Traitement en cours

Veuillez attendre...

Paramétrages

Paramétrages

Aller à Demande

1. WO2020110584 - PROCÉDÉ D'ANALYSE DE COMPOSÉ AZOÏQUE

Document

明 細 書

発明の名称 アゾ化合物の分析方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007  

先行技術文献

非特許文献

0008  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0009   0010   0011  

課題を解決するための手段

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026  

発明の効果

0027  

図面の簡単な説明

0028  

発明を実施するための形態

0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085  

符号の説明

0086  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20   21  

明 細 書

発明の名称 : アゾ化合物の分析方法

技術分野

[0001]
 本発明は、合成染料として用いられるアゾ染料に含まれるアゾ化合物を定量分析するための分析方法に関する。

背景技術

[0002]
 私たちが日常的に着用する衣類等の繊維製品には様々な化学物質が含まれており、その中には、健康被害をもたらすような、人体に対し有害性を有する物質もある。本明細書では、人体に対し有害性が明らかである物質のほか、有害である可能性がある物質、化学反応等によって有害である物質を生成する可能性がある物質を含めて、有害物質という。
[0003]
 繊維製品中の有害物質としてよく知られているものの一つは、合成染料として使用されている物質である。合成染料は低価格でありながら発色性や定着性が良好であるため、繊維製品や皮革製品の着色に広く使用されている。現在、世界で使用されている合成染料の多くはアゾ化合物を主体とするアゾ染料である。
[0004]
 アゾ化合物は、その構造中に、R-N=N-R’という二つ有機基を連結するアゾ基を一つ以上持つ有機化合物の総称であり、2000以上もの種類がある。その中の一部は、人の皮膚や腸内の細菌、或いは人体内の酵素などの働きにより還元され、発ガン性を有する又は発ガン性が疑われる芳香族第一級アミン(Primary Aromatic Amines、以下、慣用に従って「PAAs」という場合がある)を生成することが知られている。そのため、そうした発ガン性がある又は発ガン性が疑われるPAAs、及びそれを生成するアゾ化合物を含むアゾ染料は、EU(European Union)をはじめとする、各国や各地域で、繊維製品やそのほかの日用品等への使用が規制されている。例えばEUでは22物質、中国や日本ではさらに2つの物質を加えた24物質を特定PAAsとして指定し、その使用を規制している。
[0005]
 EUでは、アゾ化合物やPAAsなどの有害物質を含む化学物質の登録、評価、認可、及び制限に関する規則はREACH規則で定められており、EUへの輸入品はREACH規則に則ったものである必要がある。また、現在、繊維の原材料から最終繊維製品までを広く網羅した繊維製品中の有害物質の世界的な評価基準としては、OEKO-TEX(登録商標) Associationが推進している「STANDARD 100 by OEKO-TEX」がよく知られており(非特許文献1参照)、この基準に適合していることの認証を受けることが製造業者等に求められるようになってきている。こうした規制はますます強化される傾向にあり、繊維製品中の有害物質の検査の重要性は近年、一段と増している。
[0006]
 従来、アゾ化合物の定量的な検査には、ガスクロマトグラフ装置(GC)、液体クロマトグラフ装置(LC)、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC-MS)などが一般に利用されている(非特許文献2、3等参照)。
[0007]
 しかしながら、従来の分析手法では次のような問題がある。
 (1)全般的に検出感度が低いうえに、一部の化合物については感度がかなり低い。
 (2)夾雑物質の影響が十分に除去できず、目的とする化合物の分析の精度や感度が夾雑物質の影響を受け易い。
 (3)上記(1)、(2)の問題を回避するには、化合物の種類毎に分析装置や分析条件を変えてそれぞれ分析を行う必要があるために、分析時間が長くなり非効率的である。

先行技術文献

非特許文献

[0008]
非特許文献1 : "What is STANDARD 100 by OEKO-TEX?"、[online]、[2018年10月15日検索]、インターネット<URL: https://www.oeko-tex.com/en/consumer/what_is_standard100/what_is_standard100.xhtml>
非特許文献2 : "Developing a method for the analysis of Azo Dyes using the Agilent 1290 Infinity LC Method Development System and the Agilent Method Scouting Wizard software"、[online]、[2018年10月15日検索]、インターネット<URL: https://www.agilent.com/cs/library/applications/5990-7472EN.pdf>
非特許文献3 : "Excellent Resolution of EU-Regulated Azo Dye Aryl Amines by GC-MS on the Rxi-35Sil MS GC Column"、[online]、[2018年10月18日検索]、インターネット<URL: http://www.restek.com/Technical-Resources/Technical-Library/General-Interest/GN_GNAR2515-UNV>

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0009]
 近年、特に繊維製品の主要な輸入国・地域であるEU等ではアゾ化合物を始めとする有害物質の使用規制がますます厳格化されており、繊維製品の輸出国では繊維製品中の有害物質の検査の必要性が高まっている。しかしながら、現状では、分析に時間が掛かるために検査に多大なコストが掛かり、繊維製品の価格が高くなる、或いは、十分な利益が得られなくなるという問題がある。また、精度や感度が低い分析では検査の信頼性が低下し、繊維製品の輸出が難しくなるという問題もある。
[0010]
 なお、アゾ化合物は、工場排水、河川等の環境水、或いは繊維製品以外の各種の日用品や玩具類などにおいても、基準の差異はあるものの、概ね禁止や規制の対象である。そのため、そうしたものを対象とするアゾ化合物の検査においても事情はほぼ同じである。
[0011]
 本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、繊維製品を始めとする、様々な試料に含まれる多種類のアゾ化合物を、高い精度及び感度で以て、且つ効率良く定量的に分析することができるアゾ化合物の分析方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0012]
 上記課題を解決するために成された本発明の第1の態様は、試料中の複数の種類のアゾ化合物を分析する分析方法であって、
 逆相カラムを用いた液体クロマトグラフと質量分析装置とを組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置を使用し、目的の試料に対して第1の分析を実行し該試料中の複数のアゾ化合物を検出する第1分析ステップと、
 逆相カラムを用いた液体クロマトグラフと質量分析装置とを組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置を使用し、前記試料に対して第2の分析を実行し、該試料中の、前記第1の分析のときとは異なる複数のアゾ化合物を検出する第2分析ステップと、
 を有し、
 前記第1の分析は、酢酸アンモニウム水溶液又は蟻酸アンモニウム水溶液である第1移動相と、有機溶媒と酢酸アンモニウム水溶液又は蟻酸アンモニウム水溶液との混合液である第2移動相と、の二つを移動相としたグラジエント分析であり、
 前記第2の分析は、アンモニア又はアンモニウム塩であってpHが7.0よりも大きい水溶液である第1移動相と、有機溶媒である第2移動相と、の二つを移動相としたグラジエント分析である、ものとしている。
[0013]
 また上記課題を解決するために成された本発明の第2の態様は、試料中の複数の種類のアゾ化合物を分析する分析方法であって、
 逆相カラムを用いた液体クロマトグラフと質量分析装置とを組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置を使用し、目的の試料に対して所定の分析を実行し該試料中の複数のアゾ化合物を検出する分析ステップ、を有し、
 前記所定の分析は、酢酸アンモニウム水溶液又は蟻酸アンモニウム水溶液である第1移動相と、有機溶媒と酢酸アンモニウム水溶液又は蟻酸アンモニウム水溶液との混合液である第2移動相と、の二つを移動相としたグラジエント分析である、ものとしている。
[0014]
 さらにまた上記課題を解決するために成された本発明の第3の態様は、試料中の複数の種類のアゾ化合物を分析する分析方法であって、
 逆相カラムを用いた液体クロマトグラフと質量分析装置とを組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置を使用し、目的の試料に対して所定の分析を実行し該試料中の複数のアゾ化合物を検出する分析ステップ、を有し、
 前記所定の分析は、アンモニア又はアンモニウム塩であってpHが7.0よりも大きい水溶液である第1移動相と、有機溶媒である第2移動相と、の二つを移動相としたグラジエント分析である、ものとしている。
[0015]
 本発明の第1の態様では、前記第1分析ステップ及び前記第2分析ステップによる分析結果に基づいて、前記試料中の複数の目的のアゾ化合物についての定量値を求める処理ステップ、さらに有するものとしてもよい。また、本発明の第2及び第3の態様では、前記分析ステップでの分析結果に基づいて、前記試料中の複数の目的のアゾ化合物についての定量値を求める処理ステップ、さらに有するものとしてもよい。これによれば、試料に含まれる多種類のアゾ化合物を、高い精度及び感度で以て、且つ効率良く定量的に分析することができる。もちろん、既知のアゾ化合物について定量分析の結果がゼロであれば、該化合物は含まれない(又は検出下限以下である)と推定することができる。
[0016]
 本発明の第1乃至第3の態様において、目的試料は、典型的には、繊維製品中の物質を溶液中に抽出することで調製された液体試料である。その場合、本発明は、繊維製品中の物質を溶液中に抽出することで、前記試料としての液体試料を調製する試料調製ステップ、をさらに有するものとすることができる。
[0017]
 但し、アゾ化合物を含むアゾ染料は繊維製品以外の各種の製品に使用されている又は使用される可能性があり、一般的には、それら製品でも多くの種類のアゾ化合物の使用が規制又は禁止されている。したがって、繊維製品に限らず、そうした各種の製品から調製された試料も本発明での分析の対象となり得る。また、同様の理由で、水道水や井戸水、河川水などの環境水も分析の対象となり得る。
[0018]
 本発明において検出対象である複数のアゾ化合物は、EU、Oeko-Tex等で使用が禁止又は規制されているものとすることができる。
 具体的には、本発明の第1の態様における第1の分析、及び、本発明の第2の態様で検出対象であるアゾ化合物は、少なくとも、染料のカラーインデックス名(Colour Index Generic Name)が、Basic Red 9、Disperse Blue 1、Basic Violet 14、Disperse Blue 7、Disperse Blue 3、Disperse Red 11、Disperse Blue 102、Disperse Red 17、Disperse Yellow 39、Disperse Blue 106、Solvent Yellow 1、Disperse Orange 3、Disperse Yellow 3、Disperse Brown 1、Disperse Orange 11、Basic Green 4、Disperse Red 1、Disperse Blue 35、Disperse Yellow 49、Basic Violet 1、Solvent Yellow 3、Disperse Blue 124、Basic Violet 3、Solvent Yellow 2、Disperse Orange 37/76、Michler's Base、Disperse Blue 26、Disperse Orange 61、Disperse Yellow 56、Disperse Orange 1、Disperse Yellow 23、Basic Blue 26、Sudan Dye I、Disperse Red 151、Sudan Dye II、Sudan Dye III、Sudan Dye IV、Acid Orange 7、Acid Yellow 36、Acid Violet 49、Disperse Yellow 1、Disperse Yellow 9、Disperse Yellow 7、及び、Disperse Orange 149、である44種類のアゾ染料に含有されるアゾ化合物を含むものとすることができる。
[0019]
 一方、本発明の第1の態様における第2の分析、及び、本発明の第3の態様で検出対象であるアゾ化合物は、少なくとも、染料のカラーインデックス名が、Acid Red 26、Acid Red 114、Direct Red 28、Direct Blue 6、Direct Black 38、Direct Brown 95、Navy Blue 1、である7種類のアゾ染料に含有されるアゾ化合物を含むものとすることができる。
[0020]
 なお、上記44種類のアゾ染料中のアゾ化合物については、Acid Orange 7、Acid Yellow 36、Acid Violet 49、Disperse Yellow 1、Disperse Yellow 9、Disperse Yellow 7、及び、Disperse Orange 149の7種類が、質量分析装置において負イオン化モードで分析され、それ以外の37種類は質量分析装置において正イオン化モードで分析されるものとするとよい。
[0021]
 また、上記7種類のアゾ染料中のアゾ化合物については全て、質量分析装置において負イオン化モードで分析されるようにすることができるが、Acid Red 26、Direct Red 28、及びDirect Black 38、の3種類は、負イオン化モードと正イオン化モードとの両方で分析を行って、いずれか感度の高いほうを選択するということも可能である。
[0022]
 本発明の第1の態様における第1の分析、及び、本発明の第2の態様では、2液グラジエント溶出が行われるが、混合される二つの移動相はいずれも酢酸アンモニウム又は蟻酸アンモニウムを含む酸性(弱酸性)の液体である。典型的には、移動相中に試料が注入された時点から時間が経過するに従って、有機溶媒の濃度が徐々に上昇するような濃度勾配溶出が行われるが、その全期間に亘り、移動相は弱酸性に維持される。つまり、この分析では、酸性条件下の2液グラジエント溶出が行われる。このとき、例えば上述したBasic Red 9を始めとする44種類のアゾ染料(アゾ化合物)の全てを完全に分離できるわけではないものの、保持時間が比較的近い化合物同士については、質量電荷比又は多重反応モニタリング(MRM)トランジションの相違により十分に分離して検出することができる。
[0023]
 一方、本発明の第1の態様における第2の分析、及び、本発明の第3の態様でも、2液グラジエント溶出が行われるが、本発明の第1の態様における第1の分析とは異なり、緩衝剤としての添加物として、塩基性であるアンモニア又はアンモニウム塩が用いられる。つまり、この分析では、中性又は弱塩基性の条件下での2液グラジエント溶出が行われる。上述したAcid Red 26を始めとする7種類のアゾ染料(アゾ化合物)はスルホン酸ナトリウムを有する酸性度の高い染料であり、上述したような酸性条件の移動相を用いた場合にはイオン化が良好に行われないものと考えられ、そのために検出が困難である。これに対し、酸性ではなく中性又は弱塩基性の移動相を用いることで、上記7種類のアゾ染料を互いに良好に分離しつつ高い感度で検出することができる。
[0024]
 本発明に係る分析方法において、目的の化合物毎に選択イオンモニタリング(SIM)測定又はMRM測定が実行される場合、この測定結果に基づき抽出イオンクロマトグラム(慣用的に「マスクロマトグラム」ともいう)を作成することができる。試料中に目的の化合物が含まれている場合、その化合物に対応する抽出イオンクロマトグラムにはピークが現れる。そこで、そのピークの面積又は高さを算出し、予め作成しておいた検量線を参照して、ピークの面積値又は高さ値から含有濃度又は含有量を算出することができる。例えば、使用量が規制されている化合物の場合には、算出された含有量を規制値と比較することで、その化合物が許容範囲内であるか否かを判定することができる。一方、使用が禁止されている化合物の場合には、該化合物が検出されたか否かを判定すればよい。
[0025]
 なお、本発明での分析に際して使用される液体クロマトグラフ質量分析装置における質量分析装置は、イオン解離操作を実施しない一般的な質量分析装置でもよいが、MRM測定が可能であるタンデム型質量分析装置とするとよい。その場合、前記第1の分析及び前記第2の分析では、質量分析装置においてアゾ化合物毎に決められたMRMトランジションについての質量分析を実施するようにすればよい。
[0026]
 上記タンデム型質量分析装置は例えば、トリプル四重極型質量分析装置、四重極-飛行時間(Q-TOF)型質量分析装置、イオントラップ質量分析装置、イオントラップ飛行時間(IT-TOF)型質量分析装置などである。Q-TOF型質量分析装置やIT-TOF型質量分析装置では、得られたプロダクトイオンスペクトルデータの中から特定のm/z値を有するプロダクトイオンの強度データを抽出することで、実質的にMRM測定と同様の、特定のMRMトランジションに対するイオン強度データを取得すればよい。

発明の効果

[0027]
 本発明によれば、繊維製品を始めとする様々な試料に含まれる、多種類のアゾ化合物を、高い精度及び感度で以て、且つ効率良く分析することができる。特に、本発明の第1の態様によれば、典型的な有害物質である主要なアゾ化合物を、2回の分析によりほぼ網羅的に分析することができる。それにより、アゾ化合物の検査の効率を向上させることができ、検査に掛かるコストの低減を図ることができる。

図面の簡単な説明

[0028]
[図1] 本発明に係る分析方法を実施するための分析システムの一例の概略構成図。
[図2] 図1に示す分析システムにおいてコンピュータに搭載される制御・処理ソフトウェアの内容を示す概略図。
[図3] 本例の分析システムで実施されるアゾ染料第1群一斉分析メソッドの際のグラジエントプログラムを示す図。
[図4] 本例の分析システムで実施されるアゾ染料第2群一斉分析メソッドの際のグラジエントプログラムを示す図。
[図5] 特定芳香族アミン一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図6] アゾ染料第1群一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図7] アゾ染料第1群一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図8] アゾ染料第2群一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図9] PFCs一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図10] AP一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図11] APEO一斉分析メソッドにおける分析対象の物質の一覧を示す図。
[図12] 特定芳香族アミン一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図13] アゾ染料第1群一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図14] アゾ染料第1群一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図15] アゾ染料第2群一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図16] PFCs一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図17] AP一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図18] APEO一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図19] APEO一斉分析メソッドにおける物質毎のMS/MS分析条件を示す図。
[図20] アゾ染料第1群一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例を示す図。
[図21] アゾ染料第2群一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例を示す図。

発明を実施するための形態

[0029]
 本発明に係るアゾ化合物分析方法の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
 <本発明の一実施形態による分析方法を実施するシステムの構成>
 図1は、本実施形態による分析方法を実施するための分析システムの一例の概略構成図である。この分析システムは、原則として、繊維製品に含まれるアゾ化合物などの有害物質を検査するためのシステムであるが、繊維製品以外の、例えば日用品、玩具、環境水などを対象とする検査に利用することもできる。
[0030]
 図1に示すように、この分析システムは、測定部10として、液体クロマトグラフ(LC)部11とトリプル四重極型質量分析(MS/MS)部12とから成る液体クロマトグラフ質量分析装置を備える。また、LC部11とMS/MS部12の動作をそれぞれ制御する制御部22と、MS/MS部12で取得されたデータを処理するデータ処理部21と、ユーザインターフェイスである入力部27及び表示部28と、を含む。
[0031]
 LC部11は、それぞれ異なる移動相が収容された二つの移動相容器111、112と、2種類の移動相を所定の混合比率で混合するミキサ113と、ミキサ113で混合された移動相を送給する送液ポンプ114と、移動相に所定量の液体試料を注入するインジェクタ115と、液体試料中の物質を時間方向に分離するカラム116と、カラム116を温調するカラムオーブン117と、を有する。
[0032]
 また、MS/MS部12は、導入された液体試料中の物質をエレクトロスプレーイオン化(ESI)法によりイオン化するESIイオン源121と、特定のm/z値を有するイオンをプリカーサイオンとして選択的に通過させる前段四重極マスフィルタ122と、プリカーサイオンを衝突誘起解離(CID:Collision-Induced Dissociation)により解離するコリジョンセル123と、CIDにより生成された各種のプロダクトイオンの中で特定のm/z値を有するプロダクトイオンを選択的に通過させる後段四重極マスフィルタ124と、イオンを検出するイオン検出器125と、を有する。なお、ESIイオン源121の代わりに、エレクトロスプレーイオン化と大気圧化学イオン化とを同時に行うことが可能なDUIS(DUal Ion Source)のイオン源を用いてもよい。
[0033]
 制御部22は、機能ブロックとして、LC制御部23、MS制御部24、分析条件設定部25、メソッド記憶部26などを含む。データ処理部21は、MS/MS部12のイオン検出器125から出力されるイオン強度信号をデジタル化するアナログデジタル変換器を含み、該アナログデジタル変換器により得られたデータに基づいて、既定の複数の有害物質それぞれについて定量値(含有量又は濃度値)を算出する。また、データ処理部21は、算出された定量値が予め決められている規制値を超えているか否かを判定し、その判定結果を定量値と共に出力する機能を有する。
[0034]
 なお、制御部22及びデータ処理部21の実体はパーソナルコンピュータであるので、図1では、これを符号20で示している。パーソナルコンピュータにインストールされた専用の制御・処理用プログラムが該コンピュータにおいて実行されることにより、データ処理部21や制御部22の各機能が達成される。
[0035]
 図2は、本例の分析システムを構成するパーソナルコンピュータ20にインストールされるアプリケーションソフトウェア及びメソッドパッケージの内容を示す概略図である。分析基本制御プログラム100は、測定部10における分析動作を実施するための基本的な制御、及びデータ処理部21で実施されるデータ処理を、コンピュータに実行させるための基本的なソフトウェアである。この分析基本制御プログラム100は、分析に際して必要である様々なパラメータや分析条件をユーザに入力させる機能を有する分析条件設定プログラム110を含む。なお、分析基本制御プログラム100は、分析対象の試料の種類が何であるのかに拘わらず、つまりは、後述するメソッドパッケージ以外のメソッドに従った分析を行う場合でも、分析に際して常に使用されるプログラムである。
[0036]
 本例の分析システムでは、繊維製品中の主要な有害物質を網羅的に定量分析するのに特化された測定メソッドを集めた、繊維製品中有害物質対応メソッドパッケージ200が、パーソナルコンピュータ20に導入される。このメソッドパッケージ200はメソッド記憶部26に格納される。メソッドパッケージ200に含まれる各分析メソッドは、特定の複数の物質を定量分析するために好適である分析条件やパラメータ(以下、これらをまとめて単に「分析条件」という)を制御情報として含む。
[0037]
 具体的には、各分析メソッドは、LC部11における分析条件として、カラムの種類、移動相の種類、グラジエント溶離条件(グラジエントプログラム)、移動相流量(又は流速)、カラムオーブン温度、試料注入量、などの情報を含む。また、各分析メソッドは、MS/MS部12における分析条件として、イオン源の種類(イオン化法の種類)、イオン化モード(正イオン化モード又は負イオン化モードのいずれか)、イオン源や脱溶媒管等の温度、イオン源におけるネブライズガス等のガス流量、検出対象である物質毎の保持時間、検出対象である物質毎の定量イオン及び確認イオンのMRMトランジション(プリカーサイオンとプロダクトイオンのm/z値)、各MRMトランジションに対応するコリジョンエネルギや、四重極マスフィルタ等の各部へ印加される直流バイアス電圧、などの情報を含む。
[0038]
 <繊維製品中有害物質対応メソッドパッケージの詳細>
 本例の分析システムにおいて、繊維製品中有害物質対応メソッドパッケージ200は、特定芳香族アミン一斉分析メソッド210、アゾ染料第1群一斉分析メソッド220、アゾ染料第2群一斉分析メソッド230、PFCs一斉分析メソッド240、及び、AP一斉分析メソッド250、APEO一斉分析メソッド260、という6種類の分析メソッドを含む。
 以下に、各分析メソッドにおける分析対象の物質又は化合物の種類、及び、主要な分析条件を説明する。
[0039]
 [1]特定芳香族アミン一斉分析メソッド210
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、有害物質として知られている主要な芳香族第一級アミンであり、具体的には、図5に示す24種類の化合物である。これらは、現在、EUで使用が規制されている22種類と、日本、中国で規制に加えられている2種類とを含む。図5には、各化合物の、化合物名、分子式、CAS番号、及び精密質量を示している。
[0040]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、150 mm L×2 mm I.D.)
  ・移動相A:Water with 5mM Ammonium Acetate(pH3.0)、
  ・移動相B:Acetonitrile、
  ・分析時間:13 min、
  ・グラジエント溶離条件(グラジエントプログラム):2%移動相B(0.00 min~1.00 min)→100%移動相B(6.00 min~9.00min)→35%移動相B(9.01 min~13.00 min)、
[0041]
 また、この分析メソッドにおける主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図12に示すとおりである。原則として、化合物毎に、1個の定量イオンのMRMトランジションと、2個の確認イオン(定量イオンのイオン強度とのイオン強度比に基づいて定量イオンが目的物質であるのか否かを確認するために用いるイオン)のMRMトランジションを定めている。なお、イオン化モードは全て正イオン化モードである。
[0042]
 [2]アゾ染料第1群一斉分析メソッド220
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、上記芳香族第一級アミンを生成する元となる主要なアゾ化合物を含むアゾ染料である。具体的には、図6及び図7に示す、合計で44種類の染料である。但し、有害物質として使用が規制されている多種類のアゾ染料は、同じ分析条件の下での1回の分析で全てを検出することが難しい。そのため、主要なアゾ化合物を第1群の44種類と第2群の7種類とに分け、それぞれ異なる分析条件で以て検出するようにしている。図6及び図7には、各染料の、染料名(カラーインデックス名)、含まれるアゾ化合物の分子式、CAS番号、及び精密質量を示している。
[0043]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、75 mm L×2 mm I.D.)、
  ・移動相A:Water with 5 mM Ammonium Acetate、
  ・移動相B:Acetonitrile:Water(9:1) with 5 mM Ammonium Acetate、
  ・分析時間:20 min、
  ・グラジエント溶離条件(グラジエントプログラム):35%移動相B(0.00 min~0.50 min)→100%移動相B(12.00 min~17.00 min)→35%移動相B(17.10 min~20.00 min)、
[0044]
 図3は、上記グラジエント溶離条件に基づく移動相Bの混合比率の時間的な変化を示すグラフである。移動相A、Bの両方に添加されているAmmonium Acetateは、移動相を酸性に調整する際に一般的に使用される添加物である。したがって、この分析メソッドでは、移動相の混合条件に拘わらず、分析時間の全範囲に亘り、移動相は弱酸性に維持される。また、試料注入後0.5min経過時点から12.0min経過時点までの期間中、有機溶媒であるアセトニトリルの濃度が直線的に上昇する。
[0045]
 この分析メソッドにおける主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図13及び図14に示すとおりである。原則として、化合物毎に、1個の定量イオンのMRMトランジションと、2個の確認イオンのMRMトランジションを定めているが、2個以上の適切な確認イオンを選定できない化合物については確認イオンは1個のみである。また、この分析メソッドでは、図13、図14において番号が1~37までの37種類の化合物については正イオン化モードでの分析を行い、番号が38以降の7種類の化合物については負イオン化モードでの分析を行う、というように、イオン化モードを分析の途中で切り替える。
[0046]
 [3]アゾ染料第2群一斉分析メソッド230
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、上記アゾ染料第1群一斉分析メソッド220では適切に分析できないようなアゾ化合物を含むアゾ染料である。具体的には、図8に示す7種類のアゾ染料である。図6、図7と同様に、図8には、各染料の、染料名、含まれるアゾ化合物の分子式、CAS番号、及び精密質量を示している。
[0047]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、75 mm L×2 mm I.D.)、
  ・移動相A:Water with 5 mM Ammonium Bicarbonate、
  ・移動相B:Acetonitrile、
  ・分析時間:10 min、
  ・グラジエント溶離条件(グラジエントプログラム):2%移動相B(0.00 min~0.50 min)→90%移動相B(6.00 min~7.50 min)→2%移動相B(7.51 min~10.00 min)、
 移動相Aに添加されているAmmonium BicarbonateはAmmonium Acetateに比べてpHが高く(pHが7よりも高い弱アルカリ性)、移動相のpHを中性~弱アルカリ性に調整する際に用いられる添加物である。このアゾ染料第2群一斉分析メソッド230は上記アゾ染料第1群一斉分析メソッド220とカラムの種類は同じであるが、移動相の種類とグラジエント溶出条件が全く異なる。
[0048]
 図4は、上記グラジエント溶離条件に基づく移動相Bの混合比率の時間的な変化を示すグラフである。この分析メソッドでは、移動相の混合条件に拘わらず、分析時間の全範囲に亘り、移動相は中性又は弱塩基性に維持される。また、試料注入後0.5min経過時点から6.0min経過時点までの期間中、有機溶媒であるアセトニトリルの濃度が直線的に上昇する。
[0049]
 この分析メソッドにおいて主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図15に示すとおりである。ここでは、Acid red 26、Direct Red 28、Direct black 38の3種類の染料については、正イオン化モードと負イオン化モードの両方のイオン化モードでの分析を行うため、物質の種類は7種類であるが、検出するのは10種類である。これら3種類の染料では、装置の器差やイオン化モード以外の条件によって、正イオン化モードのほうが感度が良い場合と、負イオン化モードのほうが感度が良い場合とがあり得る。そこで、正イオン化モードでの分析と負イオン化モードでの分析とを両方実施し、いずれか感度が良好であるほうの結果を採用する。一方、それ以外の4種類の染料については、通常、正イオン化モードに比べて負イオン化モードのほうが感度が高いため、負イオン化モードのみの分析を行う。
[0050]
 [4]PFCs一斉分析メソッド240
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、EU、Oeko-Tex等で使用が禁止又は制限されている有機フッ素化合物である。具体的には、図9に示す24種類の化合物である。図9には、各化合物の、化合物名、略称、分子式、CAS番号、及び精密質量を示している。
[0051]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、75 mm L×2 mm I.D.)、
  ・移動相A:Water with 5 mM Ammonium Acetate、
  ・移動相B:Acetonitrile、
  ・分析時間:13 min、
  ・グラジエント溶離条件(グラジエントプログラム):10%移動相B(0.00 min~0.50 min)→85%移動相B(8.50 min)→95%移動相B(8.60 min~10.00 min)→10%移動相B(10.10 min~13.00 min)、
[0052]
 この分析メソッドにおける主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図16に示すとおりである。イオン化モードは全て負イオン化モードである。
[0053]
 [5]AP一斉分析メソッド250
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、EU等で使用が規制されているアルキルフェノールである。具体的には、図10に示す4種類の化合物である。図10には、各化合物の、化合物名、略称、分子式、及び精密質量を示している。
[0054]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、75 mm L×2 mm I.D.)、
  ・移動相A:Water、
  ・移動相B:Acetonitrile、
  ・分析時間:11 min、
  ・グラジエント溶離条件(グラジエントプログラム):50%移動相B(0.00 min~0.50 min)→95%移動相B(7.00 min~9.00 min)→50%移動相B(9.10 min~11.00 min)、
[0055]
 この分析メソッドにおいて主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図17に示すとおりである。イオン化モードは全て負イオン化モードである。この場合、NP、4-n-OPの2種類の化合物は適切な確認イオンが一つしか選定できない。また、4-n-NP、4-t-OPの2種類の化合物は適切な確認イオンを1個も選定することができず、確認イオンを用いない。
[0056]
 [6]APEO一斉分析メソッド260
 この分析メソッドによる分析対象の物質は、上記アルキルフェノールを生成するおそれがあるアルキルフェノールエトキシレートである。具体的には、図11に示す2種類の化合物である。但し、NPEO、OPEOのいずれも、C 24Oの数nが異なる同族体が多数存在し、それぞれ質量が相違する。そのため、NPEOではn=3~17、OPEOではn=3~16の範囲の各同族体を検出対象とし、それぞれ異なるMRMトランジションを定めている。
[0057]
 この分析メソッドにおける主要なLC分析条件は以下のとおりである。
  ・カラム種類:ODSカラム(具体的には、株式会社島津ジーエルシー製、Shim-pack FC-ODS 3μm C18 100A、75 mm L×2 mm I.D.)、
  ・移動相A:Water with 10 mM Ammonium Acetate(pH 3.6)、
  ・移動相B:Acetonitrile、
  ・分析時間:7 min、
  ・グラジエント溶離条件(グラジエントプログラム):70%移動相B(0.00 min~1.00 min)→95%移動相B(1.01 min~5.00 min)→70%移動相B(5.10 min~7.00 min)、
[0058]
 この分析メソッドにおいて主要なMS/MS分析条件である保持時間及びMRMトランジションは、図18及び図19に示すとおりである。イオン化モードは全て正イオン化モードである。
[0059]
 上述した6種類の分析メソッドにおいて、カラムはいずれもODSカラムであるが、特定芳香族アミン一斉分析メソッドではカラム長が150mmでありそれ以外の分析メソッドではカラム長が75mmである。したがって、作業者は、特定芳香族アミン一斉分析メソッドによる分析の際にはカラムを交換する、又は、カラムを複数並列に選択可能に配置した構成で、使用するカラムを切り替える必要がある。また、作業者は各分析メソッドに対応した移動相を用意する必要がある。
[0060]
 上述したように、繊維製品中有害物質対応メソッドパッケージ200に含まれる各分析メソッド210~260には、それぞれ異なるLC分析条件やMS/MS分析条件が収録されているから、分析基本制御プログラム100は、分析を実行する際に、上述した分析メソッド210~260に収録されている分析条件に従って、各部の動作を制御する。
 また、図12~図19には記載していないが、各MRMトランジションにはそれぞれに対応して、コリジョンエネルギ(実際には、コリジョンセル123内に配置されるイオンガイドに印加される直流バイアス電圧など)や四重極マスフィルタ122、124に印加される直流バイアス電圧などの最適値が規定されている。
[0061]
 なお、上述の各分析メソッドにおいて、カラムとしてODSカラム以外の逆相カラムを用いても構わない。また、移動相に使用されている有機溶媒はAcetonitrileに限らず、例えばMetanolなどでも構わない。また、移動相に添加剤として使用されているAmmonium Acetateに代えてAmmonium formateでもよい。また、移動相に添加剤として使用されているAmmonium Bicarbonateに代えて、pHが7.0よりも高いアンモニアや他のアンモニウム塩を用いることもできる。
[0062]
 <有害物質を分析する際の手順及び処理>
次に、本例の分析システムを用いて、繊維製品中の有害物質の検査を実施する際の手順及び処理について説明する。
[0063]
 作業者は、分析対象である繊維製品から、分析に供する液体試料を調製する。この試料調製方法は従来から行われているごく一般的な手順である。即ち、まず、作業者は分析対象の繊維製品を所定の大きさ(重さ)に切断し、その小片を遠沈管中に投入する。そして、遠沈管に所定量のメタノールを注入し、所定温度で所定時間だけ超音波振動を加えることで繊維小片に含まれる成分の抽出を促す。そのあと、遠心分離を行い、抽出物を一旦乾燥させたあと、所定の溶媒に溶解させ溶液を再構成する。最後に、溶液をフィルタで濾過して微細な混入物を除去し、液体試料を取得する。
[0064]
 上述したように調製された液体試料を、本例の分析システムにより分析する。即ち、作業者は、上述した6種類の分析メソッドのうちのいずれの分析メソッドによる分析を行うのかを決め、その分析メソッドに対応する移動相を用意してLC部11にセットする。また、カラムを交換する必要があれば、カラムを分析メソッドに対応したものに交換する。そして、入力部27で所定の操作を行い、パーソナルコンピュータ20において分析基本制御プログラム100を立ち上げる。分析基本制御プログラム100に含まれる分析条件設定プログラム110が実行されると、分析条件設定部25が機能し、メソッド記憶部26に格納されている6種類の分析メソッドの選択指示画面を表示部28に表示する。この選択指示画面上には、6種類の分析メソッドの名称が一覧表示され、作業者は実行したい分析メソッドを選択したうえで、測定の開始を指示する。
[0065]
 測定開始が指示されると、LC制御部23、MS制御部24はそれぞれ、選択された分析メソッドに規定されている分析条件を読み込み、その分析条件のパラメータ値等に従ってLC部11とMS/MS部12の各部を制御する。
 いま一例として、作業者により、アゾ染料第1群一斉分析メソッドが選択され、測定の開始が指示された場合を考える。
[0066]
 測定開始の指示を受けてLC制御部23は、当初、LC部11において、移動相Aが65%、移動相Bが35%の混合比率で両移動相が混合されてカラム116に送給されるようにミキサ113を制御する。そして、インジェクタ115で液体試料を移動相中に注入した時点(0.00min)から0.50minが経過するまで、その混合比率を維持する。0.50minが経過した時点から12.00minまでの間は、移動相Bの混合比率が35%から100%まで直線的に増加するようにミキサ113を制御し、12.00minから17.00minが経過するまでの間は、その混合比率(移動相B:100%)を維持する。さらに、液体試料注入時点から17.00minが経過した時点から17.10minまでの間は、移動相Bの混合比率が100%から35%まで直線的に減少するようにミキサ113を制御し、17.10min以降はその混合比率(移動相B:35%)を維持する。
[0067]
 上述したように、移動相A、Bは共に酢酸アンモニウムを含むため、移動相は常に弱酸性に維持される。また、移動相Bの混合比率が直線的に上昇するに伴い、移動相中のアセトニトリルの濃度が直線的に上昇する。このように、移動相A、Bの混合比率を時間経過に伴って変化させることで、図6及び図7に示した44種類のアゾ染料に対応するアゾ化合物の少なくとも一つが液体試料に含まれる場合に、該アゾ化合物はその保持時間に応じて他の化合物と分離される。
[0068]
 また、アセトニトリルの濃度を上昇させない場合、遅れて溶出して来る化合物の時間遅れが大きく、分析時間が非常に長くなる。これに対し、アセトニトリルの濃度を図3に示したように上昇させることで、早期に溶出する化合物の分離性を保ちつつ、遅れて溶出する化合物の溶出を早め、分析時間を短縮することができる。
[0069]
 また、図6及び図7に示した44種類のアゾ染料に含まれるアゾ化合物の中で時間的に遅れて溶出する化合物は、MS/MS部12のESIイオン源121で比較的イオン化されにくく、感度が低い。それに対し、アセトニトリルは粘性が比較的高いため、アセトニトリルの濃度が高くなるほどMS/MS部12のESIイオン源121での微小液滴の生成が良好になり、イオン化効率が向上する。それにより、時間的に遅れて溶出する化合物の検出感度を高めることができるという効果もある。
[0070]
 一方、MS制御部24は、選択された分析メソッドにおいて化合物毎に規定されている保持時間を中心として、所定の時間幅を確保した検出時間範囲を化合物毎に定める。そして、液体試料注入時点以降、各化合物の検出時間範囲において、その化合物に規定されている定量イオン及び確認イオンのMRMトランジションに対応するMRM測定を実行するように、MS/MS部12の各部を制御する。また、MRMトランジションに対応して定められているコリジョンエネルギ等に応じて各部に印加する電圧を変化させる。なお、周知のように、トリプル四重極型質量分析装置では同じ時間帯に複数の異なるMRMトランジションのMRM測定を実質的に並行して(厳密には時間分割で以て)行うことができるから、異なる化合物に対する検出時間範囲の一部が重なっていても、或いは、同じ検出時間範囲に定量イオンと確認イオンという複数のイオンについてのMRM測定を実施する必要があっても、何ら問題はない。
[0071]
 図20は、アゾ染料第1群一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例である。この図では、各クロマトグラムのカーブがいずれの化合物に対応するのかの記載を省略しているが、図13及び図14に示した各化合部の保持時間から、各化合物とクロマトグラムカーブとの対応は明白である。
[0072]
 図20においてa及びbで示した期間は図3中のa及びbの期間にそれぞれ対応しており、aは移動相Bの混合比率が上昇している期間、bは移動相Bの混合比率が100%一定に保たれている期間である。このクロマトグラムから、44種類の各化合物が概ね良好に分離され、且つそれぞれ十分な強度で観測されていることが分かる。また、異なる化合物に由来する一部のピークは時間的に重なるものの、MRMトランジションの相違によって十分に分離することが可能である。したがって、データ処理部21では、こうして作成したクロマトグラム上で検出対象の物質に対応するピークの面積を計算し、そのピーク面積を検量線に照らして定量値(含有量)を算出することができる。また、44種類もの多種類のアゾ化合物を一斉に分析しながら、その分析時間は20分に収まる。
[0073]
 使用が規制されている主要なアゾ化合物を網羅的に調べる場合、上述したアゾ染料第1群一斉分析メソッドを用いた分析のほか、アゾ染料第2群一斉分析メソッドを用いて同じ試料についての分析を実施する。上述したように、この分析では、アゾ染料第1群一斉分析メソッドを用いた分析とは異なる種類の移動相が用いられる。
[0074]
 作業者により、アゾ染料第2群一斉分析メソッドが選択され、測定の開始が指示されると、LC制御部23は、まずLC部11において、移動相Aが98%、移動相Bが2%の混合比率で両移動相が混合されてカラム116に送給されるようにミキサ113を制御する。そして、インジェクタ115で液体試料を移動相中に注入した時点(0.00min)から0.50minが経過するまで、その混合比率を維持する。0.50minが経過した時点から6.00minまでの間は、移動相Bの混合比率が2%から90%まで直線的に増加するようにミキサ113を制御し、6.00minから7.50minが経過するまでの間は、その混合比率(移動相B:90%)を維持する。さらに、液体試料注入時点から7.50minが経過した時点から0.01minの間に、移動相Bの混合比率が90%から2%まで直線的に減少するようにミキサ113を制御し、7.51min以降はその混合比率(移動相B:2%)を維持する。
[0075]
 上述したように、移動相Aは添加剤として重炭酸アンモニウムを含み、移動相Bはアセトニトリルであるから、移動相は中性付近(中性~弱アルカリ性)に維持される。また、移動相Bの混合比率が直線的に上昇するに伴い、移動相中のアセトニトリルの濃度は直線的に上昇する。このように、中性付近のpH条件の下で、移動相A、Bの混合比率を時間経過に伴って変化させることで、図8に示した7種類のアゾ染料に対応するアゾ化合物の少なくとも一つが試料に含まれる場合に、該アゾ化合物はその保持時間に応じて他の化合物と分離される。
[0076]
 また、アセトニトリルの濃度を上昇させない場合、遅れて溶出して来る化合物の時間遅れが大きく、分析時間が非常に長くなる。これに対し、アセトニトリルの濃度を図4に示したように上昇させることで、早期に溶出する化合物の分離性を保ちつつ、遅れて溶出する化合物の溶出を早め、分析時間を短縮することができる。
[0077]
 また、図8に示した7種類のアゾ染料に含まれるアゾ化合物の中で時間的に遅れて溶出する化合物はMS/MS部12のESIイオン源121で比較的イオン化されにくく、感度が低い。それに対し、アセトニトリルは粘性が比較的高いため、アセトニトリルの濃度が高くなるほどMS/MS部12のESIイオン源121での微小液滴の生成が良好になり、イオン化効率が向上する。それにより、時間的に遅れて溶出する化合物の検出感度を高めることができるという効果もある。
[0078]
 一方、MS制御部24は、選択された分析メソッドにおいて化合物毎に規定されている保持時間を中心として、所定の時間幅を確保した検出時間範囲を化合物毎に定める。そして、液体試料注入時点以降、各化合物の検出時間範囲において、その化合物に規定されている定量イオン及び確認イオンのMRMトランジションに対応するMRM測定を実行するように、MS/MS部12の各部を制御する。また、MRMトランジションに対応して定められているコリジョンエネルギ等に応じて各部に印加する電圧を変化させる。また、Acid Red 26、Direct Red 28、Direct Black 38の3種類のアゾ染料中の化合物は、正イオン化モードと負イオン化モードの両方で分析される。
[0079]
 図21は、アゾ染料第2群一斉分析メソッドによる分析で得られる抽出イオンクロマトグラムの実測例である。図21では、一つの化合物について濃度の相違する複数の液体試料の分析結果を重ねて示しているため、同一保持時間にピーク強度が相違する複数のクロマトグラムカーブが描かれている。
[0080]
 この場合、7種類の全てのアゾ化合物が、移動相Bの混合比率が上昇している期間に検出される。このクロマトグラムから、7種類の各化合物が概ね良好に分離され、且つそれぞれ十分な強度で観測されていることが分かる。また、異なる化合物に由来する一部のピークは時間的に重なるものの、MRMトランジションの相違によって十分に分離することが可能である。したがって、データ処理部21では、こうして作成したクロマトグラム上で検出対象の物質に対応するピークの面積を計算し、そのピーク面積を検量線に照らして定量値(含有量)を算出することができる。また、7種類のアゾ化合物を一斉に分析しながら、その分析時間は10分に収まる。
[0081]
 以上のように、本例の分析システムを用いて実施される、本発明の一実施形態の分析方法によれば、同じ試料に対する2回の分析、つまり上述したアゾ染料第1群一斉分析メソッドによる分析及びアゾ染料第2群一斉分析メソッドによる分析によって、代表的な有害物質である多数のアゾ化合物を網羅的に定量することができる。それにより、効率の良い有害物質の検査が可能である。
[0082]
 上記実施形態の説明では、アゾ染料第1群一斉分析メソッドで44種類、アゾ染料第2群一斉分析メソッドで7種類のアゾ化合物の定量分析を実施していたが、その全てのアゾ化合物を分析するのではなく一部の化合物が分析対象から除外されていてもよい。また、それらに加えて、さらに別のアゾ化合物、及び/又は、アゾ化合物以外の化合物の定量分析を行えるようにしてもよい。
[0083]
 また、上記実施形態の説明における、グラジエントプログラムは一例であり、各移動相の混交比率、及び、混合比率を変化させる時間は、本発明の趣旨の範囲で、適宜変更することができる。また、混合される移動相A、Bに添加されている添加物の濃度も、単に一例である。また、各化合物の保持時間は移動相の種類のみならず移動相の流速によっても変わるから、上記実施形態で記載した保持時間は一例である。また、各化合物の定量イオン及び確認イオンは、場合によっては入れ替えることも可能である。
[0084]
 また、上記実施形態では、質量分析装置はトリプル四重極型質量分析装置であり、該質量分析装置でMRM測定を実施しているが、質量分析装置は、Q-TOF型質量分析装置、イオントラップ質量分析装置、IT-TOF型質量分析装置などでもよい。また、上述したように、分析目的のアゾ化合物の種類によっては、イオンに対する解離操作を実施しない、シングルタイプの四重極型質量分析装置等の、一般的な質量分析装置でSIM測定を実施してもよい。
[0085]
 また、上記実施形態はあくまでも本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で、適宜変更や修正を行えることは明らかである。

符号の説明

[0086]
10…測定部
 11…液体クロマトグラフ(LC)部
 12…トリプル四重極型質量分析(MS/MS)部
20…パーソナルコンピュータ
 21…データ処理部
 22…制御部
 23…LC制御部
 24…MS制御部
 25…分析条件設定部
 26…メソッド記憶部
27…入力部
28…表示部
100…分析基本制御プログラム
200…繊維製品中有害物質対応メソッドパッケージ
220…アゾ染料第1群一斉分析メソッド
230…アゾ染料第2群一斉分析メソッド

請求の範囲

[請求項1]
 試料中の複数の種類のアゾ化合物を分析する分析方法であって、
 逆相カラムを用いた液体クロマトグラフと質量分析装置とを組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置を使用し、目的の試料に対して第1の分析を実行し該試料中の複数のアゾ化合物を検出する第1分析ステップと、
 逆相カラムを用いた液体クロマトグラフと質量分析装置とを組み合わせた液体クロマトグラフ質量分析装置を使用し、前記試料に対して第2の分析を実行し、該試料中の、前記第1の分析のときとは異なる複数のアゾ化合物を検出する第2分析ステップと、
 を有し、
 前記第1の分析は、酢酸アンモニウム水溶液又は蟻酸アンモニウム水溶液である第1移動相と、有機溶媒と酢酸アンモニウム水溶液又は蟻酸アンモニウム水溶液との混合液である第2移動相と、の二つを移動相としたグラジエント分析であり、
 前記第2の分析は、アンモニア又はアンモニウム塩であってpHが7.0よりも大きい水溶液である第1移動相と、有機溶媒である第2移動相と、の二つを移動相としたグラジエント分析である、アゾ化合物の分析方法。
[請求項2]
 前記第1分析ステップ及び前記第2分析ステップによる分析結果に基づいて、前記試料中の複数の目的のアゾ化合物についての定量値を求める処理ステップ、さらに有する、請求項1に記載のアゾ化合物の分析方法。
[請求項3]
 繊維製品中の物質を溶液中に抽出することで、前記試料としての液体試料を調製する試料調製ステップ、をさらに有する、請求項1に記載のアゾ化合物の分析方法。
[請求項4]
 前記第1の分析での検出対象である複数のアゾ化合物は、還元反応により人体に有害である芳香族第一級アミンを生成するものであり、少なくとも、カラーインデックス名が、Basic Red 9、Disperse Blue 1、Basic Violet 14、Disperse Blue 7、Disperse Blue 3、Disperse Red 11、Disperse Blue 102、Disperse Red 17、Disperse Yellow 39、Disperse Blue 106、Solvent Yellow 1、Disperse Orange 3、Disperse Yellow 3、Disperse Brown 1、Disperse Orange 11、Basic Green 4、Disperse Red 1、Disperse Blue 35、Disperse Yellow 49、Basic Violet 1、Solvent Yellow 3、Disperse Blue 124、Basic Violet 3、Solvent Yellow 2、Disperse Orange 37/76、Michler's Base、Disperse Blue 26、Disperse Orange 61、Disperse Yellow 56、Disperse Orange 1、Disperse Yellow 23、Basic Blue 26、Sudan Dye I、Disperse Red 151、Sudan Dye II、Sudan Dye III、Sudan Dye IV、Acid Orange 7、Acid Yellow 36、Acid Violet 49、Disperse Yellow 1、Disperse Yellow 9、Disperse Yellow 7、及び、Disperse Orange 149、であるアゾ染料に含有されるアゾ化合物を含む、請求項1に記載のアゾ化合物の分析方法。
[請求項5]
 前記第2の分析での検出対象である複数のアゾ化合物は、還元反応により人体に有害である芳香族第一級アミンを生成するものであり、少なくとも、カラーインデックス名が、Acid Red 26、Acid Red 114、Direct Red 28、Direct Blue 6、Direct Black 38、Direct Brown 95、Navy Blue 1、であるアゾ染料に含有されるアゾ化合物を含む、請求項1に記載のアゾ化合物の分析方法。
[請求項6]
 前記質量分析装置は多重反応モニタリング測定が可能なタンデム型質量分析装置であり、
 前記第1の分析及び前記第2の分析では、前記質量分析装置においてアゾ化合物毎に決められた多重反応モニタリングトランジションについての質量分析を実施する、請求項1に記載のアゾ化合物の分析方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]

[ 図 21]