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1. WO2020161814 - ÉLÉMENT DE ROTATION DE MAGNÉTISATION DE TYPE À COUPLAGE SPIN-ORBITE, ÉLÉMENT À EFFET MAGNÉTORÉSISTIF DE TYPE À COUPLAGE SPIN-ORBITE ET MÉMOIRE MAGNÉTIQUE

Document

明 細 書

発明の名称 スピン軌道トルク型磁化回転素子、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子及び磁気メモリ

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004  

先行技術文献

特許文献

0005  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0006   0007  

課題を解決するための手段

0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022  

発明の効果

0023  

図面の簡単な説明

0024  

発明を実施するための形態

0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115  

符号の説明

0116  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12  

明 細 書

発明の名称 : スピン軌道トルク型磁化回転素子、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子及び磁気メモリ

技術分野

[0001]
 本発明は、スピン軌道トルク型磁化回転素子、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子及び磁気メモリに関する。

背景技術

[0002]
 磁気抵抗効果素子は、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)への応用が期待されている。
[0003]
 磁気抵抗効果素子は、非磁性層を挟む二つの強磁性層の互いの磁化の向きの変化を素子の抵抗変化として出力する。磁気抵抗効果素子は、強磁性層の磁化の向きを制御して、データを記録する。磁化の向きを制御する方法として、電流が生み出す磁場を利用する方式、磁気抵抗効果素子の積層方向に電流を流した際に生ずるスピントランスファートルク(STT)を利用する方式が知られている。STTを利用する方式は、非磁性層を貫通する方向に電位差を与える必要があり、非磁性層にダメージを与える場合がある。
[0004]
 近年、磁化の向きを制御する新たな方式としてスピン軌道トルク(SOT)を利用する方式が検討されている(例えば、特許文献1)。SOTは、スピン軌道相互作用によって生じたスピン流又は異種材料の界面におけるラシュバ効果により強磁性層内に誘起される。強磁性層内の磁化にSOTが作用することで、磁化が反転する。スピン流及びラシュバ効果は、強磁性層の積層方向と交差する方向に電流が流れると生じる。SOTを利用する方式は、非磁性層及び強磁性層の積層方向に大きな書き込み電流を流すことを避けられ、非磁性層等へのダメージを抑制できる。

先行技術文献

特許文献

[0005]
特許文献1 : 特開2017-216286号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0006]
 磁気メモリは、集積された複数の磁気抵抗効果素子を有する。それぞれの磁気抵抗効果素子の反転電流密度が大きくなると、磁気メモリの消費電力が増加する。反転電流密度は、磁気抵抗効果素子の磁化を反転するのに要する電流密度であり、磁気抵抗効果素子は磁化が反転することで動作する。磁気抵抗効果素子の反転電流密度を低減し、磁気メモリの消費電力を抑制することが求められている。
[0007]
 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、反転電流密度を低減できるスピン軌道トルク型磁化回転素子、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子、及び磁気メモリを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0008]
 反転電流密度は、強磁性層の磁化に効率的にSOTを加えることができれば、低減する。SOTは、例えば、スピン軌道相互作用、ラシュバ効果等により強磁性層内に誘起される。発明者らは、スピン軌道トルク配線に座屈部を設けると、スピン軌道相互作用、ラシュバ効果が効率的に生じることを見出した。すなわち、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
[0009]
(1)第1の態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子は、第1強磁性層と、前記第1強磁性層に面し、第1方向に延びるスピン軌道トルク配線と、を備え、前記スピン軌道トルク配線は、原子が配列した原子面を複数有し、前記複数の原子面は、同一原子が配列した基準面と、座屈部を有する座屈面と、を有し、前記座屈面は、前記基準面と略平行な主面を形成する複数の第1原子と、前記主面に対して屈曲した座屈部を形成する1つ以上の第2原子と、を有する。
[0010]
(2)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、前記第2原子の原子半径は、前記第1原子の原子半径の1.1倍以上、または、前記第1原子の原子半径の0.9倍以下であってもよい。
[0011]
(3)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、前記第2原子の中心から前記主面に下した垂線の長さは、前記第1原子の原子半径の0.5倍以上1.5倍以下であってもよい。
[0012]
(4)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、前記第1原子の格子間隔は、前記第2原子の直径より広くてもよい。
[0013]
(5)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、前記第1原子は、前記スピン軌道トルク配線を主として構成する原子と同一でもよい。
[0014]
(6)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、前記第1原子は、前記スピン軌道トルク配線を主として構成する原子と異なってもよい。
[0015]
(7)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、前記第1原子と前記第2原子との組み合わせが、MoとPd、MoとBi、RuとBi、RhとBi、AgとBi、CdとBi、WとPd、WとBi、OsとBi、IrとBi、AuとBiからなる群から選択されるいずれかであってもよい。
[0016]
(8)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、前記座屈面が、前記第1強磁性層に面する第1面に位置してもよい。
[0017]
(9)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、スピン軌道トルク配線が、前記第1強磁性層に面する第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、前記第1領域は、前記座屈部を有してもよい。
[0018]
(10)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、前記第2領域は、水素化合物を含んでもよい。
[0019]
(11)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、前記座屈面を複数有してもよい。
[0020]
(12)上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子において、前記スピン軌道トルク配線は、Al、Cu、Si、Ag、Ga、Geからなる群から選択されるいずれか1種以上の原子を含んでもよい。
[0021]
(13)第2の態様にかかるスピン流磁気抵抗効果素子は、上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子と、前記第1強磁性層の前記スピン軌道トルク配線と反対側の面に面する非磁性層と、前記第1強磁性層と前記非磁性層を挟む第2強磁性層と、を備える。
[0022]
(14)第3の態様にかかる磁気メモリは、上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子を複数備える。

発明の効果

[0023]
 上記態様にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子及び磁気メモリは消費電力を低減できる。

図面の簡単な説明

[0024]
[図1] 第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子の断面模式図である。
[図2] 第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。
[図3] 第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子のスピン軌道トルク配線の座屈面の平面模式図である。
[図4] 第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子の第1変形例のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。
[図5] 第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子の第2変形例のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。
[図6] 第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子の第3変形例のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。
[図7] 第2実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子の断面模式図である。
[図8] 第3実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。
[図9] 第4実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子の断面模式図である。
[図10] 第2原子と水素化合物の関係を模式的に示した図である。
[図11] 第5実施形態に係るスピン流磁気抵抗効果素子の断面模式図である。
[図12] 第6実施形態に係る磁気メモリの回路模式図である。

発明を実施するための形態

[0025]
 以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
[0026]
 まず方向について定義する。x方向及びy方向は、後述するスピン軌道トルク配線20の第1面20aと略平行な方向である。x方向は、後述するスピン軌道トルク配線20が延びる方向である。y方向は、x方向と直交する方向である。z方向は、x方向及びy方向と直交する方向である。x方向は、第1方向の一例である。また本明細書で「x方向に延びる」とは、例えば、x方向、y方向、及びz方向の各寸法のうち最小の寸法よりもx方向の寸法が大きいことを意味する。他の方向に延びる場合も同様である。
[0027]
「第1実施形態」
(スピン軌道トルク型磁化回転素子)
 図1は、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子の断面模式図である。スピン軌道トルク型磁化回転素子100は、第1強磁性層10と、スピン軌道トルク配線20とを有する。
[0028]
<第1強磁性層>
 第1強磁性層10は、第1面10aと第2面10bとを有する。第1面10aは、スピン軌道トルク配線20の第1面20aと面する。本明細書において「面する」とは、2つの面が略平行に向き合うことを意味し、2つの面が接触していても、他の層を間に挟んでいてもよい。第2面10bは、第1面10aと反対側の面である。
[0029]
 図1に示す第1強磁性層10の断面は、長方形である。第1強磁性層10の断面は、長方形に限られない。第1強磁性層10の断面は、例えば、第1面10aと第2面10bとの長さが異なる台形でもよい。また第1面10aと第2面10bとを繋ぐ側面が湾曲してもよい。
[0030]
 また第1強磁性層10のz方向からの平面形状は特に問わない。第1強磁性層10の平面形状は、例えば、円形、楕円形、長方形、不定形である。
[0031]
 第1強磁性層10は、強磁性体、特に軟磁性体を含む。強磁性体は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等である。強磁性体は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Fe、Co-Ho合金、Sm-Fe合金、Fe-Pt合金、Co-Pt合金、CoCrPt合金である。
[0032]
 第1強磁性層10は、Co FeSi等のホイスラー合金を含んでもよい。ホイスラー合金は、XYZまたはX YZの化学組成をもつ金属間化合物を含む。Xは周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、ZはIII族からV族の典型元素である。ホイスラー合金は、例えば、Co FeSi、Co FeGe、Co FeGa、Co MnSi、Co Mn 1-aFe Al Si 1-b、Co FeGe 1-cGa 等である。ホイスラー合金は高いスピン分極率を有する。
[0033]
 第1強磁性層10は、xy面内のいずれかの方向又はz方向に磁化容易軸を有する。第1強磁性層10がxy面内のいずれかの方向に磁化容易軸を有する場合、第1強磁性層10は面内磁化膜と言われる。第1強磁性層10がz方向に磁化容易軸を有する場合、第1強磁性層10は垂直磁化膜と言われる。
[0034]
<スピン軌道トルク配線>
 スピン軌道トルク配線20は、x方向に延びる。スピン軌道トルク配線20は、第1面20aと第2面20bとを有する。第1面20aは、第1強磁性層10の第1面10aに面する。第2面20bは、第1面20aと反対側の面である。第1面20aと第2面20bの面積は、同じでも異なってもよい。
[0035]
 スピン軌道トルク配線20の両端に電位差を与えると、スピン軌道トルク配線20に沿って電流Iが流れる。一方向に配向した第1スピンS1と、第1スピンS1と反対方向に配向した第2スピンS2とは、それぞれ電流と直交する方向に曲げられる。例えば、+y方向に配向した第1スピンS1が+z方向に曲げられ、-y方向に配向した第2スピンS2が-z方向に曲げられる。
[0036]
 通常のホール効果とスピンホール効果とは、運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で共通する。一方で、通常のホール効果は磁場中で運動する荷電粒子がローレンツ力を受けて運動方向を曲げられるのに対して、スピンホール効果は磁場が存在しなくても、電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)でスピンの移動方向が曲げられる点が大きく異なる。
[0037]
 非磁性体(強磁性体ではない材料)は、スピンホール効果により生じる第1スピンS1の電子数と第2スピンS2の電子数とが等しい。図1において、+z方向に向かう第1スピンS1の電子数と-z方向に向かう第2スピンS2の電子数とは等しい。この場合、電荷の流れは互いに相殺され、電流量はゼロとなる。電流を伴わないスピン流は特に純スピン流と呼ばれる。
[0038]
 第1スピンS1の電子の流れをJ 、第2スピンS2の電子の流れをJ 、スピン流をJ と表すと、J =J -J で定義される。スピン流J は、z方向に生じる。図1において、スピン軌道トルク配線20は第1強磁性層10に面する。スピンは、スピン軌道トルク配線20から第1強磁性層10に注入される。注入されたスピンは、スピン軌道トルク(SOT)を、第1強磁性層10の磁化にくわえる。第1強磁性層10の磁化は、スピン軌道トルク(SOT)により磁化反転する。
[0039]
 スピン軌道トルク配線20は、電流が流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させる機能を有する金属、合金、金属間化合物、金属硼化物、金属炭化物、金属珪化物、金属燐化物のいずれかによって構成される。スピン軌道トルク配線20は、第1強磁性層10の磁化を反転できるだけのスピン軌道トルク(SOT)を第1強磁性層10に生み出す材料を含む。
[0040]
 スピン軌道トルク配線20の主構成は、非磁性の重金属であることが好ましい。重金属は、イットリウム以上の比重を有する金属を意味する。非磁性の重金属は、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属であることが好ましい。非磁性の重金属は、スピンホール効果を生じさせるスピン軌道相互作用が大きい。
[0041]
 電子は、一般にそのスピンの向きに関わりなく、電流とは逆向きに動く。これに対し、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号が大きい非磁性金属は、スピン軌道相互作用が大きく、スピンホール効果が強く生じる。z方向のスピンの流れは、z方向のスピンの偏在の程度に依存する。スピンホール効果が強く生じるとスピンが偏在しやすく、スピン流J が発生しやすくなる。
[0042]
 スピン軌道トルク配線20は、磁性金属を含んでもよい。磁性金属は、強磁性金属又は反強磁性金属である。非磁性体に含まれる微量な磁性金属は、スピンの散乱因子となる。スピンが散乱するとスピン軌道相互作用が増強され、電流に対するスピン流の生成効率が高くなる。スピン軌道トルク配線20の主構成は、反強磁性金属だけからなってもよい。
[0043]
 一方で、磁性金属の添加量が増大し過ぎると、発生したスピン流が添加された磁性金属によって散乱され、結果としてスピン流が減少する場合がある。添加される磁性金属のモル比はスピン軌道トルク配線を構成する元素の総モル比よりも十分小さい方が好ましい。添加される磁性金属のモル比は、全体の3%以下であることが好ましい。
[0044]
 スピン軌道トルク配線20は、トポロジカル絶縁体を含んでもよい。トポロジカル絶縁体は、物質内部が絶縁体又は高抵抗体であるが、その表面にスピン偏極した金属状態が生じている物質である。トポロジカル絶縁体は、スピン軌道相互作用により内部磁場が生じる。トポロジカル絶縁体は、外部磁場が無くてもスピン軌道相互作用の効果で新たなトポロジカル相が発現する。トポロジカル絶縁体は、強いスピン軌道相互作用とエッジにおける反転対称性の破れにより純スピン流を高効率に生成できる。
[0045]
 トポロジカル絶縁体は、例えば、SnTe、Bi 1.5Sb 0.5Te 1.7Se 1.3、TlBiSe 、Bi Te 、Bi 1-xSb 、(Bi 1-xSb Te などである。トポロジカル絶縁体は、高効率にスピン流を生成することが可能である。
[0046]
 図2は、第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。スピン軌道トルク配線20は、原子が配列した原子面Lを複数有する。原子面Lは、xy面内に配列した原子の中心を結んだ仮想面である。複数の原子面Lは、基準面L1と座屈面L2とを有する。
[0047]
 基準面L1は、同一の原子Aがxy平面に広がる面である。スピン軌道トルク配線20は、第2面20bから第1面20aに向って積層される。そのため、基準面L1は、例えば、スピン軌道トルク配線20の最も第2面20b側に位置する原子面Lである。
[0048]
 座屈面L2は、主面MPと座屈部BPとを有する。主面MPは、基準面L1に対して略平行である。主面MPの一部は、基準面L1と略平行な平行面P1と一致する。主面MPは、複数の第1原子A1からなる。座屈部BPは、主面MPに対して屈曲する。座屈部BPは、第2原子A1からなる。ここで、座屈について説明する。
[0049]
 原子Aは、第2面20bから第1面20aに向って積層される。原子Aは、スピン軌道トルク配線20を構成する原子である。原子Aは、例えば、上述のように非磁性の重金属である。原子Aは、Al、Cu、Si、Ag、Ga、Geからなる群から選択されるいずれか1種以上の原子を含んでもよい。
[0050]
 xz平面において、z方向に最近接する原子Aを結んだ線を成長線C1、C2とする。成長線C1は、z方向に規則性を有する。図2に示す成長線C1は、隣接する原子Aを結ぶ線の内角θ1が一定である。一方で、成長線C2は、隣接する原子Aを結ぶ線の内角の規則性(z方向の規則性)が途中で乱れている。図2に示す成長線C2は、隣接する原子Aを結ぶ線の内角θ1は途中まで一定で、ある部分で内角θ2に変化する。内角θ2は、規則性が乱れ始めた位置での内角である。内角θ2は、例えば、内角θ1より20%以上小さい。内角θ1が内角θ2に替わると、成長線C2がz方向に対して大きく傾く。成長線C2の規則性が大きく乱れることを座屈という。座屈が生じると、原子面Lも乱れる。その結果、座屈面L2は、平行面P1に対して屈曲する座屈部BPを有する。
[0051]
 図2において、座屈面L2は、第1原子A1と第2原子A2とからなる。座屈面L2は、第1原子A1の中心と第2原子A2の中心とを結んだ仮想面である。主面MPは、第1原子A1の中心を結んだ仮想面である。座屈部BPは、第2原子A2の中心と第2原子A2に隣接する第1原子A1の中心とを結ぶ仮想面である。
[0052]
 図2において、第1原子A1は、スピン軌道トルク配線を主として構成する原子Aと同じである。第1原子A1は、例えば、非磁性の重金属である。
[0053]
 図2において、第2原子A2は、第1原子A1より大きい。第2原子A2は、座屈面L2を平行面P1に対して屈曲させ、座屈面L2の座屈部BPの原因となる。第2原子A2は、好ましくは、第1原子A1の原子半径の1.1倍以上であり、より好ましくは、第1原子A1の原子半径の1.2倍以上である。また第2原子A2は、好ましくは、第1原子A1の原子半径の1.5倍以下であり、より好ましくは、第1原子A1の原子半径の1.4倍以下である。
[0054]
 第1原子A1と第2原子A2との組み合わせは、例えば、MoとPd、MoとPr、MoとSm、MoとEu、MoとGd、MoとTb、MoとDy、MoとHo、MoとBi、RuとNb、RuとPr、RuとNd、RuとPm、RuとSm、RuとEu、RuとGd、RuとTb、RuとDy、RuとHo、RuとHf、RuとTa、RuとBi、RhとNb、RhとPr、RhとNd、RhとPm、RhとSm、RhとEu、RhとGd、RhとTb、RhとDy、RhとHo、RhとHff、RhとTa、RhとW、RhとBi、PdとNb、PdとMo、PdとPr、PdとNd、PdとPm、PdとSm、PdとEu、PdとGd、PdとTb、PdとDy、PdとHo、PdとHf、PdとTa、PdとW、PdとRe、PdとBi、AgとNb、AgとMo、AgとCe、AgとPr、AgとNd、AgとPm、AgとSm、AgとEu、AgとGd、AgとTb、AgとDy、AgとHo、AgとHf、AgとTa、AgとW、AgとRe、AgとBi、CdとNb、CdとMo、CdとRu、CdとCe、CdとNd、CdとPm、CdとSm、CdとEu、CdとGd、CdとTb、CdとDy、CdとHo、CdとHf、CdとTa、CdとW、CdとRe、CdとIr、CdとBii、HfとRh、HfとPd、HFとCe、HfとPr、HfとSm、HfとEu、HfとGd、HfとRe、HfとIr、HfとPt、HfとAu、HfとBi、TaとRh、TaとPd、TaとPr、TaとSm、TaとEu、TaとGd、TaとTb、TaとDy、TaとHo、TaとIr、TaとPt、TaとAu、TaとBi、WとRh、WとPd、WとPr、WとSm、WとEu、WとGd、WとTb、WとDy、WとHo、WとAu、WとBi、OSとPr、OsとNd、OsとPm、OsとSm、OsとRu、OsとGd、OsとTb、OsとDy、OsとHo、OsとHf、OsとBi、IrとNb、IrとPr、IrとSm、IrとEu、IrとGd、IrとTb、IrとDy、IrとHo、IrとHf、IrとTa、IrとBi、PtとNb、PtとPr、PtとSm、PtとEu、PtとGd、PtとTb、PtとDy、PtとHo、PtとHf、PtとTa、PtとBi、AuとNb、AuとPr、AuとSm、AuとEu、AuとGd、AuとTb、AuとDy、AuとHo、AuとHf、AuとTa、AuとW、AuとBiである。第1原子A1と第2原子A2との組み合わせは、MoとPd、MoとBi、RuとBi、RhとBi、AgとBi、CdとBi、WとPd、WとBi、OsとBi、IrとBi、AuとBiからなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。第1原子A1は、組み合わせの原子のうち原子半径の小さいものである。
[0055]
 第2原子A2のz方向の高さ位置と、第1原子A1のz方向の高さ位置とは異なる。これらの高さ位置の差Δzは、第2原子A2の中心から主面MP(平行面P1)に下した垂線の長さである。これらの高さ位置の差Δzは好ましくは、第1原子A1の半径の0.5倍以上1.5倍以下である。これらの高さ位置の差Δzは、より好ましくは、第1原子A1の半径の0.64倍以上であり、さらに好ましくは、第1原子A1の半径の1.0倍以上である。またこれらの高さ位置の差Δzは、好ましくは、0.8Å以上であり、より好ましくは、1.4Å以上である。
[0056]
 図3は、第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子のスピン軌道トルク配線の座屈面の平面模式図である。第2原子A2は、座屈面L2の一部であり、規則的に配列した第1原子A1上に点在している。第2原子A2は、例えば、xy面内にランダムに位置する。
[0057]
 座屈部BPは、例えば、高分解能の走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて確認できる。50nm程度まで薄片化した測定試料に、電子を照射し、測定試料中を透過又は散乱した電子を結像して、各原子の位置を特定する。また高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡(HAADF-STEM)を用いて、高角散乱した電子を結像してもよい。HAADF-STEMは、原子量に比例したコントラストを得ることができ、座屈部BPの原子の違いを高いコントラストで計測できる。
[0058]
 座屈部BPは、例えば、陽電子ビームを用いた表面測定でも測定できる。座屈面L2を表出させ、座屈面に陽電子ビームを低角照射する。散乱した電子の回折像から座屈面L2の状態を評価できる。また陽電子ビームの代わりに、X線、中性子線を用いてもよい。
[0059]
<製造方法>
 スピン軌道トルク型磁化回転素子100の製造方法の一例について説明する。
[0060]
 まず基板(図視略)上にスピン軌道トルク配線20を形成する。スピン軌道トルク配線20となる層は、例えば、スパッタリング法を用いて積層する。基板上に、原子Aとなるイオンをスパッタリングし、その途中で第2原子A2となるイオンをスパッタリングする。第2原子A2のスパッタリングは、低エネルギーの条件で行う。例えば、原子Aのみをスパッタリングしている際より第2原子A2をスパッタリングする際の加速電圧を低くする。また例えば、原子Aのみをスパッタリングしている際より第2原子A2をスパッタリングする際の希ガス等のガス流量を増やす。ガス流量が増えることで、第2原子A2のスパッタリングレートが低下する。また第2原子A2は、被成膜面に対して斜め方向からスパッタリングしてもよい。斜め方向からスパッタリングすると、イオンの飛来時間に差が生じ、第2原子A2が第1原子A1上に点在する。またスパッタリング法に替えて、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、原子レーザデポジッション法を用いてもよい。スピン軌道トルク配線20となる層をフォトリソグラフィー等により加工して、スピン軌道トルク配線20となる。
[0061]
 次いで、スピン軌道トルク配線20の周囲を絶縁層で覆う。絶縁層は、例えば、酸化膜、窒化膜等である。
[0062]
 次いで、絶縁層とスピン軌道トルク配線の表面を、CMP研磨(chemical mechanical polishing)により平坦化する。そして、平坦化された表面に第1強磁性層10となる層を積層する。最後に、フォトリソグラフィー等の技術を用い、第1強磁性層10を加工する。第1強磁性層10とスピン軌道トルク配線20の加工は同時に行ってもよい。
[0063]
 本実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100は、スピン軌道トルク配線20で、スピンホール効果及びラシュバ効果が効率的に生じる。そのため、第1強磁性層10の磁化M10にSOTが効率的に作用し、反転電流密度を低減できる。
[0064]
 スピン軌道トルク配線20が座屈部BPを有すると、スピン流及びラシュバ効果が効率的に生じる理由について説明する。
[0065]
 座屈部BPは、結晶構造が乱れた部分であり、スピン軌道トルク配線20の内部をx方向に流れる電子の散乱原因となる。スピンホール効果は、一方向に配向したスピンが、電流と直交する方向に(すなわち、スピン軌道トルク配線20の外周に向って)、曲げられる現象である。座屈部BPによって電子(スピン)が散乱すると、散乱した電子(スピン)がz方向に向かい、スピンホール効果が効率的に生じる。スピンホール効果は、第1面20a及び第2面20bの近傍において、スピンの偏在を生み出す。スピン流は、スピンの偏在を解消する方向に生じる。第1面20a及び第2面20bにおけるスピンの偏在が大きいほど、スピン流は発生しやすくなる。
[0066]
 一方で、スピン軌道トルク配線20内に散乱原因が多すぎると、発生したスピン流が散乱される。そのため、第1強磁性層10に注入されるスピン量が減少し、SOTが磁化M10に効率的に作用しなくなる。
[0067]
 座屈部BPは、原子一層レベルの厚みで生じる微小な原子配列の乱れである。大きな歪みや結晶欠陥とは異なり、座屈部BPは、過剰な散乱原因とはならない。座屈部BPは、スピンホール効果の発生効率を高めるものの、スピン流は大きく阻害しない。したがって、本実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100は、多くのスピンを第1強磁性層10に注入でき、SOTを第1強磁性層10の磁化M10に効率的に作用させることができる。
[0068]
 ラシュバ効果の詳細なメカニズムについては明らかでないが、以下のように考えられる。ラシュバ効果は、空間反転対称性が破れにより、z方向にポテンシャル勾配が形成され、スピンの向きが揃う現象である。z方向にポテンシャル勾配があるスピン軌道トルク配線20内をx方向に電流が流れると、電子の運動方向(x方向)と垂直なz方向に有効磁場が生じる。有効磁場がスピンに作用して、その有効磁場の方向にスピンの向きが揃う。
[0069]
 座屈部BPは、スピン軌道トルク配線20の電子状態を乱す。座屈部BPは、z方向の電子状態の対称性を崩す。座屈部BPは、スピン軌道トルク配線20内に電界効果を生み出し、準位の分裂を生み出す。電子状態の対称性の崩れは、有効磁場を生み出し、スピンを配向させる。その結果、第1面20a及び第2面20bの近傍におけるスピンが偏在する。スピンの偏在は、スピン流を生み出す。
[0070]
 座屈部BPは、結晶構造のわずかな乱れを生み出すものであり、スピン軌道トルク配線20の電子状態を大きく変動するものではない。電子状態が大幅に変化すると、準位の分裂にとどまらず、ラシュバ効果を効率的に生み出すことができない。
[0071]
 上述のように、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100は、座屈部BPによりスピン軌道トルク配線20を流れる電流Iの電流密度が小さくても、多くのスピンを第1強磁性層10へ注入できる。したがって、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100は、第1強磁性層10の磁化M10を反転させるのに必要な反転電流密度を低減できる。
[0072]
 以上、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100の一例について詳述したが、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
[0073]
(第1変形例)
 図4は、第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子の第1変形例のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。図4に示すスピン軌道トルク配線20Aは、座屈面L2が第1面20aに位置する点が、図2に示すスピン軌道トルク配線20と異なる。図2と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
[0074]
 ラシュバ効果は、異種材料の界面で生じやすい。第1面20aの近傍に座屈面L2を設けることでラシュバ効果の発生効率をより高めることができる。また第1面20aは、第1強磁性層10の第1面10aと対向する面である。第1強磁性層10に近い第1面20aの近傍でラシュバ効果が生じることで、第1強磁性層10へのスピンの注入効率を高めることができる。
[0075]
(第2変形例)
 図5は、第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子の第2変形例のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。図5に示すスピン軌道トルク配線20Bは、座屈面L2が第2面20bに位置する点が、図2に示すスピン軌道トルク配線20と異なる。図2と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
[0076]
 ラシュバ効果は、異種界面の界面で生じやすい。第2面20bの近傍に座屈面L2を設けることでラシュバ効果の発生効率をより高めることができる。座屈面L2が第2面20bに位置する場合、基準面L1は、例えば、スピン軌道トルク配線20の最も第1面20a側に位置する原子面Lとする。
[0077]
(第3変形例)
 図6は、第1実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子の第3変形例のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。図6に示すスピン軌道トルク配線20Cは、座屈面L2を2層有する点が、図2に示すスピン軌道トルク配線20と異なる。図2と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
[0078]
 スピン軌道トルク配線20内に存在する座屈面L2の数は特に問わない。図2に示すように1層でも、図6に示すように2層でも、それ以上でもよい。
[0079]
 またスピン軌道トルク配線20、20A、20B、20Cはいずれも、原子Aのx方向の位置をずらしてz方向に積層されている(立方最密充填)が、原子Aのx方向の位置が一致していてもよい。
[0080]
「第2実施形態」
 図7は、第2実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。図7に示すスピン軌道トルク配線21は、第2原子A2’が第1原子A1より小さいが、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク配線20と異なる。図2と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
[0081]
 第2原子A2’が第1原子A1より小さい場合でも、座屈面L2は平行面P1に対して屈曲し、座屈面L2は座屈部BPを有する。
[0082]
 第2原子A2’は、好ましくは、第1原子A1の原子半径の0.9倍以下であり、より好ましくは、第1原子A1の原子半径の0.83倍以下である。また第2原子A2’は、好ましくは、第1原子A1の原子半径の0.66倍以上であり、より好ましくは、第1原子A1の原子半径の0.71倍以上である。
[0083]
 第1原子A1と第2原子A2との組み合わせは、第1実施形態に記載の組み合わせと同様のものが好ましいが、第1原子A1は、組み合わせの原子のうち原子半径の大きなものとなる。また第1原子A1の格子間隔は、第2原子A2の直径より広いことが好ましい。第1原子A1の格子間隔は、最近接する第1原子A1の中心間距離である。
[0084]
 また第2原子A2のz方向の高さ位置と、第1原子A1のz方向の高さ位置との差Δzは、第1実施形態に記載の差Δzと同様の範囲であることが好ましい。
[0085]
 第2実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子のスピン軌道トルク配線21は、座屈部BPを有するため、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100と同様の効果が得られる。また第2実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子も、第1実施形態と同様の変形例を適用できる。
[0086]
「第3実施形態」
 図8は、第3実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。図8に示すスピン軌道トルク配線22は、座屈面L2を構成する第1原子A11が、スピン軌道トルク配線22を主として構成する原子Aと異なる点が、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク配線20と異なる。図2と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
[0087]
 座屈面L2は、第1原子A11と第2原子A2とからなる。座屈面L2は、第1原子A11の中心と第2原子A2の中心とを結んだ仮想面である。主面MPは、第1原子A11の中心を結んだ仮想面である。座屈部BPは、第2原子A2と第2原子A2に隣接する第1原子A11とを結んだ仮想面である。
[0088]
 第1原子A11は、スピン軌道トルク配線22を主として構成する原子Aと異なる。原子Aは、例えば、非磁性の重金属である。第1原子A11は、例えば、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、OS、Ir、Pt、Auを含む。また、原子Aは、例えば、スピン流を透過しやすいスピン伝導材料でもよい。第1原子A11は、例えば、Al、Si、Cu、Ga、Geを含む。
[0089]
 図8に示す第2原子A2は、第1原子A11より大きい。第2原子A2は、座屈面L2を主面MPに対して屈曲させ、座屈面L2の座屈部BPの原因となる。第2原子A2は、好ましくは、第1原子A11の原子半径の1.1倍以上であり、より好ましくは、第1原子A11の原子半径の1.2倍以上である。また第2原子A2は、好ましくは、第1原子A11の原子半径の1.5倍以下であり、より好ましくは、第1原子A11の原子半径の1.4倍以下である。
[0090]
 また第2原子A2は、第1原子A11より小さくてもよい。第2原子A2は、好ましくは、第1原子A11の原子半径の0.9倍以下であり、より好ましくは、第1原子A11の原子半径の0.83倍以下である。また第2原子A2は、好ましくは、第1原子A11の原子半径の0.66倍以上であり、より好ましくは、第1原子A11の原子半径の0.7倍以上である。
[0091]
 第1原子A11と第2原子A2との組み合わせは、例えば以下である。例えば、第1原子A11は、Al、Si、Cu、Ga、Ge、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Hf、Ta、W、Os、Ir、Pt、Auからなる群から選択され、第2原子A2は、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Hf、Ta、W、Re、Ir、Pt、Au、Biからなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。上記の組み合わせは、第1原子A11がいずれか一方の原子であり、第2原子A2が他方の原子であればよい。
[0092]
 第3実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子のスピン軌道トルク配線22は、座屈部BPを有するため、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100と同様の効果が得られる。また第3実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子は、第1原子A11がスピン軌道トルク配線22を主として構成する原子Aと異なる。そのため、スピン軌道トルク配線22に異なる原子の界面が増える。ラシュバ効果は、異種界面の界面で生じやすい。したがって、より多くのスピンを第1強磁性層10へ注入でき、第1強磁性層10の磁化M10を反転させるのに必要な反転電流密度をより低減できる。
[0093]
 第3実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子も、第1実施形態と同様の変形例を適用できる。
[0094]
「第4実施形態」
 図9は、第4実施形態に係るスピン軌道トルク型磁化回転素子のスピン軌道トルク配線の断面模式図である。図9に示すスピン軌道トルク型磁化回転素子101は、スピン軌道トルク配線23が第1領域R1と第2領域R2を有する点が、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100と異なる。図1と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
[0095]
 スピン軌道トルク配線23は、第1領域R1と第2領域R2とを有する。第1領域R1は、第1強磁性層10に面する部分であり、z方向からの平面視で第1強磁性層10と重なる部分である。第1面10aと第2面10bの面積が異なる場合は、z方向からの平面視で、第1面10aと重なる部分である。第2領域R2は、第1領域R1以外の部分である。
[0096]
 第1領域R1は、座屈部BP(図2参照)を有する。第2領域R2は、座屈部BPを有してもよい。スピンは、第1領域R1から第1強磁性層10に注入される。第1領域R1に座屈部BPを設けることで、第1強磁性層10へのスピンの注入効率を高めることができる。
[0097]
 また第2領域R2は、水素化合物を含む。第2領域R2の水素化合物濃度は、第1領域R1の水素化合物濃度より高い。第1領域R1は、水素化合物を含んでなくてもよい。水素化合物は、例えば、スピン軌道トルク配線23とアンモニアが反応したもの、スピン軌道トルク配線23と炭化水素が反応したもの、等である。第1領域R1及び第2領域R2の水素化合物濃度は、スピン軌道トルク配線23の第1面23aにおける濃度である。第1領域R1の水素化合物濃度は、z方向からの平面視で、第1強磁性層1の重心と重なる位置で評価する。第2領域R2の水素化合物濃度は、z方向からの平面視で、第1強磁性層1の重心と、スピン軌道トルク配線23の端部との中心位置で評価する。
[0098]
 水素化合物は、分子-原子間結合が強い。水素化合物の水素原子と座屈部BPを形成する第2原子A2とがイオン結合すると、第2原子A2の原子位置が変化する。図10は、第2原子A2と水素化合物Hcの関係を模式的に示した図である。水素化合物Hcは、第2原子A2とイオン結合する。イオン結合は、金属結合と結合エネルギーが異なる。第2原子A2は、イオン結合により水素化合物Hcに向かう方向、又は、水素化合物Hcから離れる方向に移動する。
[0099]
 第2原子A2の原子位置が変動すると、z方向の電子状態の対称性がより崩れる。その結果、スピン軌道トルク配線20の準位の分裂がより顕著になり、ラシュバ効果がより効率的に生じる。したがって、より多くのスピンを第1強磁性層10へ注入でき、第1強磁性層10の磁化M10を反転させるのに必要な反転電流密度をより低減できる。
[0100]
 第1強磁性層10をフォトリソグラフィーによって所定の形状に加工する際に、アンモニア、炭化水素等の水素化合物を用いて反応性イオンエッチング(RIE)を行うと、第2領域R2に水素化合物が導入される。
[0101]
 一例として、第2領域R2における、スピン軌道トルク配線23の第1面23aの水素化合物濃度は、スピン軌道トルク配線23のz方向の中心における水素化合物濃度より高い。
[0102]
 第4実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子101は、座屈部BPを有するため、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100と同様の効果が得られる。また水素化合物Hcによりラシュバ効果を効率的に発現でき、より多くのスピンを第1強磁性層10へ注入できる。したがって、第4実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子101は、第1強磁性層10の磁化M10を反転させるのに必要な反転電流密度をより低減できる。
[0103]
 第4実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子は、第1実施形態と同様の変形例、第2実施形態及び第3実施形態のいずれの構成も適用できる。
[0104]
「第5実施形態」
(スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子)
 図11は、第5実施形態に係るスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110の断面を模式的に示した図である。図11に示すスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110は、スピン軌道トルク型磁化回転素子100と、非磁性層30と、第2強磁性層40とを備える。図11では、スピン軌道トルク型磁化回転素子として、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100を用いたが、第2~第4実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子を用いてもよい。第1実施形態のスピン軌道トルク型磁化回転素子100と同等の構成については、説明を省く。
[0105]
 第1強磁性層10と非磁性層30と第2強磁性層40とが積層された積層体は、通常の磁気抵抗効果素子と同様である。積層体は、第2強磁性層40の磁化M40が一方向(z方向)に固定され、第1強磁性層10の磁化M10の向きが相対的に変化する。積層体が保磁力差型(擬似スピンバルブ型;Pseudo spin valve 型)の磁気抵抗効果素子の場合は、第2強磁性層40の保磁力を第1強磁性層10の保磁力よりも大きくする。積層体が交換バイアス型(スピンバルブ;spin valve型)の磁気抵抗効果素子の場合は、第2強磁性層40を層間反強磁性(SAF)結合にし、第2強磁性層40の磁化M40を第1強磁性層10に対して固定する。
[0106]
 積層体は、非磁性層30が絶縁体からなる場合は、トンネル磁気抵抗効果(TMR:Tunneling Magnetoresistance)素子と同様の構成であり、非磁性層30が金属からなる場合は巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magnetoresistance)素子と同様の構成である。
[0107]
 積層体は、第1強磁性層10、非磁性層30及び第2強磁性層40以外の層を有してもよい。積層体は、例えば、積層体の結晶性を高める下地層、キャップ層等を有してもよい。下地層は、スピン軌道トルク配線20と第1強磁性層10との間に形成される。キャップ層は、積層体の上面に形成される。
[0108]
 第2強磁性層40は、第1強磁性層10と同様の材料を用いることができる。
[0109]
 非磁性層30は、非磁性の絶縁体、半導体又は金属からなる。非磁性の絶縁体は、例えば、Al 、SiO 、MgO、MgAl 、およびこれらのAl、Si、Mgの一部がZn、Be等に置換された材料である。非磁性層30が非磁性の絶縁体からなる場合、非磁性層30はトンネルバリア層である。MgOやMgAl は、第1強磁性層10と第2強磁性層40との間にコヒーレントトンネルを実現しやすい。非磁性の金属は、例えば、Cu、Au、Ag等である。さらに、非磁性の半導体は、例えば、Si、Ge、CuInSe 、CuGaSe 、Cu(In,Ga)Se 等である。
[0110]
 第5実施形態に係るスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110は、第1強磁性層10の磁化M10と第2強磁性層40の磁化M40の相対角の違いにより生じる抵抗値変化を用いてデータの記録、読出す。
[0111]
 第5実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110は、座屈部BPを有するため、第1実施形態にかかるスピン軌道トルク型磁化回転素子100と同様の効果が得られる。
[0112]
「第6実施形態」
(磁気メモリ)
 図12は、第6実施形態にかかる磁気メモリの模式図である。磁気メモリ120は、複数のスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110(図11参照)を備える。
[0113]
 図12に示す磁気メモリ120は、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110が3×3のマトリックス配置をしている。図12は、磁気メモリの一例であり、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110の数及び配置は任意である。
[0114]
 スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110には、それぞれ1本のワードラインWL1~3と、1本のビットラインBL1~3、1本のリードラインRL1~3が接続されている。
[0115]
 電流を印加するワードラインWL1~3及びビットラインBL1~3を選択することで、任意のスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110のスピン軌道トルク配線20に電流を流し、書き込み動作を行う。また電流を印加するリードラインRL1~3及びビットラインBL1~3を選択することで、任意のスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110の積層方向に電流を流し、読み込み動作を行う。電流を印加するワードラインWL1~3、ビットラインBL1~3、及びリードラインRL1~3はトランジスタ等により選択できる。すなわち、これらの複数のスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子110から任意の素子のデータを読み出すことで磁気メモリとしての活用ができる。

符号の説明

[0116]
10 第1強磁性層
20、20A、20B、20C、21、22、23 スピン軌道トルク配線
10a、20a 第1面
10b、20b 第2面
100、101 スピン軌道トルク型磁化回転素子
110 スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子
120 磁気メモリ
A 原子
A1、A11 第1原子
A2、A2’ 第2原子
BP 座屈部
C1、C2 成長線
Hc 水素化合物
I 電流
L 原子面
L1 基準面
L2 座屈面
M10、M40 磁化
MP 主面
P1 平行面
S1 第1スピン
S2 第2スピン

請求の範囲

[請求項1]
 第1強磁性層と、
 前記第1強磁性層に面し、第1方向に延びるスピン軌道トルク配線と、を備え、
 前記スピン軌道トルク配線は、原子が配列した原子面を複数有し、
 複数の原子面は、同一原子が配列した基準面と、座屈部を有する座屈面と、を有し、
 前記座屈面は、前記基準面と略平行な主面を形成する複数の第1原子と、前記主面に対して屈曲した座屈部を形成する1つ以上の第2原子と、を有する、スピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項2]
 前記第2原子の原子半径は、前記第1原子の原子半径の1.1倍以上、または、前記第1原子の原子半径の0.9倍以下である、請求項1に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項3]
 前記第2原子の中心から前記主面に下した垂線の長さは、前記第1原子の原子半径の0.5倍以上1.5倍以下である、請求項1又は2に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項4]
 前記第1原子の格子間隔は、前記第2原子の直径より広い、請求項1~3のいずれか一項に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項5]
 前記第1原子は、前記スピン軌道トルク配線を主として構成する原子と同一である、請求項1~4のいずれか一項に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項6]
 前記第1原子は、前記スピン軌道トルク配線を主として構成する原子と異なる、請求項1~4のいずれか一項に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項7]
 前記第1原子と前記第2原子との組み合わせが、MoとPd、MoとBi、RuとBi、RhとBi、AgとBi、CdとBi、WとPd、WとBi、OsとBi、IrとBi、AuとBiからなる群から選択されるいずれかである、請求項1~6のいずれか一項に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項8]
 前記座屈面が、前記第1強磁性層に面する第1面に位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項9]
 スピン軌道トルク配線が、前記第1強磁性層に面する第1領域と、前記第1領域以外の第2領域とを有し、
 前記第1領域は、前記座屈部を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項10]
 前記第2領域は、水素化合物を含む、請求項9に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項11]
 前記座屈面を複数有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項12]
 前記スピン軌道トルク配線は、Al、Cu、Si、Ag、Ga、Geからなる群から選択されるいずれか1種以上の原子を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子。
[請求項13]
 請求項1~12のいずれか一項に記載のスピン軌道トルク型磁化回転素子と、
 前記第1強磁性層の前記スピン軌道トルク配線と反対側の面に面する非磁性層と、
 前記第1強磁性層と前記非磁性層を挟む第2強磁性層と、を備える、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子。
[請求項14]
 請求項13に記載のスピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子を複数備えた磁気メモリ。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]