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1. WO2016088802 - MICROSPHÈRES THERMO EXPANSIBLES DE GRAND DIAMÈTRE ET PROCÉDÉ DE PRODUCTION DE CELLES-CI

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明 細 書

発明の名称 大径の熱発泡性マイクロスフェアー、及びその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012  

先行技術文献

特許文献

0013  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0014  

課題を解決するための手段

0015   0016   0017   0018   0019  

発明の効果

0020   0021   0022  

発明を実施するための形態

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060  

実施例

0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089  

産業上の利用可能性

0090   0091  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

明 細 書

発明の名称 : 大径の熱発泡性マイクロスフェアー、及びその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、熱発泡性マイクロスフェアー、及び熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法に関し、更に詳しくは、強度を有する大径の発泡粒子を形成することができる熱発泡性マイクロスフェアー、該熱発泡性マイクロスフェアーまたはその発泡粒子を含有する成形品等、並びに熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 熱発泡性マイクロスフェアー(「熱膨張性マイクロカプセル」といわれることもある。)は、発泡インクでの用途をはじめとして、軽量化を目的とした塗料やプラスチック成形品の充填剤など、種々の分野への用途展開が図られている。熱発泡性マイクロスフェアーは、通常、揮発性の液体発泡剤(「物理的発泡剤」または「揮発性膨張剤」等ということもある。)を重合体で包摂しマイクロカプセル化したものである。発泡剤としては、所望により、加熱時に分解してガスを発生する化学発泡剤が用いられることもある。熱発泡性マイクロスフェアーは、一般に、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合する方法により製造することができる。重合反応が進むにつれて、生成する重合体により外殻が形成され、その外殻内に発泡剤が包み込まれるようにして封入された構造をもつ熱発泡性マイクロスフェアーが得られる。
[0003]
 例えば、特許文献1には、重合体の軟化点以下の温度においてガス状になる揮発性の液体発泡剤をその中に包み込んで有する単細胞状の1~50μmの粒子サイズを有する熱可塑性樹脂状重合体の粒子(すなわち、熱発泡性マイクロスフェアー)が開示されている。特許文献1には、低沸点の脂肪族炭化水素等の発泡剤を単量体に添加し、この単量体混合物に油溶性触媒を混合し、次いで、分散剤を含有する水系分散媒体中に単量体混合物を攪拌しながら添加し、懸濁重合を行うことにより、熱可塑性樹脂からなる外殻中に発泡剤が封入された球状粒子を製造する方法が記載されており、具体例として、直径が約2~10ミクロン(実施例1~52、54、57、61~63)、約2~5ミクロン(実施例53)、約2~5ミクロン(実施例55)、約0.3~3ミクロン(実施例64)の膨張性粒子が記載されている。なお、特許文献1には、「しばしば50~1000ミクロンの範囲の大粒子を使用することが有利である」との記載もみられる。
[0004]
 熱発泡性マイクロスフェアーの外殻を形成する重合体としては、一般に、ガスバリア性が良好な熱可塑性樹脂が用いられる。外殻を形成する重合体は、加熱すると軟化する。発泡剤としては、該重合体の軟化点以下の温度でガス状になるものを選択する。熱発泡性マイクロスフェアーを加熱すると、発泡剤が気化して膨張する力が外殻に働くとともに、外殻を形成する重合体の弾性率が急激に減少する。その結果、ある温度を境にして、熱発泡性マイクロスフェアーの急激な膨張が起きる。この温度を発泡開始温度(「発泡温度」ということもある。以下、総称して、「発泡温度」ということがある。)という。すなわち、熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡温度に加熱すると、それ自体が膨張して、独立気泡体(「発泡粒子」、「発泡体粒子」、「中空粒子」、「独立発泡体」または「中空プラスチックバルーン」等ということがある。)を形成する。
[0005]
 熱発泡性マイクロスフェアーを形成するために行われる懸濁重合では、一般に、分散安定剤を含有する水系分散媒体中に、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を添加し、攪拌(かくはん)混合して、重合性混合物の微細な液滴を造粒し、次いで、昇温して懸濁重合を行う。重合性混合物の多くは、通常水に不溶性であるため、水系分散媒体中で油相を形成するので、攪拌混合することにより、微細な液滴に造粒される。懸濁重合により、この微細な液滴とほぼ同じ粒径の熱発泡性マイクロスフェアーが形成される。懸濁重合法においては、分散安定剤、安定助剤(「補助安定剤」ということもある。)、重合開始剤(「触媒」ということもある。)、重合助剤などの種々の添加剤の種類と含有量を適切に選択して組み合わせ、また、攪拌混合条件や重合条件等を適切に選択して組み合わせることによって、粒子形状や粒径分布を調整することが可能である。
[0006]
 熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡温度に加熱することにより独立気泡体を形成する特性を利用して、意匠性付与剤、機能性付与剤、軽量化剤などとして、広範な分野での用途展開が図られている。それぞれの用途分野において高性能化が要求されるのに伴い、熱発泡性マイクロスフェアーに対する要求水準も高くなってきている。例えば、熱発泡性マイクロスフェアーに対する要求性能として、加工特性の改善が挙げられる。また、熱可塑性樹脂に熱発泡性マイクロスフェアーを配合した組成物を、混練加工、カレンダー加工、押出加工、熱成形、スタンピング成形、または射出成形の成形を行い、その過程で熱発泡性マイクロスフェアーを発泡させることにより、軽量化や意匠性の施された成形物や成形品(シート等)を得る方法がある。また、熱発泡性マイクロスフェアーは、未発泡の状態でインクや塗料、プラスチックなどに配合されるだけではなく、用途によっては、発泡した状態で使用されることもある。すなわち、熱発泡性マイクロスフェアーが膨張した独立発泡体(中空プラスチックバルーン)は、極めて軽量であるため、例えば、塗料の充填剤やシート等の成形品の充填剤として用いることにより、塗膜や成形品の軽量化を図ることもある。
[0007]
 特許文献2には、粒子径の大きな熱膨張性マイクロカプセルを、凝集を抑制しながら生産性よく製造することのできる熱膨張性マイクロカプセルの製造方法が開示されている。すなわち、特許文献2は、基材樹脂に、ポリマーを含有するシェルにコア剤として揮発性液体を内包する熱膨張性マイクロカプセルを加えて発泡成形する方法によれば、熱膨張性マイクロカプセルのシェルが補強材のように働き、加熱すると分解してガスが発生する化学発泡剤を用いた場合等と比べて、繰り返し圧縮に対する耐疲労性、及び、強度が改善されること、しかしながら、熱膨張性マイクロカプセルを用いた場合には発泡成形体中の気泡を大きくすることが難しく、クッション性、制振性等の性能または軽量化が不充分となること、したがって、粒子径が大きく、発泡後に大きな気泡を形成することのできる熱膨張性マイクロカプセルが求められていることが記載されている。
[0008]
 そして、特許文献2には、得られる熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が40μm、好ましい上限が80μmであること、体積平均粒子径が40μm未満であると、熱膨張性マイクロカプセルを基材樹脂に配合して成形する場合に、発泡倍率が低く発泡成形体の気泡が小さすぎ、クッション性、制振性等の性能又は軽量化が不充分となることがあり、80μmを超えると、発泡倍率が高く発泡成形体の気泡が大きすぎ、繰り返し圧縮に対する耐疲労性、又は、強度が不充分となることが記載されている。特許文献2には、具体例として、平均粒子径が42~76μmである実施例及び同じく32~85μmである比較例が開示されている。
[0009]
 さらに、特許文献3には、耐熱・耐溶剤性に優れ、200℃以上の温度域においても優れた発泡性能を有する熱膨張性マイクロカプセルとして、ニトリル系モノマー15~75重量%、カルボキシル基を有するモノマー10~65重量%、アミド基を有するモノマー0.1~20重量%及び側鎖に環状構造物を有するモノマー0.1~20重量%より構成されるポリマーを外殻とし、発泡剤を内包する熱膨張性マイクロカプセルが開示されている。特許文献3には、熱膨張性マイクロカプセルの平均粒径について、約1~500μm、好ましくは約3~100μm、更に好ましくは5~50μmであることが記載され、具体例として、平均粒径が約12μm~約30μmである熱膨張性マイクロカプセルの実施例と比較例が記載されている。
[0010]
 また、特許文献4には、0.5~150μmの範囲内の平均粒径を有する熱膨張性マイクロスフェアーを使用して外殻表面に固体材料が付着した中空マイクロスフェアーを製造することが開示されている。特許文献4には、具体例として、平均粒径が14μmである熱膨張性マイクロスフェアーが記載されている。
[0011]
 したがって、重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーについては、例えば、該熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子を含有する成形品への適用などを想定して、成形品の耐疲労性や強度の改善、クッション性、制振性等の性能、更には軽量化などの観点から、例えば、改善された強度等を有し、かつ、平均粒径が300μm以上、更には500~2000μmであるような発泡粒子を形成するのに適合する、例えば平均粒径が100μm以上であるような大径の熱発泡性マイクロスフェアーを具体的に提供することが求められていた。
[0012]
 すなわち、重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーについては、軽量で改善された強度やクッション性等を有する大径の発泡粒子を形成することができる熱発泡性マイクロスフェアー;並びに、その製造方法を提供することが求められていた。

先行技術文献

特許文献

[0013]
特許文献1 : 特公昭42-26524号公報
特許文献2 : 特開2013-212432号公報
特許文献3 : 国際公開第2004/58910号
特許文献4 : 国際公開第2010/70987号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0014]
 本発明の課題は、軽量で改善された強度やクッション性等を有する大径の発泡粒子を形成することができる熱発泡性マイクロスフェアー;及び、その製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0015]
 本発明者らは、課題を解決するために鋭意研究した結果、特有の平均粒径及び粒径分布の変動係数、更に所望により所定以上の発泡開始温度を有する熱発泡性マイクロスフェアーとすることにより、課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
[0016]
 すなわち、本発明によれば、(1)発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmであり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%以下であることを特徴とする重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーが提供される。
[0017]
 また、本発明によれば、熱発泡性マイクロスフェアーに関する発明の具体的態様として、以下(2)~(5)の熱発泡性マイクロスフェアーが提供される。
(2)熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子の平均粒径が200~1000μmである、前記(1)の熱発泡性マイクロスフェアー。
(3)重合体を形成する重合性単量体が、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体25~100質量%と、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体0~75質量%とを含有する単量体混合物である、前記(1)または(2)の熱発泡性マイクロスフェアー。
(4)重合体を形成する重合性単量体が、塩化ビニリデン30~95質量%と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体5~70質量%とを含有する単量体混合物である、前記(1)または(2)の熱発泡性マイクロスフェアー。
(5)発泡開始温度が150℃以上である、前記(1)~(4)のいずれか1つの熱発泡性マイクロスフェアー。
[0018]
 また、本発明によれば、(6)前記(1)~(5)のいずれか1つの熱発泡性マイクロスフェアーを含有する、塗料または成形品が提供され、さらに、(7)前記(1)~(5)のいずれか1つの熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子を含有する塗膜を備える積層体、または、該発泡粒子を含有する成形品が提供される。
[0019]
 更にまた、本発明によれば、(8)分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーを製造する、前記(1)~(5)のいずれかの熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法が提供され、その具体的態様として、(9)分散安定剤を含有する水系分散媒体及び重合性混合物をバッチ式高速乳化・分散機を使用して攪拌して分散させた後、懸濁重合を行う前記(8)の熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法、並びに、(10)分散安定剤を含有する水系分散媒体及び重合性混合物を連続式高速回転高せん断型攪拌分散機内に供給し、該攪拌分散機中で両者を連続的に攪拌して分散させた後、懸濁重合を行う前記(8)の熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法が提供される。

発明の効果

[0020]
 本発明によれば、発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmであり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%以下であることを特徴とする重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーであることにより、軽量で改善された強度やクッション性等を有する大径の発泡粒子を形成することができる熱発泡性マイクロスフェアーが提供されるという効果が奏される。
[0021]
 また、本発明によれば、前記の熱発泡性マイクロスフェアーを含有する塗料または成形品、或いは、前記の熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子を含有する塗膜を備える積層体、または、該発泡粒子を含有する成形品であることにより、軽量で改善された強度やクッション性等を有する塗膜を備える積層体、または、成形品が提供されるという効果が奏される。
[0022]
 さらに、本発明によれば、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーを製造する、前記の熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法であることにより、容易に該熱発泡性マイクロスフェアーを製造することができる熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法が提供されるという効果が奏される。

発明を実施するための形態

[0023]
I.重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアー
 本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmであり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%以下であることを特徴とする重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーである。
[0024]
1.発泡剤
 本発明の熱発泡性マイクロスフェアーにおいて、重合体の外殻中に封入される発泡剤は、通常、外殻を形成する重合体の軟化点以下の温度でガス状になる物質である。発泡剤は、発泡開始温度に応じた沸点を有する炭化水素等を用いることができ、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、n-ブタン、イソブタン、ブテン、イソブテン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-ヘキサン、ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、イソドデカン、石油エーテル、イソパラフィン混合物などの炭化水素;CCl F、CCl 、CClF 、CClF -CClF 等のクロロフルオロカーボン;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル-n-プロピルシランなどのテトラアルキルシラン;などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、イソブタン、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソオクタン、イソドデカン、石油エーテル、及びこれらの2種以上の混合物が好ましい。また、所望により、加熱により熱分解してガス状になる化合物を使用してもよい。発泡剤は、以下に説明する重合性単量体100質量部に対して、通常10~40質量部、好ましくは12~35質量部、より好ましくは15~32質量部の範囲となる含有量で使用する。
[0025]
2.重合体を形成する重合性単量体
 本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの外殻となる重合体を形成する重合性単量体としては、発泡剤を封入することが可能であり、かつ、通常は、後に説明するように、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で懸濁重合して得られる生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーを形成することができる限り、特に限定されない。好ましくは、重合体の外殻がガスバリア性、耐溶剤性や耐熱性を有し、また、良好な発泡性、所望によっては高温での発泡性を有する重合体を生成することができる観点から、重合性単量体が、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(該単量体を総称して、「(メタ)アクリロニトリル」ということがある。)、及び/または、塩化ビニリデンを含有することが好ましい。
[0026]
 (メタ)アクリロニトリル、及び/または、塩化ビニリデン以外の重合性単量体としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ジシクロペンテニルアクリレート等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、イソボルニルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、塩化ビニル、スチレン、酢酸ビニル、α-メチルスチレン、クロロプレン、ネオプレン、ブタジエンなどが挙げられる。
[0027]
 これらの重合性単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましい重合性単量体は、(メタ)アクリロニトリル、及び/または、塩化ビニリデンを含有する単量体混合物である。
[0028]
〔(メタ)アクリロニトリルを含有する単量体混合物〕
 (メタ)アクリロニトリルを含有する単量体混合物としては、重合性単量体が、(メタ)アクリロニトリル(アクリロニトリル及びメタクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体であり、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルの混合物でもよい。)25~100質量%と、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(以下、「(メタ)アクリロニトリル以外の単量体」ということがある。)0~75質量%(合計量を100質量%とする。)とを含有する単量体混合物であることが好ましい。なお、重合性単量体が、(メタ)アクリロニトリル100質量%を含有する場合は、厳密には単量体混合物に該当しないことがあるが、本発明においては、この場合を含めて単量体混合物という。
[0029]
 (メタ)アクリロニトリルを含有する単量体混合物は、(メタ)アクリロニトリルの含有比率が高いほど、形成される熱発泡性マイクロスフェアーの発泡温度が高く、その含有比率が低いほど、形成される熱発泡性マイクロスフェアーの発泡温度が低くなる傾向がある。また、(メタ)アクリロニトリル以外の単量体の種類及び組成によっても、形成される熱発泡性マイクロスフェアーの発泡温度や最大発泡倍率(常法により、発泡粒子の体積/熱発泡性マイクロスフェアーの体積として算出する。)等を調整することが可能である。したがって、(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリロニトリル以外の単量体との割合、及び、(メタ)アクリロニトリル以外の単量体の種類及び組成を調整することにより、所望の熱発泡性マイクロスフェアーを形成することができる。(メタ)アクリロニトリルと(メタ)アクリロニトリル以外の単量体との好ましい組み合わせは、(メタ)アクリロニトリル25~99.5質量%、より好ましくは30~99質量%、及び(メタ)アクリロニトリル以外の単量体0.5~75質量%、より好ましくは1~70質量%(合計量を100質量%とする。)であり、(メタ)アクリロニトリル以外の単量体として、特に好ましくはメタクリル酸メチルである。(メタ)アクリロニトリルの含有比率が低すぎると、形成される熱発泡性マイクロスフェアーの発泡温度が低くなりすぎたり、ガスバリア性が不足したりすることがある。
[0030]
〔塩化ビニリデンを含有する単量体混合物〕
 塩化ビニリデンを含有する単量体混合物としては、重合性単量体が、塩化ビニリデン30~95質量%と、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(以下、「塩化ビニリデン以外の単量体」ということがある。)5~70質量%(合計量を100質量%とする。)とを含有する単量体混合物であることが好ましい。
[0031]
 塩化ビニリデンを含有する単量体混合物は、塩化ビニリデンの含有比率が高いほど、形成される熱発泡性マイクロスフェアーのガスバリア性が高く、その含有比率が低いほど、形成される熱発泡性マイクロスフェアーのガスバリア性が低くなる傾向がある。また、塩化ビニリデン以外の単量体の種類及び組成によっても、形成される熱発泡性マイクロスフェアーの発泡温度や最大発泡倍率等を調整することが可能である。したがって、塩化ビニリデンと塩化ビニリデン以外の単量体との割合、及び、塩化ビニリデン以外の単量体の種類及び組成を調整することにより、所望の熱発泡性マイクロスフェアーを形成することができる。塩化ビニリデンと塩化ビニリデン以外の単量体との好ましい組み合わせは、塩化ビニリデン35~90質量%、より好ましくは40~80質量%、及び塩化ビニリデン以外の単量体10~65質量%、より好ましくは20~60質量%(合計量を100質量%とする。)であり、塩化ビニリデン以外の単量体として、好ましくは(メタ)アクリロニトリル及びメタクリル酸メチルであり、塩化ビニリデンを含有する単量体混合物の好ましい組み合わせとしては、塩化ビニリデン45~75質量%、(メタ)アクリロニトリル20~50質量%、及びメタクリル酸メチル3~10質量%(合計量を100質量%とする。)である。塩化ビニリデンの含有比率が低すぎると、形成される熱発泡性マイクロスフェアーのガスバリア性が不足し、所望の最大発泡倍率が得られなくなることがある。
[0032]
3.架橋性単量体
 本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの外殻となる重合体は、単量体として、先に説明した重合性単量体とともに、発泡特性及び耐熱性等を改良するために、架橋性単量体を併用して形成することができる。架橋性単量体としては、通常、2以上の炭素-炭素二重結合を有する化合物が用いられる。より具体的には、架橋性単量体として、例えば、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール〔エチレングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール〔ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート〕、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸アリル、イソシアン酸トリアリル、トリアクリルホルマール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチルグリコール、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。架橋性単量体の使用割合は、重合性単量体の合計量の通常0.01~5質量%、好ましくは0.02~3質量%、より好ましくは0.03~2質量%である。
[0033]
4.平均粒径(D50)及び粒径分布の変動係数(対数スケール)
 本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmであり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%以下であることを特徴とする。すなわち、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、100μm以上の大きな平均粒径(D50)を有するとともに、高度にシャープな粒度分布を有するものであることにより、軽量で改善された強度やクッション性等を有する大径の発泡粒子を形成することができる。発泡(熱膨張)の更なる均一性または更なる安定性、熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子の更なる強度等の観点などから、発泡前の平均粒径(D50)は、好ましくは105~400μm、より好ましくは110~300μmであり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)は、好ましくは13%以下、より好ましくは12%以下である。粒径分布の変動係数(対数スケール)は、下限値が特にないが、通常0.01%以上である。
[0034]
(1)平均粒径(D50)
 熱発泡性マイクロスフェアーの平均粒径(D50)は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(株式会社島津製作所製のSALDシリーズ等)を使用して測定するものであり、粒子径(球相当径)の積算%(体積基準及び対数スケール)の粒径分布曲線に基づいて得られる50%粒子径(「メディアン径」ということもある。)をいう(単位:μm)。熱発泡性マイクロスフェアーの平均粒径が小さすぎると、クッション性、軽量化が不十分となるおそれがあり、平均粒径が大きすぎると、発泡成形体の気泡が大きすぎ、繰り返し圧縮に対する耐疲労性、または、強度が不十分となるおそれがある。
[0035]
(2)粒径分布の変動係数(対数スケール)
 熱発泡性マイクロスフェアーの粒径分布の変動係数(以下、「C 」と表記することがある。)は、一般に、熱発泡性マイクロスフェアーの粒径分布から算出される平均粒径に対する粒径の標準偏差の比率(単位:%)として求められるものとして知られている。本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの粒径分布の変動係数(対数スケール)は、先に説明したレーザー回折式粒子径分布測定装置を使用して測定し算出するものであり、具体的には粒子径(球相当径)の積算%(体積基準及び対数スケール)の粒径分布曲線に基づいて、以下の式(1)及び式(2);
[0036]
[数1]


[0037]
[数2]


[0038]
〔各式中、μ=平均値(対数スケール)、x j =粒子径、q j =頻度分布である。〕
により、以下の式
(式) 変動係数(対数スケール)=標準偏差(対数スケール)/平均値(対数スケール)×100
を表すものとして算出される値である。なお、上記のμ=平均値(対数スケール)に対応する粒径の通常スケールの平均値は10 μ(単位は、通常μmである。)であり、該粒径の通常スケールの平均値と平均粒径(D50)の値とは異なるものである。粒径分布の変動係数(対数スケール)C が大きすぎると、熱発泡性マイクロスフェアーの粒径の不均一性が大きく、その結果、熱発泡性マイクロスフェアーを発泡(熱膨張)させて得られる発泡粒子の粒径や強度のバラツキが増大するおそれがある。
[0039]
5.発泡開始温度
 本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmであり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%以下であるとともに、発泡開始温度(発泡温度)が150℃以上であることにより、発泡(熱膨張)の更なる均一性や更なる安定性が得られ、軽量で改善された強度やクッション性等を有する大径の発泡粒子を形成することができるので、好ましい。すなわち、従来大径の熱発泡性マイクロスフェアーを得ようとすると、発泡開始温度が顕著に低下する傾向があったが、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡開始温度の低下が抑制されたものである。熱発泡性マイクロスフェアーの発泡開始温度は、熱機械分析装置を使用して測定することができる。すなわち、熱発泡性マイクロスフェアー0.25mgを試料として使用し、昇温速度5℃/分で昇温し、容器内における試料の高さの変位が始まったときの温度を発泡開始温度(以下、「Ts」ということがある。単位:℃)とする。熱発泡性マイクロスフェアーの発泡開始温度が低すぎると、例えば、熱発泡性マイクロスフェアーを含有する成形品の成形前の混練加工時に早期発泡してしまったりすることがある。本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの発泡開始温度(Ts)は、発泡(熱膨張)の均一性や安定性等の観点から、好ましくは152~220℃、より好ましくは155~210℃である。熱発泡性マイクロスフェアーの発泡開始温度が高すぎると、大径の発泡粒子を形成できないことがある。
[0040]
II.熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子
 本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、好ましくは熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子の平均粒径が200~1000μmである熱発泡性マイクロスフェアーである。すなわち、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーは、軽量で改善された強度やクッション性等を有し、かつ、好ましくは平均粒径が200~1000μmである大径の発泡粒子を形成することができる。発泡粒子の平均粒径は、任意の発泡粒子50個を顕微鏡で観察してそれぞれの直径を求め、その平均値として発泡粒子の平均粒径(単位:μm)を算出するものである。発泡(熱膨張)の更なる均一性や更なる安定性等の観点から、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーとしては、熱膨張させてなる発泡粒子の平均粒径が、好ましくは260~700μm、より好ましくは280~600μmであり、更に好ましくは300~500μmである。そして、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子は、軽量であるとともに、改善された強度やクッション性等を有するものである。すなわち、従来大径の発泡粒子は、強度やクッション性等が不十分であったが、本発明によれば、例えば、アルゴンガスによる熱間等方圧加圧(HIP)試験(温度40℃、圧力600kg/cm )でも形状を維持し、また、水による冷間等方圧加圧(CIP)試験(温度25℃、圧力300kg/cm )でも形状を維持するという、高い形状維持性を有するものとすることができる。発泡粒子は、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーをその発泡開始温度を超える温度に加熱して発泡させることによって、得ることができる。多くの場合、加熱、発泡は、常圧下での自由発泡とすることができる。発泡粒子を得るための加熱温度は、通常150~210℃、多くの場合160~200℃の範囲である。後に説明するように、自由発泡に先だって、熱発泡性マイクロスフェアーをその発泡開始温度以下の温度において予め熱処理することによって、熱発泡性マイクロスフェアーを前記の発泡開始温度より低い温度で発泡を開始するよう調整することもできる。
[0041]
III.熱発泡性マイクロスフェアー及び発泡粒子の用途
 本発明により得られる熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡(膨張)させて、または未発泡のままで、各種分野に使用される。該熱発泡性マイクロスフェアーは、例えば、その膨張性を利用して、自動車等の塗料の充填剤、発泡インク(壁紙、T-シャツ等のレリーフ模様付け)の発泡剤、収縮防止剤などに使用される。また、熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡による体積増加を利用して、プラスチック、塗料、各種資材などの軽量化や多孔質化、各種機能性付与(例えば、スリップ性、断熱性、クッション性、遮音性等)の目的で使用される。特に、本発明による熱発泡性マイクロスフェアーは、表面性や平滑性が要求される塗料、インク分野や、プラスチック成形品(例えば内装材等)の軽量化などに好適に用いることができる。
[0042]
 したがって、本発明によれば、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーを含有する塗料または成形品を提供することができ、また、本発明の熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子を含有する塗膜を備える積層体、または、該発泡粒子を含有する成形品を提供することができる。特に、成形品としては、先にも説明したように、混練加工、カレンダー加工、押出加工、熱成形、スタンピング成形、または射出成形等の汎用の樹脂成形法により形成される成形品が提供される。
[0043]
IV.熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法
 本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法は、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーを製造する方法である。本発明の製造方法においては、先に説明した発泡剤、重合性単量体及び架橋性単量体のほか、以下に説明する諸添加剤(分散安定剤、重合開始剤等)などは、特に限定されるものではなく、従来公知のものが使用できる。すなわち、本発明の製造方法は、あらゆるタイプの熱発泡性マイクロスフェアーの製造に適用することができる。
[0044]
1.水系分散媒体
 本発明の熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法において、懸濁重合は、通常、分散安定剤(懸濁剤)を含有する水系分散媒体中で行われる。水系分散媒体としては、水を使用することができ、具体的には脱イオン水や蒸留水を使用することができる。重合性単量体の合計量に対する水系分散媒体の使用量は、特に限定されないが、通常0.5~30倍、多くの場合1~10倍(質量比)である。
[0045]
2.分散安定剤及び補助安定剤等
 分散安定剤としては、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。分散安定剤は、重合性単量体の合計量100質量部に対して、通常、0.1~20質量部の割合で使用される。
[0046]
 分散安定剤に加えて、補助安定剤、例えば、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物、尿素とホルムアルデヒドとの縮合生成物、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ゼラチン、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ジオクチルスルホサクシネート、ソルビタンエステル、各種乳化剤等を使用することができる。
[0047]
 好ましい組み合わせの一つとして、コロイダルシリカと縮合生成物の組み合わせがある。縮合生成物としては、ジエタノールアミンと脂肪族ジカルボン酸の縮合生成物が好ましく、特にジエタノールアミンとアジピン酸の縮合物やジエタノールアミンとイタコン酸の縮合生成物が好ましい。縮合物は、その酸価(単位:mgKOH/g)によって規定される。好ましくは、酸価が60以上95未満のものである。特に好ましくは、酸価が65以上90以下の縮合物である。さらに、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を添加すると、より均一な粒子形状を有する熱発泡性マイクロスフェアーが得られやすくなる。無機塩としては、塩化ナトリウムが好適に用いられる。コロイダルシリカの使用量は、その粒子径によっても変わるが、通常、重合性単量体の合計量100質量部に対して、1~20質量部、好ましくは2~10質量部の割合で使用される。縮合生成物は、重合性単量体の合計量100質量部に対して、通常0.05~2質量部の割合で使用される。無機塩は、重合性単量体の合計量100質量部に対して、0~120質量部、多くの場合0~100質量部の割合で使用する(「0質量部」とは、無機塩を含有しないことを意味する。)。
[0048]
 他の好ましい組み合わせは、コロイダルシリカと水溶性窒素含有化合物の組み合わせが挙げられる。水溶性窒素含有化合物の例としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートやポリジメチルアミノエチルアクリレートに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジメチルアミノプロピルアクリルアミドやポリジメチルアミノプロピルメタクリルアミドに代表されるポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリアクリルアミド、ポリカチオン性アクリルアミド、ポリアミンサルフォン、ポリアリルアミンが挙げられる。これらの中でも、コロイダルシリカとポリビニルピロリドンの組み合わせが好適に用いられる。他の好ましい組み合わせには、水酸化マグネシウム及び/またはリン酸カルシウムと乳化剤との組み合わせがある。
[0049]
 分散安定剤としては、水溶性多価金属化合物(例えば、塩化マグネシウム)と水酸化アルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム)との水相中での反応により得られる難水溶性金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム)のコロイドを用いることができる。また、リン酸カルシウムは、リン酸ナトリウムと塩化カルシウムとの水相中での反応生成物を使用することが可能である。
[0050]
 乳化剤は、一般に使用しないが、所望により陰イオン性界面活性剤、例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩やポリオキシエチレンアルキル(アリル)エーテルのリン酸エステル等を用いてもよい。
[0051]
 さらに、分散安定剤を含有する水系分散媒体中には、重合助剤として、亜硝酸アルカリ金属塩、塩化第一スズ、塩化第二スズ、水可溶性アスコルビン酸類、及びホウ酸からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物を存在させることができる。これらの化合物の存在下に懸濁重合を行うと、重合時に、重合粒子同士の凝集が起こらず、重合物が重合缶壁に付着することがなく、重合による発熱を効率的に除去しながら安定して熱発泡性マイクロスフェアーを製造することができる。亜硝酸アルカリ金属塩の中では、亜硝酸ナトリウムまたは亜硝酸カリウムが入手の容易性や価格の点で好ましい。これらの化合物は、重合性単量体の合計量100質量部に対して、通常、0.001~1質量部、好ましくは0.01~0.1質量部の割合で使用される。
[0052]
3.重合開始剤
 先に説明した重合性単量体は、所定温度環境において重合開始剤と接触させることにより懸濁重合することができる。重合開始剤としては、特に限定されず、この分野で一般に使用されているものを使用することができるが、使用する重合性単量体に可溶の油溶性重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えば、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、及びアゾ化合物が挙げられる。より具体的には、メチルエチルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの過酸化ジアルキル;イソブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの過酸化ジアシル;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、(α,α-ビス-ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼンなどのパーオキシエステル;ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピル-オキシジカーボネート、ジ-イソプロピルパーオキシジカーボネート(以下、「IPP」ということがある。)、ジ(2-エチルエチルパーオキシ)ジカーボネート、ジ-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(以下、「V-60」ということがある。)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられる。重合開始剤は、水系分散媒体基準で、通常、0.0001~3質量%の割合で使用される。
[0053]
4.懸濁重合
 懸濁重合は、水系分散媒体中で行われ、通常、分散安定剤(懸濁剤)を含有する水系分散媒体中で行われる。水系分散媒体に、分散安定剤等の各成分を添加する順序は、発泡倍率等の物性が優れる熱発泡性マイクロスフェアーを製造することができる限り、任意であるが、通常は、まず、水と分散安定剤、更に必要に応じて補助安定剤や重合助剤などを加えて、分散安定剤を含有する水系分散媒体を調製する。懸濁重合を行うに当たっては、使用する分散安定剤や補助安定剤の種類によって、最適のpH条件を選定することが好ましい。例えば、分散安定剤としてコロイダルシリカなどのシリカを使用する場合は、酸性環境で重合が行うことが好ましいので、分散安定剤を含有する水系分散媒体に、酸を加えて、系のpHを約3~4に調整する。また、分散安定剤として水酸化マグネシウムまたはリン酸カルシウムを使用する場合は、アルカリ性環境の中で重合させる。
[0054]
 一方、通常は、先の分散安定剤を含有する水系分散媒体とは別に、発泡剤、重合性単量体、及び必要に応じて架橋性単量体等を混合して、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を調製する。ただし、本発明の目的を阻害しない限り、先の分散安定剤を含有する水系分散媒体に、発泡剤、重合性単量体、及び架橋性単量体等を加えてもよい。続いて、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を、先の分散安定剤を含有する水系分散媒体に、添加し攪拌混合する。重合開始剤は、あらかじめ重合性単量体に添加して使用することができるが、早期の重合を避ける必要がある場合には、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を、先の分散安定剤を含有する水系分散媒体に添加し攪拌混合するときに、重合開始剤を加え、水系分散媒体中で一体化してもよい。
[0055]
 重合性混合物と分散安定剤を含有する水系分散媒体とを攪拌混合することにより、重合性混合物は、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で油相である液滴を形成するので、攪拌混合することにより、所望の大きさの微細な液滴に造粒することができる。液滴の平均粒径は、目的とする熱発泡性マイクロスフェアーの発泡前の平均粒径(D50)とほぼ一致させることが好ましく、したがって、通常100~500μmの範囲であり、好ましくは105~400μm、より好ましくは110~300μmの範囲である。
[0056]
 攪拌混合に際しては、熱発泡性マイクロスフェアーの所望の粒径に応じて、攪拌機の種類や回転数などの条件設定を行う。この際、重合容器(重合槽、重合缶、アンプル瓶等)の大きさと形状、バッフルの有無等をも勘案して条件を選択する。攪拌機としては、高せん断力を有するホモジナイザーが好ましく、連続式高速回転高せん断型攪拌分散機や回分式(バッチ式)高速回転高せん断型攪拌分散機(バッチ式高速乳化・分散機)を用いることができる。本発明の平均粒径(D50)が100~500μmであり、粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%以下である粒径分布が極めてシャープな熱発泡性マイクロスフェアーを得るには、分散安定剤を含有する水系分散媒体及び重合性混合物をバッチ式高速乳化・分散機を使用して攪拌して分散させた後、通常は得られた分散液を重合容器内に注入して該重合容器内で、懸濁重合を行う方法、または、分散安定剤を含有する水系分散媒体及び重合性混合物を連続式高速回転高せん断型攪拌分散機内に供給し、該攪拌分散機中で両者を連続的に攪拌して分散させた後に通常は得られた分散液を重合容器内に注入して該重合容器内で、懸濁重合を行う方法が好ましい。分散安定剤を含有する水系分散媒体及び重合性混合物をバッチ式高速乳化・分散機を使用して攪拌混合して分散させるときの周速は、撹拌翼の大きさ、処理時間、解砕回転数等を考慮して定めることができるが、1.6~6.3m/秒(例えば、撹拌翼径30mmである場合、撹拌回転数1000~4000rpmに相当する。)が好ましく、1.9~5.5m/秒(例えば、撹拌翼径30mmである場合、撹拌回転数1200~3500rpmに相当する。)がより好ましく、2.4~4.7m/秒(例えば、撹拌翼径30mmである場合、撹拌回転数1500~3000rpmに相当する。)が更に好ましい。また、分散安定剤を含有する水系分散媒体及び重合性混合物をバッチ式高速乳化・分散機を使用して攪拌混合して分散させるとき、または、連続式高速回転高せん断型攪拌分散機中で連続的に攪拌して分散させるときの温度は、懸濁重合を行う温度等を考慮して定めればよく、通常0~80℃、多くの場合10~40℃であり、常温でもよい。
[0057]
 分散安定剤を含有する水系分散媒体及び重合性混合物を連続式高速回転高せん断型攪拌分散機内に供給する方法としては、分散安定剤を含有する水系分散媒体及び重合性混合物をそれぞれ別の流れとして、一定の比率で連続的に連続式高速回転高せん断型攪拌分散機内に供給してもよいし、分散安定剤を含有する水系分散媒体及び重合性混合物を分散槽内に注入し、該分散槽内で両者を攪拌して一次分散させた後、得られた一次分散液を連続式高速回転高せん断型攪拌分散機内に供給してもよい。
[0058]
 重合(懸濁重合)反応は、通常、脱気して、または窒素ガス等の不活性ガスで置換した重合容器内において、温度40~80℃で、5~50時間、攪拌しながら行う。重合により生成する熱発泡性マイクロスフェアーは、油相(固相)を形成するので、水系分散媒体を含有する水相は、例えば、ろ過、遠心分離、沈降等のそれ自体公知の分離方法によって、熱発泡性マイクロスフェアーから分離除去される。得られる熱発泡性マイクロスフェアーは、必要に応じて、発泡剤がガス化しない程度の比較的低温で乾燥される。
[0059]
 さらに、得られる熱発泡性マイクロスフェアーを、必要に応じて発泡開始温度以下の温度で熱処理することによって、発泡(熱膨張)の均一性や発泡粒子の特性を改良することができ、また、熱発泡性マイクロスフェアーを前記の発泡開始温度より低い温度で発泡が開始するように調整することができる。熱処理は、熱処理前の熱発泡性マイクロスフェアーの発泡開始温度より通常15℃以上低い温度、多くの場合20℃以上低い温度で、通常10秒間~15分間、多くの場合30秒間~10分間の条件で適宜選択することができる。熱処理により、熱発泡性マイクロスフェアーは、前記の発泡開始温度より5~70℃、多くの場合10~60℃低い温度の範囲で発泡が開始するものとすることもできる。
[0060]
 本発明を実施するための形態は、以下のような構成をとることもできる。
 [1]発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmであり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%以下であることを特徴とする、重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアー。
 [2]前記熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子の平均粒径が200~1000μmである、[1]に記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
 [3]発泡開始温度が150℃以上である、[1]または[2]に記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
 [4]前記重合体が、(メタ)アクリロニトリルを単量体単位として含む、[1]から[3]のいずれか1つに記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
 [5]前記重合体が、さらに、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも1種を単量体単位として含む、[4]に記載の熱発泡性マイクロスフェアー。 
 [6][1]乃至[5]のいずれか1つに記載の熱発泡性マイクロスフェアーを含有する、塗料または成形品。
 [7][1]乃至[5]のいずれか1つに記載の熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子を含有する塗膜を備える、積層体、または、前記発泡粒子を含有する、成形品。
 [8]分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーを製造する、発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmである、熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法。
実施例
[0061]
 以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性の測定方法は、以下のとおりである。
[0062]
〔平均粒径及び粒径分布の変動係数(対数スケール)〕
 熱発泡性マイクロスフェアーの発泡前の平均粒径(D50)、粒径分布の平均値(対数スケール)、標準偏差(対数スケール)は、株式会社島津製作所製のSALD-3100を使用して測定し、算出した。また、粒径分布の変動係数(対数スケール)は、先に説明した方法によって、算出した。発泡粒子の平均粒径は、先に説明した方法による観察に基づいて算出した。
[0063]
〔発泡開始温度〕
 熱発泡性マイクロスフェアーの発泡開始温度は、メトラートレド社製の熱機械分析装置TMA/SDTA840型を使用して測定した。すなわち、熱発泡性マイクロスフェアー0.25mgを試料として使用し、昇温速度5℃/分で昇温し、容器内における試料の高さの変位が始まったときの温度を発泡開始温度(Ts。単位:℃)とした。
[0064]
[実施例1]
(分散安定剤を含有する水系分散媒体の調製)
 分散安定剤であるコロイダルシリカ6g(固形分20質量%のシリカ分散液30g)、補助安定剤であるジエタノールアミン-アジピン酸縮合生成物(酸価75mgKOH/g)0.7g(固形分50質量%の分散液1.4g)及び、重合助剤である亜硝酸ナトリウム0.09gを塩水534g(NaCl濃度25質量%)に仕込み、分散安定剤を含有する水系分散媒体を調製した。この分散安定剤を含有する水系分散媒体のpHが3.5になるように、塩酸5mgを添加してpHを調整した。
[0065]
(発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物の調製)
 一方、重合性単量体であるアクリロニトリル100.5g、メタクリロニトリル46.5g及びメタクリル酸メチル3.0g(質量比:アクリロニトリル/メタクリロニトリル/メタクリル酸メチル=67/31/2)と、発泡剤であるイソペンタン1.85g(重合性単量体の合計量100質量部に対して1.23質量部)、イソオクタン11.1g(重合性単量体の合計量100質量部に対して7.4質量部)及びイソドデカン14.8g(重合性単量体の合計量100質量部に対して9.87質量部)とにより、油性混合物を調製した(発泡剤の合計量は、重合性単量体の合計量100質量部に対して18.5質量部である。)。更に、架橋性単量体であるエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)0.75g、及び重合開始剤であるV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)1.8gを添加して、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を調製した。
[0066]
 前記の分散安定剤を含有する水系分散媒体と前記の重合性混合物とをバッチ式高速乳化・分散機〔TOKUSHU KIKA ROBOMICS(登録商標)〕を使用して、周速3.1m/秒(撹拌翼径30mm、攪拌回転数2000rpm)で、常温下処理時間50秒間で攪拌混合し、重合性混合物の微細な液滴を造粒した。得られた重合性混合物の微細な液滴を含有する水系分散媒体を、重合容器であるアンプル瓶(容積0.63L)に仕込み、温度60℃で20時間懸濁重合させた。生成した重合体の粒子をヌッチェろ過、水洗をし、温度40℃で2時間乾燥することにより、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。得られた熱発泡性マイクロスフェアーの平均粒径(D50)(以下、単に「平均粒径」ということがある。)は174μm、粒径分布の変動係数(対数スケール)(以下、単に「変動係数」ということがある。)は9.3%であり、発泡開始温度は175℃であった。
[0067]
 熱発泡性マイクロスフェアーを予め温度150℃で5分間熱処理した後(熱処理後の熱発泡性マイクロスフェアーは、前記の発泡開始温度より約35℃低い温度で発泡が開始するものとなった。)、温度180℃で5分間自由発泡させることによって発泡粒子を得た。得られた発泡粒子は、平均粒径が417μmであり、アルゴンガスによる熱間等方圧加圧(HIP)試験において温度40℃、圧力600kg/cm 下においても形状を維持し、また、水による冷間等方圧加圧(CIP)試験において、温度25℃、圧力300kg/cm 下においても形状を維持した。熱発泡性マイクロスフェアーの発泡剤含有量〔樹脂100質量部に対する発泡剤の含有量(単位:質量部)〕、平均粒径(D50)、粒径分布の変動係数(対数スケール)、及び発泡開始温度、並びに、発泡粒子の平均粒径(以下、「熱発泡性マイクロスフェアー等の特性」という。)を表1に示す。
[0068]
[実施例2]
 重合性単量体を、アクリロニトリル103.5g、メタクリロニトリル45.0g及びメタクリル酸メチル1.5g(質量比:アクリロニトリル/メタクリロニトリル/メタクリル酸メチル=69/30/1)の組成に変更し、また、発泡剤を、イソペンタン1.95g(重合性単量体の合計量100質量部に対して1.3質量部)、イソオクタン15.15g(重合性単量体の合計量100質量部に対して10.1質量部)及びイソドデカン10.65g(重合性単量体の合計量100質量部に対して7.1質量部)の組成に変更して、油性混合物を調製した(発泡剤の合計量は、重合性単量体の合計量100質量部に対して18.5質量部である。)ことを除いて、実施例1と同様にして熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0069]
[実施例3]
 発泡剤を、イソペンタン3.0g(重合性単量体の合計量100質量部に対して2.0質量部)、イソオクタン18.0g(重合性単量体の合計量100質量部に対して12.0質量部)及びイソドデカン24.0g(重合性単量体の合計量100質量部に対して16.0質量部)の組成に変更して、油性混合物を調製した(発泡剤の合計量は、重合性単量体の合計量100質量部に対して30.0質量部である。)こと、並びに、自由発泡の温度を160℃に変更したことを除いて、実施例1と同様にして熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0070]
[実施例4]
(分散安定剤を含有する水系分散媒体の調製)
 分散安定剤であるコロイダルシリカ42g(固形分20質量%のシリカ分散液210g)、補助安定剤であるジエタノールアミン-アジピン酸縮合生成物(酸価75mgKOH/g)4.9g(固形分50質量%の分散液9.8g)及び、重合助剤である亜硝酸ナトリウム0.84gを塩水4984g(NaCl濃度25質量%)に仕込み、分散安定剤を含有する水系分散媒体を調製した。この分散安定剤を含有する水系分散媒体のpHが3.5になるように、塩酸45mgを添加してpHを調整した。
[0071]
(発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物の調製)
 一方、重合性単量体であるアクリロニトリル983g、メタクリロニトリル434g及びメタクリル酸メチル28g(質量比:アクリロニトリル/メタクリロニトリル/メタクリル酸メチル=67/31/2)と、発泡剤であるイソペンタン28g(重合性単量体の合計量100質量部に対して2.0質量部)、イソオクタン168g(重合性単量体の合計量100質量部に対して12.0質量部)及びイソドデカン224g(重合性単量体の合計量100質量部に対して16.0質量部とにより、油性混合物を調製した、油性混合物を調製した(発泡剤の合計量は、重合性単量体の合計量100質量部に対して30.0質量部である)。更に、架橋性単量体であるエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)7g、及び重合開始剤であるV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)16.8gを添加して、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を調製した。
[0072]
 前記の分散安定剤を含有する水系分散媒体と前記の重合性混合物とを、攪拌機付きの重合缶(容積10L)に仕込み、重合回転数は250rpmで、温度60℃で13.5時間、その後温度70℃で10.5時間懸濁重合させた。生成した重合体粒子をヌッチェ(ブフナー漏斗)を用いてろ過、水洗をし、温度40℃で2時間乾燥することにより、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0073]
[実施例5]
 発泡剤を、イソペンタン28g(重合性単量体の合計量100質量部に対して1.63質量部)、イソオクタン140g(重合性単量体の合計量100質量部に対して10質量部)及びイソドデカン187.25g(重合性単量体の合計量100質量部に対して13.38質量部)の組成に変更して、油性混合物を調製した(発泡剤の合計量は、重合性単量体の合計量100質量部に対して25.0質量部である。)こと、および、架橋性単量体をジエチレングリコールジメタクリレート(DEDMA)21gに変えたこと、重合回転数を350rpmにしたことを除いて、実施例4と同様に、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0074]
[実施例6]
 発泡剤を、イソペンタン22.75g(重合性単量体の合計量100質量部に対して1.63質量部)、イソオクタン140g(重合性単量体の合計量100質量部に対して10質量部)及びイソドデカン187.25g(重合性単量体の合計量100質量部に対して13.38質量部)の組成に変更して、油性混合物を調製した(発泡剤の合計量は、重合性単量体の合計量100質量部に対して25.0質量部である。)こと、および、架橋性単量体をジエチレングリコールジメタクリレート(DEDMA)15.4gに変えたこと、さらに、重合回転数を350rpmにしたことを除いて、実施例4と同様に、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0075]
[実施例7]
(分散安定剤を含有する水系分散媒体の調製)
 分散安定剤であるコロイダルシリカ0.72kg(固形分20質量%のシリカ分散液3・6kg)、補助安定剤であるジエタノールアミン-アジピン酸縮合生成物(酸価75mgKOH/g)0.084kg固形分50質量%の分散液0.168kg)及び、重合助剤である亜硝酸ナトリウム14.4gを塩水85.44kg(NaCl濃度25質量%)に仕込み、分散安定剤を含有する水系分散媒体を調製した。この分散安定剤を含有する水系分散媒体のpHが3.5になるように、塩酸0.82kgを添加してpHを調整した。
[0076]
(発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物の調製)
 一方、重合性単量体であるアクリロニトリル16.08kg、メタクリロニトリル7.44kg及びメタクリル酸メチル0.48kg(質量比:アクリロニトリル/メタクリロニトリル/メタクリル酸メチル=67/31/2)と、発泡剤であるイソペンタン0.48kg(重合性単量体の合計量100質量部に対して2.0質量部)、イソオクタン2.88kg(重合性単量体の合計量100質量部に対して12.0質量部)及びイソドデカン3.84kg(重合性単量体の合計量100質量部に対して16.0質量部とにより、油性混合物を調製した、油性混合物を調製した(発泡剤の合計量は、重合性単量体の合計量100質量部に対して30.0質量部である)。更に、架橋性単量体であるエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)0.12kg、及び重合開始剤であるV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)0.288kgを添加して、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を調製した。
[0077]
 前記の得られた重合性混合物の微細な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(容積100L)に仕込み、重合回転数は148rpmで、温度60℃で13.5時間、その後温度70℃で10.5時間懸濁重合させた。生成した重合体粒子をヌッチェ(ブフナー漏斗)を用いてろ過、水洗をし、温度40℃で2時間乾燥することにより、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0078]
[実施例8]
 発泡剤を、イソペンタン0・3kg(重合性単量体の合計量100質量部に対して1.23質量部)、イソオクタン1.78kg(重合性単量体の合計量100質量部に対して7.4質量部)及びイソドデカン2.37kg(重合性単量体の合計量100質量部に対して9.87質量部)の組成に変更して、油性混合物を調製した(発泡剤の合計量は、重合性単量体の合計量100質量部に対して18.5質量部である。)ことを除いて、実施例7と同様に、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0079]
[実施例9]
 発泡剤を、イソオクタン2.23kg(重合性単量体の合計量100質量部に対して9.3質量部)及びイソドデカン2.57kg(重合性単量体の合計量100質量部に対して10.7質量部)の組成に変更して、油性混合物を調製した(発泡剤の合計量は、重合性単量体の合計量100質量部に対して20質量部である。)ことおよび、架橋性単量体をジエチレングリコールジメタクリレート(DEDMA) 0.24kgに変えたことを除いて、実施例7と同様に、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0080]
[実施例10]
(分散安定剤を含有する水系分散媒体の調製)
 分散安定剤であるコロイダルシリカ9kg(固形分20質量%のシリカ分散液45kg)、補助安定剤であるジエタノールアミン-アジピン酸縮合生成物(酸価75mgKOH/g)1.05g(固形分50質量%の分散液21kg)及び、重合助剤である亜硝酸ナリウム0.180kgを塩水1068kg(NaCl濃度25質量%)に仕込み、分散安定剤を含有する水系分散媒体を調製した。この分散安定剤を含有する水系分散媒体のpHが3.5になるように、塩酸10.2kgを添加してpHを調整した。
[0081]
(発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物の調製)
 一方、重合性単量体であるアクリロニトリル201kg、メタクリロニトリル93kg及びメタクリル酸メチル6kg(質量比:アクリロニトリル/メタクリロニトリル/メタクリル酸メチル=67/31/2)と、発泡剤であるイソペンタン3.69kg(重合性単量体の合計量100質量部に対して1.23質量部)、イソオクタン22.2kg(重合性単量体の合計量100質量部に対して7.4質量部)及びイソドデカン29.61g(重合性単量体の合計量100質量部に対して9.87質量部)とにより、油性混合物を調製した(発泡剤の合計量は、重合性単量体の合計量100質量部に対して18.5質量部である。)。更に、架橋性単量体であるエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)1.5g、及び重合開始剤であるV-60(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル)3.6gを添加して、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を調製した。
[0082]
 前記の分散安定剤を含有する水系分散媒体と前記の重合性混合物とを、重合容器である攪拌機付きの重合缶(容積2TON)に仕込み、重合回転数は69rpmで、温度60℃で13.5時間、その後温度70℃で10.5時間懸濁重合させた。生成した重合体粒子をヌッチェ(ブフナー漏斗)を用いてろ過、水洗をし、温度40℃で2時間乾燥することにより、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0083]
[比較例1]
 重合性混合物の微細な液滴を造粒するに際して、バッチ式高速乳化・分散機の撹拌条件を、周速14.1m/秒(撹拌翼径30mm、攪拌回転数9000rpm)で処理時間50秒間に変更したことを除いて、実施例1と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0084]
[比較例2]
 重合性混合物の微細な液滴を造粒するに際して、バッチ式高速乳化・分散機の撹拌条件を、周速14.1m/秒(撹拌翼径30mm、撹拌回転数9000rpm)で処理時間50秒間に変更したこと、並びに、自由発泡の温度を190℃に変更したことを除いて、実施例2と同様にして、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0085]
[比較例3]
 分散安定剤を含有する水系分散媒体と前記の重合性混合物とをバッチ式高速乳化・分散機 [PRIMIX AUTO MIXER40]を使用して、周速23.0m/秒(撹拌翼径55mm、攪拌回転数8000rpm)で、常温下処理時間60秒間で攪拌混合し、重合性混合物の微細な液滴を造粒した。得られた重合性混合物の微細な液滴を含有する水系分散媒体を、攪拌機付きの重合缶(容積10L)に仕込み、重合回転数を450rpmにしたことを除いて、実施例4と同様に、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0086]
[比較例4]
 重合回転数を450rpmにしたことを除いて、実施例4と同様に、熱発泡性マイクロスフェアーを得た。熱発泡性マイクロスフェアー等の特性を表1に示す。
[0087]
[表1]


[0088]
 表1から、発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmであり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%以下である、実施例1~10の重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーは、発泡前の平均粒径(D50)において大径であり、かつ、発泡開始温度の低下が抑制されているバランスのよい熱発泡性マイクロスフェアーであって、さらに、平均粒径が294~417μmという大径で、かつ、高い形状維持性を有する発泡粒子が得られることが分かった。
[0089]
 これに対して、発泡前の平均粒径(D50)が100μm未満であり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%超過である、比較例1~4の重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーは、平均粒径が200μm未満の小径の発泡粒子しか得ることができないことが分かり、高い形状維持性を有する発泡粒子を得るのが困難であることが推察された。

産業上の利用可能性

[0090]
 本発明は、発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmであり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%以下であることを特徴とする重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーであることにより、軽量で改善された強度やクッション性等を有する大径の発泡粒子を形成することができる熱発泡性マイクロスフェアーを提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。
[0091]
 また、本発明は、分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーを製造する、前記の熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法であることによって、該熱発泡性マイクロスフェアーを容易に製造する方法を提供することができるので、産業上の利用可能性が高い。

請求の範囲

[請求項1]
 発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmであり、発泡前の粒径分布の変動係数(対数スケール)が15%以下であることを特徴とする、重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアー。
[請求項2]
 前記熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子の平均粒径が200~1000μmである、請求項1に記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
[請求項3]
 発泡開始温度が150℃以上である、請求項1または2に記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
[請求項4]
 前記重合体が、(メタ)アクリロニトリルを単量体単位として含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の熱発泡性マイクロスフェアー。
[請求項5]
 前記重合体が、さらに、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸及び酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも1種を単量体単位として含む、請求項4に記載の熱発泡性マイクロスフェアー。 
[請求項6]
 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱発泡性マイクロスフェアーを含有する、塗料または成形品。
[請求項7]
 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱発泡性マイクロスフェアーを熱膨張させてなる発泡粒子を含有する塗膜を備える、積層体、または、前記発泡粒子を含有する、成形品。
[請求項8]
 分散安定剤を含有する水系分散媒体中で、少なくとも発泡剤と重合性単量体とを含有する重合性混合物を懸濁重合して、生成重合体の外殻中に発泡剤が封入された熱発泡性マイクロスフェアーを製造する、発泡前の平均粒径(D50)が100~500μmである、熱発泡性マイクロスフェアーの製造方法。