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1. (WO2019027059) PROCÉDÉ DE PRODUCTION D'UN COMPOSÉ ARYLE RADIOMARQUÉ
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明 細 書

発明の名称 放射標識されたアリール化合物の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

非特許文献

0007  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023  

発明の効果

0024  

図面の簡単な説明

0025  

発明を実施するための形態

0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064  

実施例

0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078  

産業上の利用可能性

0079   0080  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 放射標識されたアリール化合物の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、がんのRI内用療法や診断に使用可能な放射標識されたアリール化合物の製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 α線、β線、γ線等を放出する放射性核種を利用したがんのRI内用療法や診断は、放射性核種で標識された薬剤が、標的分子、即ち、がん細胞に特異的または過剰発現している分子に対して特異的に結合することを利用したものであり、既に臨床適用されている。例えば、Na 131Iが甲状腺がんの治療に、また 223RaCl が前立腺がん骨転移の治療に適用されている。
 放射性核種の1種である 211Atの適用は、新たながんのRI内用療法として期待されている(例えば、4− 211At−L−フェニルアラニン(非特許文献1)、Na 211At等)。 211Atは、サイクロトロン等の加速器を用いて製造される放射性核種であり、半減期が7.2時間と短い。従って、 211Atの製造、薬剤の 211Atによる標識化、製剤化、がん患者への投与、RI内用療法までを迅速に行う必要がある。特に、標識化および次の製剤化は、簡便で短時間で行うことが要求されるので、標識化後、直ちに製剤化を行うことが望ましい。標識化された薬剤は、静脈投与のために注射剤に製剤化されるので、標識化後、直ちに製剤化できる点から、標識化を、有機溶媒を使用せずに水のみの溶媒で行うこと、有毒な試薬を使用しないこと、等が望ましい。診断用の 123Iも半減期が13.23時間と比較的短く、 211Atと同様に標識化および次の製剤化は、簡便で短時間で行うことが要求される。
[0003]
 非特許文献1には、4− 211At−L−フェニルアラニンが、脳腫瘍のRI内用療法に使用できること、および前駆体であるN−Boc−4−トリブチルスタニル−L−フェニルアラニンを、非特許文献2に記載の方法で求電子脱スタニル化して、放射化学的収率35−50%で製造されること、の記載がある。しかし、前駆体がN−Boc体であるため、水のみの溶媒では前駆体を溶解できず、有機溶媒の使用はその留去が必要となり、また、求電子脱スタニル化後に脱Boc工程が必要となる。加えて、非特許文献2にはそのような方法は具体的には記載がなく、CuSO 、SnSO および酸存在下、120℃、60分で、4−ヨード−L−フェニルアラニンをハロゲン交換反応により 211Atで標識化することが具体的に記載されているのみである。当該方法では、有毒なCuやSnの除去が必要となり、120℃、60分の反応は簡便で短時間な方法ではない。このように上記の方法による標識化は望ましい方法ではなく、標識化および次の製剤化を、簡便で短時間で行うことができない。また、放射化学的収率は低く、全く満足できるものではない。
[0004]
 非特許文献3には、アリールボロン酸またはそのエステルを、水/メタノール中、Cu O、Cu(OCOCF 等のCu触媒および1,10−フェナントロリンの存在下、80℃で求電子置換反応によりNa 123Iで標識化することが記載されている。当該方法は、メタノールおよびCu触媒の使用、高温での反応の点から、望ましい方法ではない。また、放射化学的収率も高々87%と決して満足できるものではない。また、当該文献には、アリールボロン酸またはそのエステルを、水/テトラヒドロフラン中、クロラミン−T存在下、求電子置換反応によりNa 123Iで標識化することも記載されている。当該方法は、テトラヒドロフランの使用の点から、望ましい方法ではなく、また、電子欠損アレーンには適用できない。
[0005]
 特許文献1~4には、アリールトリアルキル錫を求電子脱スタニル反応によりNa 123I、Na 211At等で標識化することが記載されているが、いずれも有機溶媒を使用しており、また、有毒なSnを使用していることから、望ましい方法ではない。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : US4826672
特許文献2 : US5077035
特許文献3 : 特表2001−503412号公報
特許文献4 : 特表2009−521469号公報

非特許文献

[0007]
非特許文献1 : Nuklearmedizin,2013,vol.52,pp.212−21
非特許文献2 : Applied Radiation and Isotopes,2010,vol.68,pp.1060−1065
非特許文献3 : Chem.Commun.,2016,vol.52,pp.13277−13280

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0008]
 本発明は、簡便で、短時間でかつ高い放射化学的収率で標識化できる方法で、そして、標識化後、直ちに製剤化を行えるような方法で、放射標識されたアリール化合物を製造することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行い、以下に述べる方法が、簡便で、短時間でかつ高い放射化学的収率で放射標識されたアリール化合物を製造することができ、そして、標識化後、直ちに製剤化を行えることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0010]
 すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 式(II):
[0011]
[化1]


[0012]
[式中、
Arは、置換基を有していてもよいC 6−14アリール基を示し、
Yは、ボロノ基(−B(OH) )またはそのエステル基を示す。]
で表されるアリールボロン酸化合物またはその塩(以下、アリールボロン酸化合物(II)ともいう)を、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ金属臭化物、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミドおよび過酸化水素から選択される酸化剤の存在下、水中で、 211At、 210At、 123I、 124I、 125Iおよび 131Iから選択される放射性核種と反応させることを特徴とする、式(I):
[0013]
[化2]


[0014]
[式中、
Arは、前記と同義であり、
Xは、 211At、 210At、 123I、 124I、 125Iまたは 131Iを示す。]
で表される放射標識されたアリール化合物またはその塩(以下、放射標識されたアリール化合物(I)ともいう)の製造方法。
[2] 反応が有機溶媒を含まない系で行われる、上記[1]記載の製造方法。
[3] 反応が室温で行われる、上記[1]または[2]記載の製造方法。
[4] 放射性核種が 211Atまたは 210Atであり、かつ酸化剤がヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミドおよび過酸化水素から選択される、上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 放射性核種が 123I、 124I、 125Iまたは 131Iであり、かつ酸化剤がN−ブロモスクシンイミドおよびN−クロロスクシンイミドから選択される上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[6] Yが、ボロノ基(−B(OH) )である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] Arで示される置換基を有していてもよいC 6−14アリール基における置換基が、標的分子に対して特異的に結合可能な基である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8] 標的分子が、がん細胞に特異的にまたは過剰に発現している抗原、トランスポーター、受容体、酵素または遺伝子である、上記[7]記載の製造方法。
[9] Arが、式:
[0015]
[化3]


[0016]
[式中、
は、ハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
nは、0または1~4の整数を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される基、または式:
[0017]
[化4]


[0018]
[式中、
は、ハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
nは、0または1~4の整数を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される部分構造を有するペプチド由来の基である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10] Arが、式:
[0019]
[化5]


[0020]
[式中、
は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される基、または式:
[0021]
[化6]


[0022]
[式中、
は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される部分構造を有するペプチド由来の基である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[0023]
[11] 式(II)で表されるアリールボロン酸化合物が、4−ボロノフェニルアラニン、4−ボロノ−2−フルオロフェニルアラニンまたは3−ボロノフェニルアラニンであり、かつ式(I)で表される放射標識されたアリール化合物が、4−アスタト( 211At)フェニルアラニン、4−アスタト( 211At)−2−フルオロフェニルアラニンまたは3−アスタト( 211At)フェニルアラニンである、上記[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[12] 3−アスタト( 211At)フェニルアラニンまたはその塩。

発明の効果

[0024]
 本発明の製造方法によれば、簡便で、短時間でかつ高い放射化学的収率で放射標識されたアリール化合物(I)を製造することができ、そして、標識化後、直ちに製剤化を行うことができる。従って、標識化および製剤化を簡便で短時間で行えるので、放射性核種の調製からがんのRI内用療法または診断までを迅速に行うことができる。

図面の簡単な説明

[0025]
[図1] 図1は、参考例1で調製した 211At水溶液の薄層クロマトグラフィー(TLC)を示す。
[図2] 図2は、実施例1の反応液の薄層クロマトグラフィー(TLC)を示す。
[図3] 図3は、実施例2の反応液の薄層クロマトグラフィー(TLC)を示す。
[図4] 図4は、実施例3の反応液の薄層クロマトグラフィー(TLC)を示す。
[図5] 図5は、実施例4の反応液の薄層クロマトグラフィー(TLC)を示す。
[図6] 図6aは、Na 123I水溶液の薄層クロマトグラフィー(TLC)を示し、図6bは、実施例5の反応液の薄層クロマトグラフィー(TLC)を示す。
[図7] 図7は、実施例6の反応液のセルロースアセテート膜電気泳動を示す。
[図8] 図8は、実施例7の反応液の薄層クロマトグラフィー(TLC)を示す。
[図9] 図9は、実施例10における、4− 211At−Pheおよび3− 211At−Pheのラット由来C6グリオーマ細胞取り込み比較を示す。
[図10] 図10は、実施例11における、4− 211At−PheのC6グリオーマ移植ラットSPECTイメージング(投与後30分および3時間点)を示す。

発明を実施するための形態

[0026]
 以下、本発明を詳細に説明する。
 本明細書中、「C 6−14アリール基」としては、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリルが挙げられる。
 本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
 本明細書中、「C 1−6アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチルが挙げられる。
[0027]
 式(I)および(II)中の各記号を以下に説明する。
 式(I)および(II)において、Arは、置換基を有していてもよいC 6−14アリール基を示す。
 Arで示される「置換基を有していてもよいC 6−14アリール基」における「C 6−14アリール基」としては、フェニルが好ましい。
 Arで示される「置換基を有していてもよいC 6−14アリール基」における「置換基」としては、標的分子に対して特異的に結合可能な基が挙げられる。ここで、標的分子としては、がん細胞に特異的にまたは過剰に発現している抗原、トランスポーター、受容体、酵素、遺伝子等が挙げられる。このような「置換基」としては、例えば、カルボキシ基およびアミノ基で置換されたC 1−6アルキル基(好ましくは、メチル、エチル);カルボキシ基;アミノ基;グアニジノ基;トロパン骨格を有する基;脂肪酸残基(脂肪酸から任意の1個の水素原子を除いた基);ペプチド、タンパク、抗体、核酸等の生体関連物質の残基(生体関連物質から任意の1個の水素原子を除いた基);等が挙げられる。
[0028]
 Arは、好ましくは、置換基を有するC 6−14アリール基であり、より好ましくは、置換基を有するフェニル基であり、さらに好ましくは、フェニル基を有するアミノ酸由来の残基またはフェニル基を有するペプチド由来の残基である。
 ここで、上記「フェニル基を有するアミノ酸由来の残基」とは、フェニル基を有するアミノ酸(例、ハロゲン原子等で置換されていてもよいフェニルアラニンまたはフェニルグリシン等)からフェニル基上の1個の水素原子を除いた基を意味する。
 好適な具体例としては、式:
[0029]
[化7]


[0030]
[式中、
は、ハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
nは、0または1~4の整数を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される基である。
 より好ましくは、式:
[0031]
[化8]


[0032]
[式中、
は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される基である。
 別の実施態様として、より好ましくは、式:
[0033]
[化9]


[0034]
[式中、
は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される基である。
[0035]
 上記「フェニル基を有するペプチド由来の残基」とは、フェニル基を有するペプチド(例、ハロゲン原子等で置換されていてもよいフェニルアラニンまたはフェニルグリシン等を含むペプチド)からフェニル基上の1個の水素原子を除いた基を意味する。
 好適な具体例としては、式:
[0036]
[化10]


[0037]
[式中、
は、ハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
nは、0または1~4の整数を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される部分構造を有するペプチド由来の基である。
 より好ましくは、式:
[0038]
[化11]


[0039]
[式中、
は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される部分構造を有するペプチド由来の基である。
 別の実施態様として、より好ましくは、式:
[0040]
[化12]


[0041]
[式中、
は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される部分構造を有するペプチド由来の基である。
[0042]
 R またはR で示される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子が好ましい。
 R は、好ましくは、フッ素原子である。
 nは、好ましくは、0または1である。
 R は、好ましくは、水素原子またはフッ素原子である。
 mは、好ましくは、1である。
[0043]
 式(II)において、Yは、ボロノ基(−B(OH) )またはそのエステル基を示す。
 Yで示される「ボロノ基のエステル基」としては、以下のエステル基が挙げられる。
[0044]
[化13]


[0045]
[式中、R は、C 1−6アルキル基を示す。]
 Yは、好ましくは、ボロノ基(−B(OH) )である。
[0046]
 式(I)において、Xは、放射性核種である 211At、 210At、 123I、 124I、 125Iまたは 131Iを示す。
[0047]
 放射標識されたアリール化合物(I)またはアリールボロン酸化合物(II)が塩である場合、このような塩としては、例えば、金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩)、アンモニウム塩、有機塩基(例、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン)との塩、無機酸(例、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸)との塩、有機酸(例、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸)との塩などが挙げられる。
[0048]
 本発明では、アリールボロン酸化合物(II)を、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ金属臭化物、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミドおよび過酸化水素から選択される酸化剤の存在下、水中で、 211At、 210At、 123I、 124I、 125Iおよび 131Iから選択される放射性核種と反応させて、放射標識されたアリール化合物(I)を製造する。
[0049]
 アリールボロン酸化合物(II)は、好ましくは、ボロノ置換フェニル基を有するアミノ酸、または当該アミノ酸を含むペプチドであり、より好ましくは、ボロノ置換フェニル基を有するアミノ酸である。ボロノ置換フェニル基は更にハロゲン等の置換基を有していてもよい。
[0050]
 アリールボロン酸化合物(II)は、より好ましくは、4−ボロノフェニルアラニン、4−ボロノ−2−フルオロフェニルアラニン、4−ボロノフェニルグリシンまたは4−ボロノ−2−フルオロフェニルグリシンであり、特に好ましくは、4−ボロノフェニルアラニンまたは4−ボロノ−2−フルオロフェニルアラニンである。
[0051]
 別の実施態様として、アリールボロン酸化合物(II)は、より好ましくは、4−ボロノフェニルアラニン、4−ボロノ−2−フルオロフェニルアラニン、4−ボロノフェニルグリシン、4−ボロノ−2−フルオロフェニルグリシン、3−ボロノフェニルアラニン、3−ボロノフェニルグリシンであり、特に好ましくは、3−ボロノフェニルアラニン、4−ボロノ−2−フルオロフェニルアラニンまたは3−ボロノフェニルアラニンである。
[0052]
 アリールボロン酸化合物(II)は上記に例示された化合物に限らず、本発明のアリール化合物の放射標識化方法は、種々のアリールボロン酸化合物、例えば、ボロノヒドロキシベンゼン、ボロノカルボキシベンゼン(カルボキシフェニルボロン酸)にも適用できる。
[0053]
 アリールボロン酸化合物(II)が、上記ボロノ置換フェニル基を有するアミノ酸の場合、通常、水溶液の状態で使用され、好ましくは、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液に溶解した溶液の状態で使用される。
[0054]
 アルカリ金属ヨウ化物としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等が挙げられ、中でも、ヨウ化ナトリウムが好ましい。
 アルカリ金属臭化物としては、臭化ナトリウム、臭化カリウム等が挙げられ、中でも、臭化ナトリウムが好ましい。
[0055]
 放射性核種と酸化剤の好適な組み合わせとしては、
(1)放射性核種が 211Atまたは 210Atであり、かつ酸化剤がヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミドおよび過酸化水素から選択される組み合わせ;
(2)放射性核種が 123I、 124I、 125Iまたは 131Iであり、かつ酸化剤がN−ブロモスクシンイミドおよびN−クロロスクシンイミドから選択される組み合わせ;
が挙げられる。酸化剤は、単独でも2種以上を併用してもよい。酸化剤は、通常、水溶液の状態で使用される。
[0056]
 酸化剤は、放射性核種を酸化できる量を使用すればよく、放射性核種に対して、通常大過剰に使用されるが、反応効率及び経済効率の点から、好ましくは0.0001~0.2mol/L、より好ましくは0.001~0.1mol/Lの濃度で使用される。
[0057]
 放射性核種は、通常、水溶液の状態で反応に使用されるが、安定化の点から、好ましくは、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液に溶解した溶液の状態で使用される。
 放射性核種が 211Atの場合、サイクロトロンで28MeVに加速したヘリウム粒子をビスマスに照射し、 209Bi(α,2n) 211Atの核反応により 211Atを製造後、ターゲット物質の 209Biは加熱溶解し、 211Atを蒸散させて液体窒素トラップに捕集し、これを水に溶解させることにより、 211At原液を調製し、 211Atの安定化の目的で炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液を加えて、 211Atアルカリ水溶液を調製する。
 放射性核種が 210Atの場合、サイクロトロンで29MeV以上に加速したヘリウム粒子をビスマスに照射し、 209Bi(α,3n) 210Atの核反応により 210Atを製造後、上記と同様の操作を行うことにより、 210At水溶液を調製する。
 放射性核種が 123Iの場合、Na 123I水溶液として入手可能である。
 放射性核種が 124Iの場合、サイクロトロンで加速したプロトン粒子をテルルに照射し、 124Te(p,n) 124Iの核反応により 124Iを製造後、ターゲット物質の 124Teを溶解し、 124Iの水酸化ナトリウム溶液を調製する。
 放射性核種が 125Iの場合、Na 125I水溶液として入手可能である。
 放射性核種が 131Iの場合、Na 131I水溶液として入手可能である。
  211Atは半減期が7.2時間、 210Atは半減期が8.3時間、 123Iは半減期が13.2時間と短いので、放射性核種は、調製後、直ちに反応に使用する必要がある。一方、 124Iは半減期が4.2日、 125Iは半減期が59.4日、 131Iは半減期が8.04日と比較的長い半減期を有するが、これらの放射性核種も、調製後、速やかに反応に使用することが好ましい。
[0058]
 アリールボロン酸化合物(II)は、放射性核種に対して、通常大過剰に使用されるが、反応効率及び経済効率の点から、放射性核種1Bq~1,000GBqに対して、好ましくは0.0001mol/l~0.5mol/l、より好ましくは0.001mol/l~0.2mol/lの濃度で使用される。
[0059]
 上記反応は、アリールボロン酸化合物(II)、酸化剤および放射性核種を混合することにより行われ、これらの混合順序に特に制限はない。好ましくは、アリールボロン酸化合物(II)水溶液(好ましくは、炭酸水素ナトリウム水溶液)に、放射性核種アルカリ水溶液、次いで酸化剤水溶液を添加する方法、またはアリールボロン酸化合物(II)水溶液(好ましくは、炭酸水素ナトリウム水溶液)に、酸化剤水溶液、次いで放射性核種アルカリ水溶液を添加する方法であり、より好ましくは、アリールボロン酸化合物(II)水溶液(好ましくは、炭酸水素ナトリウム水溶液)に、放射性核種アルカリ水溶液、次いで酸化剤水溶液を添加する方法である。
[0060]
 上記反応は、水中で行われ、即ち、有機溶媒を含まない系で行われる。
 上記反応は、室温下で行われ、具体的には、0℃~40℃、好ましくは、10℃~35℃で行われる。本発明の製造方法では、室温下であっても迅速に反応が進行し、短時間で、例えば1分~3時間、特に1分~30分で反応が終了する。
 反応の終了は、薄層クロマトグラフィー(TLC)分析により、遊離の放射性核種の消失により確認される。
[0061]
 本発明の製造方法では、放射標識されたアリール化合物(I)は、75%以上、特に80%以上、とりわけ90%以上の高い放射化学的収率で放射標識されたアリール化合物(I)を得ることができる。
 反応終了後、反応液は、有機溶媒や有毒な試薬を含んでいないため、放射標識されたアリール化合物(I)を単離することなく、直ちに注射剤等に製剤化することができる。
[0062]
 このように、本発明の製造方法では、標識化を簡便で、短時間でかつ高い放射化学的収率で行うことができ、また、有機溶媒や有毒な試薬を使用することがないので、放射性核種の調製から、がんのRI内用療法や診断までを迅速に行うことができる。
[0063]
 このように方法で製造される放射標識されたアリール化合物(I)は、好ましくは、
4−アスタト( 211At)フェニルアラニン、
3−アスタト( 211At)フェニルアラニン、
4−アスタト( 211At)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−アスタト( 210At)フェニルアラニン、
3−アスタト( 210At)フェニルアラニン、
4−アスタト( 210At)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−ヨード( 123I)フェニルアラニン、
3−ヨード( 123I)フェニルアラニン、
4−ヨード( 123I)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−ヨード( 124I)フェニルアラニン、
3−ヨード( 124I)フェニルアラニン、
4−ヨード( 124I)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−ヨード( 125I)フェニルアラニン、
3−ヨード( 125I)フェニルアラニン、
4−ヨード( 125I)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−ヨード( 131I)フェニルアラニン、
3−ヨード( 131I)フェニルアラニン、
4−ヨード( 131I)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−アスタト( 211At)フェニルグリシン、
3−アスタト( 211At)フェニルグリシン、
4−アスタト( 211At)−2−フルオロフェニルグリシン、
4−アスタト( 210At)フェニルグリシン、
3−アスタト( 210At)フェニルグリシン、
4−アスタト( 210At)−2−フルオロフェニルグリシン、
4−ヨード( 123I)フェニルグリシン、
3−ヨード( 123I)フェニルグリシン、
4−ヨード( 123I)−2−フルオロフェニルグリシン、
4−ヨード( 124I)フェニルグリシン、
3−ヨード( 124I)フェニルグリシン、
4−ヨード( 124I)−2−フルオロフェニルグリシン、
4−ヨード( 125I)フェニルグリシン、
3−ヨード( 125I)フェニルグリシン、
4−ヨード( 125I)−2−フルオロフェニルグリシン、
4−ヨード( 131I)フェニルグリシン、
3−ヨード( 131I)フェニルグリシン、または
4−ヨード( 131I)−2−フルオロフェニルグリシン
であり、より好ましくは、
4−アスタト( 211At)フェニルアラニン、
3−アスタト( 211At)フェニルアラニン、
4−アスタト( 211At)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−アスタト( 210At)フェニルアラニン、
3−アスタト( 210At)フェニルアラニン、
4−アスタト( 210At)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−ヨード( 123I)フェニルアラニン、
3−ヨード( 123I)フェニルアラニン、
4−ヨード( 123I)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−ヨード( 124I)フェニルアラニン、
3−ヨード( 124I)フェニルアラニン、
4−ヨード( 124I)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−ヨード( 125I)フェニルアラニン、
3−ヨード( 125I)フェニルアラニン、
4−ヨード( 125I)−2−フルオロフェニルアラニン、
4−ヨード( 131I)フェニルアラニン、
3−ヨード( 131I)フェニルアラニン、または
4−ヨード( 131I)−2−フルオロフェニルアラニン
であり、特に好ましくは、
4−アスタト( 211At)フェニルアラニン、
3−アスタト( 211At)フェニルアラニン、または
4−アスタト( 211At)−2−フルオロフェニルアラニン
である。
[0064]
 放射標識されたアリール化合物(I)のうち、3−アスタト( 211At)フェニルアラニンは新規な化合物である。当該化合物は、がん細胞における取り込み量が非常に高いので、がんのRI内用療法への適用を特に期待できる。
実施例
[0065]
 本発明は、更に以下の実施例によって詳しく説明されるが、これらは単なる例であり、本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で改変し得る。
 以下の実施例、参考例中、放射化学的収率は、以下の式により算出した。
放射化学的収率(%)=(薄層板又は電気泳動膜上の目的化合物の放射能/薄層板又は電気泳動膜上の全放射能)×100
 薄層板及び電気泳動膜は、BASイメージングプレート(GEヘルスケア社製)に載せて露光したのち、このBASイメージングプレートを画像解析装置(Tyhoon FLA7000,GEヘルスケア社製)を用いて測定した。データ処理は、ImageQuantTL Analysis Toolbox(GEヘルスケア社製)を利用した。
[0066]
参考例1  211At水溶液の調製
  211Atは、サイクロトロンで加速したヘリウム粒子(28MeV)をビスマスに照射し、 209Bi(α,2n) 211Atの核反応により製造した。照射後、ターゲット物質の 209Biは加熱溶解し、 211Atを蒸散させて液体窒素トラップに捕集し、少量の水で溶解した。この 211At原液に7%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて放射能濃度が約5MBq/ml(製造直後)の 211At水溶液を調製した。 211At水溶液の薄層クロマトグラフィー(TLC)を図1に示す(薄層板:G60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))。 211AtのスポットはRf=1.0(80%)及び0.89(8%)に検出された。
[0067]
実施例1 4− 211At−L−フェニルアラニンの合成(酸化剤NCS)
 4−ボロノ−L−フェニルアラニン(Bpa)を7%炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解して10mg/mlに調製した溶液0.2mlを小ガラスバイアルに注ぎ、参考例1で調製した 211At水溶液(5MBq/ml)0.2mlを加えた後、N−クロロスクシンイミド(NCS)水溶液(4mg/ml)0.04mlを室温下でゆっくり滴下した。30分後に薄層クロマトグラフィー(TLC)(薄層板:G60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))により分析した(図2)。4− 211At−L−フェニルアラニン(Rf=0.73)の放射化学的収率は95%であった。
[0068]
実施例2 4− 211At−L−フェニルアラニンの合成(酸化剤NBS)
 4−ボロノ−L−フェニルアラニン(Bpa)を7%炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解して10mg/mlに調製した溶液0.2mlを小ガラスバイアルに注ぎ、参考例1で調製した 211At水溶液(5MBq/ml)0.2mlを加えた後、N−ブロモスクシンイミド(NBS)水溶液(4mg/ml)0.04mlを室温下でゆっくり滴下した。30分後に薄層クロマトグラフィー(TLC)(薄層板:G60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))により分析した(図3)。4− 211At−L−フェニルアラニン(Rf=0.68)の放射化学的収率は75.3%であった。
[0069]
実施例3 4− 211At−L−フェニルアラニンの合成(酸化剤NaI)
 4−ボロノ−L−フェニルアラニン(Bpa)を7%炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解して10mg/mlに調製した溶液0.2mlを小ガラスバイアルに注ぎ、参考例1で調製した 211At水溶液(5MBq/ml)0.2mlを加えた後、ヨウ化ナトリウム(NaI)水溶液(10mg/ml)0.1mlを室温下でゆっくり滴下した。30分後に薄層クロマトグラフィー(TLC)(薄層板:G60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))により分析した(図4)。4− 211At−L−フェニルアラニン(Rf=0.79)の放射化学的収率は90%であった。
[0070]
実施例4 4− 211At−L−フェニルアラニンの合成(酸化剤NaBr)
 4−ボロノ−L−フェニルアラニン(Bpa)を7%炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解して10mg/mlに調製した溶液0.2mlを小ガラスバイアルに注ぎ、参考例1で調製した 211At水溶液(5MBq/ml)0.2mlを加えた後、臭化ナトリウム(NaBr)水溶液(10mg/ml)0.1mlを室温下でゆっくり滴下した。30分後に薄層クロマトグラフィー(TLC)(薄層板:G60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))により分析した(図5)。4− 211At−L−フェニルアラニン(Rf=0.63)の放射化学的収率は84.7%であった。
[0071]
実施例5 4− 123I−L−フェニルアラニンの合成(酸化剤NBS)
 4−ボロノ−L−フェニルアラニン(Bpa)を7%炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解して10mg/mlに調製した溶液0.2mlを小ガラスバイアルに注ぎ、Na 123I水溶液(74MBq/ml,5mmol/l NaOH水溶液)0.2mlを加えた後、N−ブロモスクシンイミド(NBS)水溶液(4mg/ml)0.04mlを室温下でゆっくり滴下した。30分後に薄層クロマトグラフィー(TLC)(薄層板:G60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))により分析した(図6b)。4− 123I−L−フェニルアラニン(Rf=0.70)の放射化学的収率は93%であった。Na 123I水溶液の薄層クロマトグラフィー(TLC)を図6aに示す(薄層板:G60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))。
[0072]
参考例2 非放射性ヨウ素を用いる4−ヨード−L−フェニルアラニンの合成
 4−ボロノ−L−フェニルアラニン(Bpa)を7%炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解して10mg/mlに調製した溶液0.3mlを小ガラスバイアルに注ぎ、NaI水溶液(10mg/ml)0.3mlを加えた後、N−ブロモスクシンイミド(NBS)水溶液(10mg/ml)0.3mlを室温下でゆっくり滴下した。30分後に反応液を薄層クロマトグラフィー(TLC)(薄層板:G60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))で分析した結果、Rf=0.7に単一のスポットを検出した(紫外光及びヨードバスによる発色)。次にこの反応液を水で1,000倍希釈し、市販の4−ヨード−L−フェニルアラニンを対照試料としてアミノ酸分析用LC−MSで測定した。その結果、生成物は対照試料4−ヨード−L−フェニルアラニンと同一のリテンションタイムに検出され、Extraction Massも同一であった(理論質量=290.9756,Extraction Mass=291.9835)。生成物の純度は98.9%であった。不純物はL−フェニルアラニン(1.1%)のみで、4−ブロモ−L−フェニルアラニン等は検出されなかった。
[0073]
実施例6 4− 211At−2−フルオロ−L−フェニルアラニンの合成(酸化剤NBS)
 4−ボロノ−2−フルオロ−L−フェニルアラニン(FBpa)を7%炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解して5mg/mlに調製した溶液0.2mlを小ガラスバイアルに注ぎ、参考例1で調製した 211At水溶液(5MBq/ml)0.1mlを加えた後、N−ブロモスクシンイミド(NBS)水溶液(4mg/ml)0.04mlを室温下でゆっくり滴下した。15分後にセルロースアセテート膜電気泳動法により分析した(図7)。4− 211At−2−フルオロ−L−フェニルアラニン(Rf=0.68)の放射化学的収率は92.2%であった。
[0074]
実施例7 3− 211At−D,L−フェニルアラニンの合成
 3−ボロノ−D,L−フェニルアラニン(3−Bpa)を1.4%炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解して10mg/mlに調整した溶液0.2mlを小ガラスバイアルに注ぎ、参考例1で調製した 211At水溶液(5MBq/ml)0.2mlを加えたのち、N−ブロモスクシンイミド(NBS)水溶液(4mg/ml)0.04mlを室温下でゆっくり滴下した。30分後にこの反応液を薄層クロマトグラフィー(TLC)(薄層板:シリカゲルG60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))により分析した(図8)。生成した3− 211At−D,L−フェニルアラニン(Rf=0.76)の放射化学的収率は93.3%であった。
[0075]
実施例8 1− 211At−2−ヒドロキシベンゼン
 2−ボロノヒドロキシベンゼンを7%炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解して5mg/mlの濃度に調整した水溶液を小ガラスバイアルに注ぎ、参考例1で調製した 211At水溶液(5MBq/ml)0.2mlを加えたのち、N−ブロモスクシンイミド(NBS)水溶液(4mg/ml)0.04mlを室温下でゆっくり滴下した。30分後にこの反応液にアスコルビン酸水溶液(3mg/ml)を0.03ml加えて反応を停止させた。この反応液を薄層クロマトグラフィー(TLC)(薄層板:シリカゲルG60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))により分析した。生成した1− 211At−2−ヒドロキシベンゼン(Rf=0.91)の放射化学的収率は98.1%であった。従って、本発明のアリール化合物の放射標識化方法が、ボロノフェニルアラニンだけでなく、ボロノヒドロキシベンゼンにも適用できることが示された。
[0076]
実施例9 1− 211At−4−カルボキシベンゼン
 4−カルボキシフェニルボロン酸を7%炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解して16mg/mlの濃度に調整した水溶液を小ガラスバイアルに注ぎ、参考例1で調製した 211At水溶液(5MBq/ml)0.2mlを加えたのち、N−ブロモスクシンイミド(NBS)水溶液(4mg/ml)0.04mlを室温下でゆっくり滴下した。30分後にこの反応液にアスコルビン酸水溶液(3mg/ml)を0.03ml加えて反応を停止させた。この反応液を薄層クロマトグラフィー(TLC)(薄層板:シリカゲルG60(メルク社製)、展開溶媒:ACN:水:TFA(66:33:1))により分析した。生成した1− 211At−4−カルボキシベンゼン(Rf=0.81)の放射化学的収率は87.5%であった。従って、本発明のアリール化合物の放射標識化方法が、ボロノフェニルアラニンだけでなく、ボロノカルボキシベンゼン(カルボキシフェニルボロン酸)にも適用できることが示された。
[0077]
実施例10 グリオーマ細胞取り込み実験
 実施例2で調製した4− 211At−L−フェニルアラニン(4− 211At−Phe)溶液および実施例7で調製した3− 211At−D,L−フェニルアラニン(3− 211At−Phe)溶液をそれぞれ5MBq/2mg・mlの濃度に調製した。24ウェルプレートの各ウェルにラット由来C6グリオーマ細胞を5×10 個/wellで播種し、翌日実験に使用した(細胞数:約1×10 個/well)。実験前にアミノ酸不含のHBSS培地(0.5ml/well)に置換し、このウェルに4− 211At−Pheまたは3− 211At−Pheを各10μl分注し、阻害剤なし群、1%Phe添加群(競合阻害剤)および100mM BCH添加群(LAT1阻害剤)の3群に分け、37℃で30分または60分間インキュベーションした。インキュベーション終了後に、培養液を除去、PBSで洗浄の後、細胞を溶解し、細胞内に取り込まれた放射能量を測定した。結果を図9に示す。4− 211At−Pheおよび3− 211At−Pheはいずれも細胞に取り込まれたが、3− 211At−Pheは4− 211At−Pheより細胞取り込みがやや高い傾向を示した。また30分後に比べて60分後に細胞取り込みの減少が認められた。競合阻害剤(Phe)は、4− 211At−Pheおよび3− 211At−Pheの細胞取り込みを1/2~1/3に減少させ、またLAT1阻害剤(BCH)は4− 211At−Pheおよび3− 211At−Pheの細胞取り込みを1/4~1/8に減少させた。すなわち、4− 211At−Pheおよび3− 211At−PheはいずれもLAT1を介して特異的に細胞に取り込まれていることが示された。従って、4− 211At−Pheおよび3− 211At−Pheは、がんのRI内用療法への適用が期待できることが示された。特に、3− 211At−Pheは4− 211At−Pheよりも細胞取り込みが多いので、上記の適用は特に期待できる。
[0078]
実施例11 4− 211At−L−フェニルアラニンのC6グリオーマ移植ラットSPECTイメージング
 実施例2で調製した4− 211At−L−フェニルアラニン(4− 211At−Phe)各1MBqをC6グリオーマ移植ラットの尾静脈内に投与しSPECTカメラ(E−cam,シーメンス)で撮像した。本剤投与後30分および3時間点のSPECT画像を図10に示す。いずれの時間点においても、4− 211At−Pheの腫瘍(両脇腹、図中矢頭)への集積が確認された。従って、4− 211At−Pheは、がんのRI内用療法や診断への適用が期待できることが示された。

産業上の利用可能性

[0079]
 本発明の製造方法によれば、簡便で、短時間でかつ高い放射化学的収率で放射標識されたアリール化合物(I)を製造することができ、そして、標識化後、直ちに製剤化を行うことができる。従って、標識化および製剤化を簡便で短時間で行えるので、放射性核種の調製からがんのRI内用療法または診断までを迅速に行うことができる。
[0080]
 本出願は、日本で2017年8月4日に出願された特願2017−151632号を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含される。

請求の範囲

[請求項1]
 式(II):
[化1]


[式中、
Arは、置換基を有していてもよいC 6−14アリール基を示し、
Yは、ボロノ基(−B(OH) )またはそのエステル基を示す。]
で表されるアリールボロン酸化合物またはその塩を、アルカリ金属ヨウ化物、アルカリ金属臭化物、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミドおよび過酸化水素から選択される酸化剤の存在下、水中で、 211At、 210At、 123I、 124I、 125Iおよび 131Iから選択される放射性核種と反応させることを特徴とする、式(I):
[化2]


[式中、
Arは、前記と同義であり、
Xは、 211At、 210At、 123I、 124I、 125Iまたは 131Iを示す。]
で表される放射標識されたアリール化合物またはその塩の製造方法。
[請求項2]
 反応が有機溶媒を含まない系で行われる、請求項1記載の製造方法。
[請求項3]
 反応が室温で行われる、請求項1または2記載の製造方法。
[請求項4]
 放射性核種が 211Atまたは 210Atであり、かつ酸化剤がヨウ化ナトリウム、臭化ナトリウム、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミドおよび過酸化水素から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
[請求項5]
 放射性核種が 123I、 124I、 125Iまたは 131Iであり、かつ酸化剤がN−ブロモスクシンイミドおよびN−クロロスクシンイミドから選択される、請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
[請求項6]
 Yが、ボロノ基(−B(OH) )である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
[請求項7]
 Arで示される置換基を有していてもよいC 6−14アリール基における置換基が、標的分子に対して特異的に結合可能な基である、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
[請求項8]
 標的分子が、がん細胞に特異的にまたは過剰に発現している抗原、トランスポーター、受容体、酵素または遺伝子である、請求項7記載の製造方法。
[請求項9]
 Arが、式:
[化3]


[式中、
は、ハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
nは、0または1~4の整数を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される基、または式:
[化4]


[式中、
は、ハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
nは、0または1~4の整数を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される部分構造を有するペプチド由来の基である、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
[請求項10]
 Arが、式:
[化5]


[式中、
は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される基、または式:
[化6]


[式中、
は、水素原子またはハロゲン原子を示し、
mは、0または1を示し、
*は、XまたはYとの結合部位を示す。]
で表される部分構造を有するペプチド由来の基である、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
[請求項11]
 式(II)で表されるアリールボロン酸化合物が、4−ボロノフェニルアラニン、4−ボロノ−2−フルオロフェニルアラニンまたは3−ボロノフェニルアラニンであり、かつ式(I)で表される放射標識されたアリール化合物が、4−アスタト( 211At)フェニルアラニン、4−アスタト( 211At)−2−フルオロフェニルアラニンまたは3−アスタト( 211At)フェニルアラニンである、請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
[請求項12]
 3−アスタト( 211At)フェニルアラニンまたはその塩。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]