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1. WO2018207870 - 車両制御装置

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明 細 書

発明の名称 車両制御装置

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005   0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009  

発明の効果

0010  

図面の簡単な説明

0011  

発明を実施するための形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093  

産業上の利用可能性

0094  

符号の説明

0095  

請求の範囲

1   2   3  

図面

1   2   3   4   5A   5B  

明 細 書

発明の名称 : 車両制御装置

技術分野

[0001]
 本開示は、車両制御装置に関し、特に車両が搭載している変速機のギヤ段を選択する技術に関する。

背景技術

[0002]
 車両の現在位置から目標位置までの走行経路における道路情報に応じて、走行経路における車両の駆動力を推定し、推定された駆動力とあらかじめ記憶された燃費マップとを比較して、走行経路において燃料消費量が最小となるような変速スケジュールを設定する技術が提案されている(特許文献1参照)。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 日本国特開平9-21457号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 トラックやバス等の大型の車両の中には、オートメイテッドマニュアルトランスミッション(Automated Manual Transmission;以下、「AMT」と記載する。)と呼ばれる変速機を搭載するものも存在する。AMTは、従来のマニュアルトランスミッションにおけるスリーブをアクチュエータで移動することによって、変速機のギヤ段を自動でシフトする変速機である。
[0005]
 車両の最終的な駆動力は、AMTでの選択されたギヤ段に依存する。ここで、AMTは多数のギヤを備えており、各ギヤ段で噛み合わせの抵抗が異なることもある。ギヤ段における噛み合わせの抵抗の相違は、車両が搭載するエンジンにおける燃料消費量に影響する。このため、車両の燃料消費量に基づくギヤ段の選択技術には改善の余地があると考えられる。
[0006]
 本開示の目的は、オートメイテッドマニュアルトランスミッションを備える車両におけるギヤ段の選択技術を改善可能な車両制御装置を提供することである。

課題を解決するための手段

[0007]
 本開示の車両制御装置は、変速機を備える車両が所定の設定速度で走行するように前記車両を制御する車両制御装置であって、前記変速機は、インプットシャフトを介して入力されるエンジンの動力をカウンターシャフトを介さずにアウトプットシャフトに伝達する、前記インプットシャフトと前記アウトプットシャフトとを直結する直結ギヤと、前記エンジンの動力を前記カウンターシャフトを介して前記アウトプットシャフトに伝達する通常ギヤと、を備え、前記通常ギヤは前記直結ギヤよりもギヤ比の小さいギヤであるオーバードライブギヤを含む。前記車両制御装置は、前記車両が走行中の現走行区間とは道路勾配が異なる走行区間であって、前記車両の進行方向前方にある先走行区間を決定する走行区間決定部と、前記車両の走行抵抗に基づいて前記現走行区間における前記変速機のギヤ段である現ギヤ段を選択する現ギヤ段選択部と、前記先走行区間の道路勾配と前記車両の速度とに基づいて推定された前記先走行区間における前記車両の走行抵抗に基づいて、前記先走行区間における前記変速機のギヤ段である先ギヤ段を選択する先ギヤ段選択部と、前記設定速度と前記車両の速度との差が所定の範囲内であることを条件として、前記車両が前記先走行区間に到達したときに前記変速機のギヤ段を前記先ギヤ段選択部が選択した前記先ギヤ段に変更するシフト制御部と、を備える。
[0008]
 前記シフト制御部は、前記車両に設定されたオートクルーズ速度を前記設定速度とし、当該設定速度と前記車両の速度との差が前記所定の範囲内であることを条件として、前記車両が前記先走行区間に到達したときに前記変速機のギヤ段を前記先ギヤ段選択部が選択した前記先ギヤ段に変更してもよい。
[0009]
 前記シフト制御部は、前記車両にあらかじめ設定されたスピードリミッター速度を前記設定速度とし、当該設定速度と前記車両の速度との差が前記所定の範囲内であることを条件として、前記車両が前記先走行区間に到達したときに前記変速機のギヤ段を前記先ギヤ段選択部が選択した前記先ギヤ段に変更してもよい。

発明の効果

[0010]
 本開示の車両制御装置によれば、オートメイテッドマニュアルトランスミッションを備える車両におけるギヤ段の選択技術を改善することができる。

図面の簡単な説明

[0011]
[図1] 図1は、実施の形態に係る車両の概要を説明するための図である。
[図2] 図2は、実施の形態に係る車両の内部構成を模式的に示す図である。
[図3] 図3は、実施の形態に係る車両制御装置の機能構成を模式的に示す図である。
[図4] 図4は、実施の形態に係るエンジンの等燃費マップの一例を模式的に示す図である。
[図5A] 図5Aは、直結ギヤの等燃費マップの一例を模式的に示す図である。
[図5B] 図5Bは、通常ギヤの等燃費マップの一例を模式的に示す図である。

発明を実施するための形態

[0012]
<実施の形態の概要>
 図1は、実施の形態に係る車両Vの概要を説明するための図である。図1を参照して、実施の形態に係る車両Vの概要を述べる。実施の形態に係る車両Vはディーゼルエンジン等のエンジンを駆動力とし、AMTを備える大型車両である。
[0013]
 近年、車両に搭載されているECU(Electronic Control Unit)等の演算装置が、車両が走行抵抗に打ち勝って走行し、かつ車両の燃費が良くなるように変速機のギヤ段を自動で選択することが広く行われている。詳細は後述するが、車両におけるギヤ段の選択は、車両の走行抵抗に打ち勝つトルクを発生できるギヤ段のうち、車両の燃費がよくなるギヤ段を、当該エンジンの等燃費マップを参照して選択する。
[0014]
 車両の走行中、車両の加速度は、車両の駆動力から車両の走行抵抗を減じた量に比例し、車両の重量に反比例する。したがって、車両に搭載されているECUは、車両の駆動力、車両の重量、及び車両の加速度から車両の走行抵抗を推定し、その走行抵抗に打ち勝つトルクを発生できるギヤ段を選択する。しかしながら、ECUが車両の加速度を用いて走行抵抗を推定する場合、ECUは、現在走行中の位置における車両の走行抵抗を推定することはできるが、現在走行中の位置より先の位置においては走行抵抗を推定することができない。
[0015]
 ECUが走行抵抗を推定によって求める場合、その走行抵抗の算出精度は必ずしも高いとはいえない。したがって、精度が必ずしも保証されない走行抵抗に基づいてギヤ段を選択しても、選択したギヤ段が車両の燃費が良くなるギヤ段であることが必ずしも保証されない。そこで、実施の形態に係る車両VのECUは、現在走行中の位置より先の位置の道路の勾配情報を取得することにより、先の位置における走行抵抗を推定する。以下、実施の形態に係る車両Vが勾配情報を取得し、先の位置における走行抵抗を推定する方法の概要を説明する。
[0016]
 実施の形態に係る車両Vは、航法衛星から受信した情報に基づいて車両Vの現在位置を示す位置情報を取得する衛星航法機能を備えている。また、車両Vは、車両Vが走行する道路の勾配情報を保持している。なお、車両Vは、航法衛星からの受信情報を用いずに、加速度センサ等の出力値に基づいて車両Vの現在位置を取得する自律航法機能を備えてもよい。
[0017]
 車両VのECUは、道路の勾配情報と車両Vの位置情報とに基づいて、車両Vが近い将来走行することになる道路の勾配情報を先読みする。図1において、車両Vは、地点Aを始点とし地点Bを終点とする「現走行区間」を走行している。図1に示す例では、車両Vが走行している道路は、地点Bを始点とし地点Cを終点とする「先走行区間」において一定以上の上り勾配となる。なお、「先走行区間」とは、車両Vが現在走行中である現走行区間とは道路の平均勾配が異なる走行区間であって、車両Vの進行方向前方にある走行区間である。
[0018]
 ECUが先読みした先走行区間の勾配情報は、車両Vが保持する勾配情報と車両Vの位置情報から定まる。車両Vの走行抵抗は勾配抵抗、空気抵抗、及び転がり抵抗が支配的であるが、このうち勾配抵抗を推定できることになる。これにより、ECUは、先走行区間の走行抵抗を推定することができる。
[0019]
 ここで、車両Vの燃費は、車両Vが備えるエンジンの燃料消費率(すなわち、エンジンが所定の駆動力を発生させるために消費する燃料の量)のみならず、エンジン内部の摺動抵抗やエンジンの動力の伝達経路におけるロスにも影響する。ここで、エンジンの動力の伝達経路におけるロスは、例えば変速機が備える各ギヤの伝達効率に起因するロスである。
[0020]
 このため、実施の形態に係る車両Vは、先走行区間におけるギヤを選択する際に、変速機が備える各ギヤの伝達効率を考慮した等燃費マップを参照する。これにより、実施の形態に係る車両Vは、先走行区間において高燃費となるギヤ段をより精度よく選択することができる。
[0021]
 車両Vが高速道路等の自動車専用道路を走行している場合、車両Vは、先読みによって選択したギヤ段へのシフトの有無を、車両Vが置かれた種々の走行環境に応じて変更する。これにより、車両Vの変速によって運転者へ与えうる違和感を軽減できる。
[0022]
<実施の形態に係る車両Vの構成>
 図2を参照しながら、実施の形態に係る車両Vの内部構成について説明する。
 図2は、実施の形態に係る車両Vの内部構成を模式的に示す図である。実施の形態に係る車両Vは、エンジン1、変速機2、GPS(Global Positioning System)センサ3、重量センサ4、速度センサ5、アクセル開度センサ6、及びECUとしての車両制御装置10を備える。
[0023]
 車両Vは、ディーゼルエンジン等のエンジン1を駆動力とする大型車両であり、特にオートクルーズモードを搭載する車両である。変速機2は、エンジン1の回転駆動力を車両Vの駆動輪(不図示)に伝達するためのAMTである。変速機2は、エンジン1の回転駆動力を変換するための複数段のギヤを含む。
[0024]
 ここで、車両Vにおける「オートクルーズモード」とは、運転者がアクセルやシフトレバーを操作しなくても、あらかじめ設定された車両Vの速度を維持するようにエンジン1及び変速機2等がECUによって自動で制御されるモードをいう。オートクルーズモードは、車両Vが高速道路を走行する際に使用されることが主に想定されている。
[0025]
 GPSセンサ3は、複数の航法衛星から送信された電波を受信して解析することにより、GPSセンサ3の位置、すなわちGPSセンサ3を搭載する車両Vの位置を取得する。GPSセンサ3は、車両Vの位置を示す情報を車両制御装置10に出力する。
[0026]
 重量センサ4は、車両Vの総重量を取得する。具体的には、重量センサ4は車両Vの積荷の重量を計測し、積荷を除いた車両V単体の重量と合算することで車両Vの総重量を取得する。重量センサ4は、車両Vの総重量を示す情報を車両制御装置10に出力する。
[0027]
 速度センサ5は、車両Vの速度を計測する。速度センサ5は、計測された速度を示す情報を車両制御装置10に出力する。アクセル開度センサ6は、車両Vの運転者によるアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル開度を計測する。アクセル開度センサ6は、アクセル開度を示す情報を車両制御装置10に出力する。
[0028]
 車両制御装置10は、上述の各センサから情報を取得し、取得した情報に基づいてエンジン1内のシリンダに供給する燃料の量、及び変速機2のギヤ段を制御する。車両制御装置10は、車両Vがオートクルーズモードの場合には、車両Vが設定された速度を保って走行するように、エンジン1及び変速機2を制御する。また、車両制御装置10は、車両Vの図示しない速度制限装置(Speed Limit Device:SLD)が稼働している場合には、車両Vの速度が設定された上限速度を超えないように、エンジン1及び変速機2を制御する。
[0029]
 図3は、実施の形態に係る車両制御装置10の機能構成を模式的に示す図である。実施の形態に係る車両制御装置10は、記憶部11と、制御部12とを備える。
[0030]
 記憶部11は、例えば、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)である。記憶部11は、制御部12を機能させるための各種のプログラムを記憶する。また、記憶部11は、地図情報を記憶してもよく、道路の道路勾配を示す情報を記憶してもよい。
[0031]
 制御部12は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等の計算リソースである。制御部12は、記憶部11に記憶されているプログラムを実行することによって、現ギヤ段選択部13、道路勾配取得部14、走行区間決定部15、先ギヤ段選択部16、及びシフト制御部17の機能を実現する。
[0032]
 現ギヤ段選択部13は、車両Vが走行中の道路における車両Vの走行抵抗の推定値に基づいて、車両Vが走行中の区間における変速機2のギヤ段である現ギヤ段を選択する。現ギヤ段選択部13による現ギヤ段選択の詳細は後述する。
[0033]
 道路勾配取得部14は、GPSセンサ3から取得した車両Vの位置を示す情報と、記憶部11に格納されている地図情報とに基づいて、車両Vが走行中の道路における道路勾配を取得する。
[0034]
 走行区間決定部15は、道路勾配取得部14が取得した道路勾配に基づいて、車両Vが現在走行中の現走行区間とは道路の平均勾配が所定値以上異なる走行区間であって、車両Vの進行方向前方にある先走行区間を決定する。
[0035]
 先ギヤ段選択部16は、先走行区間の道路勾配と車両Vの速度とに基づいて、先走行区間における変速機2のギヤ段である先ギヤ段を選択する。以下、先ギヤ段選択部16による先ギヤ段選択の詳細について、現ギヤ段選択部13による現ギヤ段選択とともに説明する。
[0036]
 なお、車両Vが将来走行することになる道路の勾配情報を取得するためには、道路勾配取得部14は、車両Vが将来走行することになる場所を推定しなければならない。道路勾配取得部14が道路勾配を取得できないと、走行区間決定部15による先走行区間の決定も困難となる。
[0037]
 車両Vが高速道路等の自動車専用道路を走行する場合、道路勾配取得部14は車両Vが将来走行することになる場所の推定が比較的容易である。一方、車両Vが一般道や市街地等のように分岐を多く含む道路を走行する場合には、道路勾配取得部14は車両Vが将来走行することになる場所の推定が難しくなる。
[0038]
 以上より、車両Vが一般道や市街地等を走行中は、車両Vは現ギヤ段選択部13によるギヤ選択にしたがって走行する。また、車両Vが高速道路等の自動車専用道路を走行する場合、まずシフト制御部17が、車両Vは現ギヤ段選択部13によるギヤの選択結果と先ギヤ段選択部16によるギヤの選択結果を取得する。シフト制御部17は、ギヤの選択結果と先ギヤ段選択部16によるギヤの選択結果に基づいて、変速機2のギヤ段のシフトを制御する。
[0039]
 以下では、まず変速機2について説明し、次いでギヤ段と燃費との関係について説明する。その後、シフト制御部17による変速制御について説明する。
[0040]
[実施の形態に係る変速機2]
 実施の形態に係る車両Vが備える変速機2はAMTであり、従来のマニュアルトランスミッションにおけるスリーブをアクチュエータで移動することによって、変速機2のギヤ段の自動変速を実現する変速機である。このため、実施の形態に係る変速機2の基本構造は、従来のマニュアルトランスミッションと同様の構造である。実施の形態に係る変速機2は、スプリッタ及びレンジと呼ばれる二つの副変速機構と、スプリッタとレンジとの間に備えられる一つの主変速機構とから構成される。
[0041]
 スプリッタは、車両Vのエンジンの動力が入力されるインプットシャフトと、カウンターシャフトとの間の変速比を変更する。主変速機構は、主にカウンターシャフトとアウトプットシャフトとの間の変速比を変更する。レンジはアウトプットシャフトの回転駆動をプロペラシャフトに伝える駆動伝達経路上に設けられており、アウトプットシャフトとプロペラシャフトとの間の変速比を変更する。なお、主変速機構には、インプットシャフトとアウトプットシャフトとを直結する「直結ギヤ」が存在する。
[0042]
 実施の形態に係る車両Vが備える変速機2において、スプリッタ、主変速機構、及びレンジのギヤ段は、一例としてそれぞれ2段、3段、及び2段である。すなわち、実施の形態に係る車両Vが備える変速機2は、12段変速(2段×3段×2段=12段)の変速機である。車両Vが勾配の少ない高速道路で巡行する際には、変速機2のギヤは12段(オーバードライブギヤ)又は11段(直結ギヤ)が選択されると、車両Vの燃費向上に資することが多い。
[0043]
 直結ギヤは、インプットシャフトとアウトプットシャフトとを直結するギヤである。エンジンの動力がカウンターシャフトを介さずに直接アウトプットシャフトに伝達されるため、カウンターシャフトを介する他のギヤ段と比べて伝達効率が高い。なお、変速機2のギヤ段が5段のときも主変速機構は直結ギヤとなるが、この場合レンジのギヤ比が直結(ギヤ比1)となってはおらず、伝達効率は低下する。以下本明細書において、変速機2のギヤ段が「オーバードライブギヤ」は変速機2の最高段のギヤを意味し、「直結ギヤ」は変速機2の最高段よりも一段低い段のギヤを意味することとする。
[0044]
[ギヤ段と燃費との関係]
 図4は、実施の形態に係るエンジン1の等燃費マップの一例を模式的に示す図である。以下、図4を参照しながら、変速機2におけるギヤ選択について説明する。
[0045]
 図4に示す等燃費マップにおいて、縦軸はエンジン1が備えるシリンダの正味平均有効圧力Pmeであり、横軸はエンジン1の回転数Nである。正味平均有効圧力Pmeに対して、エンジン1の排気量等から定まる所定の値を乗じると、エンジン1のトルクTとなる。すなわち、正味平均有効圧力Pmeは、エンジン1が発生するトルクTと比例関係にある。この比例係数をαとすると、T=αPmeとなる。
[0046]
 図4に示す等燃費マップにおいて、符号Pmaxで示す曲線は、エンジン1の最大燃焼圧力を示す最大燃焼圧力曲線Pmaxである。エンジン1は、図4に示す等燃費マップにおいて、最大燃焼圧力曲線Pmaxを超えるトルクを発生させることはできない。
[0047]
 図4に示す等燃費マップにおいて、ハッチングで示す領域は、エンジン1の燃料消費率(Specific Fuel Consumption;SFC)を示す。SFCは、エンジン1の単位仕事当たりの燃料消費量を示す。SFCの値が小さいほど、エンジン1はより少ない燃料で同じ仕事をすることができる。
[0048]
 図4に示す等燃費マップは、燃料消費率が異なる領域がハッチングンを用いて識別されている。図4において、符号H1で示すハッチングH1が付された領域が最も燃費消費率のよい(すなわち、燃費消費量が少ない)領域であり、以後、ハッチングH2、ハッチングH3、ハッチングH4、及びハッチングH5の順に燃費消費率が悪くなる。なお、図4では、ハッチングH5が付された領域よりも燃費消費率の悪い領域の図示は省略している。以下、ハッチングH1が付された領域を、単に領域H1と記載する。他の領域も同様である。
[0049]
 車両Vが走行抵抗に打ち勝って定速度Vcで走行するには、車両Vが発生するトルクTによって生じる力Fが車両Vの走行抵抗に拮抗しなければならない。この場合、車両Vのエンジン1は、走行抵抗馬力Pv=F・Vcを出力する必要がある。図4に示す等燃費マップにおいて、符号Lpで示す曲線は、走行抵抗馬力Pv=F・Vcに対応する等馬力曲線Lpである。
[0050]
 回転数Nで回転しているエンジン1がトルクTを発生しているとき、エンジン1が出力する馬力Pは、P=TN=αPmeNとなる。このため、正味平均有効圧力Pmeは、エンジン1の回転数Nに反比例する。ここで、エンジン1の回転数Nは変速機2が選択しているギヤ段のギヤ比によって定まる。したがって、エンジン1は等燃費マップにおいて等馬力曲線Lp上の任意の回転数となることはできず、速度Vcと変速機2のギヤ比とによって定まる離散的な回転数に規制される。
[0051]
 図4において、符号G12で示す白丸G12は、変速機2のギヤ段が12段(すなわちオーバードライブギヤ)の場合におけるエンジン1の状態を示している。同様に、符号G11、符号G10、及び符号G9で示す白丸は、それぞれギヤ段が11段(すなわち直結ギヤ)、10段、及び9段の場合におけるエンジン1の状態を示している。変速機2のギヤ段が12段と11段との場合では、両者とも領域H2に含まれるが、12段の場合の方がより領域H1に近く、燃費効率が良い。
[0052]
 このように、車両Vの速度Vcと車両Vの走行抵抗馬力Pvとが定まれば、現ギヤ段選択部13及び先ギヤ段選択部16は、等燃費マップを参照することによって燃費効率のよいギヤ段を定めることができる。
[0053]
[現ギヤ段選択部13によるギヤ段選択]
 現ギヤ段選択部13は、車両Vが走行中の道路における車両Vの走行抵抗の推定値Pvを推定し、車両Vの速度と走行抵抗の推定値Pvとを用いて等燃費マップを参照することにより、変速機2のギヤ段を選択する。
[0054]
 上述したように、車両Vの走行中、車両Vの加速度は、車両Vの駆動力から車両の走行抵抗を減じた量に比例し、車両Vの重量に反比例する。現ギヤ段選択部13は、エンジン1に噴射している燃料の噴射量等から、エンジン1が発生している正味平均有効圧力Pmeを推定する。現ギヤ段選択部13は、正味平均有効圧力Pmeからエンジン1が発生するトルクTを取得する。現ギヤ段選択部13は、トルクT、変速機2が選択しているギヤ段のギヤ比、最終減速比、及び駆動輪の直径から、車両Vの駆動力を取得する。現ギヤ段選択部13は、車両Vの駆動力、車両Vの重量、及び車両Vの加速度から車両Vの走行抵抗を推定し、等燃費マップを参照してギヤ段を選択する。
[0055]
[先ギヤ段選択部16によるギヤ段選択]
 先ギヤ段選択部16は、車両Vの走行抵抗を計算によって算出する点で現ギヤ段選択部13と相違する。ここで、車両Vの走行抵抗は、車両Vが備える駆動輪の転がり抵抗と、車両Vの空気抵抗と、車両Vが走行する道路の勾配抵抗との総和が支配的である。車両Vの空気抵抗は車両Vの速度の二乗に比例する。また、道路の勾配抵抗は、車両が走行する道路の勾配と車両Vの重量とに依存する。駆動輪の転がり抵抗と、車両Vの空気抵抗を算出するための比例係数は、あらかじめ車両Vの製造者によって記憶部11に格納されている。
[0056]
 先ギヤ段選択部16は、記憶部11が保持している地図情報を参照して、走行区間決定部15が決定した先走行区間における勾配情報を取得する。また、先ギヤ段選択部16は、重量センサ4及び速度センサ5からそれぞれ車両Vの重量及び車両Vの速度を取得する。これにより、先ギヤ段選択部16は、先走行区間における車両Vの勾配抵抗を算出する。
[0057]
 先ギヤ段選択部16は、車両Vの速度の二乗に比例係数を乗じて車両Vの空気抵抗を取得する。先ギヤ段選択部16は、車両Vの勾配抵抗、車両Vの空気抵抗、及び記憶部11から読み出して転がり抵抗を加算して、車両Vの走行抵抗を算出する。先ギヤ段選択部16は、現ギヤ段選択部13と同様に、算出した走行抵抗と等燃費マップとから、先走行区間におけるギヤ段を選択する。
[0058]
 ここで、先ギヤ段選択部16は、変速機2のギヤ段が直結ギヤの場合と、変速機2のギヤ段が通常ギヤの場合とで、異なる等燃費マップを参照して先ギヤ段を選択する。
[0059]
 図5A及び図5Bは、通常ギヤの等燃費マップと直結ギヤの等燃費マップとの相違を説明するための図である。具体的には、図5Aは直結ギヤの等燃費マップの一例を模式的に示す図であり、図5Bは通常ギヤの等燃費マップの一例を模式的に示す図である。図5Bに示す等燃費マップは、図4に示す等燃費マップと同一である。すなわち、図5Bに示す通常ギヤの等燃費マップにおける白丸G12は、変速機2のギヤ段が12段であるオーバードライブギヤの場合におけるエンジン1の状態を示す。
[0060]
 上述したように、変速機2のギヤ段が直結ギヤの場合、変速機2のギヤ段が通常ギヤの場合と比べて変速機2全体としてのギヤの伝達効率が高くなる。このため、変速機2のギヤ段が直結ギヤの場合、変速機2のギヤ段が通常ギヤの場合と比べてエンジン1の出力が車両Vの駆動輪に伝達するまでの間に発生する伝達ロスが少なくなる。結果として、変速機2のギヤ段が直結ギヤの場合、変速機2のギヤ段が通常ギヤの場合と比べてエンジン1の燃料消費率が改善する。
[0061]
 図5Aに示す直結ギヤの等燃費マップと図5Bに示す通常ギヤの等燃費マップとを比較すると、直結ギヤの等燃費マップは、最大燃焼圧力曲線Pmax以下の領域における領域H1が広い。このため、通常ギヤの等燃費マップにおいては領域H2である部分も、直結ギヤの等燃費マップにおいては領域H1となっている。
[0062]
 図5Aに示す等馬力曲線Lpは、図5Bに示す等馬力曲線Lpと同一である。図5Aに示すように、等馬力曲線Lpにおいて直結ギヤ(11段)におけるエンジン1の状態は領域H1に含まれている。これは、エンジン1が等馬力曲線Lpに対応する仕事をするためには、変速機2がオーバードライブギヤといった通常ギヤにするよりも、直結ギヤとする方が、車両Vの燃費が向上することを意味する。
[0063]
 このように、先ギヤ段選択部16は、変速機2のギヤ段の伝達効率の相違を反映させた等燃費マップを参照してギヤ段を選択することにより、車両Vの燃費を向上させるギヤ段をより精度よく選択することができる。
[0064]
[シフト制御部17による変速制御]
 現ギヤ段選択部13は、車両Vが走行中であれば車両Vの走行抵抗の変化に応じて変速機2の最適なギヤ段を常に選択する。車両Vが高速道路等の自動車専用道路を走行している場合、先ギヤ段選択部16は、走行区間決定部15が決定した先走行区間における最適なギヤ段を、車両Vが現走行区間を走行中に先読みする。
[0065]
 したがって、車両Vが高速道路等の自動車専用道路を走行している場合、車両Vが現走行区間と先走行区間との境界に到達すると、現ギヤ段と先ギヤ段との競合が生じる場合もある。また、直結ギヤのギヤ比はオーバードライブギヤのギヤ比よりも高いので、車両Vの速度が同じであってもエンジン1のエンジン回転数は直結ギヤの方が高い。このため、例えば燃費向上の観点からオーバードライブギヤから直結ギヤにシフトダウンすると、車両Vの運転者はエンジン1が突然吹き上がったかの印象を受けかねない。
[0066]
 そこで、シフト制御部17は、車両Vが現走行区間と先走行区間との境界に到達したときに先ギヤ段へシフトするか否かを、車両Vが置かれた種々の走行環境に応じて変更する。以下、車両Vが置かれた種々の走行環境に応じて実行される、シフト制御部17による変速機2の変速制御について説明する。
[0067]
(第1の変速制御)
 現走行区間における変速機2のギヤ段がオーバードライブギヤであり、かつ先ギヤ段選択部16が選択した先ギヤ段が直結ギヤであるとする。シフト制御部17は、先走行区間における車両Vの推定走行時間が所定時間より長いことを条件として、車両Vが先走行区間に到達したときに変速機2のギヤ段をオーバードライブギヤから直結ギヤにシフトダウンする。
[0068]
 ここで「所定時間」とは、シフト制御部17が現走行区間と先走行区間との境界において変速機2のギヤ段をオーバードライブギヤから直結ギヤにシフトダウンするか否かを判定するために参照する「シフトダウン判定基準閾時間」である。シフトダウン判定基準閾時間の具体的な値は、車両Vが走行することが想定される道路の勾配情報や、車両Vが備えるエンジン1の性能等を勘案して実験により定めればよいが、例えば1分である。これは、時速80キロメートルで走行している車両Vが、およそ1.3キロメートル走行する時間である。
[0069]
 シフト制御部17は、オーバードライブギヤから直結ギヤにシフトダウン後に車両Vが走行する走行区間が所定時間より短い場合、すなわち車両Vの推定走行時間が短い場合にシフトダウンを抑制する。これにより、シフト制御部17は、短時間で変速が繰り返されることによるシフトビジー感を車両Vの運転者が感じることを抑制できる。
[0070]
 上述したように、先ギヤ段選択部16は、車両Vの重量、車両Vの速度、車両Vの転がり抵抗等に基づいて車両Vの走行抵抗を算出し、先ギヤ段を選択する。ここで、車両Vの重量、車両Vの速度、車両Vの転がり抵抗等の測定誤差の大きさによっては、エンジン1が低負荷の場合(例えば、車両Vが平坦な道路を走行中の場合)であっても、先ギヤ段選択部16は直結ギヤを最良ギヤとして選択することも起こり得る。
[0071]
 先行区間が平坦な道路を走行中の場合に、走行抵抗の誤算出によって先ギヤ段選択部16が直結ギヤを先ギヤ段として選択すると、走行区間の境界で不用なシフトダウンが実行されることになる。直結ギヤのギヤ比はオーバードライブギヤのギヤ比よりも大きいため、変速機2のギヤ段がオーバードライブギヤから直結ギヤにシフトダウンすると、エンジン1の回転数が上昇する。エンジン1の回転数の上昇は騒音となり得るため、運転者のドライビングフィールを損ないかねない。
[0072]
 そこで、シフト制御部17は、車両Vが先走行区間に到達したときに変速機2のギヤ段をオーバードライブギヤから直結ギヤにシフトダウンするための条件として、先走行区間における道路勾配が所定値以上の上り勾配であることを加えてもよい。
[0073]
 ここで「所定値以上の上り勾配」とは、シフト制御部17が現走行区間と先走行区間との境界において変速機2のギヤ段をオーバードライブギヤから直結ギヤにシフトダウンするか否かを判定するために参照する「シフトダウン判定基準閾勾配」である。シフトダウン判定閾時間の具体的な値は、車両Vが走行することが想定される道路の勾配情報や、車両Vが備えるエンジン1の性能等を勘案して実験により定めればよいが、例えば1%である。これにより、変速機2の不要なシフトダウンにより、車両Vの運転者が違和感を受けることを抑制できる。
[0074]
(第2の変速制御)
 現走行区間における変速機2のギヤ段が直結ギヤであり、かつ先ギヤ段選択部16が選択した先ギヤ段も直結ギヤであるとする。この場合において、車両Vが現走行区間を走行中に、現ギヤ段選択部13が新たにオーバードライブギヤへのシフトアップを選択した場合を考える。シフト制御部17は、車両Vが先走行区間に到達するまでの状況に基づいて、車両Vが先走行区間に到達する前に変速機2をシフトアップするか否かを選択する。
[0075]
 より具体的には、シフト制御部17は、車両Vが先走行区間に到達するまでの推定時間が所定の時間以内のときは、現ギヤ段選択部13が新たにオーバードライブギヤへのシフトアップを選択した場合であっても、シフトアップせずに変速機2のギヤ段を直結ギヤのまま維持する。
[0076]
 ここで「所定の時間」とは、シフト制御部17が現走行区間において変速機2のギヤ段を直結ギヤからオーバードライブギヤにシフトアップするか否かを判定するために参照する「シフトアップ判定基準閾時間」である。シフトアップ判定基準閾時間の具体的な値は、車両Vが走行することが想定される道路の勾配情報や、車両Vが備えるエンジン1の性能等を勘案して実験により定めればよいが、例えばシフトダウン判定基準閾時間と同じ1分である。シフトアップ判定基準閾時間は記憶部11に格納されている。
[0077]
 シフト制御部17は、オーバードライブギヤから直結ギヤにシフトダウン後に車両Vが走行する走行区間が短い場合、すなわち車両Vの推定走行時間が短い場合にシフトアップを抑制する。これにより、シフト制御部17は、短時間で変速が繰り返されることによるシフトビジー感を車両Vの運転者が感じることを抑制できる。
[0078]
 シフト制御部17は、時間の条件に替えて、あるいはそれに加えて、距離の条件に基づいてシフトアップするか否かを判定してもよい。具体的には、シフト制御部17は、車両Vが先走行区間に到達するまでの走行距離が所定の距離以内のときは、現ギヤ段選択部13が新たにオーバードライブギヤへのシフトアップを選択した場合であっても変速機2のギヤ段を直結ギヤのまま維持してもよい。
[0079]
 ここで、「所定の距離」とは、シフト制御部17が現走行区間において変速機2のギヤ段を直結ギヤからオーバードライブギヤにシフトアップするか否かを判定するために参照する「シフトアップ判定基準閾距離」である。シフトアップ判定基準閾距離の具体的な値は、車両Vが走行することが想定される道路の勾配情報や、車両Vが備えるエンジン1の性能等を勘案して実験により定めればよいが、例えば1.5キロメートルである。これは、時速90キロメートルで走行している車両Vが、1分間で走行する距離である。これにより、シフト制御部17は、短時間で変速が繰り返されることによるシフトビジー感を車両Vの運転者が感じることを抑制できる。なお、シフトアップ判定基準閾距離は記憶部11に格納されている。
[0080]
(第3の変速制御)
 実施の形態に係る車両Vは、車両Vの運転者がアクセルやシフトレバーを操作しなくても、あらかじめ設定された車両Vの速度を維持するようにエンジン1及び変速機2等が自動で制御されるオートクルーズモードを搭載している。また、車両Vの速度制限装置は、車両Vの速度が設定された上限速度を超えないで上限速度で走行するように、エンジン1及び変速機2を制御する。このように、車両Vは、所定の設定速度で自動走行するモードを備えている。
[0081]
 実施の形態に係る先ギヤ段選択部16は、車両Vが設定速度で走行していることを仮定して、車両Vの走行抵抗を推定する。また、先ギヤ段選択部16は、車両Vが設定速度で走行していることを仮定して算出したエンジン1の回転数Nに基づいて等燃費マップを参照する。ここで、車両Vの速度は、必ずしも常に設定速度と等しいとは限らない。例えば、車両Vの運転者が追い抜きのために車両Vを一時的に加速することもあるし、急勾配の影響で車両Vが減速している場合もある。このため、先ギヤ段選択部16が先ギヤ段を選択する際に車両Vの速度に置く仮定と、車両Vの実際の速度とがずれる場合には、先ギヤ段が先走行区間における最適ギヤ段から外れることも起こり得る。
[0082]
 そこで、シフト制御部17は、所定の設定速度と車両Vの速度との差が所定の範囲内であることを条件として、車両Vが先走行区間に到達したときに変速機2のギヤ段を先ギヤ段選択部16が選択したギヤ段に変更する。
[0083]
 ここで「所定の範囲」とは、シフト制御部17が現走行区間と先走行区間との境界において変速機2のギヤ段を先ギヤ段選択部16が選択したギヤ段に変更するか否かを判定するために参照する「変速判定基準範囲」である。変速判定基準範囲の具体的な値は、車両Vが走行することが想定される道路の勾配情報や、車両Vが備えるエンジン1の性能等を勘案して実験により定めればよいが、例えば時速5キロメートルである。すなわち、設定速度となる時速から車両Vの時速を減じた値が±5の収まることを条件として、シフト制御部17は先ギヤ段選択部16が選択したギヤ段に変更する。変速判定基準範囲は、記憶部11に格納されている。
[0084]
 シフト制御部17は、車両Vに設定されたオートクルーズ速度を設定速度として採用してもよいし、車両Vにあらかじめ設定されたスピードリミッター速度(速度制限装置が作動する速度)を設定速度として採用してもよい。いずれの場合にしても、車両Vが自動走行するモードのときに車両Vがとるべき速度として期待されている速度である。シフト制御部17が、先ギヤ段への変速を設定速度と車両Vの速度との差が所定の範囲内であることを条件とすることにより、先ギヤ段の有効性を高めることができる。
[0085]
(第4の変速制御)
 上述したように、現ギヤ段選択部13は、車両Vの駆動力、車両Vの重量、及び車両Vの加速度から車両Vの走行抵抗を推定し、等燃費マップを参照してギヤ段を選択する。現ギヤ段選択部13は、車両Vが走行中にリアルタイムで走行抵抗を推定することもできるが、車両Vの速度と変速機2のギヤ段との関係をあらかじめパターン化したシフトパターンを記憶部11から読み出して参照することにより、現ギヤ段を選択してもよい。以下では、現ギヤ段選択部13が、あらかじめ定められ記憶部11に格納されたシフトパターンに則って、現走行区間における変速機2のギヤ段である現ギヤ段を選択することを前提として説明する。
[0086]
 記憶部11が格納しているシフトパターンは汎用的な等燃費マップを前提としておらず、等燃費マップは参照されない。
[0087]
 いま、現走行区間における変速機2のギヤ段がオーバードライブギヤであり、先ギヤ段が直結ギヤであるとする。車両Vが現走行区間の走行を終え、先走行区間の走行に入った場合、すなわち、シフト制御部17が先走行区間として先ギヤを選択した走行区間が「現走行区間」となった場合、現ギヤ段選択部13が選択した現ギヤ段と、シフト制御部17があらかじめ選択しておいた先ギヤ段とに齟齬が生じやすい。汎用シフトマップは等燃費マップを考慮していないからである。
[0088]
 そこで、シフト制御部17は、現走行区間における変速機2のギヤ段がオーバードライブギヤであり、先ギヤ段が直結ギヤであるときは、車両Vが先走行区間を走行中は、変速機2のギヤ段を直結ギヤのまま維持する。シフト制御部17は、車両Vが先走行区間に到達したときに変速機2のギヤ段を直結ギヤにシフトダウンし、車両Vが先ギヤ段選択部16による先ギヤ選択時における先走行区間(すなわち、現走行区間)を走行中に現ギヤ段選択部13がオーバードライブギヤを選択したとしても、変速機2のギヤ段を直結ギヤのまま維持する。これにより、変速機2のギヤ段が現ギヤ段とあらかじめ選択された先ギヤ段とを交互に選択される、いわゆるシフトハンチングが発生することを抑制できる。
[0089]
 なお、シフト制御部17は、上述した第1の変速制御から第4の変速制御までの4つの変速制御を任意に組み合わせて実行することができる。組み合わせによって生じた新たな変速制御は、もととなる変速制御の効果を合わせ持つ。
[0090]
<車両制御装置10の効果>
 以上説明したように、実施の形態に係る車両制御装置10によれば、AMTを備える車両Vにおける燃料消費量の推定精度及びギヤ段の選択技術を改善することができる。特に、実施の形態に係る先ギヤ段選択部16は、変速機2のギヤ段が直結ギヤの場合と、変速機2のギヤ段が通常ギヤの場合とで、ギヤの伝達効率の相違を考慮した異なる等燃費マップを参照して先ギヤ段を選択する。これにより、先ギヤ段選択部16は、車両Vにおける燃料消費量の推定精度を向上することができる。
[0091]
 また、車両Vが高速道路等の自動車専用道路を走行している場合、シフト制御部17は、先ギヤ段選択部16が選択した先ギヤ段へシフトするか否かを、車両Vが置かれた種々の走行環境に応じて変更する。これにより、車両Vの変速によって運転者へ与えうる違和感を軽減できる。
[0092]
 以上、本開示を実施の形態を用いて説明したが、本開示の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本開示の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
[0093]
 本出願は、2017年5月12日付で出願された日本国特許出願(特願2017-095973)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

産業上の利用可能性

[0094]
 本開示の車両制御装置は、オートメイテッドマニュアルトランスミッションを備える車両におけるギヤ段の選択技術の改善という点において有用である。

符号の説明

[0095]
1 エンジン
2 変速機
3 GPSセンサ
4 重量センサ
5 速度センサ
6 アクセル開度センサ
10 車両制御装置
11 記憶部
12 制御部
13 現ギヤ段選択部
14 道路勾配取得部
15 走行区間決定部
16 先ギヤ段選択部
17 シフト制御部
V 車両

請求の範囲

[請求項1]
 変速機を備える車両が所定の設定速度で走行するように前記車両を制御する車両制御装置であって、
 前記変速機は、
 インプットシャフトを介して入力されるエンジンの動力をカウンターシャフトを介さずにアウトプットシャフトに伝達する、前記インプットシャフトと前記アウトプットシャフトとを直結する直結ギヤと、
 前記エンジンの動力を前記カウンターシャフトを介して前記アウトプットシャフトに伝達する通常ギヤと、を備え、前記通常ギヤは前記直結ギヤよりもギヤ比の小さいギヤであるオーバードライブギヤを含み、
 前記車両制御装置は、
 前記車両が走行中の現走行区間とは道路勾配が異なる走行区間であって、前記車両の進行方向前方にある先走行区間を決定する走行区間決定部と、
 前記車両の走行抵抗に基づいて前記現走行区間における前記変速機のギヤ段である現ギヤ段を選択する現ギヤ段選択部と、
 前記先走行区間の道路勾配と前記車両の速度とに基づいて推定された前記先走行区間における前記車両の走行抵抗に基づいて、前記先走行区間における前記変速機のギヤ段である先ギヤ段を選択する先ギヤ段選択部と、
 前記設定速度と前記車両の速度との差が所定の範囲内であることを条件として、前記車両が前記先走行区間に到達したときに前記変速機のギヤ段を前記先ギヤ段選択部が選択した前記先ギヤ段に変更するシフト制御部と、
 を備える車両制御装置。
[請求項2]
 前記シフト制御部は、前記車両に設定されたオートクルーズ速度を前記設定速度とし、当該設定速度と前記車両の速度との差が前記所定の範囲内であることを条件として、前記車両が前記先走行区間に到達したときに前記変速機のギヤ段を前記先ギヤ段選択部が選択した前記先ギヤ段に変更する、
 請求項1に記載の車両制御装置。
[請求項3]
 前記シフト制御部は、前記車両にあらかじめ設定されたスピードリミッター速度を前記設定速度とし、当該設定速度と前記車両の速度との差が前記所定の範囲内であることを条件として、前記車両が前記先走行区間に到達したときに前記変速機のギヤ段を前記先ギヤ段選択部が選択した前記先ギヤ段に変更する、
 請求項1に記載の車両制御装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5A]

[ 図 5B]