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1. (JP2015194149) 陽極酸化皮膜及びその処理方法並びに内燃機関用ピストン
Document

Description

Title of Invention 陽極酸化皮膜及びその処理方法並びに内燃機関用ピストン JP 2014065955 20140327 20160413 C25D 11/12 C25D 11/04 C25D 11/18 F02F 3/10 特開2009−235539(JP,A) 特開2009−256778(JP,A) 特開平06−081195(JP,A) 2015194149 20151105 20150306 瀧口 博史

Technical Field

0001  

Background Art

0002   0003  

Citation List

Patent Literature

0004  

Summary of Invention

Technical Problem

0005   0006   0007  

Technical Solution

0008   0009  

Advantageous Effects

0010  

Brief Description of Drawings

0011  

Description of Embodiments

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057  

Examples

0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076  

Industrial Applicability

0077  

Reference Signs List

0078  

Claims

1   2   3   4   5   6   7   8  

Drawings

1   2   3   4   5   6    

Description

陽極酸化皮膜及びその処理方法並びに内燃機関用ピストン

JP 2014065955 20140327 20160413 C25D 11/12 C25D 11/04 C25D 11/18 F02F 3/10 patcit 1 : 特開2009−235539(JP,A)
patcit 2 : 特開2009−256778(JP,A)
patcit 3 : 特開平06−081195(JP,A)
2015194149 20151105 20150306 瀧口 博史

Technical Field

[0001]
本発明は、陽極酸化皮膜及びその処理方法並びに内燃機関用ピストンに関し、特に、アルミニウム及びアルミニウム合金に対する陽極酸化皮膜及び陽極酸化皮膜の処理方法並びに陽極酸化皮膜を備えた内燃機関用ピストンに関する。

Background Art

[0002]
従来より、アルミニウム及びアルミニウム合金(以下、アルミニウム系材料という。)の耐食性を向上させる方法として、アルミニウム系材料の表面に多孔質の陽極酸化皮膜を形成する陽極酸化処理がある。電解条件による所も大きいが、主に直流電解にて形成される陽極酸化皮膜の多孔質層は、一般的に規則正しく孔が配列されるため、耐食性を低下する一因となっている。陽極酸化皮膜の耐食性を向上させるため、陽極酸化皮膜処理の後に、孔を塞ぐ封孔処理等が行われている。
[0003]
このような陽極酸化処理として、被処理物であるアルミニウム系材料を処理浴中に浸漬し、直流電流を印加した後に、前記直流電流に高周波電流を重畳させた交直重畳電流を印加するアルミニウム系材料の陽極酸化処理方法により、陽極酸化皮膜の成膜速度を向上させること、また、前記方法をピストンヘッドに適用することが開示されている(特許文献1)。また、封孔処理によらず、陽極酸化処理の電解条件を工夫して、アルミニウム系材料近傍の緻密な陽極酸化皮膜により耐食性を向上する技術が開示されている(特許文献2)。

Citation List

Patent Literature

[0004]
patcit 1 : 特開2009−235539号公報
patcit 2 : 特開2006−83467号公報

Summary of Invention

Technical Problem

[0005]
このような陽極酸化処理では、陽極酸化皮膜の成長過程において、規則正しい気孔が形成される。特に、アルミニウム合金等の不純物元素が含まれているアルミニウム系材料では、不純物元素の周囲で陽極酸化皮膜が成長し難いため、気孔が形成されやすい。アルミニウム系材料近傍の陽極酸化皮膜が緻密であると、比較的気孔が少ないため、断熱性が低くなる。また、陽極酸化皮膜の表面において複数の円筒状の気孔が存在していると、高い断熱性と耐食性との両立することはできない。
[0006]
このような陽極酸化皮膜を内燃機関用ピストン等に利用する場合、前記陽極酸化皮膜には、燃焼時の衝撃に耐え得る非常に高い耐久性及び耐衝撃性、並びに内燃機関用ピストンのヘッド面への燃料付着や未燃物を防ぐための撥水機能及び撥油機能が要求されている。
[0007]
前記課題に照らして、本発明は、高い断熱性と高い耐食性とを両立し、また高い耐久性及び耐衝撃性を有し、且つ撥水及び撥油機能が高いアルミニウム系材料の陽極酸化皮膜及びその処理方法並びに内燃機関用ピストンを提供することを目的とする。

Technical Solution

[0008]
本発明に係る陽極酸化皮膜の処理方法の一態様は、アルミニウム系材料に交直重畳電解を印加して第二の陽極酸化皮膜を形成する工程と、前記工程の後に、前記アルミニウム系材料に直流電解を印加して第一の陽極酸化皮膜を形成する工程とを備え、前記第一の陽極酸化皮膜の上に前記第二の陽極酸化皮膜を形成することを特徴としている。
[0009]
また、本発明に係る陽極酸化皮膜の一態様は、アルミニウム系材料の表面に第一の陽極酸化皮膜と、前記第一の陽極酸化皮膜の表面に第二の陽極酸化皮膜とを少なくとも備えた陽極酸化皮膜であって、前記第一の陽極酸化皮膜が、その内部に前記第二の陽極酸化皮膜より多くの気孔を有することを特徴としている。

Advantageous Effects

[0010]
本発明によれば、高い断熱性と高い耐食性とを両立し、また高い耐久性及び耐衝撃性を有し、且つ撥水及び撥油機能が高いアルミニウム系材料の陽極酸化皮膜及びその処理方法並びに内燃機関用ピストンを得ることができる。

Brief Description of Drawings

[0011]
[fig. 1] 図1は、本発明に係る陽極酸化皮膜及びその処理方法並びに内燃機関用ピストンの第一実施の形態について、陽極酸化皮膜を概略的に示す断面図である。
[fig. 2] 図2は、本発明に係る陽極酸化皮膜及びその処理方法並びに内燃機関用ピストンについて、陽極酸化皮膜の処理方法に使用される陽極酸化処理装置を概略的に示す構成図である。
[fig. 3] 図3は、本発明に係る陽極酸化皮膜及びその処理方法並びに内燃機関用ピストンの第二実施の形態について、陽極酸化皮膜を概略的に示す断面図である。
[fig. 4] 図4(a)〜図4(c)は、本発明に係る陽極酸化皮膜及びその処理方法について、実施例の耐食性試験の結果を示す写真である。
[fig. 5] 図5は、本発明に係る陽極酸化皮膜及びその処理方法について、実施例の結果を示す断面写真である。
[fig. 6] 図6(a)及び図6(b)は、本発明に係る陽極酸化皮膜及びその処理方法について、実施例の結果を示す断面写真である。

Description of Embodiments

[0012]
[陽極酸化皮膜](第一実施の形態)
本発明に係る陽極酸化皮膜の一実施の形態について、添付図面を参照してさらに詳細に説明する。図1は、本実施の形態の陽極酸化皮膜2を示す概略的な断面図である。図1に示すように、陽極酸化皮膜2は、アルミニウム系材料1の表面に備えられている。なお、アルミニウム系材料1が不純物及び/又は添加物としてシリコンを含むアルミニウム合金の場合、シリコン5が陽極酸化皮膜表面により内包されている。
[0013]
アルミニウム系材料1は、陽極酸化皮膜2で被覆されるその対象物である。本実施の形態での「アルミニウム系材料」は、アルミニウムの他、シリコン、銅等の合金成分を含むアルミニウム合金又はそれらを含有するアルミ展伸材、アルミ鋳造材、アルミダイカスト材(ADC)等のアルミニウム合金を意味する。より具体的には、AC4、AC8、AC8A、AC9等のAC材、ADC10〜ADC14等のADC材、A1000〜A7000等のアルミニウム合金である。アルミニウム系材料1は部品等に加工したアルミニウム系部材とすることができる。アルミニウム系材料1及び/又は前記アルミニウム系部材は、陽極酸化皮膜2に対して、高い耐衝撃性、耐久性、断熱性、撥水性、撥油性等を要求する内燃機関用ピストンに使用されることが好ましい。本実施の形態の陽極酸化皮膜2であれば、前記した要求性能を満たすことができる。なお、本実施の形態において内燃機関に要求される「断熱性」とは、内燃機関の燃焼部から外側且つ/又は外側から燃焼部への熱を断熱する性能及び/又は機能を意味している。
[0014]
アルミニウム系材料1は、不純物及び/又は添加物を含有してもよい。前記不純物及び/又は添加物としては、シリコン(Si)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、錫(Sn)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等が挙げられる。これら不純物及び/又添加物は、アルミニウム系材料に対して8質量%以上30質量%以下であることが好ましい。不純物及び/又は添加物によっても陽極酸化皮膜2に気孔が形成されるため、陽極酸化皮膜2の断熱性に寄与することができる。なお、本実施の形態では、不純物として、アルミニウム系材料1の鋳造性や耐摩耗性等を高めるために添加されるシリコン5を例示している。
[0015]
陽極酸化皮膜2は、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとを備えている。陽極酸化皮膜2は、第一の陽極酸化皮膜2a及び第二の陽極酸化皮膜2bとの2層構造により、アルミニウム系材料1に対して断熱性、耐食性、耐久性、耐衝撃性、撥水性、撥油性等の複数の機能を付与している。
[0016]
第一の陽極酸化皮膜2aは、直流電解を印加することによりアルミニウム系材料1の表面上に設けられた多孔質の皮膜である。第一の陽極酸化皮膜2aは、規則正しい配向性を有する。このため、第二の陽極酸化皮膜2bと比較して、多くの気孔(第一の気孔)を有している。すなわち、気孔の大きさ、数及び/又は分布の点において、第一の陽極酸化皮膜2aは疎であり、第二の陽極酸化皮膜2bは密である。また、前記第一の気孔は、シリコン5等の存在によっても形成されている。
[0017]
第一の陽極酸化皮膜2aは、その表面及び内部に数多く存在する第一の気孔内の空気の熱伝導率が低いため、第二の陽極酸化皮膜2bよりも断熱性が高い。また、第一の陽極酸化皮膜2aは、耐食性を有し、腐食させる要因となる物質をアルミニウム系材料1まで到達することを防ぐことができる。したがって、第一の陽極酸化皮膜2aは、アルミニウム系材料1に対して高い断熱性及び耐食性を付与し、且つ、第二の陽極酸化皮膜2bと共働することにより信頼性の高い断熱性能を付与している。
[0018]
第二の陽極酸化皮膜2bは、交直重畳電解を印加してアルミニウム系材料1の表面上に設けられた多孔質の皮膜であり、複数の気孔(第二の気孔)を有している。また、前記第二の気孔は、シリコン5等の存在によっても形成されている。第二の陽極酸化皮膜2bは、ランダム配向に起因した緻密性を有している。すなわち、第二の陽極酸化皮膜2bは、アルミニウム系材料1の表面に対してランダムな方向に成長した配向性を持たない陽極酸化皮膜である。このため、第二の陽極酸化皮膜2bは、第一の陽極酸化皮膜2aと比較して、腐食させる要因となる物質、例えば水がアルミニウム系材料まで到達することを防ぐことができ、耐食性が高い。より具体的には、前記第二の気孔がランダムな方向を向いているため、一方向の圧力下にて腐食の原因となる物質水が一度に多くの孔に浸入することも防止できる。なお、「緻密」とは、気孔の大きさ、数(分布)が他の陽極酸化皮膜と皮膜して小さい又は少ないことを意味している。
[0019]
第二の陽極酸化皮膜2bは、第一の陽極酸化皮膜2aの蓋として第二の陽極酸化膜2bの気孔を塞ぐことなく覆うことで、第一の陽極酸化皮膜2aの断熱性を向上させることができる。また、第二の陽極酸化皮膜2bにより、腐食させる要因となる物質をアルミニウム系材料1まで到達することを防ぐことができる。すなわち、第二の陽極酸化皮膜2bは、高い耐食性をアルミニウム系材料1に付与するとともに、第二の陽極酸化膜2bの断熱性を向上させている。第二の陽極酸化皮膜2bは、高い耐食性の他に、密度及び硬度が高く、且つ、表面疎さが小さい。表面疎さが小さいということは、第二の陽極酸化皮膜2bの表面が平滑であることを意味している。このため、陽極酸化皮膜2を内燃機関用ピストンに使用した場合、燃焼時の衝撃に耐え得る耐久性及び耐衝撃性を陽極酸化皮膜2に付与するとともに、燃料の付着及び未燃物の固着を防止することができる。
[0020]
第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとは、同一の陽極酸化処理浴にて形成されることが好ましく、略同一の温度条件下で形成されることがより好ましい。この場合、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとの成分が略同等となるため、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとの接続部(境界部)を連続的に形成することができる。これにより、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとの接続部が一体的で強固となる。その結果、第一の陽極酸化皮膜2aの第一の気孔が後述する封孔処理により塞がれることを防いで、断熱性の低下を防ぐことができる。また、陽極酸化皮膜同士の密着性不良又は剥がれ等の発生を防ぐことができる。さらに、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとは、アルミニウム系材料1に対して、信頼性の高い耐久性能及び耐衝撃性能を付与している。
[0021]
第一の陽極酸化皮膜2a及び第二の陽極酸化皮膜2bを形成する陽極酸化処理液としては、硫酸(H SO )、シュウ酸(H )、リン酸(H PO )、クロム酸(H CrO )等の酸性浴、水酸化ナトリウム(NaOH)、リン酸ナトリウム(Na PO )、フッ化ナトリウム(NaF)等の塩基性浴のいずれを用いてもよい。陽極酸化皮膜2を表面に生成するアルミニウム系材料1は、特定の陽極酸化浴を使用した場合には限定されないものの、実用的な観点より、硫酸が好ましい。リン酸浴であれば、第一の陽極酸化皮膜2aの気孔の大きさや数(分布)を電解条件により多くすることができる。
[0022]
陽極酸化皮膜2の膜厚は、特に限定されない。より具体的には、陽極酸化皮膜2の膜厚は、実用性の観点より3μm以上300μm以下であることが好ましい。用途に応じて必要な膜厚とすることができる。
[0023]
また、陽極酸化皮膜2を内燃機関用ピストンに使用した場合、第二の陽極酸化皮膜2bがヘッド面に備えられているため、ヘッド面への燃料の付着及び未燃物の固着を防止することができる。その結果、デポジット付着によるエンジン不調の発生を防止することができる。さらに、第一の陽極酸化皮膜2aは第二の陽極酸化皮膜2bよりも気孔率が高い(密度が低い)ことより硬さが低い皮膜となる。逆に、第二の陽極酸化皮膜2bの硬さは第一の陽極酸化皮膜2aよりも気孔率が低い(密度が高い)ことより高くなる。第一の陽極酸化皮膜2aよりも第二の陽極酸化皮膜2bが最表面にある方が表面疎さは小さくなり、即ち、熱を受ける面積が小さい皮膜となり、断熱性に対して有利に働く。かように、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bの相乗効果により、強度が高く信頼性の高い断熱性を有する陽極酸化皮膜2を得ることができる。
[0024]
陽極酸化皮膜2(第一の陽極酸化皮膜2a及び第二の陽極酸化皮膜2b)には、必要に応じて、封孔処理を行うことができる。第一の陽極酸化皮膜2a、第二の陽極酸化皮膜2b及び/又はそれらを備えたアルミニウム系材料1に対して封孔処理を行った場合、前記第一気孔及び第二の気孔が強塩基処理液に起因した図示しない生成物により封孔された第一の陽極酸化皮膜及び第二の陽極酸化皮膜を得ることができる。これにより、第一の陽極酸化皮膜及び第二の陽極酸化皮膜アルミニウム系材料に対する耐食性をさらに向上させることができる。前記封孔処理については後述する。
[0025]
なお、陽極酸化皮膜形成工程を経た陽極酸化皮膜2は、前記した封孔処理等の防錆処理を行わなくても、十分に高い耐熱性及び耐食性を備えている。このため、前記封孔処理、洗浄処理、修復処理、塗装処理等の処理を行うこともできるが、前記封孔処理を省略することもできる。陽極酸化皮膜2に対して封孔処理を行うことにより、封孔処理の実施の要否は、要求される機能に応じて、適宜選択することができる。この場合、工数の削減が可能となり、製造コストを低減することができる。
[0026]
[陽極酸化皮膜の処理方法]
以上の構成を備える陽極酸化皮膜について、その作動形態を説明することにより、陽極酸化皮膜の処理方法の一実施の形態について添付図面を参照してさらに詳細に説明する。
[0027]
図2は、陽極酸化皮膜2の処理方法に使用される陽極酸化処理装置10の概要を示す構成図である。陽極酸化処理装置10は、陽極酸化処理液を収容する電解浴槽11と、陽極酸化処理液に浸漬した陽極12及び一対の陰極13と、導電線14と、電源15とを備えている。一対の陰極13は、陽極12を中心にして、電解浴槽11内で互いに対向するように配置されている。陽極12及び一対の陰極13は、導電線14を介して電源15に連結している。また、陽極酸化処理装置10は、陽極12、一対の陰極13及び導電線14を介して電源15により直流電解及び交直重畳電解を印加するように構成されている。
[0028]
陽極酸化処理装置10は、陽極酸化処理液を攪拌可能な図示しない攪拌措置を備えていることが好ましい。これにより、発生する泡等による局所的な焼けを防ぐとともに、陽極酸化皮膜2の均一な成長を補助することができる。また、一対の陰極13の各々は、陽極12となるアルミニウム系材料1の表面積の20倍以上の表面積を陽極酸化処理液中に浸漬するよう構成されていることが好ましい。均一な陽極酸化皮膜2を得ることができる。
[0029]
陽極酸化皮膜形成工程として、陽極酸化処理液中にアルミニウム系材料1を陽極12として、チタン(Ti)を陰極13としてそれぞれ配置する。陽極酸化処理液を電気分解することにより、アルミニウム系材料1の表面近傍に酸化アルミニウムを主成分とした陽極酸化皮膜2を形成する。陽極酸化皮膜2により、アルミニウム系材料1には耐食性、耐摩耗性等の機能を付与される。なお、陰極13の材料は、陰極13として機能する材料であればよく、チタンの他に、カーボン板、アルミニウム板、ステンレス板等を用いることができる。
[0030]
第一の陽極酸化皮膜形成工程として、アルミニウム系材料1に交直重畳電解を印加することにより、第二の陽極酸化皮膜2bを形成する。すなわち、第一の陽極酸化皮膜形成工程は、直流電流に交流電流を重畳させた交直重畳法により実施する(以下、交直重畳電解法ともいう。)。本工程では、第二の陽極酸化皮膜2bを、アルミニウム系材料1の表面上を主に含む表面近傍に形成する。第二の陽極酸化皮膜2bは、交直重畳電解を印加してアルミニウム系材料の表面近傍に設けられた多孔質の皮膜であり、複数の気孔(第二の気孔)を有している。第二の陽極酸化皮膜2bは、ランダム配向に起因する緻密性を有している。したがって、腐食の要因となる物質をアルミニウム系材料まで通過しにくくすることができるため、耐食性が高く、硬さが高く 且つ、表面疎さが小さい(表面が平滑である)。
[0031]
第一の陽極酸化皮膜形成工程にて形成する第二の陽極酸化皮膜2bは、第一の陽極酸化皮膜2aの蓋として第一の陽極酸化皮膜2aの気孔を塞ぐことなく覆うことにより、第一の陽極酸化皮膜2aの断熱性を維持、向上させることができる。また、第二の陽極酸化皮膜2bにより、腐食させる要因となる物質をアルミニウム系材料1まで到達することを防ぐことができる。すなわち、第二の陽極酸化皮膜2bは、高い耐食性をアルミニウム系材料1に付与するとともに、陽極酸化皮膜2の断熱性を向上させる。
[0032]
第二の陽極酸化皮膜形成工程として、第一の陽極酸化皮膜形成工程の後に、第二の陽極酸化皮膜2bを有するアルミニウム系材料1に直流電解を印加することにより、第一の陽極酸化皮膜2aを形成する(以下、直流電解法ともいう。)。本工程では、第二の陽極酸化皮膜2bを、アルミニウム系材料1の表面近傍に形成する。すなわち、第一の陽極酸化皮膜2aは、第二の陽極酸化皮膜2bとアルミニウム系材料1の間に形成される。第一の陽極酸化皮膜2aは、配向性を有するため、第二の陽極酸化皮膜2bよりも多くの気孔(第一の気孔)を有している。すなわち、気孔の大きさ、数及び/又は分布の点において、第一の陽極酸化皮膜2aは疎であり、第二の陽極酸化皮膜2bは密である。また、前記第一の気孔は、シリコン5等の存在によっても形成される。
[0033]
第二の陽極酸化皮膜形成工程により形成する第一の陽極酸化皮膜2aの表面及び内部には、第一の気孔が多く存在する。第一の気孔内の空気は、熱伝導率が低いため、第一の陽極酸化皮膜2aは、第二の陽極酸化皮膜2bよりも断熱性が高い。また、第一の陽極酸化皮膜2aも、酸化アルミニウムに起因する耐食性を有し、腐食させる要因となる物質をアルミニウム系材料1まで到達することを防ぐことができる。第一の陽極酸化皮膜2aは、アルミニウム系材料1に対して耐食性を付与するとともに、第二の陽極酸化皮膜2bとの相乗効果により信頼性の高い断熱性を付与することができる。
[0034]
第一の陽極酸化皮膜形成工程と第二の陽極酸化皮膜形成工程は、目的に応じて、異なる陽極酸化処理液又は温度により実施することができるが、同一の陽極酸化処理液にて実施されることが好ましく、さらに同一の温度で実施されることがより好ましい。この場合、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとの成分が略同等となるため、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとを連続的に形成することができる。これにより、直流電解による陽極酸化皮膜2aと交直重畳電解による陽極酸化皮膜2bとの接続部が一体的で強固となる。その結果、後述する封孔処理により、直流電解による陽極酸化皮膜の気孔を塞ぐ虞をなくし、断熱性の低下を防ぐことができる。また、陽極酸化皮膜同士の密着性不良又は剥がれ等の発生を防ぐことができる。これにより、高い耐久性を得ることができる。
[0035]
陽極酸化処理液としては、硫酸(H SO )、シュウ酸(H )、リン酸(H PO )、クロム酸(H CrO )等の酸性浴、水酸化ナトリウム(NaOH)、リン酸ナトリウム(Na PO )、フッ化ナトリウム(NaF)等の塩基性浴のいずれを用いてもよい。後述する封孔処理の対象となる陽極酸化皮膜2を表面に生成するアルミニウム系材料1は、特定の陽極酸化浴を使用した場合には限定されないものの、実用的な観点より、硫酸が好ましい。
[0036]
陽極酸化処理液の温度は、第一の陽極酸化皮膜2a及び第二の陽極酸化皮膜2bが形成可能な温度であればよい。より具体的には、陽極酸化処理液の温度は、5.0℃以上30℃以下が好ましく、10℃以上20℃以下がより好ましい。前記範囲内であれば、例えば、硬質皮膜法のような0℃程度までの冷却を行う成膜を不必要としつつ、所定の硬度を有する第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとの両方の形成を陽極酸化処理により可能することができる。また、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとの接続部の連続性を向上させて、一体的で強固な陽極酸化皮膜2を得ることができる。
[0037]
第一の陽極酸化皮膜形成工程での高周波電流の周波数は、5kHz以上20kHz以下が好ましく、10kHz以上20kHz以下がより好ましい。また、正極の電圧は12V以上70V以下が好ましく、負極の電圧は−10V以上0V以下が好ましい。前記範囲内であれば、皮膜厚さの均一性を向上させて、耐食性、撥水性及び撥油性の部位によるバラつきの少ない第二の陽極酸化皮膜2bを得ることができる。なお、通電時間は、特に限定されず、実用的な時間で実施可能である。
[0038]
封孔処理工程として、一般的な封孔処理を適用することができる。前記封孔処理としては、強塩基性封孔浴、沸騰水封孔、ニッケル塩封孔等が挙げられる。
本実施の形態では、封孔処理工程として、封孔液を、陽極酸化皮膜2の表面に付着させることにより、陽極酸化皮膜2の気孔を、封孔液に浸透させる。封孔液は、陽極酸化皮膜2の気孔に侵入して気孔中にて化合物を形成する。特に封孔液は、主に第二の陽極酸化皮膜2bの第二の気孔に侵入して化合物を形成する。これにより、陽極酸化皮膜2の断熱性を向上させることができる。封孔処理工程は、陽極酸化皮膜2を有する対象物に処理液を塗布やスプレーし、又は、対象物を処理液に浸漬し、空気中で保持してから水洗及び乾燥して行うことが好ましい。また、陽極酸化皮膜2を有する対象物や処理液に浸漬し、0.5分以上で処理液から取り出し、水洗及び乾燥することが好ましい。塗布やスプレーによる封孔処理方法は、部分的に封孔処理することができる。このため、大型部品を処理する場合、処理の上で、大型部品を浸漬するための大型の槽を不必要とすることができる。
[0039]
封孔処理工程の際、第二の陽極酸化皮膜2bが第一の陽極酸化皮膜2aの蓋となり、第一の気孔を塞ぐことなく覆っている。したがって、封孔処理の際に、多くの第一の気孔を封孔することなく、第一の陽極酸化皮膜2aの断熱性の低下を防止することができる。また、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとの接続部が一体的に強固に形成されている。したがって、封孔処理により、断熱性及びその信頼性を低下することを防止しつつ、耐食性を向上することができる。
[0040]
なお、陽極酸化処理形成工程を経た陽極酸化皮膜2は、前記した封孔処理等の防錆処理を行わなくても、十分に高い耐熱性及び耐食性を備えている。このため、封孔処理、洗浄処理、修復処理、塗装処理等の後処理のうちの封孔処理を省略することもできる。陽極酸化皮膜2に対して封孔処理を行うことにより、封孔処理の実施の要否は、要求される機能に応じて、適宜選択することができる。封孔処理を実施する場合は、陽極酸化皮膜2の耐食性を向上させることができる。封孔処理を実施しない場合は、工数の削減が可能となり、製造コストを低減することができる。
[0041]
[本実施の形態の解決した課題と作用効果]
ここで、例えば、特許文献1の直流電解により形成された陽極酸化皮膜には、陽極酸化皮膜の表面からアルミニウム系材料近傍まで貫通している気孔が存在するため、気孔を通じて、アルミニウム系材料近傍まで熱が進入してしまう。したがって、アルミニウム系材料との熱伝導が起こる。その結果、断熱性が低いという問題があった。また、水分を含む燃料又は腐食物質などが存在すると、陽極酸化皮膜は燃料又は物質を吸収することができない。このため、前記燃料又は前記物質は、アルミニウム系材料近傍まで貫通している気孔を通過してアルミニウム系材料に達してしまう。その結果、耐食性が低下するという問題があった。また、特許文献2に例示されたように、アルミニウム系材料近傍が緻密な陽極酸化皮膜である場合、直流電解により形成した陽極酸化皮膜よりも気孔が少ない。その結果、直流の陽極酸化皮膜よりも断熱性が低くなるという問題があった。
[0042]
特に、内燃機関用ピストン(特にヘッド面)などに陽極酸化皮膜が使用される場合には、該陽極酸化皮膜には燃焼時の爆発圧、噴射圧、熱膨張、熱収縮の繰り返し応力に耐える非常に高い耐久性及び耐衝撃性が要求されている。しかし、直流の陽極酸化皮膜は密度が低いため、硬さが低く、内燃機関用ピストンの使用においては耐え難く、陽極酸化皮膜が破損してしまう懸念があった。さらに、直流の陽極酸化皮膜は表面疎さが疎いため、撥水、撥油機能が低い。そのため、内燃機関用ピストンのヘッド面への燃料の付着及び未燃物の固着が生じる。その結果、デポジット付着により、エンジンが不調となるという問題があった。例えば、特許文献1の陽極酸化皮膜では、陽極酸化皮膜の表面において複数の円筒状の気孔が存在しているため、断熱性及び耐食性の向上を期待することはできない。
[0043]
また、陽極酸化皮膜の気孔を封孔処理で防ぐ場合、大幅に気孔を塞ぐ虞があるため、陽極酸化皮膜の断熱性が低下するという問題があった。さらに、陽極酸化処理とは異なる成分の処理液で封孔処理が行われているため、封孔処理した部分と陽極酸化皮膜との密着性不良又は剥がれ等の虞がある。すなわち、陽極酸化皮膜の耐久性が低下する虞があるという問題があった。さらにまた、封孔処理工程は、陽極酸化処理の工程の後に、異なる工程として処理される。したがって、工程間の移動中に、形成された内部の気孔が閉塞する虞がある。これにより、耐熱性が低下するという問題があった。さらに工程数及び管理項目を増加させて、生産コストが高くなるという問題があった。
[0044]
これに対して、本実施の形態によれば、アルミニウム系材料1側に直流電解にて形成した高い断熱性を有する第一の陽極酸化皮膜2aを備えて、且つ、第一の陽極酸化皮膜2aの外周側に交直重畳電解にて形成した高い耐食性を有する第二の陽極酸化皮膜2bを備えるように構成している。このため、交直重畳電解にて形成した第二の陽極酸化皮膜2bが、直流電解にて形成した第一の陽極酸化皮膜2aの外周を覆う蓋として機能し、第一の陽極酸化皮膜2aのナノレベル及びマイクロレベルの第一の気孔を塞ぐことなく覆う。これにより、高い断熱性と高い耐食性とが両立した陽極酸化皮膜2を得ることができる。
[0045]
また、本実施の形態によれば、交直重畳電解により形成した密度及び硬度が高い第二の陽極酸化皮膜2bを、陽極酸化皮膜2の上層に位置するように構成している。このため、特に、陽極酸化皮膜2を内燃機関用ピストンに使用した場合、燃焼時の爆発圧、噴射圧、熱膨張、熱収縮の繰り返し応力に耐え得る高い耐久性及び耐衝撃性を備えた陽極酸化皮膜2を得ることができる。また、第二の陽極酸化皮膜2bがヘッド面に備えるように構成することができる。その結果、内燃機関用ピストンの使用に耐え得る陽極酸化皮膜2を得ることができる。
[0046]
さらに、本実施の形態によれば、交直重畳電解により形成した第二の陽極酸化皮膜2bの表面疎さが小さい。すなわち、第二の陽極酸化皮膜2bの表面の平滑性が高い。このため、第二の陽極酸化皮膜2b及びそれを上層として備えた陽極酸化皮膜2は、高い撥水性及び撥油性を有し、かつ、表面積が小さいことにより熱を受け難い。したがって、陽極酸化皮膜2を内燃機関用ピストンに使用した場合、第二の陽極酸化皮膜2bがヘッド面に備えられているため、ヘッド面への燃料の付着及び未燃物の固着を防止することができる。すなわち、デポジット(Deposit)が付着することによるエンジン不良の発生を防ぐことができる。
[0047]
さらにまた、本実施の形態によれば、第一の陽極酸化皮膜2aの成分と第二の陽極酸化皮膜2bとの成分が略同等であり、且つ、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとが連続的に形成されている。これにより、直流電解により形成した第一の陽極酸化皮膜2aと交直重畳電解により形成した第二の陽極酸化皮膜2bとの接続部を一体的で強固にすることができる。その結果、第一の陽極酸化皮膜2aの数多くの第一の気孔が塞がれることを防止して、第一の陽極酸化皮膜2aが有する高い断熱性の低下を防ぐことができる。また、陽極酸化皮膜同士の密着性不良又は剥がれ等の発生を防ぐことができる。これにより、信頼性の高い断熱性及び耐久性を得ることができる。
[0048]
[陽極酸化皮膜](第二実施の形態)
続いて、本発明の、第二実施の形態について、図3を用いて説明する。図3に示すように、本実施の形態の陽極酸化皮膜20は、アルミニウム系材料1の表面に形成され、第一の陽極酸化皮膜2aと、第二の陽極酸化皮膜2bと、追加層2cとを少なくとも備えている。なお、前述の実施の形態と同じ構成要素は、図1及び図2と同一の符号を付して説明を省略する。
[0049]
追加層2cは、少なくとも一層以上の陽極酸化皮膜からなり、アルミニウム系材料1と第一の陽極酸化皮膜2a及び第二の陽極酸化皮膜2bとの間に形成されている。追加層2cは、第一実施の形態の第一又は第二の陽極酸化皮膜形成工程に加えて、適宜公知の化学処理を実施することにより形成する。これにより、追加層2cは、陽極酸化皮膜20に対して、更なる機能を補完又は追加する。さらに、追加層2cは、その自身の機能と第一又は第二の陽極酸化皮膜2a、2bの機能とを合わせて、陽極酸化皮膜20の機能を相乗する。
[0050]
追加層2cによって補完、追加又は相乗する機能としては、その構造体が必要とする特性、すなわち強度、耐摩耗性、耐食性、平滑性、遮熱性、傾斜機能・熱膨張に関わる密着性・耐久性、反射・吸収・透過に関わる光学特性、放射・伝熱・対流に関わる熱伝導性、カーボン等の未燃料の付着性、撥油・撥水性、電(磁)気特性及び/又は着色・干渉による意匠性等が挙げられる。陽極酸化皮膜20の機能を補完、追加又は相乗するための皮膜は、複数形成した追加層2cのうちの少なくとも1層あればよく、追加層2cのうちの何層目に形成するかは、その構造体が必要とする前記特性に応じて決定する。
[0051]
例えば、直流電解処理により形成した追加層2cの陽極酸化皮膜の気孔に対して、触媒を担持させることによって、排気ガス浄化性能等のさらなる機能を陽極酸化皮膜20に付与することができる。また、例えば、追加層2cの陽極酸化皮膜の気孔に対して、着色染料を付着させたりすることによって、陽極酸化皮膜20に対して、意匠性等の機能を付与することができる。このようにして、陽極酸化皮膜20の機能を補完又は追加する。
[0052]
また、追加層2cは、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとが交互に形成されてなる層とすることができる。これにより、陽極酸化皮膜20を、第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとが交互に形成された層とすることができる。この場合、アルミニウム系材料1に対して、前記陽極酸化皮膜形成工程により、第二の陽極酸化皮膜2bと第一の陽極酸化皮膜2aとを交互に形成した後、さらに、第一の陽極酸化皮膜形成工程及び第二の陽極酸化皮膜を交互に行うことにより、追加層2cを形成する。その後、必要に応じて、封孔処理等の防錆処理を実施する。その結果、2層構造の皮膜よりも高い耐衝撃性、耐摩耗性及び耐食性を有する陽極酸化皮膜20を得ることができる。
[0053]
追加層2cの層数N(Nは1以上の自然数)は、少なくとも1以上であればよく、特に限定されない。一例として、追加層2cの層数は、4層とすることができる。すなわち、陽極酸化皮膜20の層数N+2は、少なくとも3以上であればよく、特に限定されない。一例として、陽極酸化皮膜20の層数は、6層とすることができる。この場合、陽極酸化皮膜20の微細構造をより複雑とさせて、陽極酸化皮膜20の耐食性及び耐油性を向上できる。また、陽極酸化皮膜20の表面の外部から加わった力をアルミニウム系部材1に到達するまでに緩和することができるため、陽極酸化皮膜20の耐衝撃性を向上できる。
[0054]
本実施の形態によれば、追加層2cの機能と第一及び/又は第二の陽極酸化皮膜2a、2bの機能とを合わせた機能を陽極酸化皮膜20に複合的に付与し、陽極酸化皮膜20が必要とする機能を相乗できる。また、第一実施の形態の陽極酸化皮膜形成工程に加え、適宜公知の化学処理を行うことにより、さらなる機能を陽極酸化皮膜20に補完又は追加することができる。さらに、N個の層からなる追加層2cを第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとが交互に形成された層とすることによって、N+2個の層からなる陽極酸化皮膜20を第一の陽極酸化皮膜2aと第二の陽極酸化皮膜2bとが交互に形成された層とすることができる。その結果、前記第一実施の形態よりも、陽極酸化皮膜及びそれを使用した内燃機関用ピストンの耐衝撃性、耐摩耗性及び耐食性を向上することができる。
[0055]
なお、第一及び第二の陽極酸化皮膜形成工程のみで形成した皮膜によって、陽極酸化皮膜20の機能を補完又は追加することもできる。直流電解処理と交直重畳電解処理で成膜された皮膜の主な構造の違いは、成長する組織の配向性及び密度である。よって、それら皮膜を複合的に形成することにより、陽極酸化皮膜20に対して、機械的、熱的、電(磁)気的、光学的特性等のさらなる機能を付与することができる。なお、直流電解処理を配向性をもつ電解処理とし、交直重畳電解処理を配向性を持たない電解処理として、複合処理を行うこととする。配向性を持たない電解処理とは、特定の周期の中で印加電圧をマイナスにし、皮膜の成長方向(配向性)を変えることであり、その波形(sin波、矩形波、三角波等)を限定するものではない。本実施の形態は、単に陽極酸化皮膜20の機能を向上することを目的とするものではなく、あくまでも、陽極酸化皮膜20の機能を相乗、補完又は追加することを主眼に置くものである。
[0056]
例えば、本実施の形態の陽極酸化皮膜20の形成に際しては、第一実施の形態にて前述したように、陽極酸化皮膜20の表面側の層とアルミニウム系部材1の表面側の層とを同一の陽極酸化処理液で満たした同一の電解浴槽で電解処理して形成することが好ましい。しかしながら、本実施の形態では、皮膜の性質の差異を明確にして上記目的を達成するために、それに限定されない。一層目を電解処理により形成した後、別の陽極酸化処理液で満たした電解浴槽に移送し、別の温度にて電解処理して二層目を形成できる。但し、印加電圧又は電流密度を変化させることによって作製した皮膜は層数として含まない。これは、陽極酸化皮膜を形成する際、印加電圧又は電流密度のいずれか一方は必ず変化するものであり、また、それらの変化では皮膜の緻密さ等の皮膜構造に大きな変化は生じにくく、性質の異なる皮膜とは言えないためである。
[0057]
また、前記第一及び第二実施の形態では、アルミニウム系部材を内燃機関用ピストンに使用することを例示したが、本発明はこれに限定されない。アルミニウム系部材としては、船外機用オイルパン、ギヤケース、プロペラ等の船外機用部品が挙げられる。船外機は、装着式の船舶の推進システムであり、海水や潮風と接触することから、船外機を構成する部品には、高い耐食性が要求されている。例えば、オイルパンは、エンジンオイルを貯蔵するとともに、走行風によりエンジンオイルを冷却する機能も有しており、海水や潮風と直接接触する必要がある。このため、高い耐食性が要求されている。本発明のアルミニウム系部材に形成する陽極酸化皮膜は、十分な耐食性を有することから、船外機用部品としても用いることができる。
Examples
[0058]
以下、実施例によって本発明を具体的に説明することにより、本発明の効果を明らかにする。本発明に係る陽極酸化皮膜及び陽極酸化皮膜の処理方法は、以下の実施例によって制限されない。
[0059]
[試験例1]
アルミニウム系材料として、アルミニウム合金(AC8A)を試験片として用いた。この試験片に対して直流電解法により陽極酸化処理を行い、11〜21μmの陽極酸化皮膜を形成した。陽極酸化処理は、20℃、濃度200g/Lの硫酸浴中で、1.5A/dm 、20分間処理を行なった。作製した直流電解陽極酸化層からなる1層の陽極酸化皮膜を有する試験片を、試験例1の試験片とした。
[0060]
[試験例2]
アルミニウム系材料として、アルミニウム合金(AC8A)を試験片として用いた。この試験片に対して交直重畳電解法により陽極酸化処理を行い、16〜18μmの皮膜を形成した。陽極酸化処理は20℃、濃度200g/Lの硫酸浴中で、10kHz、正極25V、負極 2V、10分間処理を行なった。作製した交直重畳電解陽極酸化層からなる1層の陽極酸化皮膜を有する試験片を、試験例2の試験片とした。
[0061]
[試験例3]
アルミニウム系材料として、アルミニウム合金(AC8A)を試験片として用いた。この試験片に対して、交直重畳電解法により陽極酸化処理し皮膜を形成した。陽極酸化処理は20℃、濃度200g/Lの硫酸浴中で、10kHz、正極25V、負極 2V、7分間処理を行なった。その後、直流電解法により陽極酸化処理し皮膜を形成した。陽極酸化処理は20℃、濃度200g/Lの硫酸浴中で、1.5A/dm 、10分間処理を行なった。膜厚は17〜22μmであった。作製した直流電解陽極酸化層と交直重畳電解陽極酸化層からなる2層構造の陽極酸化皮膜を有する試験片を、試験例3の試験片とした。
[0062]
[試験例4]
アルミニウム系材料として、アルミニウム合金(AC8A)を試験片として用いた。この試験片を20℃、濃度200g/Lの硫酸浴に浸漬し、最初に10kHz、正極25V、負極 2V、処理時間2分の交直重畳電解処理を行った。その後、同硫酸浴中で、電流密度1.5A/dm 、処理時間10分の直流電解処理を行った。上記交直重畳電解処理と直流電解処理をそれぞれ交互に3回ずつ行い、合計6層の陽極酸化皮膜を形成した。膜厚は60〜100μmであった。作製した直流電解陽極酸化層と交直重畳電解陽極酸化層からなる6層構造の陽極酸化皮膜を有する試験片を、試験例4の試験片とした。
[0063]
<密度、硬度、表面疎さの評価>
試験例1〜4の試験片の各々に対して、密度(g/cm )、硬度(Hv)及び表面疎さ(Ra)を測定及び算出し、その値を検討した。気孔率に関する密度(g/cm )の測定は、アルミニウム合金の密度を予め重さと体積により測定した後、皮膜を形成した試験片重量とアルミニウム合金の厚さ分の重量との差から陽極酸化皮膜の重量を算出し、陽極酸化皮膜の厚さと面積から密度を計算した。なお、密度が高いとは気孔率が低いことを示す。硬度(Hv)はビッカース硬度計により測定した。また、表面疎さ(Ra)は表面疎さ計により測定した。試験例1〜4の試験片の密度、硬度、表面疎さの値を表1に示す。なお、試験例3及び試験例4の試験片は硬さの異なる2層以上の構造であるため、硬度は測定しなかった。
[0064]
[Table 1]


[0065]
表1より、試験例1と試験例2とを比較すると、試験例2のほうが、試験例1よりも表面疎さは低く、密度は高かった。この結果より、交直重畳電解により形成した陽極酸化皮膜のほうが、直流電解により形成した陽極酸化皮膜よりも高い撥水性、撥油性、耐衝撃性を有し、且つ、断熱性の向上に寄与することがわかった。また、直流電解により形成した陽極酸化皮膜のほうが、交直重畳電解により形成した陽極酸化皮膜よりも高い断熱性を有することがわかった。
[0066]
試験例1と試験例3とを比較すると、試験例3の試験片のほうが、試験例1よりも表面疎さは低く、密度は高かった。この結果より、交直重畳電解陽極酸化層を上層として直流電解陽極酸化層を下層とする2層構造の陽極酸化皮膜のほうが、1層構造の直流電解陽極酸化層の陽極酸化皮膜よりも高い撥水性、撥油性、耐衝撃性を有していることがわかった。また、2層構造の陽極酸化皮膜は、高い断熱性と耐衝撃性とを両立させていることがわかった。これらの機能は、2層構造の陽極酸化皮膜を内燃機関に適用した場合に、実使用に耐え得る高い耐衝撃性を示し、燃焼前後の付着物の低減効果及び耐食性の向上に効果を発揮することが期待される。
[0067]
試験例1と試験例4とを比較すると、試験例4の試験片のほうが、試験例1よりも表面疎さは低く、密度は高かった。この結果より、交直重畳電解陽極酸化層と直流電解陽極酸化層とを交互に配置してなる6層構造、すなわち3層以上の陽極酸化皮膜のほうが、1層構造の直流電解陽極酸化層の陽極酸化皮膜よりも高い撥水性、撥油性、耐衝撃性を有していることがわかった。また、6層構造、すなわち3層以上の陽極酸化皮膜は、高い断熱性と耐衝撃性とを両立させていることがわかった。これらの機能は、3層以上の層構造の陽極酸化皮膜を内燃機関に適用した場合に、実使用に耐え得る高い耐衝撃性を示し、燃焼前後の付着物の低減効果及び耐食性の向上に効果を発揮することが期待される。
[0068]
<耐食性試験>
耐食性試験は、試験例1〜3の試験片の各々に対して、JIS Z 2371(国際規格:ISO 9227)に規定される塩水噴霧試験を1000時間かけて行い、乾燥後その腐食度合いを目視で比較した。なお、耐食性を評価した試験片は、試験例1〜3で作製した試験片から切り出し、周囲をマスキングした。試験例1の試験片に対する耐食性試験の結果を図4(a)に示し、試験例2の試験片に対する耐食性試験の結果を図4(b)に示し、試験例3の試験片に対する耐食性試験の結果を図4(c)に示す。
[0069]
図4(a)及び図4(b)に示すように、試験例1と試験例2とを比較すると、試験例1よりも試験例2の試験片のほうが、アルミニウム合金の露出又は錆の発生部位が少なかった。この結果より、直流電解により形成した陽極酸化皮膜よりも交直重畳電解により形成した陽極酸化皮膜の方が、耐食性が高いことがわかった。
[0070]
図4(a)及び図4(c)に示すように、試験例1と試験例3とを比較すると、試験例1よりも試験例3の試験片のほうが、アルミニウム合金の露出又は錆の発生部位が少なかった。この結果より、交直重畳電解陽極酸化層を上層として直流電解陽極酸化層を下層とする2層構造の陽極酸化皮膜を有する試験例3の試験片の方が、1層構造の交直重畳電解により形成した陽極酸化皮膜の方よりも耐食性が高いことがわかった。
[0071]
図4(b)及び図4(c)に示すように、試験例2と試験例3とを比較すると、試験例2よりも試験例3の試験片の方が、アルミニウム合金の露出又は錆の発生部位が少なかった。この結果より、交直重畳電解陽極酸化層を上層として直流電解陽極酸化層を下層とする陽極酸化皮膜を有する試験例3の試験片の方が、1層の交直重畳電解により形成した陽極酸化皮膜の方よりも耐食性が高いことがわかった。
[0072]
図5は、前記耐食試験を実施した後、試験例3で成膜した試験片に対して光学顕微鏡を用いて撮影した断面写真である。図5では、陽極皮膜中の破線より紙面上の層が交直重畳電解により形成した皮膜を示し、破線より紙面下の層が直流電解により形成した皮膜を示し、矢印を用いて陽極酸化皮膜中の主な気孔部分を示している。
[0073]
図5に示すように、試験例3で作製した試験片では、陽極酸化層の上層に交直重畳電解処理された第二の陽極酸化層が形成され、陽極酸化層の下層に直流電解処理された第一の陽極酸化層が形成されていた。すなわち、試験例3の試験片では2層構造の陽極酸化皮膜が形成されていることを確認した。また、2層構造の陽極酸化皮膜はアルミニウム合金の上に形成されていることを確認した。
[0074]
下層の直流電解陽極酸化層では、シリコンの存在により皮膜が形成され難く、形成されない箇所が気孔となっていた。下層の直流電解処理皮膜においてはマイクロレベルの気孔が存在しており、上層の交直重畳電解処理皮膜には気孔が存在しなかった。また、皮膜中のシリコンの周辺にはマイクロレベルの気孔は見られず、皮膜はしっかりとシリコンの周辺を覆っていることが確認された。
[0075]
図6(a)に試験例4の皮膜の破断面写真を示し、図6(b)にその皮膜の一部の拡大写真を示す。直流電解処理による円筒状(中は空洞)のセルが集まって構成される空孔率が大きい皮膜と、交直重畳電解処理による緻密なセルによって構成される皮膜との間には、クラックや隙間は見られないことが確認された。したがって、各々の皮膜は、強固に接合していることがわかった。試験例4の試験片は、2層構造の試験例3の試験片と同様に、試験例1よりも密度が高く、高い空孔率を保持しながら、耐食性、耐油性、耐摩耗性及び耐衝撃性が向上していることがわかった。
[0076]
以上の結果より、3層以上の複層構造、特に6層の複層構造では、陽極酸化皮膜に対して衝撃など外部から加わった力は、交直重畳電解処理により形成され、硬く緻密な構造を有する第二の陽極酸化皮膜によって、アルミニウム合金の方向への進行を抑制される。さらに、その下で、直流電解処理により形成され、空気層を有する円筒管状の柔らかい第一の陽極酸化皮膜によって、上記の伝わった力がさらに緩和される。すなわち、複層構造の層数を増やす程、陽極酸化皮膜に加わった力は、アルミニウム合金の表面に到達するまでに低減される。これにより、陽極酸化皮膜の耐衝撃性は、飛躍的に向上することがわかった。また、陽極酸化皮膜を複層構造にするほど、その微細構造がより複雑となるため、耐食性、耐油性をより高めることができることがわかった。

Industrial Applicability

[0077]
本発明に係る陽極酸化皮膜及び陽極酸化皮膜の処理方法によれば、高い断熱性と高い耐食性とを両立し、また高い耐久性及び耐衝撃性を有し、且つ撥水及び撥油機能が高いアルミニウム系材料の陽極酸化皮膜及びその処理方法並びに内燃機関用ピストンを得ることができる。

Reference Signs List

[0078]
1 アルミニウム系材料
2、20 陽極酸化皮膜
2a 第一の陽極酸化皮膜(直流電解陽極酸化層)
2b 第二の陽極酸化皮膜(交直重畳電解陽極酸化層)
2c 追加層
5 シリコン
10 陽極酸化処理装置
11 電解浴槽
12 陽極
13 一対の陰極
14 導電線
15 電源

Claims

[1]
アルミニウム系材料に交直重畳電解を印加して第二の陽極酸化皮膜を形成する工程と、
前記工程の後に、前記アルミニウム系材料に直流電解を印加して第一の陽極酸化皮膜を形成する工程と
を備え、
前記第一の陽極酸化皮膜上に前記第二の陽極酸化皮膜を形成 し、前記第二の陽極酸化膜を形成する際の高周波電流の周波数が、5kHz以上20kHz以下であり、正極の電圧が12V以上70V以下であり、負極の電圧が−10V以上0V以下であることを特徴とする陽極酸化処理方法。
[2]
前記第一の陽極酸化皮膜を形成する工程と、該第二の陽極酸化皮膜を形成する工程とが、同一の処理浴で行われることを特徴とする請求項1に記載の陽極酸化処理方法。
[3]
前記皮膜を形成する工程の後に、前記第一及び第二の陽極酸化皮膜の気孔を強塩基性の溶液で封孔する工程をさらに備えていることを特徴とする請求項 1又は2に記載の陽極酸化処理方法。
[4]
アルミニウム系材料の表面に第一の陽極酸化皮膜と、前記第一の陽極酸化皮膜の表面に第二の陽極酸化皮膜とを少なくとも備えた陽極酸化皮膜であって、
前記第一の陽極酸化皮膜がその内部に前記第二の陽極酸化皮膜より多くの気孔を有 し、前記アルミニウム系材料と前記第一の陽極酸化皮膜及び第二の陽極酸化皮膜との間に、少なくとも一層以上の陽極酸化皮膜からなる追加層をさらに備えたことを特徴とする陽極酸化皮膜。
[5]
前記追加層の陽極酸化皮膜が、前記第一の陽極酸化皮膜と前記第二の陽極酸化皮膜とが交互に形成されてなるものであることを特徴とする請求項 に記載の陽極酸化皮膜。
[6]
前記第二の陽極酸化皮膜が、 前記アルミニウム系材料の表面に対してランダムな方向に成長した配向性を持たない陽極酸化皮膜であることを特徴とする請求項 4又は5に記載の陽極酸化皮膜。
[7]
前記第一の陽極酸化皮膜が、 前記アルミニウム系材料の表面に対して規則正しい配向性を有することを特徴とする請求項 4又は5に記載の陽極酸化皮膜。
[8]
請求項4〜7のいずれか一項に記載の陽極酸化皮膜を備えていることを特徴とする内燃機関用ピストン。

Drawings

[ Fig. 1]

[ Fig. 2]

[ Fig. 3]

[ Fig. 4]

[ Fig. 5]

[ Fig. 6]