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1. WO2018211720 - シラノール化合物及び水素の製造方法

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明 細 書

発明の名称 シラノール化合物及び水素の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013  

発明の効果

0014  

図面の簡単な説明

0015  

発明を実施するための形態

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062  

実施例

0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076  

産業上の利用可能性

0077  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : シラノール化合物及び水素の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、ヒドロシラン化合物と水とを温和な条件下で反応させて、シラノール化合物と水素とを得る方法に関する。当該方法で得られる水素はクリーンなエネルギー資源として有用である。本願は、2017年5月15日に、日本に出願した特願2017−096381号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 水素は燃やしても二酸化炭素が発生しないことから、次世代エネルギーとして注目されている。しかし、水素は常温、常圧下において気体であるため嵩張る上、反応性が高く爆発の恐れがあり、貯蔵や運搬が困難であった。また、液化して嵩を低くして運搬することが考えられるが、液化には−253℃まで冷却する必要があり、多くのエネルギーを要することも問題であった。その他、圧縮により嵩を低くすることも考えられるが、やはり圧縮にエネルギーを要することや、爆発の危険が高まることが問題であった。
[0003]
 これらの問題を解決する方法として、水素を貯蔵・放出する材料(=水素貯蔵物質)の開発が進められている。前記水素貯蔵物質としては、水素化カルシウムや水素化アルミニウムリチウム等の金属ヒドリドや、ギ酸が知られている(特許文献1)。しかし、金属ヒドリドは不安定であり保存が難しく、又、水と激しく反応して水素を発生するため、水素の生成速度を制御できないことが問題であった。また、ギ酸から水素を取り出す際には加温が必要であること、二酸化炭素や一酸化炭素が副生し、これらと水素とを分離するためのプロセスが必要であることが問題であった。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2017−24958号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 従って、本発明の目的は、安全、且つ低コストで貯蔵、運搬することができる水素貯蔵物質を使用して、所望の速度で水素を生成することができる方法を提供することにある。
 本発明の他の目的は、水素とともに、シリコン樹脂やカップリング反応に有用なシラノール化合物を製造する方法を提供することにある。
 本発明の他の目的は、前記水素の生成方法を利用した水素発生装置や燃料電池を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、安価且つ安全な化合物であるヒドロシラン化合物が水素貯蔵物質として有用であること、平均粒子径が2.5nm以下の金粒子がハイドロキシアパタイトに担持されてなる固体触媒を使用すれば、温和な条件下で、反応基質としてのヒドロシラン化合物と水から、効率よく水素とシラノール化合物とを得ることができること、前記固体触媒と反応基質との接触/非接触をコントロールすることにより、容易に水素とシラノール化合物の生成速度を制御することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
[0007]
 すなわち、本発明は、平均粒子径が2.5nm以下の金粒子がハイドロキシアパタイトに担持されてなる固体触媒の存在下、ヒドロシラン化合物と水とを反応させてシラノール化合物と水素とを得る、シラノール化合物及び水素の製造方法を提供する。
[0008]
 本発明は、また、空気雰囲気下で反応を行う、前記のシラノール化合物及び水素の製造方法を提供する。
[0009]
 本発明は、また、実質的に加熱することなく且つ活性エネルギー線を照射することなく反応を行う、前記のシラノール化合物及び水素の製造方法を提供する。
[0010]
 本発明は、また、ヒドロシラン化合物が、下記式(1)で表される化合物である、前記のシラノール化合物及び水素の製造方法を提供する。
[化1]


(式中、R ~R は同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は[−Si(R ]基(R は同一又は異なって、水素原子、又は炭化水素基を示す)を示す。nは0以上の整数を示す。なお、nが2以上の整数の場合、R は同一であっても異なっていてもよい)
[0011]
 本発明は、また、前記のシラノール化合物及び水素の製造方法を利用して水素を発生させるシステムを備えた水素発生装置を提供する。
[0012]
 本発明は、また、固体触媒と反応基質とを接触させることで水素を発生させ、固体触媒と反応基質との接触を遮断することで水素の発生を阻害する、スイッチオン/オフ切り替え機能を備えた、前記の水素発生装置を提供する。
[0013]
 本発明は、また、前記の水素発生装置を備えた燃料電池を提供する。

発明の効果

[0014]
 ヒドロシラン化合物は、産業廃棄物にも含まれる化合物であり、安価に、且つ安定して入手可能である。また、安全性、安定性に優れ、貯蔵や運搬が容易であり、経年劣化を抑制することもできる。本願発明では前記ヒドロシラン化合物を水素貯蔵物質として使用して、温和な条件下で、外部からのエネルギーを必要とすることなく、効率よく水素とシラノール化合物とを製造することができる。また、反応生成物中の水素は容易に分離・回収することができる。更に、反応の進行速度やオン・オフを固体触媒と反応基質との接触状態(例えば、接触/非接触)を切り替えることにより調整することができ、必要な時に必要な分だけ水素とシラノール化合物とを製造することができる。
 上記特性を有する本発明を利用した水素発生装置は、従来の電池やバッテリーに比べ劣化防止性に優れ、長期保管が可能である。そのため、災害時等の緊急用ポータブル電源として利用可能である。また、小型化、軽量化に対応可能であるため、燃料電池(例えば、スマートフォンの充電等に使用されるポケットサイズの燃料電池)への応用が可能である。
 そして、本発明によって得られる水素は燃料電池の燃料として有用であり、当該水素を空気中で燃焼させることにより電力を作り出すことができる。また、水のみを副生し、地球温暖化の原因の1つと考えられる二酸化炭素が生成しないため、クリーンなエネルギーである。従って、本発明は、地球環境への負荷が少ない低炭素社会の実現に大きく貢献するものである。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] (a)は調製例1で得られた固体触媒のTEM顕微鏡写真、(b)は調製例2で得られた固体触媒のTEM顕微鏡写真、(c)は調製例3で得られた固体触媒のTEM顕微鏡写真である。

発明を実施するための形態

[0016]
 [シラノール化合物及び水素の製造方法]
 本発明のシラノール化合物及び水素の製造方法は、平均粒子径が2.5nm以下の金粒子がハイドロキシアパタイトに担持されてなる固体触媒の存在下、ヒドロシラン化合物と水とを反応させてシラノール化合物と水素とを得ることを特徴とする。
[0017]
 (固体触媒)
 本発明における固体触媒は、平均粒子径が2.5nm以下の金粒子がハイドロキシアパタイトに担持されてなる。
[0018]
 前記固体触媒の平均粒子径(透過電子顕微鏡(TEM)を用いた直接観察による)は、例えば0.1~50μm、好ましくは0.1~20μm、特に好ましくは0.1~0.5μmである。粒度分布の標準偏差(σ)は、例えば0.05~0.5、好ましくは0.1~0.3である。
[0019]
 ハイドロキシアパタイトに担持される金粒子の平均粒子径は2.5nm以下(好ましくは2.0nm以下。尚、平均粒子径の下限は、例えば1.5nm)である。尚、本発明における金粒子の平均粒子径の測定は、透過電子顕微鏡(TEM)を用いた直接観察により行う。金粒子の平均粒子径は固体触媒の触媒活性に大きく影響し、平均粒子径が上記範囲を上回ると、急激に触媒活性が低下するため好ましくない。
[0020]
 ハイドロキシアパタイトの比表面積(BET法による)は、例えば10~1000m /g、好ましくは50~800m /g、特に好ましくは100~700m /g、最も好ましくは100~500m /g、とりわけ好ましくは100~300m /gである。
[0021]
 ハイドロキシアパタイトの平均粒子径(透過電子顕微鏡(TEM)を用いた直接観察による)は、例えば0.1~50μm、好ましくは0.1~20μm、特に好ましくは0.1~0.5μmである。粒度分布の標準偏差(σ)は、例えば0.05~0.5、好ましくは0.1~0.3である。
[0022]
 ハイドロキシアパタイトに担持される金粒子の態様は特に限定されることがなく、例えば、金単体、金塩、金酸化物、金水酸化物、又は金錯体等が挙げられる。本発明においては、なかでも金単体が、触媒活性に特に優れる点で好ましい。
[0023]
 本発明の固体触媒は上記の通り平均粒子径が非常に小さい金粒子を担持するため、金粒子の平均粒子径が大きい場合(例えば、平均粒子径が3nm以上の場合)に比べて担持量が少なくても、同等或いはそれ以上に優れた触媒効果を発揮することができ、金粒子の担持量(金属換算)は、ハイドロキシアパタイトの、例えば0.05~10重量%程度であり、好ましくは0.1~5.0重量%、より好ましくは0.1~3.0重量%、特に好ましくは0.1重量%以上、2.0重量%未満、最も好ましくは0.1~1.5重量%、とりわけ好ましくは0.1~1.0重量%である。
[0024]
 上記ハイドロキシアパタイトは、例えば、下記式(2)で表される化合物である。
 Ca 10−Z(HPO (PO 6−Z(OH) 2−Z・mH O  (2)
(式中、Zは0≦Z≦1を満たす数を示し、mは0~2.5の数を示す)
[0025]
 ハイドロキシアパタイトは、例えば、湿式合成法により調製することができる。前記湿式合成法は、カルシウム溶液とリン酸溶液とを、カルシウム溶液とリン酸溶液とが10:6(モル比)となる割合で、pHが7.4以上のバッファー液中に長時間かけて滴下することにより、上記バッファー液中にハイドロキシアパタイトを析出させ、析出したハイドロキシアパタイトを捕集する方法である。
[0026]
 ハイドロキシアパタイトとしては、例えば、商品名「リン酸三カルシウム」(和光純薬工業(株)製)等の市販品を使用することもできる。
[0027]
 ハイドロキシアパタイト表面に金粒子(好ましくは、金単体)を担持させる方法としては、例えば、金化合物の溶液に還元剤を添加して金単体を析出させ、析出した金単体をハイドロキシアパタイト表面に吸着させる方法等が挙げられる。金化合物としては、ハロゲン化金(例えば、HAuCl 等の金塩化物、金臭化物、金ヨウ化物等)、金塩(例えば、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)の他、金錯体等を使用することもできる。
[0028]
 金化合物の溶液に含まれる溶媒としては、金化合物を溶解できればよく、例えば、水、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類等が挙げられる。溶液中の金化合物の濃度は特に制限されず、例えば、0.1~1000mMの範囲から適宜選択することができる。
[0029]
 また、本発明では、析出した金単体が凝集することを抑制し、金粒子の大きさを制御する目的で、金化合物の溶液にキャッピング剤を添加することが好ましく、キャッピング剤としてグルタチオンを添加することが好ましい。キャッピング剤の添加量としては、金化合物1モルに対して例えば1~10モル程度である。
[0030]
 金化合物の還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH )、水素化ホウ素リチウム(LiBH )又は水素化ホウ素カリウム(KBH )等の水素化ホウ素錯化合物、ヒドラジン、水素(H )、トリメチルシラン等のシラン化合物、ヒドロキシ化合物等が挙げられる。ヒドロキシ化合物としては第1級アルコール、第2級アルコール等のアルコール化合物が含まれる。また、ヒドロキシ化合物は、1価アルコール、2価アルコール、多価アルコール等の何れであってもよい。
[0031]
 還元剤の添加により析出した金単体をハイドロキシアパタイト表面に吸着させる方法としては、金単体を含有する溶液中にハイドロキシアパタイトを添加し、撹拌する方法が挙げられる。
[0032]
 撹拌時の温度は、例えば20~150℃の範囲から選択することができるが、室温で行うことが好ましい。撹拌時間は温度によっても異なるが、例えば0.5~10時間程度である。
[0033]
 そして、例えばハイドロキシアパタイトの添加量を調整することで、固体触媒に担持される金粒子の平均粒子径をコントロールすることができる。ハイドロキシアパタイトの添加量としては、例えば金化合物1ミリモル当たり7g以上(例えば7~50g、好ましくは10~50g、特に好ましくは10~45g)であることが好ましい。
[0034]
 ハイドロキシアパタイトへの吸着後は、沈殿物を必要に応じて水や有機溶媒等で洗浄し、濾過、遠心分離等の物理的な分離手段により分離し、分離された沈殿物を乾燥し、さらに焼成に付すことにより本発明における固体触媒を製造することができる。
[0035]
 (ヒドロシラン化合物)
 本発明におけるヒドロシラン化合物は、ケイ素−水素結合を分子内に有する化合物であり、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
[化2]


(式中、R ~R は同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は[−Si(R ](R は同一又は異なって、水素原子、又は炭化水素基を示す)を示す。nは0以上の整数を示す。なお、nが2以上の整数の場合、R は同一であっても異なっていてもよい)
[0036]
 R ~R における炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの結合した基が含まれる。
[0037]
 脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~20の脂肪族炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基等の炭素数1~20(好ましくは1~10、特に好ましくは1~3)程度のアルキル基;ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等の炭素数2~20(好ましくは2~10、特に好ましくは2~3)程度のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等の炭素数2~20(好ましくは2~10、特に好ましくは2~3)程度のアルキニル基等が挙げられる。
[0038]
 脂環式炭化水素基としては、C 3−20脂環式炭化水素基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の3~20員(好ましくは3~15員、特に好ましくは5~8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の3~20員(好ましくは3~15員、特に好ましくは5~8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロ[5.2.1.0 2,6]デカン−8−イル基、テトラシクロ[4.4.0.1 2,5.1 7,10]ドデカン−3−イル基等の橋かけ環式炭化水素基等が挙げられる。
[0039]
 芳香族炭化水素基としては、C 6−14(特に、C 6−10)芳香族炭化水素基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
[0040]
 脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基等のシクロアルキル置換アルキル基(例えば、C 3−20シクロアルキル置換C 1−4アルキル基等)等が含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、ベンジル基等のC 7−18アラルキル基)、アルキル置換アリール基(例えば、1~4個程度のC 1−4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基)等が含まれる。
[0041]
 R ~R における、炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換オキシ基(例えば、C 1−5アルコキシ基、C 6−10アリールオキシ基、C 7−11アラルキルオキシ基、C 1−5アシルオキシ基等)、[−Si(R ]基(R は同一又は異なって、水素原子、又は炭化水素基を示す)等が挙げられる。
[0042]
 前記ヒドロシラン化合物としては、例えば、テトラメチルジシロキサン、ポリメチルヒドロシロキサン、トリエチルシラン、ジメチル−t−ブチルシラン、トリブチルシラン、トリヘキシルシラン、トリイソブチルシラン、トリイソプロピルシラン、トリ(n−プロピル)シラン、ジメチルビニルシラン、ジメチルシクロヘキシルシラン、ジメチルベンジルシラン、ジメチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、トリフェニルシラン、ジフェニルジシラン、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、4−ジメチルシリルトルエン、1−メトキシ−4−ジメチルシリルベンゼン、1−クロロ−4−ジメチルシリルベンゼン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[0043]
 例えばジメチルフェニルシラン等の、Siに結合する炭化水素基の少なくとも1つが芳香族炭化水素基であるヒドロシラン化合物(例えば、上記式(1)中のR ~R の少なくとも1つが芳香族炭化水素基である化合物)を基質とした場合において、平均粒子径が3nm超の金粒子がハイドロキシアパタイトに担持されてなる固体触媒を使用する場合は、効率よく反応を進行させることができず、シラノール化合物の収率は40%未満であるが、本発明においては平均粒子径が2.5nm以下の金粒子がハイドロキシアパタイトに担持されてなる固体触媒を使用するため、前記化合物を基質とした場合でも効率よく反応を進行させることができ、水素と対応するシラノール化合物を効率よく製造することができる。
[0044]
 [シラノール化合物及び水素の製造方法]
 本発明のシラノール化合物及び水素の製造方法は、上記固体触媒の存在下、ヒドロシラン化合物と水とを反応させてシラノール化合物と水素とを得る(好ましくは、ヒドロシラン化合物と水との酸化反応により、シラノール化合物と水素とを得る)ことを特徴とする。
[0045]
 固体触媒の使用量(固体触媒に含まれる金換算)は、上記ヒドロシラン化合物の、例えば0.001~10モル%程度であり、上限は好ましくは5モル%、より好ましくは2.5モル%、特に好ましくは1モル%、最も好ましくは0.5モル%、とりわけ好ましくは0.1モル%である。また、下限は好ましくは0.005モル%、特に好ましくは0.01モル%である。
[0046]
 本発明において水はヒドロシラン化合物の酸化剤として作用する。水の使用量としては、上記ヒドロシラン化合物1ミリモル当たり、例えば0.05mL以上、好ましくは0.05~5mL、より好ましくは0.05~1mL、特に好ましくは0.1~0.5mLである。
[0047]
 反応雰囲気としては反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、酸素雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等が挙げられる。本発明においては、なかでも、触媒活性を向上する効果が得られる点で、空気雰囲気又は酸素雰囲気が好ましく、とりわけ、安全性に優れる点で空気雰囲気が好ましい。
[0048]
 前記反応は溶媒の存在下で行うことが好ましい。前記溶媒としては水と相溶性を有する溶媒を使用することが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトン、エチルメチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[0049]
 前記溶媒の使用量は、バッチ式で反応させる場合において基質の初期濃度が例えば10~0.1mol/Lとなる範囲が好ましい。
[0050]
 前記反応は、実質的に加熱せずとも進行し、実質的に活性エネルギー線照射をせずとも進行する。
[0051]
 また、前記反応の反応温度は、特に制限されず、例えば0~100℃程度である。本発明においては、上記の極めて優れた触媒活性を有する固体触媒を使用するため、室温(例えば1~30℃)でも、効率よく反応を進行させることができ、収率良く水素及びシラノール化合物を製造することができる。
[0052]
 前記反応の反応時間は、反応温度によって適宜調整することができ、室温で反応を行う場合、例えば1~360分程度、好ましくは1~60分、特に好ましくは1~30分、最も好ましくは1~10分である。
[0053]
 前記反応は液相でも水相でも特に制限されないが、本発明においては、水相(すなわち液相反応、より好ましくは液相酸化反応)で行うことが、より温和な条件で反応を行うことができる点で好ましい。
[0054]
 前記反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式等の何れの方法で行うこともできる。
[0055]
 反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
[0056]
 本発明のシラノール化合物及び水素の製造方法によれば、ヒドロシラン化合物を効率よく転化して、シラノール化合物及び水素を高収率で製造することができる。シラノール化合物の収率は、例えば40%以上、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは95%以上である。
[0057]
 また、本発明における固体触媒は、反応終了後は、濾過、遠心分離等の物理的な分離手段により反応生成物から容易に分離、回収することができ、分離、回収された固体触媒は、そのままで、又は洗浄、乾燥等を施した後、再使用することができる。そのため、高価な固体触媒を繰り返し利用することができ、経済的である。
[0058]
 [水素発生装置]
 本発明の水素発生装置は、上記シラノール化合物及び水素の製造方法を利用して水素を発生させるシステム、詳細には、平均粒子径が2.5nm以下の金粒子がハイドロキシアパタイトに担持されてなる固体触媒の存在下、ヒドロシラン化合物と水とを反応させることにより水素を発生させるシステムを備える。
[0059]
 本発明の水素発生装置は、固体触媒と反応基質とを接触させることで水素を発生させ、固体触媒と反応基質との接触を遮断することで水素の発生を阻害することができる。これを利用すれば、反応(好ましくは、酸化反応)の進行速度を自在に制御することができ、所望のタイミングで水素を発生させることができる。すなわち、本発明の水素発生装置は、スイッチオン/オフ切り替え機能を備える。
[0060]
 また、本発明の水素発生装置は、上記固体触媒と、反応基質としてのヒドロシラン化合物及び水で構成されるため、従来の加圧により水素を貯蔵するボンベと比べて非常に小型且つ軽量である。その上、安全性、安定性にも優れる。そのため、運搬が容易である。また、反応基質としてのヒドロシラン化合物が安定性に優れるため、経時劣化を抑制することができる。
[0061]
 [燃料電池]
 燃料電池は、水素を燃料として利用し、当該水素を空気中の酸素と反応させることにより電力を作り出す装置である。本発明の燃料電池は、上記水素発生装置を備え、上記水素発生装置を用いて発生させた水素を利用することを特徴とする。より詳細には、上記シラノール化合物及び水素の製造方法を利用して水素を発生させるシステムを備え、当該システムによって発生した水素を利用することを特徴とする。
[0062]
 本発明の燃料電池は、上記構成を有するため小型化、軽量化が可能である。また、水素発生システムの構成要素がいずれも安定性に優れるため、経年劣化を防止することができる。そのため、災害時等の緊急用ポータブル電源として利用可能である。
実施例
[0063]
 以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[0064]
 調製例1(固体触媒の調製)
 HAuCl (0.25mmol)のメタノール溶液50mLに、グルタチオン(1.0mmol)を添加し、空気雰囲気下、0℃で30分間撹拌した。次に、KBH (1.0mmol)のメタノール溶液を反応液に添加し、更に0℃で1時間撹拌した。
 反応液中の沈殿物を遠心分離器を使用して分取し、水に再分散して分散液を得た。
 得られた分散液にハイドロキシアパタイト(以後、「HAP」と称する場合がある、商品名「リン酸三カルシウム」、和光純薬工業(株)製;10g)を添加し、室温で4時間撹拌した。
 その後、反応液を濾過して得られた濾滓を脱イオン水で洗浄し、真空乾燥させ、更に空気雰囲気下、400℃で8時間焼成して金粒子に付着したグルタチオンを取り除いて、固体触媒(1)(Au/HAP、Au担持量:0.5重量%)を得た。固体触媒(1)中に硫黄成分は検出されなかった。これによりキャッピング剤としてのグルタチオンが完全に除去されていることが確認された。また、固体触媒(1)中の金粒子の平均粒子径は1.9nmであった。粒度分布の標準偏差(σ)は0.16nmであった。
[0065]
 調製例2(固体触媒の調製)
 HAPの添加量を2.5gに変更した以外は調製例1と同様にして、固体触媒(2)(Au/HAP、Au担持量:2.0重量%)を得た。固体触媒(2)中の金粒子の平均粒子径は2.3nmであった。粒度分布の標準偏差(σ)は0.23nmであった。
[0066]
 調製例3(固体触媒の調製)
 HAPの添加量を1.67gに変更した以外は調製例1と同様にして、固体触媒(3)(Au/HAP、Au担持量:3.0重量%)を得た。固体触媒(3)中の金粒子の平均粒子径は3.1nmであった。粒度分布の標準偏差(σ)は0.25nmであった。
[0067]
 実施例1(シラノール化合物及び水素の製造)
[化3]


 反応容器内に、反応基質としてのジメチルフェニルシラン(1mmol)と水(0.2mL)とジメチルエーテル(2mL)とを含む混合液を仕込み、そこに固体触媒(1)(ジメチルフェニルシランの0.05モル%)を加え、空気をバブリングしつつ、30℃で5分撹拌し、ジメチルフェニルシラノールと水素を得た。ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)を使用してジメチルフェニルシラノールの収率[%]を測定した。
[0068]
 また、固体触媒(1)を混合液外へ取り出すと水素発生が速やかに停止し、固体触媒(1)を混合液中に浸漬すると速やかに水素発生が再開した。
[0069]
 実施例2(シラノール化合物及び水素の製造)
 反応時間を9分に変更した以外は実施例1と同様に行った。
[0070]
 実施例3(シラノール化合物及び水素の製造)
 固体触媒(1)に代えて、実施例1の通りの反応を行い、反応終了後に回収し、再度反応に利用する作業を5回繰り返して得られた5 th reuse固体触媒(1)を使用し、反応時間を9分に変更した以外は実施例1と同様に行った。
[0071]
 実施例4(シラノール化合物及び水素の製造)
 固体触媒(1)に代えて固体触媒(2)を使用した以外は実施例1と同様に行った。
[0072]
 比較例1(シラノール化合物及び水素の製造)
 固体触媒(1)に代えて固体触媒(3)を使用した以外は実施例1と同様に行った。
[0073]
 比較例2(シラノール化合物及び水素の製造)
 固体触媒(1)に代えてバルク金を使用した以外は実施例1と同様に行った。
[0074]
 比較例3(シラノール化合物及び水素の製造)
 固体触媒(1)に代えてHAPを使用した以外は実施例1と同様に行った。
[0075]
 結果を下記表にまとめて示す。
[表1]


[0076]
 以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記しておく。
[1]平均粒子径が2.5nm以下の金粒子がハイドロキシアパタイトに担持されてなる固体触媒の存在下、ヒドロシラン化合物と水とを反応させてシラノール化合物と水素とを得る、シラノール化合物及び水素の製造方法。
[2]前記固体触媒の平均粒子径が、0.1~50μm、0.1~20μm、又は0.1~0.5μmであり、粒度分布の標準偏差(σ)が、0.05~0.5、又は0.1~0.3である[1]に記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[3]前記金粒子の平均粒子径が、2.5nm以下、又は2.0nm以下でありその下限が、1.5nmである[1]又は[2]に記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[4]前記ハイドロキシアパタイトの比表面積が10~1000m /g、50~800m /g、100~700m /g、100~500m /g、又は100~300m /gである[1]~[3]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[5]前記ハイドロキシアパタイトの平均粒子径が、0.1~50μm、0.1~20μm、又は0.1~0.5μmである[1]~[4]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[6]前記金粒子の態様が、金単体、金塩、金酸化物、金水酸化物、又は金錯体である[1]~[5]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[7]前記金粒子の担持量(金属換算)が、ハイドロキシアパタイトの、0.05~10重量%、0.1~5.0重量%、0.1~3.0重量%、0.1重量%以上であって2.0重量%未満、0.1~1.5重量%、又は0.1~1.0重量%である[1]~[6]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[8]前記ハイドロキシアパタイトが、下記式(2)で表される化合物である[1]~[7]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
 Ca 10−Z(HPO (PO 6−Z(OH) 2−Z・mH O  (2)
(式中、Zは0≦Z≦1を満たす数を示し、mは0~2.5の数を示す)
[9]ハイドロキシアパタイト表面に金粒子を担持させる方法が、金化合物の溶液に還元剤を添加して金単体を析出させ、析出した金単体をハイドロキシアパタイト表面に吸着させる方法である[1]~[8]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[10]前記金化合物の溶液にキャッピング剤としてグルタチオンが添加された[9]に記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[11]前記還元剤が、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH )、水素化ホウ素リチウム(LiBH )又は水素化ホウ素カリウム(KBH )等の水素化ホウ素錯化合物、ヒドラジン、水素(H )、トリメチルシラン等のシラン化合物、ヒドロキシ化合物等である[9]又は[10]に記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[12]ハイドロキシアパタイトの添加量が、金化合物1ミリモル当たり7g以上、7~50g、10~50g、又は10~45gである[1]~[11]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[13]空気雰囲気下で反応を行う、[1]~[12]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[14]実質的に加熱することなく且つ活性エネルギー線を照射することなく反応を行う、[1]~[13]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[15]ヒドロシラン化合物が、前記式(1)で表される化合物である、[1]~[14]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[16][1]~[15]の何れか1つに記載のシラノール化合物及び水素の製造方法を利用して水素を発生させるシステムを備えた水素発生装置。
[17]固体触媒と反応基質とを接触させることで水素を発生させ、固体触媒と反応基質との接触を遮断することで水素の発生を阻害する、スイッチオン/オフ切り替え機能を備えた、[16]に記載の水素発生装置。
[18][16]又は[17]に記載の水素発生装置を備えた燃料電池。

産業上の利用可能性

[0077]
 ヒドロシラン化合物は、産業廃棄物にも含まれる化合物であり、安価に、且つ安定して入手可能である。また、安全性、安定性に優れ、貯蔵や運搬が容易であり、経年劣化を抑制することもできる。本願発明では前記ヒドロシラン化合物を水素貯蔵物質として使用して、温和な条件下で、外部からのエネルギーを必要とすることなく、効率よく水素とシラノール化合物とを製造することができる。また、反応生成物中の水素は容易に分離・回収することができる。更に、反応の進行速度やオン・オフを固体触媒と反応基質との接触状態(例えば、接触/非接触)を切り替えることにより調整することができ、必要な時に必要な分だけ水素とシラノール化合物とを製造することができる。
 上記特性を有する本発明を利用した水素発生装置は、従来の電池やバッテリーに比べ劣化防止性に優れ、長期保管が可能である。そのため、災害時等の緊急用ポータブル電源として利用可能である。また、小型化、軽量化に対応可能であるため、燃料電池(例えば、スマートフォンの充電等に使用されるポケットサイズの燃料電池)への応用が可能である。
 そして、本発明によって得られる水素は燃料電池の燃料として有用であり、当該水素を空気中で燃焼させることにより電力を作り出すことができる。また、水のみを副生し、地球温暖化の原因の1つと考えられる二酸化炭素が生成しないため、クリーンなエネルギーである。従って、本発明は、地球環境への負荷が少ない低炭素社会の実現に大きく貢献するものである。

請求の範囲

[請求項1]
 平均粒子径が2.5nm以下の金粒子がハイドロキシアパタイトに担持されてなる固体触媒の存在下、ヒドロシラン化合物と水とを反応させてシラノール化合物と水素とを得る、シラノール化合物及び水素の製造方法。
[請求項2]
 空気雰囲気下で反応を行う、請求項1に記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[請求項3]
 実質的に加熱することなく且つ活性エネルギー線を照射することなく反応を行う、請求項1又は2に記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[請求項4]
 ヒドロシラン化合物が、下記式(1)で表される化合物である、請求項1~3の何れか1項に記載のシラノール化合物及び水素の製造方法。
[化1]


(式中、R ~R は同一又は異なって、水素原子、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は[−Si(R ]基(R は同一又は異なって、水素原子、又は炭化水素基を示す)を示す。nは0以上の整数を示す。なお、nが2以上の整数の場合、R は同一であっても異なっていてもよい)
[請求項5]
 請求項1~4の何れか1項に記載のシラノール化合物及び水素の製造方法を利用して水素を発生させるシステムを備えた水素発生装置。
[請求項6]
 固体触媒と反応基質とを接触させることで水素を発生させ、固体触媒と反応基質との接触を遮断することで水素の発生を阻害する、スイッチオン/オフ切り替え機能を備えた、請求項5に記載の水素発生装置。
[請求項7]
 請求項5又は6に記載の水素発生装置を備えた燃料電池。

図面

[ 図 1]