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1. (WO2019004262) COMPOSITION DE COPOLYMÈRE D'ÉTHYLÈNE/ALCOOL VINYLIQUE, GRANULÉ, ET STRUCTURE MULTICOUCHE
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明 細 書

発明の名称 エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物、ペレットおよび多層構造体

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005   0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009  

発明の効果

0010   0011   0012   0013   0014  

発明を実施するための形態

0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071  

実施例

0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088  

産業上の利用可能性

0089  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : エチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物、ペレットおよび多層構造体

技術分野

[0001]
 本発明は、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(以下、「EVOH樹脂」と略記することがある。)を主成分とするEVOH樹脂組成物、およびそれからなるペレット、およびそれからなる層を有する多層構造体に関するものであり、さらに詳しくは、紫外線吸収能を有するEVOH樹脂組成物、かかるEVOH樹脂組成物からなるペレット、およびEVOH樹脂組成物からなる層を有する多層構造体に関するものである。

背景技術

[0002]
 EVOH樹脂は、透明性、酸素等のガスバリア性、保香性、耐溶剤性、耐油性、機械強度等に優れており、フィルム、シート、ボトル等に成形され、食品包装材料、医薬品包装材料、工業薬品包装材料、農薬包装材料等の各種包装材料として広く用いられている。
[0003]
 ところが、食品や薬品等には、紫外線によって劣化したり変質したりするものが多く、その包装材には紫外線吸収能を有するものが求められている。包装材に紫外線吸収能を付与する方法としては、包装材料として用いられる樹脂中に紫外線吸収剤を配合することが一般的である。例えば、ポリオレフィンとEVOH樹脂からなる層を積層した積層構造体において、その一部の層、または全ての層に紫外線吸収剤を練りこむことで、紫外線の透過率を低減させた積層構造体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。

先行技術文献

特許文献

[0004]
 特許文献1:特開2008-230112号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 しかしながら、紫外線吸収剤は一般的に低分子化合物であるため成形品となった後に樹脂中を移行しやすく、使用中に層表面に移行して内容物と接触したり、表面をべたつかせたりするという問題点を有していた。また、充分な紫外線吸収能を得るには、多量の紫外線吸収剤を樹脂中に配合する必要があり、その結果、樹脂特性を低下させる傾向がある。
[0006]
 かかる課題を解決し、公知の紫外線吸収剤を配合しなくても良好な紫外線吸収能を有するEVOH樹脂組成物を得るに際し、本発明者らは鉄化合物を用いることを想起した。しかしながら、EVOH樹脂組成物が鉄化合物を配合する場合、配合量に比例して紫外線吸収能と熱安定性が向上するものの、溶融成形時に着色する傾向があった。
[0007]
 すなわち本発明は、公知の紫外線吸収剤を配合しなくても紫外線吸収能を有し、熱安定性に優れ、着色が抑制されたEVOH樹脂組成物、ペレットおよび多層構造体を提供する。

課題を解決するための手段

[0008]
 本発明は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、EVOH樹脂に対して特定微量の鉄化合物とスチレン誘導体(B)とを併用することにより、得られる樹脂組成物が紫外線吸収能を有し、熱安定性に優れ、着色が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0009]
 すなわち、本発明は、EVOH樹脂(A)、スチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)を含有するEVOH樹脂組成物であって、上記鉄化合物(C)の含有量がEVOH樹脂組成物の重量あたり、金属換算にて0.01~5ppmであることを特徴とするEVOH樹脂組成物を第1の要旨とする。また、本発明は、上記EVOH樹脂組成物からなるペレットを第2の要旨とする。また、本発明は、上記EVOH樹脂組成物からなる層を有する多層構造体を第3の要旨とする。

発明の効果

[0010]
 本発明のEVOH樹脂組成物は、EVOH樹脂(A)、スチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)を含有するEVOH樹脂組成物であって、上記鉄化合物(C)の含有量がEVOH樹脂組成物の重量あたり、金属換算にて0.01~5ppmである。そのため、本発明のEVOH樹脂組成物は、表面移行や樹脂特性阻害の懸念がある紫外線吸収剤を用いることなく、紫外線吸収能を有し、熱安定性に優れ、さらには、加熱時の着色を抑制することができる。
[0011]
 また、本発明のなかでも、特に、上記スチレン誘導体(B)の含有量がEVOH樹脂組成物の重量あたり1~1000ppmであると、より優れた紫外線吸収能および熱安定性を有し、さらには、より加熱時の着色が抑制されたものとすることができる。
[0012]
 そして、本発明のなかでも、特に、上記鉄化合物(C)の金属換算含有量に対する、上記スチレン誘導体(B)の含有量の重量比が、0.2~50000であると、より優れた紫外線吸収能および熱安定性を有し、さらには、より加熱時の着色が抑制されたものとすることができる。
[0013]
 また、本発明のEVOH樹脂組成物からなるペレットは、紫外線吸収能を有し、熱安定性に優れ、さらには、加熱時の着色が抑制されていることから、包装材料の原料として好適に用いることができる。
[0014]
 そして、本発明のEVOH樹脂組成物を含有する層を有する多層構造体は、紫外線吸収能を有し、熱安定性に優れ、加熱時の着色が抑制されているため、食品の包装材料として特に有用である。

発明を実施するための形態

[0015]
 以下、本発明の構成につき詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、これらの内容に限定されるものではない。
[0016]
 本発明のEVOH樹脂組成物は、EVOH樹脂(A)を主成分とし、スチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)を含有するものである。本発明のEVOH樹脂組成物は、ベース樹脂がEVOH樹脂(A)である。すなわち、EVOH樹脂組成物におけるEVOH樹脂(A)の含有量は、通常70重量%以上であり、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上であり、特に好ましくは95重量%以上である。
 以下に各成分について説明する。
[0017]
[EVOH樹脂(A)]
 本発明で用いるEVOH樹脂(A)は、通常、エチレンとビニルエステル系モノマーとの共重合体であるエチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化させることにより得られる樹脂であり、非水溶性の熱可塑性樹脂である。上記ビニルエステル系モノマーとしては、経済的な面から、一般的には酢酸ビニルが用いられる。
 エチレンとビニルエステル系モノマーの重合法は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合等を用いて行うことができるが、一般的にはメタノールを溶媒とする溶液重合が用いられる。得られたエチレン-ビニルエステル系共重合体のケン化も公知の方法で行い得る。
 このようにして製造されるEVOH樹脂(A)は、エチレン由来の構造単位とビニルアルコール構造単位を主とし、ケン化されずに残存する若干量のビニルエステル構造単位を含むものである。
[0018]
 上記ビニルエステル系モノマーとしては、市場入手性や製造時の不純物処理効率がよい点から、代表的には酢酸ビニルが用いられる。他のビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等があげられ、通常炭素数3~20、好ましくは炭素数4~10、特に好ましくは炭素数4~7の脂肪族ビニルエステルを用いることができる。これらは通常単独で用いるが、必要に応じて複数種を同時に用いてもよい。
[0019]
 EVOH樹脂(A)におけるエチレン構造単位の含有量は、ビニルエステル系モノマーとエチレンとを共重合させる際のエチレンの圧力によって制御することができ、通常20~60モル%、好ましくは25~50モル%、特に好ましくは28~45モル%である。かかる含有量が低すぎる場合は、高湿下のガスバリア性、延伸性が低下する傾向があり、逆に高すぎる場合は、ガスバリア性が低下する傾向がある。
 なお、かかるエチレン構造単位の含有量は、ISO14663に基づいて測定することができる。
[0020]
 EVOH樹脂(A)におけるビニルエステル成分のケン化度は、エチレン-ビニルエステル系共重合体をケン化する際のケン化触媒(通常、水酸化ナトリウム等のアルカリ性触媒が用いられる)の量、温度、時間等によって制御でき、通常90~100モル%、好ましくは95~100モル%、特に好ましくは99~100モル%である。かかるケン化度が低すぎる場合にはガスバリア性、熱安定性、耐湿性等が低下する傾向がある。
 かかるEVOH樹脂(A)のケン化度は、JIS K6726(ただし、EVOH樹脂は水/メタノール溶媒に均一に溶解した溶液として用いる)に基づいて測定することができる。
[0021]
 また、該EVOH樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)(210℃、荷重2160g)は、通常0.5~100g/10分であり、好ましくは1~50g/10分、特に好ましくは3~35g/10分である。かかるMFRが大きすぎる場合には、製膜時の安定性が損なわれる傾向があり、小さすぎる場合には粘度が高くなり過ぎて溶融押出しが困難となる傾向がある。
 かかるMFRは、EVOH樹脂の重合度の指標となるものであり、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合する際の重合開始剤の量や、溶媒の量によって調整することができる。
[0022]
 本発明で用いられるEVOH樹脂(A)には、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、EVOH樹脂(A)の10モル%以下)で、以下に示すコモノマーに由来する構造単位が、さらに含まれていてもよい。
 前記コモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン類、3-ブテン-1-オール、3-ブテン-1,2-ジオール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1,2-ジオール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類やそのエステル化物、アシル化物等の誘導体;2-メチレンプロパン-1,3-ジオール、3-メチレンペンタン-1,5-ジオール等のヒドロキシアルキルビニリデン類;1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジプロピオニルオキシ-2-メチレンプロパン、1,3-ジブチリルオキシ-2-メチレンプロパン等のヒドロキシアルキルビニリデンジアセテート類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1~18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のアクリルアミド類;メタアクリルアミド、炭素数1~18のN-アルキルメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、2-メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩等のメタクリルアミド類;N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド類;アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;炭素数1~18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物類;トリメトキシビニルシラン等のビニルシラン類;酢酸アリル、塩化アリル等のハロゲン化アリル化合物類;アリルアルコール、ジメトキシアリルアルコール等のアリルアルコール類;トリメチル-(3-アクリルアミド-3-ジメチルプロピル)-アンモニウムクロリド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のコモノマーがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
[0023]
 特に、側鎖に1級水酸基を有するEVOH樹脂は、ガスバリア性を保持しつつ二次成形性が良好になる点で好ましく、なかでも、ヒドロキシ基含有α-オレフィン類を共重合したEVOH樹脂が好ましく、特には、1,2-ジオール構造を側鎖に有するEVOH樹脂が好ましい。
 特に、側鎖に1級水酸基を有するEVOH樹脂である場合、当該1級水酸基を有するモノマー由来の構造単位の含有量は、EVOH樹脂の通常0.1~20モル%、さらには0.5~15モル%、特には1~10モル%が好ましい。
[0024]
 また、本発明で用いるEVOH樹脂(A)としては、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の「後変性」されたものであってもよい。
[0025]
 さらに、本発明で使用されるEVOH樹脂(A)は、異なる他のEVOH樹脂との混合物であってもよく、かかる他のEVOH樹脂としては、エチレン構造単位の含有量が異なるもの、ケン化度が異なるもの、重合度が異なるもの、共重合成分が異なるもの等をあげることができる。
[0026]
[スチレン誘導体(B)]
 本発明で用いるスチレン誘導体(B)は、ラジカルを共鳴安定化し捕捉する能力を有する芳香族化合物を意味し、具体的には分子骨格としてスチレン分子構造を有する化合物である。好ましくは、α位またはβ位に置換基を有するスチレン化合物である。
[0027]
 例えば、α位に置換基を有するスチレン化合物はベンジル位にてラジカルを共鳴安定化する点で好ましく、具体的には2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン等があげられる。β位に置換基を有するスチレン化合物は、β位にカルボニル基を有するスチレン化合物である場合、エノン構造を有しラジカルを共鳴安定化する点で好ましく、例えば桂皮酸、桂皮酸アルコール、桂皮酸エステル、桂皮酸塩等の、桂皮酸誘導体があげられる。なかでも、桂皮酸を用いることが最適である。
[0028]
 上記スチレン誘導体(B)の分子量は通常100~100000、好ましくは100~10000、特に好ましくは100~1000であり、殊に好ましくは130~300である。分子量が上記範囲である場合、本発明の効果がより効果的に得られる傾向がある。
[0029]
 本発明のEVOH樹脂組成物全体に対し、スチレン誘導体(B)の含有量は、重量基準で通常1~1000ppm、好ましくは10~800ppm、特に好ましくは50~600ppmである。多すぎる場合は生産性が低下する傾向があり、少なすぎる場合は熱安定性が低下する傾向がある。
[0030]
 なお、上記スチレン誘導体(B)の含有割合の基準となるEVOH樹脂組成物は、EVOH樹脂(A)、スチレン誘導体(B)、鉄化合物(C)、必要に応じて配合される各種の添加剤等を含有する、最終製品としてのEVOH樹脂組成物である。
[0031]
 本発明のEVOH樹脂組成物におけるスチレン誘導体(B)の含有量は、例えば、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS/MS)を用い、下記の手順に基づいて測定することができる。なお、下記の手順は、桂皮酸を用いた場合を例にして記載するが、他のスチレン誘導体(B)についても、同様の手順にて測定することができる。
[0032]
<スチレン誘導体(B)の含有量の測定方法>
[標準溶液の調整]
 桂皮酸(10.89mg)を10mLメスフラスコに秤量し、メタノールに溶解して10mL溶液とする(標準原液;1089μg/mL)。ついで、調製した標準原液をメタノールで希釈して、複数濃度(0.109μg/mL、0.218μg/mL、0.545μg/mL、1.09μg/mL、2.18μg/mL)の各混合標準溶液を調製する。これら混合標準溶液を用いてLC/MS/MS分析を実施し、検量線を作成する。
[0033]
[試料溶液の調整]
(1)粉砕した本発明のEVOH樹脂組成物のペレット(1g)を10mLメスフラスコに秤量後、メタノール9mLを加える。
(2)超音波処理を120分間実施後、室温(25℃)で放冷する。
(3)メタノールを加えて10mLに定容する(試料溶液(I))。
(4)試料溶液(I)1mLを10mLメスフラスコに採取後、メタノールを加えて10mLに定容する(試料溶液(II))。
(5)試料溶液(I)あるいは試料溶液(II)をPTFEフィルタ(0.45μm)で濾過した液体を測定溶液としてLC/MS/MS分析に供する。
 LC/MS/MS分析で検出されたピーク面積値と、標準溶液の検量線から桂皮酸の検出濃度を算出する。
[0034]
[LC/MS/MS測定条件]
LCシステム: LC-20A[島津製作所社製]
質量分析計:  API4000[AB/MDS Sciex]
分析カラム:  Scherzo SM-C18(3.0×75mm、3μm)
カラム温度:  45℃
移動相:    A 10mmol/L 酢酸アンモニウム水溶液
        B メタノール
タイムプログラム:
        0.0→5.0min   B%=30%→95%
        5.0→10.0min  B%=95%
        10.1→15.0min B%=30%
流量:     0.4mL/min
切り替えバルブ:2.0 to 6.0min: to MS
注入量:    5μL
イオン化:   ESI法
検出:     負イオン検出(SRM法)
モニターイオン:Q1=147.0→Q3=102.9(CE:-15eV)
[0035]
[鉄化合物(C)]
 本発明は、EVOH樹脂(A)、スチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)を含有し、かつ鉄化合物(C)の配合量が特定微量であることが特徴である。かかる構成を採用することにより、得られる樹脂組成物が紫外線吸収能を有し、熱安定性に優れ、着色が抑制されることを見出した。
[0036]
 なお、かかる鉄化合物(C)は、EVOH樹脂組成物中で、例えば、酸化物、水酸化物、塩化物、鉄塩として存在する場合の他、イオン化した状態、あるいは樹脂や他の配位子と相互作用した錯体の状態で存在していてもよい。上記酸化物としては、例えば、酸化第二鉄、四三酸化鉄、亜酸化鉄等があげられる。上記塩化物としては、例えば、塩化第一鉄、塩化第二鉄等があげられる。上記水酸化物としては、例えば、水酸化第一鉄、水酸化第二鉄等があげられる。上記鉄塩としては、例えば、リン酸鉄、硫酸鉄等の無機塩やカルボン酸(酢酸、酪酸、ステアリン酸等)鉄等の有機塩があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
[0037]
 EVOH樹脂組成物における分散性の点で、鉄化合物(C)は水溶性であることが好ましい。また、分散性と生産性の観点から、その分子量は通常100~10000、好ましくは100~1000、特に好ましくは100~500である。
[0038]
 本発明のEVOH樹脂組成物は、鉄化合物(C)の含有量が、EVOH樹脂組成物の重量あたり金属換算にて0.01~5ppmであることを特徴とするものである。かかる鉄化合物の含有量は、好ましくは0.05~3ppm、特に好ましくは0.08~1ppmである。
 鉄化合物の含有量が少なすぎると紫外線吸収能が低下する傾向があり、多すぎると成形物が着色する傾向がある。
[0039]
 ここで、鉄化合物(C)の含有量とは、下記の方法で測定されたものである。
<鉄化合物(C)の分析>
 EVOH樹脂組成物ペレットの粉砕物0.5gを赤外線加熱炉で酸素気流中で650℃にて1時間灰化処理し、灰分を酸溶解して純水で定容したものを試料溶液とする。この溶液を、Agilent Technologies社製 ICP質量分析装置 7500ce型にて、ICP-MS標準添加法で測定する。
[0040]
 本発明のEVOH樹脂組成物における上記鉄化合物(C)の金属換算含有量に対する、前記スチレン誘導体(B)の含有量の重量比は、通常0.2~50000であり、好ましくは1~20000であり、特に好ましくは100~10000、殊に好ましくは1000~8000である。かかる値が大きすぎる場合は、紫外線吸収能が低くなる傾向があり、小さすぎる場合は、成形物が着色する傾向がある。
[0041]
[その他の熱可塑性樹脂]
 本発明のEVOH樹脂組成物には、EVOH樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を阻害しない範囲(例えば、EVOH樹脂組成物の通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、特に好ましくは10重量%以下)にて含有することができる。
 他の熱可塑性樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。例えば、具体的には、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル系樹脂、アイオノマー、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ビニルエステル系樹脂、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
[0042]
[その他の配合剤]
 また、本発明のEVOH樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲において、一般にEVOH樹脂に配合する配合剤が含有されていてもよい。例えば、無機複塩(例えば、ハイドロタルサイト等)、可塑剤(例えば、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール等)、酸素吸収剤[例えば、アルミニウム粉、亜硫酸カリウム、光触媒酸化チタン等の無機系酸素吸収剤;アスコルビン酸、さらにその脂肪酸エステルや金属塩等、ハイドロキノン、没食子酸、水酸基含有フェノールアルデヒド樹脂等の多価フェノール類、ビス-サリチルアルデヒド-イミンコバルト、テトラエチレンペンタミンコバルト、コバルト-シッフ塩基錯体、ポルフィリン類、大環状ポリアミン錯体、ポリエチレンイミン-コバルト錯体等の含窒素化合物と鉄以外の遷移金属との配位結合体、テルペン化合物、アミノ酸類とヒドロキシル基含有還元性物質の反応物、トリフェニルメチル化合物等の有機化合物系酸素吸収剤;窒素含有樹脂と鉄以外の遷移金属との配位結合体(例えば、メタキシレンジアミン(MXD)ナイロンとコバルトの組合せ)、三級水素含有樹脂と鉄以外の遷移金属とのブレンド物(例えば、ポリプロピレンとコバルトの組合せ)、炭素-炭素不飽和結合含有樹脂と鉄以外の遷移金属とのブレンド物(例えば、ポリブタジエンとコバルトの組合せ)、光酸化崩壊性樹脂(例えば、ポリケトン)、アントラキノン重合体(例えば、ポリビニルアントラキノン)等や、さらにこれらの配合物に光開始剤(ベンゾフェノン等)や、上記以外の酸化防止や消臭剤(活性炭等)を添加したもの等の高分子系酸素吸収剤]、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤、界面活性剤(ただし、滑剤として用いるものを除く)、抗菌剤、アンチブロッキング剤、充填材(例えば、無機フィラー等)等を配合してもよい。これらの化合物は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
[0043]
 [EVOH樹脂組成物の製造方法]
 本発明のEVOH樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、ドライブレンド法、溶融混合法、溶液混合法、含浸法等の公知の方法があげられ、これらを任意に組み合わせることも可能である。
[0044]
 ドライブレンド法としては、例えば(i)EVOH樹脂(A)ペレットと、スチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)を、タンブラー等を用いてドライブレンドする方法等があげられる。
[0045]
 溶融混合法としては、例えば、(ii)EVOH樹脂(A)ペレットと、スチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)のドライブレンド物を溶融混練し、ペレットまたは成形物を得る方法や、(iii)溶融状態のEVOH樹脂(A)にスチレン誘導体(B)や鉄化合物(C)を添加して溶融混練し、ペレットまたは成形物を得る方法等があげられる。
[0046]
 溶液混合法としては、例えば、(iv)市販のEVOH樹脂(A)ペレットを用いて溶液を調整し、ここにスチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)の少なくとも一方を配合し、凝固成形してペレット化し、固液分離して乾燥する方法や、(v)EVOH樹脂(A)の製造過程で、ケン化前のエチレン-ビニルエステル系共重合体溶液やEVOH樹脂の均一溶液(水/アルコール溶液等)にスチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)の少なくとも一方を含有させた後、凝固成形してペレット化し、固液分離して乾燥する方法等があげられる。
[0047]
 含浸法としては、例えば(vi)EVOH樹脂(A)ペレットを、スチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)の少なくとも一方を含有する水溶液と接触させ、EVOH樹脂(A)ぺレット中にスチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)の少なくとも一方を含有させた後、乾燥する方法等をあげることができる。
[0048]
 また、(vii)非酸化性の酸(例えば、塩酸や酢酸)を高濃度にて含有するEVOH樹脂(A)のメタノール溶液をギアポンプ等で輸送することで、ギアポンプの駆動部のステンレス鋼から微量の鉄化合物(C)が溶出し、EVOH樹脂(A)に対して微量の鉄化合物(C)が配合される。かかる処理後のEVOH樹脂(A)のメタノール溶液からEVOH樹脂(A)および鉄化合物(C)を有するEVOH樹脂(A)ペレットを得、かかる鉄化合物(C)含有EVOH樹脂(A)ペレットとスチレン誘導体(B)をドライブレンドおよび溶融混練の少なくとも一方をすることにより、ペレットを得る方法、または上記鉄化合物(C)含有EVOH樹脂(A)ペレットに含浸法にてスチレン誘導体(B)を含有させ、乾燥することによりペレットを得る方法等があげられる。
[0049]
 本発明においては、上記の異なる方法を組み合わせることが可能である。なかでも、生産性の点で、ケン化前のエチレン-ビニルエステル系共重合体溶液にスチレン誘導体(B)を含有させ、常法によりケン化を行い、得られたEVOH樹脂(A)溶液について、必要に応じて水を用いて溶媒を調整し、かかるEVOH樹脂(A)溶液を(vii)の方法に供することが好ましい。さらに、生産性や本発明の効果がより顕著な樹脂組成物が得られる点で、溶融混合法が好ましく、特には(ii)の方法が好ましい。
[0050]
 なお、上記各方法によって得られる本発明のEVOH樹脂組成物ペレット、各方法で用いられるEVOH樹脂(A)ペレットの形状は任意である。例えば、球形、オーバル形、円柱形、立方体形、直方体形等があるが、通常、オーバル形、または円柱形であり、その大きさは、後に成形材料として用いる場合の利便性の観点から、オーバル形の場合は短径が通常1~10mm、好ましくは2~6mmであり、更に好ましくは2.5~5.5mmであり、長径は通常1.5~30mm、好ましくは3~20、更に好ましくは3.5~10mmである。また、円柱形の場合は底面の直径が通常1~6mm、好ましくは2~5mmであり、長さは通常1~6mm、好ましくは2~5mmである。
[0051]
 また、上記の各方法で用いられる鉄化合物(C)としては、前述のとおり、好ましくは、水溶性の鉄化合物が用いられ、例えば、酸化第二鉄、四三酸化鉄、亜酸化鉄等の酸化物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の塩化物、水酸化第一鉄、水酸化第二鉄等の水酸化物、リン酸鉄、硫酸鉄等の無機塩やカルボン酸(酢酸、酪酸、ステアリン酸等)鉄等の有機塩等の鉄塩があげられる。なお、かかる鉄化合物(C)は、前述のとおり、EVOH樹脂組成物中で、上記の塩として存在する場合の他、イオン化した状態、あるいは樹脂や他の化合物を配位子とした錯体の状態で存在していてもよい。
[0052]
 また、上記(vi)の方法で用いられる鉄化合物(C)を含有する水溶液としては、上記鉄化合物(C)の水溶液や、鉄鋼材料を各種薬剤を含む水に浸漬することで鉄イオンを溶出させたものを用いることができる。なお、その場合、EVOH樹脂組成物中の鉄化合物(C)の含有量(金属換算)は、EVOH樹脂(A)ペレットを浸漬する水溶液中の鉄化合物の濃度や浸漬温度、浸漬時間等によって制御することが可能である。上記浸漬温度、浸漬時間としては、通常、0.5~48時間、好ましくは1~36時間であり、浸漬温度は通常10~40℃、好ましくは20~35℃である。
 かかるEVOH樹脂組成物ペレットは公知の手法にて固液分離し、公知の乾燥方法にて乾燥する。かかる乾燥方法として、種々の乾燥方法を採用することが可能であり、静置乾燥、流動乾燥のいずれでもよい。また、これらを組み合わせて行うこともできる。
[0053]
 本発明のEVOH樹脂組成物ペレットの含水率は、通常、0.01~0.5重量%であり、好ましくは0.05~0.35重量%、特に好ましくは0.1~0.3重量%である。
[0054]
 なお、本発明におけるEVOH樹脂組成物ペレットの含水率は以下の方法により測定・算出されるものである。
 EVOH樹脂組成物ぺレットの乾燥前重量(W1)を電子天秤にて秤量し、150℃の熱風乾燥機中で5時間乾燥させ、デシケーター中で30分間放冷後の重量(W2)を秤量し、下記式より算出する。
 含水率(重量%)=[(W1-W2)/W1]×100
[0055]
 このようにして得られたEVOH樹脂組成物のペレットは、そのまま溶融成形に供することが可能であるが、溶融成形時のフィード性を安定させる点で、ペレットの表面に公知の滑剤を付着させることも好ましい。滑剤の種類としては、例えば、炭素数12以上の高級脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等)、高級脂肪酸エステル(例えば、高級脂肪酸のメチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル等)、高級脂肪酸アミド(例えば、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等の飽和高級脂肪酸アミド;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和高級脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド等のビス高級脂肪酸アミド等)、低分子量ポリオレフィン(例えば、分子量500~10000程度の低分子量ポリエチレン、または低分子量ポリプロピレン等、またはその酸変性品)、炭素数6以上の高級アルコール、エステルオリゴマー、フッ化エチレン樹脂等があげられる。これらの化合物は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、かかる滑剤の含有量は、EVOH樹脂組成物の通常、5重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
[0056]
 このようにして得られた本発明のEVOH樹脂組成物は、ペレット、あるいは粉末状や液体状といった、さまざまな形態のEVOH樹脂組成物として調製され、各種の成形物の成形材料として提供される。特に本発明においては、溶融成形用の材料として提供される場合、本発明の効果がより効率的に得られる傾向があり好ましい。なお、本発明のEVOH樹脂組成物には、本発明のEVOH樹脂組成物に用いられるEVOH樹脂(A)以外の樹脂を混合して得られる樹脂組成物も含まれる。
[0057]
 そして、かかる成形物としては、本発明のEVOH樹脂組成物を用いて成形された単層フィルムをはじめとして、本発明のEVOH樹脂組成物を用いて成形された層を有する多層構造体として実用に供することができる。
[0058]
[多層構造体]
 本発明の多層構造体は、上記本発明のEVOH樹脂組成物からなる層を有するものである。本発明のEVOH樹脂組成物を含む層(以下、単に「EVOH樹脂組成物層」という。)は、本発明のEVOH樹脂組成物以外の熱可塑性樹脂を主成分とする他の基材(以下、基材に用いられる樹脂を「基材樹脂」と略記することがある。)と積層することで、さらに強度を付与したり、EVOH樹脂組成物層を水分等の影響から保護したり、他の機能を付与することができる。
[0059]
 上記基材樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、エチレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリペンテン、ポリ環状オレフィン系樹脂(環状オレフィン構造を主鎖および側鎖の少なくとも一方を有する重合体)等の(未変性)ポリオレフィン系樹脂や、これらのポリオレフィン類を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性した不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等の変性オレフィン系樹脂を含む広義のポリオレフィン系樹脂、アイオノマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂(共重合ポリアミドも含む)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等のハロゲン化ポリオレフィン、芳香族または脂肪族ポリケトン類等があげられる。
[0060]
 これらのうち、疎水性樹脂である、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂が好ましく、より好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ環状オレフィン系樹脂およびこれらの不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂である。
[0061]
 多層構造体の層構成は、本発明のEVOH樹脂組成物層をa(a1、a2、・・・)、基材樹脂層をb(b1、b2、・・・)とするとき、a/b、b/a/b、a/b/a、a1/a2/b、a/b1/b2、b2/b1/a/b1/b2、b2/b1/a/b1/a/b1/b2等、任意の組み合わせが可能である。また、該多層構造体を製造する過程で発生する端部や不良品等を再溶融成形して得られる、本発明のEVOH樹脂組成物と本発明のEVOH樹脂組成物以外の熱可塑性樹脂との混合物を含むリサイクル層をRとするとき、b/R/a、b/R/a/b、b/R/a/R/b、b/a/R/a/b、b/R/a/R/a/R/b等とすることも可能である。多層構造体の層の数はのべ数にて通常2~15、好ましくは3~10である。上記の層構成において、それぞれの層間には、必要に応じて接着性樹脂を含有する接着性樹脂層を介在させてもよい。
[0062]
 上記接着性樹脂としては、公知のものを使用でき、基材樹脂「b」に用いる熱可塑性樹脂の種類に応じて適宜選択すればよい。代表的には不飽和カルボン酸またはその無水物をポリオレフィン系樹脂に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性ポリオレフィン系重合体をあげることができる。上記カルボキシル基を含有する変性ポリオレフィン系重合体としては、例えば、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-プロピレン(ブロックおよびランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリ環状オレフィン系樹脂、無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン系樹脂等があげられる。そして、これらから選ばれた1種または2種以上の混合物を用いることができる。
[0063]
 多層構造体において、本発明のEVOH樹脂組成物層と基材樹脂層との間に、接着性樹脂層を用いる場合、接着性樹脂層がEVOH樹脂組成物層の両側に位置することから、疎水性に優れた接着性樹脂を用いることが好ましい。
[0064]
 上記基材樹脂、接着性樹脂には、本発明の趣旨を阻害しない範囲(例えば、樹脂全体に対して、30重量%以下、好ましくは10重量%以下)において、従来知られているような可塑剤、フィラー、クレー(モンモリロナイト等)、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、核材、ブロッキング防止剤、ワックス等を含んでいてもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
[0065]
 本発明のEVOH樹脂組成物層と上記基材樹脂層との積層(接着性樹脂層を介在させる場合を含む)は、公知の方法にて行うことができる。例えば、本発明のEVOH樹脂組成物のフィルム、シート等に基材樹脂を溶融押出ラミネートする方法、基材樹脂層に本発明のEVOH樹脂組成物を溶融押出ラミネートする方法、EVOH樹脂組成物と基材樹脂とを共押出する方法、EVOH樹脂組成物(層)と基材樹脂(層)とを有機チタン化合物、イソシアネート化合物、ポリエステル系化合物、ポリウレタン化合物等の公知の接着剤を用いてドライラミネートする方法、基材樹脂上にEVOH樹脂組成物の溶液を塗工してから溶媒を除去する方法等があげられる。これらのなかでも、コストや環境の観点から考慮して共押出する方法が好ましい。
[0066]
 上記の如き多層構造体は、次いで必要に応じて(加熱)延伸処理が施される。延伸処理は、一軸延伸、二軸延伸のいずれであってもよく、二軸延伸の場合は同時延伸であっても逐次延伸であってもよい。また、延伸方法としてはロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法、真空圧空成形等のうち延伸倍率の高いものも採用できる。延伸温度は、多層構造体の融点近傍の温度で、通常40~170℃、好ましくは60~160℃程度の範囲から選ばれる。延伸温度が低すぎた場合は延伸性が不良となり、高すぎた場合は安定した延伸状態を維持することが困難となる。
[0067]
 なお、延伸後に寸法安定性を付与することを目的として、熱固定を行ってもよい。熱固定は周知の手段で実施可能であり、例えば上記延伸フィルムを緊張状態を保ちながら通常80~180℃、好ましくは100~165℃で通常2~600秒間程度熱処理を行う。また、本発明のEVOH樹脂組成物から得られた多層延伸フィルムをシュリンク用フィルムとして用いる場合には、熱収縮性を付与するために、上記の熱固定を行わず、例えば延伸後のフィルムに冷風を当てて冷却固定する等の処理を行えばよい。
[0068]
 また、場合によっては、本発明の多層構造体を用いてカップやトレイ状の多層容器を得ることも可能である。その場合は、通常絞り成形法が採用され、具体的には真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト式真空圧空成形法等があげられる。さらに多層パリソン(ブロー前の中空管状の予備成形物)からチューブやボトル状の多層容器(積層体構造)を得る場合はブロー成形法が採用される。具体的には、押出ブロー成形法(双頭式、金型移動式、パリソンシフト式、ロータリー式、アキュムレーター式、水平パリソン式等)、コールドパリソン式ブロー成形法、射出ブロー成形法、二軸延伸ブロー成形法(押出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出式コールドパリソン二軸延伸ブロー成形法、射出成形インライン式二軸延伸ブロー成形法等)等があげられる。得られる積層体は必要に応じ、熱処理、冷却処理、圧延処理、印刷処理、ドライラミネート処理、溶液または溶融コート処理、製袋加工、深絞り加工、箱加工、チューブ加工、スプリット加工等を行うことができる。
[0069]
 多層構造体(延伸したものを含む)の厚み、さらには多層構造体を構成するEVOH樹脂組成物層、基材樹脂層および接着性樹脂層の厚みは、層構成、基材樹脂の種類、接着性樹脂の種類、用途や包装形態、要求される物性等により一概にいえないが、多層構造体(延伸したものを含む)の厚みは、通常10~5000μm、好ましくは30~3000μm、特に好ましくは50~2000μmである。EVOH樹脂組成物層は通常1~500μm、好ましくは3~300μm、特に好ましくは5~200μmであり、基材樹脂層は通常5~3000μm、好ましくは10~2000μm、特に好ましくは20~1000μmであり、接着性樹脂層は、通常0.5~250μm、好ましくは1~150μm、特に好ましくは3~100μmである。
[0070]
 さらに、多層構造体におけるEVOH樹脂組成物層の基材樹脂層に対する厚みの比(EVOH樹脂組成物層/基材樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの厚い層同士の比にて、通常1/99~50/50、好ましくは5/95~45/55、特に好ましくは10/90~40/60である。また、多層構造体におけるEVOH樹脂組成物層の接着性樹脂層に対する厚み比(EVOH樹脂組成物層/接着性樹脂層)は、各層が複数ある場合は最も厚みの厚い層同士の比にて、通常10/90~99/1、好ましくは20/80~95/5、特に好ましくは50/50~90/10である。
[0071]
 上記の如く得られたフィルム、シート、延伸フィルムからなる袋およびカップ、トレイ、チューブ、ボトル等からなる容器や蓋材は、一般的な食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料容器として有用である。
 特に、本発明のEVOH樹脂組成物からなる層は、紫外線吸収能に優れるため、食品、特には紫外線による変色が問題となりやすい精肉、ハム、ウィンナー等の畜肉用の包装材料として特に有用である。
実施例
[0072]
 以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。
尚、例中「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
[0073]
[紫外線吸収能]
 EVOH樹脂組成物を用いて、濃度5重量%の水/イソプロパノール(4/6)溶液を調製した。そして、この溶液の紫外線透過率(波長300nm)を、UV-VIS SPECTROPHOTOMETER(SHIMADZU社製、UV-2600)を用いて測定した。EVOH樹脂組成物を均一溶液状態で紫外線透過率を測定することで、樹脂組成物そのものの純粋な紫外線透過率の評価が可能となる。かかる値が低いほど、紫外線吸収能が高いことを意味する。
[0074]
 [着色]
 EVOH樹脂組成物を手動油圧真空加熱プレス機(井元製作所社製、IMC―11FD-A型)を用いて熱成形(210℃、溶融時間5分、圧縮時間30秒)することで厚さ2mmの樹脂板を得た。得られた樹脂板のYI値を、色差計(日本電色工業社製、SE 6000)を用いて測定した。
[0075]
[熱安定性]
 EVOH樹脂組成物5mgを、熱重量測定装置(Perkin Elmer社製、Pyris 1 TGA、)を用いて、窒素雰囲気下:20mL/分、昇温速度:10℃/分、温度範囲:30℃~550℃の条件にて、重量が測定前重量の95%に減少した時点の温度を測定した。
[0076]
 <実施例1>
 EVOH樹脂(A)としてエチレン構造単位の含有量44モル%、ケン化度99.6モル%、MFR12g/10分(210℃、荷重2160g)のエチレン-ビニルアルコール共重合体を用いた。かかるEVOH樹脂(A)のメタノール溶液(樹脂分濃度36重量%)に対し酢酸水溶液をEVOH樹脂(A)100部に対して酢酸が1.5部となるよう配合した。かかるメタノール溶液をギアポンプにて輸送し、円形の口金から水中に押出してストランド化し、切断して円柱形のペレットを作製した。
[0077]
 得られたペレットを酢酸水溶液(酢酸濃度2200ppm)へ浴比2.5にて、35℃で3時間接触させた後、窒素気流下中で100℃で36時間乾燥を行ってエチレン構造単位の含有量44モル%、ケン化度99.6モル%、MFR12g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH樹脂(A)のペレットを得た。
[0078]
 [鉄化合物(C)の分析]
 上記EVOH樹脂(A)のペレットを粉砕したサンプル0.5gを赤外線加熱炉で灰化処理(酸素気流中650℃、1時間)し、灰分を酸溶解して純水で定容したものを試料溶液とした。この溶液をICP-MS(Agilent Technologies社製 ICP質量分析装置 7500ce型)を用いて標準添加法で測定した。その結果、鉄化合物(C)の含有量は、金属換算にて0.1ppmであった。
[0079]
 上記にて得られたEVOH樹脂(A)のペレット100部、スチレン誘導体(B)としてtrans-桂皮酸(和光純薬工業社製)0.05部をプラストグラフ(ブラベンダー社製)にて、210℃において5分間予熱したのち5分間溶融混練し、得られた混練物を冷却後、粉砕処理を施し、EVOH樹脂組成物を得た。
 かかるEVOH樹脂組成物について上記評価を行った。結果を後記の表1に示す。
[0080]
 <比較例1>
 EVOH樹脂(A)として、エチレン構造単位の含有量29モル%、ケン化度99.6モル%、MFR3.9g/10分(210℃、荷重2160g)のエチレン-ビニルアルコール共重合体(鉄化合物(C)の含有量は、金属換算にて0ppm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてEVOH樹脂組成物を得た。得られたEVOH樹脂組成物について同様に評価を行った。結果を後記の表1に示す。
[0081]
 <比較例2>
 実施例1にて用いたEVOH樹脂(A)のペレット100部、スチレン誘導体(B)としてtrans-桂皮酸(和光純薬工業社製)0.05部、鉄化合物(C)としてリン酸鉄(III)n水和物(和光純薬工業社製、230℃乾燥減量 20.9重量%)0.0034部をプラストグラフ(ブラベンダー社製)にて、210℃において5分間溶融混練し、得られた混練物を冷却後、粉砕処理を施し、EVOH樹脂組成物を得た。得られたEVOH樹脂組成物について同様に評価を行った。結果を後記の表1に示す。
[0082]
 <比較例3>
 実施例1において、trans-桂皮酸を配合しなかった以外は同様にしてEVOH樹脂組成物を得た。得られたEVOH樹脂組成物について同様に評価を行った。結果を後記の表1に示す。
[0083]
 <比較例4>
 比較例2において、trans-桂皮酸を配合しなかった以外は同様にしてEVOH樹脂組成物を得た。得られたEVOH樹脂組成物について同様に評価を行った。結果を下記の表1に示す。
[0084]
[表1]


[0085]
 鉄化合物(C)を有し、スチレン誘導体(B)を含有しない比較例3と比較例4とを対比すると、鉄化合物(C)の配合量に比例して紫外線吸収能が向上し、熱安定性が向上することがわかる。また、比較例2と比較例4とを対比すると、鉄化合物(C)10ppmを含有しスチレン誘導体(B)を併用する場合、良好な紫外線吸収能が得られ熱安定性も同等に良好であるが、YI値が高く、加熱により着色することがわかる。
[0086]
 これに対し本発明のEVOH樹脂組成物を用いた実施例1では、鉄化合物(C)が0.1ppmと微量であるにもかかわらず、紫外線吸収能が比較例2と同等であり、しかも着色が抑制され、熱安定性が向上した。一方、スチレン誘導体(B)を有し、鉄化合物(C)を含有しない比較例1は、実施例1よりも紫外線吸収能に劣るものであった。また、比較例1は、実施例1よりもYI値が高く、加熱により着色するものであり、さらに、熱安定性にも劣るものであった。
[0087]
 また、スチレン誘導体(B)を含有しない比較例3,4においては鉄化合物(C)の配合量が減少すると熱安定性が低下するにもかかわらず、スチレン誘導体(B)が存在する実施例1においては鉄化合物(C)の配合量が低下しても熱安定性は損なわれず、むしろ向上するという予想外の効果が得られた。かかる効果はスチレン誘導体(B)と微量の鉄化合物(C)を併用することでのみ得られることがわかる。
[0088]
 上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。

産業上の利用可能性

[0089]
 本発明のEVOH樹脂組成物は、一般的な紫外線吸収剤を配合することなく、紫外線吸収能を有し、熱安定性に優れ、着色が抑制されることから、各種食品の他、マヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料、化粧品、医薬品等の各種の包装材料として好適に使用することができる。

請求の範囲

[請求項1]
 エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)、スチレン誘導体(B)および鉄化合物(C)を含有するエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物であって、上記鉄化合物(C)の含有量がエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物の重量あたり、金属換算にて0.01~5ppmであることを特徴とするエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物。
[請求項2]
 上記スチレン誘導体(B)の含有量がエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物の重量あたり1~1000ppmであることを特徴とする請求項1記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物。
[請求項3]
 上記鉄化合物(C)の金属換算含有量に対する、上記スチレン誘導体(B)の含有量の重量比が、0.2~50000であることを特徴とする請求項1または2に記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物。
[請求項4]
 上記請求項1~3のいずれか一項に記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物からなるペレット。
[請求項5]
 請求項1~3のいずれか一項に記載のエチレン-ビニルアルコール系共重合体組成物からなる層を含有する多層構造体。