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1. (WO2008117518) 転がり軸受のグリース溜り部品およびグリース溜り付き転がり軸受
Document

明 細 書

発明の名称 転がり軸受のグリース溜り部品およびグリース溜り付き転がり軸受 0001  

技術分野

0002  

背景技術

0003   0004   0005   0006  

発明の開示

発明が解決しようとする課題

0007   0008   0009  

課題を解決するための手段

0010   0011   0012   0013   0014  

図面の簡単な説明

0015   0016  

発明を実施するための最良の形態

0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

転がり軸受のグリース溜り部品およびグリース溜り付き転がり軸受

関連出願

[0001]
 本出願は、2007年3月26日出願の特願2007-079976および特願2007-079977の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本願の一部をなすものとして引用する

技術分野

[0002]
 この発明は、グリース潤滑とされる転がり軸受のグリース溜り部品、および転がり軸受とグリース溜り部品とを備えた軸受セット、並びに上記グリース溜り部品を組み込んだグリース溜り付き転がり軸受に関する。

背景技術

[0003]
 工作機械主軸軸受の潤滑方法として、メンテナンスフリーで使用可能なグリース潤滑、搬送エアに潤滑オイルを混合してオイルをノズルより軸受内に噴射するエアオイル潤滑、軸受内に潤滑油を直接に噴射するジェット潤滑等の方法がある。最近の工作機械は、加工能率を上げるために、ますます高速化の傾向にあり、主軸軸受の潤滑も比較的安価で簡単に高速化が可能なエアオイル潤滑が多く用いられてきている。しかし、このエアオイル潤滑法は、付帯設備としてエアオイル供給装置が必要であることと、多量のエアを必要とすることから、コスト、騒音、省エネ、省資源の観点から問題がある。また、オイルの飛散によって環境を悪化させる問題もある。これらの問題点を回避するため、最近ではグリース潤滑による高速化が注目され始め、要望も多くなってきている。
[0004]
 グリース潤滑は、軸受組立時に封入されたグリースのみで潤滑するため、高速運転すると、軸受発熱によるグリースの劣化や、軌道面、特に内輪での油膜切れのため、早期焼き付きに至ってしまうことが考えられる。特に、dn値が100万(軸受内径mm×回転数rpm )を超えるような高速回転領域では、グリース寿命を保証するのは困難である。
[0005]
 グリース寿命を延長させる手段として、新しい提案も紹介されている。その一つは、内部にグリース溜りを形成したグリース溜り部品を固定側軌道輪(例えば外輪)に接して設けると共に、このグリース溜り部品から固定側軌道輪の軌道面の付近まで延びて、固定側軌道輪との間に隙間を形成する隙間形成片を設け、前記グリース溜りと固定側軌道輪の軌道面との間を、前記隙間を介して連通させるようにしたものである(例えば特許文献1,2)。
[0006]
 この転がり軸受によると、軸受の停止時には、グリース中の増稠剤および前記隙間の毛細管現象によりグリースの基油が隙間に移動する。軸受を運転すると、隙間に貯油されていた基油は、運転で生じる固定側軌道輪の温度上昇による体積膨張と、転動体の公転・自転で生じる空気流とにより隙間から吐出されて、固定側軌道輪の軌道面に付着しながら移動して転動体接触部に連続的に補給される。
特許文献1 : 特開2005-180629号公報
特許文献2 : 特開2006-132765号公報

発明の開示

発明が解決しようとする課題

[0007]
 上記構成の場合、グリース溜りの空間にグリースを100%封入したグリース溜り部品と転がり軸受を分離して取り扱うと、グリース溜り部品において封入したグリースの一部が露出してしまうので、封入グリース量の管理等が不安定になる。そこで、この場合、転がり軸受と別体のグリース溜り部品とを、外輪幅方向押さえ等の別部材で組付け状態に固定することで、一体品として取り扱っている。
[0008]
 グリース溜り部品を転がり軸受に一体に組み込んで一体品とする構成も可能であるが、一体品にすると製造が容易でなく、包装等の取り扱いも困難になり、さらには客先での組立作業も困難になるという問題がある。
[0009]
 この発明の目的は、これらの課題を解消することを目的としたものであり、転がり軸受から分離した形で取り扱いが可能な転がり軸受のグリース溜り部品と、このグリース溜り部品と転がり軸受とを備えた軸受セットと、このグリース溜り部品を組み込んだグリース溜り付き転がり軸受を提供することである。

課題を解決するための手段

[0010]
 この発明の転がり軸受のグリース溜り部品は、内輪、外輪、およびこれら内外輪の軌道面間に介在した複数の転動体を有する転がり軸受に対して、軌道輪である内輪および外輪のうち、回転しない固定側軌道輪に隣接して配置されるグリース溜り部品であって、内部がグリース溜りとなる環状の容器部と、この容器部から突出して前記固定側軌道輪の軌道面が形成された周面に沿って前記軌道面の近傍まで挿入される環状の軸受内挿入部とを有し、この軸受内挿入部は、内部がグリースの流路となり、先端に円周方向に延びるスリット状のグリース基油滲み出し口を有し、このグリース基油滲み出し口を、取り外し自在な封止部材で封止したものである。
 この構成によると、グリース基油滲み出し口を取り外し自在な封止部材で封止したため、グリース溜り部品を別体品として取り扱ってもグリースが露出せず、グリース封入量の管理等に不安を与えることなく容易に取り扱うことができ、製品の信頼性を向上させることができる。
[0011]
 この発明の軸受セットは、内輪、外輪、およびこれら内外輪の軌道面間に介在した複数の転動体を有する転がり軸受と、前記内輪および外輪のうち、回転しない固定側軌道輪に隣接して配置されるべきこの発明の転がり軸受のグリース溜まり部品とを備えた軸受セットである。
 この軸受セットによると、軸受とグリース溜まり部品とが一体化されておらず、別体であるから、包装等の取り扱いが容易になり、また、客先で例えば車軸に軸受を組み込む際の組立作業も容易になる。グリース溜り部品は、封止部材を取り外して転がり軸受に装着する。グリース溜り部品は、単独で取り扱うときは、上記のように封止部材で封止したため、グリース溜り部品を別体品として取り扱ってもグリースが露出せず、グリース封入量の管理等に不安を与えることなく容易に取り扱うことができ、製品の信頼性を向上させることができる。グリース溜り部品を転がり軸受に装着した状態では、転がり軸受の運転停止と運転再開の繰り返しに伴うグリース溜りでのヒートサイクルによる圧力変動で、グリースから分離した基油が軸受内挿入部のグリース基油滲み出し口から固定側軌道輪の軌道面に吐出され、潤滑油の供給が確実に行われる。これにより、軸受内に封入したグリースだけを使用して高速化と長寿命化、メンテナンスフリーを達成できる。
[0012]
 この発明の軸受セットにおいて、前記軸受の前記固定側軌道輪が外輪であり、前記グリース溜まり部品が、外輪間座と、この外輪間座の内周に取付けられ、前記容器部および前記軸受内挿入部を有するグリース溜り部品本体とで構成されるものであっても良い。
 固定側軌道輪が外輪である場合、グリース溜り部品の軸受内挿入部は、外輪の内周面に沿って設けられるが、グリース封入状態で軸受を回転させたときに、封入グリースが遠心力で外輪内周部に飛散するため、前記軸受内挿入部のグリース滲み出し口と軌道面との間のグリース基油の繋がりが確実となる。
[0013]
 この発明の軸受セットにおいて、前記固定側軌道輪は、軌道面に続く段差面が転動体から離れる方向に設けられたものであり、前記軸受内挿入部は、前記固定側軌道輪の軌道面が形成された周面に沿って軸受内に挿入され、その先端面が、前記固定側軌道輪の前記段差面との間に、グリース基油の滲み出し用の隙間を形成するものであっても良い。
 この構成によれば、軸受内挿入部が段差面に向かって挿入されているので、軸受内挿入部を軌道面の近傍まで挿入して、軌道面に円滑に基油を供給できる。
[0014]
 この発明の軸受セットは、内輪、外輪、およびこれら内外輪の軌道面間に介在した複数の転動体を有する転がり軸受と、この発明のグリース溜り部品とでなり、このグリース溜り部品が前記封止部材を取り外した状態で前記固定側軌道輪の軌道面が形成された周面に沿って前記軌道面の近傍まで挿入されている。
 この構成のグリース溜り付き転がり軸受によると、グリース溜り部品のグリース溜りにグリースが封入されると共に、軸受内部に初期潤滑油としてのグリースを封入して使用される。転がり軸受の運転停止と運転再開の繰り返しに伴うグリース溜りでのヒートサイクルによる圧力変動で、グリースから分離した基油が軸受内挿入部のグリース基油滲み出し口から固定側軌道輪の軌道面に吐出されるので、潤滑油の供給が確実に行われる。これにより、軸受内に封入したグリースだけを使用して高速化と長寿命化、メンテナンスフリーを達成できる。

図面の簡単な説明

[0015]
 この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる例示および説明のためのものであり、この発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一部分を示す。
[0016]
[図1] この発明の第1実施形態にかかるグリース溜り部品の一部の断面図である。
[図2] 同グリース溜り部品を組み付けたグリース溜り付き転がり軸受の一部の断面図である。
[図3] 図2の部分拡大断面図である。
[図4] この発明の第2実施形態にかかるグリース溜り付き転がり軸受の一部の断面図である。
[図5] 図2のグリース溜り付き転がり軸受を用いた工作機械用スピンドル装置の断面図である。
[図6] (A)はこの発明の第1応用例にかかるグリース溜り付き転がり軸受の一部の断面図、(B)は同転がり軸受の一部の分解断面図である。
[図7] 図6(A)の部分拡大断面図である。
[図8] この発明の第2応用例にかかるグリース溜り付き転がり軸受の一部の断面図である。
[図9] この発明の第3応用例にかかるグリース溜り付き転がり軸受の一部の断面図である。
[図10] 図6のグリース溜り付き転がり軸受を用いた工作機械用スピンドル装置の断面図である。

発明を実施するための最良の形態

[0017]
 この発明の第1実施形態を図1ないし図3と共に説明する。図1は第1実施形態のグリース溜り部品6の断面図を示し、図2はそのグリース溜り部品6を組み付けたグリース溜り付き転がり軸受20の断面図を示す。
 グリース溜り付き転がり軸受20は、図2に示すように、内輪1、外輪2、およびこれら内外輪1,2の軌道面1a,2a間に介在した複数の転動体3を有する転がり軸受5と、この転がり軸受5の外輪2に隣接して配置されるグリース溜り部品6とを有する。複数の転動体3は、保持器4に保持され、内外輪1,2間の軸受空間の一端は、シール51によって密封されている。この転がり軸受20はアンギュラ玉軸受であり、シール51は軸受背面側の端部に設けられ、グリース溜り部品6は軸受正面側に設けられる。軸受正面側ではグリース溜り部品6がシールを兼ねており、軸受正面側からのグリース漏れが防止される。図1~10において、交差したハッチングで示す部分は、グリース7の充填された部分を示す。転がり軸受20の内輪1は、図示しない主軸に嵌合して回転可能とされ、外輪2はスピンドルユニットにおける図示しないハウジングの内周に嵌合状態で固定支持される。
[0018]
 固定側軌道輪となる外輪2には、その軌道面2aに続く段差面2bが、転動体3から離れる外輪正面側、つまり軌道面2aにおける接触角が生じる方向と反対側の部分に続いて設けられている。この段差面2bは、軌道面2aから外径側に延びて外輪正面側に対面する面である。
[0019]
 グリース溜り部品6は転がり軸受5とは別体の部品として構成され、図1に示すように、外輪間座8と、この外輪間座8の内周に取付けられたグリース溜り部品本体9とでなる。前記外輪間座8が外輪2の正面側の幅面に接して設けられることで、内輪位置決め間座26の外径側にグリース溜り部品6が配置される。グリース溜り部品本体9は、内部がグリース溜り12となる環状の容器部10と、この容器部10から突出して外輪2の内周面2cに沿って軌道面2aの近傍まで挿入される環状の軸受内挿入部11とでなる。具体的には、軸受内挿入部11は外輪2の内周面2cに沿って軸受内に挿入され、図3に拡大して示すように、軸受内挿入部11の先端面が、外輪2の前記段差面2bとの間に、グリース基油の滲み出し用の隙間13を形成する。この軸受内挿入部11は、内部がグリース7の流路14となり、先端11aに円周方向に延びるスリット状のグリース基油滲み出し口15を有する。また、軸受内挿入部11の先端外周面とこれに対面する外輪2の内周面2cとの間には、前記グリース基油滲み出し口15と隙間13とを繋ぐ流路16が形成される。これにより、容器部10の内部のグリース溜り12は、流路14、グリース基油滲み出し口15、流路16を介して隙間13に連通する。
[0020]
 グリース溜り部品6には、その外輪間座8における外輪接面側の端面と、軸受内挿入部11の外周面との交差部の全周にわたってOリング等の弾性密封部材17が設けられる。外輪間座8を外輪2の正面側の幅面に接して設けた状態で、外輪2と外輪間座8の接触部に前記弾性密封部材17が介在することにより、その接触部の密封が図られグリースの漏出が防止される。
[0021]
 グリース溜り部品6は、転がり軸受5に組み付ける前の別体品の状態では、図1のように、軸受内挿入部11のグリース基油滲み出し口15に達するまでグリース溜り12内にグリース7を100%封入後、そのグリース基油滲み出し口15が取り外し自在なシールテープ等の封止部材18で封止される。封止部材18は、シールテープの他に、プラスチック製やゴム製のリング状等のキャップとしても良い。この封止部材18は、グリース溜り部品6を転がり軸受20に組み付けるとき取り外される。
[0022]
 このように、このグリース溜り部品6は、転がり軸受20の固定側駆動輪である外輪2に隣接して配置される部品であって、内部がグリース溜り12となる環状の容器部10と、この容器部10から突出して外輪2の軌道面2aが形成された内周面2cに沿って軌道面2aの近傍まで挿入される環状の軸受内挿入部11とを有し、この軸受内挿入部11は、内部がグリース7の流路14となり、先端11aに円周方向に延びるスリット状のグリース基油滲み出し口15を有し、転がり軸受5に組み付ける前の別体品の状態では、前記グリース基油滲み出し口15を取り外し自在な封止部材18で封止しているので、別体品として取り扱ってもグリース7が露出せず、グリース封入量の管理等に不安を与えることなく容易に取り扱うことができ、製品の信頼性を向上させることができる。
[0023]
 このグリース溜り部品6を図2のように組み付けたグリース溜り付き転がり軸受20の作用は以下の通りである。主軸などへ軸受を組み込んだ時、グリース溜り部品6のグリース溜り12、流路14,16および隙間13にはグリース7が充填されており、軸受内へは初期潤滑用としてのグリースが封入されている。
[0024]
 軸受を運転すると、密閉されたグリース溜り12に溜められたグリース7において、運転時の温度上昇により膨張率の異なる基油と増稠剤とが分離する。同時に、密閉されたグリース溜り12の内部圧力が上昇する。この内部圧力により、分離された基油が流路14、グリース基油滲み出し口15、流路16を経て、隙間13から外輪2の軌道面2aに向けて吐出される。温度が上昇して定常状態になると、内部圧力の上昇要因が消滅するので、基油の吐出と並行して内部圧力が徐々に減じ、単位時間当たりの基油吐出量も減少していく。その後、運転が中止されると、グリース溜り12の温度も下降し、グリース溜り12の内部圧力がほぼ大気圧となる。このとき、圧力による基油の吐出はなく、隙間13には基油が満たされる。したがって、運転停止状態では、グリース溜り12は密閉された状態にある。
 その後、運転が再開されると、グリース溜り12の内部圧力が再度上昇する。このような温度上昇と下降のヒートサイクルによって、グリース溜り12内での圧力変動が繰り返され、グリース7から分離した基油が確実に隙間13に移動して、外輪2の軌道面2aに繰り返し供給される。
[0025]
 また、上記ヒートサイクルによる基油吐出作用とは別に、以下に示す毛細管現象による基油吐出作用も加わる。すなわち、軸受の停止時には、グリース7中の増稠剤および前記隙間13の毛細管現象により、グリース7の基油が流路14,16から隙間13に移動し、この毛細管現象と油の表面張力とが相まって隙間13に基油が油状で保持される。軸受を運転すると、隙間13に貯油されていた基油は、運転で生じる外輪2の温度上昇による体積膨張と、転動体3の公転・自転で生じる空気流とにより隙間13から吐出されて、外輪2の軌道面2aに付着しながら移動して転動体接触部に連続的に補給される。
[0026]
 このように、このグリース溜り付き転がり軸受20では、運転停止と運転再開の繰り返しに伴うグリース溜り12でのヒートサイクルによる圧力変動で、グリース7から分離した基油が前記隙間13を経て外輪2の軌道面2aに吐出されるので、潤滑油の供給が確実に行われる。加えて、前記隙間13での上記した毛細管現象によっても基油が外輪2の軌道面2aに吐出されるので、潤滑が一層確実なものとなる。
 これにより、軸受内に封入したグリースだけを使用して高速化と長寿命化、メンテナンスフリーを達成できる。
[0027]
 また、第1実施形態では、固定側軌道輪が外輪2であり、この外輪2に前記段差面2bが設けられるが、グリース封入状態で転がり軸受20を回転させたときに、封入グリースが遠心力で外輪内径部に飛散するため、前記隙間13と軌道面2aとの間の基油の繋がりが確実となる。そのため、転動体接触部で潤滑油として消費される分の基油が、グリース溜り12から隙間13を経て軌道面2aに補給される作用が高められ、より安定した潤滑油の補給が行われる。ここで、軸受内挿入部11が段差面2bに向かって挿入されているので、転動体3および保持器4と干渉することなく、軸受内挿入部11を軌道面2aの近傍まで挿入して、軌道面2aに円滑に基油を供給できる。
[0028]
 また、第1実施形態では、転がり軸受5がアンギュラ玉軸受であり、前記段差面2bが、軌道面2aにおける接触角が生じる方向と反対側の縁部に続いて形成されているので、段差面2bをより転動体3の直下に配置し易くなる。これにより、転動体3の中心付近に段差面2bを近づけることができ、隙間13から軌道面2aへの潤滑油の補給がより効率良く行える。
[0029]
 なお、上記した第1実施形態では、グリース溜り部品6における軸受内挿入部11の先端11aを外輪2の内周の段差面2bに対向させて、軸受内挿入部11の先端11aと外輪2との間にグリース溜り12に連通する流路16と隙間13とを形成する構成例の場合について説明したが、これに限らず、図4に示す第2実施形態のように、テーパ面とした外輪2の正面側内周面2cに沿って前記軸受内挿入部11を配置して、軸受内挿入部11の外周と外輪2の内周面2cとの間にグリース溜り12に連通する隙間13を形成する構成例に適用しても良い。
[0030]
 図5は、図1~図3に示した第1実施形態のグリース溜り付き転がり軸受20を用いた工作機械用スピンドル装置の例を示す。この工作機械用スピンドル装置では、上記転がり軸受20の2個を、背面合わせとして用いている。2個の転がり軸受20A,20Bは、ハウジング22内で主軸21の両端を回転自在に支持する。各転がり軸受20A,20Bの内輪1は、内輪位置決め間座26および内輪間座27により位置決めされ、内輪固定ナット29により主軸21に締め付け固定されている。外輪2は、外輪間座8,30および外輪押え蓋31,32によりハウジング22内に位置決め固定されている。ハウジング22は、ハウジング内筒22Aとハウジング外筒22Bとを嵌合させたものであり、その嵌合部に、冷却のための通油溝33が設けられている。
[0031]
 主軸21は、その前側の端部21aに工具またはワーク(図示せず)を着脱自在に取付けるチャック(図示せず)が設けられ、後ろ側の端部21bは、モータ等の駆動源が回転伝達機構(図示せず)を介して連結される。モータは、ハウジング22に内蔵しても良い。このスピンドル装置は、例えばマシニングセンタ、旋盤、フライス盤、研削盤等の各種の工作機械に適用できる。
[0032]
 この構成のスピンドル装置によると、この実施形態のグリース溜り付き転がり軸受20A,20Bにおける潤滑油の安定供給、高速化、長寿命化、メンテナンスフリー化の作用が、効果的に発揮される。
[0033]
 前記第1および第2実施形態では、グリース基油滲み出し口15が取り外し自在な封止部材18で封止されるグリース溜まり付き転がり軸受を提案したが、この発明は封止部材18を使用しない場合にも応用できる。次に、この発明の応用例を図6~図10を参照しながら説明する。図1ないし図3に示す第1実施形態と同一部分には同一の符号を付してその詳しい説明は省略し、相違する部分について説明する。応用例と前記第1実施形態との相違点は、図6(A)に示すように、外輪2に、グリース溜り部品6の係合突部54が係合する被係合部2dが形成されて、シールされている点である。
 この発明の第1応用例を図6および図7と共に説明する。
[0034]
 図6(A)において、外輪2の前記段差面2bから正面側へと延びる内周面2cの途中の箇所には、前記グリース溜り部品6の係合突部(環状の係合片)54が係合する被係合部となる環状溝2dが形成されている。
[0035]
 グリース溜まり部品本体9は、内部がグリース溜り12となる環状の容器部10と、この容器部10から突出して軸受外輪2の前記内周面2cに沿って軌道面2aの近傍まで挿入される環状の軸受内挿入部11とを有する。グリース溜まり部品6は、外輪間座8と、この外輪間座8の内周に圧入嵌合などにより取付けられるグリース溜まり部品本体9とでなる。このグリース溜まり部品本体9は、軸受隣接側とは反対側の端部が側壁部10cで繋がった内外の周壁部10a,10bを有し、その内部空間がグリース溜り12とされる。
[0036]
 軸受内挿入部11は、グリース溜まり部品本体9の内周側の周壁部10aから軸受内に延びて先端が外輪2の軌道面2aの近傍に位置する内周側片11aと、グリース溜まり部品本体9の外周側の周壁部10bから延びて先端が外輪2の内周面2cにおける軌道面2aと端部との間の途中の箇所に位置する外周側片10bとを有する。外周側片10bの先端には、図6(B)に示すように外径側に突出する係合片54が、被係合部である外輪2の環状溝2dに係合する係合突部として設けられ、この係合片54の先端は弾性体55で覆われている。弾性体55は、例えば前記係合片54が嵌合する嵌合溝を内周に形成したゴムまたは軟質合成樹脂等のリング状の部材からなる。上記係合片54を転がり軸受5内に向けて軸方向に挿入し、外輪2の環状溝2dに係合させることにより、前記外輪間座8が外輪2の正面側の幅面に接した状態で、グリース溜り部品6が転がり軸受5に一体化され、内輪位置決め間座26の外径側にグリース溜り部品6が配置される。このとき、被係合部(環状溝2d)と係合突部(係合片54)との間には弾性体55が介在するので、係合部分からのグリース7の漏れが防止される。
[0037]
 この軸受内挿入部11は、内部がグリース7の流路14となり、先端に円周方向に延びるグリース基油滲み出し口15Aを有する。図7に拡大して示すように、軸受内挿入部11における内周側片11aの先端面11aaは、これに対面する外輪2の段差面2bとの間に、グリース基油の滲み出し用の隙間13を形成する。また、前記内周側片11aの先端外周面11abは、これに対面する外輪2の内周面2cとの間に、前記グリース基油滲み出し口15Aと隙間13を繋ぐ流路16を形成する。
 この応用例においても、第1実施形態の場合と同様に、軸受の運転および停止によるヒートサイクルによって、グリース溜まり12内での圧力変動が繰り返され、これに毛細管現象も加わって、分離した基油が外輪2の軌道面2aに繰り返し供給される。
[0038]
 このように、このグリース溜り付き転がり軸受20は、グリース溜り部品6に、固定側軌道輪である外輪2の内周面2cに形成された環状の被係合部(環状溝2d)に係合する係合突部(係合片54)を設けたため、転がり軸受5の外輪2の幅を広くすることなく、グリース溜り部品6を転がり軸受5に一体化することができる。また、この場合の転がり軸受5として、量産されているシール付き転がり軸受を使用すれば、その外輪のシール溝を上記被係合部(環状溝2d)としてそのまま利用できるので、追加加工が要らずコスト低減が可能となる。
[0039]
 なお、上記した応用例1では、グリース溜り部品6における軸受内挿入部11の先端を外輪2の内周の段差面2bに対向させて、軸受内挿入部11の先端と外輪2との間にグリース溜り12に連通する流路16と隙間13とを形成する構成例の場合について説明したが、これに限らず、図8に示す応用例2のように構成しても良い。すなわち、テーパ面とした外輪2の正面側内周面2cに沿って前記軸受内挿入部11を配置して、軸受内挿入部11の外周と外輪2の内周面2cとの間にグリース溜り12に連通する隙間13を形成する構成例に適用しても良い。
[0040]
 図9は、この発明の応用例3を示す。この実施形態のグリース溜り付き転がり軸受20は、図6および図7に示す実施形態において、外輪2の被係合部として、外輪2の内周面2cにおける端部の近傍部位に、環状の切欠部2eが段差状に設けられている。またグリース溜り部品6の係合突部として、外輪間座8の外輪正面側幅面に接面する端部に、外径を外輪間座8の他部よりも段差状に小径とした環状突部8aが設けられている。係合突部となる外輪間座8の前記環状突部8aを、転がり軸受6内に向けて軸方向に挿入し、圧入あるいは接着により外輪2の切欠部2eに係合させることにより、グリース溜り部品6が転がり軸受5に一体化される。この係合操作時に、外輪2の切欠部2eの隅部には、例えばOリングなどの環状の弾性体55Aが配置される。これにより、被係合部(切欠部2e)と係合突部(環状突部8a)との間に弾性体55Aが介在するので、係合部分からのグリース7の漏れが防止される。なお、この実施形態では、図6および図7に示す応用例1におけるグリース溜まり部品本体9の外周側の周壁部10bは省略されている。その他の構成は図6および図7に示す応用例1と同様である。
[0041]
 図10は、図6および図7に示した応用例1のグリース溜り付き転がり軸受20を用いた工作機械用スピンドル装置の例を示す。構成は上述の図5の場合と同様である。
[0042]
 この構成のスピンドル装置によると、上述の図5の場合と同様に、この応用例1のグリース溜り付き転がり軸受20A,20Bにおける潤滑油の安定供給、高速化、長寿命化、メンテナンスフリー化の作用が、効果的に発揮される。
[0043]
 図6ないし図10に示したこの発明の応用例は次の態様1~4を含む。
[態様1]
[0044]
 態様1に係るグリース溜り付き転がり軸受は、内輪、外輪、およびこれら内外輪の軌道面間に介在した複数の転動体を有する転がり軸受と、この転がり軸受に対して、軌道輪である内輪および外輪のうち、回転しない固定側軌道輪に隣接して配置されるグリース溜り部品とでなり、このグリース溜り部品は、内部がグリース溜りとなる環状の容器部と、この容器部から突出して前記固定側軌道輪の軌道面が形成された周面に沿って前記軌道面の近傍まで挿入される環状の軸受内挿入部とを有し、この軸受内挿入部は前記固定側軌道輪の周面との間にグリースの流路を形成し、または内部がグリースの流路となるものであり、前記グリース溜り部品に、前記固定側軌道輪の前記周面に形成された環状の被係合部に係合する係合突部が設けられている。
[0045]
 特許文献2に開示の技術には、軸受外輪の幅を広げることで、グリース溜り部品を転がり軸受に一体に組み込んで一体品とする構成例のものもあるが、この場合には軸受外輪の製作が困難となり、コストアップを招くことになる。これに対し、この態様によれば、グリース溜り部品に、固定側軌道輪の周面に形成された環状の被係合部に係合する係合突部を設けたため、転がり軸受の幅を広くすることなく、グリース溜り部品を転がり軸受に一体化することができる。この場合の転がり軸受として、量産されているシール付き転がり軸受を使用すれば、その固定側軌道輪シール溝を上記被係合部としてそのまま利用できるので、追加加工が要らずコスト低減が可能となる。
[態様2]
[0046]
 態様1において、前記固定側軌道輪が外輪であり、前記グリース溜り部品の前記容器部が、外輪間座と、この外輪間座の内周に取付けられて内外の周壁部を有する容器本体とでなり、前記軸受内挿入部が、前記容器本体の内周側の周壁部から延びて先端が前記軌道面の近傍に位置する内周側片と、前記容器本体の外周側の周壁部から延びて先端が前記外輪の内周面における前記軌道面と端部との間の途中の箇所に位置する外周側片とを有し、この外周側片の先端に、前記係合突部である外径側に突出する係合片を有し、この係合片は先端が弾性体で覆われ、前記外輪の内周面に設けられた前記被係合部となる環状溝に係合したものであっても良い。
 この態様の場合、グリース溜り部品の容器本体が外周側片を有するため、外輪に設けられた前記被係合部となる環状溝への係合部分である係合片が簡単に形成でき、また外輪間座が簡素な形状のもので済む。
[態様3]
[0047]
 態様1において、前記固定側軌道輪が外輪であり、前記グリース溜り部品の前記容器部が、外輪間座と、この外輪間座の内周に取付けられた容器本体とでなり、前記外輪の前記被係合部が、外輪の端部内周に設けられた段差状の環状の切欠部であり、前記グリース溜り部品の係合突部が前記外輪間座の端面に設けられた環状突部であっても良い。
 この態様の場合、外輪間座に外輪への係合用の環状突部を設けるため、グリース溜り部品の容器本体が簡素な形状のもので済む。
[態様4]
[0048]
 態様1において、前記固定側軌道輪は、軌道面に続く段差面が転動体から離れる方向に設けられたものであり、前記軸受内挿入部は、前記固定側軌道輪の軌道面が形成された周面に沿って軸受内に挿入され、その先端面が前記固定側軌道輪の前記段差面との間にグリース基油の滲み出し用の隙間を形成するものであっても良い。
 この態様の場合、固定側軌道輪の段差面とグリース溜り部品の軸受内挿入部の先端との間でグリース基油の滲み出し用の隙間が形成されるため、上記隙間の設計や管理が容易に行えて、製品間でばらつきを生じることなく、グリースの滲み出しを一定化させることができる。
[0049]
 以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。したがって、そのような変更および修正は、添付のクレームから定まるこの発明の範囲内のものと解釈される。

請求の範囲

[1]
 内輪、外輪、およびこれら内外輪の軌道面間に介在した複数の転動体を有する転がり軸受に対して、軌道輪である内輪および外輪のうち、回転しない固定側軌道輪に隣接して配置されるグリース溜り部品であって、内部がグリース溜りとなる環状の容器部と、この容器部から突出して前記固定側軌道輪の軌道面が形成された周面に沿って前記軌道面の近傍まで挿入される環状の軸受内挿入部とを有し、この軸受内挿入部は、内部がグリースの流路となり、先端に円周方向に延びるスリット状のグリース基油滲み出し口を有し、このグリース基油滲み出し口を、取り外し自在な封止部材で封止した転がり軸受のグリース溜り部品。
[2]
 内輪、外輪、およびこれら内外輪の軌道面間に介在した複数の転動体を有する転がり軸受と、前記内輪および外輪のうち、回転しない固定側軌道輪に隣接して配置されるべき請求項1に記載の転がり軸受のグリース溜まり部品とを備えた軸受セット。
[3]
 請求項2において、前記軸受の前記固定側軌道輪が外輪であり、前記グリース溜まり部品が、外輪間座と、この外輪間座の内周に取付けられ、前記容器部および前記軸受内挿入部を有するグリース溜り部品本体とでなる軸受セット。
[4]
 請求項2において、前記固定側軌道輪は、軌道面に続く段差面が転動体から離れる方向に延びて設けられており、前記軸受内挿入部は、前記固定側軌道輪の軌道面が形成された周面に沿って軸受内に挿入され、その先端面が、前記固定側軌道輪の前記段差面との間に、グリース基油の滲み出し用の隙間を形成するものである軸受セット。
[5]
 内輪、外輪、およびこれら内外輪の軌道面間に介在した複数の転動体を有する転がり軸受と、請求項1に記載のグリース溜り部品とでなり、
 このグリース溜り部品が前記封止部材を取り外した状態で前記固定側軌道輪の軌道面が形成された周面に沿って前記軌道面の近傍まで挿入されているグリース溜り付き転がり軸受。
[6]
 請求項5において、前記固定側軌道輪は、軌道面に続く段差面が転動体から離れる方向に延びて設けられており、前記軸受内挿入部は、前記固定側軌道輪の軌道面が形成された周面に沿って軸受内に挿入され、その先端面が、前記固定側軌道輪の前記段差面との間に、グリース基油の滲み出し用の隙間を形成しているグリース溜り付き転がり軸受。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]