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1. (WO2019009434) MICELLES POLYMÈRES POUR L'ADMINISTRATION DE MÉDICAMENTS
Document

明 細 書

発明の名称 薬物送達用高分子ミセル

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

非特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010  

発明の効果

0011  

図面の簡単な説明

0012  

発明を実施するための形態

0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111  

実施例

0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129  

産業上の利用可能性

0130   0131  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

図面

1   2   3   4   5   6  

明 細 書

発明の名称 : 薬物送達用高分子ミセル

技術分野

[0001]
 本発明は、生体内で薬物の骨指向化を可能にする薬物送達用高分子ミセル、及び該ミセルに薬物が内包されてなる医薬に関する。

背景技術

[0002]
 骨は、肺や肝臓に匹敵する癌転移好発臓器であり、特に、乳癌、前立腺癌、甲状腺癌、肺癌等は骨に高頻度に転移する。骨転移は、耐え難い骨痛、病的骨折、運動制限、高カルシウム血症等の骨関連事象を併発するため、癌患者のQOLを著しく低下させ、死期を早めることから、その抑制法の開発が切望されている。
 従来の骨転移治療においては、放射線治療、外科的治療、鎮痛薬の投与等が行われてきたが、いずれも骨に転移した癌の脊髄圧迫による痛みの抑制を目的とした対症療法であった。また、骨は、薬物が移行しにくい組織構造であることから、抗癌剤の骨移行性は不十分であり、通常の化学療法による骨転移治療は極めて困難であり、癌骨転移の進行そのものを抑制する方法はほぼ皆無であった。近年、骨に転移した癌の増殖、代謝は、破骨細胞から産生する増殖因子に依存することが明らかとなってきたことから、骨に選択的に移行する体内動態特性を有し、破骨細胞の機能を強力に抑制するビスホスホネート系薬物であるゾレドロネートが、骨転移に対する治療薬として使用されている。しかしながら、ゾレドロネート単独で十分な効果が得られることは稀であり、骨へ抗癌剤等の薬物を効率的に送達させるデリバリーシステムを構築することによる新治療法の開発が強く望まれていた。
[0003]
 骨に薬物を効率的に送達させるデリバリーシステムとしては、これまでに、骨ターゲティング素子としてテトラサイクリンを薬物(炭酸脱水酵素阻害薬)に直接結合させた誘導体(非特許文献1)、骨ターゲティング素子としてビスホスホネートを薬物(抗腫瘍薬)に直接結合させた誘導体(非特許文献2)、及び骨ターゲティング素子としてビスホスホネートを抗癌剤に直接結合させた誘導体(特許文献1)が報告されている。また、アスパラギン酸により修飾されたポリ(乳酸−co−グリコール酸)−block−ポリ(エチレングリコール)(PLGA−PEG)ナノパーティクルが骨移行性を示すことも報告されている(非特許文献3)。
[0004]
 しかし、薬物に骨ターゲティング素子を直接結合させる誘導体化は、ターゲティング素子が結合できる官能基を有する薬物のみにしか適用できないため、化学修飾による薬理活性の低下等が懸念される。また、従来の骨ターゲティング素子であるテトラサイクリンやビスホスホネート等は、色素沈着や血中での凝集塊形成等の問題を有しており、PLGA−PEGナノパーティクルは生体内での分解が非常に遅く、薬物放出性が遅延する傾向にある。そして、上記した従来の骨ターゲティング手法は、いずれも骨以外の臓器への移行や、骨への標的化効率が低い等の課題を有していた。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特表2010−535701号公報

非特許文献

[0006]
非特許文献1 : W.M.Pierce Jr.et al.,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.186(1984)96−102.
非特許文献2 : F.Hosain et al.,J.Nucl.Med.37(1996)105−107.
非特許文献3 : Y.C.Fu et al.,Acta Biomater.2014 Nov;10(11),4583−4596.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 このような背景のもと、安全性及び生体適合性に優れ、且つ骨への標的化効率が高く、且つ骨に選択的に移行可能な薬物送達用担体の開発がますます求められている。
[0008]
 本発明の目的は、骨親和性を有するアスパラギン酸を骨ターゲティング素子として、樹状高分子の末端基に結合させると共に、さらに親水性重合体セグメント及び疎水性セグメントを含有する骨ターゲティング型薬物送達用高分子ミセルを提供することを目的とする。また、本発明は、前記高分子ミセルの疎水性セグメント内に共有結合を介さずに様々な薬物(特に、疎水性薬物)を内包させてなる骨疾患の予防または治療のための医薬を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、複数の末端基を有する樹状高分子の全末端基数の少なくとも50%に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合又はエステル結合により連結し、該アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の少なくとも3%に、直接又はリンカーを介して親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の少なくとも1%に、直接又はリンカーを介して疎水性セグメントが結合してなる化合物(以下、「本発明の化合物」と称することもある。)が高分子ミセル(以下、「本発明の高分子ミセル」と称することもある。)を形成し、該高分子ミセルの内部(疎水性セグメント内)に薬物を内包させることが可能であることを見出すと共に、該高分子ミセルが高い骨移行選択性及び骨への高い標的化効率を実現できることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
[0010]
 すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]複数の末端基を有する樹状高分子の全末端基数の少なくとも50%に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合又はエステル結合により連結し、該アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の少なくとも3%に、直接又はリンカーを介して親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の少なくとも1%に、直接又はリンカーを介して疎水性セグメントが結合してなる化合物。
[2]前記親水性重合体セグメントが、ポリエチレングリコール由来の基である、上記[1]に記載の化合物。
[3]前記疎水性セグメントが、ステロール誘導体の残基である、上記[1]又は[2]に記載の化合物。
[4]前記ステロール誘導体の残基が、コレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール及びコール酸からなる群より選択される化合物に由来する、上記[3]に記載の化合物。
[5]前記樹状高分子が、ポリアミドアミンから構成されるデンドリマー又はデンドロン、ポリリジンから構成されるデンドリマー又はデンドロン、ポリエチレングリコールと2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸から構成されるデンドリマー又はデンドロン、及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸から構成されるデンドリマー又はデンドロンからなる群より選択される、上記[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載の化合物、及び薬物を含有する医薬組成物。
[7]前記薬物が、骨粗鬆症治療薬、関節リウマチ治療薬、抗癌剤、抗炎症剤、抗酸化剤、核酸医薬、放射性薬剤及び造影剤からなる群より選択される少なくとも一種である、上記[6]に記載の医薬組成物。
[8]上記[1]~[5]のいずれかに記載の化合物を含有する高分子ミセル。
[9]更に薬物を内包してなる、上記[8]に記載の高分子ミセル。
[10]前記薬物が、骨粗鬆症治療薬、関節リウマチ治療薬、抗癌剤、抗炎症剤、抗酸化剤、核酸医薬、放射性薬剤及び造影剤からなる群より選択される少なくとも一種である、上記[9]に記載の高分子ミセル。
[11]上記[8]に記載の高分子ミセルからなり、生体内において標的組織へ選択的に薬物を送達するための薬物送達用担体。
[12]前記標的組織が骨である、上記[11]に記載の薬物送達用担体。
[13]上記[9]又は[10]に記載の高分子ミセルを含有する医薬。
[14]骨疾患の予防または治療剤である、上記[13]に記載の医薬。

発明の効果

[0011]
 本発明の化合物は、単独で、又は薬物と一緒になって高分子ミセルを形成することが出来、該高分子ミセルは、高い骨移行選択性及び骨への高い標的化効率を示し、薬物放出性にも優れていることから、各種骨疾患の予防剤(検査薬)または治療剤として極めて有用である。また、本発明の化合物及び高分子ミセルは、生体由来であり、且つ生体内での凝集性の少ないアスパラギン酸を骨ターゲティング素子として使用していることから、生体適合性や安全性に優れ、また簡便に合成可能である等の利点を有しており、実用的な薬物送達用担体として幅広い用途への応用が期待される。

図面の簡単な説明

[0012]
[図1] aは、標識PTX−PAMAMミセル( 111In標識されたPAMAMミセル部分)の体内動態を示し、bは、標識PTX−化合物1aミセル( 111In標識された化合物1aミセル部分)の体内動態を示す。
[図2] aは、標識PTX−PAMAMミセルに内包された H標識PTXの体内動態を示し、bは、標識PTX−化合物1aミセルに内包された H標識PTXの体内動態を示す。
[図3] a及びa’のキシレノールオレンジによる蛍光発光部位は、それぞれ骨内の骨新生部位を示し、b及びb’は、それぞれ骨内におけるFITC標識化合物1aミセル及びFITC標識PAMAMミセル由来の蛍光発光(骨内分布)を示し、c及びc’は、aとa’及びbとb’を重ね合わせた共焦点レーザー走査型顕微鏡写真を示す。
[図4] PTX−化合物1aミセルの癌骨転移に対する治療実験の結果を示す。
[図5] 化合物1aの疎水性セグメントを除いた部分の 111In標識体の静脈注射後の臓器分布のSPECT/CTイメージング画像を示す。
[図6] 骨転移モデルにおけるFITC標識化合物1aミセル及びFITC標識PAMAMミセルの骨内分布を示す。

発明を実施するための形態

[0013]
 以下に本発明の詳細を説明する。
[0014]
(定義)
[0015]
 本明細書中、「複数の末端基を有する樹状高分子」における樹状高分子とは、デンドリマー又はデンドロンを意味し、末端基とは、デンドリマー又はデンドロンの各枝の末端に存在する官能基を意味し、求核基(例、アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基等)であっても求電子基(例、ホルミル基、カルボニル基等)であってもよい。
 樹状高分子としては、複数の末端基を有するものであれば、特に限定されないが、好ましくは、ポリアミドアミンから構成されるデンドリマー又はデンドロン、ポリリジンから構成されるデンドリマー又はデンドロン、ポリエチレングリコールと2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸デンドロンから構成されるデンドリマー又はデンドロン、或いは2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸デンドロンから構成されるデンドリマー又はデンドロン(例、Sigma−Aldrich社から市販されている2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸デンドロン等)であり、複数の末端基として、アミノ基、ヒドロキシ基等を有するものが挙げられる。より好ましい樹状高分子としては、アルキルジアミン(例、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,12−ジアミノドデカン等)をコアとするポリアミドアミンからなるデンドリマー(PAMAM)、又はアルキルジアミン(例、1,6−ジアミノヘキサン等)をコアとするポリリジンからなるデンドリマー(例、M.Ohsaki et al.,Bioconjugate Chem.,2002,13,510−517に記載のポリリジンデンドリマー等)及びポリリジンから構成されるデンドロン(例、K.L.Chang et al.,J.Control.Release.2011,156,195−202に記載のポリリジンデンドロン等)であり、複数の末端基として、アミノ基又はヒドロキシ基を有するものが挙げられる。中でも、末端基がアミノ基であるPAMAM−NH デンドリマー(例、Sigma−Aldrich社から市販されている第1世代~第5世代のPAMAM−NH デンドリマー等)が特に好ましい。また、上記デンドリマー又はデンドロンを構成する各構成単位(コア及び枝部分)は、本発明の目的に悪影響を及ぼさない範囲で(例えば、薬物等と反応しない範囲で)、例えば、C 1−12アルキル基、ハロゲン原子(例、フッ素原子等)等の置換基により置換されていてもよい。
 かかる樹状高分子の分子量は、薬物内包高分子ミセルを形成できる限り、限定されるものではないが、約1000~30000Daであり、好ましくは、約3000~15000Daであり、より好ましくは、約3000~7000Daである。
[0016]
 本明細書中、「全末端基数の少なくとも50%」とは、前記樹状高分子の末端基(すなわち、各枝の末端に存在する官能基)の総数に対して少なくとも50%(50%以上)の数の末端基を意味する。
[0017]
 本明細書中、「リンカー」とは、アスパラギン酸のα位カルボキシ基を樹状高分子の末端基に共有結合的に(ペプチド結合又はエステル結合により)連結させたり、親水性重合体セグメントを樹状高分子上のアスパラギン酸修飾された部分のアスパラギン酸由来の末端アミノ基及び/又はアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基に共有結合的に連結させたり、または疎水性セグメントを樹状高分子上のアスパラギン酸修飾された部分のアスパラギン酸由来の末端アミノ基及び/又はアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基に共有結合的に連結させたりする原子の鎖又は共有結合を含む、二官能性(ホモ二官能性又はヘテロ二官能性)又は多官能性の化学部分を意味する。
 二官能性リンカーを形成するリンカー試薬は、アスパラギン酸修飾された又はアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の各末端に存在するアミノ基、ヒドロキシ基等の求核基と反応する求電子基を有していてもよい。かかる求電子基としては、例えば、ハロアルキル基、ハロカルボニル基、カルボキシル基、NHSエステル、マレイミド基及びハロアセトアミド基を含むが、これらに限定されるものではない。
 他の実施態様では、リンカー試薬は、アスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の各末端に存在する求電子基(末端基)と反応することができる反応性の求核基を有し、共有結合を形成する。かかる求電子基としては、ホルミル基(アルデヒド)及びカルボニル基(ケトン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。リンカー上の有用な求核基としては、ヒドラジド、オキシム、アミノ、ヒドラジン、チオセミカルバゾン、ヒドラジンカルボキシレート及びアリールヒドラジドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
 前記二官能性リンカーを形成するリンカー試薬は、様々な試薬会社から市販されている。例えば、Pierce Inc.やSigma−Aldrich Co.LLC.等のカタログを参照されたい。また、二官能性リンカーは、自体公知の方法により、当業者により容易に導入し得る。
 多官能性リンカー(分枝状リンカー)として、例えば、ペンタエリトリトール、システイン、ジアミノプロピオン酸、ジアミノブタン酸、オルニチン、リジン、ホモシステイン、マレイミド酸等から誘導される化学部分が挙げられる。
 具体的なリンカーとしては、−CO−;−COO−;−OCO−;−CO−NR −;−NR CO−;−OC−NR −CO−(ここで、R は、水素原子又はC 1−6アルキル基を示す。);−O−、−S−、−COO−、−CO−、−NH−及び−CONH−からなる群より選択される1以上の基を内部又は末端に有していてもよいアルカンジイル(例、C 1−12アルカンジイル);アリーレン、ヘテロアリーレン;アリーレンジカルボニル(例、ベンゼン−1,4−ジカルボニル);アルキルオキシやアルキルアミノの繰り返し基(例、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、メチレングリコール、ジメチレングリコール、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,6−ヘキシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、ジェフアミン(JEFFAMINE(登録商標)等);及び、スクシナート(−OOC−CH CH −COO−)、スクシンアミド(−HNOC−CH CH −CONH−)、グルタレート(−OOC−CH CH CH −COO−)、アジペート(−OOC−CH CH CH CH −COO−)、ジグリコレート(−OOC−CH −O−CH COO−)、テレフタレート等を含む二酸エステル及びアミド等も挙げられる。多官能性リンカーの具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば、下式:
[0018]
[化1]


[0019]
で表される化学部分を挙げることができる。
[0020]
 本明細書中、「アスパラギン酸修飾された」及び「アスパラギン酸修飾されていない」とは、それぞれ、樹状高分子の末端基とアスパラギン酸のα位カルボキシ基が、直接又はリンカーを介してペプチド結合又はエステル結合により連結されている状態、及び樹状高分子の末端基にアスパラギン酸が連結されていない状態を意味する。
[0021]
 本明細書中、「親水性重合体セグメント」とは、水溶性の重合体由来の部分を意味する。親水性重合体セグメントとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド等、或いはこれらの誘導体由来のセグメントが挙げられる。中でも、ポリエチレングリコール又はその誘導体由来のセグメント(すなわち、ポリエチレングリコール由来の基)が好ましい。ポリエチレングリコール又はその誘導体由来のセグメントの具体例としては、例えば、アミン反応性PEG化試薬(例、日油株式会社製SUNBRIGHT(登録商標)ME−020CS、ME−020AS等のPEG−NHSエステル)由来のセグメント、すなわち、ポリエチレングリコールの一端にカルボニル基を有するセグメント(−CO−(CH −CO−(O−CH −CH −OR (ここで、nは、30以上の整数を示し、R は、水素原子又はC 1−6アルキル基(好ましくは、メチル基)を示す。))等が挙げられる。
 かかる親水性重合体セグメントは、樹状高分子上のアスパラギン酸修飾された部分のアスパラギン酸由来の末端アミノ基及び/又はアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基に直接又はリンカー(前記二官能性リンカー又は多官能性リンカー)を介して結合する。かかる親水性重合体セグメントの樹状高分子上のアスパラギン酸修飾された部分の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基への導入率は、樹状高分子上のアスパラギン酸修飾された部分の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数に対して、少なくとも3%であり、好ましくは、約3~30%であり、より好ましくは、約10~15%である。
 かかる親水性重合体セグメントの分子量(平均分子量)は、特に限定されるものではないが、約500~20000Daであり、好ましくは、約1000~5000Daであり、より好ましくは、約2000~5000Daである。
[0022]
 本明細書中、「疎水性セグメント」とは、疎水性を有する部分を意味する。疎水性セグメントとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ステロール誘導体の残基、C 10−24ヒドロカルビル基、ポリ乳酸、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体、ポリアミノ酸等が挙げられる。中でも、ステロール誘導体の残基からなるセグメントが好ましい。かかるステロール誘導体としては、好ましくは、コレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール又はコール酸であるか、またはそれらのシクロペンタノンヒドロフェナントレン環が飽和又は不飽和であり、且つ本発明の目的に悪影響を及ぼさない範囲で、該環がC 1−12アルキル基、ハロゲン原子(例、フッ素原子等)等の置換基により置換されていてもよい化合物であり、ステロール誘導体の残基とは、前記ステロール誘導体の3位ヒドロキシ基の水素原子が除去された基である。疎水性セグメントとして、特に好ましくは、コレステロール又はコール酸の3位ヒドロキシ基の水素原子が除去された基である。
 かかる疎水性セグメントは、樹状高分子上のアスパラギン酸修飾された部分のアスパラギン酸由来の末端アミノ基及び/又はアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基に直接又はリンカー(前記二官能性リンカー又は多官能性リンカー)を介して結合するが、好ましくは、アスパラギン酸由来のアミノ基又はアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端アミノ基とリンカー(例、カルボニル基(−CO−)、リジン由来の三官能性リンカー(−NH−(CH CH(NH−)CO−)等)を介して結合する。かかる疎水性セグメントの樹状高分子上のアスパラギン酸修飾された部分の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基への導入率は、アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数に対して、少なくとも1%であり、好ましくは、約1~20%であり、より好ましくは、約1~5%である。
[0023]
 本明細書中、「薬物」としては、例えば、骨粗鬆症治療薬、関節リウマチ治療薬、抗癌剤、抗炎症剤、抗酸化剤、核酸医薬、放射性薬剤、造影剤等が挙げられる。薬物の種類は、特に限定されないが、疎水性の薬物が好適に用いられる。薬物の具体例を以下に示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
[0024]
 骨粗鬆症治療薬としては、例えば、ビスホスホネート、エストリオール、エストラジオール、ラロキシフェン、バゼドキフェン、デノスマブ、エルカトニン、サケカルシトニン、イプリフラボン、テリパラチド、カルシトリオール、アルファカルシドール、エルデカルシトール、メナテトレノン、W9(bone resorption inhibitor peptide)、MG−132(カテプシン阻害剤)等が挙げられる。
[0025]
 関節リウマチ治療薬としては、例えば、ビスホスホネート、金チオリンゴ酸、オーラノフィン、ペニチラミン、ブシラミン、サラゾスルファピリジン、ロベンザリット、アクタリット、イグラチモド、メトトレキサート、ミゾリビン、レフルノミド、タクロリムス、トファシチニブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、セルトリズマブペゴル、トシリズマブ、アパタセプト、ロキソプロフェン、セレコキシブ、プレドニゾロン等が挙げられる。
[0026]
 抗癌剤としては、例えば、BCG、アクチノマイシンD、アスパラギナーゼ、アセグラトン、アナストロゾール、アロプリノール、アントラサイクリン、ビカルタミド、抗アンドロゲン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、インターフェロン、インターフェロンアルファ、インターロイキン−2、ウベニメクス、エキセメスタン、エストラムスチン、エストロゲン、エトポシド、エノシタビン、エピルビシン、オキサリプラチン、オクトレオチド、カペシタビン、カルボコン、カルボプラチン、カルモフール、クラドリビン、クラリスロマイシン、クレスチン、ケトコナゾール、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、ゴセレリン、シクロホスファミド、シスプラチン、シゾフィラン、シタラビン、シプロヘプタジン、ジノスタチンスチマラマー、セツキシマブ、ソブゾキサン、タモキシフェン、ダウノルビシン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、チオテパ、テガフール、テガフール・ウラシル、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、デキサメタゾン、トポテカン、トラスツズマブ、トリプトレリン、トレチノイン、トレミフェン、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、ドセタキセル、ニムスチン、ネオカルチノスタチン、ネダプラチン、パクリタキセル、ヒドロキシウレア、ヒドロキシカルバミド、ビカルタミド、ビノレルビン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ピシバニール、ピラルビシン、ファドロゾール、フルオロウラシル、フルタミド、フルダラビン、ブスルファン、ブレオマイシン、プレドニゾン、プロカルバジン、プロゲスチン、ペプロマイシン、ペントスタチン、ポルフィマーナトリウム、マイトマイシン、ミトキサントロン、ミトタン、メスナ、メトトレキサート、メドロキシプロゲステロン、メルカプトプリン、メルファラン、ラニムスチン、リツキシマブ、リュープロライド、レンチナン、ロイコボリン等が挙げられる。上記抗癌剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
[0027]
 抗炎症剤としては、ステロイド系抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤が挙げられる。
 ステロイド系抗炎症剤としては、例えば、副腎皮質ステロイド系の抗炎症剤、例えば、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ベクロメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンジアセテート、コルチゾン、コルチゾール、パラメタゾン、トリアムシノロン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、ジフロラゾン、フルメタゾン、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、アルクロメタゾン、フルドロコルチゾン等、またはそれらの塩が挙げられる。より具体的には、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、プロピオン酸ベクロメタゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン、コハク酸メチルプレドニゾロン、酢酸デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、デキサメタゾンメタスルホ酸安息香酸、トリアムシノロンジアセテート、ブチル酢酸プレドニゾロン、リン酸デキサメタゾン、リン酸ヒドロコルチゾン、リン酸プレドニゾロン、リン酸ベタメタゾン、コハク酸プレドニゾロン、酢酸コルチゾン、酢酸パラメタゾン、酢酸メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、吉草酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸ジフルプレナート、酢酸ジフロラゾン、ジフルプレドナート、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、プロピオン酸アルクロメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、酪酸クロペタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、酪酸フルドロコルチゾン、パルチミン酸デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン等が挙げられる。
[0028]
 非ステロイド系抗炎症薬としては、例えば、NSAIDやCOX−2阻害剤等が挙げられる。より具体的には、例えば、アセチルサリチル酸、アルクロフェナク、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブチブフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、セレコキシブ、クリデナック、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェンブフェン、フェノプロフェン、フェンティアジック、フルフェナミン酸、フルフェナソール、フルルビプロフェン、フロフェナク、イブフェナック、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナム酸、メフェナム酸、メロキシカム、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、オキシピナック、パレコキシブ、フェニルブタゾン、ピクラミラスト、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、ロフェコキシブ、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、テンクロフェナック、チアプロフェン酸、トルフェナム酸、トルメチン、トラマドール、バルデコキシブ、ゾメピラク等、またはそれらの塩が挙げられる。
[0029]
 抗酸化剤としては、例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、一酸化窒素供与体、硫化水素供与体、クルクミン、コエンザイムQ10、アスタキサンチン、α−トコフェロール、α−トコフェロール誘導体等が挙げられる。
[0030]
 核酸医薬としては、例えば、siRNA、プラスミドDNA、mRNA等が挙げられる。
[0031]
 放射性薬剤、造影剤としては、例えば、イットリウムY−90、ガドリニウムGa−67、ガドリニウムGa−68、ルテチウムLu−177、銅Cu−64、テクネシウムTc−99、レニウムRe−186もしくはレニウムRe−188、放射性ヨウ素−131等が挙げられる。上記放射性薬剤、造影剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、他の薬物と組み合わせて使用してもよい。
[0032]
 本明細書中、「骨疾患」としては、骨代謝の不全や、骨破壊の亢進等に関連して発症する疾患であればよく、例えば、骨粗鬆症、歯周病、がんの骨転移、慢性関節リウマチ、変形性関節症、骨軟化症、副甲状腺機能亢進症、ペジェット病等を挙げることができる。
 また、本明細書中、「予防又は治療」は、骨代謝の不全や骨破壊の亢進等に関連した症状の発生を抑制する又は進行を維持又は抑止できればよく、予防と治療とは明確に区別されなくてもよい。
[0033]
 本明細書中、「高分子ミセル」とは、本発明の化合物、又は本発明の化合物及び薬物を含有する組成物を水性媒体中で混合し、自己組織化することにより形成される分子集合体を意味し、親水性重合体セグメント及びアスパラギン酸のβ位カルボキシ基が該ミセルの外側(水性媒体との界面)に配置され、疎水性セグメント及び薬物が内側に配置された構造を有する。
[0034]
 本明細書中、「骨ターゲティング素子」とは、骨に対し特異的に結合して本発明の化合物、高分子ミセル又は医薬と生物学的な結合対を形成し得る、生物学的な認識機能を有する部位を意味する。本発明における骨ターゲティング素子は、樹状高分子の末端基のアスパラギン酸修飾された部位(特に、β位カルボキシ基)である。
[0035]
 本発明の化合物又は本発明の医薬が高い骨移行性及び骨選択性を発現するために必要な樹状高分子の末端基へのアスパラギン酸の導入率(アスパラギン酸修飾率)は、全末端基数に対して、少なくとも50%であり、好ましくは、60%以上であり、より好ましくは、70%以上、特に好ましくは、90%以上である。
[0036]
本明細書中、「薬物を内包」とは、薬物分子を本発明の薬物送達用担体(すなわち、薬物送達用高分子ミセル)の内部に疎水的相互作用により非共有結合的に包接することを意味する。これにより、生体内の標的部位(骨)での優れた薬物放出性が可能となる。
[0037]
 本発明の医薬の薬物の内包率は、前記疎水性セグメントの導入率と同様の範囲であり、樹状高分子のアスパラギン酸修飾された部分の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数に対して、少なくとも1%であり、好ましくは、約1~20%であり、より好ましくは、約1~5%である。
[0038]
 本発明の化合物としては、以下の化合物が好適である。
[化合物(A)]
 複数の末端基を有する樹状高分子の全末端基数の少なくとも50%(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上)に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合又はエステル結合により連結し、該アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の3~30%(より好ましくは、10~15%)に、直接又はリンカーを介してポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド又はポリメタクリルアミド由来の基である親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の1~20%(より好ましくは、1~5%)に、リンカーを介してステロール誘導体の残基である疎水性セグメントが結合してなる、本発明の化合物。
[0039]
[化合物(B)]
 複数の末端基を有する樹状高分子の全末端基数の少なくとも50%(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上)に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合又はエステル結合により連結し、該アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の3~30%(より好ましくは、10~15%)に、直接又はリンカーを介して、式:
[0040]
[化2]


[0041]
(ここで、nは、30以上の整数を示し、R は、水素原子又はC 1−6アルキル基を示す。)で表される親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の1~20%(より好ましくは、1~5%)に、リンカー(例、カルボニル基)を介してコレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール及びコール酸からなる群より選択される化合物の残基である疎水性セグメントが結合してなる、本発明の化合物。
[0042]
[化合物(C)]
 ポリアミドアミンから構成されるデンドリマー(又はデンドロン)、ポリリジンから構成されるデンドリマー(又はデンドロン)、ポリエチレングリコールと2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸から構成されるデンドリマー(又はデンドロン)、及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸から構成されるデンドリマー(又はデンドロン)からなる群より選択される樹状高分子の全末端基数の少なくとも50%(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上)に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合又はエステル結合により連結し、該アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の3~30%(より好ましくは、10~15%)に、直接又はリンカーを介して、式:
[0043]
[化3]


[0044]
(ここで、nは、30以上の整数を示し、R は、水素原子又はC 1−6アルキル基を示す。)で表される親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の1~20%(より好ましくは、1~5%)に、リンカー(例、カルボニル基)を介してコレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール及びコール酸からなる群より選択される化合物の残基である疎水性セグメントが結合してなる、本発明の化合物。
[0045]
[化合物(D)]
 ポリアミドアミンから構成されるデンドリマー(又はデンドロン)又はポリリジンから構成されるデンドリマー(又はデンドロン)である樹状高分子の全末端基数の少なくとも50%(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上)に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合により連結し、該アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の3~30%(より好ましくは、10~15%)に、直接又はリンカーを介して、式:
[0046]
[化4]


[0047]
(ここで、nは、30以上の整数を示し、R は、水素原子又はC 1−6アルキル基を示す。)で表される親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の1~20%(より好ましくは、1~5%)に、リンカー(例、カルボニル基)を介してコレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール及びコール酸からなる群より選択される化合物の残基である疎水性セグメントが結合してなる、本発明の化合物。
[0048]
[化合物(E)]
 ポリアミドアミンから構成されるデンドリマー又はポリリジンから構成されるデンドリマーである樹状高分子の全末端アミノ基数の少なくとも50%(好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは90%以上)に直接、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合により連結し、該アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端アミノ基の総数の3~30%(より好ましくは、10~15%)に、直接、式:
[0049]
[化5]


[0050]
(ここで、nは、30以上の整数を示し、R は、水素原子又はC 1−6アルキル基を示す。)で表される親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端アミノ基の総数の1~20%(より好ましくは、1~5%)に、リンカー(例、カルボニル基)を介してコレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール及びコール酸からなる群より選択される化合物の残基である疎水性セグメントが結合してなる、本発明の化合物。
[0051]
 本発明の化合物としては、以下の化合物も好適である。
[化合物(A’)]
 複数の末端基を有する樹状高分子の末端基に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合又はエステル結合により連結した化合物のアスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数の3~30%(より好ましくは、10~15%)に、直接又はリンカーを介してポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド又はポリメタクリルアミド由来の基である親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数の1~20%(より好ましくは、1~5%)に、リンカーを介してステロール誘導体の残基である疎水性セグメントが結合してなる、本発明の化合物。
[0052]
[化合物(B’)]
 複数の末端基を有する樹状高分子の末端基に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合又はエステル結合により連結した化合物のアスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数の3~30%(より好ましくは、10~15%)に、直接又はリンカーを介して、式:
[0053]
[化6]


[0054]
(ここで、nは、30以上の整数を示し、R は、水素原子又はC 1−6アルキル基を示す。)で表される親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数の1~20%(より好ましくは、1~5%)に、リンカー(例、カルボニル基)を介してコレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール及びコール酸からなる群より選択される化合物の残基である疎水性セグメントが結合してなる、本発明の化合物。
[0055]
[化合物(C’)]
 ポリアミドアミンから構成されるデンドリマー(又はデンドロン)、ポリリジンから構成されるデンドリマー(又はデンドロン)、ポリエチレングリコールと2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸から構成されるデンドリマー(又はデンドロン)、及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸から構成されるデンドリマー(又はデンドロン)からなる群より選択される樹状高分子の末端基に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合又はエステル結合により連結した化合物のアスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数の3~30%(より好ましくは、10~15%)に、直接又はリンカーを介して、式:
[0056]
[化7]


[0057]
(ここで、nは、30以上の整数を示し、R は、水素原子又はC 1−6アルキル基を示す。)で表される親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数の1~20%(より好ましくは、1~5%)に、リンカー(例、カルボニル基)を介してコレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール及びコール酸からなる群より選択される化合物の残基である疎水性セグメントが結合してなる、本発明の化合物。
[0058]
[化合物(D’)]
 ポリアミドアミンから構成されるデンドリマー(又はデンドロン)又はポリリジンから構成されるデンドリマー(又はデンドロン)である樹状高分子の末端基に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合により連結した化合物のアスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数の3~30%(より好ましくは、10~15%)に、直接又はリンカーを介して、式:
[0059]
[化8]


[0060]
(ここで、nは、30以上の整数を示し、R は、水素原子又はC 1−6アルキル基を示す。)で表される親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数の1~20%(より好ましくは、1~5%)に、リンカー(例、カルボニル基)を介してコレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール及びコール酸からなる群より選択される化合物の残基である疎水性セグメントが結合してなる、本発明の化合物。
[0061]
[化合物(E’)]
 ポリアミドアミンから構成されるデンドリマー又はポリリジンから構成されるデンドリマーである樹状高分子の末端アミノ基に直接、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合により連結し、該アスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数の3~30%(より好ましくは、10~15%)に、直接、式:
[0062]
[化9]


[0063]
(ここで、nは、30以上の整数を示し、R は、C 1−6アルキル基を示す。)で表される親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数の1~20%(より好ましくは、1~5%)に、リンカー(例、カルボニル基)を介してコレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール及びコール酸からなる群より選択される化合物の残基である疎水性セグメントが結合してなる、本発明の化合物。
[0064]
 本発明の化合物の平均分子量は、4000以上、好ましくは15000以上であり、特に上限はないが、40000以下であることが取り扱いの容易さの点で望ましい。
[0065]
 本発明の化合物には、塩の形態のものも包含される。本発明の化合物の塩とは、例えば、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩、アミノ酸との塩等が挙げられる。
[0066]
 無機酸との塩としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸等との塩が挙げられる。
 有機酸との塩としては、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、アスコルビン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。
 無機塩基との塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
 有機塩基との塩として、例えば、メチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、グアニジン、ピリジン、ピコリン、コリン、シンコニン、メグルミン等との塩が挙げられる。
 アミノ酸との塩として、例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
[0067]
 また、本発明の化合物には、溶媒和物の形態のものも包含される。本発明の化合物の溶媒和物とは、本発明の化合物に溶媒の分子が配位したものであり、水和物も包含される。例えば、本発明の化合物又はその塩の水和物、エタノール和物、ジメチルスルホキシド和物等が挙げられる。
[0068]
 本発明の化合物は、放射性薬剤、造影剤又は同位元素(例えば、 H、 H(D)、 14C、 35S、 90Y、 111In、 67Ga、 68Ga、 177Lu、 64Cu、 99Tc、 186Re、 188Re、 131I、 18F等)で標識されていてもよい。具体例としては、例えば、本発明の化合物の末端基の一部にキレート基(例、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N’’,N’’−ペンタ酢酸(DTPA)基等)を導入し、 111Inをキレート標識した化合物やフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識した化合物も、本発明の化合物に包含される。
[0069]
(本発明の化合物の合成)
 本発明の化合物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下のような反応を経て合成することができる。
[0070]
 原料化合物は、特に述べない限り、市販品として容易に入手できるか、あるいは、自体公知の方法(例、Ohsaki,M.et al.,Bioconjugate Chem.2002,13,510−517;Tomalia,D.A.et al.,Polymer Journal,1985,17,117−132;Chang,K.L.et al.,J.Control.Release.2011,156,195−202等)またはこれらに準ずる方法に従って製造することができる。
[0071]
 以下の各工程において、官能基の保護または脱保護反応は、自体公知の方法、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,4th Ed.,Theodora W.Greene,Peter G.M.Wuts,Wiley−Interscience(2007)等に記載された方法、あるいは本明細書の実施例に記載された方法に準じて行われる。
[0072]
 なお、以下の反応式中の各工程で得られた化合物は、反応液のままか粗生成物として次の反応に用いることもできる。あるいは、該化合物は常法に従って反応混合物から単離することもでき、再結晶、蒸留、クロマトグラフィー等の通常の分離手段により容易に精製することができる。
[0073]
 本発明の化合物は、例えば、以下の製法1、2等により製造することができる。
(製法1)
[0074]
[化10]


[0075]
(式中、L 、L 及びL は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立してリンカーを示し、R は、アミノ基又はヒドロキシ基を示し、P及びP’は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して保護基を示し、X 及びX は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して脱離基を示し、Z 、Z 及びZ は、同一又は異なっていてもよく、それぞれ独立して、NH又は酸素原子を示し、S は、親水性重合体セグメントを示し、S は、疎水性セグメントを示し、m1、m2及びm3は、それぞれ独立して0又は1を示し、n2、n3及びn4は、それぞれ独立して1以上の整数を示し、n3a、n3b、n4a及びn4bは、それぞれ独立して0以上の整数を示し、且つn1は、8以上の整数を示す。但し、n1は、n2、n3及びn4の和以上であり、n3=n3a+n3bであり、並びにn4=n4a+n4bである。)
[0076]
 工程1
 当該工程は、樹状高分子(1)の末端のアミノ基又はヒドロキシ基と、アミノ基及びβ位カルボキシ基を保護したアスパラギン酸(化合物2)のα位カルボキシ基とを、脱水縮合させた後、脱保護反応に付すことにより、化合物3へと変換する工程である。
 当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、自体公知の脱水縮合反応条件、及び脱保護条件を用いて行われる。
[0077]
 化合物2の使用量は、樹状高分子(1)の末端基の総数(1モル)に対して、通常0.5~3モル、好ましくは、1~1.5モルである。
[0078]
 脱水縮合反応に使用する縮合剤としては、例えば、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)、ジシクロへキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドおよびその塩酸塩(EDC・HCl)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBop)、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート(TBTU)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5−クロロ−1H−ベンゾトリアゾリウム3−オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロボレート(HBTU)等が挙げられる。
 当該縮合工程においては、必要に応じて、縮合添加剤(例、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1−ヒドロキシ−1H−1,2,3−トリアゾール−5−カルボン酸エチルエステル(HOCt)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)等)や塩基(例、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基等)を添加することも可能である。
 該縮合剤の使用量は、樹状高分子(1)の末端基の総数(1モル)に対して、通常0.5~3モル、好ましくは、1~1.5モルである。
 溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類等あるいはそれらの混合物が挙げられ、中でも、N,N−ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン等が好ましい。
 反応温度は、通常−10~30℃、好ましくは0℃~20℃であり、反応時間は、通常1~30時間である。
[0079]
 脱保護反応における反応条件(反応剤、反応溶媒、反応温度、反応時間等)は、保護基(P及びP’)の種類により異なるが、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,4th Ed.,Theodora W.Greene,Peter G.M.Wuts,Wiley−Interscience(2007)等に記載の方法又は本明細書中の実施例、或いはこれらに準ずる方法に従って行うことができる。
[0080]
 工程2
 当該工程は、化合物3のアスパラギン酸由来の末端アミノ基及び/又は樹状高分子(1)の末端基の一部に親水性重合体セグメントを導入して化合物5を合成する工程である。
 当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。
[0081]
 化合物4の使用量は、化合物3の末端基の総数(1モル)に対して、通常0.03~0.4モル、好ましくは、0.1~0.2モルである。
 化合物4は、特に限定されないが、好ましくは、アミン反応性PEG化試薬(例、PEG−NHSエステル等)である。
[0082]
 溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が好ましい。
 反応温度は、通常10~50℃、好ましくは20℃~30℃であり、反応時間は、通常1~30時間である。
[0083]
 工程3
 当該工程は、化合物5のアスパラギン酸由来の末端アミノ基及び/又は樹状高分子(1)の末端基の一部に疎水性セグメントを導入して化合物7を合成する工程である。
 当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。
[0084]
 化合物6の使用量は、化合物5の末端基の総数(1モル)に対して、通常0.01~0.3モル、好ましくは、0.01~0.1モルである。
 化合物6は、特に限定されないが、好ましくは、ステロール誘導体であり、より好ましくは、コレステロールの3位ヒドロキシ基がハロホルミル化された化合物(例、クロロギ酸コレステロール等)である。
[0085]
 溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が好ましい。
 反応温度は、通常10~90℃、好ましくは40℃~80℃、より好ましくは60℃~80℃である。反応時間は、通常2~48時間である。
[0086]
 上記製造方法において、化合物4及び化合物6として、リンカー(L 又はL )を含有するものを使用しているが、当該リンカーは、化合物4及び化合物6に含まれる必要はなく、予め、化合物3及び化合物5にリンカーを導入した後に、リンカーを有さない化合物4及び化合物6と反応させることも可能である。
 各種リンカーとしては、前記したものが挙げられ、それぞれ必要に応じて、公知のリンカー試薬を用いた自体公知の方法により化合物3~6に導入することができる。
[0087]
(製法2)(樹状高分子(1)の全ての末端基がアスパラギン酸修飾される場合)
[0088]
[化11]


[0089]
(式中、n5及びn6は、それぞれ独立して、1以上の整数を示し、且つn1’は、8以上の整数を示し、他の記号は、前記と同意義を示す。但し、n1’は、n5とn6の和よりも大きい。)
[0090]
 工程1
 当該工程は、樹状高分子(1’)の末端のアミノ基又はヒドロキシ基と、アミノ基及びβ位カルボキシ基を保護したアスパラギン酸(化合物2)のα位カルボキシ基とを、脱水縮合させた後、脱保護反応に付すことにより、化合物8へと変換する工程である。
 当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中、自体公知の脱水縮合反応条件、及び脱保護条件を用いて行われる。
[0091]
 化合物2の使用量は、樹状高分子(1’)の末端基の総数(1モル)に対して、通常1~3モル、好ましくは、1~1.5モルである。
[0092]
 脱水縮合反応に使用する縮合剤としては、例えば、前記製法1の工程1で挙げたものを使用することができる。
 当該縮合工程においては、必要に応じて、前記製法1の工程1で挙げた縮合添加剤や塩基を添加することも可能である。
 該縮合剤の使用量は、樹状高分子(1’)の末端基の総数(1モル)に対して、通常1~3モル、好ましくは、1~1.5モルである。
 溶媒としては、例えば、前記製法1の工程1で挙げた溶媒を好適に使用することができる。
 反応温度は、通常−10~30℃、好ましくは0℃~20℃であり、反応時間は、通常1~30時間である。
[0093]
 脱保護反応における反応条件(反応剤、反応溶媒、反応温度、反応時間等)は、保護基(P及びP’)の種類により異なるが、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis,4th Ed.,Theodora W.Greene,Peter G.M.Wuts,Wiley−Interscience(2007)等に記載の方法又は本明細書中の実施例、或いはこれらに準ずる方法に従って行うことができる。
[0094]
 工程2
 当該工程は、化合物8のアスパラギン酸由来の末端アミノ基の一部に親水性重合体セグメントを導入して化合物9を合成する工程である。
 当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。
[0095]
 化合物4の使用量は、化合物8のアスパラギン酸由来の末端アミノ基の総数(1モル)に対して、通常0.03~0.4モル、好ましくは、0.1~0.2モルである。
 化合物4は、特に限定されないが、好ましくは、アミン反応性PEG化試薬(例、PEG−NHSエステル等)である。
[0096]
 溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が好ましい。
 反応温度は、通常10~50℃、好ましくは20℃~30℃であり、反応時間は、通常1~30時間である。
[0097]
 工程3
 当該工程は、化合物9のアスパラギン酸由来の末端アミノ基の一部に疎水性セグメントを導入して化合物10を合成する工程である。
 当該反応は、反応に影響を及ぼさない溶媒中で行われる。
[0098]
 化合物6の使用量は、化合物9の末端基の総数(1モル)に対して、通常0.03~0.3モル、好ましくは、0.03~0.1モルである。
 化合物6は、特に限定されないが、好ましくは、ステロール誘導体であり、より好ましくは、コレステロールの3位ヒドロキシ基がハロホルミル化された化合物(例、クロロギ酸コレステロール等)である。
[0099]
 溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が好ましい。
 反応温度は、通常10~90℃、好ましくは40℃~80℃、より好ましくは60℃~80℃である。反応時間は、通常2~48時間である。
[0100]
 上記製造方法において、化合物4及び化合物6として、リンカー(L 又はL )を含有するものを使用しているが、当該リンカーは、化合物4及び化合物6に含まれる必要はなく、予め、化合物8及び化合物9にリンカーを導入した後に、リンカーを有さない化合物4及び化合物6と反応させることも可能である。
 各種リンカーとしては、前記したものが挙げられ、それぞれ必要に応じて、公知のリンカー試薬を用いた自体公知の方法により化合物4、6、8及び9に導入することができる。
[0101]
(本発明の化合物を含有する高分子ミセル及び該高分子ミセルを含有する本発明の医薬)
 本発明の化合物は、単独で、又は薬物と共に水性媒体(好ましくは、蒸留水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等)中で混合し、通常、4~25℃で0.5~24時間、静置又は攪拌することにより自己組織化により高分子ミセルを形成する。さらに、透析、攪拌、希釈、濃縮、超音波処理、温度制御、pH制御、イオン強度制御、有機溶媒の添加等の操作を適宜付加することができる。
 当該高分子ミセルの表面電荷及び粒子径は、粒子径分析装置(例、ゼータサイザーナノ(Malvern Instruments社製))を用いて計測することができる。
[0102]
 本発明の高分子ミセルの平均粒子径は、通常、30~200nm、好ましくは30~150nm、より好ましくは40~100nmである。
[0103]
 本発明の高分子ミセルを、医薬として使用する場合には、滅菌処理する工程、滅菌後の混合水溶液を凍結乾燥する工程を含んでもよい。凍結乾燥工程を含む場合は、前記混合水溶液に凍結乾燥補助剤を含んでいてもよい。このようにして得られる凍結乾燥製剤は、注射用蒸留水、5%ブドウ糖、生理食塩水等で要時に高分子ミセルへと再構成することが可能である。
[0104]
 前記凍結乾燥補助剤としては、例えば、マンニトール、ソルビトール、乳酸、トレハロース、及びスクロースからなる群より選択される一種以上を使用することができる。好ましくは、マンニトールである。
[0105]
 本発明の化合物を含有する高分子ミセルは、骨移行性が高く、骨選択的に薬物を集積させることができるので、医薬として有用であり、各種骨疾患等の予防又は治療剤として優れた効果を示し得る。例えば、骨代謝の不全や、骨破壊の亢進等に関連して発症する疾患の予防又は治療用途に有用であり、骨疾患の具体例としては、骨粗鬆症、歯周病、がんの骨転移、慢性関節リウマチ、変形性関節症、骨軟化症、副甲状腺機能亢進症、ペジェット病等が挙げられる。
[0106]
 本発明の医薬(以下、「本発明の医薬組成物」ともいう。)は、前記した本発明の化合物及び薬物以外に薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。薬学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等として配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤等の製剤添加物を用いることもできる。溶剤の好適な例としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール等が挙げられる。溶解補助剤の好適な例としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。懸濁化剤の好適な例としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤;例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。等張化剤の好適な例としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、マンニトール等が挙げられる。緩衝剤の好適な例としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられる。無痛化剤の好適な例としては、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。防腐剤の好適な例としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。抗酸化剤の好適な例としては、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸等が挙げられる。
[0107]
 本発明の医薬組成物を骨疾患等の治療に用いる場合は、既存の薬剤(例、骨疾患等の治療剤等)と併用することも可能である。併用する場合、本発明の医薬組成物と既存の薬剤との投与順序は、同時又は別々であってもよい。別々の場合、本発明の医薬組成物は、既存の薬剤の投与前又は投与後のいずれでもよい。
[0108]
 本発明の医薬組成物の投与経路は、種々の状況により特に制限されないが、例えば経口或いは非経口経路で投与することができる。ここで使用される「非経口」には、静脈内、筋肉内、皮下、鼻腔内、皮内、点眼、脳内、直腸内、腟内及び腹腔内等への投与を含む。
 本発明の医薬組成物を投与する際には、注射用に等張性水溶液または懸濁液の形態で単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供されることができる。また、持続点滴も可能であり、カテーテルを用いた局所投与も望ましい。本発明の医薬組成物は、単回投与又は複数回投与を行うことが可能であり、その投与期間及び間隔は、種々の状況に応じて変更されるものであり、医師の判断により随時判断されるものである。
[0109]
 本発明の医薬組成物の投与量は、治療目的、投与対象の年齢、投与経路、投与回数、疾病の程度により異なり、広範囲に変えることができる。本発明の医薬組成物に含まれる薬物の1日当たりの投与量は、当業者であれば適宜設定することができ、例えば、癌の骨転移の治療目的で患者に非経口的に投与する場合は、体重1kgあたり0.01mg~100mg、好ましくは0.01mg~50mg、より好ましくは0.01mg~20mgであり、これらを1回又は数回に分けて投与することができる。
[0110]
 本発明の医薬を用いれば、薬物が骨に選択的に移行して高濃度で蓄積されること、癌の骨転移の治療等における有効性が顕著に向上することが、以下の試験例において確認された。
[0111]
 以下、本発明の好適な実施例及び試験例を示して、本発明をより詳述するが、下記実施例は、本発明の効果を例示的に確認するためのものであって、本発明がこれらのみに限定されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
実施例
[0112]
 以下に、実施例、製剤例及び試験例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等により限定されるものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
 本実施例で用いる装置、試薬等は、特に断りのない限り、当該技術分野で通常実施されている方法に従って容易に入手又は調製可能か、あるいは商業的に入手可能なものである。
 以下の実施例中の「室温」は、通常約10℃ないし約25℃を示す。
[0113]
実施例1:本発明の化合物(化合物1a)の合成
 トリエチルアミン含有N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(無水)中で第3世代のポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM;Sigma Ardrich社製;1.0等量)に対して32.5等量の無水1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(HOBt)(渡辺化学工業株式会社製)及び32.5等量の1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−1H−ベンゾトリアゾリウム 3オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HBTU)(Merck Millipore社製)、32.5等量のBoc−Asp(OtBu)−OH(渡辺化学工業株式会社製)を加え、室温で4時間攪拌することで、PAMAMのアミノ基末端にBoc−Asp(OtBu)−OHを脱水縮合反応により導入した。反応混合液を減圧濃縮し、クロロホルムに再溶解した後、5%炭酸ナトリウムと飽和食塩水で分液した。有機相を減圧濃縮し、石油エーテルで沈殿させた。沈殿物を室温で真空乾燥させた後、クロロホルムに溶解し、トリフルオロ酢酸で処理することにより脱保護した。室温で1時間撹拌した後、混合物を減圧濃縮し、ジエチルエーテルで沈殿させてアスパラギン酸修飾PAMAM(Asp−PAMAM)を得た。得られたAsp−PAMAMを超脱水ジメチルスルホキシド(DMSO)中で5.0等量のアミノ基反応型活性化メトキシポリエチレングリコール(PEG−NHS;平均分子量:2000)(SUNBRIGHT ME−020CS,NOF Co.Tokyo,Japan)と室温で24時間反応させた。反応時にトリエチルアミンを添加することによってpHを8.0以上に調整し、最終的にPEG化Asp−PAMAMを得た。超純水を用いて限外ろ過により生成物を洗浄した。PEG化されたことは、MALDI TOF−MS(Microflex;Bruker Daltonics,Bremen,Germany)によって同定した。
 続いて、得られたPEG化Asp−PAMAMをDMF中に溶解させ、1.5等量のクロロぎ酸コレステロールを加えた後、80℃で2時間、60℃で3時間、室温で24時間攪拌することにより、アスパラギン酸由来のアミノ基末端にコレステロール残基を結合させることにより、PEG化Asp−PAMAMにコレステロール残基が導入された本発明の化合物(化合物1a)を合成した。
[0114]
実施例2:化合物1a及びパクリタキセルを含有する高分子ミセルの合成
 実施例1で得られた化合物1a(1.0mg)とパクリタキセル(PTX)(5.0mg)(東京化成工業株式会社製)を1mLの超純水中で室温下、24時間混合し、0.45μmのメンブランフィルターを用いてフィルター濾過することで、PTXを内包した状態で化合物1aが自己集合して形成された高分子ミセル(PTX−化合物1aミセル)を作製した。得られたPTX−化合物1aミセルの表面電荷および粒子径は、ゼータサイザーナノ(Malvern Instruments,Worcestershire,UK)を用いて測定した。
[0115]
 得られたPTX−化合物1aミセルの粒子径と表面電荷の測定結果を表1に示す。平均粒子径は48.28±21.2nmであり、ゼータ電位は−13±1.04mVであった。
[0116]
[表1]


[0117]
比較例:アスパラギン酸修飾されていない化合物由来の高分子ミセルの合成
 トリエチルアミン含有N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(無水)中で第3世代のポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM)(Sigma−Aldrich社製)(1.0等量)を超脱水ジメチルスルホキシド(DMSO)中で5.0等量のアミノ基反応型活性化メトキシポリエチレングリコール(PEG−NHS;平均分子量:2000)(SUNBRIGHT ME−020CS,NOF Co.Tokyo,Japan)と室温で24時間反応させた。
 反応時にトリエチルアミンを添加することによってpHを8.0以上に調整し、PEG化PAMAMを得た。超純水を用いて限外ろ過により生成物を洗浄した。続いて、得られたPEG化PAMAMをDMF中に溶解させ、1.5等量のクロロぎ酸コレステロールを加えた後、80℃で2時間、60℃で3時間、室温で24時間攪拌し、PAMAM由来のアミノ基末端にコレステロール残基を結合させることにより、アスパラギン酸修飾されていない化合物を合成した。得られた化合物(1.0mg)と5.0mgのパクリタキセル(PTX)を1mLの超純水中で室温下、24時間混合し、0.45μmのメンブランフィルターを用いてフィルター濾過することで、PTXを内包した状態で該化合物が自己集合して形成された高分子ミセル(PTX−PAMAMミセル)を作製した。
[0118]
試験例1:PTX−化合物1aミセルの体内動態評価
(試験方法)
  111In標識した化合物1aミセルをddYマウスに静脈内投与し、化合物1aミセルの体内動態を評価した。すなわち、化合物1aの自己集合により形成されたミセル(化合物1aミセル)を、二官能性キレート剤であるジエチレントリアミン−N,N,N’,N’’,N’’−ペンタ酢酸(DTPA)無水物(同仁化学研究所製)を使用して、Hnatowichらによって記載された方法(Int.J.Appl.Radiat.Isot.,12,327−332(1982))に従って、 111Inで放射標識した。得られた 111In標識化合物1aミセルに H標識PTX(Moravek社製)を含有させた標識PTX−化合物1aミセルを調製した。また、同様の方法により、比較例である標識PTX−PAMAMミセルも調製した。
 標識PTX−化合物1aミセルをddYマウスに10mgPAMAM/kg、0.5mgPTX/kg(6.0×10 cpm  111In/kg,30μCi  H/kg)の投与量で静脈内投与し、化合物1aミセル及びPTXの体内動態を評価した。静脈注射後の適当な時点で、イソフルラン麻酔下で大静脈から血液を採取した。肝臓、腎臓、脾臓、心臓、および肺組織を下肢骨と共に取り出し、生理食塩水で洗浄、濾紙で水分を吸い取ってから臓器湿重量を測定した。採取した血液を2000×gで5分間遠心分離して血漿を得た。収集した臓器の試料および100mLの血漿を計数管に移し、各試料の放射能をガンマーカウンター(1480 WizardTM 3’、Perkin−Elmer、Boston、MA、USA)を用いて化合物1aミセル部分の放射活性を測定した。続いて、液体シンチレーションカウンターにより試料中のPTXの放射活性を測定した。骨の放射能は脛骨および大腿骨で測定された放射活性に基づいて、総湿性骨重量を体重の12%として計算した。
[0119]
 標識PTX−化合物1aミセルの 111In標識された化合物1a部分の体内動態の結果を図1に示す。
 図1によれば、標識PTX−PAMAMミセルの 111In標識されたPAMAMミセル部分の骨移行量は、投与後3時間で5.6%を示し、投与量の40%が肝臓へ移行した(図1のa)。一方、 111In標識された化合物1aミセル部分の骨移行量は投与後3時間で26%を示し、また他臓器への移行はほとんど観察されなかったことから、アスパラギン酸修飾による効率的な骨標的化を達成できることが確認された(図1のb)。
[0120]
  H標識されたPTXの体内動態の結果を図2に示す。
 図2によれば、標識PTX−PAMAMミセルによる H標識されたPTXの骨移行量は、7.7%であり(図2のa)、肝臓に主に分布した。一方、標識PTX−化合物1aミセルによる H標識されたPTXの骨移行量は22%であり(図1のb)、他の臓器への移行もほとんど観察されず、骨選択性に優れた体内動態を示すことが確認された。
[0121]
試験例2:化合物1aミセルの骨内分布
(試験方法)
 化合物1aミセルの静脈内投与後の骨内分布を評価した。すなわち、化合物1aミセルをフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(Sigma−Aldrich社製)で標識した(FITC標識化合物1aミセル)。また、同様の方法により、比較例であるFITC標識PAMAMミセルも調製した。
 マウスの骨新生部位を標識するために、キシレノールオレンジ(和光純薬工業株式会社)をFITC標識化合物1aミセル投与の3日前に30mg/kgでddYマウスに静脈内投与した。FITC標識化合物1aミセル溶液を20mmol FITC/kgの用量でマウスに静脈内投与した。静脈注射の24時間後、安楽死後に下肢骨を摘出した。遠位大腿骨および近位脛骨からの脱灰前の組織切片は、Kawamoto法(T.Kawamoto,Arch.Histol.Cytol.,2003,66,123−143参照)に従って作製した。切片を、共焦点レーザー走査顕微鏡A1R+(Nikon Co., Tokyo Japan)を用いて観察した。
[0122]
 結果を図3に示す。図3のa及びa’のキシレノールオレンジは骨新生部位を示す。図3のb’によれば、FITC標識PAMAMミセル由来の蛍光は、ほとんど観察されなかったが、bによれば、FITC標識化合物1aミセル由来の緑色の蛍光は強く観察された。また、図3のcによれば、FITC標識化合物1aミセル由来の蛍光とキシレノールオレンジ由来の蛍光の重なりはほとんど観察されなかったことから、化合物1aミセルは骨新生部位以外(破骨部位)に主に分布することが示された。破骨部位は骨粗鬆症や骨転移の病巣部位であることから、骨疾患治療に有利な骨内分布を示していることが分かった。
[0123]
試験例3:PTX−化合物1aミセルによる癌骨転移抑制
(試験方法)
 骨転移モデルは、C57/BL6マウスの左心室にホタルルシフェラーゼ遺伝子で標識されたB16−BL6細胞(B16−BL6/Luc細胞,2×10 cells)を注入することによって作製した。腫瘍接種1日後および3日後に、PTX−化合物1aミセルを 0.5mg PTX/kgの用量で尾静脈に注射した。腫瘍接種の14日後、ペントバルビタール(50mg/kg)(共立製薬株式会社製)の腹腔内注射による麻酔下、2.5mgのD−ルシフェリンをマウスに腹腔内注射し、IVIS Lumina XRMS Series III Multi−Species Optical and X−Ray Imaging Systemを用いて画像化を行った。次いで、マウスを安楽死させた後、下肢の骨を摘出し、ルミノメーター(Lumat LB9507,EG&G Berthold,Bad Wild−bad,Germany)で組織中のルシフェラーゼ活性を測定した。得られたルシフェラーゼ活性から、回帰線を用いて骨中癌細胞数を算出した。
[0124]
 結果を図4に示す。図4によれば、PTX−化合物1aミセルの投与により、下肢骨中癌細胞数の増殖は顕著に抑制された。また、PTX−PAMAMミセルによるPTX投与群と比較して有意に骨中癌増殖を抑制することが確認された。
[0125]
試験例4:Single photon emission computed tomography/computed tomography(SPECT/CT)イメージングによる化合物1aの疎水性セグメントを除いた部分の臓器分布
(試験方法)
 SPECT/CTは、NanoSPECT/CT(Bioscan Inc.、Washington DC、USA)を用いて行った。化合物1aの疎水性セグメントを除いた部分の 111In標識体(9.4MBq/マウス)をマウスに静脈内投与した。前記 111In標識体の静脈内投与後6時間、イソフルラン吸入麻酔下、60分間のマウスのSPECTスキャンを実施した。SPECTスキャンに先立ち、解剖学的観察のため、イソフルラン吸入麻酔下でマウスのCTスキャンを実施した。SPECT画像は、HiSPECTソフトウェア(Scivis、Goettingen、Germany)を用いて再構成した。また、Amira 3Dデータ分析および可視化ソフトウェアパッケージ(バージョン5.1;FEI Company、Hillsboro、OR、USA)を用いて画像分析を行った。
[0126]
 結果を図5に示す。図5は、化合物1aの疎水性セグメントを除いた部分の 111In標識体の静脈注射後の臓器分布のSPECT/CTイメージング画像を示す。
 図5によれば、化合物1aの疎水性セグメントを除いた部分の 111In標識体は、一部、腎臓及び膀胱(尿中排泄)へ分布したが、骨へ選択的に集積した。特に、骨の代謝回転が活発化している肩及び下肢の関節部に特異的に集積する様子が観察された。骨転移や骨粗鬆症などの疾患部位は骨の代謝回転が活発化していることから、化合物1aミセルは骨転移や骨粗鬆症などの画像診断や治療に適したキャリアである可能性が高いことが分かった。
[0127]
試験例5:骨転移モデルにおけるPTX−化合物1aミセルの骨内分布
(試験方法)
 骨転移モデルは、C57/BL6マウスの左心室にホタルルシフェラーゼ遺伝子で標識されたB16−BL6細胞(B16−BL6/Luc細胞,2×10 cells)を注入することによって作製した。腫瘍接種7日目に、FITC−標識PTX−化合物1aミセルを静脈内投与し、その24時間後にイソフルラン吸入麻酔下、下肢骨を摘出し凍結切片を作成した。マウス下肢骨中の破骨細胞及び転移した癌細胞について免疫染色を施した後、FITC−標識PTX−化合物1aミセルとの位置関係を共焦点レーザー顕微鏡で観察した。
[0128]
 結果を図6に示す。Melan−A(青色蛍光)は、癌細胞を示す。Cathepsin K(赤色蛍光)は破骨細胞を示す。図6のFITC標識PAMAMミセルによれば、FITC標識PAMAMミセル由来の蛍光は、ほとんど観察されなかったが、FITC標識PTX−化合物1aミセルによれば、FITC標識PTX−化合物1aミセル由来の緑色の蛍光は強く観察された。また、図6のMergeによれば、FITC標識化合物1aミセル由来の蛍光とMelan−A(癌細胞のマーカー)とCathepsin K(破骨細胞のマーカー)由来の蛍光の共局在が観察されたことから、PTX−化合物1aミセルは腫瘍及び破骨細胞の近傍に主に分布することが示された。
 以上の結果から、PTX−化合物1aミセルは、骨転移治療に有利な骨内分布を示すことが分かった。
[0129]
製剤例(凍結乾燥製剤の製造)
 1)本発明の化合物(化合物1a)            40 mg
 2)マンニトール                    10 mg
 3)パクリタキセル(薬物)                3 mg
  4)超純水                        1 ml
                          計53mg/ml
 1)、2)、3)及び4)を混合後、メンブランフィルターを用いて滅菌濾過して、容器に充填し、凍結乾燥することにより、凍結乾燥製剤を得た。

産業上の利用可能性

[0130]
 本発明の化合物は、単独で、又は薬物と一緒になって高分子ミセルを形成することが出来、該高分子ミセルは、高い骨移行選択性及び骨への高い標的化効率を示し、薬物放出性にも優れていることから、各種骨疾患の予防剤(検査薬)または治療剤として極めて有用である。また、本発明の化合物及び高分子ミセルは、生体内での凝集性の少ない生体由来のアスパラギン酸を骨ターゲティング素子として使用していることから、生体適合性や安全性に優れるという利点を有している。さらに、本発明の化合物及び高分子ミセルは、簡便に合成可能であることから、薬効に優れ、且つ副作用の少ない実用的な薬物送達用担体及び医薬として幅広い用途への応用が期待される。
[0131]
 本出願は、特願2017−132805を基礎としており、その内容は本明細書に全て包含されるものである。

請求の範囲

[請求項1]
 複数の末端基を有する樹状高分子の全末端基数の少なくとも50%に直接又はリンカーを介して、アスパラギン酸のα位カルボニル基がペプチド結合又はエステル結合により連結し、該アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の少なくとも3%に、直接又はリンカーを介して親水性重合体セグメントが結合し、且つ前記アスパラギン酸由来の末端アミノ基及びアスパラギン酸修飾されていない樹状高分子上の末端基の総数の少なくとも1%に、直接又はリンカーを介して疎水性セグメントが結合してなる化合物。
[請求項2]
 前記親水性重合体セグメントが、ポリエチレングリコール由来の基である、請求項1に記載の化合物。
[請求項3]
 前記疎水性セグメントが、ステロール誘導体の残基である、請求項1又は2に記載の化合物。
[請求項4]
 前記ステロール誘導体の残基が、コレステロール、コレスタノール、ジヒドロキシコレステロール及びコール酸からなる群より選択される化合物に由来する、請求項3に記載の化合物。
[請求項5]
 前記樹状高分子が、ポリアミドアミンから構成されるデンドリマー又はデンドロン、ポリリジンから構成されるデンドリマー又はデンドロン、ポリエチレングリコールと2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸から構成されるデンドリマー又はデンドロン、及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸から構成されるデンドリマー又はデンドロンからなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
[請求項6]
 請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、及び薬物を含有する医薬組成物。
[請求項7]
 前記薬物が、骨粗鬆症治療薬、関節リウマチ治療薬、抗癌剤、抗炎症剤、抗酸化剤、核酸医薬、放射性薬剤及び造影剤からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項6に記載の医薬組成物。
[請求項8]
 請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物を含有する高分子ミセル。
[請求項9]
 更に薬物を内包してなる、請求項8に記載の高分子ミセル。
[請求項10]
 前記薬物が、骨粗鬆症治療薬、関節リウマチ治療薬、抗癌剤、抗炎症剤、抗酸化剤、核酸医薬、放射性薬剤及び造影剤からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項9に記載の高分子ミセル。
[請求項11]
 請求項8に記載の高分子ミセルからなり、生体内において標的組織へ選択的に薬物を送達するための薬物送達用担体。
[請求項12]
 前記標的組織が骨である、請求項11に記載の薬物送達用担体。
[請求項13]
 請求項9又は10に記載の高分子ミセルを含有する医薬。
[請求項14]
 骨疾患の予防または治療剤である、請求項13に記載の医薬。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]