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1. WO2021039611 - ペントシジンの測定方法及び測定用キット

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明 細 書

発明の名称 ペントシジンの測定方法及び測定用キット

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007   0008  

発明の効果

0009  

図面の簡単な説明

0010  

発明を実施するための形態

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109  

実施例

0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5   6A   6B   6C   6D   6E   7   8   9   10   11   12   13   14   15  

明 細 書

発明の名称 : ペントシジンの測定方法及び測定用キット

技術分野

[0001]
 本発明は、ペントシジンの測定方法等に関し、より詳細には、測定誤差を低減させ、正確な測定値を得るためのペントシジンの測定方法等に関する。

背景技術

[0002]
 ペントシジン((2S)-2-amino-6-[2-[[(4S)-4-amino-4-carboxybutyl]amino]imidazo[4,5-b]pyridin-4-yl]hexanoic acid)は、ペントースと等モルのリジンとアルギニンが架橋した構造を有し、加齢や糖尿病の発症に相関してヒトの皮膚に蓄積すること、特に糖尿病の発症や末期の腎症において増加することが知られている。
[0003]
 ペントシジンは、酸加水分解後にその蛍光性(Ex:335nm、Em:385nm)を指標としてHPLCで定量ができること、また、ペントシジンに対するモノクローナル抗体を用いた免疫化学的な方法(例えば、ELISA法)を用いて定量できることが知られている。
[0004]
 ペントシジンは加齢や糖尿病以外にも統合失調症との関連が知られており、例えば、生体試料を対象として、ペントシジンの量を測定する工程を有する統合失調症の検査方法が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特許第5738346号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 免疫化学的な方法や機器分析的手法によるペントシジンの定量は煩雑で費用がかかる場合がある。本発明は、新規酵素を用いた、免疫化学的な方法や機器分析的手法と比べ安価で簡易的なペントシジンの測定方法を提供することを目的とし、特に、測定誤差を低減させ、正確な測定値を得るためのペントシジンの測定方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明者らは、糸状菌から同定した新規酵素がペントシジンの定量に有用であることを見出し、この酵素をアミノ酸分解酵素と組み合わせて用いることで、より測定誤差が低減することを見出し、本発明を完成するに至った。
[0008]
 本発明の概要は、以下のとおりである。
[1]
 検体中のペントシジンの測定方法であって、
 検体をアミノ酸分解酵素で分解する工程、
 前記分解工程後の検体とペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質とを接触させる工程、及び
 前記接触により生じた変化を検出する工程、
を含み、前記アミノ酸分解酵素と前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質は異なる、測定方法。
[2]
 前記検出工程において、酸素、過酸化水素又はアンモニアの量の変化が検出される、[1]に記載の測定方法。
[3]
 前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が、以下の理化学的性質:
(1)作用:ペントシジンを酸化的に分解する活性;及び
(2)SDS-PAGEによる分子量:75,000~85,000
を有する、[1]又は[2]に記載の測定方法。
[4]
 前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が以下の(a)~(f):
(a)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(c)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列と75%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質;
(d)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列と75%以上の同一性を有する塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(e)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列の1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質;あるいは
(f)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によってコードされるタンパク質;
からなる群から選択されるいずれかのタンパク質である、[1]~[3]のいずれかに記載の測定方法。
[5]
 前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が、糸状菌に由来する、[1]~[4]のいずれかに記載の測定方法。
[6]
 前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質がペントシジンオキシダーゼであり、
 前記アミノ酸分解酵素が、検体に含まれるアミノ酸を分解し、前記アミノ酸が、アルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンから選択される、[1]~[5]のいずれかに記載の測定方法。
[6’]
 前記アミノ酸分解酵素が、アルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンから選択されるアミノ酸を分解する、[1]~[5]のいずれかに記載の測定方法。
[7]
 前記アミノ酸分解酵素が分解するアミノ酸が、前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質の、ペントシジンに対する活性を100%とした場合に、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が40%以上の相対的活性を有するアミノ酸である、[1]~[6]のいずれかに記載の測定方法。
[8]
 前記アミノ酸分解酵素が、アミノ酸オキシダーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ、アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸デカルボキシラーゼ、アミノ酸アンモニアリアーゼ、アミノ酸オキシゲナーゼ及びアミノ酸ヒドロラーゼからなる群から選択される、[1]~[7]のいずれかに記載の測定方法。
[9]
(i)アミノ酸分解酵素;及び
(ii)ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質
を含む、検体中のペントシジン測定用キット。
[10]
 前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が以下の(a)~(f):
(a)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(c)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列と75%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質;
(d)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列と75%以上の同一性を有する塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(e)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列の1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質;あるいは
(f)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によってコードされるタンパク質;
からなる群から選択されるいずれかのタンパク質である[9]に記載のキット。
[11]
 前記アミノ酸分解酵素が、アルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンから選択されるアミノ酸を分解する酵素である、[9]又は[10]に記載のキット。
[12]
 検体由来のペントシジンの反応生成物の製造方法であって、
 検体をアミノ酸分解酵素で分解する工程、
 前記分解工程後の検体とペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質とを接触させる工程
を含み、前記アミノ酸分解酵素と前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質は異なる、方法。
[13]
 前記アミノ酸分解酵素が、ジャンボアメフラシ( Aplysia californica)由来エスカピン(Escapin)及び/又はヒガシダイヤガラガラヘビ( Crotalus adamanteus)由来アミノ酸オキシダーゼを含む、[1]~[8]のいずれかに記載の測定方法。
[14]
 前記アミノ酸分解酵素が、検体に含まれるアミノ酸を分解し、前記アミノ酸が、アスパラギン、グルタミン及びヒスチジンから選択される、[1]~[8]のいずれかに記載の測定方法。
[14’]
 前記アミノ酸分解酵素が、アスパラギン、グルタミン及びヒスチジンから選択されるアミノ酸を分解する、[1]~[7]のいずれかに記載の測定方法。
[15]
 さらに、(iii)過酸化水素検出用試薬、アンモニア検出試薬、ペントシジンの脱アミノ化生成物検出用試薬及び酸素検出用試薬から選択される少なくとも一つを含む、[9]~[11]のいずれかに記載のキット。

発明の効果

[0009]
 本発明によれば、ペントシジンを酵素法によって簡便で迅速に検出及び定量することが可能となり、その際、測定誤差が低減され、正確な測定値が得られる。

図面の簡単な説明

[0010]
[図1] 図1は、サロクラディウム・エスピー( Sarocladium sp.)から、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて分画した酵素粗精製液(Elution 1)の基質濃度依存性試験の結果を示す。ペントシジン終濃度(横軸)に対するΔOD(縦軸)がプロットされている。反応開始から20分後のデータを使用した。
[図2] 図2は、酵素粗精製液(Elution 1)の熱失活試験の結果を示す。当該結果は加熱処理による酵素活性の失活を解析したものであり、反応開始から20分後のデータに相当する。
[図3] 図3は、ペントシジンとペントシジンオキシダーゼとを反応して生成した過酸化水素の濃度を測定した結果を示す。過酸化水素の濃度は658nmの吸光度で測定した。
[図4] 図4は、ペントシジンの終濃度とペントシジンの酸化に起因するA 658上昇量(ΔA)との関係を示す。
[図5] 図5は、ペントシジンオキシダーゼがペントシジンを分解する反応の推定機構を示す。図では、ペントシジンを構成するリジンとアルギニンの各アミノ基が酸化的脱アミノ化され、過酸化水素とアンモニアが生成される様子が記載されている。
[図6A] 図6Aは、配列番号1及び配列番号2の配列を示す。
[図6B] 図6Bは、配列番号3及び配列番号4の配列を示す。
[図6C] 図6Cは、配列番号5及び配列番号6の配列を示す。
[図6D] 図6Dは、配列番号7~配列番号11の配列を示す。
[図6E] 図6Eは、配列番号12~配列番号14の配列を示す。
[図7] 図7は、PenOX2の至適pHの範囲を示す。
[図8] 図8は、PenOX2の至適温度の範囲を示す。
[図9] 図9は、PenOX2の熱安定性の範囲を示す。
[図10] 図10は、PenOX2の安定pHの範囲を示す。
[図11] 図11は、PenOX2のペントシジンに対するKm値を示す。
[図12] 図12は、PenOX2の分子量を示す。
[図13] 図13は、実施例13で測定したアミノ酸分解酵素1の基質特異性を示す。
[図14] 図14は、実施例14で測定したアミノ酸分解酵素2の基質特異性を示す。
[図15] 図15は、実施例15で測定したペントシジンオキシダーゼの基質特異性を示す。

発明を実施するための形態

[0011]
 以下、本発明の一態様(以下、「本実施形態」ともいう。)であるペントシジンの測定方法等の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
[0012]
(ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質)
 一態様において、本実施形態は、検体中のペントシジンの測定方法に関する。
 ペントシジンは、上記のとおり、ペントースと等モルのリジンとアルギニンが架橋した構造を有する。本実施形態の測定方法において用いられる、「ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質」は、そのような分解活性を有するタンパク質であれば限定されず、ペントシジンオキシダーゼ活性を有するペントシジンオキシダーゼ及びペントシジンデヒドロゲナーゼ活性を有するペントシジンデヒドロゲナーゼを含む。
[0013]
 後述の実施例に示す、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質は新規酵素であり、少なくとも、ペントシジンオキシダーゼ活性を有する。本明細書で使用する場合、「ペントシジンオキシダーゼ活性」とは、ペントシジンを酸化的に分解する活性、より具体的には、ペントシジンを酸化して、その脱アミノ化生成物や、過酸化水素、アンモニアを生成する活性、又は酸素を消費する活性を意味する。
[0014]
 本明細書で使用する場合、「ペントシジンデヒドロゲナーゼ活性」とは、ペントシジンを酸化的に分解する活性、より具体的には、ペントシジンを酸化して、その脱アミノ化生成物や、還元型補酵素、アンモニアを生成する活性、又は酸化型補酵素を消費する活性を意味する。ここでいう補酵素としては、例えば、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)等が挙げられる。還元型補酵素はさらにメディエータを還元してもよい。メディエータは、本発明のペントシジンデヒドロゲナーゼに含まれる補酵素との間で電子を授受できるものであれば特に限定されない。メディエータとしては、例えばキノン類、フェナジン類、フェリシアン化物、オスミウム塩又は錯体、ルテニウム塩又は錯体、ニトロソアニリン類、アミノアニリン類、ビオロゲン類、シトクロム類、フェノキサジン類、フェノチアジン類、フェレドキシン類、フェロセン類、及びその誘導体等などが挙げられるがこれらに限定されない。キノン類としては、例えばナフトキノン及びその誘導体(例えば、ナフトキノン-4-スルホン酸)、フェナントロリンキノン及びその誘導体、フェナントレンキノン及びその誘導体が挙げられ、フェナジン類としては、例えばフェナジンメトサルフェート(PMS)及びその誘導体(例えば、1-メトキシPMS、1-エトキシPMS)が挙げられ、フェリシアン化物としては、例えばフェリシアン化カリウムが挙げられ、オスミウム塩又は錯体としては、例えば塩化オスミウム、ヘキサアンミンオスミウムが挙げられ、ルテニウム塩又は錯体としては、例えば塩化ルテニウム、ヘキサアンミンルテニウムが挙げられ、ニトロソアニリン類としては、例えばN,N-ジメチル-4-ニトロソアニリン、N,N-ビス-ヒドロキシエチル-4-ニトロソアニリン及びそれらの誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。その他のメディエータについても、当業者に公知のものが挙げられる。本願明細書では、特に断らない限り、メディエータという用語には酸素、過酸化水素は含まれないものとする。
[0015]
 上記のような酵素活性を有する限り、特定の配列に限定されず、あらゆるタンパク質及びそれをコードする遺伝子が本実施形態の範囲に含まれるものとして意図される。ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質のうち、ペントシジンオキシダーゼの塩基配列とアミノ酸配列について、サロクラディウム属( Sarocladium属)糸状菌に由来する酵素を例に以下に説明する。
[0016]
(ペントシジンオキシダーゼのアミノ酸配列)
 ペントシジンオキシダーゼは、上記した酵素活性を有するものであれば、アミノ酸配列については特に限定されない。例えば、上記したペントシジンオキシダーゼ活性を有する酵素の一態様として配列番号2、配列番号4に示すアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。以降、配列番号2及び配列番号4で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質をそれぞれペントシジンオキシダーゼ1(又はPenOX1)及びペントシジンオキシダーゼ2(又はPenOX2)という場合がある。ペントシジンオキシダーゼ1をコードする遺伝子(g4462)は6つのエキソン及び5つのイントロンで構成されると予想され、一方、ペントシジンオキシダーゼ2をコードする遺伝子(g10122)は2つのエキソン及び1つのイントロンで構成されることが予想される。
[0017]
 配列番号2及び配列番号4に示すアミノ酸配列を有するペントシジンオキシダーゼは、サロクラディウム属( Sarocladium属)糸状菌に由来する。また、これらの酵素をコードする遺伝子の塩基配列は、それぞれ配列番号1及び配列番号3に示す塩基配列である。図6に当該酵素のアミノ酸配列及び塩基配列を示す。
[0018]
 ペントシジンオキシダーゼのアミノ酸配列は、それぞれ上記したペントシジンオキシダーゼの酵素活性を有するものであれば、配列番号2や配列番号4のような野生型酵素が有するアミノ酸配列において1から複数個、例えば、アミノ酸配列におけるアミノ酸数100個を一単位とすれば、該一単位あたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25個、好ましくは数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などを有するアミノ酸配列からなるものであってもよい。ここで、アミノ酸配列の「1から数個のアミノ酸の欠失、置換、付加」における「1から数個」の範囲は特に限定されないが、上記一単位あたり、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個程度、より好ましくは1、2、3、4又は5個程度を意味する。また、「アミノ酸の欠失」とは配列中のアミノ酸残基の欠落又は消失を意味し、「アミノ酸の置換」は配列中のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられていることを意味し、「アミノ酸の付加」とは配列中に新たなアミノ酸残基が挿入するように付け加えられていることを意味する。
[0019]
  「アミノ酸の欠失、置換、付加」の具体的な態様としては、ペントシジンオキシダーゼ活性を維持する限度でアミノ酸が別の化学的に類似したアミノ酸で置き換えられた態様がある。例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に置換する場合、ある極性アミノ酸を同じ電荷を有する別の極性アミノ酸に置換する場合などを挙げることができる。このような化学的に類似したアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において知られている。
[0020]
 具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ塩基性アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
[0021]
 また、ペントシジンオキシダーゼのアミノ酸配列において、配列番号2や配列番号4のような野生型酵素が有するアミノ酸配列と一定以上の配列同一性を有するアミノ酸配列が挙げられ、例えば、ペントシジンオキシダーゼが有するアミノ酸配列と75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。
[0022]
(ペントシジンオキシダーゼをコードする遺伝子)
 ペントシジンオキシダーゼをコードする遺伝子(以下、「ペントシジンオキシダーゼ遺伝子」とよぶ場合がある。)は、上記したペントシジンオキシダーゼ活性を有する酵素が有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むものでれば特に限定されない。一部の態様において、ペントシジンオキシダーゼ遺伝子を形質転換体内で発現させることによりペントシジンオキシダーゼが生産される。
[0023]
 本明細書における「遺伝子の発現」とは、転写や翻訳などを介して、遺伝子によってコードされる酵素が本来の触媒活性を有する態様で生産されることを意味する。また、「遺伝子の発現」には、遺伝子の高発現、すなわち、遺伝子が挿入されたことにより、宿主生物が本来発現する量を超えて、該遺伝子によってコードされる酵素が生産されることを包含する。
[0024]
 ペントシジンオキシダーゼ遺伝子は、宿主生物に導入された際に、該遺伝子の転写後にスプライシングを経由してペントシジンオキシダーゼを生成し得る遺伝子であっても、該遺伝子の転写後にスプライシングを経由せずにペントシジンオキシダーゼを生成し得る遺伝子であってもよい。
[0025]
 ペントシジンオキシダーゼ遺伝子は、サロクラディウム属糸状菌のような由来生物が本来保有する遺伝子(すなわち、野生型遺伝子)と完全に同一でなくともよく、上記したペントシジンオキシダーゼ活性を有する酵素をコードする遺伝子である限り、野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するDNAであってもよい。
[0026]
 本明細書における「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列」とは、配列番号1又は配列番号3のような野生型遺伝子の塩基配列の一部に相当するDNAをプローブとして使用し、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、サザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAの塩基配列を意味する。
[0027]
 本明細書における「ストリンジェントな条件」とは、特異的なハイブリッドのシグナルが非特異的なハイブリッドのシグナルと明確に識別される条件であり、使用するハイブリダイゼーションの系と、プローブの種類、配列及び長さによって異なる。そのような条件は、ハイブリダイゼーションの温度を変えること、洗浄の温度及び塩濃度を変えることにより決定可能である。
[0028]
 例えば、非特異的なハイブリッドのシグナルまで強く検出されてしまう場合には、ハイブリダイゼーション及び洗浄の温度を上げるとともに、必要により洗浄の塩濃度を下げることにより特異性を上げることができる。また、特異的なハイブリッドのシグナルも検出されない場合には、ハイブリダイゼーション及び洗浄の温度を下げるとともに、必要により洗浄の塩濃度を上げることにより、ハイブリッドを安定化させることができる。
[0029]
 一部の態様において、ストリンジェントな条件の具体例としては以下のものを含む。例えば、プローブとしてDNAプローブを用い、ハイブリダイゼーションは、5×SSC、1.0%(w/v)核酸ハイブリダイゼーション用ブロッキング試薬(ベーリンガ・マンハイム社製)、0.1%(w/v)N-ラウロイルサルコシン、0.02%(w/v)SDSを用い、一晩(8~16時間程度)で行う。洗浄は、0.1~0.5×SSC、0.1%(w/v)SDS、好ましくは0.1×SSC、0.1%(w/v)SDSを用い、15分間、2回行う。ハイブリダイゼーション及び洗浄を行う温度は65℃以上、好ましくは68℃以上である。
[0030]
 ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するDNAとしては、例えば、コロニー若しくはプラーク由来の野生型遺伝子の塩基配列を有するDNA又は該DNAの断片を固定化したフィルターを用いて、上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションすることによって得られるDNAや0.5~2.0MのNaCl存在下にて、40~75℃でハイブリダイゼーションを実施した後、好ましくは0.7~1.0MのNaCl存在下にて、65℃でハイブリダイゼーションを実施した後、0.1~1×SSC溶液(1×SSC溶液は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウム)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAなどを挙げることができる。プローブの調製やハイブリダイゼーションの方法は、Moleular Cloning:A laboratory Manual,2nd-Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.,1989、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1-38,John Wiley&Sons,1987-1997(以下、これらの文献を「参考技術文献」ともよぶ。)などに記載されている方法に準じて実施することができる。
[0031]
 なお、当業者であれば、このようなバッファーの塩濃度や温度などの条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブ長さ、反応時間などの諸条件を加味して、野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するDNAを得るための条件を適宜設定することができる。
[0032]
 ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含むDNAとしては、プローブとして使用する野生型遺伝子の塩基配列を有するDNAの塩基配列と一定以上の配列同一性を有するDNAが挙げられ、例えば、野生型遺伝子の塩基配列と75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列同一性を有するDNAが挙げられる。
[0033]
 野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列としては、例えば、塩基配列における塩基数500個を一単位とすれば、野生型遺伝子の塩基配列において、該一単位あたり、1から複数個、例えば、1から125個、1から100個、1から75個、1から50個、1から30個、1から20個、好ましくは1から数個、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の塩基の欠失、置換、付加などを有する塩基配列を含む。
[0034]
 ここで、「塩基の欠失」とは配列中の塩基に欠落又は消失があることを意味し、「塩基の置換」は配列中の塩基が別の塩基に置き換えられていることを意味し、「塩基の付加」とは新たな塩基が挿入するように付け加えられていることを意味する。
[0035]
 野生型遺伝子の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によってコードされる酵素は、野生型遺伝子の塩基配列によってコードされる酵素が有するアミノ酸配列において1から複数個、好ましくは数個のアミノ酸の欠失、置換、付加などを有するアミノ酸配列を有する酵素である蓋然性があるが、野生型遺伝子の塩基配列によってコードされる酵素と同じ酵素活性を有するものである。
[0036]
 また、酵素をコードする遺伝子は、1つのアミノ酸に対応するコドンが数種類あることを利用して、野生型遺伝子がコードする酵素が有するアミノ酸配列と同一又は近似するアミノ酸配列をコードする塩基配列であって、野生型遺伝子と異なる塩基配列を含むものであってもよい。このような野生型遺伝子の塩基配列に対してコドン改変が施された塩基配列としては、例えば、g4462のコドンを改変した配列番号5(penox1)に記載の塩基配列、g10122のコドンを改変した配列番号6(penox2)などが挙げられる(図6C)。コドン改変が施された塩基配列としては、例えば、宿主生物において発現し易いようにコドン改変が施された塩基配列であることが好ましい。
[0037]
(配列同一性を算出するための手段)
 塩基配列やアミノ酸配列の配列同一性を求める方法は特に限定されないが、例えば、通常知られている方法を利用して、野生型遺伝子や野生型遺伝子によってコードされる酵素のアミノ酸配列と対象となる塩基配列やアミノ酸配列とをアラインメントし、両者の配列の一致率を算出するためのプログラムを用いることにより求められる。
[0038]
 2つのアミノ酸配列や塩基配列における一致率を算出するためのプログラムとしては、例えば、Karlin及びAltschulのアルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268、1990;Proc.Natl.Acad.Sci. USA90:5873-5877、1993)が知られており、このアルゴリズムを用いたBLASTプログラムがAltschulなどによって開発されている(J.Mol.Biol.215:403-410、1990)。さらに、BLASTより感度よく配列同一性を決定するプログラムであるGapped BLASTも知られている(Nucleic Acids Res. 25:3389-3402、1997)。したがって、当業者は例えば上記のプログラムを利用して、与えられた配列に対し、高い配列同一性を示す配列をデータベース中から検索することができる。これらは、例えば、米国National Center for Biotechnology Informationのインターネット上のウェブサイト(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)において利用可能である。
[0039]
 上記の各方法は、データベース中から配列同一性を示す配列を検索するために通常的に用いられ得るが、個別の配列の配列同一性を決定する手段としては、Genetyxネットワーク版 version 12.0.1(ゼネティックス社製)のホモロジー解析を用いることもできる。この方法は、Lipman-Pearson法(Science 227:1435-1441、1985)に基づくものである。塩基配列の配列同一性を解析する際は、可能であればタンパク質をコードしている領域(CDS又はORF)を用いる。
[0040]
(酵素をコードする遺伝子の由来)
 酵素をコードする遺伝子は、ペントシジンオキシダーゼ生産能がある生物種に由来する。酵素をコードする遺伝子の由来生物としては、例えば、糸状菌などの微生物などが挙げられる。ペントシジンオキシダーゼ生産能を有する微生物の具体例としては、サロクラディウム属( Sarocladium属)などが挙げられる。
[0041]
 上記のとおり、酵素をコードする遺伝子の由来生物は特に限定されないが、形質転換体において発現される酵素は、宿主生物の生育条件によって不活化せず、活性を示すことが好ましい。そこで、酵素をコードする遺伝子の由来生物は、酵素をコードする遺伝子を挿入することによって形質転換すべき宿主生物と生育条件が近似する微生物であることが好ましい。
[0042]
 ペントシジンオキシダーゼ活性を有する酵素の理化学的特性質のうち、特徴的なものを以下に例示する。
・SDS-PAGEによる分子量:75,000~85,000
・至適pH:pH約6.5~8.0
 なお、至適pHは酵素が最も好適に作用するpHであって、ペントシジンオキシダーゼは上記範囲以外のpHでも作用し得る。
・至適温度:約37~50℃
 なお、至適温度は酵素が最も好適に作用する温度であって、ペントシジンオキシダーゼは上記温度範囲以外の温度でも作用し得る。
・温度安定性:30℃で10分間保存した場合、ペントシジンオキシダーゼ活性が90%以上保持される。40℃で10分間保存した場合、ペントシジンオキシダーゼ活性が50%以上保持される。
・pH安定性:pH4.0~9.0の範囲でペントシジンオキシダーゼ活性が60%以上保持される。
・Km値:ペントシジンに対するKm値が1mM以下である。
 Km値とはミカエリス定数であって、その具体的な算出方法は特に限定されず、公知の方法を自由に選択して算出することができる。例えば、後述する実施例9に記載の方法のように、ラインウェーバー・バークプロットによる方法で描かれるミカエリス-メンテンの式に従ってKm値を算出することができる。
[0043]
(遺伝子工学的手法による酵素をコードする遺伝子のクローニング)
 酵素をコードする遺伝子は、適当な公知の各種ベクター中に挿入することができる。さらに、このベクターを適当な公知の宿主生物に導入して、酵素をコードする遺伝子を含む組換えベクター(組換え体DNA)が導入された形質転換体を作製できる。酵素をコードする遺伝子の取得方法や、酵素をコードする遺伝子の塩基配列、酵素のアミノ酸配列情報の取得方法、各種ベクターの製造方法や形質転換体の作製方法などは、当業者にとって適宜選択することができる。また、本明細書で使用する場合、形質転換や形質転換体にはそれぞれ形質導入や形質導入体が包含される。酵素をコードする遺伝子のクローニングの一例を非限定的に後述する。
[0044]
 酵素をコードする遺伝子をクローニングするには、通常一般的に用いられている遺伝子のクローニング方法を適宜用いることができる。例えば、酵素の生産能を有する微生物や種々の細胞から、常法、例えば、参考技術文献(上掲)に記載の方法により、染色体DNAやmRNAを抽出することができる。抽出したmRNAを鋳型としてcDNAを合成することができる。このようにして得られた染色体DNAやcDNAを用いて、染色体DNAやcDNAのライブラリーを作製することができる。
[0045]
 一部の態様において、酵素をコードする遺伝子は、該遺伝子を有する由来生物の染色体DNAやcDNAを鋳型としたクローニングにより得ることができる。酵素をコードする遺伝子の由来生物は特に限定されないが、上記したサロクラディウム・エスピー( Sarocladium sp.)などを挙げることができる。例えば、サロクラディウム・エスピー( Sarocladium sp.)を培養し、得られた菌体から水分を取り除き、液体窒素中で冷却しながら乳鉢などを用いて物理的に磨砕することにより細かい粉末状の菌体片とし、該菌体片から通常の方法により染色体DNA画分を抽出する。染色体DNA抽出操作には、DNeasy Plant Mini Kit(キアゲン社製)などの市販の染色体DNA抽出キットが利用できる。
[0046]
 次いで、前記染色体DNAを鋳型として、5'末端配列及び3'末端配列に相補的なプライマーを用いてポリメラーゼ連鎖反応(以下、「PCR」と表記する。)を行うことにより、DNAを増幅する。プライマーとしては、該遺伝子を含むDNA断片の増幅が可能であれば特に限定されない。別の方法として、5'RACE法や3'RACE法などの適当なPCRにより、目的の遺伝子断片を含むDNAを増幅させ、これらを連結させて全長の目的遺伝子を含むDNAを得ることができる。
[0047]
 また、酵素をコードする遺伝子を取得する方法は特に限定されず、遺伝子工学的手法によらなくとも、例えば、化学合成法を用いて酵素をコードする遺伝子を構築することが可能である。
[0048]
 PCRにより増幅された増幅産物や化学合成した遺伝子における塩基配列の確認は、例えば、次のように行うことができる。まず、配列を確認したいDNAを通常の方法に準じて適当なベクターに挿入して組換え体DNAを作製する。ベクターへのクローニングには、TA Cloning Kit(インビトロジェン社製)などの市販のキット;pUC19(タカラバイオ社製)、pUC18(タカラバイオ社製)、pBR322(タカラバイオ社製)、pBluescript SK+(ストラタジーン社製)、pYES2/CT(インビトロジェン社製)などの市販のプラスミドベクターDNA;λEMBL3(ストラタジーン社製)などの市販のバクテリオファージベクターDNAが使用できる。一部の態様において、該組換え体DNAを用いて、宿主生物、例えば、大腸菌( Escherichia  coli)、好ましくは大腸菌 JM109株(タカラバイオ社製)や大腸菌 DH5α株(タカラバイオ社製)を形質転換する。得られた形質転換体に含まれる組換え体DNAを、QIAGEN Plasmid Mini Kit(キアゲン社製)などを用いて精製してもよい。
[0049]
 組換え体DNAに挿入された各遺伝子の塩基配列の決定は、ジデオキシ法(Methods in Enzymology、101、20-78、1983)などにより行うことができる。塩基配列の決定の際に使用する配列解析装置は特に限定されないが、例えば、Li-COR MODEL 4200Lシークエンサー(アロカ社製)、370DNAシークエンスシステム(パーキンエルマー社製)、CEQ2000XL DNAアナリシスシステム(ベックマン社製)などが挙げられる。そして、決定された塩基配列を元に、翻訳されるタンパク質、すなわち、酵素のアミノ酸配列を知り得る。
[0050]
(酵素をコードする遺伝子を含む組換えベクターの構築)
 酵素をコードする遺伝子を含む組換えベクター(組換え体DNA)は、酵素をコードする遺伝子のいずれかを含むPCR増幅産物と各種ベクターとを、酵素をコードする遺伝子の発現が可能な形で結合することにより構築することができる。例えば、適当な制限酵素で酵素をコードする遺伝子のいずれかを含むDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な制限酵素で切断したプラスミドと連結することにより構築することができる。または、プラスミドと相同的な配列を両末端に付加した該遺伝子を含むDNA断片と、インバースPCRにより増幅したプラスミド由来のDNA断片とを、In-Fusion HD Cloning Kit(クロンテック社製)などの市販の組換えベクター作製キットを用いて連結させることにより得ることができる。
[0051]
(形質転換体の作製方法)
 形質転換体の作製方法は特に限定されず、例えば、常法に従って、酵素をコードする遺伝子が発現する態様で宿主生物に挿入する方法などが挙げられる。一部の態様において、酵素をコードする遺伝子のいずれかを発現誘導プロモーター及びターミネーターの間に挿入したDNAコンストラクトを作製し、次いで酵素をコードする遺伝子を含むDNAコンストラクトで宿主生物を形質転換することにより、酵素をコードする遺伝子を過剰発現する形質転換体が得られる。本明細書では、宿主生物を形質転換するために作製された、発現誘導プロモーター-酵素をコードする遺伝子-ターミネーターからなるDNA断片及び該DNA断片を含む組換えベクターをDNAコンストラクトと総称してよぶ。
[0052]
 酵素をコードする遺伝子が発現する態様で宿主生物に挿入する方法は、特に限定されないが、例えば、相同組換えや非相同組換えを利用することにより宿主生物の染色体上に直接的に挿入する手法;プラスミドベクター上に連結することにより宿主生物内に導入する手法などが挙げられる。
[0053]
 相同組換えを利用する方法では、染色体上の組換え部位の上流領域及び下流領域と相同な配列の間に、DNAコンストラクトを連結し、宿主生物のゲノム中に挿入することができる。非相同組換えを利用する方法では、該相同配列をDNAコンストラクトと連結していない場合でも、宿主生物のゲノム中に挿入することができる。高発現プロモーターは特に限定されないが、例えば、翻訳伸長因子であるTEF1遺伝子(tef1)のプロモーター領域、α-アミラーゼ遺伝子(amy)のプロモーター領域、アルカリプロテアーゼ遺伝子(alp)プロモーター領域、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(gpd)プロモーター領域などが挙げられる。
[0054]
 ベクターを利用する方法では、DNAコンストラクトを、常法により、宿主生物の形質転換に用いられるプラスミドベクターに組み込み、対応する宿主生物を常法により形質転換することができる。
[0055]
 そのような、好適なベクター-宿主系としては、宿主生物中で酵素を生産させ得る系であれば特に限定されず、例えば、pUC19及び糸状菌の系、pSTA14(Mol.Gen.Genet.218、99-104、1989)及び糸状菌の系などが挙げられる。
[0056]
 DNAコンストラクトは宿主生物の染色体に導入して用いることが好ましいが、この他の方法として、自律複製型のベクター(Ozeki et al.Biosci.Biotechnol.Biochem.59,1133 (1995))にDNAコンストラクトを組み込むことにより、染色体に導入しない形で用いることもできる。
[0057]
 DNAコンストラクトには、形質転換された細胞を選択することを可能にするためのマーカー遺伝子が含まれていてもよい。マーカー遺伝子は特に限定されず、例えば、pyrG、niaD、adeAのような、宿主生物の栄養要求性を相補する遺伝子;ピリチアミン、ハイグロマイシンB、オリゴマイシンなどの薬剤に対する薬剤耐性遺伝子などが挙げられる。また、DNAコンストラクトは、宿主生物中で酵素をコードする遺伝子を過剰発現することを可能にするプロモーター、ターミネーターその他の制御配列(例えば、エンハンサー、ポリアデニル化配列など)を含むことが好ましい。プロモーターは特に限定されないが、適当な発現誘導プロモーターや構成的プロモーターが挙げられ、例えば、tef1プロモーター、alpプロモーター、amyプロモーター、gpdプロモーターなどが挙げられる。ターミネーターもまた特に限定されないが、例えば、alpターミネーター、amyターミネーター、tef1ターミネーターなどが挙げられる。
[0058]
 DNAコンストラクトにおいて、酵素をコードする遺伝子の発現制御配列は、挿入する酵素をコードする遺伝子を含むDNA断片が、発現制御機能を有している配列を含む場合は必ずしも必要ではない。また、共形質転換法により形質転換を行う場合には、DNAコンストラクトはマーカー遺伝子を有しなくてもよい場合がある。
[0059]
 DNAコンストラクトには精製のためのタグをつけることができる。例えば、酵素をコードする遺伝子の上流又は下流に適宜リンカー配列を接続し、ヒスチジンをコードする塩基配列を6コドン以上接続することにより、ニッケルカラムを用いた精製を可能にすることができる。
[0060]
 DNAコンストラクトにはマーカーリサイクリングに必要な相同配列が含まれていてもよい。例えば、pyrGマーカーは、pyrGマーカーの下流に挿入部位(5'相同組換え領域)の上流の配列と相同な配列を付加すること、又はpyrGマーカーの上流に挿入部位(3'相同組換え領域)の下流の配列と相同な配列を付加することで、5-フルオロオロチン酸(5FOA)を含んだ培地上でpyrGマーカーを脱落させることが可能となる。マーカーリサイクリングに適した該相同配列の長さは0.5kb以上が好ましい。
[0061]
 DNAコンストラクトの一態様は、例えば、pUC19のマルチクローニングサイトにあるIn-Fusion Cloning Siteに、tef1遺伝子プロモーター、酵素をコードする遺伝子、alp遺伝子ターミネーター及びpyrGマーカー遺伝子を連結させたDNAコンストラクトである。
[0062]
 相同組換えにより遺伝子を挿入する場合のDNAコンストラクトの一態様は、5'相同組換え配列、tef1遺伝子プロモーター、酵素をコードする遺伝子、alp遺伝子ターミネーター及びpyrGマーカー遺伝子、3'相同組換え配列を連結させたDNAコンストラクトである。
[0063]
 相同組換えにより遺伝子を挿入し、かつ、マーカーをリサイクルする場合のDNAコンストラクトの一態様は、5'相同組換え配列、tef1遺伝子プロモーター、酵素をコードする遺伝子、alp遺伝子ターミネーター、マーカーリサイクリング用相同配列、pyrGマーカー遺伝子、3'相同組換え配列を連結させたDNAコンストラクトである。
[0064]
 宿主生物が糸状菌である場合、糸状菌への形質転換方法としては、当業者に知られる方法を適宜選択することができ、例えば、宿主生物のプロトプラストを調製した後に、ポリエチレングリコール及び塩化カルシウムを用いるプロトプラストPEG法(例えば、Mol.Gen.Genet.218、99-104、1989(上掲)、特開2007-222055号公報などを参照)を用いることができる。形質転換体を再生させるための培地は、用いる宿主生物と形質転換マーカー遺伝子とに応じて適切なものを用いる。例えば、宿主生物としてアスペルギルス・オリゼ( A.oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ( A.sojae)を用い、形質転換マーカー遺伝子としてpyrG遺伝子を用いた場合は、形質転換体の再生は、例えば、0.5%寒天及び1.2Mソルビトールを含むCzapek-Dox最少培地(ディフコ社製)で行うことができる。
[0065]
 また、例えば、形質転換体を得るために、相同組換えを利用して、宿主生物が本来染色体上に有する酵素をコードする遺伝子のプロモーターをtef1などの高発現プロモーターへ置換してもよい。この際も、高発現プロモーターに加えて、pyrGなどの形質転換マーカー遺伝子を挿入することが好ましい。例えば、この目的のために、特開2011-239681号公報に記載の実施例を参照して、酵素をコードする遺伝子の上流領域-形質転換マーカー遺伝子-高発現プロモーター-酵素をコードする遺伝子の全部又は部分からなる形質転換用カセットなどが利用できる。この場合、酵素をコードする遺伝子の上流領域及び酵素をコードする遺伝子の全部又は部分が相同組換えのために利用される。
[0066]
 酵素をコードする遺伝子の全部又は部分は、開始コドンから途中の領域を含むものが使用できる。相同組換えに適した領域の長さは0.5kb以上あることが好ましい。
[0067]
 形質転換体が作製されたことの確認は、酵素の酵素活性が認められる条件下で形質転換体を培養し、次いで培養後に得られた培養物における目的産物が検出されることにより行うことができる。
[0068]
 また、形質転換体が作製されたことの確認は、形質転換体から染色体DNAを抽出し、これを鋳型としてPCRを行い、形質転換が起きた場合に増幅が可能なPCR産物が生じることを確認することにより行ってもよい。この場合、例えば、用いたプロモーターの塩基配列に対するフォワードプライマーと、形質転換マーカー遺伝子の塩基配列に対するリバースプライマーとの組み合わせでPCRを行い、想定の長さの産物が生じることを確認する。
[0069]
 相同組換えにより形質転換を行う場合には、用いた上流側の相同領域より上流に位置するフォワードプライマーと、用いた下流側の相同領域より下流に位置するリバースプライマーとの組み合わせでPCRを行い、相同組換えが起きた場合に想定される長さの産物が生じることを確認することが好ましい。
[0070]
(宿主生物)
 宿主生物としては、酵素をコードする遺伝子を含むDNAコンストラクトによる形質転換により、酵素を生産することができる生物であれば特に限定されない。例えば、微生物や植物などが挙げられ、微生物としては、アスペルギルス( Aspergillus)属微生物、エシェリキア( Escherichia)属微生物、サッカロマイセス( Saccharomyces)属微生物、ピキア( Pichia)属微生物、シゾサッカロマイセス( Schizosaccharomyces)属微生物、ジゴサッカロマイセス( Zygosaccharomyces)属微生物、トリコデルマ( Trichoderuma)属微生物、ペニシリウム( Penicillium)属微生物、クモノスカビ( Rhizopus)属微生物、アカパンカビ( Neurospora)属微生物、ムコール( Mucor)属微生物、アクレモニウム( Acremonium)属微生物、フザリウム( Fusarium)属微生物、ネオサルトリア( Neosartorya)属微生物、ビッソクラミス( Byssochlamys)属微生物、タラロミセス( Talaromyces)属微生物、アジェロミセス( Ajellomyces)属微生物、パラコッシディオイデス( Paracoccidioides)属微生物、アンシノカルプス( Uncinocarpus)属微生物、コッシディオイデス( Coccidioides)属微生物、アルフロデルマ( Arthroderma)属微生物、トリコフィトン( Trichophyton)属微生物、エクソフィラ( Exophiala)属微生物、カプロニア( Capronia)属微生物、クラドフィアロフォラ( Cladophialophora)属微生物、マクロホミナ( Macrophomina)属微生物、レプトスファエリア( Leptosphaeria)属微生物、ビポラリス( Bipolaris)属微生物、ドチストローマ( Dothistroma)属微生物、ピレノフォラ( Pyrenophora)属微生物、ネオフシコッカム( Neofusicoccum)属微生物、セトスファエリア( Setosphaeria)属微生物、バウドイニア( Baudoinia)属微生物、ガエウマノミセス( Gaeumannomyces)属微生物、マルッソニナ( Marssonina)属微生物、スファエルリナ( Sphaerulina)属微生物、スクレロチニア( Sclerotinia)属微生物、マグナポルセ( Magnaporthe)属微生物、ヴェルチシリウム( Verticillium)属微生物、シュードセルコスポラ( Pseudocercospora)属微生物、コレトトリカム( Colletotrichum)属微生物、オフィオストーマ( Ophiostoma)属微生物、メタルヒジウム( Metarhizium)属微生物、スポロスリックス( Sporothrix)属微生物、ソルダリア( Sordaria)属微生物、アラビドプシス( Arabidopsis)属植物などが挙げられ、微生物及び植物が好ましい。ただし、どのような場合であっても、宿主生物からヒトは除かれる。
[0071]
 糸状菌の中では、安全性や培養の容易性を加味すれば、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・ニガー( A.niger)、アスペルギルス・タマリ( A.tamarii)、アスペルギルス・アワモリ( A.awamori)、アスペルギルス・ウサミ( A.usami)、アスペルギルス・カワチ( A.kawachii)、アスペルギルス・サイトイ( A.saitoi)などのアスペルギルス属微生物などが好ましい。
[0072]
 本実施形態においてタンパク質の発現は、上記のような宿主生物を用いた実施に限定されない。例えば、in vitroにおける無細胞タンパク質発現系は、特に商業規模での生成のように大量生産を目的としない場合などに好適に用いることができる。無細胞タンパク質発現系は、細胞培養を必要とせず、また、タンパク質の精製も簡便に行うことができるという利点もある。無細胞タンパク質発現系においては、主に、所望とするタンパク質に対応する遺伝子と、セルライセートのような転写と翻訳の分子機構を含む反応液とが使用される。
[0073]
(酵素をコードする遺伝子の具体例)
 サロクラディウム属由来の酵素をコードする遺伝子としては、例えば、配列番号1及び3に記載の塩基配列をそれぞれ有する遺伝子g4462及びg10122が挙げられる。なお、ペントシジンオキシダーゼ1タンパク質(PenOX1)及びペントシジンオキシダーゼ2タンパク質(PenOX2)のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号2及び配列番号4として示す。
[0074]
 サロクラディウム属及びサロクラディウム属以外の生物から酵素をコードする遺伝子を得る方法は特に限定されないが、例えば、遺伝子g4462及びg10122の塩基配列(配列番号1及び配列番号3)に基づいて、対象生物のゲノムDNAをBLAST相同性検索して、遺伝子g4462及びg10122の塩基配列と配列同一性の高い塩基配列を有する遺伝子を特定することにより得ることができる。また、対象生物の総タンパク質を基に、ペントシジンオキシダーゼ1及びペントシジンオキシダーゼ2タンパク質のアミノ酸配列(配列番号2及び配列番号4)と配列同一性の高いアミノ酸配列を有するタンパク質を特定し、該タンパク質をコードする遺伝子を特定することにより得ることができる。
[0075]
 サロクラディウム属から得られた酵素をコードする遺伝子、又は酵素と配列同一性を有する酵素をコードする遺伝子を、宿主生物としてアスペルギルス属微生物等の任意の宿主細胞に導入して形質転換することができる。
[0076]
(形質転換体)
 形質転換体の一態様は、微生物や植物などを宿主生物として、遺伝子のいずれか一つ、又はこれらの組み合わせが挿入されており、かつ、該挿入された遺伝子を発現するように形質転換した形質転換体である。
[0077]
 形質転換体の別の一態様は、微生物や植物などを宿主生物として、遺伝子g4462又はg10122のすべて又は一部を含む、遺伝子(ORF以外のプロモーター配列等も含む。)、及び、該遺伝子の転写を制御する転写因子を高発現又は低発現するように設計されたDNAコンストラクトが挿入されており、かつ、該挿入された遺伝子を発現するように形質転換した形質転換体である。
[0078]
 宿主生物が、サロクラディウム属などのペントシジンオキシダーゼの産生能が認められる生物である場合は、挿入された遺伝子は恒常的に強制発現若しくは内在性の発現よりも高発現にすること、又は細胞増殖後の培養後期で条件発現させることが望ましい。このような形質転換体は、発現量の変化した転写因子の作用によって、宿主生物又は形質転換体に適した条件で培養又は生育することにより、宿主生物では生産しない、又は生産したとしてもペントシジンオキシダーゼを検出可能以上に生産することができる。
[0079]
 上記の形質転換体の生育に適した培地を用いて、形質転換体の生育に適した培養条件下で形質転換体を培養することによって、ペントシジンオキシダーゼを製造することができる。培養方法は特に限定されず、例えば、宿主生物が糸状菌である場合は、通気又は非通気条件下で行う固体培養法や液体培養法などが挙げられる。以下では、主として宿主生物や野生型生物が糸状菌である場合の製造方法について記載するが、本実施形態は下記記載に限定されない。
[0080]
 培地は、宿主生物や野生型生物(以下では、これらを総称して「宿主生物等」ともよぶ。)を培養する通常の培地、すなわち炭素源、窒素源、無機物、その他の栄養素を適切な割合で含有するものであれば、合成培地及び天然培地のいずれでも使用できる。宿主生物等がアスペルギルス属微生物である場合は、後述する実施例に記載があるようなYMG培地やPPY培地などを利用することができるが、特に限定されない。
[0081]
 形質転換体の培養条件は、当業者により通常知られる宿主生物等の培養条件を採用すればよく、例えば、宿主生物等が糸状菌である場合、培地の初発pHは5~10に調整し、培養温度は20~40℃、培養時間は数時間~数日間、好ましくは1~7日間、より好ましくは2~4日間など、適宜設定することができる。培養手段は特に限定されず、通気撹拌深部培養、振盪培養、静地培養などを採用することができるが、溶存酸素が十分になるような条件で培養することが好ましい。例えば、アスペルギルス属微生物を培養する場合の培地及び培養条件の一例として、後述する実施例に記載があるYMG培地やPPY培地を用いた、30℃、160rpmでの3~5日間の振盪培養が挙げられる。
[0082]
 培養終了後に培養物からペントシジンオキシダーゼを抽出する方法は特に限定されない。抽出には、培養物から濾過、遠心分離などの操作により回収した菌体をそのまま用いてもよく、回収した後に乾燥した菌体やさらに粉砕した菌体を用いてもよい。菌体の乾燥方法は特に限定されず、例えば、凍結乾燥、天日乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、通気乾燥、減圧乾燥などが挙げられる。
[0083]
 また、上記処理に代えて、例えば、超音波破砕機、フレンチプレス、ダイノミル、乳鉢などの破壊手段を用いて菌体を破壊する方法;ヤタラーゼなどの細胞壁溶解酵素を用いて菌体細胞壁を溶解する方法;SDS、トリトンX-100などの界面活性剤を用いて菌体を溶解する方法などの菌体破砕処理に供してもよい。これらの方法は単独又は組み合わせて使用することができる。
[0084]
 得られた抽出液は、遠心分離、フィルターろ過、限外ろ過、ゲルろ過、溶解度差による分離、溶媒抽出、クロマトグラフィー(吸着クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなど)、結晶化、活性炭処理、膜処理などの精製処理に供することにより目的産物を精製することができる。
[0085]
(基質特異性)
 本実施形態のペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質は、ペントシジンに対して高い分解活性(基質特異性)を有し、その他のアミノ酸に対する分解活性を有し得る。例えば、以下に限定されるものではないが、一態様において、本実施形態のペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質は、ペントシジンに対する活性を100%とした場合に、アルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンから選択される1以上、2以上、3以上、4以上又は5以上のアミノ酸あるいはこれら全てのアミノ酸に対する相対的な活性が、40%以上、50%以上又は60%以上である。さらに、一態様において、本実施形態のペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質は、ペントシジンに対する活性を100%とした場合に、アスパラギン、グルタミン及びヒスチジンから選択される1以上又は2以上のアミノ酸あるいはこれら全てに対する活性が、10%以上又は20%以上の相対的活性を有する。
[0086]
 相対的活性及び基質特異性の測定方法は、当業者に公知の手法を用いて、ペントシジンに対する測定と同一又は類似の手法及び条件で実施することができ、例えば、後述の実施例に記載の手法を参照して反応速度を用いて測定することができる。
[0087]
(測定方法)
 本実施形態に係るペントシジンの測定方法は:
 検体をアミノ酸分解酵素で分解する工程、
 前記分解工程後の検体とペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質とを接触させる工程、及び
 前記接触により生じた変化を検出する工程、を含む。
[0088]
 本明細書で使用する場合、「検体」とは、被験者、例えば、ペントシジンの定量をしようとするペントシジン溶液;血液、血液成分(血清、血漿、血球等)、体液、排せつ物等の生体由来の液体成分及び固体成分等が挙げられる。一態様において、検体は、ペントシジンに関連する疾患に罹患しているか、罹患していると疑われる対象に由来する。検体は、好ましくは血液又は血液成分であり、特に好ましくは血漿である。検体はペントシジンを必ずしも含んでいなくてもよく、ペントシジンを含まない場合であっても、本実施形態に係る測定方法はペントシジン含有の有無の分析(定性分析)に使用することができる。検体が生体由来である場合、ヒト、マウス、ラット、サル等任意の生物由来のものを使用することができる。生体から採取されたものをそのまま使用しても、任意の処理後に使用してもよい。
[0089]
(アミノ酸分解酵素)
 本実施形態の測定方法は、検体をアミノ酸分解酵素で分解する工程を含む。ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質との接触に先立って、アミノ酸分解酵素による分解を行うことで、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が他のアミノ酸と反応することに起因する測定誤差を減少させ、より正確なペントシジンの測定が可能となる。
[0090]
 アミノ酸分解酵素は、上記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質とは異なる酵素であり、ペントシジン以外のアミノ酸を優先的に分解することができる酵素である。アミノ酸分解酵素としては、アミノ酸オキシダーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ、アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸デカルボキシラーゼ、アミノ酸アンモニアリアーゼ、アミノ酸オキシゲナーゼ(ヒドロシラーゼ)、アミノ酸ヒドロラーゼ等が挙げられ、任意のものを、その基質特異性を考慮して用いることができる。アミノ酸分解酵素は、単独で用いても、2種以上を混合又は併用してもよい。
[0091]
 アミノ酸分解酵素としては、特に限定されず、公知の酵素を用いることができ、市販品を用いてもよい。例えば、市販のアミノ酸定量キット等の試薬をアミノ酸分解酵素として用いることもできる。その製造方法も限定されず、例えば、ペントシジンオキシダーゼの製造について上述したのと同様の手法を用いて、アミノ酸分解酵素をコードする遺伝子(一例として、後述の実施例11に示すエスカピン(Escapin、配列番号15:ジャンボアメフラシ( Aplysia  californica)由来Escapinの成熟ペプチドのアミノ酸配列)をコードする遺伝子)を導入した形質転換体を作製し、これを培養した培地からアミノ酸分解酵素を得ることもできる。
[0092]
 アミノ酸分解酵素として、例えば下記表に示すものを、基質特異性を考慮して単独又は組み合わせて用いることができる。
[表1]


[0093]
 アミノ酸分解酵素は、ペントシジンと反応しない条件で所望のアミノ酸を分解可能な酵素である。一態様において、アミノ酸分解酵素は、最も活性の高い(最も分解される)アミノ酸に対する活性を100%とした場合に、同条件下でのペントシジンに対する相対的活性が、30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である。
[0094]
 アミノ酸分解酵素は、測定対象の検体に含まると考えられるアミノ酸の種類や、測定に用いるペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質の基質特異性を考慮して選択することができる。
 一態様において、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質の、ペントシジンに対する活性を100%とした場合に、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が5%以上、10%以上、20%以上、40%以上又は60%以上の相対的活性を有するアミノ酸を分解するアミノ酸分解酵素を用いることができる。
[0095]
 一態様において、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質がペントシジンオキシダーゼ(好ましくは、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を有するペントシジンオキシダーゼ又はその改変体、より好ましくは配列番号4のアミノ酸配列を有するペントシジンオキシダーゼ又はその改変体)である場合、アルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンから選択される1以上、2以上、3以上、4以上又は5以上のアミノ酸あるいは好ましくはこれら全てのアミノ酸を分解するアミノ酸分解酵素を用いることができる。このようなアミノ酸分解酵素として、例えば、以下のアミノ酸分解酵素を用いることができる。
・アルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンから選択される1以上のアミノ酸に対する活性を100%とした場合に、同条件下でのペントシジンに対する相対的活性が、30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下であるアミノ酸分解酵素。
・アミノ酸分解酵素の組み合わせであって、組み合わせた酵素のアルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンのうち任意のアミノ酸に対する活性を100%とした場合に、同条件下でのペントシジンに対する相対的活性が、30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下である組み合わせ。
・Escapin又はこれと同様の基質特異性を示すその改変体と、ヒガシダイヤガラガラヘビ由来L-アミノ酸オキシダーゼ又はこれと同様の基質特異性を示すその改変体との組み合わせ。
・Escapin又はこれと同様の基質特異性を示すその改変体と、ヒガシダイヤガラガラヘビ由来L-アミノ酸オキシダーゼ又はこれと同様の基質特異性を示すその改変体に、さらに、ヒスチジンデカルボキシラーゼ、アスパラギナーゼ、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ、グルタミナーゼ及びグルタミン酸デカルボキシラーゼから選択される1以上、2以上、3以上、4以上又はこれら全ての酵素を加えた組み合わせ。
[0096]
 一態様において、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質がペントシジンオキシダーゼ(好ましくは、配列番号2又は配列番号4のアミノ酸配列を有するペントシジンオキシダーゼ又はその改変体、より好ましくは配列番号4のアミノ酸配列を有するペントシジンオキシダーゼ又はその改変体)である場合、アルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンに加えて、アスパラギン、グルタミン及びヒスチジンから選択される1以上又は2以上のアミノ酸あるいはこれら全てのアミノ酸を分解するアミノ酸分解酵素を用いることができる。
[0097]
 検体をアミノ酸分解酵素で分解する条件は、所望のアミノ酸を分解することができ、アミノ酸分解酵素がペントシジンと反応しない条件であれば特に限定されず、使用するアミノ酸分解酵素に応じて適宜設定することができる。
 例えば、アミノ酸分解酵素としてアミノ酸オキシダーゼを用いる場合、その量は、検体中に含まれるアミノ酸の量や反応条件などにより適宜選択することができ、0.001~50U/ml、好ましくは0.01~10U/mlである。pHは、使用するアミノ酸オキシダーゼが作用する範囲を考慮して、例えば、pH3~12、好ましくはpH4~11に調整することができる。pH調整剤及び緩衝液としては、検体及び調節pHに応じて公知の任意のものを用いることができる。反応温度は、使用するアミノ酸オキシダーゼの至適温度範囲を考慮して、例えば、15~65℃、好ましくは20~60℃を採用することができる。反応時間は、所望のアミノ酸を分解するのに十分な時間であればよく、例えば1~120分間、好ましくは2~60分間反応を行なうことができる。
[0098]
 上記アミノ酸分解酵素による分解後、そのまま、あるいは必要により適宜、加熱、遠心分離、濃縮、希釈等の工程を経て、前記分解工程後の検体とペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質とを接触させる。
[0099]
 検体と、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質とを接触させる条件は、ペントシジンを分解することができる条件であれば特に限定されない。
 例えば、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質としてペントシジンオキシダーゼを用いる場合、その量は、検体中に含まれ得るペントシジンの量や反応条件などにより適宜選択されるが、0.001~50U/ml、好ましくは0.01~10U/mlである。pHは、使用するペントシジンオキシダーゼが作用する範囲を考慮して、例えば、pH4~10、好ましくはpH5.5~9に調整することができる。pH調整剤及び緩衝液としては、検体及び調節pHに応じて公知の任意のものを用いることができる。反応温度は、使用するペントシジンオキシダーゼの至適温度範囲を考慮して、例えば、20~60℃、好ましくは30~55℃を採用することができる。反応時間は、所望のアミノ酸を分解するのに十分な時間であればよく、例えば1~120分間、好ましくは2~60分間、反応を行なうことができる。
[0100]
 その後、前記接触により生じた変化を検出する。本明細書で使用する場合、「接触により生じた変化」とは、検体中に含まれるペントシジンなどの出発物質や、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質との反応生成物又は反応消費物などの有無、又はそれらの量の経時的な変化を意味する。
[0101]
 より具体的な態様において、ペントシジンの測定方法は:
 (A)水と酸素の存在下、検体にペントシジンオキシダーゼを作用させる工程;及び
 (B)上記ペントシジンオキシダーゼの作用による反応生成物又は反応消費物の少なくとも一種の量を計測する工程
 を含み得る。
[0102]
 上記工程(B)において測定する反応生成物としては、過酸化水素、アンモニア及びペントシジンの脱アミノ化生成物を挙げることができる。また、反応生成物である過酸化水素の量は、例えば、ペルオキシダーゼ反応により計測することができる。また、反応生成物であるアンモニアの量は、例えば、インドフェノール法やネスラー試薬を用いる方法、もしくは、グルタミン酸デヒドロゲナーゼやNADシンターゼ等のアンモニアを基質とする酵素を用いてNADH量を測定する方法等により計測することができる。本明細書で使用する場合、「脱アミノ化生成物」とは、例えば、ペントシジンを構成するリジンとアルギニンのアミノ基の一方又は両方が外れて酸素に置き換わり、少なくとも一方の末端がケト酸となっている生成物を意味する。このような脱アミノ化生成物の例を図5に示す。上記工程(B)において測定する反応消費物としては、酸素を挙げることができる。酵素反応により減少する酸素量は、例えば、酸素電極により測定することができる。または、Winkler手法に基づいて、酸素によりマンガンイオンの酸化させることで、比色定量することもできる。
[0103]
 血漿中のペントシジン濃度は、健常者(平均±S.D.39.6±7.8ng/mL)と比較して、例えば統合失調症患者(68.4ng/mL)において、70%程度高いという報告がある(新井ら,精神神経学雑誌(2012), 114巻2号, pp. 101-107;Arai, M., et al. Arch Gen Psychiat, 67; 589-597, 2010)。本実施形態の測定方法によれば、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質との接触に先立って、アミノ酸分解酵素による分解を行うことで、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が他のアミノ酸と反応することに起因する測定誤差を70%未満、好ましくは60%未満、より好ましくは50%未満に減少させ、より正確なペントシジンの測定が可能となるため、ペントシジンが関連する疾患の診断にも非常に有用である。
[0104]
 別の態様において、本実施形態は、アミノ酸分解酵素及びペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質を含む、検体中のペントシジン測定用キットを提供する。本実施形態に係るキットは、ペントシジンとペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質との反応生成物又は反応消費物を検出するために使用され得る。本実施形態に係るキットはさらに、反応用緩衝液、並びに反応生成物検出用試薬、例えば過酸化水素検出用試薬、アンモニア検出試薬及びペントシジンの脱アミノ化生成物検出用試薬、又は反応消費物検出用試薬、例えば酸素検出用試薬の少なくとも一つを含むものであってもよい。本実施形態のキットは体外診断薬としても使用可能であり、例えば、ペントシジン又は、ペントシジンとペントシジンオキシダーゼとの反応生成物に関連している疾患、例えば糖尿病や腎症の診断に好適に使用され得る。
[0105]
 過酸化水素検出用試薬としては、過酸化水素を高感度で検出できる10-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノシアジン(DA-67)やN-(カルボキシメチルアミノカルボニル)-4,4'-ビス(ジメチルアミノ)-ジフェニルアミン(DA-64)に加え、公知のトリンダー試薬などの呈色試薬が挙げられる。アンモニア検出用試薬としては、フェノール・ニトロプルシッドナトリウムと、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤との組み合わせ(インドフェノール法)、ネスラー試薬等が挙げられる。酸素検出用試薬としては、例えば、マンガンイオン、水酸化ナトリウム及び硫酸の組み合わせが挙げられる
[0106]
 呈色反応を利用した反応生成物の検出は免疫化学的な方法や機器分析的手法と比較して極めて簡便で安価に行うことができる。しかしながら、反応生成物又は反応消費物の検出は、検出試薬以外の他公知の定量・定性方法を排除するものではなく、適宜採用してもよい。例えば、過酸化水素やアンモニアの検出試薬に代えて、専用の検出電極を備えた酵素センサなどの装置を使用して検出を行うこともできる。
[0107]
 上記反応生成物又は反応消費物の検出方法は、ペントシジン又は各反応生成物又は反応消費物と直接的又は間接的に関連している疾患の検出方法、延いては診断方法にも使用可能である。
[0108]
 さらに、本実施形態は、検体由来のペントシジンの反応生成物の製造方法であって、
 検体をアミノ酸分解酵素で分解する工程、
 前記分解工程後の検体とペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質とを接触させる工程
を含み、前記アミノ酸分解酵素と前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質は異なる、方法にも関する。
 各工程は、ペントシジンの測定方法に関する記載を参照して実施することができる。
[0109]
 以下、本実施形態を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
実施例
[0110]
(実施例1)サロクラディウム・エスピー(Sarocladium sp.)の培養及び酵素液調製方法
・使用培地
 MEA培地:Malt extract agar(Oxoid社製)を50g/Lとなるよう蒸留水に溶解した。
 YMG培地:Yeast extract 0.4%、Malt extract 1%、グルコース 0.4%、pH5.5
[0111]
・菌株の培養
 -80℃で保存されたサロクラディウム・エスピー( Sarocladium sp.) F10012株をMEA培地に塗布し、24℃で7~10日間、十分量の菌糸が得られるまで静置培養した。得られた菌糸を1Lフラスコ中のYMG培地250mLに接種し、30℃で3日間振とう培養した。
[0112]
・粗酵素液の調製
 菌体を培養したYMG培地を、Miracloth(メルクミリポア社製)を用いてろ過することで菌体を取り除き、培養上清を取得した。培養上清を限外ろ過膜(Vivaspin 20-3k、GEヘルスケア社製)を用いて濃縮し、50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)で希釈する工程を複数回繰り返すことで低分子を除去するとともに、YMG培地をリン酸カリウムバッファーに置換した。
[0113]
・目的酵素の粗精製
 バッファー置換した粗酵素液を、イオン交換クロマトグラフィー用カラム(HiTrap Q Sepharose Fast Flow 1mL、GEヘルスケア社製)を用いて分画した。具体的な手順は、以下のとおりである。
[0114]
 まず、50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)で平衡化したカラムに粗酵素液をロードし、酵素をカラムに吸着させた後に、5mLのリン酸カリウムバッファーでカラムを洗浄し、未吸着のタンパク質を溶出させた。
[0115]
 その後、リン酸カリウムバッファーに0.25M、0.5M、0.75M、1.0Mの塩化ナトリウムを溶解したバッファーを5mLずつ順次カラムに通すことで、カラムに吸着したタンパク質を溶出させた。
[0116]
 粗酵素液をロードした際にカラムから溶出した液を「Flow through」、バッファーによる洗浄時に溶出した液を「Start buffer」、塩化ナトリウムを含むバッファーで溶出した液をそれぞれ「Elution1」、「Elution2」、「Elution3」、「Elution4」とし、それぞれ異なる容器に回収した。
[0117]
(実施例2)ペントシジンオキシダーゼ活性の測定方法
・酵素粗精製液の活性測定
 イオン交換クロマトグラフィー用のカラムより溶出した液をサンプルとし、活性を測定した。サンプル50μLを、100mM リン酸カリウムバッファー(pH8.0)に溶解した4mM ペントシジン(遊離体換算)(ペプチド研究所社製、3トリフルオロアセテート(TFA)塩を使用。)25μL及びオキシダーゼ発色試薬(4U/mL ペルオキシダーゼ(TOYOBO社製)、1.8mM 4-アミノアンチピリン(Fluka社製)、2mM TOOS(Dojindo社製))25μLと混合し、室温で反応させた。
[0118]
 反応には、96穴のマイクロウェルプレート(Nunc社製)を用いた。ブランクは、基質溶液のかわりに100mM リン酸カリウムバッファー(pH8.0)を加えたものとした。反応液及びブランク溶液の555nmにおける吸光度を測定し、吸光度の差(ΔOD)をもとに酵素活性の強さを評価した。
[0119]
・基質濃度依存性試験
 酵素粗精製液のペントシジンオキシダーゼ活性を、様々な濃度の基質を用いて測定することで、基質の濃度に対する活性の推移を評価した。用いた基質溶液の濃度は、0.13mM、0.25mM、0.5mM、1.0mM、2.0mM及び4.0mMである。
[0120]
・熱失活試験
 酵素粗精製液を80℃で1時間熱処理をすることにより、タンパク質を変性させた。この加熱処理サンプルのペントシジンオキシダーゼ活性を上述の活性測定方法にのっとって測定し、未加熱のサンプルの活性と比較した。
[0121]
(実施例3)サロクラディウム・エスピー(Sarocladium sp.)酵素液のペントシジンオキシダーゼ活性解析
 サロクラディウム・エスピー( Sarocladium sp.)の培養上清をイオン交換クロマトグラフィー用カラムで分画したサンプルについて、ペントシジンとの反応性を解析した。その結果、0.25M 塩化ナトリウムを含むリン酸カリウムバッファーで溶出したElution1に強い活性が認められ、ペントシジンオキシダーゼが含まれていることが示唆された。このElution1に対し、基質濃度依存性試験(図1)及び熱失活試験(図2)を行ったところ、酵素活性は基質濃度依存的に上昇し、さらに加熱処理により完全に失活することが明らかとなった。このことから、Elution1にみられるペントシジンオキシダーゼ活性は、酵素由来のものであることが示された。
[0122]
(実施例4)サロクラディウム・エスピー(Sarocladium sp.)由来のペントシジンオキシダーゼの配列決定
 上記結果と、サロクラディウム・エスピー( Sarocladium sp.)の全ゲノム配列情報に基づき、ペントシジンオキシダーゼであると推測される、2種類の遺伝子(配列番号1及び配列番号3)とそのアミノ酸配列(配列番号2及び配列番号4)が特定された。
[0123]
(実施例5)麹菌アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)における、サロクラディウム・エスピー(Sarocladium sp.)由来ペントシジンオキシダーゼの異種組換発現
 上記で特定された2種のペントシジンオキシダーゼについて、酵素活性を解析するために麹菌アスペルギルス・ソーヤを宿主として異種組換発現を行った。
[0124]
・発現ベクターの作製
 配列番号2と配列番号4のアミノ酸配列を基に麹菌発現用にコドン改変した配列番号5と6の塩基配列を人工遺伝子合成によりそれぞれ取得した。
[0125]
 配列番号5及び配列番号6のペントシジンオキシダーゼ遺伝子(penox1、penox2)を発現させるための発現カセットとしては、翻訳伸長因子遺伝子tef1のプロモーター配列であるPtef(tef1遺伝子の上流748bp、配列番号7)をプロモーターとして、アルカリプロテアーゼ遺伝子alpのターミネーター配列であるTalp(alp遺伝子の下流800bp、配列番号8)をターミネーターとして用いた。
[0126]
 また、選択マーカーとしてはウラシル/ウリジン要求性を相補し、遺伝子の多コピー導入を可能とする形質転換マーカー遺伝子pyrG3(上流56bp、コード領域896bp及び下流535bpを含む1,487bp、配列番号9)を用いた(特開2018-068292号公報参照)。これらのPtef、Talp、pyrG3は、麹菌アスペルギルス・ソーヤ( Aspergillus  sojae NBRC4239株)のゲノムDNAを鋳型としたPCR反応により取得した。
[0127]
 次に、それぞれのDNAを連結するためにIn-Fusion HD Cloning Kit(クロンテック社製)を使用した。例えば、Ptefとpenox1遺伝子及びTalpとを連結させる場合には、Ptefは配列番号10のリバースプライマーを用いて、Talpは配列番号11のフォワードプライマーを用いてPCR反応によりDNA断片を増幅させている。このとき、配列番号10のPtef増幅用のリバースプライマーには、5'末端にpenox1遺伝子(配列番号5)の5'末端と相補的な配列が15bp付加されており、配列番号11のTalp増幅用のフォワードプライマーには、5'末端にpenox1遺伝子(配列番号5)の3'末端と相同な配列が15bp付加されているため、In fusion反応により、Ptef、penox1遺伝子及びTalpとの連結が可能となる。このようにして、Ptef、penox1遺伝子又はpenox2遺伝子、Talp及びpyrG3が順に連結されたPtef-penox1-Talp-pyrG3、Ptef-penox2-Talp-pyrG3がpUC19プラスミドのマルチクローニングサイトに挿入されている発現ベクターp19-pG3-penox1及びp19-pG3-penox2を作製した。
[0128]
・麹菌発現株の作製及び培養
 上記で取得した形質転換用プラスミドp19-pG3-penox1及びp19-pG3-penox2を用いて、アスペルギルス・ソーヤのpyrG遺伝子破壊株(pyrG遺伝子の上流48bp、コード領域896bp、下流240bp欠損株)に対しプロトプラストPEG法により形質転換を行い、penox1及びpenox2の発現カセットが多コピーで挿入されたアスペルギルス・ソーヤ形質転換株As-penox1株を9株、As-penox2株を6株取得した。
[0129]
 取得したアスペルギルス・ソーヤ形質転換株As-penox1株及びAs-penox2株を50mL三角フラスコに入れた15mLのPPY液体培地(2%(w/v)パインデックス、1%(w/v)ポリペプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v)リン酸2水素1カリウム、0.05%(w/v)硫酸マグネシウム・7水和物)に植菌し、30℃で4~5日間振とう培養を行った。
[0130]
・菌糸抽出液の調製
 各As-penox1株及びAs-penox2株の培養液をMiracloth(メルクミリポア社製)を用いてろ過し、培養上清を取り除いて菌体を取得した。15mLの10mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)に再懸濁した後、Micro Smash MS-100R(トミー精工社製)を用いて菌体を破砕した。菌体破砕液を15,000rpmで15分間遠心分離して、上清を粗酵素液として回収した。
[0131]
・菌糸抽出液のL-アルギニン酸化活性の測定
 各粗酵素液200μLを、150mM リン酸カリウムバッファー(pH 7.0)に溶解した7.1U/mL ペルオキシダーゼ、 0.70mM 4-アミノアンチピリン、0.79mM TOOS溶液380μLと混合して37℃で5分間インキュベートした後、60mM L-アルギニン溶液20μLを添加して撹拌し、37℃で5分間反応させた。反応中のA 555の経時変化を分光光度計(U-3900、日立ハイテクサイエンス社製)で測定した。対照実験は、20μLの60 mM L-アルギニン溶液の代わりに20μLのイオン交換水を添加して実施した。37℃で1分間あたりに1μmolの過酸化水素を生成する酵素量を1unit(U)と定義し、下記の式に従って算出した。
[0132]
  活性 (U/mL)={(ΔAs-ΔA0)×0.6×df}÷(39.2×0.5×0.2)
   ΔAs:反応液の1分間あたりのA 555変化量
   ΔA0:対照実験の1分間あたりのA 555変化量
   39.2:反応により生成されるキノンイミン色素のミリモル吸光係数 (mM -1・cm -1
   0.5:1molの過酸化水素による生成されるキノンイミン色素のmol数
   0.6:反応液全体の容量(mL)
   df:希釈係数
   0.2:酵素液の容量(mL)
[0133]
 As-penox1株、As-penox2株の粗酵素液のL-アルギニン酸化活性は、最大で、それぞれ0.009U/mL(As-penox1-15株)、5.1U/mL(As-penox2-16株)であった。
[0134]
(実施例6)菌糸抽出型組換えpenox2の精製
 As-penox2-16株の粗酵素液を、10mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)にバッファー置換した後、陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(HiScreen CaptoQ、GEヘルスケア社製)を用いて分画した。まず、10mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)で平衡化したカラムに粗酵素液をロードし、酵素をカラムに吸着させた後に、10mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)でカラムを洗浄し、未吸着のタンパク質を溶出させた。その後、10mMリン酸カリウムバッファー(pH 7.5)に含まれる塩化ナトリウム濃度を0mMから40mMまで直線的に上昇させ、カラムに吸着したタンパク質を溶出させた。L-アルギニン酸化活性を示す画分をSDS-PAGEで分析し、夾雑タンパク質を含まない画分を精製PenOX2として回収した。回収した精製PenOX2溶液は、限外ろ過膜(Amicon Ultra 15-30k、メルク社製)を用いて、L-アルギニン酸化活性が24U/mLになるまで濃縮し、ペントシジン定量試験に用いた。
[0135]
(実施例7)ペントシジン定量試験
 以下の試薬を調製し、Bio Majesty JCA-BM1650(日本電子社製)を利用してペントシジンを測定した。
(試料:ペントシジン溶液)
 0.2μM、0.4μM、0.6μM、1.0μM、2.0μM又は4.0μMペントシジン溶液(実施例2と同様のペントシジンを用いて調整)
[0136]
(第1試薬:Leuco色素、ペルオキシダーゼ溶液)
 120mM リン酸カリウムバッファー(pH7.0)
 0.2mM DA-67(10-(Carboxymethylaminocarbonyl)-3,7-bis(dimethylamino)phenothiazine, sodium salt)(和光純薬工業社製)
 3.0U/mL ペルオキシダーゼ
[0137]
(第2試薬:PenOX2溶液)
 120mM リン酸カリウムバッファー(pH7.0)
 24U/mL PenOX2
[0138]
 試料25μLを50μLの第1試薬に添加して37℃で5分間インキュベートした後、25μLの第2試薬を添加して、PenOX2によるペントシジン酸化反応と、前記反応によって生成される過酸化水素の検出反応を37℃で5分間進行させた。
[0139]
 過酸化水素の検出反応では、ペルオキシダーゼが消費されると同時にDA-67が酸化されてメチレンブルーとなって呈色し、吸光度(A 658)が上昇する。一例として、試料(4.0μM ペントシジン溶液)と第1試薬を混合してからの経過時間と吸光度(A 658)の関係を図3に示した。PenOX2を含む第2試薬の添加直後からA 658の上昇が確認できた。
[0140]
 続いて、ペントシジンの酸化に起因するA 658上昇量(ΔA)を下記の式に従って算出した。
 ΔA=(第2試薬添加5分後の吸光度)-(第2試薬添加直前の吸光度×0.75)
 (第2試薬の添加により反応液中の組成物の濃度は0.75倍(75/100倍)となるため、
  第2試薬添加直前の吸光度を0.75倍した値を第2試薬添加直後の吸光度とみなした。)
[0141]
 ペントシジン終濃度とΔAとの間には相関関係が成立した(図4)。したがって、PenOX2はペントシジン酸化活性を示し、ペントシジンの定量に利用できることが示された。結果は示さないが、PenOX1も同様にペントシジン酸化活性を示した。
[0142]
(実施例8)菌糸分泌型組換えpenox2の精製
 As-penox2株の菌糸培養液をMiracloth(メルクミリポア社製)を用いてろ過し、菌糸培養上清を回収した。得られた菌糸培養上清75mLを、ポアサイズ0.2μmのシリンジフィルターでフィルターろ過したのち限外ろ過膜(Amicon Ultra 15-30k、メルク社製)で濃縮した。濃縮液に、硫酸アンモニウムを70%飽和となるように徐々に添加し、2時間、4℃で放置後、遠心(15,000rpm、4℃、5分)し、余分なタンパク質を沈殿させ、上清を回収した。回収した上清を、限外ろ過膜(Amicon Ultra 0.5-30k、メルク社製)で濃縮した。
[0143]
 これに、2M硫酸アンモニウムを含む50mMリン酸カリウムバッファー(pH7.5)を添加した後、疎水性相互作用クロマトグラフィー用カラム(HiTrap Butyl Fast Flow 1mL、GEヘルスケア社製)を用いて分画した。具体的な手順は、以下のとおりである。
[0144]
 まず、2M 硫酸アンモニウムを含む50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)で平衡化したカラムに粗酵素液をロードし、酵素をカラムに吸着させた後に、2M 硫酸アンモニウムを含む50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5) 10mLでカラムを洗浄し、未吸着のタンパク質を溶出させた。
[0145]
 その後、1.5M、1.3M、1.15M 硫酸アンモニウムをそれぞれ含む50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)を5mLずつ、さらに1M 硫酸アンモニウムを含む50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)を10mL、硫酸アンモニウムを含まない50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)を5mL、順次カラムに通すことで、カラムに吸着したタンパク質を溶出させた。
[0146]
 粗酵素液をロードした際にカラムから溶出した液を「Flow through1」、硫酸アンモニウム2Mを含むバッファーによる洗浄時に溶出した液を「Elution1」、硫酸アンモニウム1.5M、1.3M、1.15M、1Mを含むバッファーで溶出した液をそれぞれ「Elution2」、「Elution3」、「Elution4」、「Elution5」、硫酸アンモニウムを含まないバッファーで溶出した液を「Elution6」とし、それぞれ異なる容器に回収した。
[0147]
 分画したサンプルについて、ペントシジンとの反応性を解析した。その結果、1M 硫酸アンモニウムを含むリン酸カリウムバッファーで溶出したElution5に強い活性が認められ、ペントシジンオキシダーゼ(PenOX2)が含まれていることが示唆された。このElution5を、限外ろ過膜(Amicon Ultra 15-30k、メルク社製)で濃縮し、硫酸アンモニウムを含まない50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)にバッファー置換したのち再度限外ろ過膜(Amicon Ultra 15-30k、メルク社製)で濃縮した。これを、イオン交換クロマトグラフィー用カラム(HiTrap Q Sepharose Fast Flow 1mL、GEヘルスケア社製)を用いて分画した。具体的な手順は、以下のとおりである。
[0148]
 まず、50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)で平衡化したカラムに粗酵素液をロードし、酵素をカラムに吸着させた後に、5mLの50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)でカラムを洗浄し、未吸着のタンパク質を溶出させた。
[0149]
 その後、50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)に0.1Mの塩化ナトリウムを溶解した液を1mL 5回、同バッファーに0.175Mの塩化ナトリウムを溶解した液を1mL 5回、同バッファーに1Mの塩化ナトリウムを溶解した液を5mL 1回、順次カラムに通すことで、カラムに吸着したタンパク質を溶出させた。
[0150]
 粗酵素液をロードした際にカラムから溶出した液を「Flow through2」、バッファーによる洗浄時に溶出した液を「Elution7」、塩化ナトリウムを含むバッファーで溶出した液をそれぞれ「Elution8-1」、「Elution8-2」、「Elution8-3」、「Elution8-4」、「Elution8-5」、「Elution9-1」、「Elution9-2」、「Elution9-3」、「Elution9-4」、「Elution9-5」、「Elution10」とし、それぞれ異なる容器に回収した。
[0151]
 分画したサンプルについて、ペントシジンとの反応性を解析した。その結果、0.175M 塩化ナトリウムを含むリン酸カリウムバッファーで溶出したElution9-1及びElution9-2に強い活性が認められ、ペントシジンオキシダーゼが含まれていることが示唆された。活性画分Elution9-1及びElution9-2を等量ずつ混合したものをSDS-PAGEで分析したところ、ほぼ単一のバンドが得られた(分子量約80,000)。得られたこの活性画分を、以下の理化学的性質を決定するのに用いた。
[0152]
(実施例9)アスペルギルス・ソーヤ形質転換株As-penox2株により生産されたPenOX2の理化学的性質
 PenOX2の理化学的性質を決定するために、以下の酵素活性の測定方法を用いた。
 任意のバッファー600μL、脱イオン水に溶解した3.99U/mL ペルオキシダーゼ、1.8mM 4-アミノアンチピリン、2mM TOOS溶液400μL、脱イオン水150μLを任意の温度で10分間インキュベートした後、氷上で保存していた酵素液50μL、任意の温度で10分間インキュベートした100mM リン酸カリウムバッファー(pH8.0)に溶解させた2mM ペントシジン溶液400μLを添加して撹拌し、任意の温度で3分間反応させた。反応中のA 555の経時変化を分光光度計(U-3900、日立ハイテクサイエンス社製)で測定した。20秒から60秒までの測定開始後経過時間-A 555変化量を活性値とみなした。
 さらに、37℃で1分間あたりに1μmolの過酸化水素を生成する酵素量を1unit(U)と定義し、下記の式に従って算出した。
[0153]
  活性 (U/mL)={(ΔAs-ΔA0)×1.6×df}÷(39.2×0.5×0.05)
   ΔAs:反応液の1分間あたりのA 555変化量
   ΔA0:対照実験の1分間あたりのA 555変化量
   1.6:反応液全体の容量(mL)
   df:希釈係数
   39.2:反応により生成されるキノンイミン色素のミリモル吸光係数 (mM -1・cm -1
   0.5:1molの過酸化水素による生成されるキノンイミン色素のmol数
   0.05:酵素液の容量(mL)
[0154]
 penox2の理化学的性質は、以下の通りであった。
(a)至適pHの範囲
 終濃度50mM クエン酸-100mM リン酸カリウムバッファー(pH4.0-7.5)、終濃度100mM リン酸カリウムバッファー(pH6.5-8.0)、終濃度100mM グリシンバッファー(pH8.0-11.0)となるように夫々のバッファーを調製し、これらを用いて、夫々のpHにおいて、温度37℃にて酵素反応を行なった。結果を図7に示す。PenOX2は、pH7.5において最も高い活性を示した。また、pH6.5-8.0でもリン酸カリウムバッファーpH7.5付近における活性値の70%以上を示したことから、PenOX2の至適pHはpH6.5-8.0であり、最も好ましい至適pHはpH7.5であると判断した。
(b)至適温度の範囲
 終濃度50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)を用いて、種々の温度にてPenOX2の活性測定を行なった。結果を図8に示す。最も高い活性を示した温度である、50℃付近での活性に対して、80%以上の活性を示す温度範囲は37℃~50℃であった。以上から、PenOX2の至適温度の範囲は37℃~50℃であると判断した。
(c)熱安定性
 酵素液を各温度で10分間処理した時の残存活性を、終濃度100mM リン酸カリウムバッファー(活性測定時最終pH7.5)を用い温度37℃にて前記活性測定を行なうことで評価した。熱安定性の結果は、図9に示す通りであり、PenOX2は、30℃付近まで安定であった。
(d)安定pHの範囲
 緩衝液として、100mM クエン酸-200mM リン酸カリウムバッファー(pH3.0-6.5)、200mM リン酸カリウムバッファー(pH6.5-8.0)、200mM グリシンバッファー(pH8.0-10.0)を用いて、夫々のpHにおいて25℃で20時間処理した後、PenOX2の残存活性を測定した。結果を図10に示す。4℃で保存しておいたPenOX2の活性に対して90%以上の活性を示すpH範囲はpH4.5-7.5、60%以上の活性を示すpH範囲はpH4.0-9.0であった。
(e)ペントシジンに対する活性値
 前記活性測定方法において、終濃度50mM リン酸カリウムバッファー(活性測定時最終pH7.5)、37℃で活性測定を行ない、上記の計算式を用いて活性値(U/mL)を求めた。活性値は7.8U/mL、比活性は29.1U/mg(ブラッドフォード法)であることが判った。
(f)ペントシジンに対するKm値
 前記活性測定方法において、終濃度50mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)、37℃で、基質ペントシジンの濃度を変化させて活性測定を行ない、ラインウェーバー・バークプロットから、ミカエリス定数(Km)を求めた。結果を図11に示す。ペントシジン(遊離体)に対するKm値は0.070mMであることが判った。
(g)分子量
 Laemmliの方法に従って行なったSDS-PAGE法により分子量を求めた。電気泳動ゲルとしてはMini-PROTEAN TGX Stain-Free Precast Gels 4-20%(Bio-rad社製)を用い、分子量マーカーとしてはPrecision Plus Protein All Blue Prestained Protein Standardsを用いた。結果を図12に示す。PenOX2の分子量は、約80,000であった。
[0155]
(実施例10)PenOX1及びPenOX2と配列相同性を持つ酵素のペントシジンオキシダーゼ活性測定
[0156]
 前述の通りPenOX1及びPenOX2はいずれもペントシジンオキシダーゼ活性を有していた。BLASTプログラムを用いてアミノ酸配列の一致率を調べると、両者のアミノ酸配列相同性は38.2%であった。続いて以下の3酵素を購入し、前記活性測定方法において、終濃度100mM リン酸カリウムバッファー(pH7.5)、37℃で、ペントシジンオキシダーゼ活性を調べた。夫々のPenOX1及びPenOX2とのアミノ酸配列相同性、並びにペントシジンオキシダーゼ活性は以下の通りであった。
(a) Crotalus  adamanteus由来アミノ酸オキシダーゼType VI(メルク社製)(配列番号12)
分子量:130,000
 本酵素のPenOX1及びPenOX2とのアミノ酸配列相同性は、夫々26.8%及び23.5%であった。酵素濃度が1mg/mL(ビュレット法)になるよう脱イオン水で希釈して活性測定に用いた。本酵素のペントシジンオキシダーゼ活性は0.555(U/mL)、比活性は0.555(U/mg)であった。
(b) Crotalus  atrox由来アミノ酸オキシダーゼType I(メルク社製)(配列番号13)
分子量:59,000(アミノ酸配列に基づく計算値)
 本酵素のPenOX1及びPenOX2とのアミノ酸配列相同性は、夫々26.3%及び23.4%であった。酵素粉末1mgを1mLの脱イオン水で溶解して活性測定に用いた。本酵素のペントシジンオキシダーゼ活性は0.022(U/mL)、比活性は参考値として0.022(U/mg)であった。
(c) Trichoderma  viride由来リジンオキシダーゼ(メルク社製)(配列番号14)
分子量:116,000
 本酵素のPenOX1及びPenOX2とのアミノ酸配列相同性は、夫々24.0%及び23.3%であった。酵素粉末1mgを1mLの脱イオン水で溶解して活性測定に用いた。本酵素のペントシジンオキシダーゼ活性は0.063(U/mL)、比活性は参考値として0.063(U/mg)であった。本実施例で使用した酵素間の配列相同性を以下の表に示す。
[表2]


[0157]
(実施例11)麹菌アスペルギルス・ソーヤ(Aspergillus sojae)における、Escapinの異種組換発現
 成熟Escapinをコードする遺伝子の5’末端に Aspergillus属のシグナルペプチドをコードする遺伝子を付加したものについて、麹菌アスペルギルス・ソーヤを宿主として異種組換え発現を行った。
[0158]
・発現ベクターの作製
 成熟Escapin遺伝子配列としては、文献(Yang et al, J Exp Biol, 208(18):3609-22, 2005)に記載のジャンボアメフラシ( Aplysia  california)の由来の、配列番号15のアミノ酸配列(塩基配列は配列番号17)を基に麹菌発現用にコドン改変した1,554塩基対(配列番号18)を用いた。
 シグナルペプチドをコードする遺伝子としては、69塩基対からなるAoCDHss(アスペルギルス・オリゼ由来セルロースデヒドロゲナーゼのシグナルペプチドをコードする遺伝子のエキソン領域。配列番号16)を用いた。
 成熟Escapinをコードする遺伝子の5’末端に Aspergillus属のシグナルペプチドをコードする遺伝子を連結したもの(配列番号18の5’末端に配列番号16を連結したもの。以下、遺伝子配列A)をプラスミドに組み込むために、遺伝子配列Aの5’末端側に12塩基対からなる遺伝子配列(配列番号20)を、3’末端側に12塩基対からなる遺伝子配列(配列番号21)を付加したもの(以下、遺伝子配列A')を人工遺伝子合成により取得した。
[0159]
 遺伝子配列Aを発現させるための発現カセットとしては、翻訳伸長因子遺伝子tef1のプロモーター配列であるPtef(tef1遺伝子の上流748bp、配列番号7)をプロモーターとして、アルカリプロテアーゼ遺伝子alpのターミネーター配列であるTalp(alp遺伝子の下流800bp、配列番号8)をターミネーターとして用いた。
[0160]
 また、選択マーカーとしてはウラシル/ウリジン要求性を相補し、遺伝子の多コピー導入を可能とする形質転換マーカー遺伝子pyrG3(上流56bp、コード領域896bp及び下流535bpを含む1,487bp、配列番号9)を用いた(特開2018-068292号公報参照)。これらのPtef、Talp、pyrG3は、麹菌アスペルギルス・ソーヤ( Aspergillus  sojae NBRC4239株)のゲノムDNAを鋳型としたPCR反応により取得した。
[0161]
 次に、それぞれのDNAを連結するためにIn-Fusion HD Cloning Kit(クロンテック社製)を使用した。例えば、Ptefと遺伝子配列A及びTalpとを連結させる場合には、Ptefは配列番号22のリバースプライマーを用いて、Talpは配列番号23のフォワードプライマーを用いてPCR反応によりDNA断片を増幅させている。このとき、遺伝子配列A'の5'末端には、Ptef増幅用のリバースプライマー(配列番号22)の5'末端と相補的な15bpの配列(AoCDHssの開始コドンATGに相補的なCAT配列及び配列番号20)があり、また、遺伝子配列A’の3’末端には、Talp増幅用のフォワードプライマー(配列番号23)の5'末端と相補的な15bpの配列(Escapinの終止コドンTGA配列及び配列番号21)があるため、In fusion反応により、Ptef、遺伝子配列A及びTalpとの連結が可能となる。このようにして、Ptef、AoCDHss、成熟Escapin、Talp及びpyrG3が順に連結されたPtef-AoCDHss-Escapin-Talp-pyrG3がpUC19プラスミドのマルチクローニングサイトに挿入されている発現ベクターp19-pG3-AoCDHss-Escapinを作製した。
[0162]
・麹菌発現株の作製及び培養
 上記で取得した形質転換用プラスミドp19-pG3-AoCDHss-Escapinを用いて、アスペルギルス・ソーヤのpyrG遺伝子破壊株(pyrG遺伝子の上流48bp、コード領域896bp、下流240bp欠損株)に対しプロトプラストPEG法により形質転換を行い、AoCDHss-Escapinの発現カセットが多コピーで挿入されたアスペルギルス・ソーヤ形質転換株AoCDHss-Escapin株を2株取得した。
[0163]
 取得したアスペルギルス・ソーヤ形質転換株AoCDHss-Escapin株を50mL三角フラスコに入れた15mLのPPY液体培地(2%(w/v)パインデックス、1%(w/v)ポリペプトン、0.5%(w/v)酵母エキス、0.5%(w/v)リン酸2水素1カリウム、0.05%(w/v)硫酸マグネシウム・7水和物)に植菌し、30℃で4~5日間振とう培養を行った。
[0164]
(実施例12)アミノ酸分解酵素と組み合わせたペントシジンの測定
・アミノ酸分解酵素1液(Escapin、配列番号15)を含む溶液の調製
 実施例11で得られた形質転換株の培養上清を限外ろ過膜(Amicon Ultra 15-30k、メルク社製)によって濃縮した。
 氷冷した濃縮液に、氷冷した硫酸アンモニウム飽和水溶液を硫酸アンモニウム70%飽和となるように添加し、2時間、4℃で放置後、遠心(15,000rpm、4℃、15分)し、沈殿を回収し、0.1M リン酸カリウムバッファーpH6.8に再溶解した。
[0165]
・アミノ酸分解酵素2液(ヒガシダイヤガラガラヘビ( Crotalus adamanteus)由来L-アミノ酸オキシダーゼ(配列番号19)を含む溶液)の調製
 ヒガシダイヤガラガラヘビ由来L-アミノ酸オキシダーゼ(L-Amino Acid Oxidase from Crotalus adamanteus) Type I(メルク社製)を1mg/mlになるように0.1Mリン酸カリウムバッファーpH6.8に溶解した。これを限外ろ過膜(Amicon Ultra 15-30k、メルク社製)によって濃縮した。
[0166]
・ペントシジン測定用酵素液の調製
 実施例5の「発現ベクターの作製」及び「麹菌発現株の作製及び培養」の項で得たA.sojae組換え株As-penox2を、滅菌済みPPY培地にて、180rpm、30℃、5日間振盪培養した。得られた培養上清を限外ろ過膜(Amicon Ultra 15-30k、メルク社製)によって濃縮した。濃縮液に、硫酸アンモニウムを70%飽和となるように徐々に添加し、2時間、4℃で放置後、遠心(15,000rpm、4℃、15分)し、上清を回収した。回収した上清を限外ろ過膜(Amicon Ultra 0.5-30k、メルク社製)によって濃縮し、0.1Mリン酸カリウムバッファーpH6.8で置換した。
[0167]
・ペントシジン測定における夾雑物質消去試験
 ペントシジンオキシダーゼによりペントシジンを測定する系において、測定対象溶液に夾雑物質として各種アミノ酸を人為的に添加したモデル系を使用し、ペントシジン測定における本発明の測定方法の効果を検証した。
[0168]
(1)ペントシジン溶液の調製
 0.1mM、0.2mM、0.3mM、0.4mM又は0.5mMとなるようにペントシジン(遊離体換算)(ペプチド研究所社製、3TFA塩を使用。)を脱イオン水で溶解した。
(2)夾雑物質溶液の調製
 L-アラニン290μM、L-システイン48μM、L-アスパラギン酸4μM、L-グルタミン酸57μM、L-フェニルアラニン40μM、グリシン245μM、L-イソロイシン54μM、L-リジン128μM、L-ロイシン92μM、L-メチオニン22μM、L-プロリン184μM、L-アルギニン60μM、L-セリン94μM、L-スレオニン116μM、L-バリン155μM、L-トリプトファン39μM及びL-チロシン45μMとなるように終濃度0.1Mリン酸カリウムバッファーpH6.8に溶解した。アミノ酸濃度は、文献値(Mayo Clinic Laboratories Neurology Catalogの "Plasma Amino Acid Reference Values" (https://neurology.testcatalog.org/show/AAQP, アクセス日2018年10月10日。https://www.mayomedicallaboratories.com/test-catalog/Clinical+and+Interpretive/9265, アクセス日:2020年6月24日)における18歳以上の血液中のアミノ酸量の各データ(上限値の半分の値)を参照して設定した。
(3)試薬の調製
 測定に使用する試薬を以下のように調製した。
3A. 発色試薬
 3.99U/ml ペルオキシダーゼ(TOYOBO社製)、1.8mM 4-アミノアンチピリン(Fluka社製)、2mM TOOS(Dojindo社製)となるよう脱イオン水に溶解した。
3B. 夾雑物質消去試薬
 アミノ酸分解酵素1液(1.63U/ml)と、アミノ酸分解酵素2液(2.40U/ml)を、液量が5:3の割合になるように混合した。
3C. ペントシジン測定用試薬
 ペントシジン測定用酵素液(3.31U/ml)を用いた。
[0169]
(4)測定
 測定は、特に言及のないかぎり、すべて室温で行った。反応には、96穴のマイクロウェルプレート(Nunc社製)を用いた。上記(1)のペントシジン溶液5μlに対し、上記(2)の夾雑物質溶液20μl、上記(3A)の発色試薬25μl、上記(3B)の夾雑物質消去試薬50μlを順に添加し、555nmにおける10分後の吸光度を測定し、データ1とした。
 続いて上記(3C)のペントシジン測定用試薬25μlを添加し、555nmにおける10分後の吸光度を測定し、データ2とした。データ2からデータ1を減じた値(ΔOD)を測定値とした。比較例1として、夾雑物質を含まない溶液、すなわち上記(2)の夾雑物質溶液を0.1Mリン酸カリウムバッファーpH6.8に置換した溶液の測定も行なった。
 また、比較例2として、夾雑物質を含むが夾雑物質消去を行なわない系、すなわち上記(3B)の夾雑物質消去試薬を0.1M リン酸カリウムバッファーpH6.8に置換した溶液の測定も行なった。
 3回の測定の平均値を以下の表3に示す。また、比較例1の測定値を100%とした場合の比較例2及び実施例の相対値を表4に示す。
[0170]
[表3]


[表4]


[0171]
 上記表に示すとおり、夾雑物質の消去を行なわないペントシジン測定(比較例2)においては、夾雑物質の添加を反映して、夾雑物質添加なしの測定(比較例1)よりもペントシジン濃度が顕著に高く測定され、正確な値が得られなかった。
 これに対し、夾雑物質消去試薬を用いた消去工程を含む測定においては、夾雑物質に起因する測定値が小さくなり、比較例1の夾雑物質を添加しない系で得られたペントシジン濃度と近い値が得られ、測定誤差となる夾雑物質の影響が低減されて正確な測定を行うことができた。
[0172]
(実施例13)アミノ酸分解酵素1の基質特異性解析
 アミノ酸消去酵素1の、各種アミノ酸及びペントシジンに対する基質特異性を解析した。
[0173]
(1)酵素液の調製
 実施例12で得られたアミノ酸消去酵素1液を、0.1M リン酸カリウムバッファーpH6.8で希釈し、0.134U/mlとした。
(2)各種アミノ酸及びペントシジン溶液の調製
 ペントシジン(実施例12と同様)は2mMとなるように脱イオン水で溶解した。各種アミノ酸は4mMとなるように脱イオン水で溶解した。
(3)発色試薬の調製
 3.99U/mlペルオキシダーゼ(TOYOBO社製)、1.8mM 4-アミノアンチピリン(Fluka社製)、2mM TOOS(Dojindo社製)となるよう脱イオン水に溶解した。
[0174]
(4)測定
 測定は、特に言及のないかぎり、すべて室温で行った。反応には、96穴のマイクロウェルプレート(Nunc社製)を用いた。
 上記(1)の酵素液50μlに対し、上記(2)の各種アミノ酸又はペントシジン溶液25μl、上記(3)の発色試薬25μlを順に添加し、555nmにおける開始時及び10分後の吸光度を測定し、吸光度上昇の傾きを以って対象基質に対する反応速度とみなした。
 最も反応速度の高かった基質であるアルギニンに対する反応速度を100としたときの各種アミノ酸及びペントシジンに対する反応速度、すなわち基質特異性を図13に示す。
[0175]
(実施例14)アミノ酸消去酵素2の基質特異性解析
 アミノ酸消去酵素2の、各種アミノ酸及びペントシジンに対する基質特異性を解析した。
[0176]
(1)酵素液の調製
 実施例12で得られたアミノ酸消去酵素2液を、0.1M リン酸カリウムバッファー pH6.8で希釈し、0.12U/mlとした。
(2)各種アミノ酸及びペントシジン溶液及び(3)発色試薬は、実施例13と同様に調整した。
[0177]
(4)測定
 測定は、特に言及のないかぎり、すべて室温で行った。反応には、96穴のマイクロウェルプレート(Nunc社製)を用いた。上記(1)の酵素液50μlに対し、上記(2)の各種アミノ酸又はペントシジン溶液25μl、上記(3)の発色試薬25μlを順に添加し、555nmにおける開始時及び10分後の吸光度を測定し、吸光度上昇の傾きを以って対象基質に対する反応速度とみなした。最も反応速度の高かったロイシンに対する反応速度を100としたときの各種アミノ酸及びペントシジンに対する反応速度、すなわち基質特異性を図14に示した。
[0178]
(実施例15)ペントシジン測定用酵素の基質特異性解析
 ペントシジン測定用酵素の、各種アミノ酸及びペントシジンに対する基質特異性を解析した。
[0179]
(1)酵素液の調製
 実施例12で得られたペントシジン測定用酵素液を、0.1Mリン酸カリウムバッファー pH6.8で希釈し、0.083U/mlとした。
 (2)各種アミノ酸及びペントシジン溶液及び(3)発色試薬は、実施例13と同様に調整した。
[0180]
(4)測定
 測定は、特に言及のないかぎり、すべて室温で行った。反応には、96穴のマイクロウェルプレート(Nunc社製)を用いた。上記(1)の酵素液50μlに対し、上記(2)の各種アミノ酸又はペントシジン溶液25μl、上記(3)の発色試薬25μlを順に添加し、555nmにおける開始時及び10分後の吸光度を測定し、吸光度上昇の傾きを以って対象基質に対する反応速度とみなした。
 ペントシジンに対する反応速度を100としたときの各種アミノ酸に対する反応速度、すなわち基質特異性を図15に示した。
[0181]
 実施例13~15の結果から、実施例12においては、ペントシジン測定用酵素と反応性の高いアミノ酸が、アミノ酸分解酵素1液及びアミノ酸分解酵素2液によって消去され、測定誤差となる夾雑物質の影響が低減されてペントシジンの正確な測定を行うことができたと考えられた。

請求の範囲

[請求項1]
 検体中のペントシジンの測定方法であって、
 検体をアミノ酸分解酵素で分解する工程、
 前記分解工程後の検体とペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質とを接触させる工程、及び
 前記接触により生じた変化を検出する工程、
を含み、前記アミノ酸分解酵素と前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質は異なる、測定方法。
[請求項2]
 前記検出工程において、酸素、過酸化水素又はアンモニアの量の変化が検出される、請求項1に記載の測定方法。
[請求項3]
 前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が、以下の理化学的性質:
(1)作用:ペントシジンを酸化的に分解する活性;及び
(2)SDS-PAGEによる分子量:75,000~85,000
を有する、請求項1又は2に記載の測定方法。
[請求項4]
 前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が以下の(a)~(f):
(a)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(c)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列と75%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質;
(d)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列と75%以上の同一性を有する塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(e)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列の1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質;あるいは
(f)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によってコードされるタンパク質;
からなる群から選択されるいずれかのタンパク質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の測定方法。
[請求項5]
 前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が、糸状菌に由来する、請求項1~4のいずれか1項に記載の測定方法。
[請求項6]
 前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質がペントシジンオキシダーゼであり、
 前記アミノ酸分解酵素が、検体に含まれるアミノ酸を分解し、前記アミノ酸が、アルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の測定方法。
[請求項7]
 前記アミノ酸分解酵素が分解するアミノ酸が、前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質の、ペントシジンに対する活性を100%とした場合に、ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が40%以上の相対的活性を有するアミノ酸である、請求項1~6のいずれか一項に記載の測定方法。
[請求項8]
 前記アミノ酸分解酵素が、アミノ酸オキシダーゼ、アミノ酸デヒドロゲナーゼ、アミノ酸アミノトランスフェラーゼ、アミノ酸デカルボキシラーゼ、アミノ酸アンモニアリアーゼ、アミノ酸オキシゲナーゼ及びアミノ酸ヒドロラーゼからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の測定方法。
[請求項9]
(i)アミノ酸分解酵素;及び
(ii)ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質
を含む、検体中のペントシジン測定用キット。
[請求項10]
 前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質が以下の(a)~(f):
(a)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(c)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列と75%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質;
(d)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列と75%以上の同一性を有する塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(e)配列番号2又は配列番号4に記載のアミノ酸配列の1若しくは複数のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質;あるいは
(f)配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号6に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によってコードされるタンパク質;
からなる群から選択されるいずれかのタンパク質である、請求項9に記載のキット。
[請求項11]
 前記アミノ酸分解酵素が、アルギニン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンから選択されるアミノ酸を分解する酵素である、請求項9又は10に記載のキット。
[請求項12]
 検体由来のペントシジンの反応生成物の製造方法であって、
 検体をアミノ酸分解酵素で分解する工程、
 前記分解工程後の検体とペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質とを接触させる工程
を含み、前記アミノ酸分解酵素と前記ペントシジンを酸化的に分解する活性を有するタンパク質は異なる、方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6A]

[ 図 6B]

[ 図 6C]

[ 図 6D]

[ 図 6E]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]