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1. WO2011052077 - SYSTÈME DE COMMANDE DE MOUVEMENT DE VÉHICULE

Document

明 細 書

発明の名称 車両運動制御システム

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の態様

発明が解決しようとする課題

0004  

課題を解決するための手段

0005  

発明の効果

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064  

図面の簡単な説明

0065  

発明を実施するための形態

0066  

実施例

0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114  

符号の説明

0115  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10  

図面

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20  

明 細 書

発明の名称 : 車両運動制御システム

技術分野

[0001]
 本発明は、車両の前方部に配置された単一の前輪と、それの後方において車両の左右に配置された左輪および右輪とを有する車両の運動を制御するシステムに関する。

背景技術

[0002]
 従来、単一の前輪と、それの後方に設けられた左輪,右輪とを有する車両において、その車両の運動を制御するシステムとして、下記特許文献1に記載されているような技術が存在する。その技術は、車両の旋回運動の制御に関するものであり、特に、車両の旋回に伴う左輪,右輪の転舵,駆動力差の制御に関するものである。また、近年では、下記特許文献2に記載されたような車両、つまり、3つの車輪に加えて左輪,右輪の後方に設けられた単一の後輪を有する車両も検討されている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開2006-130985号公報
特許文献2 : 中国授権公告号 CN1304237C

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 上述のような車両は、車輪の配置が、左右2つの前輪,左右2つの後輪を有する通常の車両とは異なることから、車両運動の制御において特別に配慮することが望ましい。上述のような車両(以下、「特殊車輪配置車両」という場合がある)に関する運動制御には、充分な改良の余地が残されており、何らかの改良を施すことにより、特殊車輪配置車両の実用性を向上させることが可能である。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、特殊車輪配置車両の実用性を向上させるための車両運動制御システムを提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

[0005]
 上記課題を解決するために、本発明の車両運動制御システムは、後輪をも有する上記特殊車輪配置車両(以下、「菱形車輪配置車両」という場合がある)の運動を制御するためのシステムであって、車体の前後輪分担荷重に対する左右輪分担荷重との比である分担荷重比を変更する分担荷重比変更装置を備え、その荷重分担比を制御可能に構成される。

発明の効果

[0006]
 菱形車輪配置車両において、上記分担荷重比を変更可能とすることで、その変更に応じた車両運動特性が得られることになる。それにより、直進時と旋回時との少なくとも一方において、車両の運動を適切なものとすることが可能である。

発明の態様

[0007]
 以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求の範囲と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、以下の各項に付随する記載,実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
[0008]
 なお、以下の(1)項および(31)項を合わせたものが請求項1に相当し、請求項1に(32)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項2に、請求項2に(33)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項3に、請求項2または請求項3に(34)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに(14)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項5に、請求項5に(15)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項6に、請求項1ないし請求項6のいずれか1つに(11)項および(12)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項7に、請求項7に(17)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項8に、請求項8に(14)項および(15)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項9に、請求項9に(21)項に記載の発明特定事項を付加したものが請求項10に、それぞれ相当する。
[0009]
 (1)自身の前方部に配置された単一の前輪と、その前輪よりも後方において自身の左右にそれぞれ配置された左輪および右輪とを有する車両の運動を制御するための車両運動制御システムであって、
 前記前輪を転舵させる前輪転舵装置と、
 前記車両を駆動および制動するための力である駆制動力を前記左輪,前記右輪に対してそれぞれ付与する左輪駆制動装置および右輪駆制動装置と、
 前記車両の制御を司る制御装置と
 を備えた車両運動制御システム。
[0010]
 本項に記載の車両運動制御システムは、最も基本的な態様のシステムであり、本発明のシステムの前提となるシステムである。本項の態様のシステムが対象とする車両は、上述した特殊車輪配置車両であり、その車両は、上記前輪,左輪,右輪のみを有する三輪車両であってもよく、さらに、左輪,右輪の後方に配置された単一の後輪を有する車両(以下、「菱形車輪配置車両」という場合がある)であってもよい。本項のシステムにおける「前輪転舵装置」は、ステアリング操作部材に加えられる運転者の操作力によって前輪を転舵させるように構成された装置であってもよく、駆動源を有してステアリング操作部材と機械的に分離され、そのステアリング操作部材の操作に応じて、駆動源を制御しつつその駆動源の力によって前輪を転舵させるように構成されたものであってもよい。いわゆるステアバイワイヤ型の装置であってもよいのである。なお、ステアリング操作部材は、ステアリングホイールを始め、ジョイスティック,レバー等、種々の形式のものを採用可能である。
[0011]
 本項における「駆制動力」は、車輪を駆動する力と、車輪を制動する力とを総合的若しくは一元的に取り扱うための概念である。ちなみに、車輪を駆動する力,車輪を制動する力は、それぞれ、車両を駆動する力,車両を制動する力と考えることも可能である。したがって、本項における「左輪駆制動装置」,「右輪駆制動装置」は、(a)エンジン,モータ等の駆動源とその駆動源の力を車輪の回転として伝達する伝達機構等を含んで構成される駆動装置と、(b)液圧ブレーキ装置,電気ブレーキ装置,駆動源がモータである場合におけるそのモータの起電力を利用したブレーキ装置(例えば回生ブレーキ)等の制動装置とを含んで構成される装置と考えることが可能である。なお、本項の態様における左輪駆制動装置,右輪駆制動装置は、後に説明するような互いに独立して左輪,右輪に駆制動力を付与可能なものに限られず、左輪,右輪に対して互いに等しい若しくは互いに関連した大きさの駆制動力を付与可能なものであってもよい。
[0012]
 (2)前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置が、前記左輪,前記右輪に対して互いに独立して駆制動力を付与可能に構成された(1)項に記載の車両運動制御システム。
[0013]
 本項の態様は、左輪駆制動装置および右輪駆制動装置に限定を加えた態様である。それら駆制動装置は、例えば、左輪,右輪の各々に対して専用の駆動源を有して左輪,右輪が独立して駆動されるように構成された駆動装置を含むように構成することが可能である。また、ブレーキバイワイヤ型のブレーキ装置、左輪,右輪の各々に対する専用の駆動源として配備された電磁モータの起電力を利用したブレーキ装置等、左輪,右輪が独立して制動されるように構成されたブレーキ装置を採用可能である。
[0014]
 (3)当該車両運動制御システムが、前記左輪および前記右輪よりも後方に配置された単一の後輪をさらに有する前記車両の運動を制御するためものである(1)項または(2)項に記載の車両運動制御システム。
[0015]
 本項の態様の車両運動制御システムは、対象とする車両が上記菱形車輪配置車両とされたシステムである。その対象とする車両の後輪は、転舵される転舵輪であってもよく、転舵されない非転舵輪であってもよい。なお、本明細書において「転舵輪」とは、ステアリング操作の操作,制御等によって、任意の転舵量とすることが可能な車輪を意味する。例えば、キャスターのように自由に向きが変わる車輪は、転舵輪ではなく非転舵輪となる。もちろん、向きが固定された車輪も非転舵輪である。
[0016]
 (4)当該車両運動制御システムが、前記後輪を転舵する後輪転舵装置を備えた(3)項に記載の車両運動制御システム。
[0017]
 本項の態様は、後輪が転舵輪とされた態様である。本項のシステムにおける「後輪転舵装置」は、先に説明した前輪転舵装置と同様、ステアリング操作部材に加えられる運転者の操作力によって後輪を転舵させるように構成された装置であってもよく、いわゆるステアバイワイヤ型の装置であってもよい。
[0018]
 (5)当該車両運動制御システムが、
 前記車両の車体の重量のうちの前記前輪および前記後輪が分担する分である前後輪分担荷重に対しての、前記左輪および前記右輪が分担する分である左右輪分担荷重の比である分担荷重比を変更する分担荷重比変更装置を備えた(3)項または(4)項に記載の車両運動制御システム。
[0019]
 本項における「分担荷重比変更装置」は、具体的な構成が特に限定されるものではない。後に説明するような構成の装置とすることも可能であり、また、例えば、車体に移動可能な1以上の錘(ウエイト)を配設し、その1以上の錘を前後方向に移動させることによって分担荷重比を変更するような装置とすることも可能である。
[0020]
 (6)当該車両が、前記前輪,前記後輪,前記左輪,前記右輪に対応してそれぞれ設けられた複数のサスペンションスプリングによって前記車体が懸架されるようにに構成されており、
 前記分担荷重比変更装置が、(a)前記前輪と前記車体との上下方向における距離および前記後輪と前記車体との上下方向における距離と、(b)前記左輪と前記車体との上下方向における距離および前記右輪と前記車体との上下方向における距離との少なくとも一方を変更する向きの力を発生させることで、前記分担荷重比を変更するように構成された(5)項に記載の車両運動制御システム。
[0021]
 本項の態様は、分担荷重比変更装置の構成に関する限定を加えた態様である。本項における分担荷重比変更装置は、具体的には、例えば、車体を剛体として扱い、車輪と車体との上下方向における距離(以下、「車輪車体間距離」という場合がある)を増大若しくは減少させる方向の力(以下、「車輪車体接近離間力」という場合がある)を、4つの車輪の各々と車体との間に適切に作用させることによって、分担荷重比を変更することが可能である。より詳しく言えば、前輪および後輪について車輪と車体との間にそれらを接近させる方向の力を作用させる、および/または、左輪および右輪について車輪と車体との間にそれらを離間させる方向の力を作用させることによって、前後輪分担荷重に対して左右輪分担荷重を大きくすることが可能である。つまり、分担荷重比を大きくすることが可能である。逆に、前輪および後輪について車輪と車体との間にそれらを離間させる方向の力を作用させる、および/または、左輪および右輪について車輪と車体との間にそれらを接近させる方向の力を作用させることよって、前後輪分担荷重に対して左右輪分担荷重を小さくすることが可能である。言い換えれば、分担荷重比を小さくすることが可能である。
[0022]
 上記車輪車体接近離間力を発生させるための構成については特に限定されない。例えば、4つの車輪に対応して設けられた複数のサスペンションスプリングの各々と、それを支持する車体の部分との間に、それらの間隔を変更するアクチュエータを配設し、その間隔を大きくすることで、対応する車輪の分担荷重を大きくし、逆に、その間隔を小さくすることで、その車輪の分担荷重を小さくするような構成を採用することが可能である。また、例えば、いわゆる電磁式ダンパ(電磁式ショックアブソーバ)等の車輪と車体との間に力を作用させるデバイスを、4つの車輪に対応して4つ配設し、それら4つのデバイスの各々による力を、その各々に対応する車輪と車体との間に適切な比で作用させることで、上記分担荷重比を変更するような構成を採用することも可能である。
[0023]
 (11)前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、前記前輪転舵装置を制御して前記前輪の転舵量を制御する前輪転舵量制御部を有する(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
[0024]
 本項の態様は、前輪転舵装置が、先に説明したステアバイワイヤ型の転舵装置とされた態様である。ステアバイワイヤ型の転舵装置を採用すれば、例えば、前輪の転舵量が必ずしもステアリング操作部材の操作量のみに応じた大きさに制御されることを要せず、例えば、ステアリング操作部材の操作速度,車速等の種々のパラメータに応じた転舵量の制御が可能となる。つまり、ステアバイワイヤ型の転舵装置を採用することにより、転舵量の制御の自由度を、比較的高いものとすることが可能である。なお、「転舵量」は、車輪の転舵の程度を表す指標であり、例えば、車輪の転舵角、つまり、直進時の車輪の転向角度位置に対する転向位相角等が、転舵量の一種となる。
[0025]
 (12)前記前輪転舵量制御部が、ステアリング操作部材の操作に基づいて、前記車両の旋回において前記車両に生じるべき横加速度である目標横加速度を決定し、実際に前記車両に生じている横加速度である実横加速度が前記目標横加速度に近づくように、前記前輪の転舵量を制御するように構成された(11)項に記載の車両運動制御システム。
[0026]
 本項の態様は、前輪の転舵手法に関する限定を加えた態様である。ステアリング操作部材は、運転者が望む車両旋回の程度,様子等に応じて操作されることから、ステアリング操作部材の操作は、運転者が望む車両旋回の程度,様子等に関する意思表示となる。一方で、旋回時に車両に生じる横加速度は、車両に作用する横力を車両重量で除したものと考えることができ、旋回の程度,様子等を示す指標(以下、「車両旋回指標」という場合がある)の一種である。そのことに鑑み、本項の態様の転舵手法では、前輪の転舵量が、ステアリング操作部材の操作に基づいて直接制御されるのではなく、車両旋回指標の一種である上記横加速度に基づいて制御される。本項の態様における前輪の転舵手法は、ユニークな手法であり、そのような転舵手法によって前輪が転舵される本項の態様の車両運動制御システムはによれば、運転者の意図に沿った適切な車両の旋回運動が実現されることになる。
[0027]
 本項の態様における前輪の転舵量の制御は、例えば、上記目標横加速度に対する上記実横加速度の偏差に基づくフィードバック制御の手法を利用することが可能である。具体的には、偏差に基づくP制御,PI制御,PID制御といった制御によって実現することが可能である。なお、目標横加速度の決定方法は、特に限定されない。例えば、後に説明する方法、つまり、ステアリング操作部材の操作量に応じた大きさとなるように決定するような方法を採用することができ、また、例えば、ステアリング操作部材の操作速度,車両の走行速度(以下、「車速」という場合がある)等、種々のパラメータに基づく方法を広く採用することが可能である。
[0028]
 ちなみに、上記横加速度の発生の根拠となる上記横力は、車輪において車両に作用する力である。そのため、その横力が車両に作用した場合、その反対方向の慣性力が車体に作用することになる。このことに鑑み、実横加速度を検出する場合には、車体に設けられた横加速度センサを利用して、それの検出値に基づいて検出すればよい。
[0029]
 (13)前記前輪転舵量制御部が、前記目標横加速度を、前記ステアリング操作部材の操作量に応じた大きさに決定するように構成された(12)項に記載の車両運動制御システム。
[0030]
 本項の態様は、目標横加速度の決定方法に関しての限定を加えた態様である。本項の態様によれば、運転者が望む程度の車両旋回運動が適切に実現されることになる。ちなみに、本項の態様の決定方法によれば、ステアリング操作部材の操作量が同じ場合であっても、概して、車速が高いときには前輪の転舵量は小さく、車速が低いときには前輪の転舵量は大きくなる。
[0031]
 (14)前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置が、前記左輪,前記右輪に対して互いに独立して前記駆制動力を付与可能に構成されており、
 前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置を制御して前記左輪の駆制動力と前記右輪の駆制動力との差である左右輪駆制動力差を制御する左右輪駆制動力差制御部を有する(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
[0032]
 本項の態様は、左輪の駆制動力と右輪の駆制動力とに差をつけることによって、車両の運動を制御するように構成された態様である。例えば、左輪,右輪のうちの旋回外輪(旋回中心から遠い方の車輪)となるものの駆制動力と、旋回内輪(旋回中心に近い方の車輪)の駆制動力とに差をつけることによっても、車両の向きを変更することができる。例えば、車両旋回における車両のヨーレートを、駆制動力差によって制御することが可能なのである。本項の態様は、そのことに鑑み、上記駆制動力差を制御することで、車両の旋回運動を制御する態様である。本項の態様によれば、良好な特性の車両旋回運動を実現することが可能になる。なお、本項の態様は、上述した前輪転舵量制御部に関する態様と組み合わせることで、より良好な特性の車両旋回運動が実現される。ちなみに、「駆制動力差」は、上述した駆動装置による左右の車輪の駆動力の差であってもよく、上述した制動装置による左右の車輪の制動力の差であってもよい。言い換えれば、車両が加速中若しくは車速が維持される場合には、主に駆動力差となり、車両が減速中には、主に、制動力差となる。
[0033]
 (15)前記左右輪駆制動力差制御部が
 ステアリング操作部材の操作に基づいて、前記車両の旋回において実現されるべきヨーレートである目標ヨーレートを決定し、実際に前記車両に生じているヨーレートである実ヨーレートが前記目標ヨーレートに近づくように、前記左右輪駆制動力差を制御するように構成された(14)項に記載の車両運動制御システム。
[0034]
 本項の態様は、上記駆制動力差の制御手法に関する限定を加えた態様である。先に説明したように、ステアリング操作部材の操作は、運転者が望む車両旋回の程度,様子等に関する意思表示となる。一方、車両旋回時における車両のヨーレートも、先に説明した車両旋回指標の一種である。そのことに鑑み、本項の態様では、上記駆制動力差が、ステアリング操作部材の操作に基づいて直接制御されるのではなく、車両旋回指標の一種である上記ヨーレートに基づいて制御される。本項の態様における駆制動力差の制御手法は、ユニークな手法であり、そのような制御手法によって駆制動力差が制御される本項の態様の車両運動制御システムによれば、運転者の意図に沿った適切な車両旋回が実現されることになる。
[0035]
 なお、本項の態様における駆制動力差の制御は、上述の前輪転舵量の制御と同様、例えば、上記目標ヨーレートに対する上記実ヨーレートの偏差に基づくフィードバック制御の手法を利用することが可能である。具体的には、偏差に基づくP制御,PI制御,PID制御といった制御によって実現することが可能である。ちなみに、実ヨーレートは、車体に設けられたヨーレートセンサを利用して検出することが可能である。なお、目標ヨーレートの決定方法は、特に限定されない。例えば、後に説明する方法、つまり、ステアリング操作部材の操作量を車速で除したものに応じた大きさとなるように決定するような方法を採用することができ、また、例えば、ステアリング操作部材の操作量,ステアリング操作部材の操作速度,車速等、種々のパラメータに基づく方法を広く採用することが可能である。
[0036]
 また、本項の態様は、上述した横加速度に基づく前輪転舵量の制御と組み合わせることが望ましい。横加速度に基づく前輪転舵量とヨーレートに基づく左右輪の駆制動力差とを組み合わせることで、目標横加速度の変化に対する追従性(横加速度についての応答性)、目標ヨーレートの変化に対する追従性(ヨーレートについての応答性)の両方ともが良好となる。つまり、それら2つの制御の一方が、他方の制御をアシストするような働きをすることになると考えられる。ちなみに、2つの制御の組み合わせの効果は、車速が高い場合に、車速が低い場合に比較して高く、その意味において、少なくとも車速が高い場合に2つの制御を組み合わせて実行することが特に望ましい。
[0037]
 (16)前記左右輪駆制動力差制御部が、前記目標ヨーレートを、前記ステアリング操作部材の操作量を前記車両の走行速度で除したものに応じた大きさに決定するように構成された(15)項に記載の車両運動制御システム。
[0038]
 本項の態様は、目標ヨーレートの決定方法に関しての限定を加えた態様である。本項の態様によれば、運転者が望む様子の車両旋回が適切に実現されることになる。ちなみに、本項の態様の決定方法によれば、ステアリング操作部材の操作量が同じ場合であっても、概して、車速が高いときには車両のヨーレートが大きくなり、車速が低いときには車両のヨーレートは小さくなる。
[0039]
 (17)当該車両運動制御システムが、
 前記左輪および前記右輪よりも後方に配置された単一の後輪をさらに有する前記車両の運動を制御するものであり、かつ、その後輪を転舵する後輪転舵装置を備え、
 前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、その後輪転舵装置を制御して前記後輪の転舵量を制御する後輪転舵量制御部を有する(11)項ないし(16)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
[0040]
 本項の態様は、運動の制御の対象となる車両が上記菱形車輪配置車両である場合において、後輪転舵装置が、先に説明したステアバイワイヤ型の転舵装置とされた態様である。後輪の転舵の制御のためにステアバイワイヤ型の転舵装置を採用すれば、例えば、菱形車輪配置車両の旋回特性を、より良好なものとすることが可能となる。前輪の場合と同様、後輪の転舵量が必ずしもステアリング操作部材の操作量に応じた大きさに制御されることを要せず、転舵量の制御の自由度を、比較的高いものとすることが可能である。
[0041]
 前輪の転舵方向に対する後輪の転舵方向に関し、それらが同じ方向である場合に、後輪が前輪と同相に転舵されていると言い、それらが互いに逆の方向である場合に、後輪が前輪と逆相に転舵されていると言うこととする。このような言い方に従えば、本項の態様では、後輪が前輪に対して同相に転舵されてもよく、逆相に転舵されてもいい。一例をあげれば、車速に応じていずれに転舵されるかが決まるように、後輪の転舵を制御することも可能である。より具体的に言えば、車速が高い場合には、車両の走行安定性等に鑑み、後輪を前輪に対して同相に転舵させ、車速が低い場合には、車両の転向性能(車両の向きの変え易さについての性能)の向上等に鑑み、後輪を前輪に対して逆相に転舵させるような制御を行うことも可能である。ちなみに、後輪を前輪に対して同相に転舵させる場合には、車両は、自身に生じる横加速度が比較的大きくかつ自身のヨーレートが比較的小さな旋回運動を行い、逆に、後輪を前輪に対して逆相に転舵させる場合には、車両は、自身に生じる横加速度が比較的小さくかつ自身のヨーレートが比較的大きな旋回運動を行うことになる。
[0042]
 (18)前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、前記前輪転舵装置を制御して前記前輪の転舵量を制御する前輪転舵量制御部を有し、
 その前輪転舵量制御部が、ステアリング操作部材の操作に基づいて、前記車両の旋回において前記車両に生じるべき横加速度である目標横加速度を決定し、実際に前記車両に生じている横加速度である実横加速度が前記目標横加速度に近づくように、前記前輪の転舵量を制御するように構成され、
 前記後輪転舵量制御部が、前記前輪転舵量制御部による制御によって実現される前記実横加速度の前記目標横加速度への接近がアシストされるように、前記後輪転舵装置を制御して前記後輪の転舵量を制御するように構成された(17)項に記載の車両運動制御システム。
[0043]
 本項の態様は、先に説明した横加速度に基づく前輪転舵量の制御を採用した場合において、後輪転舵量の制御の手法を具体的に限定した態様である。本項の態様によれば、先に説明した目標横加速度の変化に対する追従性をより良好なものとすることが可能である。
[0044]
 (19)前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置が、前記左輪,前記右輪に対して互いに独立して前記駆制動力を付与可能に構成されており、
 前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置を制御して前記左輪の駆制動力と前記右輪の駆制動力との差を制御する左右輪駆制動力差制御部を有し、
 その左右輪駆制動力差制御部が
 ステアリング操作部材の操作に基づいて、前記車両の旋回において実現されるべきヨーレートである目標ヨーレートを決定し、実際に前記車両に生じているヨーレートである実ヨーレートが前記目標ヨーレートに近づくように、前記左輪の駆制動力と前記右輪の駆制動力との差を制御するように構成され、
 前記後輪転舵量制御部が、前記左右輪駆制動力差制御部による制御によって実現される前記実ヨーレートの前記目標ヨーレートへの接近がアシストされるように、前記後輪の転舵量を制御するように構成された(17)項に記載の車両運動制御システム。
[0045]
 本項の態様は、先に説明したヨーレートに基づく左右輪の駆制動力差の制御を採用した場合において、後輪転舵量の制御の手法を具体的に限定した態様である。本項の態様によれば、先に説明した目標ヨーレートの変化に対する追従性をより良好なものとすることが可能である。
[0046]
 (20)前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、前記前輪転舵装置を制御して前記前輪の転舵量を制御する前輪転舵量制御部を有し、
 その前輪転舵量制御部が、ステアリング操作部材の操作に基づいて、前記車両の旋回において前記車両に生じるべき横加速度である目標横加速度を決定し、実際に前記車両に生じている横加速度である実横加速度が前記目標横加速度に近づくように、前記前輪の転舵量を制御するように構成され、
 前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置が、前記左輪,前記右輪に対して互いに独立して前記駆制動力を付与可能に構成されており、
 前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置を制御して前記左輪の駆制動力と前記右輪の駆制動力との差である左右輪駆制動力差を制御する左右輪駆制動力差制御部を有し、
 その左右輪駆制動力差制御部が
 前記ステアリング操作部材の操作に基づいて、前記車両の旋回において実現されるべきヨーレートである目標ヨーレートを決定し、実際に前記車両に生じているヨーレートである実ヨーレートが前記目標ヨーレートに近づくように、前記左右輪駆制動力差を制御するように構成された(17)項に記載の車両運動制御システム。
[0047]
 本項の態様は、先に説明した横加速度に基づく前輪転舵量の制御と、ヨーレートに基づく左右輪の駆制動力差の制御との両方を採用した態様である。
[0048]
 (21)前記後輪転舵量制御部が、前記前輪転舵量制御部による制御によって実現される前記実横加速度の前記目標横加速度への接近と、前記左右輪駆制動力差制御部による制御によって実現される前記実ヨーレートの前記目標ヨーレートへの接近との少なくとも一方がアシストされるように、前記後輪の転舵量を制御するように構成された(20)項に記載の車両運動制御システム。
[0049]
 本項の態様は、先に説明した横加速度に基づく前輪転舵量の制御と、ヨーレートに基づく左右輪の駆制動力差の制御との両方を採用した場合において、後輪転舵量の制御の手法を具体的に限定した態様である。本項の態様によれば、先に説明した目標横加速度の変化に対する追従性と、目標ヨーレートの変化に対する追従性との少なくとも一方をより良好なものとすることが可能である。なお、上記実横加速度の目標横加速度への接近と、上記実ヨーレートの目標ヨーレートへの接近との両方をアシストするように、後輪の転舵量を制御することにより、上記目標横加速度の変化に対する追従性と、上記目標ヨーレートの変化に対する追従性との両方を、より良好なものとすることが可能となる。
[0050]
 (22)前記後輪転舵量制御部が、前記後輪の転舵量を、前記実横加速度が前記目標横加速度より小さくかつ前記実ヨーレートが前記目標ヨーレートよりも大きい場合には、前記後輪が前記前輪と同じ向きに転舵するように制御し、前記実横加速度が前記目標横加速度より大きくかつ前記実ヨーレートが前記目標ヨーレートよりも小さい場合には、前記後輪が前記前輪とは逆の向きに転舵するように制御するように構成された(20)項または(21)項に記載の車両運動制御システム。
[0051]
 本項の態様は、上記実横加速度の目標横加速度への接近と、上記実ヨーレートの目標ヨーレートへの接近との両方をアシストするように後輪の転舵量を制御する態様の一種と考えることができる。本項の態様によれば、上記目標横加速度の変化に対する追従性と、上記目標ヨーレートの変化に対する追従性との両方を、より良好なものとすることが可能となる。
[0052]
 (23)前記後輪転舵量制御部が、前記車両の旋回時において前記車両に生じるべき公転求心加速度である目標公転求心加速度を決定し、実際に前記車両に生じている公転求心加速度である実公転求心加速度が前記目標公転求心加速度に近づくように、前記後輪の転舵量を制御するように構成された(17)項ないし(22)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
[0053]
 上記横加速度は、車両を中心とした座標系における横加速度であり、上記「公転求心加速度」は、路面座標系における横加速度と考えることのできるものである。言い換えれば、上記横加速度から、車速とヨーレートとの積を減じたものと考えることのできるものである。本項の態様は、この公転加速度に基づく後輪の転舵量を制御する態様である。本項の態様は、概して言えば、上記実横加速度の目標横加速度への接近と、上記実ヨーレートの目標ヨーレートへの接近との両方をアシストするように後輪の転舵量を制御する態様の一種と考えることができる。本項の態様によれば、上記目標横加速度の変化に対する追従性と、上記目標ヨーレートの変化に対する追従性との両方を、より良好なものとすることが可能となる。
[0054]
 本項の態様における後輪転舵量の制御は、上述の前輪転舵量の制御,左右輪の駆制動力差の制御と同様、例えば、上記目標公転求心加速度に対する上記実公転求心加速度の偏差に基づくフィードバック制御の手法によって実現することができる。具体的には、偏差に基づくP制御,PI制御,PID制御といった制御によって実現することが可能である。ちなみに、実横加速度,実ヨーレートは、それぞれ、上述したように、車体に設けられた横加速度センサ,ヨーレートセンサを利用して検出することが可能である。また、目標公転求心加速度は、例えば、前輪転舵量の制御において目標横加速度が、左右輪の駆制動力差の制御において目標ヨーレートがそれぞれ決定されている場合には、それらに基づいて決定すればよい。なお、目標公転求心加速度に対する実公転求心加速度の偏差は、前輪転舵量の制御において目標横加速度に対する実横加速度の偏差が、および、左右輪の駆制動力差の制御において目標ヨーレートに対する実ヨーレートの偏差が、それぞれ認定されている場合には、前者から後者と車速との積を減じて決定してもよい。
[0055]
 (31)当該車両運動制御システムが、前記左輪および前記右輪よりも後方に配置された単一の後輪をさらに有する前記車両の運動を制御するものであり、かつ、その車両の車体の重量のうちの前記前輪および前記後輪が分担する分である前後輪分担荷重に対しての、前記左輪および前記右輪が分担する分である左右輪分担荷重の比である分担荷重比を変更する分担荷重比変更装置を備え、
 前記制御装置が、
 前記分担荷重比変更装置を制御することで、前記分担荷重比を制御する分担荷重比変更制御部を有する(1)項ないし(20)項のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
[0056]
 本項の態様は、先に説明した菱形車輪配置車両の運動を対象とした制御を行うための態様である。上記分担荷重比を変更することにより、その分担荷重比に応じた車両運動特性が得られることになる。具体的に言えば、例えば、左右輪分担荷重を前後輪分担荷重に対して小さくする、つまり、分担荷重比を小さくすることで、菱形車輪配置車両の直進安定性を高めることが可能であり、逆に、左右輪分担荷重を前後輪分担荷重に対して小さくする、つまり、分担荷重比を大きくすることで、菱形車輪配置車両の駆動性能を向上させることが可能となる。ちなみに、ここでいう駆動性能とは、駆動輪とされている左輪,右輪の回転によって得られる車両の推進力の大きさに関する性能のことを意味する。
[0057]
 旋回時の運動に関しては、概して、以下のように考えることが可能である。例えば、後輪を前輪に対して同相に転舵させるようにして行われる旋回を考えれば、そのような旋回時には、左右輪は、車両の横方向の並進運動に対して大きな抵抗となる。つまり、車両の横方向の運動成分による左右輪と路面との摩擦力(左右輪が発生させる横力と考えることもできる)は、旋回時の横加速度が小さくなるように作用する。したがって、分担荷重比を小さくすることで、左右輪の接地荷重を減少させ、菱形車輪配置車両に、比較的大きな横加速度が求められるような旋回運動を容易に行なわせることが可能となる。一方、例えば、左右輪駆制動力差を積極的に利用して車両が旋回しているような場合を考えれば、その場合には、前後輪は、車両の転向運動に対して抵抗となる。つまり、車両のヨー運動における前後輪と路面との摩擦力(左右輪が発生させる横力と考えることもできる)は、車両のヨーレートが小さくなるように作用する。したがって、分担荷重比を大きくすることで、前後輪の接地荷重を減少させ、菱形車輪配置車両に、比較的大きなヨーレートが求められるような旋回運動を容易に行なわせることが可能となる。
[0058]
 (32)前記分担荷重比変更制御部が、前記車両の走行速度に基づいて前記分担荷重比を制御するように構成された(31)項に記載の車両運動制御システム。
[0059]
 本項の態様によれば、例えば、車速に応じて分担荷重比を変更することができる。一般的に、菱形車輪配置車両は、車速に応じて、求められる車両運動特性は変わる。本項の態様によれば、そのような要求に応えることのできる菱形車輪配置車両を実現することが可能となる。
[0060]
 (33)前記分担荷重比変更制御部が、前記車両の走行速度が高い場合に、低い場合に比べて、前記分担荷重比が小さくなるように前記分担荷重比変更装置を制御するように構成された(32)項に記載の車両運動制御システム。
[0061]
 先に説明したように、一般的に、菱形車輪配置車両は、車速が高い場合には、車両の走行安定性等に鑑み、車両に生じる横加速度が比較的大きくかつ車両のヨーレートが比較的小さな旋回運動を行うようにに制御されることが望ましい。逆に、車速が低い場合には、車両の転向性能の向上等に鑑み、車両に生じる横加速度が比較的大きくかつ車両のヨーレートが比較的小さな旋回運動を行うように制御されることが望ましい。本項の態様によれば、先に説明した理由から、車速の高い場合には、菱形車輪配置車両に、比較的大きな横加速度が求められるような旋回運動を容易に行なわせることが可能であり、逆に、車速の低い場合には、菱形車輪配置車両に、比較的大きなヨーレートが求められるような旋回運動を容易に行なわせることが可能となる。
[0062]
 なお、車速に応じて分担荷重比を変更させる場合、連続的に変更することも可能であり、段階的に変更することも可能である。極端に言えば、車速に関するある閾値を挟んで、その閾値より車速が高い場合の分担荷重比が、その閾値より車速が低い場合の分担荷重比よりも小さくなるような態様も、本項の態様に含まれるのである。
[0063]
 (34)前記分担荷重比変更制御部が、前記車両の走行速度が設定閾速度より高い場合に前記前後輪分担荷重が前記左右輪分担荷重より大きくなるように、かつ、前記車両の走行速度が前記設定閾速度より低い場合に前記前後輪分担荷重が前記左右輪分担荷重より小さくなるように前記分担荷重比変更装置を制御するように構成された(32)項または(33)項に記載の車両運動制御システム。
[0064]
 本項の態様は、上記前後輪分担荷重と上記左右輪分担荷重との大小関係に関する限定を加えた態様である。本項の態様は、車速が高い場合に、低い場合に比べて、分担荷重比を小さくするように制御する態様の一態様と考えることもできる。

図面の簡単な説明

[0065]
[図1] 請求可能発明の実施例である車両運動制御システムが搭載された車両の概略側面図である。
[図2] 図1に示す車両およびその車両に搭載されている車両運動制御システムの全体構成を示す概念図である。
[図3] 図1に示す車両の左輪(右輪)およびそれに対して設けられた懸架装置,駆動装置,制動装置を示す断面図である。
[図4] 図1に示す車両の前輪(後輪)およびそれに対して設けられた転舵装置を示す図である。
[図5] 旋回制御による前輪,後輪の転舵および左右輪駆制動力差の様子を概念的に示す図である。
[図6] 旋回時において車両に生じる横加速度およびヨーレートの変化を、旋回制御下での旋回の場合と、前輪の転舵のみによる旋回の場合とで、比較して説明するためのグラフである。
[図7] レーンチェンジを行った場合における横加速度およびヨーレートの変化を、旋回時制御下での旋回の場合と、前輪の転舵のみによる旋回の場合とで、比較して説明するためのグラフである。
[図8] 分担荷重比変更制御による前後輪の分担荷重に対する左右輪の分担荷重の比の変化を示すグラフである。
[図9] 車体の荷重が前後輪と左右輪とに分担される様子を概念的に示す図である。
[図10] 分担荷重比を変更した場合における旋回時の車両の運動を説明するための概念図である。
[図11] 高速でレーンチェンジを行った際の分担荷重比の変更による効果を示すグラフである。
[図12] 低速でレーンチェンジを行った際の分担荷重比の変更による効果を示すグラフである。
[図13] 車両運動制御システムにおいて実行される車両運動制御プログラムのフローチャートである。
[図14] 車両運動制御プログラムを構成する旋回制御サブルーチンのフローチャートである。
[図15] 旋回制御サブルーチンを構成する前輪転舵量制御サブルーチンのフローチャートである。
[図16] 旋回制御サブルーチンを構成する左右輪駆制動力差制御サブルーチンのフローチャートである。
[図17] 旋回制御サブルーチンを構成する後輪転舵量制御サブルーチンのフローチャートである。
[図18] 車両運動制御プログラムを構成する加減速制御サブルーチンのフローチャートである。
[図19] 車両運動制御プログラムを構成する分担荷重比変更制御サブルーチンのフローチャートである。
[図20] 車両運動制御システムの制御装置として車両に搭載された電子制御ユニットの機能部を示すブロック図である。

発明を実施するための形態

[0066]
 以下、請求可能発明の代表的な実施形態を、実施例として、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
実施例
[0067]
 ≪車両の構成≫
 図1に、実施例の車両運動制御システムが搭載された車両を示す。本車両は、菱形車輪配置の車両であり、次世代コミュータとして期待されている。本車両は、車体10と、それの前方部に設けられた前輪12Fと、その前輪12Fの後方において車体10の左部,右部にそれぞれ設けられた左輪14L,右輪14Rと、それら左輪14L,右輪14Rの後方に設けられた後輪12Rとを有している。当該車両の平面視を示す図2から解るように、前輪12F,後輪12Rは、車幅方向における中央に配設されている。なお、以下の説明において、前輪12F,後輪12Rの区別を要しない場合には、車輪12と総称し、左輪14L,右輪14Rの区別を要しない場合には、車輪14と総称することとする。前輪12F,後輪12R,左輪14L,右輪14Rに関係する構成要素,パラメータ等についても同様とする。
[0068]
 本車両では、後に詳しく説明するが、前輪12F,後輪12Rが転舵輪とされており、左輪14L,右輪14Rは転舵輪とはされていない。また、左輪14L,右輪14Rが駆動輪(車両を駆動するために回転駆動される車輪)とされてはいるものの、前輪12F,後輪12Rは、駆動輪とはされていない。同様に、左輪14L,右輪14Rが制動輪(車両を制動するために回転が制動される車輪)とされてはいるものの、前輪12F,後輪12Rは、制動輪とはされていない。
[0069]
 本車両には、運転者が当該車両を操作するための操作部材として、3つの操作部材が設けられている。その1つが、車両に旋回動作を行わせるためのステアリング操作部材であるステアリングホイール20であり、もう1つが、車両を加速させるためのアクセル操作部材であるアクセルペダル22,さらにもう1つが、車両を減速させるためのブレーキ操作部材であるブレーキペダル24である。ちなみに、本車両は、前進ばかりでなく後退も可能であるが、本明細書が冗長となることを避けるべく、以下の説明では、前進についてのみ説明することとする。
[0070]
 左輪14L,右輪14Rに関して説明すれば、図3から解るように、車輪14は、ホイール本体30と、タイヤ32とから構成されている。ホイール本体30は、アクスル34に固定され、そのアクスル34は、キャリア36に回転可能に保持されている。キャリア36は、それぞれがサスペンション装置を構成するサスペンションアームであるロアアーム38,アッパアーム40によって、車体に対して揺動可能とされている。ロアアーム38には、液圧式のショックアブソーバ42の下端部が取付られている。このショックアブアブソーバ42の上端部は、ばね支持位置調整装置44を介して、車体に支持されている。このばね支持位置調整装置44は、ショックアブソーバ42の上端部と、車体の支持部との上下方向における間隔を大きくしたり、小さくしたりするためのものであり、電磁モータを有し、その電磁モータの作動を制御することによって、後に説明するサスペンションスプリング46の上端部の車体に対する支持位置(以下、「ばね支持位置」という場合がある)を調整することが可能とされている。
[0071]
 液圧式のショックアブソーバ42は、ロアチューブ48とアッパチューブ50とを有し、それらが相対移動可能とされていることで、伸縮可能とされている。ロアチューブ48には、下部リテーナ52が、アッパチューブ50には、上部リテーナ54が、それぞれ固定されており、それら下部リテーナ52,上部リテーナ54によって、サスペンションスプリング46が挟持されている。このような構成により、車輪14は、回転可能にかつ、弾性的に上下に揺動可能とされているのである。
[0072]
 キャリア36は、アクスル34を保持するハブ部56の外方に短円筒状のコイル保持部58を有しているこのコイル保持部58の外周部には、電磁モータを構成する複数のコイル60が保持されている。一方、ホイール本体30のリム部には、それの内周面に沿って、複数の磁石62が配設されている。それら、複数のコイル60および複数の磁石62は互いに向かい合っており、それらは、ブラシレスDCモータを構成するものとなっている。つまり、車輪14は、ホイール本体30の内部に仕込まれたインホイールモータによって回転駆動され、そのインホイールモータは、当該車両における駆動装置64として機能するものとされている。なお、詳しい説明は省略するが、インホイールモータは、車輪14の回転によって発電機としても機能する。このモータが起電力によって発生させる電流を回生することで、駆動装置64は、回生ブレーキ装置としても機能するようにされているのである。
[0073]
 また、アクスル34には、ブレーキディスク66が固定されている。一方、キャリア36には、ブレーキパッドを保持するキャリパ装置68が固定されている。キャリパ装置68は、電磁モータの力によってブレーキパッドをブレーキディスク66に押し付けるようにされている。つまり、本車両では、それらブレーキディスク66,キャリパ装置68によって構成されるディスク型の制動装置70を有しているのである。
[0074]
 次に、前輪12F,後輪12Rに関して説明すれば、図4から解るように、車輪12は、ホイール本体80と、タイヤ82とから構成されている。ホイール本体80は、1対の液圧式のショックアブソーバ84によって、左右から挟持されている。詳しく言えば、ホイール本体80のハブ部86に設けられたアクスル88が、1対のショックアブソーバ84の各々の下端部に設けられた軸受部90によって回転可能に保持されていることで、車輪12は回転可能とされているのである。
[0075]
 1対のショックアブソーバ84の各々の上端部は、車幅方向に延びる支持板92に固定されており、支持板92は、1対のショックアブソーバ84の上端部を繋ぐものとなっている。支持板92には、軸94が固定的に付設されており、その軸94が、車体に設けられた軸受部96に回転可能に保持されている。軸94は、軸受部96から上方に延びだしており、その延びだした部分を転舵装置98が回転させることで、車輪12は、転舵される。この転舵装置98は、電磁モータを有し、その電磁モータの作動が制御されることで、車輪12を任意の転舵角で転舵するように構成されている。なお、転舵装置98は、車輪12が左右ともに90°以上転舵されないようにするためのストッパを有している。
[0076]
 1対のショックアブソーバ84の各々は、ロアチューブ100とアッパチューブ102とを有し、それらが相対移動可能とされていることで、伸縮可能とされている。ロアチューブ100には、下部リテーナ104が固定されており、1対のショックアブソーバ84の各々の下部リテーナ104と上記支持板92によって、1対のサスペンションスプリング108の各々が挟持されている。このような構成により、車輪12は、弾性的に上下に揺動可能とされているのである。
[0077]
 ≪車両運動制御システムの構成≫
 本車両の運動は、図2に全体構成を示す車両運動制御システムによって制御される。このシステムは、当該システムの中核をなす制御装置としての電子制御ユニット(以下、「ECU」と略す)130を備えている。この、ECU130は、コンピュータを主体とする装置であり、左輪駆動装置[D L]64L,右輪駆動装置[D R]64R,左輪制動装置[B L]70L,右輪制動装置[B R]70R,左輪ばね支持位置調整装置[H L]44L,右輪ばね支持位置調整装置[H R]44R,前輪転舵装置[S F]98F,後輪転舵装置[S R]98Rを制御することで、当該車両の運動を制御するように構成されている。ちなみに、ECU130は、それら各装置の電磁モータの作動の制御のためのドライバ回路をも有している。
[0078]
 なお、本車両運動システムは、制御のためのパラメータを取得するデバイスとして、種々のセンサを備えている。具体的には、車両の走行速度(車速)vを検出するための車速センサ[v]132,ステアリングホイール20の操作角θを検出するためのステアリングセンサ[θ]134,アクセルペダル22の操作量a Oを検出するためのアクセルセンサ[a O]136,ブレーキペダル24の操作量b Oを検出するためのブレーキセンサ[b O]138,車体に生じている横加速度Gyを検出するための横加速度センサ[Gy]140,車両のヨーレートγを検出するためのヨーレートセンサ[γ]142,左輪側,右輪側それぞれの上記ばね支持位置h L,h Rを検出するための左輪ばね支持位置センサ[h L]144Lおよび右輪ばね支持位置センサ[h R]144R,前輪の転舵量である前輪転舵角δ Fを検出するための前輪転舵角センサ[δ F]146F,後輪の転舵量である後輪転舵角δ Rを検出するための後輪転舵角センサ[δ R]146Rが、車体に設けられており、それらのセンサがECU130に繋げられている。なお、横加速度センサ[Gy]は、車体に実際に生じている横加速度Gyを検出するためのものであるが、車両に実際に生じる横加速度Gyは、互いに反対方向の横加速度Gyであるため、本車両運動システムの制御では、車体に生じている横加速度Gyを、車両に実際に生じている横加速度Gyとして扱って、車両の運動制御を行うようにされている。
[0079]
 ≪車両運動制御≫
 a)加減速制御
 本車両の運動の制御のうち、車両を加速させる制御および車両を減速させる制御である加減速制御は、以下のように行われる。車両を加速させる場合には、運転者によってアクセルペダル22が操作されるため、アクセルセンサ136によって検出されたアクセルペダル22の操作量a Oに基づいて、次式(1)に従って、車両に与えられるべき駆動力F D,すなわち、左右の車輪14L,14Rに与えられる駆動力F Dが決定される。K Dは、駆動力F Dを決定するための駆動力ゲインである。
  F D=K D・a O ・・・(1)
一方で、車両を減速させる場合には、運転者によってブレーキペダル24が操作されるため、ブレーキセンサ138によって検出されたブレーキペダル24の操作量b Oに基づいて、次式(2)に従って、車両に与えられるべき制動力F B,すなわち、左右の車輪14L,14Rに与えられる制動力F Bが決定される。K Bは、制動力F Bを決定するための制動力ゲインである。
  F B=K B・b O ・・・(2)
なお、上記駆動力ゲインK D,制動力ゲインK Bは、定数であってもよく、また、何らかのパラメータに基づいて変化するようなものであってもよい。
[0080]
 加減速制御では、上記駆動力F Dと上記制動力F Bとを一元化して扱うため、駆制動力Fが、次式(3)に従って決定される。
  F=F D-F B ・・・(3)
つまり、F>0の場合には、車両に駆動力Fを与えるものとし、F<0の場合には、車両に制動力Fを与えるもとされる。次いで、その駆制動力Fを左輪,右輪に分担させるべく、次式(4),(5)に従って、左輪駆制動力F L,右輪駆制動力F Rが決定される。
  F L=F/2 ・・・(4)
  F R=F/2 ・・・(5)
[0081]
 上記左輪駆制動力F L,右輪駆制動力F Rに基づいて、それら駆制動力F L,F Rがそれぞれ得られるように、駆動装置64L,64R,制動装置70L,70Rが制御される。詳しく説明すれば、F L>0の場合には、左輪駆制動力F Lに応じた大きさの電流が、バッテリから左輪駆動装置64Lの電磁モータに供給される。一方、F L<0の場合は、以下のようにされる。駆動装置64は、先に説明したように、回生ブレーキ装置としての機能を有しているため、左輪駆制動力F Lが回生制動力で賄える場合には、左輪駆制動力F Lに応じた大きさの電流が左輪駆動装置64Lの電磁モータによって発電されてバッテリに回生されるように、左輪駆動装置64Lが制御される。左輪駆制動力F Lが回生制動力で賄えない場合には、その時点で最大の回生制動力が得られるように左輪駆動装置64Lが制御され、その最大の回生制動力によっては賄えない分に応じた制動力が得られるように、左輪制動装置70Lの電磁モータにその制動力に応じた大きさの電流が供給される。右輪14Rについては、左輪14Lと同様であるので、ここでの説明は省略する。
[0082]
 なお、後に詳しく説明するが、上記左輪駆制動力F L,右輪駆制動力F Rは、旋回制御によって必要とされる左右輪駆制動力差ΔFに基づく補正が、次式(6),(7)に従ってなされる。
  F L=F L+ΔF/2 ・・・(6)
  F R=F R-ΔF/2 ・・・(7)
したがって、車両旋回時には、駆動装置64L,64R,制動装置70L,70Rの制御は、補正後の左輪駆制動力F L,右輪駆制動力F Rに基づいて行われる。
[0083]
 b)旋回制御
 本車両運動制御では、車両の旋回時において、前輪12Fの転舵角である前輪転舵角δ F、後輪12Rの転舵角である後輪転舵角δ Rのそれぞれの目標が決定されて、前輪転舵量制御,後輪転舵量制御がなされ、左輪14L,右輪14Rの各々に与えられるべき駆制動力F L,右輪駆制動力F Rの差ΔFが決定されて、左右輪駆制動力差制御がなされる。なお、旋回制御は、ステアリングホイール20の操作角θが0である場合は、車両を直進させるための制御となる。
[0084]
 i)前輪転舵量制御
 前輪12Fの転舵角δ Fの制御は、ステアリングホイール20の操作量である操作角θに基づいて行われる。まず、ステアリングセンサ134によって検出されている操作角θに基づいて、次式(8)に従って、車両旋回において車両に生じるべき横加速度Gyである目標横加速度Gy *が決定される。つまり、目標横加速度Gy *が上記操作角θに応じた大きさに決定される。ちなみに、K Gは、目標横加速度Gy *を決定するための横加速度ゲインであり、定数であってもよく、何らかのパラメータによって値が変化するようなものであってもよい。
  Gy *=K G・θ ・・・(8)
車両に実際に生じている実際の横加速度(実横加速度)Gyは、横加速度センサ140の検出値から取得されており、上記目標横加速度Gy *に対する実横加速度Gyの偏差である横加速度偏差ΔGyが、次式(9)に従って認定される。
  ΔGy=Gy *-Gy ・・・(9)
[0085]
 そして、上記横加速度偏差ΔGyに基づくフィードバック制御則に従って、前輪転舵角δ Fの目標となる目標前輪転舵角δ F *が決定される。詳しく言えば、PID制御則に基づく次式(10)に従って、目標前輪転舵角δ F *が決定される。
[数1]


上記式(10)の右辺第1項,第2項,第3項は、それぞれ、比例項(P項),積分項(I項),微分項(D項)であり、P F,I F,D Fは、目標前輪転舵角δ F *を決定するための比例ゲイン,積分ゲイン,微分ゲインである。なお、それらゲインP F,I F,D Fは、いずれも、定数であってもよく、何らかのパラメータによって値が変化するようなものであってもよい。目標前輪転舵角δ F *の決定後、前輪転舵角センサ146Fによって検出されている実際の前輪転舵角δ Fが、その目標前輪転舵角δ F *となるように、前輪転舵装置98Fの有する電磁モータへの供給電流量が決定され、その電流量の電流がその電磁モータに供給される。なお、上記制御方法に代えて、上記式(10)によって、直接、上記電磁モータへの供給電流量を決定し、その電流量の電流が、電磁モータに供給されるような制御を行うようにしてもよい。
[0086]
 ii)左右輪駆制動力差制御
 左輪14Lの駆制動力F Lと右輪14Rの駆制動力F Rに駆制動力差ΔFをつける制御は、ステアリングホイール20の操作量である操作角θと、車両が走行している速度vとに基づいて行われる。まず、ステアリングセンサ134によって検出されている操作角θと、車速センサ132によって検出されている車速vとに基づいて、次式(11)に従って、車両旋回において実現されるべきヨーレートγである目標ヨーレートγ *が決定される。つまり、目標ヨーレートγ *が上記操作角θを車速vで除したものに応じた大きさに決定される。ちなみに、Kγは、目標ヨーレートγ *を決定するためのヨーレートゲインであり、定数であってもよく、何らかのパラメータによって値が変化するようなものであってもよい。
  γ *=Kγ・θ・v ・・・(11)
実際の車両のヨーレート(実ヨーレート)γは、ヨーレートセンサ142の検出値から取得されており。上記目標ヨーレートγ *に対する実ヨーレートγの偏差であるヨーレート偏差Δγが、次式(12)に従って認定される。
  Δγ=γ *-γ ・・・(12)
[0087]
 そして、上記ヨーレート偏差Δγに基づくフィードバック制御則に従って、実現されるべき左右輪駆制動力差ΔFが決定される。詳しく言えば、PID制御則に基づく次式(13)に従って、適切な左右輪駆制動力差ΔFが決定される。
[数2]


上記式(13)の右辺第1項,第2項,第3項は、それぞれ、比例項(P項),積分項(I項),微分項(D項)であり、P LR,I LR,D LRは、上記左右輪駆制動力差ΔFを決定するための比例ゲイン,積分ゲイン,微分ゲインである。なお、それらゲインP LR,I LR,D LRは、いずれも、定数であってもよく、何らかのパラメータによって値が変化するようなものであってもよい。左右輪駆制動力差ΔFの決定後、その左右輪駆制動力差ΔFに基づいて、先に説明したように、上記左輪駆制動力F L,右輪駆制動力F Rの補正が行われる。ちなみに、ステアリングホイール20の操作角θが0である場合、つまり、ステアリングホイールが操作されていない場合には、左右輪駆制動力差ΔFは、0に決定されることになる。
[0088]
 iii)後輪転舵量制御
 後輪12Rの転舵角δ Rの制御は、前輪転舵量制御において認定された横加速度偏差ΔGyと、左右輪駆制動力差制御において認定されたヨーレート偏差Δγに基づいて行われる。まず、それら横加速度偏差ΔGy,ヨーレート偏差Δγに基づいて、次式(14)に従って、公転求心加速度偏差ΔGoが決定される。
  ΔGo=ΔGy-v・Δγ ・・・(14)
この公転求心加速度偏差ΔGoは、目標公転求心加速度Go *に対する、実際の公転求心加速度(実公転求心加速度)Goの偏差と等価なものと考えることができる。ちなみに、目標公転求心加速度Go *は、次式(15)で、実公転求心加速度Goは、次式(16)で、それぞれ表わされるものである。
  Go *=Gy *-v・γ * ・・・(15)
  Go=Gy-v・γ ・・・(16)
[0089]
 そして、上記公転求心加速度偏差ΔGoに基づくフィードバック制御則に従って、後輪転舵角δ Rの目標となる目標後輪転舵角δ F *が決定される。詳しく言えば、PID制御則に基づく次式(17)に従って、後輪目標転舵角δ R *が決定される。
[数3]


上記式(17)の右辺第1項,第2項,第3項は、それぞれ、比例項(P項),積分項(I項),微分項(D項)であり、P R,I R,D Rは、目標後輪転舵角δ F *を決定するための比例ゲイン,積分ゲイン,微分ゲインである。なお、それらゲインP R,I R,D Rは、いずれも、定数であってもよく、何らかのパラメータによって値が変化するようなものであってもよい。目標後輪転舵角δ R *の決定後、後輪転舵角センサ146Rによって検出されている実際の後輪転舵角δ Rが、その目標後輪転舵角δ R *となるように、後輪転舵装置98Rの有する電磁モータへの供給電流量が決定され、その電流量の電流がその電磁モータに供給される。なお、上記制御方法に代えて、上記式(17)によって、直接、上記電磁モータへの供給電流量を決定し、その電流量の電流が、電磁モータに供給されるような制御を行うようにしてもよい。
[0090]
 iv)旋回制御による前輪,後輪の転舵および左右輪駆制動力差の様子
 図5に、上記旋回制御における前輪および後輪の転舵の様子と、左右輪駆制動力差の様子とを、概念的に示す。なお、図5は、ステアリングホイール20を反時計回りに操作した状態、つまり、左旋回時の様子であり、図5(a)は、比較的車速vが高い場合(以下、便宜的に「高速時」という場合がある)を、図5(b)は、比較的車速vが低い場合(以下、便宜的に「低速時」という場合がある)を、それぞれ示す。ちなみに、ステアリングホイール20の操作角θは、図5(a)の場合も、図5(b)の場合も、互いに同じである。なお、以下の説明において、便宜的に、転舵輪である前輪12F,後輪12Rが、上方からみて反時計回りに回転するように転舵される場合を、「左方に転舵される」といい、時計回りに回転するように転舵される場合を、「右方に転舵される」ということとする。
[0091]
 図から解るように、高速時においても低速時においても、当然ながら、前輪12Fは、左方に転舵される。高速時においても低速時においても、上記式(8)により、ステアリングホイール20の操作角θが同じであれば、目標横加速度Gy *は同じであるが、前輪転舵角δ Fが一定である場合には、一般的には、車速vが高い程、前輪12Fの転舵によって得られる横加速度Gyが大きい。したがって、図5に示すように、本旋回制御では、概して、高速時のほうが低速時に比べて前輪転舵角δ Fが小さくなるように、上記各種のゲインが設定されている。
[0092]
 また、上記式(11)に従い、ステアリングホイール20の操作角θが一定である場合には、高速時のほうが低速時に比較して目標ヨーレートγ *が小さくされている。そのため、図5に示すように、高速時のほうが、低速時に比較して、左右輪駆制動力差ΔFは小さくなっている。ちなみに、図では、便宜的に、左右輪駆制動力差ΔFの1/2ずつが、左輪14Lを制動する方向に付与され、右輪14Rを駆動する方向に付与されるように示されている。車両が加速中であるか減速中であるかによって駆動力差となるか制動力差になるかが決まるが、加速中である場合には、左輪14Lの駆動力が右輪14Rの駆動力より小さくされ、逆に、減速中である場合には、左輪14Rの制動力が右輪14Rの制動力よりも大きくされる。このように、本旋回制御では、車速vが高いときには、比較的小さなヨーレートの旋回を、車速vが低いときには、比較的大きなヨーレートの旋回が行われるように、上記各種のゲインが設定されている。
[0093]
 後輪12Rは、ある程度成り行きで転舵されるが、簡単にいえば、上記式(14)~(17)を参照して解るように、車両に生じる公転求心加速度Goがそれの目標となる目標公転求心加速度Go *となるように、後輪転舵角δ Rが転舵される。具体的に言えば、実横加速度Gyが目標横加速度Gy *よりも小さくかつ実ヨーレートγが目標ヨーレートγ *よりも大きい場合には、後輪12Rは前輪12Fと同じ方向に転舵される。つまり、後輪12Rは前輪12Fと同相に転舵される。逆に、実横加速度Gyが目標横加速度Gy *よりも大きくかつ実ヨーレートγが目標ヨーレートγ *よりも小さい場合には、後輪12Rは前輪12Fは逆の方向に転舵される。つまり、後輪12Rは前輪12Fと逆相に転舵されるのである。先に説明したように、本旋回制御では、車速vが高いときには、比較的小さなヨーレートの旋回を、車速vが低いときには、比較的大きなヨーレートの旋回が行われるにされているため、図5に示すように、車速vが高いときには、概して、前輪12Fと同じ方向である左方に転舵される。上述のことを換言すれば、後輪転舵角δ Rは、前輪12Fの転舵による実横加速度Gyの目標横加速度Gy *への接近をアシストするように、また、左右輪駆制動力差ΔFの制御による実ヨーレートγの目標ヨーレートγ *への接近をアシストするような角度とされるのである。このような後輪12Rの転舵が行われるように、上記各種のゲインが設定されている。
[0094]
 v)旋回制御による効果
 車両に生じる横加速度Gyが、ある目標横加速度Gy *となるような、かつ、ヨーレートγがある目標ヨーレートγ *となるような旋回を行うとする。この旋回を前輪12Fの転舵によってのみ行わせる場合と、それと同じ旋回を上記旋回制御の下で行わせる場合とで、横加速度Gyおよびヨーレートγの時間的変化を比較する。図6は、この比較の結果を示すグラフであり、図6(a)は、横加速度Gyについての比較を、図6(b)は、ヨーレートγについての比較を、それぞれ示している。いずれの図も、実線が、上記旋回制御下で旋回する場合の変化を表しており、破線が、前輪12Fの転舵のみによって旋回する場合の変化を表している。ちなみに、いずれの場合のいずれの変化も、ある操作角θまでステアリングホイール20をステップ的に操作することを前提とした変化である。
[0095]
 図6(a)から解るように、上記旋回制御下の旋回では、横加速度Gyが比較的短時間で目標横加速度Gy *にまで到達するのに対して、前輪12Fの転舵のみによる旋回では、横加速度Gyが目標横加速度Gy *にまで到達するのに比較的長い時間がかかる。また、図6(b)から解るように、横加速度Gyと同様に、上記旋回制御下の旋回では、ヨーレートγが比較的短時間で目標ヨーレートγ *にまで到達するのに対して、前輪12Fの転舵のみによる旋回では、ヨーレートγが目標ヨーレートγ *にまで到達するのに比較的長い時間がかかる。この結果から、上記旋回制御によれば、目標横加速度Gy *の変化に対する追従性(横加速度Gyについての応答性)、目標ヨーレートγ *の変化に対する追従性(ヨーレートγについての応答性)の両方ともが良好な旋回が実現されることになる。
[0096]
 次に、図7を参照しつつ、ある時間内でのレーンチェンジを行った場合における、上記旋回制御下での横加速度Gyおよびヨーレートγの変化と、前輪12Fの転舵のみによる場合のそれらの変化とを比較する。ちなみに、図7は、2秒でレーンチェンジを行った場合の変化であり、図7(a)が横加速度Gyの変化を示し、図(b)がヨーレートγの変化を示している。また、図では、目標横加速度Gy *若しくは目標ヨーレートγ *の変化が一点鎖線で表わされており、上記旋回制御下での横加速度Gy若しくはヨーレートγの変化が実線で、前輪12Fの転舵のみによる場合のそれらの変化が破線で、それぞれ表わされている。
[0097]
 図7(a)から解るように、レーンチェンジにおいても、上記旋回制御によれば、前輪12Fの転舵のみによって行う場合と比較して、目標横加速度Gy *の変化に対する追従性が良好であり、また、図7(b)から解るように、目標ヨーレートγ *の変化に対する追従性が良好である。
[0098]
 c)分担荷重比変更制御
 以下、車体の重量のうちの前輪12Fおよび後輪12Rが分担する分を、前後輪分担荷重W FRと、左輪14Lおよび右輪14Rが分担する分を、左右輪分担荷重W LRと、それぞれ表わし、前後輪分担荷重W FRに対する左右輪分担荷重W LRの比を、分担荷重比Rw(=W LR/W FR)と表わすこととする。本車両運動制御では、その分担荷重比Rwの制御が行われる。
[0099]
 i)分担荷重比変更制御の内容
 先に説明したように、左輪14L,右輪14Rの各々を支持するサスペンションスプリング46の上端部は、それぞれ、左輪ばね支持位置調整装置44L,右輪ばね支持位置調整装置44Rを介して車体に取り付けられている。車体を剛体として考えれば、例えば、それらばね支持位置調整装置44によって、サスペンションスプリング46の各々の上端部の車体に対する位置、つまり、ばね支持位置を下降させれば、サスペンションスプリング46が押し縮められ、サスペンションスプリング46のばね反力が増加するとともに、車体がある程度上昇する。それに伴って、前輪12F,後輪12Rを支持するサスペンションスプリング108は伸ばされて、それのばね反力は減少する。この結果、前後輪分担荷重W FRは減少し、左右輪分担荷重W LRが増加することで、分担荷重比Rwが大きくなる。逆に、ばね支持位置調整装置44によって、ばね支持位置を上昇させれば、左輪14L,右輪14Rを支持するサスペンションスプリング46が伸ばされるとともに、前輪12F,後輪12Rを支持するサスペンションスプリング108が縮められる。その結果、前後輪分担荷重W FRは増加し、左右輪分担荷重W LRが減少することで、分担荷重比Rwが大きくなる。本車両では、このようにして、分担荷重比Rwが変更される。
[0100]
 上記のことに鑑みれば、左輪ばね支持位置調整装置44L,右輪ばね支持位置調整装置44Rは、それぞれ、左輪14Lの車体との上下方向における距離および右輪14Rと車体との上下方向における距離を変更する向きの力を発生させることで、分担荷重比Rwを変更する分担荷重比変更装置として機能するものとなっているのである。
[0101]
 左輪14Lに設けられたサスペンションスプリング46の上端部と車体の取付部との間隔(左輪側取付間隔)h L,右輪14Rに設けられたサスペンションスプリング46の上端部と車体の取付部との間隔(右輪側取付間隔)h Rは、それぞれ、左輪ばね支持位置センサ144L,右輪ばね支持位置センサ144Rによって検出されている。分担荷重比変更制御は、具体的には、それら左輪側取付間隔h L,右輪側取付間隔h Rが、それぞれ、目標左輪側取付間隔h L *,目標右輪側取付間隔h R *となるように、左輪ばね支持位置調整装置44L,右輪ばね支持位置調整装置44Rの各々が有する電磁モータへの電流供給が制御される。
[0102]
 本分担荷重比変更制御は、車速vに基づいて行われる。詳しく言えば、上記分担荷重比Rwが、車速vが高い場合に、低い場合に比べて小さくなるように制御される。具体的には、分担荷重比Rwが、車速vに応じて、図8に示すような変化を示すように制御される。具体的には、実現されるべき分担荷重比Rwが、車速vに応じて設定されてECU130内に格納されたマップデータを参照しつつ決定され、その決定された分担荷重比Rwに基づいて、目標左輪側取付間隔h L *,目標右輪側取付間隔h R *が、次式(18),(19)に従って決定される。
  h L *=f L(Rw) ・・・(18)
  h R *=f R(Rw) ・・・(19)
なお、f L(Rw),f R(Rw)は、分担荷重比Rをパラメータとして目標左輪側取付間隔h L *,目標右輪側取付間隔h R *を決定するための関数であり、ECU130に格納されている。そして、目標左輪側取付間隔h L *,目標右輪側取付間隔h R *が決定された後、左輪側取付間隔h L,右輪側取付間隔h Rが、その決定された目標左輪側取付間隔h L *,目標右輪側取付間隔h R *となるように、左輪ばね支持位置調整装置44L,右輪ばね支持位置調整装置44Rが制御されるのである。
[0103]
 なお、図8に示すような分担荷重比Rwの変化について、さらに詳しく言えば、分担荷重比Rwは、車速vがある閾車速(第1閾車速)v 1を超えた場合に、車速vの増大に応じて連続的に減少するように制御される。また、車速vがある閾車速(第2閾車速)v 2より低い場合には、前後輪分担荷重W FRが左右輪分担荷重W LRよりも小さく、車速vがその閾速v 2よりも高い場合には、前後輪分担荷重W FRが左右輪分担荷重W LRよりも大きくなる。ちなみに、車速vがある閾車速v 2となる場合は、前後輪分担荷重W FRと左右輪分担荷重W LRとが互いに等しく、分担荷重比Rwが1となる。
[0104]
 上記分担荷重比変更制御によれば、車体の荷重は、図9に概念的に示すように、前輪12Fおよび後輪12Rと、左輪14Lおよび右輪14Rとに分担される。図9(a)は、車速vが高い場合の荷重の分担の様子を、図9(b)は、車速vが高い場合の荷重の分担の様子を、それぞれ表している。ちなみに、説明を簡単にするため、図では、前輪12Fの分担荷重と後輪12Rの分担荷重とが互いに等しいものと扱っている。
[0105]
 i)分担荷重比変更制御による効果
 本車両は、菱形車輪配置の車両であることから、特に高速時において、高い直進安定性が求められている。そのため、高速時に、分担荷重比Rwを小さくすることによって、つまり、前後輪分担荷重W FRを比較的大きくすることによって、直進安定性を高めることが可能である。また、低速時に、分担荷重比Rwを大きくすることによって、つまり、左右輪分担荷重W LRを比較的大きくすることによって、車両の駆動性能を向上させることが可能となる。
[0106]
 旋回時の車両の運動に関し、図10を参照しつつ説明すれば、以下のようである。なお、図10(a)は、高速時の運動を説明するための図であり、左側の図が、分担荷重比Rwを1とした場合を、右側の図が、分担荷重比Rwを小さくした場合を、それぞれ示す。図10(b)は、低速時の運動を説明するための図であり、左側の図が、分担荷重比Rwを1とした場合を、右側の図が、分担荷重比Rwを大きくした場合を、それぞれ示す。
[0107]
 高速時には、先に説明したように、比較的ヨーレートγの小さな旋回が望まれ、前輪12Fと後輪12Rとが、互いに同相に転舵させられる。その際、図10(a)から解るように、左輪14Lおよび右輪14Rと路面との摩擦(白抜き矢印)は、車両の旋回に対する大きな抵抗となる。そのため、所望の横加速度Gyを得ようとする場合、前輪転舵角δ F,後輪転舵角δ Rが、ともに、大きくなってしまう。上記分担荷重比変更制御を行うことによって、高速時に、左右輪分担荷重W LRが比較的小さくされるため、左輪14L,右輪14Rの接地荷重が減少し、車両の旋回に対する抵抗が小さくなる。その結果、前輪転舵角δ F,後輪転舵角δ Rが小さくてすむため、旋回時の負担を軽減させることが可能となる。また、一方で、前後輪分担荷重W FRが比較的大きくされるため、前輪12F,後輪12Rによって発生させられる横加速度Gy増加することになり、そのことも、前輪転舵角δ F,後輪転舵角δ Rを小さくすることに寄与している。
[0108]
 低速時には、先に説明したように、比較的ヨーレートγの大きな旋回が望まれる。その際、図10(b)から解るように、前輪12Fおよび後輪12Rと路面との摩擦(白抜き矢印)は、車両の旋回に対する大きな抵抗となる。そのため、所望のヨーレートγの旋回を行おうとする場合には、左右輪駆制動力差ΔFを大きくしなければならない(太い黒矢印参照)。上記分担荷重比変更制御を行うことによって、低速時に、前後輪分担荷重W FRが比較的小さくされるため、前輪12F,後輪12Rの接地荷重が減少し、車両の旋回に対する抵抗が小さくなる。その結果、左右輪駆制動力差ΔFを小さくすることができる。なお、先に説明したように、後輪12Rの転舵の向きは、目標後輪転舵角δ F *を決定するための各種ゲインによって、いずれの方向になるかが決まるが、図10(b)に示すように、前輪12F,後輪12Rの車両旋回に対する抵抗の減少により、上記分担荷重比変更制御を行わない場合とは逆に、前輪12Fと同相に転舵される場合もある。
[0109]
 図11は、車速vが100Km/hのときの2秒間レーンチェンジにおいて、上記分担荷重比変更制御を行う場合と、行わない場合との比較を説明するためのグラフ群である。また、図12は、車速vが10Km/hのときの2秒間レーンチェンジにおいて、上記分担荷重比変更制御を行う場合と、行わない場合との比較を説明するためのグラフ群である。各図には、レーンチェンジの際の目標横加速度Gy *,目標ヨーレートγ *,前輪転舵角δ F,後輪転舵角δ R,左輪についての左右輪駆制動力差ΔFの成分(ΔF/2)のそれぞれの変化についてのグラフによって構成されている。なお、各グラフは、レーンチェンジの際中の最大のヨーレートが、車速vが100Km/hのときも10Km/hのときも互いに同じとなり、最大の横加速度Gyが、車速vが100Km/hのときに10Km/hのときの約10倍となるような条件のレーンチェンジにおける結果を示している。なお、車速vが100Km/hのときには、分担荷重比Rwが、約0.74と、車速vが10Km/hのときには、分担荷重比Rwが、約1.35となっている。ちなみに、前輪転舵角δ F,後輪転舵角δ R,左輪についての左右輪駆制動力差ΔFの成分(ΔF/2)のそれぞれのグラフにおける実線が、分担荷重比変更制御を行った場合の変化を、破線が、分担荷重比変更制御を行わなかった場合の変化を、それぞれ表している。
[0110]
 図11から解るように、高速時においては、分担荷重比Rwが小さくされて左右輪分担荷重W LRが比較的小さくされるため、分担荷重比変更制御を行った場合に、行わなかった場合に比較して、前輪転舵角δ F,後輪転舵角δ Rが小さくなっている。また、図12から解るように、低速時においては、分担荷重比Rwが大きくされて前後輪分担荷重W FRが比較的小さくされるため、左輪についての左右輪駆制動力差ΔFの成分(ΔF/2)の成分が小さくなる。つまり、左右輪駆制動力差ΔFが小さくなる。なお、低速時においては、先に説明した理由から、後輪12Rの転舵の向きが、分担荷重比変更制御を行うことによって、前輪12Fの転舵の向きと同じ向きになっている。
[0111]
 ≪車両運動制御プログラムおよび制御装置の機能構成≫
 本車両運動制御システムによる車両運動制御は、制御装置としてのECU130が、図13にフローチャートを示す車両運動制御プログラムを実行することによって行われる。このプログラムは、短い時間ピッチ(例えば、数~数十μ秒)で繰り返し行われる。このプログラムでは、まず、ステップ1(以下、ステップを「S」と略す)において、車速vが取得され、次いで、S2において、ステアリングホイール20の操作角θが、取得される。それらの取得の後、S3において、旋回制御が、続くS4において、加減速制御が、さらに続くS5において、分担荷重比変更制御が行われる。
[0112]
 S3の旋回制御では、図14にフローチャートを示す旋回制御サブルーチンが実行される。このサブルーチンにおいては、S10において、前輪転舵量制御が、続くS20において、左右輪駆制動力差制御が、さらに続くS30では、後輪転舵量制御が行われる。それら、前輪転舵量制御,左右輪駆制動力差制御,後輪転舵量制御は、それぞれ、図15にフローチャートを示す前輪転舵量制御サブルーチン、図16にフローチャートを示す左右輪駆制動力差制御サブルーチン、図17にフローチャートを示す後輪転舵量制御サブルーチンがそれぞれ実行される。それらのサブルーチンに従う処理については、先に詳しく説明されているので、ここでは、説明は省略することとする。
[0113]
 上記S4の加減速制御では、図18にフローチャートを示す加減速制御サブルーチンが実行され、上記S5の分担荷重比変更制御では、図19にフローチャートを示す分担荷重比変更制御サブルーチンが実行される。それらのサブルーチンに従う処理についても、先に詳しく説明されているので、ここでの説明は省略することとする。
[0114]
 上記車両運動制御プログラムを実行するECU130は、図20に示すように、上記各制御を実行する機能部を有していると考えることができる。詳しく言えば、ECU130は、上記旋回制御を実行する機能部としての旋回制御部160と、上記加減速制御を実行する機能部としての加減速制御部162と、上記分担荷重比変更制御を実行する機能部としての分担荷重比変更制御部164とを有していると考えることができるのである。また、上記旋回制御部160は、上記前輪転舵量制御を実行する機能部としての前輪転舵量制御部166と、上記左右輪駆制動力差制御を実行する機能部としての左右輪駆制動力差制御部168と、上記後輪転舵量制御を実行する機能部としての後輪転舵量制御部170とを有していると考えることができるのである。

符号の説明

[0115]
 10:車体  12F:前輪  12R:後輪  14L:左輪  14R:右輪  20:ステアリングホイール(ステアリング操作部材)  44L:左輪ばね支持位置調整装置(分担荷重比変更装置)  44R:右輪ばね支持位置調整装置(分担荷重比変更装置)  46:サスペンションスプリング  64L:左輪駆動装置  64R:右輪駆動装置  70L:左輪制動装置  70R:右輪制動装置  98F:前輪転舵装置  98R:後輪転舵装置  130:電子制御ユニット(ECU)(制御装置)  164:分担荷重比変更制御部  166:前輪転舵量制御部  168:左右輪駆制動力差制御部  170:後輪転舵量制御部

請求の範囲

[請求項1]
 自身の前方部に配置された単一の前輪と、その前輪よりも後方において自身の左右にそれぞれ配置された左輪および右輪と、それら左輪および右輪よりも後方に配置された単一の後輪とを有する車両の運動を制御するための車両運動制御システムであって、
 前記前輪を転舵させる前輪転舵装置と、
 前記車両を駆動および制動するための力である駆制動力を前記左輪,前記右輪に対してそれぞれ付与する左輪駆制動装置および右輪駆制動装置と、
 前記車両の車体の重量のうちの前記前輪および前記後輪が分担する分である前後輪分担荷重に対しての、前記左輪および前記右輪が分担する分である左右輪分担荷重の比である分担荷重比を変更する分担荷重比変更装置と、
 前記車両の制御を司る制御装置と
 を備え、
 前記制御装置が、
 前記分担荷重比変更装置を制御することで、前記分担荷重比を制御する分担荷重比変更制御部を有する車両運動制御システム。
[請求項2]
 前記分担荷重比変更制御部が、前記車両の走行速度に基づいて前記分担荷重比を制御するように構成された請求項1に記載の車両運動制御システム。
[請求項3]
 前記分担荷重比変更制御部が、前記車両の走行速度が高い場合に、低い場合に比べて、前記分担荷重比が小さくなるように前記分担荷重比変更装置を制御するように構成された請求項2に記載の車両運動制御システム。
[請求項4]
 前記分担荷重比変更制御部が、前記車両の走行速度が設定閾速度より高い場合に前記前後輪分担荷重が前記左右輪分担荷重より大きくなるように、かつ、前記車両の走行速度が前記設定閾速度より低い場合に前記前後輪分担荷重が前記左右輪分担荷重より小さくなるように前記分担荷重比変更装置を制御するように構成された請求項2または請求項3に記載の車両運動制御システム。
[請求項5]
 前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置が、前記左輪,前記右輪に対して互いに独立して前記駆制動力を付与可能に構成されており、
 前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置を制御して前記左輪の駆制動力と前記右輪の駆制動力との差である左右輪駆制動力差を制御する左右輪駆制動力差制御部を有する請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
[請求項6]
 前記左右輪駆制動力差制御部が
 ステアリング操作部材の操作に基づいて、前記車両の旋回において実現されるべきヨーレートである目標ヨーレートを決定し、実際に前記車両に生じているヨーレートである実ヨーレートが前記目標ヨーレートに近づくように、前記左右輪駆制動力差を制御するように構成された請求項5に記載の車両運動制御システム。
[請求項7]
 前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、前記前輪転舵装置を制御して前記前輪の転舵量を制御する前輪転舵量制御部を有し、
 その前輪転舵量制御部が、ステアリング操作部材の操作に基づいて、前記車両の旋回において前記車両に生じるべき横加速度である目標横加速度を決定し、実際に前記車両に生じている横加速度である実横加速度が前記目標横加速度に近づくように、前記前輪の転舵量を制御するように構成された請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の車両運動制御システム。
[請求項8]
 前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、その後輪転舵装置を制御して前記後輪の転舵量を制御する後輪転舵量制御部を有する請求項7に記載の車両運動制御システム。
[請求項9]
 前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置が、前記左輪,前記右輪に対して互いに独立して前記駆制動力を付与可能に構成されており、
 前記制御装置が、
 前記車両の旋回時において、前記左輪駆制動装置および前記右輪駆制動装置を制御して前記左輪の駆制動力と前記右輪の駆制動力との差である左右輪駆制動力差を制御する左右輪駆制動力差制御部を有し、
 その左右輪駆制動力差制御部が
 ステアリング操作部材の操作に基づいて、前記車両の旋回において実現されるべきヨーレートである目標ヨーレートを決定し、実際に前記車両に生じているヨーレートである実ヨーレートが前記目標ヨーレートに近づくように、前記左右輪駆制動力差を制御するように構成された請求項8に記載の車両運動制御システム。
[請求項10]
 前記後輪転舵量制御部が、前記前輪転舵量制御部による制御によって実現される前記実横加速度の前記目標横加速度への接近と、前記左右輪駆制動力差制御部による制御によって実現される前記実ヨーレートの前記目標ヨーレートへの接近との少なくとも一方がアシストされるように、前記後輪の転舵量を制御するように構成された請求項9に記載の車両運動制御システム。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]

[ 図 10]

[ 図 11]

[ 図 12]

[ 図 13]

[ 図 14]

[ 図 15]

[ 図 16]

[ 図 17]

[ 図 18]

[ 図 19]

[ 図 20]