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1. WO2020166387 - RÉSONATEUR OPTIQUE À CRISTAL PHOTONIQUE ET SON PROCÉDÉ DE FABRICATION

Document

明 細 書

発明の名称 フォトニック結晶光共振器およびその作製方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

非特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017  

図面の簡単な説明

0018  

発明を実施するための形態

0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045  

符号の説明

0046  

請求の範囲

1   2   3   4  

図面

1   2A   2B   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : フォトニック結晶光共振器およびその作製方法

技術分野

[0001]
 本発明は、フォトニック結晶光共振器およびその作製方法に関する。

背景技術

[0002]
 光回路技術に応用される主なフォトニック結晶素子には、例えば、厚さ数100nm程度の板状の半導体からなる基部に、直径が200nmから300nm程度の円筒形状の空孔を、格子要素として格子状に配列した二次元フォトニック結晶が用いられている。格子要素は、屈折率の低い領域である。特に、格子要素を三角格子状に配列した二次元フォトニック結晶は、設計された特定の波長域の光を内部に透過しない光絶縁体としてはたらく。
[0003]
 上述したフォトニック結晶内のごく一部で光を強く閉じ込める機能を持つ、フォトニック結晶光共振器が注目されている。1個ないし複数個のフォトニック結晶光共振器を集積することで、光メモリや光スイッチ、原子、量子井戸、および量子ドットなどの微小な利得媒質の発光増強、レーザ、スローライト効果による光の遅延など、幅広い用途に応用することができる(非特許文献1参照)。
[0004]
 フォトニック結晶を用いた光共振器は、通常、フォトニック結晶の構成要素である格子要素を、1つないし複数個除いて作製することで形成する。格子要素が除かれた部分(格子点)は、フォトニック結晶の欠陥である。フォトニック結晶の基部を半導体から構成した場合、上述した欠陥は、半導体からなる屈折率の高い領域である。また、欠陥は、周りを光絶縁体であるフォトニック結晶に囲まれている。これらのことにより、フォトニック結晶の欠陥には、光を閉じ込めることができる。しかし一般に、単に格子要素を除くだけでは、欠陥の箇所の光の閉じ込めはそれほど強くならないことが知られている。
[0005]
 上述したフォトニック結晶光共振器の欠陥の部分(光閉じ込め部)に光を閉じ込めておける時間の長さを表す光子寿命は、通信波長帯の光では、概ね1ピコ秒から10ピコ秒前後である。また、フォトニック結晶光共振器の、光子寿命と光の周波数に比例したQ値と呼ばれる指標は、およそ1000から1万(10 3~10 4)程度である。
[0006]
 フォトニック結晶光共振器の光閉じ込め部に光を強く閉じ込め、光子寿命やQ値を大きくするために、欠陥部分の周辺の格子要素の位置や大きさをわずかに変えることで、共振器が持つ特定の固有電磁波モードが受ける放射損失を抑制することが行われてきた。これらの指標の最大の達成値は、基部の材料やフォトニック結晶光共振器の形成法の違いにより異なる。特に、H型の共振器やL型の共振器は、小さな領域で共振器の構造が実現でき、また長い間研究されてきた。
[0007]
 なお、H型の共振器は、ある格子要素を中心とし、この中心となる格子要素ないしその周りに殻を成す格子要素列を除く点欠陥型の光閉じ込め部による共振器である。また、L型の共振器は、直線状に連なる数個程度の格子要素を除いた線欠陥型の光閉じ込め部による共振器である。これらのフォトニック結晶光共振器の、数値シミュレーションによる最適化理論Q値は、100万以上1000万未満(10 6~10 7)である(非特許文献2、特許文献1参照)。
[0008]
 最近、1億(1×10 8)を超える理論Q値が可能な共振器を設計する方法が提案されている(非特許文献3参照)。このような高い理論Q値の実現には、格子要素を1列除いた線欠陥導波路構造を形成し、線欠陥の一部の幅を変化させたり(モードギャップ型)、また線欠陥の周囲の格子要素列の空間周期(格子定数)を変えたりすること(ヘテロ構造型)が必要だと考えられている。しかし、この場合は、フォトニック結晶内に比較的大きな欠陥を形成し、また広範囲の構造を変化させることになる。このため、上述した技術では、共振器の周囲に別種の素子を集積すると、集積した素子は構造変化の影響を受け一般に劣化してしまう。このため、上記のような高いQ値の共振器は、複数の素子を密に集積する上では不利になる。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特開2016-154164号公報
特許文献2 : 特開2002-314194号公報

非特許文献

[0010]
非特許文献1 : M. Notomi et al., "Femtojoule/bit integrated nanophotonics based on photonic crystals", IEICE Electronics Express, vol. 10, no. 12, pp. 1-19, 2013.
非特許文献2 : M. Minkov and V. Savona, "Automated optimization of photonic crystal slab cavities", Scientific Reports, vol. 4, Article number: 5124, 2014.
非特許文献3 : T. Asano et al., "Photonic crystal nanocavity with a Q factor exceeding eleven million", Optics Express, vol. 25, no. 3, pp. 1769-1777, 2017.
非特許文献4 : H. Y. Ryu and M. Notomi, "High-quality-factor and small-mode-volume hexapole modes in photonic-crystal-slab nanocavities", Applied Physics Letters, vol. 83, no. 21, pp. 4294-4296, 2003.
非特許文献5 : G. H. Kim and Y. H. Lee, "Coupling of small, low-loss hexapole mode with photonic crystal slab waveguide mode", Optics Express, vol. 12, no. 26, pp. 6624-6631, 2004.
非特許文献6 : H. Takagi et al., "High Q H1 photonic crystal nanocavities with efficient vertical emission", Optics Express, vol. 20, no. 27, pp. 28292-28300, 2012.

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 上述したように、1億を超える理論Q値が可能なフォトニック結晶光共振器は、共振器の周囲に複数の素子を密に集積する上で不利な構造となっている。素子を劣化させることなく共振器の周囲に複数の素子を密に集積するためには、格子要素を1つだけ除いた点欠陥の部分を光閉じ込め部とするH1型のフォトニック結晶光共振器が有利である。しかしながら、H1型のフォトニック結晶光共振器の理論Q値の最大値は、おおよそ300万(3×10 6)程度であり、光子寿命は2.5ナノ秒程度であり(非特許文献4,非特許文献5参照)、高いQ値が得られていない。
[0012]
 本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、H1型のフォトニック結晶光共振器でより高いQ値を得ることを目的とする。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明に係るフォトニック結晶光共振器は、基部および基部とは異なる屈折率を有する柱状の複数の格子要素を備え、複数の格子要素が、基部上に、対象とする光の波長以下の間隔で三角格子状に周期的に設けられている板状のフォトニック結晶本体と、フォトニック結晶本体の格子点上の格子要素を少なくとも1つ取り除いた部分から構成された点欠陥による光閉じ込め部とを備え、光閉じ込め部に隣り合う6個の第1格子要素は、光閉じ込め部より離れる方向に格子点からシフトし、光閉じ込め部より離れる側で第1格子要素に隣り合う12個の第2格子要素は、光閉じ込め部より離れる方向に格子点からシフトし、第1格子要素は、他の格子要素より小さな径を有している。
[0014]
 上記フォトニック結晶光共振器の一構成例において、シフトの量および第1格子要素の径は、共振器のQ値が最大となるように、基部と格子要素との間の屈折率の差に合わせて最適化されている。
[0015]
 上記フォトニック結晶光共振器の一構成例において、格子要素は円柱状とされ、格子要素の半径は、隣り合う格子要素の間の距離の0.3倍から0.325倍の範囲のいずれかの値とされ、第1格子要素の半径は、隣り合う格子要素の間の距離の0.225倍から0.255倍の範囲のいずれかの値とされ、第1格子要素のシフトの量は、隣り合う格子要素の間の距離の0.165倍から0.25倍の範囲のいずれかの値とされ、第2格子要素のシフトの量は、隣り合う格子要素の間の距離の0.038倍から0.054倍の範囲のいずれかの値とされている。
[0016]
 本発明に係るフォトニック結晶光共振器の作製方法は、基部および基部とは異なる屈折率を有する柱状の複数の格子要素を備え、複数の格子要素が、基部上に、対象とする光の波長以下の間隔で三角格子状に周期的に設けられている板状のフォトニック結晶本体と、フォトニック結晶本体の格子点上の格子要素を少なくとも1つ取り除いた部分から構成された点欠陥による光閉じ込め部とを備え、光閉じ込め部に隣り合う6個の第1格子要素は、光閉じ込め部より離れる方向に格子点からシフトし、光閉じ込め部より離れる側で第1格子要素に隣り合う12個の第2格子要素は、光閉じ込め部より離れる方向に格子点からシフトし、第1格子要素は、他の格子要素より小さな径を有しているフォトニック結晶光共振器の作製方法であって、共振器のQ値が最大となるように、第1格子要素のシフトの量の最適化、第2格子要素のシフトの量の最適化、および第1格子要素の径の最適化を、同時に実施する。

発明の効果

[0017]
 以上説明したことにより、本発明によれば、H1型のフォトニック結晶光共振器でより高いQ値が得られる。

図面の簡単な説明

[0018]
[図1] 図1は、本発明の実施の形態に係るフォトニック結晶光共振器の構成を示す平面図である。
[図2A] 図2Aは、実施の形態におけるフォトニック結晶光共振器の電界強度の面内の分布を示す分布図である。
[図2B] 図2Bは、実施の形態におけるフォトニック結晶光共振器の磁界強度の面内の分布を示す分布図である。
[図3] 図3は、実施の形態におけるフォトニック結晶光共振器の磁界強度の面直方向の分布を示す分布図である。
[図4] 図4は、半径R およびシフト量s が最適化されている状態で、第2格子要素112のシフト量s 2の最適化を実施した場合のQ値の変化を示す特性図である。
[図5] 図5は、実施の形態におけるフォトニック結晶光共振器のシミュレーションにおける電磁波エネルギーの時間減衰を片対数グラフで示す特性図である。

発明を実施するための形態

[0019]
 以下、本発明の実施の形態に係るフォトニック結晶光共振器について図1を参照して説明する。
[0020]
 このフォトニック結晶光共振器は、まず、基部102および基部102とは異なる屈折率を有する柱状の複数の格子要素103を備える。また、複数の格子要素103が、基部102上に、対象とする光の波長以下の間隔で三角格子状に周期的に設けられている板状のフォトニック結晶本体101を備える。フォトニック結晶本体101は、いわゆる2次元スラブ型のフォトニック結晶である。基部102は、対称となる光の共振波長付近で概ね3.0以上の高い屈折率を持つ半導体から構成することが望ましい。基部102の材料は、例えば、シリコン、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、リン化ガリウム等が挙げられる。また、格子要素103は、例えば円柱状の中空構造である。
[0021]
 また、このフォトニック結晶光共振器は、フォトニック結晶本体101に設けられて、フォトニック結晶の格子点上の格子要素103を少なくとも1つ取り除いた部分から構成された点欠陥による光閉じ込め部104を備える。光閉じ込め部104は、フォトニック結晶の格子要素103が1つ取り除かれた点欠陥により構成されている。
[0022]
 また、このフォトニック結晶光共振器は、光閉じ込め部104に隣り合う6個の第1格子要素111が、光閉じ込め部104より離れる方向に格子点からシフトし、12個の第2格子要素112は、光閉じ込め部104より離れる方向に格子点からシフトしている。第2格子要素112は、光閉じ込め部104より離れる側で第1格子要素111に隣り合って配置されている格子要素である。また、第1格子要素111は、格子点に配置されている他の格子要素103より小さな径を有している。
[0023]
 上述したシフトの量および第1格子要素111の径は、共振器のQ値が最大となるように、基部102と格子要素103との間の屈折率の差に合わせて最適化する。また、格子要素103が、円柱状の中空構造の場合、格子要素103の半径は、隣り合う格子要素103の間の距離の0.3倍から0.325倍の範囲のいずれかの値とされ、第1格子要素111の半径は、格子定数の0.225倍から0.255倍の範囲のいずれかの値とされ、第1格子要素111のシフトの量は、格子定数の0.165倍から0.25倍の範囲のいずれかの値とされ、第2格子要素112のシフトの量は、格子定数の0.038倍から0.054倍の範囲のいずれかの値とされている。なお、格子定数は、隣り合う格子要素103の間の距離である。
[0024]
 以下、より詳細に説明する。まず、以下では、格子定数をa、格子要素103の半径をR 0とする。また、基部102の厚さをtとする。このフォトニック結晶光共振器では、点欠陥よりなる光閉じ込め部104の1列外側の、最内殻を成す6つの第1格子要素111の半径を、R 0より小さい値R 1とする。また、6つの第1格子要素111の位置を、それぞれの格子点の位置から、光閉じ込め部104の中心(共振器中心)に対して動径方向に沿って外側に距離s 1だけシフトする。さらに、光閉じ込め部104の2列外側の第2内殻を成す12個の第2格子要素112の半径R 2を、他の格子要素103と同じR 0とする。また、12個の第2格子要素112の位置を、格子点の位置から、共振器中心に対し動径方向に沿って外側に距離s 2だけシフトする。
[0025]
 実施の形態におけるフォトニック結晶光共振器の特性を最適化する固有共振器モードは、図2A,図2B,図3に示すような六重極モード(Hexapole mode)と呼ばれるものである。なお、図2A,図2B,図3では、計算の都合により半面を示している。六重極モードの名称は、図2Bに例示する磁場分布が、モード全体で6つの腹(アンチノード:極)を持つことに由来する。六重極モードは、共振器中心を起点とした奇の60度回転対称性(6回対称性)を持つのが特徴である。これにより、隣り合ったアンチノードは互いに逆位相であるため、光閉じ込め部104近傍の面直放射成分が干渉により自然に相殺し、損失が抑制されやすいという利点がある(図3参照)。
[0026]
 一方、光閉じ込め部104の中央は、六重極モードのおける電磁場の節(ゼロ点)である。このため、光素子などの応用のために光閉じ込め部104に埋め込む利得媒質などの物質と電磁場との相互作用を得るためには、結合させる物質を点欠陥中央ではなく、その周囲のアンチノードに重なるよう配置する必要がある。したがって、実施の形態におけるフォトニック結晶光共振器で最適化を行う固有共振器モードは、非特許文献6または特許文献2で取り扱っているような、欠陥中心にアンチノードを持つものとは特性も用途も異なる。
[0027]
 第1格子要素111は、モード形状や共振波長に強く影響する。したがって、第1格子要素111の半径R やシフトの距離(シフト量)s を最適化することで、特に、基部102の面直方向への放射損失を低減することができる。また、第2格子要素112のシフトの距離(シフト量)s 2の最適化は、光閉じ込め部104付近のフォトニック結晶による実効屈折率勾配を緩やかにする効果を持つ。この最適化により、特に基部102の面内の固有モード広がりが抑えられるため、面内の放射損失を低減することができる。
[0028]
 第1格子要素111の半径R およびシフト量s の最適化によるQ値向上は、非特許文献4および非特許文献5により公知である。また、第2格子要素112のシフト量s 2の最適化によるQ値向上は、非特許文献2により公知である。しかし、第1格子要素111の半径R およびシフト量s の最適化と、第2格子要素112のシフト量s 2の最適化とを、各々個別に実施しても、理論Q値は向上しない。
[0029]
 例えば、まず、第1格子要素111の半径R およびシフト量s の最適化を実施する。この後、半径R およびシフト量s が最適化されている状態で、第2格子要素112のシフト量s 2の最適化を実施しても、図4に示すように、理論Q値は向上しない。よって、従来では、半径R 、距離s 、および距離s 2の最適化を同時に実施することで、理論Q値が向上するものとは考えられていなかった。また、共振器領域の比較的小さなL型およびH型共振器の全形態において、特に理論Q値が1億以上となる固有モードが実現する技術は知られていなかった。
[0030]
 発明者らは、半径R 、シフト量s 、およびシフト量s 2の、同時最適化を鋭意に検討し、H1型共振器の六重極モードが持つ光子の長寿命化およびQ値の極大を得る条件を探索した。この結果、半径R の最適化、シフト量s の最適化、およびシフト量s 2の最適化を同時に実施することで、以下に示す最適条件により、H1型のフォトニック結晶光共振器で、理論Q値が1億以上となる固有モードが実現できることを見いだした。
[0031]
 最適条件は、基部102の材料の屈折率により異なるが、格子定数aに対し、概ね基部102の厚さtを0.5a~0.6a程度、格子要素103の半径R 0を0.300a~0.325a程度、第1格子要素111の半径R 1を0.225a~0.255a程度、第1格子要素111の格子点からのシフト量s 1を0.165a~0.250a程度、第2格子要素112の格子点からのシフト量s 2を0.038a~0.054a程度とした範囲内で、高い理論Q値が得られる条件が存在することが判明した。
[0032]
 図2Aに示す電界強度の面内の分布,図2Bに示す磁界強度の面内の分布、図3に示す電界強度の面直方向の分布は、上述した最適条件の一例の下での、FDTD法による発明装置のシミュレーション結果である。これらの分布のシミュレーションは、基部102は、シリコンから構成して屈折率nを3.47とした。また、格子定数aを425nm、基部102の厚さtを250nm、格子要素103の半径R 0を131nm、第1格子要素111の半径R 1を102nm、第1格子要素111のシフト量s 1を88nm、第2格子要素112のシフト量s 2を20nmとした。
[0033]
 上述した条件で得られた六重極モードの波長は、真空中で1,552nmである。図2A、図2Bに示した各モード分布は、基部102の面内の電界および磁界振幅強度の絶対値が、共振器中心からの距離に対して指数的に減衰することを示している。電磁界強度は、共振器中心から離れる方向に格子要素103が10個程度で最大強度の10 -7程度まで減衰する。例えば、非特許文献5に記載されている技術と比べると、上記の減衰は非常に強く、面内の光閉じ込めが強いことを表す。
[0034]
 また、図3に示す基部102の断面を含む面直方向の磁界強度分布をみると、強い磁界が光閉じ込め部104の上方に集中していることが分かる。また、磁場は、エバネッセント波として、基部102の上面上の空気中に染み出しているが、染みだしの方向が基部102に対して垂直方向ではなく斜めの方向になっていることで、放射損失が抑制されている。一方で、モード体積は、他の高Q点欠陥、線欠陥共振器と比べてそれほど小さくならず、0.89(λ/n) 3であった。
[0035]
 上述したシミュレーションにおける電磁波エネルギーの時間減衰を、片対数グラフで図5に示す。光子寿命は、注目する共振器固有モードのエネルギーが1/e倍になるのにかかる時間を表し、図5において、エネルギーが縦軸に換算して1だけ減少するのにかかる時間を指す。計算では、共振器を狭線励起した後の100psの時点で、ほぼ全ての残留電磁場エネルギーが六重極モードによるものであると仮定した。100psから描かれている曲線上下の包絡線が、エネルギー減衰特性を直線でよくフィッティングしており、これらから求まる光子寿命は、92.5ナノ秒である。また、対応する理論Q値は1億を超え、1.12×10 8である。
[0036]
 上述同様のシミュレーションを、有限要素法を用いても行った。この結果、計算の違いによる極大条件のずれは非常に小さいことが分かった。格子定数aを前述よりも1nm大きい426nmとし、他のパラメータは全て同じ条件下で、共振器モード波長1,556nm、極大理論Q値1.24×10 8、光子寿命102.2ナノ秒を得た。このことは、1億を超える理論Q値を示す上記の極大条件の存在が、信頼できるものであることを示している。また、これらの結果をまとめると、実施の形態におけるフォトニック結晶光共振器がH1型共振器の理論Q値および光子寿命を従来の35倍程度に改善していることが示されている。
[0037]
 本発明で導入した最適化パラメータの内、基部102の厚さtや格子要素103の半径R 0の値は、六重極モードの理論Q値には大きく影響しない。このため、基部102の厚さtを上記から数十nm程度薄くしても、格子要素103の半径R 0を数nm程度変えるだけでQ値がほぼ極大となる条件が得られる。この場合も、基部102をSiから構成した場合では、理論Q値1億以上を維持できる。例えば、基部102の厚さtを230nmとしても、格子定数aを426nm、格子要素103の半径R 0を133nm、第1格子要素111の半径R 1を102nm、第1格子要素111のシフト量s 1を88nm、第2格子要素112のシフト量s 2を20nmとすると、有限要素法の計算で共振器モード波長1,526nm、理論Q値1.16×10 8が得られる。また、aとR 0を変えることで、Q値をそれほど大きく損なわずに共振器モード波長を変化させることも可能である。
[0038]
 基部102を他の材料から構成した場合、例えば基部102を、III-V族化合物半導体であるInGaAsP混晶系(屈折率3.40)から構成した場合、格子定数aを430nm、基部102の厚さtを250nm、格子要素103の半径R 0を130nm、第1格子要素111の半径R 1を106nm、第1格子要素111のシフト量s 1を101nm、第2格子要素112のシフト量s 2を20nmとすると、有限要素法の計算で共振器モード波長1,551nm、理論Q値1.38×10 7、光子寿命11.3ナノ秒が得られる。
[0039]
 また、基部102を同様のInGaAsPから構成し、各パラメータを前述した基部102をシリコンから構成した場合と類似の条件とすると、対象の光の波長がより短波長となるが高い理論Q値が得られる。基部102をInGaAsPから構成し、tを230nm、aを426nm、R 0を132nm、R 1を102nm、s 1を88nm、s 2を20nmとすると、共振器モード波長1,500nm、理論Q値6.95×10 7、光子寿命55.3ナノ秒が得られる。
[0040]
 一方で、t,a,R 0以外のパラメータの変化は、Q値に大きく影響する。特にR 1やs 2がそれぞれ極大条件から1nm程度変化すると、理論Q値は極大値の1/10程度に減少する。s 1については、単独では3nm程度変化しないとQ値は1/10程度に減少しないが、この影響はR 1やs 2の変化と相乗的にはたらくため注意が必要である。このようなパラメータ変化によるQ値への影響は、フォトニック結晶光共振器の作製時の構造ばらつきによる実験Q値の劣化の懸念を表す。ただし、従来の技術においてもこの影響は同様に存在し、H1型共振器の実験Q値の最大値は30万程度、L型でも100万程度である。フォトニック結晶光共振器の注意深い作製により、実施の形態によれば、実験Q値はこれらを上回るものになることが十分期待できる。
[0041]
 以上に説明したように、本発明では、光閉じ込め部に隣り合う6個の第1格子要素は、光閉じ込め部より離れる方向に格子点からシフトさせ、光閉じ込め部より離れる側で第1格子要素に隣り合う12個の第2格子要素は、光閉じ込め部より離れる方向に格子点からシフトさせ、第1格子要素は、他の格子要素より小さな径とした。この結果、本発明によれば、H1型のフォトニック結晶光共振器でより高いQ値が得られるようになる。
[0042]
 従来、点欠陥型(H型)および小規模線欠陥型(L型)フォトニック結晶光共振器では、1000万(1×10 7)および1億(1×10 8)を超える高いQ値を実現することは難しいと考えられていた。これに対し、本発明によれば、例えば、シリコンを用いたフォトニック結晶光共振器により、理論Q値1億、インジウムガリウムヒ素リン混晶化合物を用いたフォトニック結晶光共振器でも1000万を超えるQ値が実現できる。
[0043]
 また、本発明は、欠陥による光閉じ込め部の周囲を囲う2列までの局所的な範囲の格子要素について、径や位置を変更するのみで実現でき、構造最適化を含めた占有領域が小さい。このため、フォトニック結晶線欠陥導波路や方向性結合器、他の共振器といった、異なる複数の素子を周囲に集積する際、それらの構造を乱さずに配置できる。
[0044]
 本発明のフォトニック結晶光共振器が基づく六重極モードでは、理論Q値が1億を超える場合でも、モード体積も(λ/n) 3を若干下回る程度で著しく小さくならず、光は基部の面内である程度広がっている。このため、固有モード体積の小さな他の点欠陥、線欠陥共振器と比較すると、光導波路や光共振器などの他の素子との光結合や、その調整がより容易に行えることが期待できる。
[0045]
 なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。

符号の説明

[0046]
 101…フォトニック結晶本体、102…基部、103…格子要素、104…光閉じ込め部、111…第1格子要素、112…第2格子要素。

請求の範囲

[請求項1]
 基部および前記基部とは異なる屈折率を有する柱状の複数の格子要素を備え、前記複数の格子要素が、前記基部上に、対象とする光の波長以下の間隔で三角格子状に周期的に設けられている板状のフォトニック結晶本体と、
 前記フォトニック結晶本体の格子点上の前記格子要素を少なくとも1つ取り除いた部分から構成された点欠陥による光閉じ込め部と
 を備え、
 前記光閉じ込め部に隣り合う6個の第1格子要素は、前記光閉じ込め部より離れる方向に格子点からシフトし、
 前記光閉じ込め部より離れる側で前記第1格子要素に隣り合う12個の第2格子要素は、前記光閉じ込め部より離れる方向に格子点からシフトし、
 前記第1格子要素は、他の前記格子要素より小さな径を有している
 ことを特徴とするフォトニック結晶光共振器。
[請求項2]
 請求項1記載のフォトニック結晶光共振器において、
 シフトの量および前記第1格子要素の径は、共振器のQ値が最大となるように、前記基部と前記格子要素との間の屈折率の差に合わせて最適化されていることを特徴とするフォトニック結晶光共振器。
[請求項3]
 請求項1または2記載のフォトニック結晶光共振器において、
 前記格子要素は円柱状とされ、
 前記格子要素の半径は、隣り合う前記格子要素の間の距離の0.3倍から0.325倍の範囲のいずれかの値とされ、
 前記第1格子要素の半径は、隣り合う前記格子要素の間の距離の0.225倍から0.255倍の範囲のいずれかの値とされ、
 前記第1格子要素のシフトの量は、隣り合う前記格子要素の間の距離の0.165倍から0.25倍の範囲のいずれかの値とされ、
 前記第2格子要素のシフトの量は、隣り合う前記格子要素の間の距離の0.038倍から0.054倍の範囲のいずれかの値とされ
 ていることを特徴とするフォトニック結晶光共振器。
[請求項4]
 基部および前記基部とは異なる屈折率を有する柱状の複数の格子要素を備え、前記複数の格子要素は、前記基部上に、対象とする光の波長以下の間隔で三角格子状に周期的に設けられている板状のフォトニック結晶本体と、
 前記フォトニック結晶本体の格子点上の前記格子要素を少なくとも1つ取り除いた部分から構成された点欠陥による光閉じ込め部と
 を備え、
 前記光閉じ込め部に隣り合う6個の第1格子要素は、前記光閉じ込め部より離れる方向に格子点からシフトし、
 前記光閉じ込め部より離れる側で前記第1格子要素に隣り合う12個の第2格子要素は、前記光閉じ込め部より離れる方向に格子点からシフトし、
 前記第1格子要素は、他の前記格子要素より小さな径を有しているフォトニック結晶光共振器の作製方法であって、
 共振器のQ値が最大となるように、前記第1格子要素のシフトの量の最適化、前記第2格子要素のシフトの量の最適化、および前記第1格子要素の径の最適化を、同時に実施することを特徴とするフォトニック結晶光共振器の作製方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2A]

[ 図 2B]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]