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1. (WO2007114261) 化成処理性に優れた高強度冷延鋼板
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明 細書

化成処理性に優れた高強度冷延鋼板

技術分野

[0001] 本発明は、高強度を有すると共に、リン酸塩処理などの化成処理性に優れた冷延 鋼板に関するものである。

背景技術

[0002] 最近、自動車などの軽量ィ匕に伴う燃費向上、更には排ガス低減の観点から、鋼材 の一層の高強度化が求められており、特に冷延鋼板についてはハイテン化(高強度 ィ匕)が急速に進んできている。こうした要望に対しては、合金元素を添加することで高 強度化を図るのが一般的であるが、合金元素の添加量を多くすると化成処理性が低 下するという問題が生じてくる。中でも Moは、高い強度向上効果を有している割には 延性の低下が少ないことから、強度向上元素として汎用されている。ところが鋼に Mo を添加すると、化成処理液中の鋼板の自然電位が貴な方向に進み、化成処理性が 著しく劣化するという新たな問題が生じてくる。

[0003] そこで、合金元素の添加による高強度化の目的を果たしつつ、化成処理性を改善 する方法も幾つか提案されて、る。

[0004] 例えば特許文献 1には、鋼板表面の粗度の規則性を表わす規則度パラメータを 0.

25%以下に抑えることで、化成処理性を高める方法が開示されている。この場合の 制御対象は、低炭素キルド鋼に属する 340MPa級以下のものであり、またこの技術 は、本件発明で特に注目する Mo添加鋼に対しては殆どその効果が発現されない。 また高強度鋼板を得るには、 Siや Mnと、つた強化作用を有する合金元素の活用も 有用な手段となる。ところがそれらの合金元素は、冷延後の焼鈍工程で表面酸化物 を生成するため、その表面酸ィヒ物を制御しない限り、表面粗度の規則度パラメータを 調整するだけでィ匕成処理性を改善することはできない。

[0005] また特許文献 2では、高強度冷延鋼板の表面に 20〜1500mgZm2程度の鉄被覆 を形成し、鋼板表面に濃化した合金元素や選択酸化層の影響を抑えることで化成処 理性の低下防止を図っている。ところがこの方法では、鉄被覆を形成するために電 気メツキ処理が必要となり、生産性やコストの問題が生じてくる。

[0006] 他方、本発明者らは、鋼板表面に生成する酸化物の形態を制御することで、リン酸 塩結晶の核生成サイトとして有効に活用し、化成処理性を高める技術を開発し、先に 特許文献 3として提案して、る。

特許文献 1 :特開昭 62— 151208号公報

特許文献 2:特開平 5— 320952号公報

特許文献 3 :特開 2005— 187863号公報

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0007] 本発明は上記の様な状況の下で、 Moを含まない高強度冷延鋼板は勿論のこと、 高強度化を期して Moを添加した冷延鋼板であっても、安定して優れた化成処理性 を発揮し得る様な高強度冷延鋼板を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008] 上記課題を解決することのできた本発明に係る高強度冷延鋼板は、たとえば 390 MPa以上、更には 780MPaレベル以上の引張強度を有する高強度冷延鋼板であつ て、該鋼板表面に存在する凹凸の最大深さ (Ry)が以上、該凹凸の平均間 隔(Sm)が 30 μ m以下と、う要件を満たす他、

1)表面凹凸の負荷長さ率 (tp40)が 20%以下、および

2)表面凹凸の負荷長さ率 (tp60)と (tp40)の差が 60%以上、

という 2つの要件のうちいずれ力 1方の要件を満たし、より好ましくは、これら 1) , 2)の 要件を同時に満たし、

更には、同表面に存在する幅 3 m以下で、深さ 5 m以上のクラックが存在しない 化成処理性に優れた高強度冷延鋼板である。

[0009] 本発明に係る上記鋼板の成分組成は、要求強度に応じて任意に変更できるが、好 ましいのは、基本成分として C : 0. 05〜: L 0%、 Si: 2%以下、 Mn: 0. 3〜4. 0%、 A1: 0. 005〜3. 0%を満たし、好ましくは更に、高強度ィ匕のため、 Mo : 0. 02〜: L 0 %を含み、あるいは、必要に応じて更に Cr: l. 0%以下、 Ti: 0. 2%以下、 Nb : 0. 1 %以下、 V: 0. 1%以下、 Cu: l. 0%以下、 Ni: l. 0%以下、 B : 0. 002%以下、 Ca :0. 005%以下よりなる群力も選択される少なくとも 1種の元素を含むもので、残部は 鉄と不可避不純物力なる鋼である。

[0010] また、本発明に係る高強度冷延鋼板の強度レベルは、用途 ·目的によっても変わつ てくるので一律に定めることはできないが、汎用的な強度レベルは引張強度で 390 MPa以上、より好ましくは 780MPa以上を有するものである。こうした強度レベルとィ匕 成処理性を満たす鋼板の好まし、金属組織は、 a)フェライトと焼戻しマルテンサイトと の 2相組織を有するものと、 b)フェライトが 5〜80面積0 /0、ベイナイトが 5〜80面積0 /0 で、フェライトとベイナイトの合計量が 75面積%以上であり、且つ残留オーステナイト 力 面積%以上の複合組織を有するものである。

発明の効果

[0011] 本発明によれば、冷延鋼板の表面に存在する凹凸の最大深さ (Ry)と該凹凸の 平均間隔 (Sm)を規定すると共に、当該表面凹凸の負荷長さ率 (tp40)および Zま たは該負荷長さ率 (tp40)と (tp60)の差を規定し、更にはクラックの幅と深さを特定 することによって、化成処理性を著しく改善することができ、 Moを含まない冷延鋼板 はもとより、化成処理性を劣化させる Moを高強度化のため適量含有させた高強度冷 延鋼板であっても優れた化成処理性を保証し、強度と化成処理性を兼ね備えた冷延 鋼板を安価に提供できる。

図面の簡単な説明

[0012] [図 1]鋼板表面に存在する凹凸の最大深さ (Ry)の定義を説明するための図である。

[図 2]鋼板表面に存在する凹凸の平均間隔 (Sm)の定義を説明するための図である

[図 3]鋼板表面に存在する凹凸の負荷長さ率 (tp40) , (tp60)の定義を説明するため の図である。

[図 4]実験で採用した酸洗前の加熱焼入れ ·焼戻しヒートパターンの概要を示す図で ある。

発明を実施するための最良の形態

[0013] 本発明者らは前述した様な解決課題の下で、特に高強度化の手段として Moを添 加した冷延鋼板を対象として、 Mo添加による化成処理性低下の問題を改善すべく

鋭意研究を進めてきた。

[0014] その結果、冷延鋼板表面の凹凸の最大深さ (Ry)を「10 ;ζ ΐη以上」、該凹凸の平均 間隔(Sm)を「30 μ m以下」に特定すると共に、表面凹凸の負荷長さ率 (tp40)を 20 %以下に、および Zまたは該凹凸の負荷長さ率 (tp60)と (tp40)の差 [ (tp60) - (t p40) ]を 60%以上に調整し、更に、同表面に存在するクラックの幅と深さを特定して やれば、 Moを含まない冷延鋼板はもとより、更なる高強度化を期して適量の Moが 添加された冷延鋼板であっても化成処理性の低下が抑えられ、優れた化成処理性と 強度を兼ね備えた冷延鋼板が得られることをつき止めた。

[0015] 本発明で規定する表面凹凸の上記最大深さ (Ry)とは、例えば図 1に示す如く表面 粗さ曲線の最高山頂 (Rt)と最深谷底 (Rb)との間隔を意味し、該凹凸の平均間隔 (S m)とは、例えば図 2に示す如く表面粗さ曲線における平均線の山力谷に変わる点 を変化点として、変化点から次の変化点までの間隔 (S 1 , S2…… S n )の平均値を意味 する。また負荷長さ率 [profile bearing length ratio] (tp)とは、例えば図 3に示す如く 表面粗さ曲線をある切断線レベル (P)で切断したときの切断部分長さ (1 1 , 12…… 1 n) の測定長さ (L)に対する百分率を意味し、上記切断線レベル (p)が最高山頂 (Rt)で あるものは 0 (ゼロ)で(tpO)、最深谷底(Rb)であるものは 100で(tplOO)と表わされ る。そして、該切断線レベル (p)が「40」または「60」であるときの上記切断部分長さ (1

1 +12 +13 +…… 1 n )の測定長さ(L)に対する百分率力(tp40)または (tp60)で表わ される値である。

[0016] そして、上記表面凹凸の最大深さ (Ry)が「10 m以上」、平均間隔(Sm)が「30 m以下」で、且つ、上記表面凹凸の負荷長さ率 (tp40)が 20%以下、および Zまたは 負荷長さ率 (tp60)と(tp40)の差 [ (tp60)—(tp40) ]が 60%以上であり、更に、同 表面に幅 3 μ m以下で深さ 5 μ m以上のクラックが存在しないものは、 Moを含まない 鋼材は勿論のこと、適量の Moを含有する冷延鋼板であっても安定して優れた化成 処理性を示すことが確認されたのである。

[0017] 本発明においては、上記の様に表面凹凸の最大深さ (Ry)が相対的に深ぐ且つ 該凹凸の平均間隔 (Sm)が相対的に小さいほど、表面凹凸が微細で且つ深くリン酸 亜鉛結晶の核生成サイトとしての機能が高まり、全面にリン酸亜鉛結晶が生成、成長

し易くなつて化成処理性が高まるものと考えられる。

[0018] また上記表面凹凸の負荷長さ率 (tp40)が「20%以下」(即ち、相対的に小さい)と いうことは、表面に突出した凸部よりも窪んだ凹部の領域 (面積)が相対的に多いこと を意味しており、該凹部が同様にリン酸亜鉛結晶の核生成サイトとなってリン酸亜鉛 結晶の生成、成長を促し、更に、上記負荷長さ率 (tp60)と (tp40)の差 [ (tp60)— ( tp40) ]が「60%以上」(即ち、 tp60と tp40の差力相対的に大きい)ということは、凸 部の頂部から凹部の底部にわたる斜面力底部方向に直線状の傾斜面を有してい るのではなく湾上に窪んでいることを表わしており、該湾状に窪んだ斜面部分が結晶 析出サイトとして機能することでリン酸亜鉛結晶の生成、成長を促し、化成処理性の 一層の向上に寄与しているものと考えられる。

[0019] また本発明では、鋼板表面の更に他の表面特性として、幅 3 μ m以下で深さ 5 μ m 以上のクラックが存在しないことが必要となる。このクラックとは、 SEM写真により 200 0倍で鋼板表面近傍の断面を任意の 10視野で観察することによって確認されるもの で、鋼板表面にこの様な鋭利なクラックが存在すると、化成処理時に当該部位にリン 酸亜鉛結晶が付着し難くなり、満足な化成処理性が得られなくなる。よって、上記の 様な幅と深さの鋭利なクラックは存在しな、ことが、優れた化成処理性を確保する上 で重要な要件となる。

[0020] いずれにしても本発明では、後記実施例でも明らかにする如ぐ上記表面凹凸の 最大深さ (Ry)を「10 /z m以上」、平均間隔(Sm)を「30 m以下」にする他、これま では化成処理性の観点から全く認識されたことのない負荷長さ率 (tp40)を「20%以 下」、および Zまたは負荷長さ率 (tp60)と(tp40)の差 [ (tp60)—(tp40) ]を「60% 以上」と定め、更には、幅 3 m以下で深さ 5 m以上のクラックが存在しないことを規 定することにより、安定して優れたィ匕成処理性を得ることができたのである。

[0021] 化成処理性を高める上でより好ましいのは、平均間隔(Sm)が 20 m以下、負荷 長さ率 (tp40)が 15%以下、負荷長さ率の差 [ (tp60)—(tp40) ]が 70%以上で、幅 3 μ m以下で深さ 5 μ m以上のクラックが存在しないものである。尚、負荷長さ率 (tP6 0)の値は特に規定しないが、化成処理性を高める上で好ましいのは 60%以上、より 好ましくは 70%以上である。

[0022] 上記の様な表面性状とすることで、化成処理によって鋼板表面に析出するリン酸塩 結晶はより微細なものとなり、またリン酸塩の健全性の指標である P比、即ち Phosphop hyllite (ホスホフエライト: P)と Hopeite (ホパイト: H)の比(PZP + H)はより 1に近づき 、化成処理性が向上する。また Mo添加鋼では、化成処理液中で自然電位が貴な方 向に進むため化成処理性が低下する力上記の様な表面性状にしてやれば、 Moに よる化成処理性の劣化を補って余りある優れたィ匕成処理性を得ることができる。

[0023] 上記の様な表面性状の冷延鋼板を得るための方法は特に制限されないが、本発 明者らの実験によれば、焼鈍後に強酸洗を行うことで上記表面性状に近づけること ができることを確認して!/、る。

[0024] 冷延鋼板は、焼鈍後そのままで酸洗を施さな、場合もある一方で、加熱時や水焼 入れ時に鋼板表面に生成する酸化物を除去するために酸洗を施す場合もある。その 場合の酸洗は、通常 3〜7質量%程度の塩酸水溶液を用いて 40〜80°C程度で 5〜 20秒程度行われるが、本発明で意図する上記表面性状を得るには、酸洗液の塩酸 濃度を高めに、酸洗温度を高めに、あるいは酸洗時間を長めに設定することで達成 できる。より具体的には、酸洗液の塩酸濃度を A(%)、酸洗温度を B (°C)、酸洗時間 (浸漬時間)を C (秒)とした時、これらが下記 (I)式の関係

(A/100) X B2 X C≥ 14000……(I)

を満たす様に制御(例えば、 11%HC1— 80°C— 30秒、 15%HC1— 80°C— 20秒、 16%HC1— 85°C— 15秒など)すれば、前述した様な表面性状が得られ易くなること を確認している。

[0025] また鋼板表面にできる鋭利なクラックは、熱間圧延および連続焼鈍時に生成した Si 酸ィ匕物を含む線状ィ匕合物が酸溶解もしくは機械的に脱落することにより生じると考え られるが、上記の様な強酸洗条件で酸洗を行うと表面の凹凸が緩和され、化成処理 性を阻害する鋭利なクラックは殆どなくなることを確認している。

[0026] 本鋼板は化成処理性に優れて!/、るので、その用途としては、合金元素を多く含む 鋼板が用いられる自動車の構造部品に特に適している。例えば、フロントやリア部の サイドメンバやクラッシュボックス等の衝突部品をはじめ、センターピラーレインフォー ス等のビラ一類、ルーフレールレインフォース、サイドシル、フロアメンバー、キック部

などの車体構成部品に好適に使用される。

[0027] 次に、本発明で使用する鋼材の好ま、成分組成を定めた理由は下記の通りであ る。

[0028] C : 0. 05〜: L 0%

Cは、冷延鋼板の強度を高める上で重要な元素であり、 0. 05%未満では Cの大部 分がフェライトに固溶してしまうため、高強度化に寄与する炭化物 (基本的には鉄の 炭化物であるセメンタイト、あるいは、必要に応じて添加されることのある Nb, Ti, Vな どの炭化物)の生成が不十分で、本発明で意図するレベルの強度が得られ難くなる 。し力し多過ぎると、成形カ卩ェ性が悪くなるほか溶接性にも悪影響が現れてくるので、 多くとも 1. 0%以下、より好ましくは 0. 23%以下に抑えるのがよい。

[0029] Si: 2. 0%以下(0%を含む)

Siは、鋼を溶製する際に脱酸性元素として有効に作用する他、オーステナイトへの 炭素の濃縮を促し、室温でオーステナイトを残留させて優れた強度—延性バランスを 確保するうえでも有効である。こうした作用を有効に発揮させるには、 Siを 0. 1%以 上、好ましくは 0. 5%以上含有させるのがよい。し力し Si含量が多くなりすぎると、固 溶強化作用が顕著となって圧延負荷が増大する。また、表面欠陥が生じ易くなり、更 には酸洗性や塗装性にも悪影響が現われてくるので、多くとも 2. 0%以下、好ましく は 1. 5%以下に抑えるのがよい。

[0030] Mn: 0. 3〜4. 0%

Mnは、強度を高める効果を有する他、鋼中に混入して脆ィ匕要因となる Sを MnSと して固定する上でも重要な元素である。これらの作用を有効に発揮させるには、少な くとも 0. 3%以上、好ましくは 0. 5%以上含有させるのがよい。し力し多過ぎると、延 性を低下させて加工性に悪影響を及ぼすば力りでなく溶接性も低下させるので、多く とも 4. 0%以下、好ましくは 2. 5%以下に抑えるのがよい。

[0031] A1: 0. 005〜3. 0%

A1は脱酸作用を有する元素であり、 A1脱酸を行う場合は 0. 005%以上の A1を添 加する必要がある。これ未満では、脱酸不足となって MnO, SiO 2などの酸ィ匕物系介 在物が多量に生成し、局部的な加工性の低下を引き起こす。また A1は、 Siと同様に オーステナイトへの炭素の濃縮を促して室温でのオーステナイトを残留させ、優れた 強度一延性バランスを確保する上でも有効に作用する。これらの効果を有効に発揮 させるには、 A1を少なくとも 0. 005%以上、好ましくは 0. 01%以上、更に好ましくは 0. 2%以上含有させるのがよい。しかし A1含量が多すぎると、上記効果が飽和する ばかりか、鋼の脆ィ匕ゃコストアップを招くので、多くとも 3. 0%、好ましくは 2. 0%以下 に抑えるのがよい。

[0032] Al+Si: l. 0〜4. 0%

上記の様に本発明にお、て Siと A1は、何れも室温でのオーステナイトの残留を促 して強度一延性バランスを高める作用を有しているので、後述する金属組織面から の特性をより有効に発揮させるには、 Siと A1を合計で 1. 0%以上、より好ましくは 1. 2%以上含有させるのがよい。し力しこれらの総和が多過ぎると、鋼が脆化傾向を示 す様になるので、合計で多くとも 4. 0%以下、好ましくは 3. 0%以下に抑えるのがよ い。

[0033] Mo : 1. 0%以下

Moは、固溶強化による冷延鋼板の高強度化を進めるうえで重要な元素であり、そ の効果は 0. 02%以上含有させることで有効に発揮される。但し、要求強度が 500M Paレベル未満の場合は、敢えて Moを含有させるまでもない。 Mo量は要求される冷 延鋼板の強度レベルにもよる力その効果がより確実に発揮されるのは 0. 05%以上 である。しかし、 1. 0%を超えると、高強度化への寄与以上に延性 (力卩ェ性)に与える 悪影響が顕著で、強度—伸びバランスが急激に悪くなるので、上限を 1. 0%と定め た。より好ましくは 0. 5%以下に抑えるのがよい。なお本発明は、先にも述べた様に Mo添加により劣化する化成処理性を表面性状の改善で補うところに最大の特徴を 有するものであるが、表面性状による化成処理性改善効果は、 Moを含まない高強 度冷延鋼板につ V、ても有効に発揮される。

[0034] 本発明で使用する鋼の構成元素は上記の通りであり、残部は実質的に Feである。

ここで「実質的に」とは、鋼原料もしくはその製造工程で混入し得る不可避不純物元 素の含有を許容し、或いは前述した各成分元素の作用効果を阻害しない範囲で、更 に他の元素が少量含まれて、てもよ、ことを意味する。その様な不可避不純物元素

としては、例えば P, S, N, Oなどが挙げられ、またその他の元素としては、 Cr, Ti, N b, V, Cu, Ni, B, Caなどが例示される。しかしこれらの元素は、多過ぎると大なり小 なり延性や表面性状を劣化させ、化成処理性に悪影響を及ぼすので、 Crは 1. 0% 以下、 Tiは 0. 2%以下、 Nbは 0. 1%以下、 Vは 0. 1%以下、 Cuは 1. 0%以下、 Ni ίま 1. 00/0以下、 Βίま 0. 0020/0以下、 Caiま 0. 0050/0以下、に夫々抑えるべきである。

[0035] 尚、本発明に係る冷延鋼板の強度は、用途に応じて C, Si, Mn, Moなどの含有率 を変えることで 390MPaレベル以上、更には 780MPaレベル以上の任意の強度に 調整できる。

[0036] 尚、 780MPa級以上の冷延鋼板を得たい場合は、冷延後の連続焼鈍で Ac変態 点以上の温度に加熱した後、所定の徐冷終点温度 (焼入れ開始温度という場合もあ る、通常は 350〜750°C)まで徐冷し、その後様々の方法 (水冷、ガス吹き付け、水冷 ロール抜熱による冷却、ミスト冷却など)で焼入れを行い、更に 150〜550°C程度の 温度で焼戻し処理を行うことにより、金属組織をフェライトー焼戻しマルテンサイトの 2 相組織とするのがよい。 2相組織の好ましい含有比率は、縦断面組織中に占める面 積比率で、フェライト: 5〜95%、焼戻しマルテンサイト: 5〜95%の範囲である。

[0037] あるいは、鋼組成が Si: 0. 1〜2. 0%、 A1: 0. 01〜3. 0%で且つ(Si+Al)が 1. 0 〜4. 0%を満たす鋼材を使用し、冷延後の連続焼鈍で Ac変態点以上の温度に加 熱した後、所定の徐冷終点温度 (例えば 150〜600°C)まで冷却し、その温度域に 6 0秒程度以上滞留させることで、フェライト一ベイナイト一残留オーステナイトからなる 複合組織とするのがよい。

[0038] 該複合組織の場合のフェライト、ベイナイト、残留オーステナイトの好ま、含有比 率は、同じく縦断面組織内に占める面積比率で、フェライト: 5〜80% (好ましくは 30 %以上)、ベイナイト: 5〜80% (好ましくは 50%以下)、残留オーステナイト: 5%以上 の範囲である。フェライトとベイナイトの合計含量は 75%以上、より好ましくは 80%以 上とするのがよぐその上限は、残留オーステナイト量とのバランスによって制御され る。

[0039] なお上記「フェライト」とは、ポリゴナルフェライト、すなわち転位密度の少な、フェラ イトを意味し、特に延性に寄与する組織であるのに対し、ベイナイトは特に強度に寄

与する組織であり、本発明では強度と延性のノンスを図るため、上記金属組織が 重要な意味を持ってくるのである。

[0040] 本発明は以上の様に構成されるが、高強度冷延鋼板を対象として化成処理性を改 善し、特に強化元素として有用な Moを添加した高強度冷延鋼板であっても、表面性 状を適正にコントロールすることで、 Mo添カ卩に伴う現実的な問題点として指摘されて V、た化成処理性の劣化を防止し、高強度と優れた化成処理性を兼ね備えた冷延鋼 板を提供し得ることになった。

実施例

[0041] 以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はもとより下記 実施例によって制限を受けるものではなく、前 ·後記の趣旨に適合し得る範囲で適当 に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらは何れも本発明の技術的範 囲に含まれる。

[0042] 実施例

下記表 1に示す化学成分の鋼材 1〜29を溶製し、铸造によりスラブを製造した。こ のスラブを Ac 3点以上の温度に加熱した後、表 2に示す条件で厚さ 3. 2mmにまで熱 間圧延し、酸洗してから厚さ 1. 4mmまで冷間圧延する。その後、加熱焼鈍してから 表 3, 4に示す条件で酸洗処理することにより冷延鋼板を得た。この実験で採用したヒ ートパターンの概要を図 4 (a) , (b)に示す。

[0043] 得られた冷延鋼板の機械的特性と縦断面組織の観察結果を表 2に併記した。なお 断面組織は、供試鋼板の縦断面をレペラ一腐食した後、光学顕微鏡を用いて倍率 1 000倍で観察することにより、組織の同定と面積率を求めた。また残留オーステナイト ( y )は X線回折 (XDR)によって求めた。

[0044] 得られた各冷延鋼板の表面性状を、レーザー顕微鏡 (レーザーテック社製、型番「 1LM21W」)により 50倍の対物レンズを用いて観察し、無作為に選択した 10箇所に ついて、 1箇所当り 0. 16mmX 0. 22mmの面積を走査することによって、表面凹凸 の平均間隔(Sm)、最大深さ (Ry)、負荷長さ率 (tp40)および (tp60)の値とその差 を求めると共に、下記の方法で各供試材表面のクラックの有無を確認し、更に下記の 方法で化成処理性を評価した。結果を表 3, 4に一括して示す。

[0045] クラックの確認:

SEM (日立製作所製の品番「S— 4500」 )を使用し、倍率 2000倍で供試鋼板断面 の表面近傍における任意の 10視野(2000倍の画像での 1視野: 13cm X 11cm)を 観察し、幅 3 μ m以下で深さ 5 μ m以上のクラックの有無を調べた。

[0046] 化成処理性:

各供試鋼板の表面を下記の条件でィ匕成処理した後、鋼板表面を 1000倍で SEM 観察し、無作為に選択した 10視野についてリン酸亜鉛結晶の付着状況を調べ、下 記の基準で化成処理性を評価した。

化成処理液' · ·日本パーカライジング社製の化成処理液「パルボンド L3020」を使 用

化成処理工程' · '脱脂(日本パーカライジング社製の脱脂液「ファインクリーナー」を 用い、 45°Cで 120秒)→水洗(30秒)→表面調整(日本パーカライジング社製の表面 調整液「プレパレン∑」に 15秒浸漬)→化成処理(上記化成処理液に 43°Cで 120秒 浸漬)

[0047] 評価基準

スケ:

10視野全てにぉ、て均一に付着して、るもの:◎、

10視野中で 5%以下のスケが認められたものが 3視野以下であるもの:(〇)、 それ以外:(X )。

粒径:各視野の中から大きなものを 10個選択し、その平均径で評価する。

10 m以上: X、

7 m以上〜 10 m未満:〇、

4 μ m以上〜 7 μ m未満:◎、

4 μ m未満:參。

P比:化成処理後の鋼板表面を X線回折によりホスホフエライト (P)とホパイト (H)に 相当するピークを測定し、その比(PZP+H) (n= 5の平均値)によって評価する。 P 比 = PZ (P+H)で、

0. 85未満: X、

0. 85以上〜 0. 93未満:〇、

0. 93以上〜 0. 96未満:◎、

0. 96以上:參。

[0048] 判定は、上記スケと粒径および P比から、下記の様に総合評価した。

スケが◎、粒径が參、 P比が參であるものは、総合で參(ベスト)、 スケが◎、粒径と P比が◎以上で、上記以外のものは、総合で◎ (優)、 スケ、粒径、 P比が〇以上で上記以外のものは、総合で〇(良)、 スケ、粒径、 P比のどれか 1つでも Xであるものは、総合で X (不良)。

[0049] [表 1]


[表 2] 製造条《 機】的特ぉ組織 (SEM観察) (面積 ¾) 製造 m

方法種仕上巻取冷圧加熱徐冷冷却焼戻降伏伸び

No. 皿 f# f» 前 終点方法 強度 F B M 7

No. 酸洗 ;皿 ¾ *XDR c°o (°C) (秒) (°C) {¾) (¾) (MPa) (%)

1 1 900 450 60 870 400 WQ 200 492 825 23 61 0 39 0

2 2 900 450 60 870 450 WQ 500 908 1045 14 46 0 54 0

3 2 goo 600 60 870 650 WQ 500 1 120 1332 9 13 0 87 0

4 2 900 450 60 870 650 ミスト 500 886 980 14 51 43 0 6

5 3 900 480 50 850 550 WQ 200 872 1272 13 9 0 91 0

6 4 900 500 40 850 520 WQ 250 449 603 27 80 0 20 0

7 5 905 520 40 860 600 WQ 200 527 781 21 62 0 38 0

8 6 905 540 40 870 580 WQ 190 743 892 17 51 0 49 0

9 7 895 540 40 870 550 WQ 190 742 1004 16 42 0 58 0

10 8 900 510 45 880 630 RQ 420 425 641 28 75 23 0 2

1 1 8 900 510 45 880 630 WQ 220 550 809 19 59 0 41 0

12 8 900 510 45 880 630 ミスト 240 504 734 22 63 0 37 0

1 3 9 900 650 30 880 700 RQ 400 544 81 1 28 52 35 0 13

14 10 900 550 45 880 600 RQ 450 786 1021 1 7 24 65 0 1 1

15 1 1 900 550 45 880 600 RQ 450 971 1245 1 1 13 77 3 7

16 12 900 480 50 870 630 GJ 400 400 630 36 74 19 0 7

1 7 13 900 500 50 800 650 RQ 450 563 714 27 80 16 0 4

18 14 900 450 60 760 600 GJ 400 491 650 24 64 36 0 0

19 15 900 500 60 780 630 RQ 350 499 652 26 63 37 0 0

20 16 900 450 60 870 380 WQ 180 658 997 15 38 0 62 0

21 17 900 480 50 870 630 GJ 400 539 833 24 60 31 0 9

22 18 900 480 50 870 630 GJ 400 451 784 23 65 30 0 5

23 19 900 450 60 760 600 GJ 400 508 681 24 66 34 0 0

24 20 900 500 50 830 450 WQ 180 687 1043 16 35 0 65 0

25 21 900 450 60 800 630 GJ 350 492 599 27 82 18 0 0

26 22 900 480 50 850 500 WQ 200 938 1228 1 1 1 1 0 89 0

27 23 893 450 60 850 630 GJ 400 432 643 33 70 23 0 7

28 24 900 500 50 800 650 RQ 450 486 583 24 85 1 5 0 0

29 25 880 450 60 870 380 WQ 250 888 1 1 1 1 9 41 59 0 0

30 26 900 600 50 900 250 GJ 200 955 1485 10 4 91 0 5

31 27 900 650 50 900 250 GJ 200 938 1472 10 5 90 0 5

32 28 900 650 50 900 250 GJ 200 972 1491 9 2 93 0 5

33 29 900 600 50 900 300 GJ 200 1060 1565 9 2 93 0 5

※: WQ:水冷、 RQ:水冷口-ル抜熱 GJ;がスシ'エツ卜冷却 XDR;X線回折法

3]


[0052] [表 4]


[0053] 上記表 1 4から次の様に考えることができる。

[0054] 実験 No. 1 6は、負荷長さ率の tp40と(tp60— tp40)が何れも本発明の規定要 件を外れる比較例である力 Moが添加されていないため極端な化成処理性の劣化 は認められない。

[0055] 実験 No. 12, 16は、鋼材中に Moが含まれており、し力も、負荷長さ率の tp40と(t

P60-tp40)が何れも本発明の規定要件を外れているため、 Moによる化成処理性 阻害作用が顕著に現れ、いずれも化成処理性が劣悪である。

[0056] 実験 No. 22は、負荷長さ率の tp40と(tp60— tp40)が何れも本発明の規定要件 を外れるほ力表面凹凸の最大深さ Ryも規定値に達していないため、化成処理性が 悪い。

[0057] 実験 No. 28, 29は、負荷長さ率の tp40と(tp60— tp40)が何れも本発明の規定 要件を外れており、且つ表面に狭くて深いクラックが存在するため、化成処理性が劣 悪である。

[0058] 実験 No. 46は、表面凹凸の平均間隔 Smが規定値を超え、実験 No. 48は、表面 凹凸の最大深さ Ryが規定値に達していないため、何れも化成処理性が悪い。更に 実験 No. 50は、鋼板の表面性状は良好であるものの、鋼中の Mo含量が多過ぎるた め化成処理性が悪い。

[0059] これらに対し、上記の摘出例以外は、 Moが添加されて、な、鋼種は勿論のこと、 高強度化のため適量の Moが添加されたものであっても、本発明で規定する表面性 状の規定要件を満足して、るため、、ずれも優れた化成処理性が得られて、る。