処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

出願の表示

1. WO2021065583 - 金属帯急冷装置及び金属帯急冷方法並びに金属帯製品の製造方法

Document

明 細 書

発明の名称 金属帯急冷装置及び金属帯急冷方法並びに金属帯製品の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039  

実施例

0040   0041   0042   0043   0044   0045  

符号の説明

0046  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11  

図面

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : 金属帯急冷装置及び金属帯急冷方法並びに金属帯製品の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、金属帯を連続的に搬送しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備や、金属帯を連続的に搬送しながら鍍金を行う溶融亜鉛鍍金設備において、急冷後の金属帯の温度を自在に制御することができる急冷装置及び急冷方法並びに金属帯製品の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 鋼帯をはじめとする金属帯(金属帯製品)の製造においては、金属帯を加熱後に冷却し、相変態を起こさせる等して材質の造り込みを行う。このような冷却は、金属帯を連続的に搬送しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備や、金属帯を搬送しながら鍍金を行う溶融亜鉛鍍金設備において行われる。
[0003]
 近年、自動車業界では車体の軽量化と衝突安全性の両立を目的として、薄肉化した高張力鋼帯(ハイテン)の需要が増している。高張力鋼帯の製造時には、鋼帯を急速に冷却する技術が重要となる。鋼帯の冷却速度が最も速い技術の1つとして、水焼入れ法が知られている。水焼入れ法では、加熱された鋼帯を水中に浸漬させると同時に、水中内に設けられたクエンチノズルにより冷却水を鋼帯に噴射することで、鋼帯の急冷が行われる。鋼帯の急冷時には、急冷後の鋼帯の温度を制御することで、鋼帯の機械的特性を向上させることが可能である。具体的には鋼帯の延性を向上させることが可能である。このような鋼帯の急冷方法として、従来、様々な手法が提案されている。
[0004]
 例えば、特許文献1では、浸漬水中にスリットノズルを多段に設け、各スリットノズルを金属帯進行方向に対し離間させることで、金属帯の被冷却面に衝突させた冷却水の噴流を、各ノズル間の隙間からノズル後方に流出させることにより、金属帯を幅方向に均一に冷却する手法が提案されている。また、特許文献2では、鋼帯が下方から上方へ移動する縦パス中で、急速冷却後に急速加熱を行うことで、冷却停止温度を一定に保持する手法が提案されている。また、特許文献3では、イオン性液体を含有している液体を用いた150~300℃の浸漬槽内に浸漬することで、冷却停止温度を制御する手法が提案されている。また、特許文献4では、ストリップを所定の長さで水平ないし緩傾斜状に通板し、ストリップ下面に冷却流体の噴流を接触させて、ストリップを片面から冷却する手法が提案されている。また、特許文献5では、ストリップ下面への冷却液体の噴出をストリップ幅方向及び/又はライン方向で遮断して、ストリップの有効冷却幅及び/又は有効冷却長を調整する手法が提案されている。また、特許文献6では、鋼板の上方の位置に水噴射装置と空気噴射装置を配設し、鋼板上面の滞留水を排出する手法が提案されている。また、特許文献7では、冷却装置の入側上流と出側下流に水切り装置を配設し、鋼板上面の滞留水を排出する手法が提案されている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開昭59-153843号公報
特許文献2 : 特許第5991282号公報
特許文献3 : 特開2008-19505号公報
特許文献4 : 特開昭58-153733号公報
特許文献5 : 特開昭60-194022号公報
特許文献6 : 特開2001-353515号公報
特許文献7 : 特開2012-51013号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 しかし、特許文献1に記載された方法では、急冷後の鋼帯の温度が水温と同一となり、冷却停止温度を制御できないという問題がある。また、特許文献2に記載された方法では、重力の影響によって冷却装置下方のロールから漏水が発生し、冷却開始位置や冷却停止温度を制御できないという問題がある。また、特許文献3に記載された方法では、イオン性液体を用いることで冷却停止温度を制御する構成を採用しているが、このイオン性液体が水と比較して非常に高価であるという問題がある。そのため、このような特定の液体を用いなくても冷却停止温度を制御できる技術の確立が希求されている。また、特許文献4又は5に記載された方法では、冷却装置の入側上流と出側下流に滞留水が発生し、冷却開始位置や冷却停止温度を制御できないという問題がある。また、下面のみの冷却のため、上面と下面で温度差が発生するという問題もある。また、特許文献6又は7に記載された方法では、滞留水を排出するために高圧の水を噴射する必要があり、水切り水によって鋼帯の温度が水温まで冷却されてしまい、冷却停止温度を制御できないという問題がある。
[0007]
 本発明は、このような課題を解決するためになされたものである。すなわち、金属帯(例えば、鋼帯)を連続的に搬送しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備や、金属帯を連続的に搬送しながら鍍金を行う溶融亜鉛鍍金設備において、急冷後の金属帯の温度を自在に制御することができる急冷装置及び急冷方法並びに金属帯製品の製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明者らは、このような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下のような知見と着想を得た。
[0009]
 まず、水中での冷却では、急冷後の金属帯の温度が水温と同一となってしまうため、大気中で冷却を行う必要がある。このとき、金属帯の急冷では、必ずしも金属帯を水中に浸漬させる必要は無く、水等により十分な水量をノズルから噴射すれば、水中で噴射するのと同等の冷却能力が得られる。また、上方から下方へ移動する縦パスや、下方から上方へ移動する縦パスでは、冷却装置下方で水切りを行っても、重力によって冷却装置下方に漏水が発生するため、水平方向に移動する横パスで実施する必要がある。このとき、下面のみの冷却では上面と下面で温度差が発生してしまうため、上面と下面の両方から冷却を行う必要がある。また、高圧の水切り水を使用すると、鋼帯の温度が水温まで冷却されてしまうため、水切りにはロールとエアーノズル等の気体噴出ノズルを併用して使用するのが最適である。また、コスト面を考慮して、特定のイオン性液体を用いなくても水等により冷却停止温度を制御できるようにする必要もある。
[0010]
 本発明は、上記のような知見と着想に基づいており、以下のような特徴を有している。
[1]金属帯を水平方向に搬送しながら冷却する急冷装置であって、
 前記金属帯の両面側から前記金属帯に冷却流体を噴射する1組または水平方向に配列した複数組のノズルを備えた冷却流体噴射装置と、
 前記冷却流体が噴射された前記金属帯上の滞留流体を排出する冷却流体排出ロールと、
 前記ノズルと前記金属帯が通過する金属帯搬送ラインとの間かつ前記金属帯搬送ラインの両面側に設けられ、水平方向に移動することで前記冷却流体による前記金属帯の冷却開始位置を調整して、該冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離を制御する可動マスキングと
 を備えている金属帯急冷装置。
[2]前記冷却流体排出ロールの出側に気体噴出ノズルを備えている前記[1]に記載の金属帯急冷装置。
[3]前記可動マスキングは気体噴出ノズルを備えている前記[1]または[2]に記載の金属帯急冷装置。
[4]前記冷却流体を噴射する前記ノズルの軸線方向と前記金属帯のなす角度が10°以上60°以下である前記[1]~[3]のいずれかに記載の金属帯急冷装置。
[5]連続的に水平方向に搬送する金属帯の表面に複数のノズルから冷却流体を噴射することで冷却する急冷方法であって、冷却流体排出ロールによって前記金属帯上の滞留流体を排出しつつ、可動マスキングによって前記冷却流体による前記金属帯の冷却開始位置を調整して、該冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離を制御する金属帯急冷方法。
[6]前記金属帯の冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離を、前記金属帯の搬送速度、冷却開始温度、目標とする冷却停止温度、前記金属帯の冷却速度に基づいて設定する前記[5]に記載の金属帯急冷方法。
[7]前記金属帯の搬送速度をv(mm/s)、冷却開始温度をT (℃)、目標とする冷却停止温度をT (℃)、前記金属帯の冷却速度をCV(℃/s)として、前記金属帯の冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離b(mm)を下式で表す前記[6]に記載の金属帯急冷方法。
   b=(T -T )v/CV
[8]前記金属帯の冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離を、前記金属帯の搬送速度、冷却開始温度、目標とする冷却停止温度、冷却条件、前記金属帯の厚みに基づいて設定する前記[5]に記載の金属帯急冷方法。
[9]前記金属帯の搬送速度をv(mm/s)、冷却開始温度をT (℃)、目標とする冷却停止温度をT (℃)とし、冷却条件により定まる定数α(℃・mm/s)と、前記金属帯の厚みt(mm)を用いて、前記金属帯の冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離b(mm)を下式で表す前記[8]に記載の金属帯急冷方法。
   b=(T -T )vt/α
[10]金属帯製品を製造する際に、前記[5]~[9]のいずれかに記載の急冷方法を用いて急冷を行う金属帯製品の製造方法。
[11]前記金属帯製品は、高強度冷延鋼帯、溶融亜鉛鍍金鋼帯、電気亜鉛鍍金鋼帯、合金化溶融亜鉛鍍金鋼帯のいずれかである前記[10]に記載の金属帯製品の製造方法。

発明の効果

[0011]
 本発明によれば、金属帯を連続的に搬送しながら焼鈍を行う連続焼鈍設備や、金属帯を連続的に搬送しながら鍍金を行う溶融亜鉛鍍金設備において、急冷後の金属帯の温度を自在に制御することができる。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] 図1は、本発明に係る急冷装置を示す図である。
[図2] 図2は、本発明例の結果(冷却停止温度)を示すグラフである。
[図3] 図3は、比較例1の結果(冷却停止温度)を示すグラフである。
[図4] 図4は、比較例2の結果(冷却停止温度)を示すグラフである。
[図5] 図5は、比較例3の結果(冷却停止温度)を示すグラフである。
[図6] 図6は、比較例4の結果(冷却停止温度)を示すグラフである。

発明を実施するための形態

[0013]
 本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[0014]
 図1は本発明に係る金属帯急冷装置11を示す図である。この金属帯急冷装置11は、連続焼鈍炉の均熱帯の出側に設けられた冷却設備や、溶融亜鉛鍍金設備の溶融亜鉛鍍金浴の出側に設けられた冷却設備に適用されうる。
[0015]
 本発明に係る金属帯急冷装置11は、連続的に水平方向(以下、長手方向とも記す。)に搬送する金属帯1の上面側から金属帯1に水やアルコール等の冷媒(冷却流体)211を噴射し急速冷却を行う上部冷却流体噴出ノズル21(冷却流体噴射装置)を備える。また、金属帯急冷装置11は、連続的に水平方向に搬送する金属帯1の下面側から金属帯1に水やアルコール等の冷媒(冷却流体)222を噴射し急速冷却を行う下部冷却流体噴出ノズル22(冷却流体噴射装置)を備える。ノズル21およびノズル22は1組または水平方向に配列した複数組が設けられる。金属帯急冷装置11は、上部冷却流体噴出ノズル21と金属帯1が通過する金属帯搬送ラインとの間に設けられて、水平方向に移動する上部可動マスキング31(可動マスキング)を備える。上部可動マスキング31は、冷却流体による金属帯1の冷却開始位置(例えば、後述の入側上部気体噴出ノズル41と入側下部気体噴出ノズル42の金属帯1への噴流衝突位置)を調整して、該冷却開始位置から後述の上部冷却流体排出ロールまでの距離を制御する。また、下部冷却流体噴出ノズル22と金属帯1が通過する金属帯搬送ラインとの間に設けられて、水平方向に移動する下部可動マスキング32(可動マスキング)を備える。下部可動マスキング32は、冷却流体による金属帯1の冷却開始位置を調整して、該冷却開始位置から後述の下部冷却流体排出ロールまでの距離を制御する。金属帯急冷装置11は、上部冷却流体噴出ノズル21の出側に設けられており、上記冷却流体が噴射された金属帯1上面の滞留水や滞留アルコール等の滞留流体を排出する上部冷却流体排出ロール51(冷却流体排出ロール)を備える。また、金属帯急冷装置11は、下部冷却流体噴出ノズル22の出側に設けられており、上記冷却流体が噴射された金属帯1下面の滞留水や滞留アルコール等の滞留流体を排出する下部冷却流体排出ロール52(冷却流体排出ロール)を備えている。
[0016]
 また、本発明に係る金属帯急冷装置11は、上部可動マスキング31に設けられて金属帯1の入側上面側から金属帯1に空気や窒素等の気体411を噴射する入側上部気体噴出ノズル41(気体噴出ノズル)を備えていてもよい。入側上部気体噴出ノズル41は、金属帯1上面の滞留流体が上部可動マスキング31の位置にまで逆流してくるのを防止する。また、金属帯急冷装置11は、下部可動マスキング32に設けられて金属帯1の入側下面側から金属帯1に空気や窒素等の気体422を噴射する入側下部気体噴出ノズル42(気体噴出ノズル)を備えていてもよい。入側下部気体噴出ノズル42は、金属帯1下面の滞留流体が下部可動マスキング32の位置にまで逆流してくるのを防止する。また、金属帯急冷装置11は、金属帯1の出側上面側から金属帯1に空気や窒素等の気体611を噴射する出側上部気体噴出ノズル61(気体噴出ノズル)を備えていてもよい。出側上部気体噴出ノズル61は、金属帯1上面と上部冷却流体排出ロール51の間から漏洩した滞留流体を排出する。また、金属帯急冷装置11は、金属帯1の出側下面側から金属帯1に空気や窒素等の気体622を噴射する出側下部気体噴出ノズル62(気体噴出ノズル)を備えていてもよい。出側下部気体噴出ノズル62は、金属帯1下面と下部冷却流体排出ロール52の間から漏洩した滞留流体を排出する。
[0017]
 上部冷却流体噴出ノズル21と下部冷却流体噴出ノズル22の噴射方向は、図1に示すように金属帯1の進行方向に向かって斜めにすることが好ましい。すなわち、上記噴射方向の水平方向成分が金属帯1の進行方向であるように、ノズルから斜めに噴射されることが好ましい。こうすることで、噴流内には金属帯1との随伴流が生じ、冷却流体の金属帯1に対する密着性が向上するとともに、噴流の乱れを防止し、冷却長を一定に保ち易くなる。金属帯1上面における水の接触位置をなるべく均一にして、長手方向における冷却むらをなくすという観点からは、複数組のノズルが設けられている場合には、各上部冷却流体噴出ノズル21を同じ方向に同じ角度だけ傾けることが好ましい。また、金属帯1下面における水の接触位置をなるべく均一にして、長手方向における冷却むらをなくすという観点からは、複数組のノズルが設けられている場合には、各下部冷却流体噴出ノズル22を同じ方向に同じ角度だけ傾けることが好ましい。
[0018]
 図1に示すように上部冷却流体噴出ノズル21の傾斜角度としては、上部冷却流体噴出ノズル21の軸線方向(冷却流体の噴出方向)と金属帯1とのなす角度のうち、鋭角となる角度21aを設定することができる。尚、冷却流体は一定の広がりをもってノズルから吐出されるが、上記冷却流体の噴出方向としてはノズルから吐出された冷却流体の中心軸線の方向を採用することができる。角度21aは、上部冷却流体噴出ノズル21からの冷却流体の噴出量、上部冷却流体噴出ノズル21の開口部と金属帯1の上面との距離等に応じて設定することができる。同様にして、下部冷却流体噴出ノズル22の傾斜角度22aを設定することができる。
[0019]
 角度21aと角度22aの好適例としては、10°以上が挙げられる。また、この好適例としては、60°以下が挙げられる。角度21aや角度22aが10°以上であれば、上部水噴出ノズル21や下部水噴出ノズル22と金属帯1との距離を近くする必要が無く、上部可動マスキング31や下部可動マスキング32を設置するスペースの確保が容易になる。また、角度21aや角度22aが60°以下であれば、滞留流体が金属帯の搬送方向に流れ易くなる。また、角度21aや角度22aを20°以上とすることがさらに好ましい。また、角度21aや角度22aを45°以下とすることがさらに好ましい。尚、上部冷却流体噴出ノズル21や下部冷却流体噴出ノズル22を傾斜させる際には、冷却流体を斜めに噴射できるように、上部冷却流体噴出ノズル21や下部冷却流体噴出ノズル22の少なくとも先端を傾斜させていればよい。
[0020]
 また、上部水噴出ノズル21と下部水噴出ノズル22夫々の金属帯1への距離が同じである場合に角度21aや角度22aが同一であると、重力の影響によって、上下の冷却流体の着水位置が異なってしまうことがある。そのため、この重力の影響を考慮すると、角度21aよりも角度22aを大きくすること(角度21a<角度22a)が好ましい。
[0021]
 可動マスキング(上部可動マスキング31、下部可動マスキング32)は冷却流体の圧力で変形しなければ材質や厚さ等は問わないが、ノズルの設置スペースとの兼ね合いからなるべく薄い方が好ましい。また可動マスキングは鋼帯等の金属帯1に冷却流体が衝突するのを防ぐ目的で使用されるため、金属帯1の幅よりも広くなくてはならない。また可動マスキングは冷却開始位置(入側上部気体噴出ノズル41と入側下部気体噴出ノズル42の金属帯1への噴流衝突位置)を制御するために、長手方向(水平方向)に可動させる必要がある。
この可動マスキングが金属帯急冷装置11には設けられているため、特殊なイオン性液体等を用いずに、低コストで冷却停止温度を制御することができる。
[0022]
 また、可動マスキングが備える気体噴出ノズル(入側上部気体噴出ノズル41と入側下部気体噴出ノズル42)の噴射方向は、図1に示すように金属帯1の進行方向に向かって斜めにすることが好ましい。すなわち、上記噴射方向の水平方向成分が金属帯1の進行方向であるように、ノズルから斜めに噴射されることが好ましい。また、入側上部気体噴出ノズル41の傾斜角度41aは角度21aと同一又はほぼ同一の角度、入側下部気体噴出ノズル42の傾斜角度42aは角度22aと同一又はほぼ同一の角度とすることがさらに好ましい。こうすることで、上部可動マスキング31や下部可動マスキング32の位置にまで、滞留流体が逆流してくるのを防止し易くなる。
[0023]
 冷却流体排出ロールは、上部冷却流体排出ロール51と下部冷却流体排出ロール52との間に金属帯1を挟み込むことにより、金属帯1上から滞留流体を排出する。
冷却流体排出ロール(上部冷却流体排出ロール51と下部冷却流体排出ロール52)の材質はゴムであることが好ましく、特にウレタンゴムであることが好ましい。また、ロール径は100mm以上であることが好ましい。また、ロール径は400mm以下であることが好ましい。また、ニップ圧は5kg/cm以上であることが好ましい。また、ニップ圧は、20kg/cm以下であることが好ましい。冷却流体排出ロールは非駆動ロールとすることもできるが、駆動ロールである方が好ましい。
[0024]
 冷却流体排出ロールの出側に設けられる気体噴出ノズル(出側上部気体噴出ノズル61と出側下部気体噴出ノズル62)の噴射方向は、図1に示すように金属帯1の進行方向の逆方向に向かって斜めにすることが好ましい。すなわち、上記噴射方向の水平方向成分が金属帯1の進行方向の逆方向であるように、ノズルから斜めに噴射されることが好ましい。こうすることで、冷却流体排出ロールから漏洩した滞留水等の滞留流体を排出し易くなる。
[0025]
 出側上部気体噴出ノズル61の傾斜角度61a(ノズル61により噴出される気体の噴射方向と金属帯1のなす角度)と出側下部気体噴出ノズル62の傾斜角度62a(ノズル62により噴出される気体の噴射方向と金属帯1のなす角度)の好適例としては、5°以上が挙げられる。また、この好適例としては、80°以下が挙げられる。角度61aや角度62aが5°以上であれば、噴射方向が金属帯1の進行方向と平行に近くなることを回避し、排出能力をより向上させることができる。また、角度61aや角度62aが80°以下であれば、噴射方向が金属帯1の進行方向と垂直に近くなることを回避し、排出能力をより向上させることができる。また、角度61aや角度62aを20°以上とすることがさらに好ましい。また、角度61aや角度62aを45°以下とすることがさらに好ましい。
[0026]
 噴射する空気や窒素等の気体の温度は10℃以上であることが好ましい。また、噴射する空気や窒素等の気体の温度は30℃以下であることが好ましい。また、噴射圧力は0.2MPa以上であることが好ましい。また、噴射圧力は1.0MPa以下であることが好ましい。
[0027]
 冷却開始位置から冷却停止位置(上部冷却流体排出ロール51と下部冷却流体排出ロール52の金属帯1に対する接触位置)までの距離である冷却長b(mm)は、搬送速度v(mm/s)、金属帯1の厚みt(mm)、冷却開始温度T (℃)、目標とする冷却停止温度T (℃)、金属帯1の冷却速度CV(℃/s)に基づいて設定することが好ましい。
[0028]
 ちなみに、冷却開始温度T (℃)は、冷却開始位置での金属帯1の温度であり、冷却停止温度T (℃)は、冷却停止位置での金属帯1の温度である。
[0029]
 ここで、上記の値の間には、下記(1)式の関係が成立するので、距離b(mm)は下記(2)式で表される。
[0030]
   CV=(T -T )/(b/v) ・・・(1)
   b=(T -T )v/CV ・・・(2)
 なお、冷却速度CVは、冷却条件(ノズル形状、噴射される冷却流体の種類(ここでは、水211と水222)・温度、噴射量など)に応じて定まる定数α(℃・mm/s)と、金属帯1の厚みtとを用いて、下記(3)式で表すことができる。
[0031]
   CV=α/t ・・・(3)
 例えば、厚みt=1~2mmの金属帯1では、下記(4)式で表され、中間値をとれば、下記(5)式で表される。
[0032]
   CV=1000/t~2000/t(℃/s) ・・・(4)
   CV=1500/t(℃/s) ・・・(5)
 すなわち、この場合は、αは下記(6)式または(7)式ということになる。
[0033]
   α=1000~2000(℃・mm/s) ・・・(6)
   α=1500(℃・mm/s) ・・・(7)
 このことから、上記(2)式は下記(8)式で表すことができる。
[0034]
   b=(T -T )vt/α ・・・(8)
 なお、冷却速度CV(℃/s)やα(℃・mm/s)については、事前に、実験や数値解析等によって求めておき、データベース化や計算式化しておけばよい。
[0035]
 そして、上記の実施形態は、金属帯製品(製品として出荷される金属帯)の製造に適用することができ、高強度冷延鋼帯や溶融亜鉛鍍金鋼帯といった鋼帯の製造に適用することが特に好ましい。
より具体的には、引張強度が580MPa以上である鋼帯の製造に適用することが好ましい。引張強度の上限は特に制限されないが、一例として1600MPa以下であればよい。
[0036]
 高強度冷延鋼帯や溶融亜鉛鍍金鋼帯の組成の具体例として、質量%で、Cが0.04%以上0.25%以下、Siが0.01%以上2.50%以下、Mnが0.80%以上3.70%以下、Pが0.001%以上0.090%以下、Sが0.0001%以上0.0050%以下、sol.Alが0.005%以上0.065%以下、必要に応じて、Cr、Mo、Nb、V、Ni、Cu、及びTiの少なくとも1種以上がそれぞれ0.5%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成が挙げられる。この組成では、さらに必要に応じて、B、Sbがそれぞれ0.01%以下を含有してもよい。
[0037]
 また、高強度冷延鋼帯や溶融亜鉛鍍金鋼帯だけでなく、電気亜鉛鍍金鋼帯、合金化溶融亜鉛鍍金鋼帯の製造に適用することも同じように好ましい。
[0038]
 このようにして、この実施形態においては、金属帯1の製造条件(例えば、搬送速度v)によらず常に、急冷後の金属帯1の温度を制御することが可能となる。
[0039]
 なお、上記の実施形態では、鋼帯を水で急冷する場合を念頭において述べたが、本発明は、鋼帯以外の金属帯全般の冷却に適用することができ、また、水以外の冷媒を用いた急冷にも適用することができる。
実施例
[0040]
 本発明の実施例を述べる。
本発明例として、図1の本発明の実施形態に係る急冷装置を用いた。
このとき、角度21aは30°、角度22aは40°、角度41aは30°、角度42aは40°、角度61aは30°、角度62aは30°とした。また、噴射する気体として空気の温度は20℃、噴射圧力は0.6MPaとした。またロール径は200mm、ニップ圧は10kg/cmとした。
上記の装置を用いて、厚みtが1.0mm、幅が1000mmである引張強さ1470MPa級の高強度溶融亜鉛鍍金鋼帯を製造した。搬送速度vを500~3000mm/s、冷却開始温度T を400℃、目標とする冷却停止温度T を100℃とした。水温は30℃で、冷却速度α/tについては、事前測定と上記(5)式に基づいて1500/t(℃/s)と設定した。
なお、冷却開始位置から冷却停止位置までの冷却長b(mm)は、上記(8)式に基づいてb=100~600mmで制御した。
[0041]
 これに対して、比較例1として、特許文献1に示した冷却装置を用い、その他の条件は、本発明例と同じにして、上記の高強度溶融亜鉛鍍金鋼帯を製造した。
また、比較例2として、特許文献2に示した冷却装置を用い、その他の条件は、本発明例と同じにして、上記の高強度溶融亜鉛鍍金鋼帯を製造した。
また、比較例3として、特許文献4に示した冷却装置を用い、その他の条件は、本発明例と同じにして、上記の高強度溶融亜鉛鍍金鋼帯を製造した。
また、比較例4として、特許文献6に示した冷却装置を用い、その他の条件は、本発明例と同じにして、上記の高強度溶融亜鉛鍍金鋼帯を製造した。
そして、それぞれの場合(本発明例、比較例1~4)について、搬送速度v(mm/s)と冷却停止温度T (℃)との関係を調査した。
本発明例の結果を図2に示し、比較例1の結果を図3、比較例2の結果を図4、比較例3の結果を図5、比較例4の結果を図6に示す。
[0042]
 まず、比較例1と比較例4では、図3と図6に示すように、搬送速度v(mm/s)によらず、冷却停止温度T (℃)は全て水温(30℃)とほぼ同一となり、目標とする冷却停止温度T に制御することができなかった。
具体的には、比較例1では、本発明例とは異なり、鋼帯の冷却時、鋼帯を水槽内に浸漬していた。そのため、急冷後の鋼帯の温度が水温と同一となり、冷却停止温度T を制御することができなかった。
また、比較例4では、本発明例とは異なり、鋼帯の上方の位置に水噴射装置と空気噴射装置を配設し、水切り水により鋼帯上面の滞留水を排出する手法を採用した。そのため、滞留水を排出するために高圧の水を噴射する必要があり、水切り水によって鋼帯の温度が水温まで冷却されてしまい、冷却停止温度T を制御することができなかった。
[0043]
 また、比較例2と比較例3では、図4と図5に示すように、搬送速度v(mm/s)によって、冷却停止温度T (℃)は大きく変化し、制御することはできなかった。
具体的には、比較例2では、本発明例とは異なり、鋼帯が下方から上方へ移動する縦パス中で、急速冷却後に急速加熱を行うことで、冷却停止温度を一定に保持する手法を採用した。そのため、重力の影響によって冷却装置下方のロールから漏水が発生し、冷却開始位置や冷却停止温度T を制御することができなかった。
また、比較例3では、本発明例とは異なり、冷却流体排出ロールを使用せずに気体ノズルのみを用いて滞留水を排出しようとした。そのため、冷却開始位置を制御しきれず、また、滞留水を排出しきれずに冷却停止温度T を制御することができなかった。
[0044]
 一方、本発明例では、図2に示すように、搬送速度v(mm/s)という鋼帯の製造条件によらず、冷却停止温度T (℃)は100±5℃の範囲で全て制御可能であった。
[0045]
 これによって、本発明の有効性が確認された。

符号の説明

[0046]
 1 金属帯
 11 金属帯急冷装置
 21 上部冷却流体噴出ノズル(冷却流体噴射装置)
 211 上部冷却流体噴出ノズルから噴射された冷却流体
 22 下部冷却流体噴出ノズル(冷却流体噴射装置)
 222 下部冷却流体噴出ノズルから噴射された冷却流体
 21a 上部冷却流体噴出ノズルの軸線方向(冷却流体の噴出方向)と金属帯とのなす角度のうち、鋭角となる角度
 22a 下部冷却流体噴出ノズルの軸線方向(冷却流体の噴出方向)と金属帯とのなす角度のうち、鋭角となる角度
 31 上部可動マスキング(可動マスキング)
 32 下部可動マスキング(可動マスキング)
 41 入側上部気体噴出ノズル(気体噴出ノズル)
 411 入側上部気体噴出ノズルから噴射された気体
 42 入側下部気体噴出ノズル(気体噴出ノズル)
 422 入側下部気体噴出ノズルから噴射された気体
 41a 入側上部気体噴出ノズルの軸線方向(気体の噴出方向)と金属帯とのなす角度のうち、鋭角となる角度
 42a 入側下部空気噴出ノズルの軸線方向(気体の噴出方向)と金属帯とのなす角度のうち、鋭角となる角度
 51 上部冷却流体排出ロール(冷却流体排出ロール)
 52 下部冷却流体排出ロール(冷却流体排出ロール)
 61 出側上部気体噴出ノズル(気体噴出ノズル)
 611 出側上部気体噴出ノズルから噴射された気体
 62 出側下部気体噴出ノズル(気体噴出ノズル)
 622 出側下部気体噴出ノズルから噴射された気体
 61a 出側上部気体噴出ノズルの軸線方向(気体の噴出方向)と金属帯とのなす角度のうち、鋭角となる角度
 62a 出側下部気体噴出ノズルの軸線方向(気体の噴出方向)と金属帯とのなす角度のうち、鋭角となる角度
 b 冷却長(金属帯の冷却開始位置から冷却流体排出ロールまでの距離)

請求の範囲

[請求項1]
 金属帯を水平方向に搬送しながら冷却する急冷装置であって、
 前記金属帯の両面側から前記金属帯に冷却流体を噴射する1組または水平方向に配列した複数組のノズルを備えた冷却流体噴射装置と、
 前記冷却流体が噴射された前記金属帯上の滞留流体を排出する冷却流体排出ロールと、
 前記ノズルと前記金属帯が通過する金属帯搬送ラインとの間かつ前記金属帯搬送ラインの両面側に設けられ、水平方向に移動することで前記冷却流体による前記金属帯の冷却開始位置を調整して、該冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離を制御する可動マスキングと
 を備えている金属帯急冷装置。
[請求項2]
 前記冷却流体排出ロールの出側に気体噴出ノズルを備えている請求項1に記載の金属帯急冷装置。
[請求項3]
 前記可動マスキングは気体噴出ノズルを備えている請求項1または2に記載の金属帯急冷装置。
[請求項4]
 前記冷却流体を噴射する前記ノズルの軸線方向と前記金属帯のなす角度が10°以上60°以下である請求項1~3のいずれかに記載の金属帯急冷装置。
[請求項5]
 連続的に水平方向に搬送する金属帯の表面に複数のノズルから冷却流体を噴射することで冷却する急冷方法であって、冷却流体排出ロールによって前記金属帯上の滞留流体を排出しつつ、水平方向に移動可能な可動マスキングによって前記冷却流体による前記金属帯の冷却開始位置を調整して、該冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離を制御する金属帯急冷方法。
[請求項6]
 前記金属帯の冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離を、前記金属帯の搬送速度、冷却開始温度、目標とする冷却停止温度、前記金属帯の冷却速度に基づいて設定する請求項5に記載の金属帯急冷方法。
[請求項7]
 前記金属帯の搬送速度をv(mm/s)、冷却開始温度をT (℃)、目標とする冷却停止温度をT (℃)、前記金属帯の冷却速度をCV(℃/s)として、前記金属帯の冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離b(mm)を下式で表す請求項6に記載の金属帯急冷方法。
   b=(T -T )v/CV
[請求項8]
 前記金属帯の冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離を、前記金属帯の搬送速度、冷却開始温度、目標とする冷却停止温度、冷却条件、前記金属帯の厚みに基づいて設定する請求項5に記載の金属帯急冷方法。
[請求項9]
 前記金属帯の搬送速度をv(mm/s)、冷却開始温度をT (℃)、目標とする冷却停止温度をT (℃)とし、冷却条件により定まる定数α(℃・mm/s)と、前記金属帯の厚みt(mm)を用いて、前記金属帯の冷却開始位置から前記冷却流体排出ロールまでの距離b(mm)を下式で表す請求項8に記載の金属帯急冷方法。
   b=(T -T )vt/α
[請求項10]
 金属帯製品を製造する際に、請求項5~9のいずれかに記載の急冷方法を用いて急冷を行う金属帯製品の製造方法。
[請求項11]
 前記金属帯製品は、高強度冷延鋼帯、溶融亜鉛鍍金鋼帯、電気亜鉛鍍金鋼帯、合金化溶融亜鉛鍍金鋼帯のいずれかである請求項10に記載の金属帯製品の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]