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1. WO2020170417 - 車両用ステアリング装置

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明 細 書

発明の名称 車両用ステアリング装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006  

課題を解決するための手段

0007  

発明の効果

0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059  

産業上の利用可能性

0060  

符号の説明

0061  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

補正された請求の範囲(条約第19条)

1  *   2  *   3  *   4  *   5  *   6  *  

図面

1   2   3   4   5   6   7  

明 細 書

発明の名称 : 車両用ステアリング装置

技術分野

[0001]
 本発明は、ボールねじを有している車両用ステアリング装置に関する。

背景技術

[0002]
 車両用ステアリング装置のなかには、電動モータが発生した駆動力を、ボールねじによって転舵軸(例えばラック軸)に伝達する形式の、いわゆる電動パワーステアリング装置がある。転舵軸が軸方向へ移動することにより、車輪を転舵することができる。この種の車両用ステアリング装置は、例えば許文献1によって知られている。
[0003]
 特許文献1で知られている車両用ステアリング装置は、電動モータが発生した駆動力を転舵軸に伝達するボールねじと、このボールねじの一部を成すナットをハウジングに回転可能に支持する軸受と、を備えている。この軸受の側面は、弾性体によって転舵軸の軸方向に支持(いわゆる、フローティング支持)されている。この弾性体は、ハウジングに組み付けられたセット状態では、バネレートが徐々に増大する第1荷重特性を発揮する。このため、弾性体は、ボールねじのミスアライメントや、ボールねじのナットに作用する荷重の偏りに起因して、軸受が軸方向へ変位することによる振動や作動音を、低減することができる。また、弾性体は、軸受に対して軸方向に作用する衝撃荷重を減衰する、第2荷重特性を発揮する。
[0004]
 しかし、弾性体は、転舵軸の軸方向へ圧縮されるにつれて、径方向へも弾性変形し得るので、上述の必要な荷重特性を、より一層高めることが求められている。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特許第6266182号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 本発明は、ボールねじを有している車両用ステアリング装置に採用される弾性体の、必要な荷重特性を、より一層高めることができる技術を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 本発明によれば、車両用ステアリング装置は、
 軸方向へ移動可能にハウジングに収納される転舵軸と、
 電動モータが発生した駆動力を前記転舵軸に伝達するボールねじと、
 前記ボールねじの一部を成すナットを前記ハウジングに回転可能に支持する軸受と、
 前記転舵軸の軸方向へ変形する単位圧縮量当たりの圧縮荷重の比率が徐々に増大する荷重特性を有しており、前記軸受の側面を全周にわたって前記転舵軸の軸方向に支持する、弾性材料から成る環状の弾性体と、
 前記転舵軸の軸方向における、前記弾性体と前記ハウジングとの間に介在しており、径方向外側の外筒部と、径方向内側の内筒部と、前記外筒部の一端と前記内筒部の一端との間を閉鎖している環状の底部とによって、前記軸受の側面に向いて開口した断面U字状の環状に構成されており、前記転舵軸の軸方向へ圧縮された前記弾性体の径方向への変形を、前記外筒部と前記内筒部とによって規制することが可能な構成の環状のカラーと、
を備えていることを特徴とする。

発明の効果

[0008]
 本発明では、弾性体は、転舵軸の軸方向へ変形する単位圧縮量当たりの圧縮荷重の比率(バネレート)が徐々に増大する、荷重特性を有している。このため、弾性体は、ハウジングに組み付けられた、いわゆるセットされた状態では、バネレートが徐々に増大する荷重特性を発揮することができる。カラーの外筒部と内筒部は、転舵軸の軸方向へ圧縮された弾性体の、径方向への変形を規制することができる。圧縮された弾性体は、外筒部と内筒部とによって、径方向への膨出を抑制されるので、バネレートが急増する荷重特性に、変化し得る。このように弾性体は、材料の硬度を変えることなく、2段階のバネレートを、より確実に達成することができる。従って、ボールねじを有している車両用ステアリング装置に採用される弾性体の、必要な荷重特性を、より一層高めることができる。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] 本発明による車両用ステアリング装置の模式図である。
[図2] 図1に示された第2伝動機構回りの断面図である。
[図3] 図2の3部を拡大した図である。
[図4] 図3に示された支持部を拡大した図である。
[図5] 図4に示された支持部の分解図である。
[図6] 図4に示された弾性体の圧縮荷重-圧縮量線図である。
[図7] 図3に示されるカラーの先端面が軸受の外輪の側面に接した状態の説明図である。

発明を実施するための形態

[0010]
 本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
[0011]
 図1に示されるように、車両用ステアリング装置10は、車両のステアリングホイール21から車輪31,31(操舵用車輪31,31)に至るステアリング系20と、このステアリング系20に補助トルクを付加する補助トルク機構40と、から成る。
[0012]
 ステアリング系20は、ステアリングホイール21と、このステアリングホイール21に連結されたステアリング軸22と、このステアリング軸22に自在軸継手23によって連結された入力軸24と、この入力軸24に第1伝動機構25によって連結された転舵軸26と、この転舵軸26の両端にボールジョイント27,27とタイロッド28,28とナックル29,29とを介して連結された左右(車幅方向両側)の車輪31,31と、から成る。
[0013]
 第1伝動機構25は、例えばラックアンドピニオン機構によって構成される。転舵軸26は、軸方向(車幅方向)へ移動可能である。
[0014]
 ステアリング系20によれば、運転者がステアリングホイール21を操舵することによって、操舵トルクにより第1伝動機構25と転舵軸26と左右のタイロッド28,28とを介して、左右の車輪31,31を操舵することができる。
[0015]
 補助トルク機構40は、操舵トルクセンサ41と制御部42と電動モータ43と第2伝動機構44とから成る。操舵トルクセンサ41は、ステアリングハンドル21に加えられたステアリング系20の操舵トルクを検出する。制御部42は、操舵トルクセンサ41のトルク検出信号に基づいて制御信号を発生する。電動モータ43は、制御部42の制御信号に基づき、前記操舵トルクに応じたモータトルク(補助トルク)、つまり駆動力を発生する。第2伝動機構44は、電動モータ43が発生した補助トルクを前記転舵軸26に伝達する。
[0016]
 この車両用ステアリング装置10によれば、運転者の操舵トルクに電動モータ43の補助トルクを加えた複合トルクにより、転舵軸26によって車輪31,31を転舵することができる。
[0017]
 第1伝動機構25は、車幅方向へ延びたハウジング50に収納されている。転舵軸26も、車幅方向(軸方向)へ移動可能にハウジング50に収納されている。
[0018]
 このハウジング50について、詳しく説明する。図1及び図2に示されるように、ハウジング50は、第1ハウジング半体51と第2ハウジング半体52とに、車幅方向に二分割されるとともに、互いにボルト結合によって一体化されている。
[0019]
 さらに、図2に示されるように、ハウジング50は、第1ハウジング半体51と第2ハウジング半体52との結合部分に、収納室53を有する。ハウジング50において、収納室53の車幅方向の両端面を形成する第1壁面54と第2壁面55は、転舵軸26に対して直交した平坦面である。第1端面54は、第1ハウジング半体51に有する。第2端面55は、第2ハウジング半体52に有する。収納室53のなかの、車幅方向の途中には、中空状の円板56が着脱可能に設けられている。この円板56は、第2端面55に対して対向し且つ平行な平坦な側面57を有する。この側面57のことを、以下、第3端面57ということにする。
[0020]
 図1及び図2に示されるように、第2伝動機構44は収納室53に収納されている。この第2伝動機構44は、例えばベルト伝動機構60とボールねじ70とから成る。ベルト伝動機構60は、電動モータ43の出力軸43aに設けられた駆動プーリ61と、ボールねじ70のナット73に設けられた従動プーリ62と、駆動プーリ61と従動プーリ62とに掛けられたベルト63とから成る。
[0021]
 図2及び図3に示されるように、ボールねじ70は、回転運動を直線運動に変換する変換機構の一種であって、電動モータ43(図1参照)が発生した駆動力、つまり補助トルクを前記転舵軸26に伝達する。このボールねじ70は、転舵軸26に形成されたネジ部71と、複数のボール72と、ネジ部71に複数のボール72を介して連結されたナット73とから成る。
[0022]
 ナット73は、軸受74によってハウジング50に回転可能に支持されるとともに、軸受74に対して軸方向への相対移動を規制されている。この軸受74は、収納室53のなかの、第2端面55と第3端面57との間に位置するとともに、収納室53の内周面58に嵌合している。収納室53の内周面58と軸受74の外周面74aとの間には、極く微小な隙間が有る。このため、軸受74に対して軸方向への荷重が作用した場合に、軸受74は、収納室53の内周面58に対して、転舵軸26の軸方向へ移動可能である。
[0023]
 軸受74は、ボールベアリングやローラベアリングなどの「転がり軸受」によって構成されることが好ましい。以下、軸受74のことを、適宜「転がり軸受74」と言い換える。転がり軸受74の外輪74bの両側には、一対の環状の支持部75,75が位置している。この一対の支持部75,75同士は、転がり軸受74を挟んで、転舵軸26の軸方向に互いに向かい合っている。このように、収納室53のなかの、第2端面55と第3端面57との間には、転がり軸受74と一対の支持部75,75が位置している。転がり軸受74の外輪74bの側面74c,74cは、全周にわたり、一対の環状の支持部75,75によって転舵軸26の軸方向に弾性を有して支持(いわゆる、フローティング支持)されている。この結果、ナット73は、軸受74を介して間接的に、転舵軸26の軸方向に弾性を有して支持されている。
[0024]
 以下、図3~図5を参照しつつ、一対の支持部75,75のなかの、1つの支持部75を代表して説明する。支持部75は、環状の弾性体80と、この弾性体80を支持する環状のカラー90と、から成る。弾性体80とカラー90とは、転舵軸26の軸方向に互いに組み合わされて、一体化されている。
[0025]
 弾性体80は、転がり軸受74の外輪74bの側面74cを全周にわたって転舵軸26の軸方向に支持する、弾性材料から成る環状の部材である。この弾性体80を構成する弾性材料としては、例えばラバー単体、樹脂単体、ラバーと樹脂との組み合わせ品、ラバーと樹脂の二色成形品がある。
[0026]
 詳しく説明すると、弾性体80は、底部93に一体に構成される第1弾性部81(基端部81)と、この第1弾性部81から軸受74の側面74cへ向かって延びた第2弾性部82と成り、一体に形成されて成る。第1弾性部81は、中空円盤状の部分である。第2弾性部82は、第1弾性部81に連なる環状の部分である。この第2弾性部82の断面形状は、第1弾性部81から軸受74の側面74cへ向かって先細りとなるテーパ状である。つまり、第2弾性部82は外周面82aと内周面82bの両方が傾斜面である。第2弾性部82の先端面82c(第1弾性部81に対して反対側の面82c)は、軸受74の側面74cを転舵軸26の軸方向に支持することが可能であり、例えば平坦面から成る。第2弾性部82の内径D12(第1弾性部81に対する付け根の内径D12)は、第1弾性部81の内径D11よりも大きい。第2弾性部82の外径D13は、第1弾性部81の外径と同じである。
[0027]
 カラー90は、金属材料や硬質樹脂材料から成り、第2端面55と第3端面57のいずれか一方と、弾性体80との間に位置している。第2端面55と第3端面57は、ハウジング50の一部である。つまり、カラー90は、転舵軸26の軸方向における、弾性体80とハウジング50との間に介在している。
[0028]
 このカラー90は、軸受74の側面74cに向いて開口した断面U字状の環状の部材であって、径方向外側の外筒部91(第1筒部91)と、この外筒部91よりも径方向内側の内筒部92(第2筒部92)と、外筒部91の一端と内筒部92の一端との間を閉鎖している環状の底部93とから成り、一体に構成されている。外筒部91と内筒部92と底部93とは、互いに同心上に位置している。底部93は平板状の構成であって、両面が平坦面である。
[0029]
 断面U字状の環状に構成されているカラー90は、図5に示される断面U字状の環状の溝94(凹部94)を有することになる。弾性体80は溝94に嵌め込まれる。転舵軸26の軸方向へ圧縮された弾性体80の径方向への変形を、外筒部91と内筒部92とによって規制することが可能である。
[0030]
 第1弾性部81の内周面81aは、内筒部92の外周面92aに接している(弾性を有した嵌合、つまり圧接を含む)。つまり、第1弾性部81の内径D11は、内筒部92の外径D21と同一、又はそれ以下に設定されている。
[0031]
 第2弾性部82の内径D12は、内筒部92の外径D21よりも大きい。第2弾性部82の外径D13は、外筒部91の内径D22よりも小さい。第2弾性部82の外周面82aと外筒部91の内周面91aとの間には、第1の空隙S1を有する。第2弾性部82の内周面82bと内筒部92の外周面92aとの間には、第2の空隙S2を有する。第2弾性部82の外周面82aと外筒部91の内周面91aとの間の第1の間隔C1(第1の空隙S1の大きさC1)は、第2弾性部82の内周面82bと内筒部92の外周面92aとの間の第2の間隔C2(第2の空隙S2の大きさC2)よりも小さい。
[0032]
 底部93に対して、外筒部91の先端面91bは、内筒部92の先端面92bよりも、軸受74の側面74cへ向かって突出量X1(図4参照)だけ突出している。第2弾性部82の先端面82cは、外筒部91の先端面91bから、軸受74の側面74cへ向かって突出量X2(図4参照)だけ突出している。
[0033]
 弾性体80は、第1荷重特性と第2荷重特性とを有している。
[0034]
 第1荷重特性は、転舵軸26の軸方向へ変形する単位圧縮量当たりの圧縮荷重の比率、つまりバネレートが徐々に増大する特性である。この第1荷重特性では、バネレートの変化は線形に近似していることが好ましい。しかも、この第1荷重特性でのバネレートの最大値は、転舵軸26の軸方向への、軸受74の振動を低減することが可能な程度に、小さく設定されている。具体的には、この第1荷重特性は、弾性体80が軸受74の側面74cから圧縮荷重を受け始め、圧縮されて径方向へ膨出した膨出部分を、カラー90の外筒部91と内筒部92との少なくとも一方により規制されるまでの、荷重特性である。
[0035]
 第2荷重特性は、単位圧縮量当たりの圧縮荷重の比率(バネレート)が、第1荷重特性に比べて急増する特性である。具体的には、第2荷重特性は、弾性体80の前記膨出部分が、カラー90の外筒部91と内筒部92との少なくとも一方によって規制された後の、荷重特性である。
[0036]
 ここで、弾性体80の荷重特性について、図6を参照しつつ説明する。図6は、弾性体80の圧縮荷重-圧縮量線図であり、縦軸を弾性体80に入力する圧縮荷重fcとし、横軸を弾性体80の圧縮量δとして、圧縮荷重fcに対する弾性体80の圧縮量δの特性、つまり荷重特性を表している。原点から予め設定された基準圧縮量δaまでの、圧縮量の範囲A1のことを、第1の範囲A1という。第1の範囲A1よりも後半の、圧縮量の範囲A2のことを、第2の範囲A2という。
[0037]
 弾性体80の特性は、第1の範囲A1では「バネレートが小さく」且つ「バネレートが徐々に増大する」第1荷重特性を有し、第2の範囲A2では「バネレートが急増する」第2荷重特性を有する。第1荷重特性では、バネレートの変化が線形に近似しているとともに、基準圧縮量δaでのバネレートが最大となる。このように弾性体80の特性は、いわゆる2段階のバネレートを有している。本発明では、圧縮量δの初期値δsは、第1の範囲A1において基準圧縮量δaの近くに設定、つまり小さく設定されている。
[0038]
 次に、一対の支持部75,75の作用を説明する。図3に示されるように、転がり軸受74は、一対の支持部75,75によって転舵軸26の軸方向に挟み込まれて、第2端面55と第3端面57との間に位置している。
[0039]
 第2端面55と第3端面57との間の離間寸法Di(図3参照)は、転がり軸受74の幅と一対の支持部75,75の各幅Wd,Wd(図4参照)との総和よりも、小さく設定されている。このため、軸方向の力がナット73に作用していない初期状態において、既に弾性体80,80は、一定の圧縮量だけ圧縮されている(初期設定されている)。この一定の圧縮量は、図6に示される圧縮量δの初期値δsに相当し、第1の範囲A1に設定される。この結果、初期値δsに対応した初期圧縮荷重fcs(予圧)が、転がり軸受74の各側面74c,74cに付与される。この初期状態では、図3に示されるように、転がり軸受74の各側面74c,74cと各カラー90,90の先端面91a,91aとの間には、転舵軸26の軸方向に一定の隙間Sp,Spを有している。ナット73や転がり軸受74に作用した、軸方向の力は、弾性体80,80によって減衰される。
[0040]
 ナット73や転がり軸受74に作用した軸方向の力が過大になると、図6に示されるように、転がり軸受74の側面74cが軸方向へ変位して、カラー90の外筒部91の先端面91bに当たる。転がり軸受74はこれ以上の変位を規制される。弾性体80は、これ以上の弾性変形をしない。この場合に、弾性体80は、外筒部91と内筒部92とによって径方向への膨出を規制されるので、径方向へ膨出して、転がり軸受74の側面74cとカラー90との間に挟み込まれることはない。
[0041]
 以上の説明をまとめると、次の通りである。
 図2及び図3に示されるように、車両用ステアリング装置10は、
 軸方向へ移動可能にハウジング50に収納される転舵軸26と、
 電動モータ43(図1参照)が発生した駆動力を前記転舵軸26に伝達するボールねじ70と、
 前記ボールねじ70の一部を成すナット73を前記ハウジング50に回転可能に支持する軸受74と、
 前記転舵軸26の軸方向へ変形する単位圧縮量当たりの圧縮荷重の比率が徐々に増大する荷重特性(第1荷重特性)を有しており、前記軸受74の側面74c,74c(転がり軸受74の外輪74bの側面74c,74c)を全周にわたって前記転舵軸26の軸方向に支持する、弾性材料から成る環状の弾性体80,80と、
 前記転舵軸26の軸方向における、前記弾性体80,80と前記ハウジング50との間に介在しており、径方向外側の外筒部91,91と、径方向内側の内筒部92,92と、前記外筒部91,91の一端と前記内筒部92,92の一端との間を閉鎖している環状の底部93,93とによって、前記軸受74の側面74c,74cに向いて開口した断面U字状の環状に構成されており、前記転舵軸26の軸方向へ圧縮された前記弾性体80,80の径方向への変形を、前記外筒部91,91と前記内筒部92,92とによって規制することが可能な構成の環状のカラー90,90と、を備えている。
[0042]
 弾性体80は、転舵軸26の軸方向へ変形する単位圧縮量当たりの圧縮荷重の比率(バネレート)が徐々に増大する、荷重特性を有している。このため、弾性体80,80は、ハウジング50に組み付けられた、いわゆるセットされた状態では、バネレートが徐々に増大する荷重特性を発揮することができる。カラー90,90の外筒部91,91と内筒部92,92は、転舵軸26の軸方向へ圧縮された弾性体80,80の、径方向への変形を規制することができる。圧縮された弾性体80,80は、外筒部91,91と内筒部92,92とによって、径方向への膨出を抑制されるので、バネレートが急増する荷重特性に、変化し得る。このように弾性体80,80は、材料の硬度を変えることなく、2段階のバネレートを、より確実に達成することができる。従って、ボールねじ70を有している車両用ステアリング装置10に採用される弾性体80,80の、必要な荷重特性を、より一層高めることができる。
[0043]
 しかも、弾性体80,80は、カラー90,90に組み込まれているので、軸受74の側面74c,74cに対して常に適切な姿勢を維持することができる。カラー90,90は、ハウジング50と弾性体80,80との間に介在しているので、ハウジング50内で転舵軸26の軸方向へ変位しない。このため、弾性体80,80によって、軸受74の側面74c,74cを転舵軸26の軸方向に適切に支持(いわゆる、フローティング支持)することができる。
[0044]
 また、断面U字状の環状に構成されているカラー90,90は、断面U字状の環状の溝94,94(凹部94,94)を有することになる。この溝94,94に弾性体80,80が嵌め込まれる。ハウジング50に弾性体80,80を組み付ける際に、弾性体80,80がカラー90,90から脱落する心配はない。
[0045]
 さらに、図3及び図4に示されるように、前記弾性体80,80は、前記底部93,93に一体に構成される基端部81,81(第1弾性部81,81)と、前記軸受74の側面74c,74cを前記転舵軸26の軸方向に支持する先端面82c,82cと、を有し、
 前記弾性体80,80の外周面82a,82aと前記外筒部91,91の内周面91a,91aとの間には第1の空隙S1,S1を有し、
 前記弾性体80,80の内周面82b,82bと前記内筒部92,92の外周面92a,92aとの間には第2の空隙S2,S2を有している。
[0046]
 このように、第1の空隙S1,S1及び第2の空隙S2,S2を有することにより、弾性体80,80は、転舵軸26の軸方向へ変形する単位圧縮量当たりの圧縮荷重の比率が徐々に増大する第1荷重特性と、前記比率が第1荷重特性に比べて急増する第2荷重特性との、いわゆる2段階のバネレートを有することができる。
[0047]
 第1荷重特性は、弾性体80,80が軸受74の側面74c,74cから圧縮荷重を受け始め、圧縮されて径方向へ膨出した膨出部分を、カラー90,90の外筒部91,91と内筒部92,92との少なくとも一方により規制されるまでの、荷重特性である。第2荷重特性は、弾性体80,80の前記膨出部分が、カラー90,90の外筒部91,91と内筒部92,92との少なくとも一方によって規制された後の、荷重特性である。
[0048]
 このため、ボールねじ70のミスアライメントや、ボールねじ70のナット73に作用する荷重の偏りに起因して、軸受74が軸方向へ変位することによる振動や作動音を、弾性体80の第1荷重特性によって低減することができる。
[0049]
 また、軸受74に対して軸方向に作用する衝撃荷重を、弾性体80,80の第2荷重特性によって減衰することができる。この結果、ボールねじ70や軸受74を衝撃荷重から保護することができる。加えて、ハウジング50に対する軸受74の、軸方向の位置を、第2荷重特性によって保持することができる。この結果、打音の発生を防止することができる。
[0050]
 このように、2段階のバネレートによって、通常運転時における軸受74の振動や作動音の低減と、転舵軸26に軸方向の過大な衝撃荷重を受けたときの軸受74の位置の保持性との、両立を図ることができる。
[0051]
 しかも、弾性体80,80が転舵軸26の軸方向へ圧縮されるにつれて、径方向へ膨出した膨出部分は、図7に示されるように、第1の空隙S1,S1や第2の空隙S2,S2が無くなるまで、膨出することができる。このため、膨出部分がカラー90,90から、はみ出して、軸受74の側面74c,74cとカラー90,90との間に挟み込まれることはない。
[0052]
 さらに、前記弾性体80,80の前記基端部81,81の内周面81a、81aは、前記内筒部92,92の外周面92a,92aに接している。このため、第1の空隙S1,S1及び第2の空隙S2,S2を有しているにもかかわらず、カラー90,90に対する弾性体80,80の径方向の位置を、正確に設定することができる。軸受74の側面74c,74cを全周にわたり、弾性体80,80によって正確に支持することができる。しかも、弾性体80,80の基端部81,81の内周面81a,81aのみが、内筒部92,92の外周面92a,92aに接するので、圧縮された弾性体80,80が径方向へ膨出する作用に、影響を及ぼすことはない。
[0053]
 さらに、前記弾性体80,80の外周面82a,82aと前記外筒部91,91の内周面91a,91aとの間の第1の間隔C1,C1は、前記弾性体80,80の内周面82b,82bと前記内筒部92,92の外周面92a,92aとの間の第2の間隔C2,C2よりも小さい。
[0054]
 上述のように、ボールねじ70のナット73に作用する荷重の偏りに起因して、軸受74には微小な傾きが発生し得る。この場合に、弾性体80は、径内方よりも径外方へ膨出する傾向になる。これに対し、第1の間隔C1,C1は、第2の間隔C2,C2よりも小さい。このため、弾性体80,80の径外方への膨出は、径内方への膨出よりも先に規制される。この結果、弾性体80,80を、概ね均等に効率よく圧縮変形させることができる。
[0055]
 さらに、前記弾性体80,80の断面形状は、前記基端部81,81から前記軸受74の側面74c,74cへ向かって先細りとなるテーパ状である。弾性体80,80の断面形状が先細りテーパ状であるから、バネレートが徐々に増大する第1荷重特性を、十分に発揮することができる。
[0056]
 さらに、前記底部93,93に対して、前記外筒部91,91の先端面91b,91bは、前記内筒部92,92の先端面92b,92bよりも、前記軸受74の側面74c,74cへ向かって突出している。このため、図7に示されるように、軸受74が軸方向へ変位する変位量を、大径である外筒部91,91の先端面91b,91bによって、正確に規定することができる。従って、弾性体80,80の圧縮量(潰れ量)を規制することができる。
[0057]
 なお、本発明による車両用ステアリング装置10は、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、実施例に限定されるものではない。
[0058]
 例えば、本発明では、車両用ステアリング装置10は、ステアリングホイール21と転舵軸26との間を機械的に分離し、ステアリングホイール21の操舵量に従って転舵用アクチュエータ(図示せず)が転舵用動力を発生し、この転舵用動力をボールねじ70によって転舵軸26に伝える方式の、いわゆる、ステア バイ ワイヤ(steer-by-wire)式ステアリング装置であってもよい。
[0059]
 また、軸受74は、転がり軸受に限定されるものではなく、例えば滑り軸受によって構成することができる。

産業上の利用可能性

[0060]
 本発明の車両用ステアリング装置10は、自動車に搭載するのに好適である。

符号の説明

[0061]
 10  車両用ステアリング装置
 26  転舵軸
 43  電動モータ
 50  ハウジング
 70  ボールねじ
 73  ナット
 74  軸受
 74c 軸受の側面
 80  弾性体
 81  第1弾性部(基端部)
 81a 第1弾性部の内周面
 82  第2弾性部
 82a 第2弾性部の外周面
 82b 第2弾性部の内周面
 82c 第2弾性部の先端面
 90  カラー
 91  外筒部
 91a 外筒部の内周面
 91b 外筒部の先端面
 92  内筒部
 92a 内筒部の外周面
 92b 内筒部の先端面
 93  底部
 94  溝(凹部)
 C1  第1の空隙の間隔
 C2  第2の空隙の間隔
 D12 第2弾性部の内径(弾性体の内径)
 D13 第2弾性部の外径(弾性体の外径)
 D21 内筒部の外径
 D22 外筒部の内径
 S1  第1の空隙
 S2  第2の空隙

請求の範囲

[請求項1]
 軸方向へ移動可能にハウジングに収納される転舵軸と、
 電動モータが発生した駆動力を前記転舵軸に伝達するボールねじと、
 前記ボールねじの一部を成すナットを前記ハウジングに回転可能に支持する軸受と、
 前記転舵軸の軸方向へ変形する単位圧縮量当たりの圧縮荷重の比率が徐々に増大する荷重特性を有しており、前記軸受の側面を全周にわたって前記転舵軸の軸方向に支持する、弾性材料から成る環状の弾性体と、
 前記転舵軸の軸方向における、前記弾性体と前記ハウジングとの間に介在しており、径方向外側の外筒部と、径方向内側の内筒部と、前記外筒部の一端と前記内筒部の一端との間を閉鎖している環状の底部とによって、前記軸受の側面に向いて開口した断面U字状の環状に構成されており、前記転舵軸の軸方向へ圧縮された前記弾性体の径方向への変形を、前記外筒部と前記内筒部とによって規制することが可能な構成の環状のカラーと、
を備えていることを特徴とする車両用ステアリング装置。
[請求項2]
 前記弾性体は、前記底部に一体に構成される基端部と、前記軸受の側面を前記転舵軸の軸方向に支持する先端面と、を有し、
 前記弾性体の外周面と前記外筒部の内周面との間には第1の空隙を有し、
 前記弾性体の内周面と前記内筒部の外周面との間には第2の空隙を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ステアリング装置。
[請求項3]
 前記弾性体の前記基端部の内周面は、前記内筒部の外周面に接している、
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用ステアリング装置。
[請求項4]
 前記弾性体の外周面と前記外筒部の内周面との間の第1の間隔は、前記弾性体の内周面と前記内筒部の外周面との間の第2の間隔よりも小さい、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用ステアリング装置。
[請求項5]
 前記弾性体の断面形状は、前記基端部から前記軸受の側面へ向かって先細りとなるテーパ状である、
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の車両用ステアリング装置。
[請求項6]
 前記外筒部の先端面は、前記内筒部の先端面よりも前記軸受の側面へ向かって突出している、
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用ステアリング装置。

補正された請求の範囲(条約第19条)
[ 2019年11月21日 ( 21.11.2019 )  国際事務局受理 ]

[1]
[補正後] 軸方向へ移動可能にハウジングに収納される転舵軸と、
 電動モータが発生した駆動力を前記転舵軸に伝達するボールねじと、
 前記ボールねじの一部を成すナットを前記ハウジングに回転可能に支持する軸受と、
 前記転舵軸の軸方向へ変形する単位圧縮量当たりの圧縮荷重の比率が徐々に増大する荷重特性を有しており、前記軸受の側面を全周にわたって前記転舵軸の軸方向に支持する、弾性材料から成る環状の弾性体と、
 前記転舵軸の軸方向における、前記弾性体と前記ハウジングとの間に介在しており、径方向外側の外筒部と、径方向内側の内筒部と、前記外筒部の一端と前記内筒部の一端との間を閉鎖している環状の底部とによって、前記軸受の側面に向いて開口した断面U字状の環状に構成されており、前記転舵軸の軸方向へ圧縮された前記弾性体の径方向への変形を、前記外筒部と前記内筒部とによって規制することが可能な構成の環状のカラーと、
を備え、
 前記弾性体は、前記底部に一体に構成される基端の中空円盤状の第1弾性部と、前記第1弾性部から前記軸受の前記側面へ向かって延びた環状の第2弾性部とから成り、
 前記第2弾性部の先端面は、前記軸受の前記側面を前記転舵軸の軸方向に支持し、
 前記第2弾性部の断面形状は、前記第1弾性部から前記軸受の前記側面へ向かって先細りとなるテーパ状であり、
 前記第1弾性部に対する前記第2弾性部の付け根の内径は、前記第1弾性部の内径よりも大きく、
 前記第2弾性部の外径は、前記第1弾性部の外径と同じであり、
 前記第1弾性部の内周面は、前記内筒部の外周面に接しており、
 前記第2弾性部の外周面と前記外筒部の内周面との間には、第1の空隙を有し、
 前記第2弾性部の内周面と前記内筒部の前記外周面との間には、第2の空隙を有している、
ことを特徴とする車両用ステアリング装置。
[2]
[削除]
[3]
[削除]
[4]
[補正後] 前記弾性体の外周面と前記外筒部の内周面との間の第1の間隔は、前記弾性体の内周面と前記内筒部の外周面との間の第2の間隔よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用ステアリング装置。
[5]
[削除]
[6]
[補正後] 前記外筒部の先端面は、前記内筒部の先端面よりも前記軸受の側面へ向かって突出している、
ことを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の車両用ステアリング装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]