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1. WO2020196568 - STRUCTURE MULTICOUCHE, ET CORPS D'EMBALLAGE

Document

明 細 書

発明の名称 多層構造体及び包装体

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006  

先行技術文献

特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008   0009  

課題を解決するための手段

0010   0011  

発明の効果

0012  

図面の簡単な説明

0013  

発明を実施するための形態

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128  

実施例

0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175  

符号の説明

0176  

請求の範囲

1   2   3  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 多層構造体及び包装体

技術分野

[0001]
 本発明は、多層構造体及び包装体に関する。

背景技術

[0002]
 食品等を長期保存する技術として、食品等を包装体に詰めて殺菌処理する方法が知られている。殺菌処理方法としては、レトルト殺菌を代表とする加熱殺菌法が従来最も一般的であるが、近年では、高圧処理法も知られている。
[0003]
 高圧処理法は、例えば、包装体に食品等を入れ、100MPa以上の静水圧を有する100℃以下の水により、加圧して殺菌する方法である。高圧処理法には、加熱殺菌法と比較して、食品等の風味、色、栄養を損失することが少ないという長所がある。また、高圧処理法によってタンパク質が変性するので、高圧処理法は、食品加工技術としても用いられる。
[0004]
 高圧処理法に用いられる包装体を構成する構造体として、例えば、特許文献1には、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物層の少なくとも一方に疎水性層を積層してなる包装材が開示されている。
[0005]
 しかしながら、食品等を高圧処理する場合、その包装体にも同様の圧力が掛かる。特許文献1に記載の包装材を用いた包装体等の従来の包装体では、高圧処理時にその圧力が原因で、包装体が部分的に白化するという問題があった。
[0006]
 かかる白化の問題を解決する技術として、例えば、特許文献2には、100MPa以上の高圧下での処理に用いられる多層構造体であって、試験速度200mm/minでのフィルムの流れ方向(MD)に対する引張試験における上降伏点応力と下降伏点応力との比:上降伏点応力/下降伏点応力が1.3以下であることを特徴とする高圧処理用多層構造体が開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0007]
特許文献1 : 日本国特開平3-290175号公報
特許文献2 : 日本国特開2018-058298号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 しかしながら、特許文献2に記載の構造体を用いた包装体を高圧処理する場合、包装体にデラミネーション(層間剥離)が発生する場合がある。これは、隣接する各層(例えば、エチレン-ビニルアルコール系共重合体層と接着樹脂層)の、圧縮率の違いによるものと推定されている。
[0009]
 そこで、本発明は、100MPa以上の高圧下で殺菌処理を行った場合でも、デラミネーションが発生しない多層構造体を提供することを課題とする。また、本発明は、この多層構造体を有する包装体を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

[0010]
 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、多層構造体がナトリウムイオンを含有するエチレン-ビニルアルコール系共重合体層を有することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0011]
 すなわち本発明の要旨は、以下の(1)~(3)である。
(1)100MPa以上の高圧下での処理に用いられる多層構造体であって、
 エチレン-ビニルアルコール系共重合体層、ヒートシール樹脂層及び接着樹脂層を有し、
 前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体層が、ナトリウムイオンを含有し、
 前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体層中のナトリウムイオンの含有量が10~500ppmである多層構造体。
(2)厚みが、20~1000μmである(1)に記載の多層構造体。
(3)(1)又は(2)に記載の多層構造体を有する包装体。

発明の効果

[0012]
 本発明の多層構造体では、100MPa以上の高圧下で殺菌処理を行った場合でも、デラミネーションが発生しない。また、当該多層構造体を用いた包装体では、100MPa以上の高圧下で殺菌処理を行った場合でも、剥離性が低く、食品等の鮮度を保つことができる。

図面の簡単な説明

[0013]
[図1] 図1は、本発明の多層構造体の一実施形態の構成を示す概略的断面図である。
[図2] 図2は、本発明の包装体として好適に用いられるスタンドアップパウチの一例を示す全体斜視図である。

発明を実施するための形態

[0014]
 以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
[0015]
 なお、本発明において、スタンドアップパウチの内容物を収容する側、すなわちヒートシール側を「内側」といい、その反対側を「外側」という。
 また、以下の説明において、「上」、「下」、「左」、「右」等の語は、図面の方向に対応する便宜的なものである。
[0016]
 また、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい、「シート」とは、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう(日本工業規格JISK6900)。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
 さらに、本発明において、ppmは質量基準である。
[0017]
[多層構造体]
 本発明の多層構造体は、100MPa以上の高圧下での処理に用いられる多層構造体であって、少なくとも、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH」と言うことがある。)層、ヒートシール樹脂層及び接着樹脂層を有する。
 以下に各層について説明する。
[0018]
<EVOH層>
 EVOH層は、EVOH樹脂組成物からなる層である。EVOH樹脂組成物は、EVOH並びに、ナトリウムイオンを含有する。
[0019]
 EVOH樹脂組成物が、ナトリウムイオンを含有すると、EVOH樹脂組成物の水酸基部分にナトリウムイオンが触媒として作用することで、例えば、EVOH樹脂組成物と接着樹脂層が有する無水マレイン酸との結合強度が向上する。結合強度の向上は、ナトリウムイオンが触媒として作用することで、無水マレイン酸を開環させることによって実現する。
[0020]
 よって、EVOH樹脂組成物が、ナトリウムイオンを含有すると、EVOH層と接着樹脂層との接着強度が向上するために、EVOH層と接着樹脂層の圧縮率の違いがあったとしても、デラミネーションを防ぐことが出来る。
[0021]
 一方で、高圧下での処理時には、高分子は圧縮し、多層構造体の全ての層で体積収縮が生じる。そのため、接着強度が最も弱い部分である、EVOH層と接着樹脂層の界面部分でデラミネーションが発生する。当該界面部分から脱圧をしたときに、当該界面部分に溜まっていた空気が膨張することで、白色化やデラミネーションが発生すると考えられる。
[0022]
 なお、EVOH樹脂組成物はナトリウムイオンを含有すると熱的安定性が変化するところ、EVOH樹脂組成物にナトリウムイオンが均一に分散していないと溶融成形時にナトリウムイオンが滞留物となることがある。
[0023]
 ここで、多層構造体に用いられる商材は、内容物の生のままの色や風味を生かすことを特徴としている。顧客がより新鮮な内容物を選び購入するため、パッケージの外観には透明性が高いものが用いられる必要があり、上記商材の外観にはより高度な低異物性が求められ、上記商材の外観上の不良は大きな問題となる。
 そのため、当業者であれば、通常、多層構造体に用いるEVOH層として、ナトリウムイオンを含有するEVOH層を用いることはない。
[0024]
(EVOH)
 EVOHは、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体(エチレン-ビニルエステル系共重合体)をケン化することにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。重合法は公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合を用いて行うことができるが、一般的にはメタノール等の低級アルコールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン-ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。このようにして製造されるEVOHは、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存した若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
[0025]
 上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場からの入手のしやすさや製造時の不純物処理効率が良い点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。他のビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、通常炭素数3~20、好ましくは炭素数4~10、特に好ましくは炭素数4~7の脂肪族ビニルエステルを用いることができる。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
[0026]
 EVOHにおけるエチレン含有率は、ISO 14663に基づいて測定した値で、20~60モル%であることが好ましく、より好ましくは25~50モル%、特に好ましくは25~35モル%である。かかる含有率が低すぎる場合は、高湿下のガスバリア性、溶融成形性が低下する傾向があり、逆に高すぎる場合は、ガスバリア性が低下する傾向がある。
[0027]
 EVOHにおけるビニルエステル成分のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOHは水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液にて)に基づいて測定した値で、90~100モル%であることが好ましく、より好ましくは95~100モル%、特に好ましくは99~100モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
[0028]
 また、EVOHのメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、0.5~100g/10分であることが好ましく、より好ましくは1~50g/10分、特に好ましくは3~35g/10分である。かかるMFRが大きすぎる場合には、製膜性が低下する傾向があり、小さすぎる場合には溶融粘度が高くなり過ぎて溶融押出しが困難となる傾向がある。
[0029]
 EVOHには、エチレン構造単位、ビニルアルコール構造単位(未ケン化のビニルエステル構造単位を含む)の他、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、更に含まれていてもよい。前記コモノマーとしては、例えば、プロピレン、イソブテン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のα-オレフィン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、3-ブテン-1,2-ジオール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物等のヒドロキシ基含有α-オレフィン誘導体;不飽和カルボン酸又はその塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド若しくは無水物;不飽和スルホン酸又はその塩;ビニルシラン化合物;塩化ビニル;スチレン等が挙げられる。
[0030]
 更に、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたEVOHを用いることもできる。
[0031]
 以上のような変性物の中でも、共重合によって一級水酸基が側鎖に導入されたEVOHは、延伸処理や真空・圧空成形等の二次成形性が良好になる点で好ましく、中でも1,2-ジオール構造を側鎖に有するEVOHが好ましい。
[0032]
 また、EVOHは、異なる他のEVOHとの混合物であってもよく、かかる他のEVOHとしては、エチレン含有率が異なるもの、ケン化度が異なるもの、メルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)が異なるもの、共重合成分が異なるもの、変性量が異なるもの(例えば、1,2-ジオール構造単位の含有量が異なるもの)等を挙げることができる。
[0033]
 EVOH樹脂組成物中のEVOHの含有量は、ガスバリア性の観点から、70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
[0034]
(EVOH樹脂組成物の作製方法)
 EVOH樹脂組成物は、EVOH並びに、ナトリウムイオンを含有する。
[0035]
 EVOH樹脂組成物を製造するには、EVOHにナトリウムイオンを含有させればよい。EVOHにナトリウムイオンを含有させるには、例えば、EVOHペレットにナトリウム化合物を接触させる方法が挙げられる。
[0036]
 なお、EVOHペレットは公知の方法で製造することができ、例えば、上述したEVOHを押出機にて溶融混練し、吐出後、切断することによって製造することができる。
[0037]
 ナトリウム化合物としては、ナトリウムの塩、酸化物、水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、分散性の点から、ナトリウムの塩が好ましい。
[0038]
 塩としては、例えば、無機塩及び有機酸塩が挙げられる。
 無機塩としては、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、ホウ酸塩、硫酸塩、塩化物塩等が挙げられる。
 有機酸塩としては、例えば、酢酸塩、酪酸塩、プロピオン酸塩、エナント酸塩、カプリン酸塩等の炭素数2~11のモノカルボン酸塩;シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、スベリン酸塩、セバチン酸塩等の炭素数2~11のジカルボン酸塩;ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、12-ヒドロキシステアリン酸塩、ベヘン酸塩、モンタン酸塩等の炭素数12以上のモノカルボン酸塩等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
[0039]
 これらの中でも、デラミネーションの発生を防ぐ観点から、有機酸塩が好ましく、炭素数2~11のモノカルボン酸塩がより好ましく、酢酸塩がさらに好ましい。
[0040]
 また、EVOHペレットにナトリウム化合物を接触させる方法としては、例えば、
i)EVOHペレットの製造段階でナトリウム化合物と接触させる方法、
ii)予め作製したEVOHペレットとナトリウム化合物とを接触させる方法、
等が挙げられる。
[0041]
 上記i)の方法としては、例えば、
ia)EVOHペレットの原料(例えば、EVOH溶液・含水組成物や乾燥EVOH等)にナトリウム化合物を添加する方法、
ib)ナトリウム化合物を含有する溶液を、EVOHペレットを押出成形する際の凝固液に添加する方法、
等が挙げられる。
[0042]
 なお、上記のEVOH溶液・含水組成物とは、EVOHペレットを製造する際に得られる、EVOHが水及びアルコールに溶融した状態の含水組成物のことを指す。
[0043]
 上記ia)の方法で、EVOH溶液・含水組成物を用いる場合には、EVOH溶液・含水組成物にナトリウム化合物を分散させればよい。また、乾燥EVOHを用いる場合には、乾燥EVOHを溶融し、かかる溶融状態のEVOHとナトリウム化合物とを押出機で溶融混練すればよい。
[0044]
 上記ii)の方法としては、例えば、
iia)ナトリウム化合物を含有する溶液をEVOHペレットに噴霧する方法、
iib)ナトリウム化合物を含有する溶液にEVOHペレットを浸漬する方法、
iic)ナトリウム化合物を含有する溶液を撹拌しながら、EVOHペレットを投入する方法、
iid)ナトリウム化合物の粉末をEVOHペレットに直接添加して混ぜ合わせる方法、
等が挙げられる。
 これらの中でも、EVOH樹脂組成物を効率よく作製できる点で、iib)の方法及びiic)の方法が好ましく、iib)の方法がより好ましい。
[0045]
 上記ナトリウム化合物を含有する溶液に用いる溶媒としては、例えば、水、アルコール、水/アルコール混合用液等が挙げられる。
 水としては、例えば、精製水、イオン交換水等が挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。
 なお、水/アルコール混合溶液において、水/アルコール(質量比)は通常90/10~10/90である。
[0046]
 上記ナトリウム化合物を含有する溶液におけるナトリウム化合物の濃度は、通常0.001~1質量%、好ましくは0.01~0.1質量%である。
 かかる濃度が低すぎると、所定量のナトリウム化合物を含有させることが困難となる傾向があり、高すぎると得られるEVOH樹脂組成物の外観が悪化する傾向にある。
[0047]
 上記ナトリウム化合物を含有する溶液の温度は、EVOH樹脂組成物を効率よく作製する観点から、通常0~120℃、好ましくは10~80℃である。
 また、上記iib)の方法において、浸漬する時間は、通常1~5分、好ましくは2~3分である。上記iic)の方法において、EVOHペレットを投入後の撹拌時間は、通常0.5~5分、好ましくは2~3分である。
[0048]
 かくして、EVOHにナトリウムイオンを含有させることができる。
 EVOH樹脂組成物中のナトリウムイオンの含有量は、好ましくは10~500ppmであり、より好ましくは50~500ppmであり、さらに好ましくは100~400ppmである。
[0049]
 ナトリウムイオンの含有量が10ppm以上であると、ナトリウムイオンがEVOH層と接着樹脂層との接着強度を高くする触媒として効果的に作用することができる。
[0050]
 また、ナトリウムイオンは、EVOHの分子鎖を切断し、EVOHを分解させる特徴がある。ナトリウムイオンの含有量が多量である場合は、EVOHの分解が促進されるために、下記の2つの問題が発生する。
(1)EVOHの粘度が下がり、EVOH層と接着樹脂層の界面が乱れてしまい、EVOH層と接着樹脂層との接着が阻害される。
(2)分解したEVOHの端部のラジカルが再度反応し、ゲルが発生してしまう。このゲルは接着樹脂と反応をしないため、EVOH層と接着樹脂層との接着が阻害される。
[0051]
 ナトリウムイオンの含有量が500ppm以下であると、ナトリウムイオンがEVOH層と接着樹脂層との界面部分に多量に存在することがないために、EVOH層と接着樹脂層との接着が阻害されない。
[0052]
 よって、ナトリウムイオンを10~500ppm含有するEVOH樹脂組成物からなるEVOH層を有する多層構造体では、100MPa以上の高圧下で殺菌処理を行った場合でも、デラミネーションが発生しない。
[0053]
 EVOH樹脂組成物中のナトリウムイオンの含有量は、例えば、上記ナトリウム化合物を含有する溶液におけるナトリウム化合物の濃度、当該溶液とEVOHペレットの接触時間、EVOHペレットの含水率等を調整することによって、上記範囲とすることができる。
[0054]
 EVOH樹脂組成物中のナトリウムイオンの含有量は、EVOH樹脂組成物を加熱灰化し塩酸で処理して得られる溶液に、純水を加えて定容したものを検液とし、原子吸光分析により定量することができる。
[0055]
 EVOH樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、光安定剤、界面活性剤、抗菌剤、乾燥剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、架橋剤、硬化剤、発泡剤、結晶核剤、防曇剤、生分解用添加剤、シランカップリング剤、酸素吸収剤等の添加剤が含有されていてもよい。なお、EVOH樹脂組成物にこれらの添加剤を含有させるには、例えば、EVOH樹脂組成物及びこれらの添加剤を混合及び撹拌すればよい。
[0056]
 上記熱安定剤としては、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させる目的で、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類、または、これらの亜鉛塩等;硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、または、これらの亜鉛塩等が挙げられる。
[0057]
 また、高圧処理により殺菌処理される包装体の包装用材料を製造する場合、EVOH樹脂組成物は、さらにポリアミド系樹脂を含有することが好ましい。なお、EVOH樹脂組成物にポリアミド系樹脂を含有させるには、例えば、EVOH樹脂組成物及びポリアミド系樹脂を混合及び撹拌すればよい。
[0058]
 ポリアミド系樹脂中のアミド結合が、EVOHの水酸基及び/又はエステル基との相互作用によりネットワーク構造を形成し、これにより、高圧処理時のEVOHの溶出を防止することができる。
[0059]
 ポリアミド系樹脂としては、公知のものを用いることができる。例えば、後述のポリアミド系樹脂層で用いるものと同様のものを用いることができる。また、EVOH樹脂組成物におけるポリアミド系樹脂の含有量は、10~20質量%が好ましく、12~15質量%がより好ましい。
[0060]
 また、EVOH樹脂組成物の酢酸含有量は、1~1000ppmであることが好ましく、より好ましくは10~500ppm、特に好ましくは20~200ppmである。酢酸含有量が多すぎる場合には、成型時に酢酸が気体となり揮発してしまうために、押出機を痛める可能性がある。酢酸含有量が少なすぎる場合にはペレットの黄変を十分に抑えることができない。
[0061]
 EVOH樹脂組成物の酢酸含有量は、EVOH樹脂組成物100部をイオン交換水250部中で撹拌下、95℃、3時間加熱し、濾液を得て、その濾液中の酢酸を水酸化ナトリウムで中和滴定し、定量することができる。
[0062]
 EVOH樹脂組成物のリン酸化合物含有量(リン酸根換算)は、10~100ppmであることが好ましく、より好ましくは15~90ppm、特に好ましくは20~70ppmである。リン酸化合物含有量(リン酸根換算)が多すぎる場合には、リン酸を架橋点としてEVOHが架橋し、増粘を引き起こす懸念がある。リン酸化合物含有量(リン酸根換算)が少なすぎる場合にはEVOHの色調が黄変する可能性がある。
[0063]
 EVOH樹脂組成物のリン酸化合物含有量(リン酸根換算)は、EVOH樹脂組成物100部を0.1規定の硝酸水溶液250部中で撹拌下、95℃、3時間加熱してリン酸塩として抽出し、このリン酸塩から、イオンクロマトグラフ法で定量することができる。
[0064]
 EVOH樹脂組成物のホウ素化合物含有量(ホウ素換算)は、0.1~2000ppmであることが好ましく、より好ましくは1~1000ppm、特に好ましくは10~500ppmである。ホウ素化合物含有量(ホウ素換算)が多すぎる場合及び少なすぎる場合には、溶融粘度が高すぎるために成膜時に安定な厚みや外観が出せなくなる可能性がある。
[0065]
 EVOH樹脂組成物のホウ素化合物含有量(ホウ素換算)は、EVOH樹脂組成物を濃硝酸とともにマイクロウェーブ分解法にて分解処理し得られた溶液に、純水を加えて定容したものを検液とし、誘導結合プラズマ発光分析計(ICP-AES)を用いて定量することができる。
[0066]
 EVOH樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2,160g)は、0.1~50g/10分であることが好ましく、より好ましくは1~20g/10分、特に好ましくは2~6g/10分である。かかるMFRが大きすぎる場合には、製膜性が低下する傾向があり、小さすぎる場合には溶融粘度が高くなり過ぎて溶融押出しが困難となる傾向がある。
[0067]
 EVOH層の厚みとしては、例えば、1層あたり、1~30μmであり、3~28μmが好ましく、5~25μmが更に好ましい。
[0068]
<ヒートシール樹脂層>
 ヒートシール樹脂層は、熱によって溶融し相互に融着し得る層である。
 ヒートシール樹脂層に用いるヒートシール樹脂としては、従来公知のヒートシール性を有する樹脂を用いることが可能である。
 例えば、ポリエチレン(例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE))、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、これらポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等の樹脂が挙げられる。
[0069]
 これらの中でも、スタンドアップパウチ等の包装体に十分な自立性を付与するという観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。中でも、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)もしくはポリプロピレンが好ましく、高圧処理後の溶出を抑制する観点から、ポリプロピレンが特に好ましい。
[0070]
 ヒートシール樹脂層の厚みとしては、例えば、3~200μmであり、10~110μmが好ましく、20~90μmが更に好ましい。なお、ヒートシール樹脂層が複数ある場合は、全て足し合わせた厚みをヒートシール樹脂層の厚みとする。かかる厚みが薄すぎるとシール部分のシール強度が低下する傾向があり、厚すぎると剛性が大きくなり、スタンドアップパウチ等の包装体に食品等を充填する際の開口性が低下する傾向がある。
[0071]
 なお、本発明における開口性とは、スタンドアップパウチ等の包装体に食品等を充填する際において、包装袋口が空気等のガス吹き付けに対して容易に開口し、自動包装に対応できる特性をいう。
[0072]
<接着樹脂層>
 接着樹脂層は、各層の接着強度を高めるために設けられる。接着樹脂層が適切に配置されていない場合、わずかな力で各層が剥離してしまい、スタンドアップパウチ等の包装体としての使用に耐えられなくなることがある。
[0073]
 接着樹脂層を構成する接着樹脂としては、公知のものを使用できる。接着樹脂としては、代表的には、不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性ポリオレフィン系重合体を挙げることができる。例えば、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリ環状オレフィン系樹脂、無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂等であり、これらから選ばれた1種または2種以上の混合物を用いることができる。
[0074]
 本発明の多層構造体中、接着樹脂層は複数あってもよい。接着樹脂層の厚みとしては、1層あたり、1~30μmであることが好ましく、より好ましくは2~20μmであり、特に好ましくは3~10μmである。
[0075]
<ポリアミド系樹脂層>
 本発明の多層構造体は、ポリアミド系樹脂層を有してもよい。
 ポリアミド系樹脂層によって、ガスバリア性および耐落袋性を向上させることができる。
[0076]
 また、EVOH層に含まれるナトリウムイオンは、EVOHとポリアミド系樹脂のラジカル反応を促進する。よって、EVOH層とポリアミド系樹脂層が隣接する場合、ナトリウムイオンの働きによって、EVOH層とポリアミド系樹脂層との結合強度が向上し、デラミネーションを防ぐことが出来る。
[0077]
 ポリアミド系樹脂層を構成するポリアミド系樹脂は、非水溶性の熱可塑性樹脂であり、公知一般のものを用いることができる。
 ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン12)等のホモポリマーの他、共重合ポリアミド系樹脂が挙げられる。
[0078]
 共重合ポリアミド系樹脂としては、例えば、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン86)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン108)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン12/66)、エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン26/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン66/610)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン6/66/610)等の脂肪族ポリアミドや、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド/テレフタルアミド共重合体、ポリ-p-フェニレンテレフタルアミドや、ポリ-p-フェニレン-3,4'-ジフェニルエーテルテレフタルアミド等の芳香族ポリアミド、非晶性ポリアミド、これらのポリアミド系樹脂をメチレンベンジルアミン、メタキシレンジアミン等の芳香族アミンで変性したものや、メタキシリレンジアンモニウムアジペート等が挙げられる。あるいはこれらのポリアミド系樹脂の末端変性ポリアミド系樹脂を用いることもできる。これらのポリアミド系樹脂は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
[0079]
 ポリアミド系樹脂を構成するアミドモノマー単位におけるアミド結合の含有率(分子量基準)は、20%~60%が好ましく、より好ましくは30%~50%、特に好ましくは35%~45%である。なお、上記含有率は、例えば、ナイロン6の場合、[-C -CONH-]の分子量におけるアミド結合(-CONH-)の分子量の割合(%)である。
[0080]
 かかる割合が小さすぎる場合は、EVOH等の極性樹脂との界面における結合力が低下しやすい傾向があり、逆に大きすぎる場合は、溶融成形時にEVOH等の極性樹脂との反応性が強すぎて共押出した際に接着界面荒れによる外観不良を引き起こす傾向がある。
[0081]
 また、ポリアミド系樹脂の融点は、160~270℃であることが好ましく、より好ましくは180~250℃、特に好ましくは200~230℃である。かかる融点が低すぎる場合は、多層構造体としたときに、耐熱性が低下する傾向がある。一方、かかる融点が高すぎると、多層構造体としたときに、他層で使用する樹脂との融点差が大きくなる。他層で使用する樹脂との融点差が大きくなると、他層で使用する樹脂と共押出成形する場合、合流時に層乱れが生じて多層構造体としたときの外観低下をもたらす傾向がある。さらに、かかる融点が高すぎると、EVOHとポリアミド系樹脂を共押出成形する際に、ダイ温度が高すぎてEVOHの熱劣化による着色を促進させる恐れがある。
[0082]
 以上の観点から、ポリアミド系樹脂としては、上記アミド結合の含有率が好ましい範囲内であり、かつ融点が好ましい範囲内であるものが最も好ましい。具体的には、例えば、ナイロン6(融点:約220℃、アミド結合の含有率:38%)、ナイロン6/66(融点:約200℃、アミド結合の含有率:38%)が最も好ましい。
[0083]
 ポリアミド系樹脂の重合度は、一般的に相対粘度で示すことができ、通常1.5~6が好ましく、より好ましくは2.0~6、さらに好ましくは2.5~5である。相対粘度が小さすぎる場合、成形時に押出機が高トルク状態になり押出加工が困難となる傾向がみられ、大きすぎる場合、得られるフィルムやシートの厚み精度が低下する傾向がみられる。なお、上記相対粘度は、JIS K6933に準じて、ポリアミド系樹脂1gを96%濃硫酸100mlに完全溶解して、25℃にて毛細管粘度計を用いて測定することができる。
[0084]
 また、本発明の多層構造体がポリアミド系樹脂層を有する場合、ポリアミド系樹脂層の厚みとしては、1~100μmであることが好ましく、より好ましくは1~80μm、更に好ましくは5~60μm、特に好ましくは10~40μmである。なお、ポリアミド系樹脂層は、単数層、複数層のいずれであってもよく、複数層の場合は、多層構造体におけるポリアミド系樹脂層厚みの総和が、上記範囲であればよい。
[0085]
 ポリアミド系樹脂層の厚みが薄すぎると、高圧処理後のガスバリア性の回復速度が遅くなる傾向があり、厚すぎると、結果的にスタンドアップパウチ等の包装体全体の厚みが厚くなってしまうことで、剛性が大きくなり、スタンドアップパウチ等の包装体に実際に食品等を充填する際の開口性が低下する傾向がある。
[0086]
<他の樹脂層>
 本発明の多層構造体は、上記した層以外に、他の樹脂層を有してもよく、また、他の樹脂層が積層される位置は任意である。
[0087]
 他の樹脂層を構成する樹脂としては、公知のものを使用できる。このような樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。
[0088]
 また、本発明の多層構造体が他の樹脂層を有する場合、他の樹脂層の厚みとしては、1層あたり1~100μmであることが好ましく、より好ましくは5~90μmであり、特に好ましくは10~80μmである。
[0089]
<基材フィルム>
 また、本発明の多層構造体は、基材フィルムを有してもよい。
 基材フィルムは、機械的、物理的、化学的等において優れた強度を有し、耐突き刺し性、耐熱性、防湿性、耐ピンホール性、透明性等に優れた樹脂のフィルムないしシートを使用することが好ましい。
[0090]
 具体的には、基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、その他の強靭な樹脂等から得られるフィルムないしシートを使用することがでる。中でも、寸法安定性および印刷適性に優れるという理由から、ポリエステル系樹脂より得られるポリエステル系樹脂フィルムが好ましい。
[0091]
 上記の樹脂のフィルムないしシートとしては、未延伸フィルム、または一軸方向もしくは二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。
[0092]
 また、本発明の多層構造体が基材フィルムを有する場合、基材フィルムの厚みとしては、強度、耐突き刺し性等について、保持され得る厚みであればよい。基材フィルムの厚みが厚すぎると、コストが上昇してしまう傾向があり、逆に、薄すぎると、強度、耐突き刺し性等が低下してしまう傾向がある。
 上記のような理由から、基材フィルムの厚みは、3~100μmであることが好ましく、特には10~50μmであることが好ましい。
[0093]
 また、基材フィルムには、必要に応じて適宜印刷層を設けることができる。印刷層としては、溶剤と、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系等のバインダー樹脂と、各種顔料、体質顔料および可塑剤、乾燥剤、安定剤等とを配合してなるインキにより形成される層である。この印刷層により、文字、絵柄等を形成することができる。印刷方法としては、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法を用いることができる。また、基材フィルムの表面を、予め前処理としてコロナ処理またはオゾン処理を施すことにより、印刷層の密着性を向上させることができる。
[0094]
<接着剤層>
 また、本発明の多層構造体は、2種類の層を貼りあわせる際に用いられる接着剤層を有してもよい。接着剤層にはドライラミネート用接着剤を用いることができる。ドライラミネート用接着剤としては、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。また、これらの接着剤を用いて2種類の層を貼り合わせる方法として、ドライラミネート法がある。
[0095]
 上記接着剤の中では、優れた接着力を有し、かつ、ウレタン結合によって接着力が低下し難い二液硬化型ウレタン系接着剤を用いることが好ましい。
 二液硬化型ウレタン系接着剤は、主剤と硬化剤からなるものであり、好ましくはポリエステルポリオールと多官能ポリイソシアネートからなる二液硬化型ウレタン系接着剤が挙げられる。この多官能ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が挙げられる。
[0096]
 本発明の多層構造体が接着剤層を有する場合、接着剤層の厚みは特段の制限はないが、十分な密着力を保持するために、0.1μm以上であることが好ましい。
[0097]
<イージーピール樹脂層>
 本発明の多層構造体は、イージーピール樹脂層を有してもよい。
 イージーピール樹脂層によって、本発明の多層構造体を有する包装体の易開封性を向上させることができる。
[0098]
 イージーピール樹脂層を構成するイージーピール樹脂としては、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンとの混合樹脂、ポリエチレンとポリブテンとの混合樹脂、ポリエチレンと熱可塑性エラストマーとの混合樹脂、ポリエチレンとポリスチレンとの混合樹脂等が挙げられる。もしくは、酢酸ビニルとポリエチレンとの多層体、ポリプロピレンとポリエチレンの多層体、密度の異なるポリエチレンを有する多層体など融点が違う樹脂組成物から形成される多層体が挙げられる。
[0099]
 また、本発明の多層構造体がイージーピール樹脂層を有する場合、イージーピール樹脂層の厚みとしては、20~200μmであることが好ましく、より好ましくは30~150μm、更に好ましくは40~120μm、特に好ましくは50~100μmである。なお、イージーピール樹脂層は、単数層、複数層のいずれであってもよく、複数層の場合は、多層構造体におけるイージーピール樹脂層厚みの総和が、上記範囲であればよい。
[0100]
<層構成>
 本発明の多層構造体の好適な実施形態として、該多層構造体10は、例えば、図1に示すように、ヒートシール樹脂層1、接着樹脂層2、及びEVOH層3を有する。
[0101]
 より具体的層構成としては、例えば、ヒートシール樹脂層/接着樹脂層/EVOH層/接着樹脂層/ヒートシール樹脂層、基材フィルム/接着剤層/ヒートシール樹脂層/接着樹脂層/EVOH層/接着樹脂層/ヒートシール樹脂層、基材フィルム/接着剤層/ヒートシール樹脂層/接着樹脂層/ポリアミド層/EVOH層/ポリアミド層/接着樹脂層/ヒートシール樹脂層、基材フィルム/接着剤層/ヒートシール樹脂層/接着樹脂層/EVOH層/ポリアミド層/接着樹脂層/ヒートシール樹脂層、基材フィルム/接着剤層/ヒートシール樹脂層/接着樹脂層/EVOH層/ポリアミド層/接着樹脂層/イージーピール樹脂層等が挙げられる。
[0102]
<層厚み>
 本発明の多層構造体の全厚は、20~1000μmであることが好ましく、より好ましくは40~500μm、更に好ましくは50~300μm、特に好ましくは60~150μmである。全厚が薄すぎると、自立性を保持するための剛性が得られない傾向がある。また、全厚が厚すぎると、剛性が大き過ぎて、スタンドアップパウチ等の包装体に実際に食品等を充填する際の開口性が低下する傾向がある。
[0103]
<多層構造体の製造方法>
 本発明の多層構造体は、例えば、溶融成形法、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法、インフレーション法等で製造することができる。中でも、溶剤を使用しないという環境面、別工程でラミネートを実施する必要がないというコスト面から溶融成形法が好ましい。
[0104]
 溶融成形方法としては、公知の手法が採用可能である。例えば、押出成形法(T-ダイ押出、チューブラーフィルム押出、ブロー成形、溶融紡糸、異型押出等)、射出成形法等が挙げられる。溶融成形温度は、通常150~300℃の範囲から、適宜選択される。
[0105]
 かくして本発明の多層構造体が製造されるが、さらに基材フィルムを積層する場合は、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法、インフレーション法等を用いることができる。
[0106]
 上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、基材フィルムの表面に、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理等の前処理を任意に施すことができる。
[0107]
 また、ドライラミネートするときには、例えば、ビニル系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、エポキシ系等をビヒクルの主成分とする溶剤型、水性型、エマルジョン型等のラミネート用接着剤等を使用することができる。
[0108]
 その際に、接着助剤として、例えば、イソシアネート系接着助剤、ポリエチレンイミン系接着助剤、その他のアンカーコート剤等を任意に使用することができる。
[0109]
 また、上記において、押出ラミネートするときには、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂等を溶融押出ラミネート用樹脂として使用することができる。
[0110]
[包装体]
 本発明の多層構造体は、包装体として使用することができ、例えば、スタンドアップパウチとして使用することができる。
[0111]
<スタンドアップパウチ>
 スタンドアップパウチは、本発明の多層構造体により形成される。スタンドアップパウチは、胴部及び胴部に対して垂直方向に設けられた底部を有し、内容物を充填した際に自立出来る剛性を有する。
[0112]
 図2は、スタンドアップパウチの一例を示す全体斜視図である。スタンドアップパウチ5は、表裏二枚の胴部シート6,6と底部シート7からなっている。胴部シート6および底部シート7は、可撓性を有したシートであり、本発明の多層構造体を所望の大きさに切り取ったものである。
[0113]
 二枚の胴部シート6,6の下部の間に底部シート7が折り畳まれた状態で挿入され、胴部シート6,6の下部縁部と底部シート7の周縁部がシールされることにより底部シール部8が形成され、重ねられた胴部シート6,6の左右の縁部がシールされることによりサイドシール部9が形成される。これにより、内容物が充填された状態で、底部シート7が拡開しスタンドアップパウチになる。
[0114]
 本発明においては、上記スタンドアップパウチ5の上部が開口した状態で、この開口部から所望の飲食品等の内容物を充填する。次いで、上方の開口部をヒートシールして天シール部等を形成して包装半製品を製造し、しかる後、該包装半製品を、高圧処理して、種々の形態からなる製品を製造することができる。
[0115]
 スタンドアップパウチは、任意の位置に継ぎ口を設けたり、意匠を付与したりすることも可能である。
 スタンドアップパウチの寸法としては、継ぎ口等を含まない多層構造体部分の寸法にて、例えば、幅Wが50~1000mm、好ましくは100~500mm、特に好ましくは100~200mm、高さHが50~1000mm、好ましくは100~500mmであり、特に好ましくは150~300mm、底部の奥行きDが10~500mm、好ましくは20~300mm、特に好ましくは30~100mmである。前記寸法は、スタンドアップパウチを構成する胴部シート6及び底部シート7のサイズを調整することにより所望の寸法とすることができる。
[0116]
 高さHと幅Wの比(H/W)は、例えば0.2~5であり、好ましくは1~3であり、特に好ましくは1より大きく1.5以下である。比(H/W)がかかる範囲にある場合、スタンドアップパウチの視認性や陳列効率が良くなる傾向がある。なお、自立式のスタンドアップパウチとするために、底部シートは折り畳まれた状態で挿入されるが、スタンドアップパウチの自立状態で、底部シートは折り畳まれた状態から開いた状態となる。
[0117]
 シート7自体は長方形であるが、スタンドアップパウチの底部の奥行きDを上記範囲とするために、底部シート7はヒートシール部位を調整することにより略楕円形状に形成される。底部シート7が形成する略楕円形サイズは、長径を胴部シート6の幅と同じサイズとし、短径は10~500mm、好ましくは20~300mm、特に好ましくは30~100mmである。かかる短径は、通常上記底部奥行Dの1~1.5倍である。
[0118]
 次に、スタンドアップパウチの具体的な製造方法について説明する。
[0119]
<スタンドアップパウチの製造方法>
 まず、スタンドアップパウチを形成するために、本発明の多層構造体を所定の幅にスリットし、胴部シート、底部シートを形成する。図2に示したように、二枚の胴部シート6,6を対向するように重ね、底部シート7を二枚の胴部シート6,6の下部の間に挟み込んで、底部と左右側辺をシールする。そして、それぞれ底部シール部8、左右のサイドシール部9を形成し、天部、即ち上部が開口したスタンドアップパウチを形成する。
 上部が開口したスタンドアップパウチ5に内容物を充填して、その後、開口部をヒートシールすることで、スタンドアップパウチ5が形成される。
[0120]
 このように形成されたスタンドアップパウチは、自立性を向上させ、かつ内容物が使用されて中身が減少しても、サイドシールの折れや包装袋の腰砕け等による変形が生じないものであり、反面、空気封入部と空気封入部の間で折り曲げることができるために、包装袋を減容化して保存することができる。また、使用後廃棄する場合でも、空気封入部と空気封入部との間を折り曲げ、折り畳んで包装袋を減容化できる。
[0121]
 なお、スタンドアップパウチは、上記胴部シート、底部シートの少なくとも一部に本発明の多層構造体を用いることにより得られる。本発明の効果をより効果的に得られる点で、上記胴部シート、底部シートの全てにおいて本発明の多層構造体を用いた、本発明の多層構造体からなるスタンドアップパウチが最も好ましい。
[0122]
<スタンドアップパウチの内容物>
 スタンドアップパウチを構成する包装用袋内に充填包装する内容物としては、例えば、果物、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、煮物、餅、液体スープ、調味料、飲料水、その他の各種の飲食品等を挙げることができる。具体的には、例えば、リンゴ、カレー、シチュー、スープ、ミートソース、ハンバーグ、ミートボール、しゅうまい、おでん、お粥等の流動食品、ゼリー状食品、水等を挙げることができる。
[0123]
[包装体の処理方法]
 本発明の多層構造体を有する包装体は、高圧処理に施される。ここで、本発明で言う高圧処理とは、例えば水を媒体として高圧条件下で行う殺菌処理である。
[0124]
 高圧処理は、一般に行われるレトルト殺菌処理と比較して、低温条件下で殺菌処理することが可能である。そのために、内容物の色、香り、栄養素を損なうことがないという利点を有し、非加熱殺菌処理として用いられている。
[0125]
 また、高圧処理は、静水圧における高圧下の処理であるために、高圧処理時には食品内に水分が浸透していく。そのために、おいしく均一な味付けが可能となることから、高圧処理は食品加工する際にも用いられている。
 さらに、高圧処理を行うと、タンパク質が高圧下で変性し、硬化することから、高圧処理はジャムやソースなどの加工食品を製造する際にも用いられることがある。
[0126]
 高圧処理で採用される圧力は、通常100MPa以上であり、好ましくは100~900MPa、より好ましくは150~800MPa、特に好ましくは200~700MPaである。
 高圧処理で採用される温度は、通常0~90℃、好ましくは5~85℃、特に好ましくは50~80℃である。
 高圧処理で採用される処理時間は、好ましくは0.5~60分、特に好ましくは1~45分である。
[0127]
 処理圧力を高くすることで殺菌能力が上がる一方で、装置への負荷が増大してしまう。一方で、処理温度を上げるには、処理装置が大型になってしまうために、処理装置のコストが上がってしまう懸念がある。実際の内容物におけるpHや水分活性により求められる殺菌条件から処理条件を求めることが望ましい。
[0128]
 なお、上記では、本発明の多層構造体を包装体としてスタンドアップパウチに使用することについて説明したが、本発明の多層構造体は、これ以外にも、例えば、ガゼット包装体、自立型でない平パウチおよびピロー包装体、トレイ、チューブ、カップ等の形状を有する包装体として使用することができる。
実施例
[0129]
 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
 なお、例中「%」とあるのは、特に断りのない限り、質量基準を意味する。
[0130]
[製造例1~4]
 エチレン含有量及びケン化度が表1記載のものになるように調整されたEVOH、酢酸ナトリウム、リン酸カルシウムを用い、金属イオン含有量及びメルトフローレート(MFR)が表1記載のものになるように調整されたEVOH樹脂組成物A~Dを得た。
[0131]
[製造例5~7]
 エチレン含有量及びケン化度が表1記載のものになるように調整されたEVOH、酢酸ナトリウムを用い、金属イオン含有量及びメルトフローレート(MFR)が表1記載のものになるように調整されたEVOH樹脂組成物E~Gを得た。
[0132]
[製造例8]
 エチレン含有量及びケン化度が表1記載のものになるように調整されたEVOH、ステアリン酸ナトリウムを用い、金属イオン含有量及びメルトフローレート(MFR)が表1記載のものになるように調整されたEVOH樹脂組成物Hを得た。
[0133]
[製造例9]
 エチレン含有量及びケン化度が表1記載のものになるように調整されたEVOH、酢酸ナトリウムを用い、金属イオン含有量及びメルトフローレート(MFR)が表1記載のものになるように調整されたEVOH樹脂組成物Iを得た。
[0134]
[製造例10~12]
 エチレン含有量及びケン化度が表1記載のものになるように調整されたEVOHを用い、メルトフローレート(MFR)が表1記載のものになるように調整されたEVOH樹脂組成物J~Lを得た。
[0135]
[製造例13]
 エチレン含有量及びケン化度が表1記載のものになるように調整されたEVOH、酢酸ナトリウムを用い、金属イオン含有量及びメルトフローレート(MFR)が表1記載のものになるように調整されたEVOH樹脂組成物Mを得た。
[0136]
[製造例14]
 エチレン含有量及びケン化度が表1記載のものになるように調整されたEVOH、ステアリン酸リチウムを用い、金属イオン含有量及びメルトフローレート(MFR)が表1記載のものになるように調整されたEVOH樹脂組成物Nを得た。
[0137]
[製造例15]
 エチレン含有量及びケン化度が表1記載のものになるように調整されたEVOH、酢酸カリウムを用い、金属イオン含有量及びメルトフローレート(MFR)が表1記載のものになるように調整されたEVOH樹脂組成物Oを得た。
[0138]
[製造例16]
 エチレン含有量及びケン化度が表1記載のものになるように調整されたEVOH、ステアリン酸カルシウムを用い、金属イオン含有量及びメルトフローレート(MFR)が表1記載のものになるように調整されたEVOH樹脂組成物Pを得た。
[0139]
[EVOH樹脂組成物A~Pの物性]
 EVOH樹脂組成物A~Pの金属イオン含有量及びメルトフローレート(MFR)は、以下に記載の方法で得た。
[0140]
(金属イオン含有量)
 各EVOH樹脂組成物10gを700℃で3時間加熱灰化し塩酸で処理して得られる溶液に、純水を加えて50mLに定容したものを検液とし、原子吸光分析により各金属イオン(ナトリウムイオン、カルシウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン)の含有量を定量した。
[0141]
(メルトフローレート(MFR))
 各EVOH樹脂組成物メルトフローレート(MFR)を、210℃、2160g荷重下で測定した。
[0142]
[表1]


[0143]
[その他の樹脂組成物]
 樹脂組成物Q及びRとして、下記のものを用意した。
樹脂組成物Q:ポリアミド6(宇部興産社製、グレード名「1020」) 融点220℃
樹脂組成物R:メタキシレンジアミン(三菱ガス化学社製、グレード名「S6007」) 融点240℃
[0144]
[実施例1]
 多層構造体に含まれる各層の材料として、以下の材料を用意した。
ヒートシール樹脂層:ポリプロピレン(日本ポリプロ社製「EA7AD」)
ホモポリプロピレン接着樹脂層:ポリプロピレン系接着樹脂(Lyondell Basell社製「プレクサー」、グレード「PX6002」)
EVOH層:EVOH樹脂組成物A
[0145]
 3種5層多層押出機(プラコー社製)を用い、ヒートシール樹脂層(35μm)/接着樹脂層(5μm)/EVOH層(10μm)/接着樹脂層(5μm)/ヒートシール樹脂層(35μm)の多層構造体を作製した。
[0146]
<多層構造体の評価>
(層間接着性)
 得られた多層構造体の、流れ方向における接着樹脂層及びEVOH層の間の剥離強度をJIS K 6854-1に基づき測定した。
[0147]
 なお、剥離強度の測定は、引張試験機「オートグラフAGS-H」(島津製作所製)を用いて以下の条件により行った。
サンプル試験片のサイズ:15mm×300mm
引張試験速度:300mm/min
チャック間距離:50mm
[0148]
 測定した剥離強度を下記基準に基づき評価した。
〔評価基準〕
A:剥離強度が10N/15mm以上であった。
B:剥離強度が3N/15mm以上10N/15mm未満であった。
C:剥離強度が3N/15mm未満であった。
[0149]
 また、得られた多層構造体について、高圧殺菌装置「Dr.Chef」(神戸製鋼所社製)を用いて、処理圧力:600MPa、処理温度:80℃、処理時間:5分間の条件で高圧処理した後、上記と同様に剥離強度を測定及び評価した。結果を表2に示す。なお、Aの場合は合格、B又はCの場合は不合格とした。
[0150]
(剥離性)
 得られた多層構造体から120mm×150mmのサイズのものを2枚用意し、それらを重ねて、その3方をヒートシールし、3方シール袋を得た。3方シール袋に超純水を30ml入れて、真空条件下でヒートシールを行い、包装体を得た。得られた包装体の状態を目視にて観察し、下記基準に基づき剥離性を評価した。
[0151]
 その後、包装体を上記条件によって高圧処理した後、下記基準に基づき剥離性を評価した。結果を表2に示す。なお、Aの場合は合格、B又はCの場合は不合格とした。
[0152]
〔評価基準〕
A:接着樹脂層とEVOH層の間に、剥離を確認できなかった。
B:接着樹脂層とEVOH層の間に、5mm×5mm未満の大きさの剥離を確認した。
C:接着樹脂層とEVOH層の間に、5mm×5mm以上の大きさの剥離を確認した。
[0153]
(酸素バリア性)
 得られた多層構造体の酸素透過度(cc/m ・day・atm)を、酸素透過率測定装置「Ox-tran2/21」(Mocon社製)を用いて以下の条件により測定した。
多層構造体の片面の測定条件:23℃、50%RH
多層構造体のもう片面の測定条件:23℃、90%RH
[0154]
 また、得られた多層構造体を上記条件によって高圧処理した後、上記と同様に酸素透過度(cc/m ・day・atm)を測定した。結果を表2に示す。
[0155]
(食物保存試験)
 得られた多層構造体から120mm×150mmのサイズのものを2枚用意し、それらを重ねて、その3方をヒートシールし、3方シール袋を得た。3方シール袋に、5質量%の食塩水30ml及びナイフで1/8の大きさにカットされたリンゴ(品名:ジョナゴールド)を入れて真空条件下でヒートシールを行い、ヘッドスペースに空気が含まれないようにして、包装体を得た。
[0156]
 得られた包装体を上記条件によって高圧処理し、23℃及び50%RHの条件下で7日間静置した後、リンゴの状態を目視にて観察し、下記基準に基づき評価した。結果を表2に示す。なお、○の場合は合格、×の場合は不合格とした。
[0157]
〔評価基準〕
○:リンゴに褐変が確認されなかった。
×:リンゴに褐変が確認された。
[0158]
[実施例2]
 EVOH層としてEVOH樹脂組成物Aの代わりにEVOH樹脂組成物Bを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層構造体を作製した。
 得られた多層構造体について、高圧処理時の処理圧力を100MPaとした以外は実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[0159]
[実施例3~6]
 EVOH層としてEVOH樹脂組成物Aの代わりにEVOH樹脂組成物B~Eを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層構造体を作製した。
 得られた多層構造体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[0160]
[実施例7]
 多層構造体に含まれる各層の材料として、以下の材料を用意した。
ヒートシール樹脂層:ポリプロピレン(日本ポリプロ社製「EA7AD」)
ホモポリプロピレン接着樹脂層:ポリプロピレン系接着樹脂(Lyondell Basell社製「プレクサー」、グレード「PX6002」)
EVOH層:EVOH樹脂組成物B
ポリアミド系樹脂層:ナイロン6(DSM社製 1022B)
[0161]
 5種5層多層押出機(プラコー社製)を用い、EVOH層(5μm)/ポリアミド系樹脂層(25μm)/接着樹脂層(5μm)/ヒートシール樹脂層(40μm)の多層構造体を作製した。
[0162]
 得られた多層構造体について、下記基準に基づき剥離性を評価した以外は実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[0163]
〔評価基準〕
A:ポリアミド系樹脂層とEVOH層の間に、剥離を確認できなかった。
B:ポリアミド系樹脂層とEVOH層の間に、5mm×5mm未満の大きさの剥離を確認した。
C:ポリアミド系樹脂層とEVOH層の間に、5mm×5mm以上の大きさの剥離を確認した。
[0164]
[実施例8]
 多層構造体に含まれる各層の材料として、以下の材料を用意した。
ヒートシール樹脂層:ポリプロピレン(日本ポリプロ社製「EA7AD」)
ホモポリプロピレン接着樹脂層:ポリプロピレン系接着樹脂(Lyondell Basell社製「プレクサー」、グレード「PX6002」)
EVOH層:EVOH樹脂組成物B
ポリアミド系樹脂層:ナイロン6(DSM社製 1020J)
[0165]
 5種7層多層押出機(プラコー社製)を用い、ヒートシール樹脂層(30μm)/接着樹脂層(5μm)/ポリアミド系樹脂層(5μm)/EVOH層(5μm)/ポリアミド系樹脂層(5μm)/接着樹脂層(5μm)/ヒートシール樹脂層(30μm)の多層構造体を作製した。
[0166]
 得られた多層構造体について、実施例7と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[0167]
[実施例9~12]
 EVOH層としてEVOH樹脂組成物Aの代わりにEVOH樹脂組成物F~Iを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層構造体を作製した。
 得られた多層構造体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[0168]
[比較例1]
 EVOH層としてEVOH樹脂組成物Aの代わりにEVOH樹脂組成物Jを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層構造体を作製した。
 得られた多層構造体について、高圧処理時の処理圧力を100MPaとした以外は実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[0169]
[比較例2]
 EVOH層としてEVOH樹脂組成物Aの代わりにEVOH樹脂組成物Jを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層構造体を作製した。
 得られた多層構造体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[0170]
[比較例3]
 EVOH層としてEVOH樹脂組成物Aの代わりにEVOH樹脂組成物Kを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層構造体を作製した。
 得られた多層構造体について、高圧処理時の処理圧力を100MPaとした以外は実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[0171]
[比較例4]
 EVOH層としてEVOH樹脂組成物Aの代わりにEVOH樹脂組成物Kを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層構造体を作製した。
 得られた多層構造体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[0172]
[比較例5~11]
 EVOH層としてEVOH樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物L~Rを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層構造体を作製した。
 得られた多層構造体について、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
[0173]
[表2]


[0174]
 表2の結果より、実施例1~12の本発明の多層構造体は、100MPa以上の高圧下で殺菌処理を行った場合でも、優れた層間接着性を有することが分かった。また、当該多層構造体を用いた包装体は、100MPa以上の高圧下で殺菌処理を行った場合でも、剥離性が低く、食品の鮮度を保つことができることが分かった。
[0175]
 本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2019年3月26日出願の日本特許出願(特願2019-059254)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

符号の説明

[0176]
1 ヒートシール樹脂層
2 接着樹脂層
3 EVOH層
5 スタンドアップパウチ
6 胴部シート
7 底部シート
8 底部シール部
9 サイドシール部
10 多層構造体

請求の範囲

[請求項1]
 100MPa以上の高圧下での処理に用いられる多層構造体であって、
 エチレン-ビニルアルコール系共重合体層、ヒートシール樹脂層及び接着樹脂層を有し、
 前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体層が、ナトリウムイオンを含有し、
 前記エチレン-ビニルアルコール系共重合体層中のナトリウムイオンの含有量が10~500ppmである多層構造体。
[請求項2]
 厚みが、20~1000μmである請求項1に記載の多層構造体。
[請求項3]
 請求項1又は2に記載の多層構造体を有する包装体。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]