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1. WO2014119668 - 赤外線反射フィルムの製造方法

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明 細 書

発明の名称 赤外線反射フィルムの製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006   0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012  

発明の効果

0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための最良の形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072  

実施例

0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104  

符号の説明

0105  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : 赤外線反射フィルムの製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、主にガラス窓等の室内側に配置して用いられる赤外線反射フィルムを製造する方法に関する。

背景技術

[0002]
 従来より、ガラスやフィルム等の基材上に赤外線反射層を備える赤外線反射基板が知られている。赤外線反射層としては、金属層と金属酸化物層とが交互積層されたものが広く用いられており、太陽光等の近赤外線を反射することにより、遮熱性を持たせることができる。赤外線反射層を構成する金属層としては、赤外線の選択反射性を高める観点から、銀等が広く用いられている。また、金属酸化物層としては酸化インジウム錫(ITO)や酸化インジウム亜鉛(IZO)等が広く用いられている(例えば、特許文献1)。また、金属酸化物層として、酸化亜鉛錫(ZTO)を用いることで、赤外線反射基板の耐久性を高める試みがなされている(例えば、特許文献2および特許文献3)。
[0003]
 これらの金属層や金属酸化物層は、耐擦傷性等の物理的強度が十分ではない場合が多く、さらには、熱、紫外線、酸素、水分、塩素(塩化物イオン)等の外部環境要因による劣化を生じ易い。そのため、一般には、赤外線反射層を保護する目的で、赤外線反射層の基材と反対側には、保護層が設けられる。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : WO2011/109306号国際公開パンフレット
特許文献2 : 特開平1-301537号公報
特許文献3 : 特開平8-171824号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 上述のように、赤外線反射基板としては、ガラス等の剛性基材を用いるものと、透明樹脂フィルム等の可撓性の基材を用いるものがある。中でも、可撓性基材を用いた赤外線反射フィルムは、窓ガラス等への貼り合せ等の施工が容易である。さらに、赤外線反射層を構成する金属層および金属酸化物層を、巻取式スパッタ装置を用いて連続的に製膜可能である。また、赤外線反射層上への透明保護層の形成も、ロールコーター等を用いて連続的に行うことができるため、生産性に優れている。特に、金属層および金属酸化物層を、直流(DC)スパッタ法により製膜すれば、製膜レートを高められるため、生産性を大幅に向上することができる。
[0006]
 しかしながら、本発明者らが、従来より赤外線反射層の金属酸化物層として広く用いられているITOおよびIZOをDCスパッタ法により連続製膜したところ、ターゲット上に多数の粉末が生成し、その粉末に起因する異常放電やスパッタ装置内の汚染が発生するため、安定した品質を有するフィルムを長尺で連続生産することが困難であることが判明した。安定した品質を有するフィルムを得るためには、定期的に製膜を止めて、ターゲットやスパッタ装置の清掃作業を行う必要があり、ターゲット表面の研磨や、スパッタ装置内の清掃作業に多大な時間と労力を要する。また、清掃後にスパッタ製膜室を真空化するためにも時間を要するため、ITOやIZOは、長尺の連続生産には適していないことが判明した。
[0007]
 一方、特許文献2,3において、金属酸化物として用いられているZTOは、酸化物ターゲットの導電性が低く、特に、錫の含有量が大きいSnリッチのZTOは、DCスパッタ法による製膜を長時間安定して行うことが困難である。また、金属亜鉛と金属錫からなる金属ターゲットを用いた反応性スパッタ法によりZTOからなる金属酸化物層を製膜すると、ZTOの製膜下地となる金属層(Ag等)が、製膜雰囲気中の過剰な酸素によって酸化され、赤外線反射層の特性が低下するとの問題を生じる。その他、ガラス基板等の剛性基材が用いられる場合は、DCスパッタ法により亜鉛と錫の合金属を製膜した後、高温で酸化処理することにより、ZTOを形成するとの方法が可能であるが、基材として透明樹脂フィルム基材が用いられる場合は、高温での処理によって、フィルム基材が溶融あるいは熱劣化するとの問題がある。
[0008]
 上記のように、赤外線反射層を構成する金属酸化物層を、透明フィルム基材上に、直流スパッタ法によって長時間安定して連続生産する方法は未だ確立されておらず、現状では、赤外線反射フィルムの生産効率や特性の向上には、改善すべき点が残されている。

課題を解決するための手段

[0009]
 上記現状に鑑みて、本発明者らが検討の結果、金属酸化物と金属粉末と焼結したターゲットを用いて直流スパッタによりZTOを製膜すれば、赤外線反射フィルムの特性が良好であり、さらに、ITOやIZOの製膜時に比して、異常放電の発生やスパッタ装置の汚染が生じ難く、長時間安定して連続生産可能であることを見出し、本発明に至った。
[0010]
 本発明は、透明フィルム基材上に、金属層および金属酸化物層を備える赤外線反射層と、透明保護層とをこの順に備える赤外線反射フィルムの製造方法に関する。本発明の製造方法において、赤外線反射層を構成する金属酸化物層は、巻取式スパッタ装置を用いる直流スパッタ法により製膜される。直流スパッタ法では、亜鉛原子および錫原子を含有するスパッタターゲットが用いられる。当該スパッタターゲットは、酸化亜鉛と酸化錫のうち少なくとも一方の金属酸化物と、金属粉末とが焼結されたターゲットである。
[0011]
 ターゲットの形成に用いられる金属粉末は、金属亜鉛および/または金属錫を含有することが好ましい。ターゲットの形成に用いられる金属亜鉛と金属錫の含有量の合計は、0.1重量%~20重量%が好ましい。ターゲット中に含まれる亜鉛原子と錫原子の割合は、原子比で、10:90~60:40の範囲内であることが好ましい。
[0012]
 本発明の好ましい形態において、金属酸化物層の製膜は、製膜厚みと長さの積(MD方向の断面積)で、6000nm・m以上連続して行われる。

発明の効果

[0013]
 本発明においては、赤外線反射層を構成する金属酸化物層として、ZTOが所定のターゲットを用いる直流スパッタ法により製膜されることにより、ITOやIZOが製膜される場合に比して、ターゲット表面への粉末の発生が抑制される。そのため、ターゲットやスパッタ装置を清掃することなく、金属酸化物層を連続して安定した製膜を行うことができ、赤外線反射フィルムの生産性を高めることができる。

図面の簡単な説明

[0014]
[図1] 一実施形態の赤外線反射フィルムの積層構成を模式的に示す断面図である。
[図2] 赤外線反射フィルムの使用例を模式的に示す断面図である。
[図3] 実施例および比較例の金属酸化物層製膜時の異常放電発生回数を、製膜量に対してプロットしたグラフである。
[図4] 実施例および比較例において、金属酸化物層を連続製膜後のターゲット表面への粉末の付着状況を示す写真である。

発明を実施するための最良の形態

[0015]
 図1は、赤外線反射フィルムの構成例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、赤外線反射フィルム100は、透明フィルム基材10の一主面上に、赤外線反射層20および透明保護層30をこの順に備える。
[0016]
[透明フィルム基材]
 透明フィルム基材10としては、可撓性の透明フィルムが用いられる。透明フィルム基材としては、可視光線透過率が80%以上のものが好適に用いられる。なお、可視光線透過率は、JIS A5759-2008(建築窓ガラスフィルム)に準じて測定される。
[0017]
 透明フィルム基材10の厚みは、特に限定されないが、10μm~300μm程度の範囲が好適である。また、透明フィルム基材10上に赤外線反射層20が形成される際に、高温での加工が行われる場合があるため、透明フィルム基材を構成する樹脂材料は、耐熱性に優れるものが好ましい。透明フィルム基材を構成する樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
[0018]
 赤外線反射フィルムの機械的強度を高める等の目的で、透明フィルム基材10の赤外線反射層20形成面側の表面には、ハードコート層が設けられていてもよい。透明フィルム基材10の表面、あるいはハードコート層の表面には、赤外線反射層20との密着性を高める等の目的で、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー処理、ケン化処理、カップリング剤による処理等の表面改質処理が行われてもよい。
[0019]
[赤外線反射層]
 赤外線反射層20は、可視光を透過し、赤外線を反射するものであり、金属層および金属酸化物層を有する。一般に、赤外線反射層20は、図1に示すように、金属層25が、金属酸化物層21,22に挟持された構成を有する。なお、図1では、1層の金属層25が2層の金属酸化物層21,22に挟持された3層構成の赤外線反射層20が図示されているが、赤外線反射層は、例えば、金属酸化物層/金属層/金属酸化物層/金属層/金属酸化物層の5層構成とすることもできる。積層数を5層、7層、9層…と増加させるほど、反射率の波長選択性を高め、近赤外線の反射率を高めて遮熱性を持たせつつ、可視光線の透過率を高めることができる。一方、生産性を高める観点からは、赤外線反射層は、図1に示すような3層構成が好ましい。
[0020]
 赤外線反射層20は、例えば、金属層25と金属酸化物層21,22との密着性の向上や、金属層への耐久性の付与等を目的として、両者の間に他の金属層や金属酸化物層等を有するものでもよい。なお、赤外線反射層20は、少なくとも1層の金属層と金属酸化物層を有していれば、金属酸化物層と金属層の交互積層以外の構成であってもよいが、金属層25の透明保護層30側には、少なくとも1層の金属酸化物層22が形成されていることが好ましい。
[0021]
<金属層>
 金属層25は、赤外線反射の中心的な役割を有する。金属層25の材料としては、Au,Ag,Cu,Al等の金属、あるいはこれらの2種以上を含有する合金が用いられる。中でも、可視光線透過率と赤外線反射率を高める観点から、銀を主成分とするものが好適に用いられる。銀は高い自由電子密度を有するため、近赤外線・遠赤外線の高い反射率を実現することができ、赤外線反射層20を構成する層の積層数が少ない場合でも、遮熱効果および断熱効果に優れる赤外線反射フィルムが得られる。
[0022]
 金属層25中の銀の含有量は、90重量%以上が好ましく、93重量%以上がより好ましく、95重量%以上がさらに好ましく、96重量%以上が特に好ましい。金属層中の銀の含有量を高めることで、透過率および反射率の波長選択性を高め、赤外線反射フィルムの可視光線透過率を高めることができる。
[0023]
 金属層25は、銀以外の金属を含有する銀合金層であってもよい。例えば、金属層の耐久性を高めるために、銀合金が用いられる場合がある。金属層の耐久性を高める目的で添加される金属としては、パラジウム(Pd),金(Au),銅(Cu),ビスマス(Bi),ゲルマニウム(Ge),ガリウム(Ga)等が好ましい。中でも、銀に高い耐久性を付与する観点から、Pdが最も好適に用いられる。Pd等の添加量を増加させると、金属層の耐久性が向上する傾向がある。金属層25が、Pd等の銀以外の金属を含有する場合、その含有量は、0.1重量%以上が好ましく、0.3重量%以上がより好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましく、1重量%以上が特に好ましい。一方で、Pd等の添加量が増加し、銀の含有量が低下すると、赤外線反射フィルムの可視光線透過率が低下する傾向がある。そのため、金属層25中の銀以外の金属の含有量は、10重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましく、4重量%以下が特に好ましい。
[0024]
 金属層25の厚みは、赤外線反射層が、可視光線を透過し近赤外線を選択的に反射するように、金属材料の屈折率や、金属酸化物層の屈折率および厚み等を勘案して適宜に設定される。金属層25の厚みは、例えば、3nm~50nmの範囲で調整され得る。金属層の製膜方法は特に限定されないが、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法、電子線蒸着法等のドライプロセスによる製膜が好ましい。特に、本発明においては、後述する金属酸化物層と同様に、巻取式スパッタ装置を用いる直流スパッタ法によって、金属層が製膜されることが好ましい。
[0025]
<金属酸化物層>
 金属酸化物層21,22は、金属層25との界面における可視光線の反射量を制御して、高い可視光線透過率と、赤外線反射率とを両立させる等の目的で設けられる。また、金属酸化物層は、金属層25の劣化を防止するための保護層としても機能し得る。赤外線反射層における反射および透過の波長選択性を高める観点から、金属酸化物層21,22の可視光に対する屈折率は、1.5以上が好ましく、1.6以上がより好ましく、1.7以上がさらに好ましい。上記の屈折率を有する材料としては、Ti,Zr,Hf,Nb,Zn,Al,Ga,In,Tl,Ga,Sn等の金属の酸化物、あるいはこれらの金属の複合酸化物が挙げられる。
[0026]
 本発明においては、少なくとも1層の金属酸化物層として、酸化亜鉛と酸化錫を含む複合金属酸化物(ZTO)が形成される。赤外線反射層20が2層以上の金属酸化物層を含む場合、少なくとも1層がZTOからなるものであれば、他の金属酸化物層はZTO以外の金属酸化物からなるものでもよいが、赤外線反射層の生産性を高める観点からは、全ての金属酸化物層としてZTOが製膜されることが好ましい。ZTOは、化学的安定性(酸、アルカリ、塩化物イオン等に対する耐久性)に優れると共に、後述する透明保護層30を構成する樹脂材料等との密着性に優れる。そのため、金属酸化物層22と透明保護層30が相乗的に作用して、金属層25に対する保護効果を高めることができる。
[0027]
 金属酸化物層は、巻取式スパッタ装置を用いて、直流スパッタ法によって製膜される。巻取式スパッタ装置を用いることによって、長尺での連続製膜が可能となる。また、直流スパッタ法は、製膜レートが高いため、赤外線反射フィルムの生産性が向上可能である。
[0028]
 金属酸化物層の製膜には、亜鉛原子および錫原子を含有し、酸化亜鉛と酸化錫のうち少なくとも一方の金属酸化物と、金属粉末とが焼結されたターゲットが用いられる。ターゲット形成材料が酸化亜鉛を含有し、酸化錫を含有しない場合、ターゲット形成材料には金属錫粉末が含まれる。ターゲット形成材料が酸化錫を含有し、酸化亜鉛を含有しない場合、ターゲット形成材料には金属亜鉛粉末が含まれる。ターゲット形成材料が酸化亜鉛と酸化錫の両方を含有する場合、ターゲット形成材料中の金属粉末は、金属亜鉛、金属錫以外の金属であってもよいが、金属亜鉛と金属錫のうちの少なくともいずれか一方が含まれることが好ましく、金属亜鉛が含まれることが特に好ましい。
[0029]
 酸化亜鉛や酸化錫(特に酸化錫)は導電性が小さいため、金属酸化物のみを焼結させたZTOターゲットは、導電性が小さく、直流スパッタでは放電が生じなかったり、製膜を長時間安定して行うことが困難となる傾向がある。これに対して、本発明では、金属酸化物と金属粉末とが焼結されたターゲットが用いられることにより、ターゲットの導電性を向上し、直流スパッタ製膜時の放電を安定させることができる。
[0030]
 スパッタターゲットの形成に用いられる金属の量が過度に小さいと、ターゲットに十分な導電性が付与されず、直流スパッタによる製膜が不安定となる場合がある。一方、ターゲット中の金属の含有量が過度に大きいと、スパッタ製膜時に酸化されない残存金属や、酸素量が化学量論組成に満たない金属酸化物の量が増大し、可視光線透過率の低下を招く傾向がある。また、残存金属や酸素量が化学量論組成に満たない金属酸化物を酸化する目的で製膜時の酸素導入量を増大させると、金属酸化物層の製膜下地となる金属層(銀等)が酸化され、赤外線反射特性や可視光線透過率の低下を招く場合がある。以上の観点から、スパッタターゲットの形成に用いられる金属の量は、ターゲット形成材料中、0.1重量%~20重量%が好ましく、0.2重量%~15重量%がより好ましく、0.5重量%~13重量%がさらに好ましく、1重量%~12重量%が特に好ましい。なお、ターゲット形成材料として用いられる金属粉末は、焼結により酸化されるため、焼結ターゲット中では金属酸化物として存在していてもよい。
[0031]
 また、上記のターゲットを用いて、直流スパッタによりZTOが製膜される場合は、金属酸化物としてITOやIZOが製膜される場合に比して、連続製膜時のターゲット上への粉末の生成(付着)が少ないとの利点を有する。ターゲット表面に粉末が付着すると、異常放電やスパッタ装置内の汚染が発生し、安定した品質を有するフィルムが得られなくなる。そのためターゲット表面に粉末が付着した場合は、一旦製膜を停止して、ターゲット表面の研磨やスパッタ装置の清掃作業等のメンテナンスを行う必要がある。また、メンテナンス後に製膜を再開する際に、スパッタ製膜室を真空化するためにも時間を要する。
[0032]
 本発明では、所定のターゲットを用いてZTOがスパッタ製膜されることにより、製膜時のターゲット表面への粉末付着が抑制され、メンテナンス周期が長期化される(メンテナンス頻度が低減される)ため、赤外線反射フィルムの生産効率を大幅に向上することができる。巻取り式スパッタによる連続製膜長さは、長いほど好ましい。本発明においては、スパッタ装置のメンテナンス頻度を低くできることから、例えば、金属酸化物層の製膜厚みと長さの積(MD方向の断面積)で、6000nm・m以上連続して行うことができる。
[0033]
 金属酸化物層の製膜に用いられるスパッタターゲット中に含まれる亜鉛原子と錫原子の割合は、原子比でZn:Sn=10:90~60:40の範囲が好ましい。Zn:Snの比は、15:85~50:50がより好ましく、20:80~40:60がさらに好ましい。Znの含有量を、SnとZnの合計100原子%に対して10原子%以上とすることで、ターゲットの導電性が高められ、直流スパッタによる製膜が可能となるため、赤外線反射フィルムの生産性をさらに高めることができる。製膜性向上の観点から、ターゲットの体積抵抗率は、1000mΩ・cm以下が好ましく、500mΩ・cm以下がより好ましく、300mΩ・cm以下がさらに好ましく、150mΩ・cm以下が特に好ましく、100mΩ・cm以下が最も好ましい。
[0034]
 一方、Znの含有量が過度に大きく、相対的にSnの含有量が小さいと、赤外線反射層の耐久性の低下や、金属層との密着性の低下を生じる場合がある。そのため、ターゲット中の、Zn原子の含有量は、SnとZnの合計100原子%に対して60原子%以下が好ましい。なお、スパッタターゲット中に含まれる亜鉛原子は、酸化亜鉛中の亜鉛原子と、金属亜鉛粉末に由来するものである。また、スパッタターゲット中に含まれる錫原子は、酸化錫中の錫原子と、金属錫粉末に由来するものである。
[0035]
 本発明においては、金属酸化物層として、Snの含有量が大きいSnリッチなZTOが製膜されることにより、金属層と金属酸化物層との密着性が高められ、赤外線反射層の耐久性が向上する。そのため、スパッタターゲット中のSnの含有量は、SnとZnの合計100原子%に対して40原子%以上が好ましく、50原子%以上がより好ましく、60原子%以上がさらに好ましい。SnリッチのZTOは、導電性が小さくなる傾向があるが、本発明においては、前述のごとく、金属酸化物と金属粉末とが焼結されたターゲットが用いられることにより、ターゲットの導電性が向上するため、SnリッチなZTOを直流スパッタにより製膜することができる。
[0036]
 金属酸化物層の製膜に用いられるスパッタターゲットは、亜鉛、錫、およびこれらの酸化物以外に、Ti,Zr,Hf,Nb,Al,Ga,In,Tl等の金属、あるいはこれらの金属酸化物を含有してもよい。ただし、亜鉛と錫以外の金属原子の含有量が増加すると、赤外線反射層の耐久性の低下や、透明性の低下を生じる場合がある。そのため、金属酸化物の製膜に用いられるスパッタターゲット中の金属の合計100原子%のうち、亜鉛原子と錫原子の合計は、97原子%以上が好ましく、99原子%以上がより好ましい。
[0037]
 このようなターゲットを用いたスパッタ製膜にあたり、まず、スパッタ製膜室内を真空排気して、スパッタ装置内の水分や基材から発生する有機ガス等の不純物を取り除いた雰囲気とすることが好ましい。
[0038]
 真空排気後に、スパッタ製膜室内に、Ar等の不活性ガスと酸素を導入しながら、スパッタ製膜が行われる。製膜室内への酸素の導入量は、全導入ガス流量に対し8体積%以下が好ましく、5体積%以下がより好ましく、4体積%以下がさらに好ましい。酸素導入量が大きいと、金属酸化物層の下地となる金属層が酸化され易くなる。酸素導入量は、金属酸化物層の製膜に用いられるターゲットが配置された製膜室への全ガス導入量に対する酸素の量(体積%)である。遮蔽板により区切られた複数の製膜室を備えるスパッタ製膜装置が用いられる場合は、それぞれの区切られた製膜室へのガス導入量を基準に酸素導入量が算出される。
[0039]
 なお、上記ターゲットを用いたスパッタ製膜において、酸素の導入量が少ないと、酸素量が化学量論組成に満たない金属酸化物が生成されやすくなる。本発明では、金属酸化物層が低酸素濃度でスパッタ製膜されることにより、膜中に酸素量が化学量論組成に満たない酸素不足状態の金属酸化物を存在させ、金属層と金属酸化物層との密着性を向上させることができる。
[0040]
 一方、スパッタ製膜時の酸素の導入量が過度に少ないと、酸素不足状態の金属酸化物の量が増大し、可視光線透過率の低下を招く傾向がある。そのため、スパッタ製膜時の製膜室内への酸素の導入量は、全導入ガス流量に対し0.1体積%以上が好ましく、0.5体積%以上がより好ましく、1体積%以上がさらに好ましい。 
[0041]
 金属酸化物層のスパッタ製膜時の基板温度は、透明フィルム基材の耐熱温度より低温であることが好ましい。基板温度は、例えば、20℃~160℃が好ましく、30℃~140℃がより好ましい。スパッタ製膜時の電力密度は、例えば、0.1W/cm ~10W/cm が好ましく、0.5W/cm ~7.5W/cm がより好ましく、1W/cm ~6W/cm がさらに好ましい。また、製膜時のプロセス圧力は、例えば、0.01Pa~10Paが好ましく、0.05Pa~5Paがより好ましく、0.1Pa~1Paがさらに好ましい。プロセス圧力が高すぎると製膜速度が低下する傾向があり、逆に圧力が低すぎると放電が不安定となる傾向がある。
[0042]
 金属酸化物層21,22の厚みは、赤外線反射層20が可視光線を透過し近赤外線を選択的に反射するように、金属層の屈折率および厚みや、赤外線反射層の積層数等を勘案して適宜に設定される。各金属酸化物層の厚みは、例えば、3nm~100nm程度、好ましくは、5nm~80nm程度の範囲で調整され得る。
[0043]
 金属酸化物層中の酸化亜鉛および酸化錫の含有量は、ターゲットの組成に応じて決定される。ZTO金属酸化物層中の酸化亜鉛:酸化錫の比は、重量比で、7:93~50:50が好ましく、10:90~45:55がより好ましく、15:85~40:60がさらに好ましい。
[0044]
[透明保護層]
 赤外線反射層20上には、金属酸化物層21,22や金属層25の擦傷や劣化を防止する目的で、透明保護層30が設けられる。透明保護層30の材料や構成は限定されないが、高い可視光線透過率を有するものが好ましく用いられる。また、赤外線反射フィルムによる断熱効果を高める観点から、透明保護層30は、遠赤外線の吸収率が小さいことが好ましい。透明保護層30による遠赤外線の吸収率が大きいと、室内の遠赤外線が透明保護層で吸収され、熱伝導によって外部に放熱されるため、赤外線反射フィルムの断熱性が低下する傾向がある。一方、透明保護層30による遠赤外線吸収が少ない場合、遠赤外線は、赤外線反射層20の金属層25により室内に反射される。そのため、遠赤外線の吸収率が小さいほど、赤外線反射フィルムによる断熱効果が高められる。
[0045]
 透明保護層の厚みを小さくして遠赤外線の吸収率を小さくする場合、透明保護層の厚みは、20nm~500nmが好ましく、25nm~200nmがより好ましく、30nm~150nmがさらに好ましく、40nm~110nmが特に好ましく、45nm~100nm以下が最も好ましい。透明保護層の厚みが過度に大きいと、透明保護層での遠赤外線吸収量の増大によって、赤外線反射フィルムの断熱性が低下する傾向がある。また、透明保護層の光学厚みが可視光の波長範囲と重複すると、界面での多重反射干渉による虹彩現象を生じることからも、透明保護層の厚みは小さいことが好ましい。本発明においては、赤外線反射層20の金属酸化物層21,22の材料として、機械的強度および化学的強度に優れるZTOが用いられるため、透明保護層の厚みが200nm以下の場合でも、耐久性に優れる赤外線反射フィルムを得ることができる。
[0046]
 透明保護層の厚みが小さい場合、遠赤外線吸収率の低減によって断熱効果を高められる一方で、赤外線反射層に対する保護層としての機能が低下する場合がある。そのため、透明保護層の厚みは、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましい。また、透明保護層の厚みを数十nm~数百nmと小さくする場合、透明保護層の材料として、機械的強度や化学的強度に優れる材料が用いられると共に、赤外線反射層自体の耐久性も高められることが好ましい。赤外線反射層自体の耐久性を高める方法としては、前述のように金属層25中の、パラジウム等の成分の含有量を大きくする方法が挙げられる。例えば、金属層25が、銀とパラジウムの合金である場合、銀:パラジウムの含有量が、重量比で、好ましくは90:10~98:2程度、より好ましくは92:8~97:3程度、さらに好ましくは93:7~96:4程度であれば、透明保護層30の厚みが小さい場合でも、金属層25の劣化を防止し、赤外線反射フィルムの耐久性を高めることができる。
[0047]
 透明保護層30の厚みを例えば200nm以下として遠赤外線吸収率を小さくする場合、その材料としては、可視光線透過率が高く、機械的強度および化学的強度に優れるものが好ましい。例えば、フッ素系、アクリル系、ウレタン系、エステル系、エポキシ系、シリコーン系等の活性光線硬化型あるいは熱硬化型の有機樹脂や、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、サイアロン(SiAlON)等の無機材料、あるいは有機成分と無機成分が化学結合した有機・無機ハイブリッド材料が好ましく用いられる。
[0048]
 透明保護層30の材料として有機材料あるいは有機・無機ハイブリッド材料が用いられる場合、架橋構造が導入されることが好ましい。架橋構造が形成されることによって、透明保護層の機械的強度および化学的強度が高められ、赤外線反射層に対する保護機能が増大する。中でも、酸性基と重合性官能基とを同一分子中に有するエステル化合物に由来する架橋構造が導入されることが好ましい。
[0049]
 酸性基と重合性官能基とを同一分子中に有するエステル化合物としては、リン酸、硫酸、シュウ酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸等の多価の酸と;エチレン性不飽和基、シラノール基、エポキシ基等の重合性官能基と水酸基とを分子中に有する化合物とのエステルが挙げられる。なお、当該エステル化合物は、ジエステルやトリエステル等の多価エステルでもよいが、多価の酸の酸性基中の少なくとも1つはエステル化されていないことが好ましい。
[0050]
 透明保護層30が、上記のエステル化合物に由来する架橋構造を有することで、透明保護層の機械的強度および化学的強度が高められると共に、透明保護層30と赤外線反射層20との密着性が向上し、耐久性をより高めることができる。上記エステル化合物の中でも、リン酸と重合性官能基を有する有機酸とのエステル化合物(リン酸エステル化合物)が、透明保護層と金属酸化物層との密着性を高める上で好ましい。透明保護層と金属酸化物層との密着性の向上は、エステル化合物中の酸性基が金属酸化物と高い親和性を示すことに由来し、中でもリン酸エステル化合物中のリン酸ヒドロキシ基が金属酸化物層との親和性に優れるため、密着性が向上すると推定される。
[0051]
 透明保護層30の機械的強度および化学的強度を高める観点から、上記エステル化合物は、重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を含有することが好ましい。また、架橋構造の導入を容易とする観点から、上記エステル化合物は、分子中に複数の重合性官能基を有していてもよい。上記エステル化合物としては、例えば、下記式(1)で表される、リン酸モノエステル化合物またはリン酸ジエステル化合物が好適に用いられる。なお、リン酸モノエステルとリン酸ジエステルとを併用することもできる。
[0052]
[化1]


 式中、Xは水素原子またはメチル基を表し、(Y)は-OCO(CH -基を表す。nは0または1であり、pは1または2である。
[0053]
 透明保護層中の上記エステル化合物に由来する構造の含有量は、1重量%~40重量%が好ましく、1.5重量%~30重量%がより好ましく、2重量%~20重量%がさらに好ましく、2.5重量%~17.5重量%が特に好ましい。特に好ましい形態において、透明保護層中の上記エステル化合物に由来する構造の含有量は、2.5重量%~15重量%、あるいは2.5重量%~12.5重量%である。エステル化合物由来構造の含有量が過度に小さいと、強度や密着性の向上効果が十分に得られない場合がある。一方、エステル化合物由来構造の含有量が過度に大きいと、透明保護層形成時の硬化速度が小さくなって硬度が低下したり、透明保護層表面の滑り性が低下して耐擦傷性が低下する場合がある。透明保護層中のエステル化合物に由来する構造の含有量は、透明保護層形成時に、組成物中の上記エステル化合物の含有量を調整することによって、所望の範囲とすることができる。すなわち、透明保護層形成のための材料が、固形分で、好ましくは1重量%~40重量%、より好ましくは1.5重量%~30重量%、さらに好ましくは2重量%~20重量%、特に好ましくは2.5重量%~17.5重量%のリン酸エステル化合物を含有することで、透明保護層中にエステル化合物に由来する構造を所定量導入することができる。特に好ましい形態において、透明保護層形成材料中のリン酸エステル化合物の含有量は、2.5重量%~15重量%、あるいは2.5重量%~12.5重量%である。
[0054]
 上記のように、透明保護層30の厚みを数十nm~数百nmまで小さくする方法以外に、透明保護層30を構成する材料として遠赤外線の吸収率が小さいものを用いる方法によっても、遠赤外線の吸収率を小さくして、赤外線反射フィルムの断熱性を高めることができる。当該構成によれば、赤外線反射層20を構成する金属層25中のパラジウム等の含有量を増大させることなく、赤外線反射フィルムの耐久性を高められるため、赤外線反射フィルムの可視光線透過率を高める上で好ましい。
[0055]
 遠赤外線の吸収率が小さい材料としては、C=C結合、C=O結合、C-O結合、芳香族環等の含有量が小さい化合物が好適に用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、シクロオレフィン系ポリマー等の脂環式ポリマー、ゴム系ポリマー等が好適に用いられる。
[0056]
 透明保護層を構成する材料は、遠赤外線の吸収率が小さいことに加えて、赤外線反射層との密着性に優れ、かつ耐擦傷性に優れるものが好適に用いられる。かかる観点から、ゴム系の材料が特に好ましく、中でもニトリルゴム系の材料が好適に用いられる。ニトリルゴム系材料は、分子中に下記の式(A)、(B)および(C)で表される構造を含有する。
[0057]
[化2]


[0058]
 上記式(A)~(C)において、R は水素またはメチル基であり、R ~R は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~4の直鎖もしくは分枝のアルキル基、または炭素数1~4の直鎖もしくは分枝のアルケニル基である。中でも、上記式(A)~(C)において、R ~R の全てが水素であるニトリルゴムは、透明性および耐久性に優れ、透明保護層の材料として好適である。
[0059]
 ニトリルゴムは、例えばアクリロニトリルおよび/またはその誘導体と、1,3-ブタジエンとを共重合することにより得られる。特に、透明保護層の材料としては、ニトリルゴム中に含まれる二重結合の一部または全部が水素化(水素添加)された水素化ニトリルゴム(HNBR)が好適に用いられる。二重結合が水素化されることで、遠赤外線の吸収率が低下するため、透明保護層の遠赤外線吸収率が低下し、赤外線反射フィルムの断熱性を高めることができる。
[0060]
 透明保護層の材料として水素化ニトリルゴムが用いられる場合、上記式(A),(B),(C)で表される構造単位の含有量の比率は、モル比で、k:l:m=3~30:20~95:0~60の範囲が好ましい(ただし、kとlとmの合計は100である)。k:l:mの比(モル比)は、5~25:60~90:0~20の範囲がより好ましく、15~25:65~85:0~10の範囲がさらに好ましい。k,l,mの比が上記範囲に調整されることで、遠赤外線吸収が小さく、かつ硬度および密着性に優れる透明保護層を形成することができる。
[0061]
 透明保護層30の材料として、水素化ニトリルゴム等の遠赤外線吸収率の小さい材料が用いられる場合も、透明保護層30の物理的強度や耐溶剤性等の耐久性を高める観点から、ポリマー鎖に架橋構造が導入されていることが好ましい。架橋構造は、ポリマーを重合後に、架橋剤と反応させることにより導入することができる。架橋剤としては、ラジカル重合性の多官能モノマーが好適に用いられ、特に、多官能(メタ)アクリル系モノマーが好ましく用いられる。架橋剤として用いられる多官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
[0062]
 架橋剤の添加量は、水素化ニトリルゴム等のポリマー100重量部に対して、1~35重量部程度が好ましく、2~25重量部程度がより好ましい。架橋剤の含有量が過度に小さいと、耐久性が十分に向上しない場合がある。また、架橋剤の含有量が過度に大きいと、遠赤外線の吸収量が増大し、保護層による遠赤外線の吸収量が大きくなるために、赤外線反射フィルムの断熱性が低下する場合がある。
[0063]
 透明保護層30の形成方法は特に限定されない。例えば、透明保護層の厚みを数十nm~数百nm程度にまで小さくする場合、有機樹脂材料のモノマーやオリゴマー、および/または有機・無機ハイブリット材料の前駆体等と、必要に応じて上記エステル化合物等の架橋剤を溶剤に溶解させた溶液が用いられる。透明保護層の材料として、水素化ニトリルゴム等の遠赤外線の吸収が小さい材料が用いられる場合、ポリマー材料と、必要に応じて架橋剤を溶剤に溶解させた溶液が用いられる。
[0064]
 これらの溶液の調製に用いられる溶剤は、上記各材料を溶解可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン(MEK)や塩化メチレン等の低沸点溶剤が好適に用いられる。また、透明保護層を形成するための溶液には、ポリマー、モノマー、架橋剤等の他に、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤滑剤、可塑剤、着色防止剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。これらの添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜に調整され得る。
[0065]
 上記溶液を赤外線反射層上に塗布し、溶媒を乾燥する方法により、透明保護層が形成され得る。ポリマーの硬化や架橋構造の導入は、溶剤を乾燥後に、活性光線の照射あるいは熱エネルギ―の付与によって行われることが好ましい。特に、生産性向上や、フィルム基材の熱劣化を防止する観点からは、紫外線や電子線等の活性光線の照射により、硬化や架橋構造の導入が行われることが好ましい。
[0066]
 赤外線反射フィルムの耐擦傷性を高め、赤外線反射層の保護機能を確保する観点から、透明保護層30の押し込み硬度は、1.2MPa以上が好ましい。透明保護層30を構成する材料に、前述のように架橋構造が導入されること等によって、押し込み硬度を上記範囲とすることができる。なお、透明保護層の押し込み硬度は、微小硬度試験機を用いたインデンテーション試験によって測定される。インデンテーション測定においては、圧子を保護層に所定の押し込み深さまで押し込んだ状態で、圧子の押し込み荷重P、および圧子と保護層との接触領域の投影面積(投影接触面積)Aが測定される、押し込み硬度Hは、(式)H=P/Aに基づいて算出される。投影接触面積Aは、特開2005-195357号公報に開示の方法により測定することができる。
[0067]
[赤外線反射フィルムの積層構成]
 上記のように、本発明の赤外線反射フィルム100は、透明フィルム基材10の一主面上に、金属層および金属酸化物層を含む赤外線反射層20、ならびに透明保護層30を有する。透明フィルム基材10と赤外線反射層20との間や、赤外線反射層と透明保護層との間には、各層の密着性を高める目的や、赤外線反射フィルムの強度を高める等の目的で、ハードコート層や易接着層等が設けられていてもよい。易接着層やハードコート層等の材料や形成方法は特に限定されないが、可視光線透過率の高い透明な材料が好適に用いられる。
[0068]
 図2は、赤外線反射フィルム100の使用形態を模式的に表す断面図である。図2において、赤外線反射フィルム100は、赤外線反射フィルム100は、透明フィルム基材10側が、適宜の接着層60等を介して、窓50に貼り合せられている。当該使用形態では、室内側に透明保護層30が配置される。
[0069]
 図2の使用形態に用いられる場合、赤外線反射フィルムは、透明フィルム基材10の赤外線反射層20と反対側の面には、赤外線反射フィルムと窓ガラス等との貼り合せに用いるための接着剤層等が付設されていてもよい。接着剤層としては、可視光線透過率が高く、透明フィルム基材10との屈折率差が小さいものが好適に用いられる、例えば、アクリル系の粘着剤(感圧接着剤)は、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性を示し、耐候性や耐熱性等に優れることから、透明フィルム基材に付設される接着剤層の材料として好適である。
[0070]
 接着剤層は、可視光線の透過率が高く、かつ紫外線透過率が小さいものが好ましい。接着剤層の紫外線透過率を小さくすることによって、太陽光等の紫外線に起因する赤外線反射層の劣化を抑制することができる。接着剤層の紫外線透過率を小さくする観点から、接着剤層は紫外線吸収剤を含有することが好ましい。なお、紫外線吸収剤を含有する透明フィルム基材等を用いることによっても、屋外からの紫外線に起因する赤外線反射層の劣化を抑制することができる。接着剤層の露出面は、赤外線反射フィルムが実用に供されるまでの間、露出面の汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされることが好ましい。これにより、通例の取扱状態で、接着剤層の露出面の外部との接触による汚染を防止できる。
[0071]
[赤外線反射フィルムの特性]
 本発明の赤外線反射フィルムは、透明保護層30側から測定した垂直放射率が、0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましく、0.12以下であることがさらに好ましく、0.10以下であることが特に好ましい。なお、垂直放射率は、JlS R3106:2008(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)に準じて測定される。赤外線反射フィルムが5重量%の塩化ナトリウム水溶液に5日間浸漬された後の放射率の変化は、0.02以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、63%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、67%以上がさらに好ましく、68%以上が特に好ましい。本発明においては、赤外線反射層20を構成する金属酸化物層として、ZTOが製膜されることによって、上記の可視光線透過率、垂直放射率および耐久性を同時に兼ね備える赤外線反射フィルムを高生産性で製造することができる。
[0072]
[用途]
 本発明の赤外線反射フィルムは、建物や乗り物等の窓、植物等を入れる透明ケース、冷凍もしくは冷蔵のショーケース等に貼着し、冷暖房効果の向上や急激な温度変化を防ぐために、好ましく使用される。図2に模式的に示すように、本発明の赤外線反射フィルム100は、屋外からの可視光(VIS)を透過して室内に導入すると共に、屋外からの近赤外線(NIR)を赤外線反射層20で反射する。近赤外線反射により、太陽光等に起因する室外からの熱の室内への流入が抑制される(遮熱効果が発揮される)ため、夏場の冷房効率を高めることができる。さらに、透明保護層30として遠赤外線吸収の小さいものが用いられる場合、赤外線反射層20により、暖房器具80等から放射される室内の遠赤外線(FIR)が室内に反射されるため、断熱効果が発揮され、冬場の暖房効率を高めることができる。

実施例

[0073]
 以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[0074]
[実施例、比較例で用いた測定方法]
<各層の厚み>
 赤外線反射層を構成する各層の厚みは、集束イオンビーム加工観察装置(日立製作所製、製品名「FB-2100」)を用いて、集束イオンビーム(FIB)法により試料を加工し、その断面を、電界放出形透過電子顕微鏡(日立製作所製、製品名「HF-2000」)により観察して求めた。基材上に形成されたハードコート層、および透明保護層の厚みは、瞬間マルチ測光システム(大塚電子製、製品名「MCPD3000」)を用い、測定対象側から光を入射させた際の可視光の反射光の干渉パターンから、計算により求めた。なお、透明保護層の厚みが小さく、可視光域の干渉パターンの観察が困難なもの(厚み約150nm以下)については、上記赤外線反射層の各層と同様に、透過電子顕微鏡観察により厚みを求めた。
[0075]
<ターゲットの体積抵抗率>
 抵抗率計(三菱化学アナリテック製、製品名「ロレスタ」)を用いて、ターゲット表面の表面抵抗ρs(Ω/□)を測定し、表面抵抗ρsと膜厚の積から、体積抵抗率ρvを算出した。
[0076]
<異常放電発生回数>
 スパッタ製膜時に、直流電源(HUTTINGER Elektronik製、商品名「TruPlasma DC3010」)に付属しているアークカウンターの数値をモニタリングし、異常放電発生時の瞬間的な電圧低下を読み取ることにより、異常放電の回数を調べた。
[0077]
<垂直放射率>
 垂直放射率は、角度可変反射アクセサリを備えるフーリエ変換型赤外分光(FT-IR)装置(Varian製)を用いて、保護層側から赤外線を照射した場合の、波長5μm~25μmの赤外光の正反射率を測定し、JIS R3106-2008(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)に準じて求めた。
[0078]
<可視光線透過率>
 可視光線透過率は、分光光度計(日立ハイテク製 製品名「U-4100」)を用いて、JIS A5759-2008(建築窓ガラスフィルム)に準じて求めた。
[0079]
<耐塩水性試験>
 赤外線反射フィルムの透明フィルム基材側の面を、厚み25μmの粘着剤層を介して3cm×3cmのガラス板に貼り合せたものを試料として用いた。この試料を5重量%の塩化ナトリウム水溶液に浸漬し、試料および塩化ナトリウム水溶液が入った容器を50℃の乾燥機に入れ、5日後および10日後に放射率の変化および外観の変化を確認し、以下の評価基準に従って評価した。
  A:10日間浸漬後も外観変化がなく、かつ放射率の変化が0.02以下であるもの
  B:5日間浸漬後は外観変化がなく、かつ放射率の変化が0.02以下であるが、10日間浸漬後は、外観変化が確認されるもの
  C:5日間浸漬後に、外観の変化が確認され、放射率の変化が0.02以上であるもの
[0080]
[実施例1]
(基材へのハードコート層の形成)
 厚みが50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ製、商品名「ルミラー U48」、可視光線透過率93%)の一方の面に、アクリル系の紫外線硬化型ハードコート層(日本曹達製、NH2000G)が2μmの厚みで形成された。詳しくは、グラビアコーターにより、ハードコート溶液が塗布され、80℃で乾燥後、超高圧水銀ランプにより積算光量300mJ/cm の紫外線が照射され、硬化が行われた。
[0081]
(赤外線反射層の形成)
 ポリエチレンテレフタレートフィルム基材のハードコート層上に、巻取式スパッタ装置を用いて、赤外線反射層が形成された。詳しくは、DCマグネトロンスパッタ法により、亜鉛-錫複合酸化物(ZTO)からなる膜厚30nmの第一金属酸化物層、Ag-Pd合金からなる膜厚15nmの金属層、ZTOからなる膜厚30nmの第二金属酸化物層が順次形成された。ZTO金属酸化物層の形成には、酸化亜鉛と酸化錫と金属亜鉛粉末とを、16:82:2の重量比で焼結させたターゲットが用いられ、電力密度:2.67W/cm 、基板温度80℃の条件でスパッタが行われた。この際、スパッタ製膜室へのガス導入量は、Ar:O が98:2(体積比)となるように調整された。金属層の形成には、銀:パラジウムを96.4:3.6の重量比で含有する金属ターゲットが用いられた。
[0082]
 本実施例においては、巻取方向に200mの長さ(金属酸化物層の厚みと長さの積で6000nm・m)にわたって連続してスパッタ製膜が行われたが、スパッタ中に異常放電の原因となる粉末が発生せず、ターゲットおよびスパッタ装置を清掃することなく連続して安定した製膜を行うことができた。
[0083]
(透明保護層の形成)
 赤外線反射層上に、リン酸エステル化合物に由来する架橋構造を有するフッ素系の紫外線硬化型樹脂からなる保護層が60nmの厚みで形成された。詳しくは、フッ素系ハードコート樹脂溶液(JSR製、商品名「JUA204」)の固形分100重量部に対して、リン酸エステル化合物(日本化薬製、商品名「KAYAMER PM-21」)を5重量部添加した溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、60℃で1分間乾燥後、窒素雰囲気下で超高圧水銀ランプにより積算光量400mJ/cm の紫外線が照射され、硬化が行われた。なお、上記リン酸エステル化合物は、分子中に1個のアクリロイル基を有するリン酸モノエステル化合物(前記の式(1)において、Xがメチル基、n=0、p=1である化合物)と分子中に2個のアクリロイル基を有するリン酸ジエステル化合物(前記の式(1)において、Xがメチル基、n=0、p=2である化合物)との混合物である。
[0084]
 上記により作製された赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、70.1%であった。
[0085]
[実施例2~7]
 以下の実施例2~7では、金属酸化物層製膜のためのターゲットの組成が変更されたこと以外は、いずれも実施例1と同様にして、赤外線反射フィルムが作製された。これらの実施例においては、いずれも実施例1と同様に、スパッタ中に異常放電の原因となる粉末が発生せず、ターゲットおよびスパッタ装置を清掃することなく、金属酸化物層の厚みと長さの積で6000nm・mにわたって、連続して安定した製膜を行うことができた。
[0086]
[実施例2]
 金属酸化物層を形成するためのスパッタリングターゲットとして、酸化亜鉛:酸化錫:金属亜鉛粉末を、14:82:4の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、69.8%であった。
[0087]
[実施例3]
 金属酸化物層を形成するためのスパッタリングターゲットとして、酸化亜鉛:酸化錫:金属亜鉛粉末を、7:83:10の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、68.6%であった。
[実施例4]
 金属酸化物層を形成するためのスパッタリングターゲットとして、酸化亜鉛:酸化錫:金属亜鉛粉末を、25.5:66.5:8の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、69.5%であった。
[0088]
[実施例5]
 金属酸化物層を形成するためのスパッタリングターゲットとして、酸化亜鉛を有さず、酸化錫:金属亜鉛粉末を85:15の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、67.7%であった。
[0089]
[実施例6]
 金属酸化物層を形成するためのスパッタリングターゲットとして、酸化亜鉛を有さず、酸化錫:金属亜鉛粉末を92:8の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、68.2%であった。
[0090]
[実施例7]
 金属酸化物層を形成するためのスパッタリングターゲットとして、酸化亜鉛:酸化錫:金属錫粉末を、19:73:8の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、67.5%であった。
[0091]
[実施例8]
 金属層の形成において、Ag-Pd合金に代えて、銀:金を90:10の重量比で含有する金属ターゲットが用いられ、Ag-Au合金からなる金属層が形成された。それ以外は、実施例3と同様にして、赤外線反射フィルムが作製された。
[0092]
[比較例1]
 金属酸化物層を形成するためのスパッタリングターゲットとして、金属粉末を有さず、酸化亜鉛:酸化錫を19:81の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。それ以外は、実施例1と同様の条件でスパッタ製膜を試みたが、直流電源での放電が生じず、金属酸化物層を製膜することができなかった。
[0093]
[比較例2]
 金属酸化物層を形成するためのスパッタリングターゲットとして、金属粉末を有さず、酸化亜鉛:酸化錫を90:10の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。それ以外は、実施例1と同様の条件で赤外線反射フィルムが作製された。連続スパッタの製膜性は実施例1と同様に良好であったが、赤外線反射フィルムの可視光線透過率は、60.1%であり、上記各実施例に比して大幅に低下していた。また、赤外線反射フィルムの耐久性(耐塩水性)も低下していた。
[0094]
[比較例3]
 金属酸化物層を形成するためのスパッタリングターゲットとして、酸化亜鉛および金属亜鉛を有さず、酸化錫:金属錫を92:8の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。それ以外は、実施例1と同様の条件でスパッタ製膜を試みたが、直流電源での放電が生じず、金属酸化物層を製膜することができなかった。
[0095]
[比較例4]
 比較例4では、第一金属酸化物層および第二金属酸化物層として、ZTOに代えて、酸化インジウム錫(ITO)が、それぞれ40nmの膜厚で製膜された。ITOの製膜には、酸化インジウム:酸化錫を90:10の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。それ以外は、実施例1と同様の条件でスパッタ製膜を行ったところ、巻取方向に25mの長さ(金属酸化物層の厚みと長さの積で1000nm・m)まで連続製膜した段階から、異常放電の発生がみられた。6000nm・mを連続製膜した後、ターゲット表面を確認したところ、異常放電の原因となる粉末の付着がみられた。
[0096]
[比較例5]
 比較例4では、第一金属酸化物層および第二金属酸化物層として、ZTOに代えて、酸化インジウム亜鉛(IZO)が、それぞれ40nmの膜厚で製膜された。IZOの製膜には、酸化インジウム:酸化亜鉛を90:10の重量比で焼結させたターゲットが用いられた。それ以外は、実施例1と同様の条件でスパッタ製膜を行ったところ、巻取方向に50mの長さ(金属酸化物層の厚みと長さの積で2000nm・m)まで連続製膜した段階から、異常放電の発生がみられた。6000nm・mを連続製膜した後、ターゲット表面を確認したところ、異常放電の原因となる粉末の付着がみられた。
[0097]
[評価]
 上記各実施例および比較例の赤外線反射フィルムの金属酸化物層の材料、および製膜に用いられたターゲットの材料組成、ならびに赤外線反射フィルムの評価結果を表1に示す。実施例2、比較例4および比較例5(IZO)の金属酸化物層製膜時の異常放電発生回数を、製膜量に対してプロットしたグラフを図3に、6000nm・mを連続製膜後にターゲット表面を拭った際の粉末の付着状況を示す写真を図4に、それぞれ示す。図3および図4において、(A),(B)および(C)は、それぞれ、実施例2(ZTO),比較例4(ITO),および比較例5(IZO)の異常放電回数および粉末付着状況を表す。
[0098]
[表1]


[0099]
 図3および図4からも明らかなように、金属酸化物層としてITOおよびIZOが製膜された比較例4および比較例5では、ターゲット表面に粉末が付着しているため、各実施例の10倍程度の回数の異常放電が発生しており、連続製膜性に劣ることが分かる。また、金属酸化物層としてITOおよびIZOを備える比較例4および比較例5の赤外線反射基板は、耐塩水試験後の赤外線反射層の劣化が大きく、外観変化および放射率の上昇が見られた。
[0100]
 金属酸化物層としてZnOが製膜された比較例2では、ターゲット表面への粉末の付着はみられなかったが、得られた赤外線反射フィルムの可視光線透過率が低く、耐久性も劣っていた。一方、亜鉛原子を含有しない酸化錫ターゲットが用いられた比較例3では、抵抗が大きいため、直流スパッタによる製膜ができなかった。また、金属酸化物のみを焼結したZTOターゲットが用いられた比較例1も、ターゲットの抵抗が大きく、直流スパッタによる製膜ができなかった。
[0101]
 これらの結果に対して、酸化亜鉛および/または酸化錫と金属粉末との焼結ターゲットが用いられた実施例1~8では、ターゲットへの粉末の付着がなく、可視光線透過率が高く、かつ耐久性に優れる赤外線反射フィルムが得られた。
[0102]
 ターゲット中の亜鉛原子と錫原子の含有量が、比較例1と同様に原子比率で30:70である実施例1~3および実施例7では、ターゲットの導電性が大幅に向上しており、直流スパッタにより、異常放電を生じることなく長尺成膜が可能であった。また、金属層としてAg-Pd合金に代えてAg-Au合金が形成された実施例8でも同様の結果が得られた。実施例1~3では、ターゲット材料中の金属含有量の増加に伴って、ターゲットの導電性が改善され、耐久性も向上する傾向がみられた。一方、金属含有量の増加に伴って、可視光線透過率が低下する傾向がみられる。これらの結果から、金属酸化物と金属粉末とを焼結したターゲットを用いて製膜された金属酸化物層中には、残存金属や、酸素不足状態の金属酸化物が存在しており、これらがスパッタによる製膜性に加えて、耐久性等の膜特性にも影響を与えているものと考えられる。
[0103]
 実施例3と実施例4とを対比すると、亜鉛原子の含有量増加に伴って、赤外線反射フィルムの耐久性が低下する傾向がみられた。この結果によれば、赤外線反射フィルムの耐久性を高める観点からは、金属酸化物層として錫リッチなZTOが製膜されることが好ましいことがわかる。また、ターゲット中に金属粉末として亜鉛を含有する実施例2,3と、錫を含有する実施例7とを対比すると、金属含有量が同等であれば、亜鉛の方がターゲットの体積抵抗率が小さく(導電性が高く)、かつ高い可視光線透過率を示すことが窺われる。この結果から、本発明においては、ターゲットの材料として金属亜鉛を含有するターゲットを用いたスパッタ製膜が行われることが特に好ましいといえる。 
[0104]
 比較例2と比較例3との対比等からも分かるように、酸化錫は、酸化亜鉛に比べて導電性が低く、一般には、錫リッチなZTOは直流スパッタによる製膜が困難である。一方、上記各実施例に示されるように、本発明においては、金属酸化物と金属粉末との焼結ターゲットが用いられることにより、耐久性に優れる錫リッチのZTOを直流スパッタにより生産性高く製膜可能であることが分かる。

符号の説明

[0105]
  100:  赤外線反射フィルム
   10:  透明フィルム基材
   20:  赤外線反射層
21,22:  金属酸化物層
   25:  金属層
   30:  保護層
   60:  接着剤層

請求の範囲

[請求項1]
 透明フィルム基材上に、金属層および金属酸化物層を有する赤外線反射層と、透明保護層とをこの順に備える赤外線反射フィルムの製造方法であって、
 前記金属酸化物層の製膜が、巻取式スパッタ装置を用いる直流スパッタ法により行われ、
 前記直流スパッタ法に用いられるスパッタターゲットは、亜鉛原子および錫原子を含有し、
 前記スパッタターゲットは、酸化亜鉛と酸化錫のうち少なくとも一方の金属酸化物と、金属粉末とが焼結されたターゲットである、赤外線反射フィルムの製造方法。
[請求項2]
 前記スパッタターゲットの形成に用いられる前記金属粉末が、金属亜鉛または金属錫を含有する、請求項1に記載の赤外線反射フィルムの製造方法。
[請求項3]
 前記スパッタターゲットの形成に用いられる、金属亜鉛と金属錫の含有量の合計が、0.1重量%~20重量%である、請求項2に記載の赤外線反射フィルムの製造方法。
[請求項4]
 前記スパッタターゲット中に含まれる亜鉛原子と錫原子の割合が、原子比で、10:90~60:40の範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルムの製造方法。
[請求項5]
 前記金属酸化物層の製膜が、金属酸化物層の厚みと長さの積で6000nm・m以上連続して行われる、請求項1~4のいずれか1項に記載の赤外線反射フィルムの製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]