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1. WO2004070868 - リグニン誘導体を用いた光電変換素子及び光電気化学電池

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[ JA ]
明細書

リグニン誘導体を用いた光電変換素子及び光電気化学電池

技術分野

本発明は、リグニンにフエノール化合物を導入して得られるリグニン誘導体の 利用に関し、特に、半導体薄膜電極、光電変換素子及びこれを用いた太陽電池へ の利用に関する。

背景技術

太陽電池は、光電エネルギー変換を目的とする光電池であり、現在、広く普及 している。最も広く使用されているものは、半導体結晶又はァモルファス板の表 面付近に P n接合を形成し、可視光線の照射によって接続する外部回路に pから nに向かって電流を発生するものである。ケィ素を代表としたこのような太陽電 池は、製造工程で多くのエネルギーを消費し、かつ有害重金属な化学物質を使用 するなど、エネルギー、環境保全上に問題を内包している。また、同時に製造コ ス卜も高かった。

近年、環境への負荷が小さい、製造コストが安い、高い変換効率があるなどの 長所があることから色素増感光電変換セルが注目されるようになった。 1 9 9 1 年にスイスのグレーツェル(Graetze l ) らが、多孔質な酸化チタン薄膜表面にル テニゥ厶ビピリジンカルボン酸色素を吸着させた電極を用いて、 1 0 . 0 %の光 電変換効率を達成している。この色棄増感太陽電池としては、ルテニウム等の貴 金属錯体、クロロフィル誘導体やボルフィリンの亜鉛錯体などが励起中心として 提案されている。

しかし、励起中心となるルテニウムなどの貴金属には資源的制約が伴うと考え られる。さらに、色素のリガンド構造の合成原料は主に石油等の化学資源由来物 質であり、今後、炭素資源的制約が伴うと考えられる。

また、シリコン系、有機金属錯体系の両太陽電池以外に有機物のみを用いた太 陽電池が提供されている。有機物、又は有機色素で増感された酸化物半導体電極 を含む太陽電池は、例えば、クマリン系色素を用いたものが発表されている ( Chen. Commun. , (6), 569-570 (2001) )。かかる有機色素増感型太陽電池の光 電変換効率は 6 . 0 %という高いものであった。有機色素太陽電池は性能以外で も、材料、環境負荷、コストの面から見ると非常に有利なものであるといえる。 しかし、他の太陽電池と同様に、合成原料は主に石油等の化学資源由来物質であ る。したがって、依然として炭素資源的制約が伴うことが予測される。

発明の開示

そこで、本発明では、炭素資源的制約を伴わない光電変換素子半導体薄膜電 極、光電変換素子及びこれを用いた太陽電池を提供することを目的とする。 本発明者らは、森林資源であるリグノセルロース中のリグニンに着目した。す なわち、このリグニンを所定方法によリフ: Eノール化合物で誘導体化して得られ るリダニン誘導体を用いて半導体薄膜電極を構成したところ、当該電極が光電変 換特性を示すことを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。

すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。

本発明によれば、以下の(a ) 〜(e ) からなる群から選択される 1種あるい は 2種以上のリグニン誘導体によつて増感された半導体膜を用いた光電変換素子 が提供される。

( a ) リグニン含有材料をフエノール化合物で溶媒和後鏺を添加し混合して 得られるリグニンのフエノール化合物の誘導体(以下、本明細書においてリグノ フエノール誘導体という。)

( b ) リグノフエノール誘導体に対して、ァシル基導入反応、カルボキシル基 導入反応、アミド基導入反応、架橋性基導入反応及びアルカリ処理反応から選択

される 1種の反応を行って得られる二次誘導体

( c ) リグノフエノール誘導体に対して、ァシル基導入反応、カルボキシル基 導入反応、アミド基導入反応、架橋性基導入反応及びアルカリ処理反応から選択 される 2種以上の反応を行って得られる高次誘導体

( d ) 前記二次誘導体のうち架橋性基導入反応により得られる二次誘導体が架 橋されている二次誘導体の架橋体

( e ) 前記高次誘導体のうち、架橋性基導入反応を経て得られる高次誘導体が 架橋されている高次誘導体の架橋体

この発明の好ましい態様は、前記半導体粒子は、リグノフエノール誘導体で増 感されている、上記光電変換素子である。さらに、本発明の好ましい形態は、前 記フエノール化合物は、 p—クレゾール、 2 , 6—キシレノール、 2, 4ーキシ レノール、 2—メ卜キシフエノール、 2, 6—ジメ卜キシフエノール、力テコー ル、レゾルシノール、ホモカテコール、ピロガロール、及びフロログルシノール から選択される 1種あるいは 2種以上である、上記いずれかの素子である。さら にまた好ましい形態は、前記フエノール化合物は、 P—クレゾ一ルである、上記 いずれかの素子である。さらにまた、本発明の好ましい態様は、前記半導体膜は、 前記リグニン誘導体とともに有機材料及びノ又は無機材料を含有する、上記いず れかに記載の素子である。

この発明の別の好ましい態様は、前記リグニン誘導体は、加熱、光照射、及び 放射線照射から選択される 1種あるいは 2種以上のエネルギー照射がなされてい る 上記いずれかに記纖の棄子である。さらに別の好ましい態様は、前記半導体 膜は、前記リグニン f導体とともに、セルロース系材料、リグニン系材料、及び ポリフ: Lノ一ル¾衬料を含有するリグノセルロース系材料由来の有機材料又はそ の誘導体を含有する、上記いずれかに記載の素子である。

また、本発明によれば、上記いずれかの光電変換素子を備える、光電気化学電 池も提供される。

さらにまた、本発明によれば、以下の(a ) 〜(e ) からなる群から選択され る 1種あるいは 2種以上のリグニン誘導体によって増感された半導体粒子が提供 される。

( a ) リグニン含有材料をフエノール化合物で溶媒和後、酸を添加し混合して 得られるリグニンのフエノール化合物の誘導体

( b ) リグノフヱノール誘導体に対して、ァシル基導入反応、カルボキシル基 導入反応、アミド基導入反応、架橋性基導入反応及びアル力リ処理反応から選択 される 1種の反応を行って得られる二次誘導体

( c ) リグノフエノール誘導体に対して、ァシル基導入反応、カルボキシル基 導入反応、アミド基導入反応、架橋性基導入反応及びアルカリ処理反応から選択 される 2種以上の反応を行って得られる高次誘導体

( d ) 前記二次誘導体のうち架橋性基導入反応により得られる二次誘導体が架 橋されている二次誘導体の架橋体

( e ) 前記高次誘導体のうち架橋性基導入反応を経て得られる高次誘導体が架 橋されている高次誘導体の架橋体

また、本発明によれば、光電変換素子の製造方法であって、

以下の(a ) 〜(e );

( a ) リグニン含有材料をフエノール化合物で溶媒和後、酸を添加し混合して リグニンのフエノール化合物誘導体であるリダノフエノ一ル誘導体を製造するェ 程

( b ) リグノフエノール誘導体に対して、ァシル基導入反応、カルボキシル基 導入反応、アミド基導入反応、架楊性基導入反応及びアルカリ処理反応から選択 される Ί種の反応を行って二次誘導体を製造する工程

( c ) リグノフエノール誘導体に対して、ァシル基導入反応、カルボキシル基 導入反応、アミド基導入反応、架橋性基導入反応及びアル力リ処理反応から選択 される 2種以上の反応を行って高次誘導体を製造する工程

( d ) 前記二次誘導体のうち架橋性基導入反応により得られる二次誘導体を架 橋して二次誘導体の架橋体を製造する工程

( e ) 前記高次誘導体のうち架橋性基導入反応を経て得られる高次誘導体を架 橋して高次誘導体の架橋体を製造する工程

からなる群から選択される 1種あるいは 2種以上のリグニン誘導体の製造工程と、 前記製造工程により製造したリグニン誘導体を用いて半導体膜を調製する工程

を備える、製造方法も提供される。

さらにまた本発明によれば、以下の(a ) 〜(e ) からなる群から選択される 1種あるいは 2種以上のリグニン誘導体である、光増感剤が提供される。

( a ) リグニン含有材料をフエノール化合物で溶媒和後、酸を添加し混合して 得られるリグニンのフエノール化合物の誘導体

( b ) リグノフエノール誘導体に対して、ァシル基導入反応、カルボキシル基 導入反応、アミド基導入反応、架橋性基導入反応及びアルカリ処理反応から選択 される 1種の反応を行って得られる二次誘導体

( c ) リグノフエノール誘導体に対して、ァシル基導入反応、カルボキシル基 導入反応、アミド基導入反応、架橋性基導入反応及びアルカリ処理反応から選択 される 2種以上の反応を行つて得られる高次誘導体

( d ) 前記二次誘導体のうち架橋性基導入反応により得られる二次誘導体が架 撟されている二次誘導体の架橋体

( e ) 前記高次誘導体のうち、桀橋性基導入反応を経て得られる高次誘導体が 架橋されて L、る高次誘導体の桀檑'体

本発明の光電変換素子及び光電気化学電池によれば、持籙的に再生産可能な森 林資源であるリグニン含有材料由来のリグニン誘導体で増感された半導体を備え るため、石油などの化石系炭素資源の枯渴の危険性を回避することができる。ま た、森林資源の新たな用途を提供することにより、森林資源の循環利用を促進す ることができる。

図面の簡単な説明

図 1は、リグノフエノール誘導体の製造プロセスの一例を示す図である。 図 2は、ァリールプロパンユニットを有する天然リグニンに対するフエノール 化合物を用いる相分離処理によリ構造変換してリグノフエノール誘導体が得られ ることを示す図である。なお、本図に示されるのは、フエノール化合物として P ークレゾールを用いた構造変換例である。

図 3は、フヱノール誘導体中に形成されうる、オル卜位結合ユニットとパラ位 結合ュニッ卜とをそれぞれ示す図である。

図 4は、オル卜位結合ュニッ卜を有するリグノフエノール誘導体をアル力リ処 理した場合の構造変換例を示す図である。

図 5は、薄膜電極の一例を示す図である。

図 6は、光電変換素子と光電気化学電池の一例を示す図である。

図 7は、リグノフエノール誘導体を得るときに用いたフエノール化合物の種類 により架橋体構造が異なることを示す図である。

発明を実施するための最良の形態

本発明の光電変換素子及び光電気化学電池は、森林資源由来のリグニン含有材 料を原料とするリグニン誘導体によリ増感された半導体薄膜電極を備えることを 特徽としている β

以下、この半導钵薄膜電極について説明し、さらに本素子及び電池について説 明する。

本発明の半導体薄膜電極は、所定のリグニン誘導体によリ増感されている半導 体層を備えている。

(リグニン誘導体)

本発明におけるリグニン誘導体とは、( a )リグニン含有材料をフエノ一ル化合 物で溶媒和後、酸を添加し混合して得られるリグニンのフェノール化合物の誘導 体、(b ) リグノフエノール誘導体に対して、ァシル基導入反応、カルボキシル基 導入反応、アミド基導入反応、架橋性基導入反応及びアルカリ処理反応から選択 される〗種の反応を行って得られる二次誘導体、(c )リグノフエノール誘導体に 対して、ァシル基導入反応、力ルポキシル基導入反応、アミド基導入反応、架橋 性基導入反応及びアル力リ処理反応から選択される 2種以上の反応を行って得ら れる高次誘導体、(d )前記二次誘導体のうち架橋性基導入反応により得られる二 次誘導体が架橋されている二次誘導体の架橋体、(e )前記高次誘導体のうち、架 撟性基導入反応を経て得られる高次誘導体が架橋されている高次誘導体の架橋体 からなる群をいい、これから 1種あるいは 2種以上を用いることができる。

(リグノフエノール誘導体)

本発明において用いるリグニン誘導体の 1種であるリグノフエノール誘導体は、 リダニン含有材料をフエノール化合物で溶媒和後、酸を添加し混合して得られる リグニンのフエノール化合物による誘導体である。この反応過程によりリグニン のァリールプロパンュニッ卜のベンジル位 (側鎖 C 1位、以下、単に C 1位とい う。)にフエノール化合物がグラフ卜(導入)されたリグニン誘導体を得ることが でさる。フエノール化合物は、そのフエノール性水酸基に対してオルト位あるい はパラ位にて前記 C 1位の炭素原子に結合する。この結果、 1, 1—ビス(ァリ ール)プロパンユニットがリグニン中に形成される。この反応において、フエノ ール化合物は、前記 C 1位に対して還択的に導入されるため出発原料であるリ グニン含有材料における C 1位における様々な結合を開放し、リグニンマ卜リッ クスの多様性を低減し、また、低分子還化することができる。さらに、この結栗、 従来のリダニンにはなかつた各種溶媒への溶解性、熱流動性、熱可塑性など各種 の特性を発現することが既に知られている。

なお、ここで、フエノール化合物で溶媒和するとは、液体のフエノール化合物 にリグニン含有材料を浸漬する等して溶媒和する他、液体あるいは固体のフエノ ール化合物を当該フエノール化合物が溶解する溶媒に溶解させたものをリグニン 含有材料に適用後、溶媒を留去することでリグニン含有材料にフエノール化合物 を収着することによつても達成することができる。

本発明者らはこれまでの研究により、濃酸による炭水化物の膨潤に基づく組織 構造の破壊と、フエノール化合物によるリダニンの溶媒和とを組み合わせてリグ ニンの不活性化を抑制しつつ、リグノセルロース系材料を炭水化物とリグノフエ ノール誘導体とに分離する方法を開発している (特開平 2— 2 3 3 7 0 1号)。こ の方法で得られたリグノフエノール誘導体の活用法としては、例えば、セルロー ス系ファイバ一等の成形材料に適用し成形体を作製することが報告されている

(特開平 9一 2 7 8 9 0 4号)。かかるリグノフエノール誘導体は、 1 —ビス

(ァリール)

プロパンを高頻度構成単位として有するリグニン系ポリマーであって、高粘結 性を潜在的に有していることがわかっている(特開平 9一 2 7 8 9 0 4号)。 さらに、かかるリグノフエノール誘導体は、メチロール化することにより架橋 性を付与でき、リニアあるいはネッ卜ワーク状の架橋構造を構築できると同時に、 アルカリ処理によって、再び低分子化して溶媒中に溶解されることも、本発明者 らにより見出されている(特開 2 0 0 1 - 2 6 1 8 3 9号公報)。

また、これらの他、リグノフエノール誘導体に関するより一般的な記載及びそ の製造プロセスについては、国際公開 W O 9 9 / 1 4 2 2 3号公報、特開 2 0 0 1 - 6 4 4 9 4号公報特開 2 0 0 1 — 2 6 1 8 3 9号公報、特關 2 0 0 Ί — Ί

3 1 2 0 1号^報、特鬪 2 0 0 1 — 3 4 2 3 3号公報、特闘 2 0 0 2— Ί 0 5 2

4 0号公報において記載されている(これらの特許文献に記載の内容は、全て引 用により本明細書中に取り込まれるものとする)。

このプロセスによりリグノセルロース系材料からリダノフエノ一ル誘導体を得 るシステムにおける構造変換プロセスの一例を図 1に示す。

この構造変換プロセスは、図〗に示すように、リグノセルロース系材料を予め フエノール化合物で溶媒和しておいた上で、当該リグノセルロース系材料を酸と 接触させることにより、リグニンのァリールプロパンュニッ卜のリグニンの複合 状態を緩和させ、同時に、天然リグニンのァリールプロパンュニッ卜の C 1位(ベ ンジル位)に選択的に前記フエノール誘導体をグラフティングさせ、リグノフエ ノール誘導体を生成させ、同時にセルロースとリグノフエノール誘導体とに分離 できる。このプロセスにおける構造変換の一例を、図 2に示す。

リグノフエノール誘導体は、それ自体、リグノセルロース系材料などのリグ二 ン含有材料から反応、分離して得られるリグニン由来のポリマ一の混合物である。 このため、得られるポリマーにおける導入フエノール誘導体の量や分子量は、原 料となるリグニン含有材料のリグニン構造および反応条件によリ変動する。

(リグニン含有材料)

本発明におけるリグニン含有材料には、天然リグニンを含有するリグノセル口 ース系材料を含む。リグノセルロース系材料は、木質化した材料、主として木材 である各種材料、例えば、木粉、チップの他、廃材、端材、古紙などの木材資源 に付随する農産廃棄物や工業廃棄物を挙げることができる。また用いる木材の種 類としては、針葉樹、広葉樹など任意の種類のものを使用するこができる。さら に、各種草本植物、それに関連する農産廃棄物や工業廃棄物なども使用できる。 また、リグニン含有材料としては、天然リグニンを含有する材料のみならず、 リグノセルロース材料をパルビング処理後に得られるいわゆる黒液も利用するこ とができる。

(フエノール化合物)

フエノール化合鞠としては、 1価のフエノールイ匕合物、 2価のフエノール化合 物、または 3価のフエノール化合物などを用いることができる。

1価のフエノール化合物の具体例としては、 1以上の置換基を有していてもよ いフエノール、 1以上の置換基を有していてもよいナフ! ^一ル、 1以上の置換基 を有していてもよいアントロール、 1以上の置換基を有していてもよいアン卜口 キノンオールなどが挙げられる。

2価のフエノール化合物の具体例としては、 1以上の置換基を有していてもよ ぃカテコール、 1以上の置換基を有していてもよいレゾルシノール、 1以上の置 換基を有していてもよいヒドロキノンなどが挙げられる。

3価のフエノール化合物の具体例としては、 1以上の置換基を有していてもよ いピロガロールなどが挙げられる。

本発明においては 1価のフエノール化合物、 2価のフエノール化合物及び 3価 のフエノール化合物のうち、〗種あるいは 2種以上を用いることができるが、好 ましくは 1価のフエノールを用いる。

1価から 3価のフエノール化合物が有していてもよい置換基の種類は特に限定 されず、任意の置換基を有していてもよいが、好ましくは、電子吸引性の基(八 ロゲン原子など)以外の基であり、例えば、炭素数が 1 ~ 4、好ましくは炭素数 が 1〜 3の低級アルキル基含有置換基である。低級アルキル基含有置換基として は、例えば、低級アルキル基(メチル基、ェチル基、プロピル基など)、低級アル コキシ基(メ卜キシ基、ェ卜キシ基、プロポキシ基など)である。また、ァリー ル基(フエニル基など)の芳香族系の置換基を有していてもよい。また、水酸基 含有置換基であってもよい。

これらのフエノール化合物が、そのフエノール性水酸基に対してオル卜位ある いはパラ位の炭素原子においてリグニンのァリールプロパンュニッ卜の C 1位の 炭素に結合することにより、 1,〗一ビス(ァリール)プロパンユニットが形成 されることになる。したがって、少なくとも Ίつの導入サイ卜を確保するには、 才ル卜位及びパラ位のうち、少なくともひとつの位置に置換基を有していないこ とが好ましい。

フエノール化合物のフエノール性水酸基のオル卜位炭素原子が前記 C 1位に結 合して形成されたュニッ卜をオル卜位結合ュニッ卜といい、フエノール化合物の

フエノール性水酸基のパラ位炭素原子が前記 C 1位に結合して形成されたュニッ 卜をパラ位結合ユニットという。図 3に、オル卜位結合ユニット及びパラ位結合 ユニットの一例として、フエノール化合物として、それぞれ p—クレゾールと、 2, 6 —ジメチルフエノールを用いて形成されるュニッ卜を示す。

以上のことから、本発明では、無置換フエノール誘導体の他、少なくとも一つ の無置換のオル卜位あるいはパラ位を有する各種置換形態のフエノール誘導体の 1種あるいは 2種以上を適宜選択して用いることができる。

オル卜位結合ユニットとパラ位結合ユニットとは、例えば、後述するアルカリ 処理工程において異なる機能を発現する。オル卜位結合ユニットは、緩和なアル 力リ処理によリ導入されたフエノール化合物におけるフエノール性水酸基を消失 させるとともにァリールクマラン構造を当該ュニッ卜において生成し、強いアル 力リ処理によリァリール基移動に伴って分子形態が変動する。いずれにおいても、 オル卜位結合ュニッ卜は、アル力リ処理による効率的なリグノフエノール誘導体 の低分子化に寄与する。

一方、パラ位結合ユニットは、アルカリ処理によリアリールクマラン構造やそ の後の分子形態変動を生じず、当該ュニッ卜咅 P位における低分子化には寄与しな い。したがって、アルカリ処理耐性を付与する機能を有するといえる。

また、リグノフエノール誘導体において、使用するフエノール化合物の種類を 選択することにより、得られるリグノフエノール誘導体への後段の二次誘導体化 工程での架橋性官能基の導入頻度を調節し、結果として架橋性体(プレボリマー) の桀撟反応性を制御することができる。

後述するが、架橋性基の導入部位は、フエノール性水醮基に対して才ル卜及び パラ位である。また、導入フエノール化合物のリグニンのフエニルプロパン単位 への導入サイ卜もフエノール性水酸基に対してオル卜位あるいはパラ位である。 したがって、導入フエノール化合物における、フエノール性水酸基に対するオル 卜位及びパラ位(最大 3サイ卜)への置換基の導入態様により、導入フエノール 化合物への架橋性官能基の導入サイ卜や導入量を制御し、ひいてはリグニン母体 側への導入量も制御できる。例えば、導入フエノール誘導体の置換態様とリグ二 ンへの結合部位及び架橋性基の導入部位は、以下の表のとおりとなる。

【表 1】


オルト位結合ュニット:フヱノール誘導体のフヱノール性水酸基に対してオルト位の炭素原子がリグニンの フエニルプロパンュニッ卜の側鎖 C 1位の炭素原子に結合した、 1 , 1一ビス(ァリール)プロパンュニット パラ位結合ュニット:フエノール誘導体のフエノール性水酸基に対してパラ位の炭素原子がリグニンのフエ ニルプロパンュニッ卜の側鎖 C 1位の炭素原子に結合した、 1, 1一ビス(ァリール)プロパンュニット

このように、反応性の異なる架橋性基導入部位を有するフエノ一ル化合物や、 導入部位数がないか、あるいは異なるフエノール化合物を 1種あるいは 2種以上 組み合わせてリグニンに導入することによリ、後で桀湯性基の導入時に、架橋性 基の導入部位や数を制御することができ、結果として、架橋性体を桀撟して得ら れる架橋体の架橋密度も制御することができる。

また、オル卜位結合ユニットを有するリグノフエノール誘導体を得るには、少 なくとも一つのオル卜位(好ましくは全てのオル卜位)に置換基を有していない

フエノール化合物を用いる。また、少なくとも一つのオル卜位(2位あるいは 6 位)が置換基を有さず、パラ位(4位)に置換基を有するフエノール化合物(典 型的には、 2, 4位置換 1価フヱノール誘導体)が好ましい。最も好ましくは、 全てのオル卜位が置換基を有さず、パラ位に置換基を有するフヱノール化合物 (典 型的には、 4位置換 1価フエノール化合物)である。したがって、 4位置換フエ ノール化合物及び 2, 4位置換フエノール化合物を 1種あるいは 2種以上組み合 わせて用いることができる。

パラ位結合ュニッ卜を有するリグノフエノール誘導体を得るには、パラ位に置 換基を有していないフエノール化合物(典型的には、 2位(あるいは 6位)置換 1価フエノール化合物)が好ましく、より好ましくは、同時に、オル卜位(好ま しくは、全てのオル卜位)に置換基を有するフエノール化合物(典型的には 2, 6位置換 1価フエノール化合物)を用いる。すなわち、 2位 (あるいは 6位) 置 換フエノール化合物及び 2、 6位置換フェノールのうち 1種あるいは 2種以上を 組み合わせて用いることが好ましい。

フエノール誘導体の好ましい具体例としては、 P—クレゾール、 2, 6—ジメ チルフエノール、 2, 4ージメチルフエノール、 2—メ卜キシフエノール (Gua i aco l )、 2, 6—ジメ卜キシフエノール、カテコール、レゾルシノール、ホ モカテコール、ピロガロール及びフロログルシノールなどが挙げられる。 p —ク レゾールを用いることにより、高い導入効率を得ることができる。

(酸)

リグニン含有材料と接触させる酸としては、特に限定しないで、リグノフエノ ール読導体を生成しうる範囲で各種無機酸や有機酸を使用することができる。し たがって、硫酸、リン酸、塩酸などの無機酸の他、 p—卜ルエンスル木ン酸、卜 リフル才ロ酢酸、卜リクロロ酢酸、ギ酸などを使用することができる。リグニン 含有材料としてリグノセルロース系材料を使用する場合には、セルロースを膨潤 させる作用を有していることが好ましい。例えば、 6 5重量%以上の硫酸(好ま

しくは、 7 2重量%の硫酸)、 8 5重量%以上のリン酸、 3 8重量%以上の塩酸、 p—卜ルエンスルホン酸、卜リフル才ロ酢酸、卜リクロロ酢酸、ギ酸などを挙げ ることができる。好ましい酸は、 8 5重量%以上(好ましくは 9 5重量%以上) のリン酸、卜リフルォロ酢酸又はギ酸である。

リグニン含有材料中のリグニンを、リグノフエノール誘導体に変換し、分離す る方法としては各種方法が採用できる。

例えば、図 1に示すように、リグニン含有材料に、液体状のフヱノール誘導体 (上記で説明したもの、例えば、 p—クレゾール) を浸透させ、リグニンをフエ ノール誘導体により溶媒和させ、次に、リグノセルロース系材料に酸(上記で説 明したもの、例えば、 7 2 %硫酸)を添加し混合して、セルロース成分を溶解す る。この方法によると、リグニンが低分子化され、同時にその基本構成単位の C 1位にフエノ一ル化合物が導入されたリグノフエノール誘導体がフェノール化合 物相に生成される。このフエノール化合物相から、リグノフエノール誘導体が抽 出される。リグノフエノール誘導体は、リグニン中のベンジルァリールエーテル 結合が開裂して低分子化されたリグニンの低分子化体の集合体として得られる。 図 2は、ァリールプロパンュニッ卜を有する天然リグニンに対して相分離処理 を行うことにより、本発明におけるリダノフエノール誘導体が得られることを示 している。

フエノール化合物相からのリグノフエノール誘導体の抽出は、例えば、次の方 法で行うことができる。すなわち、フエノール化合物相を、大過剰のェチルェ一 テルに加えて得た沈殿物を集めて、アセトンに溶解する。アセトン不溶部を違心 分離にょリ除去し、アセトン可溶部を濃縮する。このアセトン可溶部を、大過剰 のェチルエーテルに滴下し、沈殿区分を集める。この沈殿区分から溶媒留去し、 リグノフエノ一ル誘導体を得る。なお、粗リグノフエノール誘導体は、フエノー ル化合物相ゃァセ卜ン可溶区分を単に減圧蒸留により除去することによつて得る ことができる。

また、リグニン含有材料に、固体状あるいは液体状のフエノール化合物を溶解 した溶媒(例えば、エタノールあるいはアセトン)を浸透させた後、溶媒を留去 (フエノール誘導体の収着)した場合も、先の方法と同様、リグノフエノール誘 導体が生成される。この方法においては、生成したリグノフエノール誘導体は、 液体フエノール化合物にて抽出分離することができる。あるいは、全反応液を過 剰の水中に投入し、不溶区分を遠心分離にて集め、脱酸後、乾燥する。この乾燥 物にァセトンあるいはアルコールを加えてリグノフエノール誘導体を抽出する。 さらに、この可溶区分を第 1の方法と同様に、過剰のェチルエーテル等に滴下し て、リグノフエノール誘導体を不溶区分として得ることもできる。以上、リグノ フエノール誘導体の調製方法の具体例を説明したが、これらに限定されるわけで はなく、これらに適宜改良を加えた方法で調製することもできる。

以下に、リグノセルロース系材料から得られるリダノフエノール誘導体の有す る全体的、一般的性質を挙げる。ただし、本発明におけるリグノフエノール誘導 体を、以下の性質を有するものに限定する趣旨ではない。

( 1 ) 重量平均分子量が 2 0 0 0 - 2 0 0 0 0程度である。

( 2 ) 分子内に共役系をほとんど有さずその色調は極めて淡色である。典型的に は淡いピンク系白色粉末である。

( 3 ) 針葉樹由来で約 1 7 0 °C、広葉樹由来で約 1 3 0 °Cに固一液相転移点を有 する。

( 4 ) メタノール、エタノール、アセトン、ジォキサン、ピリジン、テ卜ラヒド 口フラン、ジメチルホルムアミドなどに容易に溶解する。

なお、リグノフエノ一ル誘導体においては、 C 1位へのフエノール :合物の導 入形態は、そのフエノール性水酸基を介して導入されているものもあることが知 られている。また、得られるリグノフェノール誘導体においては、通常、フエノ ール化合物がグラフ卜されていないァリールプロパンュニッ卜も残存している。 (二次誘導体)

また、本発明において用いるリグニン誘導体は、このリグノフエノール誘導体 に対してさらに化学的な修飾を行って得られる二次誘導体を含んでいる。

二次誘導体とは、リグノフエノール誘導体に対して、ァシル基導入反応、カル ボキシル基導入反応、アミド基導入反応、架橋性基導入反応及びアルカリ処理反 応から選択される 1種の反応を行って得られる誘導体である。

ここで、ァシル基導入反応とは、ァシル基 ( R C O - ) をリグノフエノール誘 導体中の水酸基に導入し、結果として、フエノールの O H基の酸素原子に、ァシ ル基が結合して、 - 0 - C O R基が芳香環に形成される反応である。具体的には、 無水酢酸などのァシル化剤との反応により水酸基に対してァシル基を導入する。 結果として、水酸基を保護することにもなる。ァシル基(ァセチル基、プロピオ ニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾィル基、トルオイル基、好ましくはァ セチル基)を導入することによって行うことが好ましい。具体的には、無水酢酸 などと接触させることにより行う。当該ァシル化処理により、水酸基が保護され る。このため、水酸基による特性発現が抑制される。たとえば、水素結合が低減 されて、会合性を低下させることができる場合がある。このァシル基導入反応は、 一般的なァシル基導入反応条件をリグノフエノール誘導体に適宜適用して実施す ることができる。なお、ァセチルクロリドなどのカルボン酸モノ八ライドを用い てもァシル基を導入することができる。

カルボキシル基導入反応とは、酸ジクロリドなどの酸ジ (あるいはそれ以上の) ハライドを用いてフエノール性水醴基をエステル化すると同時にカルボキシル基 を導入する反応である。例えば、アジピン酸ジクロリドゃマレイン酸ジクロリド、 テレフタル酸ジクロリドなどを用いることができる。これらの II八ロゲン化物を 用いたエステル化反応については、当業者において周知であリ、一般的な反応条 件をリダノフエノール誘導体についても適宜適用して実施できる。

アミド基導入反応とは、アミド基(― C O N H R ) をリグノフエノール誘導体 中の水酸基に導入する反応である。アミド基の Rとしては、炭素数 1〜5程度の 低級直鎖あるいは分岐アルキル基あるいは、炭素数 6〜 9程度の置換基を有して いてもよいシクロアルキル基、アルキルァリール基、ァラルキル基などを挙げる ことができる。アミド基の導入反応は、リグノフエノール誘導体中の二重結合あ るいは前記カルボキシル基導入反応後に当該カルボキシル基に対して行う。これ らの部分に対するアミド基導入反応については、従来公知の各種試薬及び条件を 適宜選択して用いることができる。

架橋性基導入反応は、リグノフエノール誘導体を、アルカリ条件下で架橋性基 形成化合物と反応させて、リグノフエノ一ル誘導体中のフエノール性水酸基の才 ル卜位及び又はパラ位に架橋性基を導入することにより実施することができる。 すなわち、本二次誘導体は、用いるリグノフエノール誘導体のフエノール性水 酸基を解離しうる状態下において、リダノフエノール誘導体に架橋性基形成化合 物を混合して反応させることによって得られる。リグノフエノール誘導体のフェ ノール性水酸基が解離しうる状態は、通常、適当なアルカリ溶液中において形成 される。使用するアルカリの種類、濃度及び溶媒はリグノフエノール誘導体のフ ヱノール性水酸基が解離するものであれば、特に限定されない。例えば、 0 . 1 Nの水酸化ナ卜リウ厶水溶液を使用できる。

このような条件下において、架橋性基はフエノール性水酸基のオル卜位又はパ ラ位に導入されるので、用いたフエノール化合物の種類や組み合わせによって、 架橋性基の導入位置がおおよそ決定される。すなわち、オル卜位及びパラ位にお いて 2置換されている場合には、導入フエノール核には架橋性基は導入されず、 リダニン母钵側のフェノール性芳香核に導入されることになる。母体側のフエノ ール性芳香核は主としてリグノフエノール誘導体のポリマー末端に存在するた め、主としてポリマー末端に架橋性基が導入されたプレポリマーが得られる。 また、オル卜位及びパラ位において 1置換以下の場合には、導入フエノール核 とリグニン母体のフエノール性芳香核に架橋性基が導入されることになる。した がって、ポリマー鎖の端末の他、その長さにわたって架橋性基が導入され、多官 能性のプレボリマーが得られる。

リダノフエノール誘導体に導入する架橋性基の種類は特に限定されない。リグ ニン母体側の芳香核、あるいは、導入フエノール化合物の芳香核に導入可能なも のであればよい。架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシェチル基、 ヒドロキシプロピル基、 1ーヒドロキシバレルアルデヒド基等を挙げることがで きる。架橋性基形成化合物としては、求核性化合物であって、結合後に架橋性基 を形成するかあるいは保持する化合物である。たとえば、ホル厶アルデヒドゃァ セ卜アルデヒド、プロピオンアルデヒド、ダルタルアルデヒド類などを挙げるこ とができる。導入効率等を考慮すると、ホルムアルデヒドを用いることが好まし い。

リグノフエノール誘導体と架橋性基形成化合物とを混合するに際して、架橋性 基を効率よく導入する観点からは、架橋性基形成化合物をリダノフエノール誘導 体中のリグニンのァリールプロパン単位の芳香核及び/又は導入フエノ一ル核 φ

1モル倍以上添加することが好ましい。より好ましくは、 1 0モル倍以上であり、 さらに好ましくは 2 0モル倍以上である。

次に、アル力リ液中にリグノフヱノール誘導体と架橋性基形成化合物が存在す る状態で、必要によりこの液を加熱することにより、架橋性基がフエノール核に 導入される。加熱条件は、架橋性基が導入される限り、特に限定されないが、 4 0〜 1 0 0 °Cが好ましい。 4 0 °C未満では架橋性基形成化合物の反応率が非常に 低く好ましくなく、 1 0 0 °Cょリ高いと架橋性基形成化合物自身の反応などリグ 二ンへの架橋性基導入以^の副反応が活髡化するので好ましくない。ょリ好まし くは 5 0〜8 0 °Cであリ、例えば約 6 0 °Cが特に好ましい。反応は、反応液を 冷却等することによリ停止し、適当な濃度の塩酸等により醸性化(p H 2程度) し、洗浄、透析などにより酸、未反応の架橋性基形成化合物を除去する。透析後 凍結乾燥などにより試料を回収する。必要であれば、五酸化二リン上で減圧乾燥 する。

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こうして得られる架撟性の二次誘導体は、リダノフエノール誘導体中のフエノ —ル性水酸基に対するオル卜位およびまたはパラ位に架橋性基を有するように なる。

本二次誘導体の重量平均分子量は特に限定されないが、通常は 2 0 0 0〜2 0 0 0 0、好ましくは 2 0 0 0〜1 0 0 0 0程度である。また、架橋性基の導入量 は通常、 0 . 0 1 ~ 1 . 5モル/ C 9単位程度であることが多い。

(アルカリ処理)

アルカリ処理反応は、リグノフエノール誘導体を、アルカリと接触させること により行う。好ましくは加熱する。例えば、導入したフエノール化合物のフエノ ール性水酸基のオル卜位が C 1位に導入されたオル卜位結合ュニッ卜を有するリ ダノフェノール誘導体においては、アルカリ処理にょリ、図 4に示すように、導 入フエノール化合物のフエノキシドイオンによる C 2位炭素の攻撃が生じる。一 旦この反応が生じれば、 C 2ァリールエーテル結合が開裂し、例えば、緩和なァ ルカリ処理では、図 4に示すように、リグノフエノール誘導体がオルト位結合ュ ニットを有する場合、当該導入フエノール誘導体の当該フエノール性水酸基が開 裂し、生じたフエノキシドイオンが、 C 2ァリールエーテル結合を構成する C 2 位を分子内求核反応的にアタックして、当該エーテル結合を開裂させて低分子化 することができる。

C 2ァリ一ルエーテル結合の開裂により、リグニンの母核にフエノール性水酸 基が生成されることになる(図 4右側、点線円内参照)。また、当該分子内求核反 応によリ、導入フエノール核が、それが導入されたフエニルプロパン単位とクマ ラン骨格を形成した構造(ァリールクマラン単位)が'発現される。

これらの結果、フエノール誘導体側にあったフエノール性水酸基(図 4左側、 点線円内)が、リグニン母核側(図 4右側、点線円内)に移動されたことになる。 このような変化により、この二次誘導体は、リグノフエノール誘導体とは異なる 光吸収特性を備えることができるようになる。

当該アルカリ処理は、具体的には、リグノフェノール誘導体の架橋体をアル力 リ溶液に溶解し、一定時間反応させ、必要であれば、加熱することにより行う。 この処理に用いることのできるアルカリ溶液は、リグノフエノール誘導体中の導 入フエノ一ル誘導体のフエノール性水酸基を解離させることができるものであれ ばよく、特に、アルカリの種類及び濃度、溶媒の種類等は限定されない。アル力 リ下において前記フェノール性水酸基の解離が生じれば、隣接基関与効果によリ、 クマラン構造が形成されるからである。例えば、 p—クレゾールを導入したリグ ノフエノール誘導体では、水酸化ナトリウム溶液を用いることができる。例えば、 アルカリ溶液のアルカリ濃度範囲は 0 . 5〜2 Nとし、処理時間は〗〜 5時間程 度とすることができる。また、アルカリ溶液中のリグノフエノール誘導体は、加 熱されることにより、容易にクマラン構造を発現する。加熱に際しての、温度、 圧力等の条件は、特に限定することなく設定することができる。例えば、アル力 リ溶液を 1 0 0 °C以上 (例えば、 1 4 0 °C程度) に加熱することによりリグノフ ェノール誘導体の架橋体の低分子化を達成することができる。さらに、アルカリ 溶液を加圧下においてその沸点以上に加熱してリダノフエノール誘導体の架橋体 の低分子化を行ってもよい。

なお、同じアルカリ溶液で同濃度においては、加熱温度が 1 2 0 °C〜1 4 0 °C の範囲では、加熱温度が高い程、 C 2—ァリールエーテル結合の開裂による低分 子化が促進されることがわかっている。また、該温度範囲で、加熱温度が高い程、 リグニン母体由乘の芳香核由来のフエノール性水酸基が増加し、導入されたフエ ノール誘導体由来のフエノール性水醆基が減少することがわかっている。したが つて、低分子化の程度及びフヱノール性水酸基部位の C 1位導入フ Iノール誘導 体側からリグニン母体のフエノール核への変換の程度を、反応温度によリ調整す ることができる。すなわち、低分子化が促進され、あるいは、より多くのフエノ ール性水酸基部位が C 1位導入フエノール誘導体側からリグニン母体へ変換され たァリールクマラン体を得るには 8 0〜1 4 0 °C程度の反応温度が好ましい。

オル卜位結合ュニッ卜における C 1 フエノール核の隣接基関与による C 2—ァ リールエーテルの開裂は、上述したようにァリールクマラン構造の形成を伴うが、 リグノフエノール誘導体の架橋体の低分子化は、必ずしもァリールクラマンが効 率よく生成する条件下(1 4 0 °C付近)で行う必要はなく、材料によって、ある いは目的によってより高い温度(例えば 1 7 0 °C付近)で行うこともできる。こ の場合、一旦生成したクラマン環は開裂し、導入フエノール誘導体側にフエノー ル性水酸基が再生され、さらに、ァリール基移動に伴う分子形態変動により共役 系の新たな発現によりリグノフエノール誘導体や前記したァリールクマラン構造 を有する二次誘導体とは異なる光吸収特性を発現させることができる。

以上のことから、アルカリ処理における加熱温度は、特に限定されないが、必 要に応じて 8 0 °C以上 2 0 0 °C以下で行うことができる。 8 0 °Cを大きく下回る と、反応が十分に進行せず、 2 0 0 °Cを大きく越えると好ましくない副反応が派 生しやすくなるからである。

クラマン構造の形成とそれに伴う低分子化のための処理の好ましい一例として は、 0 . 5 Nの水酸化ナトリウム水溶液をアルカリ溶液として用い、オートクレ ーブ内 1 4 0 °Cで加熱時間 6 0分という条件を挙げることができる。特に、この 処理条件は、 p—クレゾール又は 2, 4—ジメチルフエノールで誘導体化したリ グノフエノール誘導体に好ましく用いられる。また、新たな共役系の発現を伴う ようなアルカリ処理の一例としては、 0 . 5 Nの水酸化ナ卜リウ厶水溶液をアル カリ溶液として用い、オートクレープ内 Ί 7 0 °Cで加熱時閫 2 0分〜 6 0分とい う条件を攀げることができる。

(高次誘導体)

これらの誘導体化処理により各種二次誘導体を得ることができる。さらに、こ れらの二次誘導体に対して、さらに上記した各処理(好ましくは種類の異なる処 理)を行うことにより、高次誘導体化することができる。

この場合、施された処理によって発生した構造的特徴を組み合わせて保持する 高次誘導体を得ることができる。例えば、アルカリ処理と架橋性基導入反応、ァ ルカリ処理とァシル基導入反応などの水酸基保護処理、架橋性基導入反応とァシ ル基導入反応などの水酸基保護処理とを組み合わせることができる。

(架橋体)

架橋体は、架橋性基が導入された二次架橋性体あるいは高次架橋性体を熱架橋 して得られる。架橋体は、半導体粒子あるいは半導体層に架橋性体を供給しその 場で熱架橋されることにより生成される。熱架橋等の条件については後述する。 なお、リニァリティの高い架橋性体は、有機溶媒への溶解性を有する場合がある。 この場合、光増感剤溶液として半導体粒子や半導体層にリグニン誘導体を吸着さ せることも可能である。

各種のリグニン誘導体は、加熱、光、放射線照射などの各種のエネルギー照射 が施されていてもよい。これらのいずれかのエネルギー照射にょリ、リグニン誘 導体の重合が促進され、それにより形成される共役系により光吸収域や吸収強度 を増大させることができる。エネルギー照射は、特に限定しないで、熱線、各種 光線、放射線、電子線を 1種あるいは 2種以上を組み合わされる。これらのエネ ルギ一照射はリグニン誘導体の分離抽出や循環利用等の過程において施され、特 に、共役系の増加を意図されていなくてもよい。なお、後述するように、リグ二 ン誘導体を担持した半導体粒子に対して別個にこれらのエネルギー照射を施すこ ともできる。

(半導体薄膜電極、光電変換素子及び光電気化学電池)

次に、匪 5及び 6に示す、各種リグニン誘導体を用いた半導体薄膜電極 2、光 電変換棄子 2 0及び光電気化学電池 4 0について説明する。本半導侔薄膜電極 2 は、導電性支持体 4とそれに積層される半導体層 6とから構成され、半導体層 6 には、リグニン誘導体の 1種あるいは 2種以上が担持されている。また、光電変 換素子 2 0においては、さらに電荷移動層 2 2と対極 2 4とを備えている。本明 細書においては、光電変換素子を外部回路で仕事をさせる電池用途に構成したも のを光電気化学電池というものとする。光電気化学電池は、太陽電池を包含して いる。

(導電性支持体)

導電性支持体 4は、金属のように支持体そのもに導電性があるもの、又は表面 に導電剤を含む導電層(導電剤層)を有するガラスもしくはプラスチックの支持 体を使用することができる。当該導電剤としては、白金、金、銀、銅、アルミ二 ゥ厶、ロジウム、インジウム等の金属、炭素、もしくは導電性の金属酸化物(ィ ンジゥムースズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等) を挙げるこ とができる。

導電性支持体 4は、実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明である とは、光の透過率が 1 0 %以上であり、好ましくは 5 0 %以上であり、より好ま しくは 7 0 %以上である。したがって、透明導電性支持体としては、ガラスもし くはプラスチックに導電性の金属酸化物を塗布したものが好ましい。

(半導体層)

半導体層 6は、単層であっても多層構成であってもよい。半導体としては、シ リコン、ゲルマニウムのような単体半導体の他、金属のカルコゲニド(例えば、 酸化物、硫化物、セレン化物等)に代表される化合物半導体まはたペルブスカイ 卜構造を有する化合物を使用することができる。金属のカルコゲニドとして好ま しくはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ス 卜 11ンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、 ニオブもしくはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛鉛、銀、アンチモン、ビ スマスの硫化物カドミウム、鉛の硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カド ミゥ厶のテルル化物等を挙げることができる。他の化合物半導体としては亜鉛、 ガリウム、インジウム、力ドミゥ厶等のリン化物、ガリウムヒ素、銅—インジゥ ムーセレン化物、銅—インジウム—硫化物等を挙げることができる。

また、ぺロブスカイト構造を有する化合物としては、好ましくはチタン酸ス卜 ロンチウ厶、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムを挙げ ることができる。

本発明に用いる半導体としては、より好ましくは、 S i、 T i 02、 S n02、 F e 203、 W03、 Z nO、 N b205、 Cd S、 P b S、 Cd S e、 l n P、 G a A s、 Cu l n S2、 Cu l n S e2とすることができ、さらに好ましくは、 T i 02 であり、 N b205である。最も好ましくは、 T i 02である。

本発明に用いられる半導体は、単結晶でも多結晶でもよい。また、粒子径は、 特に限定しないが、平均粒子径として、 0. 01 -0. 06 At mであることが好 ましい。半導体粒子は、各種粒径分布のものを組み合わせて用いることもできる。 また、半導体粒子は、従来公知のゾル一法などにより作製することができる。 (光増感剤)

光増感剤として、 1種あるいは 2種以上のリグニン誘導体のみを利用すること もできるし、リグニン誘導体以外の他の有機系増感剤等を併せて用いることもで きる。光電気化学電池の作製を目的とする場合には、異なる光吸収特性を備え、 光電変換の波長域をできるだけ広くとることが好ましい。あるいは特に太陽光に 適した吸収特性を備えるようにすることが好ましい。したがって、光電変換の波 長域が広くなるようにあるいは適切となるように、各種のリグニン誘導体あるい はリグニン誘導体と他の有機系増感剤等を組み合わせて用いることができる。例 えば、リグノ p—クレゾール固体は 437 n mに極大吸収ピークを有し、 700 n mまでブロードな吸収を有している。

リグニン誘導悴は、上記したように、各種の二次変換ゃ架撟構造を容易に宾現 することができる。このため、光電変換特性の制御の他、半導体への吸着や半導 体層形成のための搆造制御が容易である。

なお、他の有機系増感剤としては、例えば、フタロシアニン、ポルフィリン、 シァニン、メロシアニン、才キソノール、卜リフエニルメタン系などのメチン系 色素ゃキサンチン系、 7ゾ系、アンスラキノン系等の色素を挙げることができる。 また、併せて用いることのできる金属錯体としては、ルテニウム錯体ゃフタロシ ァニン、ポルフィリンなどが好ましい。

なお、リグニン誘導体を光増感剤として、半導体粒子あるいは半導体層 6に付 与するには、リグニン誘導体と他の材料、例えば、ガラスなどの無機あるいはセ ルロースなどの有機材料と予め複合化して得られた複合材料を用いることができ る。また、かかる無機及び/又は有機材料は、半導体膜 6内にて複合化されても よい。無機材料としては、セラミックス、ガラス、金属などが挙げられる。また、 有機材料としては、セルロース系材料の他、各種樹脂などが挙げられる。

リダニン誘導体と無機あるいは有機材料との複合材料を用いることにより、リ グニン誘導体が安定して保持され、リグニン誘導体がよく固定され、しかも均一 に分散保持された半導体層 6を容易に得ることができる。

(電極の作製)

光増感剤を保持する半導体層 6は、光増感剤を担持させた半導体粒子を導電性 支持体 4上に供給して層体を形成するか、あるいは導電性支持体 4上に半導体層 6を形成したのち、当該半導体層 6に光増感剤を担持させることもできる。 半導体粒子あるいは半導体層 6のいずれに対して光増感剤を担持させるには、 光増感剤の溶液中に乾燥した半導体粒子や支持体 4上に形成した半導体層 6を浸 漬する方法を採用することができる。光増感剤の溶液は必要に応じて加熱するこ とができる。例えば、 5 0 °C以上 1 0 0 °C以下に加熱することができる。

光増感剤の溶液は、リグノフエノール誘導体、二次誘導体及び高次誘導体など、 用いようとするリグニン誘導体が溶解する溶液を用いることが好ましい。リグノ フエノール ϋ導体を溶解する溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、 アセトン、ジォキサン、ピリジン、テ卜ラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、 アル力リ水溶液、あるいはこれらの 1種あるいは 2種以上の混液、あるいはこれ らの 1種あるいは 2種以上と水との混液とを採用することができる。

本リグニン誘導体にあっては、アセトン、ピリジン、メタノール、 T H F等の 1種あるいは 2種以上を組み合わせてを用いることができる。なかでも、メタノ —ルを用いることが好ましい。

光増感剤として架橋性の二次誘導体や高次誘導体を溶解した光増感剤溶液に浸 漬等して、半導体粒子や半導体層 6に十分に光増感剤を吸着させた後には、これ らの架橋性誘導体を熱架橋させて架橋体を生成させ、架橋体を光増感剤として機 能させることができる。

熱架橋の条件は、架橋反応を進行できる限り、特に限定されない。例えば、 1 °C 〜2 °CZ分の昇温プログラム条件で 1 5 0 °C〜1 8 0 °C程度まで加熱し、その後 冷却することができる。また、昇温後、最高設定温度に達してから 1時間保持し た後、冷却する条件を挙げることができる。各種の架橋構造を図 7に示す。 架橋によって構築される架橋体構造は、上述のとおり、導入フエノール核の置 換部位と置換数とによって決まってくる。図 7の左側は、 1置換フエノールとし て例えば、 p—クレゾールを用いたリグノフエノール誘導体をメチロールしてプ レポリマーとし、熱架橋することにより、ネットワーク型の高分子材料ができる ことを示している。このプレボリマーでは、分子鎖の全体にわたって架橋性基が 導入されているからである。

—方、図 7の右側には、二置換フエノールとして 2, 4ージメチルフエノール を用いたリグノフエノール誘導体をメチロール化してプレボリマーとし、熱架橋 することにより、リニア型の架橋構造が形成されることが示されている。このよ うなプレボリマーでは、主としてポリマー末端に架橋性基が導入されているから である。

さらに、図 7の中夹には、導入フエノール誘導体として、 1置換フエノールと 二置換フエノールとを用いることによリ(典型的には、 p—クレゾールと 2 , 4 一ジメチルフェノ一ル)、両者に基づく第一のュニッ卜を備えたリダノフエノール 誘導体に架橋性基を導入してプレボリマ一とし、結果として、ネッ卜ワーク型と リニア型とを混成させた高分子材料が得られることが示されている。

なお、半導体層 6には、各種リグニン誘導体(特に、リグノフエノール誘導体 他、架橋性体を除く二次誘導体及び高次誘導体)と、各種ジイソシァネー卜類等 の重合性化合物、フエノール樹脂材料、ェピクロロヒドリンなどを用い、これら を半導体粒子あるいは半導体層に供給して、その場でリグノフエノール誘導体と これらの重合性化合物等とを反応させて各種リダニン誘導体の架橋体構造を構築 し、これにより光電変換を実現することもできる。

また、半導体層 6には、本発明のリグニン誘導体以外の森林資源由来の有機化 合物やその誘導体を含ませることができる。かかる有機化合物及び誘導体には、 セルロース系材料、ポリフエノール系材料、溶媒に可溶な他のリグニン系材料等 が挙げられる。セルロースは、半導体膜等の形状保持作用を有し半導体膜等に使 用することができる。また、リグノフエノール系誘導体の製造プロセスにおける 副産物としてあるいは他のリグニン製造プロセスにおける副産物であるポリフエ ノール系材料は、光増感作用を有し、他の光増感剤として本リダニン誘導体と組 み合わせて使用することができる。ポリフエノール系材料としては、例えば、木 材の脱脂アセトン液の 1 4 0 °C加熱濃縮物(木材抽出液)を利用することができ る。また、公知のクラフトリグニンや蒸煮爆砕などの各種工業リグニンであって 光増感剤溶液に用いる溶媒に可溶なものを他の光増感剤として使用することがで さる。

なお、光増感剤を吸着したあるいは吸着していない半導体粒子を導電性支持体 4表面に供給して半導体層 6を形成するには、半導体粒子の分散液またはコロイ ド溶液を導電性支持体 4上に塗布する方法やゾル—ゲル法等の従来公知の各種方 法を用いることができる。具体的には、浸瀆法、ローラ法、ディップ法、エア一 ナイフ法、ェクス卜ルージョン法、スライドホッパー法、ヮーヤーバー法、スピ ン法、スプレー法、キャス卜法、各種印刷法等を採用することができる。好まし くは、塗布法あるいは印刷法、浸漬法等湿式の膜付与方法を採用することができ る。なお、半導体層 6は、導電性支持体 4への密着性を向上させるため、約 4 0 ° 以上約 7 0 0 °C以下で加熱処理を行うことが好ましい。かかる加熱処理を行う場 合には、加熱処理後(好ましくは直後)に光増感剤を吸着させることが好ましい。 また、導電性支持体 4表面に半導体粒子と光増感剤とを同時に供給して光増感さ れた半導体層 6を形成することもできる。

なお、半導体粒子の分散液の調製方法としては、ゾルーゲル法の他、乳鉢ゃミ ルを用いて粉砕する方法を採用できる。分散媒としては、水、又は各種の有機溶 媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、ァセ卜 ン、ァセ卜二トリルなどを用いることができる。

最終的に得られる光増感剤を保持する半導体層 6は、リグニン誘導体が本来的 に有する粘結性が発揮されて、リグニン誘導体と半導体粒子とが良好に密着され た半導体層 6を形成することができる。リグニン誘導体が架橋されている場合に は、一層密着力及び強度の高い半導体層 6を形成することができる。

(光電変換素子及び光電気化学電池)

次に、導電性支持体 4と半導体層 6とを備える半導体薄膜電極 2に電荷移動層 2 2と対極 2 4とを備える、光電変換素子 2 0及び光電気化学電池 4 0について 説明する。

(電荷移動層)

電荷移動層 2 2は、典型的には、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体(電解 液)、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマ卜リックスに含浸したゲ ル電解湿、酸化還元対を含有する溶融塩などを挙げることができる。さらに、固 体電解質ゃ正孔(ホール)輸送材料を挙げることができる。

本発明で用いることのできる電解液は、電解質として、とヨウ化物との組み 合わせとすることが好ましい。ヨウ化物としては、 L i し N a l 、 K し C s I 、 C a I 2などの金属ヨウ化物、あるいはテ卜ラアルキルアンモニゥ厶ョ一ダイ ド、ピリジニゥ厶ョーダイド、イミダゾリウ厶ョ一ダイドなどの 4級アンモニゥ 厶化合物のヨウ素塩を用いることができる。 B r 2と臭化物との組み合わせにおい て、臭化物としては、 L i B r、 N a B r、 K B r、 C s B r、 C a B r 2などの 金属臭化物あるいはテ卜ラアルキルアンモニゥ厶プロマイド、ピリジニゥ厶ブロ マイドなど 4級アンモニゥ厶化合物の臭素塩など)のほか、フエロシアン酸塩一 フェリシアン酸塩やフエ口セン—フエリシニゥ厶イオンなどの金属錯体、ポリ硫 化ナトリウム、アルキルチオール一アルキルジスルフィドなどのィ才ゥ化合物、 ビ才ロゲン色素、ヒドロキノン―キノンなどを用いることができる。なかでも、 I 2とヨウ化力リウ厶の組み合わせやヨウ化リチウムとシルリチウムとの組み合 わせを用いることもできる。

本発明の電解質に使用する溶媒は、エチレンカーボネー卜、プロピレンカーボ ネー卜などのカーポネー卜化合物、 3—メチル—2—才キサゾリジノンなどの複 素環化合物、ジ才キサン、ジェチルェ一テルなどのエーテル化合物、エチレング リコ一ルジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリ エチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキル エーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコール モノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリェチ レングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキル エーテルなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポ リエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アル コール類、ァセ卜二トリル、グルタ口ジニ卜リル、メトキシァセ卜二卜リル、プ 口ピオ二卜リル、ベンゾニ卜リルなどの二卜リル化合物、ジメチルスルフォキシ ド(D M S O)、スルフォランなど非プロトン極性物質、水などを用いることがで きる。なかでも、ァセトニトリルを用いることが好ましい。

本発明では、電解質はポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類 を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法によリゲル化 (固体化) させて使用す ることもできる。なお、本発明では、電解質の替わりに有機または無機あるいは この両者を組み合わせた正孔輸送材料を使用することもできる。

電荷移動層 2 2の形成は、例えば、次のようにして行うことができる。光増感 剤を担持させた半導体層 6の上に先に対極 2 4を貼り合わせておき、その間隙に 液状の電荷移動層 2 2を挟み込むことができる。また、別法として、半導体層 6 上に直接電荷移動層 2 2を付与する方法で、対極は 2 4その後付与することもで さる。

前者の場合の電荷移動層 2 2の挟み込み方法として、浸漬等による毛管現象を 利用する常圧プロセスと常圧より低い圧力にして気相を液相に置換する真空プロ セスが利用できる。後者の場合、湿式の電荷移動層 2 2においては未乾燥のまま 対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止措置も施すことになる。またゲル電解質の 場合には湿式で塗布して重合等の方法により固体化する方法もあり、その場合に は乾燥、固定化した後に対極を付与することもできる。電解液のほか湿式有機正 孔輸送材料やゲル電解質を付与する方法としては、半導体層 6や色素の付与と同 様に、湿式の各種方法を適用することができる。浸漬法、ローラ法、ディップ法、 エアーナイフ法、ェクス卜ルージョン法、スライドホッパー法、ヮーヤーバー法、 スピン法、スプレー法、キャス卜法、各種印刷法等が考えられる。固体電解質や 固体の正孔 (ホール) 輸送材料の場合には真空蒸着法や C V D法等のドライ成膜 処理で電荷移動層 2 2を形成し、その後対極を付与することもできる。

(対極)

対極 2 4は、光電変換素子 2 0を光電気化学電池 4 0としたとき、光電気化学 電池の正極として働くものである。対極 2 4は通常前述の導電性支持体 4と同様 に導電性層を有する支持体を用いることもできるが、強度や密封性が十分に保た れるような構成では支持体は必ずしも必要でない。具体的に対極に用 tヽる導電性 の材料としては、例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジゥ 厶、パラジウム等の金属、炭素、または導電性の金属酸化物(インジウム—スズ 複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等) が挙げられる。好ましくは 白金を用いる。これらは単独でも用いることもできるし、 2種以上を組み合わせ

た合金(例えば、 A u / P dなど)として用いることもできる。対極の厚さは、 特に制限はないが 2 nm以上 2 0 m以下であることが好ましい。

半導体層 6に光が到達するためには、前述の導電性支持体 4と対極 2 4の少な くとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の素子 2 0及び電池 4 0 においては、導電性支持体 4が透明であって光(太陽光)を支持体側から入射さ せるのが好ましい。この場合、対極 2 4は光を反射する性質を有することがさら に好ましい。本発明において対極 2 4としては金属または導電性の酸化物を蒸着 したガラスまたはプラスチック、あるいは金属薄膜も使用できる。

対極 2 4の形成については電荷移動層 2 2の場合と同様に、電荷移動層 2 2の 上に付与する場合と先に半導体層 6上に付与する場合の 2通りある。いずれの場 合も、対極材の種類や電荷移動層 2 2の種類により、適宜、電荷移動層 2 2上ま たは半導体層 6上に対極材を塗布、ラミネート、蒸着、貼り合わせなどの方法に より形成可能である。例えば、対極 2 4を貼り合わせる場合は、上記の導電性材 料を塗布、蒸、 C V D等の手法により導電層として設けられた基板を貼り合わ せることができる。また、電荷移動層 2 2が固体の場合には、その上に直接、前 述の導電性材料を塗布、メツキ、 P V D、 C V D等の手法で対極 2 4を形成する ことができる。

本発明の光電変換素子 2 0及び光電気化学電池 4 0によれば、光増感剤として 用いたリグニン誘導体が、光電変換特性を有するとともに、森林資源由来である ことから、化石資源によらずに電力を供給できる。リグノフエノール誘導体、二 次誘導体、高次誘導体及び架橋体は、いずれもポリマーであるとともに本来的に 粘結性を有するため、半導体粒子と良好な複合形態を搆成し、また半導侔層に良 好に複合化され、安定的に効率的な光電変換を実現することができる。また、リ グノフエノール誘導体、二次誘導体、一部の高次誘導体は、いずれも、高分子に かかわらず有機溶媒に対して溶解性を備えており、光増感剤溶液を容易に調製す ることができる。また、リグノフエノール誘導体、二次誘導体、高次誘導体の備 える有機溶媒溶解性によリ、使用後の素子等を所定の有機溶媒に浸漬等すること により、半導体とリグニン誘導体との複合状態を解放して、これらの両材料ある いは一方の再利用を容易に行うことができる。なお、架橋体であっても架橋構造 のリニア性が高い場合(フエノール化合物として、 2, 4一置換フエノール誘導 体 (たとえば、 2, 4—ジメチルフエノール)のみを用いて構成したリグノフエ ノール誘導体の架橋性の二次誘導体)の場合、 T H Fに溶解するため、再利用は 谷易であ 。

さらに、リグニン誘導体がオル卜位結合ユニットを備える場合、アルカリ処理 によりリグニン誘導体 (架橋体であっても)を容易に低分子化することができる。 すなわち、誘導化の一種であるアルカリ処理を、素子からリグニン誘導体を分離 する手段として採用することができる。アルカリ処理を採用することによれば、 リダニン誘導体や架橋体の低分子化による半導体層 6からの解放を達成でき、し かも、それにより構造変換も実現することができる。

なお、半導体層 6からのリグニン誘導体解放のためのアルカリ処理は、半導体 層あるいは素子をそのまま、好ましくは粉砕等により小片化あるいは粉末化した ものに対して行う。アルカリ処理条件は、複合材料を脱複合させることができれ ばよく特に限定しない。上記したアル力リ処理の項において開示した各種の条件 を採用できる。例えば、 0 . 1 N ~ 0 . 5 N程度の N a O Hなどのアルカリ溶液 を 1 0 0 °C以上 (例えば、 1 4 0 °C程度) に加熱することによりリグノフエノー ル誘導体及びその架橋体の低分子化を達成することができる。加圧下で沸点以上 に加熱することもできる。緩和な条件としては、約 8 0 °C以上約 1 5 0 °C以下を 採用することができる。また、増強された条件としては、約 Ί 5 0 °C以上約 1 7 0 °C以下で行うこともできる。

特に、リグニン誘導体は、アルカリ処理により低分子化とともに、新たな部分 構造やフエノ一ル性水酸基などが発現されることにより、さらなる誘導体化の自 由度が高くなつている。

また、リグニン誘導体は、既に説明したように、分離や解放が容易である一方、 各種の構造変換が可能である。したがって、望ましい光電変換特性や半導体層へ の吸着特性等を得るための構造や組成構成も容易である。さらに、森林資源を光 電変換素子として利用した後に、他の用途に逐次的にそのまま使用あるいは構造 変換して使用することが可能であり、また、他の用途に使用した後、そのままあ るいは構造変換して光電変換素子として利用できる。

実施例

以下、本発明を具体例を挙げて説明するが、この具体例は本発明を具体的に説 明するものであって、本発明を拘束するものではない。

(実施例 1 :リグノフエノール誘導体の調製)

アセトンで脱脂した乾燥べイマッ木粉 3 . 0 gに p—クレゾ一ル 3 . 0 gを含 有するアセトン溶液 3 . 0 m Iを加えて攪拌し、密閉して 1夜放置した。放置後、 ガラス棒で攪拌しながら、アセトンを留去し、 p—クレゾ一ルを収着させた木粉 を得た。この収着木粉の全量に対して 7 2 %硫酸 3 . O m lを加えガラス棒で素 早く攪拌し、粘度が低下した後、空気中室温にて 1時間磁気攪拌を行った。次い で、 3 0 0 m lのイオン交換水に攪拌しながら投入し、 p H 5〜 6まで遠心分離 を行いながら酸を除去した。遠沈物を、一晩凍結乾燥して得た乾燥物を 3 0 O m Iのアセトン中に投入し、空気中室温で密閉状態の中、一晩磁気攪拌した。この 液を違心分離し、褐色の上澄み液を回収し、 8 O m lまで濃縮した後、 3 0 0 m Iジェチルエーテルに氷冷下 1滴ずつ滴下した。得られた白紫の沈殿を違心分離 によって回収、エーテルを除去して本発明のリグノフエノール誘導体である(フ ェノール化合物として P—クレゾ一ルを用いたものべィマツ一リグノー p—クレ ゾールを得た。

(実施例 2 :光電気化学電池の作製)

実施例 1で得たリダノフエノール誘導体 1 O m gを 2 0 m lのァセトンに溶解 させて光増感剤溶液を調製した。酸化チタン薄膜を 3 OmmX 20mmの面積で コーティングした FTOガラスをこの光増感剤溶液に浸漬し、一晩放置した。ガ ラスを取り出し、乾燥し、酸化チタン表面に I 2ZK I溶液を 3滴滴下し、炭素を 6 O K eVで蒸着させた FT Οガラスで挟み、固定して、光電気化学電池(太陽 電池)を作製した。

(実施例 3 :性能の評価)

実施例 2で作製した電池に太陽光、 2 OWF L蛍光灯、 2 OWH L白熱灯の各 種光線を照射すると表 1 に示す光起電力と光電流とを得ることができた。

【表 2】

表 2に示すように、実施例 2で作製した電池は、電力を供給できることがわか つた。

(実施例 4)

実施例 1で調製したリグノー P—クレゾール 1 Omgを 2 Om Iのアセトンに 溶解させて光増感剤溶液を調製した。酸化チタン薄膜を 3 OmmX 2 Ommの面 積でコーティングした F TOガラスをこの光増感剤溶液を浸瀆し、一晚放置した。 ガラスを探リだし乾燥?轰、酸化チタン表面に L i I / I 2 /プロピレンカーポネー 卜溶液(0· 5Μ Κ Ι、 0· 05Μ 12)を 9滴滴下し、 A u— P d合金(60/40) を蒸着させた FTOガラスで挟み、固定して、光電気化学電池(太陽電池)を作 製した。また、実施例 1のリグノフエノール誘導体に替え、木材の脱脂アセトン 液の 1 40°C加熱濃縮物(木材抽出液であってポリフエノール類を含有する) 9 滴滴下し、同様にして光電気化学電池を作製した。

これら電池について直射日光下、光起電力と光電流とを測定した。結果を表 3 に示す。

【表 3】

(実施例 5 )

乾燥ヒノキ木粉に対して実施例 1と同様に操作して、フエノ一ル化合物として、 フエノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロールのそれぞれを用いて、 各種のリグノフエノール誘導体を調製した。各リグノフエノール誘導体 1 Omg を 2 Om Iのァセトンに溶解させて光増感剤溶液を調製した。酸化チタン薄膜を 4 OmmX 2 Ommの面積でコーティングした I T 0ガラスにこの光増感剤溶液 を滴下し、直後に乾燥した。乾燥した薄膜表面に L i I / I 2 /プロピレンカーボ ネー卜溶液(0, 5M K し 0. 05 M 12) を 25 L滴下し、 A u— P d合 金(60/40) を蒸着させた I TOガラスで挟み、固定して、光電気化学電池(太陽 電池)を作製した。

この電池について直射日光下、光起電力と光電流とを測定した。結果を表 4に 示す。

【表 4】

(実施例 6)

乾燥ヒノキ、ペイマツ木粉それぞれに対して実施例 1と同様に操作して、フエ ノール化合物として、フエノール、 p—クレゾールのそれぞれを用いて、各種の リグノフエノール誘導体を調製した。各リグノフエノール誘導体 1 Omgを 20 m Iのメタノールに溶解させて光増感剤溶液を調製した。酸化チタン薄膜を 6. OmmX 8. 0 mmの面積でコーティングした I T Oガラスをこの光増感剤溶液 に投入し、 3時間後に乾燥した。乾燥した薄膜表面に L i I Iノアセ卜二卜リ ル溶液(0. 5 M L i I、 0. 05 M I 2) を 25 tし滴下し、 P tを蒸着させ た I TOガラスで挟み、固定して、光電気化学電池(太陽電池)を作製した。

この電池について 1 50Wキセノンランプ照射下、光起電力と光電流とを測定 した。結果を表 5に示す。

【表 5】

試料 光起電力: V (mV) 光毫流: 1

mA/ cm')

ヒノキーリグノーフエノール 480 9.49

ベイマツーリグノー P -クレゾール 530

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