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1. (WO2008062642) DISPOSITIF SEMICONDUCTEUR ET SON PROCÉDÉ DE FABRICATION
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半導体装置及びその製造方法

技術分野

本発明は、半導体装置及びその製造方法に関し、特に、安定で注入効率が高く、 低消費電力である電界効果型自己発光型の半導体装置及びその製造方'法に関する。

背景技術

背景技術として、有機エレクトロルミネッセンス(EL e c t r o Lum i n e s c e n s e : E L) 素子と単層カーボンナノチューブ(S i n g l e -W a 1 1 C a r b o n Na n o t ub e s : SWNT) 材料について述べる。 まず、有機 EL素子は、直流駆動である一種の発光ダイオードであり、有機電 界発光素子、有機 LED (発光ダイオード)とも呼ばれる。有機 EL素子の最も 基本となる構造は、有機化合物からなる発光層が陰極と陽極の 2つの電極で挟ま れたサンドイッチ構造である。発光層の構造は一層から多層まで多岐に渡り、場 合によってそれぞれの層の役割が違ってくるが、陽極側に正孔注入層や輸送層、 陰極側に電子注入層や輸送層を積層したものが知られている。

EL素子の電極に関しては発光層の光を取り出せるようにするために、片方の 電極は透明のものが利用される。大抵の場合は陽極(アノード)に I T〇(I n d i urn T i n O x i d e、錫をドープした酸化インジウム)や I Z O ( I n d i urn Z i n c Ox i d e、亜鉛をド一プした酸化インジウム)と呼ば れる透明で、仕事関数が比較的高い金属的材料が使用される。

特許文献 1 (特許第 2597377号公報(第 14頁、図 1 )) によると、陽 極材料の仕事関数は 4 e V以上が望ましいとされる。

また、陰極(力ソード)にはカルシウム(C a)、アルミニウム (A 1 )、マグ ネシゥム銀(MgAg) などの、仕事関数が比較的低い金属が用いられる。陰極 材料の物性としては、例えば、特許文献 1に示されるように、 4 eV以下の仕事 関数を持つことが求められるとある。

有機 ELの動作機構は多くの文献で解説されているが、例えば、非特許文献 1 (特許庁(特許庁総務部技術調査課技術動向班)、「平成 1 7年度特許出願技術 動向調査報告書有機 EL素子(要約版)」、平成 18年 4月、 p p. 1-2) に 説明がある。それによると、上記構造の有機 EL素子の陰極および陽極から、そ れぞれ電子と正孔が有機発光層に注入され、そこで再結合することにより、有機 分子が励起状態に上がる。この発光性励起子にはその分子に特有な光に変換され る。有機 EL素子の効率的な発光には、正孔と電子の注入効率と電荷バランスの 向上が必要となる。このために従来技術では、電極と発光層の間に正孔注入層、 電子注入層、バッファ一層を設けている。

次に、 SWNT材料とそのドーピングについて述べる。

SWNTは直径が数ナノメートル、長さが数百ナノメートルから数マイクロメ 一トルの円筒型グラフアイト構造を持ち、その螺旋度と直径に依存して金属型 S WNTと半導体型 SWNTが存在する。半導体型 SWNTはトランジスタのチヤ ネルに利用することが可能で、シリコンと比較して 10倍以上のドリフト移動度 を有すること、パンドギヤップをその直径 ·螺旋度で構造制御が可能なこと等の 理由から、ボストシリコンを担う半導体材料としてデバイス応用上特に重要であ る。

一般に、ドーピングとは主に半導体の物性を制御するため、特に半導体の伝導 型制御のために異物質を添加することを意味し、半導体の伝導型には n型伝導と p型伝導の 2種類ある。 n型伝導を示す半導体は n型半導体と呼ばれ、異物質で あるドナー(電子供与体、 n型ドーパント)から半導体の伝導帯に供与された電 子が電気伝導を担っている。 p型伝導を示す半導体は p型半導体と呼ばれ、半導 体の価電子帯から異物質であるァクセプター(電子受容体、 p型ドーパント)に 電子が奪われた結果生じる正孔が電気伝導を担っている。

SWNTに関して言えば、適当なドナーもしくはァクセプターをドーピングす ることにより、 n型伝導 SWNTもしくは p型伝導 SWNTが作られる。

例えば、 n型伝導 SWNTを作る従来技術としては、非特許文献 2 (フイジ力 ノレ · レビュ一 B誌 61卷 R 10606— R10608頁 2000年 (P h y s i c a 1 Re v i ew B, 61, R10606-10608, 2000)) に示 されるようにカリウム(K) を蒸着する方法や非特許文献 3 (フィジカル ' レビ ユー . レター詰 87巻 256805— 256808頁 2001年 (Phy s i c a 1 Re v i ew L e t t e r s, 87, 256805— 256808, 2 001)) に示されるように真空中で熱処理する方法が報告されている。しかし、 両者の方法で作製された SWNTチャネルは安定動作のデバイス作製には不向き である。その原因は、ドナーが SWNT壁の外側に存在するため、大気中で化学 的に不安定なためである。

n型伝導 SWNTを作る別の従来技術として、非特許文献 4 (アメリカ化学会 誌 123卷 1 1512— 1 1 513頁 2001年( J o u r n a 1 o f Am e r i c a n Ch em i c a l S o c i e t y, 87, 256805— 25 6808, 2001)) に示されるィミン基含有高分子を SWNTの外部から供給 する方法や、特許文献 2 (特開 2004-31 1733号公報(第 9頁、図 1、 図 3))に示される SWNT中空にドナーとなる有機分子を導入する方法が知られ ている。しかし、これらの方法で作製される n型伝導 SWNTは大気中で安定で あるが、有機物を用いているため、キャリア密度などの伝導制御性が低い。その 原因は有機物がアルカリ金属などと比較してイオン化ポテンシャルが高いため、 S WN T内に誘起される電荷量が相対的に小さいことに起因する。

また、 p型伝導 SWNTを作る従来技術としては、 SWNTに対して特別な処 理をせず、正孔供給源と考えられる酸素 ·水分子を大気中から自然に付着させる 方法が報告されている。しかし、この方法では SWNTトランジスタの特性が外 部環境次第で変化してしまうため、信頼性のあるデバイス作製が出来ない。

更に p型伝導 S WN Tを作る別の従来技術としては、特許文献 2に示される S WNT中空にァクセプターとなる有機分子を導入する方法が知られている。この 内包化で作製される P型伝導 SWNTは大気中安定であるが、内包する有機物の 電子親和力(高々 3 eV程度)が無機系物質、例えば、フッ化タンタル類の電子 親和力(8. 4 eV程度)に比べて小さいため、キャリア密度などの伝導制御性 が低い。

また、特許文献 3 (特開 2006— 19081 5号公報(第 4頁〜 5頁))に は、 SWNTの仕事関数制御は、 SWNT表面にドナーゃァクセプターを配置し た際に起こる電荷移動に基づき、ドナーゃァクセプターを内包した S WN Tが、 仕事関数が制御された電極として機能する原理の詳細について述べられている。 ここで、特許文献 3に述べられた原理を簡単に説明すると、 SWNT表面近傍の 荷電子帯ならびに伝導帯といったバンドをドナーゃァクセプターからの電荷移動 により曲げることで、 SWNT表面近傍のフェルミエネルギー準位の位置を上下 させる、すなわち、 SWNTの仕事関数の値を相対的に変化させるというもので ある。 SWNTの仕事関数より小さいイオン化ポテンシャル( I p) を持つドナー を配置した場合、 SWNTのパンドはエネルギー深い方向、すなわち、下方に曲 がり、これに伴い SWNTのフェルミエネルギー準位は相対的に上昇し、 SWN Tの仕事関数は小さくなる。一方、 SWNTの仕事関数より大きな電子親和力(E A) を持つァクセプターを配置した場合は、 SWNTのバンドは上方に曲がり、こ れに伴い SWNTのフヱルミエネルギー準位は相対的に降下し、仕事関数は大き くなる。配置するドナーの I pが小さいほど、ァクセプターの EAが大きいほど、 SWNTの仕事関数シフトは大きくなる。また、ドナーとァクセプターの面密度 が大きいほど、 SWNTの仕事関数は大きく変化する。従って、ドナーやァクセ プターの種類、濃度を制御することで、所望の仕事関数値を持つ SWNTを得る ことが可能となる。

次に、 E L素子の発光効率向上と低消費電力化をもたらすための仕事関数制御 SWNT電極の働きについて説明する。

従来の E L素子では、陽極である高仕事関数の I TO (仕事関数: W= 4 · 7 〜5. 2 e V) と負極である低仕事関数のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金 属、例えば、カルシウム: C a (W=2. 9 e V) とで発光層を挟んだ構造を持 ち、その電子構造は図 10の模式図で示される。(A— 1) 〜(A— 3) は順次バ ィァス電圧: Vb i a sを印加した場合のエネルギー準位の変化を表す。(A— 1) は両電極のフヱルミエネルギー準位が一致しているゼ口バイアス状態( V ba s = 0 V) で、(A— 2) はそれに両電極間の仕事関数差:だけバイアス電圧を印 加したフラットバンド状態(この場合は Vba i s = AW=2. 8 eV)、(A— 3) はさらに電圧が印加されて、電流注入により正孔と電子が発光層で再結合して発 光している状態(同 Vba i s>AW=2. 8 e V) をそれぞれ示す。発光層と電極 の界面に注入障壁(陽極側: ΦΒρ、陰極側: ΦΒη) がない場合には、(Α—2) のフラットバンド状態から発光が始まる力 S、実際には有限の高さの ΦΒρと ΦΒηが 存在するため、 Vba i sが AWをかなり超えないと発光が始まらない。また、一般 には Φ B pと Φ B nの大きさが異なるため、正孔注入量と電子注入量のバランスが取 れず、再結合せず発光に寄与しない無駄な電流が流れてしまう。

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

しかしながら、従来の有機 EL素子には、次のようにいくつかの問題点がある。 まず、第 1の問題点は、従来技術では有機 EL素子の消費電力が高いというこ とである。このことは昨今の省エネの潮流に反するばかり力、用途を制限し、素 子寿命を短くする。この消費電力が高いのは、電流を注入する電極と発光層界面 での電流注入効率が低いことに起因する。その理由は電極のフェルミエネルギー 準位 (仕事関数)が発光層を構成する物質のエネルギー準位に必ずしも一致して いないためである。このエネルギー準位の不一致は電極と発光層の界面に注入障 壁が生じさせ、注入効率を律速する。

次に、第 2の問題点は、素子が劣化し易く、寿命が短いことである。これは従 来技術で用いられる電極物質、特に電子注入用の陰極物質が化学的に不安定であ ることに起因する。前述の通り、陰極にはアルカリ金属またはアルカリ土類金属 が通常用いられるが、これらは化学的に活性である。例えば、これらからなる電 極を大気に暴露すると、その界面が瞬時に大気中の水や酸素などと反応し、陰極 材料の酸化や水酸化、陰極と発光層との界面剥離などが起こる。これは所謂ダー クスポットと呼ばれる非発光点の発生の原因となる。その防止のため、素子を金 属の封止缶、ガラスの張り合わせによる封止、気密性の高いパリア薄膜を積層す る封止膜などの技術が開発されているが、素子構造が複雑になるため、軽量ィ匕 -フレキシブル化が困難になるとともに、余分なコストがかかってしまう。

また、陰極を構成するアル力リ金属やアル力リ土類金属は発光層物質とも化学 反応するため、発光層の劣化を招き、素子寿命を縮めてしまう。

さらに、素子を長時間駆動すると、エレクト口マイグレーションにより、アル カリ金属やアルカリ土類金属が発光層に侵入し、発光層が劣化するばかりか陰極 と陽極がショートして素子が機能しなくなる。これらの問題は活性な陰極物質が むき出し状態になっていることに起因し、有機 E L素子の長寿命化を阻んでいる。 さらに、第 3の問題点は、従来の E L製造技術では製造コストの低い大気中室 温プロセスが全面的には使用できないことである。この原因の 1つは、従来のァ ルカリ金属やアル力リ土類金属を用いる陰極の製造に真空蒸着など真空プロセス を必要とすることに起因する。その理由はアルカリ金属やアルカリ土類金属は化 学的に活性なため、大気中で取り扱いが困難なためである。もう 1つの原因は、 従来の陽極である I T O製造において、製膜後のァニール処理、次いでオゾン酸 化などの真空プロセスを必要とすることに起因する。その理由は、 I T Oは製膜 しただけではシート抵抗が大きく、ァニール処理で膜質を向上させ低抵抗化する 必要があるためで、また、オゾン酸化で界面を活性化し仕事関数を大きくする必 要があるためである。すなわち、たとえ、発光層製造などで大気室温プロセスが 一部使用できても、電極製造も含めた E L製造全工程で大気室温プロセスが利用 できないため、現状では製造コスト低減になかなか結びつけることが出来ない。 そこで、本発明の技術的課題は、発光開始電圧の低減、発光効率の向上、低消 費電力化を実現した半導体装置を提供することにある。

また、本発明のもう一つの技術的課題は、信頼性の向上、特に素子の長寿命化 を実現した半導体装置を提供することにある。

さらに、本発明のもう一つの技術的課題は、大気中室温プロセスで製造可能と することで、生産性の向上、製造コストの低減を実現した半導体装置を提供する ことにある。

課題を解決するための手段

本発明の第 1の態様による半導体装置は、発光層が陰極と陽極で挟まれた構造 を持ち、前記陰極及び前記陽極の内の少なくとも一方が単層カーボンナノチュー ブを含み、前記単層のカーボンナノチューブは、ドナー又はァクセプターを内包 し、前記発光層は電界発光を行うことを特徴としている。

また、本努明の第 2の態様による有機 E L素子は、前記半導体装置を有するこ とを特徴としている。

また、本発明の第 3の態様による半導体装置の製造方法は、イオン打ち込み、 もしくは塗布及ぴ蒸着の内の少なくとも一種と熱処理との組み合わせを用いるこ とで単層カーボンナノチューブにドナー及ぴァクセプターの内の少なくとも一種 を内包させる工程と、大気中室温で、前記ドナーが内包された単層カーボンナノ チューブを塗布又は印刷する工程と、発光層をする形成する工程と、前記ァクセ プターが内包された単層カーボンナノチューブを塗布又は印刷するする工程とを 有することを特徴としている。

発明の効果

本発明による半導体装置において、内包化で仕事関数を制御した S WN T電極 を用いることにより、 E L素子の電極界面における注入律速が低減されるので、 素子の低消費電力化に寄与することが可能である。また、本発明の半導体装置に おいては、内包 S WN T電極では電極と注入層が一体ィヒされるため、 E L素子の 構成簡易化、 E L素子から構成されるアレイやディスプレイ機器の小型 ·軽量ィ匕 に寄与できる。したがって、本発明の半導体装置及ぴその製造方法によれば、 E L素子の特性 ·性能向上を図ることができる。

また、本発明の半導体装置及びその製造方法によれば、内包 S WN T電極を用 いることにより、電極と発光層界面の注入障壁が解消され、電極と発光層の反応 やマイグレーションを防げるので、 E L素子特有のダ一クスポットに代表される 電極や発光層の劣化問題が回避され、素子の長寿命化に寄与することが出来るの で、 E L素子の信頼性の向上を図ることができる。

また、本発明の半導体装置及びその製造方法によれば、内包 S WN T電極は大 気中室温プロセスにより製造可能なため、 E L素子の製造工程が簡素化され、製 造コストを飛躍的に低減することが出来るので、 EL素子の生産性向上を図るこ とができる。

図面の簡単な説明

図 1は、本発明の EL素子の電子構造を表す図である。

図 2の(A) 〜(C) は、本発明の EL素子の基本構造断面と駆動時の電子構 造を表す図である。

図 3は、本発明と従来電極の発光効率を比較するための図である。

図 4は、本発明の駆動用 T FT付き E L素子の基本構造の断面図である。 図 5は、仕事関数シフトと内包物質の面密度の関係を示す図である。

図 6は、ドナードープ SWNTの仕事関数シフトのドナー面密度依存性を表す 図で、 (A) がセシウム、(B) がカリウム、 (C) がインジウムの場合である。 図 7は、ァクセプタードープ SWNTの仕事関数シフトのドナー面密度依存性 を表す図で、(A) は一フッ化フラーレン: C60F (EA=2. 78 eV)、(B) はヨウ素 (EA= 3. 08 eV)、 (C) はフッ化タンタル: T a F 6 (EA= 8.

4 e V) の場合である。

図 8は、セシウム、カリウム、ジメチルコバルトセン内包 SWNT膜の大気中 光電子スぺクトルを表す図である。

図 9は、ヨウ素、 C6。F36、 C6。F48内包 SWNT膜の大気中光電子スぺク トルを表す図である。

図 10は、従来の EL素子の電子構造を表す図である。

発明を実施するための最良の形態

以下、本発明について更に詳細に説明する。

まず、本発明のドナーゃァクセプターを内包した SWNTが、仕事関数が制御 された電極として機能する原理について説明する。

図 1は本発明で示される仕事関数制御 SWNT電極を用いた場合の E L素子の 電子構造を模式的に示す図である。図 10は比較のために従来技術による EL電 極を利用した EL素子の電子構造を模式的に示す図で、(A— 1) において、ゼロ バイアス状態、(A— 2) でフラットパンド状態、(A— 3) でバイアス電圧が Δ Wよりも大きい状態が夫々示されている。

図 1を参照すると、(B— 1) に示すように、陽極には適当なァクセプターを内 包することでその仕事関数が発光物質の HOMOエネルギー準位にうまく調節さ れた SWNT、陰極には適当なドナーを内包することでその仕事関数が発光物質 の L UMOエネルギー準位にうまく調節された S WN Tが用いられる。(B— 3) に示すように、これら仕事関数制御内包 SWNT電極と発光層の界面に注入障 壁: ΦΒρと ΦΒηがないように調節した場合は、(Β— 2) のフラットバンド状態 から発光が開始し、図 10の(Α— 1, Α-2, Α— 3) で示された従来技術に よる EL電極を利用した場合と比較すると、同じ発光量ならば、低い電圧と電流 量、すなわち、低い消費電力で動作することが可能である。もし、注入障壁があ る場合でも、 ΦΒρと ΦΒηの高さを揃えるように調整することで、両界面での正 孔 ·電子注入量をバランスさせ、再結合せず発光に寄与しない無駄な電流を解消 することが可能である。これは素子の低消費電力化に寄与する。

次に、 EL素子の信頼性向上、特に長寿命化をもたらす内包 SWNT電極の働 きを説明する。

内包 SWNTは、原子、分子、それらのイオンなどの他物質を SWNT中空に 取り込んだ一連の SWNT複合材料である。内包 SWNTの特徴は、第 1に、内 包物質の影響により単独の SWNTとは異なる物性を発現すること、第 2に、内 包物質が外部環境から空間的に遮断され、安定化されることである。第 1の特徴 は、 SWNTを構成するグラフアイトがそもそも陰性物質、陽性物質とも相互作 用しやすい両性的性質を有すること、 SWNTの極微の中空構造が内包物質を近 接させる効果により、電荷移動や電子状態の混成などの相互作用を容易にするこ とに起因する。また、第 2の特徴は、 SWNTのグラフアイト外壁が化学的、熱 力学的、機械的に非常に安定であることに起因する。

本発明では、上記内包 SWNTの特徴を積極的に活用している。既に述べたよ うに、第 1の特徴の利用により、 SWNTの仕事関数制御が実現する。第 2の特 徴である内包物質の安定化は、 EL素子の長寿命化に利用することが出来る。す なわち、内包 SWNTから作られる電極は、 EL素子の劣化問題を引き起こさな い。その理由は、内包 SWNTは化学的に不活性で安定であるためである。内包 SWNT電極は大気中の水や酸素とは反応せず、発光層物質とも反応せず、また、 エレクト口マイグレーションもない。従って、従来技術の陰極で問題となるダー クスポット発生や発光層物質の劣化、素子のショートが起こらない。従って、内 包 SWNT電極は E L素子の信頼性を飛躍的に向上させ、長寿命化に大きく貢献 することになる。

最後に、 EL素子の生産性向上をもたらす内包 SWNT電極の働きを説明する。 前述の通り、内包 SWNTは不活性で安定である。従って、内包 SWNT電極 は適当な溶媒に分散させィンク化することが可能で、 E L素子の電極製造におい て塗布プロセスが利用できることを意味する。従来電極の製造では真空プロセス が必要であるが、内包 SWNT電極を用いれば、製造コストの低い大気中室温プ 口セスを EL製造全工程で取り入れることが可能である。これは素子製造コスト の低減につながり、生産性を大幅に向上できることを意味する。

図 2の(A) は、本発明の第 1の実施の形態として EL素子基本構造を模式的 に示す図である。(A) を参照すると、基板上に SWNT陽極が形成され、その上 に発光層が設けられ、さらにその上に SWNT陰極が形成されている。かかる S WNT電極の厚さは 10 nm〜l 0 μ mである。透明性を確保するには薄ければ、 薄いほど良いが、余りに薄くなるとシート抵抗が高くなる。通常、厚さは可視域 で透過率が 80 %以上、シート抵抗が 1 k Ω/ s q . 以下になるように調整され る。望ましくは透過率が 80%以上、シート抵抗は 200 Ω/s q.以下である。 光学的な特性が同質なので、 SWNT陽極と SWNT陰極の位置は取替え可能で ある。また、 SWNT陽極と SWNT陰極に透明性を確保した場合は、基板下方 へ光を取り出すボトムエミッション型、上方へ光を取り出すトップェミッション 型、さらに両面表示型、どの形態も可能である。また、基板はボトムエミッショ ン型の場合は、透明なガラスやプラスチック基板であるが、トップェミッション の場合は基板の種類は問わない。発光層は低分子系、高分子系、どちらでも構わ ないが、大気中室温プロセスを用いる場合は、塗布プロセス可能な高分子系が望 ましい。

図 2の(B) はかかる EL素子の電子構造を示す図である。 SWNT陰極の仕 事関数は発光層物質の L UM〇エネルギー、 S WN T陽極の仕事関数は発光層物 質の HOMOエネルギーに一致するように調整する。すると、発光物質の HOM

0 - LUMOギャップ(Eg) は SWNT陽極と陰極の仕事関数差に等しく、電極 と発光層間の界面に注入障壁はゼロである。従って、(A) から HOMO - LUM 〇ギャップに対応するバイアス電圧を印加すると(B) のフラットバンド状態と なり、発光が開始する。(C) に示すように注入障壁がないので発光効率が高レ、。 図 3は注入障壁ゼ口の仕事関数制御 S WN T電極と従来 E L電極を使用した場 合の発光効率の比較のための図である。図 3を参照すると、横軸は注入障壁の大 きさの 1. 5乗、縦対数軸が相対発光効率である。陽極は I TOで固定し、陰極 の種類を様々に換えることで比較を行った。なお、発光層物質の LUMOェネル ギ一は 2. 2 e V、 HQMOエネルギーは 4. 9 e Vである。矢印で示された点 が SWNT陰極の場合で、それと従来陰極を比べると、カルシウムより約 3倍、 マグネシウムより約 30倍、アルミニウムより約 300倍、 SWNT陰極の方が 発光効率が高いことが見て取れる。仕事関数制御 SWNT陽極と従来陽極である

1 TOの比較においても、同様の議論から、仕事関数制御 SWNT陽極の優位性 が示される。これらの結果は仕事関数制御 SWNT電極が従来電極よりも格段に 優れ、 EL素子の性能向上、特に駆動電圧低減、低消費電力化に大きく貢献でき ることを証明している。

図 4は駆動用スイッチング薄膜トランジスタ(TFT) 付き EL素子の基本構 造を示す断面図である。図 4を参照すると、 EL素子部分の構造は図 2と基本的 に同じであるが、 EL用 SWNT電極が駆動用 T FTのソース電極(またはドレ イン電極)と共通化している。これにより素子の簡素化が図られる。駆動用 TF Tはソース電極、ドレイン電極、ゲート電極、薄膜チャネルがすべて SWNTか ら構成される。. ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極は金属型 SWNTを用い ることが可能であるが、ソース電極、ドレイン電極に関しては、 EL用 SWNT 電極同様、ドナーゃァクセプターの内包化で金属化するのが望ましい。この理由 は薄膜チャネルと EL - T FT共通 SWNT電極の極性と逆転すると、 n p nま たは p n p構成となり、 T F Tのオフ電流が低減し消費電力を低く抑えることが 可能なためである。なお、絶縁層はゲート電極と薄膜チャネルを電気的に絶縁す るために設けられているので、必ずしも E L素子部の直下まで延びている必要は ない。基板の種類は問わないが、プラスチック基板を用いることで、フレキシブ ル化を図ることが可能である。また、透明基板を用いれば、ボトムェミッション も可能である。以上の構成により、 EL素子部に流れ込む電流をゲート電圧で制 御することが出来る。

次に、第 1の実施の形態による半導体装置の製造方法について説明する。

始めに、 SWNTの内包化により、仕事関数制御 SWNT電極材料を製造する。 ドナーを SWNTに内包化することで陰極が製造され、ァクセプターを SWNT に内包することで陽極が製造される。内包するドナー及ぴァクセプターの物性条 件としては次のようなになる。ドナーは SWNTの有効真性仕事関数より小さな イオン化ポテンシャル(I p) を持つことが必要である。後述の(実施例 1) で示 される実験結果から導出されるように、ドナーの I pは 6.4 eV以下が望ましい。 また、ァクセプターは SWNTの有効真性仕事関数より大きな電子親和力(EA) を持つことが必要である。後述の(実施例 2) で示される実験結果から導出され るように、ァクセプターの EAは 2. 3 eV以上が望ましい。

SWNT内包化の第 1の方法としては、まず、 SWNTへ内包物質のイオン打 ち込みを行い、必要ならば、次に熱ァニール処理を行う。イオン打ち込み法は原 子イオンを内包化する場合に適している。ド^ "一としては、 L i (I p=5. 39 eV)、 N a ( I p= 5. 14 eV)ヽ K ( I p = 4. 34 eV)、 R b ( I p = 4. 18 e V) C s ( I p= 3. 89 e V) などのアルカリ金属元素、 C a ( I p = 6. l l eV)、 S r ( I p= 5. 70 eV)、 B a ( I p= 5. 21 e V) などの アルカリ土類金属元素、 I n (I p=5. 79 e V)、 A 1 ( I p= 5. 99 e V)、 Ga (I p=6. 00 e V) などの典型金属元素、 Y ( I ρ= 6. 38 eV)、 L a ( I p= 5. 58 e V)ヽ C e ( I p=5. 47 e V), P r (I p=5. 42 e

V)、 Nd ( I p= 5. 49 e V), S m ( I p= 5. 63 eV)、 E u ( I p= 5. 67 eV)、 G d (I p=6. 14 eV)、 Tb (I p=5. 85 eV)ヽ Dy ( I p =5. 93 eV)、 Ho ( I p= 6. 02 eV)、 E r ( I p= 6. 10 e V)、 T m (I p=6. 18 eV)、 Yb ( I p= 6. 25 eV)、 L u ( I p= 5. 43 e

V) などのランタノイド金属元素などを用いる。ァクセプターとしては、フッ素

(EA= 3. 40 eV)、塩素(EA=3. 61 e V)、臭素(EA= 3. 36 e V), ヨウ素(EA=3. 06 e V) などのハロゲン元素などが用いられる。原子を SW NTに内包した時、最大面密度が分子と比較して大きくなるので、 SWNTの仕 事関数の制御幅が大きい特長がある。特に、 I pの小さなアルカリ金属元素やアル カリ土類金属元素が SWNTの仕事関数を低くする効果が高く、 EAの大きなハロ ゲン元素は SWNTの仕事関数を大きくする効果が高い。イオン打ち込みは SW NTを適当な基板に塗布法で成膜し、内包したい元素のイオン源を用いて真空中 で行う。 SWNT膜の厚さに応じて、最深部までイオンが届くようにイオンの運 動エネルギーを調整する。イオンの運動エネノレギー 50 e V〜50 k e Vの範囲 である。イオンの運動エネルギーが 100〜1 50 e V程度の時、注入イオンが SWNT外壁にダメージを残さず貫通し、内包化されるので、この範囲の運動ェ ネルギ一が望ましい。しかし、この場合、 SWNT膜厚は 10〜100 nm程度 と薄くなる。従って、内包 SWNTの大量製造には大面積の SWNT膜を用意す る必要がなる。また、イオン注入量の調整により、 SWNTの仕事関数を制御す る。イオン注入量により、 SWNTの仕事関数を元の値(W=〜4. 85 e V) から、理論上、ドナー内包で最高 2. 65 eV低く(W=2. 2 eV)、ァクセプ ター内包で最高 1. O eV高く(W=〜5. 85 e V) 制御できる。また、過剰 量ィオン注入を行い、熱ァニールで脱ドープすることで、仕事関数の制御も可能 である。熱ァニール温度は 100〜500°Cの範囲である。

SWNT内包化の第 2の方法は、 SWNTへ内包物質の混合、塗布、または蒸 着を行い、その後、熱ァニール処理を行う方法である。この方法は原子内包に適 用されるほ力、イオン打ち込みでは破壊されてしまう分子の内包化に適している。 この方法の特長は比較的大量の内包 SWNTを得ることが可能なことある。内包 するドナーとしては、第 1の方法で示される元素以外に、クロモセン:— C5 H5) 2C r (I p=5. 40 e V) マンガノセン:— C5H5) 2Mn (I p = 6. 1 2 e V)、コバルトセン:(77一 C5H5) 2C o ( I p= 5. 2 eV)、ニッ ケロセン: — C5H5) 2N i ( I p= 6. 2 e V)、ジメチルクロモセン: [ r? 一 C5H3 (CH3) 2] 2C r ( I p=5. 1 e V)、ジメチルマンガノセン: [ η— C5H3 (CH3) 2] 2Mn ( I p= 5. 8 eV)、ジメチルコバルトセン: [ η— C 5H3 (CH3) 2] 2C o (I p= 5. 0 eV)、ジメチルニッケロセン: [ 77— C 5 H3 (CH3) 2] 2N i ( I p= 5. 9 e V)、デカメチルクロモセン: [η— C5 (CH3) 5] 2C r ( I p=4. 0 e V)ヽデカメチルマンガノセン: [η— C5 (C H3) 5] 2Mn ( I p=4. 7 e V)、デカメチルフエ口セン: [ τ?— C 5 (CH3) 5] 2F e ( I p=5. 4 e V)、デカメチルコバルトセン: [ —C5 (CH3) 5] 2C o ( I p= 3. 4 e V)、デカメチルニッケロセン: [ ?7 - C 5 (CH3) 5] 2 N i ( I p=4. 4 e V) などのメタ口セン類を用いることが出来る。また、テト ラキス (ジメチルァミノ)エチレン: TD AE ( I p= 5. 36 e V)、 N, N, N,, N,一テトラメチルーパラ一フエ-レンジァミン: TMPD ( I p= 6. 2 O e V)、テトラメチルテトラセレナフルバレン: TMT S F ( I p= 6. 2 7 e V)、テトラチアフルバレン: TTF ( I p=6. 40 e V) などのドナー性有機 化合物を内包ドナーとして用いることも可能である。一方、内包ァクセプターと しては、第 1の方法で示される元素以外に、 C6。(ΕΑ=2· 60 e V)、 C7。(Ε A= 2. 6 8 e V), C74 (EA= 3. 30 e V)、 C76 (EA= 2. 90 e V)、 C 78 (EA= 3. 1 2 eV)、 C80 (EA=3. 1 9 e V)、 C82 (EA= 3. 1 4 e V) などのフラーレン類、 C60F (EA=2. 78 eV)ヽ C60F2 (EA= 2. 7 4 e V)、 C60F36 (EA= 3. 48 e V), C60F48 (EA=4. 06 eV)ヽ C 7。F2 (EA= 2. 8 0 e V)、 C70F52 (EA=4. 06 e V) などのフツイ匕フ ラーレン類、 C a @C60 (EA= 3. O e V)、 L a @C74 (EA=2. 9 eV)、 Gd@C60 (EA= 3. O e V)、 Gd@C74 (EA= 3. 24 e V) Gd@C7 6 (EA= 3. l e V)ヽ G d@C78 (EA= 3. 26 e V)ヽ G d@C80 (EA= 3. 3 eV)、 Gd@C82 (EA= 3. 3 e V) などの金属内包フラーレン類を用

いることが出来る。また、組成式が MXk + 1 (Mは典型もしくは遷移金属原子、 Xはハロゲン原子、 kは M原子の最大形式価数)で表せられるスーパーハロゲン は構成ハ口ゲン元素より大きな電子親和力を有することから、内包ァクセプター として利用可能である。かかるスーパーハロゲンとして、 Ta F6 (EA= 8. 4 eV)、 T a 2F1 X (EA= 1 1. 84 eV)、 T a 3F16 (EA= 12. 63 e V) や、 A 1 F4 (EA= 7. 96 e V)、 H f F6 (EA=8. 8 e V)、 WF6 (EA = 3. 5 eV)、 R e F6 (EA=48 eV)、 O s F6 (EA= 6. O eV)ヽ I r F6 (EA= 7. 2 eV)ヽ P t F6 (EA= 7. 4 eV)、 AuF6 (EA= 8. 1 e V)ヽ Hg F6 (EA= 5. 8 eV)、 A s F6 (EA= 7. 95 eV)、 S b F6 (E A= 6. 0 e V)、 T e F7 (EA= 1 1. 9 e V)、 WF 7 (E A= 6. 505 eV)、 Mn Fs (EA=6. 7 eV)、 A 12F7 (EA= 1 1. 16 eV)、 P2Fu (EA = 10. 95 e V), ν2Ρ1 χ (EA=10. 98 e V)s A s 5F 16 (EA= 12. 20 eV)、 A 12C 17 (EA= 7. 75 eV)、 PB r 6 (EA=6. 66 e V)ヽ A 12B r 7 (EA=7. 08 e V) がなどが挙げられる。さらに、テトラフルォ ロシアノ一パラ一キノジメタン: F4TCNQ (EA=3. 38 eV)、 2, 3— ジクロロ一 5, 6ージシァノ一パラーべンゾキノン: DDQ(EA= 3.1 3 eV)、 7, 7, 8, 8—テトラシァノキノジメタン: TCNQ (EA=2. 80 eV)、 テトラクロローパラーべンゾキノン :パラークロラニル (EA= 2. 76 e V) な どのァクセプター性有機化合物も内包ァクセプターとして利用できる。なお、内 包ドナーは I pが小さいほど、内包ァクセプターは EAが大きいほど、 SWNTの 仕事関数制御性は向上する。 SWNTへ内包物質の塗布は、適当な溶媒に内包し たい物質を溶解し、その溶液を SWNT膜上に分散するか、内包したい物質の溶 液に SWNTを懸濁させ、その懸濁液を適当な基板に分散する。蒸着は通常の分 子線蒸着法を用いる。次いで、熱ァニール処理を行う。熱ァニール温度は 100 〜500°Cの範囲である。最後に、内包されずに残った物質を昇華させる力適 当な溶媒で洗浄し、内包 SWNTを得る。

以上の製法で製造される内包 SWNT薄膜は、一般に可視域全域に渡って透明 度が高く、シート抵抗は低い。典型的には波長が 500 nmの可視光に対し、内 包 S WNT薄膜は、透過率が 95 %の場合でシート抵抗が 1 k ΩΖ s q . 程度、 80 %の場合で 200 Ω/ s q. 程度、 65 %の場合で 20 ΩΖ s q. 程度であ つた。従って、内包 SWNT薄膜は透明電極に求められるスペック(透過率: 8 0%以上、シート抵抗: l kQZs q. 以下)を十分に満たしている。

図 5は、上記製法で製造された内包 SWNTに関して、内包化に伴う仕事関数 シフトを内包ドナーおょぴァクセプターの面密度の関数として表した図である。 この場合、内包ドナーは孤立状態で I pが 3. 89 e V、パルク状態で仕事関数が 2. 2 e V (セシウム相当)、内包ァクセプターは EAが 4. 2 eV (ポリヨウ素: I 3相当)と仮定している。仕事関数シフトは何もドープしていない SWNT (W =〜4. 85 e V) とドープした SWNTの仕事関数差を表す。ドナー内包で仕 事関数は小さくなるので仕事関数シフトはマイナスの値を取り、ァクセプター内 包で仕事関数は大きくなるので仕事関数シフトはプラスの値を取る。横軸上の単 層最密面密度とは SWNTグラフアイト層を構成する炭素原子の面密度を意味し、 単分子(原子)層でドナーゃァクセプターを詰めることが出来る最大の面密度に 相当する。その値は約 3. 7 X 1015 cm一2であり、これ以上内包すると SWN T中心に向かって第 2層を形成することになる。通常、第 2層からの電荷移動は 起こらないので、ァクセプター内包の場合、単層最密面密度において仕事関数シ ブトが最大となり、その値はプラス 1. O eV程度である。従って、ァクセプタ 一内包 SWNTの仕事関数の最大値は〜 5. 85 eVとなる。一方、ドナー内包 の場合は単層最密面密度近傍での仕事関数変化の機構が異なる。この理由は過剰 ドナーによるバルタ金属化が起こるためである。従って、単層最密面密度を超え ると、内包 S WN Tの仕事関数は急激に小さくなり、ドナーのバルタ状態の仕事 関数に漸近して行く。この場合はドナーとしてセシウムを想定しているので、仕 事関数シフトの漸近値はマイナス 2. 65 e Vで、ドナー内包 SWNTの仕事関 数の最小値は〜 2. 2 eVと期待される。

次に、仕事関数制御 SWNT電極材料を用いた E L素子の製造方法を説明する。 まず、上記の方法で製造された仕事関数制御 SWNT材料を適当な溶媒に分散 してインク化する。分散を促進するために、超音波処理、界面活性剤の添加など を行っても良い。陰極用取り出し部などをパターユングしたガラスやプラスチッ クなど適当な基板を用意し、ドナー内包 SWNT層を形成する。次いで、その上 に発光層を成膜する。さらにその上に、ァクセプター内包 SWNT層を形成する。 最後に、陽極用取り出し部を形成する。駆動用 T FT付きの素子の場合は、上記 工程に、ゲート電極用取出し部の形成、 SWNTゲート電極と絶縁層形成、 SW NTソース電極(もしくは SWNTドレイン電極)形成、 SWNTソース電極(も しくは SWNTドレイン電極)取り出し部形成の工程が加わる。 SWNT層なら ぴに発光層の形成には、スピンコート法、インクジェット法、グラビア印刷法、 インクジエツト法などを用いることが可能である。この方法は大気中室温プロセ スであるので、製造工程が簡略化でき、製造コストが安いという利点がある。な お、低分子発光材料を用いる場合は、発光層形成にシャドーマスクを用いる真空 蒸着法を利用することが可能である。しかし、途中で真空プロセス工程が入るの で、工程が多少複雑となり、材料利用効率が悪いので製造コストが高くなる短所 がある。

実施例

以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので はない。

(実施例 1 )

本発明で示される S WN T材料の仕事関数制御性を実験と理論の両面から調べ た。まず、 SWNTをチャネルとして有する SWNTトランジスタを特許文献 4

(特開 2004— 6741 3号公報)に示される方法で作製した。 SWNTトラ ンジスタについて簡単に記すと、ソース ' ドレイン電極には金 Zチタン、絶縁層 には約 100 nmのシリコン酸化膜、ゲート電極には高濃度 n型シリコン/金を 用い、 SWNTチャネルはメタンなどの炭化水素を原料に触媒気相成長法でその 場成長させ、その直径は典型的には 1〜2 nm、長さはソース ' ドレイン電極間 距離で規定され、約 300 nmである。次いで、 SWNTチャネルにセシウム(I p= 3. 89 eV)、カリウム(I p = 4. 34 eV)、インジウム(Ι ρ=5· 7 9 e V) などのドナーのドーピングをイオンビーム堆積法で行い、 SWNTトラ ンジスタのドレイン電流ーゲート電圧特性を測定した。その特性からゲート電圧 閾値を求め、電荷移動ドーピング理論を適用することで、閾値をドープされた S WNT表面近傍のバンド曲がりに換算し、 SWNTの仕事関数シフトを算出した。 図 6は、ドナードープ SWNTの仕事関数シフトのドナー面密度依存性を示す。

(A) がセシウム、(B) がカリウム、(C) がインジウムの場合である。各プロ ットは実験値を表し、曲線は電荷移動ドーピング理論に基づくフィッティング曲 線である。(A) 〜(C) で共通して、ドナー面密度が大きくなるにつれて、急激 に仕事関数シフトがマイナス方向に振れ、 SWNTの仕事関数が小さくなること が見て取れる。(A) と(B) の場合はドナー面密度が 5 X 1013 cm— 2を過ぎ た時、(C) の場合は 1 X 1 013 c m一2を越えた時に飽和する傾向がある力

(A) 〜(B) の場合、 1 X 1015 cm— 2付近での仕事関数シフトは実測でマイ ナス 0. 68 eV、(C) の場合はマイナス 0. 65 eV程度である。ドナー面密 度が 1 X 1015 cm—2を超えると、 SWNTトランジスタがゲート依存性を示さ なくなる傾向があるため、単層最密面密度(〜3. 7 X 1015 cm-2) 以上での 仕事関数シフトの評価はこの方法では行えない。単層最密面密度以上の評価は実 施例 3で示す大気中光電子分光で行った。

なお、実験で得られた S WN Tの仕事関数シフトのドナー面密度依存性を理論 曲線でフィッテングすることにより、 SWNTに対して有効にドーピング可能な ドナーが持つべき I pの上限が得られる。すなわち、 SWNTを正孔ドーピングす るためのドナーの物性条件は、その I pが 6. 4 eV以下であるということが導出 される。

(実施例 2)

実施例 1と同じ手法で、ァクセプタードープ SWNTの仕事関数制御性を調べ た。図 7はァクセプタードープ SWNTの仕事関数シフトのドナー面密度依存性 である。(A) は一フッ化フラーレン: C60F (EA= 2. 78 eV)、(B) はョ ゥ素 (EA=3. 08 eV)、 (C) はフッ化タンタル: T a F 6 (EA= 8. 4 e V) の場合である。ドナードープの場合とは逆に、ァクセプター面密度が大きく なるにつれて、仕事関数シフトがプラス方向に急速に伸ぴ、 SWNTの仕事関数

が大きくなる。(A) と(B) の場合はァクセプター面密度が 1 X 1 O13 cm— 2 近辺、(C) の場合は 5 X 1013 cm— 2近辺で飽和する傾向があるが、 1 X 101 5 cm— 2付近での仕事関数シフトは(A) と(B) の場合は実測でプラス 0. 6 eV、 (C) の場合はプラス 0. 68 eVである。

なお、実験で得られた SWNTの仕事関数シフトのァクセプター面密度依存性 を理論曲線でフイッテングすることにより、 S WN Tに対して有効にドーピング 可能なァクセプターが持つべき EAの下限が与えられる。すなわち、 SWNTを電 子ドーピングするためのァクセプターの物性条件は、その EAが 2. 3 e V以上で あるということが導出される。

(実施例 3)

ドナー内包 SWNTを前述の製法で製造した。まず、レーザーアブレーシヨン 法で合成された S WN Tをクロ口ホルムに分散し、標準 S WN T懸濁液を作製し た。濃度は 0. 1ミリグラムノリットルである。この懸濁液から定量を取り出し、 必要ならクロ口ホルムを定量追加し、ろ紙を用いて吸引ろ過する。その後、ろ紙 に張り付いた S WN Tを S U S板などの適当な基板に転送し、 S WN T膜を得た。 SWNT膜厚は、 ろ過する時の濃度に依存して、典型的には 10 nm〜l 00 μ mであった。

内包ドナーとして、まず、セシウム(I p=3. 89 e V) とカリウム(I p = 4. 34 e V) を選び、 SWNT膜に対して、前述のイオン打ち込み法と蒸着' 熱ァニール法でドナー内包化を行った。イオン打ち込みはセシウムとカリゥムの 内包化に用いた。イオン打ち込みはアルカリイオン源を用い、それから発生する アルカリ金属イオンを真空中、 150Vの加速電圧で SWNT膜に注入した。ィ オン注入量は SWNT基板に流れ込むィオン電流量で計測した。ィオン打ち込み 時の SWNT膜基板の温度は室温から 250°Cの範囲で、イオン打ち込み終了後、 数時間熱ァニール処理を行った。蒸着に関しては、 SWNT基板を真空装置に設 置し、通電過熱したアルカリ金属源から発生する中性のアルカリ金属蒸気で暴露 した。蒸着量は通電過熱時の電流量から検量線を用いて見積もった。蒸着後、熱 ァニール処理を数時間行った。最後に、 SWNT膜に残る過剰なアル力リ金属を、 エタノール、トルエン、クロ口ホルムの順で洗浄し除去した。次いで、更なる内 包ドナーとして、メタ口セン類の一種であるジメチルコバルトセン([ — (C5 H3) (CH3) 2] 2C o ( I p = 4. 9 e V) を選び、 SWNT膜に対して、前述 の SWNTへの内包物質の混合、塗布を行い、熱ァニール処理を行った。具体的 には、ジメチルコバルトセンのクロ口ホルム飽和溶液を SWNT膜に滴下し、大 気中で 2時間、 150°Cの熱ァニールを施した。次いで、冷却後、内包されてい ないジメチルコバルトセンをエタノール、トルエン、クロ口ホルムの順序で洗浄 除去した。

こうして得られたセシウム、カリウム、ジメチルコバルトセン内包 SWNT膜 に対して、大気中光電子分光装置を用いてその仕事関数を直接測定した。大気中 光電子分光の原理は、大気中、紫外線を波長掃引しながら照射して、放出される 光電子を酸素負ィオンの形で補足し、オープン力ゥンターで電子計数するという ものである。図 8は蒸着.熱ァニール法で製造されたセシウム、カリウム、ジメ チルコバルトセン内包 SWNT膜の大気中光電子スペクトルである。なお、大気 中光電子スぺクトルに関して、イオン打ち込み法と蒸着'熱ァニール法で製造さ れたセシウム、カリウム内包 SWNT膜の間には本質的な違いはなかった。この 実験事実は両者の製法がともに内包化に有効であることを意味する。また、ドー プした SWNT膜を 1ヶ月以上大気中室温で放置しても、大気中光電子スぺクト ルは経時変化を示さないことから、ドープした SWNT膜は電極として利用して も劣化問題は起こらないと推測される。図 8の内包 SWNTにおいて、セシウム のドープ量は、面密度に換算すると約 l X 1014cm— 2、カリウムのドープ量は 約 1 X 1011 c m— 2、ジメチルコバルトセンのドープ量は 1 X 1 015 c m— 2で ある。スペクトル曲線の立ち上がりの照射高エネルギーが仕事関数に対応し、何 も内包していない SWNT膜の場合、仕事関数が 4. 85 eVであるのに対し、 セシウム、カリウム、ジメチルコバルトセン内包 SWNT膜の場合、それぞれ、 4. 35 eV、 4. 55 eV、 4. 55 e Vである。従って、仕事関数シフトは、 それぞれ、マイナス 0. 5 e V、マイナス 0. 3 e V、マイナス 0. 3 e Vであ り、ドープ面密度を考慮すると、実施例 1の方法で示される図 6の理論フイツテ イング曲線で予想される値に非常に近い。さらに、セシウムを単層最密面密度以 上にドープされた SWNT膜において約 3. 0 eVの仕事関数値が得られており、 カルシウム単体の仕事関数(W=2. 9 e V) に匹敵する。これは仕事関数シフ トでマイナス 1. 85 eVであり、図 5で示されるドナー内包の場合の最大仕事 関数シフト値のマイナス 2. 65 eVには及ばないが、製造方法をさらに最適化 することで、最大シフト値を達成できる。

(実施例 4)

次に、ァクセプター内包 SWNTを製造した。内包するァクセプターとしては ヨウ素(EA=3. 08 eV)、フッ化フラーレンとして C60F36 (EA=3. 4 8 e V) 及び C60F4S (EA=4. 06 e V) を選択した。ヨウ素の内包化は、 レーザーアブレーションで合成された S WN Tとョゥ素をメノゥ乳鉢で混合し、 真空中、 150°Cで 4時間、さらに 180°Cで 4時間、熱ァニールした。次いで、 それを大気中に取り出し、内包されていないヨウ素をエタノール、トルエン、ク ロロホルムによる洗浄で十分に取り除いた後、ろ紙を用いた吸引ろ過を行い、ろ 紙上のヨウ素内包 SWNTを S US板などの基板に移し取った。〇6。?36及び〇 60F48の内包化は、実施例 1と同様の方法で作製される SWNT膜基板に、 C6 。F 36及び C 6。F48のクロロホルム飽和溶液を滴下し、真空中で 6時間、 250°C の熱ァニールを施した。次いで、大気中に取り出し、内包されていない C6QF36 をエタノール、トルエン、クロ口ホルムの順序で洗浄除去した。なお、熱ァエー ル処理は大気中で行っても、真空中ァニール処理の場合と同様の実験結果が得ら れた。

こうして得られたヨウ素内包、 C60F36、 C60F48内包 SWNT膜を、実施 例 3同様、大気中光電子分光装置で評価した。図 9はヨウ素内包、 C6QF36、 C 60F48内包 SWNT膜の光電子スぺクトルである。まお、ドナー内包の場合同様、 ァクセプター内包 SWNT膜を 1ヶ月以上大気中室温で放置しても、大気中光電 子スぺクトルの経時変化は見られなかった。この実験事実は、内包 SWNTの電 極利用の際も劣化が起こらないことを示唆する。図 9のサンプルでは、ヨウ素、 C6。F36、 C6。F48のドープ面密度は、それぞれ、 I X l O^ cm— 2、 1 X 1 015 c m— 2、 5 X 1 014 c m— 2程度である。この図に示すように、ョゥ素内包, C6。F 36、 C6。F48内包 SWNT膜の仕事関数は、それぞれ、 5. 0 0 e V、 5. 6 0 e V、 5. 6 0 e Vである。従って、ヨウ素内包 SWNT膜の仕事関数 シフトはプラス 0. 1 5 e Vであり、実施例 2で示される理論フィッティング曲 線から予想されるシフト値にほぼ一致する。 C6。F 36及ぴ C6。F48内包 SWN Tの仕事関数シフトは、それぞれ、プラス 0. 7 5 e V、プラス 0. 7 5 e Vで あり、図 5で示されるァクセプター内包の最大仕事関数シフト値:プラス 1 e V に比較的近い値となっている。この実験結果は図 5で示される予想を支持し、十 分大きな電子親和力を持つァクセプターを使用することで、ァクセプター内包 S WNTの最大仕事関数シフト値:プラス 1 e Vに達することが可能である。

(実施例 5)

上記製法で作製された E L素子と従来技術で作製された E L素子の基本性能比 較を行った。比較が可能なように、両者は素子構造や大きさが同等に作製され、 同一の測定条件下で比較された。双方とも発光層はポリ一 p—フエ二レンビニレ ンで共通のものを用いたが、本発明の E L素子で、陰極としてセシウム内包 SW NT、 陽極として C6。F36内包 SWNTを使用し、従来技術の E L素子では、陽 極として I TO、陰極としてカルシウムを使用した。なお、従来技術の E L素子 に作成法を以下に記す。まず、基板上に I TOをスパッタリング法により製膜し シート抵抗が 2 0 ΩΖ s q. の陽極とした。陽極表面を UV—オゾン洗浄処理し た後、窒素気流下にてデシルォキシフエ-ル置換されたポリ _ p—フエ二レンビ 二レンのトルエン溶液をスピンコート法により塗布、 1 2 5 °Cで乾燥させること で 2 0 0 n mの膜厚の発光層を得た。これを大気に晒すことなく真空蒸着機に入 れ抵抗加熱方式によりカルシウムを 3 O nm成膜した後、さらにアルミニウム層 を 1 0 0 nmの膜厚で形成して陰極とし、有機 E L素子を得た。こうして得られ た素子と本発明の素子の特性を表 1に示す。

表 1

本発明と従来技術の EL素子の基本性能比較


上記表 1は本発明と従来技術の E L素子の性能比較である。印加電圧が 5 Vの 時の輝度は、本発明の素子が 401 c d/m2、従来技術の素子が 103 c d/m

2 (カンデラ Z平方メートル)と約 4倍の明るさであった。また、発光開始電圧は、 本発明の場合は 2. 60Vであるのに対し、従来技術の場合は 3. 40Vで、本 発明において明らかな発光開始電圧の低減が見られた。さらに、最大電力効率は、 本発明の場合で 1 3. 7 1 m/W (ルーメンス Zヮット)、従来技術の場合で 5. 5 lmZWであり、本発明の素子の方が効率に関して約 2. 5倍優れていること が分かった。以上、仕事関数制御 SWNTを利用した EL素子は、その基本性能 が著しく向上し、従来技術の EL素子に対して、発光効率の向上、低電圧駆動や 長寿命化などに関して明確な優位性を持つことが証明された。

産業上の利用可能性

以上の説明の通り、本発明に係る半導体装置及びその製造方法は、 EL素子を 利用したディスプレイなどの半導体装置、 E L素子を利用した照明用機器等に適 用でき、また、トランジスタ、ダイオード、論理回路の電極や配線などへの適用 も可能である。

この出願は、 2006年 1 1月 22日に出願された日本出願特願第 2006- 31 5050号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込 む。