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1. WO2020158368 - ACIER POUR STRUCTURES DE MACHINES DE TRAVAIL À FROID, ET SON PROCÉDÉ DE FABRICATION

Document

明 細 書

発明の名称 冷間加工用機械構造用鋼およびその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005  

先行技術文献

特許文献

0006  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0007   0008  

課題を解決するための手段

0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016  

発明の効果

0017  

発明を実施するための形態

0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050  

実施例

0051  

実施例 1

0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074  

実施例 2

0075   0076   0077   0078   0079   0080  

産業上の利用可能性

0081   0082  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7  

補正された請求の範囲(条約第19条)

1  *   2   3   4   5   6   7  

条約第19条(1)に基づく説明書

明 細 書

発明の名称 : 冷間加工用機械構造用鋼およびその製造方法

技術分野

[0001]
 本開示は、冷間加工用機械構造用鋼およびその製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 自動車用部品、建設機械用部品等の各種部品を製造するにあたっては、通常、炭素鋼または合金鋼などの熱間圧延材に、冷間加工性を付与する目的で球状化焼鈍が施される。そして、球状化焼鈍後の圧延材に対して冷間加工を行い、その後切削加工などの機械加工を施すことによって所定の形状に成形し、焼入れ焼戻し処理を行って最終的な強度調整が行われる。
[0003]
 近年は、省エネルギー化の観点により、球状化焼鈍の条件が見直しされ、特に球状化焼鈍の短時間化が要求されている。球状化焼鈍の処理時間を2~3割削減することができれば、それに応じてエネルギー消費量、CO 排出量の削減が期待できる。
[0004]
 しかしながら、通常よりも処理時間を短縮した球状化焼鈍処理(以下、「短時間焼鈍」と呼ぶことがある)を施した場合、セメンタイトの球状化程度の指標である球状化度が悪化し、鋼を十分に軟質化させることが難しく、冷間加工性が劣化することが知られており、球状化焼鈍時間の短時間化は容易ではない。そのため、短時間焼鈍を施した場合であっても、球状化度を悪化させず、鋼を十分に軟質化させるための技術が検討されている。
[0005]
 例えば特許文献1では、化学組成が、質量比で、C:0.3~0.6%、Mn:0.2~1.5%、Si:0.05~2.0%、Cr:0.04~2.0%、残部:鉄および不可避不純物から成り、金属組織において旧オーステナイトの平均粒径が100μm以上であり、かつフェライト分率が20%以下であることを特徴とする 球状化焼鈍後の冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼が開示されている。当該機械構造用鋼は、比較的短時間の球状化焼鈍でも、冷間鍛造性を十分確保できるとしている。

先行技術文献

特許文献

[0006]
特許文献1 : 特許第3783666号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0007]
 しかし、特許文献1に記載の機械構造用鋼には、Crは含まれるもののMoは必須成分として含まれていない。CrおよびMoを共に含むことで鋼の強度が顕著に増加し得るところ、特許文献1の鋼ではそのような強度増加が期待できない。さらに、CrおよびMoを共に含む鋼では球状化焼鈍後に軟質化しにくい場合があるが、特許文献1では、CrおよびMoを共に含む鋼に対して短時間焼鈍を施した場合に十分に軟質化させることは開示していない。
[0008]
 本発明の実施形態は、このような状況を鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、CrおよびMoを含み、且つ比較的短時間の球状化焼鈍を施した場合であっても、球状化度に優れ、且つ十分に軟質化することができる冷間加工用機械構造用鋼を提供することであり、別の1つの目的は、CrおよびMoを含み、且つ球状化焼鈍の処理時間を短縮しても十分に軟質化することができる冷間加工用機械構造用鋼の製造方法を提供することである。

課題を解決するための手段

[0009]
 本発明の態様1は、
 C :0.32~0.44質量%、
 Si:0.15~0.35質量%、
 Mn:0.55~0.95質量%、
 P :0.030質量%以下、
 S :0.030質量%以下、
 Cr:0.85~1.25質量%、
 Mo:0.15~0.35質量%、
 Al:0.01~0.1質量%、
 残部:鉄および不可避不純物からなり、
 初析フェライトの面積率が30%以上70%以下であり、
 フェライト結晶粒の平均粒径が5~15μmである冷間加工用機械構造用鋼である。
[0010]
 本発明の態様2は、前記初析フェライト以外の組織の合計の面積率に対するパーライトの面積率の割合が80%以下である、態様1に記載の冷間加工用機械構造用鋼である。
[0011]
 本発明の態様3は、硬さがHV300以下である、態様1または2に記載の冷間加工用機械構造用鋼である。
[0012]
 本発明の態様4は、
 Cu:0.25質量%以下(0質量%を含まない)、および
 Ni:0.25質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上を更に含有する態様1~3のいずれか1つに記載の冷間加工用機械構造用鋼である。
[0013]
 本発明の態様5は、
 Ti:0.2質量%以下(0質量%を含まない)、
 Nb:0.2質量%以下(0質量%を含まない)、および
 V :1.5質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上を更に含有する態様1~4のいずれか1つに記載の冷間加工用機械構造用鋼である。
[0014]
 本発明の態様6は、
 N  :0.01質量%以下(0質量%を含まない)、
 Mg :0.02質量%以下(0質量%を含まない)、
 Ca :0.05質量%以下(0質量%を含まない)、
 Li :0.02質量%以下(0質量%を含まない)、および
 REM:0.05質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上を更に含有する態様1~5のいずれか1つに記載の冷間加工用機械構造用鋼である。
[0015]
 本発明の態様7は、態様1~6のいずれか1つに記載の化学成分組成の鋼を用意し、
(a)圧縮率20%以上、保持時間10秒以下で前加工を行う工程と、
(b)前記工程(a)後、800℃超1050℃以下、圧縮率20%以上で仕上げ加工を行う工程と、
(c)前記工程(b)後、750℃以上840℃以下まで10秒以下で冷却する工程と、
(d)前記工程(c)後、500℃以下まで0.1℃/秒以上10℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程とを含む冷間加工用機械構造用鋼の製造方法である。
[0016]
 本発明の態様8は、態様7の方法で製造した冷間加工用機械構造用鋼に、焼鈍、球状化焼鈍、伸線加工、圧造および焼入れ焼戻しのうち1つ以上の工程を行う鋼線の製造方法である。

発明の効果

[0017]
 本発明の1つの実施形態では、CrおよびMoを含み、且つ通常よりも球状化焼鈍時間を短縮しても、球状化度に優れ、且つ十分に軟質化することができる冷間加工用機械構造用鋼を提供することが可能であり、別の1つの実施形態では、CrおよびMoを含み、且つ球状化焼鈍の処理時間を短縮しても十分に軟質化することができる冷間加工用機械構造用鋼の製造方法を提供することが可能である。

発明を実施するための形態

[0018]
 本願発明者らは、CrおよびMoを含み、且つ通常よりも球状化焼鈍時間を短縮しても、球状化度に優れ、且つ十分に軟質化することができる冷間加工用機械構造用鋼を実現するべく、様々な角度から検討した。
[0019]
 その結果、CrおよびMoを含めた化学成分組成を適切に調整すると共に、初析フェライトを含み、且つ初析フェライトの面積率、およびフェライト結晶粒の平均粒径が所定値になるように制御することにより、球状化焼鈍の処理時間を短縮しても、球状化度に優れ、十分に軟質化することができる冷間加工用機械構造用鋼を実現できることを見出した。
[0020]
 さらに、初析フェライトの面積率およびフェライト結晶粒の平均粒径の制御により、球状化焼鈍時の温度にばらつきが生じたとしても十分に軟質化することができる冷間加工用機械構造用鋼を実現できることも同時に見出した。このことは、球状化焼鈍を大型の炉で処理する際には非常に有益となる。すなわち、大型の炉内では、設定温度よりも温度が低い場所や昇温速度が遅れる場所の存在により、かなり温度がばらつくが、本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、そのような炉で球状化焼鈍が施されても、十分に軟質化することができることを見出した。
[0021]
 以下に、本発明の実施形態が規定する各要件の詳細を示す。
なお、本明細書において、「線材」とは、圧延線材の意味で用い、熱間圧延後、室温まで冷却した線状の鋼材を指す。また「鋼線」とは、上記圧延線材に焼鈍等を施して特性を調整した線状の鋼材を指す。
[0022]
<1.化学成分組成>
 本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、C:0.32~0.44質量%、Si:0.15~0.35質量%、Mn:0.55~0.95質量%、P:0.030%質量%以下、S:0.030質量%以下、Cr:0.85~1.25質量%、Mo:0.15~0.35質量%、Al:0.01~0.1質量%、および残部:鉄及び不可避不純物からなる。
 以下、各元素について詳述する。
[0023]
(C:0.32~0.44質量%)
 Cは、強度付与元素であり、0.32質量%未満では必要な最終製品の強度が得られない。一方、0.44質量%を超えると鋼の冷間加工性および靱性が低下する。そのため、Cの含有量は、0.32~0.44質量%とする。また、Cの含有量を0.40質量%未満にすることで、初析フェライトをより多く析出させることができるため好ましい。
[0024]
(Si:0.15~0.35質量%)
 Siは、脱酸元素として、および固溶体硬化による最終製品の強度を増加させることを目的として含有させる向上元素として有用である。このような効果を有効に発揮させるため、Si含有量を0.15質量%以上とする。一方、Siが過剰に含有されると硬度が過度に上昇して鋼の冷間加工性が劣化する。そのため、Si含有量を0.35質量%以下とする。
[0025]
(Mn:0.55~0.95質量%)
 Mnは、焼入れ性の向上を通じて、最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Mn含有量を0.55質量%以上とする。一方、Mnが過剰に含有されると硬度が上昇して鋼の冷間加工性が劣化する。そのため、Mn含有量を0.95質量%以下とする。
[0026]
(P:0.030質量%以下)
 Pは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中で粒界偏析を起こし、鋼の延性の劣化の原因となる。そのため、P含有量を0.030質量%以下とする。
[0027]
(S:0.030質量%以下)
 Sは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中でMnSとして存在して鋼の延性を劣化させるので、鋼の冷間加工性を劣化させる有害な元素である。そのため、S含有量を0.030質量%以下とする。
[0028]
(Cr:0.85質量%以上1.25質量%以下)
 Crは、鋼材の焼入れ性を向上させることによって最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。こうした効果を有効に発揮させるため、Cr含有量は0.85質量%以上とする。このような効果は、Cr含有量が増加するに従って大きくなる。しかしながら、Cr含有量が過剰になると、強度が高くなり過ぎて鋼の冷間加工性を劣化させるため、1.25質量%以下とする。
[0029]
(Mo:0.15質量%以上0.35質量%以下)
 Moは、鋼材の焼入れ性を向上させることによって最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。特に、MoをCrと共に鋼に含有させることにより、最終製品の強度が顕著に増加し得る。こうした効果を有効に発揮させるため、Mo含有量は0.15質量%以上とする。このような効果は、Mo含有量が増加するに従って大きくなる。しかしながら、Mo含有量が過剰になると、強度が高くなり過ぎて鋼の冷間加工性が劣化する。特に、MoをCrと共に鋼に含有させることにより、鋼が球状化焼鈍後に顕著に軟質化しにくくなり得る。そのため、Moは0.35質量%以下とする。
[0030]
(Al:0.01質量%以上0.1質量%以下)
 Alは、脱酸剤として有用であると共に、Nと結合してAlNを析出し、加工時に結晶粒が異常成長して強度が低下するのを防止する元素である。こうした効果を有効に発揮させるため、Al含有量は0.01質量%以上とし、好ましくは0.015質量%以上、より好ましくは0.020質量%以上である。しかし、Al含有量が過剰になると、Al が過剰に生成して冷間鍛造性を劣化させる。そのため、Al含有量は0.1%質量以下とし、好ましくは0.090質量%以下、より好ましくは0.080質量%以下である。
[0031]
 残部は鉄及び不可避不純物である。不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素(例えば、B、As、Sn、Sb、Ca、O、H等)の混入が許容される。
 なお、例えば、PおよびSのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」という場合は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
[0032]
 さらに、本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、必要に応じて以下の任意元素を選択的に含有してよく、含有される成分に応じて鋼の特性が更に改善される。
[0033]
(Cu:0.25質量%以下(0質量%を含まない)、およびNi:0.25%質量以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上)
 CuおよびNiは、焼入れ性を向上させると共に、製品強度を高めるのに有効に作用する元素である。こうした作用は、これらの元素の含有量が増加するにつれて増大するが、有効に発揮させるには、CuおよびNiは夫々好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上である。しかし過剰に含有させると過冷組織が過剰に生成し、強度が高くなりすぎて冷間鍛造性が低下する。したがってCuおよびNiは夫々0.25質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.22質量%以下、更に好ましくは0.20質量%以下である。なお、CuおよびNiは、夫々、単独で含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよく、また2種以上を含有させる場合の含有量は夫々上記範囲で任意の含有量でよい。
[0034]
(Ti:0.2質量%以下(0質量%を含まない)、Nb:0.2質量%以下(0質量%を含まない)、およびV:1.5質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上)
 Ti、Nb、Vは、Nと結合して化合物(窒化物)を形成し、鋼中の固溶N量を低減させて、変形抵抗低減効果が得られる元素である。こうした効果を発揮させるためには、Ti、Nb、Vは夫々、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.06質量%以上、更に好ましくは0.08質量%以上である。しかし、これらの元素を過剰に含有すると、窒化物量が増加し、変形抵抗が上昇して冷間鍛造性が劣化するため、Ti、Nbは夫々好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.18質量%以下、更に好ましくは、0.15質量%以下であり、Vは好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.3質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。なお、Ti、NbおよびVは、夫々、単独で含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよく、また2種以上を含有させる場合の含有量は夫々上記範囲で任意の含有量でよい。
[0035]
(N:0.01質量%以下(0質量%を含まない)、Mg:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Ca:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、Li:0.02質量%(0質量%を含まない)、および希土類元素(Rare Earth Metal:REM):0.05質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上)
 Nは、鋼に不可避的に含まれる不純物であるが、鋼中に固溶Nが含まれていると、ひずみ時効による硬度上昇、延性低下を招き、冷間鍛造性が劣化する。したがって、Nは、0.01質量%以下が好ましく、より好ましくは0.009質量%以下、更に好ましくは0.008質量%以下である。また、Mg、Ca、Li、及びREMは、MnS等の硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を向上させるのに有効な元素である。こうした作用はその含有量が増加するにつれて増大するが、有効に発揮させるためには、Mg、Ca、Li及びREMは夫々好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上である。しかし過剰に含有させてもその効果は飽和し、含有量に見合う効果が期待できないので、Mg及びLiは夫々好ましくは0.02質量%以下、より好ましくは0.018質量%以下、更に好ましくは0.015質量%以下、CaとREMは夫々好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.045質量%以下、更に好ましくは0.040質量%以下である。なお、N、Ca、Mg、LiおよびREMは、夫々、単独で含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよく、また2種以上を含有させる場合の含有量は夫々上記範囲で任意の含有量でよい。
[0036]
<2.金属組織>
 本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、初析フェライトを含む。初析フェライトは、球状化焼鈍後の鋼の軟質化に寄与する。しかしながら、特にCrおよびMoを含有する場合、単に初析フェライトを含むだけでは、短時間焼鈍後に、球状化度に優れ、且つ十分に軟質化することができる鋼を実現できない。
 そこで、以下に詳述するように、本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、初析フェライトの面積率が30%以上70%以下、およびフェライト結晶粒の平均粒径が5~15μmとなるように制御されている。
[0037]
[2-1.初析フェライトの面積率:30%以上70%以下]
 初析フェライトを多く存在させることで、球状化焼鈍中にセメンタイトなどの炭化物の凝集・球状化を促進させることができ、その結果、鋼の球状化度向上および鋼の硬さを低減できる。こうした観点から、初析フェライトの面積率は30%以上とする必要がある。初析フェライトの面積率は好ましくは30%超、より好ましくは35%超、更に好ましくは40%超である。一方、初析フェライトを多く存在させようとすると、製造時間が増加する。現実的な製造時間を考慮すると、初析フェライトの面積率は70%以下に抑える必要がある。
[0038]
[2-2.フェライト結晶粒の平均粒径:5~15μm]
 フェライトの結晶粒の平均粒径を微細化することで、球状化焼鈍後におけるセメンタイトなどの炭化物の凝集・球状化を促進させることができ、その結果、鋼の球状化度向上および硬さ低減を実現できる。こうした観点から、フェライト結晶粒の平均粒径を15μm以下に制御する必要がある。好ましくは13μm以下である。一方、微細化しすぎると硬さ上昇を招くため、5μm以上に制御する必要がある。好ましくは7μm以上である。
 ここでいうフェライト結晶粒とは、後方散乱電子回折像(Electron backscattering pattern;EBSP)解析の結果、結晶方位差(斜角)が15°を超える境界(大角粒界ともいう)を結晶粒界として、その結晶粒界に囲まれたフェライト領域をいう。また、ここでいう平均粒径とは、結晶粒界で囲まれた領域の面積を円に換算したときの直径の平均値、すなわち平均円相当直径をいう。
 フェライト結晶粒の平均粒径は、例えば電界放出型高分解能走査電子顕微鏡(Field emission scanning electron microscope;FE-SEM)およびEBSP解析装置を用いて測定される。
[0039]
 さらに、本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、必要に応じて以下の任意の金属組織であってもよく、それによって球状化焼鈍後の鋼の特性が更に改善される。
[0040]
[2-3.初析フェライト以外の組織の合計の面積率に対するパーライトの面積率の割合:80%以下]
 より球状化焼鈍後の鋼の球状化度を向上させる観点から、初析フェライト以外の組織(以下、「残部組織」と呼ぶことがある)において、パーライトの割合を減らすことが有効である。残部組織中のパーライトの割合が多すぎると、球状化焼鈍後も棒状の炭化物が存在しやすく、鋼の球状化度が悪くなりやすい。好ましくは、初析フェライト以外の組織の合計の面積率に対するパーライトの面積率の割合は80%以下であり、より好ましくは70%以下である。
 残部組織におけるパーライト以外の組織としては、ベイナイト、マルテンサイト、オーステナイト等が挙げられるが、全てベイナイトであることが鋼の球状化度を向上させる上でより好ましい。具体的には、残部組織中のパーライトの面積率の割合が80%以下の場合、残部組織中のベイナイトの面積率の割合が20%以上であることがより好ましく、残部組織中のパーライトの面積率の割合が70%以下の場合、残部組織中のベイナイトの面積率の割合が30%以上であることがより好ましい。
[0041]
<3.硬さ>
 さらに、本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、必要に応じて以下の任意の硬さを有していてもよく、それによって球状化焼鈍後の鋼の特性が更に改善される。
[0042]
[3.硬さが300HV以下]
 球状化焼鈍後の鋼の軟質化を図る上で、鋼の硬さを下げておくことが有効である。そのため、鋼の硬さを、HV350以下とし、好ましくはHV300以下とする。より好ましくはHV290以下である。
[0043]
<4.製造方法>
 本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼の製造方法において、上述の化学成分組成を満足する鋼材を用い、加工および加工後の冷却を行う。加工および加工後の冷却は、それぞれ2段階で行う。
 具体的には、本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼の製造方法は、上述の化学成分組成を有する鋼材に、
 (a)圧縮率20%以上、保持時間10秒以下で前加工を行う工程と、
 (b)前記工程(a)後、800℃超1050℃以下、圧縮率20%以上で仕上げ加工を行う工程と、
 (c)前記工程(b)後、750℃以上840℃以下まで10秒以下で冷却する工程と、
 (d)前記工程(c)後、500℃以下まで0.1℃/秒以上10℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程と、を含む。
 以下、各工程について詳述する。なお、ここでいう加工は、上述の要件を満たす限り任意の加工であってよく、例えばプレス加工、圧延加工がこれに含まれ得る。また、工程(c)および(d)をそれぞれ、第1冷却および第2冷却と呼ぶことがある。
[0044]
[(a)圧縮率20%以上、保持時間10秒以下で前加工を行う工程]
 初析フェライトの割合増加およびフェライト結晶粒の微細化のために、圧縮率20%以上の前加工を行う。好ましくは圧縮率が30%以上である。なお、圧縮率は、以下のように計算される。
<プレス加工を施す場合の圧縮率(この場合圧縮率は圧下率ともいう)>
  圧縮率(%)=(h1-h2)/h1×100
  h1:加工前の鋼の高さ、h2:加工後の鋼の高さ
<圧延加工により線材を得る場合の圧縮率(この場合圧縮率は減面率ともいう)>
  圧縮率(%)=(S1-S2)/S1×100
  S1:加工前の鋼の断面積、h2:加工後の鋼の断面積
 前加工時の温度は、初析フェライトの割合増加およびフェライト結晶粒の微細化のために、比較的低温であることが好ましい。
 また、前加工から仕上げ加工までの保持時間は、フェライト結晶粒の成長を抑制するために比較的短くする必要がある。そのため、保持時間は10秒以下とし、好ましくは5秒以下とする。
[0045]
[(b)工程(a)後、800℃超1050℃以下、圧縮率20%以上で仕上げ加工を行う工程]
 初析フェライトの割合増加およびフェライト結晶粒の微細化のために、20%以上の圧縮率で仕上げ加工を行う。好ましくは圧縮率が50%以上である。また、加工温度は、フェライト結晶粒の平均粒径を5~15μmとするために、800℃超1050℃以下とする。フェライト結晶粒の微細化のためには、1000℃以下が好ましく、950℃以下がより好ましい。一方、フェライト結晶粒の過度の微細化を防止するためには、825℃以上が好ましく、850℃以上がより好ましい。
[0046]
[第1冷却:(c)工程(b)後、750℃以上840℃以下まで10秒以下で冷却する工程]
 初析フェライトの割合増加およびフェライト結晶粒の微細化のために、仕上げ加工後は速やかに所定の温度(以下、第1冷却停止温度と呼ぶことがある)まで冷却させる。仕上げ加工温度から第1冷却停止温度まで冷却させる時間は10秒以下とする。好ましくは5秒以下、更に好ましくは3秒以下とする。
 初析フェライトの割合増加およびフェライト結晶粒の平均粒径を5~15μmとするために、第1冷却停止温度は、750℃以上840℃以下とする。初析フェライトの割合増加のためには、775℃以上が好ましい。一方、温度が高すぎるとフェライト結晶粒の平均粒径が大きくなりやすいため、820℃以下が好ましい。
[0047]
[第2冷却:(d)工程(c)後、500℃以下まで0.1℃/秒以上10℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程]
 初析フェライトの割合増加、フェライト結晶粒微細化、残部組織中のパーライトの割合低減および硬さ低減のために、0.1℃/秒以上10℃/秒未満の平均冷却速度で、第1冷却停止温度から500℃以下まで冷却する。好ましい平均冷却速度としては、1~3℃/秒である。
[0048]
 工程(d)後、500℃以下の温度範囲における冷却方法は特に限定されず、例えば、放冷であってもよく、又は第2冷却の平均冷却速度が例えば1℃/秒未満と比較的遅い場合には時間短縮のためにガス急冷等であってもよい。
[0049]
 以上のように本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼を得ることができる。本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、その後球状化焼鈍が施されることを想定しているが、場合によっては、球状化焼鈍前又は球状化焼鈍後に他の加工(伸線加工等)が施されてもよい。
本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、その後比較的時間を短縮した球状化焼鈍(例えば、従来:約15時間に対して約11時間に短縮した球状化焼鈍)が施された場合においても、球状化度に優れ、且つ十分に軟質化することができる。また、本発明の実施形態において、上記製造条件で得た鋼材に対し、焼鈍、球状化焼鈍、伸線加工、圧造および焼入れ焼戻しのうち1つ以上の工程を行うことにより、鋼線を製造することができる。ここでいう鋼線とは、上記製造条件で得た鋼材に対し、焼鈍、球状化焼鈍、伸線加工、圧造、焼入れ焼戻し等を施して特性を調整した線状の鋼材を指すが、上記焼鈍等の工程以外に、2次加工メーカーが一般的に行う工程を経た、線状の鋼材も含む。
[0050]
 以上のように本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼の製造方法を説明したが、本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼の所望の特性を理解した当業者が試行錯誤を行い、本発明の実施形態に係る所望の特性を有する冷間加工用機械構造用鋼を製造する方法であって、上記の製造方法以外の方法を見出す可能性がある。
実施例
[0051]
 以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をより具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の実施形態の技術的範囲に包含される。
実施例 1
[0052]
 表1の鋼種AおよびDで示される化学成分組成の鋼を用いて、φ10mm×15mmの加工フォーマスタ用の試験片を作製した。作製した加工フォーマスタ用の試験片を用いて、表2に記載の条件にて加工フォーマスタ試験機によりプレス加工および冷却を行った。表2に記載されていないが、500℃以下の温度域の冷却は、第2冷却時の平均冷却速度が1℃/秒以上の場合、その第2冷却時の平均冷却速度で室温付近(25℃~40℃)まで冷却し、第2冷却時の平均冷却速度が1℃/秒未満の場合、ガス急冷とした。
[0053]
 表1および表2、ならびに後述する表3~5において、下線を付した数値は本発明の実施形態の範囲から外れていることを示す。なお、表1の炭素当量の欄には、下記式(1)で計算される値を記載した。

 炭素当量(Ceq)=[C]+[Si]/24+[Mn]/6+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14 ・・・(1)

 ここで、[C]、[Si]、[Mn]、[Ni]、[Cr]、[Mo]および[V]は、それぞれ、質量%で示したC、Si、Mn、Ni、Cr、MoおよびVの含有量を示す。
[0054]
[表1]


[0055]
[表2]


[0056]
 加工熱処理試験を施した試験片を中心軸に沿って切断して4等分し、縦断面を含む4つのサンプルを得た。そのうちの1つは球状化焼鈍を施さないサンプル(以下、球状化焼鈍前サンプルと呼ぶことがある)とし、他の1つは球状化焼鈍を施したサンプル(以下、球状化焼鈍後サンプルと呼ぶことがある)とした。球状化焼鈍は、試験片をそれぞれ真空封入管に入れて行った。
 球状化焼鈍は以下の2条件(SA1およびSA2)で実施した。
 SA1:760℃で5時間均熱保持後、平均冷却速度13℃/時で685℃まで冷却し、その後放冷
 SA2:750℃で2時間均熱保持後、平均冷却速度13℃/時で660℃まで冷却し、その後放冷
 SA1は、従来技術における球状化焼鈍時間:約15時間に対して、球状化焼鈍時間:約11時間に短縮した条件とした。なお、ここでいう球状化焼鈍時間は、均熱保持時間と放冷するまでの冷却時間とを足し合わせた時間とした。また、SA2は、SA1と比較して温度の追従の遅れを想定して低温で行う条件とした。
[0057]
 球状化焼鈍前サンプルについて、縦断面が観察できるよう樹脂埋めし、(1)初析フェライトの面積率、(2)フェライト結晶粒の平均粒径、(3)初析フェライト以外の組織の合計の面積率に対するパーライトの面積率の割合、および(4)球状化焼鈍前の硬さを測定した。
 また、球状化焼鈍後サンプルについても、上記と同様に、縦断面が観察できるよう樹脂埋めし、(5)球状化焼鈍後の硬さおよび(6)球状化度を測定した。
 (1)~(6)のいずれの測定についても、試験片の直径をDとし、試験片の側面から中心軸に向かってD/4の位置を測定した。
[0058]
(1)初析フェライトの面積率の測定
 球状化焼鈍前サンプルの縦断面について、ナイタールエッチングによって組織を現出させ、D/4位置を光学顕微鏡にて倍率400倍(視野領域:横220μm×縦165μm)および1000倍(視野領域:横88μm×縦66μm)で写真を撮影した。得られた写真について、等間隔の15本の縦線、等間隔の10本の横線を格子状に引き、150個の交点上に存在する初析フェライトの点数を測定して、当該点数を150で除した値を初析フェライトの面積率(%)とした。
 この際、後述するフェライト結晶粒の平均粒径が10μm以上のサンプルについては倍率400倍の写真を用いて測定し、5μm未満のサンプルについては倍率1000倍の写真を用いて測定し、5μm以上10μm未満のサンプルについては倍率400倍または1000倍のいずれかの写真を適宜選択して測定した。
[0059]
(2)フェライト結晶粒の平均粒径の測定
 フェライト結晶粒の平均粒径は、FE-SEMおよびEBSP解析装置を用いて測定した。
 球状化焼鈍前サンプルの縦断面のD/4位置について、FE-SEMにより後方散乱電子回折像を得た。得られた像において、EBSP解析装置を用いて、結晶方位差(斜角)が15°を超える境界、すなわち、大角粒界を結晶粒界として「結晶粒」を定義し、フェライトにおける結晶粒の平均粒径を決定した。その際、測定領域は200μm×200μm、測定ステップは0.4μm間隔として測定し、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1以下の測定点は解析対象から削除した。
[0060]
(3)初析フェライト以外の組織の合計の面積率に対するパーライトの面積率の割合の測定
 球状化焼鈍前サンプルの縦断面について、ナイタールエッチングによって組織を現出させ、D/4位置を光学顕微鏡にて倍率400倍(視野領域:横220μm×縦165μm)および1000倍(視野領域:横88μm×縦66μm)で写真を撮影した。得られた写真について、等間隔の15本の縦線、等間隔の10本の横線を格子状に引き、150個の交点上に存在する初析フェライトの点数Aを測定した。次に、150個の交点上に存在するパーライトの点数Bを測定して、点数Bを点数(150-A)で除した値を初析フェライト以外の組織の合計の面積率に対するパーライトの面積率の割合(%)とした。
 この際、後述するフェライト結晶粒の平均粒径が10μm以上のサンプルについては倍率400倍の写真を用いて測定し、5μm未満のサンプルについては倍率1000倍の写真を用いて測定し、5μm以上10μm未満のサンプルについては倍率400倍または1000倍のいずれかの写真を適宜選択して測定した。
[0061]
(4)球状化焼鈍前の硬さの測定
 球状化焼鈍前サンプルの縦断面について、ビッカース硬度計を用いて、D/4位置にて荷重1kgfで3~5点測定し、その平均値(HV)を求めた。
[0062]
(5)球状化焼鈍後の硬さの測定
 球状化焼鈍後サンプルの縦断面について、ビッカース硬度計を用いて、D/4位置にて荷重1kgfで3~5点測定し、その平均値(HV)を求めた。
[0063]
 硬さは、鋼種の炭素当量が大きい程増大することが知られているため、本実施例の球状化焼鈍後の硬さの判定基準は、鋼種の炭素当量(Ceq)に応じて設定した。具体的には、SA1後の硬さについては、下記式(2)を満たすか否かにより判定した。

 (硬さ(HV)) < 97.3×Ceq+84 ・・・(2)

 SA1後の硬さが、上記式(2)を満たす場合を最も良好(◎)とし、上記式(2)を満たさない場合を不良(×)とした。
 なお、炭素当量が0.70以上の場合、SA1後の硬さがHV150以下であれば、より好ましい。
[0064]
 また、SA2は、SA1よりも低温で軟質化しにくい焼鈍条件であるため、SA2後の硬さについては、上記式(2)とは異なる基準(緩やかな基準)を設定した。具体的には、SA2後の硬さについては、下記式(3)を満たすか否かにより判定した。

 (硬さ(HV)) < 97.3×Ceq+98 ・・・(3)

 SA2後の硬さが、上記式(3)を満たす場合を最も良好(◎)とし、上記式(3)を満たさない場合を不良(×)とした。
 なお、炭素当量が0.70以上の場合、SA2後の硬さがHV165以下であれば、より好ましい。
[0065]
(6)球状化度の測定
 球状化焼鈍後サンプルの縦断面について、ナイタールエッチングによって組織を現出させ、D/4位置にて光学顕微鏡を用いて倍率400倍(視野領域:横220μm×縦165μm)で観察した。観察した像について、JISG3509-2に記載されている「球状化組織の程度」に従って、球状化度1~3番を決定した。判定は球状化度が1番のときは最も良好(◎)とし、2番のときは良好(○)とし、3番のときは不良(×)とした。
[0066]
 上記(1)~(6)の要領で評価した球状化焼鈍前の組織および硬さ、ならびに球状化焼鈍後の硬さおよび球状化度を表3に示す。なお、SA1後の総合判定については、SA1後の硬さおよび球状化度において、全て◎のときは最も良好(◎)とした。◎と○が混在するときは、良好(○)とした。×が1つでも混在するときは、不良(×)とした。
[0067]
[表3]


[0068]
 表3の結果において、残部組織の内、パーライト以外は全てベイナイトであった。
[0069]
 表3の結果より、次のように考察できる。表3の試験No.1-1~1-4、1-9および1-10は、いずれも本発明の実施形態で規定する要件の全てを満足する例であり、従来よりも球状化焼鈍時間が短縮されたSA1後において、硬さおよび球状化度がいずれも良好または最も良好であった。特に試験No.1-1~1-2は、試験No.1-3~1-4、1-9および1-10とは異なり、炭素含有量が好ましい範囲(0.40質量%未満)で、且つ第2冷却時の平均冷却速度が好ましい範囲内(1~3℃/秒)にあり、その結果好ましい要件(初析フェライト面積率40%超および残部組織のパーライト面積率80%以下)を満たしたため、SA1後の球状化度が最も良好となり、総合判定において最も良好となった。
 一方、表3の試験No.1-5~1-8は、本発明の実施形態で規定する要件を満たしていない例であり、SA1後の硬さまたは球状化度が不良であった。
[0070]
 試験No.1-5は、仕上げ加工温度が1200℃と高かったため、フェライト結晶粒の平均粒径が15μm超となり、SA1後の球状化度が不良であった。
[0071]
 試験No.1-6は、仕上げ加工温度が800℃と低いため、フェライト結晶粒の平均粒径が5μm未満となり、SA1後の硬さが不良であった。
[0072]
 試験No.1-7は、第2冷却の平均冷却速度が10℃/秒と速かったため、初析フェライトの面積率が30%未満となり、SA1後の硬さが不良であった。
[0073]
 試験No.1-8は、仕上げ加工温度が1200℃と高く、初析フェライトの面積率が30%未満となり、かつフェライト結晶粒の平均粒径が15μm超となり、SA1後の硬さが不良であった。
[0074]
 また、表3の試験No.1-1~1-4、1-9および1-10のように本発明の実施形態で規定する要件の全てを満足することにより、SA1と比較して温度の追従の遅れを想定して低温で球状化焼鈍を行ったSA2後においても、十分に軟質化することがわかった。
実施例 2
[0075]
 表1の鋼種B、Cで示される化学成分組成の鋼を用いて、実機の圧延ラインで表4の条件で圧延加工および冷却を行った。なお、実機の圧延ラインでは、加熱炉、粗列圧延機、中間列圧延機、中間水冷帯、ブロックミル圧延機、サイジングミル圧延機、製品水冷帯、冷却コンベアおよび立体倉庫がこの順に接続されており、前加工はブロックミル圧延機で行い、仕上げ加工はサイジングミル圧延機で行い、第1冷却および第2冷却は冷却コンベアで行った。表4に記載されていないが、500℃以下の温度域の冷却は、約400℃までは第2冷却時の平均冷却速度で冷却し、その後は放冷とした。得られた圧延材からサンプルを切り出し、そのうちの1つは球状化焼鈍を施さないサンプルとし、他の1つは球状化焼鈍を施したサンプルとした。
 球状化焼鈍は以下の2条件(SA3およびSA4)で実施した。SA3は、従来技術における球状化焼鈍時間:約15時間に対して、球状化焼鈍時間:約9時間に短縮した条件とした。また、SA4はSA3と比較して温度の追従の遅れを想定して低温で行う条件とした。
 SA3:770℃で2時間均熱保持後、平均冷却速度13℃/時で685℃まで冷却し、その後放冷
 SA4:750℃で2時間均熱保持後、平均冷却速度13℃/時で660℃まで冷却し、その後放冷。
[0076]
[表4]


[0077]
 実施例1と同様に、(1)初析フェライトの面積率、(2)フェライト結晶粒の平均粒径、(3)初析フェライト以外の組織の合計の面積率に対するパーライトの面積率の割合、(4)球状化焼鈍前の硬さ、(5)球状化焼鈍後の硬さおよび(6)球状化度を測定、評価した。なお、球状化焼鈍後の硬さの判定としては、SA3後の硬さについて、上記式(2)を満たす場合を最も良好(◎)とし、上記式(2)を満たさない場合を不良(×)とした。また、炭素当量が0.70以上の場合、SA3後の硬さがHV150以下であれば、より好ましい。SA4後の硬さについて、上記式(3)を満たす場合を最も良好(◎)とし、上記式(3)を満たさない場合を不良(×)とした。なお、炭素当量が0.70以上の場合、SA4後の硬さがHV165以下であれば、より好ましい。
 結果を表5に示す。
[0078]
[表5]


[0079]
 表5の結果において、残部組織の内、パーライト以外は全てベイナイトであった。
[0080]
 表5の結果より、次のように考察できる。表5のNo.2-2はいずれも本発明の実施形態で規定する要件の全てを満足する例であり、SA3後の硬さおよび球状化度が、いずれも最も良好または良好であった。
 一方、表5のNo.2-1は、第1冷却の冷却停止温度が840℃超であり、初析フェライトの面積率が30%未満となり、かつフェライト結晶粒の平均粒径が15μm超となり、SA3後の硬さおよび球状化度が不良であった。

産業上の利用可能性

[0081]
 本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、冷間鍛造、冷間圧造又は冷間転造等の冷間加工によって製造される各種部品の素材に好適である。鋼の形態は特に限定されないが、例えば線材または棒鋼等の圧延材とすることができる。
 前記部品には、例えば、自動車用部品、建設機械用部品が含まれ、具体的には、ボルト、ねじ、ナット、ソケット、ボールジョイント、インナーチューブ、トーションバー、クラッチケース、ケージ、ハウジング、ハブ、カバー、ケース、受座金、タペット、サドル、バルグ、インナーケース、クラッチ、スリーブ、アウターレース、スプロケット、ステータ、アンビル、スパイダー、ロッカーアーム、ボディー、フランジ、ドラム、継手、コネクタ、プーリー、金具、ヨーク、口金、バルブリフター、スパークプラグ、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト及びコモンレール等が含まれる。本発明の実施形態に係る冷間加工用機械構造用鋼は、上記の部品の素材として好適に用いられる機械構造用鋼として産業上有用であり、球状化焼鈍後、室温および加工発熱領域において上記の各種部品に製造される際、変形抵抗が低く、優れた冷間加工性を発揮することができる。
[0082]
 本出願は、出願日が2019年1月31日である日本国特許出願、特願第2019-016219号および2019年11月22日である日本国特許出願、特願第2019-211181号を基礎出願とする優先権主張を伴う。特願第2019-016219号および特願第2019-211181号は参照することにより本明細書に取り込まれる。

請求の範囲

[請求項1]
 C :0.32~0.44質量%、
 Si:0.15~0.35質量%、
 Mn:0.55~0.95質量%、
 P :0.030質量%以下、
 S :0.030質量%以下、
 Cr:0.85~1.25質量%、
 Mo:0.15~0.35質量%、
 Al:0.01~0.1質量%、
 残部:鉄および不可避不純物からなり、
 初析フェライトの面積率が30%以上70%以下であり、
 フェライト結晶粒の平均粒径が5~15μmである冷間加工用機械構造用鋼。
[請求項2]
 前記初析フェライト以外の組織の合計の面積率に対するパーライトの面積率の割合が80%以下である、請求項1に記載の冷間加工用機械構造用鋼。
[請求項3]
 硬さがHV300以下である、請求項1に記載の冷間加工用機械構造用鋼。
[請求項4]
 以下の(a)~(c)の少なくとも1つをさらに含有する請求項1~3のいずれか1つに記載の冷間加工用機械構造用鋼。
 (a)Cu:0.25質量%以下(0質量%を含まない)、およびNi:0.25質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上
 (b)Ti:0.2質量%以下(0質量%を含まない)、Nb:0.2質量%以下(0質量%を含まない)、およびV:1.5質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上
 (c)N:0.01質量%以下(0質量%を含まない)、Mg:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Ca:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、Li:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、およびREM:0.05質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上
[請求項5]
 請求項1に記載の化学成分組成の鋼を用意し、
(a)圧縮率20%以上、保持時間10秒以下で前加工を行う工程と、
(b)前記工程(a)後、800℃超1050℃以下、圧縮率20%以上で仕上げ加工を行う工程と、
(c)前記工程(b)後、750℃以上840℃以下まで10秒以下で冷却する工程と、
(d)前記工程(c)後、500℃以下まで0.1℃/秒以上10℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程とを含む冷間加工用機械構造用鋼の製造方法。
[請求項6]
 請求項4に記載の化学成分組成の鋼を用意し、
(a)圧縮率20%以上、保持時間10秒以下で前加工を行う工程と、
(b)前記工程(a)後、800℃超1050℃以下、圧縮率20%以上で仕上げ加工を行う工程と、
(c)前記工程(b)後、750℃以上840℃以下まで10秒以下で冷却する工程と、
(d)前記工程(c)後、500℃以下まで0.1℃/秒以上10℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程とを含む冷間加工用機械構造用鋼の製造方法。
[請求項7]
 請求項5または6の方法で製造した冷間加工用機械構造用鋼に、焼鈍、球状化焼鈍、伸線加工、圧造および焼入れ焼戻しのうち1つ以上の工程を行う鋼線の製造方法。

補正された請求の範囲(条約第19条)
[ 2020年6月4日 ( 04.06.2020 )  国際事務局受理 ]

[1]
[補正後] C :0.32~0.44質量%、
 Si:0.15~0.35質量%、
 Mn:0.55~0.95質量%、
 P :0.030質量%以下、
 S :0.030質量%以下、
 Cr:0.85~1.25質量%、
 Mo:0.15~0.35質量%、
 Al:0.01~0.1質量%、
 残部:鉄および不可避不純物からなり、
 初析フェライトの面積率が35%超70%以下であり、
 フェライト結晶粒の平均粒径が5~15μmである冷間加工用機械構造用鋼。
[2]
 前記初析フェライト以外の組織の合計の面積率に対するパーライトの面積率の割合が80%以下である、請求項1に記載の冷間加工用機械構造用鋼。
[3]
 硬さがHV300以下である、請求項1に記載の冷間加工用機械構造用鋼。
[4]
 以下の(a)~(c)の少なくとも1つをさらに含有する請求項1~3のいずれか1つに記載の冷間加工用機械構造用鋼。
 (a)Cu:0.25質量%以下(0質量%を含まない)、およびNi:0.25質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上
 (b)Ti:0.2質量%以下(0質量%を含まない)、Nb:0.2質量%以下(0質量%を含まない)、およびV:1.5質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上
 (c)N:0.01質量%以下(0質量%を含まない)、Mg:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、Ca:0.05質量%以下(0質量%を含まない)、Li:0.02質量%以下(0質量%を含まない)、およびREM:0.05質量%以下(0質量%を含まない)よりなる群から選択される一種以上
[5]
 請求項1に記載の化学成分組成の鋼を用意し、
(a)圧縮率20%以上、保持時間10秒以下で前加工を行う工程と、
(b)前記工程(a)後、800℃超1050℃以下、圧縮率20%以上で仕上げ加工を行う工程と、
(c)前記工程(b)後、750℃以上840℃以下まで10秒以下で冷却する工程と、
(d)前記工程(c)後、500℃以下まで0.1℃/秒以上10℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程とを含む冷間加工用機械構造用鋼の製造方法。
[6]
 請求項4に記載の化学成分組成の鋼を用意し、
(a)圧縮率20%以上、保持時間10秒以下で前加工を行う工程と、
(b)前記工程(a)後、800℃超1050℃以下、圧縮率20%以上で仕上げ加工を行う工程と、
(c)前記工程(b)後、750℃以上840℃以下まで10秒以下で冷却する工程と、
(d)前記工程(c)後、500℃以下まで0.1℃/秒以上10℃/秒未満の平均冷却速度で冷却する工程とを含む冷間加工用機械構造用鋼の製造方法。
[7]
 請求項5または6の方法で製造した冷間加工用機械構造用鋼に、焼鈍、球状化焼鈍、伸線加工、圧造および焼入れ焼戻しのうち1つ以上の工程を行う鋼線の製造方法。

条約第19条(1)に基づく説明書
 請求の範囲第28頁第1項に記載の「初析フェライトの面積率」の下限を、「30%以上」から「35%超」に補正しました。
 請求の範囲第28頁第1項の「35%超」の記載は、出願時の明細書の段落0037第3文に記載された事項に基づいています。

以上