Description
20121226 B23H 1/00 - 11/00 C02F 1/42 C23F 11/18 patcit 1 : 特開2009−248247(JP,A)
patcit 2 : 特開2002−301624(JP,A)
patcit 3 : 国際公開第2006/126248(WO,A1)
patcit 4 : 国際公開第2007/113906(WO,A1)
JP2009006617 20091204 WO2011067818 20110609 20120215 山崎 孔徳
Technical Field
[0001]
本発明は、水を加工液として使用するワイヤ放電加工装置における液質調整装置に関し、被加工物である金属材料、特に鉄系金属の防食方法及び防食装置に関する。
Background Art
[0002]
加工液として水を使用するワイヤ放電加工において、金型用鋼や工具鋼などの鉄系金属を加工する際に鉄系金属が腐食することが知られている。
水中における鉄系金属を防食するために、不動態化剤を水に添加することが有用であるが、ワイヤ放電加工機における加工液は、70μS/cm程度以下の低導電率(電気伝導度)を維持する必要があるため、不動態化剤を直接に加工液に添加する方法では低導電率を維持することは非常に困難であり、安定した放電を行うことができなくなる。
[0003]
そのため、特許文献1には、低導電率を維持した状態で不動態化剤を添加する方法として、不動態化剤を担持した陰イオン交換樹脂を用いる技術が開示されている。
具体的には、鉄系金属の防食及び水の導電率を上昇させない樹脂組成として、防食性イオンであるNO
2
-と共に、炭酸イオン(CO
3
2-)、炭酸水素イオン(HCO
3
-)、水酸イオン(OH
-)のうちの1種以上を固定した陰イオン交換樹脂を防食樹脂として用い、これらの陰イオンを水中に溶出させる。またこの防食樹脂を金属洗浄保管器に適用する場合、水素イオン(H
+)形樹脂と水酸イオン(OH
-)形樹脂からなる純水化樹脂と併用し、水の導電率が上昇した場合に水の一部を純水化樹脂に通水することで所定の導電率(10μS/cm程度以下)に抑える技術が開示されている。
また、特許文献2には、防食性イオンを担持した防食樹脂及びH
+形樹脂とOH
-形樹脂の混合からなる純水化樹脂を併用し、これら防食樹脂と純水化樹脂への通水を導電率の値で切り替えることにより、加工液をアルカリ性の水溶液とし、超硬材料などの不動態化しない金属材料に対しての防食を抑える技術が開示されている。
Citation List
Patent Literature
[0004]
patcit 1 : 特開2002−301624号公報
patcit 2 : 国際公開WO2006/126248
Summary of Invention
Technical Problem
[0005]
特許文献1では、NO
2
-を水中に溶出させるが、水中の不純物イオン、例えばNa
+、K
+、Ca
2+などの陽イオンやCl
-、SO
4
2-などの陰イオンが混在し、また、特にNO
2
-以外に炭酸イオン、炭酸水素イオンおよび水酸化物イオンのうちの1種以上も水中に放出されるため、防食性イオンであるNO
2
-の濃度検出を実施したくても、水の導電率では水中のNO
2
-濃度は分からず、適切な防食性イオンを含む加工液管理が行えない。
従って、NO
2
-濃度を調べるためにはイオンクロマトグラフによる定量分析やNO
2
-イオン試験紙が必要である。
またNO
2
-以外の不純物イオン(Cl
-、SO
4
2-等)の存在が水の導電率を引き上げる原因になり、安定した放電を行うことができなくなる恐れも存在する。
また特許文献2では、防食樹脂と純水化樹脂への通水を導電率の値で切り替えることが開示されているが、鉄系金属の腐食に対して影響を与える、特に水中の塩化物イオン(Cl
-)や硫酸イオン(SO
4
2-)などの微量な不純物イオンを効果的に除去することが困難であるため、鉄系金属防食効果が小さくなる。
[0006]
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、分析やイオン試験紙を使用せずに簡便な方法でNO
2
-濃度をモニタリングでき、かつ低導電率を維持した状態で鉄系金属を防食できる方法及びその装置を提供することを目的としている。
また、水中の不純物イオンを効果的に除去し、低導電率を維持した状態で防食性イオンの濃度を高めて鉄系金属を効果的に防食するための防食樹脂と純水化樹脂への通水方法を提供するものである。
Technical Solution
[0007]
上記課題を解決するために、本発明に係る防食装置は、水素イオン形樹脂と水酸イオン形樹脂からなる純水化手段と、陽イオン形樹脂、防食性イオンを担持した陰イオン形樹脂からなる防食手段と、加工液の導電率の実測値を測定する導電率測定手段と、この導電率測定手段に基づいて、加工液の前記純水化手段、防食手段への通水を制御する制御手段と、を備えた防食装置において、前記制御手段は、予め定められた第1及び第2の導電率と、前記導電率測定手段で測定された実測値に基づいて、前記加工液の実測値が第1の導電率に達するまでは前記純水化手段及び防食手段への通水を実施し、前記実測値が第1の導電率に達したことで、前記純水化手段への通水を停止し、前記防食手段への通水のみを実施し、前記実測値が第2の導電率に上昇したことで、前記純水化手段への通水を再開し、前記純水化手段及び防食手段への通水を実施するものである。
Advantageous Effects
[0008]
本発明によれば、水中に残存する不純物イオンが1種のみの陽イオンと1種のみの陰イオンに変換され、水が防食性を有する陰イオンを含んだ高純度の単一溶液となるために導電率と防食性を有する陰イオン濃度が比例関係になる。その結果、導電率計の値から防食性を有する陰イオン濃度を把握でき、かつ鉄系金属の防食に必要な最小導電率を維持できる。
また、防食樹脂中の陽イオン形樹脂の容積比、すなわち(陽イオン形樹脂/防食樹脂)の容積比を0.5未満に設定することで陽イオン樹脂が先に寿命を迎えるため、防食性陰イオンの寿命を予知できる。
さらに、2つの導電率間の防食樹脂と純水化樹脂への通水方法について、防食樹脂のみと防食樹脂および純水化樹脂の両方の樹脂に通水することで低導電率を維持した状態で防食性イオンを高濃度化できる。
Brief Description of Drawings
[0009]
[fig. 1] 防食樹脂と純水化樹脂への通水を示す概念図である。
[fig. 2] 防食樹脂と純水化樹脂への通水パターンを示すパターン図である。
[fig. 3] 防食樹脂中のアニオン形樹脂の種類と導電率の設定を示す図である。
[fig. 4] ワイヤ放電加工機への適用例を示す図である。
[fig. 5] 防食樹脂と純水化樹脂への通水
[fig. 6] 防食樹脂の構成例を示す図である。
[fig. 7] 防食樹脂の構成例を示す図である。
[fig. 8] 防食樹脂の構成例を示す図である。
[fig. 9] ワイヤ放電加工機への適用例を示す図である。
Best Mode for Carrying out the Invention
[0010]
実施の形態1.
まず、本実施の形態における発明の概念について説明する。
本実施の形態では、防食手段である防食樹脂、純水化手段である純水化樹脂、への通水を検出した導電率に基づき制御を行うことで、水を防食性を有する陰イオンを含んだ高純度の単一溶液とし、導電率と防食性を有する陰イオン濃度が比例関係となり、分析やイオン試験紙を使用せずに簡便な方法で防食性イオンを含む加工液管理を実施するものである。
[0011]
具体的には、陽イオン形樹脂と陰イオン形樹脂を併用する防食樹脂と、純水化樹脂と、から構成されるイオン交換樹脂を用いるものである。
ここで、陽イオン形樹脂に担持する陽イオンは、亜硝酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩を形成すれば種類を問わないが、水への溶解度が大きく、かつ水中のカチオンを簡便に定量できる計測器が必要となる観点から、ナトリウムイオン(Na
+)、カリウムイオン(K
+)、カルシウムイオン(Ca
2+)のいずれかの1種を用いるのが好適である。
なお、これらの陽イオンを定量する計測器として例えば、(株)東興化学研究所製のNa
+メータ(型式TiN-1100)、K
+メータ(型式TiN-7003)、Ca
2+メータ(型式TiN-7001)を用いる。
これらの陽イオンは鉄系金属の防食に関与しないが、導電率と防食性を有する陰イオン濃度の間に比例関係を維持するためと防食性を有する陰イオン形樹脂の寿命を予知するために用いるものである。
[0012]
一方、陰イオン形樹脂に担持する陰イオンは、亜硝酸イオン(NO
2
-)、モリブデン酸イオン(MoO
4
2-)、タングステン酸イオン(WO
4
2-)のいずれか1種を用いる。
これら3つの陰イオンは、いずれも鉄系金属を不動態化させることによって防食効果を得るが、この中でもNO
2
-は他の2つの陰イオンと比べて安価であり、かつ低濃度でも防食効果が得られるため、低導電率水を加工液として使用するワイヤ放電加工機における鉄系金属の防食に有効である。
なお、これら3つの陰イオンは鉄系金属やワイヤ放電加工機の接水部材と反応して濃度が低下するため、鉄系金属の防食に必要な量を補給する必要があり、加工液を防食樹脂に通水することで鉄系金属の防食に必要な陰イオンを加工液中に補給する。
[0013]
防食樹脂に対する陽イオン形樹脂の容積比、すなわち、(陽イオン形樹脂/防食樹脂)の容積比は、0.05以上0.5未満に設定し、加工液中への不純物陽イオンや不純物陰イオンの種類や混入度合いによって容量比を選択する必要がある。
例えば、防食樹脂の陽イオン形樹脂としてNa
+、陰イオン形樹脂としてNO
2
-を用いた場合、防食樹脂にワイヤ放電加工機の加工水を通水すると、加工水中の不純物陽イオン(K
+、Ca
2+など)がNa
+、不純物陰イオン(Cl
-、SO
4
2-など)がNO
2
-にそれぞれ置換される。
そのため、クリーンルームなどの塩分を含んだ塵埃が少ない環境における放電加工のような加工水中にK
+、Ca
2+などのNa
+以外の不純物陽イオンがほとんど溶け込まない場合、防食樹脂中のNa
+形樹脂はほとんど消費されないため、(Na
+形樹脂/NO
2
-形樹脂))の容量比を0.05またはその値近くに設定すれば良い。
なお、K
+、Ca
2+などの不純物イオンの根源のほとんどは加工液中の残留分であり、ワイヤ放電加工機使用中に外部からの加工液への溶け込みがほとんどないため、(Na
+形樹脂/NO
2
-形樹脂))の容量比は0.05またはその値近くに設定すれば良い。
一方、空調制御されていない環境等では、K
+、Ca
2+などのNa
+以外の不純物陽イオンが加工液中の残留分だけではなく、ワイヤ放電加工機使用中において外部からの加工液への溶け込みも発生する。一方、加工液中に鉄系金属の防食に必要なNO
2
-濃度を確保する必要があることから、(Na
+形樹脂/NO
2
-形樹脂)の容量比を0.5近くに設定すれば良い。
[0014]
本実施の形態における防食樹脂、すなわち(Na
+形+NO
2
-形)樹脂への通水によって、加工水はNaNO
2溶液となり、導電率とNO
2
-濃度は比例関係になる。
また、加工水に溶解する不純物陽イオンや不純物陰イオンの吸着によって、防食樹脂中の陽イオン形樹脂(Na
+形樹脂)が陰イオン形樹脂(NO
2
-形樹脂)よりも早く寿命に達するため、陰イオン形樹脂(NO
2
-形樹脂)の寿命を予知できる。
[0015]
上記では、防食樹脂の陽イオン形樹脂としてNa
+、陰イオン形樹脂としてNO
2
-を用いた場合を記載したが、陽イオン形樹脂がK
+やCa
2+、また陰イオン形樹脂がMoO
4
2-やWO
4
2-のいずれであっても(陽イオン形樹脂/防食樹脂)の容積比の設定、すなわち0.05以上0.5未満、は(Na
+形+NO
2
-形)樹脂の場合と同じである。
[0016]
また、防食樹脂、例えば(Na
+形+NO
2
-形)樹脂に加工水を通水しただけでは不純物イオンを完全に除去することは非常に困難である。
導電率と防食性陰イオン濃度の間に比例関係を維持するためには、加工水中の不純物イオンを除去する必要があり、そのために本実施の形態では防食樹脂と純水化樹脂を併用する。
上述した防食樹脂に組み合わせる純水化樹脂は、例えば(H
+形+OH
-形)樹脂を用いるのが好適である。
なお、純水化樹脂の機能としては、加工水の大気との接触に伴い空気中の塵埃に含まれるイオン成分や炭酸ガスの溶解などによって上昇した導電率が下げるために機能し、加工水を純水化樹脂に通水することによって、加工水中の不純物陽イオンがH
+、不純物陽イオンがOH
-にそれぞれ置換させ、純水化させる。
[0017]
次に、防食樹脂と純水化樹脂を併用してワイヤ放電加工機に必要な低導電率を維持した状態で高純度の防食性陰イオンを含む加工水に変換する方法を説明する。
防食樹脂の1つである(Na
+形+NO
2
-形)樹脂、純水化樹脂の一つである(H
+形+OH
-形)樹脂を用いた場合を例にして加工水の通水パターンを図1に基づいて述べる。
図において、加工水を溜める清水槽の水をポンプで吸い上げ、防食樹脂と純水化樹脂に通水した後、水を再び清水槽に戻す際の動作は、純水化樹脂と防食樹脂に通水する手前に防食樹脂側電磁弁と純水化樹脂側電磁弁の切り替え動作により、図2に示される通水パターンで通水と通水停止を制御する。
なお、図2の制御の基となる導電率は、清水槽に設けられた導電率計により計測された導電率に応じて制御がなされ、防食樹脂の物性毎に図3に示された導電率以上の値となる。
なお、本実施の形態では、NO
2
-形樹脂を基に説明するが、いずれの防食樹脂を用いても、導電率の大きさは、導電率(1)>導電率(3)>導電率(2)の順である。
[0018]
ステップ1
図1の防食樹脂側電磁弁及び純水化樹脂側電磁弁を開いて、清水槽の水を、鉄系金属に対する防食効果を得るための導電率以下にすべく、防食樹脂と純水化樹脂の両方に通水し所定の導電率(導電率(2))まで低減させる。
導電率低減は、純水化樹脂への通水により得られるが、本実施の形態では、純水化樹脂への通水にあわせて防食樹脂への通水を行うことにより、K
+、Cl
-などの不純物イオンをNa
+とNO
2
-に置換する。
なお、導電率(1)と導電率(2)の設定値は、図2に示される値の範囲で設定する必要があり、本発明者らの実験によって、導電率(2)に到達した時点で鉄系金属に対する防食効果を得るためには、(Na
+形+NO
2
-形)樹脂と純水化樹脂の両方に通水する前の清水槽水の最小導電率は8μS/cmであることが分かった。
従って、導電率(1)は8μS/cm以上の値を設定する。
また、同様に(Na
+形+NO
2
-形)樹脂と純水化樹脂の両方に通水させた時に、鉄系金属を防食するために必要な清水槽水の最小導電率が4μS/cmであることが分かった。
従って、導電率(2)は4μS/cm以上の値を設定する。
[0019]
ステップ2
上述したステップ1において、清水槽の水を導電率(2)迄に低下させると、純水化樹脂側電磁弁を閉じて純水化樹脂への通水を停止し、防食樹脂のみに通水させる。
これによって清水槽の外部からの侵入や接水部材の溶解によって発生する不純物イオンは、陽イオンがNa
+、陰イオンがNO
2
-にそれぞれ置換されると共に、導電率が上昇する。
そして、導電率が所定の導電率(3)まで達すると、次のステップ3に移行する。
なお、導電率(3)の設定は、ステップ1で記載の導電率(2)を有する清水槽水中に残存する不純物イオン及びステップ2において新たに発生する不純物イオン(空気中の塵埃に含まれるイオン成分や炭酸ガスの溶解などに起因)を除去するためには、導電率(3)は、少なくとも導電率(2)よりも1μS/cm以上大きい値を設定する必要がある。
従って、導電率(3)は5μS/cm以上の値を設定する。
[0020]
ステップ3
ステップ2において、純水化樹脂への通水を停止することにより、導電率が導電率(3)迄増加すると、純水化樹脂側電磁弁を開き、純水化樹脂への通水を再開することにより、清水槽の水の導電率がステップ1記載の導電率(2)に達するまで防食樹脂と純水化樹脂の両方に通水する。
[0021]
上述したステップ1〜3によって、ステップ1で残存した不純物イオンの一部がNa
+とNO
2
-に置換される結果、清水槽の水は高純度のNaNO
2溶液に変換される。
なお、上述では防食樹脂として(Na
+形+NO
2
-形)樹脂を例にしたが、(K
+形+NO
2
-形)樹脂や、(Ca
2+形+NO
2
-形)樹脂を用いた場合でも導電率(1)〜(3)の値は(Na
+形+NO
2
-形)樹脂の場合と同じである。
また陰イオン形樹脂としてMoO
4
2-形を用いる場合、防食樹脂としては(Na
+形+MoO
4
2-形)樹脂、(K
+形+MoO
4
2-形)樹脂、(Ca
2+形+MoO
4
2-形)樹脂があげられる。これらの防食樹脂を用いた場合の導電率(1)は30μS/cm以上、導電率(2)は15μS/cm以上、導電率(3)は16μS/cm以上である。
さらに陰イオン形樹脂としてWO
4
2-形を用いる場合、防食樹脂としては(Na
+形+WO
4
2-形)樹脂、(K
+形+WO
4
2-形)樹脂、(Ca
2+形+WO
4
2-形)樹脂があげられる。これらの防食樹脂を用いた場合の導電率(1)は40μS/cm以上、導電率(2)は20μS/cm以上、導電率(3)は21μS/cm以上である。
[0022]
図4は、本発明をワイヤ放電加工機に適用した例の1つである。
ワイヤ放電加工機本体の概略は、被加工物とワイヤ電極とを所定間隙離間し、両者に所定電圧を印加することで放電を発生させ加工を行う加工機であり、鉄系金属を加工する加工槽1、加工槽1水中の固形物を除去した水を溜めた清水槽2、加工槽1の水を清水槽2に入れるポンプP1、加工槽1水中の固形物を除去するためのフィルタF1、清水槽1水中の不純物イオンを除去するための第1の純水化樹脂3、清水槽水を加工槽1に入れるポンプP2、第1の純水化樹脂3への通水を制御する電磁弁4、清水槽2の導電率を計測するための導電率計5、導電率計5の測定値から電磁弁4の開閉を制御する第1の制御部6からなる。
また、本発明に関わる防食装置は、清水槽水の導電率を計測する導電率測定手段である導電率計7、防食樹脂8、防食樹脂8と併用しながら清水槽水の不純物イオンを除去する第2の純水化樹脂9、清水槽水を防食樹脂8及び第2の純水化樹脂9に通水するためのポンプP3、清水槽水中の固形物を除去するためのフィルタF2、第2の純水化樹脂9への通水を制御する電磁弁10、導電率計7の測定値から電磁弁10の開閉を制御する制御部11から構成される。
なお、導電率計5と導電率計7は同じ清水槽水の導電率を計測するので、2つの導電率計を1つにしても良い。この場合、第1の制御部6と制御部11も制御対象が異なるが、1つにできる。
[0023]
実施例1.
本実施例1の実施条件は以下の通りである。
防食樹脂8としては、陽イオン形樹脂としてNa
+形樹脂1.8Lと、陰イオン形樹脂としてNO
2
-形樹脂2.2Lを混合した(Na
+形+NO
2
-形)樹脂に3mol/LのNaNO
2溶液を通水させることによって(Na
+形+NO
2
-形)樹脂とする。(図5参照)この樹脂に加工水を通水させて加工水を溜める清水槽に流すことによって加工水をNaNO
2溶液に変換できる。
純水化樹脂としては、第1の純水化樹脂3、第2の純水化樹脂9共に、H
+形樹脂5LとOH
-形樹脂5Lを混合した(H
+形+OH
-形)樹脂とする。
制御部11が基準とする導電率は、導電率(1)を8μS/cm以上、第1の導電率に相当する導電率(2)を8μS/cm、第2の導電率に相当する導電率(3)を12μS/cmに設定し、導電率計7の測定値に基づき電磁弁10の開閉を行う。
なお、ワイヤ放電加工機の第1の純水化樹脂3は、導電率計5の値が14μS/cm以上の場合、電磁弁4を開いて第1の純水化樹脂3に通水し、フィルタF1を介して固形物を除去した清水を加工槽1に環流する。(導電率が14μS/cm未満の場合、電磁弁4は閉じて第1の純水化樹脂3に通水することなく、清水槽の清水を加工槽1に環流する)
[0024]
次に具体的動作について説明する。
ステップ1
本実施例においては、防食装置、第1の純水化樹脂3に通水前の清水槽水の導電率は20μS/cmであった。
清水槽2の清水は、導電率計7により計測された導電率が導電率(1)となっていないため、防食樹脂8及び制御部11を介して電磁弁10を開き、第2の純水化樹脂9に通水される。
また導電率計5の測定値が、上述のごとく20μS/cmなので、第1の制御部6を介して第1の純水化樹脂3にも通水される。
第1の純水化樹脂3、防食樹脂8、第2の純水化樹脂9に清水槽水が通水され、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、NO
2
-、OH
-に置換されるとともに清水槽水の導電率が低下する。
そして、清水槽水の導電率が14μS/cm未満になると、第1の制御部6は電磁弁4が閉じて第1の純水化樹脂3への通水が停止する。
その後、清水槽水の導電率が8μS/cmに達すると、制御部11は、電磁弁10を閉じて第2の純水化樹脂9への通水を停止させる。
この時の清水槽水中のNO
2
-濃度は2.3ppmであった。
[0025]
ステップ2
清水槽水の導電率が8μS/cmに達すると、純水化樹脂への通水が停止され、清水槽水が防食樹脂のみに通水されることから、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、NO
2
-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が上昇する。
[0026]
ステップ3
清水槽水の導電率が12μS/cmに達すると、制御部11は電磁弁10を開いて第2の純水化樹脂9にも通水を開始する。
防食樹脂8と第2の純水化樹脂9に清水槽水を通水することによって、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、NO
2
-、OH
-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が低下し、清水槽水の導電率が8μS/cmに達する。
この時の清水槽水中のNO
2
-濃度は2.7ppmであった。
[0027]
以上のように本実施例によれば、上記ステップ1〜3を実施することで、清水槽水中のNO
2
-量が増加し、導電率とNO
2
-濃度との比例関係を増すことが可能となる。
すなわち、導電率は同じ8μS/cmであっても、ステップ1後の清水槽水中のNO
2
-濃度は2.3ppmであるのに対して、ステップ3後のNO
2
-濃度は2.7ppmとなるように、防食樹脂8への通水を連続させつつ、純水化樹脂への通水で導電率を制御させることにより、不純物イオンをNa
+、NO
2
-に置換し、防食性を有する高純度の単一溶液に近づき、導電率と防食性を有する陰イオン濃度が比例関係となる。
よって、導電率計の値から防食性を有する陰イオン濃度を把握でき、かつ鉄系金属の防食に必要な最小導電率を維持可能となる。
[0028]
本実施例において、ステップ1〜3を繰り返した状態で加工槽に炭素鋼(S45C)を浸漬させた結果、4日浸漬後の炭素鋼は光沢を維持しており、赤錆は発生しなかった。
なお、清水槽にNa
+メータを浸漬し、ステップ2における清水槽中のNa
+濃度を測定した結果、12日後にNa
+濃度はほとんど増加しなかった。これは防食樹脂中のNa
+形樹脂が寿命を迎えたことを示唆し、NO
2
-形樹脂の寿命を予知できるものである。
予想方法の具体例としては、Na
+形樹脂が寿命をむかえるまでに費やした期間12日とNO
2
-形樹脂/Na
+形樹脂の容量比2.2L/1.8L=1.2から、NO
2
-形樹脂の寿命(12日×1.2=14.4日)を予知できる。
[0029]
なお、本実施例では防食樹脂として(Na
+形+NO
2
-形)樹脂を用いたが、(K
+形+NO
2
-形)樹脂や(Ca
2+形+NO
2
-形)樹脂を用いた場合でも同様の効果が得られた。
また、本実施例では、防食樹脂8の構成として、図5に示されるような陽イオン形樹脂と陰イオン形樹脂を混合させた場合について説明したが、例えば、図6、図7、図8に示されるように、防食樹脂は陽イオン形樹脂と陰イオン形樹脂を独立させて用いることができる。
例えば、所定の容量比のH
+形樹脂とOH
-形樹脂をそれぞれ用意し、3mol/LのNaNO
2溶液をOH
-形樹脂に通水させた後、H
+形樹脂にも通水させる。これによってH
+形樹脂はNa
+形樹脂、OH
-形樹脂はNO
2
-形樹脂にそれぞれ変換される。
Na
+形樹脂とNO
2
-形樹脂を独立させる利点はNa
+形樹脂が寿命を迎えた時にNO
2
-形樹脂の寿命を予知できるとともに、Na
+形樹脂のみを交換すればNO
2
-形樹脂の寿命がくるまで加工水をNaNO
2溶液に変換できることである。
また、防食樹脂の陽イオン形樹脂としてNa
+、陰イオン形樹脂としてNO
2
-を作製するために3mol/LのNaNO
2溶液を用いたが、陽イオン形樹脂としてK
+やCa
2+、陰イオン形樹脂としてNO
2
-を作製する場合はKNO
2溶液やCa(NO
2)
2溶液を用いれば良い。
[0030]
実施例2.
本実施例2の実施条件は以下の通りである。
防食樹脂8としては、Na
+形樹脂1.8LとMoO
4
2-形樹脂2.2Lを混合した(Na
+形+MoO
4
2-形)樹脂に3mol/LのNa
2MoO
4溶液を通水させることによって(Na
+形+MoO
4
2-形)樹脂とする。(図5参照)
この樹脂に加工水を通水させて加工水を溜める清水槽に流すことによって加工水をNa
2MoO
4溶液に変換できる。
純水化樹脂としては、第1の純水化樹脂3、第2の純水化樹脂9共に、H
+形樹脂5LとOH
-形樹脂5Lを混合した(H
+形+OH
-形)樹脂とする。
制御部11が基準とする導電率は、導電率(1)を30μS/cm以上、第1の導電率に相当する導電率(2)を20μS/cm、第2の導電率に相当する導電率(3)を24μS/cmに設定し、導電率計7の測定値に基づき電磁弁10の開閉を行う。
なお、ワイヤ放電加工機の第1の純水化樹脂3は、導電率計5の値が30μS/cm以上の場合、電磁弁4を開いて第1の純水化樹脂3に通水し、フィルタF1を介して固形物を除去した清水を加工槽1に環流する。(導電率が30μS/cm未満の場合、電磁弁4は閉じて第1の純水化樹脂3に通水することなく、清水槽の清水を加工槽1に環流する)
[0031]
次に具体的動作について説明する。
ステップ1
本実施例においては、防食装置、第1の純水化樹脂3に通水前の清水槽水の導電率は40μS/cmであった。
清水槽2の清水は、導電率計7により計測された導電率が導電率(1)となっていないため、防食樹脂8及び制御部11を介して電磁弁10を開き、第2の純水化樹脂9に通水される。
また導電率計5の測定値が、上述のごとく40μS/cmなので、第1の制御部6を介して第1の純水化樹脂3にも通水される。
第1の純水化樹脂3、防食樹脂8、第2の純水化樹脂9に清水槽水が通水され、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、MoO
4
2-、OH
-に置換されるとともに清水槽水の導電率が低下する。
そして、清水槽水の導電率が30μS/cm未満になると、第1の制御部6は電磁弁4を閉じ第1の純水化樹脂3への通水が停止する。
その後、清水槽水の導電率が20μS/cmに達すると、制御部11は、電磁弁10を閉じて第2の純水化樹脂9への通水を停止させる。
この時の清水槽水中のMoO
4
2-濃度は8.1ppmであった。
[0032]
ステップ2
清水槽水の導電率が20μS/cmに達すると、純水化樹脂への通水が停止され、清水槽水が防食樹脂のみに通水されることから、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、MoO
4
2-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が上昇する。
[0033]
ステップ3
清水槽水の導電率が24μS/cmに達すると、制御部11は電磁弁10を開いて第2の純水化樹脂9にも通水を開始する。
防食樹脂8と第2の純水化樹脂9に清水槽水を通水することによって、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、MoO
4
2-、OH
-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が低下し、清水槽水の導電率が20μS/cmに達する。
この時の清水槽水中のMoO
4
2-濃度は9.6ppmであった。
[0034]
以上のように本実施例によれば、上記ステップ1〜3を実施することで、清水槽水中のMoO
4
2-量が増加し、導電率とMoO
4
2-濃度との比例関係を増すことが可能となる。
本実施例において、ステップ1〜3を繰り返した状態で加工槽に炭素鋼(S45C)を浸漬させた結果、2日浸漬後の炭素鋼は光沢を維持しており、赤錆は発生しなかった。
なお、清水槽にNa
+メータを浸漬し、ステップ2における清水槽中のNa
+濃度を測定した結果、12日後にNa
+濃度はほとんど増加しなかった。これは防食樹脂中のNa
+形樹脂が寿命を迎えたことを示唆し、NO
2
-形樹脂の寿命を予知できるものである。
本実施例では防食樹脂として(Na
+形+MoO
4
2-形)樹脂を用いたが、(K
+形+MoO
4
2-形)樹脂、(Ca
2+形+MoO
4
2-形)樹脂を用いた場合でも同様の効果が得られた。
また、陰イオン形樹脂としてMoO
4
2-を作製する場合は、Na
2MoO
4溶液、K
2MoO
4溶液、CaMoO
4溶液を用いれば良い。
[0035]
実施例3.
本実施例2の実施条件は以下の通りである。
防食樹脂8としては、Na
+形樹脂1.8LとWO
4
2-形樹脂2.2Lを混合した(Na
+形+WO
4
2-形)樹脂に3mol/LのNa
2WO
4溶液を通水させることによって(Na
+形+WO
4
2-形)樹脂とする。(図5参照)
この樹脂に加工水を通水させて加工水を溜める清水槽に流すことによって加工水をNa
2WO
4溶液に変換できる。
純水化樹脂としては、第1の純水化樹脂3、第2の純水化樹脂9共に、H
+形樹脂5LとOH
-形樹脂5Lを混合した(H
+形+OH
-形)樹脂とする。
制御部11が基準とする導電率は、導電率(1)を40μS/cm以上、第1の導電率に相当する導電率(2)を24μS/cm、第2の導電率に相当する導電率(3)を28μS/cmに設定し、導電率計7の測定値に基づき電磁弁10の開閉を行う。
なお、ワイヤ放電加工機の第1の純水化樹脂3は、導電率計5の値が40μS/cm以上の場合、電磁弁4を開いて第1の純水化樹脂3に通水し、フィルタF1を介して固形物を除去した清水を加工槽1に環流する。(導電率が40μS/cm未満の場合、電磁弁4は閉じて第1の純水化樹脂3に通水することなく、清水槽の清水を加工槽1に環流する)
[0036]
次に具体的動作について説明する。
ステップ1
本実施例においては、防食装置、第1の純水化樹脂3に通水前の清水槽水の導電率は50μS/cmであった。
清水槽2の清水は、導電率計7により計測された導電率が導電率(1)となっていないため、防食樹脂8及び制御部11を介して電磁弁10を開き、第2の純水化樹脂9に通水される。
また導電率計5の測定値が、上述のごとく50μS/cmなので、第1の制御部6を介して第1の純水化樹脂3にも通水される。
第1の純水化樹脂3、防食樹脂8、第2の純水化樹脂9に清水槽水が通水され、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、WO
4
2-、OH
-に置換されるとともに清水槽水の導電率が低下する。
そして、清水槽水の導電率が40μS/cm未満になると、第1の制御部6は電磁弁4を閉じ第1の純水化樹脂3への通水が停止する。
その後、清水槽水の導電率が24μS/cmに達すると、制御部11は、電磁弁10を閉じて第2の純水化樹脂9への通水を停止させる。
この時の清水槽水中のWO
4
2-濃度は12.4ppmであった。
[0037]
ステップ2
清水槽水の導電率が20μS/cmに達すると、純水化樹脂への通水が停止され、清水槽水が防食樹脂のみに通水されることから、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、WO
4
2-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が上昇する。
[0038]
ステップ3
清水槽水の導電率が28μS/cmに達すると、制御部11は電磁弁10を開いて第2の純水化樹脂9にも通水を開始する。
防食樹脂8と第2の純水化樹脂9に清水槽水を通水することによって、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、WO
4
2-、OH
-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が低下し、清水槽水の導電率が24μS/cmに達する。
この時の清水槽水中のWO
4
2-濃度は14.5ppmであった。
[0039]
以上のように本実施例によれば、導電率が24μS/cmであってもステップ1後の清水槽水中のWO
4
2-濃度は12.4ppmであるのに対して、ステップ3後のWO
4
2-濃度は14.5ppmであった。
上記ステップ1〜3を実施することで、清水槽水中のWO
4
2-量が増加し、導電率とWO
4
2-濃度との比例関係を増すことが可能となる。
本実施例において、ステップ1〜3を繰り返した状態で加工槽に炭素鋼(S45C)を浸漬させた結果、2日浸漬後の炭素鋼は光沢を維持しており、赤錆は発生しなかった。
なお、清水槽にNa
+メータを浸漬し、ステップ2における清水槽中のNa
+濃度を測定した結果、12日後にNa
+濃度はほとんど増加しなかった。これは防食樹脂中のNa
+形樹脂が寿命を迎えたことを示唆し、NO
2
-形樹脂の寿命を予知できるものである。
本実施例では防食樹脂として(Na
+形+WO
4
2-形)樹脂を用いたが、(K
+形+WO
4
2-形)樹脂、(Ca
2+形+WO
4
2-形)樹脂を用いた場合でも同様の効果が得られた。
また、陰イオン形樹脂としてWO
4
2-を作製する場合は、Na
2WO
4溶液、K
2WO
4溶液、CaWO
4溶液を用いれば良い。
[0040]
実施例4.
図9は本実施例を示すワイヤ放電加工機に適用した他の構成例である。
図4の構成と大きく異なることは第1の純水化樹脂3の機能を防食装置の純水化樹脂が担った点である。
そのため、防食樹脂の手前にも電磁弁12を設けるとともに、導電率計7を用いて制御部11Aを介して電磁弁10と電磁弁12を制御する。
この例の場合、上記のステップ2における導電率(3)は放電加工時に設定される値である。
[0041]
本実施例4の実施条件は以下の通りである。
防食樹脂8としては、陽イオン形樹脂としてNa
+形樹脂1.8Lと、陰イオン形樹脂としてNO
2
-形樹脂2.2Lを混合した(Na
+形+NO
2
-形)樹脂に3mol/LのNaNO
2溶液を通水させることによって(Na
+形+NO
2
-形)樹脂とする。(図5参照)
純水化樹脂としては、第1の純水化樹脂3、第2の純水化樹脂9共に、H
+形樹脂5LとOH
-形樹脂5Lを混合した(H
+形+OH
-形)樹脂とする。
制御部11Aが基準とする導電率は、導電率(1)を8μS/cm以上、第1の導電率に相当する導電率(2)を8μS/cm、第2の導電率に相当する導電率(3)を12μS/cmに設定し、導電率計7の測定値に基づき電磁弁10、12の開閉を行う。
本実施例の場合、純水化樹脂はワイヤ放電加工機本体の純水化樹脂と兼ねている。
[0042]
次に具体的動作について説明する。
ステップ1
本実施例においては、防食装置、第1の純水化樹脂3に通水前の清水槽水の導電率は20μS/cmであった。
清水槽2の清水は、導電率計7により計測された導電率が導電率(1)となっていないため、制御部11Aを介して電磁弁10,12を開き、防食樹脂8及び第2の純水化樹脂9に通水を行う。
防食樹脂8、第2の純水化樹脂9に清水槽水が通水され、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、NO
2
-、OH
-に置換されるとともに清水槽水の導電率が低下する。
その後、清水槽水の導電率が8μS/cmに達すると、制御部11Aは、電磁弁10を閉じて第2の純水化樹脂9への通水を停止させる。
この時の清水槽水中のNO
2
-濃度は2.3ppmであった。
[0043]
ステップ2
清水槽水の導電率が8μS/cmに達すると、純水化樹脂への通水が停止され、清水槽水が防食樹脂のみに通水されることから、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、NO
2
-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が上昇する。
[0044]
ステップ3
清水槽水の導電率が12μS/cmに達すると、制御部11Aは電磁弁10を開いて第2の純水化樹脂9にも通水を開始する。
防食樹脂8と第2の純水化樹脂9に清水槽水を通水することによって、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、NO
2
-、OH
-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が低下し、清水槽水の導電率が8μS/cmに達する。
この時の清水槽水中のNO
2
-濃度は2.7ppmであった。
[0045]
以上のように本実施例によれば、上記ステップ1〜3を実施することで、清水槽水中のNO
2
-量が増加し、導電率とNO
2
-濃度との比例関係を増すことが可能となる。
すなわち、導電率は同じ8μS/cmであっても、ステップ1後の清水槽水中のNO
2
-濃度は2.3ppmであるのに対して、ステップ3後のNO
2
-濃度は2.7ppmとなるように、防食樹脂8への通水を連続させつつ、純水化樹脂への通水で導電率を制御させることにより、不純物イオンをNa
+、NO
2
-に置換し、防食性を有する高純度の単一溶液に近づき、導電率と防食性を有する陰イオン濃度が比例関係となる。
よって、導電率計の値から防食性を有する陰イオン濃度を把握でき、かつ鉄系金属の防食に必要な最小導電率を維持可能となる。
[0046]
本実施例において、ステップ1〜3を繰り返した状態で加工槽に炭素鋼(S45C)を浸漬させた結果、4日浸漬後の炭素鋼は光沢を維持しており、赤錆は発生しなかった。
なお、清水槽にNa
+メータを浸漬し、ステップ2における清水槽中のNa
+濃度を測定した結果、12日後にNa
+濃度はほとんど増加しなかった。これは防食樹脂中のNa
+形樹脂が寿命を迎えたことを示唆し、NO
2
-形樹脂の寿命を予知できるものである。
予想方法の具体的としては、Na
+形樹脂が寿命をむかえるまでに費やした期間12日とNO
2
-形樹脂/ Na
+形樹脂の容量比2.2L/1.8L=1.2から、NO
2
-形樹脂の寿命(12日×1.2=14.4日)を予知できる。
なお、本実施例では防食樹脂として(Na
+形+NO
2
-形)樹脂を用いたが、(K
+形+NO
2
-形)樹脂や(Ca
2+形+NO
2
-形)樹脂を用いた場合でも同様の効果が得られた。
[0047]
実施例5.
本実施例5の実施条件は以下の通りである。
防食樹脂8としては、Na
+形樹脂1.8LとMoO
4
2-形樹脂2.2Lを混合した(Na
+形+MoO
4
2-形)樹脂に3mol/LのNa
2MoO
4溶液を通水させることによって(Na
+形+MoO
4
2-形)樹脂とする。(図5参照)
純水化樹脂としては、第1の純水化樹脂3、第2の純水化樹脂9共に、H
+形樹脂5LとOH
-形樹脂5Lを混合した(H
+形+OH
-形)樹脂とする。
制御部11Aが基準とする導電率は、導電率(1)を30μS/cm以上、第1の導電率に相当する導電率(2)を20μS/cm、第2の導電率に相当する導電率(3)を24μS/cmに設定し、導電率計7の測定値に基づき電磁弁10の開閉を行う。
本実施例の場合も、実施例4と同様に純水化樹脂はワイヤ放電加工機本体の純水化樹脂と兼ねている。
[0048]
次に具体的動作について説明する。
ステップ1
本実施例においては、防食装置、第1の純水化樹脂3に通水前の清水槽水の導電率は40μS/cmであった。
清水槽2の清水は、導電率計7により計測された導電率が導電率(1)となっていないため、制御部11Aを介して電磁弁10、12を開き、防食樹脂8及び第2の純水化樹脂9に通水を行う。
防食樹脂8、第2の純水化樹脂9に清水槽水が通水され、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、MoO
4
2-、OH
-に置換されるとともに清水槽水の導電率が低下する。
そして、清水槽水の導電率が20μS/cmに達すると、制御部11Aは、電磁弁10を閉じて第2の純水化樹脂9への通水を停止させる。
この時の清水槽水中のMoO
4
2-濃度は8.1ppmであった。
[0049]
ステップ2
清水槽水の導電率が20μS/cmに達すると、純水化樹脂への通水が停止され、清水槽水が防食樹脂のみに通水されることから、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、MoO
4
2-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が上昇する。
[0050]
ステップ3
清水槽水の導電率が24μS/cmに達すると、制御部11Aは電磁弁10を開いて第2の純水化樹脂9にも通水を開始する。
防食樹脂8と第2の純水化樹脂9に清水槽水を通水することによって、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、MoO
4
2-、OH
-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が低下し、清水槽水の導電率が20μS/cmに達する。
この時の清水槽水中のMoO
4
2-濃度は9.6ppmであった。
[0051]
以上のように本実施例によれば、導電率が24μS/cmであってもステップ1後の清水槽水中のWO
4
2-濃度は12.4ppmであるのに対して、ステップ3後のWO
4
2-濃度は14.5ppmであった。
すなわち、上記ステップ1〜3を実施することで、清水槽水中のMoO
4
2-量が増加し、導電率とMoO
4
2-濃度との比例関係を増すことが可能となる。
本実施例において、ステップ1〜3を繰り返した状態で加工槽に炭素鋼(S45C)を浸漬させた結果、2日浸漬後の炭素鋼は光沢を維持しており、赤錆は発生しなかった。
なお、清水槽にNa
+メータを浸漬し、ステップ2における清水槽中のNa
+濃度を測定した結果、12日後にNa
+濃度はほとんど増加しなかった。これは防食樹脂中のNa
+形樹脂が寿命を迎えたことを示唆し、NO
2
-形樹脂の寿命を予知できるものである。
本実施例では防食樹脂として(Na
+形+MoO
4
2-形)樹脂を用いたが、(K
+形+MoO
4
2-形)樹脂、(Ca
2+形+MoO
4
2-形)樹脂を用いた場合でも同様の効果が得られた。
[0052]
実施例6.
本実施例6の実施条件は以下の通りである。
防食樹脂8としては、Na
+形樹脂1.8LとWO
4
2-形樹脂2.2Lを混合した(Na
+形+WO
4
2-形)樹脂に3mol/LのNa
2WO
4溶液を通水させることによって(Na
+形+WO
4
2-形)樹脂とする。(図5参照)
純水化樹脂としては、第1の純水化樹脂3、第2の純水化樹脂9共に、H
+形樹脂5LとOH
-形樹脂5Lを混合した(H
+形+OH
-形)樹脂とする。
制御部11Aが基準とする導電率は、導電率(1)を40μS/cm以上、第1の導電率に相当する導電率(2)を24μS/cm、第2の導電率に相当する導電率(3)を28μS/cmに設定し、導電率計7の測定値に基づき電磁弁10の開閉を行う。
本実施例の場合、純水化樹脂はワイヤ放電加工機本体の純水化樹脂と兼ねている。
[0053]
次に具体的動作について説明する。
本実施例においては、防食装置、第1の純水化樹脂3に通水前の清水槽水の導電率は50μS/cmであった。
清水槽2の清水は、導電率計7により計測された導電率が導電率(1)となっていないため、制御部11Aを介して電磁弁10,12を開き、防食樹脂8及び第2の純水化樹脂9に通水を行う。
防食樹脂8、第2の純水化樹脂9に清水槽水が通水され、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、WO
4
2-、OH
-に置換されるとともに清水槽水の導電率が低下する。
そして、清水槽水の導電率が24μS/cmに達すると、制御部11Aは、電磁弁10を閉じて第2の純水化樹脂9への通水を停止させる。
この時の清水槽水中のWO
4
2-濃度は12.4ppmであった。
[0054]
ステップ2
清水槽水の導電率が20μS/cmに達すると、純水化樹脂への通水が停止され、清水槽水が防食樹脂のみに通水されることから、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、WO
4
2-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が上昇する。
[0055]
ステップ3
清水槽水の導電率が28μS/cmに達すると、制御部11Aは電磁弁10を開いて第2の純水化樹脂9にも通水を開始する。
防食樹脂8と第2の純水化樹脂9に清水槽水を通水することによって、清水槽水中の不純物イオンはNa
+、H
+、WO
4
2-、OH
-に置換されるとともに、清水槽水の導電率が低下し、清水槽水の導電率が24μS/cmに達する。
この時の清水槽水中のWO
4
2-濃度は14.5ppmであった。
[0056]
以上のように本実施例によれば、導電率が24μS/cmであってもステップ1後の清水槽水中のWO
4
2-濃度は12.4ppmであるのに対して、ステップ3後のWO
4
2-濃度は14.5ppmであった。
上記ステップ1〜3を実施することで、清水槽水中のWO
4
2-量が増加し、導電率とWO
4
2-濃度との比例関係を増すことが可能となる。
本実施例において、ステップ1〜3を繰り返した状態で加工槽に炭素鋼(S45C)を浸漬させた結果、2日浸漬後の炭素鋼は光沢を維持しており、赤錆は発生しなかった。
なお、清水槽にNa
+メータを浸漬し、ステップ2における清水槽中のNa
+濃度を測定した結果、12日後にNa
+濃度はほとんど増加しなかった。これは防食樹脂中のNa
+形樹脂が寿命を迎えたことを示唆し、NO
2
-形樹脂の寿命を予知できるものである。
本実施例では防食樹脂として(Na
+形+WO
4
2-形)樹脂を用いたが、(K
+形+WO
4
2-形)樹脂、(Ca
2+形+WO
4
2-形)樹脂を用いた場合でも同様の効果が得られた。
また、陰イオン形樹脂としてWO
4
2-を作製する場合は、Na
2WO
4溶液、K
2WO
4溶液、CaWO
4溶液を用いれば良い。
Industrial Applicability
[0057]
本発明は、ワイヤ放電加工装置への適用に有用である。
Reference Signs List
[0058]
1 加工槽、2 清水槽、3 第1の純水化樹脂、4 電磁弁、5導電率計、6 第1の制御部、7 導電率計、8 第2の純水化樹脂、9 防食樹脂、10 電磁弁、11、11A 制御部、12 電磁弁。
Claims
[1]
水素イオン形樹脂と水酸イオン形樹脂からなる純水化手段と、
陽イオン形樹脂、防食性イオンを担持した陰イオン形樹脂からなる防食手段と、
加工液の導電率の実測値を測定する導電率測定手段と、
この導電率測定手段に基づいて、加工液の前記純水化手段、防食手段への通水を制御する制御手段と、を備えた防食装置において、
前記制御手段は、予め定められた第1及び第2の導電率と、前記導電率測定手段で測定された実測値に基づいて、前記加工液の実測値が第1の導電率に達するまでは前記純水化手段及び防食手段への通水を実施し、
前記実測値が第1の導電率に達したことで、前記純水化手段への通水を停止し、前記防食手段への通水のみを実施し、
前記実測値が第2の導電率に上昇したことで、前記純水化手段への通水を再開し、前記純水化手段及び防食手段への通水を実施する
ことを特徴とする防食装置。
[2]
予め定められる第1の導電率は、鉄系金属に対する防食機能を得るための最小導電率を設定し、第2の導電率は、鉄系金属に対する防食機能を得るための最大導電率を設定することを特徴とする請求項1に記載の防食装置。
[3]
防食手段における、陽イオン形樹脂の陽イオンとしてナトリウムイオンまたはカリウムイオンまたはカルシウムイオンのいずれか1種を選定し、
陰イオン形樹脂の防食性イオンとして亜硝酸イオンまたはモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンのいずれか1種を選定したことと特徴とする請求項1または2に記載の防食装置。
[4]
防食手段における全樹脂に対する陽イオン形樹脂の容量比を0.05以上0.5未満とすることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載の防食装置。
[5]
陰イオン形樹脂の防食性イオンとして亜硝酸イオンを用いる場合、第1の導電率を4μS/cm以上、第2の導電率を5μS/cm以上とすることを特徴とする請求項3に記載の防食装置。
[6]
陰イオン形樹脂の防食性イオンとしてモリブデン酸イオンを用いる場合、第1の導電率を15μS/cm以上、第2の導電率を16μS/cm以上とすることを特徴とする請求項3に記載の防食装置。
[7]
陰イオン形樹脂の防食性イオンとして、タングステン酸イオンを用いる場合、第1の導電率を20μS/cm以上、第2の導電率を21μS/cm以上とすることを特徴とする請求項3に記載の防食装置。
[8]
水素イオン形樹脂と水酸イオン形樹脂からなる純水化手段と、
陽イオン形樹脂、防食性イオンを担持した陰イオン形樹脂からなる防食手段と、
加工液の導電率の実測値を測定する導電率測定手段と、
この導電率測定手段に基づいて、加工液の前記純水化手段、防食手段への通水を制御する制御手段と、を備えた防食装置を用いた防食方法において、
前記制御手段は、予め定められた第1及び第2の導電率と、前記導電率測定手段で測定された実測値に基づいて、前記加工液の実測値が第1の導電率に達するまでは前記純水化手段及び防食手段への通水を実施し、
前記実測値が第1の導電率に達したことで、前記純水化手段への通水を停止し、前記防食手段への通水のみを実施し、
前記実測値が第2の導電率に上昇したことで、前記純水化手段への通水を再開し、前記純水化手段及び防食手段への通水を実施する
ことを特徴とする防食方法。
[9]
鉄系金属に対する防食機能を得るための最小導電率が設定された第1の導電率、鉄系金属に対する防食機能を得るための最大導電率が設定された第2の導電率を用いて制御手段が通水制御することを特徴とする請求項8に記載の防食方法。
[10]
防食手段における、陽イオン形樹脂の陽イオンとしてナトリウムイオンまたはカリウムイオンまたはカルシウムイオンのいずれか1種を選定し、陰イオン形樹脂の防食性イオンとして亜硝酸イオンまたはモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンのいずれか1種を選定したことと特徴とする請求項8または9に記載の防食
方法。
[11]
防食手段における全樹脂に対する陽イオン形樹脂の容量比を0.05以上0.5未満とすることを特徴とする請求項8乃至10何れかに記載の防食方法。
[12]
陰イオン形樹脂の防食性イオンとして亜硝酸イオンを用いる場合、第1の導電率を4μS/cm以上、第2の導電率を5μS/cm以上とすることを特徴とする請求項10に記載の防食方法。
[13]
陰イオン形樹脂の防食性イオンとしてモリブデン酸イオンを用いる場合、第1の導電率を15μS/cm以上、第2の導電率を16μS/cm以上とすることを特徴とする請求項10に記載の防食方法。
[14]
陰イオン形樹脂の防食性イオンとして、タングステン酸イオンを用いる場合、第1の導電率を20μS/cm以上、第2の導電率を21μS/cm以上とすることを特徴とする請求項10に記載の防食
方法。
[15]
被加工物とワイヤ電極とを所定間隙離間し、両者に所定電圧を印加することで放電を発生させ加工を行うワイヤ放電加工装置において、
水素イオン形樹脂と水酸イオン形樹脂からなる純水化手段と、
陽イオン形樹脂、防食性イオンを担持した陰イオン形樹脂からなる防食手段と、
加工液の導電率の実測値を測定する導電率測定手段と、
この導電率測定手段に基づいて、加工液の前記純水化手段、防食手段への通水を制御する制御手段と、を備えた防食機構を備え、
該防食機構における前記制御手段は、予め定められた第1及び第2の導電率と、前記導電率測定手段で測定された実測値に基づいて、前記加工液の実測値が第1の導電率に達するまでは前記純水化手段及び防食手段への通水を実施し、
前記実測値が第1の導電率に達したことで、前記純水化手段への通水を停止し、前記防食手段への通水のみを実施し、
前記実測値が第2の導電率に上昇したことで、前記純水化手段への通水を再開し、前記純水化手段及び防食手段への通水を実施する
ことを特徴とするワイヤ放電加工装置。
[16]
予め定められる第1の導電率は、鉄系金属に対する防食機能を得るための最小導電率を設定し、第2の導電率は、鉄系金属に対する防食機能を得るための最大導電率を設定することを特徴とする請求項15に記載のワイヤ放電加工装置。
[17]
防食手段における、陽イオン形樹脂の陽イオンとしてナトリウムイオンまたはカリウムイオンまたはカルシウムイオンのいずれか1種を選定し、
陰イオン形樹脂の防食性イオンとして亜硝酸イオンまたはモリブデン酸イオンまたはタングステン酸イオンのいずれか1種を選定したことと特徴とする請求項15または16に記載のワイヤ放電加工装置。
[18]
防食手段における全樹脂に対する陽イオン形樹脂の容量比を0.05以上0.5未満とすることを特徴とする請求項15乃至17何れかに記載のワイヤ放電加工装置。
[19]
陰イオン形樹脂の防食性イオンとして亜硝酸イオンを用いる場合、第1の導電率を4μS/cm以上、第2の導電率を5μS/cm以上とすることを特徴とする請求項17に記載のワイヤ放電加工装置。
[20]
陰イオン形樹脂の防食性イオンとしてモリブデン酸イオンを用いる場合、第1の導電率を15μS/cm以上、第2の導電率を16μS/cm以上とすることを特徴とする請求項17に記載のワイヤ放電加工装置。
[21]
陰イオン形樹脂の防食性イオンとして、タングステン酸イオンを用いる場合、第1の導電率を20μS/cm以上、第2の導電率を21μS/cm以上とすることを特徴とする請求項17に記載のワイヤ放電加工装置。
Drawings