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1. WO2021039661 - 複合成形体の製造方法

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明 細 書

発明の名称 複合成形体の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009  

発明の効果

0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076  

実施例

0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097  

産業上の利用可能性

0098  

符号の説明

0099  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3  

明 細 書

発明の名称 : 複合成形体の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、ポリアミド樹脂成形体を溶着技術を用いて溶着させる複合成形体の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 近年、自動車の二酸化炭素排出規制の強化に伴い、車体の軽量化ニーズが高まっており、金属部品の樹脂化が進められている。樹脂化のメリットとしては、軽量化に加えて、加工性向上、静音化、さらに形状自由度の高さも挙げられる。
[0003]
 形状自由度の優位性をさらに高めるために、複数の一次成形品を組み合わせて溶着し、一般的な射出成形では成形困難な各種中空成形体部品を製造する手法が開発されている。当該手法としては、例えば振動溶着法、超音波溶着法、熱板溶着法、レーザー溶着法、射出溶着法などが挙げられ、接合部の信頼性や適用範囲の広さから振動溶着法や超音波溶着法などの成形体を振動により溶着させる方法が注目されている。
[0004]
 ポリアミド樹脂は、優れた機械強度、靭性、耐熱性、耐薬品を有するため、自動車用途においても、上記の溶着技術を用いた複合成形品の開発が盛んに行われている。特に、溶着部の物性は一般に一次成形品の物性よりも劣る場合が多いため、溶着部の物性を改良する手法が提案されている。例えば、特許文献1には特定量のトリアミン単位を含むポリアミドを用いることで、射出溶着で製造した複合成形体が高い溶着強度を有することが示されている。特許文献2にはポリアミド樹脂に特定量の高価アルコール化合物とリン含有化合物を含有させることで、複合成形品の溶着性と耐衝撃性が改良されることが開示されている。特許文献3にはポリアミドとガラス繊維を含む組成物にアミド系ワックスを配合することで溶着部の引張伸度が改善されることが開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 国際公開2015/040863号
特許文献2 : 特開2018-012760
特許文献3 : 特開2019-108526

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 複合成形品の靭性、耐衝撃性を改善するためにエラストマーを配合した組成物を溶着した際には、溶着部の靭性が低く、複合成形品として十分な特性を得るのが困難であった。特許文献1~3においては、エラストマーを配合した組成物の溶着性については何ら開示がなく、複合成形品の靭性には改善の余地があった。
[0007]
 本発明は、これら従来技術に鑑み、高い靭性を有する複合成形体を得ることのできる製造方法を提供する。

課題を解決するための手段

[0008]
 上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは下記本発明を想到し、当該課題を解決できることを見出した。
 すなわち、本発明は下記のとおりである。
[0009]
 2つ以上の成形体を溶着させる複合成形体の製造において、
 前記成形体がポリアミド樹脂成形体であり、
 前記ポリアミド樹脂成形体の少なくとも一つが、少なくともポリアミド(A)、エラストマー(B)、及び鎖延長剤(C)を用いて得られるポリアミド樹脂組成物の成形体であり、
 前記2つ以上の成形体を振動により溶着させる、複合成形体の製造方法。

発明の効果

[0010]
 本発明によれば、高い靭性を有する複合成形体を得ることのできる製造方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 実施例及び比較例で作製した平板の模式図である。
[図2] 実施例及び比較例で作製した複合成形体の模式図である。
[図3] 実施例及び比較例で作製した引張試験用試験片の模式図である。

発明を実施するための形態

[0012]
 以下、本発明の実施態様の一例に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施態様は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下の記載に限定されない。
 また本明細書において、実施態様の好ましい形態を示すが、個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、好ましい形態である。数値範囲で示した事項について、いくつかの数値範囲がある場合、それらの下限値と上限値とを選択的に組み合わせて好ましい形態とすることができる。
 なお、本明細書において、「XX~YY」との数値範囲の記載がある場合、「XX以上YY以下」を意味する。
[0013]
<ポリアミド樹脂成形体>
 本発明の実施態様において、複合成形体は、2つ以上のポリアミド樹脂成形体を振動により溶着させて製造する。
 ポリアミド樹脂成形体の少なくとも一つは、後述のポリアミド樹脂組成物(以下、「組成物X」と称すことがある。)の成形体(以下、「成形体X」と称すことがある。)である。
 ポリアミドからなる成形体は溶着が比較的容易であるが、ポリアミドだけでは成形体が脆くなりやすいため十分な機械的特性が得られないことがある。ポリアミド成形体の脆さを改善するため樹脂材料としてエラストマーを配合することが考えらえるが、ポリアミドにエラストマーを配合することにより成形体の溶着が困難になる問題がある。本発明よれば、ポリアミド及びエラストマーに加え、さらに鎖延長剤を配合する組成物Xの成形体Xを振動溶着することにより、十分な機械的特性を有しつつ靭性に優れた複合成形体を得ることが可能である。
 また本発明において、振動により上記ポリアミド樹脂成形体を溶着させることも重要である。振動をともなう溶着を採用することにより溶着接合面の劣化が抑えられ、優れた靭性を発現することができる。
[0014]
 他方のポリアミド樹脂成形体(即ち、成形体Xと溶着させる成形体)を形成する組成物は、一方の成形体Xを形成する組成物Xと同一であってもよく、同一ではないが組成物Xの技術範囲に包含される組成物であってもよい。
 上記「同一ではないが組成物Xの技術範囲に包含される組成物」としては、例えば、一方の成形体Xを形成する組成物Xと他方のポリアミド樹脂成形体を形成する組成物とにおいて、用いる成分は同一であるが配合量が異なる組成物、あるいは任意成分が異なる組成物等が挙げられる。
 また、他方のポリアミド樹脂成形体を形成する組成物は、組成物Xとは異なるポリアミド樹脂組成物であってもよい。上記組成物Xとは異なるポリアミド樹脂組成物としては、例えば、ポリアミド(A)及びエラストマー(B)をマトリックス樹脂として用い、鎖延長剤(C)を用いないポリアミド樹脂組成物等が挙げられる。
 他方のポリアミド樹脂成形体を形成する組成物には、溶着の容易性の観点から、一方の成形体Xに用いられるポリアミド(A)と融点が近いポリアミドを用いることが好ましく、両者のポリアミドの融点の差が5℃以下であることがより好ましい。
[0015]
[ポリアミド樹脂組成物(組成物X)]
 組成物Xは、少なくともポリアミド(A)、エラストマー(B)及び鎖延長剤(C)を用いて得られる。ポリアミド(A)、エラストマー(B)及び鎖延長剤(C)は溶融混練時に反応し得るため、組成物Xには、当該各成分由来の構造が含まれ、加えて未反応の当該各成分も含まれ得る。
[0016]
〈ポリアミド(A)〉
 ポリアミド(A)は、靭性、耐熱性及び耐薬品性の観点から、半芳香族ポリアミドであることが好ましい。
 本発明において半芳香族ポリアミドとは、芳香族ジカルボン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位と、脂肪族ジアミン単位を主成分とするジアミン単位とを含むポリアミド、又は、脂肪族ジカルボン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位と、芳香族ジアミン単位を主成分とするジアミン単位とを含むポリアミドをいう。ここで「主成分とする」とは、全単位中の50~100モル%、好ましくは60~100モル%を構成することをいう。
 なお、本明細書において、「~単位」(ここで「~」は単量体を示す)とは「~に由来する構成単位」を意味し、例えば「ジカルボン酸単位」とは「ジカルボン酸に由来する構成単位」を意味し、「ジアミン単位」とは「ジアミンに由来する構成単位」を意味する。
[0017]
 本発明に用いる半芳香族ポリアミドとしては、芳香族ジカルボン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位と、脂肪族ジアミン単位を主成分とするジアミン単位とを含むポリアミドが好ましい。中でも、全ジカルボン酸単位に対して芳香族ジカルボン酸単位を50~100モル%含有するジカルボン酸単位と、全ジアミン単位に対して炭素数4~13の脂肪族ジアミン単位を60~100モル%含有するジアミン単位とを含む半芳香族ポリアミドがより好ましい。
 また、半芳香族ポリアミドにおける全ジカルボン酸単位と全ジアミン単位との合計の含有率は、半芳香族ポリアミドを構成する全モノマー単位100モル%に対して、60~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることがより好ましく、90~100モル%であることがさらに好ましく、100モル%であってもよい。
[0018]
(ジカルボン酸単位)
 半芳香族ポリアミドを構成するジカルボン酸単位は、全ジカルボン酸単位に対して芳香族ジカルボン酸単位を50~100モル%含有することが好ましい。芳香族ジカルボン酸単位をこの割合で含有する半芳香族ポリアミドを使用すると、靭性、耐熱性及び耐薬品性が良好なポリアミド樹脂組成物が得られる。全ジカルボン酸単位における芳香族ジカルボン酸単位の含有率は、75~100モル%がより好ましく、90~100モル%がさらに好ましい。
[0019]
 芳香族ジカルボン酸単位としては、テレフタル酸単位、ナフタレンジカルボン酸単位(2,6-ナフタレンジカルボン酸単位、2,7-ナフタレンジカルボン酸単位、1,4-ナフタレンジカルボン酸単位等)、イソフタル酸単位、1,4-フェニレンジオキシジ酢酸単位、1,3-フェニレンジオキシジ酢酸単位、ジフェン酸単位、ジフェニルメタン-4,4’-ジカルボン酸単位、ジフェニルスルホン-4,4’-ジカルボン酸単位、4,4’-ビフェニルジカルボン酸単位等が挙げられる。ジカルボン酸単位は、これら芳香族ジカルボン酸単位を1種又は2種以上含むことができる。
 これらの中でも、芳香族ジカルボン酸単位はテレフタル酸単位及び/又はナフタレンジカルボン酸単位であることが好ましい。よって、半芳香族ポリアミドは、全ジカルボン酸単位に対してテレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸単位から選ばれる少なくとも1種を50モル%以上含むジカルボン酸単位を含むことが好ましい。
[0020]
 半芳香族ポリアミドを構成するジカルボン酸単位は、全ジカルボン酸単位に対して、好ましくは50モル%未満の範囲で、芳香族ジカルボン酸単位以外の他のジカルボン酸単位を含んでもよい。かかる他のジカルボン酸単位としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ジメチルマロン酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸、シクロデカンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;などに由来する単位を挙げることができる。ジカルボン酸単位は、これら他のジカルボン酸単位を1種又は2種以上含むことができる。ジカルボン酸単位におけるこれらの他のジカルボン酸単位の含有率は、25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
 本発明で用いる半芳香族ポリアミドはさらに、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸に由来する単位を溶融成形が可能な範囲内で含んでいてもよい。
[0021]
(ジアミン単位)
 半芳香族ポリアミドを構成するジアミン単位は、全ジアミン単位に対して炭素数4~13の脂肪族ジアミン単位を60~100モル%含有することが好ましい。炭素数4~13の脂肪族ジアミン単位をこの割合で含有する半芳香族ポリアミドを使用すると、靭性、耐熱性、耐薬品性及び軽量性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。全ジアミン単位における炭素数4~13の脂肪族ジアミン単位の含有率は、75~100モル%がより好ましく、90~100モル%がさらに好ましい。
[0022]
 上記の炭素数4~13の脂肪族ジアミン単位としては、例えば、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、1,13-トリデカンジアミン等の直鎖状脂肪族ジアミン;2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン等の分岐鎖状脂肪族ジアミン;などに由来する単位を挙げることができる。ジアミン単位は、これら脂肪族ジアミン単位を1種又は2種以上含むことができる。
[0023]
 上記の炭素数4~13の脂肪族ジアミン単位は、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン及び1,10-デカンジアミンに由来する単位から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
 また、耐熱性、低吸水性及び耐薬液性により一層優れるポリアミド樹脂組成物が得られることから、1,9-ノナンジアミン及び/又は2-メチル-1,8-オクタンジアミンに由来する単位であることがより好ましく、1,9-ノナンジアミン単位及び2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位であることがさらに好ましい。脂肪族ジアミン単位が、1,9-ノナンジアミン及び2-メチル-1,8-オクタンジアミンに由来する単位をともに含む場合には、1,9-ノナンジアミン単位と2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位のモル比は、1,9-ノナンジアミン単位/2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位=95/5~40/60の範囲にあることが好ましく、90/10~40/60の範囲にあることがより好ましく、80/20~40/60の範囲にあることがさらに好ましい。
[0024]
 半芳香族ポリアミドを構成するジアミン単位は、全ジアミン単位に対して、好ましくは40モル%未満の範囲で、炭素数4~13の脂肪族ジアミン単位以外の他のジアミン単位を含んでもよい。かかる他のジアミン単位としては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,3-プロパンジアミン等の炭素数3以下の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンなどに由来する単位を挙げることがでる。ジアミン単位は、これら他のジアミン単位を1種又は2種以上含むことができる。ジアミン単位におけるこれらの他のジアミン単位の含有率は25モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
[0025]
(他の単位)
 半芳香族ポリアミドは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、さらにアミノカルボン酸単位及び/又はラクタム単位を含んでいてもよい。 
 当該アミノカルボン酸単位としては、例えば、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸などに由来する単位を挙げることができ、アミノカルボン酸単位は2種以上含まれていてもよい。半芳香族ポリアミドにおけるアミノカルボン酸単位の含有率は、半芳香族ポリアミドを構成する全モノマー単位100モル%に対して、40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。
[0026]
 半芳香族ポリアミドは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、さらにラクタム単位を含んでいてもよい。
 当該ラクタム単位としては、例えば、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドンなどに由来する単位を挙げることができ、ラクタム単位は2種以上含まれていてもよい。半芳香族ポリアミドにおけるラクタム単位の含有率は、半芳香族ポリアミドを構成する全モノマー単位100モル%に対して、40モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。
[0027]
(半芳香族ポリアミド)
 芳香族ジカルボン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位と、炭素数4~13の脂肪族ジアミン単位を主成分とするジアミン単位とを含む代表的な半芳香族ポリアミドとしては、ポリテトラメチレンテレフタルアミド(ポリアミド4T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド(ポリアミド5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリ(2-メチルオクタメチレン)テレフタルアミド(ナイロンM8T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルオクタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン9T/M8T)、ポリノナメチレンナフタレンジカルボキサミド(ポリアミド9N)、ポリノナメチレンナフタレンジカルボキサミド/ポリ(2-メチルオクタメチレン)ナフタレンジカルボキサミドコポリマー(ナイロン9N/M8N)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリアミド6Iとポリアミド6Tとの共重合体(ポリアミド6I/6T)、ポリアミド6Tとポリウンデカンアミド(ポリアミド11)との共重合体(ポリアミド6T/11)、及びポリアミド10Tとポリウンデカンアミド(ポリアミド11)との共重合体(ポリアミド10T/11)などが挙げられる。
 これらの中でも、ポリアミド10T/11、ポリノナメチレンナフタレンジカルボキサミド(ポリアミド9N)、ポリノナメチレンナフタレンジカルボキサミド/ポリ(2-メチルオクタメチレン)ナフタレンジカルボキサミドコポリマー(ナイロン9N/M8N)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルオクタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン9T/M8T)及びポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリノナメチレンナフタレンジカルボキサミド/ポリ(2-メチルオクタメチレン)ナフタレンジカルボキサミドコポリマー(ナイロン9N/M8N)、ポリノナメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルオクタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン9T/M8T)、及びポリアミド10T/11から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ポリノナメチレンテレフタルアミド/ポリ(2-メチルオクタメチレン)テレフタルアミドコポリマー(ナイロン9T/M8T)がさらに好ましい。
[0028]
 一方、半芳香族ポリアミドのうち、脂肪族ジカルボン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位と、芳香族ジアミン単位を主成分とするジアミン単位とを含む半芳香族ポリアミドについては、脂肪族ジカルボン酸単位として、前述した脂肪族ジカルボン酸から誘導される単位を挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上を含むことができる。また、芳香族ジアミン単位としては、前述した芳香族ジアミンから誘導される単位を挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上を含むことができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の単位を含んでもよい。
 脂肪族ジカルボン酸単位を主成分とするジカルボン酸単位と、芳香族ジアミン単位を主成分とするジアミン単位とを含む代表的な半芳香族ポリアミドとしては、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリパラキシリレンセバカミド(PXD10)などが挙げられる。
[0029]
 半芳香族ポリアミドは、その分子鎖の末端基の10モル%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましい。末端封止率が10モル%以上の半芳香族ポリアミドを使用すると、溶融安定性、耐熱水性などの物性がより優れたポリアミド樹脂組成物が得られる。
[0030]
 末端封止剤としては、末端アミノ基又は末端カルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物を用いることができる。具体的には、モノカルボン酸、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類、モノアミンなどが挙げられる。反応性及び封止末端の安定性などの観点から、末端アミノ基に対する末端封止剤としては、モノカルボン酸が好ましく、末端カルボキシル基に対する末端封止剤としては、モノアミンが好ましい。取り扱いの容易さなどの観点からは、末端封止剤としてはモノカルボン酸がより好ましい。
[0031]
 末端封止剤として使用されるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はない。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及び安息香酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
[0032]
 末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応性、高沸点、封止末端の安定性及び価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、及びアニリンから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
[0033]
 半芳香族ポリアミドは、濃硫酸を溶媒とし、濃度0.2g/dl、温度30℃で測定した固有粘度[η inh]が、0.6dl/g以上であることが好ましく、0.8dl/g以上であることがより好ましく、0.6dl/g以上であることがさらに好ましく、1.0dl/g以上であることが特に好ましい。また、上記固有粘度[η inh]が、2.0dl/g以下であることが好ましく、1.8dl/g以下であることがより好ましく、1.6dl/g以下であることがさらに好ましい。ポリアミドの固有粘度[η inh]が上記の範囲内であれば、成形性などの諸物性がより向上する。固有粘度[η inh]は、溶媒(濃硫酸)の流下時間t (秒)、試料溶液の流下時間t (秒)及び試料溶液における試料濃度c(g/dl)(すなわち、0.2g/dl)から、η inh=[ln(t /t )]/cの関係式により求めることができる。
[0034]
 半芳香族ポリアミドは、その末端アミノ基含量([NH ])が5~60μeq/gであることが好ましく、5~50μeq/gの範囲内にあることがより好ましく、5~30μeq/gの範囲内にあることがさらに好ましい。末端アミノ基含量([NH ])が5μeq/g以上であれば、半芳香族ポリアミドと、後述するエラストマーとの相容性が良好である。また、該末端アミノ基含量が60μeq/g以下であれば、エラストマー(B)として後述する酸変性エラストマーを用いる場合、該末端アミノ基とエラストマーの変性部分とが反応しすぎてゲル化するのを避けることができる。
 本明細書でいう末端アミノ基含量([NH ])は、半芳香族ポリアミドが1g中に含有する末端アミノ基の量(単位:μeq)を指し、指示薬を用いた中和滴定法より求めることができる。
[0035]
 ジカルボン酸単位とジアミン単位とを含み、末端アミノ基含量([NH ])が上記した範囲にある半芳香族ポリアミドは、例えば、以下のようにして製造できる。
 まず、ジカルボン酸、ジアミン、及び必要に応じてアミノカルボン酸、ラクタム、触媒、末端封止剤を混合し、ナイロン塩を製造する。この際、上記の反応原料に含まれる全てのカルボキシル基のモル数(X)と全てのアミノ基のモル数(Y)が下記の式(1)
  -0.5≦[(Y-X)/Y]×100≦2.0   (1)
を満足するようにすると、末端アミノ基含量([NH ])が5~60μeq/gである半芳香族ポリアミドを製造し易くなり好ましい。次に、生成したナイロン塩を200~250℃の温度に加熱し、濃硫酸中30℃における固有粘度[η inh]が0.10~0.60dlL/gのプレポリマーとし、さらに高重合度化することにより、半芳香族ポリアミドを得ることができる。プレポリマーの固有粘度[η inh]が0.10~0.60dLl/gの範囲内にあると、高重合度化の段階においてカルボキシル基とアミノ基のモルバランスのずれや重合速度の低下が少なく、さらに分子量分布の小さい、各種性能や成形性により優れた半芳香族ポリアミドが得られる。高重合度化の段階を固相重合法により行う場合、減圧下又は不活性ガス流通下に行うことが好ましく、重合温度が200~280℃の範囲内であれば、重合速度が大きく、生産性に優れ、着色及びゲル化を有効に抑制することができる。 また、高重合度化の段階を溶融押出機により行う場合、重合温度は370℃以下であることが好ましく、かかる条件で重合を行うと、ポリアミドの分解がほとんどなく、劣化の少ない半芳香族ポリアミドが得られる。
[0036]
 半芳香族ポリアミドを製造する際に使用することができる触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、又はこれらの塩もしくはエステルなどが挙げられる。上記の塩又はエステルとしては、例えば、リン酸、亜リン酸又は次亜リン酸と、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属との塩;リン酸、亜リン酸又は次亜リン酸のアンモニウム塩;リン酸、亜リン酸又は次亜リン酸のエチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステルなどを挙げることができる。
 上記触媒の使用量は、半芳香族ポリアミドの原料の総質量100質量%に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、上記触媒の使用量は、半芳香族ポリアミドの原料の総質量100質量%に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。触媒の使用量が上記下限以上であれば良好に重合が進行する。上記上限以下であれば触媒由来の不純物が生じにくくなり、例えばポリアミド樹脂組成物を成形した場合に上記不純物による不具合を防ぐことができる。
[0037]
〈エラストマー(B)〉
 組成物Xには、エラストマー(B)を用いる。
 エラストマー(B)は、複合成形体に靭性や耐衝撃性を付与する観点から下記(b1)~(b5)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
(b1)α-オレフィン共重合体
(b2)(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体
(b3)アイオノマー
(b4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物系ブロックとの共重合体
(b5)前記(b1)~(b4)から選ばれる少なくとも1種を、カルボキシル基及び酸無水物基から選ばれる少なくとも1種を有する不飽和化合物で変性した重合体
[0038]
(b1)α-オレフィン系共重合体
 α-オレフィン系共重合体としては、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体や、プロピレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体などが挙げられる。α-オレフィン系共重合体としては、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。
 炭素数3以上のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。上記の中でも、炭素数3以上のα-オレフィンとしてはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン及び1-オクテンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、1-ブテンがより好ましい。
[0039]
 また、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等の非共役ジエンのポリエンを共重合してもよい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
[0040]
(b2)(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体
 (エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及びプロピレンから選ばれる少なくとも1種と、α,β-不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸エステル単量体から選ばれる少なくとも1種とを共重合した共重合体である。
 α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これらα,β-不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これら単量体は1種又は2種以上を用いることができる。
[0041]
(b3)アイオノマー
 アイオノマーは、オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体におけるカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンの中和によりイオン化されたものである。オレフィンとしては、エチレンが好ましく用いられる。α,β-不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられる。上記共重合体は、ここに例示したものに限定されるものではなく、不飽和カルボン酸エステル単量体が共重合されていてもよい。また、金属イオンはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の他、Al、Sn、Sb、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd等が挙げられる。これら金属イオンは1種又は2種以上を用いることができる。
[0042]
(b4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物系ブロックとの共重合体
 芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物系ブロックとの共重合体は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体であり、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを少なくとも1個と、共役ジエン系重合体ブロックを少なくとも1個有するブロック共重合体が用いられる。また、上記のブロック共重合体では、共役ジエン系重合体ブロックにおける不飽和結合が水素添加されていてもよい。
[0043]
 芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位から主としてなる重合体ブロックである。上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、場合により少量の他の不飽和単量体からなる構造単位を有していてもよい。
 共役ジエン系重合体ブロックは、ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン化合物の1種又は2種以上から形成された重合体ブロックである。
 水素添加した芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物系ブロックとの共重合体では、その共役ジエン重合体ブロックにおける不飽和結合部分の一部又は全部が水素添加されている。
[0044]
 芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及びその水素添加物の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれら任意の組み合わせのいずれであってもよい。これらの中でも、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物系ブロックとの共重合体及び/又はその水素添加物として、1個の芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと1個の共役ジエン系重合体ブロックが直鎖状に結合したジブロック共重合体、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック-共役ジエン系重合体ブロック-芳香族ビニル化合物系重合体ブロックの順に3つの重合体ブロックが直鎖状に結合しているトリブロック共重合体、及びそれらの水素添加物の1種又は2種以上が好ましく用いられる。具体的には、未水添又は水添スチレン/ブタジエンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
[0045]
(b5)上記(b1)~(b4)から選ばれる少なくとも1種を、カルボキシル基及び酸無水物基から選ばれる少なくとも1種を有する不飽和化合物で変性した重合体
 上記(b1)~(b4)から選ばれる少なくとも1種を、カルボキシル基及び酸無水物基から選ばれる少なくとも1種を有する不飽和化合物で変性したものを用いることができる。このような不飽和化合物で変性すると、半芳香族ポリアミドが有する末端アミノ基と、エラストマーの成分である該変性成分が有するカルボキシル基及び/又は酸無水物基とが反応し、半芳香族ポリアミドの相とエラストマーの相との界面の親和性が強くなり、耐衝撃性と伸び特性が向上し柔軟性が発現される。上記の中でも、α-オレフィン系共重合体をカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物で変性した重合体が好ましく、エチレン-ブテン共重合体を当該不飽和化合物で変性した重合体がより好ましい。
[0046]
 カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物により変性された変性重合体に用いられる、カルボキシル基を有する不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸などが挙げられる。また、酸無水物基を有する不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β-不飽和結合を有するジカルボン酸無水物などが挙げられる。カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物としては、α,β-不飽和結合を有するジカルボン酸無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
[0047]
 カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物による変性方法としては、上記(b1)~(b4)(以下「ベース樹脂」ともいう)を製造する際に、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物と共重合させる方法や、上記のベース樹脂にカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物をグラフト化反応させる方法が挙げられる。なかでも、上記のベース樹脂にカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物をグラフト化反応させる方法が好ましい。
 エラストマー(B)は工業的に製造されている市販品を用いることもでき、例えば三井化学(株)製「タフマー(登録商標)」等が挙げられる。
[0048]
〈鎖延長剤(C)〉
 組成物Xには、複合成形体に靭性を付与する観点から鎖延長剤(C)を用いる。ポリアミド(A)及びエラストマー(B)に鎖延長剤(C)を配合すると、溶着時の振動による発熱により、成形体Xと他方のポリアミド樹脂成形体との溶着面において鎖延長剤(C)が反応すると考えられる。例えば、2つの成形体Xを溶着する場合、成形体間のポリアミド(A)と鎖延長剤(C)とが、及び、成形体間のエラストマー(B)と鎖延長剤(C)とが、互いに反応することで靭性に優れた複合成形体が得られていると推定される。また、溶着する成形体の少なくとも一つが成形体Xであれば、成形体X中の鎖延長剤(C)が他方の成形体中の成分(ポリアミド等)と反応し得る。したがって、溶着する2つの成形体のうち少なくとも一つが成形体Xであればよい。
[0049]
 鎖延長剤(C)としては、ポリアミド(A)と反応性のある官能基を1分子中に2つ以上含んでいればよい。鎖延長剤(C)として例えば、ポリオール化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物が挙げられる。これらの中でも、特にポリアミド(A)との反応性の観点からカルボジイミド化合物が好ましい。鎖延長剤(C)は、1種又は2種以上を用いることができる。
[0050]
 カルボジイミド化合物としては、モノカルボジイミドとポリカルボジイミドが挙げられ、耐熱性の観点からポリカルボジイミドが望ましい。ポリカルボジイミドは、より具体的には下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。
[0051]
[化1]



[0052]
 上記一般式(I)中、X は、2価の炭化水素基を示す。該炭化水素基としては、鎖状脂肪族基、脂環式構造含有脂肪族基、及び芳香環含有基が挙げられる。鎖状脂肪族基の炭素数は1以上であり、好ましくは1~20、より好ましくは6~18である。脂環式構造含有脂肪族基及び芳香環含有基の炭素数は好ましくは5以上、より好ましくは6~20、さらに好ましくは6~18である。該炭化水素基は、アミノ基、水酸基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
[0053]
 ポリカルボジイミドとしては、脂肪族ポリカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミド、又はこれらの混合物が挙げられる。このうち、得られる成形体Xの耐薬品性と成形加工性、及びポリアミド(A)との反応性の観点から脂肪族ポリカルボジイミドがより好ましい。
 脂肪族ポリカルボジイミドとしては、上記一般式(I)で表される繰り返し単位を有し、X が鎖状脂肪族基又は脂環式構造含有脂肪族基であるポリカルボジイミドが好ましい。X は、炭素数3~18のアルキレン基、下記一般式(II)で表される2価の基、及び下記一般式(III)で表される2価の基からなる群から選ばれる基であることがより好ましく、下記一般式(III)で表される2価の基であることがさらに好ましい。
[0054]
[化2]



[0055]
 上記一般式(II)及び一般式(III)中、R ~R は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素数1~8のアルキレン基である。一般式(II)中のR 及びR は、好ましくは単結合である。一般式(III)中のR 及びR は、好ましくは単結合であり、R は、好ましくは炭素数1~6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1~3のアルキレン基である。
[0056]
〈配合量〉
 ポリアミド(A)及びエラストマー(B)を合計100質量部としたとき、ポリアミド(A)を60~90質量部で用いることが好ましい。
 ポリアミドの配合量が、上記数値範囲であることにより、機械強度、靭性、耐熱性及び耐薬品性が発現しやすくなる。ポリアミド(A)及びエラストマー(B)を合計100質量部としたときの、ポリアミド(A)の配合量は63質量部以上がより好ましく、66質量部以上がさらに好ましい。また、ポリアミド(A)の上記配合量は87質量部以下がより好ましく、84質量部以下がさらに好ましい。
[0057]
 また、ポリアミド(A)、エラストマー(B)、及び鎖延長剤(C)の合計100質量%に対するエラストマー(B)の配合量は3~40質量%が好ましい。
 エラストマー(B)の上記配合量が3質量%以上であると良好な靭性が発現しやすくなり、40質量%以下であれば優れた強度を発現することができる。
 より優れた靭性及び耐衝撃性を付与する観点から、エラストマー(B)の上記配合量は4質量%以上がより好ましく、19質量%以上がさらに好ましい。また、成形性の観点から、エラストマー(B)の上記配合量は、35質量%以下がより好ましく、31質量%以下がさらに好ましい。
[0058]
 ポリアミド(A)及びエラストマー(B)の合計100質量部に対する鎖延長剤(C)の配合量は0.01~5質量部が好ましい。
 鎖延長剤(C)の配合量が、上記数値範囲であることにより、優れた靭性、機械強度が発現しやすくなる。ポリアミド(A)及びエラストマー(B)の合計100質量部に対する鎖延長剤(C)の配合量は0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。また、鎖延長剤(C)の上記配合量は4質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
[0059]
 また、組成物Xに用いる原料100質量%に対する、ポリアミド(A)、エラストマー(B)、及び鎖延長剤(C)の合計配合量の割合は、95質量%以上が好ましく、97質量%以上がより好ましい。また、組成物Xに用いる原料100質量%に対する、ポリアミド(A)、エラストマー(B)、及び鎖延長剤(C)の合計配合量の割合は、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましい。
[0060]
〈添加剤〉
 組成物Xは、必要に応じて他種ポリマー(エラストマー(B)以外)、充填剤、結晶核剤、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、難燃剤及び難燃助剤などの他の成分を添加剤として含有してもよい。
[0061]
 他種ポリマーとしては、例えば、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド等のポリエーテル樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリスルホン樹脂;ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルスルホン等のポリチオエーテル系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルエーテルケトン等のポリケトン系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、メタクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等のポリニトリル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル等のポリメタクリレート系樹脂;ポリ酢酸ビニル等のポリビニルエステル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン-メチルアクリレート共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂;酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、エチレン-クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体等のフッ素系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂;熱可塑性ポリウレタン樹脂;などが挙げられる。
[0062]
 充填剤としては、例えば、ガラス繊維などの繊維状充填剤、炭酸カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、シリカアルミナ、アルミナ、二酸化チタン、チタン酸カリウム、水酸化マグネシウム、二硫化モリブデン等の粉末状充填剤;ハイドロタルサイト、ガラスフレーク、マイカ、クレー、モンモリロナイト、カオリン等のフレーク状充填剤などが挙げられる。
[0063]
 結晶核剤としては、ポリアミドの結晶核剤として一般的に使用されるものであれば特に制限されない。結晶核剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、これらの任意の混合物などが挙げられる。これらのうちでも、ポリアミドの結晶化速度を増大させる効果が大きいことから、タルクが好ましい。結晶核剤は、ポリアミドとの相容性を向上させる目的で、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などで処理されていてもよい。
[0064]
 着色剤としては、特に制限されず、無機又は有機顔料、及び染料の中から適宜選択できる。着色剤としては、カーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、ボーンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、チタンブラック等の黒色無機顔料が好ましいものとして挙げられる。
[0065]
 帯電防止剤としては、特に制限されず、有機系のものであっても、無機系のものであってもよい。例えば、有機系帯電防止剤としては、リチウムイオン塩、4級アンモニウム塩、イオン性液体などのイオン性化合物;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の電子伝導性高分子化合物などが挙げられる。無機系帯電防止剤としては、ATO、ITO、PTO、GZO、五酸化アンチモン、酸化亜鉛などの金属酸化物系導電剤;カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素系導電剤が挙げられる。耐熱性の観点からは、無機系帯電防止剤が好ましい。なお、着色剤であるカーボンブラックが帯電防止剤としての機能を兼ねていてもよい。
[0066]
 可塑剤としては、ポリアミドの可塑剤として一般的に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、ベンゼンスルホン酸アルキルアミド系化合物、トルエンスルホン酸アルキルアミド系化合物、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル系化合物、ヒドロキシ安息香酸アルキルアミド系化合物等が挙げられる。
[0067]
 滑剤としては、ポリアミドの滑剤として一般的に使用されるものであれば特に制限されない。滑剤としては、例えば、高級脂肪酸系化合物、オキシ脂肪酸系化合物、脂肪酸アミド系化合物、アルキレンビス脂肪酸アミド系化合物、脂肪酸低級アルコールエステル系化合物、金属石鹸系化合物、ポリオレフィンワックスなどが挙げられる。脂肪酸アミド系化合物として、例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリルアミドなどは、外部滑性効果に優れるため好ましい。
[0068]
 酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ラクトン系化合物、ヒドロキシル系化合物などが挙げられる。
 これらの他の成分は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
 これらの他の成分の配合量は、組成物X100質量%に対して、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
[0069]
〈組成物Xの調整方法〉
 組成物Xの調整は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアミド(A)、エラストマー(B)、鎖延長剤(C)、及び必要に応じ配合される上記その他の成分をドライブレンドした混合物を溶融混練することで組成物Xを調整することができる。
 この時、鎖延長剤(C)は、ポリアミド(A)とエラストマー(B)を溶融混練した後に添加することで、溶融混練中のポリアミド(A)とエラストマー(B)の相互の反応が鎖延長剤(C)によって阻害されることを防ぐことができる。すなわち、ポリアミド(A)とエラストマー(B)を溶融混練した後に、鎖延長剤(C)をさらに添加し、溶融混練することが好ましい。
 具体的には溶融混練装置として二軸押出機を用いる場合、ポリアミド(A)、エラストマー(B)、必要に応じて配合されるその他の成分をドライブレンドした混合物を、二軸押出機の根元の第一フィード口から投入し、スクリューに設置された第一混練部と第二混練部の間に設けられた第二フィード口から鎖延長剤(C)を投入することが好ましい。この際、鎖延長剤(C)は必要に応じてポリアミド(A)とドライブレンドしてから投入してもよい。
[0070]
 上記溶融混練時の温度及び時間は、使用するポリアミド(A)の融点などに応じて適宜調整できるが、エラストマー(B)の重合性の劣化を抑制する観点から、溶融混練温度は380℃以下であることが好ましく、370℃以下であることがより好ましく、360℃以下であることがさらに好ましい。溶融混練時間は1~5分程度であることが好ましい。
 溶融混練の手法に特に制限はなく、ポリアミド(A)、エラストマー(B)、鎖延長剤(C)及び上記その他の成分を均一に混合することのできる方法を好ましく採用することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが好ましく、エラストマーの良分散性と工業的生産性の観点から二軸押出機がより好ましい。
[0071]
[成形方法]
 上記組成物Xを調整した後、例えばペレット化したものを各種成形方法に供することにより、成形体Xを得ることができる。成形体Xの成形方法は、用途に応じて適宜選択すればよいが、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形、プレス成形、カレンダー成形等の方法を採用することができる。
[0072]
<溶着方法>
 本実施形態において、複合成形体は、前述の2以上のポリアミド樹脂成形体を振動により溶着させて製造する。振動を伴わない溶着方法を採用した場合、優れた靭性を発現することが困難となる。例えば、赤外線溶着法等を採用した場合、加熱時に成形体周囲の環境下に存在する酸素によって、溶着面におけるエラストマー(B)が過剰に劣化する等の不都合が生じ、優れた靭性が得られなくなる。一方、振動により溶着させるのであれば、例えば熱溶着と振動溶着とを組み合わせた赤外線補助振動溶着法であっても本発明の効果が損なわれるおそれがほとんどない。これは加熱により成形体の溶着面は溶融されるが、次いで行われる振動の摩擦熱によって当該溶着面が溶着されるため酸素によるエラストマー(B)の劣化が抑えられるものと考えられる。
[0073]
 本実施形態の一例としては、上記成形体Xと相手のポリアミド樹脂成形体との圧接する面同士を、溶着時に発生する摩擦熱によって溶着する方法により溶着させればよい。上記溶着方法としては、例えば、振動溶着法、赤外線補助振動溶着法、超音波溶着法、スピン溶着法、及び高周波溶着法が挙げられる。これら溶着方法の中でも、振動溶着法や赤外線補助振動溶着法が望ましい。
 溶着条件は成形体の形態等に応じて設定すればよく特に限定されないが、例えば、圧接する面の溶着圧力を0.1~25MPa程度、振幅は0.5~4.0mm程度、振動数は100~300Hz程度に設定することができる。
[0074]
<用途>
 本発明で得られる複合成形体は、その優れた特性を活かし、自動車部品、航空機部品、内燃機関用途、原油掘削・輸送用途、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品・建材関係部品などに使用することが可能であり、特に自動車用部品に好適に用いられる。
[0075]
 自動車用部品としては、特に強度と靭性が要求される、ラジエータータンク部品、ラジエーター液リザーブタンク、ウォーターポンプ、ウォーターインレットパイプ、ウォーターアウトレットパイプ、ウォーターポンプハウジング、サーモスタットハウジングなど自動車エンジンルーム内で冷却液との接触下で使用されるエンジン冷却系部品、及びフューエルデリバリーパイプ、燃料ポンプハウジング、バルブ、燃料タンク等の燃料系部品に好適に使用される。また、内装部品、外装部品、及び電装部品等にも用いることができる。
[0076]
 また、自動車部品以外の用途としては、例えば海底オイルパイプ、海上オイルパイプ、地中オイルパイプ、パイプライナー、海底ケーブルギア、カム、絶縁ブロック、バルブ、電動工具部品、農機具部品、エンジンカバー、芝刈り機の小型燃料タンクなどが挙げられる。
実施例
[0077]
 以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[0078]
 実施例、比較例、及び製造例における各物性の測定、並びに溶着方法は、以下に示す方法に従って行った。
《固有粘度》
 製造例で得られた半芳香族ポリアミド(試料)について、濃硫酸を溶媒とし、濃度0.2g/dl、温度30℃での固有粘度(dl/g)を下記関係式(2)より求めた。
   η inh=[ln(t /t )]/c (2)
 上記関係式中、η inhは固有粘度(dl/g)を表し、t は溶媒(濃硫酸)の流下時間(秒)を表し、t は試料溶液の流下時間(秒)を表し、cは試料溶液中の試料の濃度(g/dl)(すなわち、0.2g/dl)を表す。
[0079]
《融点》
 製造例で得られた半芳香族ポリアミドの融点は、(株)日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量分析装置「DSC7020」を使用して測定した。
 融点は、ISO11357-3(2011年第2版)に準拠して測定を行った。具体的には、窒素雰囲気下で、30℃から340℃へ10℃/分の速度で試料(半芳香族ポリアミド)を加熱し、340℃で5分間保持して試料を完全に融解させた後、10℃/分の速度で50℃まで冷却し50℃で5分間保持した。再び10℃/分の速度で340℃まで昇温した時に現れる融解ピークのピーク温度を融点(℃)とし、融解ピークが複数ある場合は最も高温側の融解ピークのピーク温度を融点(℃)とした。
[0080]
《末端アミノ基濃度》
 製造例で得られた半芳香族ポリアミド1gをフェノール35mLに溶解し、そこへメタノールを2mL混合し、試料溶液とした。チモールブルーを指示薬とし、0.01規定の塩酸水溶液を使用した滴定を実施し、半芳香族ポリアミドの末端アミノ基含量([NH 2]、単位:μeq/g)を測定した。
[0081]
《溶着用試験片》
 実施例及び比較例により得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、住友重機械工業(株)製の射出成形機(型締力:100トン、スクリュー径:φ32mm)を使用し、ポリアミドの融点よりも30~40℃高いシリンダー温度とし、金型温度140℃の条件下で、ファンゲート金型を用いてポリアミド樹脂組成物を射出成形し、平板(寸法:長さ×幅×厚さ=150mm×100mm×4mm)を作製した。
 そして、上記平板を図1のように切削加工し、直方体試験片(寸法:長さ×幅×厚さ=100mm×40mm×4mm)を1つの平板から3枚切り出して、溶着用試験片Aとした。
[0082]
《振動溶着,VW》
 上記の方法で作製した溶着用試験片Aを用い、当該試験片Aを切削面が溶着面になるように振動溶着機に上下に固定し、端部を振動で摩擦することにより溶融して接合させた。具体的にはブランソン社製M-112H型振動溶着装置を用いて、次の条件で溶着した。
・振動数:240Hz
・溶着圧力:1.5MPa
・振幅:1.8mm
・溶着代:1.2mm
[0083]
《赤外線補助振動溶着,IRVW》
 上記の振動溶着において、溶着用試験片Aを溶着する前に赤外線ヒーター(加熱部寸法130mm×4mm)を溶着用試験片Aの間に挿入して端部を事前に加熱した後に振動溶着を実施した。振動溶着に使用した装置と条件は上記と同様である。赤外線ヒーターの照射条件を以下に示す。
・赤外線照射出力:上部側14.3A, 下部側14.4A
・赤外線照射距離:上部側2.0mm, 下部側2.5mm
・赤外線照射時間:13.0秒
[0084]
《赤外線溶着,IRW》
 上記の赤外線補助振動溶着において、赤外線ヒーターで溶着用試験片Aを加熱した後に、振動をさせずに当該試験片Aを圧着させて接合した。赤外線ヒーターの照射条件は上記と同様である。圧着条件を以下に示す。
・溶着圧力:1.5MPa
・圧着時間:5.0秒
[0085]
《引張試験用試験片》
 上記の溶着によって得られた複合成形体の模式図(形状)を図2に示す。図2において、2枚の上記試験片Aの切削面同士が溶着面3を介して溶着し、複合成形体が形成される。そして、複合成形体を用いて作製される引張試験用試験片Bの模式図を図3に示す。この複合成形体の中央部を幅10mmで、図3に示すように、引張試験用試験片Bが溶着面3を含むように切削加工し、中央部の3個をそれぞれ引張試験用試験片Bとした。
 引張試験用試験片Bを用い、下記の方法により得られた引張破断強度の平均値を溶着強度とし、引張破断伸度の平均値を破断伸度として算出した。
[0086]
《引張試験》
 上記の方法で作製した引張試験用試験片Bを用い、引張強度についてはインストロン社のオートグラフ5969を使用して引張速度5mm/min、チャック間距離40mmで23℃、50%RHにおける引張破断強度(MPa)及び引張破断伸度(%)を測定した。なお、伸度は呼びひずみを用いている。
[0087]
製造例1[半芳香族ポリアミドの製造]
 テレフタル酸9870.6g(59.42モル)、1,9-ノナンジアミンと2-メチル1,8-オクタンジアミンの混合物[50/50(モル比)]9497.4g(60.00モル)、安息香酸142.9g(1.17モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物19.5g(原料の総質量に対して0.1質量%)及び蒸留水5リットルを内容積40リットルのオートクレーブに入れ、窒素置換した。100℃で30分間攪拌し、2時間かけてオートクレーブ内部の温度を220℃に昇温した。この時、オートクレーブ内部の圧力は2MPaまで昇圧した。そのまま2時間反応を続けた後230℃に昇温し、その後2時間、230℃に温度を保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させた。次に、30分かけて圧力を1MPaまで下げ、さらに1時間反応させて、極限粘度[η]が0.2dL/gのプレポリマーを得た。これをホソカワミクロン株式会社製フレーククラッシャーを使って2mm以下の粒径まで粉砕し、100℃、減圧下で12時間乾燥した後、230℃、13Pa(0.1mmHg)にて10時間固相重合し、白色のポリアミド樹脂(ポリアミド1)を得た。
 ポリアミド1はテレフタル酸単位と、1,9-ノナンジアミン単位及び2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位(1,9-ノナンジアミン単位/2-メチル-1,8-オクタンジアミン単位=50/50(モル比))とからなり、融点は265℃、固有粘度[η inh]は1.20dL/g、末端アミノ基濃度([NH ])は15μeq/gであった。
[0088]
製造例2[ポリアミド樹脂組成物の製造A-1, A-2, A-3, B-1, B-2, B-3]
 表1に示すポリアミド(A)、エラストマー(B)、鎖延長剤(C)、酸化防止剤、滑剤、及び着色剤を予め混合して、二軸押出機(東芝機械(株)製「TEM-26SS」)の上流部フィード口に投入した。鎖延長剤(C)を使用する場合(A-1, A-2, A-3)は、スクリューの第一混練部と第二混練部の中間部フィード口から投入し、シリンダー温度300~320℃、溶融混練時間約1分の条件下で溶融混練することにより混練して押出し、冷却及び切断してペレット状のポリアミド樹脂組成物を製造した。
[0089]
 なお、表1に示す各成分は下記の通りである。
<ポリアミド(A)>
 製造例1で得られた半芳香族ポリアミド(ポリアミド1)
<エラストマー(B)>
 エチレン-ブテン共重合体を無水マレイン酸で変性したエラストマー(三井化学(株)製、タフマーMH5020)
<鎖延長剤(C)>
 脂環式ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル(株)製、カルボジライトHMV-15CA)
<酸化防止剤>
 ヒンダードフェノール系酸化防止剤(住友化学(株)製、SUMILIZER GA-80)
<滑剤>
 ポリオレフィンワックス(クラリアントケミカルズ製、LICOCENE PE MA4221)
<着色剤>
 カーボンブラック(三菱ケミカル(株)製、#980B)
[0090]
[表1]



[0091]
[実施例1~3, 比較例1~3]
 表2に示す様に製造例2で得られたポリアミド樹脂組成物A-1, A-2, A-3, B-1, B-2, B-3のペレットを用いて、上述の方法により作製した溶着用試験片A同士を上記赤外線補助振動溶着(IRVW)により溶着し、複合成形体を作製した。当該複合成形体を上述の方法により切削して得られた引張試験用試験片Bの引張試験の評価結果を表2に示す。
[0092]
[実施例4~6, 比較例4~6]
 表3に示す様に溶着の手法に上記振動溶着(VW)を用いた以外は実施例1~3, 比較例1~3と同様に複合成形体及び引張試験用試験片Bを作製し、上述の方法により引張試験を実施した。評価結果を表3に示す。
[0093]
[比較例7~12]
 表4に示す様に溶着の手法に上記赤外線溶着(IRW)を用いた以外は実施例1~3, 比較例1~3と同様に複合成形体及び引張試験用試験片Bを作製し、上述の方法により引張試験を実施した。評価結果を表4に示す。
[0094]
[表2]



[0095]
[表3]



[0096]
[表4]



[0097]
 実施例1~6と比較例1~6から、鎖延長剤(C)をポリアミド樹脂組成物に用いることにより、優れた引張強度を有しつつ引張破断伸びの数値が極めて顕著に高くなり、実施例1~6で得られた複合成形体は靭性に優れることが分かる。
 また成形体を振動により溶着させなかった比較例7~12から、鎖延長剤(C)をポリアミド樹脂組成物に用いるあるいは用いにないにかかわらず、引張破断伸びに劣る結果となった。

産業上の利用可能性

[0098]
 本発明の製造方法によれば、優れた靭性を有する複合成形体を製造することができる。そのため、本発明の製造方法は、自動車部品、航空機部品、内燃機関用途、原油掘削・輸送用途、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品・建材関係部品などの製造に利用することが可能であり、特に自動車用部品の製造に好適に用いられる。

符号の説明

[0099]
1.平板
2.複合成形体
3.溶着面
A.溶着用試験片A
B.引張試験用試験片B(3個)

請求の範囲

[請求項1]
 2つ以上の成形体を溶着させる複合成形体の製造において、
 前記成形体がポリアミド樹脂成形体であり、
 前記ポリアミド樹脂成形体の少なくとも一つが、少なくともポリアミド(A)、エラストマー(B)、及び鎖延長剤(C)を用いて得られるポリアミド樹脂組成物の成形体であり、
 前記2つ以上の成形体を振動により溶着させる、複合成形体の製造方法。
[請求項2]
 前記ポリアミド(A)及び前記エラストマー(B)を合計100質量部としたとき、前記ポリアミド(A)を60~90質量部で用いる、請求項1に記載の複合成形体の製造方法。
[請求項3]
 前記ポリアミド(A)、前記エラストマー(B)、及び前記鎖延長剤(C)の合計100質量%に対する前記エラストマー(B)の配合量が3~40質量%である、請求項1又は2に記載の複合成形体の製造方法。
[請求項4]
 前記ポリアミド(A)及び前記エラストマー(B)の合計100質量部に対する前記鎖延長剤(C)の配合量が0.01~5質量部である、請求項1~3のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
[請求項5]
 前記ポリアミド(A)が、全ジカルボン酸単位に対して芳香族ジカルボン酸単位を50~100モル%含有するジカルボン酸単位と、全ジアミン単位に対して炭素数4~13の脂肪族ジアミン単位を60~100モル%含有するジアミン単位とを含む半芳香族ポリアミドである、請求項1~4のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
[請求項6]
 前記脂肪族ジアミン単位が、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン及び1,10-デカンジアミンに由来する単位から選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の複合成形体の製造方法。
[請求項7]
 前記エラストマー(B)が、下記(b1)~(b5)から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
(b1)α-オレフィン共重合体
(b2)(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体
(b3)アイオノマー
(b4)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物系ブロックとの共重合体
(b5)前記(b1)~(b4)から選ばれる少なくとも1種を、カルボキシル基及び酸無水物基から選ばれる少なくとも1種を有する不飽和化合物で変性した重合体
[請求項8]
 前記鎖延長剤(C)が、カルボジイミド化合物である、請求項1~7のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]