に近接したn-型窒化アルミニウム領域500を有する複合光導波路を形成することができる(同図(d))。
[0102]
 窒化アルミニウムはバンドギャップエネルギー(Eg)が5.1eVと大きく、更に直接遷移の半導体であるため、Egに対応する波長0.24μmの光(紫外線領域)より波長の長い光に対しては透明である。また、屈折率も近赤外域に至っても2.1程度以上と大きく、非常に優れた光学特性を有する。従って、この屈折率2.1は前述したシリコンの屈折率3.48程大きくはないが、扱える光の波長が紫外域まで適用可能であり、且つ大きな屈折率領域を有する複合光導波路を形成できる。
[0103]
 図18は、非晶質半導体の代表的物質である非晶質シリコン(a-Si)を半導体細線とする複合光導波路の製造方法を説明する工程図である。初めに、p-型シリコン基板100上に、選択陽極酸化で用いるマスク層として、フォトエッチングにより開口部112を有する炭素薄膜110を形成する(同図(a))。続いて、陽極酸化により多孔質シリコンの第1領域121及び第2領域122を形成する(同図(b))。その後、第1領域121に高屈折率不純物材料をドープし、更に多孔質シリコンを酸化・緻密化処理して、緻密なシリカの第1領域131および第2領域132を有するシリカ導波路を形成する(同図(c))。このようにしてシリカ導波路が形成されたシリコン基板100上に非晶質シリコン(a-Si)層650を堆積し(同図(d))、これを所望の形にエッチングすることにより非晶質半導体領域600を有する複合光導波路を形成することができる(同図(e))。
[0104]
 図18に示した工程では、多孔質シリコンを酸化した後に半導体である非晶質シリコン(a-Si)を堆積することができる。換言すれは、多孔質シリコンを酸化するに要する高温の熱処理工程を実施した後に非晶質半導体を堆積することが可能である。従って、非晶質半導体材料として、水素化非晶質シリコン(a-Si:H)や水素化ダイヤモンドライクカーボン等、非晶質半導体のダングリングボンドを水素等によって補償している材料、換言すれば高温熱処理工程を経ると性質が劣化してしまうような半導体材料を用いることもできる。
[0105]
 以上のように、本実施形態に係る複合光導波路は、非常に狭小な断面積を持つ第3領域(半導体細線導波路)への外部からの導入光の結合に際し、断面積が充分に大きく且つ屈折率がシリカ光ファイバと同程度である第1領域に一旦外部光を受光し、その第1領域と第3領域(半導体細線導波路)とが接合する界面を通じて光を結合するので、第3領域(半導体細線導波路)への実効的な光結合効率が大きく増加し、結合が飛躍的に容易となる。
[0106]
 また、本実施形態に係る複合光導波路は、第1領域および第2領域それぞれの構成材料として、緻密化されたシリカまたは多孔質シリカを用途に応じて使い分けできる。第1領域および第2領域それぞれの構成材料として多孔質シリカを用いる場合、シリカの多孔度により屈折率を調整できる利点がある。第3領域(細線導波路)としてシリコンを用いた場合、熱処理工程で第3領域(シリコン細線)周辺に形成される緻密なシリカに比べ屈折率の小さい多孔質材料を第1領域に用いることにより、第3領域(シリコン細線)周囲に形成される第4領域(熱酸化膜)はシリカ導波路中の光が第3領域(シリコン細線導波路)と結合する際の障壁とはならなくなる。
[0107]
 また、第3領域(半導体細線導波路)で処理すべき信号光と、それを増幅する励起光や制御光の入力部を分割して、光結合することが可能となる。高価なSOI基板を用いることなくシリコン細線導波路を形成できる。
[0108]
 また、第3領域(半導体細線)の材料としては、シリコンのみでなく、他の多くの主要な材料を用いることができる。特にシリコン基板上に予めエピタキシャル成長可能な結晶質半導体を用いる場合、第1領域上に近接して第3領域(半導体細線)を形成することができる。更には、非晶質シリコンや非晶質ダイヤモンドライクカーボン等の材料を用いる場合は、第1領域および第2領域を形成した後の工程で第3領域(半導体細線)を形成することができ、工程の自由度も増加する。
[0109]
 さらに、第3領域(半導体細線導波路)の材料の選択の自由度が大幅に拡大し、複合光導波路で伝送可能な光の波長幅が大きく拡大する。シリコンを第3領域に用いる場合には、シリコンのバンドギャップエネルギー以下の光子エネルギーを有する近赤外波長域に限定されるが、可視・紫外域の波長範囲にまでデバイス用途を拡大できる可能性がある。
[0110]
 図19は、他の実施形態に係る複合光導波路の構成を示す図である。同図(a)は、複合光導波路の平面図を示す。同図(b)は、複合光導波路の断面図を示す。図19に示される複合光導波路は、図1に示される複合光導波路の構成に加えて、シリカを主成分とする第5領域130を備える。第5領域130は、第1領域131と第2領域132との間に設けられている。第5領域130の屈折率は、第1領域131の屈折率より小さく、第2領域132の屈折率より大きい。この複合光導波路は、第1領域131をコアとし第2領域132を外部クラッドとし第5領域130を内部クラッドとする光導波路として機能し得る。第5領域130と第1領域131を合わせた広い断面積を持つ領域に入射した光は、低屈折率の第2領域132の障壁によりシリコン基板100への結合が抑制されている。第5領域130と第1領域131を合わせた領域に入射した光は両領域の広い接合界面を通じて、先ず、相対的に屈折率が大きく断面積の小さな第1領域131に高密度に集光される。こうして光を高密度に集光しておくことにより、より小さな接合界面をもつ高屈折率の第3領域としてのシリコン細線300と強く結合することができる。
[0111]
 図20は、他の実施形態に係る複合光導波路を製造する第1の方法を説明する工程図である。第1の製造方法では、初めに、図6(a)に示される工程と同様に、シリコン基板100上に、開口部112が形成された炭素薄膜110を形成する(図20(a))。
[0112]
 続いて、多孔質シリコン領域を選択的に形成する。すなわち、多孔質シリコン領域の成長とともに多孔質シリコンとシリコン結晶との界面の面積に比例して化成電流を増加させるパルス電流化成法を用いて、炭素薄膜110にパタニングが施されたp-型シリコン基板100を陽極とし、対向する白金電極を陰極として、両極間に第1の所定濃度の弗酸溶液を保持し、シリコン基板100を陽極酸化(化成)して、深さ約5μmの多孔質シリコンの第1領域121を形成する。このとき電流密度は第1領域121の形成に適した所定の値を使用する。次いで、深さ約10μmの多孔質シリコンの第5領域120を形成する。このとき用いる電流密度は、第1領域121の電流密度とは異なる、第5領域120の形成に適した所定の値とする。次いで、弗酸溶液濃度を第2の所定濃度に変更し、第2の界面電流密度を用い、約5μm厚の多孔質シリコンの第2領域122を形成する(同図(b))。本工程に於いて、弗酸濃度、化成電流密度および化成深さそれぞれを所定の値に制御すれば、多孔質シリコンからなる第1領域121、第5領域120、第2領域122を形成しながら、2つの開口部112の間にある炭素薄膜113のほぼ中央部に、シリコン単結晶よりなるシリコン細線300を残存させることができる。
[0113]
 続いて、シリコン基板100の酸化処理を行う。すなわち、前記工程により多孔質シリコンからなる第1領域121、第5領域120、第2領域122が形成されたシリコン基板100に対して、酸素気流中で温度300℃にて1時間の熱処理を行い、多孔質シリコン内部のシリコン細柱表面に単原子層の酸化層を形成して多孔質シリコン構造を安定化する。次いで、温度800℃の酸化処理にて、第1領域121、第5領域120、第2領域122それぞれの内部のシリコン細柱を細柱の内部まで酸化する。この工程により、多孔質シリコン領域は酸化されて多孔質シリカとなる。すなわち、多孔質シリコンからなる第1領域121は多孔質シリカからなる第1領域141(所謂ダブルクラッド導波路のコア領域)となり、多孔質シリコンからなる第5領域120は多孔質シリカからなる第5領域140(内部クラッド領域)となり、多孔質シリコンからなる第2領域122は多孔質シリカからなる第2領域142(外部クラッド領域)となる(同図(c))。
[0114]
 図21は、他の実施形態に係る複合光導波路の屈折率分布の例を示す図である。同図は、図20(c)中のA-A'線に沿った屈折率分布を示す。図21と図3を比較すると、図21の複合光導波路では、第1領域141より更に屈折率の小さい第5領域140が付加されていることが解る。この様な構成にすることにより、第2領域142で囲まれた広い断面積の第1領域141及び第5領域140に入射した光は導波路内を進行中に、第1領域141と第5領域140との広い接合界面を通じて、屈折率が大きく断面積は小さい第1領域141に高密度に集光される。この高密度に集光された光が第1領域141とシリコン細線300との接合界面を通じてシリコン細線300と結合することになる。OPSWG領域R9は、第1領域141、第5領域140及び第2領域142から構成される。シリカ領域R10は、OPSWG領域R9及び酸化膜332,333から構成される。
[0115]
 続いて、上記工程により作製した複合光導波路における多孔質シリカの3つの領域(第1領域141、第5領域140及び第2領域142)の屈折率関係を、図4を参照してより詳細に説明する。前記800℃の酸化後の空孔率の関係として、第1領域141の空孔率が最も小さく、次に第5領域140の空孔率が小さく、第2領域142の空孔率を最も大きくする。こうすれば、前記3つの領域の屈折率関係としては、第1領域141の屈折率が最も大きく、次に第5領域140が大きく、第2領域142の屈折率は最も小さくなる。こうして、前記複合光導波路は、第1領域141をコア、第5領域140を内部クラッド、第2領域142を外部クラッドとした所謂ダブルクラッド導波路の構成を有することになる。上記のような構成とすることにより、シリコン細線導波路350は多孔質シリカで構成されたダブルクラッド導波路の第1領域141と密接に接合することになる。
[0116]
 上記により複合光導波路において、シリカ導波路部とシリコン細線間の光の結合はより強く、効率的になる。図20(c)に示すシリコン細線導波路350を有する導波路の伝播特性と、シリコン細線導波路350を有しない導波路の伝播特性とを、共に長さ2mmの試料導波路を用いて、可視光の透過光量を比較した。長さ2mmの試料導波路の一端を照明し、他端に透過してくる光を観察した。シリコン細線導波路350を有しない導波路では、第1領域141には強い光が伝播し明るく輝いていたが、第5領域140及び第2領域142は暗黒であり、ダブルクラッド導波路のコア領域(第1領域141)への光の集光機能が確認された。また、シリコン細線導波路350を有する導波路における第1領域141を透過する光量は、シリコン細線導波路350を有しない導波路における第1領域141を透過する光量の数十分の1と少なかった。この可視光透過光量の減少分は、第1領域141とシリコン細線300との接合界面を通じて、屈折率の大きなシリコン細線300に吸収されたものと解釈できる。
[0117]
 図7に例示した試料の導波路長は15mmであり、図20(c)に例示した試料の導波路長は2mmである。図7に例示した試料の屈折率構成は図1(c)に対応し、図20(c)に例示した試料の屈折率構成は図21に対応する。図1(c)と図21との主要な相違点を比較する。図1(c)においてドープされた緻密シリカで構成される第1領域131の屈折率は、シリコン細線300の周囲に不可避的に形成されるノンドープ緻密シリカである酸化膜332の屈折率に比べ大きい。従って、第1領域131より屈折率の小さい酸化膜332は第1領域131の光がシリコン細線300と結合する場合の障壁として作用する。酸化膜332の厚さが充分に薄い場合には、第1領域131の光が酸化膜332を透過して漏れ出しシリコン細線300と結合することができる。換言すれば酸化膜332の厚さが光の結合の大きさを規制していると言える。一方、図21では、シリコン細線300の周囲に不可避的に形成される酸化膜332の屈折率は、第1領域141及び第5領域140の屈折率に比べ大きい。このため酸化膜332はコア領域の光がシリコン細線300と結合する障害とはならない。同様のことが図1(c)と図3の比較においても言える。
[0118]
 図3と図21との相違点は、図21ではダブルクラッド導波路構成とすることにより光を第1領域141に高密度集光し、コア領域とシリコン細線300の接合界面における光の密度を上げることにより、コア領域とシリコン細線300間の光結合の強度をより強くしたものである。
[0119]
 なお、第5領域120,130,140を上述のあらゆる実施形態や変形例等に形成してもよい。

請求の範囲

[1]
 シリコン基板の一方の主面の側の凹部領域内に各々シリカを主成分とする第1領域および第2領域を有し、
 前記第1領域に近接して延在する半導体からなる第3領域が設けられており、
 前記凹部領域において相対的に前記第1領域が内側に存在するとともに前記第2領域が外側に存在し、
 前記第1領域の屈折率が前記第2領域の屈折率より大きく、
 前記第3領域の屈折率が前記第1領域の屈折率より大きい、
 複合光導波路。
[2]
 前記第1領域と前記第3領域との間に第4領域が更に設けられ、
 前記第4領域の屈折率が前記第1領域の屈折率より小さく、
 前記第4領域の厚さが前記第2領域の厚さより小さい、
 請求項1に記載の複合光導波路。
[3]
 前記第1領域と前記第3領域との間に第4領域が更に設けられ、
 前記第4領域の屈折率が前記第1領域の屈折率より大きい、
 請求項1に記載の複合光導波路。
[4]
 前記第1領域および前記第2領域が多孔質シリカからなる
 請求項1に記載の複合光導波路。
[5]
 前記第1領域と前記第3領域との間に第4領域が更に設けられ、
 前記第4領域が半導体の熱酸化により形成されたものであり、
 前記第1領域および前記第2領域が多孔質シリカからなり、
 前記第4領域の屈折率が前記第1領域の屈折率に等しいか又は大きい、
 請求項1に記載の複合光導波路。
[6]
 前記第3領域が結晶質である、請求項1に記載の複合光導波路。
[7]
 前記第3領域が非晶質である、請求項1に記載の複合光導波路。
[8]
 前記第1領域と前記第2領域との間に、シリカを主成分とする第5領域が更に設けられ、
 前記第5領域の屈折率が前記第1領域の屈折率より小さく、
 前記第5領域の屈折率が前記第2領域の屈折率より大きい、
 請求項1に記載の複合光導波路。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]