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1. WO2020145222 - 新規ネオアンチゲン及びそれらを用いたがん免疫治療薬

Document

明 細 書

発明の名称 新規ネオアンチゲン及びそれらを用いたがん免疫治療薬

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

非特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008   0009  

課題を解決するための手段

0010   0011  

発明の効果

0012   0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044  

実施例

0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076  

産業上の利用可能性

0077  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18  

図面

1 (R26)   2 (R26)   3 (R26)   3の続き (R26)   3の続き (R26)   4 (R26)   5-1 (R26)   5-2 (R26)   5-3 (R26)   6-1 (R26)   6-2 (R26)   7-1 (R26)   7-2 (R26)   7-3 (R26)   8 (R91) (R26)   9 (R26)  

明 細 書

発明の名称 : 新規ネオアンチゲン及びそれらを用いたがん免疫治療薬

技術分野

[0001]
 本発明は、がんの治療または予防のためのネオアンチゲンに関わるものである。より詳しくは、がん患者に特異的に生じる腫瘍特異抗原、がんのドライバー変異タンパク質、またはがんパッセンジャー変異タンパク質などに由来するネオアンチゲンに関するものである。さらに詳しくは、がん患者に高頻度に共有されるドライバー変異に由来するネオアンチゲンに関わるものである。

背景技術

[0002]
 がんワクチン療法は、がん細胞に発現するがん抗原に対する特異的免疫応答を患者体内で活性化・増殖させ、がんを予防ないし治療することを目的とするがん治療法であり、がん抗原タンパク質ないしその一部分であるペプチドからなる抗原あるいはそのような抗原をコードする遺伝子(DNA・RNA)をワクチンとして投与する。1990年代から、多くのがん抗原に関する研究とそれらを標的とするワクチン開発が進められてきたが、ほとんどの臨床試験において治療効果が証明されていない。
[0003]
 これまでに検討されたがんワクチン療法の多くは、遺伝子変異のない野生型の自己抗原に由来する「腫瘍関連抗原」を標的としていたが、これらの抗原が自己抗原であるために、これらの抗原に対して高反応性を示す特異的T細胞は、免疫寛容のメカニズムにより体内から消失し、十分な免疫反応が得られなかったことが、これまでのワクチン開発の失敗の一因であったものと推測されている。
[0004]
 一方で、遺伝子変異により生じる新規抗原ネオアンチゲンは、本来生体に存在しないために生体からは「非自己」と認識され、免疫反応を効率よく誘導すると考えられる。特に、ネオアンチゲンのうち、がん患者に高頻度に共有されるドライバー変異に由来する抗原は、がん治療薬候補品として有望である。実際に、ドライバー変異に由来するネオアンチゲンが複数同定され、それらを標的とするペプチドワクチンの開発が試みられている(非特許文献1、臨床試験番号 NCT02454634)。現在開発されているペプチドワクチンの多くは12 mer以下のアミノ酸から成り、それらは抗原提示細胞のHLA Class I分子上に提示され(Class Iエピトープ)、CD8陽性の細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化・増殖させる。CD8陽性CTLは腫瘍免疫における主役であり、HLA分子上に当該エピトープを提示したがん細胞を攻撃する。
[0005]
 一方、近年、CD4陽性ヘルパーT細胞の抗腫瘍免疫応答における重要性が盛んに報告されている。CD4陽性ヘルパーT細胞は、樹状細胞のライセンシング、CD8陽性CTLの維持・活性化能に加え、直接の抗腫瘍能を有することが報告されている(非特許文献2)。
[0006]
 CD4陽性T細胞は抗原提示細胞のHLA Class II分子上に提示される13~25 merのペプチド(Class IIエピトープ)により活性化・増殖される。これに対して、現在開発されているClass Iエピトープは、CD8陽性CTLを活性化・増殖できるが、CD4陽性ヘルパーT細胞を活性化・増殖させることはできない。これまでに、腫瘍組織における発現頻度の高い、主要なドライバー変異を含有するペプチドワクチンであって、CD4陽性T細胞を活性化・増殖可能である(すなわち、Class IIエピトープである)ことを報告した文献が存在するが(脳腫瘍におけるドライバー変異であるIDH1-R132H(非特許文献3)、著名なドライバー変異であるP53-R248W及びKRAS-G12V(非特許文献4))、いずれもマウスを用いた実験系での免疫原性及び薬効を示した例にすぎない。

先行技術文献

非特許文献

[0007]
非特許文献1 : Tran et al., Science 350, 1387-1390 (2015)
非特許文献2 : Tran et al., Science 344, 641-645 (2014)
非特許文献3 : Schumacher et al., Nature 512, 324-327 (2014)
非特許文献4 : Quandt et al., OncoImmunity, 7, e1500671, (2018) (https://doi.org/10.1080/2162402X.2018.1500671)

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 本発明は、がんの治療または予防のためのネオアンチゲンに関わるものである。より詳しくは、がん患者に特異的に生じる腫瘍特異抗原、がんのドライバー変異タンパク質、またはがんパッセンジャー変異タンパク質などに由来するネオアンチゲンに関するものである。さらに詳しくは、がん患者に高頻度に共有されるドライバー変異に由来するネオアンチゲンに関わるものである。
[0009]
 本発明は、Class IIエピトープをペプチドワクチンとして投与することで、従来のCD8陽性CTLを活性化・増殖させるペプチドワクチンでは得られなかった薬効を得ることを課題とする。さらに、当該ペプチドにより誘導したCD4陽性ヘルパーT細胞を同定、クローン化、増殖させ、患者へ移入することによる治療効果を提供することも課題とする。本発明はさらに、CD4陽性T細胞から当該抗原に対するT細胞受容体(T Cell Receptor; TCR)遺伝子配列を同定し、T細胞へ遺伝子を導入することでTCR遺伝子改変T細胞(TCR-T)を作製し、それを治療薬とすることも課題とする。しかし、大腸がんや乳がん等の患者数の多いがん種におけるドライバー変異(例えば、PIK3CAやC-Kit遺伝子に生じる変異)を含有するものの報告はない。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明の発明者らは、上記課題について鋭意検討を行った結果、がん細胞で発現するネオアンチゲンの変異アミノ酸を含む部分アミノ酸配列を有し、Class II分子により提示されるエピトープである、ペプチドを取得することにより、これらの課題を解決することができることを見いだした。
[0011]
 より具体的には、本件出願は、これらの課題を解決するため、以下の態様を提供する:
[1]:ネオアンチゲンの変異アミノ酸を含む部分アミノ酸配列を有し、HLA Class II分子により提示されるエピトープである、ペプチド;
[2]:CD4陽性ヘルパーT細胞を活性化・増殖させる、[1]に記載のペプチド;
[3]:腫瘍特異抗原、がんのドライバー変異タンパク質、またはがんパッセンジャー変異タンパク質を含むアミノ酸配列に由来する、[1]又は[2]に記載のペプチド;
[4]:長さが9~27アミノ酸である、[1]~[3]のいずれかに記載のペプチド;
[5]:がんのドライバー変異が、PIK3CA-H1047R、C-Kit-D816V、NRAS-Q61R、KRAS-G12D、KRAS-G12R、KRAS-G13Dからなる群から選択される、[1]~[4]のいずれかに記載のペプチド;
[6]:HLA Class I拘束性エピトープとしての抗原性をさらに有する(CD8陽性抗原特異的T細胞の活性化・増殖能を有する)、[1]~[5]のいずれかに記載のペプチド;
[7]:SEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 10から選択されるアミノ酸配列の部分配列を含む、[1]~[6]のいずれかに記載のペプチド;
[8]:SEQ ID NO: 11~SEQ ID NO: 27から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなる、[1]~[6]のいずれかに記載のペプチド;
[9]:[1]~[8]のペプチドを含む、がんに対するペプチドワクチン;
[10]:CD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞、γδT細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、マクロファージからなる群から選択される免疫細胞を活性化する、[9]に記載のペプチドワクチン。
[11]:リンパ球と、[1]~[8]のいずれかに記載のペプチドとを接触させることを含む、抗原特異的T細胞の活性化・増殖方法;
[12]:抗原提示能を有する細胞と、[1]~[8]のいずれかに記載のペプチドとを接触させることを含む、抗原提示細胞の調製方法;
[13]:抗原提示能を有する細胞と前記ペプチドとの接触を、
 当該細胞を前記ペプチドとともに培養し、前記ペプチドを当該細胞のHLA分子に結合および提示させること、または
 当該細胞に前記ペプチドを発現可能なベクターを導入し発現させること
により行う、[12]に記載の方法;
[14]:抗原提示能を有する細胞が樹状細胞である、[12]または[13]に記載の方法;
[15]:[1]~[8]のいずれかに記載のペプチドに対する抗原特異的T細胞クローンから単離された、ペプチドに反応性を有するT細胞受容体(TCR)をコードする遺伝子;
[16]:TCRをコードする遺伝子が、TCRα鎖をコードする遺伝子、またはTCRβ鎖をコードする遺伝子、またはこれらの両方である、[15]に記載の遺伝子;
[17]:相補性決定領域(CDR)遺伝子の全体又は一部である、[15]または[16]に記載の遺伝子;
[18]:[15]から[17]のいずれかに記載される遺伝子を、T細胞へ導入することにより作製された、TCR遺伝子が改変されたT細胞(TCR-T)。

発明の効果

[0012]
 本発明で免疫原性を確認したペプチドは、全てClass IIエピトープとして機能しCD4陽性T細胞を活性化・増殖させる。また、確認されたペプチドのうち2種;PIK3CA-H1047R及びC-Kit-D816Vから得られたペプチドは、Class Iエピトープとしても機能し、CD8陽性T細胞も活性化・増殖させる。これまでに、PIK3CA-H1047R、NRAS-Q61R、KRAS-G12D、KRAS-G12R、KRAS-G13D及びC-Kit-D816Vの各ドライバー変異を含むペプチド抗原であって、Class IIエピトープとして機能しCD4陽性T細胞を活性化・増殖させることを示したものは知られていない。
[0013]
 したがって、本発明は、がんの治療または予防のために利用可能な、がん細胞由来のネオアンチゲンに関わるものである。さらに詳しくは、がん患者に高頻度に共有されるドライバー変異由来のネオアンチゲンに関わるものである。

図面の簡単な説明

[0014]
[図1] 図1は、ドライバー変異由来ネオアンチゲンペプチドの、変異アミノ酸を含む部分のアミノ酸配列を示す図である。
[図2] 図2は、合成した各ペプチドの免疫原性評価の工程を示す図である。
[図3] 図3は、細胞内サイトカイン染色(ICS)による抗原特異的T細胞活性化観察の結果を示す図である。
[図4] 図4は、PBMCを用いた各ペプチドの免疫原性評価の結果を示す図である。
[図5-1] 図5は、抗HLA Class II抗体を用いたBlocking AssayによりHLA Class II拘束性を確認した結果を示す図である。
[図5-2] 図5は、抗HLA Class II抗体を用いたBlocking AssayによりHLA Class II拘束性を確認した結果を示す図である。
[図5-3] 図5は、抗HLA Class II抗体を用いたBlocking AssayによりHLA Class II拘束性を確認した結果を示す図である。
[図6-1] 図6は、Blocking AssayでDP/DQ/DR拘束性が特定できたT細胞について、他家B細胞株を抗原提示細胞(APC)として用いた特異性確認を行うことでアリルの特定を試みた結果を示す図である。
[図6-2] 図6は、Blocking AssayでDP/DQ/DR拘束性が特定できたT細胞について、他家B細胞株をAPCとして用いた特異性確認を行うことでアリルの特定を試みた結果を示す図である。
[図7-1] 図7は、ネオアンチゲン候補のエピトープマッピングの結果を示す図である。このうち、図7-1はドナーNo.3由来のPIK3CA-H1047R特異的T細胞のエピトープを示している。
[図7-2] 図7は、ネオアンチゲン候補のエピトープマッピングの結果を示す図である。このうち、図7-2はドナーNo.9由来のPIK3CA-H1047R特異的T細胞のエピトープを示している。
[図7-3] 図7は、ネオアンチゲン候補のエピトープマッピングの結果を示す図である。このうち、図7-3はドナーNo.10由来のC-Kit-D816V特異的T細胞のエピトープを示している。
[図8] 図8は、ネオアンチゲン特異的T細胞のTCR鎖のアミノ酸配列(それぞれの鎖のCDR3領域に下線を付した)を示す図である。
[図9] 図9は、ネオアンチゲン特異的TCR遺伝子を導入したT細胞(TCR-T細胞)を、そのネオアンチゲンペプチドの存在下にて抗原提示細胞(APC)とともに培養すると、ネオアンチゲンペプチド特異的にインターフェロンガンマ(IFNγ)を産生するT細胞が顕著に増加することを示す図である。

発明を実施するための形態

[0015]
 本発明において使用する用語を以下の通り定義する:
(a)ネオアンチゲン:がん細胞内において生じた遺伝子変異に由来するアミノ酸変異を含む抗原;
(b)抗原:生体内において免疫原性を有するタンパク質ないしその一部であるペプチド;
(c)がんワクチン:がんの予防ないし治療を目的として人体に投与される抗原ないしそれをコードする遺伝子(DNA又はRNA);
(d)ネオアンチゲンワクチン:ネオアンチゲンを標的としたがんワクチンであり、細胞性免疫を生じさせるものや、体液性免疫を生じさせるものが含まれる;
(e)ドライバー変異:がん細胞内において生じる遺伝子変異であって、細胞のがん化に直接関わっているもの;
(f)パッセンジャー変異:がん細胞内において生じる遺伝子変異であって、細胞のがん化に直接関わっていないもの;
(g)エピトープ:抗原のうち、HLA Class IないしHLA Class II分子と結合するアミノ酸配列;
(h)がん免疫治療薬:がんの予防ないし治療を目的として人体に投与されるペプチド等の化合物ないし細胞、あるいはがんの予防ないし治療のための細胞をex vivoで調製するために使用されるペプチド等の化合物。細胞には、腫瘍を殺傷するよう抗原刺激したT細胞、樹状細胞や、遺伝子改変したT細胞等が含まれる;
(i)活性化:本発明における活性化とは、T細胞表面のTCRが抗原提示細胞(APC)表面のHLAに結合したペプチドを認識することにより、T細胞内にシグナル伝達が起こり細胞傷害性顆粒放出やサイトカイン(IFNγなど)など各種遺伝子の発現が起こること。T細胞活性化の結果、増殖が起こる。
[0016]
 本発明の発明者らは、上記課題について鋭意検討を行った結果、がん細胞で発現するネオアンチゲンの変異アミノ酸を含む部分アミノ酸配列を有し、Class II分子により提示されるエピトープである、ペプチドを取得することにより、これらの課題を解決できることを見いだした。
[0017]
  ペプチド
 本発明はその一実施態様として、ネオアンチゲンの変異アミノ酸を含む部分アミノ酸配列を有し、HLA Class II分子により提示されるエピトープである、ペプチドを提供する。
[0018]
 本発明者らは、まず、がんペプチドワクチンとして利用することができるペプチドを取得するため、がんに特徴的に発現しているタンパク質を標的として検討を行った。本明細書において、がんに特徴的に発現しているタンパク質として、がん細胞において遺伝子変異により生じる新規抗原であるネオアンチゲンを標的とすることとした。ネオアンチゲンは、本来生体に存在しないために生体からは「非自己」と認識され、免疫反応を効率よく誘導すると考えられるためである。このネオアンチゲンのうち、本発明において使用することができるペプチドは、その遺伝子変異により生じた変異アミノ酸を含むネオアンチゲンの部分アミノ酸配列を有するペプチドである。
[0019]
 本発明者らは次に、従来のがんペプチドワクチンでは得られなかった薬効をもつペプチドを得ることを目的として、特徴的な活性を有するペプチドの検討を行った。現在開発されているペプチドワクチンの多くは、抗原提示細胞のHLA Class I分子上に提示され(Class Iエピトープ)、CD8陽性の細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化・増殖させる、という特徴を有している。従来型のがんペプチドワクチンとは異なる特徴的な薬効を得るため、本発明者らは、がん細胞に特徴的に発現しているネオアンチゲンタンパク質の変異アミノ酸を含む部分アミノ酸配列を有するペプチドのうち、HLA Class II分子上に提示されるペプチド(Class IIエピトープ)を探索した。Class IIエピトープの取得に際しては、候補となるペプチドを調製したのち、そのペプチドがCD4陽性ヘルパーT細胞を活性化することまたはIFNγを生成することを指標として、Class IIエピトープを取得することができる。
[0020]
 本明細書において、標的とするネオアンチゲンは、がん細胞には発現しているが、がん細胞ではない細胞には発現していないタンパク質であればどのようなものであってもよく、腫瘍特異抗原、がんドライバー変異タンパク質、がんパッセンジャー変異タンパク質、などから選択することができる。特に、ネオアンチゲンのうち、がん患者に高頻度に共有されるドライバー変異に由来する抗原は、がん治療薬候補品として有望であると考えられることから、既に知られているドライバー変異からペプチド配列を設計する場合を一例として以下に示した。
[0021]
 具体的には図1に示すように、以下のがんドライバー変異を含むネオアンチゲンを検討した:
KRAS遺伝子:
 G12D(KRAS-G12D、変異ID:MU37643)、
 G12V(KRAS-G12V、変異ID:MU12519)、
 G12C(KRAS-G12C、変異ID:MU22774)、
 G12R(KRAS-G12R、変異ID:MU64708)、
 G13D(KRAS-G13D、変異ID:MU70839);
NRAS遺伝子:
 Q61K(NRAS-Q61K、変異ID:MU55099)、
 Q61R(NRAS-Q61R、変異ID:MU68272);
PIK3CA遺伝子:
 H1047R(PIK3CA-H1047R、変異ID:MU4468)、
 E545K(PIK3CA-E545K、変異ID:MU5219);
C-Kit遺伝子:
 D816V(C-Kit-D816V、変異ID:MU820931)。
[0022]
 それぞれのドライバー変異に由来するネオアンチゲンの実際に変異アミノ酸を含む部分ペプチドの配列(標的配列)は、以下の通りである:
[0023]
[表1]


[0024]
 このようにして得られた、ネオアンチゲンのアミノ酸配列に基づいて、変異アミノ酸を含むネオアンチゲンの部分ペプチドの中から、CD4陽性ヘルパーT細胞を活性化することを指標として、HLA Class II分子により提示されるエピトープ(Class IIエピトープ)を設計・調製することができる。具体的には、例えば、前述のドライバー変異タンパク質に由来するネオアンチゲンの全長アミノ酸配列のうち、変異アミノ酸を含むSEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 10のアミノ酸配列のペプチド又はその部分ペプチドを、目的とするペプチドとして選択することができる。本発明においては、目的とするアミノ酸配列のペプチドは、上述した変異アミノ酸を含むペプチドの配列の一部であってもよい。例えば、このようなペプチドとして、変異アミノ酸を含む長さが9~27アミノ酸のペプチドを使用することができ、好ましい態様としては、変異アミノ酸を含む長さが13~27アミノ酸のペプチドを使用することができる。
[0025]
 CD4陽性ヘルパーT細胞を活性化することを指標としてがんドライバー変異タンパク質から得られたネオアンチゲン由来のペプチドを検索したところ、PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)、C-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)、NRAS-Q61R(SEQ ID NO: 7)、KRAS-G12D(SEQ ID NO: 1)、KRAS-G12R(SEQ ID NO: 4)、KRAS-G13D(SEQ ID NO: 5)に由来のペプチドが特に強力にCD4陽性ヘルパーT細胞を活性化することができることが明らかになった。したがって、これらの配列を有するペプチドを、ネオアンチゲンとして使用することができる。本発明においては、PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)、C-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)、NRAS-Q61R(SEQ ID NO: 7)、KRAS-G13D(SEQ ID NO: 5)に由来のペプチドを、より好ましいペプチドとして使用することができる。この結果に基づいて、本発明においては、これらのがんドライバー変異から得られたネオアンチゲン由来のペプチドを、目的とする候補ペプチドとしてこの後の解析を進めることができる。
[0026]
 ペプチドがCD4陽性ヘルパーT細胞を活性化するか否かは、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)をペプチドで刺激し、そのペプチド刺激PBMCを抗CD4抗体・抗IFNγ抗体で染色することにより調べることができる。
[0027]
 本発明のペプチドは、前述した様にHLA Class II分子により提示されるエピトープ(Class IIエピトープ)であるが、HLA Class I拘束性エピトープとしての抗原性をさらに有するものであってもよい。このようなHLA Class I拘束性エピトープとしての抗原性を有するペプチドは、CD8陽性CTLの活性化能を有することを指標として取得することができる。このようなClass IIエピトープであるとともにHLA Class I拘束性エピトープでもあるペプチドは、生体内ではがんに対する細胞性免疫反応をより効率的に発生させたり、多様な免疫反応を同時に発生させることができ、あるいはex vivoにおいて目的とするCD8陽性CTLの活性化をより効率的に行わせるなど、より効果的にがんペプチドワクチンまたはがん免疫療法誘導剤としての作用を提供することができる。
[0028]
 本発明の好ましい態様として、より短い長さのペプチドを探索することができる。具体的には、上述した好ましいネオアンチゲン由来のペプチドの、変異アミノ酸を含む部分配列からなるペプチドを作製し、それらを使用して、抗原であるネオアンチゲン特異的T細胞の活性化を指標として、T細胞を活性化する能力を有するより短い長さのペプチドを特定することができる。その結果、例えば、PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)、C-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)について、それぞれのネオアンチゲンに特異的なT細胞の活性化を調べたところ、以下のペプチドが、目的とする作用を有するペプチドとして得られることが明らかになった。ここでは、PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)、C-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)についての結果を示すが、それ以外のペプチド(例えば、NRAS-Q61R(SEQ ID NO: 7)、KRAS-G12D(SEQ ID NO: 1)、KRAS-G12R(SEQ ID NO: 4)、KRAS-G13D(SEQ ID NO: 5)など)でも同様の方法により、ネオアンチゲンに特異的なT細胞を活性化させる能力を有する、より短い長さのペプチドを特定することができる。
[0029]
[表2]


[0030]
 本発明のペプチドを構成するアミノ酸は、天然のアミノ酸またはアミノ酸アナログであってよく、アミノ酸アナログとしては、アミノ酸のN-アシル化物、O-アシル化物、エステル化物、酸アミド化物、アルキル化物等が挙げられる。本発明のペプチドは、機能を著しく損なわない限りにおいてその構成アミノ酸またはカルボキシル基などが修飾されていてもよい。修飾は、N末端や遊離のアミノ基にホルミル基、アセチル基、t-ブトキシカルボニル基等を結合するものや、C末端や遊離のカルボキシル基にメチル基、エチル基、t-ブチル基、ベンジル基等を結合するものが挙げられる。
[0031]
 本発明のペプチドは、通常のペプチド合成により製造することができる。そのような方法として、例えば、Peptide Synthesis, Interscience, New York,1966;The Proteins, Vol2, Academic Press Inc., New York, 1976; ペプチド合成、丸善(株)、1975; ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)、1985;医薬品の開発続 第十四巻・ペプチド合成、広川書店、1991(前記文献は引用により本願明細書に含まれる。)などに記載されている方法が挙げられる。
[0032]
  ペプチドの用途
 本明細書においてこのようにして得られたペプチドは、がん患者など生体に投与した場合に、当該生体内においてがん細胞上のネオアンチゲン由来のペプチドまたはその起源であるネオアンチゲンとHLA Class II分子との複合体を認識し特異的に反応するT細胞、より具体的には少なくともCD4陽性ヘルパーT細胞を活性化・増殖させることができ、がんに対するペプチドワクチンとして利用することができる。
[0033]
 本発明のネオアンチゲン由来ペプチドをペプチドワクチンとして使用する場合、このペプチドを、ヒトを始めとする哺乳類動物に投与することができるが、ヒト以外の動物に対しても投与することができ、そのようなヒト以外の動物の具体的例としては、ブタ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットが挙げられるが、これらの動物には限定されない。さらに具体的には、ヒトに投与されることが好ましい。
[0034]
 本発明において、ネオアンチゲン由来ペプチドを、予防的処置のため、また治療的処置のためのがんに対するペプチドワクチンとして使用することができる。このようながんの処置には、例えば、腫瘍病変の縮小または増大抑制、新病変出現の抑制、生存期間の延長、腫瘍に関連する自他覚症状の改善または増悪の抑制、転移の抑制、再発の予防、などが含まれる。
[0035]
 本発明のネオアンチゲン由来ペプチドを含むペプチドワクチンは、例えば、皮内投与または皮下投与により患者に投与することができる。本発明のネオアンチゲン由来ペプチドを含むペプチドワクチンは、かかる投与に適するように、医薬上許容される塩や担体などを含むことができる。塩としては、塩化ナトリウムや炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられるが、これらには限定されない。好ましくは、本発明の薬剤は血漿と等張となるように水等に溶解して投与される。担体としては、セルロース、重合アミノ酸、アルブミン等が挙げられ、必要に応じて当該担体に本発明に用いるペプチドを結合させたものを用いることもできる。
[0036]
 本発明のネオアンチゲン由来ペプチドを含むペプチドワクチンは、リポソーム製剤、直径数μmのビーズに結合させた粒子状の製剤、脂質を結合させた製剤などであってもよい。また、本発明のネオアンチゲン由来ペプチドをペプチドワクチンとして使用する場合には、免疫応答を効果的に活性化できるように、従来からワクチン投与に用いられることが知られている不完全フロイントアジュバント(例えばISA-51等、SEPPIC社)やプルランなどの多糖類、完全フロイントアジュバント、BCG、アラム、GM-CSF、IL-2、CpG等の免疫増強作用を有するものとともに投与することもできる。
[0037]
 本発明のネオアンチゲン由来ペプチドを含むペプチドワクチンの投与量は、疾患の状態、個々の患者の年齢、体重等により適宜調節することができるが、通常1回の投与における薬剤中のペプチドの量は、0.0001 mg~1000 mg、好ましくは0.001 mg~100 mg、より好ましくは0.01 mg~10 mg、さらに好ましくは0.1~5 mgまたは0.5~3 mgである。これを数日に1回、数週に1回、または数ヶ月に1回、などの頻度で、反復投与することが好ましい。
[0038]
 本発明のペプチドはまた、生体から採取したリンパ球と生体外(ex vivo)の培養条件下で接触させることにより、本発明のペプチドまたはその起源であるネオアンチゲンに対して特異的に反応する、T細胞を始めとする免疫細胞を活性化・増殖させることができる。このペプチドにより、少なくともCD4陽性T細胞を活性化・増殖させすることができるが、CD4陽性T細胞以外にも、CD8陽性T細胞、γδT細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、マクロファージなどの免疫細胞のいずれかまたはこれらの複数をさらに活性化することもできる。生体外において活性化された上記免疫細胞は、がん患者に投与して、がん細胞を傷害する養子免疫療法などのがん免疫療法に使用することもできる。
[0039]
 本発明のペプチドは、生体内に投与する場合と同様に、ヒトを始めとする哺乳類動物細胞に接触させることができるが、ヒト以外の動物に対しても接触させることもできる。
[0040]
 本発明のペプチドは、がん患者においてがん反応性CD4陽性T細胞あるいはCD8陽性CTLを活性化・増殖させるための、抗原提示細胞を調製するために使用することもできる。すなわち、抗原提示能を有する細胞と、本発明のペプチドとを接触させることにより、抗原提示細胞を調製する方法を提供することができる。抗原提示細胞の調製は、例えば、がん患者由来の抗原提示能を有する細胞を本発明のペプチドとともに培養して接触させ、前記ペプチドを当該細胞のHLA分子に結合および提示させることにより、あるいは、前記ペプチドを発現可能なベクターを、がん患者由来の抗原提示能を有する細胞に導入し発現させることにより、行うことができる。このようにして調製した抗原提示細胞を生体に投与して、生体内でがん反応性のCD4陽性T細胞あるいはCD8陽性CTL を活性化・増殖させる、というがん免疫療法に使用することができる。
[0041]
 抗原提示能を有する細胞は、例えば樹状細胞である。患者由来の樹状細胞は、例えば、患者より採取したPBMCから培養プレート接着細胞を分離し、その細胞をIL-4およびGM-CSFの存在下で約1週間培養することで取得することができる。前記方法により調製された抗原提示細胞は、がん細胞の表面に提示されるペプチドとHLA分子との複合体を特異的に認識するCD4陽性T細胞あるいはCD8陽性CTL を活性化・増殖させることができ、がん患者に投与されると患者体内でがん反応性CD4陽性T細胞あるいはCD8陽性CTLの活性化・増殖を促進することができる。よって、本発明のペプチドにより調製された抗原提示細胞は、がんを処置するための薬剤として使用可能である。
[0042]
  T細胞受容体の同定およびその利用
 本発明においてはまた、このようにして得られたネオアンチゲン特異的T細胞クローンから、ペプチドに反応性を有するT細胞受容体(TCR)の全体又は一部のアミノ酸配列又はそのアミノ酸配列をコードする遺伝子を同定することができる。TCRはα鎖とβ鎖、あるいはγ鎖とδ鎖の二量体から構成されるが、本発明の一態様において、TCRα鎖又はTCRβ鎖のアミノ酸配列又はそのアミノ酸配列をコードする遺伝子の全体又は一部を単離することができ、さらに、それぞれのTCR鎖の構造のうち、可変部(V領域)の相補性決定領域(CDR)、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列又はそのアミノ酸配列の全体又は一部をコードする遺伝子を単離することができ、より詳細にはTCRα鎖又はTCRβ鎖の相補性決定領域(CDR)、CDR1α、CDR2α、CDR3α、CDR1β、CDR2β、CDR3βのアミノ酸配列又はそのアミノ酸配列をコードする遺伝子を単離することができる。
[0043]
 この様にして得られたTCRの遺伝子をT細胞へ導入することにより、TCR遺伝子が改変されたT細胞(TCR-T)を作製することができる。例えば、本発明においてネオアンチゲンに特異的なT細胞から同定したTCRα鎖の遺伝子(全体又は一部)およびTCRβ鎖遺伝子(全体又は一部)を挿入し作製したプラスミドベクターあるいはウイルスベクター(retrovirusベクターあるいはlentivirusベクター)を、がん患者あるいは健常者由来のT細胞に遺伝子導入して、TCR遺伝子が改変されたT細胞株を作製することができる。作製したTCR遺伝子改変細胞株には、本発明のネオアンチゲンを提示する抗原提示細胞および本発明のネオアンチゲン由来のペプチドに反応性を有する、ネオアンチゲンに対する特異性をもたせることができる。
[0044]
 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示す。下記に示す実施例はいかなる方法によっても本発明を限定するものではない。
実施例
[0045]
  実施例1:ドライバー変異由来ネオアンチゲンを標的とするペプチドの設計・合成
 本実施例においては、データベース・文献検索をもとに、ネオアンチゲン候補として、既知のドライバー変異(KRAS、NRAS、PIK3CA、C-Kit遺伝子の6つの変異)の変異アミノ酸部位を含む27 merのペプチド(変異アミノ酸部位を中心としてN末側の11~13アミノ酸、C末側の13~15アミノ酸を含めたペプチド)を選択し、これに基づいて10種類のネオアンチゲンペプチド(SEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 10)と5種類の野生型遺伝子、計15種のペプチドを設計し、合成した(図1)。図1において、各遺伝子変異について、ICGC (International Cancer Genome Consortium)のデータベースにおけるMutation IDと、各変異を含むよう合成したペプチドの配列を示した。図1に示すペプチド15種は、シグマアルドリッチジャパン合同株式会社にて合成した。
[0046]
 合成されたペプチド粉末を電子天秤で秤量し、10 mg/mLとなるようにジメチルスルホキシド(DMSO、シグマアルドリッチジャパン合同株式会社、D8418)を添加した。ボルテックスミキサーで攪拌してペプチドを溶解し、分注して-20℃に設定した低温庫内で保存した。
[0047]
  実施例2:各ペプチドの免疫原性評価
 本実施例では、実施例1において合成した各ペプチドの免疫原性評価を図2に示す工程で行った。
[0048]
 (2-1)抗原特異的T細胞の活性化・樹状細胞(DC)の培養
 使用する末梢血単核球(PBMC)は、精製済正常ヒトPBMC(Precision Bioservice、93000-10M又は-50M)のうち、HLA-A*24:02またはA*02:01を含むロットを選んで用いた。あるいは、神奈川県立がんセンター臨床研究所で募集した健常人ボランティア(HLA-A*24:02またはA*02:01を含む)10名より提供された末梢血から密度勾配遠心法によりPBMCを分離・回収して実験に用いた。
[0049]
 2×10 6 cellsの健常人PBMCを、評価対象とするペプチド(2、2.5または5μg/mL、Mix(後述)の場合は各ペプチドについて2μg/mL)存在下で7日間培養し、(CO 2インキュベーター;5%CO 2・37℃)、細胞を回収した。培地は、5%ヒト血清(MP Biomedicals、2931949)を添加したAIM-V培地(Thermo Fisher Scientific K.K.、12055-091)を用いた。
[0050]
 一方で、同ロットのPBMCをGM-CSF及びIL-4存在下で7日間培養して樹状細胞(DC)に分化させ、一部を凍結保存した。
[0051]
 免疫原性の評価のための細胞刺激は、図2に概要を示す方法に従って行った。すなわち、7日間ペプチドで刺激したPBMCを回収し、マイトマイシンC(60μg/mL、協和発酵キリン株式会社)処理したDC(1×10 5 cells)と各ペプチド(2、2.5または5μg/mL)及び0.1 KE/mL OK-432(ピシバニール注射用、中外製薬株式会社)存在下で共培養した。共培養2日目(刺激開始日をDay 0としてDay 9)にIL-2(PeproTech, Inc.、AF-200-02)を10 IU/mL添加し、さらに5日間培養した。
[0052]
 培養後(Day 14)、細胞を回収し、凍結保存したDCを融解して再度同濃度のペプチド存在下で7日間共培養した。計21日間培養した細胞を回収し、細胞内サイトカイン染色(ICS)又はIFNγELISAにより抗原特異的T細胞の活性化を確認した。評価には、24ドナー分のPBMC(Mix-1およびMix-2について)ないし25ドナー分のPBMC(Mix-3について)(ドナー番号1~10は健常人ボランティア由来、及びドナー番号3桁のものはPrecision Bioservice社より購入)を用いた。この検討に際して、実施例1でドライバー変異を含む配列から設計し合成した10種のペプチド(SEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 10)を、3種ないし4種ペプチドの混合物(Mix-1:KRAS-G12C(SEQ ID NO: 3)、NRAS-Q61K(SEQ ID NO: 6)、PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)の混合物;Mix-2:KRAS-G12V(SEQ ID NO: 2)、NRAS-Q61R(SEQ ID NO: 7)、PIK3CA-E545K(SEQ ID NO: 9)の混合物;Mix-3:KRAS-G12D(SEQ ID NO: 1)、KRAS-G12R(SEQ ID NO: 4)、KRAS-G13D(SEQ ID NO: 5)、C-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)の混合物、図4参照)に分け、まずそれぞれのMixによる刺激による抗原特異的T細胞の活性化を観察し、活性化が見られた場合は、そのT細胞を各ペプチド単体存在下で刺激し免疫原性を有するペプチドを特定した。活性化有無の判定はICS(IFNγ)ないしELISA(培養上清中IFNγ)により行った。
[0053]
 (2-2)細胞内サイトカイン染色(ICS)
 細胞内サイトカイン染色(ICS)は、以下の手順で行った。本実施例でペプチド存在下で21日間培養し回収した細胞(5.0×10 4 cells)と抗原提示細胞(APC)(自家DC;5×10 3 cells)を、96 well U底プレート内で、ペプチド存在下で2時間培養した。10μg/mL Brefeldin A(Merck KGaA、B7651)を添加し、20~24時間培養した。培養後の細胞を回収し、APC標識抗CD3抗体(Biolegend、300412)、FITC標識抗CD4抗体(BD Pharmingen、555346)、APC-Cy7標識抗CD8抗体(TONBO、25-0088-T100)を添加し、4℃の条件下で15分間染色した。染色後の細胞をBD Cytofix / Cytoperm(BD Pharmingen、51-2090KZ)にて処理した後、PE-Cy7標識抗IFNγ抗体(BD Pharmingen、557643)を添加し、4℃の条件下で40分間染色した。染色後の細胞を洗浄後、BD FACSCanto TM IIにて各細胞表面抗原及びサイトカインの発現を解析した。
[0054]
 (2-3)IFNγELISA
 さらに、IFNγELISAは、以下の手順で行った。本実施例にてペプチド存在下で21日間培養し回収した細胞(5.0×10 4 cells)とAPC(自家DC;5×10 3 cells)を、96 well U底プレート内で、抗原存在下で20~24時間培養した。培養後の上清を回収し、上清中のIFNγ量をELISA法で定量した。抗IFNγキャプチャー抗体(BD、51-26131E)を固相化したELISAプレート(Corning、9018)にAssay Diluent(BD Pharmingen、51-2641KC)を添加し室温下で1時間インキュベーションした。Assay Diluentを廃棄、洗浄した後、適切な倍率に希釈した測定試料(培養上清)を添加し、室温下で90分間インキュベーションした。試料を廃棄、洗浄したのち、抗IFNγ検出抗体(Detection Antibody Biotin Anti-Human IFNγ)(BD Pharmingen、51-26132E)及びStreptavidin-horseradish peroxidase conjugate (Sav-HRP)(BD Pharmingen、51-9002208)を添加し、室温下で45分間インキュベーションした。抗体液を廃棄、洗浄後、TMB基質液〔Substrate A及びB(BD Pharmingen、51-2606KZ及び51-2607KZ)を用いて調製〕を添加した。発色を確認後、Stop Solution(BD Pharmingen、51-2608KZ)で反応を停止させ、プレートリーダーで吸光度(OD450)を測定した。
[0055]
 (2-4)ネオアンチゲン候補ペプチドの免疫原性評価
 ICSによる抗原特異的T細胞活性化観察の結果を図3に示す。図3(A)にGatingの工程を示す。まずFSC(前方散乱光)/SSC(側方散乱光)展開してリンパ球様形態の集団をGatingし、次に、CD3(T細胞マーカー)陽性のT細胞集団をGatingした。その集団からさらにCD4又はCD8陽性T細胞集団をGatingして、各集団中のCD4あるいはCD8陽性IFNγ産生陽性集団の比率を算出した。図3(B)に、健常人25ドナー由来のPBMCのうちドナーNo. 6由来のPBMC(図4)をMix-3(KRAS-G12D(SEQ ID NO: 1)、KRAS-G12R(SEQ ID NO: 4)、KRAS-G13D(SEQ ID NO: 5)、C-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)の混合物、図4)で刺激培養したものの例を示す。Mix-3刺激によりCD4陽性IFNγ産生細胞が検出された。図3(C)に、同細胞を、Mix-3を構成する4種のペプチドでそれぞれ刺激した結果を示す。同細胞は、KRAS-G13D(SEQ ID NO: 5)にのみ応答することがわかった。このようにして、各ドナー由来のT細胞について免疫原性を有する抗原の特定を行った。上記の記載は、Mix-3で刺激培養した結果を示すが、Mix-1およびMix-2の場合も同様の手法により、CD4陽性IFNγ産生細胞が検出され、反応性のネオアンチゲン由来のペプチド抗原を特定できた。
[0056]
 CD4又はCD8陽性細胞の中でIFNγが陽性である細胞集団の割合を算出した。抗原有り/無しの両条件で解析を実施し、抗原有り条件下におけるIFNγ陽性の細胞集団(%)[CD4又はCD8陽性細胞の中でのIFNγ陽性細胞の比率]が1.3%以上、且つ抗原無し条件下におけるIFNγ陽性の細胞集団(%)[CD4又はCD8陽性細胞の中でのIFNγ陽性細胞の比率]より1.0%以上大きい場合、反応陽性と判定した。
[0057]
 Mix‐1(KRAS-G12C(SEQ ID NO: 3)、NRAS-Q61K(SEQ ID NO: 6)及びPIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)の混合物)で刺激した結果(図4)、24ドナー中の5ドナーの検体で抗原特異的T細胞(CD4陽性)の活性化が観察された。1ドナー由来のT細胞は培養工程で増殖能を失い詳細な解析に進むことができなかった(ドナーNo. 217)。残り4ドナー由来のT細胞を、各ペプチドを用いて再度解析した結果、いずれもPIK3CA-H1047Rに対し特異的に反応することを確認した。PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)は、4 / 24検体(16.7%)において免疫原性(すなわち、ペプチド特異的T細胞を活性化させる作用)を有していた。4ドナーで活性化された抗原特異的T細胞は全てCD4陽性であったが、ドナーNo. 9ではCD8陽性細胞の活性化も観察された。PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)は、HLA Class IエピトープとClass IIエピトープの両者としての免疫原性を有することがわかった。
[0058]
 Mix 2(KRAS-G12V(SEQ ID NO: 2)、KRAS-Q61R(SEQ ID NO: 7)及びPIK3CA-E545K(SEQ ID NO: 9)の混合物)では、24ドナー中6ドナーの検体で抗原特異的T細胞の活性化が観察された(図4)。うち3検体由来のT細胞を増殖させ、単ペプチドを用いた解析を行った結果、いずれもNRAS-Q61R(SEQ ID NO: 7)に対し特異的に反応した。また、それらは全てCD4陽性T細胞であった。NRAS-Q61R(SEQ ID NO: 7)は、3 / 24検体(12.5%)において免疫原性を有していた。
[0059]
 Mix 3(KRAS-G12D(SEQ ID NO: 1)、KRAS-G12R(SEQ ID NO: 4)、KRAS-G13D(SEQ ID NO: 5)及びC-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)の混合物)では、25ドナー中7ドナーの検体で抗原特異的T細胞の活性化が観察された(図4)。単ペプチドによる解析を行った結果、それらの内訳は、KRAS-G12D及びKRAS-G12R:各1ドナー(1 / 25、4.0%)、KRAS-G13D:3ドナー(3 / 25、12.0%)、C-Kit-D816V:5ドナー(5 / 25、20.0%)であった。5ドナーで活性化されたC-kit-D816V特異的T細胞のうち、4ドナー由来のものはCD4陽性であったが、1ドナー(No. 9)ではCD8陽性細胞の活性化が観察された。C-Kit-D816Vは、HLA Class IエピトープとClass IIエピトープの両者としての免疫原性を有することがわかった。
[0060]
 これらの結果から、KRAS-G12D(SEQ ID NO: 1)、KRAS-G12R(SEQ ID NO: 4)、KRAS-G13D(SEQ ID NO: 5)、NRAS-Q61R(SEQ ID NO: 7)、PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)、C-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)のペプチドにより、CD4陽性T細胞の活性化が検出され、また、それらの中でも特に、PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)、NRAS-Q61R(SEQ ID NO: 7)、KRAS-G13D(SEQ ID NO: 5)及びC-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)に由来のペプチドの4種は、10%を超える高い頻度の健常人由来試料において免疫原性を示すことがわかった(図4)。
[0061]
  実施例3:免疫原性を認めたネオアンチゲン候補のHLA Class II拘束性
 本実施例においては、実施例2において免疫原性が認められたネオアンチゲン候補のHLA Class II拘束性を明らかにした。
[0062]
 (3-1)HLA-Class IIブロッキングアッセイ
 実施例2においてICS又はIFNγELISA Assayにて抗原特異性を確認したCD4陽性T細胞のうち、継続培養ができたもの(ドナーNo.3、No.7、No.9、No.10、およびNo.237の個体由来のもの)については、抗HLA Class II抗体を用いたBlocking AssayによりHLA Class II拘束性を確認した。具体的には、抗原特異性を確認したCD4陽性T細胞の残余を、5%ヒト血清・20 U/mL IL-2添加 AIM-V培地中で1日間以上培養後、ペプチドとともに各抗HLA Class II抗体〔200μg/mL anti-HLA-DP(BRAFB6、Santa Cruz Biotechnology、SC-33719)、1 mg/mL HLA-DQ(SPV-L3、Abcam、ab23632)、又は1 mg/mL HLA-DR(G46-6、BD Pharmingen、555809)〕を添加した条件で、(2-2)又は(2-3)と同じ方法を使用して、ICS又はIFNγELISAを実施した。得られた結果を、図5(図5-1~図5-3)に示す。図中のNDは「No Data;データ無し」を示す。
[0063]
 ドナーNo.7由来KRAS-G12R特異的T細胞は、活性化に用いた抗原の野生型(KRAS-WT)に対しては反応しないが、KRAS-G12R(SEQ ID NO: 4)に対して反応した。この反応は、抗DPあるいはDQ抗体では阻害されないが、抗DR抗体の添加により阻害された(図5-1(A))。このことから、当該抗原に対するT細胞の反応はDR拘束性であることがわかった。同様に、ドナーNo.3及びNo.9由来KRAS-G13D特異的T細胞はDQ拘束性(図5-1(B)及び(C))、ドナーNo.7由来NRAS-Q61R特異的T細胞はDQ拘束性(図5-1(D))、ドナーNo.3由来PIK3CA-H1047R特異的T細胞はDQ拘束性(図5-2(E))、ドナーNo.9及び237由来PIK3CA-H1047R特異的T細胞はDR拘束性(図5-2(F)及び(G))、ドナーNo.10及び237由来C-Kit-D816V特異的T細胞はDR拘束性(図5-2(H)及び図5-3(I))であることがわかった。
[0064]
 (3-2)LCL(Lymphoblastoid Cell Line)を用いた抗原特異的T細胞のHLA拘束性の解析
 続いて、(3-1)のBlocking AssayでDP/DQ/DR拘束性が特定できたT細胞(ドナーNo.3、No.7、No.9、およびNo.10の個体由来のもの)について、他家B細胞株をAPCとして用いた特異性確認を行うことでDP/DQ/DRのアリルの特定を試みた。LCL(Lymphoblastoid Cell Line)を、各健常人PBMCからDCを調製した際に回収した非接着細胞へEBウイルス(B95-E細胞;JCRB細胞バンクJCRB9123の培養上清)を感染させて作製した。
[0065]
 ICSにて抗原特異性を確認したT細胞について、他家LCLをAPCとして用いてICS又はELISAにより抗原特異性の確認を行った。APC:T細胞比は2(2~10×10 4 cells / well):1(1~5×10 4 cells / well)の条件で行った。
[0066]
 ドナーNo.7由来KRAS-G12R特異的T細胞は、DRB1*0901を有するAPC存在下で抗原に対する反応を示したことから、当該アリル拘束性を持つことがわかった(図6-1(A))。同様に、ドナーNo.3及びNo9由来KRAS-G13D特異的T細胞はそれぞれ、DQB1*0303拘束性(図6-1(B)及び(C))、ドナーNo.9由来PIK3CA-H1047R特異的T細胞はDRB1*0405拘束性(図6-1(D))、ドナーNo.10由来C-Kit-D816V特異的T細胞はDRB1*0403ないし0406拘束性を持つことがわかった(図6-2(E))。
[0067]
  実施例4:ネオアンチゲン候補のエピトープ部位の同定(エピトープマッピング)
 本実施例においては、ネオアンチゲン候補ペプチドのエピトープ部位の同定(エピトープマッピング)を行った。
[0068]
 抗原特異的T細胞の活性化が確認された各ペプチドのうち、PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)及びC-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)について、12~15 merのオーバーラッピングペプチドを合成した(シグマアルドリッチジャパン合同株式会社)。各抗原特異的T細胞に対し、自家DCをAPCとして各オーバーラッピングペプチドの活性化能をICSで確認した。結果を図7(図7-1~図7-3)に示す。
[0069]
 PIK3CA-H1047R及びC-Kit-D816V特異的T細胞のうちの幾つかは、長期間にわたり維持及び増殖できたため、次に、エピトープマッピング法によるエピトープ部位の特定を行った。PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)及びC-Kit-D816V(SEQ ID NO: 10)の全長27アミノ酸をもとに11~15アミノ酸からなるオーバーラッピングペプチドを合成し、それぞれを抗原として、各抗原特異的T細胞の反応性を確認した。ドナーNo.3由来PIK3CA-H1047R特異的T細胞のエピトープは、ARHGGWTTKからなる9アミノ酸であることがわかった(図7-1)。同様に、ドナーNo.9由来PIK3CA-H1047R特異的T細胞のエピトープは、MKQMNDARHからなる9アミノ酸(図7-2)、ドナーNo.10由来C-Kit-D816V特異的T細胞のエピトープは、RVIKNDSNYVからなる10アミノ酸であることがわかった(図7-3)。
[0070]
  実施例5:ネオアンチゲン特異的T細胞からのTCR遺伝子同定と抗原特異性の確認
 本実施例においては、抗原特異的T細胞をクローニングし、その細胞からTCR遺伝子配列及びアミノ酸配列を同定した。
[0071]
 限界希釈法によるクローニング後約2週間培養時点で増殖が見られたT細胞集団について、DCをAPCとしてICSをおこない抗原特異性を確認した。特異性が確認されたT細胞を、ヒトB細胞株;EB-3及びJiyoyeをフィーダー細胞として、40 ng/mL抗CD3抗体(UCHT1、BD Pharmingen、555330)及び120 IU/mL IL-2存在下で拡大培養した。
[0072]
 本実施例において上述した方法でクローニングした抗原特異的T細胞のTCR遺伝子の同定は、Hamanaらの方法(Hamana et al.,)に則り実施した。
[0073]
 この実施例では、例としてドナーNo.9由来PIK3CA-H1047R特異的T細胞及びドナーNo.10由来C-Kit-D816V特異的T細胞について限界希釈法により細胞クローニングをおこない、抗原反応性が確認された細胞クローンを用いたTCR遺伝子同定を行った。細胞からRNAを単離し、TCR遺伝子特異的プライマーを用いたRT-PCRの増幅産物の塩基配列をシーケンシングし、ドナーNo.9由来PIK3CA-H1047R特異的T細胞由来のTCRα鎖の可変(V)-連結(J)領域のアミノ酸配列(SEQ ID NO: 29)及びTCRβ鎖のV-多様性(D)-J領域のアミノ酸配列(SEQ ID NO: 30)及びドナーNo.10由来C-Kit-D816V特異的T細胞由来のTCRα鎖のV-J領域のアミノ酸配列(SEQ ID NO: 31)及びTCRβ鎖のV-D-J領域のアミノ酸配列(SEQ ID NO: 32)、をそれぞれ同定した。これらのうち、ドナーNo.9由来PIK3CA-H1047R特異的T細胞由来のTCRα鎖のCDR3α領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 29の89番アミノ酸から102番アミノ酸までの領域(CAASGSYNNNDMRF)及びTCRβ鎖のCDR3β領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 30の91番アミノ酸から108番アミノ酸までの領域(CASSYASPGTGYSGELFF)であること、及びドナーNo.10由来C-Kit-D816V特異的T細胞由来のTCRα鎖のCDR3α領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 31の88番アミノ酸から100番アミノ酸までの領域(CAVRDNAGNMLTF)及び及びTCRβ鎖のCDR3β領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO: 32の91番アミノ酸から104番アミノ酸までの領域(CASSIPNLGYGYTF)であることを、それぞれを同定した(図8)。
[0074]
  実施例6:TCR-T細胞の作製
 実施例5で同定したドナーNo.9由来PIK3CA-H1047R特異的T細胞由来のTCRα鎖遺伝子(SEQ ID NO: 29)およびTCRβ鎖遺伝子(SEQ ID NO: 30)を挿入し作製したretrovirus vector(富山大学より供与)を介して、健常者由来のT細胞にPIK3CA-H1047R特異的TCR遺伝子を導入して、TCR遺伝子を発現した細胞株(TCR-T細胞)を作製した。作製したTCR-T細胞(TCR遺伝子発現細胞株)(T細胞として5.0×10 4 cells)とAPC(ドナーNo.9由来EBウイルス不死化B細胞;5×10 3 cells)を、96 well U底プレート内で、抗原ペプチド(PIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8))またはその野生型ペプチド(EALEYFMKQMNDAHHGGWTTKMDWIFH)の存在下で20~24時間培養したのち、培養後の細胞を回収し、IFNγ産生細胞をフローサイトメーターで検出することにより、抗原特異性を確認した。
[0075]
 フローサイトメーターで検出したIFNγ産生細胞の頻度を図9に示す。PIK3CA-H1047R特異的TCR-T細胞を、抗原提示細胞(APC)のない状態で単独培養した場合(「APC(-)」と表示)、APCと共培養した場合(「peptide(-)」と表示)、野生型ぺプチド存在下で共培養した場合(「WT1」と表示)では、IFNγ産生細胞の頻度は1%未満であった。それらに対して、抗原ペプチド(PIK3CA-H1047R;SEQ ID NO: 8)存在下でAPCと共培養した場合(「H1047R」と表示)のIFNγ産生細胞の頻度は30.4%±0.9%と高いことが示された。これらのことより、PIK3CA-H1047R特異的TCR遺伝子を導入したT細胞は、その抗原ペプチド(PIK3CA-H1047R)特異的に免疫反応を起こすことが示された。
[0076]
 この実施例から、例えば、ある個体において、ネオアンチゲンの一例としてPIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)を発現しているがん細胞が見いだされた場合、実施例5で取得されたPIK3CA-H1047R特異的T細胞由来のTCRα鎖遺伝子(SEQ ID NO: 29)およびTCRβ鎖遺伝子(SEQ ID NO: 30)をその個体のT細胞に導入してTCR-T細胞を作成し、増殖させたのちにその個体に戻すことで、その個体内におけるPIK3CA-H1047R(SEQ ID NO: 8)を発現しているがん細胞に対して特異的な免疫応答を生じさせることができることが示された。

産業上の利用可能性

[0077]
 本発明で免疫原性を確認したペプチドは、がんの治療または予防のためのがん細胞由来のネオアンチゲンに対するワクチンとして利用することができる。さらに詳しくは、がん患者に高頻度に共有されるドライバー変異を標的としたがんワクチンとして利用することができる。また、当該ペプチドにより誘導したCD4陽性ヘルパーT細胞を同定、クローン化、増殖させ、患者へ移入することができる。さらに、CD4陽性T細胞から当該抗原に対するTCR遺伝子配列を同定し、T細胞へ遺伝子を導入することでTCR遺伝子改変T細胞(TCR-T)を作製し、それを治療薬とすることもできる。

請求の範囲

[請求項1]
 ネオアンチゲンの変異アミノ酸を含む部分アミノ酸配列を有し、HLA Class II分子により提示されるエピトープである、ペプチド。
[請求項2]
 CD4陽性ヘルパーT細胞を活性化・増殖させる、請求項1に記載のペプチド。
[請求項3]
 腫瘍特異抗原、がんのドライバー変異タンパク質、またはがんパッセンジャー変異タンパク質を含むアミノ酸配列に由来する、請求項1又は2に記載のペプチド。
[請求項4]
 長さが9~27アミノ酸である、請求項1~3のいずれかに記載のペプチド。
[請求項5]
 がんのドライバー変異が、PIK3CA-H1047R、C-Kit-D816V、NRAS-Q61R、KRAS-G12D、KRAS-G12R、KRAS-G13Dからなる群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載のペプチド。
[請求項6]
 HLA Class I拘束性エピトープとしての抗原性をさらに有する(CD8陽性抗原特異的T細胞の活性化・増殖能を有する)、請求項1~5のいずれかに記載のペプチド。
[請求項7]
 SEQ ID NO: 1~10から選択されるアミノ酸配列の部分配列を含む、請求項1~6のいずれかに記載のペプチド。
[請求項8]
 SEQ ID NO: 11~SEQ ID NO: 28から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなる、請求項1~6のいずれかに記載のペプチド。
[請求項9]
 請求項1~8のペプチドを含む、がんに対するペプチドワクチン。
[請求項10]
 CD8陽性T細胞、CD4陽性T細胞, γδT細胞、NK細胞、NKT細胞、樹状細胞、マクロファージからなる群から選択される免疫細胞を活性化する、請求項9に記載のペプチドワクチン。
[請求項11]
 リンパ球と、請求項1~8のいずれかに記載のペプチドとを接触させることを含む、抗原特異的T細胞の活性化・増殖方法。
[請求項12]
 抗原提示能を有する細胞と、請求項1~8のいずれかに記載のペプチドとを接触させることを含む、抗原提示細胞の調製方法。
[請求項13]
 抗原提示能を有する細胞と前記ペプチドとの接触を、
 当該細胞を前記ペプチドとともに培養し、前記ペプチドを当該細胞のHLA分子に結合および提示させること、または
 当該細胞に前記ペプチドを発現可能なベクターを導入し発現させること
により行う、請求項12に記載の方法。
[請求項14]
 抗原提示能を有する細胞が樹状細胞である、請求項12または13に記載の方法。
[請求項15]
 請求項1~8のいずれかに記載のペプチドに対する抗原特異的T細胞クローンから単離された、ペプチドに反応性を有するT細胞受容体(TCR)をコードする遺伝子。
[請求項16]
 TCRをコードする遺伝子が、TCRα鎖をコードする遺伝子、またはTCRβ鎖をコードする遺伝子、またはこれらの両方である、請求項15に記載の遺伝子
[請求項17]
 相補性決定領域(CDR)遺伝子の全体又は一部である、請求項15または16に記載の遺伝子。
[請求項18]
 請求項15から17のいずれかに記載される遺伝子を、T細胞へ導入することにより作製された、TCR遺伝子が改変されたT細胞(TCR-T細胞)。


図面

[ 図 1]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 2]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 3]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 3の続き]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 3の続き]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 4]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 5-1]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 5-2]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 5-3]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 6-1]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 6-2]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 7-1]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 7-2]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 7-3]   [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 8]   [規則91に基づく訂正 13.03.2020]  [規則26に基づく補充 05.03.2020] 

[ 図 9]   [規則26に基づく補充 05.03.2020]