処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

出願の表示

1. WO2009066418 - 放電表面処理用電極およびそれを用いて成膜された金属被膜

Document

明 細 書

発明の名称 放電表面処理用電極およびそれを用いて成膜された金属被膜

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

発明の開示

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008  

発明の効果

0009  

図面の簡単な説明

0010   0011  

発明を実施するための最良の形態

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

放電表面処理用電極およびそれを用いて成膜された金属被膜

技術分野

[0001]
 この発明は、導電性を有する電極と被加工物との間にパルス状の放電を発生させ、このパルス状の放電エネルギーによって被加工物表面に電極材料あるいは電極材料が放電エネルギーにより反応した物質からなる被膜を形成する放電表面処理に用いられる電極に関するものである。

背景技術

[0002]
 放電表面処理によって被加工物の表面に耐磨耗性の被膜を形成することにより、耐磨耗性や摺動性を向上させることができる。例えば、亜鉛金属粉末を成形した粉末成形体を電極とし、この電極と被加工物との間にパルス状の放電を発生させて被加工物の表面に亜鉛被膜をまばらに形成させることで、クラックのない被膜を形成できる方法が開示されていた(例えば、特許文献1参照)。また、可塑性の高い絶縁性の有機バインダと可塑性の低い導電性有機材料粉末と亜鉛粉末とを混合することにより、電極強度と比抵抗を改善した放電表面処理用電極が開示されていた(例えば、特許文献2参照)。
[0003]
特許文献1 : 特開2006-124742号公報(3頁、図8)
特許文献2 : 特開2007-70712号公報(11頁、図4)

発明の開示

発明が解決しようとする課題

[0004]
 放電表面処理における電極と被加工物との間の放電はアーク放電であり、このアーク放電のアーク柱の中心温度は、2000K~8000Kとなる。従来の金属亜鉛の粉末で構成された放電表面処理用電極を用いて亜鉛被膜を形成しても、亜鉛の融点が低いために、被膜形成時にアーク柱の中心付近では亜鉛が溶融または気化状態となって亜鉛が付着せず、アーク柱の外周部にのみ付着してまばらな被膜になり、被覆率を高くできないという問題があった。そのため、亜鉛被膜が本来もつところの耐久性が十分に確保できていなかった。
[0005]
 この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、被覆率の高い亜鉛などの低融点金属の被膜を形成することができる放電表面処理用電極を得るものである。

課題を解決するための手段

[0006]
 この発明に係る放電表面処理用電極においては、純金属の低融点金属粉末および表面が酸化された低融点金属粉末の少なくとも一方からなる低融点金属系粉末と、この低融点金属の酸化物粉末とを均一に分布させて圧縮成形したものである。
[0007]
 また、この発明に係る放電表面処理用電極においては、純金属亜鉛粉末および表面が酸化された金属亜鉛粉末の少なくとも一方からなる亜鉛系粉末と、この亜鉛系粉末に対して5体積%以上90体積%以下の酸化亜鉛粉末とを均一に分布させて、気孔率を10体積%以上55体積%以下の範囲で圧縮成形したものである。
[0008]
 さらには、この発明に係る放電表面処理用電極においては、純アルミニウム粉末および表面が酸化されたアルミニウム粉末の少なくとも一方からなるアルミニウム系粉末と、このアルミニウム系粉末に対して5体積%以上70体積%以下の酸化アルミニウム粉末とを均一に分布させて、気孔率を10体積%以上50体積%以下の範囲で圧縮成形したものである。

発明の効果

[0009]
 この発明は、純金属の低融点金属粉末にこの低融点金属より融点の高い同じ低融点金属の金属酸化物粉末を加えたことにより、アーク柱の中心付近では金属酸化物が還元されて金属被膜となるので、被覆率の高い金属被膜が得られる。

図面の簡単な説明

[0010]
[図1] この発明を実施するための実施の形態1における亜鉛被膜の断面模式図である。
[図2] この発明を実施するための実施の形態2における亜鉛被膜の特性図である。
[図3] この発明を実施するための実施の形態3における亜鉛被膜の特性図である。
[図4] この発明を実施するための実施の形態4における亜鉛被膜の特性図である。
[図5] この発明を実施するための実施の形態5における亜鉛被膜の特性図である。
[図6] この発明を実施するための実施の形態6における亜鉛被膜の特性図である。
[図7] この発明を実施するための実施の形態7におけるアルミニウム被膜の特性図である。
[図8] この発明を実施するための実施の形態8におけるアルミニウム被膜の特性図である。
[図9] この発明を実施するための実施の形態9におけるアルミニウム被膜の特性図である。
[図10] この発明を実施するための実施の形態10におけるアルミニウム被膜の特性図である。

符号の説明

[0011]
1 基材
2 放電痕
3 亜鉛粒子
4 亜鉛層

発明を実施するための最良の形態

[0012]
実施の形態1.
 この発明を実施するための実施の形態1における放電表面処理用電極は、次の工程によって作製した。平均粒径が約3μmの純金属亜鉛粉末7.0gと、平均粒径が約0.5μmの酸化亜鉛粉末5.6gとを、例えばV型混合機を用いて均一に混合し、この混合粉末を所定のプレス圧でプレス成形して直径約10mmで高さ約25mmの円柱状の放電表面処理用電極を作製した。本実施の形態における放電表面処理用電極は、気孔率20体積%で、純金属亜鉛粉末に対して酸化亜鉛粉末が50体積%である。
[0013]
 本実施の形態における円柱状の放電表面処理用電極と被加工物であるクロムモリブデン鋼の基材との間に、オープン電圧約300V、周波数約200kHzのパルス電圧を印加することによりパルス状の放電を発生させて、基材の表面に亜鉛被膜を形成した。基材の表面に形成された亜鉛被膜は、円柱状の電極の断面とほぼ同じ大きさの直径約10mmの丸型である。
[0014]
 図1は、本実施の形態の放電表面処理用電極を用いて形成した亜鉛被膜の断面模式図である。基材1の表面には、放電によって基材の一部が溶融した放電痕2が形成されており、電極材料の純金属亜鉛が基材側に移動して付着した亜鉛粒子3は、放電痕2の外周部に堆積する。放電痕2の表面には、亜鉛層4が形成されている。この亜鉛層4が形成される理由は、次のように予想している。電極と基材間との間の放電発生の際、酸化亜鉛の融点は基材であるクロムモリブデンの融点よりも高いので、放電痕2が形成される領域では酸化亜鉛は溶融しないが基材が溶融する温度範囲になる。この温度範囲では、金属亜鉛は蒸発してしまうが、酸化亜鉛は基材に付着する。付着した直後の温度環境下でこの酸化亜鉛は、加工油の分解炭素や、基材の成分元素であるクロムで還元されて金属亜鉛となる。なぜなら、クロムは亜鉛より酸化されやすく、このときの還元反応は吸熱反応であるために、放電痕2近傍の基板に付着した部分の温度は金属亜鉛が気化しない程度まで低下するからである。このようなメカニズムで亜鉛層4が形成されると予想される。
[0015]
 上述のように、本実施の形態の放電表面処理用電極を用いて亜鉛被膜を形成すると、放電痕にも亜鉛層を形成することができるので、被覆率の高い亜鉛被膜を形成することができる。
[0016]
 なお、本実施の形態においては、基材としてクロムモリブデン鋼を用いたが、それ以外の基材、例えば、SKS、SKDと呼ばれる合金工具鋼、SKHと呼ばれる高速度工具鋼、SNCMと呼ばれるニッケルクロムモリブデン鋼、SCRと呼ばれるクロム鋼などを用いることもできる。
[0017]
 また、本実施の形態においては、純金属亜鉛粉末を用いたが、純金属亜鉛粉末は表面が酸化されている場合があり、そのような粉末を用いても同様な効果がある。以後、純金属亜鉛粉末および表面が酸化された金属亜鉛粉末の少なくとも一方からなる粉末を亜鉛系粉末と記載する。
[0018]
実施の形態2.
 実施の形態2における放電表面処理用電極は、亜鉛系粉末と酸化亜鉛粉末との混合比を変えたものである。放電表面処理用電極の製造方法は実施の形態1と同様であり、気孔率は20体積%とした。亜鉛系粉末に対する酸化亜鉛粉末の構成比(体積%)を変化させた放電表面処理用電極を作製し、実施の形態1と同様にクロムモリブデン鋼の基材の表面に亜鉛被膜を形成し、この被膜の亜鉛被覆率を測定した。亜鉛被覆率(面積%)は、電子プローブマイクロアナライザを用いて、被膜の100×100μmの領域の面分析により、分析領域に対する亜鉛反応が検知された領域の面積比で求めた。
[0019]
 図2は、本実施の形態における電極の酸化亜鉛構成比(体積%)と被膜の亜鉛被覆率(面積%)との関係を示した特性図である。横軸が0体積%のときは亜鉛系粉末のみで放電表面処理用電極を作製した場合に相当し、100体積%のときは酸化亜鉛粉末のみで放電表面処理用電極を作製した場合に相当する。図2からわかるように、亜鉛系粉末に対して酸化亜鉛粉末が5体積%以上であれば、従来の亜鉛系粉末のみで作製された放電表面処理用電極を用いて形成された亜鉛被膜(図2における0体積%)よりも被覆率が高くなる。とくに、酸化亜鉛構成比が50体積%のときには、被覆率が約90面積%と、これまでに得られなかった高い被覆率を実現できる。
[0020]
 また、図2における酸化亜鉛構成比が90体積%を越えた網掛け部分Aでは、電極の電気抵抗が100Ω・cm以上と極端に高くなるので、成膜時の放電が不安定になり、被覆率が著しく低下する。以上の結果から、亜鉛系粉末に対して酸化亜鉛粉末が5体積%以上90体積%以下で従来よりも高い被覆率の亜鉛被膜が得られる。さらには、亜鉛被覆率が40面積%以上となる10体積%以上90体積%以下が好ましい。
[0021]
 なお、本実施の形態においては、気孔率を20体積%と一定としているが、気孔率が10~55体積%の範囲においても同様な効果が得られ、酸化亜鉛粉末の構成比が5~90体積%の範囲で被覆率の高い亜鉛被膜が得られる。
[0022]
実施の形態3.
 実施の形態3における放電表面処理用電極は、亜鉛系粉末の平均粒径を変えたものである。亜鉛系粉末の平均粒径を、1.5~8μmの範囲で変化させた。亜鉛系粉末としては、表面が酸化された純金属亜鉛粉末を用いた。放電表面処理用電極の製造方法は実施の形態1と同様であり、酸化亜鉛粉末の平均粒径は0.5μmであり、気孔率は20体積%とし、亜鉛系粉末に対する酸化亜鉛粉末の構成比(体積%)は50体積%と一定として放電表面処理用電極を作製した。さらに、実施の形態1と同様にクロムモリブデン鋼の基材の表面に亜鉛被膜を形成し、この被膜の亜鉛被覆率を測定した。
[0023]
 図3は、本実施の形態における電極の亜鉛系粉末の平均粒径と被膜の亜鉛被覆率(面積%)との関係を示した特性図である。亜鉛系粉末の平均粒径が5.0μm以下の範囲で被膜の亜鉛被覆率が50面積%以上となる。亜鉛系粉末の平均粒径が5.0μmを超えると、放電の際に放電表面処理用電極の先端と基材の表面との間隔が一定にならず放電が不安定になって被膜にムラができやすくなり亜鉛被覆率は低下するが、従来の亜鉛系粉末のみで作製された放電表面処理用電極を用いて形成された亜鉛被膜(実施の形態2における図2の酸化亜鉛構成比0体積%)の亜鉛被覆率よりも高い30面積%以上となる。なお、亜鉛系粉末の平均粒径が小さくなるほど酸化されやすくなるので、亜鉛系粉末の平均粒径が3.0μm以下の領域では、その影響により電極の電気抵抗が高くなり、放電が不安定になる傾向が若干ではあるが強くなるため、亜鉛被覆率は低下傾向となる。
[0024]
 なお、本実施の形態においては、平均粒径が0.5μmの酸化亜鉛粉末を用いたが、平均粒径が0.2~5μmの酸化亜鉛粉末を用いた場合でも同様な結果となり、亜鉛系粉末の平均粒径が5.0μm以下で亜鉛被覆率が50面積%以上の亜鉛被膜が得られた。
[0025]
実施の形態4.
 実施の形態4における放電表面処理用電極は、亜鉛系粉末に対して酸化亜鉛粉末の構成比を50体積%としたときに、気孔率を変化させたものである。放電表面処理用電極の製造方法は実施の形態1と同様であり、プレス成形時のプレス圧力を調整して気孔率を変化させた放電表面処理用電極を作製した。本実施の形態において作製した放電表面処理用電極の気孔率は、5~55体積%の範囲である。さらに、気孔率を変化させて作製した放電表面処理用電極を用いて、実施の形態1と同様にクロムモリブデン鋼の基材の表面に亜鉛被膜を形成し、亜鉛被覆率を測定した。
[0026]
 図4は、本実施の形態における電極の気孔率(体積%)と被膜の亜鉛被覆率(面積%)との関係を示した特性図である。気孔率が10体積%より小さい網掛け部分Bでは、成膜時の放電が不安定になり、被覆率が著しく低下する。また、気孔率が55体積%を超えた網掛け部分Cでは、気孔率が高すぎて、放電表面処理用電極の形状を維持することが困難となり、使用が困難になる。図4からわかるように、気孔率が10体積%以上55体積%以下であれば、従来の亜鉛系粉末のみで作製された放電表面処理用電極を用いて形成された亜鉛被膜よりも被覆率が高くなる。
[0027]
 なお、本実施の形態においては、酸化亜鉛粉末の構成比を50体積%と一定にしているが、構成比が5~90体積%の範囲でも同様な効果が得られ、気孔率が10~55体積%の範囲で被覆率の高い亜鉛被膜が得られる。
[0028]
実施の形態5.
 実施の形態5における放電表面処理用電極は、平均粒径3μm亜鉛系粉末に対して酸化亜鉛粉末の平均粒径を変化させたものである。酸化亜鉛粉末の平均粒径は0.05~20μmの範囲で変化させた。なお、亜鉛系粉末に対する酸化亜鉛粉末の構成比は50体積%と一定とした。放電表面処理用電極の製造方法は実施の形態1と同様であり、気孔率が20体積%で一定となるようにプレス成形時のプレス圧力を調整して放電表面処理用電極を作製した。さらに、これらの酸化亜鉛粉末の平均粒径を変化させて作製した放電表面処理用電極を用いて、実施の形態1と同様にクロムモリブデン鋼の基材の表面に亜鉛被膜を形成し、亜鉛被覆率を測定した。
[0029]
 図5は、本実施の形態における電極の酸化亜鉛粉末の平均粒径(μm)と被膜の亜鉛被覆率(面積%)との関係を示した特性図である。図5からわかるように、酸化亜鉛粉末の平均粒径を5μm以下にすることで、放電時の酸化亜鉛の溶融が十分行われ、放電痕の領域の亜鉛層が十分に成長することで高い亜鉛被覆率が得られる。また、酸化亜鉛粉末の平均粒径を0.2μm以上にすることで、亜鉛系粉末および酸化亜鉛粉末の接触抵抗が減少して放電表面処理用電極の電気的導通が良好となるため放電が安定するので、高い亜鉛被覆率を確保することができる。
[0030]
 なお、本実施の形態においては、放電表面処理用電極の気孔率を20体積%と一定にしているが、気孔率が10~55体積%の範囲でも同様な効果が得られる。さらには、亜鉛系粉末の平均粒径を3μmとしたが、平均粒径が5μm以下の亜鉛系粉末を用いても同様な効果が得られる。
[0031]
実施の形態6.
 実施の形態6における放電表面処理用電極は、実施の形態5の放電表面処理用電極において、原料となる酸化亜鉛粉末として、0.5wt%のアルミニウムが添加された酸化亜鉛粉末を用いたものである。平均粒径3μmの亜鉛系粉末に対して、アルミニウムが添加された酸化亜鉛粉末の平均粒径0.05~20μmの範囲で変化させた。放電表面処理用電極の製造方法は実施の形態5と同様であり、気孔率が20体積%で一定となるようにした。
[0032]
 図6は、本実施の形態におけるアルミニウムが添加された酸化亜鉛の平均粒径(μm)と亜鉛被覆率(面積%)との関係を示した特性図である。図6からわかるように、酸化亜鉛粉末にアルミニウムが添加されているので、放電表面処理電極の電気的導通が良好となって放電が安定し、酸化亜鉛粉末の平均粒径が0.05~5μmの範囲でより高い亜鉛被覆率を確保することができる。酸化亜鉛の平均粒径が5μm以上の場合には、放電の際に放電表面処理用電極の先端と基材の表面との間隔が一定にならず、放電が不安定となって亜鉛被膜が形成されにくくなってしまう。
[0033]
 なお、本実施の形態においては、酸化亜鉛粉末として0.5wt%のアルミニウムが添加された酸化亜鉛粉末を用いたが、これに限るものではなく、添加量が0.1~5wt%の範囲であれば、亜鉛被膜に混入するアルミニウムは亜鉛被膜としての特性を落とさない程度となる。
[0034]
 さらには、本実施の形態においては、アルミニウムを添加した酸化亜鉛を用いたが、添加する金属としては、ホウ素やゲルマニウムなど、放電表面処理電極の電気的導通を向上させるものを用いることができる。
[0035]
実施の形態7.
 実施の形態7における放電表面処理用電極は、低融点金属としてアルミニウムを選択し、亜鉛を用いた実施の形態2と同様に、アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合比を変えたものである。放電表面処理用電極の製造方法は実施の形態1と同様であり、気孔率は20体積%とした。アルミニウム粉末に対する酸化アルミニウム粉末の構成比(体積%)を変化させた放電表面処理用電極を作製し、機械構造用炭素鋼(例えばSC材)の基材の表面にアルミニウム被膜を形成し、この被膜のアルミニウム被覆率を測定した。アルミニウム被覆率(面積%)の測定方法は実施の形態2と同様である。
[0036]
 図7は、本実施の形態における電極の酸化アルミニウム構成比(体積%)と被膜のアルミニウム被覆率(面積%)との関係を示した特性図である。横軸が0体積%のときはアルミニウム粉末のみで放電表面処理用電極を作製した場合に相当し、100体積%のときは酸化アルミニウム粉末のみで放電表面処理用電極を作製した場合に相当する。図7からわかるように、アルミニウム粉末に対して酸化アルミニウム粉末が5体積%以上であれば、従来のアルミニウム粉末のみで作製された放電表面処理用電極を用いて形成されたアルミニウム被膜(図7における0体積%)よりも被覆率が高くなる。とくに、酸化アルミニウム構成比が40体積%のときには、被覆率が約90面積%と、これまでに得られなかった高い被覆率を実現できる。
[0037]
 また、図7における酸化アルミニウム構成比が70体積%を越えた網掛け部分Dでは、電極の電気抵抗が100Ω・cm以上と極端に高くなるので、成膜時の放電が不安定になり、被覆率が著しく低下する。以上の結果から、アルミニウム粉末に対して酸化アルミニウム粉末が5体積%以上70体積%以下で従来よりも高い被覆率のアルミニウム被膜が得られる。さらには、アルミニウム被覆率が40面積%以上となる10体積%以上60体積%以下が好ましい。
[0038]
 なお、本実施の形態においては、気孔率を20体積%と一定としているが、気孔率が10~50体積%の範囲においても同様な効果が得られ、酸化アルミニウム粉末の構成比が5~70体積%の範囲で被覆率の高いアルミニウム被膜が得られる。
[0039]
実施の形態8.
 実施の形態8における放電表面処理用電極は、アルミニウム粉末の平均粒径を変えたものである。アルミニウム粉末の平均粒径を、0.5~5μmの範囲で変化させた。アルミニウム粉末としては、表面が酸化された純金属アルミニウム粉末を用いた。放電表面処理用電極の製造方法は実施の形態1と同様であり、酸化アルミニウム粉末の平均粒径は0.5μmであり、気孔率は20体積%とし、アルミニウム系粉末に対する酸化アルミニウム粉末の構成比(体積%)は40体積%と一定として放電表面処理用電極を作製した。さらに、実施の形態7と同様に機械構造用炭素鋼(例えばSC材)の基材の表面にアルミニウム被膜を形成し、この被膜のアルミニウム被覆率を測定した。
[0040]
 図8は、本実施の形態における電極のアルミニウム粉末の平均粒径と被膜のアルミニウム被覆率(面積%)との関係を示した特性図である。アルミニウム粉末の平均粒径が3.0μm以下の範囲で被膜のアルミニウム被覆率が50面積%以上となる。アルミニウム粉末の平均粒径が3.0μmを超えると、放電の際に放電表面処理用電極の先端と基材の表面との間隔が一定にならず放電が不安定になって被膜にムラができやすくなりアルミニウム被覆率は低下するが、従来のアルミニウム粉末のみで作製された放電表面処理用電極を用いて形成されたアルミニウム被膜(実施の形態7における図7の酸化アルミニウム構成比0体積%)のアルミニウム被覆率よりも高い30面積%以上となる。なお、アルミニウム粉末の平均粒径が小さくなるほど酸化されやすくなるので、アルミニウム粉末の平均粒径が1.0μm以下の領域では、その影響により電極の電気抵抗が高くなり、放電が不安定になる傾向が若干ではあるが強くなるため、アルミニウム被覆率は低下傾向となる。
[0041]
 なお、本実施の形態においては、平均粒径が0.5μmの酸化アルミニウム粉末を用いたが、平均粒径が0.2~2μmの酸化アルミニウム粉末を用いた場合でも同様な結果となり、アルミニウム粉末の平均粒径が3.0μm以下でアルミニウム被覆率が50面積%以上のアルミニウム被膜が得られた。
[0042]
実施の形態9.
 実施の形態9における放電表面処理用電極は、アルミニウム粉末に対して酸化アルミニウム粉末の構成比を40体積%としたときに、気孔率を変化させたものである。放電表面処理用電極の製造方法は実施の形態1と同様であり、プレス成形時のプレス圧力を調整して気孔率を変化させた放電表面処理用電極を作製した。本実施の形態において作製した放電表面処理用電極の気孔率は、5~50体積%の範囲である。さらに、気孔率を変化させて作製した放電表面処理用電極を用いて、実施の形態7と同様にSC材の基材の表面にアルミニウム被膜を形成し、アルミニウム被覆率を測定した。
[0043]
 図9は、本実施の形態における電極の気孔率(体積%)と被膜のアルミニウム被覆率(面積%)との関係を示した特性図である。気孔率が10体積%より小さい網掛け部分Eでは、成膜時の放電が不安定になり、被覆率が著しく低下する。また、気孔率が50体積%を超えた網掛け部分Fでは、気孔率が高すぎて、放電表面処理用電極の形状を維持することが困難となり、使用が困難になる。図9からわかるように、気孔率が10体積%以上50体積%以下であれば、従来のアルミニウム粉末のみで作製された放電表面処理用電極を用いて形成されたアルミニウム被膜よりも被覆率が高くなる。
[0044]
 なお、本実施の形態においては、酸化アルミニウム粉末の構成比を40体積%と一定にしているが、構成比が5~70体積%の範囲でも同様な効果が得られ、気孔率が10~50体積%の範囲で被覆率の高いアルミニウム被膜が得られる。
[0045]
実施の形態10.
 実施の形態10における放電表面処理用電極は、平均粒径1μmのアルミニウム粉末に対して酸化アルミニウム粉末の平均粒径を変化させたものである。酸化アルミニウム粉末の平均粒径は0.05~5μmの範囲で変化させた。なお、アルミニウム粉末に対する酸化アルミニウム粉末の構成比は40体積%と一定とした。放電表面処理用電極の製造方法は実施の形態1と同様であり、気孔率が20体積%で一定となるようにプレス成形時のプレス圧力を調整して放電表面処理用電極を作製した。さらに、これらの酸化アルミニウム粉末の平均粒径を変化させて作製した放電表面処理用電極を用いて、実施の形態7と同様にSC材の基材の表面にアルミニウム被膜を形成し、アルミニウム被覆率を測定した。
[0046]
 図10は、本実施の形態における電極の酸化アルミニウム粉末の平均粒径(μm)と被膜のアルミニウム被覆率(面積%)との関係を示した特性図である。図10からわかるように、酸化アルミニウム粉末の平均粒径を2μm以下にすることで、放電時の酸化アルミニウムの溶融が十分行われ、放電痕の領域のアルミニウム層が十分に成長することで高いアルミニウム被覆率が得られる。また、酸化アルミニウム粉末の平均粒径を0.2μm以上にすることで、アルミニウム粉末および酸化アルミニウム粉末の接触抵抗が減少して放電表面処理用電極の電気的導通が良好となるため放電が安定するので、高いアルミニウム被覆率を確保することができる。
[0047]
 なお、本実施の形態においては、放電表面処理用電極の気孔率を20体積%と一定にしているが、気孔率が10~50体積%の範囲でも同様な効果が得られる。さらには、アルミニウム粉末の平均粒径を1μmとしたが、平均粒径が3μm以下のアルミニウム粉末を用いても同様な効果が得られる。

請求の範囲

[1]
純金属の低融点金属粉末および表面が酸化された低融点金属粉末の少なくとも一方からなる低融点金属系粉末と、この低融点金属の酸化物粉末とを均一に分布させて圧縮成形されたことを特徴とする放電表面処理用電極。
[2]
低融点金属は、亜鉛またはアルミニウムの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1記載の放電表面処理用電極。
[3]
純金属亜鉛粉末および表面が酸化された金属亜鉛粉末の少なくとも一方からなる亜鉛系粉末と、
この亜鉛系粉末に対して5体積%以上90体積%以下の酸化亜鉛粉末とを含み、
気孔率が10体積%以上55体積%以下の範囲で圧縮成形されたことを特徴とする放電表面処理用電極。
[4]
亜鉛系粉末の平均粒径が5μm以下であり、酸化亜鉛粉末の平均粒径が0.2μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項3記載の放電表面処理用電極。
[5]
酸化亜鉛粉末が、アルミニウム、ガリウムおよびホウ素からなる群のすくなくとも1種類の元素を含有することを特徴とする請求項3
記載の放電表面処理用電極。
[6]
純アルミニウム粉末および表面が酸化されたアルミニウム粉末の少なくとも一方からなるアルミニウム系粉末と、
このアルミニウム系粉末に対して5体積%以上70体積%以下の酸化アルミニウム粉末とを含み、
気孔率が10体積%以上50体積%以下の範囲で圧縮成形されたことを特徴とする放電表面処理用電極。
[7]
アルミニウム系粉末の平均粒径が3μm以下であり、酸化アルミニウム粉末の平均粒径が0.2μm以上2μm以下であることを特徴とする請求項6記載の放電表面処理用電極。
[8]
請求項1記載の放電表面処理用電極と基材との間のパルス放電によって、前記基材の表面に成膜された金属被膜。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]