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1. (WO2015170707) PROCÉDÉ DE FABRICATION ET DISPOSITIF DE FABRICATION POUR UN ARTICLE CISAILLÉ
Document

明 細 書

発明の名称 せん断加工部品の製造方法及び製造装置

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

非特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008   0009   0010   0011  

課題を解決するための手段

0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020  

発明の効果

0021  

図面の簡単な説明

0022  

発明を実施するための形態

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098  

産業上の利用可能性

0099  

符号の説明

0100  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2A   2B   3A   3B   3C   4   5   6A   6B   6C   7   8   9A   9B   9C   10   11   12   13   14   15   16A   16B   17  

明 細 書

発明の名称 : せん断加工部品の製造方法及び製造装置

技術分野

[0001]
 本発明は、せん断加工部品の製造方法及び製造装置に関し、具体的には、自動車、建設機械、各種プラント等で用いられる、高張力鋼や超高張力鋼からなるせん断加工部品の製造方法及び製造装置に関する。
 本願は、2014年05月08日に、日本国に出願された特願2014-097044号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。

背景技術

[0002]
 図16Aは、被加工材1をせん断加工して穴を形成する穴空け加工を模式的に示す断面図である。また、図16Bは、被加工材1をせん断加工して開断面を形成する切断加工を模式的に示す断面図である。
 自動車や建設機械、さらには各種プラント等で用いられるせん断加工部品の製造に際しては、図16A及び図16Bに示すように、ダイ3上に被加工材1を載置した後に、パンチ2を図中の白抜き矢印の方向に押し込むことによって被加工材1を打ち抜く、せん断加工で製造されることが多い。
[0003]
 図17は、せん断加工された被加工材1に形成されたせん断加工面8を示す断面図である。
 図17に示すように、せん断加工により形成された被加工材1のせん断加工面8は、被加工材1がパンチ2により押し込まれて形成されるダレ4と、パンチ2及びダイ3間のクリアランス内(以下、本明細書において特に断りなく「クリアランス」と表記した場合は、パンチ及びダイ間のクリアランスを意味する)に被加工材1が引き込まれて局所的に引き伸ばされて形成されるせん断面5と、パンチ2及びダイ3間のクリアランス内に引き込まれた被加工材1が破断して形成された破断面6と、被加工材1の裏面に生じるバリ7と、を含む。
[0004]
 せん断加工は、低コストで加工できる利点がある。しかしながら、近年は被加工材1に求められる硬度が高くなる傾向にあり、単純に今まで通りのせん断加工方法を適用するのが難しい。例えば引張強度が780MPaを超える高張力鋼板を被加工材1として用いる場合には、刃先の欠損により過大なバリ7が生じてしまうため、金型を頻繁に交換しなければならなくなり、生産性の低下が避けられない。
 なお、ここで言う「刃先の欠損」は、「刃先の摩耗」とは異なる現象である。すなわち、摩耗は、刃先の丸みが加工回数の増加とともに増していく現象であるのに対し、欠損は、刃先が割れにより欠けて無くなる現象である。
[0005]
 工具刃先の摩耗は、例えば非特許文献1に開示されるように、工具の表面にコーティング処理を行うことにより抑制することが多い。
 また、工具刃先の欠損に対しては、工具の締結部を柔軟なものとして、工具刃先が接触する際のショックを吸収及び緩和する方法や、例えば非特許文献2に開示されるようにパンチの刃先のみを丸めたり、面取りしたりする方法が知られている。

先行技術文献

非特許文献

[0006]
非特許文献1 : 型技術、第18巻、第8号、pp.8-9.
非特許文献2 : 平成25年度塑性加工学会春季講演大会予稿集、pp.193-194.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 上記非特許文献1に記載されているような、工具表面にコーティング処理をする方法は、工具表面と被加工材との間の摩擦抵抗を減らすことにより、工具寿命の向上を図るものである。しかしながら、この方法では、最大引張強度が780MPa以上の高張力鋼板をせん断する場合に、工具刃先への衝撃に起因する突発的な工具刃先欠損を防止することができない。
 また、上記非特許文献2に記載されている、パンチのみに刃先の丸みを付ける方法では、ダイの刃先欠損を防止することができない。なお、軟鋼のせん断加工に際しては、被加工材でバリが発生するのを防ぐために、パンチ及びダイの双方の刃先を鋭角にする必要が有り、上記非特許文献2に記載のような丸みや面取りを刃先に付けるとしても、パンチ及びダイの何れか一方のみに限定しないとせん断工具としての機能を十分に果たせない。
[0008]
 一方、本発明者らは、被加工材の硬度と工具(ダイやパンチなど)の硬度との比率がある値を超えた場合に、工具損傷の発生頻度が高まることを経験的に知っている。本発明者らが前記比率を実験により調べた結果を下表1に示す。なお、表1の工具評価において、GはGood(良好)、NGはNot Good(問題有り)を示す。
 上記実験結果よれば、被加工材のビッカース硬度が工具のビッカース硬度の0.3倍以上となる、高張力鋼や超高張力鋼において、工具損傷の発生頻度が急激に高まることがわかった。なお、表1の実験では、それぞれ鋭角の工具刃先を持つパンチ及びダイを用いて実験を行った。また、被加工材の板厚をtとした場合におけるパンチ及びダイ間のクリアランスを0.1×t~0.2×tの範囲で変更させたが結果に影響はなく、やはり、被加工材の硬度と工具の硬度との比率が支配的であることが確認された。
[0009]
[表1]


[0010]
 以上より、被加工材の硬度と工具の硬度との比率が0.3倍を境として、工具破損のメカニズムが大きく変わっていることが確認された。この点については、上記非特許文献1,2にも開示・示唆されていない。
 よって、従来では、高張力鋼や超高張力鋼からなる高強度の被加工材を工具刃先の欠損なしにせん断加工する手段が確立されていなかった。そのため、上述したような、工具刃先の欠損による過大なバリ7の発生を防ぐためには、金型を頻繁に交換せざるを得なかった。
[0011]
 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ビッカース硬度が工具のビッカース硬度の0.3倍以上となる高張力鋼や超高張力鋼からなる被加工材を用いても、突発的な刃先の欠損を生じることなく低コストでせん断加工部品を製造することが可能な、せん断加工部品の製造方法及び製造装置の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

[0012]
 本発明は、上記課題を解決して係る目的を達成するために、以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係るせん断加工部品の製造方法は、パンチのビッカース硬度及びダイのビッカース硬度の何れか低い方の0.3倍以上1.0倍未満のビッカース硬度を持つ被加工材に対して、前記パンチ及び前記ダイを用いて複数回のせん断加工を行うことにより、複数のせん断加工部品を製造する方法であって、前記ダイに前記被加工材を固定する工程と、前記パンチと前記ダイとを相対的に接近させて前記被加工材の打ち抜き加工を行う工程と、を含む前記せん断加工を複数回行い、これら一連のせん断加工の開始時に、前記被加工材に対向する第1先端面と、前記ダイへの接近方向を基準として前記第1先端面より後退した第1後退面を含む第1刃先と、を備える前記パンチと;前記被加工材に対向する第2先端面と、前記パンチへの接近方向を基準として前記第2先端面より後退した第2後退面を含む第2刃先と、を備える前記ダイと;を用いて前記せん断加工を行う。
[0013]
(2)上記(1)に記載の態様において、前記第1先端面に垂直な断面で見た場合の前記第1後退面が、下式1で規定されるRmin(mm)以上かつ下式2で規定されるRmax(mm)以下の曲率を持つ曲面、又は、前記第1先端面の接線に対して45°の傾斜角度と下式3で規定されるαmin(mm)以上かつ下式4で規定されるαmax(mm)以下の幅寸法とを有する面取りであり;前記第2先端面に垂直な断面で見た場合の前記第2後退面が、下式1で規定されるRmin(mm)以上かつ下式2で規定されるRmax(mm)以下の曲率を持つ曲面、又は、前記第2先端面の接線に対して45°の傾斜角度と下式3で規定されるαmin(mm)以上かつ下式4で規定されるαmax(mm)以下の幅寸法とを有する面取りである;ようにしてもよい。
 Rmin=(0.9+0.2e -0.08c)(0.3571x 2-0.2595x+0.0965) ...(式1)
 Rmax=(0.9+0.2e -0.08c)(-9.1856x 4+25.17x 3-24.95x 2+11.054x-1.5824) ...(式2)
 αmin=0.0222e 2.0833x (0.9+0.1e -0.07c) ...(式3)
 αmax=(0.9+0.1e -0.07c)(-0.3274x 2+0.9768x-0.1457) ...(式4)
 ここで、eは自然対数の底であり、c(mm)は、前記ダイの内側面と前記パンチの外側面との間のクリアランスを示し、xは、前記パンチにあっては前記パンチのビッカース硬度で前記被加工材のビッカース硬度を除算した硬度比であり、前記ダイにあっては前記ダイのビッカース硬度で前記被加工材のビッカース硬度を除算した硬度比であって、なおかつ、0.3≦x<1.0を満たす。
[0014]
(3)上記(2)の場合、前記第1後退面及び前記第2後退面の何れか一方もしくは両方が、0.05mm以上0.5mm以下の曲率を持つ曲面、または、C0.05mm以上C0.5mm以下の面取りであってもよい。
[0015]
(4)上記(1)~(3)の何れか一項に記載の態様において、前記パンチの、前記第1先端面、前記第1後退面、及び外側面のうち、前記第1後退面の摩擦抵抗が最も高い第1条件と、前記ダイの、前記第2先端面、前記第2後退面、及び内側面のうち、前記第2後退面の摩擦抵抗が最も高い第2条件と、の少なくとも一方を満たすようにしてもよい。
[0016]
(5)上記(1)~(4)の何れか一項に記載の態様において、前記被加工材に、表面脱炭処理、メッキ処理、及び個体潤滑処理の何れか一つが施されていてもよい。
[0017]
(6)本発明の他の態様に係るせん断加工部品の製造装置は、パンチのビッカース硬度及びダイのビッカース硬度の何れか低い方の0.3倍以上1.0倍未満のビッカース硬度を持つ被加工材に対して、複数回のせん断加工を行うことにより、複数のせん断加工部品を製造する装置であって、前記被加工材を固定するダイと、前記ダイに対して相対的に接近させて前記被加工材を打ち抜くパンチと、を備え、前記パンチが、前記被加工材に対向する第1先端面と、前記ダイへの接近方向を基準として前記第1先端面より後退した第1後退面を含む第1刃先とを備え、前記ダイが、前記被加工材に対向する第2先端面と、前記パンチへの接近方向を基準として前記第2先端面より後退した第2後退面を含む第2刃先とを備える。
[0018]
(7)上記(6)に記載の態様において、前記第1先端面に垂直な断面で見た場合の前記第1後退面が、下式1で規定されるRmin(mm)以上かつ下式2で規定されるRmax(mm)以下の曲率を持つ曲面、又は、前記第1先端面の接線に対して45°の傾斜角度と下式3で規定されるαmin(mm)以上かつ下式4で規定されるαmax(mm)以下の幅寸法とを有する面取りであり;前記第2先端面に垂直な断面で見た場合の前記第2後退面が、下式1で規定されるRmin(mm)以上かつ下式2で規定されるRmax(mm)以下の曲率を持つ曲面、又は、前記第2先端面の接線に対して45°の傾斜角度と下式3で規定されるαmin(mm)以上かつ下式4で規定されるαmax(mm)以下の幅寸法とを有する面取りである;構成を採用してもよい。
 Rmin=(0.9+0.2e -0.08c)(0.3571x 2-0.2595x+0.0965) ...(式1)
 Rmax=(0.9+0.2e -0.08c)(-9.1856x 4+25.17x 3-24.95x 2+11.054x-1.5824) ...(式2)
 αmin=0.0222e 2.0833x (0.9+0.1e -0.07c) ...(式3)
 αmax=(0.9+0.1e -0.07c)(-0.3274x 2+0.9768x-0.1457) ...(式4)
 ここで、eは自然対数の底であり、c(mm)は、前記ダイの内側面と前記パンチの外側面との間のクリアランスを示し、xは、前記パンチにあっては前記パンチのビッカース硬度で前記被加工材のビッカース硬度を除算した硬度比であり、前記ダイにあっては前記ダイのビッカース硬度で前記被加工材のビッカース硬度を除算した硬度比であって、なおかつ、0.3≦x<1.0を満たす。
[0019]
(8)上記(7)の場合、前記第1後退面及び前記第2後退面の何れか一方もしくは両方が、0.05mm以上0.5mm以下の曲率を持つ曲面、または、C0.05mm以上C0.5mm以下の面取りであってもよい。
[0020]
(9)上記(6)~(8)の何れか一項に記載の態様において、前記パンチの、前記第1先端面、前記第1後退面、及び外側面のうち、前記第1後退面の摩擦抵抗が最も高い第1条件と、前記ダイの、前記第2先端面、前記第2後退面、及び内側面のうち、前記第2後退面の摩擦抵抗が最も高い第2条件と、の少なくとも一方を満たすようにしてもよい。

発明の効果

[0021]
 本発明の上記各態様によれば、ビッカース硬度が工具のビッカース硬度の0.3倍以上となる高張力鋼や超高張力鋼からなる被加工材を用いても、突発的な刃先の欠損を生じることなく低コストでせん断加工部品を製造することが可能となる。

図面の簡単な説明

[0022]
[図1] 本発明の一実施形態に係るせん断加工装置の要部を示す図であって、ダイと、パンチ及び板押えとの間に被加工材を挟み込んだ状態を示す縦断面図である。
[図2A] 引張強度が780MPa未満の軟鋼板を被加工材としてせん断加工した場合におけるバリの発生状況を示す断面図である。
[図2B] 引張強度が780MPa以上の高張力鋼板を被加工材としてせん断加工した場合におけるバリの発生状況を示す断面図である。
[図3A] 高張力鋼板を被加工材としてせん断加工する際の、ダイの刃先とパンチの刃先とが欠損する際の詳細なメカニズムを説明するための図であって、せん断加工開始時の断面図である。
[図3B] 高張力鋼板を被加工材としてせん断加工する際の、ダイの刃先とパンチの刃先とが欠損する際の詳細なメカニズムを説明するための図であって、図3Aの続きの工程を示す断面図である。
[図3C] 高張力鋼板を被加工材としてせん断加工する際の、ダイの刃先とパンチの刃先とが欠損する際の詳細なメカニズムを説明するための図であって、図3Bの続きの工程を示す断面図である。
[図4] 工具刃先における塑性変形量の大きさ分布をシミュレーション計算で求めた結果を示す図である。
[図5] 3種類の鋼材を被加工材として工具刃先が破損するまで連続穴空け加工を行った際のショット数を示す棒グラフであり、横軸が工具刃先の丸みの曲率半径を示し、縦軸がショット数を示す。
[図6A] 軟鋼板を被加工材として連続穴空け加工を行った際のバリ高さの、ショット数に伴う推移を示すグラフである。
[図6B] 590MPa鋼板を被加工材として連続穴空け加工を行った際のバリ高さの、ショット数に伴う推移を示すグラフである。
[図6C] 780MPa高張力鋼板を被加工材として連続穴空け加工を行った際のバリ高さの、ショット数に伴う推移を示すグラフである。
[図7] 工具刃先に面取りを設けた場合の断面形状を示す図であって、パンチの要部断面図である。
[図8] 3種類の鋼材を被加工材として工具刃先が破損するまで連続穴空け加工を行った際のショット数を示す棒グラフであり、横軸が工具刃先の面取り寸法を示し、縦軸がショット数を示す。
[図9A] 軟鋼板を被加工材として連続穴空け加工を行った際のバリ高さの、ショット数に伴う推移を示すグラフである。
[図9B] 590MPa鋼板を被加工材として連続穴空け加工を行った際のバリ高さの、ショット数に伴う推移を示すグラフである。
[図9C] 780MPa高張力鋼板を被加工材として連続穴空け加工を行った際のバリ高さの、ショット数に伴う推移を示すグラフである。
[図10] 被加工材に表面処理として溶融亜鉛メッキを施した場合におけるバリ高さ低減の効果を示すグラフである。
[図11] 本実施形態の変形例を示す図であって、パンチ及びダイのそれぞれに磨き分けを行った場合における工具刃先部分の拡大断面図である。
[図12] 工具刃先が破損するまで連続穴空け加工を行った際のショット数を示す棒グラフであり、横軸が工具刃先の丸みの曲率半径、又は面取り寸法を示し、縦軸が工具破損までのショット数を示す。
[図13] 連続穴空け加工を行った際のバリ高さの、ショット数に伴う推移を示すグラフである。
[図14] 工具の他の変形例を示す図であって、工具の先端面に垂直な断面で見た場合の工具刃先部分の断面図である。
[図15] 工具のさらに他の変形例を示す図であって、工具の先端面に垂直な断面で見た場合の工具刃先部分の断面図である。
[図16A] 被加工材をせん断加工して穴を形成する穴空け加工を模式的に示す図であって、パンチの軸線を含む断面で見た場合の縦断面図である。
[図16B] 被加工材をせん断加工して開断面を形成する切断加工を模式的に示す図であって、被加工材の厚み方向の断面で見た場合の縦断面図である。
[図17] せん断加工により形成された被加工材のせん断加工面を示す図であって、被加工材表面に垂直な断面で見た場合の断面図である。

発明を実施するための形態

[0023]
 本発明のせん断加工部品の製造方法及び製造装置に関する実施形態および変形例等について、以下に説明する。
 図1に、本発明の一実施形態に係るせん断加工装置の要部を示す。同図に示すように、本実施形態におけるせん断加工部品の製造装置100は、被加工材1を上下より挟み込んで固定するダイ120及び板押え130と、ダイ120に対して相対的に接近して被加工材1を打ち抜くパンチ110と、を備えている。
 せん断加工部品の製造装置100は、パンチ110のビッカース硬度及びダイ120のビッカース硬度の何れか低い方の0.3倍以上1.0倍未満のビッカース硬度を持つ高張力鋼板を被加工材1として、複数回のせん断加工を行うことにより、複数のせん断加工部品を製造する装置である。
[0024]
 パンチ110は、被加工材1に対向する第1先端面111と、ダイ120への接近方向を基準として第1先端面111より後退した第1後退面112を含む第1刃先113とを備える。一方、ダイ120は、被加工材1に対向する第2先端面121と、パンチへ110の接近方向を基準として第2先端面121より後退した第2後退面122を含む第2刃先123とを備えている。
 ダイ120は、被加工材1が載置される台座であり、パンチ110の、同パンチ110の軸線に垂直な断面における外側面114に対して所定のクリアランスcを形成する内側面である貫通孔124が、前記パンチ110と同軸に形成されている。
 板押え130は、ダイ120上に載置された被加工材1をダイ120との間に挟み込んで固定する工具であり、ダイ120と同様に、前記パンチ110と同軸の貫通孔131が形成されている。
[0025]
 ビッカース硬度が工具のビッカース硬度の0.3倍以上となる高張力鋼や超高張力鋼(以下、纏めて「高強度鋼」と呼ぶ場合がある)からなる被加工材をせん断加工した際に生じる工具刃先の欠損に関するメカニズムは、詳しくは知られていない。そこで、本発明者らは実験によりそのメカニズムを確認した。本発明は、その際に得た知見を基に完成させたものである。
[0026]
 まず、本発明者らは、引張強度が780MPaである高張力鋼板を被加工材としてせん断加工を行った場合の工具耐久試験を行った。この工具耐久試験の結果、工具刃先の損傷が起こらない場合であっても、最初の1000ショットまでに刃先がほぼ鋭角な状態から半径0.05mm以上に摩耗することを知見した。
[0027]
 この際、工具刃先がこのような大きな丸みを有するにもかかわらず、被加工材のせん断加工部におけるバリは、高さ100μm以下の軽微なものであった。刃先が丸い状態で突発的な欠損を防止できることは、例えば上述の非特許文献2に開示されていたが、これまでに引張強度が780MPa未満の鋼板(以下、便宜的に「軟鋼板」と言う)を被加工材とする場合には、パンチまたはダイのいずれか一方の刃先を必ず鋭角にしなければ、大きなバリが生じることが知られていた。よって、軟鋼板では、パンチおよびダイ両方の刃先を丸めたり、もしくは面取りしたりすると、大きなバリが生じることが当業者の技術常識であり、そのような切れ味の悪い工具刃先を持つ工具をあえて積極的に使用することは行われてこなかった。従来は、高強度鋼からなる被加工材についても同様であると一般的に考えられていたために、切れ味が悪いと思われる工具刃先を使用することは避けられていた。
[0028]
 鋼板の硬度(又は引張強度)によってせん断加工部のバリ高さが異なる理由は、鋼板の硬度(又は引張強度)に応じて鋼板の延性が異なるためであると考えられた。そこで、被加工材として軟鋼を用いた場合と高強度鋼を用いた場合との双方におけるバリの発生状況を調べるために、図2A及び図2Bに示すせん断加工試験を行った。
 図2A及び図2Bは、鋼板のせん断加工時におけるバリの発生状況を示す部分断面図である。図2Aは、引張強度が780MPa未満の軟鋼板を被加工材1Aとして用いる場合を示し、図2Bは、引張強度が780MPa以上の高張力鋼板を被加工材1として用いる場合を示している。
[0029]
 図2Aに示すように、被加工材1Aが引張強度780MPa未満の延性の高い軟鋼板である場合には、塑性流動fが充分に起こった後に破断に至るため、工具200の刃先201が丸いときには部分Aにおいて過大なバリが発生した。これに対し、図2Bに示すように、被加工材1Aが引張強度780MPa以上の高張力鋼板のような延性の乏しい材料である場合には、塑性流動が十分に起きず、工具200の刃先201が丸くてもバリ高さがあまり高くならずに軽微なバリが部分Bにおいて発生した。
 以上の試験結果より、せん断加工部のバリ高さが鋼板の硬度(又は引張強度)に応じて異なるのは、鋼板の延性が異なるためであることが推察された。
[0030]
 高張力鋼板をせん断する際の、ダイの刃先とパンチの刃先とが欠損する際のより詳細なメカニズムを特定すべく、ダイの刃先とパンチの刃先とがどのように欠損するのかを、実験により確認した。
 その結果について図3A~図3Cを用いて説明する。本実験では、引張強度780MPa以上の高張力鋼板からなる被加工材1を、それぞれが鋭角な工具刃先を持つパンチ300及びダイ310によりせん断加工した。
[0031]
 図3Aは、パンチ300及びダイ310により被加工材(高張力鋼板)1に穴空け加工をする際の初期過程を示す部分断面図であり、白抜き矢印に示すように、ダイ310に対してパンチ300を接近させていく状況を示している。なお、同図に示すように、パンチ300の刃先301及びダイ310の刃先311の両方とも、初期過程では直角な角を持つ断面形状を有している。
[0032]
 図3Bは、図3Aよりもパンチ300をダイ310に近づけた状態を示す部分断面図である。パンチ300及びダイ310間の被加工材1がせん断される際、刃先301,311間を結ぶ直線を境として、被加工材1の一方から他方、他方から一方に向かう塑性流動が形成される。これら塑性流動は、流路が狭くなる刃先301,311間において特に圧力が高く、刃先301,311を自らの流れに沿って押しやるように加圧して塑性変形させる。
 その結果、刃先301,311は、本来の位置よりも突出した突起となるが、さらにパンチ300をダイ310に近づけて図3Cの過程に至ると、刃先301は塑性流動による押圧力を受けてパンチ300の外側面にまで移動し、ついには欠損する。同様に、刃先311も塑性流動による押圧力を受けてダイ310の内側面まで移動し、そして欠損する。
[0033]
 このような刃先301,311の欠損が生じる原因としては、次のようなことが推察された。まず、せん断加工の進行に伴って刃先301,311間の間隔が狭まり、上述のような塑性流動が形成される。その際、もし被加工材1が軟鋼であれば、硬くないため、刃先301,311に対して高い応力を負荷する前に、塑性流動が刃先301,311間を通り抜けてしまう。
[0034]
 しかし、被加工材1が高張力鋼板の場合、その硬さ故、刃先301,311に当たる部分も含めて大きく自由に移動することができない。そのため、被加工材1のうち、刃先301,311に当たる部分は高い圧力を維持して止まったままとなり、刃先301,311に対して高い応力を負荷し続け、ついには刃先301,311のそれぞれを本来の位置よりも押し出すように塑性変形させることとなる。
 続いて、パンチ300の外側面に押し出された刃先301は、今度は、パンチ300周囲の被加工材1との相対変移によるせん断力を受けて欠損する。同様に、ダイ310の内側面に押し出された刃先311も、ダイ310内の被加工材1との相対変移によるせん断力を受けて欠損する。
[0035]
 以上の実験結果を含めて検討した結果、ビッカース硬度が工具のビッカース硬度の0.3倍以上となる高張力鋼や超高張力鋼からなる被加工材をせん断加工する際には、軟鋼では敬遠されていた丸みや面取りを積極的に工具の刃先、すなわちパンチ300の刃先301とダイ310の刃先311との両方に付与することが、工具の突発的な刃先の欠損に起因した過大なバリを抑制する上で効果的であると判断された。
[0036]
 そして、本発明者らは、工具刃先に付与する丸みや面取りの大きさについても詳細検討を試みた。以下にその検討結果を説明する。
 まず、工具刃先に丸みを付ける場合の曲率半径について検討した。具体的には、被加工材のビッカース硬度Hw、工具のビッカース硬度Ht、そして工具間(パンチ及びダイ間)のクリアランスcのそれぞれを設定した上で、工具刃先に生じる塑性変形量をシミュレーション計算した。シミュレーション計算結果の一例を、図4に示す。この図4の例では、塑性変形量の大きさを色分けしており、刃先最先端である符合Hの箇所において、塑性変形量が最大値になっている。この塑性変形量が許容範囲を超えるものであれば、工具刃先における丸みの曲率半径を大きくして再計算し、塑性変形量が前記許容範囲内となる条件を満たす丸みの最小曲率半径を求めた。そして、求まった丸みの最小曲率半径を、上記設定における丸み(R値)の最小値Rminとした。
 上記のようなシミュレーション計算を、被加工材のビッカース硬度Hw、工具のビッカース硬度Ht、そして工具間のクリアランスcそれぞれの組み合わせを変えながら行った。その結果を下表2に示す。
[0037]
[表2]


[0038]
 そして、上表2のシミュレーション計算結果に基づき、前記Rminを、硬度比x及び工具間のクリアランスcの関数である下記(式1)として求めた。
 Rmin=(0.9+0.2e -0.08c)(0.3571x 2-0.2595x+0.0965) ..(式1)
 ここで、Rminの単位は(mm)であり、eは自然対数の底である。
 また、c(mm)は、工具間のクリアランスであり、穴空け工具の場合には、ダイの内側面とパンチの外側面との間のクリアランスを示す。
 また、xは、被加工材のビッカース硬度Hw(MPa)を工具のビッカース硬度Ht(MPa)で除算した無次元数であるx=Hw/Htを示し、なおかつ、後述の理由により0.3≦x<1.0を満たす値となっている。例えば穴空け工具の場合、xは、パンチにあってはパンチのビッカース硬度で被加工材のビッカース硬度を除算した硬度比であり、ダイにあってはダイのビッカース硬度で被加工材のビッカース硬度を除算した硬度比である。
[0039]
 前記硬度比xの下限値が0.3(0.3≦x)である理由は、表1の実験結果に基づいて説明したように、本発明が前記比率として0.3倍以上の被加工材を適用対象としているからである。また、前記硬度比xの上限値が1.0未満(x<1.0)である理由は、被加工材のビッカース硬度Hwが工具のビッカース硬度Htを超えると硬度バランスが逆転して加工できないからである。以上の理由より、硬度比は0.3≦x<1.0を満たす値となっている。
[0040]
 シミュレーション計算結果に基づいて得た上記式1の妥当性を検証するために、本発明者らは、パンチ及びダイ双方の刃先を、
(1)鋭角とした場合と、
(2)半径0.01mmの丸みを付けた場合と、
(3)半径0.04mmの丸みを付けた場合と、
(4)半径0.05mmの丸みを付けた場合と、
(5)半径0.50mmの丸みを付けた場合と、
(6)半径0.60mmの丸みを付けた場合と、
(7)半径1.00mmの丸みを付けた場合と、
のそれぞれについて、直径10mmの穴空け加工を繰り返す工具耐久試験を行った。
[0041]
 被加工材としては、引張強度が270MPaの軟鋼板、590MPa鋼板、780MPa高張力鋼板の3鋼種を用いた。そして、パンチ及びダイ間のクリアランスを15%t(%tは、被加工材の板厚に対するクリアランス幅の割合を示す。本例の場合には、被加工材の板厚をt(mm)とした場合に、クリアランスは0.15×t(mm)となる)として、最大で2万ショットの連続穴空け加工を行った。
[0042]
 図5に、工具刃先が破損するまでのショット数を棒グラフで示す。
 図5に示すように、軟鋼板(270MPa鋼板)や590MPa鋼板を被加工材とした場合には、いずれの丸み寸法の工具条件であっても、工具刃先は破損しなかった(図5中の矢印は、2万ショット後でも破損がなかったことを示す。以下、他の図の棒グラフも同様である)。一方、780MPa高張力鋼板を被加工材とした場合には、工具刃先が鋭角のケースとR0.01mmのケースとR0.04mmのケースとにおいて工具刃先の破損が生じたのに対し、本発明例であるR0.05mm~R1.00mmのケースでは工具刃先の破損が生じなかった。なお、使用した工具のビッカース硬度は653Hv、軟鋼板のビッカース硬度は82Hv、590MPa鋼板のビッカース硬度は184Hv、780MPa高張力鋼板のビッカース硬度は245Hvであった。なお、各鋼板とビッカース硬度値との対応関係は、本実施形態に記載の他の実験においても同様である。
[0043]
 より詳細に言うと、図5に示されるように、丸みが半径0.04mm以下である上記(1)~(3)の場合に比べて、丸みを半径0.05mm以上とした上記(4)~(7)の場合において、工具寿命の顕著な延びが確認された。当然ながら、工具刃先の突発的な欠損に起因する過大なバリも発生しなかった。
 先に示した上記式1を求めたシミュレーション計算結果においても、丸みの半径を0.05mm以上にすることで塑性変形量が抑えられることが確認されている。したがって、上記式1に基づいて、刃先に付与する丸みの下限値Rminを推定することが有効であることが確認された。
[0044]
 続いて、工具刃先の丸みの上限値Rmaxについて検討した。
 工具刃先の丸み寸法が必要上に大きすぎると、せん断加工後の被加工材に生じるバリの高さ寸法が許容以上に高くなる傾向にあるので、許容できるバリ高さに対応する丸み寸法に基づいて上限値を定めることとした。具体的には、上記(1)~(7)それぞれのケースにおいて、せん断加工を行い、所定のショット数毎にバリ高さを求めた。
[0045]
 図6A~図6Cに、連続穴空け加工により形成した穴部でのバリ高さがショット数に伴って推移する様子をグラフで示す。図6Aは、軟鋼板を被加工材とした場合のグラフである。図6Bは、590MPa鋼板を被加工材とした場合のグラフである。図6Cは、780MPa高張力鋼板を被加工材とした場合のグラフである。なお、これら被加工材のうちで本発明が対象とするのは、図6Cに示す780MPa高張力鋼板であり、図6A及び図6Bは参考として示したものである。
[0046]
 図6A及び図6Bのグラフに示すように、軟鋼板や590MPa鋼板を被加工材とした場合は、工具刃先を鋭角やR0.01mmの丸みにしたケースを除き、全てのショット数を通じてバリ高さが0.2mm以上であった。
[0047]
 一方、図6Cに示すように、780MPa高張力鋼板を被加工材とした場合には、工具刃先の丸みがR0.5mm以下においてバリ高さを0.2mm以下に抑えることが出来たものの、工具刃先の丸みがR0.6mm以上ではバリ高さが急激に高くなっていることが確認された。
 より具体的に言うと、図6Cに示すように、丸みの曲率半径が0.6mm以上である(6)~(7)の場合ではバリ高さを許容範囲内に抑えられないものの、丸みの曲率半径が0.5mm以下である(2)~(5)の場合においてはバリ高さを許容範囲内に抑えられることが確認された。
[0048]
 図6Cの実験結果を受け、780MPa級鋼以上の高張力鋼や超高張力鋼を被加工材として、同被加工材のビッカース硬度Hw、工具のビッカース硬度Ht、そして工具間(パンチ及びダイ間)のクリアランスc、の組み合わせを変えた場合について、バリ高さを抑えられる、工具刃先の丸みの曲率半径の最大値Rmaxの傾向を求める実験を行った。
 すなわち、高張力鋼や超高張力鋼を被加工材として、同被加工材のビッカース硬度Hw、工具のビッカース硬度Ht、そして工具間(パンチ及びダイ間)のクリアランスc、の組み合わせを複数設定した上で、それぞれのケースについて、連続穴空け加工を上限2万ショットとして行った。そして、各設定条件の下、バリ高さを0.2mm以下に抑えられた工具刃先の丸みの曲率半径の最大値を、前記Rmaxとして求めた。その結果を下表3に示す。
[0049]
[表3]


[0050]
 そして、上表3の実験結果に基づき、前記Rmaxを、硬度比x及び工具間のクリアランスcの関数である下記(式2)として求めた。
 Rmax=(0.9+0.2e -0.08c)(-9.1856x 4+25.17x 3-24.95x 2+11.054x-1.5824) ..(式2)
 ここで、Rmaxの単位は(mm)であり、硬度比xやクリアランスc等については、上記(式1)において説明したものと同じである。
[0051]
 以上の実験結果より、780MPa級鋼を含む高張力鋼を被加工材とする場合、発生するバリ高さが許容される程度に軽微であってかつ工具刃先の突発的な欠損を生じないためには、工具刃先の曲率半径を0.05mm~0.5mmとする必要が有ることがわかった。また、被加工材の対象を超高張力鋼も含むより広い範囲とした場合には、工具刃先の曲率半径を前記Rmin以上前記Rmax以下の範囲内とすることで、発生するバリが許容される程度に軽微であってかつ工具刃先の突発的な欠損を生じないことがわかった。
 なお、パンチ及びダイ双方の工具刃先を、一連のせん断加工の開始時に、半径0.05mm~0.5mm、又は前記Rmin以上前記Rmax以下に丸めるための手段としては、NC加工機による研削等が例示される。
[0052]
 よって、パンチ110及びダイ120を備え、被加工材1である最大引張強度が780MPa級である多数枚の高張力鋼板に連続してせん断加工を行うことによりせん断加工部品を量産するせん断加工部品の製造装置100においては、パンチ110及びダイ120双方の工具刃先113,123が、一連のせん断加工の開始時に、半径0.05mm~0.5mmに丸められていることが好ましい。さらには、被加工材1の対象を超高張力鋼も含むより広い範囲とした場合には、工具刃先113,123の半径が、前記Rmin以上前記Rmax以下の範囲内とすることが好ましい。
 上記構成を持つパンチ110及びダイ120を備える、せん断加工部品の製造装置100によれば、最大引張強度が780MPa級である高張力鋼板、またはそれ以上の最大引張強度を持つ超高張力鋼を多数枚、連続してせん断加工を行った場合、発生するバリが許容される程度に軽微であってかつ工具刃先113,123の突発的な欠損を生じることなく、せん断加工部品を量産することが可能になる。
[0053]
 続いて、工具刃先に面取りCを付ける場合についても検討した。具体的には、被加工材のビッカース硬度Hw、工具のビッカース硬度Ht、そして工具間(パンチ及びダイ間)のクリアランスcのそれぞれをある値に仮定した上で、工具刃先に生じる塑性変形量をシミュレーション計算した。シミュレーション計算の結果は先に説明した図4と同様に、塑性変形量の大きさに応じて色分けした(図4と同様であるので図示略)。
 そして、塑性変形量の最大値が許容範囲を超えるものであれば、工具刃先における面取り寸法C大きくして再計算し、塑性変形量が前記許容範囲内となる条件を満たす面取り寸法Cを求めた。そして、求まった面取り寸法Cを、上記設定における最小値αminとした。
[0054]
 なお、面取りCの各寸法の対応関係は図7に示す通りである。図7において、白抜き矢印aがパンチ110の移動方向を示し、符合lがパンチ110の先端面111(第1先端面)の接線を示し、符合112が第1後退面である面取りを示し、符合114が側面(外側面)を示している。
 先端面111の接線lに対する傾斜角度θとしては45°を設定している。このθについても別途検討したところ、10°<θ<60°の範囲内であれば前記αminへの影響が少ないことが確認されている。したがって、変数を減らしてデータを取り扱いやすくするためにθ=45°に固定の下、被加工材のビッカース硬度Hw、工具のビッカース硬度Ht、そして工具間のクリアランスcそれぞれの組み合わせを変えながら上記シミュレーション計算を行った。その結果を下表4に示す。
[0055]
[表4]


[0056]
 そして、上表4のシミュレーション結果に基づき、前記αminを、硬度比x及び工具間のクリアランスcの関数である下記(式3)として求めた。
[0057]
 αmin=0.0222e 2.0833x (0.9+0.1e -0.07c) ...(式3)
 ここで、eは自然対数の底である。
 また、c(mm)は、前記ダイ120の内側面124と前記パンチ110の外側面114との間のクリアランスを示す。
 また、xは、被加工材1のビッカース硬度Hw(MPa)を工具のビッカース硬度Ht(MPa)で除算した無次元数であるx=Hw/Htを示し、なおかつ、前述の理由により0.3≦x<1.0を満たす値となっている。例えば、穴空け工具の場合、xは、パンチ110にあってはパンチ110のビッカース硬度で被加工材1のビッカース硬度を除算した硬度比であり、ダイ120にあってはダイ120のビッカース硬度で被加工材1のビッカース硬度を除算した硬度比である。
[0058]
 シミュレーション計算結果に基づいて得た上記式3の妥当性を検証するために、本発明者らは、パンチ110およびダイ120の双方の刃先を、
(8)鋭角とした場合と、
(9)C0.01mmの面取りを付けた場合と、
(10)C0.04mmの面取りを付けた場合と、
(11)C0.05mmの面取りを付けた場合と、
(12)C0.50mmの面取りを付けた場合と、
(13)C0.60mmの面取りを付けた場合と、
(14)C1.00mmの面取りを付けた場合と、
のそれぞれについて、直径10mmの連続穴空け加工を対象として工具耐久試験を行った。
[0059]
 被加工材としては、引張強度が270MPaの軟鋼板、590MPa鋼板、780MPa高張力鋼板の3鋼種を用い、パンチ及びダイ間のクリアランスを15%t(%tは、被加工材の板厚に対するクリアランス幅の割合を示す。本例の場合には、被加工材の板厚をt(mm)とした場合に、クリアランスは0.15×t(mm)となる)として最大で2万ショットの連続穴空け加工を行った。
[0060]
 図8に、工具刃先が破損するまでのショット数を棒グラフで示す。
 図8に示すように、軟鋼板や590MPa鋼板を被加工材とした場合には、いずれの面取り条件であっても工具刃先は破損しなかった。一方、780MPa級鋼張力鋼板を被加工材とした場合には、工具刃先が鋭角のケースとC0.01mmのケースとC0.04mmのケースとにおいて工具破損が生じたのに対し、本発明例であるC0.05mm~C1.00mmのケースでは、工具刃先の破損が生じなかった。
[0061]
 より詳しく言うと、図8に示されるように、面取りがC0.04mm以下である上記(8)~(10)の場合に比べて、面取りをC0.05mm以上とした上記(11)~(14)の場合において、工具寿命の顕著な延びが確認された。当然ながら、工具刃先の突発的な欠損に起因する過大なバリも発生しなかった。
 先に示した上記式3を求めたシミュレーション計算結果においても、面取りをC0.05mm以上にすることで塑性変形量が抑えられることが確認されている。したがって、上記式3に基づいて、工具刃先に付与する面取り寸法の下限値αminを推定することが有効であることが確認された。
[0062]
 続いて、工具刃先の面取り寸法の上限値αmaxについて検討した。
 すなわち、工具刃先の面取り寸法が必要以上に大きすぎると、せん断加工後の被加工材に生じるバリの高さ寸法が許容以上に高くなる傾向にあるので、許容できるバリ高さに対応する面取り寸法に基づいて上限値を定めることとした。具体的には、上記(8)~(14)それぞれのケースにおいて、せん断加工を行い、所定のショット数毎にバリ高さを求めた。
[0063]
 図9A~図9Cは、連続穴空け加工により形成した穴部でのバリ高さがショット数に伴って推移する様子を示すグラフである。図9Aは、軟鋼板を被加工材とした場合のグラフである。図9Bは、590MPa鋼板を被加工材とした場合のグラフである。図9Cは、780MPa高張力鋼板を被加工材とした場合のグラフである。なお、これら被加工材のうちで本発明が対象とするのは、図9Cに示す780MPa高張力鋼板の場合であり、図9A及び図9Bは参考として示したものである。
[0064]
 図9A及び図9Bのグラフに示すように、軟鋼板や590MPa鋼板を被加工材とした場合は、工具刃先を鋭角やC0.01mmにしたケースを除き、全てのショット数を通じてバリ高さが0.2mm以上であった。
[0065]
 一方、図9Cに示すように、780MPa高張力鋼板を被加工材とした場合には、工具刃先の面取り寸法がC0.50mm以下においてバリ高さを0.2mm以下に抑えることが出来たものの、工具刃先の面取りがC0.60mm以上ではバリ高さが急激に高くなっていることが確認された。
 より具体的に言うと、図9Cに示すように、面取り寸法がC0.60mm以上である(13)~(14)の場合ではバリ高さを許容範囲内に抑えられないものの、面取り寸法がC0.50mm以下である(9)~(12)の場合においてはバリ高さを許容範囲内に抑えられることが確認された。
[0066]
 図9Cの実験結果を受け、780MPa級鋼以上の高張力鋼や超高張力鋼を被加工材として、同被加工材のビッカース硬度Hw、工具のビッカース硬度Ht、そして工具間(パンチ及びダイ間)のクリアランスc、の組み合わせを変えた場合について、面取り寸法の最大値αmaxの傾向を求める実験を行った。
 すなわち、高張力鋼や超高張力鋼を被加工材として、同被加工材のビッカース硬度Hw、工具のビッカース硬度Ht、そして工具間(パンチ及びダイ間)のクリアランスc、の組み合わせを複数設定した上で、それぞれのケースについて、連続穴空け加工を上限2万ショットとして行った。そして、各設定条件の下、バリ高さを0.2mm以下に抑えられた工具刃先の面取り寸法の最大値を、前記αmaxとして求めた。その結果を下表5に示す。
[0067]
[表5]


[0068]
 そして、上表5の実験結果に基づき、前記αmaxを、硬度比x及び工具間のクリアランスcの関数である下記(式4)として求めた。
 αmax=(0.9+0.1e -0.07c)(-0.3274x 2+0.9768x-0.1457) ...(式4)
 ここで、αmaxの単位は(mm)であり、硬度比xやクリアランスc等については、上記(式3)において説明したものと同じである。
[0069]
 以上の実験結果より、780MPa級鋼以上の高張力鋼や超高張力鋼を被加工材とする場合には、発生するバリが許容される程度に軽微であってかつ工具刃先の突発的な欠損を生じないための、工具刃先の面取り寸法は、C0.05mm~C0.5mmであることが求められた。また、被加工材の対象を超高張力鋼も含むより広い範囲とした場合には、工具刃先の面取り寸法が、前記αmin以上前記αmax以下の範囲内とすることで、発生するバリが許容される程度に軽微であってかつ工具刃先の突発的な欠損を生じないことが求められた。
 なお、パンチ及びダイ双方の工具刃先を、一連のせん断加工の開始時に、C0.05mm~C0.5mm、又は前記αmin以上前記αmax以下に面取りするための手段としては、NC加工機による研削等が例示される。
[0070]
 よって、パンチ110及びダイ120を備え、被加工材1である最大引張強度が780MPa級である多数枚の高張力鋼板に連続してせん断加工を行うことによりせん断加工部品を量産するせん断加工部品の製造装置100においては、パンチ110及びダイ120双方の工具刃先113,123が、一連のせん断加工の開始時に、C0.05mm~C0.5mmに面取りされていることが好ましい。さらには、被加工材1の対象を超高張力鋼も含むより広い範囲とした場合には、工具刃先113,123の面取り寸法を、前記αmin以上前記αmax以下の範囲内とすることが好ましい。
 このせん断加工部品の製造装置によれば、被加工材1である最大引張強度が780MPa級である高張力鋼板、またはそれ以上の最大引張強度を持つ超高張力鋼を多数枚、連続してせん断加工を行うことにより、発生するバリが許容される程度に軽微であってかつ工具刃先の突発的な欠損を生じることなく、せん断加工部品を量産することが可能になる。
[0071]
 以上説明の本実施形態の骨子を以下に纏める。
(A)本実施形態に係るせん断加工部品の製造方法及び製造装置は、パンチ110のビッカース硬度及びダイ120のビッカース硬度の何れか低い方の0.3倍以上1.0倍未満のビッカース硬度を持つ被加工材1に対して、前記パンチ110及び前記ダイ120を用いて複数回のせん断加工を行うことにより、複数のせん断加工部品を製造する方法であって、前記ダイ120に前記被加工材1を固定する工程と、前記パンチ110と前記ダイ120とを相対的に接近させて前記被加工材1の打ち抜き加工を行う工程と、を含む前記せん断加工を複数回行い、これら一連のせん断加工の開始時に、前記被加工材1に対向する第1先端面111と、前記ダイ120への接近方向を基準として前記第1先端面111より後退した第1後退面112を含む第1刃先113と、を備える前記パンチ110と;前記被加工材1に対向する第2先端面121と、前記パンチ110への接近方向を基準として前記第2先端面121より後退した第2後退面122を含む第2刃先123と、を備える前記ダイ120と;を用いて前記せん断加工を行う。
[0072]
(B)上記(A)において、前記第1先端面111に垂直な断面で見た場合の前記第1後退面112が、下式1で規定されるRmin(mm)以上かつ下式2で規定されるRmax(mm)以下の曲率を持つ曲面、又は、前記第1先端面111の接線lに対して45°の傾斜角度と下式3で規定されるαmin(mm)以上かつ下式4で規定されるαmax(mm)以下の幅寸法とを有する面取りであり;前記第2先端面121に垂直な断面で見た場合の前記第2後退面122が、下式1で規定されるRmin(mm)以上かつ下式2で規定されるRmax(mm)以下の曲率を持つ曲面、又は、前記第2先端面121の接線に対して45°の傾斜角度と下式3で規定されるαmin(mm)以上かつ下式4で規定されるαmax(mm)以下の幅寸法とを有する面取りである;ようにしてもよい。
 Rmin=(0.9+0.2e -0.08c)(0.3571x 2-0.2595x+0.0965) ...(式1)
 Rmax=(0.9+0.2e -0.08c)(-9.1856x 4+25.17x 3-24.95x 2+11.054x-1.5824) ...(式2)
 αmin=0.0222e 2.0833x (0.9+0.1e -0.07c) ...(式3)
 αmax=(0.9+0.1e -0.07c)(-0.3274x 2+0.9768x-0.1457) ...(式4)
 ここで、eは自然対数の底であり、c(mm)は、前記ダイ120の内側面と前記パンチ110の外側面との間のクリアランスを示し、xは、前記パンチ110にあっては前記パンチ110のビッカース硬度で前記被加工材1のビッカース硬度を除算した硬度比であり、前記ダイ130にあっては前記ダイ130のビッカース硬度で前記被加工材1のビッカース硬度を除算した硬度比であって、なおかつ、0.3≦x<1.0を満たす。
[0073]
(C)上記(B)の場合、前記第1後退面112及び前記第2後退面122の何れか一方もしくは両方が、0.05mm以上0.5mm以下の曲率を持つ曲面であり;前記第1後退面112及び前記第2後退面122の何れか一方もしくは両方が、C0.05mm以上C0.5mm以下の面取りである;ようにしてもよい。
[0074]
 そして、上記(A)~(C)の方法によれば、ビッカース硬度が工具のビッカース硬度の0.3倍以上となる高張力鋼や超高張力鋼からなる被加工材1であっても、突発的な刃先の欠損を生じることなく低コストでせん断加工部品を製造することが可能となる。
[0075]
 なお、以下に説明するように、工具刃先に丸みを付ける場合と面取りを付ける場合の何れにおいても、せん断加工前の被加工材1の表面に、表面脱炭処理、メッキ処理、及び個体潤滑処理の何れか一つが施されていることが好ましい。
 本発明者らは、表面処理が異なる鋼板においても調査を行った。その実験結果を図10に示す。図10は、工具刃先に曲率半径0.05mmの丸みを設けた工具を用いて被加工材に連続穴空け加工を行った際の、被加工材におけるバリ高さの推移をショット数毎に示したグラフである。そして、被加工材として、溶融亜鉛メッキを施した被加工材を用いた場合と、無処理の被加工材を用いた場合とを比較している。この比較結果より明らかなように、被加工材に溶融亜鉛メッキを施した場合は無処理の場合に比べてバリ高さを半減できることが確認された。被加工材に溶融亜鉛メッキを施した場合、工具刃先に加わる衝撃力を溶融亜鉛メッキ層が緩和し、その結果、工具刃先の摩耗(丸みの曲率の大径化)を押えることができるので、バリ高さの増加を抑えられていると考えられた。
 以上に示したように、例えば被加工材の表面に溶融亜鉛メッキを施していれば、無処理の場合に比べてさらにバリ高さを抑えられるとの結果が得られた。なお、表面処理としては溶融亜鉛メッキのみに限定されるものではない。
[0076]
 また、工具刃先に丸みを付ける場合と面取りを付ける場合の何れにおいても、パンチ及びダイのいずれにおいても、工具刃先の全部を丸めたり、あるいは面取りする必要はなく、突発的な欠損が生じるおそれがある部分が経験等により事前に判明している場合には、このような部分の刃先だけを丸めたり、あるいは面取りするようにしてもよい。
[0077]
 さらに、工具側面に比較して相対的にその他の部位の摩擦係数を高めることにより、被加工材をせん断加工する際の、前記その他の部位に当接する材料の塑性流動をいっそう抑制することができ、これにより、バリ高さをさらに低減することができる。
[0078]
 図11は、本実施形態に係るせん断加工部品の製造装置における、パンチ110及びダイ120それぞれの工具刃先を拡大して示した断面図である。
 工具側面以外の部位の摩擦係数を相対的に高める手段としては、例えば、工具の磨きを、パンチ110及びダイ120それぞれの外側面114,貫通孔124(以下、内側面124とも言う)のみとすること(以下、「磨き分け」という)が例示される。磨き分けを用いた場合、例えば、外側面114,内側面124を除く部位119,129の摩擦係数を0.2程度、外側面114,内側面124の摩擦係数を0.1程度とすることができる。その結果、バリ高さをさらに低減することができる。
[0079]
 外側面114,内側面124以外の部位119,129の摩擦係数を相対的に高める他の手段としては、例えば、パンチ110およびダイ120を予め軟質な工具鋼で製作しておき、パンチ110の外側面114のみに窒化処理やコーティング処理を行う方法も用いることができる。また、摩擦係数を増加するコーティングや微細な凹凸を設けるような表面処理により、外側面114,内側面124以外の部位119,129の摩擦係数を相対的に高めることが可能である。
[0080]
 摩擦係数は、被加工材1となる鋼板に工具を押し付けて摺動させる試験(一般的に、摩擦係数の測定方法として用いられている試験)により測定される。その値は、摺動抵抗を押し付け圧により除算した値として規定される。なお、摺動試験の供試材としては、せん断加工時の摺動を模擬するべく、工具そのもの、または接触部の面積が1.0mm 以上となるように工具の一部を切り出して使用することができる。摺動試験の際の押し付け圧は、50MPa~300MPa程度、摺動速度は10mm/秒~400mm/秒程度とすることが望ましい。
[0081]
 パンチ110及びダイ120の材質は、この種の工具鋼として周知慣用の工具鋼を用いることができる。例えば、SKH51のようなハイスやSKD11のようなダイス鋼、またはV40程度の超鋼等を用いることが望ましい。
[0082]
 本発明の後退面や磨き分けの効果を検証するべく、直径10mmの穴空け加工を対象として工具耐久試験を行った。被加工材としては、780MPa高張力鋼板を用い、パンチ110及びダイ120間のクリアランスcを15%t(%tは、被加工材の板厚に対するクリアランス幅の割合を示す。本例の場合には、被加工材の板厚をt(mm)とした場合に、クリアランスは0.15×t(mm)となる)の下、最大で2万ショットの連続穴空け加工を行った。
[0083]
 連続穴空け加工に際しては、パンチ110およびダイ120双方の刃先形状を、鋭角、R0.5mm、C0.5mmの3ケースとし、さらにR0.5mmとC0.5mmに関しては、工具全面に磨きをかけた条件と、工具側面のみに磨きをかけた条件の2種の工具を準備した。
 この際、摺動試験により測定した摩擦係数は、磨きをかけた部位において0.1程度となり、磨きをかけない部分においては0.25となった。
[0084]
 図12に、工具が破損するまでのショット数を棒グラフで示す。
 図12に示すように、工具刃先が鋭角である場合には工具破損が生じたが、本発明例であるR0.05mmとC0.05mmの条件では、工具の磨き状態に関わらず工具破損は生じなかった。
[0085]
 図13に、穴空け加工後の穴部におけるバリ高さのショット数に伴う推移を、グラフとして示す。
 図13に示すように、いずれの工具であってもバリ高さは0.2mm以下であったが、側面のみに磨きをかける磨き分けを行った工具の場合は、全面を磨いた工具の場合よりも明らかにバリ高さが低くなった。
[0086]
 上記説明の磨き分けにおいては、工具の側面部位とその他の部位とに2分したが、さらに好ましくは、パンチ110の、被加工材1に対向する第1先端面111、工具刃先113を含む第1後退面112(丸みを付けたR部)、及び外側面114のうち、前記第1後退面112の摩擦抵抗が最も高い第1条件と;ダイ120の、被加工材1に対向する第2先端面121、工具刃先123を含む第2後退面122(丸みを付けたR部)、及び内側面124のうち、第2後退面122の摩擦抵抗が最も高い第2条件と;の少なくとも一方を満たすことが望ましい。
 また、上記第1条件と上記第2条件との双方を満たすことがより好ましい。さらに言えば、第1後退面112(丸みを付けたR部)、続いて第1先端面111、さらに続いて外側面114、の順に摩擦抵抗が高く;なおかつ、第2後退面122(丸みを付けたR部)、続いて第2先端面121、さらに続いて内側面124、の順に摩擦抵抗が高いことが最も好ましい。
[0087]
 上記のような摩擦抵抗差を採用することで、パンチ120の第1後退面112及びダイ120の第2後退面122の双方における切れ味を高めることができ、しかも被加工材1でのバリ高さをより低く抑えることが可能となる。この効果を確認するために、工具刃先に丸みを付けた工具について、工具先端面、工具刃先R部、工具側面、のそれぞれの間で摩擦抵抗差を設けて実験を行った。実験に際しては、パンチ110及びダイ120間のクリアランスを15%t(被加工材の板厚をt(mm)とした場合に0.15×t(mm)となるクリアランス)として、最大で1万ショットの連続穴空け加工を行った。実験結果を下表6に示す。
[0088]
[表6]


[0089]
 上表6の例えば番号105に示される通り、摩擦抵抗を大きさ順で並べた場合に、工具刃先R部、先端面、そして側面の順序となるケースにおいて、バリ高さを0.04mmに抑えられることが確認された。
[0090]
 上記表6は工具刃先に丸みを付けた場合を示す実験結果であったが、工具刃先に面取りを付けた場合についても同様のことが言える。
 すなわち、パンチ110の、被加工材1に対向する第1先端面111、面取り部を有する第1後退面112、及び外側面114のうち、前記第1後退面112の摩擦抵抗が最も高い第3条件と;ダイ120の、被加工材1に対向する第2先端面121、面取り部を有する第2後退面122、及び内側面124のうち、第2後退面122の摩擦抵抗が最も高い第4条件と;の少なくとも一方を満たすことが望ましい。
 また、上記第3条件と上記第4条件との双方を満たすことがより好ましい。さらに言えば、第1後退面112、続いて第1先端面111、さらに続いて外側面114、の順に摩擦抵抗が高く;なおかつ、第2後退面122、続いて第2先端面121、さらに続いて内側面124、の順に摩擦抵抗が高いことが最も好ましい。
[0091]
 面取りの場合においても、上記のような摩擦抵抗差を採用することで、パンチ110の第1後退面112及びダイ120の第2後退面122の双方における切れ味を高めることができ、しかも被加工材1でのバリ高さをより低く抑えることが可能となる。この効果を確認するために、工具刃先を面取りした工具について、工具先端面、工具刃先面取り部、工具側面、のそれぞれの間で摩擦抵抗差を設けて実験を行った。実験に際しては、パンチ110及びダイ120間のクリアランスを15%t(被加工材の板厚をt(mm)とした場合に0.15×t(mm)となるクリアランス)として、最大で1万ショットの連続穴空け加工を行った。実験結果を下表7に示す。
[0092]
[表7]


[0093]
 上表7の例えば番号122に示される通り、摩擦抵抗を大きさ順で並べた場合に、面取り部、先端面、そして側面の順序となるケースにおいて、バリ高さを0.04mmに抑えられることが確認された。
[0094]
 以上説明のように、工具刃先形状として前述の(A)~(C)を採用することに加えて、以下の(D)をさらに採用してもよい。
(D)上記(A)~(C)の何れか一項に記載の態様において、前記パンチ110の、前記第1先端面111、前記第1後退面112、及び外側面114のうち、前記第1後退面112の摩擦抵抗が最も高い第1条件と、前記ダイ120の、前記第2先端面121、前記第2後退面122、及び内側面124のうち、前記第2後退面122の摩擦抵抗が最も高い第2条件と、の少なくとも一方を満たす。
[0095]
 さらには、下記(E)を採用してもよい。この場合、前述の通り、無処理の場合に比べて工具寿命をさらに延ばすことが可能となる。
(E)上記(A)~(D)の何れか一項に記載の態様において、前記被加工材1に、表面脱炭処理、メッキ処理、及び個体潤滑処理の何れか一つを予め施しておく。
[0096]
 なお、パンチ110の工具刃先113及びダイ120の工具刃先123の双方に丸みを付与する構成や、パンチ110の工具刃先113及びダイ120の工具刃先123の双方に面取りを付与する構成のみに限らず、例えば、パンチ110の工具刃先に丸みを設けてダイ120の工具刃先に面取りを設けたり、または、パンチ110の工具刃先に面取りを設けてダイ120の工具刃先に丸みを設けたりしてもよい。
[0097]
 また、パンチ110の工具刃先及びダイ120の工具刃先の形状としては、前述した形態のみに限らず、例えば図14及び図15に例示される変形例も採用可能である。
 すなわち、図14の変形例においては、工具刃先113(123)に面取りCが形成されるとともに、この面取りCと工具先端面111(121)との間、及び前記面取りCと工具側面114(124)との間、の双方に、丸みR’が設けられている。よって、工具先端面111(121)から面取りCを経て工具側面114(124)に至るまで角部が無く滑らかに形成されている。なお、上記2つの丸みR’の曲率は、互いに同じであっても良いし、または互いに異なってもよい。
 また、面取りの幅寸法α’としては、上記(式3)及び(式4)に基づいて、αmin<α’<αmaxを満たすことが好ましい。
[0098]
 また、図14の上記変形例では、面取りCの両側に丸みR’を設けるものとしたが、例えば図15の変形例に示すように、面取りCと工具側面114(124)との間のみに丸みR’を設けてもよい。この場合、工具刃先113(123)に面取りCが形成されるとともに、この面取りCと工具先端面111(121)との間は角Eを有するとともに、前記面取りCと工具側面111(121)との間に丸みR’を設けることが好ましい。
 また、面取りの幅寸法α’としては、上記(式3)及び(式4)に基づいて、αmin<α’<αmaxを満たすことが好ましい。
 さらに言えば、図15の変形例とは逆に、面取りCと工具先端面111(121)との間のみに丸みR’を設けてもよい(図示略)。この場合、工具刃先113(123)に面取りCが形成されるとともに、この面取りCと工具先端面111(121)との間に丸みR’を設けるとともに、前記面取りCと工具側面111(121)との間には角Eを設けることが好ましい。

産業上の利用可能性

[0099]
 本発明によれば、ビッカース硬度が工具のビッカース硬度の0.3倍以上となる高張力鋼や超高張力鋼からなる被加工材であっても、突発的な刃先の欠損を生じることなく低コストでせん断加工部品を製造することが可能となる。

符号の説明

[0100]
1 被加工材
110 パンチ
111 第1先端面
112 第1後退面
113 第1刃先
120 ダイ
121 第2先端面
122 第2後退面
123 第2刃先

請求の範囲

[請求項1]
 パンチのビッカース硬度及びダイのビッカース硬度の何れか低い方の0.3倍以上1.0倍未満のビッカース硬度を持つ被加工材に対して、前記パンチ及び前記ダイを用いて複数回のせん断加工を行うことにより、複数のせん断加工部品を製造する方法であって、
 前記ダイに前記被加工材を固定する工程と、
 前記パンチと前記ダイとを相対的に接近させて前記被加工材の打ち抜き加工を行う工程と、
を含む前記せん断加工を複数回行い、
 これら一連のせん断加工の開始時に、
 前記被加工材に対向する第1先端面と、前記ダイへの接近方向を基準として前記第1先端面より後退した第1後退面を含む第1刃先と、を備える前記パンチと;
 前記被加工材に対向する第2先端面と、前記パンチへの接近方向を基準として前記第2先端面より後退した第2後退面を含む第2刃先と、を備える前記ダイと;
を用いて前記せん断加工を行う
ことを特徴とするせん断加工部品の製造方法。
[請求項2]
 前記第1先端面に垂直な断面で見た場合の前記第1後退面が、
  下式1で規定されるRmin(mm)以上かつ下式2で規定されるRmax(mm)以下の曲率を持つ曲面、
  又は、前記第1先端面の接線に対して45°の傾斜角度と下式3で規定されるαmin(mm)以上かつ下式4で規定されるαmax(mm)以下の幅寸法とを有する面取りであり;
 前記第2先端面に垂直な断面で見た場合の前記第2後退面が、
  下式1で規定されるRmin(mm)以上かつ下式2で規定されるRmax(mm)以下の曲率を持つ曲面、
  又は、前記第2先端面の接線に対して45°の傾斜角度と下式3で規定されるαmin(mm)以上かつ下式4で規定されるαmax(mm)以下の幅寸法とを有する面取りである;
ことを特徴とする請求項1に記載のせん断加工部品の製造方法。
 Rmin=(0.9+0.2e -0.08c)(0.3571x 2-0.2595x+0.0965) ...(式1)
 Rmax=(0.9+0.2e -0.08c)(-9.1856x 4+25.17x 3-24.95x 2+11.054x-1.5824) ...(式2)
 αmin=0.0222e 2.0833x (0.9+0.1e -0.07c) ...(式3)
 αmax=(0.9+0.1e -0.07c)(-0.3274x 2+0.9768x-0.1457) ...(式4)
 ここで、
eは自然対数の底であり、
 c(mm)は、前記ダイの内側面と前記パンチの外側面との間のクリアランスを示し、
 xは、前記パンチにあっては前記パンチのビッカース硬度で前記被加工材のビッカース硬度を除算した硬度比であり、前記ダイにあっては前記ダイのビッカース硬度で前記被加工材のビッカース硬度を除算した硬度比であって、なおかつ、0.3≦x<1.0を満たす。
[請求項3]
 前記第1後退面及び前記第2後退面の何れか一方もしくは両方が、
 0.05mm以上0.5mm以下の曲率を持つ曲面、または、
 C0.05mm以上C0.5mm以下の面取りである
ことを特徴とする請求項2に記載のせん断加工部品の製造方法。
[請求項4]
 前記パンチの、前記第1先端面、前記第1後退面、及び外側面のうち、前記第1後退面の摩擦抵抗が最も高い第1条件と、
 前記ダイの、前記第2先端面、前記第2後退面、及び内側面のうち、前記第2後退面の摩擦抵抗が最も高い第2条件と、
の少なくとも一方を満たすことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のせん断加工部品の製造方法。
[請求項5]
 前記被加工材に、表面脱炭処理、メッキ処理、及び個体潤滑処理の何れか一つが施されていることを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載のせん断加工部品の製造方法。
[請求項6]
 パンチのビッカース硬度及びダイのビッカース硬度の何れか低い方の0.3倍以上1.0倍未満のビッカース硬度を持つ被加工材に対して、複数回のせん断加工を行うことにより、複数のせん断加工部品を製造する装置であって、
 前記被加工材を固定するダイと、
 前記ダイに対して相対的に接近させて前記被加工材を打ち抜くパンチと、
を備え、
 前記パンチが、前記被加工材に対向する第1先端面と、前記ダイへの接近方向を基準として前記第1先端面より後退した第1後退面を含む第1刃先とを備え、
 前記ダイが、前記被加工材に対向する第2先端面と、前記パンチへの接近方向を基準として前記第2先端面より後退した第2後退面を含む第2刃先とを備える
ことを特徴とするせん断加工部品の製造装置。
[請求項7]
 前記第1先端面に垂直な断面で見た場合の前記第1後退面が、
  下式1で規定されるRmin(mm)以上かつ下式2で規定されるRmax(mm)以下の曲率を持つ曲面、
  又は、前記第1先端面の接線に対して45°の傾斜角度と下式3で規定されるαmin(mm)以上かつ下式4で規定されるαmax(mm)以下の幅寸法とを有する面取りであり;
 前記第2先端面に垂直な断面で見た場合の前記第2後退面が、
  下式1で規定されるRmin(mm)以上かつ下式2で規定されるRmax(mm)以下の曲率を持つ曲面、
  又は、前記第2先端面の接線に対して45°の傾斜角度と下式3で規定されるαmin(mm)以上かつ下式4で規定されるαmax(mm)以下の幅寸法とを有する面取りである;
ことを特徴とする請求項6に記載のせん断加工部品の製造装置。
 Rmin=(0.9+0.2e -0.08c)(0.3571x 2-0.2595x+0.0965) ...(式1)
 Rmax=(0.9+0.2e -0.08c)(-9.1856x 4+25.17x 3-24.95x 2+11.054x-1.5824) ...(式2)
 αmin=0.0222e 2.0833x (0.9+0.1e -0.07c) ...(式3)
 αmax=(0.9+0.1e -0.07c)(-0.3274x 2+0.9768x-0.1457) ...(式4)
 ここで、
 eは自然対数の底であり、
 c(mm)は、前記ダイの内側面と前記パンチの外側面との間のクリアランスを示し、
 xは、前記パンチにあっては前記パンチのビッカース硬度で前記被加工材のビッカース硬度を除算した硬度比であり、前記ダイにあっては前記ダイのビッカース硬度で前記被加工材のビッカース硬度を除算した硬度比であって、なおかつ、0.3≦x<1.0を満たす。
[請求項8]
 前記第1後退面及び前記第2後退面の何れか一方もしくは両方が、
 0.05mm以上0.5mm以下の曲率を持つ曲面、または、
 C0.05mm以上C0.5mm以下の面取りである
ことを特徴とする請求項7に記載のせん断加工部品の製造装置。
[請求項9]
 前記パンチの、前記第1先端面、前記第1後退面、及び外側面のうち、前記第1後退面の摩擦抵抗が最も高い第1条件と、
 前記ダイの、前記第2先端面、前記第2後退面、及び内側面のうち、前記第2後退面の摩擦抵抗が最も高い第2条件と、
の少なくとも一方を満たすことを特徴とする請求項6~8の何れか一項に記載のせん断加工部品の製造装置。

図面

[ 図 1]

[ 図 2A]

[ 図 2B]

[ 図 3A]

[ 図 3B]

[ 図 3C]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6A]

[ 図 6B]

[ 図 6C]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9A]

[ 図 9B]

[ 図 9C]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16A]

[ 図 16B]

[ 図 17]