PATENTSCOPE sera indisponible durant quelques heures pour des raisons de maintenance le lundi 03.02.2020 à 10:00 AM CET
Recherche dans les collections de brevets nationales et internationales
Une partie du contenu de cette demande n'est pas disponible pour le moment.
Si cette situation persiste, contactez-nous auObservations et contact
1. (WO2015174391) ÉLÉMENT DE FILM À STRUCTURE IRRÉGULIÈRE
Document

明 細 書

発明の名称 凹凸構造を有するフィルム部材

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003  

先行技術文献

特許文献

0004  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013  

発明の効果

0014  

図面の簡単な説明

0015  

発明を実施するための形態

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090  

実施例

0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132  

産業上の利用可能性

0133  

符号の説明

0134  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : 凹凸構造を有するフィルム部材

技術分野

[0001]
 本発明は、凹凸構造を有するフィルム部材に関する。

背景技術

[0002]
 次世代のディスプレイ又は照明装置として期待されている発光素子として有機EL素子がある。有機EL素子(有機発光ダイオード)では、陽極から正孔注入層を通じて入った正孔と、陰極から電子注入層を通じて入った電子が、それぞれ、発光層へ運ばれて、発光層内の有機分子上でそれらが再結合して有機分子を励起して、それにより光が放出される。それゆえ、有機EL素子を表示装置や照明装置として使用するには、発光層からの光を素子表面から効率よく取り出す必要があり、このために、凹凸構造を有する回折格子基板を有機EL素子の光取り出し面に設けることが特許文献1で知られている。
[0003]
 また、有機EL素子の基材として、重くて割れやすく大面積化が困難なガラス基板に代わって、軽量でフレキシブル且つ大型化が可能な、樹脂等のフィルム基材が採用され始めている。しかしながら、樹脂等のフィルム基材はガラス基板と比べてガスバリア性が劣るという問題がある。有機EL素子は、水分や酸素によって輝度や発光効率等が低下する場合があるため、基材として樹脂フィルム基材を用いる場合、湿気や酸素等のガスによる劣化を防止する目的でガスバリア層を形成する必要がある。例えば特許文献2において、樹脂フィルム基材上に酸化ケイ素からなるガスバリア層を形成し、その上にポリメチルメタクリレート(PMMA)からなる凹凸構造層を形成した有機EL用のフィルム部材が記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0004]
特許文献1 : 特開2006-236748号公報
特許文献2 : WO2006/095612A1

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005]
 本出願人の調査・研究によると、特許文献2に記載されるようなフィルム部材はガスバリア層と凹凸構造層の間の密着力が弱く、その製造過程において凹凸構造層がガスバリア層から剥離することがあることがわかった。そこで、本発明の目的は、凹凸構造層とガスバリア層の間の密着性に優れ、且つバリア性の高い凹凸構造を有するフィルム部材を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明の第1の態様に従えば、凹凸構造を有するフィルム部材であって、
 基材と、
 前記基材上に形成されたガスバリア層と、
 前記ガスバリア層の表面上に形成された凹凸構造層とを有し、
 前記ガスバリア層の表面と前記凹凸構造層が同じ無機材料から構成され、且つ前記凹凸構造層が、前記ガスバリア層上に付与された前駆体溶液から得られることを特徴とするフィルム部材が提供される。
[0007]
 前記フィルム部材において、前記ガスバリア層が単層膜であってもよい。
[0008]
 前記フィルム部材において、前記凹凸構造層の複数の凸部及び凹部が、
 i)平面視で、各々、うねりながら延在する細長い形状を有し、且つ
 ii)延在方向、屈曲方向及び長さが不均一であってよい。
[0009]
 前記フィルム部材において、前記ガスバリア層と前記凹凸構造層の間の密着力は4N/mより高くてよい。
[0010]
 前記フィルム部材において、前記凹凸構造層の凹凸の平均ピッチが100~1500nmの範囲内であり、凹凸の深さ分布の平均値が20~200nmの範囲内であってよい。
[0011]
 本発明の第2の態様に従えば、第1の態様の凹凸構造を有するフィルム部材の製造方法であって、
 前記基材上に前記ガスバリア層を形成することと、
 前記ガスバリア層上に前記前駆体溶液を付与して膜を形成することと、
 前記膜に凹凸パターンを有するモールドを押し付けながら前記膜を硬化することで、前記モールドの前記凹凸パターンを前記膜に転写することとを含むフィルム部材の製造方法が提供される。
[0012]
 前記フィルム部材の製造方法において、前記凹凸パターンを有するモールドをブロック共重合体の自己組織化を利用して製造してよい。また、溶媒アニールによって前記ブロック共重合体を自己組織化させてよい。
[0013]
 本発明の第3の態様に従えば、第1の態様のフィルム部材上に、第1電極、有機層及び金属電極を、順次積層して形成された有機EL素子が提供される。

発明の効果

[0014]
 本発明の凹凸構造を有するフィルム部材は、ガスバリア層及び凹凸構造層が基材上に形成されているため、ガスバリア性に優れ且つ光取出し効率が高い。ゆえに、このフィルム部材を用いて発光素子は、湿気や酸素等のガスによる劣化が抑制されて長寿命であり、かつ高い発光効率を有する。また、ガスバリア層の凹凸構造層と接する面と凹凸構造層が同じ無機材料から構成されるため、ガスバリア層と凹凸構造層の間の密着性が高く、凹凸構造層がガスバリア層から剥離することがない。それゆえ、本発明の凹凸構造を有するフィルム部材は、有機EL素子や太陽電池のなどの各種デバイスにきわめて有効となる。

図面の簡単な説明

[0015]
[図1] 図1は、実施形態の凹凸構造を有するフィルム部材の概略断面図である。
[図2] 図2(a)は実施形態の凹凸構造を有するフィルム部材の凹凸パターンの概略平面図であり、図2(b)は図2(a)の概略平面図中の切断線上における断面プロファイルを示す。
[図3] 実施形態のフィルム部材の製造方法における、転写工程の様子の一例を示す概念図である。
[図4] 図4(a)~(c)は、実施形態の発光素子の概略断面図であり、図4(a)は有機層の表面においてフィルム部材の凹凸パターンが維持された発光素子の概略断面図の例を示し、図4(b)は有機層の表面が平坦である発光素子の概略断面図の例を示し、図4(c)は光学機能層が設けられた発光素子の概略断面図の例を示す。
[図5] 実施例及び比較例で作製したフィルム部材の材料及び評価結果を示す表である。

発明を実施するための形態

[0016]
 以下、本発明の凹凸構造を有するフィルム部材及びその製造方法、並びに凹凸構造を有するフィルム部材を用いて製造される発光素子の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[0017]
[フィルム部材]
 実施形態の凹凸構造(凹凸パターン)を有するフィルム部材100は、図1に示すように、フィルム基材40上にガスバリア層30と、凹凸構造層60がこの順序で形成されている。
[0018]
<フィルム基材>
 フィルム基材40としては特に制限されず、発光素子に用いることが可能な公知の透明基板を適宜利用することができる。例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等)、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂(ABS樹脂等)、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリイミド系樹脂(ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂等)、シクロオレフィンポリマー等の樹脂からなる基板などを利用することができる。フィルム部材100を発光素子の光学基板として用いる場合、基材40は耐熱性、UV光等に対する耐候性を備える基材であることが望ましい。基材40上には密着性を向上させるために、表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよい。また、フィルム部材表面の突起を埋めるために、平滑化層を設けるなどをしてもよい。フィルム基材40の厚みは、1~2000μmの範囲であることが好ましい。
[0019]
<ガスバリア層>
 ガスバリア層30は、酸素及び水蒸気の透過を阻止する膜であり、ガスバリア層30を構成する材料としては、金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物等の無機材料が好ましく、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、酸窒化珪素、酸窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物が更に好ましい。また、ガスバリア層30はこれらの材料の単層膜であってもよいし、これらの材料を複数積層した多層膜であってもよい。有機材料と上記の無機材料を複数積層した多層膜であってもよい。ガスバリア層30が多層膜である場合には、層間に応力緩和層を設けてもよい。ガスバリア層30の表面(凹凸構造層60と接する面)30aは、凹凸構造層60を構成する無機材料と同じ材料から構成され、それによりガスバリア層30と凹凸構造層60の間の密着性が向上する。また、ガスバリア層30は光透過性であることが好ましい。これにより有機EL素子等の発光素子用の光学基板として使用することが可能となる。ガスバリア層30は、例えば、測定波長を550nmとしたときの透過率が80%以上のものが好ましく、90%以上が更に好ましい。また、ガスバリア層30に、プラズマ処理、コロナ処理など、凹凸構造層60との密着力を向上させる表面処理をおこなってもよい。
[0020]
 ガスバリア層30の厚みは5~2000nmの範囲であることが好ましい。厚みが5nm未満であると膜欠陥が多く、充分な防湿効果(ガスバリア効果)が得られない。厚みが2000nmを超えた場合、理論的には防湿効果は高いが、内部応力が大きく割れやすくなり、所望の防湿効果が得られないと共に、成膜後の折り曲げや引っ張り等の外的要因により、ガスバリア層に亀裂が生じる等のおそれがあり、フィルム部材100にフレキシビリティを保持させることが困難となる。
[0021]
<凹凸構造層>
 凹凸構造層60は、微細な凹凸パターン(凹凸構造)80が表面に形成された層である。微細な凹凸パターン80は、レンズ構造や光拡散や回折等の機能を有する構造など、任意のパターンにし得る。図2(a)に、本実施形態の凹凸構造層60の凹凸パターン80の概略平面図の例を示し、図2(b)に図2(a)の概略平面図中の切断線における断面プロファイルを示す。凹凸構造層60の断面形状は、図2(b)に示すように、比較的なだらかな傾斜面からなり、基材40から上方に向かって波形(本願では適宜「波形構造」と称する)をなしてよい。すなわち、凹凸パターン80の凸部は、その基材40側の底部から頂部に向かって狭くなるような断面形状を有する。凹凸構造層60の凹凸パターン80は、平面視上、図2(a)に概略平面図の例を示すように、複数の凸部(白色部分)及び複数の凹部(黒色部分)がうねって(蛇行して)延在する細長い形状を有し、その延在方向、うねりの方向(屈曲方向)及び延在長さが不規則であるという特徴を有してよい。従って、凹凸パターン80は、ストライプ、波形ストライプ、ジグザグのような規則正しく配向したパターンやドット状のパターン等とは明らかに異なる。凹凸パターン80は、そのような規則正しく配向したパターンを含まず、この点で規則性や直線を多く含む回路パターンのようなものと区別できる。上記のような特徴を有するために、凹凸構造層60を基材40の表面と直交するいずれの方向で切断しても凹凸断面が繰り返し現れることになる。また、凹凸パターン80の複数の凸部及び凹部は、平面視で、一部または全部が途中で分岐していてもよい(図2(a)参照)。なお、図2(a)では、凸部のピッチは、全体として均一のように見える。また、凹凸パターン80の凹部は、凸部によって区画され、凸部60に沿って延在する。
[0022]
 凹凸構造層60が回折格子として働くために、凹凸の平均ピッチは、100~1500nmの範囲にあることが好ましい。凹凸の平均ピッチが前記下限未満では、可視光の波長に対してピッチが小さくなりすぎるため、凹凸による光の回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折角が小さくなり、回折格子としての機能が失われてしまう傾向にある。凹凸の平均ピッチは200~1200nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の深さ分布の平均値は、20~200nmの範囲であることが好ましい。凹凸の深さ分布の平均値が前記下限未満では、可視光の波長に対して深さが小さすぎるために必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折光強度にむらが生じ、この結果、例えば、フィルム部材100を用いて有機EL素子を作製した場合に、有機EL素子の有機層内部の電界分布が不均一となって特定の箇所に電界が集中することによってリーク電流が生じ易くなったり、寿命が短くなったりする傾向にある。凹凸の深さ分布の平均値は30~150nmの範囲であることがより好ましい。凹凸の深さの標準偏差は、10~100nmの範囲であることが好ましい。凹凸の深さの標準偏差が前記下限未満では、可視光の波長に対して深さが小さすぎるために必要な回折が生じなくなる傾向にあり、他方、上限を超えると、回折光強度にむらが生じ、この結果、例えば、フィルム部材100を用いて有機EL素子を作製した場合に、有機EL素子の有機層内部の電界分布が不均一となって特定の箇所に電界が集中することによってリーク電流が生じ易くなったり、寿命が短くなったりする傾向にある。凹凸の深さの標準偏差は、15~75nmの範囲であることがより好ましい。
[0023]
 本願において、凹凸の平均ピッチとは、凹凸が形成されている表面における凹凸のピッチ(隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔)を測定した場合において、凹凸のピッチの平均値のことをいう。このような凹凸のピッチの平均値は、走査型プローブ顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E-sweep」等)を用いて、下記条件:
 測定方式:カンチレバー断続的接触方式
 カンチレバーの材質:シリコン
 カンチレバーのレバー幅:40μm
 カンチレバーのチップ先端の直径:10nm
により、表面の凹凸を解析して凹凸解析画像を測定した後、かかる凹凸解析画像中における、任意の隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔を100点以上測定し、その算術平均を求めることにより算出できる。
[0024]
 また、本願において、凹凸の深さ分布の平均値及び凹凸深さの標準偏差は以下のようにして算出できる。表面の凹凸の形状を、走査型プローブ顕微鏡(例えば、株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E-sweep」等)を用いて凹凸解析画像を測定する。凹凸解析の際、前述の条件で任意の3μm角(縦3μm、横3μm)または10μm角(縦10μm、横10μm)の測定領域を測定して凹凸解析画像を求める。その際に測定領域内の16384点(縦128点×横128点)以上の測定点における凹凸高さのデータをナノメートルスケールでそれぞれ求める。なお、このような測定点の数は、用いる測定装置の種類や設定によっても異なるものではあるが、例えば、測定装置として上述の株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E-sweep」を用いた場合には、3μm角の測定領域内において65536点(縦256点×横256点)の測定(256×256ピクセルの解像度での測定)を行うことができる。そして、このようにして測定される凹凸高さ(単位:nm)に関して、先ず、全測定点のうち、基板の表面からの高さが最も高い測定点Pを求める。そして、かかる測定点Pを含み且つ基板の表面と平行な面を基準面(水平面)として、その基準面からの深さの値(測定点Pにおける基板からの高さの値から各測定点における基板からの高さを差し引いた差分)を凹凸深さのデータとして求める。なお、このような凹凸深さデータは、測定装置(例えば株式会社日立ハイテクサイエンス製の製品名「E-sweep」)によっては測定装置中のソフト等により自動的に計算して求めることができ、このような自動的に計算して求められた値を凹凸深さのデータとして利用できる。このようにして、各測定点における凹凸深さのデータを求めた後、その算術平均及び標準偏差を求めることにより算出できる値をそれぞれ凹凸の深さ分布の平均値及び凹凸深さの標準偏差として採用する。本明細書において、凹凸の平均ピッチ及び凹凸の深さ分布の平均値は、凹凸が形成されている表面の材料に関わらず、上記のような測定方法を通じて求めることができる。
[0025]
 凹凸パターン80は、表面の凹凸の形状を解析して得られる凹凸解析画像に2次元高速フーリエ変換処理を施して得られるフーリエ変換像が円もしくは円環状の模様を示すような、すなわち、凹凸の向きの指向性はないものの凹凸のピッチの分布は有するような疑似周期パターンでよい。このような疑似周期パターンを有するフィルム部材は、その凹凸ピッチの分布が可視光線を回折する限り、有機EL素子のような面発光素子に使用される回折基板に好適である。
[0026]
 凹凸構造層60の材料として無機材料が使用でき、特に、シリカ、SiN、SiON等のSi系の材料、TiO 等のTi系の材料、ITO(インジウム・スズ・オキサイド)系の材料、ZnO、ZnS、ZrO 、Al 、BaTiO 、SrTiO 等の無機材料を使用し得る。凹凸構造層60がこのような無機材料から形成されることにより、酸素及び水蒸気がフィルム部材100を透過することをさらに抑制することができる。このような凹凸構造層60は後述するように、無機材料の前駆体溶液をガスバリア層上に付与して膜を形成し、この膜を反応、乾燥等により硬化させることによって形成することができる。また、上述のように、凹凸構造層60は、ガスバリア層30の表面(凹凸構造層60と接する面)30aを構成する材料と同じ材料からなることが好ましく、それにより、ガスバリア層30と凹凸構造層60の間の密着性が向上する。
[0027]
 凹凸構造層60の厚みは、100nm~10μmが好ましい。凹凸構造層60の厚みが100nm未満になると、後述するようなインプリント法による凹凸形状の転写が難しくなる。凹凸構造層の厚みが10μmを超えると、クラックが入るなどの構造的な欠陥が生じやすくなる。なお、ここでは凹凸構造層60の厚みとは、凹凸構造層60の底面から凹凸パターンが形成された表面までの距離の平均値を意味する。
[0028]
 凹凸構造層60とガスバリア層30の間の密着力は、4N/mより大きいことが好ましい。それにより、フィルム部材100の製造過程またはフィルム部材100を用いた光学素子等の各種デバイスを製造過程等において、凹凸構造層60とガスバリア層30の間で層間剥離が発生することを防止することができる。凹凸構造層60とガスバリア層30の間の密着力は、例えば次のようにして測定することができる。2片のフィルム基材上にガスバリア層を形成し、一方のフィルム基材上にさらに凹凸構造層の形成に用いるのと同じ無機材料の前駆体溶液を塗布する。前駆体溶液の塗膜にもう一方のフィルム基材上に形成したガスバリア層が接するように2片のフィルム基材を重ね合わせた後、前駆体溶液の塗膜を硬化させて無機材料層を形成する。すなわち、フィルム基材/ガスバリア層/無機材料層/ガスバリア層/フィルム基材という構成を有する試料を作製する。この試料において、無機材料層は凹凸構造層を構成する無機材料と同じ無機材料から構成される層となる。この試料の上層及び下層のフィルム基材をそれぞれ持って一定の速度で180度方向に引き裂く(T字剥離する)と、最も弱い界面から2つに分かれる。この時の剥離強度を、引っ張り試験機(東洋精機製作所製、ストログラフE-L)等により測定する。測定された剥離強度は、剥離した界面の密着力を表す。ガスバリア層と無機材料層の界面で剥離した場合の剥離強度の測定値から、ガスバリア層と凹凸構造層の間の密着力がわかる。なお、フィルム基材、ガスバリア層または無機材料層そのものの強度よりも各層の密着力が大きい場合は、試料は各層の間の界面からではなく、基材または層内から破断する。
[0029]
[フィルム部材の製造方法]
 次に、上記実施形態の凹凸構造を有するフィルム部材の製造方法について説明する。実施形態の凹凸構造を有するフィルム部材は、以下に説明するようなナノインプリント法により製造することができる。このような実施形態の凹凸構造を有するフィルム部材100の製造方法は、主に、フィルム基材上にガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程、無機材料の前駆体溶液を調製する溶液調整工程、調製した前駆体溶液をガスバリア層上に塗布する塗布工程、凹凸パターンを有するモールドをガスバリア層上の塗膜(前駆体膜)に押し付けながら塗膜を硬化させることにより、塗膜に凹凸パターンを転写する転写工程、及び塗膜を本硬化する硬化工程を有する。以下、各工程について順に説明する。
[0030]
<ガスバリア層形成工程>
 まず、フィルム基材上にガスバリア層を形成する。例えば、ゾルゲル法等の湿式法によりガスバリア層を形成することができる。具体的には、珪素、チタン等のアルコキシド等を金属化合物原料として用い、これをスプレー法、スピンコート法等により基材上に塗布して、形成された膜を硬化(ゲル化)させることにより、ガスバリア層を形成することができる。また、スパッタリング法、イオンアシスト法、あるいは後述するプラズマCVD法や大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法等によって、ガスバリア層をフィルム基材上に形成してもよい。また、これらの方法で複数の材料を積層し、ガスバリア層として多層膜を形成してもよい。ガスバリア層が多層膜または単層膜のいずれの場合においても、ガスバリア層の最表面(凹凸構造層と接する面)は、凹凸構造層を構成する材料と同じ材料から形成することが好ましい。それにより、凹凸構造層とガスバリア層の間の密着性を向上させることができる。
[0031]
 スプレー法やスピンコート法を用いるゾルゲル法等の湿式法は、分子レベル(nmレベル)の平滑性を得ることが難しい。また溶剤を使用するため、基材が有機材料である場合に使用可能な基材または溶剤が限定される。そのため、後述するプラズマCVD法や大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法を用いてガスバリア層を形成することが好ましい。その中でも、特に、大気圧プラズマCVDによる方法は、減圧チャンバー等が不要で、高速成膜ができ、生産性の高い成膜方法であるため好ましい。
[0032]
 大気圧プラズマCVDによる膜形成方法の詳細は、例えば、特開2004-52028号、特開2004-198902号等に記載されており、原料化合物として有機金属化合物を用いるが、原料化合物は常温常圧下で気体、液体、固体のいずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、一度加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させてから使用する。その様な状況から、有機金属化合物としては、例えば、沸点が200℃以下の金属アルコキシドが好適である。
[0033]
 このような金属アルコキシドとして、例えば、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn-プロポキシシラン等のケイ素化合物;チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトライソポロポキシド等のチタン化合物;ジルコニウムn-プロポキシド等のジルコニウム化合物;アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウム化合物;アンチモンエトキシド;ヒ素トリエトキシド;亜鉛アセチルアセトナート;ジエチル亜鉛等が挙げられる。
[0034]
 また、これらの有機金属化合物を含む原料ガスと共に、これらを分解して無機化合物を得るため、分解ガスを併用し、反応性ガスを構成する。この分解ガスとしては、水素ガス、水蒸気などが挙げられる。
[0035]
 プラズマCVD法においては、これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合する。放電ガスとしては、窒素ガス、周期表の第18族原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスが用いられる。特に、製造コストの観点から窒素ガスが好ましい。
[0036]
 上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、目的とする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
[0037]
 例えば、沸点が200℃以下の金属アルコキシド、珪素アルコキシド(テトラアルコキシシラン(TEOS))を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用い、放電ガスとして希ガス、或いは窒素等の不活性ガスを用いて、プラズマ放電させれば、本実施形態のガスバリア層として酸化珪素膜を生成することができる。
[0038]
 なお、後の工程で所望の凹凸パターンを有する凹凸構造層をガスバリア層上に形成するため、ガスバリア層の表面(表面処理や易接着層がある場合にはそれらも含めて)は平坦でよい。
[0039]
<溶液調製工程>
 無機材料からなる凹凸構造層を形成するため、無機材料の前駆体の溶液を調製する。例えばゾルゲル法を用いて無機材料からなる凹凸構造層を形成する場合は、前駆体として金属アルコキシドを調製する。例えば、基材上にシリカからなる凹凸構造層を形成する場合は、シリカの前駆体として、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン等のテトラアルコキシシランに代表されるテトラアルコキシドモノマーや、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン(MTES)、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、トリルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランに代表されるトリアルコキシドモノマー、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ-n-ブトキシシラン、ジメチルジ-i-ブトキシシラン、ジメチルジ-sec-ブトキシシラン、ジメチルジ-t-ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ-n-ブトキシシラン、ジエチルジ-i-ブトキシシラン、ジエチルジ-sec-ブトキシシラン、ジエチルジ-t-ブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジ-n-ブトキシシラン、ジプロピルジ-i-ブトキシシラン、ジプロピルジ-sec-ブトキシシラン、ジプロピルジ-t-ブトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジプロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ-n-ブトキシシラン、ジイソプロピルジ-i-ブトキシシラン、ジイソプロピルジ-sec-ブトキシシラン、ジイソプロピルジ-t-ブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ-n-ブトキシシラン、ジフェニルジ-i-ブトキシシラン、ジフェニルジ-sec-ブトキシシラン、ジフェニルジ-t-ブトキシシラン等のジアルコキシシランに代表されるジアルコキシドモノマーを用いることができる。さらに、アルキル基の炭素数がC4~C18であるアルキルトリアルコキシシランやジアルキルジアルコキシシランを用いることもできる。ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するモノマー、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を有するモノマー、p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を有するモノマー、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基を有するモノマー、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基を有するモノマー、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するモノマー、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基を有するモノマー、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するモノマー、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド基を有するモノマー、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するモノマー、これらモノマーを少量重合したポリマー、前記材料の一部に官能基やポリマーを導入したことを特徴とする複合材料などの金属アルコキシドを用いてもよい。また、これらの化合物のアルキル基やフェニル基の一部、あるいは全部がフッ素で置換されていてもよい。さらに、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート、オキシ塩化物、塩化物や、それらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。金属種としては、Si以外にTi、Sn、Al、Zn、Zr、Inなどや、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。上記酸化金属の前駆体を適宜混合したものを用いることもできる。さらに、シリカの前駆体として、分子中にシリカと親和性、反応性を有する加水分解基および撥水性を有する有機官能基を有するシランカップリング剤を用いることができる。例えば、n-オクチルトリエトキシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等のシランモノマー、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン等のビニルシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリルシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン等のサルファーシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、これらモノマーを重合したポリマー等が挙げられる。
[0040]
 無機材料の前駆体としてTEOSとMTESの混合物を用いる場合には、それらの混合比は、例えばモル比で1:1にすることができる。この前駆体は、加水分解及び重縮合反応を行わせることによって非晶質シリカを生成する。合成条件として溶液のpHを調整するために、塩酸等の酸またはアンモニア等のアルカリを添加する。pHは4以下もしくは10以上が好ましい。また、加水分解を行うために水を加えてもよい。加える水の量は、金属アルコキシド種に対してモル比で1.5倍以上にすることができる。
[0041]
 ゾルゲル法で用いる前駆体溶液の溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類、ブトキシエチルエーテル、ヘキシルオキシエチルアルコール、メトキシ-2-プロパノール、ベンジルオキシエタノール等のエーテルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類、フェノール、クロロフェノール等のフェノール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類、クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、二硫化炭素等の含ヘテロ元素化合物、水、およびこれらの混合溶媒が挙げられる。特に、エタノールおよびイソプロピルアルコールが好ましく、またそれらに水を混合したものも好ましい。
[0042]
 ゾルゲル法で用いる前駆体溶液の添加物としては、粘度調整のためのポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールや、溶液安定剤であるトリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、アセチルアセトンなどのβジケトン、βケトエステル、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキサンなどを用いることが出来る。また、前駆体溶液の添加物として、エキシマUV光等紫外線に代表されるエネルギー線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を用いることができる。このような材料を添加することにより、光を照射することよって前駆体溶液をゲル化(硬化)させて無機材料を形成することができるようになる。
[0043]
 また、無機材料の前駆体としてポリシラザンを用いてもよい。ポリシラザンは、加熱またはエキシマなどのエネルギー線を照射することで酸化してセラミックス化(シリカ改質)し、シリカ、SiNまたはSiONを形成する。なお、「ポリシラザン」とは、珪素-窒素結合を持つポリマーで、Si-N、Si-H、N-H等からなるSiO 、Si 及び両方の中間固溶体SiO 等のセラミック前駆体無機ポリマーである。特開平8-112879号公報に記載されている下記の一般式(1)で表されるような比較的低温でセラミックス化してシリカ等に変性する化合物がより好ましい。
[0044]
一般式(1):
   -Si(R1)(R2)-N(R3)-
 式中、R1、R2、R3は、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。
[0045]
 上記一般式(1)で表される化合物の中で、R1、R2及びR3のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPSともいう)や、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンが特に好ましい。
[0046]
 低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5-238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6-122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6-240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6-299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6-306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7-196986号公報)等を用いることもできる。
[0047]
 ポリシラザン溶液の溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。酸化珪素化合物への改質を促進するために、アミンや金属の触媒を添加してもよい。
[0048]
 また、上記のような無機材料の前駆体溶液の代わりに、無機材料の微粒子の分散液を用いてもよい。また、液相堆積法(LPD:Liquid Phase Deposition)などを用いて凹凸構造層を形成してもよい。本願において、前駆体溶液から得られる層とは、前駆体溶液を付与して形成した膜を、縮重合反応、酸化反応、乾燥等によって硬化させることによって形成される層を意味し、無機材料の分散液を塗布して乾燥させて形成した層や液相堆積法により形成した層も、前駆体溶液から得られる層に含まれるものとする。
[0049]
<塗布工程>
 上記のように調製した無機材料の前駆体溶液をガスバリア層上に塗布する。ガスバリア層上には密着性を向上させるために、プラズマ処理、コロナ処理等の表面処理や易接着層を設けるなどをしてもよい。前駆体溶液の塗布方法として、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法などの任意の塗布方法を使用することができるが、比較的大面積の基材に前駆体溶液を均一に塗布可能であること、前駆体膜が硬化する前に素早く塗布を完了させることができることからすれば、バーコート法、ダイコート法及びスピンコート法が好ましい。
[0050]
 前駆体溶液の塗布後、塗膜(前駆体膜)中の溶媒を蒸発させるために基材を大気中もしくは減圧下で保持してもよい。この保持時間が短いと塗膜の粘度が低くなりすぎて塗膜への凹凸パターンの転写ができなくなり、保持時間が長すぎると前駆体の重合反応が進み塗膜の粘度が高くなりすぎて塗膜への凹凸パターンの転写ができなくなる。また、前駆体溶液を塗布後、溶媒の蒸発の進行とともに塗膜の硬化が進行し、塗膜の粘度などの物性も短時間で変化する。凹凸パターン形成の安定性の観点から、パターン転写が良好にできる乾燥時間範囲が十分広いことが望ましく、これは乾燥温度(保持温度)、乾燥圧力、前駆体の材料種、前駆体の材料種の混合比、前駆体溶液調製時に使用する溶媒量(前駆体の濃度)等によって調整することができる。なお、乾燥工程では、基材をそのまま保持するだけで塗膜(前駆体膜)中の溶媒が蒸発するので、必ずしも加熱や送風などの積極的な乾燥操作を行う必要はなく、塗膜を形成した基材をそのまま所定時間だけ放置したり、後続の工程を行うために所定時間の間に搬送したりするだけでもよい。すなわち、実施形態のフィルム部材の製造方法において乾燥工程は必須ではない。
[0051]
<転写工程>
 次いで、凹凸パターン転写用のモールドを用いて、モールドの凹凸パターンを塗膜(前駆体膜)に転写する。モールドとして、後述するような方法で製造することができるフィルム状モールドや金属モールドを用いることができるが、柔軟性または可撓性のあるフィルム状モールドを用いることが望ましい。この際、押圧ロールを用いてモールドを前駆体膜に押し付けてもよい。押圧ロールを用いたロールプロセスでは、プレス式と比較して、モールドと塗膜とが接する時間が短いため、モールドや基材及び基材を設置するステージなどの熱膨張係数の差によるパターンくずれを防ぐことができること、前駆体膜中の溶媒の突沸によってパターン中にガスの気泡が発生したり、ガス痕が残ったりすることを防止することができること、基材(塗膜)と線接触するため、転写圧力及び剥離力を小さくでき、大面積化に対応し易いこと、押圧時に気泡をかみ込むことがないなどの利点を有する。また、モールドを押し付けながら基材を加熱してもよい。押圧ロールを用いてモールドを塗膜(前駆体膜)に押し付ける例として、図3に示すように押圧ロール122とその直下に搬送されている基材40との間にフィルム状モールド140を送り込むことでフィルム状モールド140の凹凸パターンを基材40上の塗膜64に転写することができる。すなわち、フィルム状モールド140を押圧ロール122により塗膜64に押し付ける際に、フィルム状モールド140と基材40を同期して搬送しながら、基材40上の塗膜64の表面をフィルム状モールド140で被覆する。この際、押圧ロール122をフィルム状モールド140の裏面(凹凸パターンが形成された面と反対側の面)に押しつけながら回転させることで、フィルム状モールド140と基材40が進行しながら密着する。なお、長尺のフィルム状モールド140を押圧ロール122に向かって送り込むには、長尺のフィルム状モールド140が巻き付けられたフィルムロールからそのままフィルム状モールド140を繰り出して用いるのが便利である。
[0052]
 前駆体膜にモールドを押し付けた後、前駆体膜を仮焼成してもよい。仮焼成することにより前駆体を無機材料に転化させて塗膜を硬化し、凹凸パターンを固化し、剥離の際に崩れにくくする。仮焼成を行う場合は、大気中で室温~300℃の温度で加熱することが好ましい。なお、仮焼成は必ずしも行う必要はない。また、前駆体溶液に紫外線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を添加した場合には、前駆体膜を仮焼成する代わりに、例えばエキシマUV光等の紫外線に代表されるエネルギー線を照射することによって塗膜を硬化してもよい。
[0053]
 モールドの押圧または前駆体膜の仮焼成の後、塗膜(前駆体膜、または前駆体膜を転化することにより形成された無機材料膜)からモールドを剥離する。モールドの剥離方法として公知の剥離方法を採用することができる。実施形態の製造方法で用いるモールドの凹凸パターンの凸部及び凹部は、細長い形状であり、傾斜がなだらかな波形構造を有するため、離形性がよい。また、前駆体を転化することにより得られる無機材料がガスバリア層の表面を構成する材料と同じ材料であることにより、塗膜がガスバリア層に強固に密着している。そのため、塗膜がモールドに密着したままガスバリア層から剥離することがない。塗膜を加熱しながらモールドを剥離してもよく、それにより塗膜から発生するガスを逃がし、膜内に気泡が発生することを防ぐことができる。ロールプロセスを使用する場合、プレス式で用いるプレート状モールドに比べて剥離力は小さくてよく、塗膜がモールドに残留することなく容易にモールドを塗膜から剥離することができる。特に、塗膜を加熱しながら押圧するので反応が進行し易く、押圧直後にモールドは塗膜から剥離し易くなる。さらに、モールドの剥離性の向上のために、剥離ロールを使用してもよい。図3に示すように剥離ロール123を押圧ロール122の下流側に設け、剥離ロール123によりフィルム状モールド140を塗膜64に付勢しながら回転支持することで、フィルム状モールド140が塗膜64に付着された状態を押圧ロール122と剥離ロール123の間の距離だけ(一定時間)維持することができる。そして、剥離ロール123の下流側でフィルム状モールド140を剥離ロール123の上方に引き上げるようにフィルム状モールド140の進路を変更することでフィルム状モールド140は凹凸が形成された塗膜(凹凸構造層)60から引き剥がされる。なお、フィルム状モールド140が塗膜64に付着されている期間に前述の塗膜64の仮焼成や加熱を行ってもよい。なお、剥離ロール123を使用する場合には、例えば室温~300℃に加熱しながら剥離することによりモールド140の剥離を一層容易にすることができる。
[0054]
<硬化工程>
 凹凸が形成された塗膜(凹凸構造層)からモールドを剥離した後、凹凸構造層を本硬化してもよい。本実施形態では、本焼成により凹凸構造層を本硬化させることができる。ゾルゲル法によりシリカに転化する前駆体を用いた場合、凹凸構造層を構成するシリカ(アモルファスシリカ)中に含まれている水酸基などが本焼成によって脱離して、凹凸構造層がより強固となる。本焼成は、200~1200℃の温度で、5分~6時間程度行うのが良い。この時、凹凸構造層がシリカからなる場合、焼成温度、焼成時間に応じて非晶質または結晶質、または非晶質と結晶質の混合状態となる。なお、硬化工程は必ずしも行う必要はない。また、前駆体溶液に紫外線などの光を照射することによって酸やアルカリを発生する材料を添加した場合には、凹凸構造層を焼成する代わりに、例えばエキシマUV光等の紫外線に代表されるエネルギー線を照射することによって、凹凸構造層を本硬化することができる。
[0055]
 以上のようにして、図1に示すような、フィルム基材40上にガスバリア層30と、凹凸構造層60が形成されたフィルム部材100を製造することができる。
[0056]
 なお、上記の塗布工程において塗布する前駆体としては、シリカの前駆体のほかに、TiO 、ZnO、ZnS、ZrO 、Al 、BaTiO 、SrTiO 、ITO等の前駆体を用いてもよいが、ガスバリア層の最表面(凹凸構造層と接する面)30aを構成する無機材料と同じ無機材料の前駆体を用いることが好ましい。
[0057]
 凹凸構造層の材料は、上記の前駆体に紫外線吸収材料を含有させたものであってもよい。紫外線吸収材料は、紫外線を吸収し光エネルギーを熱のような無害な形に変換することにより、膜の劣化を抑制する作用がある。紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。
[0058]
 また、凹凸構造層の表面に被覆層を形成してもよい。被覆層は、凹凸構造層の凹凸深さの標準偏差の25~150%の範囲内の膜厚を有することが好ましい。それにより、凹凸構造層表面に異物や欠陥があった場合にそれらを被覆することができるため、このフィルム部材を用いて有機EL素子等の発光素子を形成した場合に、発光素子のリーク電流を有効に抑制できる。また、そのような上記範囲内の膜厚を有する被覆層を備えるフィルム部材を用いて形成された発光素子は良好な光取り出し効率を有する。
[0059]
 被覆層の材料(被覆材料)としては、凹凸構造層の材料として用いることができる材料として上記で例示したSiO 、TiO ZnO、ZrO 、Al 、ZnS、BaTiO 、SrTiO 、ITO(インジウム・スズ・オキサイド)等のゾルゲル材料、これらに公知の微粒子、フィラー、紫外線吸収材等を含有させたもの等を用いることができる。特に凹凸構造層の材料として用いた材料と同じ材料を用いて被覆層を形成することが望ましい。被覆材料と凹凸構造層材料が同じ材料であることにより、被覆層と凹凸構造層の間の界面における光の反射を抑制することができる。被覆層の形成に用いるゾルゲル材料溶液は、凹凸構造層の形成に用いるゾルゲル材料溶液よりも溶媒でさらに希釈したものを用いることが望ましい。それにより、凹凸構造層よりも薄い所望の膜厚で被覆層を形成することが容易になる。
[0060]
 またゾルゲル法のほか、無機材料の微粒子の分散液を用いる方法、液相堆積法(LPD:Liquid Phase Deposition)などを用いて被覆層を形成してもよい。
[0061]
 また、ポリシラザンを用いて被覆層を形成してもよい。この場合、これを塗布及び転写して形成した被覆層を、硬化させてセラミックス化(シリカ改質)してシリカ、SiNまたはSiONからなる被覆層を形成してもよい。なお、「ポリシラザン」とは、珪素-窒素結合を持つポリマーで、Si-N、Si-H、N-H等からなるSiO 、Si 及び両方の中間固溶体SiO 等のセラミック前駆体無機ポリマーである。特開平8-112879号公報に記載されている下記の一般式(1)で表されるような比較的低温でセラミック化してシリカ等に変性する化合物がより好ましい。
[0062]
 一般式(1):
   -Si(R1)(R2)-N(R3)-
 式中、R1、R2、R3は、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。
[0063]
 上記一般式(1)で表される化合物の中で、R1、R2及びR3のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPSともいう)や、Siと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンが特に好ましい。
[0064]
 低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5-238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6-122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6-240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6-299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6-306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7-196986号公報)等を用いることもできる。
[0065]
 ポリシラザン溶液の溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。酸化珪素化合物への改質を促進するために、アミンや金属の触媒を添加してもよい。
[0066]
 ポリシラザンの硬化は加熱で促進してもよいし、エキシマなどのエネルギー線の照射により促進してもよい。
[0067]
 また、被覆層の材料としては、上述の無機材料のほか、硬化性樹脂材料を用いてもよい。硬化性樹脂を用いて被覆層を形成する場合、例えば、硬化性樹脂を凹凸構造層上に塗布した後、硬化させることによって、被覆層を形成することができる。硬化性樹脂は有機溶剤で希釈してから塗布してもよい。この場合に用いる有機溶剤としては硬化前の樹脂を溶解するものを選択して使用することができる。例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、などのケトン系溶剤等の公知のものから選択できる。硬化性樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温~250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分~3時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm ~5J/cm の範囲内であることが好ましい。
[0068]
 凹凸構造層の表面(被覆層を形成する場合は被覆層の表面)に疎水化処理を行ってもよい。疎水化処理の方法は知られている方法を用いればよく、例えば、シリカ表面であれば、ジメチルジクロルシラン、トリメチルアルコキシシラン等で疎水化処理することもできるし、ヘキサメチルジシラザンなどのトリメチルシリル化剤とシリコーンオイルで疎水化処理する方法を用いてもよいし、超臨界二酸化炭素を用いた金属酸化物粉末の表面処理方法を用いてもよい。凹凸構造層の表面が疎水性であると、実施形態のフィルム部材を用いて有機EL素子等の発光素子を製造する場合、その製造工程において基板から水分を容易に除去できるため、発光素子におけるダークスポットのような欠陥の発生や、デバイスの劣化を防止することができる。
[0069]
<凹凸パターン転写用モールド>
 上記の実施形態の凹凸構造を有するフィルム部材の製造において用いられる凹凸パターン転写用のモールドとしては、例えば、後述する方法で製造される金属モールド又はフィルム状の樹脂モールド等が含まれる。樹脂モールドを構成する樹脂には、天然ゴム又は合成ゴムのようなゴムも含まれる。モールドは表面に凹凸パターンを有する。
[0070]
 凹凸パターン転写用のモールドの製造方法の例について説明する。最初にモールドの凹凸パターンを形成するための母型パターンの作製を行う。例えば、不均一な方向に延在する曲線状の凸部及び凹部からなる凹凸パターンを有するフィルム部材を製造する場合には、本出願人らによるWO2012/096368号に記載されたブロック共重合体の加熱による自己組織化(ミクロ相分離)を利用する方法(以下、適宜「BCP(Block Copolymer)熱アニール法」という)や、WO2013/161454号に記載されたブロック共重合体の溶媒雰囲気下における自己組織化を利用する方法(以下、適宜「BCP溶媒アニール法」という)、又は、WO2011/007878A1に開示されたポリマー膜上の蒸着膜を加熱・冷却することによりポリマー表面の皺による凹凸を形成する方法(以下、適宜「BKL(Buckling)法」という)を用いて母型を形成することが好適である。BCP熱アニール法またはBCP溶媒アニール法でパターンを形成する場合、パターンを形成する材料は任意の材料を使用することができるが、ポリスチレンのようなスチレン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートのようなポリアルキルメタクリレート、ポリエチレンオキシド、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリビニルピリジン、及びポリ乳酸からなる群から選択される2種の組合せからなるブロック共重合体が好適である。これらの材料の自己組織化により形成するパターンは、WO2013/161454号に記載されるような水平シリンダ構造(シリンダが基材に対して水平に配向した構造)、またはMacromolecules 2014,47,2に記載されるような垂直ラメラ構造(ラメラが基材に対して垂直に配向した構造)であることが好ましい。より深い凹凸を形成する場合は、垂直ラメラ構造がより好ましい。また、溶媒アニール処理により得られた凹凸パターンに対して、エキシマUV光などの紫外線に代表されるエネルギー線を照射することによるエッチングや、RIE(反応性イオンエッチング)のようなドライエッチング法によるエッチングを行ってもよい。またそのようなエッチングを行った凹凸パターンに対して、加熱処理を施してもよい。さらに、Adv.Mater.2012,24,5688-5694、Science322,429(2008)等に記載されるような方法で、BCP熱アニール法またはBCP溶媒アニール法により形成される凹凸パターンを元に、より凹凸深さが大きい凹凸パターンを形成することができる。すなわち、SiO 、Si等からなる下地層上にブロック共重合体を塗布し、BCP熱アニール法またはBCP溶媒アニール法によりブロック共重合体の自己組織化構造を形成する。次いで、ブロック共重合体の一方のセグメントを選択的にエッチングして除去する。残った他方のセグメントをマスクとして下地層をエッチングして、下地層に所望の深さ溝(凹部)を形成する。
[0071]
 上記のようなBCP熱アニール法、BKL法及びBCP溶媒アニール法に代えて、フォトリソグラフィ法で凹凸パターンを形成してもよい。そのほか、例えば、切削加工法、電子線直接描画法、粒子線ビーム加工法及び操作プローブ加工法等の微細加工法、並びに微粒子の自己組織化を使用した微細加工法によっても、母型の凹凸パターンを作製することができる。均一な方向に延在する直線状または曲線状の凸部及び凹部からなる凹凸パターンを有するフィルム部材を製造する場合は、これらの方法を用いて、均一な方向に延在する直線状または曲線状の凸部及び凹部からなる凹凸パターンを有する母型を形成してもよい。
[0072]
 凹凸パターンの母型をBCP熱アニール法やBKL法又はBCP溶媒アニール法等により形成した後、以下のようにして電鋳法などにより、パターンをさらに転写したモールドを形成することができる。最初に、電鋳処理のための導電層となるシード層を、無電解めっき、スパッタまたは蒸着等によりパターンを有する母型上に形成することができる。シード層は、後続の電鋳工程における電流密度を均一にして後続の電鋳工程により堆積される金属層の厚みを一定にするために10nm以上が好ましい。シード層の材料として、例えば、ニッケル、銅、金、銀、白金、チタン、コバルト、錫、亜鉛、クロム、金・コバルト合金、金・ニッケル合金、ホウ素・ニッケル合金、はんだ、銅・ニッケル・クロム合金、錫ニッケル合金、ニッケル・パラジウム合金、ニッケル・コバルト・リン合金、またはそれらの合金などを用いることができる。次に、シード層上に電鋳(電界めっき)により金属層を堆積させる。金属層の厚みは、例えば、シード層の厚みを含めて全体で10~30000μmの厚さにすることができる。電鋳により堆積させる金属層の材料として、シード層として用いることができる上記金属種のいずれかを用いることができる。形成した金属層は、後続のモールドの形成のための樹脂層の押し付け、剥離及び洗浄などの処理の容易性からすれば、適度な硬度及び厚みを有することが望ましい。
[0073]
 上記のようにして得られたシード層を含む金属層を、凹凸構造を有する母型から剥離して金属基板を得る。剥離方法は物理的に剥がしても構わないし、パターンを形成する材料を、それらを溶解する有機溶媒、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどを用いて溶解して除去してもよい。金属基板を母型から剥離するときに、残留している材料成分を洗浄にて除去することができる。洗浄方法としては、界面活性剤などを用いた湿式洗浄や紫外線やプラズマを使用した乾式洗浄を用いることができる。また、例えば、粘着剤や接着剤を用いて残留している材料成分を付着除去するなどしてもよい。こうして得られる、母型からパターンが転写された金属基板(金属モールド)は、本実施形態の凹凸パターン転写用のモールドとして用いられ得る。
[0074]
 さらに、得られた金属基板を用いて、金属基板の凹凸構造(パターン)をフィルム状の支持基板に転写することでフィルム状モールドのように可撓性のあるモールドを作製することができる。例えば、硬化性樹脂を支持基板に塗布した後、金属基板の凹凸構造を樹脂層に押し付けつつ樹脂層を硬化させる。支持基板として、例えば、ガラス、石英、シリコン等の無機材料からなる基材;シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリイミド(PI)、ポリアリレート等の有機材料からなる基材、ニッケル、銅、アルミ等の金属材料が挙げられる。また、支持基板の厚みは、1~500μmの範囲にし得る。
[0075]
 硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系、アクリル系、メタクリル系、ビニルエーテル系、オキセタン系、ウレタン系、メラミン系、ウレア系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、フェノール系、架橋型液晶系、フッ素系、シリコーン系、ポリアミド系等のモノマー、オリゴマー、ポリマー等の各種樹脂が挙げられる。硬化性樹脂の厚みは0.5~500μmの範囲内であることが好ましい。厚みが前記下限未満では、硬化樹脂層の表面に形成される凹凸の高さが不十分となり易く、前記上限を超えると、硬化時に生じる樹脂の体積変化の影響が大きくなり凹凸形状が良好に形成できなくなる可能性がある。
[0076]
 硬化性樹脂を塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法、スパッタ法等の各種コート方法を採用することができる。さらに、硬化性樹脂を硬化させる条件としては、使用する樹脂の種類により異なるが、例えば、硬化温度が室温~250℃の範囲内であり、硬化時間が0.5分~3時間の範囲内であることが好ましい。また、紫外線や電子線のようなエネルギー線を照射することで硬化させる方法でもよく、その場合には、照射量は20mJ/cm ~5J/cm の範囲内であることが好ましい。
[0077]
 次いで、硬化後の硬化樹脂層から金属基板を取り外す。金属基板を取り外す方法としては、機械的な剥離法に限定されず、公知の方法を採用することができる。こうして得ることができる支持基板上に凹凸が形成された硬化樹脂層を有するフィルム状の樹脂モールドは、本実施形態の凹凸パターン転写用のモールドとして用いられ得る。
[0078]
 また、上述の方法で得られた金属基板の凹凸構造(パターン)上にゴム系の樹脂材料を塗布し、塗布した樹脂材料を硬化させ、金属基板から剥離することにより、金属基板の凹凸パターンが転写されたゴムモールドを作製することができる。得られたゴムモールドは本実施形態の凹凸パターン転写用のモールドとして用いられ得る。ゴム系の樹脂材料は、特に、シリコーンゴム、またはシリコーンゴムと他の材料との混合物もしくは共重合体が好ましい。シリコーンゴムとしては、例えば、ポリオルガノシロキサン、架橋型ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサン/ポリカーボネート共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリフェニレン共重合体、ポリオルガノシロキサン/ポリスチレン共重合体、ポリトリメチルシリルプロピン、ポリ4メチルペンテンなどが用いられる。シリコーンゴムは、他の樹脂材料と比べて安価で、耐熱性に優れ、熱伝導性が高く、弾性があり、高温条件下でも変形しにくいことから、凹凸パターン転写プロセスを高温条件下で行う場合には好適である。さらに、シリコーンゴム系の材料は、ガスや水蒸気透過性が高いため、被転写材の溶媒や水蒸気を容易に透過することができる。そのため、上記のような無機材料の前駆体溶液の膜に凹凸パターンを転写する目的でゴムモールドを用いる場合には、シリコーンゴム系の材料が好適である。また、ゴム系材料の表面自由エネルギーは25mN/m以下が好ましい。これによりゴムモールドの凹凸パターンを基材上の塗膜に転写するときの離形性が良好となり、転写不良を防ぐことができる。ゴムモールドは、例えば、長さ50~1000mm、幅50~3000mm、厚み1~50mmにし得る。また、必要に応じて、ゴムモールドの凹凸パターン面上に離型処理を施してもよい。
[0079]
[発光素子]
 次に、上記実施形態の凹凸構造を有する基板を用いて製造される発光素子の実施形態について説明する。図4(a)~(c)に示すように、本実施形態の発光素子200、200a、200bは、基材40、ガスバリア層30及び凹凸構造層60からなる凹凸構造(凹凸パターン)80を有するフィルム部材100上に、第1電極層92、有機層94及び第2電極層98をこの順に備える。
[0080]
<第1電極>
 第1電極92は、その上に形成される有機層94からの光を基材40側に透過させるために透過性を有する透明電極にし得る。また、第1電極92は、凹凸構造層60の表面に形成されている凹凸構造(凹凸パターン)80が第1電極92の表面に維持されるようにして積層されることが望ましい。なお、第1電極92のXY方向の配置及び形状は特に限定されない。
[0081]
 第1電極の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、金、白金、銀、銅が用いられる。これらの中でも、透明性と導電性の観点から、ITOが好ましい。第1電極92の厚みは20~500nmの範囲であることが好ましい。
[0082]
 <有機層>
 有機層94は、第1電極92上に形成される。有機層94は、有機EL素子の有機層に用いることが可能なものであれば特に制限されず、公知の有機層を適宜利用することができる。
[0083]
 有機層94の表面(有機層94と第2電極98の界面)は、図4(a)に示すように、凹凸構造層60の表面に形成されている凹凸パターン80を維持していてもよい。あるいは、有機層94の表面は、図4(b)に示すように、凹凸構造層60の表面に形成されている凹凸パターン80を維持せずに、その表面が平坦であってもよい。有機層94の表面が凹凸構造層60の表面に形成されている凹凸パターン80を維持している場合、第2電極98によるプラズモン吸収が低減し、光の取出し効率が向上する。ここで、正孔輸送層の材料としては、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、N,N’-ビス(3ーメチルフェニル)-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン(TPD)や4,4’-ビス[N-(ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル(α-NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4’’-トリス(N-(3-メチルフェニル)N-フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、発光層は、第1電極92から注入された正孔と第2電極98から注入された電子とを再結合させて発光させるために設けられている。発光層に使用できる材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、アルミニウムキノリノール錯体(Alq3)などの有機金属錯体、トリ-(p-ターフェニル-4-イル)アミン、1-アリール-2,5-ジ(2-チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体及び各種蛍光色素等を用いることができる。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。なお、前記燐光発光材料はイリジウムなどの重金属を含むことが好ましい。上述した発光材料をキャリア移動度の高いホスト材料中にゲスト材料としてドーピングして、双極子-双極子相互作用(フェルスター機構)、電子交換相互作用(デクスター機構)を利用して発光させても良い。また、電子輸送層の材料としては、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレンなどの複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルミニウムキノリノール錯体(Alq3)などの有機金属錯体などが挙げられる。さらに上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。なお、正孔輸送層もしくは電子輸送層が発光層の役割を兼ねていてもよい。
[0084]
 さらに、第2電極98からの電子注入を容易にするという観点から、有機層94と第2電極98の間に電子注入層としてフッ化リチウム(LiF)、Li 等の金属フッ化物や金属酸化物、Ca、Ba、Cs等の活性の高いアルカリ土類金属、有機絶縁材料等からなる層を設けてもよい。また、第1電極92からの正孔注入を容易にするという観点から、有機層94と第1電極92の間に正孔注入層として、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、または導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマーなどからなる層を設けても良い。
[0085]
 また、有機層94が正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層からなる積層体である場合、正孔輸送層、発光層、及び電子輸送層の厚みは、それぞれ1~200nmの範囲、5~100nmの範囲、及び5~200nmの範囲であることが好ましい。
[0086]
 <第2電極>
 第2電極98は、有機層94上に形成される。第2電極98として、仕事関数の小さな物質を適宜用いることができ、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、MgAg、MgIn、AlLi等の金属電極にし得る。また、第2電極98の厚みは50~500nmの範囲であることが好ましい。また、第2電極98は、凹凸構造層60の表面に形成されている凹凸構造(凹凸パターン)80が維持されるようにして積層されてもよい。
[0087]
 さらに、図4(c)に示すように、この発光素子200bは、基材40のガスバリア層30が形成された面と反対側の面(発光素子の光の取り出し面となる面)に光学機能層22が設けられてもよい。このような光学機能層22を設けることで、基材40内を通過してきた光が基材40(光学機能層22を含む)と空気の界面において全反射することを抑制して光取出し効率を向上することができる。このような光学機能層22としては、発光素子の光の取り出しのために用いることが可能なものであればよく、特に制限されず、光の屈折や、集光、拡散(散乱)、回折、反射等を制御して素子の外側へ光を取出すことが可能な構造を有する任意の光学部材を用いることができる。このような光学機能層22としては、例えば、半球レンズのような凸レンズ、凹レンズ、フレネルレンズ、プリズムレンズ、円柱状レンズ、レンチキュラー型レンズ、上述した凹凸構造層を有するフィルム部材の製造方法と同様の方法で形成することが可能な凹凸層からなるマイクロレンズ等の各種レンズ部材、透明体に拡散材が練りこまれた拡散シート、拡散板、表面に凹凸構造(凹凸パターン)を有する拡散シート、拡散版、回折格子、反射防止機能を有する部材等を使用してもよい。これらのうち、より効率よく光を取り出すことが可能となることから、レンズ部材が好ましい。また、このようなレンズ部材としては、複数のレンズ部材を用いてもよく、この場合には微細なレンズ部材を配列させて、いわゆるマイクロレンズ(アレイ)を形成してもよい。光学機能層22は、市販品を用いてもよい。
[0088]
 なお、図4(c)には、図4(a)に示した発光素子200の基板40の外側面に光学機能層22が設けられている発光素子200bを示したが、図4(b)に示した発光素子200bの基板40の外側面に光学機能層22を設けてもよい。
[0089]
 また、第2電極98は金属電極であるため、その鏡面反射対策として偏光板を第2電極98上に設けてもよい。さらに、発光素子200、200a、200bの水分や酸素による劣化を防止するために、発光素子の周囲を封止材料により封止してもよい。
[0090]
 本実施形態の発光素子200、200a、200bにおいて用いるフィルム部材100は、ガスバリア層30及び凹凸構造層60が無機材料から形成されているため、耐熱性、機械的強度、及び耐薬品性にも優れる。このため、フィルム部材100は、発光素子200、200a、200bの製造プロセスにおいて、高温雰囲気で行われる成膜工程、UV/O 洗浄、ブラッシング、酸・アルカリ溶剤などの種々の洗浄液を用いる洗浄工程、現像液やエッチング液を用いるパターン化工程にも十分に耐えられる。また、ガスバリア層30及び凹凸構造層60が無機材料から形成されているため、本実施形態の発光素子200、200a、200bは水分や酸素による劣化が防止され、長寿命である。さらに、ガスバリア層の凹凸構造層と接する面30aが、凹凸構造層を構成する材料と同じ無機材料からなるため、ガスバリア層30と凹凸構造層60の間の密着性が特に優れ、それによりガスバリア層30と凹凸構造層60の界面を水分や酸素がリークすることが防止され、発光素子200、200a、200bがさらに長寿命となる。また、凹凸構造層の形成に無機材料の前駆体を用いることにより、ロールプロセスで正確且つ確実に凹凸構造層の凹凸パターンを形成することができ、それにより高スループットでフィルム部材を製造することができる。
実施例
[0091]
 以下、本発明のフィルム部材を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例1及び比較例1、2において、それぞれ凹凸パターン(凹凸構造)を有するフィルム部材を作製し、各フィルム部材を用いて発光素子を作製し、高湿度環境下での劣化評価を行った。また、試験片を作製してガスバリア層と凹凸構造層の密着性を評価した。
[0092]
 実施例1
[密着性評価]
<試験片の作製>
 ガスバリア層と凹凸構造層の間の密着性の評価に用いる試験片を作製するために、以下のようにしてガスバリア層の原料となるコーティング液を調製した。まず、エチルシリケート25g、エタノール25g、2N塩酸1.86g、及び水1.51gを混合し、80℃で1~2時間攪拌した。このとき、上記混合物のエチルシリケートと水とのモル比は1:1.51とした。この混合物にエポキシシランを2.5g加えて攪拌した。その後、濃度10%のPVA水溶液を17.4g加え、さらに1~2時間攪拌して混合物が透明となった時点で、32質量%濃度のN,N-ジメチルベンジルアミンのエタノール溶液を0.1g加えて、さらに攪拌し、コーティング液を得た。基材として厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャインA-4300)を用い、この基材上にグラビアコーターを用いて走行速度80m/分でコーティング液を塗布し、温度135℃で乾燥させた。こうしてフィルム基材上にガスバリア層として厚さ1μmのSiO 層が得られた。
[0093]
 ガスバリア層を形成したフィルム基材を切り出して、100mmx180mmの大きさのフィルム基材を2枚作製した。2枚のフィルム基材のうち1つを200mmx200mmの大きさのガラス基板にカプトンテープで貼りつけた。フィルム基材は、ガスバリア層が形成された面と反対の面がガラス基板に対向するとともにフィルム基材全面がガラス基板上に位置するように、ガラス基板に貼り付けた。
[0094]
 本実施例では凹凸構造層をゾルゲル法により形成するために、無機材料の前駆体の溶液(ゾルゲル材料溶液)を以下のようにして調製した。エタノール22mol、水5mol、濃塩酸0.004mol及びアセチルアセトン4molを混合した液に、テトラエトキシシラン(TEOS)0.75mol及びジメチルジエトキシシラン(DMDES)0.25molを滴下して加えた。さらに添加材として界面活性剤S-386(セイミケミカル製)を0.5wt%加えた。次いで、23℃、湿度45%で2時間攪拌し、SiO の前駆体溶液(ゾルゲル材料溶液)を得た。このゾルゲル材料溶液をガラス基板に貼り付けたフィルム基材上に滴下し、スピンコートして、膜厚300nmのゾルゲル材料層を形成した。スピンコータは、ACT-300DII(ACTIVE社製)を用いた。なお、塗膜の膜厚はHORIBA社製自動薄膜計測装置AutoSEにより評価した。
[0095]
 ゾルゲル材料層が形成されたフィルム基材を25℃で1分間放置した後、100mmx180mmの大きさの2枚のフィルム基材のうちの残りの1枚を、ゾルゲル材料層上に重ね合わせた。このとき、ゾルゲル材料層をガスバリア層で挟むようにして、すなわち、一方のフィルム基材のゾルゲル材料層が形成された面と他方のフィルム基材のガスバリア層が形成された面が対向するようにして、2枚のフィルム基材を重ね合わせた。この試料を100℃のホットプレート上に1分間静置し、ゾルゲル材料層を硬化させてSiO 層を形成した。次いで、重ね合わせられた2枚のフィルム基材をガラス基板から取り外し、25mmx180mmの短冊状に切り出した。こうしてフィルム基材/ガスバリア層(SiO 層)/ゾルゲル材料層(SiO 層)/ガスバリア層(SiO 層)/フィルム基材という構成を有する密着性評価用の試験片を得た。
[0096]
<密着性評価試験>
 得られた試験片を一端から100mm/minの速度で180°方向に引き裂いた(T字剥離した)ところ、フィルム基材が破断したが、ガスバリア層とゾルゲル材料層との間を含むいずれの層間でも剥離は生じなかった。この時の剥離強度を、引っ張り試験機(東洋精機製作所製、ストログラフE-L)により測定したところ50N/mから80N/mの間で測定値が振れた。ゆえに、ガスバリア層とゾルゲル材料層の間の密着力は20N/mを超える大きさであることがわかった。
[0097]
[発光素子の作製]
<フィルムモールドの作製>
 最初に、発光素子の回折格子基板として用いる凹凸構造を有するフィルム部材を作製するために、BCP溶媒アニール法を用いて凹凸表面を有するフィルムモールドを作製した。下記のようなポリスチレン(以下、適宜「PS」と略する)とポリメチルメタクリレート(以下、適宜「PMMA」と略する)とからなるPolymer Source社製のブロック共重合体を用意した。
PSセグメントのMn=680,000、
PMMAセグメントのMn=580,000、
ブロック共重合体のMn=1,260,000、
PSセグメントとPMMAセグメントの体積比(PS:PMMA)=57:43、
分子量分布(Mw/Mn)=1.28、PSセグメントのTg=107℃、
PMMAセグメントのTg=134℃
[0098]
 ブロック共重合体におけるPSセグメント及びPMMAセグメントの体積比(PSセグメント:PMMAセグメント)は、ポリスチレンの密度が1.05g/cm であり、ポリメチルメタクリレートの密度が1.19g/cm であるものとして算出した。ポリマーセグメント又はポリマーの数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー(株)製、型番「GPC-8020」、TSK-GEL SuperH1000、SuperH2000、SuperH3000及びSuperH4000を直列に接続したもの)を用いて測定した。ポリマーセグメントのガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量計(Perkin-Elmer社製、製品名「DSC7」)を用いて、0~200℃の温度範囲について20℃/minの昇温速度にて昇温しつつ測定した。ポリスチレン及びポリメチルメタクリレートの溶解度パラメータはそれぞれ9.0及び9.3である(化学便覧 応用編 改定2版参照)。
[0099]
 このブロック共重合体230mgとポリエチレンオキシドとして57.5mgのAldrich製ポリエチレングリコール2050(平均Mn=2050)に、トルエンを総量が15gになるように加えて溶解させて、ブロック共重合体溶液を調製した。
[0100]
 このブロック共重合体溶液を孔径0.5μmのメンブレンフィルターでろ過してブロック共重合体溶液を得た。信越シリコーン社製KBM-5103を1g、イオン交換水を1g、酢酸0.1ml、イソプロピルアルコールを19gの混合溶液をガラス基板上にスピンコート塗布した(回転速度500rpmで10秒間行った後、引き続いて800rpmで45秒間行った)。130℃で15分間処理して、シランカップリング処理ガラスを得た。得られたブロック共重合体溶液を、基材としてのシランカップリング処理ガラス上に、スピンコートにより140~160nmの膜厚で塗布した。スピンコートは、回転速度200rpmで10秒間行った後、引き続いて300rpmで30秒間行った。
[0101]
 次いで、薄膜が形成された基材を、予めクロロホルムの蒸気を充満したデシケータ中に24時間、室温にて静置することで溶媒アニール処理を施した。デシケータ(容量5L)内には、クロロホルムを100g充填したスクリュー瓶が設置されており、デシケータ内の雰囲気は飽和蒸気圧のクロロホルムで満たされていた。溶媒アニール処理後の薄膜の表面には、凹凸が観察されて、薄膜を構成するブロック共重合体がミクロ層分離していることが分かった。この薄膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)(日立社製H-7100FA)により観察したところ、PS部分の円形の断面が基板表面と平行な方向に互いに離隔しつつ基板表面に垂直な方向(高さ方向)に二段に配列しており、原子間力顕微鏡の解析画像と併せて考察すると、PS部分がPMMA部分から水平シリンダ構造に相分離していることが分かった。PS部分がコア(島)となり、その周りをPMMA部分が取り囲んでいる(海)状態であった。
[0102]
 上記溶媒アニール処理により波形化された薄膜の表面に、スパッタにより、電流シード層として20nm程度の薄いニッケル層を形成した。次いで、この薄膜付き基材をスルファミン酸ニッケル浴中に入れ、温度50℃で、電鋳(最大電流密度0.05A/cm )処理してニッケルを厚み250μmになるまで析出させた。こうして得られたニッケル電鋳体から薄膜付き基材を機械的に剥離した。次に、ニッケル電鋳体をテトラヒドロフラン溶媒中に2時間浸け置き、その後、アクリル系UV硬化樹脂を塗布して硬化し、剥離することを3回繰り返すことで、電鋳体の表面に一部付着していたポリマー成分を除去した。その後、日本シービーケミカル製ケミゾール2303中に浸漬し、50℃にて2時間攪拌しながら洗浄した。その後、UVオゾン処理を10分間ニッケル電鋳体に施した。
[0103]
 次いで、ニッケル電鋳体をダイキン化成品販売社製HD-2101THに約1分浸し、乾燥した後、一晩静置した。翌日、ニッケル電鋳体を、ダイキン化成品販売社製HDTH中に浸漬して約1分間超音波処理洗浄を行った。こうして離型処理されたニッケルモールドを得た。
[0104]
 次に、PET基板(東洋紡製、コスモシャインA-4100)上にフッ素系UV硬化性樹脂を塗布し、ニッケルモールドを押し付けながら、紫外線を600mJ/cm で照射することでフッ素系UV硬化性樹脂を硬化させた。樹脂が硬化後、ニッケルモールドを硬化した樹脂から剥離した。こうしてニッケルモールドの表面形状が転写された樹脂膜付きPET基板からなるフィルムモールドを得た。
[0105]
<フィルム部材の作製>
 密着性評価用の試験片の作製と同様にして、フィルム基材上にガスバリア(SiO )層を形成し、ゾルゲル材料溶液を塗布した。ゾルゲル材料溶液を塗布してから60秒後に、上記のようにして作製したフィルムモールドをゾルゲル材料層に重ね合わせ、80℃に加熱した押圧ロールを用いて押圧した。押圧が終了した後、フィルムモールドを剥離し、次いでオーブンを用いて300℃で60分加熱してゾルゲル材料層を硬化させた。こうしてフィルムモールドの凹凸パターンが転写されたゾルゲル材料層(SiO 層)からなる凹凸構造層が形成され、フィルム基材上にガスバリア層及び凹凸構造層をこの順で備えるフィルム部材が形成された。なお、押圧ロールは、内部にヒータを備え、外周が4mm厚の耐熱シリコーンが被覆されたロールであり、ロール径φが50mm、軸方向長さが350mmのものを用いた。
[0106]
 この凹凸構造層の凹凸パターンについて、表面の凹凸形状を原子間力顕微鏡(株式会社日立ハイテクサイエンス製の環境制御ユニット付走査型プローブ顕微鏡「NanonaviIIステーション/E-sweep」)を用いて解析画像を得た。原子間力顕微鏡の解析条件は、以下の通りである。
 測定モード:ダイナミックフォースモード
 カンチレバー:SI-DF40(材質:Si、レバー幅:40μm、チップ先端の直径:10nm)
 測定雰囲気:大気中
 測定温度:25℃
[0107]
<凹凸の平均深さ>
 凹凸構造層の任意の位置に10μm角(縦10μm、横10μm)の測定領域を測定して、上記のようにして凹凸解析画像を求めた。かかる凹凸解析画像中における、任意の凹部及び凸部との深さ方向の距離を100点以上測定し、その平均を算出して凹凸の平均深さとする。この例で得られた解析画像より凹凸構造層の凹凸パターンの平均深さは70nmであった。
[0108]
<凹凸解析画像のフーリエ変換像>
 凹凸構造層の任意の10μm角(縦10μm、横10μm)の測定領域を測定して上記のようにして凹凸解析画像を求めた。得られた凹凸解析画像に対し、1次傾き補正を含むフラット処理を施した後に、2次元高速フーリエ変換処理を施すことによりフーリエ変換像を得た。フーリエ変換像は波数の絶対値が0μm -1である原点を略中心とする円状の模様を示しており、且つ前記円状の模様が波数の絶対値が10μm -1以下の範囲内となる領域内に存在することが確認された。
[0109]
 なお、フーリエ変換像の円状の模様は、フーリエ変換像において輝点が集合することにより観測される模様である。ここにいう「円状」とは、輝点が集合した模様がほぼ円形の形状に見えることを意味し、外形の一部が凸状又は凹状となっているように見えるものも含む概念である。輝点が集合した模様がほぼ円環状に見えることもあり、この場合を「円環状」として表現する。なお、「円環状」は、環の外側の円や内側の円の形状がほぼ円形の形状に見えるものも含み且つかかる環の外側の円や内側の円の外形の一部が凸状又は凹状となっているように見えるものも含む概念である。また、なお、凹凸構造のパターンとフーリエ変換像との関係について、次のことが分かっている。凹凸構造自体にピッチの分布や指向性もない場合には、フーリエ変換像もランダムなパターン(模様がない)で現れるが、凹凸構造がXY方向に全体として等方的であるがピッチに分布がある場合には、円または円環状のフーリエ変換像が現れる。また、凹凸構造が単一のピッチを有する場合には、フーリエ変換像に現れる円環がシャープになる傾向がある。
[0110]
 前記凹凸解析画像の2次元高速フーリエ変換処理は、2次元高速フーリエ変換処理ソフトウエアを備えたコンピュータを用いた電子的な画像処理によって容易に行うことができる。
[0111]
<凹凸の平均ピッチ>
 凹凸構造層の任意の10μm角(縦10μm、横10μm)の測定領域を測定して上記のようにして凹凸解析画像を求めた。かかる凹凸解析画像中における、任意の隣り合う凸部同士又は隣り合う凹部同士の間隔を100点以上測定し、その平均を算出して凹凸の平均ピッチとした。この例で得られた解析画像より凹凸構造層の凹凸パターンの平均ピッチは900nmであった。
[0112]
<凹凸深さ分布の平均値>
 凹凸構造層の任意の10μm角(縦10μm、横10μm)の測定領域を測定して凹凸解析画像を求めた。その際に測定領域内の16384点(縦128点×横128点)以上の測定点における凹凸深さのデータをナノメートルスケールでそれぞれ求めた。この実施例で用いたE-sweepでは、10μm角の測定領域内において65536点(縦256点×横256点)の測定(256×256ピクセルの解像度での測定)を行った。このようにして測定される凹凸深さ(nm)に関して、先ず、全測定点のうち、基板の表面からの高さが最も高い測定点Pを求めた。そして、かかる測定点Pを含み且つ基板の表面と平行な面を基準面(水平面)として、その基準面からの深さの値(測定点Pにおける基板からの高さの値から各測定点における基板からの高さを差し引いた差分)を凹凸深さのデータとして求めた。なお、このような凹凸深さデータは、E-sweep中のソフトにより自動的に計算して求めることが可能であり、このような自動的に計算して求められた値を凹凸深さのデータとして利用できる。このようにして、各測定点における凹凸深さのデータを求めた後、凹凸の深さ分布の平均値(m)は、下記式(I)を用いて計算することにより求めることができる。
[0113]
[数1]


この例で得られた凹凸構造層の凹凸深さ分布の平均値(m)は、70nmであった。
[0114]
<凹凸深さの標準偏差>
 上述の深さ分布の平均値(m)の測定方法と同様にして凹凸構造層の10μm角の測定領域内の16384点(縦128点×横128点)以上の測定点において凹凸深さのデータを求めた。この例では、65536点(縦256点×横256点)での測定点を採用した。その後、各測定点の凹凸深さのデータに基づいて凹凸深さ分布の平均値(m)と凹凸深さの標準偏差(σ)を計算した。なお、平均値(m)は、上述のように、上記式(I)を計算して求めることができる。一方、凹凸深さの標準偏差(σ)は、下記式(II):
[0115]
[数2]


[式(II)中、Nは測定点の総数(総ピクセル数)を示し、x はi番目の測定点の凹凸深さのデータを示し、mは凹凸深さ分布の平均値を示す。]
を計算して求めることができ、凹凸構造層の凹凸深さの標準偏差(σ1)は48.1nmであった。
[0116]
<発光素子の作製>
 上記のようにして作製したフィルム部材を23mm×23mmの大きさに切り出し、このフィルム部材の外縁から6.5mm内側の領域が発光部(発光面積10mmx10mm)となるように以下のようにして発光素子を作製した。まず、ITOをスパッタ法で厚み120nmで成膜し、次いで、有機層として、正孔輸送層(4,4’,4’’トリス(9-カルバゾール)トリフェニルアミン、厚み:35nm)、発光層(トリス(2-フェニルピリジナト)イリジウム(III)錯体をドープした4,4’,4’’トリス(9-カルバゾール)トリフェニルアミン、厚み15nm、トリス(2-フェニルピリジナト)イリジウム(III)錯体をドープした1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン、厚み15nm)、電子輸送層(1,3,5-トリス(N-フェニルベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン、厚み:65nm)をそれぞれ蒸着法で積層した。さらに、フッ化リチウム層(厚み:1.5nm)、金属電極(アルミニウム、厚み:50nm)を蒸着した。こうして図4(a)に示すような、フィルム基材40上に、ガスバリア層30、凹凸構造層60、第1電極92としての透明電極、有機層94、第2電極としての金属電極98がそれぞれ形成された発光素子200を得た。
[0117]
 [電流効率の評価]
 作製した発光素子の輝度1000cd/m における電流効率を求めた。結果を図5の表中に示す。本実施例で作製した発光素子の電流効率は98cd/Aであった。
[0118]
 なお、電流効率は以下の方法で測定した。発光素子に電圧を印加し、印加電圧V及び発光素子に流れる電流Iを印加測定器(株式会社エーディーシー社製、R6244)にて、また全光束量Lをスペクトラ・コープ社製の全光束測定装置にて測定した。このようにして得られた印加電圧V、電流I及び全光束量Lの測定値から輝度値L’を算出し、電流効率については、下記計算式(F1):
   電流効率=(L’/I)×S・・・(F1)
を用いて、発光素子の電流効率を算出した。上記式において、Sは素子の発光面積である。なお、輝度L’の値は、発光素子の配光特性がランバート則にしたがうものと仮定し、下記計算式(F2)で換算した。
   L’=L/π/S・・・(F2)
[0119]
[劣化評価]
 第2電極成膜後に、フィルム部材の外周(発光層が形成されていない領域)に約1mm幅で封止材(ナガセケムテックス製、UV RESIN XNR 5516Z)を塗布した。封止材の塗布はディスペンスロボット(武蔵エンジニアリング製、SHOTMASTER300)を用いて行った。次いでエヌ・エス・ジー・プレシジョン株式会社製の封止ガラスをフィルム部材及び封止材に載せて押し付けた後、中心波長365nmのUV照射光源装置を用いて光量6J/cm でUV光を照射し、封止剤を硬化させた。
[0120]
 上記のようにして封止した発光素子を用いて、高湿度環境下での劣化試験を以下のように行った。まず、初期状態の発光素子に4Vの電圧を印加し、発光エリア中のダークスポット数をカウントした。次いで、発光素子を温度50℃、湿度90%の恒温恒湿槽中に保管した。恒温恒湿槽投入から3日後及び14日後に、発光素子に4Vの電圧を印加し、発光エリア中のダークスポット数をカウントした。ダークスポット数が20個以下であった場合を合格、ダークスポットが20個より多かった場合及びを発光エリア全面が非発光であった場合を不合格とした。評価結果を図5の表中に示す。なお、図5において、ダークスポット数が0個であった場合を「〇」、0個を超え20個以下であった場合を「△」、20個を超えていた場合及び発光エリア全面が非発光であった場合を「×」と表記している。本実施例で作製した発光素子は、初期状態、3日後、14日後のいずれにおいても、ダークスポット数が0個であり、合格であった。
[0121]
 比較例1
[密着性評価]
<試験片の作製>
 ガスバリア層としてSiO 層の代わりにAlO 層を形成した以外は実施例1と同様にして、密着性の評価に用いる試験片を作製した。この試験片は、フィルム基材/ガスバリア層(AiO 層)/ゾルゲル材料層(SiO 層)/ガスバリア層(AiO 層)/フィルム基材という構成を有する。ガスバリア層(AlO 層)は次のようにして蒸着法により形成した。まず、フィルム基材を真空チャンバー内に入れ、3×10 -4Paまで排気した。その後、マスフローメーターを用いて酸素をチャンバー内に導入しながらチャンバー内の圧力を5×10 -1Paに調節した。電子線(EB)を用いてアルミニウムターゲットを加熱し溶融させた。ついで、アルミニウムターゲット上のシャッター(蒸着シャッター)を開け、フィルム基材上へのAlO 層の堆積を開始した。成膜中は水晶振動子膜厚計で厚みをモニタリングし、150nmのAlO 層が形成されるまで蒸着を行った。
[0122]
<密着性評価試験>
 得られた試験片を用いて実施例1と同様にしてT字剥離試験をおこない、剥離強度を測定した。T字剥離の結果、ガスバリア層(AlO 層)とゾルゲル材料層(SiO 層)の界面で剥離が生じなかった。この時の剥離強度は、4N/mであった。よって、ガスバリア層とゾルゲル材料層の間の密着力は4N/mであり、実施例1と比べて密着力が小さいことがわかった。
[0123]
[発光素子の作製]
 ガスバリア層としてSiO 層の代わりにAlO 層を形成した以外は実施例1と同様にして、発光素子を作製した。ガスバリア層(AlO 層)は、本実施例における密着性評価用の試験片のガスバリア層と同様にして形成した。
[0124]
[電流効率の評価]
 作製した発光素子の電流効率を実施例1と同様にして求めた。結果を図5の表中に示す。本比較例で作製した発光素子の電流効率は95cd/Aであった。
[0125]
[劣化評価]
 上記のようにして作製した発光素子を、実施例1と同様にして封止し、実施例1と同様にして劣化評価を行った。評価結果を図5の表中に示す。本比較例で作製した発光素子は、初期状態においてはダークスポットが存在せず、合格であった。恒温恒湿槽投入から3日後はダークスポットが発生したが、20個以下であり、合格であった。恒温恒湿槽投入から14日後には20個を超えるダークスポットが発生したため不合格となった。
[0126]
 比較例2
[密着性評価]
<試験片の作製>
 ガスバリア層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、密着性の評価に用いる試験片を作製した。この試験片は、フィルム基材/ゾルゲル材料層(SiO 層)/フィルム基材という構成を有する。
[0127]
<密着性評価試験>
 得られた試験片を用いて実施例1と同様にしてT字剥離試験をおこない、剥離強度を測定した。T字剥離の結果、フィルム基材が破断し、層間剥離は生じなかった。この時の剥離強度の測定値は、50N/mから80N/mの間で振れた。よって、フィルム基材とゾルゲル材料層の間の密着力は20N/mを超える大きさであることがわかった。
[0128]
[発光素子の作製]
 ガスバリア層を形成しなかった以外は実施例1と同様にして、発光素子を作製した。
[0129]
[電流効率の評価]
 作製した発光素子の電流効率を実施例1と同様にして求めた。結果を図5の表中に示す。本比較例で作製した発光素子の電流効率は90cd/Aであった。
[0130]
[劣化評価]
 作製した発光素子を、実施例1と同様にして封止し、実施例1と同様にして劣化評価を行った。評価結果を図5の表中に示す。本比較例で作製した発光素子は、初期状態においてはダークスポットが存在せず、合格であった。恒温恒湿槽投入から3日後及び14日後は発光エリア全面が非発光であったため不合格となった。
[0131]
 図5の表に示されるように、実施例1の劣化評価の結果と比較例1、2の劣化評価の結果を比較すると、SiO またはAlO からなるガスバリア層を有する発光素子は、ガスバリア層を有さない発光素子と比べて劣化が小さいことがわかった。また、実施例1の劣化評価の結果と比較例1の劣化評価の結果を比較すると、SiO からなるガスバリア層を有する発光素子のほうがAlO からなるガスバリア層を有する発光素子と比べて劣化が小さいことがわかった。また、実施例1の密着性試験の結果と比較例1の密着性試験の結果を比べると、SiO からなるガスバリア層を有する発光素子のほうがAlO からなるガスバリア層を有する発光素子と比べてガスバリア層とゾルゲル材料層との間の密着性が高いことがわかった。このことから、ガスバリア層の凹凸構造層と接する面が、凹凸構造層と同じ材料であるSiO から形成されることにより、凹凸構造を有するフィルム部材の凹凸構造層とガスバリア層の間の密着性を向上させることができると考えられる。ガスバリア層の凹凸構造層と接する面が、凹凸構造層と同じ材料から形成される場合、ガスバリア層と凹凸構造層との間の密着力は20N/mより大きいため、フィルム部材の製造プロセス中に凹凸構造層がガスバリア層から剥離することがなく、有機EL素子等の発光素子製造プロセスにも十分に耐えられる。また、凹凸構造層とガスバリア層の間の密着性を向上させることにより、凹凸構造層とガスバリア層の間の界面を水分や酸素等のガスが透過することを防止できるため、フィルム部材のガスバリア性が向上すると考えられる。
[0132]
 以上、本発明を実施例及び比較例により説明してきたが、本発明のフィルム部材は上記実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内で適宜改変することができる。上記実施例ではフィルム部材のガスバリア層は単層であったが、複層(多層)にしてもよく、その場合も最表層、すなわち凹凸構造層と接する層(面)が凹凸構造層と同じ材料から形成されていることが望ましい。

産業上の利用可能性

[0133]
 本発明のフィルム部材は、ガスバリア層及び凹凸構造層が無機材料から形成されているため、ガスバリア性に優れ且つ光取出し効率が高い。ゆえに、このフィルム部材を用いて発光素子は、湿気や酸素等のガスによる劣化が抑制されて長寿命であり、かつ高い発光効率を有する。また、ガスバリア層の凹凸構造層と接する面が凹凸構造層を構成する材料と同じ材料からなるため、ガスバリア層と凹凸構造層の間の密着性が高く、凹凸構造層がガスバリア層から剥離することがない。また、凹凸構造層の形成に無機材料の前駆体(溶液)を用いることにより、ロールプロセスで正確且つ確実に凹凸構造層の凹凸パターンを形成することができ、それにより高スループットでフィルム部材を製造することができる。それゆえ、本発明の凹凸構造を有するフィルム部材は、有機EL素子や太陽電池のなどの各種デバイスにきわめて有効となる。また、本発明のフィルム部材は、光学基板に限らず種々の用途に使用することができる。例えば、太陽電池や各種ディスプレイ用の集光フィルム及び反射防止フィルムの製造、半導体チップなどの製造、ティッシュペーパーの製造などの製紙分野(例えば、ウェブの圧縮に使われるドラム)、製麺などの食品製造、微細な流路を備えたバイオチップ、ゲノム及びプロテオーム解析用のバイオチップ、細胞培養シート(細胞培養容器として用いるナノピラシート)、細胞分別用のマイクロチップなどのバイオ分野における製造等においても使用することができる。

符号の説明

[0134]
 22 光学機能層、 30 ガスバリア層、 40 基材
 60 凹凸構造層、 80 凹凸パターン、 92 第1電極
 94 有機層、 98 第2電極、100 フィルム部材
140 モールド、200 発光素子

請求の範囲

[請求項1]
 凹凸構造を有するフィルム部材であって、
 基材と、
 前記基材上に形成されたガスバリア層と、
 前記ガスバリア層の表面上に形成された凹凸構造層とを有し、
 前記ガスバリア層の表面と前記凹凸構造層が同じ無機材料から構成され、且つ前記凹凸構造層が、前記ガスバリア層上に付与された前駆体溶液から得られることを特徴とするフィルム部材。
[請求項2]
 前記ガスバリア層が単層膜であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム部材。
[請求項3]
 前記凹凸構造層の複数の凸部及び凹部が、
 i)平面視で、各々、うねりながら延在する細長い形状を有し、且つ
 ii)延在方向、屈曲方向及び長さが不均一であることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム部材。
[請求項4]
 前記ガスバリア層と前記凹凸構造層の間の密着力が4N/mより高いことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルム部材。
[請求項5]
 前記凹凸構造層の凹凸の平均ピッチが100~1500nmの範囲内であり、凹凸の深さ分布の平均値が20~200nmの範囲内であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のフィルム部材。
[請求項6]
 請求項1~5のいずれか一項に記載の凹凸構造を有するフィルム部材の製造方法であって、
 前記基材上に前記ガスバリア層を形成することと、
 前記ガスバリア層上に前記前駆体溶液を付与して膜を形成することと、
 前記膜に凹凸パターンを有するモールドを押し付けながら前記膜を硬化することで、前記モールドの前記凹凸パターンを前記膜に転写することとを含むフィルム部材の製造方法。
[請求項7]
 前記凹凸パターンを有するモールドをブロック共重合体の自己組織化を利用して製造することを特徴とする請求項6に記載のフィルム部材の製造方法。
[請求項8]
 溶媒アニールによって前記ブロック共重合体を自己組織化させることを特徴とする請求項7に記載のフィルム部材の製造方法。
[請求項9]
 請求項1~5のいずれか一項に記載のフィルム部材上に、第1電極、有機層及び金属電極を、順次積層して形成された有機EL素子。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]