明 細 書
技術分野
[0001]
本発明は、部品を吸着する吸着ノズルを保持した実装ヘッドを交換可能に保持する部品実装機に関する発明である。
背景技術
[0002]
この種の部品実装機においては、特許文献1(特開2006-261325号公報)に記載されているように、複数の吸着ノズルを保持する回転型の実装ヘッドを、吸着する部品の種類(サイズ、形状、重さ等)に応じて自動交換できるようにするために、部品実装機のヘッド保持部に実装ヘッドを負圧吸引力で吸着保持するようにしたものがある。
先行技術文献
特許文献
[0003]
特許文献1 : 特開2006-261325号公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0004]
近年の部品実装機は、生産性を高めるために、益々、高速化が進み、部品実装機の稼働中に実装ヘッドに作用する慣性力が大きくなっている。このため、上記特許文献1のように、部品実装機のヘッド保持部に実装ヘッドを負圧で吸着保持する構成では、実装ヘッドの保持力が不足して、部品実装機の稼働中にヘッド保持部の吸着面で実装ヘッドが滑って位置ずれして部品の吸着不良や実装不良が発生したり、実装ヘッドが脱落する可能性もある。
[0005]
このような問題を解決するために、本願の発明者は、部品実装機のヘッド保持ユニットに実装ヘッドを係合機構(クランプ機構)により機械的に保持させる構成を開発中であるが、その開発過程で、次のような新たな課題が判明した。
[0006]
実装ヘッドの吸着ノズルの部品吸着・解放動作は、吸着ノズルに供給するエアー圧力を負圧と正圧で切り替えることで部品の吸着と解放を切り替えるようになっているため、ヘッド保持ユニットと実装ヘッドには、それぞれ、吸着ノズルに負圧や正圧を供給するエアー通路を設け、ヘッド保持ユニットと実装ヘッドとの連結部で、ヘッド保持ユニットのエアー通路の開口縁と実装ヘッドのエアー通路の開口縁とを単純に突き合わせて両者のエアー通路を連結するようにしている。この構成では、エアー通路の連結部の気密性が不十分で、吸着ノズルに供給する負圧や正圧が漏れて、部品の吸着・解放動作が不安定になる可能性がある。
[0007]
この対策として、ヘッド保持ユニットのエアー通路と実装ヘッドのエアー通路との連結部にOリング等のシール部材を装着することが考えられるが、この構成では、ヘッド保持ユニットと実装ヘッドとの係合機構による係合を解除して、ヘッド保持ユニットから実装ヘッドを自重により取り外す際に、実装ヘッドの自重のみではエアー通路の連結部がシール部材の摩擦力や密着力で外れにくくなる可能性がある。
[0008]
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ヘッド保持ユニットに実装ヘッドを機械的に保持させる構成を採用しながら、ヘッド保持ユニットのエアー通路と実装ヘッドのエアー通路との連結部の気密性を向上できると共に、ヘッド保持ユニットからの実装ヘッドの取り外し動作を安定させることがてきる部品実装機を提供することである。
課題を解決するための手段
[0009]
上記課題を解決するために、本発明は、部品を吸着する吸着ノズルを保持した実装ヘッドと、前記実装ヘッドを交換可能に保持するヘッド保持ユニットと、前記ヘッド保持ユニットを移動させるヘッド移動装置とを備え、部品を負圧で吸着した前記吸着ノズルに、正圧を供給して前記部品を解放する部品実装機において、前記実装ヘッドのうちの前記ヘッド保持ユニットとの連結部に設けられた被係合部材と、前記ヘッド保持ユニットに設けられ、前記被係合部材と係合して前記実装ヘッドを保持する係合位置と前記被係合部材から外れた係合解除位置との間を移動する係合部材と、前記ヘッド保持ユニットに設けられ、前記係合部材を前記係合位置と前記係合解除位置との間を移動させる駆動手段と、前記ヘッド保持ユニットと前記実装ヘッドにそれぞれ設けられ、前記吸着ノズルに負圧と正圧の少なくとも一方を供給するエアー通路と、前記ヘッド保持ユニットと前記実装ヘッドの少なくとも一方に設けられ、前記ヘッド保持ユニットのエアー通路と前記実装ヘッドのエアー通路との連結部をシールするシール部材とを備え、前記ヘッド保持ユニットから前記実装ヘッドを取り外す際に、前記駆動手段により前記係合部材を前記係合位置から前記係合解除位置へ移動させる過程で前記係合部材が前記実装ヘッドをその取り外し方向である下方へ押し出すように構成されていることを特徴とするものである。
[0010]
この構成では、ヘッド保持ユニットの係合部材を実装ヘッドの被係合部材と係合してヘッド保持ユニットに実装ヘッドを機械的に保持できるため、実装ヘッドの保持力を従来の負圧吸着力よりも増大させることができ、ヘッド保持ユニットに着脱可能に保持した実装ヘッドの位置ずれや脱落を防止できる。しかも、ヘッド保持ユニットのエアー通路と実装ヘッドのエアー通路との連結部をシール部材でシールするようにしたので、エアー通路の連結部の気密性を十分に確保できる。更に、ヘッド保持ユニットと実装ヘッドとの係合を解除して実装ヘッドを取り外す際に、係合部材が実装ヘッドをその取り外し方向である下方へ押し出すため、実装ヘッドの自重のみではエアー通路の連結部がシール部材の摩擦力や密着力で外れにくい状態になっていても、エアー通路の連結部をシール部材の摩擦力に抗して確実に切り離すことができ、ヘッド保持ユニットからの実装ヘッドの取り外し動作を安定させることができる。
[0011]
具体的には、前記係合部材を上下方向に移動可能に設け、その移動ストロークの上端位置と下端位置をそれぞれ前記係合位置と前記係合解除位置とするように構成し、前記ヘッド保持部に前記実装ヘッドを取り付ける場合は、前記駆動手段により前記係合部材を前記係合解除位置に保持すると共に、前記ヘッド保持ユニットを前記係合部材が前記被係合部材の側方をすり抜ける位置へ回動した状態で、前記ヘッド保持ユニットを下降して前記実装ヘッドに突き合わせた後、前記ヘッド保持ユニットを回動して前記係合部材の下部を前記被係合部材の下方に位置させてから、前記エアシリンダにより前記係合部材を前記係合位置へ上昇させることで、前記係合部材を前記被係合部材に係合させて前記ヘッド保持ユニットに前記実装ヘッドを取り付け、前記ヘッド保持ユニットから前記実装ヘッドを取り外す場合は、前記駆動手段により前記係合部材を前記係合解除位置へ下降させて前記実装ヘッドを下方へ押し出してから、前記ヘッド保持ユニットを前記係合部材が前記被係合部材の側方をすり抜ける位置へ回動した後、前記ヘッド保持ユニットを上昇させて、前記ヘッド保持ユニットから前記実装ヘッドを離脱させるようにすると良い。
[0012]
また、ヘッド保持ユニットのエアー通路と実装ヘッドのエアー通路との連結部は、一方側に設けた筒状の継手部を他方側に設けた連結穴部に差し込むように構成し、前記継手部の外周面と前記連結穴部の内周面との間の隙間を、前記継手部に装着したリング状の前記シール部材によってシールするようにすると良い。このようにすれば、エアー通路の連結部の気密性を確実に向上させることができる。
[0013]
また、係合部材を移動させる駆動手段は、モータやソレノイド等の電気的アクチュエータを用いても良いし、エアシリンダを用いても良い。エアシリンダを用いる場合は、正圧源からヘッド保持ユニット内のエアー通路に供給される正圧(又は負圧)の一部を、エアシリンダのピストンを駆動する圧力源として利用できるため、ヘッド保持ユニットの内部に駆動手段をコンパクトに構成できる。
図面の簡単な説明
[0014]
[図1] 図1は本発明の一実施例における部品吸着装置のヘッド保持ユニットから回転ヘッドを取り外した状態を示す斜視図である。
[図2] 図2は部品吸着装置のヘッド保持ユニットを斜め下方から見た斜視図である。
[図3] 図3は回転ヘッド全体の斜視図である。
[図4] 図4は回転ヘッドの上部側の斜視図である。
[図5] 図5はR軸の縦断面図である。
[図6] 図6はヘッド保持ユニットから回転ヘッドを取り外す際に係合部材で回転ヘッドを押し出す動作を示す縦断面図である。
[図7] 図7は部品実装機の制御系の構成を示すブロック図である。
発明を実施するための形態
[0015]
以下、本発明を実施するための形態を、回転ヘッド型の部品実装機に適用して具体化した一実施例を説明する。
[0016]
まず、部品実装機の部品吸着装置10の構成を説明する。
図1に示すように、部品吸着装置10の回転型の実装ヘッドである回転ヘッド11には、その円周方向に所定間隔で複数のノズルホルダ12が下降可能に保持され、各ノズルホルダ12の下部には、それぞれ部品を吸着する吸着ノズル13が下向きに交換可能(着脱可能)に係合保持されている。
[0017]
回転ヘッド11は、部品実装機のヘッド移動装置20(図7参照)によって移動されるヘッド保持ユニット21の下方に延びるR軸22(図2参照)に交換可能(着脱可能)に保持される。ヘッド保持ユニット21には、R軸22を回転させるR軸駆動機構23(ヘッド回転駆動機構)が組み付けられている。R軸駆動機構23は、R軸22の上端に固定されたR軸ギア24(歯面図示せず)をR軸モータ25により回転させて、回転ヘッド11をR軸22を中心にして回転させることで、複数のノズルホルダ12が複数の吸着ノズル13と一体的に該回転ヘッド11の円周方向に旋回するようになっている。
[0018]
R軸22には、Q軸駆動機構26(ノズル回転駆動機構)の駆動源となるQ軸ギア27(歯面図示せず)が回転可能に挿通され、該Q軸ギア27がQ軸モータ28によりR軸22の回りを回転するようになっている。
[0019]
図2に示すように、R軸22の下端部には、回転ヘッド11を着脱可能に係合保持するための複数(例えば4個)の係合部材31が上下方向に移動可能に設けられている。各係合部材31は、それぞれL字状又はJ字状に形成されて、R軸22の円周方向に等間隔に配列され、各係合部材31下端の爪部の向きがR軸22の正回転方向(又は逆回転方向)と同じ方向となるように揃えられている。
[0020]
図5に示すように、各係合部材31の近傍には、それぞれ係合部材31を上下方向に駆動する駆動手段であるエアシリンダ51が設けられている。各エアシリンダ51のピストン52には、アーム53を介して係合部材31が連結され、該ピストン52の上下動と連動して係合部材31が上下方向に移動し、その移動ストロークの上端位置と下端位置がそれぞれ係合位置と係合解除位置となっている。各エアシリンダ51内のうちのピストン52の下方には、該ピストン52を係合位置の方向である上方に付勢する圧縮コイルばね等のばね部材54が収納されている。各エアシリンダ51内のうちのピストン52の上方の空間と下方の空間は、それぞれ圧縮エアー(正圧)を供給する正圧供給系に連通させる状態と、圧縮エアーを排出する排気系(大気)に連通させる状態とに切換可能に構成されている。
[0021]
エアシリンダ51内のうちのピストン52の上方の空間を排気系に連通させた状態で、ピストン52の下方の空間に圧縮エアーを供給すると、その圧縮エアーの圧力とばね部材54の弾発力によってピストン52が押し上げられて係合部材31が係合位置へ上昇するようになっている。そして、ピストン52の下方の空間を排気系に連通させた状態で、ピストン52の上方の空間に圧縮エアーを供給すると、その圧縮エアーの圧力によってピストン52がばね部材54の弾発力に抗して押し下げられて係合部材31が係合解除位置へ下降するようになっている。
[0022]
尚、各エアシリンダ51内のうちのピストン52の上方の空間と下方の空間に、圧縮エアーに代えて、負圧を供給する構成としても良く、この場合には、係合部材31を係合位置へ上昇させるときには、ピストン52の上方の空間に負圧を供給し、係合部材31を係合解除位置へ下降させるときには、ピストン52の下方の空間に負圧を供給するようにすれば良い。
[0023]
一方、回転ヘッド11には、Q軸ギア27の回転力を各ノズルホルダ12に伝達するノズル回転ギア機構32(図3、図4参照)が設けられている。ノズル回転ギア機構32は、回転ヘッド11の上部側に同心状に回転可能に保持された円筒ギア33(歯面図示せず)と、各ノズルホルダ12にそれぞれ取り付けられた小ギア34とを噛み合わせ、ヘッド保持ユニット21のQ軸ギア27とノズル回転ギア機構32の円筒ギア33とをリング状クラッチ部材61,62(図2、図3参照)の凹凸の噛み合いによって回転伝達可能に連結して、Q軸ギア27によって円筒ギア33を回転させて各ノズルホルダ12の小ギア34を回転させることで、各ノズルホルダ12がそれぞれ各ノズルホルダ12の軸心線の回りを回転して、各ノズルホルダ12に保持された各吸着ノズル13に吸着した各部品の向き(角度)を修正するようになっている。
[0024]
円筒ギア33内にヘッド保持ユニット21のR軸22を挿入できるように該円筒ギア33の内径寸法がR軸22の外径寸法よりも若干大きく形成されている。図4に示すように、回転ヘッド11の上面部のうちの円筒ギア33の内側の位置には、R軸22の各係合部材31を挿通して係合するための複数の長孔状の係合孔35が円周方向に等間隔に形成されている。
[0025]
R軸22の各係合部材31が係合位置(上限位置)に上昇した状態では、各係合部材31の爪部が回転ヘッド11の各係合孔35の端縁部(被係合部材)をその下側から引っ掛けて持ち上げることで回転ヘッド11を係合保持した状態となる。一方、各係合部材31が係合位置から係合解除位置に下降すると、各係合部材31の爪部が各係合孔35の端縁部から下方に離れて係合が解除された状態となる。本実施例では、ヘッド保持ユニット21から回転ヘッド11を取り外す際に、エアシリンダ51により係合部材31を係合位置から係合解除位置へ下降させる過程で、該係合部材31が回転ヘッド11をその取り外し方向である下方へ押し出すように構成されている。
[0026]
部品実装機のヘッド保持ユニット21の移動範囲内の所定位置には、交換用の回転ヘッド11を載置するヘッド載置部(図示せず)が設けられている。このヘッド載置部は、複数種類の回転ヘッド11を載置できるように構成されている。このヘッド載置部に載置された回転ヘッド11をヘッド保持ユニット21に取り付ける場合は、ヘッド保持ユニット21のR軸22を円筒ギア33内に挿入してR軸22の各係合部材31を回転ヘッド11の各係合孔35に挿通し、R軸ギア24の回転によりR軸22を回転させて各係合部材31を引き上げることで、各係合部材31の爪部を各係合孔35の端縁部に係合させた状態に保持するようになっている。ヘッド保持ユニット21には、様々なタイプの回転ヘッドを保持できる他、単数ノズル用の実装ヘッドも保持可能となっている。
[0027]
部品実装機には、交換用の回転ヘッド11を載置するヘッド載置部の他に、交換用の吸着ノズルを載置するノズル載置部(図示せず)が設けられ、回転ヘッド11のノズルホルダ12に保持させる吸着ノズル13を自動交換できるようになっている。
[0028]
R軸駆動機構23とQ軸駆動機構26の他に、Z軸モータ37(図7参照)を駆動源とするZ軸駆動機構(図示せず)がヘッド保持ユニット21と一体的に移動するように設けられ、ノズルホルダ12の旋回軌道の所定の停止位置で、該Z軸駆動機構の押し下げ部材(図示せず)により、該ノズルホルダ12の上端部に固定された係合片39を押し下げることで該ノズルホルダ12を下降させるようになっている。図3に示すように、各ノズルホルダ12は、それぞれスプリング40により上方へ付勢され、Z軸駆動機構の押し下げ部材から解放されたノズルホルダ12は、スプリング40の付勢力で上限位置(図3に示す状態)に保持されるようになっている。
[0029]
部品実装機には、回路基板の基準マークを撮像するカメラ41(図7参照)が搭載され、ヘッド移動装置20によってカメラ41が部品吸着装置10と一体的に移動するようになっている。カメラ41は、回路基板の基準マークの他に、ヘッド載置部上の回転ヘッド11の基準マーク42(図3、図4参照)を撮像するカメラとしても使用される。回転ヘッド11の基準マーク42は、円筒ギア33の上端部の所定位置に形成され、この基準マーク42をカメラ41で撮像して、その画像を部品実装機の制御装置43(図7参照)で処理することで、基準マーク42の位置を検出して、円筒ギア33の回転位相を検出するようになっている。
[0030]
ヘッド保持ユニット21のR軸22の内部と回転ヘッド11の内部には、それぞれ、吸着ノズル13に負圧と正圧を切り替えて供給するエアー通路55,56(図6参照)が設けられている。図2、図5、図6に示すように、ヘッド保持ユニット21のR軸22の下面部の複数箇所には、エアー通路55の筒状の継手部57が下向きに突出するように設けられ、各継手部57には、ゴム等の弾性材料で形成されたOリング等のリング状のシール部材58が装着されている。
[0031]
一方、図4、図6に示すように、回転ヘッド11のうちのR軸22のエアー通路55の継手部57に対応する位置には、該回転ヘッド11のエアー通路56に連通する連結穴部59が形成され、該連結穴部59にR軸22の継手部57を差し込むことで、R軸22のエアー通路55を回転ヘッド11のエアー通路56に接続すると共に、継手部57の外周面と連結穴部59の内周面との間の隙間を、継手部57に装着したリング状のシール部材58によってシールするようにしている。
[0032]
部品実装機の制御装置43(図7参照)は、コンピュータを主体として構成され、生産プログラムに従って、ヘッド移動装置20、ヘッド保持ユニット21のR軸モータ25、Q軸モータ28及びZ軸モータ37を制御して、部品実装機にセットされたフィーダ44から供給される部品を回転ヘッド11の吸着ノズル13に吸着して回路基板に実装する動作を制御すると共に、ヘッド載置部上の回転ヘッド11をヘッド保持ユニット21に保持させる動作や、回転ヘッド11のノズルホルダ12に保持する吸着ノズル13を交換する動作等を制御する。
[0033]
部品実装機の制御装置43は、ヘッド載置部上の回転ヘッド11をヘッド保持ユニット21に保持させる際に、該回転ヘッド11の円筒ギア33の基準マーク42をカメラ41で撮像して、その画像を処理することで、基準マーク42の位置を検出して、円筒ギア33の回転位相を検出する。この後、ヘッド移動装置20によりヘッド保持ユニット21のR軸22をヘッド載置部上の回転ヘッド11の上方へ移動させると共に、Q軸モータ28により該ヘッド保持ユニット21のQ軸ギア27の回転位相を回転ヘッド11の円筒ギア33の回転位相に合わせる。この後、ヘッド移動機構20によりヘッド保持ユニット21を下降させてR軸22を円筒ギア33内に挿入し、Q軸ギア27のリング状クラッチ部材51の凹凸を円筒ギア33のリング状クラッチ部材52の凹凸に噛み合わせて両者を回転伝達可能に連結すると共に、R軸22の各係合部材31を回転ヘッド11の各係合孔35に挿通する。この後、R軸モータ25によりR軸ギア24を回転させてR軸22を回転させて各係合部材31の爪部を各係合孔35の端縁部の下側に移動させた後、エアシリンダ51により各係合部材31を引き上げて、各係合部材31の爪部を各係合孔35の端縁部に係合させた状態に保持する。
[0034]
この際、R軸22の各係合部材31が回転ヘッド11の各係合孔35に挿通される過程で、R軸22のエアー通路55の継手部57が回転ヘッド11のエアー通路56の連結穴部59に差し込まれると共に、継手部57の外周面と連結穴部59の内周面との間の隙間がリング状のシール部材58によってシールされた状態となり、R軸22のエアー通路55に回転ヘッド11のエアー通路55が接続された状態となる。これにより、ヘッド保持ユニット21に回転ヘッド11を取り付ける動作が完了する。
[0035]
一方、ヘッド保持ユニット21から回転ヘッド11を取り外す場合は、ヘッド保持ユニット21をヘッド載置部の上方に移動させて、該ヘッド保持ユニット21に保持した回転ヘッド11をヘッド載置部の空きスペースに近付けた状態にする。この後、エアシリンダ51のピストン52をばね部材54の弾発力に抗して押し下げて、係合部材31を係合位置から係合解除位置へ下降させて、係合部材31の爪部を係合孔35の端縁部から下方に離間させた状態にする。その過程で、係合部材31の下端が回転ヘッド11の構成部材に突き当たって、該係合部材31が回転ヘッド11をその取り外し方向である下方へ押し出す。
[0036]
その後、ヘッド保持ユニット21のR軸22を、係合部材31の爪部が係合孔35の端縁部に引っ掛からない位置まで回動させた後、ヘッド保持ユニット21を上昇させる。これにより、ヘッド保持ユニット21から回転ヘッド11が取り外されてヘッド載置部上に載置された状態となる。
[0037]
以上説明した本実施例によれば、ヘッド保持ユニット21の係合部材31を回転ヘッド11の係合孔35の端縁部と係合してヘッド保持ユニット21に回転ヘッド11を機械的に保持できるため、回転ヘッド11の保持力を従来の負圧吸着力よりも増大させることができ、ヘッド保持ユニット21に着脱可能に保持した回転ヘッド11の位置ずれや脱落を防止できる。しかも、ヘッド保持ユニット21のR軸22のエアー通路55と回転ヘッド11のエアー通路56との連結部をシール部材58でシールするようにしたので、エアー通路55,56の連結部の気密性を十分に確保できる。更に、ヘッド保持ユニット21と回転ヘッド11との係合を解除して回転ヘッド11を取り外す際に、係合部材31が回転ヘッド11をその取り外し方向である下方へ押し出すため、回転ヘッド11の自重のみではエアー通路55,56の連結部がシール部材58の摩擦力や密着力で外れにくい状態になっていても、エアー通路55,56の連結部をシール部材58の摩擦力や密着力に抗して確実に切り離すことができ、ヘッド保持ユニット21からの回転ヘッド11の取り外し動作を安定させることができる。
[0038]
しかも、本実施例では、ヘッド保持ユニット21のR軸22の下面部に設けた筒状の継手部57を、回転ヘッド11に設けた連結穴部59に差し込むように構成し、継手部57の外周面と連結穴部59の内周面との間の隙間を、継手部57に装着したリング状のシール部材58によってシールするようにしたので、エアー通路55,56の連結部の気密性を確実に向上させることができる。
[0039]
尚、筒状の継手部57と連結穴部59との位置関係を反対にして、回転ヘッド11に筒状の継手部を設けて、該継手部にリング状のシール部材を装着し、ヘッド保持ユニット21のR軸22の下面部に設けた連結穴部を回転ヘッド11の継手部に差し込んでエアー通路55,56を連結するようにしても良い。
[0040]
また、本発明は、ヘッド保持ユニット21のR軸22のエアー通路55と回転ヘッド11のエアー通路56との連結部において、どちらか一方側に、エアー通路55又は56の開口縁部を取り囲むリング状のシール部材を他方側に突出させるように設け、ヘッド保持ユニット21のR軸22に回転ヘッド11を係合保持させたときに、一方側のシール部材に他方側の面を押し付けることで、エアー通路55,56の連結部をシール部材でシールするようにしても良い。
[0041]
勿論、ヘッド保持ユニット21と回転ヘッド11の両方にシール部材を設けるようにしても良い。また、ヘッド保持ユニット21と回転ヘッド11との間で複数のエアー通路を連結する場合は、一部のエアー通路の連結部をシールするシール部材をヘッド保持ユニット21側に設け、他のエアー通路の連結部をシールするシール部材を回転ヘッド11側に設けるようにしても良い。また、ヘッド保持ユニット21と回転ヘッド11との間で複数のエアー通路を連結する場合は、正圧のみを供給するエアー通路と、負圧のみを供給するエアー通路と、正圧と負圧の両方を供給するエアー通路とが混在する構成としても良い。
[0042]
また、本実施例では、ヘッド保持ユニット21のR軸22に係合部材31を上下方向に移動させるように設けたが、係合部材を回動させる構成としても良い。具体的には、ヘッド保持ユニット21のR軸22に係合部材を回動軸を介して回動可能に設け、その回動ストロークの一方側と他方側の位置をそれぞれ係合位置と係合解除位置とし、ヘッド保持ユニット21に回転ヘッド11を取り付ける場合は、駆動手段により前記係合部材を前記係合解除位置に保持した状態で、ヘッド保持ユニット21を下降して回転ヘッド11に突き合わせた後、駆動手段により前記係合部材を係合位置へ回動させることで、前記係合部材を回転ヘッド11の被係合部材に係合させてヘッド保持ユニット21に回転ヘッド11を取り付け、ヘッド保持ユニット21から回転ヘッド11をを取り外す場合は、駆動手段により前記係合部材を前記係合解除位置へ回動させた後、ヘッド保持ユニット21を上昇させることで、ヘッド保持ユニット21から回転ヘッド11を取り外す。この場合、係合部材が係合位置から係合解除位置へ回動する過程で、該係合部材の下端が係合位置の高さよりも低い位置を移動することで、該係合部材の下端が回転ヘッド11の構成部材に突き当たって、該係合部材が回転ヘッド11をその取り外し方向である下方へ押し出すようにすれば良い。
[0043]
また、本実施例では、係合部材31を駆動する駆動手段をエアシリンダ51で構成したが、駆動手段として、モータやソレノイド等の電気的アクチュエータを用いても良い。本実施例のように、エアシリンダ51を用いれば、正圧源からヘッド保持ユニット21内のエアー通路55に供給される正圧(又は負圧)の一部を、エアシリンダ51のピストン52を駆動する圧力源として利用できるため、ヘッド保持ユニット21の内部に駆動手段をコンパクトに構成できる利点がある。
[0044]
その他、本発明は、上記実施例に限定されず、例えば、ヘッド保持ユニット21に実装ヘッド11を係合保持させる構成や、ノズルホルダ12に吸着ノズル13を係合保持させる構成を適宜変更しても良く、また、ヘッド保持ユニットに回転しない実装ヘッドを交換可能に保持させる構成としても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
符号の説明
[0045]
10…部品吸着装置、11…回転ヘッド(実装ヘッド)、12…ノズルホルダ、13…吸着ノズル、20…ヘッド移動装置、21…ヘッド保持ユニット、22…R軸、23…R軸駆動機構(ヘッド回転駆動機構)、24…R軸ギア、25…R軸モータ、26…Q軸駆動機構(ノズル回転駆動機構)、27…Q軸ギア、28…Q軸モータ、31…係合部材、32…ノズル回転ギア機構、33…円筒ギア、34…小ギア、35…係合孔、41…カメラ、42…基準マーク、43…制御装置(制御手段)、44…フィーダ、51…エアシリンダ(駆動手段)、52…ピストン、54…ばね部材、55,56…エアー通路、57…継手部、58…シール部材、59…連結穴部
請求の範囲
[請求項1]
部品を吸着する吸着ノズルを保持した実装ヘッドと、前記実装ヘッドを交換可能に保持するヘッド保持ユニットと、前記ヘッド保持ユニットを移動させるヘッド移動装置とを備え、部品を負圧で吸着した前記吸着ノズルに、正圧を供給して前記部品を解放する部品実装機において、
前記実装ヘッドのうちの前記ヘッド保持ユニットとの連結部に設けられた被係合部材と、
前記ヘッド保持ユニットに設けられ、前記被係合部材と係合して前記実装ヘッドを保持する係合位置と前記被係合部材から外れた係合解除位置との間を移動する係合部材と、
前記ヘッド保持ユニットに設けられ、前記係合部材を前記係合位置と前記係合解除位置との間を移動させる駆動手段と、
前記ヘッド保持ユニットと前記実装ヘッドにそれぞれ設けられ、前記吸着ノズルに負圧と正圧の少なくとも一方を供給するエアー通路と、
前記ヘッド保持ユニットと前記実装ヘッドの少なくとも一方に設けられ、前記ヘッド保持ユニットのエアー通路と前記実装ヘッドのエアー通路との連結部をシールするシール部材とを備え、
前記ヘッド保持ユニットから前記実装ヘッドを取り外す際に、前記駆動手段により前記係合部材を前記係合位置から前記係合解除位置へ移動させる過程で前記係合部材が前記実装ヘッドをその取り外し方向である下方へ押し出すように構成されていることを特徴とする部品実装機。
[請求項2]
前記係合部材は、上下方向に移動可能に設けられ、その移動ストロークの上端位置と下端位置をそれぞれ前記係合位置と前記係合解除位置とするように構成され、
前記ヘッド保持部に前記実装ヘッドを取り付ける場合は、前記駆動手段により前記係合部材を前記係合解除位置に保持すると共に、前記ヘッド保持ユニットを前記係合部材が前記被係合部材の側方をすり抜ける位置へ回動した状態で、前記ヘッド保持ユニットを下降して前記実装ヘッドに突き合わせた後、前記ヘッド保持ユニットを回動して前記係合部材の下部を前記被係合部材の下方に位置させてから、前記エアシリンダにより前記係合部材を前記係合位置へ上昇させることで、前記係合部材を前記被係合部材に係合させて前記ヘッド保持ユニットに前記実装ヘッドを取り付け、
前記ヘッド保持ユニットから前記実装ヘッドを取り外す場合は、前記駆動手段により前記係合部材を前記係合解除位置へ下降させて前記実装ヘッドを下方へ押し出してから、前記ヘッド保持ユニットを前記係合部材が前記被係合部材の側方をすり抜ける位置へ回動した後、前記ヘッド保持ユニットを上昇させて、前記ヘッド保持ユニットから前記実装ヘッドを取り外すことを特徴とする請求項1に記載の部品実装機。
[請求項3]
前記ヘッド保持ユニットのエアー通路と前記実装ヘッドのエアー通路との連結部は、一方側に設けた筒状の継手部を他方側に設けた連結穴部に差し込むように構成され、前記継手部の外周面と前記連結穴部の内周面との間の隙間を、前記継手部に装着したリング状の前記シール部材によってシールすることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品実装機。
[請求項4]
前記駆動手段は、エアシリンダにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の部品実装機。
図面