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1. (WO2008099663) 高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法及びその装置

明 細 書

発明の名称

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

発明の開示

発明が解決しようとする課題

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015  

課題を解決するための手段

0016   0017  

発明の効果

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028  

図面の簡単な説明

0029  

発明を実施するための最良の形態

0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法及びその装置

技術分野

[0001]
 本発明は、高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法及びその装置に関し、特に、熱応力を利用した非金属材料製の被加工物の加工方法及びその装置であって、レーザー光を被加工物表面に集光照射して形成されるスクライブを利用する加工方法及びその装置に関するものである。

背景技術

[0002]
 この種の従来の装置として、特許文献1~特許文献4などで提案されているものが知られている。
[0003]
 図5に示すものは特許文献1(特開平1-108006号公報)により提案されているものであり、図中において符号101はガラスにて代表される高脆性非金属材料製の被加工物であり、被加工物101の加工予定線103の端部位置に硬質工具等にて切欠き102(初期亀裂)を入れ、切欠き102の近くでレーザービームによる熱源104を照射する。被加工物101を熱源104で局部的に加熱し続けると仮想等温線105の接線方向に熱応力が作用するので、切欠き102の先端から熱源104の方向に亀裂106が発生する。従って、熱源104を加工予定線103に沿って移動させれば亀裂106が熱源104に追従し、脆性材料製の被加工物101が所望の形状に割断できることになる。
[0004]
 図6に示すものは特許文献2(特開平5-32428号公報)により提案されているものである。この方法にあっては、先ず、高脆性非金属材料製の被加工物111の表面部に図6(a)に示すように高い吸収率を有する紫外線レーザー光L1を集光させ、その集光点を加工予定線(113)に沿って移動させる。これにより、集光点近傍でアブレーションが生じ、被加工物111の一部が蒸散して図6(b)に示すように浅いスクライビング溝112が形成される。続いて、被加工物の一部が除去された細長いこの溝112に沿って被加工物111に高い吸収率を有する赤外線レーザー光L2を図6(c)に示すように照射し、浅いスクライビング溝112に発生する熱応力によってスクライビング深さを図6(d)に示すように分断する。
[0005]
 図7に示すものは特許文献3(特表平8-509947号公報)により提案されているものであり、高脆性非金属材料製の被加工物121の加工予定線において表面から内部に至る亀裂を形成して分断するに当たり、加工予定線上にレーザー光等の加熱帯域になる加熱ビーム122を移動させながら照射し、その後、加熱ビーム122によって照射された加熱領域に対し、加熱ビーム122の後方に位置する冷却ノズルから噴射させた冷却媒体によって冷却させて冷却帯域123を形成し、V=k×a(b+l)/δ1よって規定される速度で割断させるものである。
[0006]
 これにより、冷却条件及び割断速度に関係する加熱ビーム122のパラメータの選択によって与えられた特性の被加工物121に必要な深さの盲亀裂124(以下、「ブラインドクラック」という。)(スクライビング)を形成させることができる。また、この加工法にあっては、被加工物121の表面近傍のみに加熱及び冷熱を与えることで実施可能なので、割断速度の高速化が実現できるとしている。
[0007]
ここで、V:ビームスポット及び被加工物121の相対的な移動速度
    k:被加工物121の材料の熱物理特性及びビームの出力密度
    a:被加工物121の材料の表面上の加熱ビームスポットの横方向長さ
    b:被加工物121の材料の表面上の加熱ビームスポットの縦方向長さ
    l:加熱ビームスポットの後端縁から冷却帯域133の前端縁までの距離(以下、「加熱・冷却間距離」という。)
    δ1:ブラインドクラックの深さ
[0008]
 特許文献4(特表2003-534132号公報)に記載される加工法は、図8に示すように被加工物131にミクロ割れを生成する第1のステップ、レーザービームを被加工物131に照射して加熱する第2のステップ、レーザー照射された熱影響領域内に冷却ノズルから冷媒を噴霧して冷却する第3のステップ、及び冷却領域背後の場所に所定の力を作用させて完全破断させる第4のステップを順次に実行することで構成されたものである。ここで、第4のステップで作用させる所定の力とは、図10によれば、機械的な破断器ツール(ギロチン型破断機等)、図9に符号188で示される膨張可能な溝用空気袋(ステージに掘られた溝に埋め込まれたチューブ状の袋)、シャッタを通過した二重破断ビーム又は単一TEMビーム(割断予定線の周囲に与える熱衝撃力)である。装置としては、ブラインドクラックを生成する第1のステップから第3のステップを一体にした一体化クラッキング装置の前方に、被加工物131を予熱するレーザー・スクライビング加速装置が具備されている。
特許文献1 : 特開平1-108006号公報
特許文献2 : 特開平5-32428号公報
特許文献3 : 特表平8-509947号公報
特許文献4 : 特表2003-534132号公報

発明の開示

発明が解決しようとする課題

[0009]
 特許文献1記載の発明にあっては、切欠き102の近くからレーザービームによる熱源104を照射するのみであり、被加工物101を切り開くように割断ラインの亀裂先端が加工表面に対して垂直方向に向くため、僅かな熱バランスの変動により加工予定線103に対し割断ラインがずれることがある。また、被加工物101の軟化点温度を越えない範囲で熱源104を照射するため、亀裂106を急速に進展させるための十分な熱応力が発生し難い。そのため、割断速度を高速化することができないと共に、被加工物101のサイズが大きくなるにつれて割断速度が小さくなる傾向がある。加えて、亀裂深さを正確に制御することはできないなどの技術的課題がある。
[0010]
 特許文献2記載の発明は、アブレーションによって蒸散した被加工物111の微粉末が被加工物111の表面や加工装置の内部に飛散・付着して、後工程の障害となる恐れがあるので、微粉末の除去装置等の付帯設備が必要になってくる。また、浅いスクライビング溝112の表面はアブレーションとはいえ、熱改質されて断面強度や品位が低下する等の恐れがあり、切断面の強度や品質に重大な悪影響を及ぼす可能性がある。更に、浅いスクライビング溝112の先端形状によっては、加工予定線に正確に沿う切断が困難になり、また、被加工物101の軟化点を超えない上限のパワーを有する赤外線レーザー光を照射しても、熱応力が不十分でスクライビング溝112が深化しない可能性がある。
[0011]
 特許文献3記載の発明は、特許文献1,2記載の発明の問題は解決しているが、ブラインドクラック124の深さを任意に変えることが不可能である。本発明者等は、例えば同一被加工物121の加工途中でブラインドクラック124の深さを変える場合、移動速度V、加熱ビーム122(加熱帯域)の縦・横方向長さa,b、加熱・冷却間距離l、或いはビームの出力密度kの何れか一つ又は複数のパラメータを変更・制御する必要があるを知得した。この中では移動速度Vの変更が最も簡便であると思われるが、これによって被加工物121の表面が受ける加熱熱量及び冷却熱量が変動してしまう。従って、過熱により被加工物121の表面が溶融したり、逆に熱量不足によって十分な熱応力が発生しなくなる現象や、加熱・冷却間距離lが適正値から外れる等の現象が生じ、ブラインドクラック124自体が形成されなくなる。結果的に、同一被加工物121の加工中に、ブラインドクラック124深さを任意に変更することは不可能である。ちなみに、ブラインドクラック124深さの変更は、加工予定線を交差させるために必要があり、また、被加工物121の端部付近を割断する場合、ブラインドクラック124が垂直に形成されずに湾曲することがあるので、深さを変えたりする必要性がある。
[0012]
 加えて、ブラインドクラックを被加工物の全厚さに入れることができない。従って、当然であるが、全厚さに渡ってブラインドクラック深さを任意に制御することができない等の問題がある。
[0013]
 特許文献4記載の発明にあっては、被加工物の全厚さに渡ってブラインドクラックの深さを任意に制御することは不可能であるという技術的課題がある。なぜなら、一体化クラッキング装置は、ある一定の深さ(通常、板厚の半分以下)のブラインドクラックを入れることは可能であるが、ステップ4の補助切断装置では何れの方法であっても最終的に分断することを可能であっても、当該ブラインドクラックを成長させて途中で止めることができないからである。
[0014]
 また、第3のステップとして、レーザー照射された熱影響領域内に冷却ノズルから冷媒を噴霧して冷却し冷却領域を生成するため、冷却領域の前後部分に渡る単一の加熱領域が生成されることになり、1つの被加工物の加工中において冷却領域の後部の加熱領域(再加熱領域)のみの加熱エネルギーの量を同一面積としたまま任意に調整することができない。勿論、前部の加熱領域(加熱領域)の加熱エネルギーの量を同一面積かつ同一量に維持しながら、後部の加熱領域(再加熱領域)の加熱エネルギーの量を同一面積としながら増減調整することもできない。
[0015]
 加えて、構成される補助切断装置の内、非接触で行える二重破断ビーム又は単一TEMビームによる熱衝撃力は、安定した破断面品質を作るのが困難等の技術的課題もある。
 特許文献4では、シャッタによってレーザー光を一部遮断し、パワー調整を行っているため、被加工物に照射されるレーザー光の照射面積が変動する。このため、被加工物を完全破断させずに所定深さにまでスクライビングを正確に行うことが困難である。

課題を解決するための手段

[0016]
 本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、ガラス、セラミック或いは半導体材料等の高脆性非金属材料に複数の加熱エネルギーと冷熱エネルギーとを組み合わせて照射し、被加工物の欠損を生じさせずに該材料中に発生する熱応力によってスクライブ亀裂を所望する方向に進展させ、かつ、スクライブ亀裂を所定の深さに形成できるフレキシブルで実用的な非金属材料の加工方法及びその装置を提供することを目的としている。その構成は、次の通りである。
[0017]
 請求項1記載の発明は、高脆性非金属材料製の被加工物1を線状の加工予定線2bに沿ってスクライビングするとき、
強度が制御された加熱エネルギーを所定の加熱領域3に照射して、加工予定線2bに沿って走査する第1の工程と、前記第1の工程の加熱領域3の相対的移動方向の後方に位置する所定の冷却領域4aに冷熱エネルギーを照射して、加工予定線2bに沿って走査し、スクライブ線を形成する第2の工程と、前記第2の工程の冷却領域4aの相対的移動方向の後方に位置する所定の再加熱領域5aに強度が制御された加熱エネルギーを照射して、加工予定線2bに沿って走査してスクライブ亀裂5bを形成する第3の工程とを順次に備える高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法において、
スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂5bを所定の深さに形成するために、
δ:スクライブ亀裂5bの所定深さ、
δ0 :第2の工程の終了後におけるスクライブ線の深さ、
P:第3の工程の再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー量、
A:被加工物1の形状特性及び熱特性に依存した比例係数、
m:m≧1の実数係数として、
スクライブ亀裂5bの深さ特性式δ=δ0 +A・Pm
を満足するように第3の工程の再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー量Pを調整することを特徴とする高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法である。
 請求項2記載の発明は、前記第1の工程の前に、被加工物1の加工予定線2bの少なくともスクライビング開始端部に、微小亀裂2aを形成する微小亀裂形成工程を行うことを特徴とする請求項1の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法である。
 請求項3記載の発明は、前記第1の工程が、加熱エネルギーとしてCO2 レーザーを用い、CO2 レーザーの照射によって被加工物1の軟化点より低い温度で加熱領域3を加熱すると共に、加熱領域3の形状が、加工予定線2bの接線方向に長い楕円形状をなし、かつ、前記楕円形状の相対的移動方向の後部にエネルギー密度を多く分布させることを特徴とする請求項1又は2の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法である。
 請求項4記載の発明は、前記第2の工程が、水の微粒子を含む空気流を放射して被加工物1に冷熱エネルギーを与えると共に、空気流の水分量が、前記第1の工程の加熱エネルギーの照射によって昇温した被加工物1の被加工面を室温程度にまで冷却させるに足る潜熱量を有し、かつ、前記第2の工程の終了後に被加工面に残存する水の微粒子の全てが前記第3の工程の加熱エネルギーによって蒸発するように設定されていることを特徴とする請求項1,2又は3の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法である。
 請求項5記載の発明は、前記第3の工程が、加熱エネルギーとして再加熱用のCO2 レーザーを用い、再加熱用のCO2 レーザーの照射によって被加工物1の軟化点より低い温度で加熱すると共に、再加熱領域5aの形状が加工予定線2bの直角方向に長い楕円形状をなし、かつ、前記楕円形状の相対的移動方向の前部にエネルギー密度を多く分布させることを特徴とする請求項1,2,3又は4の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法である。
 請求項6記載の発明は、前記第1の工程の加熱エネルギーとして用いるCO2 レーザーの出力が、適正にスクライブ線を形成するために、30~300Wの範囲に維持する条件を満たすと共に、a1は加熱領域3の楕円の短軸長さ、b1は加熱領域3の楕円の長軸長さ、hは被加工物1の板厚として、
a1=(1~40)×h、及びb1=(10~100)×h
の関係を満たし、かつ、前記CO2 レーザーが、焦点位置を被加工物1の被加工面の内部に合わせた状態で加工予定線2bに対し相対的移動方向の前方から斜めに入射することを特徴とする請求項3,4又は5の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法である。
 請求項7記載の発明は、前記第3の工程の再加熱領域5aが、前記第2の工程の冷却領域4aの相対的移動方向の後方に(0~10)×10-3mの範囲の距離を隔てた位置として形成され、かつ、加熱エネルギーとして用いる前記再加熱用のCO2 レーザーの出力が100~1000Wの範囲に調整・維持する条件を満たすと共に、a2は再加熱領域5aの楕円の短軸長さ、b2は再加熱領域5aの楕円の長軸長さ、hは被加工物1の板厚として、
a2=(4~25)×h、及びb2=(10~60)×h
の関係を満たし、かつ、前記再加熱用のCO2 レーザーがその焦点位置を被加工面の内部に合わせた状態で加工予定線2bに対し相対的移動方向の後方から斜めに入射することを特徴とする請求項5又は6の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法
 請求項8記載の発明は、前記第2の工程の冷却領域4aの加工予定線2bの直角方向の幅が、前記第1の工程のCO2 レーザーによる加熱領域3の楕円の短軸長さa1より大きく、かつ、前記第3の工程の再加熱用のCO2 レーザーによる再加熱領域5aの楕円の長軸長さb2より小さいことを特徴とする請求項7の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法である。
 請求項9記載の発明は、ステージ6上の高脆性非金属材料製の被加工物1を線状の加工予定線2bに沿ってスクライビングするとき、
強度が制御された加熱エネルギーを所定の加熱領域3に照射して、加工予定線2bに沿って走査する第1の工程と、前記第1の工程の加熱領域3の相対的移動方向の後方に位置する所定の冷却領域4aに冷熱エネルギーを照射して、加工予定線2bに沿って走査し、スクライブ線を形成する第2の工程と、前記第2の工程の冷却領域4aの相対的移動方向の後方に位置する所定の再加熱領域5aに強度が制御された加熱エネルギーを照射して、加工予定線2bに沿って走査する第3の工程とを順次に備える高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法において、
第3の工程を行う再加熱手段20が、レーザー発振装置20を備え、レーザー発振装置20から射出されるレーザー光21の照射によって被加工物1の再加熱領域5aを加熱し、スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂5bを所定の深さに形成すると共に、
スクライブ亀裂5bを所定の深さに形成するために行うレーザー光21による加熱エネルギーの量の調整が、再加熱領域5aの形状、面積及び加熱エネルギー分布の割合を変更させずに、レーザー発振装置20からのレーザー光21の出力を増減調節して行い、スクライブ亀裂5bを所定の深さに形成した被加工物1をロボットによってステージ6から一体として搬出し、その後、スクライブ亀裂5bに沿って被加工物1を分断し、複数枚の部材を得ることを特徴とする高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法である。
 請求項10記載の発明は、被加工物1の加工予定線2bの少なくともスクライビング開始端部に、微小亀裂2aを形成する微小亀裂形成手段と、強度が制御された加熱エネルギーを所定の加熱領域3に照射して加工予定線2bに沿って走査する第1の工程を行う加熱手段10と、前記第1の工程の加熱領域3の相対的移動方向の後方に位置する所定の冷却領域4aに冷熱エネルギーを照射して、加工予定線2bに沿って走査し、スクライブ線を形成する第2の工程を行う冷却手段30と、前記第2の工程の冷却領域4aの相対的移動方向の後方に位置する所定の再加熱領域5aに強度が制御された加熱エネルギーを照射して、加工予定線2bに沿って走査してスクライブ亀裂5bを形成する第3の工程を行う再加熱手段20とを順次に備え、
高脆性非金属材料製の被加工物1を線状の加工予定線2bに沿ってスクライビングする高脆性非金属材料製の被加工物の加工装置であって、
スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂5bを所定の深さに形成するために、
δ:スクライブ亀裂5bの深さ、
δ0 :第2の工程の終了後におけるスクライブ線の深さ、
P:第3の工程の再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー量、
A:被加工物1の形状特性及び熱特性に依存した比例係数、
m:m≧1の実数係数として、
スクライブ亀裂5bの深さ特性式δ=δ0 +A・Pm
を満足するように第3の工程の再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー量Pを調整することを特徴とする高脆性非金属材料製の被加工物の加工装置である。

発明の効果

[0018]
 独立請求項1,10記載の発明によれば、被加工物を相対移動させながら、一連の工程つまり第1の工程から第3の工程を被加工物に順次一体的に作用させると共に、第3の工程の加熱エネルギーの量をスクライブ亀裂の深さ特性式に従って増減調整するので、第1の工程及び第2の工程の適用によって加工予定線に沿って形成した亀裂状のスクライブ線を第3の工程の適用によって所望する任意の深さに制御しながら、より深いスクライブ面を有するスクライブ亀裂に比較的高速度で進展させる効果が得られる。特に、第1の工程の加熱領域に付与する加熱エネルギーの量を同一面積かつ同一量に維持しながら、同一面積に維持した後部の再加熱領域の加熱エネルギーの量を増減調整することにより、亀裂状のスクライブ線を任意の深さのスクライブ亀裂に進展させることが可能になる。スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂は、第3の工程の加熱エネルギーの量をスクライブ亀裂の深さ特性式に従って増減調節して、高精度に所望の深さに形成することができる。
[0019]
 また、被加工物を蒸散させてスクライビングするのではなく、熱応力によって安定的に切り開いて行くので、材料欠損による割断環境の悪化(微粉末の飛散等)や割断面強度・断面品位の低下を防ぐことができる。更に、被加工物の端部を加工する場合、従来の技術では加工予定線に対して実際の加工線が逸脱し湾曲し易いが、本発明によればスクライブ深さを任意に制御することができるので、加工予定線に沿った加工線の軌道を加工途中でも修正できる効果を奏する。
[0020]
 請求項2記載の発明によれば、加工予定線の少なくともスクライビング開始端部に入れた微小亀裂を起点として、スクライビングが進展し易くなる効果がある。
[0021]
 請求項3記載の発明によれば、第1の工程が、加熱エネルギーとしてCO2 レーザーを用いてなされると共に、加熱領域の形状が、加工予定線の接線方向に長い楕円形状をなし、かつ、楕円形状の相対的移動方向の後部にエネルギー密度を多く分布させる。これにより、簡単かつ正確に所定温度ひいては所定圧縮応力を有する楕円形状の加熱領域を形成することができ、第2の工程の冷却領域の適用によって形成されるスクライブ線が確実に安定して生成できる効果を奏する。すなわち、縦長の加熱レーザービームの照射により、加工予定線の近傍に圧縮応力が生じ、その直後に冷熱エネルギーを照射することで加熱領域が急激に冷却されるため、大きな引張応力が発生し、加工予定線に沿って安定的にスクライブ線が進展する。加工予定線の少なくともスクライビング開始端部に微小亀裂を入れれば、この微小亀裂に大きな引張応力が発生し、加工予定線に沿って安定的にその亀裂が進展する。
[0022]
 請求項4記載の発明によれば、第2の工程が、水の微粒子を含む空気流を放射して被加工物1に冷熱エネルギーを与えてなされるから、簡単に所定温度ひいては所定引張応力を有する冷却領域を形成することができる。しかも、空気流の水分量が、第1の工程で昇温した被加工物の被加工面を室温程度にまで冷却させるに足る潜熱量を有し、かつ、第2の工程の終了後に被加工面に残存する水の微粒子の全てが第3の工程の加熱エネルギーによつて蒸発するように設定されているので、所定引張応力を有する冷却領域の形成と被加工面に水分が残存することに伴う品質低下の防止とが、良好に両立する。
[0023]
 請求項5記載の発明によれば、第3の工程が、加熱エネルギーとして再加熱用のCO2 レーザーを用いてなされると共に、再加熱領域の形状が、加工予定線の直角方向に長い楕円形状をなし、かつ、楕円形状の相対的移動方向の前部にエネルギー密度を多く分布させる。これにより、簡単かつ正確に所定温度ひいては所定圧縮応力を有する楕円形状の加熱領域を形成することができ、第2の工程の冷却領域の適用によって形成されるスクライブ線の成長深さを簡単かつ正確に制御することができる。すなわち、加工予定線に沿って進展し始めたスクライブ線に対し横長の加熱レーザービームを照射するとスクライブ線先端近辺が集中的に圧縮応力場となり、スクライブ線先端を深さ方向に進展させるだけの曲げモーメントが容易に発生する。このスクライブ深さは曲げモーメントの大きさによって制御することができるので、この横長の加熱レーザービームのパワー(第3の工程の再加熱領域の単位面積当たりの加熱エネルギー量)を調整することで所望の深さのスクライブ面を有するスクライブ亀裂が得られる。
[0024]
 請求項6記載の発明によれば、CO2 レーザーの焦点位置を被加工物の被加工面の内部に合わせた状態で第1の工程の加熱領域を所定の大きさにし、かつ、加熱エネルギーとして用いるCO2 レーザーの出力を30~300Wの範囲に維持することにより、第2の工程で所定引張応力を有する冷却領域を形成しながらスクライブ線が適正に形成される。CO2 レーザーを加工予定線に対し相対的移動方向の前方から斜めに入射させれば、第2の工程の冷熱エネルギーの付与が支障なくなされる。
[0025]
 請求項7記載の発明によれば、再加熱用のCO2 レーザーの焦点位置を被加工物の被加工面の内部に合わせた状態で第3の工程の再加熱領域を所定の大きさにし、かつ、再度の加熱エネルギーとして用いるCO2 レーザーの出力を100~1000Wの範囲に調整・維持することにより、第2の工程で形成されるスクライブ線が適正に所望する深さに成長する。CO2 レーザーを加工予定線に対し相対的移動方向の後方から斜めに入射させれば、第2の工程の冷熱エネルギーの付与が支障なくなされる。
[0026]
 請求項8記載の発明によれば、第2の工程の冷却領域の加工予定線2bの直角方向の幅が、第1の工程のCO2 レーザーによる加熱領域の楕円の短軸長さより大きく、かつ、第3の工程の再加熱用のCO2 レーザーによる再加熱領域の楕円の長軸長さより小さいので、加熱領域の全体を冷却領域によって冷却し、かつ、冷却領域の全体を再加熱領域によって加熱するように、適正な大きさの冷却領域を形成しながら、スクライビングが良好になされる。
[0027]
 請求項9記載の発明によれば、請求項1,10記載の発明と同様の効果を得ることが可能であることに加え、次の効果を奏することができる。(第2の)レーザー発振装置から射出されるレーザー光(再加熱ビーム)のパワーを調整する場合、基本的にビームプロファイルは変わらず全体的なパワーのみが変化することになる。つまり、第3の工程の再加熱領域の形状、面積には変化は生じない。このため、再加熱領域と冷却領域の相対位置に変化がなく、亀裂状のスクライブ線に作用する引張応力つまり亀裂を開口させる力をパワーのみに依存して変えることが可能となる。従って、亀裂を開口させる力をレーザー光(再加熱ビーム)のパワーに応じて連続的にコントロールできることになり、スクライブ亀裂を所望する所定深さに形成させることが容易になる。
[0028]
 そして、スクライブ亀裂の深さを被加工物1の場所によって適正な異なる深さに形成しておけば、スクライブ亀裂を深い箇所と浅い箇所とが混在する所定の深さに形成した被加工物をロボットによってステージから一体として搬出し、その後の工程でスクライブ亀裂に沿って被加工物を分断し、複数枚の部材を得ることができる。その結果、被加工物のハンドリングの容易さと後工程での分断の容易さとが良好に両立する。

図面の簡単な説明

[0029]
[図1] 本発明の1実施の形態に係る高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法の原理を示す斜視図。
[図2] 同じく加工装置の全体を示す斜視図。
[図3] 同じく加工状態を示す説明図。
[図4] 同じくレーザーエネルギー密度-スクライビング深さの特性を示す線図。
[図5] 従来の切断方法を示す説明図。
[図6] 他の従来の加工方法を示し、図6(a)はレーザー照射を示す説明図、図6(b)はCO2 レーザー照射を示す説明図、図6(c)はスクライビング孔を示す説明図、図6(d)は薄板ガラスの切断を示す説明図。
[図7] 別の従来の加工方法を示す斜視図。
[図8] 更に他の従来の加工方法を示す斜視図。
[図9] 同じく更に他の従来の加工方法を示し、図9(a)は膨張状態を示す図、図9(b)は非膨張状態を示す図。
[図10] 同じく更に他の従来の加工方法を示す説明図。

発明を実施するための最良の形態

[0030]
 以下、この発明の一実施形態を図1~図4を参照して説明する。
 図中において符号1は切込み生成つまりスクライビングの加工対象となる脆性材料製の基板状の被加工物であり、ガラスにて代表される非金属材料によって製作されている。通常、被加工物1(脆性非金属材料製の被加工物)は、透明体である。被加工物1は、ステージ6上に交換可能に載置され、直線状に設定される加工予定線2bに沿って切断するために、第1の工程として形成する加熱領域3、第2の工程として形成する冷却領域4a及び第3の工程として形成する再加熱領域5aの各中心が加工予定線2b上に間隔を置いて順次に設定され、必要に応じ、被加工物1の被加工面の少なくともスクライビング開始端部に微小亀裂2aを施す微小亀裂形成工程を行う。加熱領域3と再加熱領域5aとは間隔を置いて生成され、また、加熱領域3及び再加熱領域5aは、被加工物1の軟化点より低い温度で加熱する。
[0031]
 ステージ6には、図2に示すように微小亀裂2aを施すための亀裂生成手段40、加熱領域3を生成するための加熱手段の要部となる第1のレーザー発振装置10、その後に冷却領域を生成するための冷却手段30及び更にその後に加熱領域を再度生成するための再加熱手段の要部となる第2のレーザー発振装置20が一体的に装備される。すなわち、亀裂生成手段40、第1のレーザー発振装置10、冷却手段30及び第2のレーザー発振装置20が加工系用ステージ(図示せず)に設定され、この加工系用ステージ又は基板戴置用のステージ6の少なくとも一方は駆動装置(図示せず)を備え、それによって被加工物1及びステージ6と加工系(つまり加熱領域3、冷却領域4a及び再加熱領域5a)が加工予定線2bに沿って矢印A1方向に連続的相対移動をする。
[0032]
 この加工系(加熱領域3、冷却領域4a及び再加熱領域5a)を加工予定線2bに沿って矢印A1方向に一体的に相対移動させるために、第1のレーザー発振装置10、冷却手段30及び第2のレーザー発振装置20が加工系用ステージ(図示せず)に設置されるのみならず、ビームエキスパンダー12,22、赤外線用ミラー13,23及びシリンドリカルレンズ14,24、更に冷却手段30についても加工系用ステージに設置させ、一体的に保持させる。第1,第2のレーザー発振装置10,20は、別個独立のレーザー発振装置であり、個別にレーザー光のパワー(加熱エネルギー密度(単位面積当たりの加熱エネルギー量))を増減調節することができる。
[0033]
 亀裂生成手段40は、図2に示すよう駆動機構がなく、被加工物1との接触により自由に回転する回転刃を有する。この亀裂生成手段40は、被加工物1への加工系による加工開始前に加工予定線2bの延長線上に沿って被加工物1の外側から矢印A1方向に相対移動つまり走査させ、被加工物1の加工予定線2bの少なくともスクライビング開始端部に、微小亀裂2aを形成すればよく、スクライビング開始端部にスクライビングのきっかけとなる初期亀裂を形成させ、亀裂生成後に加工予定線2bから速やかに退避させる。しかして、亀裂生成手段40を用いて必要に応じて行う微小亀裂形成工程は、加熱領域3を形成する第1の工程の前に、被加工物1の被加工面のスクライビング開始端部(図2上で被加工物1の左端)に、必要に応じて微小亀裂を施す工程として実施される。
[0034]
 第1のレーザー発振装置10は、図2に示すように第1のレーザー光である赤外線レーザー光11を射出する。第1のレーザー発振装置10から射出される赤外線レーザー光11は、赤外線レーザー用エキスパンダー12を通過して長軸ビーム径を調整され、赤外線用ミラー13によって反射してシリンドリカルレンズ14を透過した後、被加工物1に照射され、被加工物1が楕円形状に局部的に加熱される加熱領域3を生成する。その際、赤外線レーザー光11の焦点が被加工物1の内部に位置し、かつ、レーザー光11のビームがビームの相対的移動方向(矢印A1方向)の前方から斜めに照射されるように調整する。すなわち、被加工物1に照射される部分の赤外線レーザー光11は、平面視で、加工予定線2b上に位置している。
[0035]
 この被加工物1に形成される加熱領域3は、赤外線レーザー光11によって加熱されて圧縮応力を有する領域であり、シリンドリカルレンズ14によって赤外線レーザー光11のビーム形状を楕円に集光され、長軸を加工予定線2b方向に合致させて照射される。加熱領域3の短軸幅は、シリンドリカルレンズ14で制御するため、長軸幅の調整用としてビームエキスパンダー12を使用する。
[0036]
 加熱領域3を生成する赤外線レーザー光11には、例えば波長10.6μmのCO2 レーザーを使用する。そして、CO2 レーザーの照射によって被加工物1の軟化点より低い温度で加熱するに当たり、CO2 レーザーを照射する領域の形状が加工予定線2bの接線方向に長い楕円形状とし、かつ、楕円形状の後部に、前部に比較してエネルギー密度を多く分布させることが望ましい。第1の工程は、所定の領域に強度が制御された加熱エネルギーを照射するように、加工予定線2bに沿って赤外線レーザー光11を走査して行う。
[0037]
 そして、第1の工程の加熱エネルギーとして用いるCO2 レーザーの出力は、適正に亀裂状のスクライブ線を形成し、第3の工程までの実施によって所望する深さの破断面を有するスクライブ亀裂5bを形成するために、30~300Wの範囲に維持する条件を満たすように第1のレーザー発振装置10に設定する。また、a1は加熱領域3の楕円の短軸長さ、b1は加熱領域3の楕円の長軸長さ、hは被加工物1の板厚として、
a1=(1~40)×h、及びb1=(10~100)×h
の関係を満たすように設定する。
[0038]
 冷却手段30は、水補給槽32から配管31を通じて供給される水と、エアコンプレッサー34から配管33を通じて供給される圧縮空気とを混合して霧状の冷却媒体35となし、この霧状の冷却媒体35をノズルから被加工物1の加熱領域3の直後に吹出すことで加工予定線2b上の被加工物1が冷却されて引張応力を有する冷却領域4aを生成する。冷却領域4aは、相対的移動方向A1の加熱領域3の後方に局所的に生成されることが望ましく、特に、加熱領域3の短軸長さ程度に相対的移動方向A1に延在させることが望ましい。水、圧縮空気共に、調整弁(図示せず)によって流量を増減調整できる。液晶パネルなどのデバイスの切断では、水滴の付着が問題となることもあるので水の供給量は少ない方が望ましく、従ってノズル先端は細い方がよい。相対的に移動する冷却領域4aによって被加工物1の加工予定線2b上に発生した引張応力が微小亀裂2aを亀裂先端4bの位置に進行させる。この亀裂がスクライブ線になる。被加工物1の材料により、微小亀裂2aを省略した場合でも、加熱領域3及び冷却領域4aを順次に形成することにより、微小亀裂2aと同様の亀裂を被加工物1の端部から進展させることも可能な場合がある。
[0039]
 冷熱エネルギーとして水を噴霧した微粒子を含む空気流を放射(放出)するに当たっては、水分量を適正に設定することが望まれる。すなわち、第1の工程の加熱エネルギーの照射によって昇温した被加工物1の被加工面を室温程度に十分冷却させるに足る潜熱量を有する水分量を与え、かつ、第2の工程の終了後に被加工物1の被加工面、少なくとも加工予定線2b又はその付近に残存する水の微粒子が第3の工程の加熱エネルギーによって全て蒸発する程度に抑えた水分量とすることが望ましい。第2の工程は、第1の工程の加熱エネルギーを照射する領域の後方に位置して、冷熱エネルギーを照射・供給して加工予定線2bに沿って走査する。
[0040]
 熱応力を利用する非金属材料の赤外線レーザーの照射によるスクライビングは、被加工物1の表面部が圧縮応力場となり、次いで冷却媒体によって冷却領域を形成して引張応力を誘起し、この応力が材料の引張り強度を超えたときに起こる。
[0041]
 第2のレーザー発振装置20は、赤外線レーザー、例えば波長10.6μmの再加熱用のCO2 レーザーを射出する。第2のレーザー発振装置20から射出される第2のレーザー光であるレーザー光21は、赤外線レーザー用エキスパンダー22を通過して長軸ビーム径を調整され、赤外線用ミラー23によって反射してシリンドリカルレンズ24を透過した後、被加工物1に照射され、被加工物1が楕円形状に局部的に加熱される再加熱領域5aを生成する。その際、赤外線レーザー光21の焦点が被加工物1の内部に位置し、かつ、レーザー光21のビームがビームの相対的移動方向(矢印A1方向)の後方から斜めに照射されるように調整する。すなわち、被加工物1に照射される部分の赤外線レーザー光21は、平面視で、加工予定線2b上に位置している。また、再加熱領域5aの前端と冷却領域4aの後端との間には、所定の間隔距離を設けるように調整することが望まれる。この所定の間隔距離は、具体的には0~10mmの距離とする。
[0042]
 しかして、再加熱領域5aは、赤外線レーザー光21によって被加工物1の軟化点より低い温度で加熱させてスクライブ線の先端である亀裂先端4bを切り開く領域であり、シリンドリカルレンズ24によって赤外線レーザー光21のビーム形状を楕円に集光され、長軸を加工予定線2bの直角方向に合致させて照射される。再加熱領域5aの短軸幅は、シリンドリカルレンズ24で制御するため、長軸幅の調整用としてビームエキスパンダー22を使用する。この再加熱領域5aを生成する第3の工程は、強度が制御された加熱エネルギーを所定の再加熱領域5aに照射して加工予定線2bに沿って走査して行う。
[0043]
 第3の工程は、加熱エネルギーとして再加熱用のCO2 レーザーを用い、かつ、再加熱用のCO2 レーザーの照射によって被加工物1の軟化点より低い温度で加熱するに当たり、冷却領域4aに付与される冷熱エネルギーによるスクライブ線の形成作用を殆ど減殺しないように選択された距離だけ離した位置に照射し、かつ、照射する領域の形状を加工予定線2bの直角方向に長い楕円形状とし、かつ、楕円形状の進行方向前部に、後部に比較してエネルギー密度を多く分布させる。第3の工程の加熱エネルギーは、その全体の量(出力)を増減調節することにより、第1の工程及び第2の工程の実施によって形成されたスクライブ線を所望する深さに進展させてスクライブ亀裂5bを形成することができる。
[0044]
 そして、第3の工程の再加熱領域5aは、第2の工程の冷却領域4aの相対的移動方向A1の後方に(0~10)×10-3mの範囲の距離を隔てた位置として形成させ、かつ、加熱エネルギーとして用いる再加熱用のCO2 レーザー(赤外線レーザー光21)のビームの出力が100~1000Wの範囲に調整・維持する条件を満たすように設定する。また、a2は再加熱領域5aの楕円の短軸長さ、b2は再加熱領域5aの楕円の長軸長さ、hは被加工物1の板厚として、
a2=(4~25)×h、及びb2=(10~60)×h
の関係を満たすように設定する。
[0045]
 冷却領域4aと再加熱領域5aとの位置関係は、実際には、再加熱エネルギー量が最も少ないエネルギー量で所定深さのスクライブ亀裂5bを形成することができる位置関係を実験的に求める。被加工物1の板厚や単板であるか貼り合わせガラスからなる被加工物1であるかによって後工程で完全切断できるスクライブ亀裂5bの深さひいては冷却領域4aと再加熱領域5aとの位置関係が異なるので、実験的に求めざるを得ない。
[0046]
 また、第2の工程の冷却領域4aはほぼ円形状をなし、冷却領域4aの加工予定線2bの直角方向の幅及び接線方向の幅が、いずれも第1の工程のCO2 レーザーによる加熱領域3の楕円の短軸長さa1より大きく、かつ、第3の工程の再加熱用のCO2 レーザーによる再加熱領域5aの楕円の長軸長さb2より小さく設定する。また、楕円形状をなす再加熱領域5aの長軸長さb2は、加熱領域3の短軸長さよりも大きく、再加熱領域5aの短軸長さは加熱領域3の長軸長さよりも小さい。
[0047]
 なお、赤外線レーザー光11の照射に際しては、被加工物1の軟化点を超えるような密度で熱を加えると冷却された後に熱応力が残留してしまい材料のスクライブ亀裂5bの形成を制御不能にしてしまうため、加熱しすぎない配慮が必要である。また、加熱領域3の後方に生成される冷却領域4a及び冷却領域4aの後方に生成される再加熱領域5aは、上述したように第1の工程として形成する加熱領域3、第2の工程として形成する冷却領域4a及び第3の工程として形成する再加熱領域5aの各中心が加工予定線2b上に間隔を置いて反相対的移動方向A1に順次に設定されている状態をいう。
[0048]
 次に作用について説明する。
 先ず、被加工物1をステージ6上に載置させ、必要に応じて微小亀裂形成工程を行う。すなわち、被加工物1の被加工面の加工予定線2bのスクライビング開始端部に微小亀裂を施し、スクライビングを円滑に開始させると共に、円滑に継続させる。また、第1のレーザー発振装置10から赤外線レーザー光11を射出させ、第2のレーザー発振装置20からレーザー光21を射出させ、また、冷却手段30から冷却媒体35を吹き出させる状態にする。
[0049]
 この状態から、右端位置にあるステージ6を反矢印A1の方向に相対移動させ、加工系(加熱領域3、冷却領域4a及び再加熱領域5a)を加工予定線2bに沿って相対的移動方向(矢印A1方向)に一体的に相対移動させる。これにより、赤外線レーザー光11が被加工物1の加工予定線2bの左端から局所的に照射され始め、赤外線レーザー光11が照射された被加工物1の箇所に、被加工物1の軟化点より低い所定温度にまで上昇した加熱領域3が生成される。微小亀裂2aが形成されている場合には、微小亀裂2aを含む部分から赤外線レーザー光11が局所的に照射され始める。加熱領域3では、加熱中心に比較的強い圧縮応力が発生し、その外周には緩衝帯を挟んで弱い引張応力が発生する。加熱領域3の大きさは、微調整機構を持つ図示しない支持台を介して加工系用ステージに設置されるシリンドリカルレンズ14により任意に変更することができる。
[0050]
 引き続き、ステージ6の相対移動により、加熱領域3つまりレーザー光11の照射領域の直後に、水と空気が冷却手段30内で混合されて霧状をなす冷却媒体35が被加工物1の加工予定線2bの左端(微小亀裂2a)から噴霧され始め、冷却領域4aを作成する。これにより、比較的強い引張応力が発生し、強い応力集中が局所的に生じるため、被加工物1の引張強度を超え、端部から生じた亀裂が亀裂先端4bへと進行し始める。この進行する亀裂はスクライブ線である。亀裂状のスクライブ線は、被加工物1の表面付近に形成され、被加工物1が切断されることはない。微小亀裂2aが形成されている場合には、微小亀裂2aの鋭利な先端箇所に強い引張応力が発生し、微小亀裂2aの先端内部に強い応力集中が生じるため、被加工物1の引張強度を容易に超え、微小亀裂2aが亀裂先端4bへと安定的に進行し始め、スクライブ線が生成される。
[0051]
 引き続き、ステージ6の相対移動により、冷却領域4aつまり冷却媒体35の噴霧領域から適当な距離を置いて、赤外線レーザー光21が被加工物1の加工予定線2bの左端(微小亀裂2a)から局所的に照射され始め、被加工物1の軟化点より低い所定温度にまで上昇した再加熱領域5aが生成される。再加熱領域5aでは、一旦冷却された被加工物1を再度加熱することになり、しかも加工予定線2bと直角方向に長い圧縮応力場となるため、亀裂先端4b及びその付近となる被加工物1の内部に大きな曲げ応力が生じ、亀裂先端4bが被加工物1の内部方向つまり深さ方向に進展し始める。すなわち、スクライブ線が亀裂先端4b位置に進行し更に再加熱領域5aに達することにより、スクライブ線が深さ方向にも進展し、所定のスクライブ深さのスクライブ亀裂5bが得られる。
[0052]
 第1の工程での赤外線レーザー光11による縦長の加熱ビーム(加工予定線2bに対し接線方向に細長い楕円形状のビーム)の照射により、加工予定線2bの近傍に圧縮応力が生じ、その直後に第2の工程での冷熱エネルギーを照射つまり当てることで加熱領域が冷却領域4aに達して急激に冷却されるため、加工予定線2bの開始端部(必要に応じて入れた微小な亀裂)に大きな引張応力が発生し、加工予定線2bに沿って安定的にその亀裂が進展し始め、スクライブ線が形成される。その進展し始めた亀裂つまりスクライブ線に対し第3の工程での横長の加熱ビーム(加工予定線2bに対し直交方向に細長い楕円形状のレーザー光21)を照射するとスクライブ線の先端周辺つまり亀裂先端周辺が広い面積に亘って圧縮応力場となり、亀裂を深さ方向に進展させるに足る曲げモーメントが発生する。この亀裂深さは曲げモーメントの大きさによって制御することができるので、この横長の加熱ビームのパワーを調整することで所望の深さの亀裂が連続するスクライブ亀裂5bが得られる。この加熱ビームのパワーの調整は、照射面積を同一に維持しながら第3の工程として単独で行うことができると共に、1つの被加工物1の加工予定線2bに対する加工の途中でも単独で行うことができる。スクライブ亀裂5bの深さの変更は、加工予定線を交差させるために必要があり、また、被加工物1の端部付近をスクライブする場合には、スクライビングが垂直になされずに湾曲することがあるので、深さを変えて湾曲を抑えたりすることがある。
[0053]
 更に、被加工物1を完全に分断させずに、スクライブ亀裂5bの深さを所望する所定の深さで止めるメリットについて説明する。
 ガラス板あるいはパネルからなる被加工物1を最後には所定形状の複数のパネル(部材)に細かく分断する際、レーザー光11,21の照射によって完全に分断してバラバラにするより、スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂5bの深さを所望する途中で止めて一部を残して一体化させたままとし、後工程でバラバラにする方がハンドリングしやすい場合がある。しかしながら、スクライブ亀裂5bが深過ぎる場合には、被加工物1の次工程へのロボットによる移送途中などのハンドリング時にスクライブ亀裂が進行し、被加工物1が不用意に分断されることがあり、逆にスクライブ亀裂5bが浅過ぎる場合、後工程で分断させ難くなり、一体化させることがかえつて手間になることがある。その場合、分断工程まで被加工物1が一体化を維持するように、1枚の被加工物1の場所に応じてスクライビング深さを変えておけば、最適なハンドリングひいては能率的な処理が可能となる。
[0054]
 すなわち、スクライブ亀裂5bを所定の深さに変化させて形成した被加工物1をロボットによってステージ6から一体として搬出し、その後、スクライブ亀裂5bに沿って被加工物1を分断し、複数枚の基板(部材)を得るようにする。例えば、移送途中でスクライブ亀裂5bの深さが進行し分断し易い場所はスクライブ亀裂5bを浅く形成しておき、分断しにくい場所はスクライブ亀裂5bを深く形成しておく。これにより、ハンドリングの容易さと後工程での分断の容易さとが良好に両立する。
[0055]
 図4は、3種類の板厚(0.7mm,0.5mm,0.3mm)のガラス基板からなる被加工物1について再加熱領域5aを生成する赤外線レーザー光21のパワー(レーザー光21のエネルギー密度)に対するスクライビング深さ(スクライブ亀裂5bの深さ)を求めた試験結果の一例を示す。具体的には、約0.02~0.22(W/mm2 )の範囲のエネルギー密度のレーザー光21を照射した。これは、第2のレーザー発振装置20のパワーを50Wから200~250Wの範囲で調節して実現できる。
[0056]
 これにより、ガラス基板の板厚に係わらず赤外線レーザー光21のエネルギー密度を約0.02W/mm2 から約0.09~0.22W/mm2 に向けて増加させるにつれて、スクライビング深さ(スクライブ亀裂5bの深さ)が連続的に大きくなり、ガラス基板が分断に至るまでの間で、スクライビング深さ(スクライブ亀裂5bの深さ)を任意に変化させることができることが分かる。すなわち、第3の工程での赤外線レーザー光21のパワー(エネルギー密度)の増減変更により、再加熱領域5aの圧縮応力、つまりは亀裂先端4b(スクライブ線の内端部)に作用する曲げ応力を任意に制御できることを意味している。但し、再加熱領域5aを生成するために加熱エネルギーとして用いる再加熱用のCO2 レーザーのビームの出力は、上述したように第2のレーザー発振装置20のパワーを100~1000Wの範囲に調整・維持すればよい。
[0057]
 実験によれば、第3の工程の赤外線レーザー光21による加熱エネルギー密度P(再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー量)によつて、スクライブ亀裂5bの深さδは、次式で関係付けられることが見出された。すなわち、δ=δ0 +A・Pm (スクライブ亀裂5bの深さ特性式)
ここで、δ:スクライブ亀裂5bの深さ(所望する所定深さ)、
    δ0 :第2の工程の終了後におけるスクライブ線の深さ、
    P:第3の工程の加熱エネルギー密度(再加熱領域(5a)の単位面積(mm2 )当たりの加熱エネルギー量)、
    A:被加工物(1)の形状特性及び熱特性に依存した比例係数、
    m:m≧1の実数係数
[0058]
 このスクライブ亀裂5bの深さ特性式におけるパラメター、すなわち、第2の工程の終了後におけるスクライブ線の深さδ0 、被加工物1の形状特性及び熱特性に依存した比例係数A、並びに実数係数mは、以下の実験的な手順にて決定することができる。なお、被加工物1の形状特性とは、被加工物1の厚さ以外にパネル構造の違いによるものを含む。パネル構造になった貼り合わせガラスからなる被加工物1は、ガラス同士を接着させるシール材を有しているが、そのシールのパターンによってスクライブ亀裂5bの深さが異なつてくる。被加工物1の熱特性とは、比熱の他、熱伝導率、熱膨張率等を含む。但し、再加熱領域5aの大きさ及び形状は、1枚の被加工物1の処理において変化させず同じである。
[0059]
 実際には、加工対象である被加工物1に対して、次の手順1~3を実施する。
 予め、形成すべきスクライブ亀裂5bの深さδを定める。スクライブ亀裂5bの深さは、完全破断を行うか否か、また、次工程の割断工程での割断手段やロボットによる移動中の割れ防止を図る観点から全厚を考慮して定まる。所定の厚さ(全厚)の被加工物1に対して、所定の相対移動速度で所定の深さのスクライブ亀裂5bを形成するとき、スクライブ線の深さδ0 を手順1)にて求める。スクライブ線の深さδ0 は、形成すべきスクライブ亀裂5bの深さδからほぼ定まる。
[0060]
手順1)所望する所定相対移動速度において、第1及び第2の工程の加工条件を実験的に決定し、第2の工程終了後におけるスクライブ線の深さδ0 を求める。ここで、第1の工程の加工条件とは、加熱エネルギー量と加熱領域3の大きさ及び形状で決まる。第2の工程の加工条件とは、冷熱エネルギー量及び加熱領域3と冷却領域4aとの位置関係等をさす。
[0061]
手順2)次に、当該相対移動速度における手順1で求めた加工条件において、第3の工程の再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー量P(赤外線レーザ光パワー)を実験的に変化させ、加熱エネルギー密度に換算した適当な代表値(P1 ,P2 ・・・)に対する、スクライブ亀裂5bの深さδ1 ,δ2 ・・・)を求める。再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー量Pは、加工予定線2bに対して所定位置の走査線上でのものである。
[0062]
手順3)手順1及び手順2で求めたδ0 (第2の工程の終了後におけるスクライブ線の深さ)、並びに(P1 ,δ1 )、(P2 ,δ2 )・・・をスクライブ亀裂5bの深さ特性式δに当てはめ、最小自乗法により比例係数A及び実数係数mを算出する。
[0063]
 実験によって得られた図4の3種類の板厚に対して、それぞれスクライブ線の深さδ0 、比例係数A、及び実数係数mを求め、表1にまとめた。表1より、スクライブ亀裂5bの深さδは、3種類の板厚ともに、適合率Rが0.98以上であることから、δ=δ0 +A・Pm の式でほぼ関係付けられることが分かる。これらの特性式から、それぞれ所定の相対移動速度(180mm/sec,310mm/sec,370mm/sec)において第2の工程の終了後における所定のスクライブ線の深さδ0 が得られるとき、第3の工程の赤外線レーザ光(CO2 レーザー)の加熱エネルギー量P(W/mm2 )を適当な値に調整することで、所望するスクライブ亀裂5bの深さδが得られることが分かる。つまり、1枚の被加工物1に対する処理の途中で加熱エネルギー量Pを変化させて、スクライブ亀裂5bの深さδを調整変更することができる。
[0064]
[表1]


[0065]
[表2]


[0066]
 表2は、2種類のレーザー光11,21のビームパラメータ、及びガラス基板(被加工物1)の板厚を変更して、スクライビング方法を試験した結果をNo.1~21に集約したものである。第1の工程での加熱エネルギーとして用いるCO2 レーザーのパラメターを前方加熱ビームパラメターとし、第3の工程での加熱エネルギーとして用いるCO2 レーザーのパラメターを後方加熱ビームパラメターとし、第2の工程の冷却領域4aの後端縁と第3の工程の再加熱領域5aの前端縁との間の距離を冷熱-後方加熱ビーム間距離とし、被加工物1及びステージ6と加工系(つまり加熱領域3、冷却領域4a及び再加熱領域5a)との連続的相対移動速度を走査速度としてある。
[0067]
 これにより、無アルカリガラス製のガラス基板(1)の各板厚(1.1mm,0.7mm,0.63mm,0.5mm,0.3mm,0.2mm及び0.05mm)におけるスクライブ深さ(スクライブ亀裂5bの深さδ)は、楕円形状をなすレーザー光11,21のビーム寸法(a1,b1、a2,b2)、第1,第2のレーザー発振装置10,20のビームパワー(出力)、冷却領域4aと再加熱領域5aとの距離、及びスクライビング速度(走査速度)に影響されるだけでなく、これらのパラメータ間の特定な関係にあることが分かる。
[0068]
 被加工物1の厚さにもよるが、切断面(スクライブ亀裂5b)が被加工物1の裏面にまで伸展すれば、加工予定線2b上に進行方向前側から順次に加熱領域3、冷却領域4a及び再加熱領域5aを生成させながら、加熱領域3、冷却領域4a及び再加熱領域5aと被加工物1とに相対移動を与えることで、被加工物1を完全に分断することが可能になる。切断面(スクライブ亀裂5b)の伸展によっては被加工物1が完全に切断されない場合(被加工物1を完全に切断させない場合を含む)には、その後の工程で被加工物1にブレイク力を作用させ、被加工物1を切断面(スクライブ亀裂5b)に案内させて切断する。
[0069]
 ところで、特許文献4では、シャッタによってレーザー光を一部遮断し、加熱エネルギー量の調整を行っているが、再加熱ビーム(レーザー光21)の加熱エネルギー量の調整は、シャッタによる加熱エネルギー量の調整に比べてより効果的である。その理由は次の通りである。
[0070]
 第2のレーザー発振装置20から射出されるレーザー光21(再加熱ビーム)のパワー調整を第2のレーザー発振装置20の出力調整で行う場合、基本的にビームプロファイルは変わらず全体的な加熱エネルギー量(第3の工程の加熱エネルギー密度(再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー量))のみが変化して被加工物1に照射されることになる。つまり、同じ相対移動速度において、第3の工程の再加熱領域5aの形状、面積及びレーザー光21の照射エネルギー分布の割合に変化は生じない。このため、再加熱領域5aと冷却領域4aとの相対位置に変化がなく、スクライブ線の先端に作用する引張応力つまり亀裂を開口させる力をパワー(再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー量)のみに依存して変えることが可能となる。従って、スクライブ線を開口させる力がパワー(再加熱領域5aの単位面積当たりの加熱エネルギー量)に応じて連続的にコントロールできることになり、一本のスクライブ亀裂5bを所望する深さに変化させながら形成させることが可能になる。一方、シャッタにより加熱エネルギー量を調整する場合、レーザービームが一部カットされるので、ビームプロファイルひいては照射形状、面積が変化する。
[0071]
 このように、シャッター調整は、加熱エネルギー量と同時にビームプロファイルが変化するので、再加熱領域5aと冷却領域4aとの位置関係が急激に変わる。これによって、亀裂状のスクライブ線に作用する引張応力の変動、消滅等が起こりやすく、スクライブ亀裂を所望する深さに形成することが困難になる傾向にある。
[0072]
 すなわち、シャッタによって再加熱用のレーザー光21の後側(冷却領域4aから遠い側)又は前側を遮蔽又は開放することによる被加工物1への加熱エネルギー量の調整は、1つの被加工物1の一本のスクライブ亀裂5bの加工途中での適用に困難を伴う。なぜなら、レーザー光21の後側又は前側を遮蔽又は開放することによる加熱エネルギー量の増減調整は、レーザー光21の後端縁部又は前端縁部を移動させることになるため、被加工物1とレーザー光21とを相対移動をさせながら、更にレーザー光21の照射による再加熱領域5aと冷却領域4aとの相対関係を変化させて、正確にスクライブ亀裂を進展させる作業に困難を伴う。

請求の範囲

[1]
高脆性非金属材料製の被加工物(1)を線状の加工予定線(2b)に沿ってスクライビングするとき、
強度が制御された加熱エネルギーを所定の加熱領域(3)に照射して、加工予定線(2b)に沿って走査する第1の工程と、前記第1の工程の加熱領域(3)の相対的移動方向の後方に位置する所定の冷却領域(4a)に冷熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査し、スクライブ線を形成する第2の工程と、前記第2の工程の冷却領域(4a)の相対的移動方向の後方に位置する所定の再加熱領域(5a)に強度が制御された加熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査してスクライブ亀裂(5b)を形成する第3の工程とを順次に備える高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法において、
スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂(5b)を所定の深さに形成するために、
δ:スクライブ亀裂(5b)の所定深さ、
δ0 :第2の工程の終了後におけるスクライブ線の深さ、
P:第3の工程の再加熱領域(5a)の単位面積当たりの加熱エネルギー量、
A:被加工物(1)の形状特性及び熱特性に依存した比例係数、
m:m≧1の実数係数として、
スクライブ亀裂(5b)の深さ特性式δ=δ0 +A・Pm
を満足するように第3の工程の再加熱領域(5a)の単位面積当たりの加熱エネルギー量(P)を調整することを特徴とする高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
[2]
前記第1の工程の前に、被加工物(1)の加工予定線(2b)の少なくともスクライビング開始端部に、微小亀裂(2a)を形成する微小亀裂形成工程を行うことを特徴とする請求項1の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
[3]
前記第1の工程が、加熱エネルギーとしてCO2 レーザーを用い、CO2 レーザーの照射によって被加工物(1)の軟化点より低い温度で加熱領域(3)を加熱すると共に、加熱領域(3)の形状が、加工予定線(2b)の接線方向に長い楕円形状をなし、かつ、前記楕円形状の相対的移動方向の後部にエネルギー密度を多く分布させることを特徴とする請求項1又は2の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
[4]
前記第2の工程が、水の微粒子を含む空気流を放射して被加工物(1)に冷熱エネルギーを与えると共に、空気流の水分量が、前記第1の工程の加熱エネルギーの照射によって昇温した被加工物(1)の被加工面を室温程度にまで冷却させるに足る潜熱量を有し、かつ、前記第2の工程の終了後に被加工面に残存する水の微粒子の全てが前記第3の工程の加熱エネルギーによって蒸発するように設定されていることを特徴とする請求項1,2又は3の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
[5]
前記第3の工程が、加熱エネルギーとして再加熱用のCO2 レーザーを用い、再加熱用のCO2 レーザーの照射によって被加工物(1)の軟化点より低い温度で加熱すると共に、再加熱領域(5a)の形状が加工予定線(2b)の直角方向に長い楕円形状をなし、かつ、前記楕円形状の相対的移動方向の前部にエネルギー密度を多く分布させることを特徴とする請求項1,2,3又は4の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
[6]
前記第1の工程の加熱エネルギーとして用いるCO2 レーザーの出力が、適正にスクライブ線を形成するために、30~300Wの範囲に維持する条件を満たすと共に、a1は加熱領域(3)の楕円の短軸長さ、b1は加熱領域(3)の楕円の長軸長さ、hは被加工物(1)の板厚として、
a1=(1~40)×h、及びb1=(10~100)×h
の関係を満たし、かつ、前記CO2 レーザーが、焦点位置を被加工物(1)の被加工面の内部に合わせた状態で加工予定線(2b)に対し相対的移動方向の前方から斜めに入射することを特徴とする請求項3,4又は5の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
[7]
前記第3の工程の再加熱領域(5a)が、前記第2の工程の冷却領域(4a)の相対的移動方向の後方に(0~10)×10-3mの範囲の距離を隔てた位置として形成され、かつ、加熱エネルギーとして用いる前記再加熱用のCO2 レーザーの出力が100~1000Wの範囲に調整・維持する条件を満たすと共に、a2は再加熱領域(5a)の楕円の短軸長さ、b2は再加熱領域(5a)の楕円の長軸長さ、hは被加工物(1)の板厚として、
a2=(4~25)×h、及びb2=(10~60)×h
の関係を満たし、かつ、前記再加熱用のCO2 レーザーがその焦点位置を被加工面の内部に合わせた状態で加工予定線(2b)に対し相対的移動方向の後方から斜めに入射することを特徴とする請求項5又は6の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
[8]
前記第2の工程の冷却領域(4a)の加工予定線(2b)の直角方向の幅が、前記第1の工程のCO2 レーザーによる加熱領域(3)の楕円の短軸長さa1より大きく、かつ、前記第3の工程の再加熱用のCO2 レーザーによる再加熱領域(5a)の楕円の長軸長さb2より小さいことを特徴とする請求項7の高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
[9]
ステージ(6)上の高脆性非金属材料製の被加工物(1)を線状の加工予定線(2b)に沿ってスクライビングするとき、
強度が制御された加熱エネルギーを所定の加熱領域(3)に照射して、加工予定線(2b)に沿って走査する第1の工程と、前記第1の工程の加熱領域(3)の相対的移動方向の後方に位置する所定の冷却領域(4a)に冷熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査し、スクライブ線を形成する第2の工程と、前記第2の工程の冷却領域(4a)の相対的移動方向の後方に位置する所定の再加熱領域(5a)に強度が制御された加熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査する第3の工程とを順次に備える高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法において、
第3の工程を行う再加熱手段(20)が、レーザー発振装置(20)を備え、レーザー発振装置(20)から射出されるレーザー光(21)の照射によって被加工物(1)の再加熱領域(5a)を加熱し、スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂(5b)を所定の深さに形成すると共に、
スクライブ亀裂(5b)を所定の深さに形成するために行うレーザー光(21)による加熱エネルギーの量の調整が、再加熱領域(5a)の形状、面積及び加熱エネルギー分布の割合を変更させずに、レーザー発振装置(20)からのレーザー光(21)の出力を増減調節して行い、スクライブ亀裂(5b)を所定の深さに形成した被加工物(1)をロボットによってステージ(6)から一体として搬出し、その後、スクライブ亀裂(5b)に沿つて被加工物(1)を分断し、複数枚の部材を得ることを特徴とする高脆性非金属材料製の被加工物の加工方法。
[10]
被加工物(1)の加工予定線(2b)の少なくともスクライビング開始端部に、微小亀裂(2a)を形成する微小亀裂形成手段と、強度が制御された加熱エネルギーを所定の加熱領域(3)に照射して加工予定線(2b)に沿って走査する第1の工程を行う加熱手段(10)と、前記第1の工程の加熱領域(3)の相対的移動方向の後方に位置する所定の冷却領域(4a)に冷熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査し、スクライブ線を形成する第2の工程を行う冷却手段(30)と、前記第2の工程の冷却領域(4a)の相対的移動方向の後方に位置する所定の再加熱領域(5a)に強度が制御された加熱エネルギーを照射して、加工予定線(2b)に沿って走査してスクライブ亀裂(5b)を形成する第3の工程を行う再加熱手段(20)とを順次に備え、
高脆性非金属材料製の被加工物(1)を線状の加工予定線(2b)に沿ってスクライビングする高脆性非金属材料製の被加工物の加工装置であって、
スクライブ線を成長させたスクライブ亀裂(5b)を所定の深さに形成するために、
δ:スクライブ亀裂(5b)の深さ、
δ0 :第2の工程の終了後におけるスクライブ線の深さ、
P:第3の工程の再加熱領域(5a)の単位面積当たりの加熱エネルギー量、
A:被加工物(1)の形状特性及び熱特性に依存した比例係数、
m:m≧1の実数係数として、
スクライブ亀裂(5b)の深さ特性式δ=δ0 +A・Pm
を満足するように第3の工程の再加熱領域(5a)の単位面積当たりの加熱エネルギー量(P)を調整することを特徴とする高脆性非金属材料製の被加工物の加工装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]