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1. (WO2019003881) COMPOSITION DE LIQUIDE DE TRAITEMENT, PROCÉDÉ D'IMPRESSION, ET TISSU
Document

明 細 書

発明の名称 処理液組成物、インクジェット捺染方法、および布帛

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004  

課題を解決するための手段

0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035  

図面の簡単な説明

0036  

発明を実施するための形態

0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175   0176   0177   0178   0179   0180   0181   0182   0183   0184   0185   0186   0187   0188   0189   0190   0191   0192   0193   0194   0195   0196   0197   0198   0199   0200   0201   0202   0203   0204   0205   0206   0207   0208   0209   0210   0211   0212   0213   0214   0215   0216   0217   0218   0219   0220   0221   0222   0223   0224   0225   0226   0227   0228   0229   0230   0231   0232   0233   0234  

符号の説明

0235  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : 処理液組成物、インクジェット捺染方法、および布帛

技術分野

[0001]
 本発明は、処理液組成物、インクジェット捺染方法、および布帛に関する。

背景技術

[0002]
 従来、色材によって布帛などの基材へ染色を行う際に、色材の発色性やにじみの発生を改善するため、カチオン性化合物などを含む処理液を用いて、基材に前処理を施す技術が知られていた。例えば、特許文献1には、そのような処理液として、多価金属イオンおよび特定の高分子微粒子などを含むインクジェット捺染用前処理剤が提案されている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2011-168911号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット捺染用前処理剤では、発色性を高めることはできるものの、前処理痕の発生を抑えることが難しいという課題があることが見出された。詳しくは、多価金属イオンを含む前処理剤を用いて布帛に前処理を施すと、前処理剤が付着した領域に目視で認識可能な外観上の変化、すなわち前処理痕が発生することがあった。このような前処理痕は、染料などで予め濃色に着色された布帛(生地)において顕著となる傾向があり、生地色の色相変化として発現しやすいことが見出された。布帛に前処理を施す際には、色材で染色(捺染)を行う領域以外にも前処理剤を付着させる場合が多い。そのため、捺染を行わない領域に前処理痕が生じると、前処理を施していない領域(前処理痕が生じていない領域)との対比で、ことさらに色相変化などが目立ちやすくなる。したがって、前処理痕の発生により、捺染を行って作製された製品の外観品質が低下するおそれがあった。

課題を解決するための手段

[0005]
 本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、発色性を高め、且つ、処理痕の発生を抑えるためになされたものであって、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[0006]
 [適用例]本適用例に係る処理液組成物は、捺染において、布帛に付着して用いる処理液組成物であって、カチオン性化合物と、ベタインと、水と、を含有する。
[0007]
 本適用例によれば、前処理にて処理液組成物を付着させた布帛において、前処理痕の発生を抑えることができる。
[0008]
 上記適用例に記載の処理液組成物は、インクジェット顔料捺染に用いることが好ましい。
[0009]
 これによれば、色材として顔料を用いるインクジェット顔料捺染とすることから、色材の発色性をさらに向上させることができる。また、染料と比べて、染着工程や洗浄工程などの工程を簡略化することができる。さらには、適用可能な繊維(布帛)の種類が比較的に限定される染料と比べて、広範な種類の繊維に対して捺染を行うことができる。
[0010]
 上記適用例に記載の処理液組成物において、ベタインの含有量が、カチオン性化合物の含有量に対し、質量比で0.2以上であることが好ましい。
[0011]
 これによれば、前処理痕の発生をさらに抑えることができる。
[0012]
 上記適用例に記載の処理液組成物において、布帛が、染料によって着色された綿布帛であることが好ましい。
[0013]
 これによれば、衣類やその他の服飾品などの、染料によって予め着色された綿布帛に対して、発色性を確保した上で、前処理痕の発生を抑えることができる。
[0014]
 上記適用例に記載の処理液組成物において、ベタインが、カルニチン、トリメチルグリシン、γ-ブチロベタインから選択される1種以上であることが好ましい。
[0015]
 これによれば、前処理痕の発生をいっそう抑えることができる。
[0016]
 上記適用例に記載の処理液組成物において、ベタインの含有量が、カチオン性化合物の含有量に対し、質量比で0.6以上であることが好ましい。
[0017]
 これによれば、前処理痕の発生をいっそう抑えることができ、特に、赤色に着色された布帛に対して好適である。
[0018]
 上記適用例に記載の処理液組成物において、ベタインの含有量が、カチオン性化合物の含有量に対し、質量比で2.0以下であることが好ましい。
[0019]
 これによれば、布帛における濡れ性の上昇が抑制される。そのため、該布帛に色材で捺染を行うと、色材の裏抜けの発生が抑えられ、色材の発色性をより向上させることができる。
[0020]
 上記適用例に記載の処理液組成物において、カチオン性化合物が、多価金属塩であることが好ましい。
[0021]
 これによれば、色材などの凝集が促進されて、色材の発色性をいっそう向上させることができる。また、綿布帛に対して好適に用いることができる。
[0022]
 上記適用例に記載の処理液組成物において、カチオン性化合物が、カルシウム塩であることが好ましい。
[0023]
 これによれば、前処理痕の発生をいっそう抑えることができる。また、色材の発色性が向上することに加えて、綿布帛に対してより好適に用いることができる。
[0024]
 上記適用例に記載の処理液組成物においては、布帛中に、トリアジン化合物が含まれていることが好ましい。
[0025]
 トリアジン化合物を用いて染色を施した布帛(生地)に対して、前処理痕の発生を抑えることができる。
[0026]
 上記適用例に記載の処理液組成物は、さらに界面活性剤を含有し、界面活性剤のHLB値が13以上であることが好ましい。
[0027]
 これによれば、処理液組成物を布帛に付着させた際に、布帛に対する浸透と濡れ広がりとを調節することができる。
[0028]
 上記適用例に記載の処理液組成物において、界面活性剤の含有量が、処理液組成物の全質量に対し、0.3質量%以下であることが好ましい。
[0029]
 これによれば、処理液組成物の表面張力が過度に低下することを抑え、布帛に付着させた際に、処理液組成物が布帛の表面付近に保持されやすくなる。これにより、処理液組成物の機能を発現しやすくすることができる。
[0030]
 [適用例]本適用例に係るインクジェット捺染方法は、上記適用例に記載の処理液組成物を、布帛に付着させる工程を備えている。
[0031]
 本適用例によれば、発色性を確保し、従来よりも前処理痕の発生を抑えたインクジェット捺染方法を提供することができる。
[0032]
 上記適用例に記載のインクジェット捺染方法は、布帛における処理液組成物が付着した領域へ、顔料捺染インクをインクジェット法にて付着させる工程を備えていることが好ましい。
[0033]
 これによれば、アナログ捺染では必要な版が不要となるなど、多品種少量生産への対応が容易になると共に、高精細な画像などを形成することができる。また、顔料捺染インクを用いることから、色材の発色性がさらに向上すると共に、染料インクと比べて、染着工程や洗浄工程などの工程を簡略化することができる。これに加えて、適用可能な繊維(布帛)の種類が比較的に限定される染料インクに対して、広範な種類の繊維に対して捺染を行うことができる。
[0034]
 [適用例]本適用例に係る布帛は、上記適用例に記載の処理液組成物を付着して得られる。
[0035]
 本適用例によれば、捺染に用いると、発色性を確保し、従来よりも前処理痕の発生を抑える布帛を提供することができる。すなわち、捺染を行って作製された製品の外観品質を向上させることができる。

図面の簡単な説明

[0036]
[図1] 実施形態に係るインクジェット捺染装置を示す概略斜視図。

発明を実施するための形態

[0037]
 以下、本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更が可能であり、そのような変更を伴う処理液組成物、インクジェット捺染方法、および布帛もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
[0038]
 <処理液組成物>
 本実施形態の処理液組成物(以降、単に「処理液」ともいう。)は、インク組成物を塗工(捺染)して印捺物を製造する際に、印捺物の基材となる布帛に対して、予め付着して用いる。また、インク組成物を捺染する塗布方法には、インクジェット法を採用することが好ましい。インクジェット法とは、インクジェットプリンターなどのインクジェットヘッドから、インク組成物の微小な液滴を吐出させる方法であって、該方法を採用した捺染をインクジェット捺染という。以下、本実施形態に係る処理液に含有される各成分について説明する。なお、本実施形態のインク組成物は、顔料捺染(色材に顔料を採用したインク組成物による捺染)に用いる、水系の顔料インク組成物を例に挙げる。
[0039]
 本実施形態に係る処理液は、捺染において、布帛に付着して用いる処理液であって、カチオン性化合物と、ベタインと、水と、を含有する。
[0040]
 [カチオン性化合物]
 カチオン性化合物は、インク組成物中の成分を凝集させる機能を有している。すなわち、印捺物を製造する際に、処理液を付着させた布帛へインク組成物を捺染すると、処理液に含まれていたカチオン性化合物が、顔料や樹脂微粒子(エマルジョン)などに作用することによって粒子同士の凝集を促進し、布帛を構成する繊維の間隙あるいは内部に吸収されることを抑制する。そのため、印捺物における顔料の発色を向上させることができる。これに加えて、カチオン性化合物は、インク組成物の粘度を高める機能も有している。そのため、インク組成物の布帛内部への過剰な浸透が抑制されると共に、にじみやブリードの発生を低減することができる。
[0041]
 上述したカチオン性化合物の機能は、インク組成物に含まれる成分の表面電荷の中和、あるいはインク組成物のpHを変化させる作用に由来している。これらの作用により、インク組成物中の顔料などを凝集または析出させたり、インク組成物を増粘させたりすることが可能となる。
[0042]
 カチオン性化合物としては、多価金属塩、カチオン性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、顔料の発色性の向上および綿布帛に好適である点などから、多価金属塩を用いることが好ましい。これらのカチオン性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[0043]
 多価金属塩は、2価以上の多価金属カチオン、および該多価金属カチオンと塩を形成するアニオンを含み、水溶性を有する化合物である。2価以上の多価金属カチオンとしては、例えば、Ca 2+、Cu 2+、Ni 2+、Mg 2+、Zn 2+、Ba 2+などの2価金属イオン、Al 3+、Fe 3+、Cr 3+などの3価金属イオンが挙げられる。また、アニオンとしては、例えば、Cl -、I -、Br -、SO 4 2-、CO 3 2-、ClO 3 -、NO 3 -、HCOO -、CH 3COO -などが挙げられる。このような多価金属カチオンとアニオンとを組み合わせた多価金属塩の中でも、処理液の保存安定性や顔料や樹脂微粒子(エマルジョン)に対する凝集作用の発現により発色性を向上させる観点から、塩化カルシウム、硝酸カルシウムなどのカルシウム塩を用いることがより好ましい。多価金属塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[0044]
 多価金属塩の他に、多価金属塩以外の金属塩を用いてもよい。このような金属塩としては、Na -、K -などの1価の金属カチオンと、上記アニオンとを組み合わせた、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。
[0045]
 カチオン性樹脂としては、例えば、カチオン性の、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、アリルアミン系樹脂などが挙げられる。
[0046]
 カチオン性のウレタン系樹脂としては、公知のものや市販品が採用可能である。カチオン性のウレタン系樹脂は、水や有機溶剤などの溶媒に溶解したもの、上記溶媒に分散させてエマルションとしたもの、などいずれを用いてもよい。このようなカチオン性のウレタン系樹脂としては、例えば、ハイドラン(登録商標)CP-7010、7120、7030、7040、7050、7060、7610(以上商品名、大日本インキ化学工業社)、スーパーフレックス(登録商標)600、610、620、630、640、650(以上商品名、第一工業製薬社)、ウレタンエマルジョンWBR-2120C、2122C(以上商品名、大成ファインケミカル社)などが挙げられる。
[0047]
 カチオン性のオレフィン系樹脂としては、オレフィン系単量体に由来する、エチレン鎖、プロピレン鎖などの構造を主骨格として有する高分子化合物である。カチオン性のオレフィン系樹脂は、公知のものや市販品が採用可能であり、水や有機溶剤などの溶媒に溶解したもの、上記溶媒に分散させてエマルションとしたもの、などいずれを用いてもよい。このようなカチオン性のオレフィン系樹脂としては、例えば、アローベース(登録商標)CB-1200、CD-1200(以上商品名、ユニチカ社)などが挙げられる。
[0048]
 カチオン性のアリルアミン系樹脂としては、公知のものが採用可能であり、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩-ジアリルアミン塩酸塩共重合体、アリルアミン酢酸塩-ジアリルアミン酢酸塩共重合体、アリルアミン塩酸塩-ジメチルアリルアミン塩酸塩共重合体、アルルアミン-ジメチルアリルアミン共重合体、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩-二酸化硫黄共重合体、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト-二硫化硫黄共重合体、メチルジアリルアミン塩酸塩-二硫化硫黄共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド二硫化硫黄共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドアクリルアミド共重合体などが挙げられる。
[0049]
 このようなカチオン性のアリルアミン系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、PAA-HCL-01、03、05、3L、10L、PAA-H-HCL、PAA-SA、PAA-01、03、05、08、15、15C、25、PAA-H-10C、PAA-D11-HCL、PAA-D41-HCL、PAA-D19-HCL、PAS-21CL、22SA、92、92A、PAS-M-1、1L、1A、PAS-H-1L、5L、10L、PAS-J-81、81L(以上商品名、ニットーボーメディカル社)、ハイモロック(登録商標)NEO-600、Q-101、Q-311、Q-501、ハイマックス SC-505(以上商品名、ハイモ社)などが挙げられる。
[0050]
 また、上述したカチオン性樹脂や多価金属塩の他に、その他のカチオン性化合物として、カチオン性界面活性剤、無機酸または有機酸などを用いてもよい。
[0051]
 カチオン性界面活性剤としては、例えば、第1級、第2級、第3級アミン塩化合物、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、第4級アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オニウム塩、イミダゾリニウム塩などが挙げられる。このようなカチオン性界面活性剤の具体的としては、例えば、ラウリルアミン、ヤシアミン、ロジンアミンなどの塩酸塩または酢酸塩など、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(セチルトリメチルアンモニウムクロリド)、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、ジメチルエチルラウリルアンモニウムエチル硫酸塩、ジメチルエチルオクチルアンモニウムエチル硫酸塩、トリメチルラウリルアンモニウム塩酸塩、セチルピリジニウムクロリド、セチルピリジニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルラウリルアミン、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、テトラデシルジメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤は、市販品を用いてもよい。
[0052]
 無機酸または有機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸などの有機酸、これらの化合物の誘導体、またはこれらの塩などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[0053]
 その他のカチオン性化合物として、例えば、チョーク、カオリン、焼成クレー、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、セリサイト、ホワイトカーボン、サポナイト、カルシウムモンモリロナイト、ソジウムモンモリロナイト、ベントナイトなどの無機顔料、アクリル系プラスチックピグメント、尿素高分子化合物などの有機顔料を用いてもよい。
[0054]
 処理液に含まれるカチオン性化合物の含有量は、特に限定されないが、処理液の全質量に対して、0.1質量%以上、40質量%以下が好ましく、より好ましくは、2質量%以上、25質量%以下であり、さらにより好ましくは、5質量%以上、20質量%以下であり、特により好ましくは、10質量%以上、20質量%以下である。カチオン性化合物の含有量を上記の範囲とすることにより、処理液におけるカチオン性化合物の析出や分離などを抑えて、インク中の顔料や樹脂微粒子(エマルジョン)の凝集を促進し、布帛を構成する繊維の間隙あるいは内部に吸収されることを抑制するので、印捺面の裏面方向に色材が裏抜ける現象(裏抜け)を低減し、印捺物の発色性を向上させることができる。
[0055]
 [ベタイン]
 ベタインとは、正電荷および負電荷を同一分子内に持ち、分子全体としては電荷を持たない化合物を指す。詳しくは、例えば、第4級アンモニウムカチオンなどの正電荷と、カルボキシラートアニオンなどの負電荷とを、同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷を持つ原子には、解離可能な水素原子が結合していない分子内塩化合物が挙げられる。
[0056]
 そのような分子内塩化合物(ベタイン)としては、特に限定されないが、具体的には、リジンベタイン、オルニチンベタイン、ホマリン、トリゴネリン、アラニンベタイン、タウロベタイン、フェニルアラニルベタインカルニチン、ホモセリンベタイン、バリンベタイン、トリメチルグリシン(グリシンベタイン)、スタキドリン、γ-ブチロベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ酸アミドプロピルベタイン、グルタミン酸ベタイン、などが挙げられ、これらから選択される1種以上を用いる。これらの中でも、カチオン性化合物の捕捉作用から、カルニチン、トリメチルグリシン、γ-ブチロベタインから選択される1種以上を用いることがより好ましい。なお、これらのベタインは市販品を用いてもよい。
[0057]
 前処理痕は、前処理剤中のカチオン性化合物と、布帛に含まれる成分との反応に由来すると推察される。これに対し、ベタインを含有することから、カチオン性化合物と、布帛(生地)に含まれる成分との反応が抑制される。これは、カチオン性化合物がベタインに捕捉されて、布帛に含まれる成分との反応が起きにくくなるためである。ベタインに捕捉されたカチオン性化合物は、前処理後に色材にて捺染を行うとベタインの捕捉から解放されて、色材などとの反応が進行する。そのため、色材などが凝集することによって発色性が向上する。したがって、発色性を確保し、従来よりも前処理痕の発生を抑えた処理液組成物を提供することができる。また、捺染を行って作製された製品の外観品質を向上させることができる。
[0058]
 ベタインは、処理液中にあって、カチオン性化合物の少なくとも一定量を捕捉した状態で存在していると推察される。そのため、前処理として、処理液が布帛に付着された際に、布帛に含まれる成分と反応するカチオン性化合物の量が低減され、前処理痕の発生が抑えられる。その後、水系のインク組成物にて捺染を行うと、水系のインク組成物に対してカチオン性化合物は相溶性が高いため、カチオン性化合物が捕捉から解放されて、インク組成物中の顔料などとの凝集作用が発現する。
[0059]
 処理液におけるベタインの含有量は、カチオン性化合物の含有量に対し、質量比で0.2以上であることが好ましく、より好ましくは質量比で0.3以上であり、さらに好ましくは質量比で0.6以上である。カチオン性化合物の含有量に対するベタインの含有量を、上記とすることによって、ベタインによるカチオン性化合物の捕捉作用が発現しやすくなる。その結果として、処理液によって前処理痕の発生が好適に抑えられる。
[0060]
 また、処理液におけるベタインの含有量は、カチオン性化合物の含有量に対し、質量比で3.0以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2.0以下である。カチオン性化合物の含有量に対するベタインの含有量を、上記とすることによって、裏抜けの発生を低減し、印捺物の発色性を向上させることができる。
[0061]
 処理液におけるベタインの好適な含有量は、適用する布帛の色によっても異なる。黒色や青色に染色された布帛に適用する場合、処理液におけるベタインの含有量は、カチオン性化合物の含有量に対し、質量比で1.25以上、2.0以下であることも処理痕の発生を好適に抑える点で好ましい。赤色に染色された布帛に適用する場合、処理液におけるベタインの含有量は、カチオン性化合物の含有量に対し、質量比で0.6以上、1.25以下であることも処理痕の発生を好適に抑える点で好ましい。
[0062]
 処理液におけるベタインの含有量は、処理液の全質量に対し、5.0質量%以上が好ましい。これにより、前処理痕の発生をいっそう抑えることができる。
[0063]
 処理液におけるベタインの含有量は、処理液の全質量に対し、20質量%以下が好ましい。これにより、布帛に対して適度な濡れ性や浸透性が発現する。そのため、布帛へ処理剤を塗布する際に処理剤が適度な速度で布帛に均一に吸収され易くなり、処理剤を塗布する際に生じる処理剤付着量の濃淡差(塗布ムラ)の発生を抑制することができる。
[0064]
 [水]
 水は、本実施形態の処理液の主な媒体である。水は、処理液を布帛に付着させた後に、乾燥によって蒸発飛散する成分である。水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水、ならびに超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものが採用可能である。また、紫外線照射や過酸化水素の添加などによって滅菌した水を使用すると、処理液を長期間保存する場合に、カビやバクテリアの発生を抑制することができる。
[0065]
 処理液に含まれる水の含有量は、特に限定されないが、処理液の全質量に対して、30質量%以上、95質量%以下であり、40質量%以上、90質量%以下が好ましく、45質量%以上、85質量%以下がより好ましく、さらにより好ましくは50質量%以上、80質量%以下である。水の含有量を上記の範囲とすることにより、処理液の粘度の増大を抑えて、処理液を布帛に付着させる際の作業性、および付着させた後の乾燥性を向上させることができる。なお、処理液中の水には、処理液の原材料として用いる、例えば、後述する樹脂エマルションなどに配合されている水も含まれる。
[0066]
 [樹脂エマルション]
 処理液には、樹脂エマルションを添加してもよい。樹脂エマルションを添加することによって、インク組成物に含まれる顔料の、布帛に対する定着性をより向上させることができる。また、処理液やインク組成物が布帛の内部へ過剰に浸透するのを抑制する目止め剤として、樹脂エマルションを用いてもよい。
[0067]
 樹脂エマルションは、本実施形態のように処理液が水を主な媒体とする場合には、樹脂微粒子を水性媒体中に分散させたものを用いる。樹脂微粒子の分散方法としては、乳化剤(界面活性剤)を利用した強制乳化型、樹脂微粒子の分子構造中に親水部(親水性基)を導入した自己乳化型などが採用可能である。また、樹脂微粒子は、反応性(架橋反応性)を有していてもよく、例えば、ブロック剤でマスクされたイソシアネート基を分子構造中に具備したものを用いてもよい。
[0068]
 樹脂微粒子を形成する材料としては、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられ、これらのうちの少なくとも1種が採用可能である。
[0069]
 樹脂微粒子の平均粒子径は、30nm以上、300nm以下が好ましく、40nm以上、100nm以下がより好ましい。平均粒子径が上記範囲にあると、処理液における樹脂エマルションの分散性、および布帛に対する定着性を向上させることができる。ここで、本明細書において、「平均粒子径」とは、特にことわりのない限り、体積基準粒度分布(50%)を指すものとする。平均粒子径は、JIS Z8825に記載の動的光散乱法やレーザー回折光法で測定される。具体的には、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)が採用可能である。
[0070]
 このような樹脂エマルションは、市販品を用いてもよい。例えば、ウレタン系樹脂エマルションとしては、スーパーフレックス(登録商標)150、420、460、470、500、610、700、800、870、6E-2000、E-2500、E-4000、R-5000(以上、第一工業製薬社)、アデカボンタイター(登録商標)HUX-290K、380、822、830(以上商品名、アデカ社)、タケラック(登録商標)W-6020、6021、6061、605、635(以上商品名、三井化学ポリウレタン社)、パーマリン(登録商標)UA-150(商品名、三洋化成工業社)、サンキュアー(登録商標)2710(商品名、日本ルーブリゾール社)、NeoRez(登録商標)R-940、9637、9660(以上商品名、楠本化成社)などが挙げられる。
[0071]
 酢酸ビニル系樹脂エマルションとしては、ビニブラン(登録商標)1245L(以上商品名、日信化学工業社)、ポリゾール(登録商標)SH-502、AD-2、10、13、17、70、96(以上商品名、昭和電工社)、セイカダイン(登録商標)1900W(商品名、大日精化工業社)などが挙げられる。
[0072]
 アクリル系樹脂エマルションとしては、ボンコート(登録商標)AN-402、R-3310、R-3360、4001(以上商品名、DIC社)、ポリゾール(登録商標)AM-710、920、2300、AP-4735、AT-860、PSASE-4210E(以上商品名、昭和電工社)、サイビノール(登録商標)SK-200(サイデン化学社)、AE-120A(商品名、JSR社)、ビニブラン(登録商標)2650、2680、2682、2684、2886、5202(商品名、日信化学工業社)、NK-バインダーR-5HN(商品名、新中村化学工業社)などが挙げられる。
[0073]
 スチレン-アクリル系樹脂エマルションとしては、マイクロジェル(登録商標)E-1002、5002(以上商品名、日本ペイント社)、ボンコート(登録商標)5454(商品名、DIC社)、ポリゾール(登録商標)AP-7020(以上商品名、昭和電工社)、SAE1014(商品名、日本ゼオン社)、AE373D(商品名、イーテック社)、ジョンクリル(登録商標)390、450、511、631、632、711、734、741、775、780、790、840、852、1535、7001、7100、7600、7610、7640、7641、74J、352D、352J、537J、538J、HRC-1645J、PDX-7145,7630A(以上商品名、BASF社)、モビニール(登録商標)966A、7320(日本合成化学社)などが挙げられる。
[0074]
 ポリエステル系樹脂エマルションとしては、エリーテル(登録商標)KA-5071S、KT-8701、8803、8904、9204、0507(以上商品名、ユニチカ社)、ハイテックSN-2002(商品名、東邦化学社)などが挙げられる。
[0075]
 処理液に含まれる樹脂エマルションの固形分換算での含有量は、処理液の全質量に対して、1質量%以上、20質量%以下が好ましく、より好ましくは、1.5質量%以上、15質量%以下であり、さらにより好ましくは、2質量%以上、10質量%以下である。樹脂エマルションの固形分換算の含有量を上記範囲とすることにより、処理液の粘度の増大を抑えて、印捺物における洗濯堅牢性、摩擦堅牢性などを向上させることができる。
[0076]
 [界面活性剤]
 処理液には、さらに界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、処理液の表面張力を低下させて、布帛に対する浸透性を高める機能を有している。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、これらのうち少なくとも1種が採用可能である。
[0077]
 処理液に界面活性剤を添加する場合の含有量は、処理液の全質量に対し、0.3質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、0.25質量%以下であり、さらにより好ましくは、0.2質量%以下である。界面活性剤の含有量を上記とすることによって、処理液の表面張力が過度に低下することを抑え、処理液を布帛に付着させた際に、処理液が布帛の表面付近に保持されやすくなる。これにより、処理液の機能を発現しやすくすることができる。
[0078]
 ノニオン系界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などを用いることができる。これらの界面活性剤を用いることにより、比較的に少量の含有量で、布帛に対する濡れ性を向上させることができる。
[0079]
 アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのアルキレンオキシド付加物、2,4-ジメチル-5-デシン-4-オール、2,4-ジメチル-5-デシン-4-オールのアルキレンオキシド付加物、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3オール、2,4-ジメチル-5-ヘキシン-3-オールなどのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
[0080]
 このようなアセチレングリコール系界面活性剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、サーフィノール(登録商標)104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上商品名、Air Products and Chemicals, Inc.社)、オルフィン(登録商標)B、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上商品名、日信化学工業社)、アセチレノール(登録商標)E00、E00P、E40、E100(以上商品名、川研ファインケミカル社)などが挙げられる。
[0081]
 フッ素系界面活性剤としては、市販品が採用可能であり、例えば、メガファック(登録商標)F-479(商品名、DIC社)、BYK-340(商品名、BYK社)などが挙げられる。
[0082]
 シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が採用可能である。ポリシロキサン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-302、306、307、333、341、345、346、347、348(以上商品名、BYK社)、KF-351A、352A、353、354L、355A、615A、945、640、642、643、6020、6011、6012、6015、6017、X-22-4515(以上商品名、信越化学工業社)などが挙げられる。
[0083]
 アニオン系界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、石けん、α-スルホ脂肪酸メチルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテルリン酸エステル塩などが挙げられる。
[0084]
 カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩化合物、N-メチルビスヒドロキシエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩などのアミン塩化合物が挙げられる。また、カチオン性界面活性剤としては、カチオン性化合物として上述したものを用いてもよい。
[0085]
 両性界面活性剤としては、特に限定されないが、アルキルアミノ脂肪酸塩などのアミノ酸化合物が挙げられる。
[0086]
 上述した界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのうち、HLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値が13以上の界面活性剤を用いることが好ましい。これによれば、処理液を布帛に付着させた際に、布帛に対する浸透と濡れ広がりとを調節することができる。
[0087]
 [その他の成分]
 処理液には、pH調整剤、防腐剤、防かび剤、酸化防止剤、キレート剤などの種々の添加剤や有機溶剤を添加してもよい。
[0088]
 pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば有機塩基、無機塩基が挙げられる。有機塩基としては、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリ-iso-プロパノールアミンなどのアルカノールアミン類が挙げられる。無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物である強塩基を用いることができる。
[0089]
 防腐剤や防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ジベンジンチアゾリン-3-オン(LONZA社の商品名 PROXEL CRL、PROXEL BDN、PROXEL GXL、PROXEL XL-2、PROXEL TN)などが挙げられる。防腐剤や防かび剤を処理液に添加することにより、処理液中にバクテリアやカビが繁殖することを抑制できる。
[0090]
 有機溶剤を添加して、粘度や表面張力などの処理液の物性や、処理液の乾燥性などを調節してもよい。有機溶剤を添加する場合は、後述するインク組成物に用いる有機溶剤が適用可能である。
[0091]
 上述の通り、本実施形態に係る処理液は、インク組成物を塗工(捺染)して印捺物を製造する際に、印捺物の基材となる布帛に対して、予め付着して用いるものであり、インク組成物とは異なるものである。本実施形態に係る処理液は後述の色材含有量が特定値以下であることが好ましい。具体的には、色材の含有量は、処理液の全質量に対して0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましく、含有しない(0質量%)ことが特により好ましい。
[0092]
 [処理液の調製方法]
 処理液は、上述した各成分を任意の順序で混合し、必要に応じてろ過などを実施して不純物や異物などを除去することで調製することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネティックスターラーなどの撹拌装置を備えた容器に、材料(成分)を順次添加して撹拌、混合する方法が用いられる。ろ過方法としては、遠心ろ過、フィルターろ過などが採用可能である。
[0093]
 [処理液の物性]
 処理液の物性は、布帛の種類や、布帛へ付着させる方法(塗布方法)などによって、任意に調節される。処理液の塗布方法は後述する。
[0094]
 処理液の20℃における粘度は、特に限定されないが、1.5mPa・s(ミリパスカル秒)以上、100mPa・s以下とすることが好ましく、より好ましくは、1.5mPa・s以上、50mPa・s以下であり、さらにより好ましくは、1.5mPa・s以上、20mPa・s以下である。処理液の粘度を上記の範囲とすることにより、布帛に付着させた際の、処理液の広がりやすさなどの塗工性を向上させることができる。
[0095]
 また、塗布方法にインクジェット法を用いる場合には、処理液の20℃における粘度は、1.5mPa・s以上、15mPa・s以下とすることが好ましく、より好ましくは、1.5mPa・s以上、10mPa・s以下であり、さらにより好ましくは、1.5mPa・s以上、7.0mPa・s以下である。インクジェット法を用いる場合の粘度を、上記の範囲とすることにより、インクジェットヘッドからの処理液の吐出安定性を向上させると共に、処理液を付着させる工程の処理時間を短縮することができる。
[0096]
 処理液の粘度は、例えば、粘弾性試験機MCR-300(Pysica社)を用いて測定する。具体的には、処理液の温度を20℃に調整し、せん断速度200(1/s)におけるせん断粘度(mPa・s)を読み取ることにより測定することが可能である。
[0097]
 処理液の25℃における表面張力は、例えば、30mN/m以上、50mN/m以下とすることが好ましく、より好ましくは、35mN/m以上、45mN/m以下である。処理液の25℃における表面張力を上記の範囲とすることにより、布帛に対して適度な濡れ性や浸透性が発現し、布帛へ処理剤を塗布する際に処理剤が適度な速度で布帛に均一に吸収され易くなり、処理剤を塗布する際に生じる処理剤付着量の濃淡差(塗布ムラ)の発生を抑制することができる。
[0098]
 処理液の表面張力は、例えば、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社)を用いて測定する。具体的には、25℃の環境下にて、白金プレートを処理液で濡らしたときの表面張力を読み取ることにより、測定することが可能である。
[0099]
 <インク組成物>
 次に、本実施形態の処理液を付着させた布帛に捺染し、印捺物を製造するために用いるインク組成物について説明する。上述したように、本実施形態に係るインク組成物は、捺染用の水系インク組成物であり、好ましくはインクジェット捺染用の水系インク組成物である。以下、本実施形態のインク組成物に含まれる成分から説明する。
[0100]
 [色材]
 本実施形態のインク組成物は、色材として染料または顔料を用いる。染料としては、例えば、酸性染料、塩基性染料などの水溶性染料、分散剤(界面活性剤)を併用する分散染料、反応性染料などが挙げられる。染料は、染料の分子と、布帛の形成材料が有する官能基とが化学結合を形成して、染着することにより捺染がなされる。これらの染料は、公知のものが採用可能である。
[0101]
 本実施形態のインク組成物は、染料と比べて、染着工程や洗浄工程などの工程の簡略化が可能であることなどから、色材として顔料を用いた顔料捺染インクとすることが好ましい。すなわち、本実施形態の処理液は、顔料捺染に用いることが好ましく、インクジェット顔料捺染に用いることがより好ましい。
[0102]
 顔料としては、公知の有機顔料、無機顔料のいずれも用いることができる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料などの多環式顔料、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキなどの染料レーキ顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが挙げられる。無機顔料としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロムなどの金属酸化物顔料、カーボンブラックなどが挙げられる。また、パール顔料やメタリック顔料などの光輝顔料を用いてもよい。
[0103]
 このような顔料としては、例えば、黒色インク組成物用としては、C.I.(Colour Index Generic Name)ピグメントブラック1、7、11が挙げられる。この中でも、インクジェット捺染用としては、比重が比較的に小さく、水系の媒体中で沈降しにくいカーボンブラック系(C.I.ピグメントブラック7)が好ましい。
[0104]
 カラーインク組成物用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、155、180、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101、104、105、106、108、112、114、122、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット19、23、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。上記顔料の平均粒子径は5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下であり、さらに好ましくは0.01μmから0.15μmの範囲である。顔料の平均粒子径を上記の範囲とすることにより、インクジェットヘッドからの吐出安定性を確保すると共に、印刷物における顔料の発色性を向上させることができる。
[0105]
 本実施形態の処理液は色材の発色性が確保されるため、白色インク組成物と組み合わせて用いることが好ましい。詳しくは、予め着色された有色の布帛にカラーの画像などを捺染する際に、まず白色インク組成物を捺染して下地を形成する方法がある。これは、捺染するカラーの画像に対する、布帛が有する色(生地の色)の干渉を抑え、画像の発色を向上させるために行われる。すなわち、本実施形態の処理液と、白色インク組成物とを用いると、白色顔料の発色性によって隠蔽性が向上し、生地の色に係わらず、所望の色の画像などを捺染することができる。
[0106]
 白色インク組成物用の白色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントホワイト1(塩基性炭酸鉛)、4(酸化亜鉛)、5(硫化亜鉛と硫酸バリウムとの混合物)、6(二酸化チタン)、6:1(他の金属酸化物を含有する二酸化チタン)、7(硫化亜鉛)、18(炭酸カルシウム)、19(クレー)、20(雲母チタン)、21(硫酸バリウム)、22(石膏)、26(酸化マグネシウム・二酸化ケイ素)、27(二酸化ケイ素)、28(無水ケイ酸カルシウム)などが挙げられる。これらの中でも、発色性、隠蔽性などに優れるC.I.ピグメントホワイト6を用いることが好ましい。
[0107]
 白色顔料の平均粒子径は、100μm以上、500μm以下が好ましく、より好ましくは、150μm以上、450μm以下であり、さらに好ましくは、200μm以上、400μm以下の範囲である。白色顔料の平均粒子径を上記の範囲とすることにより、インクジェットヘッドからの吐出安定性を確保できる。また、布帛生地に予め染色された着色に対する隠蔽性を向上させることができる。
[0108]
 なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、特にことわりのない限り、体積基準粒度分布(50%)を指すものとする。顔料の平均粒子径の測定には、上述した樹脂微粒子の平均粒子径と同様な方法が採用可能である。
[0109]
 顔料を用いる場合の含有量は、特に限定されないが、インク組成物の全質量に対して、例えば、0.1質量%以上、30質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、1質量%以上、20質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上、15質量%以下である。顔料の含有量を上記の範囲内とすることにより、捺染を施した印捺物において、顔料の発色性を確保すると共に、インク組成物の粘度上昇やインクジェットヘッドにおける目詰まりの発生を抑えることができる。
[0110]
 上述した顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。顔料には、インク組成物中での分散性を高めるために、表面処理を施すか、インク組成物に分散剤などを配合することが好ましい。顔料の表面処理とは、物理的処理または化学的処理によって、顔料の粒子表面にカルボキシ基やスルホ基などの親水性基を導入する方法である。顔料の表面処理によって、顔料を水などの水性媒体中に分散することが可能となる。
[0111]
 水性媒体に用いる分散剤は、分子構造における疎水部(疎水性基)が顔料の粒子表面に吸着し、親水部(親水性基)が媒体側に配向する作用を有している。この作用により、顔料を水性媒体中で分散させることが可能となる。分散剤としては、公知の界面活性剤や高分子化合物を用いる。また、高分子化合物などで顔料粒子を被覆し、分散性を付与する方法を用いてもよい。顔料粒子を被覆する方法としては、酸析法、転相乳化法、ミニエマルション重合法などが採用可能である。
[0112]
 [水]
 本実施形態のインク組成物は、上述したように水系の顔料インク組成物であり、水は、本実施形態のインク組成物の主な媒体である。インク組成物が布帛に塗布されると、水は布帛から乾燥によって蒸発飛散する。水としては、上述した処理液と同様なものが採用可能である。インク組成物に含まれる水の含有量は、例えば、インク組成物の全質量に対して、30質量%以上、90質量%以下であり、好ましくは40質量%以上、85質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上、80質量%以下である。水の含有量を上記の範囲内にすることにより、インク組成物の粘度の増大を抑えることができる。なお、本明細書において、「水系のインク組成物」とは、インク組成物の全質量に対する水の含有量が、30質量%以上のインク組成物を指すものとする。
[0113]
 [有機溶剤]
 インク組成物には、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤を添加することにより、粘度、表面張力などの物性や、布帛に塗布した際の乾燥、浸透などの挙動を調節することができる。有機溶剤としては、例えば、2-ピロリドン類、1,2-アルカンジオール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を用いることが可能である。
[0114]
 2-ピロリドン類とは、2-ピロリドン骨格を有する化合物のことをいう。2-ピロリドン類としては、例えば、置換基を有していない2-ピロリドンの他に、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドンなどの置換基を有する化合物が挙げられる。2-ピロリドン骨格における置換基は、炭素数が1から5の、飽和または不飽和の炭化水素基などの有機基が好ましい。これらの中でも、インク組成物の保存安定性および凝集物の発生を抑制する効果に優れている、2-ピロリドンを用いることがより好ましい。
[0115]
 1,2-アルカンジオール類としては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールなどが挙げられる。1,2-アルカンジオール類は、布帛に対するインク組成物の濡れ性を高めて、均一に濡らす作用に優れている。そのため、にじみを抑えた画像などを形成することができる。1,2-アルカンジオール類を添加する場合の含有量は、インク組成物の全質量に対して、1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。
[0116]
 多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、グリセリンなどが挙げられる。多価アルコール類をインク組成物に添加することよって、インクジェットヘッドの吐出ノズル内におけるインク組成物の乾燥や固化を抑制して、吐出ノズルの目詰まりや吐出不良などを低減することができる。多価アルコール類を添加する場合の含有量は、インク組成物の全質量に対して、2質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。なお、20℃では固体の多価アルコール類も、有機溶剤の多価アルコール類と同様な作用を有しており、同様に用いてもよい。20℃で固体の多価アルコール類としては、例えば、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
[0117]
 グリコールエーテル類としては、例えば、アルキレングリコールモノエーテルやアルキレングリコールジエーテルなどが挙げられる。
[0118]
 アルキレングリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルトリグリコール)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
[0119]
 アルキレングリコールジエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。
[0120]
 グリコールエーテル類をインク組成物に添加することによって、布帛に対する濡れ性や浸透速度を調節することができる。グリコールエーテル類を添加する場合の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.05質量%以上、6質量%以下であることが好ましい。
[0121]
 上述した有機溶剤は、複数種を混合して用いてもよい。その場合、インク組成物における有機溶剤の合計の含有量は、インク組成物の全質量に対し、0.2質量%以上、30質量%以下であり、好ましくは、0.4質量%以上、20質量%以下であり、より好ましくは、0.5質量%以上、15質量%以下であり、さらにより好ましくは、0.7質量%以上、10質量%以下である。有機溶剤の合計の含有量を上記の範囲内とすることにより、インク組成物の粘度の上昇の抑制、布帛における挙動(浸透および濡れ広がり)の調節、インクジェットヘッドの吐出不良低減などが可能となる。
[0122]
 [界面活性剤]
 インク組成物には、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、インク組成物の表面張力を低下させて、布帛に対する浸透性を高める機能を有している。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、これらのうち少なくとも1種が採用可能である。これらの界面活性剤は、上述した処理液と同様なものが採用可能である。
[0123]
 インク組成物に界面活性剤を添加することにより、起泡を抑えてインクジェットヘッドからの吐出安定性を確保すると共に、布帛に付着された処理液の成分と接触しやすくすることができる。
[0124]
 [キレート剤]
 インク組成物には、キレート剤を添加してもよい。キレート剤は、金属イオンなどを捕捉する機能を有している。そのため、インク組成物にキレート剤を用いると、インク組成物中に不純物として含まれたり、インク組成物が接触する部材から混入したりした金属イオンを捕捉して、金属イオンに由来する異物の発生を低減することができる。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン4酢酸塩(EDTA)、エチレンジアミンのニトリロ3酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、メタリン酸塩などが挙げられる。
[0125]
 [pH調整剤]
 インク組成物には、pH調整剤を添加してもよい。pH調整剤としては、特に限定されないが、例えば、有機塩基、無機塩基が挙げられる。これらのpH調整剤を用いて、インク組成物のpHを7.5以上、10.5以下の範囲に調整することが好ましい。インク組成物のpHを上記範囲とすることにより、インクジェットヘッドを含むインクジェット捺染装置などにおいて、撥インク膜などの部材の腐食を抑えることができる。
[0126]
 有機塩基としては、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリ-iso-プロパノールアミンなどのアルカノールアミン類が挙げられる。ここで、これらの有機塩基を用いてインク組成物のpHを上記の範囲内にするためには、比較的に多く添加する必要がある。具体的には、例えば、インク組成物の全質量に対する含有量で、およそ0.1質量%以上、3質量%以下である。
[0127]
 無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物である強塩基を用いることができる。これらの無機塩基を用いてインク組成物のpHを上記の範囲内にするためには、例えば、インク組成物の全質量に対する含有量で、およそ0.03質量%以上、0.15質量%以下とすればよい。このように、無機塩基は、有機塩基と比べて添加量が少量で足りること、有機塩基のような臭気がないこと、などから無機塩基を用いることがより好ましい。
[0128]
 [樹脂]
 インク組成物には、定着剤として樹脂を添加してもよい。樹脂を添加することによって、印捺物の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性がさらに向上すると共に、布帛の毛羽立ちを抑えることができる。樹脂としては、上述した処理液と同様な樹脂エマルションが採用可能である。樹脂エマルションの他に、水溶性樹脂を用いてもよい。水溶性樹脂としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどやこれらの塩が挙げられる。
[0129]
 樹脂の含有量は、固形分換算で、インク組成物の全質量に対して2質量%以上、25質量%以下であることが好ましい。4質量%以上、15質量%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは5質量%以上、11質量%以下である。樹脂の含有割合を上記範囲とすることによって、インクジェットヘッドのノズルの目詰まりの発生を低減すると共に、印捺物の洗濯堅牢性、摩擦堅牢性をより向上させることができる。
[0130]
 [その他の成分]
 インク組成物には、その他の成分として、酸化防止剤、処理液と同様な防腐剤や防かび剤、などの種々の添加剤を適宜用いてもよい。
[0131]
 [インク組成物の調製]
 本実施形態に係るインク組成物は、上述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じてろ過などを実施して不純物や異物などを除去することで調製することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネティックスターラーなどの撹拌装置を備えた容器に、材料(成分)を順次添加して撹拌、混合する方法が用いられる。ろ過方法としては、遠心ろ過、フィルターろ過などが採用できる。
[0132]
 [インク組成物の物性]
 インク組成物の粘度は20℃において、1.5mPa・s以上、15mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは、1.5mPa・s以上、10mPa・s以下であり、さらにより好ましくは、1.5mPa・s以上、7.0mPa・s以下である。インク組成物の粘度を上記の範囲内にすることにより、インクジェットヘッドからのインク組成物の吐出安定性および吐出量を確保することができる。また、上記の範囲から外れる粘度の場合は、インクジェットヘッドにおけるインク組成物の吐出条件やインクジェットヘッドの種類を変更することにより、インク組成物の吐出安定性を確保できる場合があり、例えば温度調整条件下であれば22mP・aまで吐出安定性を確保することができる場合がある。インク組成物の粘度は、上述した処理液と同様な方法で測定することが可能である。
[0133]
 インク組成物の25℃における表面張力は、例えば、10mN/m以上、40mN/m以下とすることが好ましく、より好ましくは、25mN/m以上、40mN/m以下である。インク組成物の25℃における表面張力を上記の範囲とすることにより、布帛に捺染を行う際に、布帛に対する濡れ性や、布帛に付着された処理液の成分との接触を促進することができる。インク組成物の粘度および表面張力は、上述した処理液と同様な方法で測定することが可能である。
[0134]
 <インクジェット捺染装置>
 [プリンター]
 次に、本実施形態に係るインクジェット捺染装置について、図1を参照して説明する。インクジェット捺染装置は、インク組成物の微小な液滴を吐出するインクジェット法によって、布帛に液滴を着弾させて捺染を行う装置である。図1は、実施形態に係るインクジェット捺染装置を示す概略斜視図である。本実施形態では、インクジェット捺染装置として、インクカートリッジがキャリッジに搭載されたオンキャリッジタイプのプリンターを例に挙げて説明する。なお、図1においては、各部材を認識可能な程度の大きさとするため、各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
[0135]
 本実施形態のプリンター1は、いわゆるシリアルプリンターと呼ばれているものである。シリアルプリンターとは、所定の方向に移動するキャリッジにインクジェットヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってインクジェットヘッドが移動しながら印刷を行うプリンターをいう。
[0136]
 プリンター1は、図1に示すように、インクジェットヘッド3、キャリッジ4、主走査機構5、プラテンローラー6、プリンター1全体の動作を制御する制御部(図示せず)を有している。キャリッジ4は、インクジェットヘッド3を搭載すると共に、インクジェットヘッド3に供給されるインク組成物を収納するインクカートリッジ7a,7b,7c,7d,7e,7fが着脱可能である。
[0137]
 主走査機構5は、キャリッジ4に接続されたタイミングベルト8、タイミングベルト8を駆動するモーター9、ガイド軸10を有している。ガイド軸10は、キャリッジ4の支持部材として、キャリッジ4の走査方向(主走査方向)に架設されている。キャリッジ4は、タイミングベルト8を介してモーター9によって駆動され、ガイド軸10に沿って往復移動が可能である。これにより、主走査機構5は、キャリッジ4を主走査方向に往復移動させる機能を有している。
[0138]
 プラテンローラー6は、捺染を行う布帛2を、上記主走査方向と直交する副走査方向(布帛2の長さ方向)に、搬送する機能を有している。そのため、布帛2は副走査方向に搬送される。また、インクジェットヘッド3が搭載されるキャリッジ4は、布帛2の幅方向と略一致する主走査方向に往復移動が可能であり、インクジェットヘッド3は布帛2に対して、主走査方向および副走査方向へ、相対的に走査が可能となっている。
[0139]
 インクカートリッジ7a,7b,7c,7d,7e,7fは、独立した6つのインクカートリッジである。インクカートリッジ7a,7b,7c,7d,7e,7fには、本実施形態のインク組成物を収納することができる。これらのインクカートリッジには、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ホワイト、オレンジなどの色を呈するインク組成物が個別に収納され、任意に組み合わせて用いることが可能である。図1では、インクカートリッジの数を6個としているが、これに限定されるものではない。インクカートリッジ7a,7b,7c,7d,7e,7fの底部には、各インクカートリッジに収納されたインク組成物をインクジェットヘッド3へ供給するための供給口(図示せず)が設けられている。
[0140]
 インクジェットヘッド3は、布帛2と対向する面にノズル面(図示せず)を有している。ノズル面には、複数のノズル(図示せず)からなるノズル列(図示せず)が各色インク組成物に対応して個別に配置されている。各色インク組成物は、各インクカートリッジからインクジェットヘッド3に供給され、インクジェットヘッド3内のアクチュエーター(図示せず)によって、ノズルから液滴として吐出される。吐出されたインク組成物の液滴は布帛2に着弾し、画像、テキスト、模様、色彩などが布帛2の捺染領域に形成される。
[0141]
 ここで、インクジェットヘッド3では、アクチュエーター(駆動手段)として圧電素子を用いているが、この方式に限定されない。例えば、アクチュエーターとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、加熱によって生じる気泡によってインク組成物を液滴として吐出させる電気熱変換素子を用いてもよい。
[0142]
 なお、本実施形態では、インクジェット捺染装置としてオンキャリッジタイプのプリンター1を例に挙げたが、これに限定されない。例えば、インクカートリッジなどのインク組成物収納容器が、キャリッジに搭載されない、オフキャリッジタイプのプリンターであってもよい。また、本発明に用いられるインクジェット捺染装置は、上述したシリアルプリンターに限定されるものではなく、インクジェットヘッドが布帛2の幅と同等以上に広く形成され、インクジェットヘッドが移動せずに捺染を行うラインヘッドプリンターであってもよい。
[0143]
 [布帛]
 本実施形態に係る布帛2の形態としては、例えば、布地、衣類やその他の服飾品などが挙げられる。布地には、織物、編物、不織布などが含まれる。衣類やその他の服飾品には、縫製後のTシャツ、ハンカチ、スカーフ、タオル、手提げ袋、布製のバッグ、カーテン、シーツ、ベッドカバー、壁紙などのファーニチャー類の他、縫製前の部品としての裁断前後の布地なども含まれる。これらの形態としては、ロール状に巻かれた長尺のもの、所定の大きさに切断されたもの、製品形状のものなどが挙げられる。なお、布帛2は、本実施形態の処理液を付着して得られればよく、布帛2として予め処理液を付与したものを用いてもよい。
[0144]
 布帛2の形成材料としては、綿、絹、麻、羊毛などの天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ乳酸などの合成繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。
[0145]
 布帛2の目付は、1.0oz(オンス)以上、10.0oz以下、好ましくは、2.0oz以上、9.0oz以下、より好ましくは、3.0oz以上、8.0oz以下、さらにより好ましくは、4.0oz以上、7.0oz以下である。本実施形態の処理液では、上記範囲の目付の布帛2に対して、カチオン性化合物などの処理液の成分が適切に配置されるため、従来よりも発色性を向上させることができる。また、目付けの異なる複数種の布帛に用いることもできる。
[0146]
 布帛2としては、染料によって予め着色された綿布帛を用いることが好ましい。本実施形態の処理液では、発色性を確保した上で、前処理痕の発生を抑えることができるため、衣類やその他の服飾品の中でも、予め着色された綿製のTシャツなどに、好適に用いることができる。すなわち、生地が着色されていても、発色性がよく、前処理痕の発生を抑えた捺染が可能であることから、製品としての印捺物の品質や商品価値を、従来よりも高めることができる。
[0147]
 布帛2が予め着色される染料としては、例えば、酸性染料、塩基性染料などの水溶性染料、分散剤(界面活性剤)を併用する分散染料、反応性染料などが挙げられる。布帛2の綿布帛を用いる場合には、綿の染色に適した反応性染料を用いることが好ましい。
[0148]
 反応性染料としては、分子中にトリアジン構造を有するトリアジン化合物を用いることが好ましい。トリアジン構造を有する反応性染料では、特に綿などの植物性繊維において、染着の状態が安定化する。その一方で、トリアジン化合物は、多価金属イオンなどのカチオン性化合物と反応して前処理痕の一因となる場合がある。特に、黒色や赤色に濃く染色された綿布帛において、前処理痕の発生が顕著となる傾向がある。
[0149]
 本実施形態の処理液は、前処理痕の発生を抑える効果を有しているため、トリアジン構造を有する反応性染料にて染色された布帛へ好適に用いることができる。すなわち、トリアジン構造を有する反応性染料で染色されることにより、布帛2中に、トリアジン化合物が含まれていることが好ましい。
[0150]
 トリアジン構造を有する分散染料の中でも、染着の状態がより安定となる、モノクロロトリアジン染料を用いることがより好ましい。モノクロロトリアジン染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.リアクティブブルー15、15:1、49、C.I.リアクティブレッド3、3:1、24、31、C.I.リアクティブイエロー2、95、C.I.リアクティブブラック8、39、C.I.リアクティブオレンジ12、13、C.I.リアクティブバイオレット1などが挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を用いることが可能である。
[0151]
 以上に挙げた染料の他に、反応性染料としては、特に限定されないが、例えば、C.I.リアクティブブルー2、3、5、7、13、14、21、25、26、38、39、40、41、46、50、69、72、109、120、143、176、C.I.リアクティブレッド2、4、7、12、13、14、15、16、29、32、33、43、45、46、55、58、59、79、106、111、124、218、C.I.リアクティブイエロー3、6、7、12、15、18、22、37、42、57、69、76、81、86、102、125、135、181、C.I.リアクティブブラック1、3、4、5、10、12、13、14、31、34、35、Huntsmanブラック、C.I.リアクティブオレンジ2、5、20、99、C.I.リアクティブバイオレット1、2、33、C.I.リアクティブグリーン5、8、C.I.リアクティブブラウン1、2、7、8、9、11、14などが挙げられ、この群から選ばれる少なくとも1種を用いることが可能である。
[0152]
 布帛2が染料によって着色される方法としては、布帛2の形成材料や形態などに応じて、公知の方法が採用可能である。
[0153]
 <インクジェット捺染方法>
 次に、本実施形態に係るインクジェット捺染方法について説明する。本実施形態のインクジェット捺染方法は、上述したプリンター1(図1参照)を用いて、インクジェット法によりインク組成物の液滴を吐出し、布帛2に塗布することで画像などを形成して捺染を行う方法である。
[0154]
 本実施形態に係るインクジェット捺染方法は、本実施形態の処理液を、布帛2に付着させる工程S1を備えている。また、布帛2における処理液が付着した領域へ、インク組成物としての顔料捺染インクを、インクジェット法にて付着させる工程S3を備えている。
[0155]
 工程S1では、布帛2の少なくとも一部の領域に、本実施形態の処理液を付与する。処理液を布帛2に付与する塗布方法としては、例えば、処理液中に布帛2を浸漬させる方法(浸漬塗布)、処理液を刷毛、ローラー、ヘラ、ロールコーターなどを用いて付与する方法(ローラー塗布)、処理液をスプレー装置などにて噴射する方法(スプレー塗布)、処理液をインクジェット法にて噴射する方法(インクジェット塗布)などが挙げられ、布帛2の形態や処理液の物性などに応じて、いずれの塗布方法を採用してもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。上記の塗布方法の中でも、装置の構成が簡便で、処理液の付与が迅速に行える、浸漬塗布、ローラー塗布、スプレー塗布などを用いることが好ましい。
[0156]
 工程S1では、布帛2に対する処理液の付着量が、布帛2の単位面積当たりで、100mg/inch 2以上、3000mg/inch 2以下であることが好ましく、より好ましくは、130mg/inch 2以上、15000mg/inch 2以下であり、さらにより好ましくは、193mg/inch 2以上、500mg/inch 2以下である。処理液の付着量を、0.02g/cm 2(129mg/inch 2)以上とすることにより、布帛2に対して処理液が比較的均一に付着されるため、後工程で顔料捺染インクを捺染した際に色ムラなどの発生を低減することができる。また、処理液の付着量を、0.5g/cm 2(3226mg/inch 2)以下とすることにより、顔料捺染インクを捺染した際に、にじみの発生を低減することができる。
[0157]
 工程S1では、布帛2に対する、処理液に含まれるカチオン性化合物の付着量が、布帛2の単位面積当たりで、7.5μmol/cm 2以上、40μmol/cm 2以下であることが好ましく、より好ましくは、12μmol/cm 2以上、30μmol/cm 2以下である。カチオン性化合物の付着量を、10μmol/cm 2以上とすることにより、後工程で顔料捺染インクを捺染した際に、顔料の発色性が向上する。また、カチオン性化合物の付着量を、40μmol/cm 2以下とすることにより、印捺物の洗濯堅牢性が向上する。
[0158]
 本実施形態のインクジェット捺染方法は、工程S1の後に、布帛2に付与された処理液を乾燥させる工程S2を備えていてもよい。処理液の乾燥には、自然乾燥または加熱による乾燥(加熱乾燥)を用いる。乾燥時間の短縮が可能な、加熱乾燥を採用することが好ましい。加熱乾燥における加熱方法としては、特に限定されないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、サーモフィックス法などが挙げられる。加熱の熱源は、特に限定されないが、例えば、赤外線ランプなどを用いることができる。
[0159]
 加熱乾燥における加熱温度は、処理液に含まれる水分などの溶媒の揮発に加えて、処理液に含まれる樹脂微粒子(エマルジョン)が加熱による溶融粘度の低下を生じて布帛繊維に対してアンカー効果による結着力を発現する温度が望ましい。具体的には、特に限定されないが、約100℃以上、約200℃以下である。ここで、本工程における加熱温度とは、布帛2に付着された処理液の表面温度を指し、例えば、非接触式温度計IT2-80(商品名、キーエンス社)にて測定可能である。加熱を施す加熱時間は、特に限定されないが、例えば、30秒以上、20分以下である。
[0160]
 本実施形態の処理液はベタインを含有しているため、カチオン性化合物がベタインに捕捉されている。そのため、工程S1および工程S2において、処理液と布帛2とが接触しても、カチオン性化合物と布帛2に含まれる成分との反応が起きにくくなり、処理痕の発生が抑えられる。
[0161]
 工程S3では、布帛2における処理液が付着した領域の少なくとも一部へ、上述したように、インクジェットヘッド3(図1参照)から吐出された顔料捺染インクの液滴を着弾させる。このとき、顔料捺染インクに含まれる顔料などの成分と、ベタインの捕捉から解放されたカチオン性化合物とが反応して、顔料などの成分が布帛2の表面付近で凝集する。そのため、顔料が布帛2の内部方向に潜り込みにくくなり、カチオン性化合物を用いない場合と比べて、顔料の発色性が向上する。
[0162]
 捺染方法としてインクジェット法を用いることにより、スクリーン捺染などのアナログ捺染で必要な版が不要となるなど、多品種少量生産への対応が容易になると共に、高精細な画像、テキスト、模様、色彩などを形成することができる。
[0163]
 工程S3では、布帛2に対する顔料捺染インクの付着量が、布帛2の単位面積当たりで、1.5mg/cm 2以上、6mg/cm 2以下であることが好ましく、より好ましくは、2mg/cm 2以上、5mg/cm 2以下である。顔料捺染インクの付着量が、上記の範囲にあることにより、捺染によって形成される画像などの発色性が向上すると共に、布帛2に付着した顔料捺染インクの乾燥性が確保されて、画像などのにじみの発生が低減される。なお、予め着色された布帛に対して、まず白色インク組成物などで下地を形成する場合には、上記の付着量を超えて白色インク組成物を付着させることが好ましい。
[0164]
 工程S3の後工程として、布帛2に付着された顔料捺染インクを加熱する工程S4を備えていてもよい。工程S4は、上述した工程S2と同様な加熱方法が採用可能である。加熱温度は、顔料捺染インクに樹脂が含まれる場合に、該樹脂が融着され、かつ水分などの媒体が揮発すればよい。具体的には、特に限定されないが、約100℃以上、約200℃以下である。ここで、本工程における加熱温度とは、布帛2に形成された画像などの表面温度を指す。加熱温度は、上述した工程S2と同様な方法にて測定が可能である。加熱を施す加熱時間は、特に限定されないが、例えば、30秒以上、20分以下である。
[0165]
 工程S4の後に、捺染を行った布帛2を水洗、乾燥する工程S5を備えていてもよい。水洗においては、必要に応じ、ソーピング処理として、布帛2に定着されなかった顔料捺染インクなどの成分を、熱石けん液などを用いて洗い流してもよい。以上の工程により、印捺物が製造される。
[0166]
 なお、本実施形態では処理液の付与(工程S1)と、捺染(工程S3)とを一連の工程として行ったが、これに限定されない。例えば、本発明の処理液は、布帛2に付与して前処理を施せば、布帛2を用いて捺染を行うまでの間に、保管、運搬などを行ってもよい。
[0167]
 以上に述べたように、本実施形態に係る処理液、およびインクジェット捺染方法によれば、以下の効果を得ることができる。
[0168]
 本実施形態の処理液によれば、処理液を付着させた布帛2において、前処理痕の発生を抑えることができる。詳しくは、ベタインを含有することから、多価金属イオンなどのカチオン性化合物と、布帛2に含まれる成分との反応が抑制される。これは、カチオン性化合物がベタインに捕捉されて、布帛2に含まれる成分との反応が起きにくくなるためである。ベタインに捕捉されたカチオン性化合物は、前処理後に色材にて捺染を行うとベタインの捕捉から解放されて、顔料などとの反応が進行する。そのため、顔料などが凝集することによって発色性が向上する。したがって、発色性を確保し、従来よりも前処理痕の発生を抑えた処理液を提供することができる。また、捺染を行って作製された製品(印捺物)の外観品質を向上させることができる。
[0169]
 色材に顔料を用いて顔料捺染とすることから、色材の発色性をさらに向上させることができる。また、染料と比べて、染着工程や洗浄工程などの工程を簡略化することができる。さらには、染料と比べて、適用可能な繊維の種類が比較的に限定されにくく、広範な種類の繊維に対して捺染を行うことができる。
[0170]
 布帛2として、染料で着色された綿布帛を用いることから、発色性を確保した上で、前処理痕の発生が抑えられる。そのため、衣類やその他の服飾品の中でも、予め着色されたTシャツなどの綿布帛に、好適に用いることができる。すなわち、生地が着色されていても、発色がよく、前処理痕の発生を抑えた捺染が可能であることから、製品としての印捺物の品質や商品価値を、従来よりも高めることができる。
[0171]
 布帛2の着色に反応性染料などのトリアジン化合物を用いることにより、綿などの植物性繊維において、染着の状態を安定化させることができる。また、トリアジン化合物を用いても、処理液がベタインを含むため、トリアジン構造とカチオン性化合物との反応が抑制されて、前処理痕の発生を抑えることができる。
[0172]
 カチオン性化合物として多価金属塩のカルシウム塩を用いることにより、前処理痕の発生をいっそう抑えると共に、顔料の発色性がさらに向上して、綿布帛などに対してより好適に用いることができる。
[0173]
 処理液は、HLB値が13以上の界面活性剤を含有することから、布帛2に付着させた際に、布帛2に対する浸透と濡れ広がりとを調節することができる。また、界面活性剤の含有量が、処理液の全質量に対し、0.3質量%以下であることから、処理液の表面張力が過度に低下することを抑え、布帛に付着させた際に、処理液が布帛の表面付近に保持されやすくなる。これにより、処理液の機能を発現しやすくすることができる。
[0174]
 本実施形態のインクジェット捺染方法によれば、発色性を確保し、従来よりも前処理痕の発生を抑えたインクジェット捺染方法を提供することができる。
[0175]
 インクジェット法を用いることから、アナログ捺染では必要な版が不要となるなど、多品種少量生産への対応が容易になると共に、高精細な画像などを形成することができる。
[0176]
 捺染に用いると、発色性を確保し、従来よりも前処理痕の発生を抑える布帛2を提供することができる。すなわち、捺染を行って作製された製品の外観品質を向上させることができる。
[0177]
 以下に、本実施形態の処理液について、前処理痕、色材の発色性を評価した実施例と比較例とを示し、本実施形態の効果をより具体的に説明する。
[0178]
 <処理液の調製>
 実施例1から実施例44、および比較例1から比較例5の各処理液の組成を、表1、表2、表3に示した。表1から表3において、表中の数値の単位は質量%であり、多価金属塩、カルニチン、トリメチルグリシン、γ-ブチロベタイン、ノニオン性界面活性剤以外は、有効成分(固形分)の含有割合で表記している。イオン交換水は、処理液の全質量が100.0質量%となるように調整して添加した。なお、表中に数値の記載がない、「-」表記の欄は、含有しないことを意味する。
[0179]
[表1]


[0180]
[表2]


[0181]
[表3]


[0182]
 ここで、実施例1の処理液では、多価金属塩(カチオン性化合物)として硝酸カルシウム4水和物を16.0質量%と、ベタインとしてカルニチンを12.8質量%と、を用いた。樹脂エマルションとしては、スチレン-アクリル系樹脂のモビニール(登録商標)966A(日合成化学社)を2.7質量%用いた。ノニオン性界面活性剤として、アセチレングリコール系界面活性剤のサーフィノール(登録商標)485(商品名、Air Products and Chemicals, Inc.社、HLB値17)を0.2質量%用いた。
[0183]
 実施例2から実施例7の処理液は、実施例1の処理液の組成に対して、カルニチン(ベタイン)の添加量を5.0質量%から40.0質量%まで変えた組成である。
[0184]
 実施例8の処理液は、実施例4の処理液の組成に対して、ベタインをトリメチルグリシン(添加量5.0質量%)に変更した組成である。
[0185]
 実施例9から実施例11の処理液は、実施例8の処理液の組成に対して、トリメチルグリシン(ベタイン)の添加量を10.0質量%から40.0質量%まで変えた組成である。
[0186]
 実施例12の処理液は、実施例4の処理液の組成に対して、ベタインをγ-ブチロベタイン(添加量5.0質量%)に変更した組成である。
[0187]
 実施例13から実施例15の処理液は、実施例12の処理液の組成に対して、γ-ブチロベタイン(ベタイン)の添加量を10.0質量%から40.0質量%まで変えた組成である。
[0188]
 実施例16の処理液は、実施例5の処理液の組成に対して、ベタインを市販品のアンヒトール(登録商標)20BS(商品名、花王社、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)(添加量10質量%)に変更した組成である。
[0189]
 実施例17の処理液は、実施例4の処理液の組成に対して、多価金属塩(カチオン性化合物)を塩化カルシウム2水和物(添加量16.0質量%)に変更した組成である。
[0190]
 実施例18および実施例19の処理液は、実施例17の処理液の組成に対して、カルニチン(ベタイン)の添加量を10.0質量%または20.0質量%とした組成である。
[0191]
 実施例20の処理液は、実施例17の処理液の組成に対して、ベタインをトリメチルグリシンに変更し、添加量を4.8質量%とした組成である。
[0192]
 実施例21から実施例26の処理液は、実施例20の処理液の組成に対して、トリメチルグリシン(ベタイン)の添加量を5.0質量%から32.0質量%まで変えた組成である。
[0193]
 実施例27の処理液は、実施例17の処理液の組成に対して、ベタインをγ-ブチロベタイン(添加量5.0質量%)に変更した組成である。
[0194]
 実施例28および実施例29の処理液は、実施例27の処理液の組成に対して、カルニチン(ベタイン)の添加量を10.0質量%または20.0質量%とした組成である。
[0195]
 実施例30の処理液は、実施例18の処理液の組成に対して、多価金属塩(カチオン性化合物)を硫酸マグネシウム7水和物(添加量16.0質量%)に変更した組成である。
[0196]
 実施例31の処理液は、実施例30の処理液の組成に対して、ベタインをトリメチルグリシン(添加量10.0質量%)に変更した組成である。
[0197]
 実施例32の処理液は、実施例30の処理液の組成に対して、ベタインをγ-ブチロベタイン(添加量10.0質量%)に変更した組成である。
[0198]
 実施例33の処理液は、実施例25の処理液の組成に対して、カチオン性化合物をカチオン性樹脂の市販品のユニセンスKHE104L(商品名、センカ社、ジメチルアミン-エピクロルヒドリン縮合物)(添加量16.0質量%)に変更した組成である。
[0199]
 実施例34の処理液は、実施例25の処理液の組成に対して、カチオン性化合物をカチオン性界面活性剤の市販品のコータミン(登録商標)-24P(商品名、花王社、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド)(添加量16.0質量%)に変更した組成である。
[0200]
 実施例35の処理液は、実施例9の処理液の組成に対して、サーフィノール485(ノニオン性界面活性剤)の添加量を0.5質量%に増量した組成である。
[0201]
 実施例36の処理液は、実施例9の処理液の組成に対して、サーフィノール485(ノニオン性界面活性剤)を添加しない組成である。
[0202]
 実施例37の処理液は、実施例1の処理液の組成に対して、モビニール966A(樹脂エマルション)を添加せず、かつ、カルニチン(ベタイン)の添加量を4.8質量%とした組成である。
[0203]
 実施例38の処理液は、実施例37の処理液の組成に対して、カルニチン(ベタイン)の添加量を10.0質量%とした組成である。
[0204]
 実施例39の処理液は、実施例35の処理液の組成に対して、モビニール966A(樹脂エマルション)の添加量を1.0質量%に減量した組成である。
[0205]
 実施例40の処理液は、実施例35の処理液の組成に対して、モビニール966A(樹脂エマルション)の添加量を10.0質量%に増量した組成である。
[0206]
 実施例41の処理液は、実施例9の処理液の組成に対して、多価金属塩(カチオン性化合物)を塩化カルシウム2水和物に変更し、添加量を5.0質量%に減量した組成である。
[0207]
 実施例42から実施例44の処理液は、実施例41の処理液の組成に対して、塩化カルシウム2水和物の添加量を10.0質量%から20.0質量%まで変えた組成である。
[0208]
 比較例1の処理液は、実施例1の処理液の組成に対して、ベタインを添加しない組成である。
[0209]
 比較例2の処理液は、比較例1の処理液の組成に対して、多価金属塩を塩化カルシウム2水和物(添加量16質量%)に変更した組成である。
[0210]
 比較例3の処理液は、比較例1の処理液の組成に対して、カチオン性化合物をカチオン性樹脂のユニセンスKHE104L(添加量16.0質量%)に変更し、樹脂エマルションを添加しない組成である。
[0211]
 比較例4の処理液は、比較例1の処理液の組成に対して、サーフィノール485(ノニオン性界面活性剤)を添加しない組成である。
[0212]
 比較例5の処理液は、比較例4の処理液の組成に対して、モビニール966A(樹脂エマルション)を添加しない組成である。
[0213]
 比較例6の処理液は、実施例9の処理液の組成に対して、カチオン性化合物(塩化カルシウム2水和物)を添加しない組成である。
[0214]
 表1から表3に示した組成に従って、各実施例および各比較例の処理液を調製した。具体的には、各成分を容器に入れ、マグネティックスターラーを用いて2時間混合、撹拌を行った。その後、孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルターにてろ過し、各実施例および各比較例の処理液(以下、「各処理液」ともいう。)を得た。
[0215]
 <顔料捺染インクの調製>
 処理液の評価用に用いる白色の顔料捺染インクW1の組成を、表4に示した。表中の数値の単位は質量%である。イオン交換水は、顔料捺染インクW1の全質量が100質量%となるように調整して添加した。
[0216]
[表4]


[0217]
 ここで、顔料捺染インクW1では、白色顔料として二酸化チタン(C.I.ピグメントホワイト6)を採用し、二酸化チタンスラリー NanoTek(R)Slurry(商品名、シーアイ化成社、二酸化チタン固形分20質量%、平均粒子径250nm)を添加した。表4では、二酸化チタンスラリーとしての含有量を表記しており、顔料捺染インクW1における二酸化チタンの固形分の含有量は、9質量%となる。
[0218]
 樹脂としては、ウレタン系樹脂エマルションのタケラック(登録商標)W-6021(商品名、三井化学ポリウレタン社、固形分30質量%)を用いた。表4では、樹脂エマルションの分散媒体(水)を含めた含有量にて表記しており、顔料捺染インクW1における樹脂の含有量は、9質量%となる。また、シリコーン系界面活性剤(ノニオン性界面活性剤)として、BYK-348(商品名、BYK社)を用いた。その他、化合物名で記載した成分は、試薬として市販されているものを使用した。
[0219]
 表4に示した顔料捺染インクW1の組成に従って、各成分を容器に入れ、マグネティックスターラーを用いて2時間混合、撹拌を行った。次いで、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルを用いて、1時間、分散処理を施した。その後、孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルターにてろ過し、顔料捺染インクW1を得た。
[0220]
 <評価用布帛の作製>
 [布帛]
 評価用の着色された綿布帛として、以下の6種を用いた。TシャツA、TシャツB、TシャツCは、濃色に着色された、所謂濃色Tシャツであり、TシャツD、TシャツE、TシャツFは、淡色に着色された、所謂淡色Tシャツである。なお、いずれのTシャツも布帛中に生地染色に用いられたトリアジン化合物が存在していた。
 TシャツA(黒色):トムスヘビーウェイトTシャツ 00085-CVT 005ブラック(プリントスター社、綿100%)
 TシャツB(赤色):トムスヘビーウェイトTシャツ 00085-CVT 010レッド(プリントスター社、綿100%)
 TシャツC(青色):トムスヘビーウェイトTシャツ 00085-CVT 032ロイヤルブルー(プリントスター社、綿100%)
 TシャツD(アッシュ):トムスヘビーウェイトTシャツ 00085-CVT 044アッシュ(プリントスター社、綿100%)
 TシャツE(ナチュラル):トムスヘビーウェイトTシャツ 00085-CVT 106ナチュラル(プリントスター社、綿100%)
 TシャツF(ピンク):トムスヘビーウェイトTシャツ 00085-CVT 011ピンク(プリントスター社、綿100%)
[0221]
 [処理液の塗布]
 実施例および比較例の処理液を塗布した。塗布方法としてはローラー塗布を採用し、処理液をスポンジローラーに充分含浸させた。次いで、該スポンジローラーを、TシャツAの胸の領域(片面)のおもて面に対して、左右方向、およびそれと略直交する上下方向へそれぞれ3から4回ころがし、付着量がなるべく均一となるように処理液を塗布した。この操作を、TシャツB、TシャツC、TシャツD、TシャツE、TシャツFにも行った。
[0222]
 ここで、各Tシャツにおける処理液の付着量は、A4サイズの面積当たりで、約20gであった。各処理液を塗布した各Tシャツに、ヒートプレス機(アサヒ繊維機械株式会社製、AF-54TEN、下ゴテ寸法500×400mm)を用いて170℃で45秒間の加熱乾燥を施した。このとき、ヒートプレスのプレス力は、4.5kNとした。
[0223]
 [捺染]
 次に、インクジェットプリンターSC-F200(商品名、セイコーエプソン社)を用いたインクジェット法にて、各Tシャツの処理液を付着させた領域へ、顔料捺染インクW1で捺染を行った。このとき、該インクジェットプリンターの捺染条件は、1440×1440dpi(dots per inch)、顔料捺染インクW1の付着量を200mg/inch 2とした。その後、ヒートプレス機(アサヒ繊維機械株式会社製、AF-54TEN、下ゴテ寸法500×400mm)を用い、170℃で45秒間(プレス力4.5kN)の加熱乾燥を施した。
[0224]
 <評価>
 各処理液を塗布して捺染を施したTシャツAからTシャツFについて、以下の評価を実施して、その結果を表5、表6、表7に記載した。
[0225]
 [前処理痕]
 前処理痕の指標として、△Eを評価した。具体的には、各Tシャツについて、処理液を付着させなかった領域αの色相(L*α、a*α、b*α)と、処理液を付着させたが顔料捺染インクW1で捺染を施さなかった領域βの色相(L*β、a*β、b*β)とについて、測色機Spectrolino(グレタグ社)を用いて測定し、△E(デルタE)を計算して、以下の基準に従って評価した。なお、△Eの計算には下記式(1)を用いた。前処理痕の評価結果が、c評価以上である場合、本発明の効果が得られているということができる。
 △E=((L*α-L*β) 2+(a*α-a*β) 2+(b*α-b*β) 21/2  
・・・ (1)
 s:△E≦1である。
 a:1<△E≦2である。
 b:2<△E≦3である。
 c:3<△E≦4である。
 d:4<△Eである。
[0226]
 [発色性]
 各Tシャツの顔料捺染インクW1で捺染を施した領域γについて、白色顔料の発色性(白色度)の指標として、色彩測定を行った。具体的には、測色機Spectrolino(グレタグ社)を用いて、L*を測定し、以下の基準に従って評価した。なお、TシャツA,B,Cの3水準の平均値を濃色TシャツのL*とし、TシャツD,E,Fの3水準の平均値を淡色TシャツのL*として、それぞれ採用した。発色性の評価結果が、c評価以上である場合、本発明の効果が得られているということができる。
 a:L*が、85以上である。
 b:L*が、80以上、85未満である。
 c:L*が、75以上、80未満である。
 d:L*が、75未満である。
[0227]
 [裏抜け]
 Tシャツの表裏を裏返して、領域γの裏側に白色顔料がしみ出てきている状態、すなわち裏抜けの発生の程度を目視で観察し、以下の基準に従って評価した。
 a:白色顔料のしみ出し(裏抜け)が見えない。
 b:白色顔料のしみ出し(裏抜け)が殆ど見えない。(しみ出し面積が領域γの3%以下)
 c:白色顔料のしみ出し(裏抜け)が少し見える。(しみ出し面積が領域γの3%超5%以下)
 d:白色顔料のしみ出し(裏抜け)が顕著に見える。(しみ出し面積が領域γの5%超)
[0228]
[表5]


[0229]
[表6]


[0230]
[表7]


[0231]
 表5から表7に示したように、実施例における前処理痕の評価結果は、濃色Tシャツおよび淡色Tシャツのいずれにおいても、「可」レベルに相当するc評価以上となり、「不適」レベルに相当するd評価はなかった。特に、TシャツB(赤色)において、カチオン性化合物が塩化カルシウム2水和物であって、その含有量を5.0質量%以上、16.0質量%以下とし、かつ、ベタインがトリメチルグリシンであって、その含有量を10.0質量%とした、実施例9、25、41、42、43では、「特に優秀」レベルに相当するs評価となった。これらにより、実施例では前処理痕の発生が抑えられることが示された。
[0232]
 実施例における発色性の評価結果は、全ての実施例において、「可」レベルに相当するc評価以上となり、発色性が向上することが示された。また、裏抜けの評価結果は、ベタインとしてカルニチン、トリメチルグリシン、γ-ブチロベタインのいずれかを用い、添加量を40.0質量%とした実施例、およびベタインとしてアンヒトール20BSを用いた実施例以外で、「可」レベルに相当するc評価以上となり、含有量およびベタインの種類によって裏抜けが向上することが示された。
[0233]
 一方、比較例1から比較例5の前処理痕の評価結果は、1種類以上の濃色Tシャツにおいて、「不適」レベルに相当するd評価となり、実施例と比べて劣ることが分かった。これは、ベタインを含有していないことに起因している。
[0234]
 比較例の発色性の評価結果は、樹脂エマルションを添加していない実施例3および実施例5と、カチオン性化合物を含有しない比較例6と、で「不適」レベルに相当するd評価となり、発色性の確保が難しいことが分かった。また、裏抜けの評価結果は、濃色Tシャツおよび淡色Tシャツのいずれにおいても、比較例3、比較例5、および比較例6で「不適」レベルに相当するd評価となり、実施例と比べて劣ることが分かった。

符号の説明

[0235]
 1…プリンター、2…布帛、3…インクジェットヘッド、4…キャリッジ、5…主走査機構、6…プラテンローラー、7a,7b,7c,7d,7e,7f…インクカートリッジ、8…タイミングベルト、9…モーター、10…ガイド軸。

請求の範囲

[請求項1]
 捺染において、布帛に付着して用いる処理液組成物であって、
 カチオン性化合物と、
 ベタインと、
 水と、を含有する処理液組成物。
[請求項2]
 インクジェット顔料捺染に用いる、請求項1に記載の処理液組成物。
[請求項3]
 前記ベタインの含有量が、前記カチオン性化合物の含有量に対し、質量比で0.2以上である請求項1または請求項2に記載の処理液組成物。
[請求項4]
 前記布帛が、染料によって着色された綿布帛である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の処理液組成物。
[請求項5]
 前記ベタインが、カルニチン、トリメチルグリシン、γ-ブチロベタインから選択される1種以上である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の処理液組成物。
[請求項6]
 前記ベタインの含有量が、前記カチオン性化合物の含有量に対し、質量比で0.6以上である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の処理液組成物。
[請求項7]
 前記ベタインの含有量が、前記カチオン性化合物の含有量に対し、質量比で2.0以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の処理液組成物。
[請求項8]
 前記カチオン性化合物が、多価金属塩である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の処理液組成物。
[請求項9]
 前記カチオン性化合物が、カルシウム塩である請求項8に記載の処理液組成物。
[請求項10]
 前記布帛中に、トリアジン化合物が含まれている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の処理液組成物。
[請求項11]
 さらに界面活性剤を含有し、前記界面活性剤のHLB値が13以上である、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の処理液組成物。
[請求項12]
 前記界面活性剤の含有量が、処理液組成物の全質量に対し、0.3質量%以下である、請求項11に記載の処理液組成物。
[請求項13]
 請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の処理液組成物を、布帛に付着させる工程を備えたインクジェット捺染方法。
[請求項14]
 前記布帛における前記処理液組成物が付着した領域へ、顔料捺染インクをインクジェット法にて付着させる工程を備えた、請求項13に記載のインクジェット捺染方法。
[請求項15]
 請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の処理液組成物を付着して得られる布帛。

図面

[ 図 1]