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1. (WO2019003978) SYSTÈME DE TRANSMISSION DE VÉHICULE
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明 細 書

発明の名称 車両用変速システム

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013  

発明の効果

0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021  

図面の簡単な説明

0022  

発明を実施するための形態

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091  

符号の説明

0092  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

明 細 書

発明の名称 : 車両用変速システム

技術分野

[0001]
 本発明は、車両用変速システムに関する。 
 本願は、2017年06月30日に、日本に出願された特願2017-129318号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 自動二輪車等に用いられる変速機において、変速機の変速操作は運転者が行い、変速機のクラッチの断続操作のみを自動的に行うタイプのセミオートマチックの変速システムも知られている(例えば特許文献1参照)。
 このような変速システムでは、変速機のクラッチを断続操作するだけではなく、変速操作中に生じる不具合をクラッチの制御によって解消しようとする提案がなされている。
 例えば、特許文献1には、変速要求が検知された際、変速機の変速ギアに設けられたドグクラッチのドグ歯がドグ孔に入らないドグ当たり状態が生じた場合に、切断状態にあるクラッチに一時的な半クラッチ状態を生じさせることで、クラッチを接続方向に駆動してドグクラッチの駆動側と被動側とを相対回転させ、ドグ当たり状態を解消する構成が開示されている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 日本国特開2009-275760号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 ところで、クラッチの断続操作のみを自動的に行う変速システムの場合、車両が減速しても、運転者が変速機の変速操作を行わない限り、変速機のギアが自動的に変速されることはない。車両の停車時に変速機が1速等のインギア状態のままであるとき、クラッチを操作するスレーブシリンダには、速やかな再発進のために待機油圧が供給されている。このため、車両の停車時にインギア状態の変速機をシフトしようとしても(例えば1速からニュートラルにシフトしようとしても)、ドグ歯およびドグ孔の回転方向の接触による抵抗により、シフトペダルの変速操作が重くなり、変速機のシフト操作が困難となる場合がある。
[0005]
 本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、変速機がインギア状態のまま停車した場合にも、シフト操作を容易に行うことができる車両用変速システムを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る車両用変速システムは、車両の運転者の操作によって変速がなされる変速機と、前記変速機と前記車両のエンジンとの間の動伝経路に配置され、クラッチアクチュエータの作動によって断接がなされるクラッチ装置と、前記クラッチアクチュエータによる前記クラッチ装置の断接を制御するクラッチ制御部と、シフト操作子に対する前記運転者のシフト操作を検知するシフト操作検知手段と、を備え、前記クラッチ装置は、前記クラッチアクチュエータからスレーブシリンダへ油圧が供給されたときに接続側へ作動し、前記クラッチアクチュエータは、前記変速機がインギア状態にあり、かつ前記車両が停車状態にあるインギア停車状態において、前記スレーブシリンダに待機油圧を供給し、前記クラッチ制御部は、前記シフト操作検知手段が前記シフト操作を検知しない非検知の間は、前記待機油圧を第一設定値に設定し、前記シフト操作検知手段が前記シフト操作を検知したときは、前記待機油圧を前記第一設定値よりも低い第二設定値に設定する。
[0007]
(2)上記(1)に記載の車両用変速システムでは、前記シフト操作子は、シフトペダルであり、前記クラッチ制御部は、前記シフトペダルを上方に揺動させるシフト操作を前記シフト操作検知手段が検知した場合に、前記待機油圧を前記第二設定値に設定してもよい。
[0008]
(3)上記(1)又は(2)に記載の車両用変速システムでは、前記クラッチ制御部は、前記変速機のギアポジションを1速からニュートラルとするシフト操作を検知した場合に、前記待機油圧を前記第二設定値に設定してもよい。
[0009]
(4)上記(1)から(3)の何れか一項に記載の車両用変速システムでは、前記クラッチ制御部は、前記待機油圧を前記第二設定値に設定した状態を、前記シフト操作検知手段が前記シフト操作を検知した検知状態から前記シフト操作を検知しない非検知状態に移行するまで継続させてもよい。
[0010]
(5)上記(1)から(3)の何れか一項に記載の車両用変速システムでは、前記クラッチ制御部は、前記待機油圧を前記第二設定値に設定した状態を、予め定めた設定時間だけ継続させてもよい。
[0011]
(6)上記(1)から(5)の何れか一項に記載の車両用変速システムは、変速機ケースから突出して前記シフト操作子に連結されるシフトスピンドルと、前記シフトスピンドルに固定され、前記シフト操作子への前記シフト操作により中立位置から揺動して前記変速機側に動きを伝えるシフトアームと、を更に備え、前記シフト操作検知手段は、前記シフトアームの前記中立位置からの動きを検知してもよい。
[0012]
(7)上記(1)から(6)の何れか一項に記載の車両用変速システムでは、前記クラッチ制御部は、車速が予め設定した設定値未満又は以下である場合に、前記車両が前記停車状態にあると判定してもよい。
[0013]
(8)上記(1)から(7)の何れか一項に記載の車両用変速システムでは、前記クラッチ制御部は、スロットル開度が予め設定した設定値未満又は以下であること、およびエンジン回転数が予め設定した設定値未満又は以下であること、の少なくとも一方を満足した場合に、前記車両が前記停車状態にあると判定してもよい。

発明の効果

[0014]
 本発明の上記(1)に記載の車両用変速システムによれば、変速機がインギア状態にあり、かつ車両が停車状態にあるインギア停車状態において、シフト操作検知手段がシフト操作を検知したときは、スレーブシリンダに供給する待機油圧を低下させることで、変速機の係合要素の駆動側および被動側が回転方向で接触することによる抵抗を低減し、変速機のシフト操作を軽くすることができる。すなわち、変速機がインギア状態のまま停車した場合にも、シフト操作を容易に行うことができる。
[0015]
 本発明の上記(2)に記載の車両用変速システムによれば、シフトペダルを上方に揺動させるシフト操作を検知した場合に待機油圧を低下させることで、シフトペダルに足を載せることによるシフト操作の誤検知を無くすことができる。また、通常はシフトペダルの上方への揺動で変速機がシフトアップし、かつギアポジションの1速、2速の間にニュートラルがあることから、停車時に1速からニュートラルにシフトチェンジする際に、待機油圧を低下させてニュートラル出しを容易にすることができる。
[0016]
 本発明の上記(3)に記載の車両用変速システムによれば、停車時に1速からニュートラルに向けてシフト操作する際に、待機油圧を低下させてニュートラル出しを容易にすることができる。
[0017]
 本発明の上記(4)に記載の車両用変速システムによれば、待機油圧を第二設定値に設定した状態をシフト操作が終了するまで継続させることで、シフト操作を確実に軽くすることができる。
[0018]
 本発明の上記(5)に記載の車両用変速システムによれば、待機油圧を第二設定値に設定した状態を任意の設定時間だけ継続させることで、シフト操作の速さによらない制御としてフィーリングを向上させることができる。
[0019]
 本発明の上記(6)に記載の車両用変速システムによれば、シフトスピンドルに固定されたシフトアームの中立位置からの動きを検知して待機油圧を低下させることで、シフトアームよりも変速機側のシフトドラム等の動きを検知したりシフト操作荷重を検知する場合に比して、シフト操作初期の僅かな動きでもシフト操作を検知することができる。
[0020]
 本発明の上記(7)に記載の車両用変速システムによれば、車両の停車状態を判定するための車速を任意の設定値とすることで、例えば完全に停車する前のクラッチ開放車速において、スレーブシリンダへの供給油圧を待機油圧に低下させる構成であっても、クラッチ開放車速に合わせて第二設定値を設定可能とし、インギア停車状態のシフト操作を確実に容易化することができる。
[0021]
 本発明の上記(8)に記載の車両用変速システムによれば、車両の停車状態を判定するために車速の他にスロットル開度およびエンジン回転数を併用することで、車両の停車に向けた準備段階を確認した上で第二設定値を設定可能とし、インギア停車状態のシフト操作を確実に容易化することができる。

図面の簡単な説明

[0022]
[図1] 本発明の実施形態における自動二輪車の左側面図である。
[図2] 上記自動二輪車の変速機およびチェンジ機構の断面図である。
[図3] クラッチアクチュエータを含むクラッチ作動システムの概略説明図である。
[図4] 変速システムのブロック図である。
[図5] クラッチアクチュエータの供給油圧の変化を示すグラフである。
[図6] シフトアームおよびシフト操作検知スイッチをシフトスピンドルの軸方向から見た正面図である。
[図7] 図6のVII-VII断面図である。
[図8] シフト操作検知スイッチがシフト操作を検知した状態の図6に相当する正面図である。
[図9] インギア停車状態で1速からニュートラルに向けてシフト操作する際の待機油圧の制御フローを示すフローチャートである。
[図10] 図9の制御フローに沿った制御を行う際の自動二輪車の各部のパラメータの変化の一例を示すタイミングチャートである。
[図11] 図9の制御フローに沿った制御を行う際のスレーブシリンダ油圧の変化の変形例を示すタイミングチャートである。
[図12] 図9の制御フローに沿った制御を行う際のスレーブシリンダ油圧の変化の他の変形例を示すタイミングチャートである。

発明を実施するための形態

[0023]
 以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
[0024]
 図1に示すように、本実施形態は、鞍乗り型車両(車両)である自動二輪車1に適用されている。自動二輪車1の前輪2は、左右一対のフロントフォーク3の下端部に支持されている。左右フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して、車体フレーム5の前端部のヘッドパイプ6に支持されている。ステアリングステム4のトップブリッジ上には、バータイプの操向ハンドル4aが取り付けられている。
[0025]
 車体フレーム5は、ヘッドパイプ6と、ヘッドパイプ6から車幅方向(左右方向)中央を下後方へ延びるメインチューブ7と、メインチューブ7の後端部の下方に連なる左右ピボットフレーム8と、メインチューブ7および左右ピボットフレーム8の後方に連なるシートフレーム9と、を備えている。左右ピボットフレーム8には、スイングアーム11の前端部が揺動可能に枢支されている。スイングアーム11の後端部には、自動二輪車1の後輪12が支持されている。
[0026]
 左右メインチューブ7の上方には、燃料タンク18が支持されている。燃料タンク18の後方でシートフレーム9の上方には、前シート19および後シートカバー19aが前後に並んで支持されている。シートフレーム9の周囲は、リヤカウル9aに覆われている。左右メインチューブ7の下方には、自動二輪車1の原動機であるパワーユニットPUが懸架されている。パワーユニットPUは、後輪12と例えばチェーン式伝動機構を介して連係されている。
[0027]
 パワーユニットPUは、その前側に位置するエンジン13と後側に位置する変速機21とを一体に有している。エンジン13は、例えばクランクシャフト14の回転軸を左右方向(車幅方向)に沿わせた複数気筒エンジンである。エンジン13は、クランクケース15の前部上方にシリンダ16を起立させている。クランクケース15の後部は、変速機21を収容する変速機ケース17とされている。
[0028]
 図2に示すように、変速機21は、メインシャフト22およびカウンタシャフト23ならびに両シャフト22,23に跨る変速ギア群24を有する有段式のトランスミッションである。カウンタシャフト23は変速機21ひいてはパワーユニットPUの出力軸を構成している。カウンタシャフト23の端部はクランクケース15の後部左側に突出し、上記チェーン式伝動機構を介して後輪12に連結されている。
[0029]
 変速ギア群24は、両シャフト22,23にそれぞれ支持された変速段数分のギアを有する。変速機21は、両シャフト22,23間で変速ギア群24の対応するギア対同士が常に噛み合った常時噛み合い式とされる。両シャフト22,23に支持された複数のギアは、対応するシャフトに対して回転可能なフリーギアと、対応するシャフトにスプライン嵌合するスライドギア(シフター)とに分類される。これらフリーギア及びスライドギアの一方には軸方向で凸のドグが、他方にはドグを係合させるべく軸方向で凹のスロットがそれぞれ設けられている。すなわち、変速機21は、いわゆるドグミッションである。
[0030]
 図3を併せて参照し、変速機21のメインシャフト22及びカウンタシャフト23は、クランクシャフト14の後方で前後に並んで配置されている。メインシャフト22の右端部には、クラッチアクチュエータ50により作動するクラッチ装置26が同軸配置されている。クラッチ装置26は、例えば湿式多板クラッチであり、いわゆるノーマルオープンクラッチである。すなわち、クラッチ装置26は、クラッチアクチュエータ50からの油圧供給によって動力伝達可能な接続状態となり、クラッチアクチュエータ50からの油圧供給がなくなると動力伝達不能な切断状態に戻る。
[0031]
 図2を参照し、クランクシャフト14の回転動力は、クラッチ装置26を介してメインシャフト22に伝達され、メインシャフト22から変速ギア群24の任意のギア対を介してカウンタシャフト23に伝達される。カウンタシャフト23におけるクランクケース15の後部左側に突出した左端部には、上記チェーン式伝動機構のドライブスプロケット27が取り付けられている。
[0032]
 変速機21の後上方には、変速ギア群24のギア対を切り替えるチェンジ機構25が収容されている。チェンジ機構25は、両シャフト22,23と平行な中空円筒状のシフトドラム36の回動により、その外周に形成されたリード溝のパターンに応じて複数のシフトフォーク37を作動させ、変速ギア群24における両シャフト22,23間の動力伝達に用いるギア対を切り替える。
[0033]
 チェンジ機構25は、シフトドラム36と平行なシフトスピンドル31を有している。シフトスピンドル31の回動時には、シフトスピンドル31に固定されたシフトアーム31aがシフトドラム36を回動させ、リード溝のパターンに応じてシフトフォーク37を軸方向移動させて、変速ギア群24の内の動力伝達可能なギア対を切り替える(すなわち、変速段を切り替える。)。
[0034]
 シフトスピンドル31は、チェンジ機構25を操作可能とするべくクランクケース15の車幅方向外側(左方)に軸外側部31bを突出させている。シフトスピンドル31の軸外側部31bには、シフト荷重センサ42が同軸に取り付けられている(図1参照)。シフトスピンドル31の軸外側部31b(またはシフト荷重センサ42の回動軸)には、揺動レバー33が取り付けられている。揺動レバー33は、シフトスピンドル31(または回動軸)にクランプ固定される基端部33aから後方へ延び、その先端部33bには、リンクロッド34の上端部が上ボールジョイント34aを介して揺動自在に連結されている。リンクロッド34の下端部は、運転者が足操作するシフトペダル(シフト操作子)32に、下ボールジョイント(不図示)を介して揺動自在に連結されている。
[0035]
 図1に示すように、シフトペダル32は、その前端部がクランクケース15の下部に左右方向に沿う軸を介して上下揺動可能に支持されている。シフトペダル32の後端部には、ステップ32aに載せた運転者の足先を掛けるペダル部が設けられ、シフトペダル32の前後中間部には、リンクロッド34の下端部が連結されている。
[0036]
 図2に示すように、シフトペダル32、リンクロッド34およびチェンジ機構25を含んで、変速機21の変速段ギアの切り替えを行うシフトチェンジ装置35が構成されている。シフトチェンジ装置35において、変速機ケース17内で変速機21の変速段を切り替える集合体(シフトドラム36、シフトフォーク37等)を変速作動部35a、シフトペダル32への変速動作が入力されてシフトスピンドル31の軸回りに回動し、この回動を変速作動部35aに伝達する集合体(シフトスピンドル31、シフトアーム31a等)を変速操作受け部35b、という。
[0037]
 ここで、自動二輪車1は、変速機21の変速操作(シフトペダル32の足操作)のみを運転者が行い、クラッチ装置26の断接操作はシフトペダル32の操作に応じて電気制御により自動で行うようにした、いわゆるセミオートマチックの変速システム(車両用変速システム)を採用している。
[0038]
 図4に示すように、上記変速システムは、クラッチアクチュエータ50、ECU60(Electronic Control Unit、制御装置)および各種センサ41~45を備えている。
 ECU60は、シフトドラム36の回動角から変速段位を検知するドラム角度センサ(ギアポジションセンサ)41、およびシフトスピンドル31に入力された操作トルクを検知するシフト荷重センサ(トルクセンサ)42からの検知情報、ならびにスロットル開度センサ43、車速センサ44およびエンジン回転数センサ45等からの各種の車両状態検知情報等に基づいて、クラッチアクチュエータ50を作動制御するとともに、点火装置46および燃料噴射装置47を作動制御する。ECU60には、後述する油圧センサ57,58、並びにシフト操作検知スイッチ(シフト操作検知手段)48からの検知情報も入力される。
 また、ECU60は、油圧制御部(クラッチ制御部)61を備えており、これらの機能については後述する。
[0039]
 図3を併せて参照し、クラッチアクチュエータ50は、ECU60により作動制御されることで、クラッチ装置26を断接する液圧を制御可能とする。クラッチアクチュエータ50は、駆動源としての電気モータ52(以下、単にモータ52という。)と、モータ52により駆動されるマスターシリンダ51と、を備えている。クラッチアクチュエータ50は、マスターシリンダ51および油圧給排ポート50pの間に設けられる油圧回路装置53とともに、一体のクラッチ制御ユニット50Aを構成している。
 ECU60は、予め設定された演算プログラムに基づいて、クラッチ装置26を断接するためにスレーブシリンダ28に供給する油圧の目標値(目標油圧)を演算し、下流側油圧センサ58で検出されるスレーブシリンダ28側の油圧(現在油圧)が目標油圧に近づくように、クラッチ制御ユニット50Aを制御する。
[0040]
 マスターシリンダ51は、シリンダ本体51a内のピストン51bをモータ52の駆動によりストロークさせて、シリンダ本体51a内の作動油をスレーブシリンダ28に対して給排可能とする。図中符号55はボールネジ機構としての変換機構、符号54はモータ52および変換機構55に跨る伝達機構、符号51eはマスターシリンダ51に接続されるリザーバをそれぞれ示す。
[0041]
 油圧回路装置53は、マスターシリンダ51からクラッチ装置26側(スレーブシリンダ28側)へ延びる主油路(油圧給排油路)53mの中間部位を開通又は遮断するバルブ機構(ソレノイドバルブ56)を有している。油圧回路装置53の主油路53mは、ソレノイドバルブ56よりもマスターシリンダ51側となる上流側油路53aと、ソレノイドバルブ56よりもスレーブシリンダ28側となる下流側油路53bと、に分けられる。油圧回路装置53はさらに、ソレノイドバルブ56を迂回して上流側油路53aと下流側油路53bとを連通するバイパス油路53cを備えている。
[0042]
 ソレノイドバルブ56は、いわゆるノーマルオープンバルブである。バイパス油路53cには、上流側から下流側への方向のみ作動油を流通させるワンウェイバルブ53c1が設けられている。ソレノイドバルブ56の上流側には、上流側油路53aの油圧を検出する上流側油圧センサ57が設けられている。ソレノイドバルブ56の下流側には、下流側油路53bの油圧を検出する下流側油圧センサ58が設けられている。
[0043]
 図1に示すように、クラッチ制御ユニット50Aは、例えばリヤカウル9a内に収容されている。スレーブシリンダ28は、クランクケース15の後部左側に取り付けられている。クラッチ制御ユニット50Aとスレーブシリンダ28とは、油圧配管53e(図3参照)を介して接続されている。
[0044]
 図2に示すように、スレーブシリンダ28は、メインシャフト22の左方に同軸配置されている。スレーブシリンダ28は、クラッチアクチュエータ50からの油圧供給時には、メインシャフト22内を貫通するプッシュロッド28aを右方へ押圧する。スレーブシリンダ28は、プッシュロッド28aを右方へ押圧することで、該プッシュロッド28aを介してクラッチ装置26を接続状態へ作動させる。スレーブシリンダ28は、油圧供給が無くなると、プッシュロッド28aの押圧を解除し、クラッチ装置26を切断状態に戻す。
[0045]
 クラッチ装置26を接続状態に維持するには油圧供給を継続する必要があるが、その分だけ電力を消費することとなる。そこで、図3に示すように、クラッチ制御ユニット50Aの油圧回路装置53にソレノイドバルブ56を設け、クラッチ装置26側への油圧供給後にソレノイドバルブ56を閉じている。これにより、クラッチ装置26側への供給油圧を維持し、圧力低下分だけ油圧を補う(リーク分だけリチャージする)構成として、エネルギー消費を抑えている。
[0046]
 次に、クラッチ制御系の作用について図5のグラフを参照して説明する。図5のグラフにおいて、縦軸は下流側油圧センサ58が検出する供給油圧、横軸は経過時間をそれぞれ示している。
 自動二輪車1の停車時(アイドリング時)、ECU60で制御されるモータ52およびソレノイドバルブ56は、ともに電力供給が遮断された状態にある。すなわち、モータ52は停止状態にあり、ソレノイドバルブ56は開弁状態にある。このとき、スレーブシリンダ28側(下流側)はタッチポイント油圧TPより低い低圧状態となり、クラッチ装置26は非締結状態(切断状態、解放状態)となる。この状態は、図5の領域Aに相当する。
[0047]
 自動二輪車1の発進時、エンジン13の回転数を上昇させると、モータ52にのみ電力供給がなされ、マスターシリンダ51から開弁状態のソレノイドバルブ56を経てスレーブシリンダ28へ油圧が供給される。スレーブシリンダ28側(下流側)の油圧がタッチポイント油圧TP以上に上昇すると、クラッチ装置26の締結が開始され、クラッチ装置26が一部の動力を伝達可能な半クラッチ状態となる。これにより、自動二輪車1の滑らかな発進が可能となる。この状態は、図5の領域Bに相当する。
 やがて、クラッチ装置26の入力回転と出力回転との差が縮まり、スレーブシリンダ28側(下流側)の油圧が下限保持油圧LPに達すると、クラッチ装置26の締結がロック状態に移行し、エンジン13の駆動力が全て変速機21に伝達される。この状態は、図5の領域Cに相当する。領域A~Cを、発進領域とする。
[0048]
 マスターシリンダ51側からスレーブシリンダ28側に油圧を供給する際には、ソレノイドバルブ56を開弁状態とし、モータ52に通電して正転駆動させて、マスターシリンダ51を加圧する。これにより、スレーブシリンダ28側の油圧がクラッチ締結油圧に調圧される。このとき、クラッチアクチュエータ50の駆動は、下流側油圧センサ58の検出油圧に基づきフィードバック制御される。
[0049]
 そして、スレーブシリンダ28側(下流側)の油圧が上限保持油圧HPに達すると、ソレノイドバルブ56に電力供給がなされて該ソレノイドバルブ56が閉弁作動するとともに、モータ52への電力供給が停止されて油圧の発生が停止される。すなわち、上流側は油圧が解放して低圧状態となる一方、下流側が高圧状態(上限保持油圧HP)に維持される。これにより、マスターシリンダ51が油圧を発生することなくクラッチ装置26が締結状態に維持され、自動二輪車1の走行を可能とした上で電力消費を抑えることができる。
[0050]
 ここで、変速操作によっては、クラッチ装置26に油圧を充填した直後に変速を行うような場合も有り得る。この場合、ソレノイドバルブ56が閉弁作動して上流側を低圧状態とする前に、ソレノイドバルブ56が開弁状態のままでモータ52を逆転駆動し、マスターシリンダ51を減圧するとともにリザーバ51eを連通させ、クラッチ装置26側の油圧をマスターシリンダ51側へリリーフする。このとき、クラッチアクチュエータ50の駆動は、上流側油圧センサ57の検出油圧に基づきフィードバック制御される。
[0051]
 ソレノイドバルブ56を閉弁し、クラッチ装置26を締結状態に維持した状態でも、図5の領域Dのように、下流側の油圧は徐々に低下(リーク)する。すなわち、ソレノイドバルブ56およびワンウェイバルブ53c1のシールの変形等による油圧漏れや温度低下といった要因により、下流側の油圧は徐々に低下する。
[0052]
 一方、図5の領域Eのように、温度上昇等により下流側の油圧が上昇する場合もある。下流側の細かな油圧変動であれば、不図示のアキュムレータにより吸収可能であり、油圧変動の度にモータ52およびソレノイドバルブ56を作動させて電力消費を増やすことはない。
 図5の領域Eのように、下流側の油圧が上限保持油圧HPまで上昇した場合、ソレノイドバルブ56への電力供給を低下させる等により、ソレノイドバルブ56を段階的に開弁状態として、下流側の油圧を上流側へリリーフする。
[0053]
 図5の領域Fのように、下流側の油圧が下限保持油圧LPまで低下した場合、ソレノイドバルブ56は閉弁したままでモータ52への電力供給を開始し、上流側の油圧を上昇させる。上流側の油圧が下流側の油圧を上回ると、この油圧がバイパス油路53cおよびワンウェイバルブ53c1を介して下流側に補給(リチャージ)される。下流側の油圧が上限保持油圧HPになると、モータ52への電力供給を停止して油圧の発生を停止する。これにより、下流側の油圧は上限保持油圧HPと下限保持油圧LPとの間に維持され、クラッチ装置26が締結状態に維持される。領域D~Fを、クルーズ領域とする。
[0054]
 自動二輪車1の停止時に変速機21がニュートラルになると、モータ52およびソレノイドバルブ56への電力供給をともに停止する。これにより、マスターシリンダ51は油圧発生を停止し、スレーブシリンダ28への油圧供給を停止する。ソレノイドバルブ56は開弁状態となり、下流側油路53b内の油圧がリザーバ51eに戻される。以上により、スレーブシリンダ28側(下流側)はタッチポイント油圧TPより低い低圧状態となり、クラッチ装置26が非締結状態となる。この状態は、図5の領域G,Hに相当する。領域G、Hを、停止領域とする。
[0055]
 一方、自動二輪車1の停止時に変速機21がインギアのままだと、スレーブシリンダ28側に待機油圧WPが付与された待機状態となる。
 待機油圧WPは、クラッチ装置26の接続を開始するタッチポイント油圧TPよりも若干低い油圧であり、クラッチ装置26を接続しない油圧(図5の領域A,Hで付与する油圧)である。待機油圧WPの付与により、クラッチ装置26の無効詰め(各部のガタや作動反力のキャンセル並びに油圧経路への予圧の付与等)が可能となり、クラッチ装置26の接続時の作動応答性が高まる。
[0056]
 次に、自動二輪車1の変速制御について説明する。
 本実施形態の自動二輪車1は、変速機21のギアポジションが1速のインギア状態にあり、かつ車速が停車に相当する設定値未満にあるインギア停車状態において、シフトペダル32に対する1速からニュートラルへのシフト操作を行う際に、スレーブシリンダ28に供給する待機油圧WPを低下させる制御を行う。
[0057]
 ここで、自動二輪車1が停車状態であり、変速機21のギアポジションがニュートラル以外の何れかの変速段位置にある場合、すなわち、変速機21がインギア停車状態にある場合には、スレーブシリンダ28に予め設定した待機油圧WPが供給される。
[0058]
 待機油圧WPは、通常時(シフトペダル32の変速操作が検知されていない非検知状態の場合)は、標準待機油圧である第一設定値P1(図10参照)に設定される。これにより、クラッチ装置26が上記無効詰めがなされた待機状態となり、クラッチ締結時の応答性が高まる。つまり、運転者がスロットル開度を大きくしてエンジン13の回転数を上昇させると、スレーブシリンダ28への油圧供給により直ちにクラッチ装置26の締結が開始されて、自動二輪車1の速やかな発進加速が可能となる。
[0059]
 自動二輪車1は、シフトペダル32に対する運転者のシフト操作を検知するために、シフト荷重センサ42とは別にシフト操作検知スイッチ48を備えている。
 そして、インギア停車状態において、シフト操作検知スイッチ48が1速からニュートラルへのシフト操作を検知した際には、油圧制御部61が待機油圧WPを、変速操作を行う前の第一設定値P1よりも低い第二設定値P2(低圧待機油圧、図10参照)に設定する制御を行う。
[0060]
 変速機21がインギア状態にある場合、通常時は第一設定値P1相当の標準待機油圧がスレーブシリンダ28に供給されるため、クラッチ装置26には僅かながらいわゆる引きずりが生じる。このとき、変速機21のドグクラッチにおける互いに噛み合うドグおよびスロット(ドグ孔)が回転方向で押圧し合い、係合解除の抵抗を生じさせてシフト操作を重くすることがある。このような場合に、スレーブシリンダ28に供給する待機油圧WPを第二設定値P2相当の低圧待機油圧に低下させると、ドグおよびスロットの係合が解除しやすくなり、シフト操作を軽くすることとなる。
[0061]
 図6、図7に示すように、シフト操作検知スイッチ48は、シフトスピンドル31の回転中心(軸心)C1から径方向外側に延びるシフトアーム31aの外周端部に、径方向で対向するように設けられている。図6中矢印SUPはシフトスピンドル31の回転方向におけるシフトアップ側、矢印SDNはシフトスピンドル31の回転方向におけるシフトダウン側をそれぞれ示す。
[0062]
 図6を参照し、シフトアーム31aは、軸心C1を通る延出基準線L1に沿って延びている。シフト操作検知スイッチ48は、変速機ケース17側に支持されており、このシフト操作検知スイッチ48に対してシフトアーム31aが相対回動する。
 シフト操作検知スイッチ48は円柱状をなし、中心線L2をシフトスピンドル31の径方向に沿わせて配置されている。シフト操作検知スイッチ48は、中心線L2に沿ってストロークする検出子48sを有している。検出子48sは、シフトアーム31aの外周端部に設けられた被検知部材49に向けて突出している。
[0063]
 シフトアーム31aは、シフト操作検知スイッチ48の中心線L2に延出基準線L1の延長線を一致させる位置を中立位置D1とする。シフトアーム31aは、不図示のリターンスプリングにより中立位置D1に向けて付勢されている。シフトアーム31aの外周端部には、シフト操作検知スイッチ48に対向して、被検知部材49が設けられている。被検知部材49は、径方向外側に凸のV字形状をなし、延出基準線L1に関して対称形状に設けられている。被検知部材49は、径方向外側に向けた突出頂部49tと、シフトスピンドル31の回転方向で突出頂部49tの両側に形成された一対の傾斜面部49sと、を有している。一対の傾斜面部49sは、互いに略直角に配置されている。突出頂部49tには、シフト操作検知スイッチ48の検出子48sの先端球面と同等半径の丸面取りがなされている。
[0064]
 図6に示すように、シフトアーム31aは、シフトペダル32からの操作荷重が作用していない状態では、中立位置D1に配置される。このとき、シフト操作検知スイッチ48の検出子48sに対し、被検知部材49の突出頂部49tが径方向で正対する。これにより、シフト操作検知スイッチ48の検出子48sが没入状態となり、シフト操作検知スイッチ48がON又はOFF状態(図ではON状態)となる。
[0065]
 一方、図8に示すように、シフトペダル32に操作荷重が作用してシフトスピンドル31が回転すると、シフトアーム31aも一体に回転する。図8では、シフトスピンドル31およびシフトアーム31aがシフトアップ側に回転している。シフトアーム31aが回転すると、被検知部材49の突出頂部49tがシフト操作検知スイッチ48の検出子48sに対して周方向に変位する。すると、検出子48sが一対の傾斜面部49sの一方に摺接しながら突出状態に変化し、シフト操作検知スイッチ48のON、OFF状態を切り替える。これにより、ECU60がシフトスピンドル31の中立位置D1からの回転、すなわちシフトペダル32への変速操作を検知する。このときのシフトアーム31aの回転位置(シフト操作検知位置)D2は、中立位置D1から2~3度の小角度θ1だけ回転した位置である。
 なお、図6、図8では検出子48sの没入でON、突出でOFFのようにON・OFFを検知することが記載されているが、検出子48sが傾斜面部49sに接触することでON、接触しないことでOFFのようにON・OFFを検知することも可能である。
[0066]
 このように、シフトスピンドル31よりも外周側に延びるシフトアーム31aの外周端部に、突出頂部49tを有した被検知部材49を設けることで、シフト操作検知スイッチ48においては、シフトペダル32の変速操作によるシフトスピンドル31の僅かな回転を高感度に検知する。また、シフト操作荷重から変速操作を検知する場合に比して、シフトスピンドル31に固定されたシフトアーム31aの回転位置から変速操作を検知することでも、高感度な検知が可能となる。また、シフトスピンドル31とは別体をなす作動部材(シフトドラム36等)の変位を検知する場合に比して、変速操作をよりダイレクトに検知可能である。
[0067]
 次に、変速機21のギアポジションが1速のまま停車している場合の油圧制御時にECU60で行う処理の一例について、図9のフローチャートを参照して説明する。図9に示す制御フローは、車速が予め定めた設定値を下回った停車状態である場合に、規定の制御周期(1~10msec)で繰り返し実行される。
[0068]
 まず、ECU60は、自動二輪車1が、ギアポジションが1速のまま停車している状態(1速停車状態、インギア停車状態)であるか否かを判定する(ステップS1)。
 ここで、1速停車状態は、ドラム角度センサ41によって検知される変速機21のギアポジションが1速であり、かつ、車速センサ44で検知される車速が予め定めた設定値未満であることを判定基準としている。
[0069]
 これにより、例えば完全に停車する前のクラッチ開放車速において、スレーブシリンダ28への供給油圧を待機油圧WPに低下させる構成であっても、クラッチ開放車速に合わせて待機油圧WPを第二設定値P2に設定可能とし、インギア停車状態のシフト操作を確実に容易化することができる。
[0070]
 また、自動二輪車1が停車状態にあるか否かの判定は、スロットル開度センサ43で検知されたスロットル開度が予め定めた設定値未満であること、およびエンジン回転数センサ45で検知されたエンジン13の回転数が予め定めた設定値未満であること、の少なくとも一方を満足しているか否かを、判定基準に含んでもよい。
[0071]
 このように、自動二輪車1の停車状態を判定するために車速の他にスロットル開度およびエンジン回転数を併用することで、自動二輪車1の停車に向けた準備段階を確認した上で第二設定値P2を設定可能とし、インギア停車状態のシフト操作を確実に容易化することができる。
[0072]
 図9に戻り、ステップS1において、自動二輪車1が1速停車状態ではないと判定した場合(ステップS1でNo)、油圧制御部61は、スレーブシリンダ28に供給する待機油圧WPの目標油圧を、標準待機油圧(第一設定値P1)に設定する(ステップS2)。
[0073]
 ステップS1において、自動二輪車1が1速停車状態であると判定した場合(ステップS1でYes)、続いて、ECU60は、シフト操作検知スイッチ48において、変速機21のギアポジションを1速からニュートラルに変速しようとするシフトペダル32の変速操作の検知の有無を判定する(ステップS3)。
 その結果、シフトペダル32の変速操作が検知されていないと判定した場合(ステップS3でNo)、ステップS2に移行し、油圧制御部61は、スレーブシリンダ28に供給する待機油圧WPの目標油圧を、標準待機油圧に設定する。
[0074]
 一方、ステップS3において、シフトペダル32の変速操作が検知されたと判定した場合(ステップS3でYes)、油圧制御部61は、スレーブシリンダ28に供給する油圧の目標油圧を、標準待機油圧よりも低圧の低圧待機油圧(第二設定値P2)に設定する(ステップS4)。これにより、スレーブシリンダ28に供給される待機油圧WPが低下し、シフトペダル32の変速操作に必要な荷重が小さくなり、1速からニュートラルへの変速が容易になる。
[0075]
 ここで、図10に示すように、例えば、油圧制御部61は、待機油圧WPを第二設定値P2に設定した状態を、シフトアーム31aよりも変速機21側のシフトドラム36の回転を検知するまで継続させている。
 シフトドラム36の回転は、変速機21のドグクラッチの係合が解除することで生じることから、待機油圧WPを第二設定値P2に設定した状態をシフトドラム36の回転を検知するまで継続させることで、ドグクラッチの抵抗に起因したシフト操作の重さを回避し、シフト操作を確実に軽くすることができる。
[0076]
 なお、図11に示すように、油圧制御部61は、待機油圧WPを第二設定値P2に設定した状態を、シフト操作検知スイッチ48がシフト操作を検知した検知状態からシフト操作を検知しない非検知状態に移行するまで継続させてもよい。
 このように、待機油圧WPを第二設定値P2に設定した状態をシフト操作が終了するまで継続させることでも、シフト操作を確実に軽くすることができる。
[0077]
 また、図12に示すように、油圧制御部61は、待機油圧WPを第二設定値P2に設定した状態を、予め定めた設定時間t1だけ継続させてもよい。
 この場合、待機油圧WPを第二設定値P2に設定した状態を任意の設定時間だけ継続させることで、シフト操作の速さによらない制御としてフィーリングを向上させることができる。
[0078]
 図10を参照し、図9に示したような制御フローの制御を実行したときの、各部の変化の一例について説明する。
 まず、自動二輪車1が減速し、車速が予め定めた設定値(例えばクラッチ開放車速)未満になると、自動二輪車1の停車状態と判定される。このとき、自動二輪車1がギアポジションを1速のままで停車状態になると、スレーブシリンダ28には待機油圧WPとして標準待機油圧が供給される(状態M1)。
[0079]
 この状態で、運転者がシフトペダル32に操作荷重を加えると、シフト操作検知スイッチ48の検知信号が切り替わり、シフトペダル32の変速操作が検知される(状態M2,M3)。すると、油圧制御部61は、スレーブシリンダ28に供給する待機油圧WPを、標準待機油圧から低圧待機油圧に低下させる。
[0080]
 その後、シフトペダル32の操作により、シフトスピンドル31が回転してシフトドラム36のドラム角を変化させ、変速機21のギアポジションが1速からニュートラルへと変化する。この変化をドラム角から検知することで、油圧制御部61は、スレーブシリンダ28への油圧供給を停止し、クラッチ装置26を非締結状態とする(状態M3)。
[0081]
 ニュートラルへのシフトが完了すると、間もなく運転者はシフトペダル32への操作荷重の印加をやめるので、シフト操作検知スイッチ48の検知信号は非検知状態に移行する(状態M4)。
 ここで、変速機21のギアポジションを2速以上のインギア状態に変化させた場合、油圧制御部61は、スレーブシリンダ28に供給する待機油圧WPを標準待機油圧に戻す(状態M3,M4に鎖線で示す)。
[0082]
 なお、本実施形態では、1速からニュートラルにシフト操作する場合の制御を主に説明したが、これに限らず、何れのギアポジションから他のギアポジションにシフト操作する場合の制御であっても同様に適用可能である。
[0083]
 以上説明したように、上記実施形態の車両用変速システムは、自動二輪車1の運転者の操作によって変速がなされる変速機21と、変速機21とエンジン13との間の動伝経路に配置され、クラッチアクチュエータ50の作動によって断接がなされるクラッチ装置26と、クラッチアクチュエータ50によるクラッチ装置26の断接を制御する油圧制御部61と、シフトペダル32に対する運転者のシフト操作を検知するシフト操作検知スイッチ48と、を備え、クラッチ装置26は、クラッチアクチュエータ50からスレーブシリンダ28へ油圧が供給されたときに接続側へ作動し、クラッチアクチュエータ50は、変速機21がインギア状態にあり、かつ自動二輪車1が停車状態にあるインギア停車状態において、スレーブシリンダ28に待機油圧WPを供給し、油圧制御部61は、シフト操作検知スイッチ48がシフト操作を検知しない非検知の間は、待機油圧WPを第一設定値P1に設定し、シフト操作検知スイッチ48がシフト操作を検知したときは、待機油圧WPを第一設定値P1よりも低い第二設定値P2に設定する。
[0084]
 この構成によれば、変速機21がインギア状態にあり、かつ自動二輪車1が停車状態にあるインギア停車状態において、シフト操作検知スイッチ48がシフト操作を検知したときは、スレーブシリンダ28に供給する待機油圧WPを低下させることで、変速機21の係合要素(ドグクラッチ)の駆動側および被動側が回転方向で接触することによる抵抗を低減し、変速機21のシフト操作を軽くすることができる。すなわち、変速機21がインギア状態のまま停車した場合にも、シフト操作を容易に行うことができる。
[0085]
 また、上記車両用変速システムにおいて、油圧制御部61は、シフトペダル32を上方に揺動させるシフト操作をシフト操作検知スイッチ48が検知した場合に、待機油圧WPを第二設定値P2に設定する。例えば、油圧制御部61は、変速機21のギアポジションを1速からニュートラルとするシフト操作を検知した場合に、待機油圧WPを第二設定値P2に設定する。
 この構成によれば、シフトペダル32を上方に揺動させるシフト操作を検知した場合に待機油圧WPを低下させることで、シフトペダル32に足を載せることによるシフト操作の誤検知を無くすことができる。また、通常はシフトペダル32の上方への揺動で変速機21がシフトアップし、かつギアポジションの1速、2速の間にニュートラルがあることから、停車時に1速からニュートラルにシフトチェンジする際に、待機油圧WPを低下させてニュートラル出しを容易にすることができる。
[0086]
 また、上記車両用変速システムにおいて、変速機ケース17から突出してシフトペダル32に連結されるシフトスピンドル31と、変速機ケース17内でシフトスピンドル31に固定され、シフトペダル32へのシフト操作により中立位置D1から揺動して変速機21側に動きを伝えるシフトアーム31aと、を備え、シフト操作検知スイッチ48は、シフトアーム31aの中立位置D1からの動きを検知する。
 この構成によれば、シフトスピンドル31に固定されたシフトアーム31aの中立位置D1からの動きを検知して待機油圧WPを低下させることで、シフトアーム31aよりも変速機21側のシフトドラム36等の動きを検知したりシフト操作荷重を検知する場合に比して、シフト操作初期の僅かな動きでもシフト操作を検知することができる。
[0087]
 なお、自動二輪車1においては、ギアポジションが2速以上の高ギアのまま停車状態となった場合で、運転者がギアポジションをシフトダウンしようとした際に、変速機21のギアが下段側のギアポジションに変速できない場合には、以下のような油圧制御を行う。
 すなわち、ECU60においては、自動二輪車1がインギア停車状態にあるときに、変速機21のギアポジションが2速以上であるか否かを判定する。また、スロットル開度が予め定めた設定値未満であること、シフト荷重が予め定めた設定値未満であること、およびエンジン13の回転数が予め定めた設定値未満であること、も併せて判定する。
[0088]
 この例では、2速以上のままで停車していない、すなわち1速で停車している場合には、スレーブシリンダ28に供給する待機油圧WPを標準待機油圧とする。
 一方、2速以上のままで停車している場合には、次いで、シフトダウン操作がなされたか否か、現状ギアのドグクラッチの係合解除がなされたか否か、を順に判定する。これら2つの判定の一つでも否の場合は、待機油圧WPを標準待機油圧とする。上記2つの判定に否がなければ、次に、下段ギアへの変速がなされたか否か(ドグクラッチの係合がなされたか否か)を判定する。下段ギアへの変速がなされていれば、待機油圧WPは標準待機油圧とする。下段ギアへの変速がなされていなければ、下段ギアのドグクラッチにドグ当たりが生じている可能性がある。この場合は、待機油圧WPを標準待機油圧よりも高い高圧待機油圧に設定し、クラッチ装置26をわずかに締結側に移行させる。これにより、ドグクラッチの駆動側および被動側に相対回転を生じさせ、ドグクラッチのドグ当たりを解消することができる。
[0089]
 また、上記自動二輪車1においては、エンジン始動時、およびギアポジションがニュートラルの状態から1速または2速以上に変速しようとした場合に、以下のような油圧制御を行う。
 すなわち、エンジン停止時およびニュートラル時には、スレーブシリンダ28には油圧が付与されないため、スレーブシリンダ28のピストンはストローク始端位置に位置している。この状態からスレーブシリンダ28に油圧を付与すると、その油圧によって、ピストンは、ストローク始端位置からクラッチ締結側に向かって変位する。しかし、この変位の際、ピストンには、スレーブシリンダ28のシリンダ内壁と摩擦抵抗等の作用により、ストロークのロスが生じる。
[0090]
 スレーブシリンダ28は、クラッチ締結油圧から減圧して待機油圧WPとなった場合、ピストンを待機位置で停止させる。一方、エンジン始動時、およびニュートラルからインギアへの変速時といった、油圧供給を停止した状態からの増圧時には、スレーブシリンダ28に待機油圧WPを付与しても、ピストンは待機位置よりも手前の位置までしか変位しない。
 そこで、エンジン始動時、およびニュートラルからインギアへの変速時といった、油圧供給を停止した状態からの増圧時には、スレーブシリンダ28に標準待機油圧よりも高い高圧待機油圧を付与する。これにより、増圧時にピストンのストロークのロスがあっても、油圧増加分でピストンを上記待機位置まで変位させることができる。
 その結果、インギア停車状態から発進した場合と、ニュートラルからインギア状態に変速して発進した場合と、エンジン始動時後に直ぐ発進した場合と、の何れの場合もクラッチ装置26の動作フィーリングが同等になる。待機油圧を高圧待機油圧とする制御は、エンジン始動中でかつインギア状態である間は最初の一度のみとする。
[0091]
 なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、シフト操作子は足で操作するシフトペダルに限らず、手で操作するレバー等であってもよい。また電気的に駆動してシフト操作を行うアクチュエータが介在してもよい。
 上記実施形態のようにクラッチ操作を自動化した鞍乗り型車両への適用に限らず、マニュアルクラッチ操作を基本としながら、所定の条件下でマニュアルクラッチ操作を行わずに駆動力を調整して変速を可能とする、いわゆるクラッチ操作レスの変速装置を備える鞍乗り型車両にも適用可能である。
 また、上記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪の車両も含まれ、かつ電気モータを原動機に含む車両も含まれる。
 そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

符号の説明

[0092]
 1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
 13 エンジン
 17 変速機ケース
 21 変速機
 26 クラッチ装置
 28 スレーブシリンダ
 31 シフトスピンドル
 31a シフトアーム
 32 シフトペダル(シフト操作子)
 48 シフト操作検知スイッチ(シフト操作検知手段)
 50 クラッチアクチュエータ
 61 油圧制御部(クラッチ制御部)
 D1 中立位置
 P1 第一設定値
 P2 第二設定値
 t1 設定時間
 WP 待機油圧

請求の範囲

[請求項1]
 車両の運転者の操作によって変速がなされる変速機と、
 前記変速機と前記車両のエンジンとの間の動伝経路に配置され、クラッチアクチュエータの作動によって断接がなされるクラッチ装置と、
 前記クラッチアクチュエータによる前記クラッチ装置の断接を制御するクラッチ制御部と、
 シフト操作子に対する前記運転者のシフト操作を検知するシフト操作検知手段と、を備え、
 前記クラッチ装置は、前記クラッチアクチュエータからスレーブシリンダへ油圧が供給されたときに接続側へ作動し、
 前記クラッチアクチュエータは、前記変速機がインギア状態にあり、かつ前記車両が停車状態にあるインギア停車状態において、前記スレーブシリンダに待機油圧を供給し、
 前記クラッチ制御部は、前記シフト操作検知手段が前記シフト操作を検知しない非検知の間は、前記待機油圧を第一設定値に設定し、前記シフト操作検知手段が前記シフト操作を検知したときは、前記待機油圧を前記第一設定値よりも低い第二設定値に設定する車両用変速システム。
[請求項2]
 前記シフト操作子は、シフトペダルであり、
 前記クラッチ制御部は、前記シフトペダルを上方に揺動させるシフト操作を前記シフト操作検知手段が検知した場合に、前記待機油圧を前記第二設定値に設定する請求項1に記載の車両用変速システム。
[請求項3]
 前記クラッチ制御部は、前記変速機のギアポジションを1速からニュートラルとするシフト操作を検知した場合に、前記待機油圧を前記第二設定値に設定する請求項1又は2に記載の車両用変速システム。
[請求項4]
 前記クラッチ制御部は、前記待機油圧を前記第二設定値に設定した状態を、前記シフト操作検知手段が前記シフト操作を検知した検知状態から前記シフト操作を検知しない非検知状態に移行するまで継続させる請求項1から3の何れか一項に記載の車両用変速システム。
[請求項5]
 前記クラッチ制御部は、前記待機油圧を前記第二設定値に設定した状態を、予め定めた設定時間だけ継続させる請求項1から3の何れか一項に記載の車両用変速システム。
[請求項6]
 変速機ケースから突出して前記シフト操作子に連結されるシフトスピンドルと、
 前記シフトスピンドルに固定され、前記シフト操作子への前記シフト操作により中立位置から揺動して前記変速機側に動きを伝えるシフトアームと、を更に備え、
 前記シフト操作検知手段は、前記シフトアームの前記中立位置からの動きを検知する請求項1から5の何れか一項に記載の車両用変速システム。
[請求項7]
 前記クラッチ制御部は、車速が予め設定した設定値未満又は以下である場合に、前記車両が前記停車状態にあると判定する請求項1から6の何れか一項に記載の車両用変速システム。
[請求項8]
 前記クラッチ制御部は、スロットル開度が予め設定した設定値未満又は以下であること、およびエンジン回転数が予め設定した設定値未満又は以下であること、の少なくとも一方を満足した場合に、前記車両が前記停車状態にあると判定する請求項1から7の何れか一項に記載の車両用変速システム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]