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1. WO2020170371 - 発光デバイスの製造方法

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明 細 書

発明の名称 発光デバイスの製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

非特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005  

課題を解決するための手段

0006   0007  

発明の効果

0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185  

符号の説明

0186  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25   26   27   28   29   30   31   32   33   34   35   36   37   38   39  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21   22   23   24   25  

明 細 書

発明の名称 : 発光デバイスの製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、量子ドットを含む発光素子を備えた発光デバイスの製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 特許文献1は、コア/シェル構造を備えた半導体ナノ粒子(量子ドット)と、当該半導体ナノ粒子に配位する配位子とを開示している。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 日本国公開特許公報「特開2017-25220号」

非特許文献

[0004]
非特許文献1 : 種村正美、“ランダム充填について(形の物理学,研究会報告)”、物性研究(1984),42(1):76-77

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 発明者は、特許文献1に開示されているような従来の量子ドットを、単に積層した量子ドット層を備えた発光デバイスよりも、より当該発光デバイスの発光効率を改善する手法を見出した。

課題を解決するための手段

[0006]
 上記課題を解決するために、本発明の発光デバイスの製造方法は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間の量子ドット層とを含む発光素子を基板上に備えた発光デバイスの製造方法であって、前記量子ドット層を形成する量子ドット層形成工程を備え、前記量子ドット層形成工程は、第1溶液を前記基板と重畳する位置に塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程に次いで、前記基板の周囲の雰囲気温度を第1温度以上に加熱する第1加熱工程と、前記第1加熱工程に次いで、前記雰囲気温度を前記リガンドの融点と前記第1溶媒の沸点のうちの低い温度以下に冷却する冷却工程と、前記冷却工程に次いで、第2溶液を前記基板と重畳する位置に塗布する第2塗布工程と、前記第2塗布工程に次いで、前記雰囲気温度を第2温度まで加熱する第2加熱工程と、を備え、前記第1溶液は、第1溶媒と、複数の量子ドットと、該量子ドットのそれぞれと配位結合するリガンドとを含み、前記量子ドットは、コアと、該コアを被膜する第1シェルとを備え、前記第2溶液は、第2溶媒と、第1無機物前駆体とを含み、前記第1温度は、前記リガンドの融点と前記第1溶媒の沸点とのうちの高い温度であり、前記第2温度は、前記第1温度より高く、かつ、前記第1無機物前駆体が、前記第1シェルの周囲にエピタキシャル成長し、前記第1シェルを被膜する第2シェルを形成する温度であり、前記第2加熱工程において、少なくとも一組の互いに隣接する前記量子ドット同士が、前記第2シェルを介して接続する。
[0007]
 また、上記課題を解決するために、本発明の発光デバイスの製造方法は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間の量子ドット層とを含む発光素子を基板上に備えた発光デバイスの製造方法であって、前記量子ドット層を形成する量子ドット層形成工程を備え、前記量子ドット層形成工程は、コアと、該コアを被膜する第1シェルとを備えた複数の量子ドットと、該量子ドットのそれぞれと配位結合するリガンドと、第1溶媒とを含む第1溶液を前記基板と重畳する位置に塗布する第1塗布工程と、前記第1塗布工程に次いで、前記第1溶液が塗布された前記位置に、前記基板の上方から第1光照射を行い、前記リガンドを溶融させ、かつ、前記第1溶媒を気化させる第1光照射工程と、前記第1光照射工程に次いで、前記量子ドットの温度を前記リガンドの融点と前記第1溶媒の沸点のうちの低い温度以下に冷却する冷却工程と、前記冷却工程に次いで、第2溶媒と、第1無機物前駆体とを含む第2溶液を前記基板と重畳する位置に塗布する第2塗布工程と、前記第2塗布工程に次いで、第2光照射を行い、前記量子ドットの温度を上昇させる第2光照射工程と、前記第2光照射工程に次いで、第3光照射を行い、前記第1無機物前駆体を、前記第1シェルの周囲にエピタキシャル成長させて、前記第1シェルを被膜する第2シェルを形成する第3光照射工程と、を備え、前記第3光照射工程において、少なくとも一組の互いに隣接する前記量子ドット同士が、前記第2シェルを介して接続する。

発明の効果

[0008]
 上記構成により、量子ドットを備えた発光デバイスにおいて、より発光効率を改善できる。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 本発明の実施形態1に係る発光デバイスの概略上面図および概略断面図、ならびに当該発光デバイスの発光層周辺の概略拡大図である。
[図2] 本発明の実施形態1に係る発光デバイスの製造方法を説明するためのフローチャートである。
[図3] 本発明の実施形態1に係る発光層の形成方法を説明するためのフローチャートである。
[図4] 本発明の実施形態1に係る発光層の形成工程における、経過時間と温度との関係を説明するためのグラフである。
[図5] 本発明の実施形態1に係る発光層の形成工程を説明するための工程断面図である。
[図6] 本発明の実施形態1に係る発光層の形成工程を説明するための他の工程断面図である。
[図7] 本発明の実施形態1に係る発光層の形成工程を説明するための他の工程断面図である。
[図8] 本発明の実施形態2に係る発光デバイスの概略上面図および概略断面図、ならびに当該発光デバイスの発光層周辺の概略拡大図である。
[図9] 本発明の実施形態3に係る発光デバイスの概略上面図および概略断面図、ならびに当該発光デバイスの発光層周辺の概略拡大図である。
[図10] 本発明の実施形態3に係る発光層の形成方法を説明するためのフローチャートである。
[図11] 本発明の実施形態3に係る発光層の形成工程における、経過時間と温度との関係を説明するためのグラフである。
[図12] 本発明の実施形態3に係る発光層の形成工程を説明するための工程断面図である。
[図13] 本発明の変形例に係る発光デバイスの概略上面図および概略断面図、ならびに当該発光デバイスの発光層周辺の概略拡大図である。
[図14] 本発明の変形例に係る発光層の形成工程を説明するための工程断面図である。
[図15] 本発明の実施形態4に係る発光層の形成方法を説明するためのフローチャートである。
[図16] 本発明の実施形態4に係る発光層の形成工程における、経過時間と温度との関係を説明するためのグラフである。
[図17] 本発明の実施形態4に係る発光層の形成工程を説明するための工程断面図である。
[図18] 本発明の実施形態4に係る発光層の形成工程を説明するための他の工程断面図である。
[図19] 本発明の実施形態4に係る発光層の形成工程を説明するための他の工程断面図である。
[図20] 本発明の実施形態4に係る発光層の形成工程を説明するための他の工程断面図である。
[図21] 本発明の実施形態4に係る発光層の形成工程における、フォトマスクを使用した光照射について説明するための工程断面図である。
[図22] 本発明の実施形態4に係る発光層の形成工程における、フォトマスクを使用した光照射について説明するための他の工程断面図である。
[図23] 本発明の実施形態4に係る発光層の形成工程における、フォトマスクを使用した光照射について説明するための他の工程断面図である。
[図24] 本発明の実施形態5に係る発光デバイスの概略上面図および概略断面図、ならびに当該発光デバイスの発光層周辺の概略拡大図である。
[図25] 本発明の実施形態5に係る発光層の形成工程における、経過時間と温度との関係を説明するためのグラフである。

発明を実施するための形態

[0010]
 〔実施形態1〕
 図1の(a)は、本実施形態に係る発光デバイス1の概略上面図である。図1の(b)は、図1の(a)における、A-A線矢視断面図である。図1の(c)は、図1の(b)における、領域Bにおける拡大断面図、すなわち、後述する第2発光層8Gの周辺における拡大断面図である。
[0011]
 図1の(a)に示すように、本実施形態に係る発光デバイス1は、発光が取り出される発光面DSと、当該発光面DSの周囲を囲う額縁領域NAとを備える。額縁領域NAにおいては、後に詳述する発光デバイス1の発光素子を駆動するための信号が入力される端子Tが形成されていてもよい。
[0012]
 平面視において発光面DSと重畳する位置において、図1の(b)に示すように、本実施形態に係る発光デバイス1は、発光素子層2とアレイ基板3とを備える。発光デバイス1は、図示しないTFT(Thin Film Transistor)が形成されたアレイ基板3上に、発光素子層2の各層が積層された構造を備える。なお、本明細書においては、発光デバイス1の発光素子層2からアレイ基板3への方向を「下方向」、発光デバイス1の発光素子層2から発光面DSへの方向を「上方向」として記載する。
[0013]
 発光素子層2は、第1電極4上に、第1電荷輸送層6と、量子ドット層である発光層8と、第2電荷輸送層10と、第2電極12とを、下層から順次積層して備える。アレイ基板3の上層に形成された発光素子層2の第1電極4は、アレイ基板3のTFTと電気的に接続されている。本実施形態において、例えば、第1電極4は陽極であり、第2電極12は陰極である。
[0014]
 本実施形態において、発光素子層2は、第1発光素子2Rと、第2発光素子2Gと、第3発光素子2Bとを備える。第1発光素子2Rと、第2発光素子2Gと、第3発光素子2Bとは、発光層8に、半導体ナノ粒子材料、すなわち、量子ドット材料を備えた、QLED素子である。
[0015]
 ここで、第1電極4、第1電荷輸送層6、および発光層8のそれぞれは、エッジカバー14によって分離されている。特に、本実施形態においては、第1電極4は、エッジカバー14によって、第1発光素子2R用の第1電極4R、第2発光素子2G用の第1電極4G、および第3発光素子2B用の第1電極4Bに分離されている。また、第1電荷輸送層6は、エッジカバー14によって、第1発光素子2R用の第1電荷輸送層6R、第2発光素子2G用の第1電荷輸送層6G、および第3発光素子2B用の第1電荷輸送層6Bに分離されている。さらに、発光層8は、エッジカバー14によって、第1発光層8R、第2発光層8G、および第3発光層8Bに分離されている。
[0016]
 なお、第2電荷輸送層10と、第2電極12とは、エッジカバー14によって分離されず、共通して形成されている。エッジカバー14は、図1の(b)に示すように、第1電極4の側面と上面の周囲端部付近とを覆う位置に形成されていてもよい。
[0017]
 本実施形態において、第1発光素子2Rは、第1電極4R、第1電荷輸送層6Rと、第1発光層8Rと、第2電荷輸送層10と、第2電極12とからなる。また、第2発光素子2Gは、第1電極4Gと、第1電荷輸送層6Gと、第2発光層8Gと、第2電荷輸送層10と、第2電極12とからなる。さらに、第3発光素子2Bは、第1電極4Bと、第1電荷輸送層6Bと、第3発光層8Bと、第2電荷輸送層10と、第2電極12とからなる。
[0018]
 本実施形態においては、第1発光層8Rと、第2発光層8Gと、第3発光層8Bとは、それぞれ、第1の色の光である赤色光と、第2の色の光である緑色光と、第3の色の光である青色光とを発する。すなわち、第1発光素子2Rと、第2発光素子2Gと、第3発光素子2Bとは、それぞれ、互いに異なる色の光である、赤色光と、緑色光と、青色光とを発する発光素子である。
[0019]
 ここで、青色光とは、例えば、400nm以上500nm以下の波長帯域に発光中心波長を有する光である。また、緑色光とは、例えば、500nm超600nm以下の波長帯域に発光中心波長を有する光のことである。また、赤色光とは、例えば、600nm超780nm以下の波長帯域に発光中心波長を有する光のことである。
[0020]
 第1電極4および第2電極12は導電性材料を含み、それぞれ、第1電荷輸送層6および第2電荷輸送層10と電気的に接続されている。第1電極4と第2電極12とのうち、発光面DSに近い電極は透明電極である。
[0021]
 特に、本実施形態において、アレイ基板3は透明基板であり、第1電極4は透明電極である。また、第2電極12は反射電極であってもよい。このため、発光層8からの光は、第1電荷輸送層6、第1電極4、およびアレイ基板3を透過して、発光面DSから発光デバイス1の外部に出射される。このため、発光デバイス1は、ボトムエミッション型の発光デバイスとして構成されている。発光層8から上方向に発せられた光、および下方向に発せられた光の両方を、発光デバイス1からの発光として利用可能であるため、発光デバイス1は、発光層8から発せられた光の利用効率を向上させることができる。
[0022]
 なお、上述した第1電極4と第2電極12との構成は一例であり、別の材料によって構成されていてもよい。
[0023]
 第1電荷輸送層6は、第1電極4からの電荷を発光層8へと輸送する層である。第1電荷輸送層6は、第2電極12からの電荷の輸送を阻害する機能を有していてもよい。本実施形態においては、第1電荷輸送層6は、陽極である第1電極4からの正孔を発光層8へと輸送する正孔輸送層であってもよい。
[0024]
 第2電荷輸送層10は、第2電極12からの電荷を発光層8へと輸送する層である。第2電荷輸送層10は、第1電極4からの電荷の輸送を阻害する機能を有していてもよい。本実施形態においては、第2電荷輸送層10は、陰極である第2電極12からの電子を発光層8へと輸送する電子輸送層であってもよい。
[0025]
 次に、発光層8の構成について、図1の(c)を参照して詳細に説明する。なお、図1の(c)は、図1の(b)の領域B、すなわち、第2発光素子2Gの第2発光層8Gの周囲における概略断面図を示す。しかしながら、本実施形態においては、特に断りのない限り、図1の(c)に示す各部材は、各発光素子において共通の構成であるとみなして示している。したがって、本実施形態においては、特に断りのない限り、図1の(c)に示す各部材は、各発光素子において同一の構成であってもよい。
[0026]
 本実施形態において、発光層8は、量子ドット構造体16とリガンド18とを備える。量子ドット構造体16は、複数の量子ドット20を備える。量子ドット20は、コア22と該コア22の周囲を被膜する第1シェル24とを含む、コア/シェル構造を備えている。また、量子ドット構造体16は、第2シェル26を備える。第2シェル26は、量子ドット20のそれぞれの外殻である第1シェル24の周囲を被膜する。
[0027]
 なお、量子ドット20は、コア22の周囲に複数のシェルを備えた、マルチシェル構造を備えていてもよい。この場合、第1シェル24は、上記複数のシェルのうち、最外層にあたるシェルを指す。
[0028]
 リガンド18は、第2シェル26の外表面において、量子ドット構造体16と配位結合し、量子ドット構造体16の空隙を充填していてもよい。リガンド18は、例えば、TOPO(trioctylphosphine oxide)であってもよい。
[0029]
 ここで、量子ドット20のうち、少なくとも一組の互いに隣接する量子ドット20同士は、第2シェル26を介して接続している。また、第1シェル24と第2シェル26とは、結晶構造を有し、特に、本実施形態においては、第2シェル26は、第1シェル24上においてエピタキシャル成長することにより形成された結晶構造を備える。したがって、上述した互いに隣接する量子ドット20同士は、第2シェル26の結晶構造により接続している。なお、本実施形態においては、同一の発光素子内における全ての量子ドット20同士が、第2シェル26の結晶構造により接続し、一体の量子ドット構造体16を形成していてもよい。また、第1シェル24と第2シェル26とは、多結晶であってもよい。
[0030]
 量子ドット20のコア22および第1シェル24は、公知のコア/シェル構造の量子ドットに用いられる無機の材料を備えていてもよい。すなわち、第1発光層8R、第2発光層8G、および第3発光層8Bは、それぞれ、赤色、緑色、および青色のQLED素子の発光層に使用される、公知の量子ドット材料を備えていてもよい。
[0031]
 また、第2シェル26は、第1シェル24と同様に、公知のコア/シェル構造の量子ドットに用いられる、無機のシェル材料を備えていてもよい。また、第1シェル24と第2シェル26とは、同一材料からなっていてもよい。なお、第2シェル26の比抵抗は、第1シェル24の比抵抗以上であることが好ましい。また、第2シェル26のバンドギャップの大きさは、第1シェル24のバンドギャップの大きさ以上であることが好ましい。当該構成により、第2シェル26から第1シェル24への電荷注入の効率が向上する。
[0032]
 コア22の具体的な材料としては、例えば、CdSe(バンドギャップ1.73eV)、CdTe(バンドギャップ1.44eV)、ZnTe(バンドギャップ2.25eV)、またはCdS(バンドギャップ2.42eV)等のII-VI族半導体が挙げられる。他に、コア22の具体的な材料としては、例えば、InP(バンドギャップ1.35eV)、またはInGaP(バンドギャップ1.88eV)などのIII-V族半導体が挙げられる。
[0033]
 一般に、量子ドットの発する波長はコアの粒径によって決定される。ゆえに、コア22の粒径の制御によって、コア22が発する光を、赤色、緑色、および青色の何れかに制御できるように、適切なバンドギャップを有する半導体材料を、コア22の材料として採用することが好ましい。
[0034]
 赤色発光層である第1発光層8Rが630nmの波長の赤色光を発するために、第1発光層8Rが含むコア22の材料のバンドギャップは、1.97eV以下であることが好ましい。また、緑色発光層である第2発光層8Gが532nmの波長の緑色光を発するために、第2発光層8Gが含むコア22の材料のバンドギャップは、2.33eV以下であることが好ましい。さらに、青色発光層である第3発光層8Bが630nmの波長の青色光を発するために、第3発光層8Bが含むコア22の材料のバンドギャップは、2.66eV以下であることが好ましい。上述した第1発光層8R、第2発光層8G、および第3発光層8Bを備えた発光デバイス1は、UHDTVの国際規格BT2020における色空間の基準を満たす点において好ましい。
[0035]
 第1シェル24および第2シェル26の具体的な材料としては、例えば、ZnSe(バンドギャップ2.7eV)、またはZnS(バンドギャップ3.6eV)等のII-VI族半導体が挙げられる。他に、第1シェル24および第2シェル26の具体的な材料としては、GaP(バンドギャップ2.26eV)等のIII-V族半導体が挙げられる。
[0036]
 コア22の材料は、第1シェル24および第2シェル26の材料と比較して、比抵抗が低く、バンドギャップが小さいことが好ましい。当該構成により、第1シェル24および第2シェル26からコア22への電荷注入の効率が向上する。
[0037]
 なお、本実施形態において、第1シェル24の、コア22の外表面からの平均膜厚は、第2シェル26の最小膜厚よりも小さい。ここで、第2シェル26の最小膜厚とは、第2シェル26を介して互いに接続している2つの量子ドット20の間における第2シェル26の膜厚、あるいは、第1シェル24から第2シェル26の外表面までの膜厚のうち最も小さい膜厚を指す。
[0038]
 ここで、図1の(c)に示すように、ある量子ドット20のコア22から、隣接する他の量子ドット20のコア22までの最短距離をdとおく。例えば、コア22がInP、第1シェル24および第2シェル26がZnSである場合、距離dの平均値は3nm以上であることが好ましい。また、例えば、コア22がCdSe、第1シェル24および第2シェル26がZnSである場合、距離dの平均値は1nm以上であることが好ましい。当該構成によれば、電子波動関数から導き出される、コア22からの電子の染み出しを、第1シェル24および第2シェル26によって効率的に低減できる。
[0039]
 次に、本実施形態に係る発光デバイス1の製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る発光デバイス1の製造方法について説明するためのフローチャートである。
[0040]
 はじめに、アレイ基板を形成する(ステップS1)。アレイ基板の形成は、基板に対し、サブ画素の位置に合せて、複数のTFTを形成することにより実行されてもよい。
[0041]
 次いで、第1電極4を形成する(ステップS2)。ステップS2において、例えば、ITO等の導電性を有する透明電極材料を、スパッタにより成膜した後、サブ画素の形状に合わせてパターニングすることにより、第1電極4をサブ画素ごとに形成してもよい。あるいは、透明電極材料を、蒸着マスクを使用し蒸着することにより、第1電極をサブ画素ごとに形成してもよい。
[0042]
 次いで、エッジカバー14を形成する(ステップS3)。エッジカバー14は、アレイ基板3および第1電極4上に塗布された後、隣接する第1電極4同士の間において、当該第1電極4の側面および周囲端部を覆う位置を残してパターニングされることにより得られてもよい。エッジカバー14のパターニングは、フォトリソグラフィによって行われてもよい。
[0043]
 次いで、第1電荷輸送層6を形成する(ステップS4)。第1電荷輸送層6は、インクジェット方式による塗り分け、マスクを使用した蒸着、またはフォトリソグラフィを使用したパターニングによって、サブ画素ごとに形成されてもよい。
[0044]
 次いで、発光層8を形成する(ステップS5)。発光層8の形成工程について、図3から図7を参照して、より詳細に説明する。
[0045]
 図3は、本実施形態における量子ドット層形成工程にあたる、発光層形成工程について説明するためのフローチャートである。
[0046]
 図4は、当該発光層形成工程における、経過時間と温度との関係を説明するためのグラフである。図4において、横軸は、発光層形成工程の経過時間、縦軸は温度を表している。図4における実線は、アレイ基板3の周囲の雰囲気の温度を示し、破線は、アレイ基板3上の量子ドット20の周囲の温度を示している。以下、単に「雰囲気」とは、アレイ基板3の周囲の雰囲気を示す。
[0047]
 図5、図6、および図7は、当該発光層形成工程を説明するための工程断面図である。以降、図5から図7を含む、本明細書における工程断面図は、図1の(b)の領域B、すなわち、第2発光素子2Gの第2発光層8Gの周囲に対応する位置における工程断面図を示す。しかしながら、本明細書における工程断面図を参照して説明する手法は、特に断りのない限り、他の発光素子の発光層8の形成方法に適用してもよい。
[0048]
 発光層形成工程までにおいて、図5の(a)に示すように、第1電荷輸送層6までが、アレイ基板3上に形成されている。発光層形成工程において、はじめに、図5の(b)に示す第1溶液28をアレイ基板3と重畳する位置に塗布する、第1塗布工程を実施する(ステップS10)。
[0049]
 第1溶液28は、図5の(b)に示すように、リガンド18が配位した複数の量子ドット20が、第1溶媒32中に分散した溶液である。第1溶媒32は、例えば、ヘキサンであってもよい。
[0050]
 第1塗布工程は、図4に示す、温度T0の雰囲気温度下において行う。第1溶液28の塗布が、温度T0の雰囲気温度下において実施されるために、図4に示すように、塗布される第1溶液28中の量子ドット20の周囲温度についても、温度T0となる。温度T0は、例えば、常温であってもよい。
[0051]
 次いで、第1溶液28が塗布されたアレイ基板3を、加熱炉等に投入し、雰囲気の加熱を開始する。ここで、雰囲気を、雰囲気温度が図4に示す第1温度T1以上となるまで加熱することにより、第1加熱工程を実施する(ステップS11)。
[0052]
 第1温度T1は、リガンド18の融点と、第1溶媒32の沸点とのうちの、高い温度である。なお、図4に示す温度TAは、リガンド18の融点と、第1溶媒32の沸点とのうちの、低い温度である。また、第1温度T1および温度TAは、温度T0より高い。
[0053]
 ここで、TOPOの融点は摂氏50度から摂氏54度であり、ヘキサンの沸点は摂氏68.5度から摂氏69.1度である。したがって、リガンド18がTOPOであり、第1溶媒がヘキサンである場合、温度TAはTOPOの融点であり、第1温度T1はヘキサンの沸点である。
[0054]
 雰囲気温度が、温度T0から温度TAになるまでは、図4に示すように、量子ドット20の周囲温度は、雰囲気温度の上昇に追従する。しかしながら、量子ドット20の周囲温度が温度TAまで上昇し、リガンド18の溶融または第1溶媒32の蒸発のうちの一方が開始すると、量子ドット20の周囲温度は、しばらく温度TAを維持する。
[0055]
 さらに雰囲気の加熱を進めることにより、リガンド18の溶融または第1溶媒32の蒸発のうちの一方が終了し、再び量子ドット20の周囲温度が上昇し始める。次いで、量子ドット20の周囲温度が第1温度T1まで上昇し、リガンド18の溶融または第1溶媒32の蒸発のうちの他方が開始すると、量子ドット20の周囲温度は、しばらく第1温度T1を維持する。
[0056]
 これにより、第1加熱工程によって、リガンド18の溶融および第1溶媒32の蒸発が完了する。第1温度T1が第1溶媒32の沸点である場合、第1加熱工程において、リガンド18が溶融した後に、第1溶媒32が気化する。一方、第1温度T1がリガンド18の融点である場合、第1加熱工程において、第1溶媒32が気化した後に、リガンド18が溶融する。
[0057]
 ここで、リガンド18の溶融が第1溶媒32の気化よりも早い場合、第1溶媒32の気化の直後において、第1電荷輸送層6の上層においては、固体のリガンド18が周囲に付着した量子ドット20の集合体が形成される。当該集合体は膜として不安定であるため、当該集合体の膜剥がれの遠因となる場合がある。したがって、第1加熱工程において、量子ドット20を含む、安定した膜を形成する観点から、リガンド18の溶融の後に、第1溶媒32が気化することが好ましい。
[0058]
 第1加熱工程の完了後、図6の(a)に示すように、アレイ基板3上から第1溶媒32が気化し、溶融したリガンド18中においては、量子ドット20が分散している。
[0059]
 次いで、雰囲気温度を第1温度T1よりも低下させる冷却工程を実施する(ステップS12)。本実施形態においては、冷却工程により、雰囲気温度が温度TAよりも低い温度TBとなるまで冷却を実施する。温度TBは、温度T0よりも高くてもよく、あるいは、温度T0と同一であってもよい。量子ドット20の周囲の温度は、雰囲気温度の低下開始直後は上昇を継続するものの、量子ドット20の周囲の温度が雰囲気温度に到達すると、そのまま雰囲気温度の低下に追従する。冷却工程の完了時点において、リガンド18が凝固しているため、図6の(a)に示すように、量子ドット20は、固体のリガンド18中に分散している。
[0060]
 冷却工程により、雰囲気温度が温度TBに到達した後、図6の(b)に示すように、第2溶液40をアレイ基板3と重畳する位置に塗布する、第2塗布工程を実施する(ステップS13)。
[0061]
 第2溶液40は、第2溶媒42と、有機材料44と、第1無機物前駆体30とを含む。第2溶媒42は、第1溶媒32と同一であってもよく、ヘキサンであってもよい。有機材料44は、従来公知の量子ドットのリガンドに使用される有機材料であってもよい。本実施形態においては、有機材料44として、リガンド18の材料と同一の材料を採用した場合を説明する。第1無機物前駆体30は、前述した第2シェル26と同じ材料を含む。第1無機物前駆体30は、例えば、塩化亜鉛および1-ドデカンチオールを含んでいてもよい。
[0062]
 次いで、第2溶液40が塗布されたアレイ基板3の加熱を再開する。雰囲気の再加熱により、雰囲気温度は、第4温度T4以上に上昇する。第4温度T4は、有機材料44の融点と、第2溶媒42の沸点とのうちの、高い温度である。なお、図4に示す温度TCは、有機材料44の融点と、第2溶媒42の沸点とのうちの、低い温度である。また、第4温度T4および温度TCは、温度T0より高い。なお、第4温度T4は第1温度T1と同一であってもよく、温度TCは温度TAと同一であってもよい。
[0063]
 雰囲気温度が、温度TBから温度TCになるまでは、図4に示すように、量子ドット20の周囲温度は、雰囲気温度の上昇に追従する。しかしながら、量子ドット20の周囲温度が温度TCまで上昇し、有機材料44の溶融または第2溶媒42の蒸発のうちの一方が開始すると、量子ドット20の周囲温度は、しばらく温度TCを維持する。
[0064]
 さらに雰囲気の加熱を進めることにより、有機材料44の溶融または第2溶媒42の蒸発のうちの一方が終了し、再び量子ドット20の周囲温度が上昇し始める。次いで、量子ドット20の周囲温度が第4温度T4まで上昇し、有機材料44の溶融または第2溶媒42の蒸発のうちの他方が開始すると、量子ドット20の周囲温度は、しばらく第4温度T4を維持する。
[0065]
 これにより、有機材料44の溶融および第2溶媒42の蒸発が完了する。有機材料44の溶融および第2溶媒42の蒸発の完了後、図7の(a)に示すように、リガンド18中には、量子ドット20と第1無機物前駆体30とが分散している。
[0066]
 上述した雰囲気の再加熱は、雰囲気温度が、図4に示す、第2温度T2になるまで継続する。ここで、雰囲気温度が第2温度T2に到達した時点から、加熱条件を調節し、雰囲気温度を第2温度T2付近に維持する、第2加熱工程を実施する(ステップS14)。
[0067]
 有機材料44の溶融および第2溶媒42の蒸発が完了した後、量子ドット20の周囲温度は、第4温度T4から上昇し、第2温度T2に到達する。ここで、雰囲気温度が第2温度T2に維持されているために、第2温度T2に到達後の量子ドット20の周囲温度についても、第2温度T2に維持される。
[0068]
 第2温度T2は、第1温度T1および第4温度T4より高く、第1無機物前駆体30が、熱化学反応により、第1シェル24の周囲にエピタキシャル成長するための温度である。このため、量子ドット20の周囲温度が第2温度T2に維持されている間、第1シェル24の周囲に、第1無機物前駆体30が、次第にエピタキシャル成長する。これにより、図7の(b)に示すように、それぞれの量子ドット20の第1シェル24の周囲に、第2シェル26が形成される。第1無機物前駆体30が、前述した、塩化亜鉛および1-ドデカンチオールを含む場合、第2温度T2は約摂氏200度である。
[0069]
 第2シェル26は、それぞれの量子ドット20の周囲において、第1シェル24の外表面から、次第に膜厚が大きくなるように形成される。ここで、互いに隣接する2つの量子ドット20において形成される第2シェル26の膜厚の合計が、当該量子ドット20の第1シェル24間の距離よりも大きくなった位置において、当該2つの量子ドット20が、第2シェル26を介して接続する。本実施形態においては、少なくとも一組の互いに隣接する量子ドット20同士が、第2シェル26を介して接続するまで、第2加熱工程が実施される。
[0070]
 以上により、図7の(b)に示すように、量子ドット20と第2シェル26とを備えた量子ドット構造体16が形成される。この後、加熱炉からアレイ基板3を取り出し、冷却させることにより、溶融したリガンド18が再び固化する。これにより、図7の(b)に示す、量子ドット構造体16とリガンド18とを備えた発光層8が得られる。
[0071]
 なお、本実施形態においては、第2発光層8Gの周囲における拡大断面図を参照して、発光層8の形成工程を説明した。しかしながら、第1発光層8R、第2発光層8G、および第3発光層8Bのそれぞれの形成方法における差異は、第1溶液28に含まれる材料の差異のみである。すなわち、形成される発光層8の発光色に関わらず、第1塗布工程、第1加熱工程、冷却工程、第2塗布工程、および第2加熱工程は、同一の手法によって実現してもよい。
[0072]
 ここで、第1塗布工程において、対応する発光素子の発光色ごとに、第1溶液28中の材料を変更し、インクジェット法によって第1溶液28を塗り分け、次いで、上述した第1加熱工程を実施してもよい。同様に、第2塗布工程において、対応する発光素子の発光色ごとに、第2溶液40中の材料を変更し、インクジェット法によって第2溶液40を塗り分け、次いで、上述した第2加熱工程を実施してもよい。これにより、互いに異なる発光色の発光素子を、連続した一度の加熱によって形成することができる。
[0073]
 次いで、第2電荷輸送層10を形成する(ステップS6)。第2電荷輸送層10は、全てのサブ画素に共通して、スピンコート等により塗布形成されてもよい。
[0074]
 最後に第2電極12を形成する(ステップS7)。第2電極12は、全てのサブ画素に共通して、蒸着等により成膜されてもよい。以上により、発光素子層2がアレイ基板3上に形成され、図1に示す発光デバイス1が得られる。
[0075]
 本実施形態における発光デバイス1の製造方法においては、コア/シェル構造を有する量子ドット20を塗布し、リガンド18中に分散させた後に、それぞれの量子ドット20の第1シェル24の周囲に、第2シェル26をエピタキシャル成長させている。このため、単にコア/シェル構造を有する量子ドット20を積層させた場合と比較して、それぞれの量子ドット20におけるシェルの膜厚を厚くすることができる。
[0076]
 例えば、コア/シェル構造を備えた量子ドットにおいて、当該量子ドットのコアに注入された電子の染み出しを低減するためには、シェルの膜厚を厚くすることが考えられる。しかしながら、シェルの膜厚が厚い量子ドットを積層して量子ドットを形成した場合、発光層の体積に対する、量子ドットの充填率が低くなる。このため、発光層において十分な量子ドットの密度を実現することが困難となり、発光素子の発光効率の低減につながる。
[0077]
 本実施形態における発光デバイス1の製造方法においては、薄い第1シェル24を備えた量子ドット20を塗布し、リガンド18中に分散させた後に、第2シェル26をそれぞれの量子ドット20に形成する。本実施形態における発光層8において、コア22の周囲に形成されるシェルの膜厚は、第1シェル24および第2シェル26の合計膜厚とみなすことができる。
[0078]
 これにより、同じ膜厚のシェルを備えた量子ドットを単に積層する場合と比較して、発光層8における量子ドット20の密度を向上させることができる。このため、量子ドット20からの電子の染み出しを低減しつつ、発光層8における量子ドット20の密度を向上させるため、発光デバイス1の発光効率の改善につながる。
[0079]
 また、本実施形態においては、少なくとも1組の量子ドット20が、第2シェル26を介して接続しているため、当該1組の量子ドット20においては、第2シェル26の外表面の面積が、接続していない場合と比較して小さくなる。すなわち、本実施形態においては、量子ドットを単に積層する場合と比較して、量子ドット構造体16の外表面の面積を小さくできる。
[0080]
 量子ドット構造体16の外表面の面積を小さくすることにより、外部から水分が侵入し得る、第2シェル26の表面の面積を小さくできる。このため、当該構成により、水分侵入による第2シェル26へのダメージ、ひいては、当該ダメージによる第2シェル26の量子ドット20の表面保護機能の低下を低減できる。
[0081]
 また、量子ドット構造体16の外表面にリガンド18が配位する場合、当該外表面の面積を小さくすることにより、水分侵入によりダメージを受け得るリガンド18を低減できる。したがって、当該ダメージにより、リガンド18による第2シェル26の保護機能が失われることによる、第2シェル26へのダメージを低減することができる。
[0082]
 さらに、量子ドット構造体16の外表面の面積を小さくすることにより、発光デバイス1の駆動時にダメージを受け得る第2シェル26の表面積を小さくできる。このため、当該構成により、発光デバイス1の駆動に伴う第2シェル26のダメージ、ひいては、当該ダメージによる、第2シェル26における欠陥の形成を低減できる。このため、量子ドット構造体16の外表面の面積を小さくすることにより、当該欠陥において電子と正孔との再結合が発生することに起因する、非発光過程の発生、ひいては、発光デバイス1の発光効率の低下が低減される。
[0083]
 以上のように、量子ドット構造体16の外表面の面積が小さいことにより、ダメージを受け得る量子ドット構造体16の外表面の面積を低減し、量子ドット構造体16のダメージによる量子ドット20の失活を低減できる。
[0084]
 ここで、非特許文献1によれば、剛体の球の充填における、ランダム最密充填率の平均値は、おおよそ63.66パーセントである。したがって、本実施形態において、発光層8における量子ドット構造体16の体積の割合は、63.7パーセント以上であることが好ましい。上記構成であれば、第1シェル24と第2シェル26との合計膜厚と等しい膜厚のシェルを備えた量子ドットをランダムに積層した場合と比較して、発光層8における量子ドット20の密度を向上させることができる。また、上記構成であれば、量子ドットをランダムに積層した場合と比較して、より効率よく、量子ドット構造体16の外表面の面積を低減できる。
[0085]
 ここで、量子ドット構造体16における全ての量子ドット20が、第2シェル26を介して接続するために必要な条件について説明する。
[0086]
 量子ドット20が、平面上に、m行n列に配列していると仮定する。ここで、互いに隣接する量子ドット20が接続しうる位置、すなわち、m行n列に配列した格子点同士の間の個数は、m×(n-1)+n×(m-1)=2mn-m-nとなる。
[0087]
 また、同一平面上の全ての量子ドット20が、第2シェル26を介して接続している場合に、互いに接続している量子ドット20の組数が最小であるとする。このような場合の1例として、全ての行間において、全ての互いに隣接する量子ドットの組が接続し、全ての列間のそれぞれにおいて、何れか1組の互いに隣接する量子ドット同士が接続している例が挙げられる。このような場合、互いに隣接する量子ドット20が接続している位置の個数は、m×(n-1)+1×(m-1)=mn-1となる。
[0088]
 したがって、上述した条件の場合、全て量子ドット20が第2シェル26を介して接続しうる位置に対する、実際に量子ドット20同士が第2シェル26を介して接続している位置の割合は、(mn-1)/(2mn-m-n)となる。
[0089]
 ここで、実際の発光デバイス1の発光層8に含まれる量子ドット20の個数は非常に膨大であるため、mおよびnは何れも十分に大きいとみなすことができる。このため、mおよびnを正に発散させると、上述した割合は、おおよそ0.5と導出できる。
[0090]
 ゆえに、同一平面上の全ての量子ドット20が、第2シェル26を介して接続し、かつ、全ての互いに隣接する量子ドット20の組のうち、第2シェル26を介して接続する組が最小である場合、当該組は全ての組のうちの50パーセント程度であるとみなせる。したがって、全ての互いに隣接する量子ドット20の組のうち、第2シェル26を介して接続している組が50パーセントを超えた場合には、積層された各層における全ての量子ドット20が、第2シェル26を介して接続している蓋然性が高いといえる。
[0091]
 全ての量子ドット20が、第2シェル26を介して接続している場合には、量子ドット20を1つの原子とみなした場合、量子ドット構造体16は、量子ドット20同士が第2シェル26によって接続された結晶構造を形成しているとみなせる。当該構成により、より効率よく、量子ドット構造体16の外表面の面積を低減できる。ゆえに、量子ドット構造体16において、互いに隣接する量子ドット20同士が、第2シェル26の結晶構造により接続している比率が、50パーセントよりも高く、100パーセント以下であることが好ましい。
[0092]
 本実施形態において、第1シェル24の、コア22の外表面からの平均膜厚は、第2シェル26の最小膜厚よりも小さい。このため、第1加熱工程と第2加熱工程との間において、量子ドット20をより密に積層し、その後の第2加熱工程において、膜厚が比較的厚い第2シェル26を形成することができる。
[0093]
 したがって、当該加熱工程においては、量子ドット20を密に積層した状態において、電子波動関数から導き出される、コア22からの電子の染み出しを十分に低減できる膜厚を有する、第1シェル24および第2シェル26を形成することができる。ゆえに、当該構成により、第1シェル24および第2シェル26の膜厚を十分に確保しつつ、量子ドット構造体16における量子ドット20の密度を高めることができる。
[0094]
 本実施形態においては、アレイ基板3、第1電極4、エッジカバー14、および第1電荷輸送層6の形成後に、発光層8の形成を行う。このため、アレイ基板3、第1電極4、エッジカバー14、および第1電荷輸送層6は、上述した加熱工程における加熱に対する耐熱性を有した材料を含むことが好ましい。
[0095]
 アレイ基板3は、例えば、十分に高い歪点を有する、アルカリガラス等を含むガラス基板であってもよい。また、アレイ基板3は、ポリイミド等、ガラス転移温度の高い有機材料を含む有機基板であってもよい。
[0096]
 また、例えば、発光素子層2がボトムエミッション型の発光素子を形成し、第1電極4が陽極である場合、第1電極4にはITOが一般的に使用される。しかしながら、上述した加熱工程における加熱による比抵抗の上昇を低減するために、第1電極4は、FTOとITOとの複合材料等、耐熱性の高い材料を含むことが好ましい。また、第1電荷輸送層6が正孔輸送層である場合には、NiO、MgNiO、Cr 、Cu O、またはLiNbO 等、有機材料よりも耐熱性の高い無機材料を含むことが好ましい。
[0097]
 なお、ある程度の高さおよび傾斜を有する形状を実現するために、エッジカバー14には、一般的に、有機材料が用いられる。本実施形態においては、上述した加熱工程の加熱によるダメージを低減する観点から、エッジカバー14は、ポリイミド等、ガラス転移温度の高い有機材料を含むことが好ましい。
[0098]
 また、第2電荷輸送層10および第2電極12は、発光層8の形成後に形成される。このため、第2電荷輸送層10および第2電極12の材料には、上述した加熱工程における加熱に対する耐熱性を有していない材料を採用することが可能である。例えば、第2電荷輸送層10は、従来公知の電子輸送層に使用される材料を含んでいてもよく、第2電極12は、従来公知の陰極に使用される材料を含んでいてもよい。
[0099]
 〔実施形態2〕
 図8の(a)は、本実施形態に係る発光デバイス1の概略上面図である。図8の(b)は、図8の(a)における、A-A線矢視断面図である。図8の(c)は、図8の(b)における、領域Bにおける拡大断面図である。
[0100]
 本実施形態に係る発光デバイス1は、前実施形態に係る発光デバイス1と比較して、発光素子層2の各層の積層順が逆転している点を除いて、同一の構成を備えていてもよい。すなわち、本実施形態に係る発光素子層2は、第2電極12上に、第2電荷輸送層10と、発光層8と、第1電荷輸送層6と、第1電極4とを、下層から順次積層して備える。
[0101]
 ここで、前実施形態に係る発光素子1と比較して、第2電極12および第2電荷輸送層10のそれぞれは、エッジカバー14によって分離されている。特に、本実施形態においては、第2電極12は、エッジカバー14によって、第1発光素子2R用の第2電極12R、第2発光素子2G用の第2電極12G、および第3発光素子2B用の第2電極12Bに分離されている。また、第2電荷輸送層10は、エッジカバー14によって、第1発光素子2R用の第2電荷輸送層10R、第2発光素子2G用の第2電荷輸送層10G、および第3発光素子2B用の第2電荷輸送層10Bに分離されている。
[0102]
 なお、前実施形態に係る発光素子1と比較して、第1電荷輸送層6と、第1電極4とは、エッジカバー14によって分離されず、共通して形成されている。
[0103]
 本実施形態においては、第1電極4は透明電極であり、第2電極12は反射電極であってもよい。このため、発光層8からの光は、第1電荷輸送層6および第1電極4を透過して、発光面DSから発光デバイス1の外部に出射される。このため、発光デバイス1は、トップエミッション型の発光デバイスとして構成されている。このため、本実施形態において、アレイ基板3は、必ずしも透明基板である必要はない。
[0104]
 本実施形態に係る発光デバイス1は、図2に示す各工程を、ステップS1、ステップS7、ステップS3、ステップS6、ステップS5、ステップS4、ステップS2の順に、前実施形態と同様に実施することにより製造できる。このため、本実施形態においては、アレイ基板3、第2電極12、エッジカバー14、および第2電荷輸送層10の形成後に、発光層8の形成を行う。このため、アレイ基板3、第2電極12、エッジカバー14、および第2電荷輸送層10は、上述した加熱工程における加熱に対する耐熱性を有した材料を含むことが好ましい。
[0105]
 例えば、発光素子層2がトップエミッション型の発光素子を形成し、第2電極12が陰極である場合、第2電極12は、上述した加熱工程における加熱に対する耐熱性を高める観点から、融点の高い金属材料を含むことが好ましい。例えば、第2電極12は、Al、またはAg等の金属、あるいは、AgMg等の金属間化合物を含むことが好ましい。また、第2電荷輸送層10が電子輸送層である場合には、MgO等、有機材料よりも耐熱性の高い無機材料を含むことが好ましい。なお、上述した材料は、一般に、陰極材料および電子輸送層材料として使用される材料でもある。
[0106]
 また、第1電荷輸送層6および第1電極4は、発光層8の形成後に形成される。このため、第1電荷輸送層6および第1電極4の材料には、上述した加熱工程における加熱に対する耐熱性を有していない材料を採用することが可能である。例えば、第1電荷輸送層6は、従来公知の正孔輸送層に使用される材料を含んでいてもよく、第1電極4は、ITO等、従来公知の陽極に使用される、透明の導電性材料を含んでいてもよい。
[0107]
 本実施形態に係る発光デバイス1は、前実施形態に係る発光デバイス1と比較して、発光素子層2の各層の材料を、従来使用される材料から変更する必要性が低い。このため、本実施形態に係る発光デバイス1は、前実施形態に係る発光デバイス1と比較して、材料選択の自由度を改善することができる。
[0108]
 〔実施形態3〕
 図9の(a)は、本実施形態に係る発光デバイス1の概略上面図である。図9の(b)は、図9の(a)における、A-A線矢視断面図である。図9の(c)は、図9の(b)における、領域Bにおける拡大断面図である。
[0109]
 本実施形態に係る発光デバイス1は、実施形態1に係る発光デバイス1と比較して、発光層8がリガンド18を含まない点を除いて、同一の構成を備えていてもよい。発光層8は、図9の(c)に示すように、量子ドット構造体16によって充填されない空間に、空隙34を備えていてもよい。
[0110]
 本実施形態に係る発光デバイス1は、図2に示す各工程のうち、ステップS5、すなわち、発光層形成工程を除いて、同一の方法によって製造される。ここで、本実施形態に係る発光デバイス1の発光層形成工程について、図10から図12を参照して、より詳細に説明する。
[0111]
 図10は、本実施形態における量子ドット層形成工程にあたる、発光層形成工程について説明するためのフローチャートである。図11は、当該発光層形成工程における、経過時間と温度との関係を説明するためのグラフである。図4と同様に、図11における実線は、アレイ基板3の周囲の雰囲気温度を示し、破線は、アレイ基板3上の量子ドット20の周囲の温度を示している。図12は、当該発光層形成工程を説明するための工程断面図である。
[0112]
 本実施形態に係る発光層形成工程において、ステップS10からステップS14までは、実施形態1において説明した方法と同一の方法を実行する。ステップS14の完了時点において、図12の(a)に示すように、第1電荷輸送層6の上層には、量子ドット構造体16とリガンド18とが形成されている。
[0113]
 本実施形態においては、ステップS14に次いで、さらに雰囲気温度を上昇させて、雰囲気温度が第3温度T3以上となるように、雰囲気を加熱する、第3加熱工程を実施する(ステップS15)。第3温度T3は、第2温度T2よりも高く、かつ、リガンド18の沸点に相当する。例えば、リガンド18が前述のTOPOである場合、第3温度T3は、摂氏411.2度である。
[0114]
 第3加熱工程における雰囲気の加熱により、量子ドット20の周囲温度が第3温度T3に到達すると、リガンド18の蒸発が開始し、量子ドット20の周囲温度がしばらく第3温度T3を維持する。これにより、第3加熱工程において、リガンド18が気化し、図12の(b)に示すように、リガンド18を備えていない発光層8が得られる。
[0115]
 本実施形態に係る発光デバイス1は、発光層8にリガンド18を備えていない。一般に、量子ドットに配位するリガンドは有機材料を含むことが多い。このため、リガンド18を備えていない本実施形態における発光層8は、無機材料に対する有機材料の含有率が低く、水分浸透等による劣化に強くなる。したがって、本実施形態に係る発光デバイス1は、より信頼性を改善することが可能である。
[0116]
 ここで、上述した非特許文献1の記載から、剛体球がランダム最密充填した空間における、当該剛体球が占めない空隙の割合の平均値は、約36.34体積パーセントとなる。したがって、例えば、発光層8において、無機物に対する有機物の体積比率が、36.3体積パーセント以下であることが好ましい。この場合には、従来の量子ドットをランダム最密充填し、当該量子ドット間の空隙を有機リガンドによって充填した発光層と比較して、発光層8中の有機物の割合を低減できる。したがって、上記構成により、より効率的に発光層8の信頼性を向上させることが可能である。
[0117]
 なお、本明細書において、「リガンドを備えていない」との表現は、実質的にリガンドを備えていないことを指す。例えば、本実施形態における発光層8は、不純物またはリガンドの残渣が、発光層8の信頼性を著しく低下させない程度に残留していてもよい。具体的には、本実施形態における発光層8は、上述した不純物またはリガンドの残渣を、発光層8の全体の体積に対し、3体積パーセント程度含んでいてもよい。
[0118]
 また、本実施形態においても、前述までの実施形態と同様に、量子ドット構造体16の外表面の面積を小さくすることができる。これにより、本実施形態における第3加熱工程において、加熱によるダメージを受け得る第2シェル26の表面積を小さくできる。このため、当該構成により、上述のように、第2シェル26のダメージに伴う第2シェル26の欠陥の形成、ひいては、当該欠陥による発光デバイス1の発光効率の低下を低減できる。
[0119]
 〔変形例〕
 図13の(a)は、本実施形態の変形例に係る発光デバイス1の概略上面図である。図13の(b)は、図13の(a)における、A-A線矢視断面図である。図13の(c)は、図13の(b)における、領域Bにおける拡大断面図である。
[0120]
 本変形例に係る発光デバイス1は、本実施形態に係る発光デバイス1と比較して、発光層8の空隙34が、第2シェル26によって充填されている点を除いて、同一の構成を備えていてもよい。
[0121]
 図14は、本変形例における発光層形成工程を説明するための工程断面図である。本変形例に係る発光デバイス1は、本実施形態における発光層形成工程と同一の方法によって製造される。ただし、本変形例においては、第2溶液40に含まれる第1無機物前駆体30の濃度がより高くなっている。このため、第2加熱工程において、第2シェル26がより厚く形成される。
[0122]
 したがって、第2加熱工程が完了した時点においては、図14の(a)に示すように、空隙34が第2シェル26によって充填されることにより、溶融したリガンド18が上層へ押し出されるため、量子ドット構造体16の上層にリガンド18が残留する。この後、第3加熱工程を実施することにより、リガンド18の層が除去され、図13の(b)に示す、空隙34が第2シェル26によって充填された発光層8が得られる。
[0123]
 本変形例に係る発光デバイス1においては、空隙34が第2シェル26によって充填されている。このため、本変形例に係る量子ドット構造体16は、本実施形態における量子ドット構造体16と比較して、発光層8の全体の体積に対する、体積の割合が高い。すなわち、本変形例における発光層8は、量子ドット20のコア22の周囲に形成されるシェルの、発光層8における充填率が、より向上している。したがって、上記構成により、本変形例に係る発光デバイス1は、発光層8の信頼性をより向上させることができる。
[0124]
 なお、本変形例においては、リガンド18の層を、第3加熱工程によって除去する方法を挙げたが、これに限られない。例えば、第2加熱工程の実施後、アレイ基板3の冷却を行い、リガンド18の層を、加熱を行わない従来の有機物層の除去方法を用いて除去してもよい。この場合、量子ドット構造体16に対し、第3加熱工程のような高温プロセスを省略して、リガンド18を除去できるため、量子ドット構造体16に対するダメージをより低減することができる。
[0125]
 〔実施形態4〕
 本実施形態に係る発光デバイス1は、前実施形態に係る発光デバイス1と比較して、同一の構成を備えていてもよい。すなわち、本実施形態に係る発光デバイス1は、図9に示す構成を備えていてもよい。ただし、本実施形態において、量子ドット20は、自身が発する光の波長よりも短波長の光を吸収する。特に、量子ドット20は、紫外光を吸収する。さらに、量子ドット20は、光を吸収する際に発熱する。
[0126]
 本実施形態に係る発光デバイス1は、図2に示す各工程のうち、ステップS5、すなわち、発光層形成工程を除いて、同一の方法によって製造される。ここで、本実施形態に係る発光デバイス1の発光層形成工程について、図15から図20を参照して、より詳細に説明する。
[0127]
 図15は、本実施形態における量子ドット層形成工程にあたる、発光層形成工程について説明するためのフローチャートである。図16は、図4と同様に、当該発光層形成工程における、経過時間と温度との関係を説明するためのグラフである。図16に示す各温度は、図4に示す各温度と対応している。ただし、図4と比較して、図16における実線は、アレイ基板3上の量子ドット20の温度を示し、破線は、当該量子ドット20の周囲の温度を示している。図17、図18、図19、および図20は、当該発光層形成工程を説明するための工程断面図である。
[0128]
 発光層形成工程までにおいて、図17の(a)に示すように、第1電荷輸送層6までが、アレイ基板3上に形成されている。発光層形成工程において、前実施形態と同様に、第1塗布工程を実施する(ステップS10)。第1塗布工程において塗布される第1溶液28は、前実施形態における第1溶液28と同一の構成を備えていてもよい。
[0129]
 次いで、アレイ基板3上の第1溶液28に対し、紫外線等の光を照射する、第1光照射を行い、量子ドット20を加熱する、第1光照射工程を実施する(ステップS21)。第1光照射工程においては、量子ドット20を、量子ドット20が図16に示す第1温度T1以上となるまで加熱する。
[0130]
 本実施形態においては、量子ドット20の周囲温度は、図16に示すように、量子ドット20の温度の上昇にわずかに遅れて追従する点を除いて、前実施形態における量子ドット20の温度と同様に推移する。これにより、第1光照射工程によって、リガンド18の溶融および第1溶媒32の蒸発が完了し、図18の(a)に示すように、量子ドット20が、リガンド18中に分散する。
[0131]
 次いで、第1光照射を停止することにより、量子ドット20の温度を第1温度T1よりも低下させる冷却工程を実施する(ステップS12)。本実施形態においても、前実施形態と同様に、冷却工程により、量子ドット20の温度が温度TBとなるまで冷却を実施する。量子ドット20の周囲の温度は、量子ドット20の温度の低下開始直後は上昇を継続するものの、量子ドット20の周囲の温度が量子ドット20の温度に到達すると、そのまま量子ドット20の温度の低下に追従する。
[0132]
 冷却工程により、量子ドット20の温度が温度TBに到達した後、図18の(b)に示すように、第2溶液40をアレイ基板3と重畳する位置に塗布する、第2塗布工程を実施する(ステップS13)。第2塗布工程において塗布される第2溶液40は、前実施形態における第2溶液40と同一の構成を備えていてもよい。
[0133]
 次いで、図19の(a)に示すように、アレイ基板3上の量子ドット20に対し、紫外線等の光を照射する、第2光照射を行い、量子ドット20を再度加熱する、第2光照射工程を実施する(ステップS24)。第2光照射工程により、量子ドット20の温度は、第4温度T4以上に上昇する。
[0134]
 図16に示すように、量子ドット20の周囲温度は、量子ドット20の温度の上昇にわずかに遅れて追従する点を除いて、前実施形態における量子ドット20の温度と同様に推移する。これにより、第2光照射工程によって、有機材料44の溶融および第2溶媒42の蒸発が完了し、図19の(b)に示すように、リガンド18中には、量子ドット20と第1無機物前駆体30とが分散する。
[0135]
 第2光照射工程における量子ドット20の加熱は、量子ドット20の温度が、図16に示す、第2温度T2になるまで継続する。ここで、量子ドット20の温度が第2温度T2に到達した時点から、図19の(b)に示すように、第3光照射を行い、量子ドット20の温度を第2温度T2付近に維持する、第3光照射工程を実施する(ステップS25)。
[0136]
 第3光照射においては、第1光照射および第2光照射と同様に、紫外光を照射してもよく、また、第2光照射において照射される紫外光よりも、単位時間当たりのエネルギー量が小さい紫外光を照射してもよい。第3光照射工程においては、量子ドット20の温度が第2温度T2に維持されているために、第2温度T2に到達後の量子ドット20の周囲温度についても、第2温度T2に維持される。このため、第3光照射工程において、前実施形態における第2加熱工程と同様に、図20の(a)に示す、量子ドット20と第2シェル26とを備えた量子ドット構造体16が形成される。
[0137]
 なお、本実施形態における各光照射工程において、量子ドット20の発熱とアレイ基板3の周囲環境への放熱との収支が釣り合う場合には、量子ドット20の周囲の温度が、ある温度において略一定となる。ここで、量子ドット20の発熱とアレイ基板3の周囲環境への放熱との収支が釣り合う温度が第2温度T2となるように、各光照射の照射エネルギーを調節してもよい。またこれにより、第1光照射、第2光照射、および第3光照射のそれぞれにおいて照射される光の強度の条件を同一としてもよい。
[0138]
 次いで、図20の(a)に示すように、さらに第4光照射を行い、量子ドット20の温度が第3温度T3以上となるように、量子ドット20を加熱する、第4光照射工程を実施する(ステップS26)。第4光照射においては、第1光照射、第2光照射、および第3光照射と同様に、紫外光を照射してもよく、また、第3光照射において照射される光よりも、単位時間当たりのエネルギー量が大きい光を照射してもよい。第4光照射工程により、前実施形態における第3加熱工程と同様に、リガンド18が気化し、図20の(b)に示す、リガンド18を備えていない発光層8が得られる。
[0139]
 ここで、本実施形態においても、第1塗布工程および第2塗布工程のそれぞれにおいて、対応する発光素子の発光色ごとに、各溶液中の材料を変更し、インクジェット法によって各溶液を塗り分けてもよい。これにより、互いに異なる発光色の発光素子を、連続した一度の光照射によって形成することができる。
[0140]
 なお、第2塗布工程において塗布される第2溶液40における、第1無機物前駆体30の濃度は、対応する発光素子の発光色に応じて異なっていてもよい。特に、第2発光素子2Gに対応する位置に塗布された第2溶液40における、第1無機物前駆体30の濃度は、第1発光素子2Rに対応する位置に塗布された第2溶液40における、第1無機物前駆体30の濃度よりも低いことが好ましい。さらに、第2発光素子2Gに対応する位置に塗布された第2溶液40における、第1無機物前駆体30の濃度は、第3発光素子2Bに対応する位置に塗布された第2溶液40における、第1無機物前駆体30の濃度よりも高いことが好ましい。
[0141]
 量子ドット20の周囲に第2シェル26をエピタキシャル成長させる工程において、光照射量が同一である場合、量子ドット20の粒径が大きいほど、同じ膜厚の第2シェル26を形成するために必要な第1無機物前駆体30の量が多くなる。また、一般に、量子ドット20の発する光の波長が長いほど、コア22の粒径、ひいては量子ドット20の粒径は大きくなる。
[0142]
 したがって、上記構成のように、対応する発光素子の発する光の波長が長いほど、第1溶液28における第1無機物前駆体30の濃度を高めることにより、各発光層の形成条件を近づけることができる。このため、互いに粒径が異なる量子ドット20間において、第2シェル26の膜厚のばらつきを抑制できる。
[0143]
 また、発光層形成工程においては、第1塗布工程において、第1電極4と重畳する位置に第1溶液28を塗布した後、第1光照射において、レーザー照射による部分露光を行ってもよい。この後、部分露光を行った位置と異なる位置と重畳する位置から、第1溶液28を除去する第1除去工程を行ってもよい。同様に、第2塗布工程において、第1電極4と重畳する位置に第2溶液40を塗布した後、第2光照射と、第3光照射とのそれぞれにおいて、レーザー照射による部分露光を行ってもよい。この後、部分露光を行った位置と異なる位置と重畳する位置から、第2溶液40を除去する第2除去工程を行ってもよい。これにより、レーザー照射により部分露光された位置のみに、発光層8を形成することができる。
[0144]
 さらに、上述した部分露光は、フォトマスクを使用して実施してもよい。フォトマスクを使用した部分露光により、発光層8を形成する方法について、図21、図22、および図23を参照して、より詳細に説明する。
[0145]
 図21、図22、および図23は、発光層形成工程において、フォトマスクを使用した部分露光により、発光層8を形成する手法を説明するための工程断面図である。なお、図7および図8は、第2発光層8Gが形成される位置のみならず、第1発光層8Rおよび第3発光層8Bが形成される位置においても図示している。
[0146]
 図21の(a)に示すように、発光層形成工程の実施直前においては、アレイ基板3上に、エッジカバー14によって分断された、第1電極4および第1電荷輸送層6が形成されている。ここでは、第1塗布工程と第1光照射工程との間において、図21の(b)に示すフォトマスクMの設置を行う。
[0147]
 フォトマスクMは、各光照射工程において照射される光を遮蔽する機能を備える。フォトマスクMは、アレイ基板3の上方に設置された際に、第1電極4Gと重畳する位置においてのみ、開口が形成されるように、当該開口が形成されている。すなわち、図21の(b)に示すように、アレイ基板3の上方にフォトマスクMを設置した場合、第1電極4Gと重畳しない位置における第1溶液28の上方が、フォトマスクMによって遮蔽される。
[0148]
 フォトマスクMを設置した後に、第1光照射工程を実施することにより、図21の(c)に示すように、第1電極4Gと重畳する位置における第1溶液28にのみ、光照射が実施される。このため、第1光照射工程においては、第1電極4Gと重畳する位置においてのみ、量子ドット20の加熱が実施される。したがって、図21の(d)に示すように、第1電極4Gと重畳する位置のみにおいて、リガンド18の溶融および第1溶媒32の気化が生じる。
[0149]
 次いで、フォトマスクMをアレイ基板3の上方から除去した後、図22の(a)に示すように、光照射を行った位置とは異なる位置と重畳する位置における第1溶液28を除去する第1除去工程を実施する。次いで、冷却工程と第2塗布工程とを順に実施することにより、図22の(b)に示すように、アレイ基板3と重畳する位置に第2溶液40が塗布される。
[0150]
 第2塗布工程に次いで、フォトマスクMを再度設置し、第2光照射工程、第3光照射工程、および第4光照射工程を順に実施する。これにより、図22の(c)に示すように、第1電極4Gと重畳する位置における第2溶液40にのみ、光照射が実施される。このため、第1光照射工程においては、第1電極4Gと重畳する位置においてのみ、量子ドット20の加熱が実施される。したがって、図23の(a)に示すように、第1電極4Gと重畳する位置のみにおいて、第2発光層8Gが形成される。
[0151]
 次いで、フォトマスクMをアレイ基板3の上方から再度除去した後、図23の(b)に示すように、光照射を行った位置とは異なる位置と重畳する位置における第2溶液40を除去する第2除去工程を実施する。これにより、第2発光層8Gの形成工程が完了する。
[0152]
 なお、発光層形成工程において、上述したレーザー照射またはフォトマスクを使用した部分露光を、各光照射の手法として採用した場合、上述した第1塗布工程から第2除去工程までを、対応する発光素子の発光色に応じて繰り返し実施してもよい。例えば、図23の(b)に示す第2発光層8Gの形成後、第1発光層8Rおよび第3発光層8Bの形成のために、第1塗布工程から第2除去工程までを、残り2回ずつ、計3回実施してもよい。
[0153]
 ここで、形成する発光層8の種類に応じて、第1塗布工程および第2塗布工程において塗布する各溶液の種類を変更し、かつ、アレイ基板3の上方に設置するフォトマスクMについても変更を行う。具体的には、各光照射工程において、形成する発光層8の位置と重畳する位置においてのみ、光照射が実施されるように、発光層8の種類に応じて、フォトマスクMの開口の位置を変更する。
[0154]
 以上により、図23の(c)に示す、第1発光層8R、第2発光層8G、および第3発光層8Bを備えた発光層8が形成される。
[0155]
 なお、本実施形態においては、エッジカバー14によって発光素子ごとに分断された発光層8の形成を行う手法について説明した。しかしながら、レーザー照射またはフォトマスクを使用した部分露光を、各光照射に採用した場合、第1電極4のそれぞれに重畳する位置に対し、個別に光照射を実施することが可能である。このために、エッジカバー14によって発光層8を分断しない場合であっても、各発光素子に対応した発光層8を個別に形成することができる。したがって、各光照射において部分露光を採用する場合、エッジカバー14の高さは第1電極4のエッジを覆う高さまであればよい。
[0156]
 なお、本実施形態においては、上記発光層形成工程において、赤色光を発する第1発光素子と、緑色光を発する第2発光素子と、青色光を発する第3発光素子とのそれぞれにおける発光層8を形成する方法を説明した。しかしながら、上記発光層形成工程においては、発光素子の一部が、他の発光素子の一部と異なる種類の発光層8を備えた場合における発光層8の形成工程に適用できる。
[0157]
 さらに、本実施形態においては、第1塗布工程から第2除去工程までを繰り返し実施する度に、第4光照射工程を実施する例を挙げたが、これに限られない。例えば、第1塗布工程から第2除去工程までの繰り返しにおいては、第4光照射工程を実施せず、発光素子に対応する位置における量子ドット構造体16が形成された後に、アレイ基板3と重畳する位置に対し、第4光照射を実施してもよい。これにより、発光素子に対応する位置におけるリガンド18の除去を、まとめて実施することが可能である。
[0158]
 本実施形態において、第1発光素子2Rと、第2発光素子2Gと、第3発光素子2Bとのそれぞれに対応する位置に対する、第3光照射を実施する時間は、発光素子の発光色によって異なっていてもよい。特に、第2発光素子2Gに対応する位置に対する第3光照射の照射時間は、第1発光素子2Rに対応する位置に対する第3光照射の照射時間よりも短いことが好ましい。さらに、第2発光素子2Gに対応する位置に対する第3光照射の照射時間は、第3発光素子2Bに対応する位置に対する第3光照射の照射時間よりも長いことが好ましい。
[0159]
 第1塗布工程において、インクジェット法により第1溶液28を塗り分け、全塗布領域に光照射を行う場合、第3光照射工程の途中において、フォトマスクをアレイ基板3の上方に設置し、光照射を再開してもよい。これにより、第3光照射の照射時間を、発光素子の発光色に応じて異ならせることが可能である。また、上述した部分露光を行う場合には、各部分露光において、第3光照射の照射時間を異ならせてもよい。
[0160]
 量子ドット20の周囲に第2シェル26をエピタキシャル成長させる工程において、量子ドット20の粒径が大きいほど、第2シェル26の成長速度は遅くなる。すなわち、量子ドット20の周囲に、同じ膜厚の第2シェル26を形成する場合、量子ドット20の粒径が大きいほど、必要な第3光照射の時間が長くなる。
[0161]
 したがって、上記構成のように、対応する発光素子の発光色に応じて、光照射の時間を異ならせることにより、複数の発光素子の間において、各発光層の形成条件を近づけることができる。このため、互いに粒径が異なる量子ドット20間において、第2シェル26の膜厚のばらつきを抑制できる。
[0162]
 本実施形態においても、前述までの実施形態と同様に理由から、発光デバイス1の発光効率を改善し、量子ドット構造体16のダメージによる量子ドット20の失活を低減できる。
[0163]
 本実施形態においても、アレイ基板3、第1電極4、エッジカバー14、および第1電荷輸送層6の形成後に、発光層8の形成を行う。しかしながら、発光層8の形成のための加熱は、光照射による量子ドット20の発熱により実現する。このため、発光層8の局所的な加熱が実現する。ゆえに、アレイ基板3、第1電極4、エッジカバー14、および第1電荷輸送層6は、上述した光照射工程における加熱に対し、高い耐熱性を有する必要は必ずしもない。したがって、アレイ基板3、第1電極4、エッジカバー14、および第1電荷輸送層6は、従来公知の材料を含んでいてもよい。
[0164]
 例えば、アレイ基板3は、上述した材料の他に、PET等の柔軟な材料を備えていてもよく、フレキシブルな発光デバイス1を実現してもよい。他にも、発光素子層2がボトムエミッション型の発光素子を形成し、第1電極4が陽極である場合、第1電極4にはITOを使用してもよい。また、第1電荷輸送層6が正孔輸送層である場合には、NiO、MgNiO、Cr2O3、Cu2O、またはLiNbO3等の無機材料を含んでいてもよい。
[0165]
 また、本実施形態においても、発光素子層2の形成順が逆順となっていてもよい。すなわち、発光素子層2がトップエミッション型の発光素子を形成し、第2電極12が陰極であってもよい。この場合においては、アレイ基板3、第2電極12、エッジカバー14、および第2電荷輸送層10の形成後に、発光層8の形成を行う。
[0166]
 発光素子層2がトップエミッション型の発光素子を形成し、第2電極12が陰極である場合、第2電極12は、上述した各光照射において照射される光についても反射する機能を有することが好ましい。当該構成により、上述した各光照射において、直接量子ドット20に照射された光のみならず、一度第2電極12まで到達し、第2電極12において反射された光についても、各光照射における光として有効に使用できる。このため、本実施形態における光照射工程は、前実施形態における光照射工程と比較して、量子ドット20に十分な光を照射するために必要な光照射の強度を低減することができる。
[0167]
 上述した光照射において照射される光の反射性を高める観点から、金属材料を含むことが好ましい。第2電極12は、少なくとも、表面に反射性の金属薄膜を含んでいればよい。例えば、第2電極12は、Al、またはAg等の金属、あるいは、AgMg等の金属間化合物を含んでいてもよい。
[0168]
 〔実施形態5〕
 図24の(a)は、本実施形態に係る発光デバイス1の概略上面図である。図24の(b)は、図24の(a)における、A-A線矢視断面図である。図24の(c)は、図24の(b)における、領域Bにおける拡大断面図である。
[0169]
 本実施形態に係る発光デバイス1は、実施形態1に係る発光デバイス1と比較して、第1電極4が発光層8側の表面に酸化物半導体膜4Aを備える点、および発光層8の第2シェル26がアレイ基板3側に偏在している点について異なっている。上記点を除いて、本実施形態に係る発光デバイス1は、実施形態1に係る発光デバイス1と、同一の構成を備えていてもよい。
[0170]
 本実施形態においては、各第1電極4は、表面に酸化物半導体膜4Aを備えている。酸化物半導体膜4Aは、例えば、ITO等の透明酸化物半導体を含んでいてもよい。本実施形態においては、酸化物半導体膜4Aは、光を吸収し発熱する機能を有する。特に、酸化物半導体膜4Aに、例えば、紫外光を照射することにより、酸化物半導体膜4Aが発熱することが好ましい。
[0171]
 なお、本実施形態においては、第1電極4が、表面に酸化物半導体膜4Aの薄膜を備える場合を図示しているが、これに限られない。例えば、第1電極4は、全体が酸化物半導体膜4Aと同一の材料からなっていてもよい。
[0172]
 また、本実施形態において、発光層8における第2シェル26の密度は、アレイ基板3の反対側と比較して、アレイ基板3側において高い。このため、リガンド18は、アレイ基板3の反対側の第2シェル26の周囲に偏析する。したがって、発光層8において、アレイ基板3側における無機物の密度が、アレイ基板3と反対側における無機物の密度よりも高い。
[0173]
 本実施形態に係る発光デバイス1は、前実施形態に係る発光デバイス1の製造方法と、同一の方法によって製造される。本実施形態に係る発光デバイス1の製造方法においては、前実施形態に係る発光デバイス1の製造方法と比較して、発光層形成工程における、各部材の温度推移のみが異なる。
[0174]
 図25は、図4と同様に、当該発光層形成工程における、経過時間と温度との関係を説明するためのグラフである。図25に示す各温度は、図4に示す各温度と対応している。ただし、図4と比較して、図25における実線は、発光層8の下層、特に、酸化物半導体膜4Aの温度を示し、点線は、アレイ基板3上の量子ドット20の温度を示す。また、図25において、当該量子ドット20の周囲の温度のうち、下層側、すなわち、酸化物半導体膜4A側の量子ドット20の周囲の温度を破線にて、上層側、すなわち、酸化物半導体膜4Aとは反対側の量子ドット20の周囲の温度を一点鎖線にて示している。
[0175]
 各光照射工程においては、酸化物半導体膜4Aが照射された光を吸収することにより、酸化物半導体膜4Aが加熱される。各光照射工程において、量子ドット20の温度は、酸化物半導体膜4Aの温度上昇に遅れて上昇し始める。これは、量子ドット20が、照射された光を若干吸収し、発熱するためである。しかしながら、本実施形態においては、同強度の光照射を実施した場合、量子ドット20の光の吸収量は、酸化物半導体膜4Aの光の吸収量と比較して低い。さらに、量子ドット20は、吸収した光のエネルギーの一部を、熱に変換するほか、光にも変換する。一方、酸化物半導体膜4Aは、吸収した光のエネルギーのほとんどを熱に変換する。このため、量子ドット20の温度上昇は、酸化物半導体膜4Aの温度上昇よりも遅くなる。
[0176]
 加熱された酸化物半導体膜4Aからの熱は、次第に第1電荷輸送層6の上層まで伝搬する。ここで、加熱された酸化物半導体膜4Aからの熱は、上層側、すなわち、酸化物半導体膜4Aとは反対側における量子ドット20の周囲よりも、下層側、すなわち、酸化物半導体膜4A側における量子ドット20の周囲に早く伝搬する。したがって、下層側の量子ドット20の周囲温度の上昇は、上層側の量子ドット20の周囲温度の上昇よりも早く発生する。
[0177]
 したがって、特に、第3光照射工程においては、下層側の量子ドット20の周囲温度は、上層側の量子ドット20の周囲温度の上昇よりも早く第2温度T2に到達する。すなわち、第3光照射工程において、第1電荷輸送層6の上層は、酸化物半導体膜4A側における温度が、酸化物半導体膜4Aと反対側における温度よりも高くなる。当該温度条件において、第2シェル26が量子ドット20の周囲にエピタキシャル成長するために、上層側の量子ドット20の周囲と比較して、下層側の量子ドット20の周囲において、先に第2シェル26の形成が優先的に進行する。したがって、第1電荷輸送層6の上層において、第2シェル26の密度は、酸化物半導体膜4Aの反対側よりも、酸化物半導体膜4A側において高くなる。
[0178]
 なお、本実施形態における各光照射工程においても、酸化物半導体膜4Aの発熱とアレイ基板3の周囲環境への放熱との収支が釣り合う場合には、量子ドット20の周囲の温度が、ある温度において略一定となる。ここで、酸化物半導体膜4Aの発熱とアレイ基板3の周囲環境への放熱との収支が釣り合う温度が第2温度T2となるように、各光照射の照射エネルギーを調節してもよい。またこれにより、第1光照射、第2光照射、および第3光照射のそれぞれにおいて照射される光の強度の条件を同一としてもよい。
[0179]
 本実施形態においても、前述までの実施形態と同様に理由から、発光デバイス1の発光効率を改善し、量子ドット構造体16のダメージによる量子ドット20の失活を低減できる。また、本実施形態においても、上述した、レーザー照射またはフォトマスクを使用した部分露光によって、発光層8を発光素子ごとに形成することができる。
[0180]
 本実施形態においても、酸化物半導体膜4Aを含む第1電極4の形成後、エッジカバー14、および第1電荷輸送層6を形成し、次いで、発光層8の形成を行う。このため、発光層8の形成工程において、第1電極4、エッジカバー14、および第1電荷輸送層6には、酸化物半導体膜4Aからの熱が伝搬する。ゆえに、第1電極4、エッジカバー14、および第1電荷輸送層6は、上述した光照射工程における加熱に対する耐熱性を有した材料を含むことが好ましい。
[0181]
 特に、発光素子層2がボトムエミッション型の発光素子を形成し、第1電極4が陽極である場合、第1電極4にはITOが一般的に使用される。ITOは、紫外光を吸収し、さらに可視光に対する透過率が高いために好ましい。さらに、上述した加熱工程における加熱による比抵抗の上昇を低減するために、第1電極4は、FTOとITOとの複合材料等、耐熱性の高い材料を含むことが好ましい。
[0182]
 また、本実施形態においても、発光素子層2の形成順が逆順となっていてもよい。すなわち、発光素子層2がトップエミッション型の発光素子を形成し、第2電極12が陰極であってもよい。この場合においては、アレイ基板3、第2電極12、エッジカバー14、および第2電荷輸送層10の形成後に、発光層8の形成を行う。この場合、第2電極12、エッジカバー14、および第2電荷輸送層10は、上述した光照射工程における加熱に対する耐熱性を有した材料を含むことが好ましい。
[0183]
 上述した各実施形態においては、量子ドット20を含む量子ドット層が、発光層8である場合について説明を行った。しかしながら、これに限られず、例えば、第1電荷輸送層6または第2電荷輸送層10が量子ドット20を含む量子ドット層であってもよい。このように、各電荷輸送層が量子ドット20を含む場合、当該量子ドット20は、キャリアを輸送する機能を付与されてもよい。この場合、従来の量子ドットを含む電荷輸送層と比較して、各電荷輸送層における量子ドット20の安定性が向上するため、当該各電荷輸送層のキャリア輸送の効率が改善し、ひいては、発光デバイス1の発光効率の改善につながる。上述した量子ドット20を含む各電荷輸送層についても、各実施形態における量子ドット層形成工程と同一の手法によって形成することができる。
[0184]
 また、上述した各実施形態においては、複数の発光素子を備え、表示面DSを有する表示デバイスを例示して、発光デバイス1の構成を説明している。しかしながら、これに限られず、上述した各実施形態における発光デバイス1は、単一の発光素子を備えた発光デバイスであってもよい。
[0185]
 本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。

符号の説明

[0186]
1     発光デバイス
2     発光素子層
2R    第1発光素子
2G    第2発光素子
2B    第3発光素子
4     第1電極
6     第1電荷輸送層
8     発光層(量子ドット層)
10    第2電荷輸送層
12    第2電極
16    量子ドット構造体
18    リガンド
20    量子ドット
22    コア
24    第1シェル
26    第2シェル
28    第1溶液
30    第1無機物前駆体
32    第1溶媒
34    空隙
40    第2溶液
42    第2溶媒
44    有機材料
T1~T4 第1~第4温度

請求の範囲

[請求項1]
 第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間の量子ドット層とを含む発光素子を基板上に備えた発光デバイスの製造方法であって、
 前記量子ドット層を形成する量子ドット層形成工程を備え、
 前記量子ドット層形成工程は、
  第1溶媒と、複数の量子ドットと、該量子ドットのそれぞれと配位結合するリガンドとを含む第1溶液を前記基板と重畳する位置に塗布する第1塗布工程と、
  前記第1塗布工程に次いで、前記基板の周囲の雰囲気温度を第1温度以上に加熱する第1加熱工程と、
  前記第1加熱工程に次いで、前記雰囲気温度を前記リガンドの融点と前記第1溶媒の沸点のうちの低い温度以下に冷却する冷却工程と、
  前記冷却工程に次いで、第2溶媒と、第1無機物前駆体とを含む第2溶液を前記基板と重畳する位置に塗布する第2塗布工程と、
  前記第2塗布工程に次いで、前記雰囲気温度を第2温度まで加熱する第2加熱工程と、
 を備え、
 前記量子ドットは、コアと、該コアを被膜する第1シェルとを備え、
 前記第1温度は、前記リガンドの融点と前記第1溶媒の沸点とのうちの高い温度であり、
 前記第2温度は、前記第1温度より高く、かつ、前記第1無機物前駆体が、前記第1シェルの周囲にエピタキシャル成長し、前記第1シェルを被膜する第2シェルを形成する温度であり、
 前記第2加熱工程において、少なくとも一組の互いに隣接する前記量子ドット同士が、前記第2シェルを介して接続する発光デバイスの製造方法。
[請求項2]
 前記第1温度が前記第1溶媒の沸点であって、前記第1加熱工程において、前記リガンドが溶融した後に、前記第1溶媒が気化する請求項1に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項3]
 前記第1温度が前記リガンドの融点であって、前記第1加熱工程において、前記第1溶媒が気化した後に、前記リガンドが溶融する請求項1に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項4]
 前記量子ドット層形成工程は、さらに、前記第2加熱工程に次いで、前記雰囲気温度を第3温度以上に加熱する第3加熱工程をさらに備え、
 前記第3温度は、前記第2温度より高く、かつ、前記リガンドの沸点であり、前記第3加熱工程において、前記リガンドが気化する請求項1から3の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項5]
 前記第3加熱工程の実施後においては、前記第3加熱工程の実施前と比較して、前記量子ドット層の全体の体積に対する無機物の密度が高い請求項4に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項6]
 第1電極と、第2電極と、前記第1電極および前記第2電極の間の量子ドット層とを含む発光素子を基板上に備えた発光デバイスの製造方法であって、
 前記量子ドット層を形成する量子ドット層形成工程を備え、
 前記量子ドット層形成工程は、
  コアと、該コアを被膜する第1シェルとを備えた複数の量子ドットと、該量子ドットのそれぞれと配位結合するリガンドと、第1溶媒とを含む第1溶液を前記基板と重畳する位置に塗布する第1塗布工程と、
  前記第1塗布工程に次いで、前記第1溶液が塗布された前記位置に、前記基板の上方から第1光照射を行い、前記リガンドを溶融させ、かつ、前記第1溶媒を気化させる第1光照射工程と、
  前記第1光照射工程に次いで、前記量子ドットの温度を前記リガンドの融点と前記第1溶媒の沸点のうちの低い温度以下に冷却する冷却工程と、
  前記冷却工程に次いで、第2溶媒と、第1無機物前駆体とを含む第2溶液を前記基板と重畳する位置に塗布する第2塗布工程と、
  前記第2塗布工程に次いで、第2光照射を行い、前記量子ドットの温度を上昇させる第2光照射工程と、
  前記第2光照射工程に次いで、第3光照射を行い、前記第1無機物前駆体を、前記第1シェルの周囲にエピタキシャル成長させて、前記第1シェルを被膜する第2シェルを形成する第3光照射工程と、
 を備え、
 前記第3光照射工程において、少なくとも一組の互いに隣接する前記量子ドット同士が、前記第2シェルを介して接続する発光デバイスの製造方法。
[請求項7]
 前記第1光照射工程から前記第3光照射工程までのそれぞれの工程において、前記量子ドットが、照射された光を吸収し発熱する請求項6に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項8]
 前記量子ドット層形成工程に先立って、表面に反射性の金属薄膜を含む前記第1電極を形成する電極形成工程を備えた請求項7に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項9]
 前記量子ドット層形成工程に先立って、表面に酸化物半導体膜を含む前記第1電極を、前記基板上に形成する電極形成工程を備えた請求項6に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項10]
 前記第1光照射工程から前記第3光照射工程までのそれぞれの工程において、前記酸化物半導体膜が、照射された光を吸収し発熱する請求項9に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項11]
 前記第1光照射工程において、前記リガンドが溶融した後に、前記第1溶媒が気化する請求項6から10の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項12]
 前記第1光照射工程において、前記第1溶媒が気化した後に、前記リガンドが溶融する請求項6から10の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項13]
 前記第3光照射において、前記第2光照射において照射される光よりも、単位時間当たりのエネルギー量が小さい光を照射する請求項6から12の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項14]
 前記第1光照射と前記第2光照射とを、連続して実施する請求項6から13の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項15]
 前記発光素子は複数であり、前記量子ドット層形成工程において、前記発光素子ごとに前記量子ドット層を形成し、かつ、前記発光素子の一部に、前記発光素子の他の一部と異なる種類の量子ドット層を形成する請求項6から14の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項16]
 前記発光素子は、赤色光を発する第1発光素子と、緑色光を発する第2発光素子と、青色光を発する第3発光素子とを備えた請求項15に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項17]
 前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記第3発光素子とのそれぞれに対応する位置に塗布された前記第2溶液における、前記第1無機物前駆体の濃度が、対応する前記発光素子の発光色によって異なる請求項16に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項18]
 前記第2塗布工程において、前記第2発光素子に対応する位置に塗布された前記第2溶液における、前記第1無機物前駆体の濃度は、前記第1発光素子に対応する位置に塗布された前記第2溶液における、前記第1無機物前駆体の濃度よりも低く、前記第3発光素子に対応する位置に塗布された前記第2溶液における、前記第1無機物前駆体の濃度よりも高い請求項17に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項19]
 前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記第3発光素子とのそれぞれに対応する位置に対する前記第3光照射の照射時間が、対応する前記発光素子の発光色によって異なる請求項16から18の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項20]
 前記第2発光素子に対応する位置に対する第3光照射の照射時間は、前記第1発光素子に対応する位置に対する第3光照射の照射時間よりも短く、前記第3発光素子に対応する位置に対する第3光照射の照射時間よりも長い請求項19に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項21]
 前記発光素子のそれぞれが前記第1電極を個別に備え、前記第1塗布工程において、前記第1溶液を、前記第1電極のそれぞれと重畳する位置に、インクジェット法により塗布し、前記第2塗布工程において、前記第2溶液を、前記第1電極のそれぞれと重畳する位置に、インクジェット法により塗布する請求項15から20の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項22]
 前記第1光照射と、前記第2光照射と、前記第3光照射とのそれぞれにおいて、レーザー照射による部分露光を行う請求項6から21の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項23]
 前記第1光照射と、前記第2光照射と、前記第3光照射とのそれぞれにおいて、フォトマスクを使用した部分露光を行う請求項6から21の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項24]
 前記部分露光において光照射が実施される位置は、前記第1電極と重畳する位置である請求項22または23に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項25]
 前記第1光照射工程と前記第2塗布工程の間に、前記第1光照射において光照射を行った位置とは異なる位置と重畳する位置における前記第1溶液を除去する第1除去工程と、前記第3光照射工程に次いで、前記第1光照射と、前記第2光照射と、前記第3光照射とのそれぞれにおいて光照射を行った位置とは異なる位置と重畳する位置における前記第2溶液を除去する第2除去工程とをさらに備えた請求項22から24の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項26]
 前記第1塗布工程と、前記第1光照射工程と、前記第1除去工程と、前記第2光照射工程と、前記第3光照射工程と、前記第2除去工程とを、対応する前記発光素子の発光色に応じて、この順に繰り返し実施した後、第4光照射を行い、前記リガンドを気化させる第4光照射工程をさらに備えた請求項25に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項27]
 前記第4光照射において、前記第3光照射において照射される光よりも、単位時間当たりのエネルギー量が大きい光を、前記第1塗布工程において、前記第1溶液を塗布した位置と重畳する位置に照射する請求項26に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項28]
 前記量子ドット層形成工程は、さらに、前記第3光照射工程に次いで、第4光照射を行い、前記リガンドを気化させる第4光照射工程をさらに備えた請求項6から21の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項29]
 前記第4光照射において、前記第3光照射において照射される光よりも、単位時間当たりのエネルギー量が大きい光を照射する請求項28に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項30]
 前記第2溶液が、さらに前記リガンドを含む請求項1から29の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項31]
 前記量子ドット層形成工程の実施後においては、前記第1シェルの平均膜厚が、前記第2シェルの最小膜厚よりも小さい請求項1から30の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項32]
 前記第1シェルと前記第2シェルとが、同一材料からなる請求項1から31の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項33]
 前記量子ドット層形成工程において、前記第2シェルを、多結晶として形成する請求項1から32の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項34]
 前記量子ドット層形成工程の実施後においては、前記量子ドットと前記第2シェルとを含む量子ドット構造体において、互いに隣接する前記量子ドット同士が、前記第2シェルの結晶構造により接続している比率が、50パーセントよりも高く、100パーセント未満である請求項1から33の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項35]
 前記量子ドット層形成工程の実施後においては、前記量子ドット層全体の体積に対する、前記量子ドットと前記第2シェルとを含む量子ドット構造体の体積の割合が63.7パーセント以上である請求項1から34の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項36]
 前記コアがInPであり、前記第1シェルおよび前記第2シェルがZnSである請求項1から35の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項37]
 前記量子ドット層形成工程の実施後においては、ある前記量子ドットの前記コアから、隣接する他の前記量子ドットの前記コアまでの最短距離の平均値が、3nm以上である請求項36に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項38]
 前記コアがCdSeであり、前記第1シェルおよび前記第2シェルがZnSである請求項1から35の何れか1項に記載の発光デバイスの製造方法。
[請求項39]
 前記量子ドット層形成工程の実施後においては、ある前記量子ドットの前記コアから、隣接する他の前記量子ドットの前記コアまでの最短距離の平均値が、1nm以上である請求項38に記載の発光デバイスの製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]

[ 図 22]

[ 図 23]

[ 図 24]

[ 図 25]