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1. (WO2019008845) DISPOSITIF DE POSITIONNEMENT
Document

明 細 書

発明の名称 測位装置 0001  

技術分野

0002  

背景技術

0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013  

図面の簡単な説明

0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

明 細 書

発明の名称 : 測位装置

関連出願の相互参照

[0001]
 本出願は、2017年7月7日に出願された日本特許出願番号2017-133972号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。

技術分野

[0002]
 本開示は、測位衛星から送信される測位信号を用いて測位を行う測位装置に関する。

背景技術

[0003]
 従来、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の技術分野では、測位衛星から送信された測位信号が建物などで反射されて測位装置で受信されること(いわゆるマルチパス)によって、演算結果としての位置情報に誤差が含まれうることが知られている。
[0004]
 特許文献1では、そのようなマルチパスに由来する測位誤差を抑制するための構成として、疑似距離の誤差の大きさを示すパラメータである残差(以降、擬似距離残差とする)を捕捉衛星毎に算出し、擬似距離残差が予め定められている閾値を超過している捕捉衛星からの測位信号を測位演算処理に用いない構成が提案されている。なお、ここでの擬似距離残差とは、推定される測位装置の現在位置の座標と測位衛星の位置座標からとに基づいて定まる距離(座標由来値)と、測位信号の受信結果から算出される観測値としての擬似距離の差である。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2013-108961号公報

発明の概要

[0006]
 特許文献1のように捕捉衛星毎に擬似距離残差を逐次算出し、前時刻において擬似距離残差が所定のレベル以下となっている捕捉衛星の観測データのみを用いて測位演算処理を実施する構成(以降、想定構成)では、擬似距離残差に対する閾値が、測位演算処理に用いる捕捉衛星を取捨選択する際の基準として作用する。
[0007]
 一般的に、都市部等のマルチパス環境下では、オープンスカイ環境下に比べて個々の捕捉衛星からの測位信号の品質が劣化するため、測位演算処理に用いる測位衛星の数は多いほど、測位精度の向上が期待できる。そのような事情を鑑みると、都市部等のマルチパス環境下では、想定構成で設定される、擬似距離残差に対する閾値は大きい方が好ましい。仮に上記想定構成において、測位演算処理に用いる捕捉衛星を取捨選択するための擬似距離残差に対する閾値が小さ過ぎると、測位演算処理に使用可能な捕捉衛星が少なくなってしまい、測位精度を向上させる効果が得られにくくなってしまうためである。
[0008]
 一方、オープンスカイ環境下では、マルチパス環境下に比べて個々の捕捉衛星からの測位信号の品質は良好であるため、測位演算処理に用いる捕捉衛星が相対的に少数であっても十分に高精度測位が可能である。また、擬似距離残差に対する閾値を小さい値に設定すれば、擬似距離等の誤差が大きい観測データが測位演算処理に用いる観測データに混ざり込む恐れを抑制することができ、測位精度のさらなる向上が期待できる。つまり、オープンスカイ環境下では、擬似距離残差に対する閾値は小さいほうが好ましい。
[0009]
 このように、測位演算処理に用いる捕捉衛星(換言すれば観測データ)を取捨選択するための条件であって、より精度がよい測位結果を得るために設定されるべき条件は、周辺環境によって異なる。
[0010]
 本開示は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、オープンスカイ環境下での測位精度の向上と、マルチパス環境下での測位精度の向上とを両立させることができる測位装置を提供することにある。
[0011]
 本開示の一態様による測位装置は、複数の測位衛星のそれぞれから送信される測位信号を受信する信号受信部と、信号受信部が受信した測位信号に基づいて、受信した測位信号の送信元としての測位衛星についてのドップラーシフト量及び擬似距離の少なくとも何れか一方を、マルチパス環境下であるか否かを判定するための指標値として逐次算出する環境指標値算出部と、信号受信部で測位信号を受信できている測位衛星である捕捉衛星毎に、その捕捉衛星に対して環境指標値算出部が算出した指標値のばらつき度合いを示す指標値散布度を算出する散布度算出部と、散布度算出部が算出した捕捉衛星毎の指標値散布度に基づいて、複数の捕捉衛星のうち、測位演算処理に使用しない捕捉衛星である不使用衛星を決定する1次選択部と、捕捉衛星の総数に対する1次選択部によって不使用衛星に設定された捕捉衛星の数の比である削除率に基づいて、周辺環境はマルチパスが発生しやすい環境であるか否かを判定する環境判定部と、環境判定部の判定結果に基づいて、測位演算処理に用いる捕捉衛星の条件を変更する条件変更部と、条件変更部によって設定されている条件を充足している測位衛星からの測位信号を用いて測位演算処理を実施する測位演算部と、を備える。
[0012]
 上記の構成では、条件変更部が、環境判定部の判定結果に応じて、測位演算処理に用いる捕捉衛星の条件(以降、採用条件)を動的に変更する。故に、例えば、環境判定部によって周辺環境はマルチパスが生じにくい環境であると判定されている場合には、条件変更部が採用条件を相対的に厳しい条件に変更することで、測位演算処理に使用する捕捉衛星を信号品質が良い捕捉衛星に絞り、測位精度の向上を図ることができる。また、環境判定部によって周辺環境はマルチパスを生じやすい環境であると判定されている場合には採用条件を緩和することで測位演算処理に使用する捕捉衛星の数を増やし、測位精度の向上を図ることもできる。
[0013]
 つまり上記の構成によれば、条件変更部が採用条件を周辺環境に応じて動的に変更するため、オープンスカイ環境下での測位精度の向上と、マルチパス環境下での測位精度の向上とを両立させることができる。

図面の簡単な説明

[0014]
 本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
[図1] 図1は、測位装置の利用態様の一例を示した図であり、
[図2] 図2は、測位装置の概略的な構成の一例を示すブロック図であり、
[図3] 図3は、環境判定部の作動を説明するための図であり、
[図4] 図4は、2次フィルタ部が実施する2次フィルタリング処理を説明するためのフローチャートであり、
[図5] 図5は、2次フィルタ部が実施する例外処理を説明するためのフローチャートであり、
[図6] 図6は、変形例1の2次フィルタ部の概略的な構成の一例を示すブロック図であり、
[図7] 図7は、変形例1の閾値変更部の作動例を示す図であり、
[図8] 図8は、変形例2における測位装置の概略的な構成の一例を示すブロック図であり、
[図9] 図9は、変形例2における環境判定部の作動を説明するための図であり、
[図10] 図10は、変形例2における環境判定部の作動を説明するための図である。

発明を実施するための形態

[0015]
 本開示の実施形態としての測位装置1について、図を用いて説明する。図1は、本実施形態の測位装置(POSI APPA)1を含む衛星測位システム100の概略的な構成を示す図である。測位装置1は、概略的に、複数の測位衛星2、及び準天頂衛星3のそれぞれから送信される測位信号を受信することによって現在位置を逐次する装置である。測位装置1は、車両Hvに搭載されており、測位装置1の測位結果(つまり現在位置情報)は、例えば自動運転や経路案内等といった任意のアプリケーションソフトウェアで利用される。
[0016]
 なお、車両Hvは、四輪自動車であってもよいし、二輪自動車や、三輪自動車等であってもよい。二輪自動車には原動機付き自転車も含まれる。車両Hvは例えば建設車両や農業用作業車など、乗員の移動以外を主目的とする車両であってもよい。また、測位装置1は車両以外に搭載されていても良い。例えば測位装置1は、スマートフォンやタブレット端末、ウェアラブル端末などといった、ユーザによって携帯される通信端末(以降、携帯端末)に搭載されていても良い。
[0017]
 この測位装置1は、地上の任意の地域で使用される。ここでは一例として測位装置1は日本国内で使用される場合を想定して説明する。測位装置1の構成及び機能等についての詳細は別途後述する。
[0018]
 測位衛星2は、所定の全球測位衛星システム(以降、GNSS:Global Navigation Satellite System)を構成する人工衛星である。GNSSとしては、GPSや、Galileo、GLONASS、BeiDou等がある。本実施形態では一例として、測位衛星2はGNSSの1つであるGPS(Global Positioning System)を構成する人工衛星であるものとして以下の構成を説明するが、これに限らない。測位衛星2は、GLONASSを構成する人工衛星であってもよいし、BeiDouを構成する人工衛星であってもよい。
[0019]
 また、衛星測位システム100は、複数種類のGNSSを組み合わせたシステムであっても良い。換言すれば、測位装置1は、GPSや、Galileo、GLONASS、BeiDouなどの、複数のGNSSのそれぞれに対応しており、複数のGNSSの測位信号を組み合わせて用いて測位演算処理を実行可能に構成されていてもよい。たとえば測位装置1は、GPSを構成する測位衛星2から送信される測位信号と、GLONASSを構成する測位衛星2から送信される測位信号の両方を用いて測位演算処理を実施するものであっても良い。
[0020]
 なお、図1では測位衛星を4機しか示していないが、実際にはもっと多数存在しうる。例えば、GPSを構成する測位衛星2は30機以上存在する。また、GLONASSを構成する測位衛星2は、20機以上存在する。
[0021]
 各測位衛星2は、送信時刻等を示すデータを、測位衛星毎に固有のC/Aコードを用いて位相変調した信号(以降、測位信号)を逐次(例えば50ミリ秒毎に)送信する。測位信号は、送信時刻の他に、例えば、衛星時計の誤差を示すデータや、衛星自身の現在位置を示すエフェメリスデータ、全測位衛星の概略的な軌道情報を示すアルマナックデータなどを示す。種々のデータは順次送信される。C/Aコードは測位衛星2毎に固有であるため、C/Aコードは、送信元を示す情報として機能する。便宜上、測位装置1が測位信号を受信できている測位衛星2のことを、捕捉衛星とも記載する。
[0022]
 準天頂衛星3は、測位装置1が使用される地域(つまり日本)を含む、特定の地域の上空に長時間とどまる軌道(いわゆる準天頂軌道)を周回している人工衛星であって、準天頂衛星システム(以降、QZSS:Quasi-Zenith Satellite System)を構成する。QZSSは、地域航法衛星システム(いわゆるRNSS:Regional Navigation Satellite System)の一例に相当する。なお、準天頂衛星3は任意の要素である。
[0023]
 準天頂衛星3は、GPSと一体運用可能に構成されており、GPS衛星としての測位衛星2が送信する測位信号と同様の測位信号を逐次送信する。このように準天頂衛星3は、測位衛星2と同様の機能を提供するため、以降に記載する測位衛星2には準天頂衛星3も含まれるものとする。また、本開示の測位衛星は、GPS衛星としての測位衛星2以外、準天頂衛星3も含まれる。
[0024]
 準天頂衛星3は、測位信号の他に、衛星回線を用いて所定の測位衛星2についての補正情報を示す補正信号を送信する。ここでの補正情報とは、例えば、対象とする測位衛星2の精密衛星座標、時計誤差、位相バイアス、電離層補正量、対流圏補正量などを示す情報である。電離層補正量は、例えば電離層の厚みに応じて生じる擬似距離や搬送波位相の誤差といった、電離層での遅延の影響を補正するパラメータである。対流圏補正量は、対流圏での遅延の影響(例えば擬似距離や搬送波位相の誤差)を補正するパラメータである。準天頂衛星3が送信する補正信号は、地上に設置されたセンタ(以降、地上局)で生成されて送信されてきたデータに基づいて生成されれば良い。補正信号は、SBAS補強メッセージと同様の信号とすることができる。
[0025]
 <測位装置1の構成及び機能について>
 次に、図2を用いて測位装置1の構成及び機能について説明する。測位装置1は、図2に示すように、搬送波受信部11、受信処理部12、散布度算出部13、出力部14、1次フィルタ部15、環境判定部16、2次フィルタ部17、及び測位演算部18を備える。なお、受信処理部12、散布度算出部13、出力部14、1次フィルタ部15、環境判定部16、2次フィルタ部17、及び測位演算部18は、図示しないCPUが所定のプログラム(以降、測位プログラム)を実行することによって実現することができる。その場合、測位装置1は、種々の演算処理を実行するCPU、不揮発性のメモリであるフラッシュメモリ、揮発性のメモリであるRAM、I/O、及びこれらの構成を接続するバスラインなどを備える。
[0026]
 通常のコンピュータを測位装置1として機能させるためのプログラム(つまり測位プログラム)は、非遷移的実体的記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に格納されていればよい。例えば測位プログラムはROMやフラッシュメモリ等に保存されていれば良い。CPUが測位プログラムを実行することは、測位プログラムに対応する方法が実行されることに相当する。
[0027]
 本実施形態では一例として測位装置1は、CPUが測位プログラムを実行することによって発現される機能ブロックとして受信処理部12、散布度算出部13、出力部14、1次フィルタ部15、環境判定部16、2次フィルタ部17、及び測位演算部18を備えているものとするが、これに限らない。上述した機能ブロックの一部又は全部は、ハードウェアとして実現されてもよい。ハードウェアとして実現する態様には、一つ或いは複数のIC等を用いて実現する態様も含まれる。さらに、上記の機能ブロックの一部又は全部は、CPUによるソフトウェアの実行とハードウェア部材の協働によって実現されてもよい。
[0028]
 搬送波受信部11は、測位衛星2から送信される測位信号としての電波を受信し、電気信号に変換して出力する通信モジュールである。搬送波受信部11は、測位信号を受信するためのアンテナ(以降、GNSSアンテナ)を備える。また、搬送波受信部11は、少なくとも1つのGNSSアンテナの他に、受信信号をベースバンド帯の信号に変換するための周波数変換回路や、GNSSアンテナから出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換部などを備える。搬送波受信部11は、増幅回路等を備えていても良い。搬送波受信部11が信号受信部に相当する。
[0029]
 なお、測位装置1が複数のGNSSの測位信号を用いて測位演算処理を実施可能に構成されている場合には、搬送波受信部11は、各GNSSの搬送周波数に対応する複数のGNSSアンテナを備えていればよい。搬送波受信部11は測位装置1が対応すべき各測位システムの測位信号をそれぞれ受信可能に構成されていればよい。
[0030]
 受信処理部12は、搬送波受信部11から出力される測位信号に基づいて、送信元の測位衛星についての観測データを生成する構成である。観測データは、受信した測位信号から定まる捕捉衛星についてのデータである。ここでは一例として、受信処理部12は、観測データとして、衛星番号、観測時刻、ドップラーシフト量、擬似距離、衛星座標、搬送波位相等を示すデータを生成して出力するものとする。衛星番号は、複数の測位衛星2のそれぞれを区別するための情報であって、例えば、PRN(Pseudo Random Noise)IDとすればよい。観測時刻は当該観測データを生成するための測位信号を受信した時刻とすればよい。
[0031]
 ドップラーシフト量は、ドップラー効果によって生じる搬送波周波数と受信周波数の差を表すパラメータである。擬似距離は、測位信号が測位衛星2から送信されてから受信処理部12で受信されるまでの時間(以降、信号伝搬時間)と、電波の伝搬速度とから定まる距離である。なお、信号伝搬時間は、送信時刻と受信時刻との差から算出されても良いし、C/Aコードの位相のずれ量に基づいて算出されてもよい。衛星座標は、測位衛星の衛星軌道上における現在位置を示す情報である。
[0032]
 なお、観測データとしては上述した全ての情報を含んでいる必要はなく、観測データが含むべき具体的な項目は適宜設計されれば良い。また、観測データには、アルマナックデータや、衛星座標の算出に用いたエフェメリスデータ等が含まれていても良い。観測データは、測位演算処理に必要な情報を含んでいればよい。受信処理部12は、上述した観測データを生成するためのサブ機能として、擬似距離を算出する擬似距離算出部や、ドップラーシフト量算出部などを備える。なお、擬似距離算出部や、ドップラーシフト量算出部の図示は省略している。このように擬似距離算出部やドップラーシフト量算出部としての機能を備える受信処理部12が環境指標値算出部に相当する。
[0033]
 受信処理部12は、搬送波受信部11が測位信号を受信する度に上述した観測データを生成する。これにより、測位信号を受信できている測位衛星(つまり捕捉衛星)毎の観測データが逐次生成される。そして、受信処理部12が生成した捕捉衛星ごとの観測データは出力部14に出力される。また、受信処理部12が生成した擬似距離は、何れの捕捉衛星についての擬似距離であるかを示す情報(たとえば衛星番号)と対応づけられて散布度算出部13に出力される。
[0034]
 散布度算出部13は、受信処理部12から逐次提供される捕捉衛星毎の擬似距離を取得し、捕捉衛星毎に区別して図示しないメモリに保存していく。メモリはRAM等の書き換え可能な記憶媒体を用いて実現されれば良い。同一捕捉衛星についての取得時点が異なる複数の疑似距離は、例えば、最新のデータが先頭となるように時系列順にソートされてメモリに保存されれば良い。また、保存されてから一定時間経過したデータは順次破棄されていけば良い。
[0035]
 散布度算出部13は、捕捉衛星毎に、直近一定時間以内において算出(換言すれば観測)された擬似距離のばらつき度合いを示す擬似距離散布度を算出する。或る捕捉衛星についての擬似距離散布度は、現時点から過去一定時間(例えば5秒)以内において算出された擬似距離を母集団とする標準偏差とすれば良い。なお、他の態様として散布度は、分散や、最大値と最小値の差など、統計学においてデータのばらつき度合いを示す他の指標を採用することもできる。
[0036]
 或る捕捉衛星についての擬似距離散布度は、当該捕捉衛星についての新たな擬似距離を取得した場合に算出されれば良い。また、散布度算出部13は、所定の周期で各捕捉衛星についての擬似距離散布度を逐次(例えば100ミリ秒毎に)算出するように構成されていても良い。
[0037]
 なお、他の態様として、散布度算出部13は、擬似距離散布度の代わりに、直近一定時間以内において算出観測されたドップラーシフト量のばらつき度合いを示すシフト量散布度を算出するように構成されていても良い。その場合、受信処理部12は、擬似距離の代わりにドップラーシフト量を散布度算出部13に出力するように構成されていればよい。
[0038]
 また、他の態様として、散布度算出部13は、擬似距離散布度とシフト量散布度の両方を捕捉衛星毎に算出するように構成されていても良い。その場合、受信処理部12は、擬似距離とドップラーシフト量の両方を散布度算出部13に逐次出力するように構成されていればよい。
[0039]
 なお、車両Hvの周辺環境がマルチパス環境下である場合には、逐次算出される擬似距離のばらつきは大きくなるため、擬似距離は周辺環境がマルチパス環境下であるか否かの指標値として機能する。また、車両Hvの周辺環境がマルチパス環境下である場合には、測位信号の到来方向が逐次変化し得る。到来方向が変わればドップラーシフト量も変化する。つまり、車両Hvの周辺環境がマルチパス環境下である場合には、逐次算出されるドップラーシフト量のばらつきは大きくなるため、逐次算出されるドップラーシフト量もまた、周辺環境がマルチパス環境下であるか否かの指標値として機能する。すなわち、擬似距離及びドップラーシフト量が指標値に相当する。また、擬似距離散布度及びシフト量散布度が指標値散布度に相当する。
[0040]
 散布度算出部13が算出した擬似距離散布度は、何れの捕捉衛星についての擬似距離散布度であるかを示す情報(たとえば衛星番号)と対応づけられて出力部14に出力される。出力部14は、受信処理部12から入力された捕捉衛星毎の観測データ、及び、散布度算出部13から入力された捕捉衛星毎の擬似距離散布度を1次フィルタ部15に出力する。
[0041]
 1次フィルタ部15は、捕捉衛星毎の観測データのうち、擬似距離散布度が所定の閾値(以降、散布度閾値)以上となっている捕捉衛星の観測データを削除する。そして、1次フィルタ部15は、擬似距離散布度が散布度閾値以上となっている捕捉衛星の観測データを削除した後に残っている観測データを2次フィルタ部17に出力する。つまり、1次フィルタ部15は、擬似距離散布度が相対的に小さい捕捉衛星についての観測データのみが後段の構成である2次フィルタ部17で利用されるように、捕捉衛星毎の観測データをフィルタリングする構成である。
[0042]
 便宜上、捕捉衛星毎の観測データのうち、擬似距離散布度が散布度閾値以上となっている捕捉衛星の観測データを削除する処理のことを一次フィルタリング処理と称する。1次フィルタ部15が1次選択部に相当する。また、一次フィルタリング処理の結果として残った観測データに対応する捕捉衛星のことを一次残存衛星とも称する。
[0043]
 なお、或る捕捉衛星についての観測データを後段処理に出力しない(つまり削除)するということは、当該捕捉衛星を測位演算処理に使用しないことに相当する。つまり、1次フィルタ部15は、捕捉衛星毎の擬似距離散布度に基づいて、複数の捕捉衛星のなかから測位演算処理に使用しない捕捉衛星である不使用衛星を決定する構成に相当する。換言すれば、捕捉衛星毎の擬似距離散布度に基づいて、複数の捕捉衛星のなかから測位演算処理に使用する捕捉衛星を取捨選択する構成に相当する。
[0044]
 また、1次フィルタ部15は、出力部14から入力された観測データの数(換言すれば捕捉衛星の総数)と、削除した観測データの数の比を表す削除率Rを算出する。出力部14から入力された観測データの数をN、削除した観測データの数をkとした場合、削除率Rは、k/Nによって表される。なお、出力部14から入力された観測データの数をN、削除した観測データの数をkとした場合に、2次フィルタ部17に出力される観測データの数Mは、N-kである。1次フィルタ部15は、削除率Rを示すデータを環境判定部16に出力する。
[0045]
 環境判定部16は、1次フィルタ部15から提供される削除率Rに基づいて、測位装置1の周辺環境が、上空視界において測位衛星からの信号を遮断及び散乱させる地物が多い環境(換言すればマルチパスが発生しやすい環境)であるか否かを判定する構成である。マルチパスが発生しやすいかどうかは、測位装置1上空の見晴らしの良さによって定まる。
[0046]
 本実施形態では一例として、周辺環境を上空の見晴らしの良さに応じて段階的に4つのカテゴリに分類しており、環境判定部16は削除率Rに応じて現在の周辺環境がカテゴリのうちの何れのカテゴリに該当するのかを判定するものとする。以降では4つのカテゴリを上空の見晴らしが良い順に、第1カテゴリC1、第2カテゴリC2、第3カテゴリC3、第4カテゴリC4と称する。第1カテゴリC1が最も上空の見晴らしが良く、第4カテゴリC4が最も上空の見晴らしが悪い環境に相当する。
[0047]
 上空の見晴らしが悪いほど、ビル等の遮蔽物が多く、マルチパスが発生しやすい環境であることを意味する。また、マルチパスが発生しやすいほど、擬似距離散布度は相対的に大きい値となり、その結果として、削除率Rも相対的に大きい値へとなる。故に、環境判定部16は、削除率Rが大きいほど、周辺環境はカテゴリ番号が大きいカテゴリに該当すると判定する。
[0048]
 具体的には、環境判定部16は、削除率Rが所定の第1削除率Rth1未満である場合に、周辺環境は第1カテゴリC1に該当すると判定する。第1削除率Rth1の具体的な値は試験を実施して適宜設定されれば良い。ここでは一例として10%とするが、その他、5%や15%などであってもよい。また、削除率Rが、第1削除率Rth1以上、且つ、所定の第2削除率Rth2未満である場合には周辺環境はカテゴリC2に該当すると判定する。第2削除率Rth2の具体的な値は、第1削除率Rth1よりも大きい範囲において、試験を実施して適宜設定されれば良く、ここでは一例として30%とする。
[0049]
 さらに、環境判定部16は、削除率Rが、第2削除率Rth2以上、且つ、所定の第3削除率Rth3未満である場合には周辺環境は第3カテゴリC3に該当すると判定する。第3削除率Rth3の具体的な値は、第2削除率Rth2よりも大きい試験を実施して適宜設定されれば良く、ここでは一例として60%とする。そして、削除率Rが、第3削除率Rth3以上である場合には周辺環境は第4カテゴリC4に該当すると判定する。
[0050]
 環境判定部16は、1次フィルタ部15から削除率Rが入力される度に、周辺環境の判定を実施する。当然、車両Hvが走行するにつれて周辺環境は遷移し、削除率Rを変化する。すなわち、図3に示すように、削除率Rの推移に伴って環境判定部16の判定結果もまた経時的に変化していく。環境判定部16の判定結果は2次フィルタ部17に逐次出力される。
[0051]
 なお、各カテゴリが指す環境は、具体的には次の通りである。第1カテゴリC1は、いわゆるオープンスカイ環境に対応するカテゴリである。オープンスカイ環境は、定量的には、例えば魚眼カメラにて上空を撮影した場合の天空比(換言すれば天空率)が80%以上となる環境とすればよい。もちろん、天空比が75%や85%以上となる環境をオープンスカイ環境と定義しても良い。測位装置1がオープンスカイ環境下に存在する場合、マルチパスが発生しにくいため、擬似距離散布度は相対的に小さい値となることが期待され、その結果として、削除率Rも相対的に小さい値へとなることが期待できる。前述の第1削除率Rth1はオープンスカイ環境下での削除率Rの試験結果に基づいて決定されれば良い。なお、オープンスカイ環境下では、各測位衛星からの測位信号が、ビル等で反射されること無く、直接的に受信できる可能性が高い。そのため、オープンスカイ環境は、相対的に高精度な測位結果が得られる環境である。第1カテゴリC1がオープンスカイカテゴリに相当する。
[0052]
 第2カテゴリC2は、市街地の中でも相対的にビル等の構造物が少ない(換言すればマルチパスが発生しにくい)エリアを指すカテゴリである。例えば第2カテゴリC2は、天空比が相対的に低い値(例えば65%以上、80%未満)となる環境に相当するものとすればよい。
[0053]
 第3カテゴリC3は、市街地の中でも相対的にビル等の構造物が多い(換言すればマルチパスが発生しやすい)エリアを指すカテゴリである。第2カテゴリC2と第3カテゴリC3とを切り分ける基準は試験結果に基づいて適宜決定されれば良い。例えば第3カテゴリC3は、天空比が相対的に低い値(例えば50%以上、65%未満)となる環境に相当するものとすればよい。第4カテゴリC4は、高層ビル等が存在する都市部を指すカテゴリである。例えば第4カテゴリC4は、天空比が50%未満となるような環境を想定したカテゴリとすればよい。第4カテゴリC4が都市部カテゴリに相当する。
[0054]
 なお、本実施形態では、周辺環境を上空視界に応じてカテゴリC1~C4の4段階に分類しているがこれに限らない。周辺環境は2段階や3段階、5段階に分類しても良い。例えばオープンスカイ環境であるか否かの2段階に分類分けされていても良い。また、本実施形態の第2カテゴリC2と第3カテゴリC3とを統合して1つのカテゴリとすることで、全体として周辺環境を3つのカテゴリに分けても良い。森の中などの環境やトンネル内部などをカテゴリとして追加してもよい。
[0055]
 2次フィルタ部17は、1次フィルタ部15から提供される一次残存衛星毎の観測データから、相対的にマルチパス等の影響を強く受けている観測データを削除して、残っている観測データを測位演算部18に出力する構成である。つまり、2次フィルタ部17は、一次残存衛星毎の観測データの中から、最終的に測位演算処理に用いられる観測データを抽出する構成に相当する。2次フィルタ部17は、サブ機能として、残差算出部171及び閾値変更部172を備える。
[0056]
 この残差算出部171、閾値変更部172を含む2次フィルタ部17は、概略的に、次のように作動する。2次フィルタ部17はまず、1次フィルタ部15による一次フィルタリング処理の結果として抽出される一次残存衛星のそれぞれについての擬似距離残差ΔDを算出する。そして、擬似距離残差ΔDが所定の残差閾値Dth未満となっている捕捉衛星の観測データのみを測位演算部18に出力する。前述の残差算出部171は、各一次残存衛星についての擬似距離残差ΔDを算出する構成である。
[0057]
 或る測位衛星2についての擬似距離残差ΔDとは、測位装置1の現在位置から測位衛星2までの直線距離と、測位信号が送信されてから測位装置1で受信されるまでの時間差と電波の伝搬速度に基づいて算出される距離(すなわち擬似距離)との差の絶対値である。現在の測位装置1から測位衛星2までの直線距離は、現在の測位装置1の位置座標と測位衛星2の位置座標とから算出することができる。
[0058]
 以上のようにして算出される擬似距離残差ΔDは、測位信号がマルチパス等の影響を強く受け、擬似距離が誤差を含んでいる場合には、大きい値をとる傾向がある。つまり、或る捕捉衛星についての擬似距離残差ΔDは当該捕捉衛星から送信された測位信号に基づいて算出された擬似距離が誤差を含んでいる可能性の大きさを表すパラメータとして機能する。故に、擬似距離残差ΔDは誤差指標値に相当する。また、残差算出部171が誤差指標値算出部に相当する。
[0059]
 なお、擬似距離残差ΔDを算出する際に用いる測位装置1の現在位置としての位置座標は、厳密には、前時刻において測位演算部18が算出した位置座標が使用されれば良い。測位演算部18は基本的に約50~100ミリ秒毎に測位演算処理を実施するため、前時刻において測位演算部18が算出した位置座標とは、現在よりも50~100ミリ秒前の測位装置1の位置を示すものである。擬似距離残差ΔDを算出する上では、前時刻において測位演算部18が算出した位置座標と実際の現在位置との誤差は無視できるものとする。もちろん、前時刻において測位演算部18が算出した位置座標を元に周知のデッドレコニングを実施することによって、より厳密な現在位置を推定し、擬似距離残差ΔDを算出しても良い。
[0060]
 便宜上、一次残存衛星毎の観測データのうち、擬似距離残差ΔDが所定の残差閾値以上となっている捕捉衛星の観測データを削除する処理のことを2次フィルタリング処理と称する。また、2次フィルタリング処理の結果として残った観測データに対応する捕捉衛星のことを2次残存衛星とも称する。
[0061]
 2次フィルタリング処理で使用される残差閾値Dthは、測位演算処理に用いる捕捉衛星(換言すれば観測データ)を取捨選択するための擬似距離残差に対する閾値として機能する。故に残差閾値Dthがフィルタリング閾値に相当する。2次フィルタ部17が備える閾値変更部172は、環境判定部16が判定した周辺環境のカテゴリに基づいて残差閾値Dthの値を変更する構成である。
[0062]
 閾値変更部172は、環境判定部16によって周辺環境はマルチパスが生じにくい環境(つまり番号が小さいカテゴリ)であると判定されている場合には、残差閾値Dthを相対的に小さい値に設定する。また、環境判定部16によって周辺環境はマルチパスを生じやすい環境(つまり番号が大きいカテゴリ)であると判定されている場合には、残差閾値Dthを相対的に大きい値に設定する。閾値変更部172が残差閾値Dthとして設定可能な複数段階の値(換言すれば候補値)は、予め設定されている。複数段階の候補値は、複数段階の各カテゴリに対応づけられている。この閾値変更部172の作動の詳細については別途図4等を用いて後述する。
[0063]
 なお、残差閾値Dthを相対的に大きい値に設定すれば、一次残存衛星は測位演算処理に使用する測位衛星として選ばれやすくなり、残差閾値Dthを相対的に小さい値に設定すれば、一次残存衛星は測位演算処理に使用する測位衛星として選ばれにくくなる。つまり、残差閾値Dthは、測位演算処理に使用する捕捉衛星の条件を規定するパラメータとして機能する。
[0064]
 すなわち、閾値変更部172は、環境判定部16の判定結果に基づいて測位演算処理に使用される捕捉衛星の条件を緩めたり厳しくしたりする構成である。故に、この閾値変更部172が、条件変更部に相当する。前述の2次残存衛星とは、閾値変更部172によって設定されている測位演算処理に使用する捕捉衛星の条件を充足している捕捉衛星に相当する。
[0065]
 測位演算部18は、2次フィルタ部17から提供された観測データを用いて測位演算処理を実施する。すなわち、2次フィルタ部17による2次フィルタリング処理の結果として残った2次残存衛星についての観測データを用いて測位演算処理を実施する。測位演算処理の方式(以降、測位方式)自体は、例えばPPP-AR(より具体的にはMADOCA-PPP)や、PPP-RTK等、周知の種々の方式を採用することができる。各測位方式の具体的な手順は公知であるためここではその詳細については省略する。
[0066]
 なお、PPPは、Precise Point Positioning(つまり単独搬送波位相測位)の略であり、ARは、Ambiguity Resolutionの略である。MADOCAは、Multi-gnss Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysisの略である。RTKは、Real-Time Kinematicの略である。
[0067]
 測位演算部18は、測位演算処理の結果としての位置情報を所定のアプリケーションに出力する。位置情報を利用するアプリケーションは、測位装置1に組み込まれていても良いし、測位装置1の外部に設けられた電子機器に組み込まれていても良い。また測位演算部18は、測位演算処理の結果を2次フィルタ部17にも出力する。2次フィルタ部17に提供された位置情報は、次回の擬似距離残差ΔDの算出に供される。
[0068]
 <2次フィルタ部17の作動について>
 次に図4に示すフローチャートを用いて、2次フィルタ部17が実施する2次フィルタリング処理について説明する。図4に示すフローチャートは、1次フィルタ部15から観測データが入力される度に開始されれば良い。
[0069]
 まずステップS101では残差算出部171が、1次残存衛星毎の観測データ(主として擬似距離及び衛星座標)と、測位装置1の位置情報とに基づいて、1次残存衛星毎の擬似距離残差ΔDを算出してステップS101に移る。
[0070]
 ステップS102では閾値変更部172が、環境判定部16による周辺環境の判定結果が第1カテゴリC1であるか否かを判定する。環境判定部16による周辺環境の判定結果が第1カテゴリC1である場合には、ステップS102を肯定判定してステップS103を実行する。一方、環境判定部16による周辺環境の判定結果が第1カテゴリC1ではない場合には、ステップS102を否定判定してステップS104を実行する。
[0071]
 ステップS103では閾値変更部172が、残差閾値Dthを、残差閾値Dthの候補値として予め用意されている所定の第1閾値Dth1に設定してステップS108に移る。第1閾値Dth1の具体的な値は、オープンスカイ環境下における擬似距離残差の試験結果に基づいて決定されれば良い。例えば第1閾値Dth1は2~5m程度の値に設定されれば良い。第1閾値Dth1がオープンスカイカテゴリとしての第1カテゴリC1に対応付けられている候補値に相当する。
[0072]
 ステップS104では、環境判定部16による周辺環境の判定結果が第2カテゴリC2であるか否かを判定する。環境判定部16による周辺環境の判定結果が第2カテゴリC2である場合には、ステップS104を肯定判定してステップS105を実行する。一方、環境判定部16による周辺環境の判定結果が第2カテゴリC2ではない場合には、ステップS104を否定判定してステップS106を実行する。
[0073]
 ステップS105では閾値変更部172が、残差閾値Dthを所定の第2閾値Dth2に設定してステップS108に移る。第2閾値Dth2の具体的な値は、第1閾値Dth1よりも大きい範囲において適宜設定されれば良い。第2閾値Dth2は、残差閾値Dthが第1閾値Dth1に設定されている場合に比べて2次残存衛星の数が1~2以上増加し、測位演算処理に使用する測位衛星の数(以降、使用衛星数)の増加による測位精度の向上効果が得られるレベルの値に設定されていることが好ましい。上記効果が得られる具体的な値は、第2カテゴリC2における試験結果に基づいて決定されれば良い。第2閾値Dth2が第2カテゴリC2に対応付けられている候補値に相当する。
[0074]
 ステップS106では、環境判定部16による周辺環境の判定結果が第3カテゴリC3であるか否かを判定する。環境判定部16による周辺環境の判定結果が第3カテゴリC3である場合には、ステップS106を肯定判定してステップS107を実行する。一方、環境判定部16による周辺環境の判定結果が第3カテゴリC3ではない場合には、ステップS106を否定判定してステップS108を実行する。なお、環境判定部16による周辺環境の判定結果が第3カテゴリC3ではない場合とは、環境判定部16による周辺環境の判定結果が第4カテゴリC4である場合に相当する。
[0075]
 ステップS107では閾値変更部172が、残差閾値Dthを所定の第3閾値Dth3に設定してステップS108に移る。第3閾値Dth3の具体的な値は、第2閾値Dth2よりも大きい範囲において適宜設定されれば良い。第3閾値Dth3は、残差閾値Dthが第2閾値Dth2に設定されている場合に比べて2次残存衛星の数が1~2以上増加し、使用衛星数の増加による測位精度の向上効果が得られるレベルの値に設定されていることが好ましい。上記効果が得られる具体的な値は、第3カテゴリC3における試験結果に基づいて決定されれば良い。第3閾値Dth3が第3カテゴリC3に対応付けられている候補値に相当する。
[0076]
 ステップS108では閾値変更部172が、残差閾値Dthを所定の第4閾値Dth4に設定してステップS108に移る。第4閾値Dth4の具体的な値は、第3閾値Dth3よりも大きい範囲において適宜設定されれば良い。第4閾値Dth4は、残差閾値Dthが第3閾値Dth3に設定されている場合に比べて2次残存衛星の数が1~2以上増加し、使用衛星数の増加による測位精度の向上効果が得られるレベルの値に設定されていることが好ましい。上記効果が得られる具体的な値は、第4カテゴリC4における試験結果に基づいて決定されれば良い。なお、残差閾値として設定可能な候補値の最大値に相当する第4閾値Dth4に限っては、1次残存衛星を全て測位演算処理に使用できるように、無限大に相当する十分大きい値に設定されていても良い。第4閾値Dth4が都市部テゴリとしての第4カテゴリC4に対応付けられている候補値に相当する。
[0077]
 ステップS109では2次フィルタ部17が、1次フィルタ部15から入力された捕捉衛星毎の観測データのうち、擬似距離残差ΔDが上記処理で設定されている残差閾値Dth未満となっている捕捉衛星についての観測データを抽出してステップS110に移る。
[0078]
 ステップS110では2次フィルタ部17が、ステップS109で抽出された観測データに基づいて測位演算部18が測位演算処理を実行可能であるか否かを判定する。例えば、ステップS109で抽出された観測データの数(換言すれば2次残存衛星の数)が4以上である場合に、測位演算部18が測位演算可能であると判定する。一方、ステップS109で抽出された観測データの数が4未満である場合には、測位演算部18が測位演算不可であると判定する。
[0079]
 ステップS109で抽出された観測データの数が、測位演算部18が測位演算可能なほど十分に多い場合には、S110を肯定判定してステップS111を実行する。一方、ステップS109で抽出された観測データの数が、測位演算部18が測位演算不可能なほど少ない場合には、ステップS110を否定判定してステップS112を実行する。なお、測位装置1の高さは前時刻における高さと同じであるという推定を利用する場合には、測位演算部18が測位演算可能であるか否かの判定基準とする観測データの数は3であっても良い。
[0080]
 ステップS111では2次フィルタ部17が、ステップS109で抽出した観測データを測位演算処理に出力し、本フローを終了する。なお、ステップS111以降の処理としては、測位演算部18は2次フィルタ部17から提供された捕捉衛星毎の観測データを用いて測位演算処理を実施し、現在位置を特定する。そして、測位結果としての位置情報は所定のアプリケーション及び2次フィルタ部17へと出力される。
[0081]
 ステップS112では2次フィルタ部17が、所定の例外処理を実施する。例外処理はS101~S109での一連の処理によって抽出された観測データでは、測位演算部18が測位演算処理を実施できない場合の処理である。この例外処理については図5に示すフローチャートを用いて説明する。図5に示すフローチャートは、図4のステップS112に移った際に実行される。
[0082]
 まずステップS201では閾値変更部172が、残差閾値Dthの値を、現在の値よりも1段階大きい値に設定してステップS202に移る。具体的には、現在の残差閾値Dthが第1閾値Dth1に設定されている場合には残差閾値Dthを第2閾値Dth2に設定する。また、現在の残差閾値Dthが第2閾値Dth2に設定されている場合には残差閾値Dthを第3閾値Dth3に設定する。同様に、現在の残差閾値Dthが第3閾値Dth3に設定されている場合には残差閾値Dthを第4閾値Dth4に設定する。
[0083]
 なお、現在の残差閾値Dthが第4閾値Dth4に設定されている場合には、測位演算不可として本フローを終了する。その場合、最後に測位演算処理を実行できた時の測位結果を起点としたデッドレコニングを実施し、仮の現在位置を推定するものとする。
[0084]
 ステップS202では、1次フィルタ部15から入力された捕捉衛星毎の観測データのうち、擬似距離残差ΔDがステップS201で新たに設定された残差閾値Dth未満となっている捕捉衛星についての観測データを抽出してステップS203に移る。
[0085]
 ステップS203では、ステップS202で抽出された観測データに基づいて測位演算部18が測位演算処理を実行可能であるか否かを判定する。このステップS203の実体的な処理内容は、前述のステップS110と同様であるため説明は省略する。ステップS202で抽出された観測データの数が、測位演算部18が測位演算可能なほど多い場合には、ステップS203を肯定判定してステップS204を実行する。一方、ステップS202で抽出された観測データの数が、測位演算部18が測位演算不可能なほど少ない場合には、ステップS203を否定判定してステップS201に戻る。
[0086]
 ステップS204では、測位演算部18に対して測位演算処理の結果を外部アプリケーションに出力することを禁止した上で、ステップS202で抽出した観測データを出力し、ステップS205に移る。なお、このステップS204を受けて測位演算部18は、2次フィルタ部17から提供された観測データを用いて測位演算処理を実施し、その結果を2次フィルタ部17に返送する。また、2次フィルタ部17からの指示に基づき、外部のアプリケーションには測位結果を出力しない。すなわち、環境判定部16の判定結果に応じた残差閾値Dthを充足する観測データのみを用いて測位演算処理を実行できなかった場合には、対外的にはその測位結果を破棄する。
[0087]
 ステップS205では、測位演算部18での測位演算処理の結果を取得して本フローを終了する。このステップS205で取得した位置情報は、次回の擬似距離残差を算出する際に使用される。
[0088]
 <実施形態の効果について>
 ここでは第1比較構成として、1次フィルタ部15に相当する構成を備えず、かつ、周辺環境によらずに一定の残差閾値を用いて測位演算処理に用いる捕捉衛星を取捨選択する測位装置を導入し、本実施形態の効果について説明する。
[0089]
 一般的に、オープンスカイ環境では、都市部等のマルチパス環境下に比べて個々の捕捉衛星からの測位信号の品質が良い傾向があるため、使用する観測データ(換言すれば捕捉衛星)の数を絞っても十分な情報が得られる。つまり、オープンスカイ環境下では、測位演算処理に用いる捕捉衛星が相対的に少数であっても十分に高精度測位が可能である。また、オープンスカイ環境下であっても、仰角が低いなどの事情によって相対的に誤差が大きい擬似距離を提供する捕捉衛星も存在しうる。
[0090]
 そのため、オープンスカイ環境下では、観測データの数を増やせば増やすほど、必ずしも測位精度が向上するわけではない。仮に第1比較構成において残差閾値が相対的に大きい値に設定されている場合には、擬似距離等の誤差が大きい観測データが測位演算処理に用いる観測データに混ざり込む恐れが高まるため、かえって精度が劣化してしまう懸念がある。
[0091]
 一方、マルチパス環境下では、オープンスカイ環境下に比べて個々の捕捉衛星からの測位信号の品質が劣化するため、測位演算処理に用いる測位衛星の数は多いほど、測位精度の向上が期待できる。すなわち、残差閾値はある程度大きいことが好ましい。仮に第1比較構成において残差閾値が相対的に小さい値に設定されている場合には、測位演算処理に用いる捕捉衛星の数を減ってしまい、使用衛星数の増加による精度向上の効果が得られにくくなるからである。
[0092]
 このようにより精度がよい測位結果が得るために設定されるべき、測位演算処理に用いる捕捉衛星(換言すれば観測データ)を取捨選択する条件(以降、採用条件)は、周辺環境に応じて異なる。そのため、第1比較構成では、オープンスカイ環境下での測位精度の向上と、マルチパス環境下での測位精度の向上とを両立させることが困難である。
[0093]
 対して、本実施形態の構成では、閾値変更部172が、環境判定部16によって周辺環境はマルチパスが生じにくい環境(つまり番号が小さいカテゴリ)であると判定されている場合には、残差閾値Dthを相対的に小さい値に設定する。これにより、信号品質がよい測位衛星からの観測データのみが測位演算処理に使用されることとなる。オープンスカイ環境下では測位演算処理に使用する捕捉衛星の数が少なくても十分に高精度測位が可能である為、上記処理によって測位演算処理に使用する捕捉衛星を信号品質が良い捕捉衛星に絞ることで、より一層高精度化を図ることができる。
[0094]
 また、閾値変更部172は、環境判定部16によって周辺環境はマルチパスを生じやすい環境(つまり番号が大きいカテゴリ)であると判定されている場合には、残差閾値Dthを相対的に大きい値に設定する。これにより、採用条件が緩和され、測位演算処理に使用する捕捉衛星の数を増やすことができる。マルチパス環境下では測位演算処理に使用する捕捉衛星の数が多いほうが、測位結果が高精度化する傾向がある為、上記処理によって測位演算処理に使用する捕捉衛星の数を増やすことで、より一層高精度化を図ることができる。
[0095]
 つまり本実施形態の構成によれば、採用条件を周辺環境に応じて動的に変更するため、オープンスカイ環境下での測位精度の向上と、マルチパス環境下での測位精度の向上とを両立させることができる。
[0096]
 また、本実施形態の測位装置1は、1次フィルタ部15を備えることによって、より一層測位精度を向上させることが期待できる。具体的には次の通りである。マルチパス環境下では、相対的に擬似距離の変動が大きい。当然、マルチパスの影響を強く受けている捕捉衛星の擬似距離は変動が大きいため、擬似距離残差もまた変動が激しい。つまり、或る捕捉衛星の擬似距離残差が、或る時点においては小さかったとしても、次の時点でも小さいとは限らない。故に、第1比較構成では、擬似距離等の誤差が大きい観測データが、測位演算処理に用いる観測データに混ざり込む恐れが残っている。
[0097]
 対して、本実施形態の構成によれば、1次フィルタ部15が、捕捉衛星毎の観測データのうち、擬似距離散布度が相対的に小さい捕捉衛星についての観測データのみを後段の構成である2次フィルタ部17に出力する。故に、擬似距離の変動が大きい捕捉衛星についての観測データは1次フィルタリング処理で除去されるため、擬似距離等の誤差が大きい観測データが、測位演算処理に用いる観測データに混ざり込む恐れを抑制することができる。このように本実施形態の構成によれば、瞬時的に擬似距離残差が残差閾値Dthを下回るようなケースにも対応できており、測位精度のさらなる向上が期待できる。
[0098]
 さらに、上記構成では測位信号の受信状況から定まる削除率Rに基づいて周辺環境のカテゴリを判定する。周辺環境のカテゴリを判定する他の構成(以降、第2比較構成)としては、地図データを用いる構成も考えられる。しかしながら、そのような第2比較構成では、測位装置が、地図データが格納された記憶装置、又は、外部サーバと通信して地図データを取得する機能を備えている必要があり、その分だけコストが増大してしまう。対して本実施形態の環境判定部16は、測位信号の受信状況から定まる削除率Rに基づいて周辺環境のカテゴリを判定するため、測位装置1が、地図データを記憶している装置や外部サーバと通信する機能を備えている必要はない。つまり、本実施形態によれば第2比較構成よりも製造コストを抑制することができる。また、広域通信用モジュールを備えないデバイスにも適用できる。
[0099]
 また、捕捉衛星数が10のときに5つの観測データを削除した場合(以降、第1ケース)と、捕捉衛星数が30のときに5つの観測データを削除した場合(以降、第2ケース)とでは、観測データの削除数は同じであっても、マルチパスの発生度合いは異なる。当然、第1ケースのほうが、マルチパスの発生し易い環境(換言すれば周囲に構造物が多い環境)であることを示唆している。そのような事情を鑑みれば、仮に観測データの削除数で周辺環境を判別しようとすると、周辺環境を誤判定してしまう恐れが相対的に高い。対して、本実施形態の構成のように、環境判定部16は、観測データを削除した数ではなく、削除した比率(つまり削除率R)によって周辺環境のカテゴリを判別すれば、周辺環境を誤判定してしまう恐れを抑制することができる。換言すれば、周辺環境を判別するための指標として観測データの削除数ではなく削除率Rを用いることにより、より精度良く周辺環境を判別することができる。
[0100]
 以上、本開示の実施形態の一例について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。もちろん、種々の変形例は適宜組み合わせて実施することができる。
[0101]
 なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
[0102]
 (変形例1)
 閾値変更部172は、環境判定部16の判定結果に加えて、準天頂衛星3を捕捉できているか否かによって残差閾値Dthを決定しても良い。例えば、準天頂衛星3を捕捉できている場合には、準天頂衛星3を捕捉できていない場合よりも残差閾値Dthを小さい値に設定しても良い。ここでは上記の思想に基づく構成の一例について、変形例1として説明する。
[0103]
 変形例1における2次フィルタ部17は、図6に示すように、残差算出部171、閾値変更部172に加えて、QZS捕捉判定部173を備える。QZS捕捉判定部173は、準天頂衛星3からの測位信号を受信できているか否か(換言すれば捕捉できているか否か)を判定する構成である。準天頂衛星3を捕捉できているか否かは、捕捉衛星の仰角や測位信号が示す送信元情報によって判定することができる。
[0104]
 例えばQZS捕捉判定部173は、仰角が所定の準天頂角度以上となっている捕捉衛星が存在する場合には準天頂衛星3を捕捉できていると判定すればよい。ここでの準天頂角度とは、地球を一周回る軌道をとっている測位衛星2(例えばGPS衛星)と、準天頂衛星3とを切り分けるための角度である。準天頂角度は天頂方向と見なすことができる角度の下限値(例えば70°)に設定されれば良い。なお、仰角は、捕捉衛星と測位装置1とを結ぶ直線が、測位装置1の現在位置を基準とする地平面に対してなす角度である。仰角は、測位装置1と捕捉衛星のそれぞれの位置座標に基づき算出することができる。
[0105]
 また、QZS捕捉判定部173は、測位信号が示す送信元情報(例えばPRN-ID)に基づいて判定しても良い。さらに、準天頂衛星3が送信する補正信号を受信できている場合に、準天頂衛星3を捕捉できていると判定しても良い。QZS捕捉判定部173が準天頂捕捉判定部に相当する。
[0106]
 変形例1の閾値変更部172は、QZS捕捉判定部173によって準天頂衛星3を捕捉できていないと判定されている場合には、残差閾値Dthを環境判定部16によって判定されているカテゴリに対応づけられている値に設定する。一方、QZS捕捉判定部173によって準天頂衛星3を捕捉できていると判定されている場合には、残差閾値Dthを環境判定部16によって判定されているカテゴリに対応づけられている値よりも小さい値に設定する。例えば図7に示すように、QZS捕捉判定部173によって準天頂衛星3を捕捉できていると判定されている場合には、残差閾値Dthを、準天頂衛星3を捕捉できていないと判定されている場合に適用される値を0.8倍した値に設定すればよい。
[0107]
 なお、ここでの倍率は、0.8に限らず、0.9や、0.7などであっても良い。また、所定の倍率の係数を乗じることによって残差閾値Dthを低減するのではなく、所定の値(例えば0.5m)を減算することによって残差閾値Dthを低減しても良い。さらに、図7では全てのカテゴリにおいて、準天頂衛星3を捕捉できている場合の残差閾値Dthを、準天頂衛星3を捕捉できていない場合の値よりも小さい値に設定する態様を開示したが、これに限らない。環境判定部16によって判定されているカテゴリが、C1~C2に該当する場合にのみ、準天頂衛星3を捕捉できている場合の残差閾値Dthを、準天頂衛星3を捕捉できていない場合の値よりも小さい値に設定してもよい。
[0108]
 <変形例1の効果>
 準天頂衛星3を捕捉できている場合には、準天頂衛星3から提供される電離層補正量、対流圏補正量によって、各測位信号についての擬似距離が高精度化される。故に、各捕捉衛星の擬似距離残差自体が全般的に小さくなりうる。このように、準天頂衛星3を捕捉できているか否かによって擬似距離残差の平均レベルが異なるため、仮に準天頂衛星3を捕捉できている場合と捕捉できていない場合とで同一の値を適用してしまうと、準天頂衛星3を捕捉できている場合には、マルチパスに由来する誤差が大きい観測データが測位演算処理に用いる観測データに混ざり込む恐れが高まってしまう。
[0109]
 対して、本変形例1の構成によれば、準天頂衛星3を捕捉できている場合には捕捉できていない場合よりも残差閾値Dthを小さい値に設定するため、相対的に擬似距離の誤差が大きい観測データが測位演算処理に用いる観測データに混ざり込む恐れをより一層抑制することができる。その結果、測位精度のさらなる向上を期待できる。
[0110]
 なお、以上では、QZS捕捉判定部173は、準天頂衛星3からの測位信号を受信できているか否かを判定するものとしたが、これに限らない。QZS捕捉判定部173は、準天頂衛星3からの補強信号を受信できているか否かを判定するものとしても良い。
[0111]
 また、測位装置1が広域通信網等を介して地上局から電離層補正量、対流圏補正量等のローカル補正情報を取得可能に構成されている場合には、閾値変更部172は、ローカル補正情報を取得できているか否かによって上述した変形例1と同様の処理を実施しても良い。つまり、ローカル補正情報を取得できている場合には、ローカル補正情報を取得できていない場合よりも残差閾値Dthを小さい値に設定する。そのような構成によっても変形例1と同様の効果を奏する。
[0112]
 (変形例2)
 図8に示すように測位装置1が、所定の周波数帯の電波を用いて測位装置1の周辺に存在する他装置と直接的な無線通信(以降、狭域通信)を実施するための通信モジュールである狭域通信部4と相互通信可能に接続されている場合には、狭域通信部4を介して他装置での周辺環境の判定結果を取得し、多数決によって現在の周辺環境のカテゴリを最終的に決定してもよい。そのような構成によれば、測位装置1は、何かしらの理由で自装置のみが周辺環境のカテゴリを誤判定している場合に、当該誤りを修正することができる。つまり、最終的に使用されるカテゴリの精度や信頼度を高めることができる。
[0113]
 以下、上記の思想に基づく構成を変形例2として説明する。なお、上述の狭域通信とは、換言すれば、広域通信網を介さない通信である。ここでは一例として、測位装置1が車両に搭載されていることを踏まえ、狭域通信部4は車両Hvの周辺に存在する他車両と直接的な(つまり車車間通信)を実施するための通信モジュールとする。
[0114]
 車車間通信に用いられる周波数帯は、たとえば、760MHz帯である。その他、2.4GHz、5.9GHz帯などを用いることもできる。車車間通信を実現するための通信規格は任意のものを採用することができる。たとえば、IEEE1609等にて開示されているWAVE(Wireless Access in Vehicular Environment)の規格を採用することができる。
[0115]
 車車間通信用の通信モジュールとしての狭域通信部4は、自車両Hvを中心とする半径数百m以内に存在する他車両と通信可能に構成されている。なお、ここでは一例として狭域通信部4は、通信範囲が数百m程度となる車車間通信規格に準拠した無線通信機能を提供する通信モジュールとするが、これに限らない。他の態様として狭域通信部4は、通信範囲が例えば最大でも数十メートル程度となる所定の近距離無線通信規格に準拠した通信(以降、近距離通信とする)を実施する通信モジュールであっても良い。例えばBluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)や、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等が上述した近距離無線通信規格に該当する。
[0116]
 狭域通信部4は、測位装置1(特に環境判定部16)からの要求に基づいて、自装置の環境判定部16が判定したカテゴリを示すカテゴリ情報(例えばカテゴリ番号)を示す判定結果パケットを同報送信する。また、他車両から送信される判定結果パケットを受信すると、当該判定結果パケットに示されるデータを測位装置1に提供する。なお、前提として本変形例2における環境判定部16は、1次フィルタ部15から入力された削除率に基づいた周辺環境のカテゴリの判定を実施する度に、判定結果パケットを生成し、狭域通信部4に出力して同報送信させる。
[0117]
 判定結果パケットは、周辺環境の判定結果を示す情報(例えばカテゴリ番号)と、測位演算部18の演算結果として位置情報とを含む通信パケットである。また、ここではより好ましい態様として、判定結果パケットには、カテゴリ番号や現在位置情報に加えて、当該通信パケットの送信時刻や、走行速度、進行方向を示す情報が含まれているものとする。
[0118]
 本変形例における環境判定部16は、狭域通信部4と協働して図9に示すように自車両Hvから所定の距離D1以内に存在する他車両(以降、周辺車両)の判定結果を逐次取得する。また、周辺車両と自車両Hvのそれぞれの判定結果を母集団とした多数決によって周辺環境が何れのカテゴリに該当するかを最終的に決定する多数決部161を備える。
[0119]
 この多数決部161は、例えば図9に示すように、自分自身は第2カテゴリC2であると判定している状況において周辺車両の判定結果として周辺環境は第1カテゴリC1であるという判定結果が多数派である場合には、最終的に周辺環境は第1カテゴリC1であると判定する。つまり、周辺環境は第2カテゴリC2であるという自分自身の判定結果を破棄して、周辺環境のカテゴリを第1カテゴリであると判定する。
[0120]
 距離D1は、例えば数十メートル程度(例えば15m)など、車車間通信可能な距離に比べて十分に小さい値に設定されていることが好ましい。自車両Hvから離れている場所を走行している他車両にとっての周辺環境は、自車両Hvの周辺環境とは異なる可能性が高いためである。車車間通信をしている他車両のうち、周辺車両に該当する他車両は、自車両Hvの現在位置と送信元車両の現在位置とを用いて抽出すれば良い。現在位置が、自車両Hvから距離D1以内となっている送信元車両を周辺車両として採用すれば良い。自車両Hvに搭載されている測位装置1が自装置に相当し、周辺車両に搭載されている測位装置1が周辺装置に相当する。
[0121]
 このような変形例2の構成によれば、冒頭にも記載の通り、測位装置1は、何かしらの理由で自装置のみが周辺環境のカテゴリを誤判定している場合に、当該誤りを修正することができる。その結果、最終的に使用されるカテゴリの精度や信頼度を高めることができる。
[0122]
 なお、多数決部161は、周辺車両の判定結果と自車両Hvの判定結果の中で最も出現数が多い(換言すれば多数派の)判定結果である最頻カテゴリが、全体の過半数を超えている場合にのみ、周辺環境は多数派の判定結果を採用するようにしてもよい。最頻カテゴリが過半数を超えていないということは、車両(より具体的には測位装置1)毎の判定結果が割れていることを意味し、多数派の判定結果が必ずしも正しい判定結果とは限らないためである。つまり、多数派の判定結果が過半数を超えている場合にのみ多数派の判定結果を採用することで、周辺環境の判定精度を高めることができる。また、自分自身が周辺環境を正しく判定できていたにも関わらず、周辺車両の判定結果に引っ張られて誤った判定結果を最終的なカテゴリとして採用してしまう恐れも低減できる。
[0123]
 なお、上述した構成では、自車両Hvから距離D1以内に位置する他車両の判定結果を用いて、最終的な周辺環境を決定する態様を開示したが、これに限らない。図10に示すように、車車間通信を実施している車両のうち、自車両Hvの前方であって、且つ、自車両Hvから距離D2以内に存在する他車両の判定結果を用いて(換言すれば母集団として)、最終的な周辺環境を決定してもよい。
[0124]
 これは次の理由による。カテゴリを決定するための削除率Rは、過去一定時間以内の観測データを元に定まる統計的な指標である擬似距離散布度によって変化する。実際の周辺環境が変化したとしても、擬似距離散布度が所定の散布度閾値を超えるまでは、削除率Rの変化としては表れない。つまり、実際の周辺環境の変化が環境判定部16の判定結果に反映されるまでには擬似距離散布度を算出するためのデータ数に応じた時間がかかる。
[0125]
 そのような性質を鑑みると、自車両Hvの後方を走行している他車両の判定結果よりも、自車両Hvの前方を走行している他車両の判定結果のほうが、自車両Hvの周辺環境を正しく判定している可能性が高い。故に、自車両Hv前方であって、且つ、自車両Hvから距離D2以内に存在する他車両の判定結果を用いて最終的な周辺環境のカテゴリを決定するように構成することで、カテゴリの判定精度を高めることができる。なお、距離D2は距離D1と同程度値とすればよい。
[0126]
 また、例えば自車両Hvの前方を走行している他車両のうち、自車両Hvと進行方向を同一とする他車両の判定結果のみと自車両Hvの判定結果を用いて最終的な周辺環境のカテゴリを決定してもよい。
[0127]
 さらに、高速道路上と当該高速道路の下に配置されている一般道路(以降、高速沿道)上とでは、周辺環境は異なるといえる。当然、高速道路上のほうが上空視界の見晴らしはよく、高速沿道では上空視界の見晴らしは悪い。そのような課題に着眼し、自車両Hvの周辺を走行している他車両のうち、自車両Hvと同じ種別の道路を走行している他車両の自車両Hvの判定結果を用いて最終的な周辺環境のカテゴリを決定することが好ましい。自車両Hvと同じ種別の道路を走行しているか否かは、車車間通信で走行路の種別を共有することによって特定しても良いし、位置情報に含まれる高さ情報に基づいて判別してもよい。また、高速道路と一般道路では走行速度に有意の差が生じるため、走行速度が同じレベル(例えば±10キロ以内)であるか否かによって判別することもできる。
[0128]
 (変形例3)
 上述した実施形態では誤差指標値として、擬似距離残差ΔDを採用したが、これに限らない。誤差指標値は、測位信号に対するノイズの比率を表すノイズ含有率であってもよい。ノイズ含有率は、雑音の分散を信号の分散で割った値、又は、その対数を取った値とすればよい。ノイズ含有率は値が小さいほど、当該測位信号に基づいて算出された擬似距離が誤差を含んでいる可能性が小さいことを意味するパラメータである。ノイズ含有率は、測位信号のS/N比の逆数として算出されれば良い。
[0129]
 また、誤差指標値は、90°から仰角を減算することによって定まる仰角残差であってもよい。仰角が90°に近いほど、つまり仰角残差が小さいほど、擬似距離残差ΔDが小さくなる傾向があるためである。なお、仰角の逆数を仰角残差として採用してもよい。仰角残差は仰角が大きいほど小さい値をとるパラメータとすればよい。
[0130]
 ただし、擬似距離残差ΔDは、ノイズ含有率や仰角残差よりも擬似距離が誤差を含んでいる可能性の大きさを直接的に表す。故に、誤差指標値としては、擬似距離残差ΔDを用いることが好ましい。なお、擬似距離残差ΔD、ノイズ含有率、及び仰角残差といった3つの指標の任意の2つ又は全部を組み合わせて用いて2次フィルタリング処理を実施しても良い。
[0131]
 本開示に記載されるフローチャート、あるいは、フローチャートの処理は、複数の部(あるいはステップと言及される)から構成され、各部は、たとえば、S101と表現される。さらに、各部は、複数のサブ部に分割されることができる、一方、複数の部が合わさって一つの部にすることも可能である。さらに、このように構成される各部は、サーキット、デバイス、モジュール、ミーンズとして言及されることができる。
[0132]
 本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。

請求の範囲

[請求項1]
 複数の測位衛星のそれぞれから送信される測位信号を受信する信号受信部(11)と、
 前記信号受信部が受信した測位信号に基づいて、受信した測位信号の送信元としての測位衛星についてのドップラーシフト量及び擬似距離の少なくとも何れか一方を、マルチパス環境下であるか否かを判定するための指標値として逐次算出する環境指標値算出部(12)と、
 前記信号受信部で測位信号を受信できている測位衛星である捕捉衛星毎に、その捕捉衛星に対して前記環境指標値算出部が算出した前記指標値のばらつき度合いを示す指標値散布度を算出する散布度算出部(13)と、
 前記散布度算出部が算出した前記捕捉衛星毎の前記指標値散布度に基づいて、複数の前記捕捉衛星のうち、測位演算処理に使用しない前記捕捉衛星である不使用衛星を決定する1次選択部(15)と、
 前記捕捉衛星の総数に対する前記1次選択部によって不使用衛星に設定された前記捕捉衛星の数の比である削除率に基づいて、周辺環境はマルチパスが発生しやすい環境であるか否かを判定する環境判定部(16)と、
 前記環境判定部の判定結果に基づいて、測位演算処理に用いる前記捕捉衛星の条件を変更する条件変更部(172)と、
 前記条件変更部によって設定されている条件を充足している測位衛星からの測位信号を用いて測位演算処理を実施する測位演算部(18)と、を備える測位装置。
[請求項2]
 請求項1に記載の測位装置であって、
 前記環境判定部は、マルチパスの発生のしやすさに応じて段階的に予め設定されている複数のカテゴリのうちの何れに周辺環境は該当するかを、前記削除率に基づいて判定するものであって、
 複数の前記カテゴリには、少なくとも、マルチパスが最も発生しにくいオープンスカイ環境に相当するカテゴリであるオープンスカイカテゴリと、マルチパスが最も発生しやすい都市部に相当するカテゴリである都市部カテゴリとが含まれており、
 前記条件変更部は、前記環境判定部によって判定された周辺環境がよりマルチパスの生じにくいカテゴリであるほど、測位演算処理に用いる前記捕捉衛星の条件を厳しくするように構成されている測位装置。
[請求項3]
 請求項2に記載の測位装置であって、
 前記1次選択部によって前記不使用衛星に設定されなかった前記捕捉衛星である1次残存衛星毎に、当該捕捉衛星から送信された測位信号に基づいて算出された擬似距離が誤差を含んでいる可能性の大きさを表す誤差指標値を算出する誤差指標値算出部(171)を備え、
 前記測位演算処理に用いる前記捕捉衛星の条件は、前記誤差指標値が前記条件変更部によって設定されるフィルタリング閾値未満となっていることであって、
 前記条件変更部は、前記環境判定部によって判定された周辺環境がよりマルチパスの生じにくいカテゴリであるほど、前記フィルタリング閾値を小さい値に設定するように構成されている測位装置。
[請求項4]
 請求項3に記載の測位装置であって、
 前記誤差指標値は、前記測位装置の位置座標と前記捕捉衛星の位置座標とから定まる前記測位装置から前記捕捉衛星までの直線距離と、当該捕捉衛星の前記擬似距離との差の大きさを表す擬似距離残差である測位装置。
[請求項5]
 請求項3又は4に記載の測位装置であって、
 前記フィルタリング閾値の候補値として複数段階の前記候補値が設定されてあって、
 前記条件変更部は、前記環境判定部によって周辺環境は前記オープンスカイカテゴリであると判定されている場合には、前記フィルタリング閾値を、複数の前記候補値の中で最も小さい前記候補値に設定する一方、
 前記環境判定部によって周辺環境は前記都市部カテゴリであると判定されている場合には、前記フィルタリング閾値を、複数の前記候補値の中で最も大きい前記候補値に設定する測位装置。
[請求項6]
 請求項3から5の何れか1項に記載の測位装置であって、
 前記フィルタリング閾値の候補値として、複数の前記カテゴリのそれぞれと対応づけられた複数の前記候補値が設定されており、
 複数の前記測位衛星には、前記測位装置が使用される地域にとっての準天頂軌道を周回する準天頂衛星が少なくとも1つ含まれており、
 前記捕捉衛星毎の仰角又は測位信号に示されている送信元情報に基づいて、前記準天頂衛星を捕捉できているかを判定する準天頂捕捉判定部(173)を備え、
 前記条件変更部は、
 前記準天頂捕捉判定部によって前記準天頂衛星からの測位信号を捕捉できていないと判定されている場合には、前記フィルタリング閾値を、前記環境判定部によって判定されている前記カテゴリに対応づけられている前記候補値に設定する一方、
 前記準天頂捕捉判定部によって前記準天頂衛星からの測位信号を捕捉できていると判定されている場合には、前記フィルタリング閾値を、前記環境判定部によって判定されている前記カテゴリに対応づけられている前記候補値よりも小さい値に設定する測位装置。
[請求項7]
 請求項2から6の何れか1項に記載の測位装置であって、
 前記測位装置としての自装置から所定距離以内に存在する他の前記測位装置である周辺装置と直接的に通信するための狭域通信部(4)と相互通信可能に接続されており、
 前記環境判定部は、前記狭域通信部と協働して、前記自装置の前記環境判定部が前記削除率に基づいて判定したカテゴリを示すカテゴリ情報を前記周辺装置に同報送信するように構成されており、
 前記周辺装置のそれぞれが判定した周辺環境のカテゴリを前記狭域通信部と協働して取得するとともに、前記周辺装置と前記自装置の判定結果を用いた多数決によって、周辺環境が何れのカテゴリに該当するかを最終的に決定する多数決部(161)をさらに備える測位装置。
[請求項8]
 請求項7に記載の測位装置であって、
 前記多数決部は、前記周辺装置の判定結果と前記自装置の判定結果の中で最も出現数が多い判定結果である最頻カテゴリの出現数が過半数を超えている場合には、周辺環境は前記最頻カテゴリに該当すると判定する一方、前記最頻カテゴリの出現数が過半数を超えていない場合には前記自装置の判定結果を最終的な周辺環境として採用する測位装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]