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1. (WO2016143764) REMPLISSAGE DESTINÉ À UN ÉVENT DE FILTRE ET DISPOSITIF D'ÉVENT DE FILTRE

明 細 書

発明の名称

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005   0006  

課題を解決するための手段

0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036  

実施例

0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075  

産業上の利用可能性

0076  

符号の説明

0077  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6  

図面

1   2   3   4  

明 細 書

発明の名称 : フィルタベント用充填剤、及びフィルタベント装置

技術分野

[0001]
 本発明は、L型ゼオライトを造粒してなるフィルタベント用充填剤、及び放射性ヨウ素を処理するフィルタベント装置に関する。

背景技術

[0002]
 従来、原子力発電所等の原子力施設には、放射性ヨウ素を除去するためのフィルタが設置されている。原子力施設で発生した放射性ヨウ素を含有する蒸気は、上記フィルタに通流されて放射性ヨウ素を吸着・除去した後、原子力施設外に排出される。この工程は非常に重要であるため、フィルタによる放射性ヨウ素の吸着効果について研究・開発が行われており、そのようなフィルタとして、ゼオライトを利用した放射性ヨウ素吸着剤が幾つか開発されている。その一つとして、アルミナに対するシリカのモル比が15以上であるゼオライトに銀を担持させた放射性ヨウ素吸着剤があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1は、銀の担持量を少量としながら、放射性ヨウ素除去効率が向上するとされている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開昭60-225638号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 特許文献1に開示されている吸着剤は、ゼオライトの結晶構造を利用したものであり、孔のサイズによる分子篩効果を利用して放射性ヨウ素を選択的に吸着させている。この吸着剤は、放射性ヨウ素の吸着について一定の効果があると考えられる。しかし、放射性ヨウ素を確実に外部に漏洩させることがないよう、より高性能な放射性ヨウ素吸着剤を開発することが求められている。
[0005]
 また、原子力施設において、原子炉事故等の異常事態(シビアアクシデント)が発生すると、放射性ヨウ素を含む大量の放射性物質が広範囲に飛散するため、原子炉事故は未然に防止しなければならないが、万が一事故が発生した場合は、速やかに対処しなければならない。そこで、原子炉に異常事態が発生した場合、原子炉の内部圧力を減圧するフィルタベントを原子炉建屋に設置する計画が進められている。ところが、上記の特許文献1に記載の放射性ヨウ素吸着剤は、フィルタベント等が必要な異常事態に対応することは想定していない。また、原子炉事故は、原子炉内で発生する水素が原因の一つとされているが、この水素に対処することについても、特許文献1には何ら記載されていない。異常事態が発生した場合にも使用可能な放射性ヨウ素吸着剤について、今後さらなる研究開発が必要である。
[0006]
 本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、従来よりも効果的に放射性ヨウ素を吸着し得るシビアアクシデントにも対応可能なフィルタベント用充填剤、及びフィルタベント装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0007]
 上記課題を解決するための本発明に係るフィルタベント用充填剤の特徴構成は、
 L型ゼオライトを造粒してなるフィルタベント用充填剤であって、
 前記L型ゼオライトが有するイオン交換サイトの少なくとも一部が銀で置換されていることにある。
[0008]
 ゼオライトには多様な種類のものが存在し、その結晶構造は夫々異なるが、結晶構造ごとに均一な細孔径を有するという特性がある。この特徴的な細孔径により、ゼオライトは分子篩(モレキュラーシーブ)や分子の選択的な吸着等に利用されている。従来、フィルタベント用充填剤の基材として利用されてきたゼオライトの種類は、主に、X型やY型であった。これらの結晶構造は同じであるが、イオン交換サイトであるアルカリ金属イオンの原子数が異なる。Y型ゼオライトは、X型ゼオライトよりアルカリ金属イオンの原子数が少ないため、アルカリ金属イオンと置換し得る銀の量が、X型ゼオライトより少ない。このため、Y型ゼオライトは、X型ゼオライトより放射性ヨウ素の吸着能が劣る。本発明者らは、上記のX型やY型とは異なる種類のゼオライトであって、放射性ヨウ素吸着能に優れたゼオライトについて研究し、L型ゼオライトに着目した。L型ゼオライトは、Y型ゼオライトと同程度のアルカリ金属イオンの原子数を有するが、その結晶構造は、Y型ゼオライトとは異なる。本発明者らは、このような特徴的な構造を有するL型ゼオライトも放射性ヨウ素を効果的に吸着できることを見出し、新規なフィルタベント用充填剤を開発するに至ったのである。
 そのようなフィルタベント用充填剤は、L型ゼオライトが有するイオン交換サイト(カリウムサイト)の少なくとも一部を銀で置換して構成される(このようなゼオライトを本明細書では「AgLゼオライト」と称する。)。このAgLゼオライトは、放射性ヨウ素をヨウ化銀として吸着することができるため、原子炉事故のような異常事態が起こった場合であっても、放射性ヨウ素の原子炉外部への飛散を防止することができる。
[0009]
 本発明に係るフィルタベント用充填剤において、
 前記イオン交換サイトのうち、銀で置換されたイオン交換サイト(a)と、銀で置換されていないイオン交換サイト(b)との構成比率(a/b)が、25/75~55/45に設定されていることが好ましい。
[0010]
 本構成に係るAgLゼオライトに関し、本発明者らは鋭意研究の結果、イオン交換サイトと、銀で置換されていないイオン交換サイトとを上記の構成比率に設定した場合、AgLゼオライトが効果的に放射性ヨウ素の吸着能を発揮することを突き止めた。ここで、上記の構成比率は、AgLゼオライトに含まれる銀原子の数と、銀原子以外の金属原子の数との比率(原子比)に相当する。原子炉事故のような異常事態(シビアアクシデント)が起こった場合、放射性ヨウ素が周辺に飛散しないように、事故発生直後から迅速に処理することが重要である。そこで、上記の範囲に構成比率(原子比)を設定したAgLゼオライトから構成されるフィルタベント用充填剤を使用すれば、確実に放射性ヨウ素を吸着し、原子炉施設外への放射性ヨウ素の飛散を防止することができる。
[0011]
 本発明に係るフィルタベント用充填剤において、
 前記銀の含有量が乾燥状態下で7~12重量%に設定されていることが好ましい。
[0012]
 本構成のフィルタベント用充填剤は銀の含有量が上記のように設定されているので、放射性ヨウ素の吸着効果に優れたフィルタベント用充填剤とすることができる。
[0013]
 本発明に係るフィルタベント用充填剤において、
 2インチ以上の厚みとなるように構成されていることが好ましい。
[0014]
 本構成のフィルタベント用充填剤は、2インチ以上の厚みとなるように構成されているので、例えば、放射性ヨウ素を含む蒸気の温度が100℃未満となることで反応性が多少低下しても、放射性ヨウ素を実用レベルで確実に吸着し、除去することができる。
[0015]
 本発明に係るフィルタベント用充填剤において、
 99℃以上の温度条件下で使用されることが好ましい。
[0016]
 本構成のフィルタベント用充填剤は、99℃以上の温度条件下で使用されるので、フィルタベント用充填剤の厚みが2インチ未満の比較的薄いものであっても、放射性ヨウ素を実用レベルで確実に吸着し、除去することができる。
[0017]
 上記課題を解決するための本発明に係るフィルタベント装置の特徴構成は、
 連続的に放射性ヨウ素を処理するフィルタベント装置であって、
 上記の何れか一つのフィルタベント用充填剤の前段に、X型ゼオライトが有するイオン交換サイトの略全てを銀で置換した銀含有充填剤が配置されていることにある。
[0018]
 フィルタベント装置は原子炉の外部に設置されるため、フィルタベント装置内のAgLゼオライトは、通常は常温の状態にある。ここで、シビアアクシデントが発生し、放射性ヨウ素及び水素を含む高温の蒸気がフィルタベント装置に流入すると、蒸気がAgLゼオライトの表面で冷却され、水分凝縮が生じる。これにより、フィルタベント装置内では相対的に水素濃度や酸素濃度が高くなり、水素爆発の危険性が高まることとなる。
 そこで、本発明に係るフィルタベント装置では、AgLゼオライトで構成されるフィルタベント用充填剤の前段に、X型ゼオライトが有するイオン交換サイトの略全てを銀で置換した銀含有充填剤(本明細書では「AgXゼオライト」と称する。)を配置する構成とした。このようにAgXゼオライトとAgLゼオライトとの二段構成とすれば、フィルタベント装置に水素を含む高温の蒸気が流入すると、前段のAgXゼオライトにおいて、蒸気の大半が凝縮して水分が取り除かれるため、後段のAgLゼオライトでは水分凝縮は殆ど起こらず、相対的な水素濃度や酸素濃度の上昇を回避することができる。しかも、前段のAgXゼオライトは、放射性ヨウ素だけでなく水素も良好に吸着できるため、相対的な水素濃度の上昇が抑制される。このため、水素爆発の危険性が低減する。また、後段のAgLゼオライトを通過するガスは水素濃度が既に低減されたものとなっている。従って、本構成のフィルタベント装置であれば、シビアアクシデントの初期段階から水素及び放射性ヨウ素を効果的に低減することができる。また、所定時間経過後、仮に、前段のAgXゼオライトの処理能力が低下してきても、後段のAgLゼオライトは水素の存在下でもAgXゼオライトに近い優れた放射性ヨウ素吸着能を発揮できるため、長時間に亘ってシビアアクシデントへの対応が可能となる。このように、フィルタベント装置において、AgXゼオライト、及びAgLゼオライトを二段階で設置すれば、フィルタベント装置内での水素濃度の上昇を抑制できるとともに、周辺環境に放射性ヨウ素が飛散することを確実に防止し、安全性をより向上させることができる。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 図1は、第一実施形態に係るフィルタベント装置を備える沸騰水型炉の概略構成図である。
[図2] 図2は、第二実施形態に係るフィルタベント装置を備える沸騰水型炉の概略構成図である。
[図3] 図3は、実施例1のフィルタベント用充填剤に係るAgLゼオライトに水素を含むガスを通流させたときの温度変化の様子を示したグラフである。
[図4] 図4は、AgXゼオライトに水素を含むガスを通流させたときの温度変化の様子を示したグラフである。

発明を実施するための形態

[0020]
 以下、本発明のフィルタベント用充填剤、及びフィルタベント装置に関する実施形態を図1~図4を参照して説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定されることを意図しない。
[0021]
 上記のとおり、原子炉施設においてシビアアクシデントが発生した場合、周辺環境に放射性ヨウ素が飛散するとともに、水素爆発が起きる危険性が高い。そのため、シビアアクシデントに備えて、原子炉の内部圧力を減圧するフィルタベント装置を原子炉建屋に設置する計画が進行中である。本発明者らは、L型ゼオライトのイオン交換サイトを、銀のみで置換したゼオライト、あるいは、銀と銀以外の金属(鉛、ニッケル、銅からなる群から選択される一種)とで置換したゼオライトをフィルタベント用充填剤としてこのフィルタベント装置に設置すれば、放射性ヨウ素の飛散及び水素爆発を確実に防止できると考えた。
[0022]
<AgLゼオライト>
 まず、本発明のフィルタベント用充填剤のベースとなるL型ゼオライトについて説明する。ゼオライトはケイ酸塩の一種であり、構造の基本単位は四面体構造の(SiO4-及び(AlO5-であり、この基本単位が次々と三次元的に連結して結晶構造を形成する。基本単位の連結の形式によって種々の結晶構造が形成され、形成される結晶構造ごとに固有の均一な細孔径を有する。この均一な細孔径を有するため、ゼオライトには分子篩や吸着、イオン交換能といった特性が備わることとなる。本発明のフィルタベント用充填剤は、ゼオライトの一種であるL型ゼオライトを使用する。L型ゼオライトは、例えば、モレキュラーシーブとしてノルマルパラフィン類(C~C)の分離に使用されるものであり、このL型ゼオライトのイオン交換サイトであるカリウムサイトの少なくとも一部を銀で置換することにより、本発明のフィルタベント用充填剤が調製される。このようなフィルタベント用充填剤を本明細書では「AgLゼオライト」と称する。
[0023]
 AgLゼオライトは、従来のAgXゼオライトに近い優れた放射性ヨウ素吸着能を有しており、本発明のフィルタベント用充填剤はこの性質を利用して、原子炉施設外への放射性ヨウ素の飛散を防止する。また、後で詳述するが、AgLゼオライトは、従来のAgXゼオライトやY型ゼオライトと比較して、イオン交換サイトと置換し得る銀の量が少ない。銀は高価な金属であるから、フィルタベント用充填剤にAgLゼオライトを用いれば、銀の量を低減することができるため、コスト的に有利となる。
[0024]
 上記において、AgLゼオライトが銀で置換されることを説明したが、本発明に係るAgLゼオライトのイオン交換サイトは、銀だけではなく、銀と銀以外の金属とも置換され得る。つまり、AgLゼオライトは、L型ゼオライトが有するイオン交換サイトの一部を銀で置換し、残部を鉛、ニッケル、及び銅からなる群から選択される少なくとも一種で置換して調製することも可能なのである。これら金属は、銀より安価な金属であるから、上記のようにAgLゼオライトを調製し、フィルタベント用充填剤として用いた場合、銀の量を低減することができるためコスト的に有利となる。
[0025]
 AgLゼオライトは、L型ゼオライトのイオン交換サイトのうち、銀で置換されたイオン交換サイト(a)と、銀で置換されなかったイオン交換サイト(b)との構成比率(a/b)が、25/75~55/45の範囲に設定されるように調製される。好ましくは、25/75~45/55の範囲である。ここで、銀で置換されなかったイオン交換サイトとは、カリウムサイト又は銀以外の金属で置換されたサイトを意味する。上記構成比率は、AgLゼオライトに含まれる銀原子の数と、カリウム原子の数及び銀以外の金属原子の数の和との比率(原子比)に相当する。上記構成比率(a/b)が25/75より小さい場合、銀で置換されたイオン交換サイトが不足するため、放射性ヨウ素の吸着効果が不十分となる。一方、上記構成比率(a/b)を55/45より大きくしようとしても、銀のイオン交換がある程度進行すると、それ以上は銀のイオン交換が起こり難くなるため、銀が過多のAgLゼオライトを製造することは現状の技術では困難である。また、上記のとおり、銀は高価な材料であるため、銀の含有率を高くし過ぎるとコスト面で不利にもなる。従って、上記の範囲となるように、L型ゼオライトのイオン交換サイトの少なくとも一部を銀のみで置換する、あるいは、銀及び銀以外の金属(鉛、ニッケル、銅からなる群から選択される一種)で置換すれば、放射性ヨウ素を安定して吸着可能なフィルタベント用充填剤とすることができる。
[0026]
 また、上記のように調製したフィルタベント用充填剤(AgLゼオライト)は、銀の含有量が乾燥状態下で7~12重量%に設定されている。このような範囲に銀の含有量を設定した場合、フィルタベント用充填剤に含まれる銀によるイオン交換サイトの機能、及び銀以外の金属(鉛、ニッケル、銅からなる群から選択される一種)によるイオン交換サイトの機能がバランスよく効果的に発揮され、シビアアクシデントが発生した場合であっても、安全性を維持しながら確実に放射性ヨウ素の飛散を回避することができる。ちなみに、AgXゼオライトの銀の含有量は、乾燥重量ベースで39重量%前後であり、Y型ゼオライトの銀の含有量は、乾燥重量ベースで30重量%前後である。AgLゼオライトの銀の含有量は乾燥状態下で7~12重量%、つまり、10重量%前後であるから、AgLゼオライトの銀の含有量は、AgXゼオライトの約1/4、Y型ゼオライトの約1/3である。このように、AgLゼオライトは、AgXゼオライトやY型ゼオライトと比較して、必要な銀の量が少ない。従って、大幅に銀の量を低減することができ、コスト的に有利となる。
[0027]
 フィルタベント用充填剤は、AgLゼオライトを適切な形状、例えば、粒状タイプやペレットタイプに成形したものが好適に使用される。粒状タイプの場合、粒子サイズは、4×100mesh(JIS K 1474-4-6)、好ましくは10×20mesh(JIS K 1474-4-6)に調整される。ここで、粒子サイズを表す「mesh」について説明すると、例えば「10×20mesh」とは、粒子が10meshの篩を通過するが20meshの篩は通過しないこと、すなわち、粒子サイズが10~20meshであることを意味する。また、粒子の水分含有量は、150℃下において3時間乾燥減量したときの水分含有量として15重量%以下、好ましくは12重量%以下に調整される。
[0028]
 ペレットタイプの場合、ペレット長は、6mm以下、好ましくは4mm以下に調整される。ペレット径は、2mm以下、好ましくは1.5mm以下に調整される。ペレットタイプの水分含有量は、粒状タイプのものと同様の範囲に調整することができる。このように調整されたフィルタベント用充填剤を使用すれば、上記の優れた放射性ヨウ素吸着能をより効果的に発揮させることができる。
[0029]
 ところで、フィルタベント用充填剤は過酷な環境(高温、高圧、高湿度)に曝されるため、ある程度の高い強度(形状保持性)が求められる。そこで、本発明に係るフィルタベント用充填剤は、摩耗度が10%以下(ASTM D-4058)、好ましくは5%以下(ASTM D-4058)、より好ましくは3%以下(ASTM D-4058)となるように調整される。これにより、フィルタベント等の過酷な条件下に置かれても、フィルタベント用充填剤はその形状を維持し、高い放射性ヨウ素吸着能を発揮し続けることができる。
[0030]
<AgXゼオライト>
 本発明のフィルタベント装置では、後述の実施形態で説明するように、上記AgLゼオライトの前段にX型ゼオライト中のナトリウムサイトの略全てを銀でイオン交換したAgXゼオライトを配置する。AgXゼオライトのベースとなるX型ゼオライトは、13X型ゼオライトが好適に使用される。銀でイオン交換された13X型ゼオライトは、元の13X型ゼオライトよりも細孔径のサイズが小さくなる。具体的には、銀でイオン交換される前のナトリウムサイトを有する13X型ゼオライトの細孔径(約0.4nm)は、水素分子(分子径:約0.29nm)を捕捉するには大き過ぎるサイズであるが、ナトリウムサイトを銀でイオン交換すると、水素分子がぴったりと収まる最適な細孔径(約0.29nm)となる。その結果、銀でイオン交換された13X型ゼオライトは、放射性ヨウ素だけでなく、水素分子についても高効率で効果的に吸着することが可能となる。
[0031]
<フィルタベント装置>
[第一実施形態]
 上記のように調製したAgLゼオライト、及びAgXゼオライトを用いた本発明のフィルタベント装置に関して説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るフィルタベント装置50を備える沸騰水型炉100の概略構成図である。沸騰水型炉100は、図1に示すように、フィルタベント装置50、原子炉建屋3、原子炉格納容器4、及び原子炉圧力容器5から構成されている。フィルタベント装置50は、フィルタベント用充填剤1、及びフィルタベント部2を備えている。本実施形態のフィルタベント部2は、スクラバー方式によるウェットベントシステムを採用している。フィルタベント装置50は、原子炉に事故が起こり、原子炉格納容器4が損傷した場合に備えて、原子炉建屋3の外側に設置されている。原子炉格納容器4の内部圧力が上昇した場合、図1の実線矢印で示すように、原子炉格納容器4内の蒸気が配管6を通じてフィルタベント装置50へ送られる。フィルタベント装置50においては、蒸気中の放射性ヨウ素がフィルタベント部2によって捕集され、その後、フィルタベント用充填剤1を通って排気筒から外部に排出される。
[0032]
 フィルタベント用充填剤1は、図1に示すように、ケース7に収納され、フィルタベント部2の後段に接続されている。ケース7は、原子炉格納容器4から発生した水蒸気やガスが通流するため、耐熱性や耐蝕性を有する材料で構成することが好ましい。ケース7の材質として、例えば、ステンレス鋼やチタン合金が挙げられ、その他にアルミニウム合金等を使用することも可能である。ケース7は、蒸気やガスが内部を通流できるよう、微小な孔が複数設けられている。このようなケース7の中にフィルタベント用充填剤1を充填することで、フィルタベント用充填剤1の取り扱いを容易なものとしている。ここで、原子炉施設は安全面に最大限の注意が必要であるため、人による作業はできる限り簡単且つ短時間で行うことが望まれる。この点、本実施形態では、ケース7にフィルタベント用充填剤1を充填した簡単な構成であるから、フィルタベント用充填剤1を交換する場合、ケース7から取り出して新品のものに取り替えるという単純な作業で済ませることができる。そのため、作業員の負担を軽減することができ、安全性を確保することができる。
[0033]
 ところで、シビアアクシデントが発生した場合、原子炉施設からは放射性ヨウ素だけでなく、大量の水素も発生し、これらは原子炉格納容器4から排出される蒸気に含まれることになる。原子炉施設内に水素が残留すると、水素爆発が起きる危険があるため、放射性ヨウ素の処理と併せて水素の処理も確実に行う必要がある。AgLゼオライトは、水素の存在下であっても放射性ヨウ素を吸着することができるため、AgLゼオライトからなるフィルタベント用充填剤1をケース7に充填し、これをフィルタベント部2の後段に設置してフィルタベント装置50を構成すると、放射性ヨウ素がAgLゼオライトによって次々と吸着され、蒸気中の放射性ヨウ素が除去されると考えられる。ところが、フィルタベント部2は原子炉建屋3の外部に設置されているため、フィルタベント部2の下流に配置されているケース7内のAgLゼオライト(フィルタベント用充填剤1)は、通常は常温の状態にある。この状態において、水素を含む高温の蒸気がフィルタベント装置50に流入すると、蒸気がケース7内に侵入したときにフィルタベント用充填剤1の表面で冷却され、水分凝縮が生じる。これにより、フィルタベント装置50では相対的に水素濃度や酸素濃度が高くなり、水素爆発の危険性が高まることとなる。このため、フィルタベント用充填剤1を単独でフィルタベント装置50に適用した場合、特にシビアアクシデントの初期段階において、状況によっては安全性が低下する場合がある。
[0034]
 そこで、本発明では、放射性ヨウ素だけでなく、爆発性の高い水素についても確実に除去するための最適なフィルタベント装置の構成を着想するに至った。そのような構成として、本実施形態では、図1に示すように、本発明のAgLゼオライトからなるフィルタベント用充填剤1の前段に、13X型ゼオライトが有するイオン交換サイトの略全てを銀で置換して調製されたAgXゼオライトからなる銀含有充填剤8を配置する形態とした。このように、ケース7内において、銀含有充填剤8(AgXゼオライト)とフィルタベント用充填剤1(AgLゼオライト)とを二段で構成すれば、フィルタベント装置50に水素を含む高温の蒸気が流入しても、蒸気は前段の銀含有充填剤8において大半が凝縮して水分が取り除かれるため、後段のフィルタベント用充填剤1では水分凝縮は殆ど起こらず、相対的な水素濃度や酸素濃度の上昇を回避することができる。しかも、前段の銀含有充填剤8は、放射性ヨウ素だけでなく水素を良好に吸着できるため、相対的な水素濃度の上昇が抑制される。このため、水素爆発の危険性が低減する。また、後段のフィルタベント用充填剤1を通過するガスは水素濃度が既に低減されたものとなっている。従って、本実施形態のフィルタベント装置50であれば、シビアアクシデントの初期段階から水素及び放射性ヨウ素を効果的に低減することができる。また、所定時間経過後、仮に、前段の銀含有充填剤8の処理能力が低下しても、後段のフィルタベント用充填剤1は水素の存在下でも放射性ヨウ素をAgXゼオライトに近い能力で吸着できるため、長時間に亘ってシビアアクシデントへの対応が可能となる。このように、フィルタベント装置50において、フィルタベント部2、銀含有充填剤8、及びフィルタベント用充填剤1を連続的に配置し、夫々の機能を分担させることにより、水素及び放射性ヨウ素を高効率且つ効果的に吸着することが可能となる。その結果、フィルタベント装置50内での水素濃度の上昇を抑制できるとともに、周辺環境に放射性ヨウ素が飛散することを確実に防止し、安全性をより向上させることができる。
[0035]
[第二実施形態]
 図2は、本発明の第二実施形態に係るフィルタベント装置50を備える沸騰水型炉100の概略構成図である。上記の第一実施形態では、フィルタベント装置50において、フィルタベント用充填剤1及び銀含有充填剤8を収納するケース7が原子炉格納容器4に直接隣接しない位置、すなわち、フィルタベント部2の下流側に配置した。これに対し、第二実施形態では、図2に示すように、フィルタベント装置50において、銀含有充填剤8及びフィルタベント用充填剤1を収納するケース7が原子炉格納容器4と隣接する位置に設置するようにした。このとき、原子炉格納容器4から排出される蒸気には、放射性ヨウ素の他に水素も含まれ、蒸気は図2の実線矢印で示すように、配管6を通じてフィルタベント装置50に送られる。第二実施形態では、フィルタベント部2による処理の前に、蒸気がケース7内の銀含有充填剤8を通流し、その次にフィルタベント用充填剤1を通流する。このようにフィルタベント装置50を構成した場合、フィルタベント部2へ蒸気を送る前に放射性ヨウ素の吸着及び水素の処理が行われるため、銀含有充填剤8及びフィルタベント用充填剤1を収容するケース7から出てきたガスは負荷が低減されたものとなり、フィルタベント部2によってスムーズに処理することが可能となる。
[0036]
[別実施形態]
 上記の第一実施形態ないし第二実施形態は、いずれも沸騰水型炉についての実施形態であったが、本発明のフィルタベント用充填剤1は、加圧水型炉においても適用可能である。沸騰水型炉と同様に、シビアアクシデントにより原子炉が損傷した場合の対策として、フィルタベント用充填剤1と銀含有充填剤8とをケース7に収納してフィルタベント部2の後段に接続するように配置したフィルタベント装置50を加圧水型炉に設置することもでき、また、フィルタベント装置50において、銀含有充填剤8及びフィルタベント用充填剤1を収納したケース7を、加圧水型炉の原子炉格納容器4と隣接する位置に設置することもできる(図示せず)。さらに、本発明のフィルタベント用充填剤1は、上記の各実施形態で説明したフィルタベント部2がスクラバー方式となっているウェットベントシステムだけでなく、例えば、メタルファイバーフィルタやサンドフィルタと組み合わせたドライベントシステムにも適用可能である。
実施例
[0037]
 本発明のフィルタベント用充填剤について、その特性を確認するため、銀の含有量を変えた各種フィルタベント用充填剤(AgLゼオライト)を調製し(実施例1~5)、これらに水素を含むガスを通流させたときの温度変化を測定した。また、参考例として、13X型ゼオライトが有するイオン交換サイトの略全てを銀で置換して調製されたAgXゼオライトを用意し(参考例1)、実施例と同様に水素を含むガスを通流させたときの温度変化を測定した。
[0038]
<フィルタベント用充填剤の調製>
[実施例1]
 適切な銀濃度に調整した硝酸塩水溶液に適量のL型ゼオライトを投入し、室温に維持して約1日間攪拌することにより、イオン交換処理を行った。イオン交換処理を終えたL型ゼオライトを濾別し、純水で洗浄後、乾燥させてAgLゼオライトを得た。このAgLゼオライトをフッ酸と硝酸との混合液で加熱溶解後、ICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のICP発光分光分析装置 iCAP-6200Duo)で銀の含有量を分析したところ、乾燥重量で11.46重量%であった。また、AgLゼオライトに残存するカリウムは、乾燥重量で5.73重量%であった。AgLゼオライトのイオン交換サイトを構成する銀及びカリウムの比率(原子比)は、42/58であった。
[0039]
[実施例2]
 適切な銀濃度に調整した硝酸塩水溶液に適量のL型ゼオライトを投入し、室温に維持して約1日間攪拌することにより、イオン交換処理を行った。イオン交換処理を終えたL型ゼオライトを濾別し、純水で洗浄後、乾燥させてAgLゼオライトを得た。このAgLゼオライトをフッ酸と硝酸との混合液で加熱溶解後、ICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のICP発光分光分析装置 iCAP-6200Duo)で銀の含有量を分析したところ、乾燥重量で8.06重量%であった。また、AgLゼオライトに残存するカリウムは、乾燥重量で7.45重量%であった。AgLゼオライトのイオン交換サイトを構成する銀及びカリウムの比率(原子比)は、28/72であった。
[実施例3]
 適切な銀濃度に調整した硝酸塩水溶液に適量のL型ゼオライトを投入し、室温に維持して約1日間攪拌することにより、イオン交換処理を行った。イオン交換処理を終えたL型ゼオライトを濾別し、純水で洗浄後、乾燥させてAgLゼオライトを得た。このAgLゼオライトをフッ酸と硝酸との混合液で加熱溶解後、ICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のICP発光分光分析装置 iCAP-6200Duo)で銀の含有量を分析したところ、乾燥重量で10.69重量%であった。また、AgLゼオライトに残存するカリウムは、乾燥重量で6.05重量%であった。AgLゼオライトのイオン交換サイトを構成する銀及びカリウムの比率(原子比)は、39/61であった。
[実施例4]
 適切な銀濃度に調整した硝酸塩水溶液に適量のL型ゼオライトを投入し、室温に維持して約1日間攪拌することにより、イオン交換処理を行った。イオン交換処理を終えたL型ゼオライトを濾別し、純水で洗浄後、乾燥させてAgLゼオライトを得た。このAgLゼオライトをフッ酸と硝酸との混合液で加熱溶解後、ICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のICP発光分光分析装置 iCAP-6200Duo)で銀の含有量を分析したところ、乾燥重量で11.02重量%であった。また、AgLゼオライトに残存するカリウムは、乾燥重量で5.83重量%であった。AgLゼオライトのイオン交換サイトを構成する銀及びカリウムの比率(原子比)は、41/59であった。
[実施例5]
 適切な銀濃度に調整した硝酸塩水溶液に適量のL型ゼオライトを投入し、室温に維持して約1日間攪拌することにより、イオン交換処理を行った。イオン交換処理を終えたL型ゼオライトを濾別し、純水で洗浄後、乾燥させてAgLゼオライトを得た。このAgLゼオライトをフッ酸と硝酸との混合液で加熱溶解後、ICP発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のICP発光分光分析装置 iCAP-6200Duo)で銀の含有量を分析したところ、乾燥重量で8.06重量%であった。また、AgLゼオライトに残存するカリウムは、乾燥重量で6.10重量%であった。AgLゼオライトのイオン交換サイトを構成する銀及びカリウムの比率(原子比)は、32/68であった。
[0040]
[参考例1]
 13X型ゼオライトにおけるナトリウムサイトの97%を銀とイオン交換し、銀成分が36重量%、粒子のサイズが10×20mesh(JIS K 1474-4-6)、150℃下において3時間乾燥した後の水分含有量が12重量%となるように造粒し、AgXゼオライトを得た。
[0041]
<温度変化測定試験>
 続いて、実施例1~5で調製したAgLゼオライト、参考例1のAgXゼオライトに対し、水素を含むガスを通流させたときの温度変化を測定した。試験条件は、次のとおりである。
[0042]
[実施例1~5]
 約150℃に加熱した実施例1~5のAgLゼオライトに対し、(A)通流開始から10分までの間は、ドライエアーのみを通流させ、(B)通流開始後10分から40分までの間は、ドライエアー、水蒸気、及び水素の混合ガスを通流させ、(C)通流開始後40分から50分までの間は、ドライエアーのみを通流させた。実施例1~5の代表として、図3に実施例1のAgLゼオライトに水素を含むガスを通流させたときの温度変化の様子をグラフで示した。
[0043]
[参考例1]
 約150℃に加熱した参考例1のAgXゼオライトに対し、(A)通流開始から10分までの間は、ドライエアーのみを通流させ、(B)通流開始後10分から100分までの間は、ドライエアー、水蒸気、及び水素の混合ガスを通流させ、(C)通流開始後100分以降は、ドライエアーのみを通流させた。図4は、参考例1のAgXゼオライトに水素を含むガスを通流させたときの温度変化の様子を示したグラフである。
[0044]
 実施例1のフィルタベント用充填剤に係るAgLゼオライトは、図3に示すように、ドライエアーのみを通流させた(A)の期間は約150℃を維持した状態にあった。(B)の期間に混合ガス(体積百分率で、ドライエアー(85.5%)、水蒸気(12.0%)、及び水素(2.5%)を含む)を通流させた。このときのAgLゼオライトに対する混合ガスの接触時間を0.28秒に設定した。すると、試験開始から10分から15分くらいの間で温度が徐々に上昇し、約170℃の温度を維持した。この温度上昇は、AgLゼオライトにおける銀ゼオライト部が水素を吸着する際に発生する吸着熱や、水素と酸素との多少の反応による反応熱が原因であると推測できる。試験開始から30分から35分くらいの間で、温度変化に若干の変化があったが、急激に温度が上昇することはなく、その後温度は緩やかに下降し、(C)の期間では、通流開始時の約150℃まで温度が下がった。
[0045]
 参考例1のフィルタベント用充填剤に係るAgXゼオライトは、図4に示すように、ドライエアーのみを通流させた(A)の期間は約150℃を維持した状態にあった。(B)の期間に混合ガス(体積百分率で、ドライエアー(85.5%)、水蒸気(11.0%)、及び水素(2.5%)を含む)を通流させた。このときのAgXゼオライトに対する混合ガスの接触時間を0.28秒に設定した。すると、試験開始から10分経過後に温度が上昇し、試験開始から30分経過後には250℃まで上昇した。このような温度変化は、参考例1のAgXゼオライトにおいては、銀ゼオライト部が次々と水素を吸着して継続的に吸着熱が発生していること、さらには水素と酸素とが反応することにより反応熱が発生していること等が影響していると推測される。その後は、温度が緩やかに下降し、(C)の期間では、約180℃まで温度が下がったが、通流開始時の150℃より高温であった。
[0046]
 このように、本発明に係る実施例1のAgLゼオライトに水素を含むガスを通流させた場合、AgLゼオライトには大きな温度変化は見られなかった。このことから、実施例1のAgLゼオライトは、水素吸着の際に生じる吸着熱や、水素と酸素との反応による反応熱が小さい、つまり、水素吸着能が小さいと判断できる。この結果は、実施例2~5のAgLゼオライトにおいても同様である
[0047]
 これに対し、参考例1のAgXゼオライトは、水素等を通流させた場合、温度が急激に上昇し、水素の通流を止めてからは緩やかに温度が下降した。このことから、参考例1のAgXゼオライトは、水素吸着によって生じる熱が大きい、つまり、水素吸着能が大きいと判断できる。
[0048]
 以上の試験結果から、本発明に係るAgLゼオライトであれば、水素を含むガスを通流させたときの温度変化が僅かであるため、AgLゼオライトが過熱して安全性が低下するという懸念は生じないと考えられる。
[0049]
<吸着試験>
 次に、本発明のフィルタベント用充填剤(AgLゼオライト)の性能を確認するため、ヨウ化メチル又はヨウ素を対象とした吸着試験を実施した。
[0050]
[実施例6~9]
 銀の含有量を本発明で規定する範囲で変化させたAgLゼオライト(実施例6~9)について、ヨウ化メチル吸着試験を行った。ヨウ化メチルは、原子炉施設においてシビアアクシデントが発生した場合に発生する放射性ヨウ素を想定したものであり、ヨウ化メチルの吸着試験によって、AgLゼオライトによる放射性ヨウ素の吸着性を予測することができる。直径約1mm、長さ約1~4mmのAgLゼオライトのペレットを、通気性を有する金属容器(図1に示すケース7に相当)に充填した。次いで、金属容器にヨウ化メチルを含有する105℃又は115℃の高温ガス(組成:蒸気100容積%)を通流し、金属容器の通過前後のガスに含まれるヨウ化メチルの濃度から、AgLゼオライトのヨウ化メチルの吸着率を求めた。ちなみに、本実施例で用いた105℃の高温ガスは露点からの温度差が5K(ケルビン、以下同様)であり、115℃の高温ガスは露点からの温度差が15Kである。ヨウ化メチル吸着試験の結果を表1に示す。
[0051]
[表1]


[0052]
 実施例6~9のAgLゼオライトは、高温ガスの温度が105℃及び115℃のとき、接触時間が0.2秒程度又は0.2秒以下の非常に短い時間であっても、ヨウ化メチルの吸着率が99%以上となる非常に高い性能を示した。これは、放射性ヨウ素吸着能が高いことが知られているAgXゼオライトに匹敵する値である。また、AgLゼオライトのヨウ化メチル吸着能は、銀含有量に大きく影響されず、本発明の範囲内であれば十分な性能が得られることも判明した。
[0053]
 次に、本発明のフィルタベント用充填剤の実用性及び客観性を担保するため、第三者機関において、AgLゼオライトに実際に放射性ヨウ素を含む水蒸気を通流し、ヨウ化メチル又はヨウ素の吸着試験を実施した。試験結果を以下の実施例10~15に示す。
[0054]
[実施例10]
 表2に示す実施例10は、銀含有量が11.02重量%、カリウム含有量が5.83重量%のAgLゼオライトについて、金属容器への充填厚みを2~6インチの範囲で変化させた供試体を準備し、各供試体に放射性ヨウ素としてヨウ化メチル(CH131I)を含有する104℃又は109℃の高温ガス(組成:蒸気95容積%+ドライエアー5容積%、圧力:98kPa、以下の実施例11~13も同様)を通流し、ヨウ化メチルの吸着率を求めた。ちなみに、本実施例で用いた104℃の高温ガスは露点からの温度差が5Kであり、109℃の高温ガスは露点からの温度差が10Kである。
[0055]
[表2]


[0056]
 実施例10によれば、金属容器への充填厚みが増加するに従って、ヨウ化メチルの吸着率が高くなることが判明した。また、厚みが同一のものについては、高温ガスの温度が高い方が吸着率が高くなった。
[0057]
[実施例11]
 表3に示す実施例11は、銀含有量が10.28重量%、カリウム含有量が6.42重量%のAgLゼオライトについて、金属容器への充填厚みを2~6インチの範囲で変化させた供試体を準備し、各供試体にヨウ化メチル(CH131I)を含有する99℃の高温ガスを通流し、ヨウ化メチルの吸着率を求めた。ちなみに、本実施例で用いた99℃の高温ガスは露点からの温度差が0Kである。
[0058]
[表3]


[0059]
 実施例11によれば、実施例10と同様に、金属容器への充填厚みが増加するに従って、ヨウ化メチルの吸着率が高くなった。また、高温ガスの温度が100℃以下であっても、実用上問題のないヨウ化メチル吸着能が得られ、厚みを3インチ以上にすることで、99%以上の高いヨウ化メチル吸着能が達成されることが判明した。
[0060]
[実施例12]
 表4に示す実施例12は、銀含有量が10.03重量%、カリウム含有量が5.97重量%のAgLゼオライトについて、金属容器への充填厚みを2~6インチの範囲で変化させた供試体を準備し、各供試体にヨウ化メチル(CH131I)を含有する99℃又は101℃の高温ガスを通流し、ヨウ化メチルの吸着率を求めた。ちなみに、本実施例で用いた99℃の高温ガスは露点からの温度差が0Kであり、101℃の高温ガスは露点からの温度差が2Kである。
[0061]
[表4]


[0062]
 実施例12によれば、実施例10及び11と同様に、金属容器への充填厚みが増加するに従って、ヨウ化メチルの吸着率が高くなった。また、高温ガスの温度が100℃以下であっても、実用上問題のないヨウ化メチル吸着能が得られ、厚みを3インチ以上にすることで、あるいは温度を100℃より僅かに高くすることで、99%以上の高いヨウ化メチル吸着能が達成されることが判明した。
[0063]
[実施例13]
 表5に示す実施例13は、銀含有量が9.00重量%、カリウム含有量が6.58重量%のAgLゼオライトについて、金属容器への充填厚みを2~6インチの範囲で変化させた供試体を準備し、各供試体にヨウ化メチル(CH131I)を含有する101℃の高温ガスを通流し、ヨウ化メチルの吸着率を求めた。ちなみに、本実施例で用いた101℃の高温ガスは露点からの温度差が2Kである。
[0064]
[表5]


[0065]
 実施例13によれば、実施例10~12と同様に、金属容器への充填厚みが増加するに従って、ヨウ化メチルの吸着率が高くなった。また、銀含有量が比較的少ない9.00%であっても、実用上問題のないヨウ化メチル吸着能が得られ、厚みを3インチ以上にすることで、99%以上の高いヨウ化メチル吸着能が達成されることが判明した。
[0066]
[実施例14]
 表6に示す実施例14は、銀含有量が11重量%、カリウム含有量が6重量%のAgLゼオライトについて、金属容器への充填厚みを2~4インチの範囲で変化させた供試体を準備し、圧力399kPaでの相対湿度が95%の湿潤条件下(露点からの温度差2~3Kに相当、以下の実施例15も同様)で、各供試体にヨウ化メチル(CH131I)を含有する110℃、120℃、又は130℃の高温ガスを線速度24.4m/分で通流し、ヨウ化メチルの吸着率を求めた。
[0067]
[表6]


[0068]
 実施例14によれば、金属容器への充填厚みが増加するに従って、ヨウ化メチルの吸着率が高くなった。また、圧力及び温度が非常に高い過酷な条件であっても、99%以上の高いヨウ化メチル吸着能が達成されることが判明した。
[0069]
[実施例15]
 表7に示す実施例15は、銀含有量が11重量%、カリウム含有量が6重量%のAgLゼオライトについて、金属容器への充填厚みを1~4インチの範囲で変化させた供試体を準備し、相対湿度が95%の湿潤条件下で、各供試体に放射性ヨウ素としてヨウ素(131)を含有する110℃、又は130℃の高温ガスを線速度24.4m/分で通流し、ヨウ素の吸着率を求めた。実施例15は、AgLゼオライトのヨウ素としての吸着能を確認する試験である。
[0070]
[表7]


[0071]
 実施例15によれば、金属容器への充填厚みが増加するに従って、ヨウ素の吸着率が高くなった。すなわち、本発明のフィルタベント用充填剤は、ヨウ化メチルだけでなく、元素としてのヨウ素に対しても高い吸着能を有することが判明した。また、このヨウ素吸着能は、圧力及び温度が非常に高い過酷な条件であっても99%以上となり、非常に優れたものであることが示された。
[0072]
[実施例16]
 表8に示す実施例16は、銀含有量が11重量%、カリウム含有量が6重量%のAgLゼオライトについて、金属容器への充填厚みを2インチとした供試体を準備し、フィルタベント開始時の条件を再現するために、26℃に設定した供試体にヨウ化メチル(CHI)を含有する120℃の高温ガス(組成:蒸気53容量%+ドライエアー24容量%+水素10容量%+窒素13容量%)を滞留時間が0.15秒となるように通流し、温度変化及びヨウ化メチルの吸着率を求めた。実施例16は、高濃度水素雰囲気下でのAgLゼオライトのヨウ化メチルの吸着能を確認する試験である。ちなみに、本実施例で用いた120℃の高温ガスは露点からの温度差が37Kである。
[0073]
[表8]


[0074]
 実施例16によれば、高温ガスの通流初期段階からヨウ化メチルの吸着率は99.9%を達成し、その後も99.9%以上の高い吸着率が維持されていた。また、AgLゼオライトの温度は、高温ガスの温度付近に維持されており、過熱されることはなかった。この現象から、AgLゼオライトは水素との反応性が低いものと推測され、高濃度の水素雰囲気下でも高いヨウ化メチル吸着能を発揮できることが示された。
[0075]
 上記の温度変化測定試験及び各種吸着試験の結果より、本発明のAgLゼオライトは、水素存在下における安全性と放射性ヨウ素吸着能との両者を具備する優れたフィルタベント用充填剤であると言える。このため、本発明のAgLゼオライトを含むフィルタベント用充填剤を用いれば、単独であっても放射性ヨウ素を安全なレベルまで除去することが可能となる。また、本発明のAgLゼオライトを含むフィルタベント用充填剤を、AgXゼオライトを含む銀含有充填剤とともにフィルタベント装置に配置した場合は、前段の銀含有充填剤(AgXゼオライト)によって大部分の水素及び放射性ヨウ素を吸着した後、後段のフィルタベント用充填剤(本発明のAgLゼオライト)によって前段で吸着されなかった微量の放射性ヨウ素を確実に吸着することが可能となる。このように、本発明のフィルタベント用充填剤及びフィルタベント装置であれば、周辺環境への放射性ヨウ素の飛散を確実に防止しながら、フィルタベント装置内での水素濃度の上昇を抑制できるため、安全性をより向上させることが可能となる。

産業上の利用可能性

[0076]
 本発明のフィルタベント用充填剤、及びフィルタベント装置は、原子力発電所等の原子力施設において利用されるものであるが、当該原子力施設の周辺に存在する施設(住宅、店舗、学校等)の安全を守る用途で利用することも可能である。また、原子炉を具備した船舶、研究施設、工場等において利用することも可能である。

符号の説明

[0077]
 1   フィルタベント用充填剤(AgLゼオライト)
 2   フィルタベント部
 3   原子炉建屋
 4   原子炉格納容器
 5   原子炉圧力容器
 6   配管
 7   ケース
 8   銀含有充填剤(AgXゼオライト)
 50  フィルタベント装置
 100 沸騰水型炉

請求の範囲

[請求項1]
 L型ゼオライトを造粒してなるフィルタベント用充填剤であって、
 前記L型ゼオライトが有するイオン交換サイトの少なくとも一部が銀で置換されているフィルタベント用充填剤。
[請求項2]
 前記イオン交換サイトのうち、銀で置換されたイオン交換サイト(a)と、銀で置換されていないイオン交換サイト(b)との構成比率(a/b)が、25/75~55/45に設定されている請求項1に記載のフィルタベント用充填剤。
[請求項3]
 前記銀の含有量が乾燥状態下で7~12重量%に設定されている請求項1又は2に記載のフィルタベント用充填剤。
[請求項4]
 2インチ以上の厚みとなるように構成されている請求項1~3の何れか一項に記載のフィルタベント用充填剤。
[請求項5]
 99℃以上の温度条件下で使用される請求項1~4の何れか一項に記載のフィルタベント用充填剤。
[請求項6]
 連続的に放射性ヨウ素を処理するフィルタベント装置であって、
 請求項1~5の何れか一項に記載のフィルタベント用充填剤の前段に、X型ゼオライトが有するイオン交換サイトの略全てを銀で置換した銀含有充填剤が配置されているフィルタベント装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]