処理中

しばらくお待ちください...

設定

設定

出願の表示

1. WO2018199122 - エラストマー補強用コード

Document

明 細 書

発明の名称 エラストマー補強用コード

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008  

発明の効果

0009  

図面の簡単な説明

0010  

発明を実施するための形態

0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035  

実施例

0036   0037   0038   0039   0040   0041  

符号の説明

0042  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : エラストマー補強用コード

技術分野

[0001]
 本発明は、エラストマー補強用コード(以下、単に「コード」とも称す)に関し、エラストマーとの接着性に優れたエラストマー補強用コードに関する。

背景技術

[0002]
 従来より、タイヤのベルトの補強材に、スチールフィラメントが撚り合わされてなるスチールコードが用いられている。しかしながら、このようなスチールコードにおいては、例えば、タイヤが外傷を受けて、ベルトまで達する損傷が生ずると、外部環境中の水分等がスチールコードを構成するスチールフィラメント間の隙間に侵入して、スチールコードに錆が生じることがある。そのため、スチールコードに隙間を空けて、加硫時にゴムをスチールコード内部に侵入させて水の経路を防ぐことが行われている。このような中、特許文献1では、2~12本のスチールフィラメントよりなるシース素線を融点が50℃以上で200℃未満の樹脂フィラメントからなるコアの周りに撚り合わせてなる複合コードが提案されている。この複合コードは、加硫時に樹脂フィラメントを溶融させて、スチールフィラメント間にゴムを浸透させて、スチールフィラメントの防錆を図っている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2001-234444号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 しかしながら、加硫時に、樹脂フィラメントが存在していた領域にゴムが流れ込むことで、樹脂フィラメント由来の高分子材料とゴムとが接する界面が生じる。その結果、この界面により、ゴムとスチールフィラメントとの接着強度が低くなってしまう。そのため、タイヤの耐久性を向上させるためには、さらなる改善が必要である。
[0005]
 そこで、本発明の目的は、ゴムのようなエラストマーとの接着性に優れたエラストマー補強用コードを提供することにある。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明者らは、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、以下の知見を得た。すなわち、金属コード断面内の空隙面積に対して、非晶質である高分子材料の使用量が過多の場合、加硫時に内部の高分子材料が外部へ漏れ出て、ゴムとの接着を阻害し、引張試験にて一部樹脂が露見された。一方、過小の場合、十分に空隙が充填されず、通水を防ぐことができないため、耐腐食疲労性向上が見込めない。かかる知見に基づき、本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、下記構成とすることによって、上記課題を解消することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0007]
 すなわち、本発明のエラストマー補強用コードは、金属フィラメントと、融点または軟化点が80~160℃である高分子材料からなる樹脂フィラメントと、が撚り合わされてなるエラストマー補強用コードにおいて、
 コアと少なくとも1層のシース層とを有し、加硫後において、最外層シース層を構成する金属フィラメント間の距離が100μm以下であり、かつ、軸方向に直交する方向の断面における、前記最外層シース層を構成する各金属フィラメントの中心を結んで囲まれる領域のうち、前記金属フィラメント以外が占める領域を隙間領域としたとき、該隙間領域に対する、前記樹脂フィラメント由来の高分子材料の面積の割合である充填率が52~120%であるものである。ここで、融点とは、JIS K 7121に記載されている熱流束示差走査熱量測定における融解ピーク温度のことをいう。また、軟化点とは、JIS K 7206(1999)に記載されている軟化点試験方法を用いて測定された値をいう。
[0008]
 本発明のコードにおいては、前記隙間領域の60~120%を、前記樹脂フィラメント由来の高分子材料が占めていることが好ましい。また、本発明のコードにおいては、前記エラストマー補強用コードの軸方向において、最外層シース層の撚りピッチの2倍の範囲を、2mm間隔で軸方向に直交する方向の断面を観察したとき、隣り合う観察面の空隙が3ヶ所以上軸方向に連通していないことが好ましい。さらに、本発明のコードにおいては、前記最外層シース層を構成する金属フィラメント間の距離は、20μm以下であることが好ましい。さらにまた、本発明のコードにおいては、前記高分子材料は、マレイン酸変性ポリエチレンを含むことや、アイオノマーを含むことが好ましい。さらにまた、本発明のコードにおいては、前記樹脂フィラメントの線径は、0.1mm以上であることが好ましい。さらにまた、本発明のコードにおいては、前記高分子材料のJIS K 7120で規定されるメルトフローレートは、7.0g/min.以上であることが好ましい。さらにまた、本発明のコードにおいては、前記高分子材料の融点または軟化点は、130~160℃であることが好ましい。さらにまた、本発明のコードにおいては、前記コアは、3本の金属フィラメントが撚り合わされてなることが好ましい。

発明の効果

[0009]
 本発明によれば、ゴムのようなエラストマーとの接着性に優れたエラストマー補強用コードを提供することができる。

図面の簡単な説明

[0010]
[図1] 本発明の一好適な実施の形態に係るエラストマー補強用コードの加硫前における軸方向に直交する方向の断面図である。
[図2] 本発明の一好適な実施の形態に係るエラストマー補強用コードの加硫後における軸方向に直交する方向の断面図である。
[図3] 比較例1のエラストマー補強用コードの加硫前における軸方向に直交する方向の断面図である。
[図4] 比較例2のエラストマー補強用コードの加硫前における軸方向に直交する方向の断面図である。
[図5] 実施例1のエラストマー補強用コードの加硫前における軸方向に直交する方向の断面図である。
[図6] 実施例2のエラストマー補強用コードの加硫前における軸方向に直交する方向の断面図である。
[図7] 実施例3のエラストマー補強用コードの加硫前における軸方向に直交する方向の断面図である。
[図8] 実施例4のエラストマー補強用コードの加硫前における軸方向に直交する方向の断面図である。
[図9] 実施例5のエラストマー補強用コードの加硫前における軸方向に直交する方向の断面図である。
[図10] 充填率とサビ進展長さおよび空隙進展率との関係を表すグラフである。

発明を実施するための形態

[0011]
 以下、本発明のエラストマー補強用コードについて、図面を用いて詳細に説明する。
 本発明のエラストマー補強用コードは、金属フィラメントと、融点または軟化点が80℃以上160℃以下である高分子材料からなる樹脂フィラメントと、が撚り合わされてなるものである。図1は、本発明の一好適な実施の形態に係るエラストマー補強用コードの加硫前における軸方向に直交する方向の断面図である。図1に示すように、本発明のコード10は、コアと少なくとも1層のシース層とを有しており、図示例においては、3本の金属フィラメント1aを撚り合わせてなるコアと、このコアの周りに撚り合わされてなる9本の金属フィラメント1bが巻き付けられてなるシース層を有しており、コアの中心に1本の樹脂フィラメント2aが配置され、さらに、コアの周りに3本の樹脂フィラメント2bが撚り合わされているが、本発明のコードの構造は、これに限られるものではない。
[0012]
 図2は、本発明の一好適な実施の形態に係るエラストマー補強用コードの加硫後における軸方向に直交する方向の断面図である。本発明のコード10においては、加硫後において、最外層シース層を構成する金属フィラメント1b間の距離wが100μm以下である。かかる構成とすることで、加硫後において、樹脂フィラメント由来の高分子材料3がゴムのようなエラストマーと接する面積を減らすことができる。その結果、コード10とエラストマーとの接着強度の低下を防止することができるため、製品の耐久性を損なうことがない。好適には、最外層シース層を構成する金属フィラメント1b間の距離wは、20μm以下である。
[0013]
 また、本発明のコード10においては、加硫後における軸方向に直交する方向の断面において、最外層シース層を構成する各金属フィラメント1bの中心を結んで囲まれる領域における金属フィラメント1a、1b以外が占める領域を隙間領域とし、この隙間領域における樹脂フィラメント2a、2b由来の高分子材料3が占めている面積の割合を充填率としたとき、充填率が52~120%である。隙間領域における高分子材料3の割合が52%未満であると、コード10内部の隙間を十分に充填できず、金属フィラメント1a、1bの錆の発生を効果的に防ぐことができない。一方、隙間領域における高分子材料3の割合が120%を超えると、最外層シース層から外部に流出する高分子材料3が多くなり、エラストマーとコード10との接着を阻害してしまう。好適には、充填率は、60~120%であり、最外層シース層を構成する金属フィラメント1bの表面積の50%以上が、エラストマーと接している状態が好ましい。
[0014]
 本発明のコード10においては、コード軸方向において、最外層シース層の撚りピッチの2倍の範囲を、2mm間隔で軸方向に直交する方向の断面を観察したとき、隣り合う観察面の空隙が3ヶ所以上軸方向に連通していないことが好ましい。すなわち、隙間領域内において、コード軸方向に空隙が6mm以上連通していないことが好ましい。隙間領域において空隙が連通していると、ここが通水経路となり、金属フィラメント1a、1bの錆の進展をもたらす。しかしながら、このような状態であれば、隙間領域に封鎖系が形成され、軸方向における錆の進展を効果的に防止することができる。
[0015]
 本発明のコード10においては、樹脂フィラメント2a、2bを構成する高分子材料は、融点または軟化点が80~160℃、好ましくは130~160℃であれば、特に制限はない。高分子材料としては、例えば、アイオノマーや、酸変性樹脂を用いることができ、これらを併用してもよい。酸変性樹脂の中でも、ダイマー酸やマレイン酸、イタコン酸等の酸無水物による変性樹脂が好ましい。マレイン酸変性樹脂は、金属フィラメント1a、1bとの接着性を向上させることができる。
[0016]
 マレイン酸変性樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性超低密度ポリエチレン、無水マレイン酸変性エチレン-ブテン-1共重合体、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性エチレン-オクテン、無水マレイン酸変性プロピレン等が挙げられる。特に、マレイン酸変性ポリエチレンが好適である。
[0017]
 なお、本発明のコード10においては、樹脂フィラメント2a、2bは、アイオノマーを含むことが好ましい。アイオノマーは、樹脂フィラメント2a、2bの表面を平滑化させ、紡糸性を向上させることができ、また、撚線機内での樹脂フィラメント2a、2bの滑りをよくすることができる。
[0018]
 アイオノマーとしては、具体的には、三井デュポンポリケミカル(株)社製のハイミラン1554、ハイミラン1557、ハイミラン1650、ハイミラン1652、ハイミラン1702、ハイミラン1706、ハイミラン1855等の亜鉛イオン中和型のアイオノマーや、ハイミラン1555、ハイミラン1601、ハイミラン1605、ハイミラン1707、ハイミラン1856、AM7331等のナトリウムイオン中和型のアイオノマーが挙げられる。また、デュポン社製のサーリン7930等のリチウムイオン中和型のアイオノマーやサーリン8120等のナトリウムイオン中和型のアイオノマーが挙げられる。これらも1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
[0019]
 本発明のコード10に係る樹脂フィラメント2a、2bの高分子材料としては、市販品としては、具体的には、旭化成(株)社製のタフテック、例えば、M1943、M1911、M1913が挙げられる。他にも、三井化学(株)のアドマー、例えば、LB548、NF518、QF551、QF500、QE060、ハイワックス、例えば、4051E、4252E、1105A、タフマー、例えば、MH7010、MH7020、三井・デュポンポリケミカル(株)社製の「ニュクレル」シリーズ、「エルバロイ」シリーズ、三菱化学(株)社製「モディック」シリーズ、アルケマ社製「オレヴァック」シリーズ、「ボンダイン」シリーズ、「ロトリル」シリーズ、日本ポリエチレン(株)社製「レクスパール」シリーズ、住友化学(株)社製「アクリフト」シリーズ、旭化成(株)社製のフッ素系アイオノマー、NUC社製のエチレンエチルアクリレートコポリマー等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[0020]
 本発明のコード10においては、樹脂フィラメント2a、2bの線径は0.1mm以上であることが好ましい。樹脂フィラメント2a、2bの線径が0.1mm未満の場合、金属フィラメント1a、1bとの撚り合わせの際、断線するおそれがあり、狙いの構造のコードを作製することが困難である。樹脂フィラメント2a、2bの線径の上限については特に制限はなく、加硫後における隙間領域に占める高分子材料の割合が52~120%となるように、適宜設定することができる。
[0021]
 本発明のコード10においては、樹脂フィラメント2a、2bを構成する高分子材料のJIS K 7120で規定されるメルトフローレート(MFR)は、7.0g/min.以上であることが好ましい。MFRが、7.0g/min.未満であると、樹脂フィラメント2a、2bが加硫時に溶融しても、コード内部の隙間領域内における高分子材料3の流動性が確保できず、本発明の効果を十分に得られない場合がある。
[0022]
 本発明のコード10においては、樹脂フィラメント2a、2bは無機フィラーを含有していてもよい。前述のとおり、樹脂フィラメント2a、2bは加硫温度において容易に溶融する必要があるため、融点は80℃以上160℃以下とされている。しかしながら、樹脂の融点が低いと樹脂フィラメント2a、2bの強度は低下してしまう関係にあるため、撚り線時に樹脂フィラメント2a、2bが断線してしまい、生産性が悪化してしまう場合がある。そこで、本発明のコード10においては、樹脂フィラメント2a、2bに無機フィラーを添加して、樹脂フィラメント2a、2bの強度を向上させてもよい。また、樹脂フィラメント2a、2bに無機フィラーを添加することで、樹脂フィラメント2a、2bの表面のタックが減少するため、樹脂フィラメント2a、2bの滑り性がさらに向上し、スチールコード10の撚り合わせが容易になる。
[0023]
 無機フィラーの添加量は、高分子材料100質量部に対して0.1~30質量部が好ましく、より好ましくは0.5~30質量部であり、さらに好ましくは5~30質量部であり、特に好ましくは10~20質量部である。無機フィラーの添加量が、高分子材料100質量部に対して0.1質量部未満であると、樹脂フィラメント2a、2bの補強効果が十分に得られず、一方、30質量部を超えると、樹脂フィラメント2a、2bの補強効果が飽和してしまい、コストの面から好ましくなく、同時に無機フィラーの分散性が低下することで、樹脂フィラメント2a、2bの耐久性に悪影響を及ぼすことがある。
[0024]
 本発明のコード10においては、無機フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、樹脂フィラメント2a、2bの補強の観点からは、カーボンブラックが好ましい。なお、タイヤを構成するゴム組成物にも、通常、カーボンブラックが含まれているため、本発明のコード10に係る樹脂フィラメント2a、2bとタイヤを構成するゴム組成物との相溶性が向上するため、ゴムと樹脂との接着性の向上も期待できる。
[0025]
 カーボンブラックを用いる場合、カーボンブラックのグレードには特に制限はなく、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等が用いられ、特に耐屈曲性および耐破壊性に優れるFEF、HAF、ISAF、SAF等が好適に挙げられ、窒素吸着比表面積N SA(JIS K 6217-2:2001に準拠する。)が30~150m /gであることが好ましく、35~130m /gであることがさらに好ましい。
[0026]
 なお、本発明のコード10に係る樹脂フィラメント2a、2bにおいては、上記効果を阻害しない程度に、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。さらに、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等の各種添加剤を含有(ブレンド)させてもよい。
[0027]
 本発明のコード10に係る樹脂フィラメント2a、2bは、既知の方法により製造することができ、その製造方法については特に制限はない。例えば、上記樹脂および上記無機フィラーを混錬し、得られた樹脂組成物を延伸して製造することができる。また、あらかじめ、上記樹脂に上記無機フィラーを多量に添加したマスターバッチを製造し、このマスターバッチを樹脂に添加して、所定の無機フィラー含有量となる樹脂組成物とし、この樹脂組成物を延伸して製造することもできる。
[0028]
 本発明のコード10においては、金属フィラメント1a、1bの線径、抗張力、断面形状については特に制限はない。例えば、金属フィラメント1a、1bの線径は0.10mm~0.60mmとすることができる。好ましくは、0.12~0.50mmである。金属フィラメント1a、1bの線径が0.10mm以下では、コード内部の空隙が小さくなり過ぎ、充填に必要な樹脂フィラメントの安定した製造に必要な強度を確保できない。逆に、強度確保のため径を大きくすると、コード撚り性状に悪影響を与えることが懸念される。また、金属フィラメント1a、1bの線径が0.60mm以上となると、金属フィラメント1a、1bの抗張力を高くできず、必要強度を得ようとすると軽量化の点で不利となる。
[0029]
 本発明のコード10においては、金属フィラメント1a、1bは、一般に、鋼、すなわち、鉄を主成分(金属フィラメントの全質量に対する鉄の質量が50質量%を超える)とする線状の金属をいい、鉄のみで構成されていてもよいし、鉄以外の、例えば、亜鉛、銅、アルミニウム、スズ等の金属を含んでいてもよい。
[0030]
 また、本発明のコード10においては、金属フィラメント1a、1bの表面には、メッキが施されていてもよい。メッキの種類としては、特に制限されず、例えば、亜鉛メッキ、銅メッキ、ブラスメッキ、ブロンズメッキ等が挙げられる。これらの中でもブラスメッキが好ましい。ブラスメッキを有する金属フィラメントは、ゴムとの接着性が優れているからである。なお、ブラスメッキは、通常、銅と亜鉛との割合(銅:亜鉛)が、質量基準で60~70:30~40である。また、メッキ層の層厚は、一般に100nm~300nmである。
[0031]
 本発明のコード10の構造については、コアと少なくとも1層のシース層とを有するものであれば特に制限はなく、加硫後に、1+6、2+6、2+8、3+7、3+8、3+9等のn+m構造となるコード、3+9+15、1+6+11等のn+m+l構造となるコード、また1+6、2+8、3+9、1+6+12等のいわゆるコンパクト構造となるコード、のような層撚り構造や、これらをさらに撚り合わせた複撚り構造のスチールコードとなるような構造が好ましい。特に、コアが、3本の金属フィラメントが撚り合わされてなる構造を有するコードは、コアの内部の空隙にエラストマーが浸入しにくい構造であるが、図1に示すように、コアの内部に樹脂フィラメント1aを配置することで、加硫後に、コアの中心の空隙を高分子材料で充填することができるため、本発明のコード10の構造として好適である。
[0032]
 本発明のコード10において、樹脂フィラメント2a、2bの配置位置には、特に制限はなく、加硫後における隙間領域に占める高分子材料の割合が52~120%となるように、適宜設定することができる。例えば、本発明の効果を良好に得られるように、層撚り構造のスチールコードの場合、最外層シースフィラメントよりも内側が好ましく、複撚り構造のスチールコードの場合は、最外層シースストランドよりも内側や各ストランドの最外層シースフィラメントよりも内側が好ましい。
[0033]
 本発明のコード10は、樹脂フィラメント2a、2bの強度が向上しているため、一般にタイヤ用のスチールコードを製造するための撚線機を用いて、スチールコード10の撚り線時に、樹脂フィラメント2a、2bを同時に撚り合わせることにより製造することができる。そのため、作業工程を増やすことはなく、また、生産性を低下させることはない。なお、スチールフィラメント1a,1bと樹脂フィラメント2a、2bの異種材料の撚り断線を防ぐため、なるべく強度の高い樹脂素材を用いることが好ましい。好ましくは、ロックウェル硬度(Hスケール)が30~150である。なお、ロックウェル硬度が150を超えると、樹脂フィラメント2a、2bの塑性加工が困難になり、コード10の撚り性状が悪化してしまう。樹脂フィラメント2a、2bの強度は、樹脂フィラメント2a、2b製造時の延伸倍率を上げることで上げることができる。また、撚線機内での樹脂フィラメント2a、2bの滑りが良いことが好ましい。
[0034]
 本発明のコード10は、ゴムのようなエラストマーとの接着性に優れているため、従来、スチールコード-ゴム複合体が用いられてきた部位に好適に用いることができる。特に、タイヤ、ベルト、ホース等のゴム物品に好適に用いることができる。例えば、タイヤに用いる場合は、乗用車用タイヤやトラック・バス用タイヤが挙げられる。また、その適用部位についても特に制限はなく、カーカスプライの補強材やベルトの補強材として用いることができ、この場合、トレッドの一部の局所的な補強にのみに使用してもよい。例えば、トレッド端部近傍、赤道面近傍、溝底近傍、他の傾斜ベルト層や周方向コード層を含む場合にはその端部といった局所的な補強にのみ使用することも可能である。
[0035]
 なお、本発明のコード10を被覆するエラストマーに関しても特に制限はなく、従来、金属コードを被覆するために用いていたゴム等を用いることができる。これ以外にも、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBRおよび低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR等のジエン系ゴムおよびその水添物、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M-EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニルまたはジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー等のオレフィン系ゴム、Br-IIR、CI-IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br-IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M-CM)等の含ハロゲンゴム、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム等のシリコンゴム、ポリスルフィドゴム等の含イオウゴム、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム等のフッ素ゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを好ましく使用することができる。これらのエラストマーは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
実施例
[0036]
 以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
<実施例1~7および比較例1~3>
 表1、2に示す線径のスチールフィラメントおよび同表に示す線径の樹脂フィラメントを用いて、チューブラー型撚線機にて、図3~9に示す構造のコードを作製した。得られた各コードを被覆ゴムでコーティングしてコード-ゴム複合体を作製した。ここで、同表中の樹脂フィラメント種のAは、ハイミラン1702(三井デュポンポリケミカル(株)社製)およびタフテックM1943(旭化成(株)社製)を8:2の割合で混合した樹脂(軟化点:95℃)であり、樹脂フィラメント種のBはハイミラン1702(融点:90℃)である。
[0037]
 なお、図3は比較例1のコードの断面を、図4は比較例2のコードの断面を、図5は実施例1のコードの断面を、図6は実施例2のコードの断面を、図7は実施例3のコードの断面を、図8は実施例4のコードの断面を、図9は実施例5のコードの断面を、それぞれ示す。なお、各スチールフィラメント、樹脂フィラメント2a、2bの線径は表1、2に示すとおりである。
[0038]
 得られたコード-ゴム複合体につき、145℃で40分間加硫し、加硫後のコード-ゴム複合体から切り出したゴム付きのスチールコードの表面をシリコーンシーラントで被覆し、乾燥後両端をサンプル長100mmとなるように切断し、一方のコード端部を樹脂で塞ぎ、もう一方の端を10%水酸化ナトリウム水溶液へ24時間浸漬後、液から取り出し、コード端からのゴムの剥離長さ(サビ進展長さ)を測定した。これをN=10~30本行い、バラツキとその絶対値のレベルを剥離長さの最小から最大の範囲と中央値メジアンで比較評価した。コード構造、充填率およびサビ進展長さを表1、2にまとめる。また、充填率とサビ進展長さとの関係を表すグラフを図10に示す。
[0039]
[表1]


[0040]
[表2]


[0041]
 図10から、充填率が52%を超えるとサビ進展長さが良化していることがわかる。

符号の説明

[0042]
 1a、1b 金属フィラメント
 2a、2b 樹脂フィラメント
 3 高分子材料
 10 エラストマー補強用コード(コード)

請求の範囲

[請求項1]
 金属フィラメントと、融点または軟化点が80℃以上160℃以下である高分子材料からなる樹脂フィラメントと、が撚り合わされてなるエラストマー補強用コードにおいて、
 コアと少なくとも1層のシース層とを有し、加硫後において、最外層シース層を構成する金属フィラメント間の距離が100μm以下であり、かつ、軸方向に直交する方向の断面における、前記最外層シース層を構成する各金属フィラメントの中心を結んで囲まれる領域のうち、前記金属フィラメント以外が占める領域を隙間領域としたとき、該隙間領域に対する、前記樹脂フィラメント由来の高分子材料の面積の割合である充填率が52~120%であることを特徴とするエラストマー補強用コード。
[請求項2]
 前記充填率が、60~120%である請求項1記載のエラストマー補強用コード。
[請求項3]
 前記エラストマー補強用コードの軸方向において、最外層シース層の撚りピッチの2倍の範囲を、2mm間隔で軸方向に直交する方向の断面を観察したとき、隣り合う観察面の空隙が3ヶ所以上軸方向に連通していない請求項1または2記載のエラストマー補強用コード。
[請求項4]
 前記最外層シース層を構成する金属フィラメント間の距離が、20μm以下である請求項1~3のうちいずれか一項記載のエラストマー補強用コード。
[請求項5]
 前記高分子材料が、マレイン酸変性ポリエチレンを含む請求項1~4のうちいずれか一項記載のエラストマー補強用コード。
[請求項6]
 前記高分子材料が、アイオノマーを含む請求項1~5のうちいずれか一項記載のエラストマー補強用コード。
[請求項7]
 前記樹脂フィラメントの線径が、0.1mm以上である請求項1~6のうちいずれか一項記載のエラストマー補強用コード。
[請求項8]
 前記高分子材料のJIS K 7120で規定されるメルトフローレートが、7.0g/min.以上である請求項1~7のうちいずれか一項記載のエラストマー補強用コード。
[請求項9]
 前記高分子材料の融点または軟化点が、130℃以上160℃以下である請求項1~8のうちいずれか一項記載のエラストマー補強用コード。
[請求項10]
 前記コアが、3本の金属フィラメントが撚り合わされてなる請求項1~9のうちいずれか一項記載のエラストマー補強用コード。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]