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1. WO2020158718 - NOUVEAU SOL ORGANIQUE, SON PROCÉDÉ DE PRODUCTION, ET PROCÉDÉ DE CULTURE DE PLANTE L'UTILISANT

Document

明 細 書

発明の名称 新規有機土壌、その製造方法及びそれを用いた植物の栽培方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008   0009  

先行技術文献

特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015  

発明の効果

0016   0017   0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076  

実施例

0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : 新規有機土壌、その製造方法及びそれを用いた植物の栽培方法

技術分野

[0001]
 本発明は、新規な有機土壌、その製造方法及び該有機土壌を使用することを特徴とする植物の栽培方法に関する。

背景技術

[0002]
 有機土壌で栽培した農産物は、硝酸塩等の蓄積が少なく、有機農産物の需要は欧米で飛躍的に伸びている。有機農業を行う場合、有機土壌が不可欠である。特に、ハウス栽培及び植物工場での栽培は、品質の高い有機土壌が求められている。
[0003]
 日本国内では、有機土壌及び培養土という形で一部市販されているが、ロット間の格差及び再現性の面で大きな課題があり、家庭園芸用としてのみ使われている。一方、化学肥料を投入する化学土壌では、無機物のN, P, Kを別々に入れるため、均一で再現性のある土壌が作製可能であり、多くの種類の化学土壌が製造及び販売されている。しかしながら、農産物に硝酸塩(多量に摂取すると発がん等の危険性がある)が蓄積する傾向になるという課題がある。
[0004]
 また、有機土壌中では微生物がたえず活動するため、含有している有機肥料が変化しやすく、均一なものを提供しにくい。有機土壌の均一性に関しては、微生物の種類の再現性と投入有機物が無機物に変化するという不均一性に課題がある。一方、化学土壌は肥料成分として無機物を含有させており、水等で流出しない限り変化しない。したがって、化学土壌の肥料成分は安定である。
[0005]
 品質の高い培土の需要は年々高まっている。特に、家庭用園芸と施設農業においての培土需要は、非常に高い。これまで市販されている化学土壌培土の追肥は、これまでの研究により確立されており、窒素、リン酸、又はカリウムを所定の量を投入すればよい。しかしながら、軽さを追求している化学土壌培土は、使用劣化が激しく、肥料投入だけでは元に戻らず再利用は非常に難しい。このように、使用後の土壌処理は、厄介な問題であり、解決手法の開発が望まれている。
[0006]
 このような問題を解決する手段として、特許文献1~3では、有機農法又は自然農法による農作物の栽培に適した土壌の診断及び作製方法が報告されている。
[0007]
 また、椰子殻の粉砕物等、植物繊維を素材とした軽量な培土が、農業、園芸等によく利用されている。このような植物繊維を素材とした培土は、軽量なだけでなく、その繊維分により、栽培時の空隙率を高くでき、保水性及び透水性に優れるといった利点もある。
[0008]
 しかし、このような植物繊維には、ポリフェノール成分(タンニンなど、加水分解によって没食子酸などの多価フェノール酸を生ずる混合物)が含まれており、これが植物の生長を阻害するという問題がある。そこで、これら植物繊維を培土として利用する際に、タンニンを鉄イオンと反応させて不活性化させる方法が提案されている。
[0009]
 そして、特許文献4及び5では、木材砕片に対してクエン酸鉄アンモニウムを作用させることで、効果的にタンニンを不活性化することができ、植物の生育阻害を防ぐことができることが報告されている。

先行技術文献

特許文献

[0010]
特許文献1 : 国際公開第2010/107121号
特許文献2 : 日本国特開2011-182747号公報
特許文献3 : 日本国特開2011-184267号公報
特許文献4 : 日本国特開2018-117589号公報
特許文献5 : 日本国特開2018-117590号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 特許文献1~3は、有機農法又は自然農法による農作物の栽培に適した土壌の診断及び作製方法に関するものであるが、更なる改善の余地がある。
[0012]
 本発明は、高い通気性、透水性及び保水性を有し、軽量であり、且つ微生物の多様性及び総細菌数が向上した新規有機土壌、その製造方法及び該有機土壌を使用することを特徴とする植物の栽培方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、タンニンを不活性化させた針葉樹の木質断片で構成された木質培地を有機資材及び堆肥と組み合わせて有機土壌を作製することで、透水性及び保水性が高く且つ軽量である上、微生物の多様性及び総細菌数を増加させることができるという知見を得た。また、水分を含まない有機土壌を作製することにより、微生物の活動を抑え(休眠状態にする)、有機土壌中の微生物を一定にすることができ(微生物活動の制御が可能となり)、均一な有機土壌を作製できることを見出した。
[0014]
 本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の有機土壌、有機土壌の製造方法及び植物の栽培方法を提供するものである。
[0015]
項1.乾燥した木質培地と乾燥した有機資材と乾燥した堆肥とを含有する乾燥有機土壌であって、
該木質培地が針葉樹の木材砕片で構成され、該木材砕片が10 mm以下のメッシュを通過する範囲の大きさであり、
該木質培地が10~90容量%含まれる、乾燥有機土壌。
項2.前記木材砕片が鉄塩との接触により黒変しているものであって、乾燥有機土壌中に30~90容量%含まれる、項1に記載の乾燥有機土壌。
項3.全炭素量が12,000~35,000 mg/kg、全窒素量が900~1,800 mg/kg、全リン量が800~1,600 mg/kg、全カリウム量が900 mg/kg以上、且つC/N比が10~25である、項1又は2に記載の乾燥有機土壌。
項4.前記木材砕片が、界面活性剤を含有する、項1~3のいずれか一項に記載の乾燥有機土壌。
項5.更に乾燥した土を含有する、項1~4のいずれか一項に記載の乾燥有機土壌。
項6.以下の工程を含む、乾燥した木質培地と乾燥した有機資材と乾燥した堆肥とを含有する乾燥有機土壌の製造方法:
(A) 乾燥した木質培地を準備する工程、
(B) 乾燥した有機資材を準備する工程、
(C) 乾燥した堆肥を準備する工程、
(D) 該木質培地、該有機資材、及び該堆肥の各々に含まれる全炭素量、全窒素量、全リン量、及び全カリウム量を測定する工程、並びに
(E) 全炭素量、全窒素量、全リン量、全カリウム量、及びC/N比が所定の値になり、且つ該木質培地が10~90容量%含まれるように該木質培地、該有機資材、及び該堆肥を混合する工程。
項7.前記A工程が、針葉樹の木材を粉砕して、10 mm以下のメッシュを通過する範囲の大きさにする工程と、得られた木質砕片に鉄塩水溶液を接触させ黒変させる工程とを含む、項6に記載の製造方法。
項8.前記E工程における所定の値が、全炭素量が12,000~35,000 mg/kg、全窒素量が900~1,800 mg/kg、全リン量が800~1,600 mg/kg、全カリウム量が900 mg/kg以上、且つC/N比が10~25であり、前記木質培地が30~90容量%含まれるように混合される、項6又は7に記載の製造方法。
項9.項1~5のいずれか一項に記載の乾燥有機土壌を使用することを特徴とする植物の栽培方法。

発明の効果

[0016]
 本発明の乾燥有機土壌は、高い通気性、透水性及び保水性を有し、軽量であり、且つ微生物の多様性及び総細菌数が顕著に向上しているという優れた特性を有している。
[0017]
 本発明の乾燥有機土壌は、微生物の活動を抑え、有機土壌中の微生物を一定にすることで、有機物の無機物への変化が抑制され、均一性に優れている。また、乾燥した木質培地、有機資材、堆肥、土などを調合し、成分含有量(全炭素量、全窒素量、C/N比など)を調整して製造可能なため、ロット間格差が無く優れた製造再現性を有する。
[0018]
 その上、本発明の乾燥有機土壌に、水分を除いた堆肥及び有機資材を分析し、分析値に従い調合及び投入することで、効果的な追肥効果を発揮することが可能である。また、この手法を使うことにより、使用後の土壌の再利用が可能である。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 無処理のスギ材及び、鉄塩との接触により黒変したスギ材を示す写真である。
[図2] 試験例5におけるPCR-DGGEによる菌叢解析の結果を示す写真である。

発明を実施するための形態

[0020]
 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[0021]
 なお、本明細書において「含む、含有する(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
[0022]
 本明細書で使用している用語の定義を以下に示す。
[0023]
 「土壌」とは、概念的なものであり、植物を栽培するための土台を構成する素材を意味し、土は必ずしも含まれていなくともよい。
[0024]
 「土」又は「乾燥した土」とは、岩石が風化して生成した粗粒又は細粒の無機物(一次鉱物)及び微細化されたコロイド状の無機物(粘土鉱物あるいは二次鉱物)をいう。
[0025]
 「化学土壌」とは、植物の生育に必要な肥料成分を無機物のN, P, K等の主成分からなる化学肥料で添加した培土であって、予め植物の吸収可能な態様で栄養成分を添加しているため、必ずしも微生物の働きを借りなくとも植物が育つことを目的とした土壌をいう。
[0026]
 「有機土壌」とは、土壌中に発酵又は未発酵の粗大有機物又は腐植等を混合し、これらの粗大有機物を微生物の働きにより有酸素的に分解し、植物の生育に必要な栄養分を得ることを目的をした土壌をいう。補助的に化学肥料を用いることを否定しないが、多様な微生物を多量に含むことを特徴とする土壌である。
[0027]
 「培土」とは、概念的なものであり、植物を栽培するための土台を構成する素材を意味し、必ずしも土を含む必要はない。
[0028]
 「全炭素」(本明細書においてTCと呼ぶこともある)とは、土壌中の有機態炭素及び無機態炭素の総和を意味する。全炭素は全有機炭素計(TOC-V、株式会社島津製作所)及び固体試料燃焼装置(SSM-5000A、株式会社島津製作所)等により測定することができる。
[0029]
 「全窒素」(本明細書においてTNと呼ぶこともある)とは、土壌中の有機態窒素及び無機態窒素の総和を意味する。全窒素はケルダール法-インドフェノール青法等により測定することができる。
[0030]
 「C/N比」とは、全炭素/全窒素(TC/TN)の質量比を意味する。
[0031]
 「全リン」(本明細書においてTPと呼ぶこともある)とは、土壌中の無機態及び有機態リンの総和を意味する。全リンはケルダール法-モリブデン青吸光光度法等により測定することができる。
[0032]
 「全カリウム」(本明細書においてTKと呼ぶこともある)とは、土壌中の水溶性、交換態及び固定カリウムの総和を意味する。全カリウムはケルダール法-原子吸光光度法等により測定することができる。
[0033]
 「乾燥した」とは、試料平均の水分量/絶乾重量が20%以下、好ましくは10%以下であることを意味する。
[0034]
 本発明の乾燥有機土壌は、乾燥した木質培地と乾燥した有機資材と乾燥した堆肥とを含有し、該木質培地が針葉樹の木材砕片で構成され、該木材砕片が10 mm以下のメッシュを通過する範囲の大きさであり、該木質培地が10~90容量%含まれることを特徴とする。本発明の乾燥有機土壌には、木質培地及び有機資材に加えて、更に土などを含有させることができる。
[0035]
 本発明の乾燥した木質培地と乾燥した有機資材と乾燥した堆肥とを含有する乾燥有機土壌の製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
(A) 乾燥した木質培地を準備する工程、
(B) 乾燥した有機資材を準備する工程、
(C) 乾燥した堆肥を準備する工程、
(D) 該木質培地、該有機資材、及び該堆肥の各々に含まれる全炭素量、全窒素量、全リン量、及び全カリウム量を測定する工程、並びに
(E) 全炭素量、全窒素量、全リン量、全カリウム量、及びC/N比が所定の値になり、且つ該木質培地が10~90容量%含まれるように該木質培地、該有機資材、及び該堆肥を混合する工程。
[0036]
 木質培地は、堆肥化されていない細かな木屑状の木材砕片で構成されており、その主たる原料は、針葉樹の木材である。ここで、堆肥化されていないとは、発酵により、木材を構成している多糖類等が生分解されていないことも意味する。木材砕片は、細分化されてはいるが、セルロースを主骨格とする木材の繊維成分は、その内部に残存した状態となっている。木材の繊維成分は、生分解され難いため、後述するように、木材を砕いて、保水性及び透水性が異なる所定の形態の木材砕片に形成することで、栽培対象の植物に適した栽培条件を長期にわたって維持できる培地が得られる。木質培地は、堆肥化されないものであることが望ましい。
[0037]
 木質培地の原料には、スギ、アカマツ、ヒノキ、トドマツ等、日本産の針葉樹が好適である。広葉樹は、針葉樹よりも、多糖類等、不安定な有機成分を多く含むだけでなく、微生物の働きを抑えるポリフェノール成分が少ないため、腐り易く、針葉樹に比べて品質の安定性に欠ける。針葉樹であれば、腐りにくいため、適切且つ安定したpF値(土壌の湿り具合を表す指標)及び三相分布(固相、液相、気相)を、長期にわたって維持できる。
[0038]
 さらに、日本産の針葉樹は、建築材料、木材加工材料などに多用されており、その製造時には多量の端材(木材の余分な切れ端)が発生する。その端材が、木質培地の原料に利用できる。したがって、スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、トドマツ材等、針葉樹の原料を安定して確保することができる。
[0039]
 ポリフェノール成分は、木材の部位では、特に樹皮に多く存在するが、その内側の辺材(樹木の周辺部分)及び心材(樹木の中心部分)にも存在する。そして、辺材よりも心材の方が、ポリフェノール成分の含量が多い傾向がある。そのため、心材よりも辺材を原料に多く用いるのが好ましい。具体的には、辺材と心材との割合が1:0~1:1の範囲となるように、原料となる木材の割合を設定するのが好ましい。
[0040]
 辺材の端材は、合板及び積層材を製造する際に多量に発生する。合板及び積層材の製造時には、薄板を形成するために、所定の寸法に分断した丸太を、外周から中心に向かって周方向に所定の厚みで剥いでいく工程がある。その工程の最初に得られる薄板は辺材である。また、最後に残る、剥き芯と称する丸太の中心部分からなる端材は心材である。このように各工程から得られる薄板の割合を調整することで、心材と辺材との割合を調整することができる。
[0041]
 木質培地は、細かな木屑状の木材砕片で構成されており、栽培対象の植物に応じた形態に設定されている。具体的には、木材の繊維成分の解け具合が、仕様に応じて設定されている。繊維分が解けるほど、保水性及び吸水性が高くなり易く、木材組織が残るほど、透水性(水はけ)が高くなり易い。
[0042]
 原料となる木材を砕く方法としては、例えば、回転鋸、カッターミルなどの切削粉砕機によって木材を細かく切断する方法(切削粉砕)、ハンマーミル、ピンミルなどの衝撃粉砕機によって木材を衝撃で砕く方法(衝撃粉砕)、エクストルーダー、ボールミルなどの摩砕粉砕機によって木材を磨り潰す方法(摩砕粉砕)がある。これらの中では、2軸摩砕粉砕が最も繊維分が解け易いため、摩砕粉砕によって木材を砕くことで保水性及び吸水性を高くできる。中でも、特許文献5に示される粉砕形状が最も好ましい。
[0043]
 木材砕片は、10 mm以下のメッシュを通過する大きさに調整するのが好ましい。10 mm以下のメッシュを通過しない大きな木材砕片は、根の延び先を塞いでその生長を阻害し易いし、そのような大きな木材砕片を含むと、粒度分布がばらついて扱い難い。また、一般的にセル育苗に用いられる小型のプラスチック容器に充填しづらいという問題もある。10 mm以下のメッシュを通過する大きさに調整することで、適切な粒度分布が得られ、適度な保水性及び透水性を得ることができる。また、3 mm以上のメッシュを通過する大きさに調整するのが好ましい。3 mm以上のメッシュを使用することで、分級効率の低下を防ぐことができる。
[0044]
 木質培地が針葉樹の木材砕片で構成されるとは、針葉樹の木材砕片のみで構成される状態、及び針葉樹の木材砕片以外の成分を含む状態の両方を包含し、針葉樹の木材砕片のみで構成されることが望ましい。
[0045]
 さらに、木材砕片は、鉄塩との接触により黒変していることが好ましい。黒変により、タンニン成分が不活性化され微生物に対する抗菌機能が不活性化される。また、このような鉄塩との接触により黒変している木材砕片は、乾燥有機土壌中に30~90容量%含まれることが好ましい。
[0046]
 木材砕片に対する黒変は、木材に含まれるポリフェノール成分(例えば、タンニン)の不活性化を目的とした硫酸鉄と、その硫酸鉄をキレート化させるために添加されるクエン酸との処理により生じたものであることが望ましい。さらに、木材砕片の品質を向上させるために、必要に応じて、木材砕片は界面活性剤及びpH調整剤を含有する。
[0047]
 硫酸鉄及びクエン酸は、個別に木材砕片に添加するのではなく、水を主体とする薬液(改質薬液)に混合した状態で、木材砕片に噴霧等することによって木質培地に添加される。これにより、硫酸鉄はキレート化され、木材砕片を安定的に黒変することができる。
[0048]
 鉄塩としては、硫酸鉄が最も好ましい。硫酸鉄は、針葉樹を黒変させる効果が最も高いだけでなく、食品添加物に指定されている安全な薬剤である。硫酸鉄、具体的には、硫酸第一鉄等は、ポリフェノール成分との反応性が高いため、ポリフェノール成分と結合して黒変(不活性化)するには最も効果的である。しかし、土壌中に硫酸鉄が多量に存在すると、特許文献4に示すとおり、根の発育障害を引き起こすため、木材砕片を黒変させる時の添加量が過剰にならない配慮が必要である。また、余剰の鉄塩が培地中に存在すると、植物の生育阻害の原因となる。したがって、木材砕片の絶乾重量に対する硫酸鉄の濃度は、0.15質量%以上0.35質量%以下となるように調整するのが好ましい。特に、スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、及びトドマツ材では、優れた改質効果が得られる。この範囲であれば、植物の生長が阻害されることがない。なお、ここでいう「硫酸鉄」は、主に硫酸第一鉄(FeSO 4・7H 2O)のことである。鉄塩としては、塩化鉄、硫酸アンモニウム鉄(II)のような他の二価の鉄塩、及び硫酸第二鉄、クエン酸鉄アンモニウム等の三価の鉄塩も使用することができる。例えば、硫酸第二鉄とした場合、前記含有比率は、水和水を除く質量に基づいて換算すればよい。
[0049]
 硫酸鉄は、水溶液にした場合、比較的短時間で沈殿が生成するという問題があるが、クエン酸を加えることで、硫酸鉄をキレート化することができ、薬液中で長時間、沈殿を生成することなく安定化することができる。改質薬液の硫酸鉄の質量に対するクエン酸の質量の含有比率(クエン酸の含有質量/硫酸鉄の含有質量、以下、「クエン酸/硫酸鉄比率」と称する)としては、0.05以上に調整するのが好ましく、0.1以上に調整するのがより好ましい。また、改質薬液のクエン酸/硫酸鉄比率は、0.3以下に調整するのが好ましい。この範囲であれば、改質薬液としての適切な品質を、長期にわたって安定的に確保することができ、木材砕片の優れた改質効果も期待できる。
[0050]
 また、鉄塩としてはポリフェノール成分と結合し黒変させる、例えば、塩化鉄等も使用できる。上記スギ材、アカマツ材、ヒノキ材、及びトドマツ材以外の樹種を使用する場合も、含有されるポリフェノール成分の量に応じて鉄塩量を調整すればよい。いずれにしても、針葉樹と鉄塩とを接触させ、針葉樹が黒変(不活性化)していればよく、且つ、余剰の鉄塩による生育阻害が発生しない配慮をし、余剰の鉄塩については、クエン酸の添加によりキレート化されているのが望ましい。
[0051]
 木材砕片は、乾燥することによって撥水性が生じる。撥水性が生じた木材砕片で木質培地が構成されていると、撥水により水みちといわれる水の通り道ができてしまい、水分分布が不均質となり、植物の生長阻害を招くおそれがある。それに対し、界面活性剤を木材砕片に添加することで、木質培地全体に均一に水分が浸透し、植物の生長阻害を抑制するだけでなく、植物の生長を促進できる効果が得られる(特許文献4参照)。したがって、界面活性剤を、補助的な原料として木材砕片に添加してもよい。また、他の方法として、日本国特開2005-341898号公報に開示されるように、粘土鉱物を添着し、乾燥させることで撥水性を改善する手法をとってもよい。
[0052]
 さらに、植物は、一般に、弱酸性から中性のpHを好むものが多いが、それぞれ適したpHがある。したがって、栽培対象とする植物に応じたpH調整剤を、補助的な原料として、木材砕片に添加してもよい。例えば、アルカリ性調整剤としての炭酸カルシウム、酸性調整剤としてのピートモスなど、仕様に応じて木材砕片に添加すればよい。特に、黒変された木材砕片が使用される場合は、pHが2~3以下になるような強酸性は好ましくないため、pHが4~9程度、好ましくは5~8程度に調整されるのが望ましい。
[0053]
 上述した木質培地の製造後、すなわち、木材砕片に改質薬液が混合された後においても、ポリフェノール成分と硫酸鉄との結合によるポリフェノール成分の不活性化は徐々に進行していく。したがって、木質培地の製造後、直ちに使用するのではなく、少なくとも一定期間放置(養生)するのが好ましい。例えば、1週間程度、好ましくは2週間程度の養生期間を確保するのが好ましい。木質培地の製造後に、このような養生期間を設けることで、より高品質な木質培地を得ることができる。
[0054]
 乾燥有機土壌中には、木質培地は10~90容量%含まれ、好ましくは30~60容量%含まれる。木質培地を10容量%以上含むことで優れた透水性が得られるようになり、30容量%以上含むことで優れた軽量性が得られるようになる。また、針葉樹の木材砕片は、本来的に微生物に対する抗菌性を発現するため、10~30容量%の場合は無処理の針葉樹からなる木材砕片を使用してもよいが、30容量%を超える添加量の場合は、鉄塩との接触により黒変した木材砕片を使用するのが好ましい。また、乾燥有機土壌中には、育苗用のポット栽培、鉢花等の持ち運び時の軽量化の観点から、木質培地が50容量%以上又は60容量%以上含まれることも好ましく、この場合は鉄塩との接触により黒変した木材砕片を使用するのが特に好ましい。
[0055]
 有機資材としては、発酵が行われていない物(未発酵資材)である限り特に限定されず、このような未発酵資材としては、例えば、大豆かす、油かす、籾殻、魚粉、米ぬか、おから、ココナッツファイバー、ピートモス、稲ワラ、水苔、水草、わら、落ち葉、刈草、バーク、骨粉、ペプチド、クロレラ、竹チップなどが挙げられる。有機資材は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[0056]
 堆肥としては、特に制限されず、各種公知の堆肥を使用でき、例えば、バーク堆肥などの植物堆肥、馬糞堆肥、鶏糞堆肥、牛糞堆肥、豚糞堆肥などの家畜堆肥、海藻堆肥、生ごみ堆肥、腐葉土などが挙げられる。堆肥は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。乾燥させた堆肥を木質培地に添加することで、休眠状態の微生物を多量に供給することができる。したがって、堆肥を乾燥させる場合は、殺菌、滅菌が進行する高温での乾燥ではなく、60℃以下、好ましくは40℃以下の通風乾燥、又は天日乾燥が好ましい。
[0057]
 土としては、特に制限されず、各種公知の土を使用でき、例えば、黒土、赤土、山土、バーミキュライト、天然ゼオライト、鹿沼土、砂、真砂土等を使用することができ、上記以外の人工処理された無機物として、例えば、赤玉土、精製ゼオライト、パーライト等を用いることができる。土は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[0058]
 本発明の乾燥有機土壌には、木質培地、有機資材、堆肥及び土以外の成分を添加することもでき、そのような成分としては、例えば、微生物、ミネラルなどが挙げられる。
[0059]
 本発明の乾燥有機土壌は、乾燥状態であることを特徴とし、水分の含有率は、通常0~25質量%程度、好ましくは5~20質量%程度、より好ましくは5~10質量%程度である。本発明の乾燥有機土壌は、乾燥した状態の材料(木質培地、有機資材、堆肥、土など)を混合して作製することもできるし、又は乾燥していない状態の材料(木質培地、有機資材、堆肥、土など)を混合して調製した有機土壌を乾燥して作製することもできる。有機土壌及び材料を乾燥させる方法としては、例えば、通風乾燥、天日乾燥などの自然乾燥、加熱空気を使用する機械的な強制乾燥などが挙げられる。
[0060]
 土壌微生物は生物であり、土壌中で生きており、活動している。一方、微生物は休眠状態というステージを有しており、乾燥を行うことで、この休眠状態を活用することにより、微生物活動の制御が可能となる。結果として、均一な有機土壌を得ることができる。
[0061]
 本明細書において、微生物を一定にするとは、微生物を休眠状態にし増殖させず微生物数を一定にすることを意味する。
[0062]
 また、このように有機土壌を乾燥させることで、軽量化することもでき、輸送コストなどを低減させることができる。また、病原菌及び雑草を低減することもできる。
[0063]
 本発明の乾燥有機土壌は、成分含有量が適切な範囲となるように(例えば、全炭素量、全窒素量、C/N比、全リン量、全カリウム量が後述する範囲となるように)、乾燥した木質培地、有機資材、堆肥、土などの材料を適切な混合比で配合して製造することができる。乾燥した材料を用いて配合することで、成分含有量を精密に制御することが可能となる。ここで乾燥していない材料を配合した後に乾燥を行うこともできる。また、材料を配合する前に、木質培地、有機資材、堆肥、土などの材料の成分含有量(例えば、全炭素量、全窒素量、C/N比、全リン量、全カリウム量など)の測定を実施することで、適切な混合比を求めることが可能となる。
[0064]
 本発明の乾燥有機土壌は、以下の成分含有量(特に、最適値)を有していることが望ましい。
[0065]
 乾燥重量あたり各成分含有量
 ●全炭素量(TC):12,000~35,000 mg/kg、最適値:18,000~30,000 mg/kg
 ●全窒素量(TN):900~1,800 mg/kg、最適値:1,000~1,500 mg/kg
 ●C/N:10~25 (好ましくは16~20)
 ●全リン量(TP):800~1,600 mg/kg、最適値:900~1,400 mg/kg
 ●全カリウム量(TK):900 mg/kg以上、最適値:1,000~5,000 mg/kg
[0066]
 なお、ここでの全炭素量及びC/N比を求める際の全炭素量には、微生物が利用できる炭素のみが含まれ、微生物が利用できない炭素は含まれない。このような微生物が利用できる全炭素量は、無機化率(炭素分解可能な割合)を測定することで求めることができる。
[0067]
 上記の成分含有量は、5,000検体を超えるSOFIX (商標)データベースに基づいて求められた、生物性、化学性、及び物理性においてバランスの取れた成分含有量である。ここでのSOFIXとは、有機栽培をはじめとする物質循環型農業に望ましい土壌成分の量とバランスを数値化する診断指標であり、植物生長に関する成分と物質循環に関する成分とを測定するものである(例えば、国際公開第2010/107121号参照)。
[0068]
 このような成分含有量を指標として正確な材料の調合を行うことで、ロット間格差が無く再現性が高い土壌を作製することができる。当該有機土壌を使用することで、土壌中において、高い菌数の維持と均一な菌叢の再現とが可能となる。その結果、植物の高い収穫量を再現性を持って得ることができる。
[0069]
 本発明の乾燥有機土壌は、乾燥状態であるので、植物の栽培前に水を添加し、3~10日程度放置する。水の添加量は、最大保水容量の10~40容量%程度、又は含水率10~40質量%程度である。このように、水分を加えて放置することで、微生物を休眠状態から回復させることでき、微生物を増殖させることも可能である。
[0070]
 また、本発明の植物の栽培方法は、上記乾燥有機土壌を使用することを特徴とする。本発明の植物の栽培方法は、例えば、乾燥有機土壌に水を添加し放置する工程、及び放置後の有機土壌に植物を植え付ける工程などを含み得る。ここでの「植え付け」には、植物の種を播くことの意味も包含する。
[0071]
 本発明の乾燥有機土壌を使用して栽培することができる植物としては、本発明の乾燥有機土壌で生育できるものであれば特に限定されず、例えば次のものを挙げることができる。葉菜(例えば、はくさい、ホウレンソウ、キャベツ、レタス、コマツナ、ミズナ、シュンギク、ねぎ、たまねぎ、ブロッコリー、アスパラガス)、根菜(例えば、にんじん、だいこん、ごぼう、さといも、長芋、れんこん、かぶ)、果菜(例えば、トマト、ミニトマト、なす、ピーマン、きゅうり、すいか、イチゴ、かぼちゃ、メロン、スイートコーン)等の蔬菜;リンゴ、ナシ、ブドウ、カキ、ブルーベリー等の果樹;大豆、枝豆、小豆、空豆、落花生、インゲン等の豆類;茶;たばこ;綿花;大麦、小麦、燕麦、ライ麦等の麦;パンジー、マリーゴールド、サルビア、ペチュニア、日々草、菊、カーネーション、薔薇、リンドウ、宿根カスミソウ、ガーベラ、スターチス、トルコギキョウ、アルストロメリア、ゆり、チューリップ、シクラメン、グラジオラス、フリージア、プリムラ、デンドロビウム、ベゴニア、シンビジウム、ポインセチア、ファレノプシス、ビオラ、デージー、スコバリア、カリブラコア等の花卉;サボテン等の多肉植物;及びセイヨウシバ、コウライシバ等の芝;緑化植物を挙げることができる。
[0072]
 本発明の乾燥有機土壌を用いた上記の植物の栽培は、公知の方法に従って行うことができる。
[0073]
 本発明の乾燥有機土壌は、例えば、家庭菜園、ビニールハウス栽培、プランター栽培、ポット栽培、植物工場、屋上緑化、壁面緑化などに使用することが可能である。ここで植物工場とは、温度、湿度、光などを人工的に調整、制御しながら、閉鎖的又は半閉鎖的な空間内で植物栽培を行う施設である。
[0074]
 土壌中の菌叢を安定化させ、均一にすることにより、有機土壌の微生物再現が可能となる。微生物の活動は、「温度」、「湿度」、「有機物含量」、「pH」等の生物性、化学性、物理性の3要素で異なる。本発明で開発した有機土壌では、水分を含まない有機土壌を作製することにより、微生物の活動を抑え(休眠状態にする)、有機土壌中の微生物を一定にすることが可能となった。
[0075]
 本発明の乾燥有機土壌によれば、高い通気性、透水性及び保水性を有している上に、軽量であり、微生物の多様性及び総細菌数が向上している。また、本発明の乾燥有機土壌によれば、微生物の活動を抑え、有機土壌中の微生物を一定にすることで、有機物の無機物への変化が抑制され、均一性に優れている。さらに、乾燥した木質培地、有機資材、堆肥、土などを調合し、成分含有量を調整して製造可能なため、ロット間格差が無く優れた製造再現性を有する。また、農産物毎にオーダーメードで成分調整も可能である。その上、本発明の乾燥有機土壌に、水分を除いた堆肥及び有機資材を分析し、分析値に従い調合及び投入することで、効果的な追肥効果を発揮することが可能である。この手法を使うことにより、使用後の土壌の再利用が可能であり、経済的及び環境的にも優れる。本発明の乾燥有機土壌によれば、高い収穫量が再現性を持って得られる上、廃棄する場合においても木質培地を含むことから焼却物として取り扱うこともできる。
[0076]
 また、本発明の乾燥有機土壌によれば、物質循環(窒素循環及びリン循環)を増殖した微生物が寄与することで向上させることも可能である。
実施例
[0077]
 以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
[0078]
  試薬及び機器
 使用した実験試薬は、ナカライテスク株式会社(京都)、富士フイルム和光純薬株式会社(大阪)から購入したものである。使用した機器を表1に示す。
[0079]
[表1]


[0080]
  製造例
 ・改質木質1の製造方法
 木材砕片としては、スギ材を使用した。チップ状に切削加工された堆肥化されていないスギ材をロータリーカッターミルで切削粉砕し、4 mmメッシュを通過する大きさに揃えた。
[0081]
 次に、所定のクエン酸/硫酸鉄比率が0.1、且つ硫酸鉄の水溶液の濃度が1質量%となるように、改質薬液を調製した。硫酸鉄は、硫酸第一鉄(FeSO 4・7H 2O)を使用した。木材砕片の絶乾重量に対して硫酸鉄の濃度が0.15質量%となるように、その改質薬液を木材砕片に噴霧した。
[0082]
 さらに、非イオン系界面活性剤(竹本油脂社製)を水溶液の濃度が2.0質量%となるように添加し2次改質薬液を調製した。木材砕片の絶乾重量に対して界面活性剤が0.3質量%となるように、その2次改質薬液を木材砕片に噴霧した後、pHが6.5になるようにpH調整剤を添加し、14日間養生した。その後、天日干し、含水率が15質量%となるように乾燥させ改質木質1を得た。
[0083]
 ・改質木質2の製造方法
 木材砕片としては、スギ材を使用した。チップ状に切削加工された堆肥化されていないスギ材を2軸摩砕装置(モリマシナリー社製)を使用し繊維化した後、ロータリーカッターミルで切削粉砕し、4 mmメッシュを通過する大きさに揃えた(日本国特開2018-117590号公報参照)。
[0084]
 次に、所定のクエン酸/硫酸鉄比率が0.1、且つ硫酸鉄の濃度が1質量%となるように、改質薬液を調製した。硫酸鉄は、硫酸第一鉄(FeSO 4・7H 2O)を使用した。木材砕片の絶乾重量に対して硫酸鉄の濃度が0.15質量%となるように、その改質薬液を木材砕片に噴霧した。
[0085]
 さらに、非イオン系界面活性剤(竹本油脂社製)を水溶液の濃度が2.0質量%となるように添加し2次改質薬液を調製した。木材砕片の絶乾重量に対して界面活性剤が0.3質量%となるように、その2次改質薬液を木材砕片に噴霧した後、pHが6.5になるようにpH調整剤を添加し、14日間養生した。その後、天日干し、含水率が15質量%となるように乾燥させ改質木質2を得た。
[0086]
 このようにして得られた改質木質の写真を図1に示す。
[0087]
 以下、SOFIX標準培土の一部組成を木質培地で置き換えた土壌の成分分析の結果を示す。
[0088]
  試験例1:土壌の成分分析
 SOFIX標準培土の一部組成を木質培地で置き換えた土壌(改質木質2:山土:黒土=6 : 3 : 1(v/v)、以下、改質木質2-60%と称する)について、全炭素濃度(TC)、全窒素濃度(TN)、全リン濃度(TP)、全カリウム濃度(TK)を分析した。
[0089]
  (1) 全炭素濃度(TC)の測定
 土壌をサンプルボードに適量を量りとり、固体試料燃焼装置SSM-5000A (株式会社島津製作所、京都)にセットした。900℃に加熱し、森林バイオマス中の有機物を熱分解して二酸化炭素に変換した。生じた二酸化炭素濃度の量を全有機体炭素計TOC-V CPH (株式会社島津製作所、京都)で測定し、1.0 g当たりの全有機体炭素量(%)を測定し、全炭素濃度(TC)とした。キャリアガスは酸素を用い、全有機体炭素計のガス流を40 mL/minに、固体試料燃焼装置のガス流量を500 mL/minに調節した。
[0090]
  (2) ケルダール法による全成分分解抽出
 ケルダール法を用いて有機物を分解し、土壌中の全成分分解抽出液を得た。ケルダール専用試験管にサンプル粉末0.5 gと硫酸銅(II)五水和物0.5 gとを加えた。さらに硫酸と過酸化水素5.0 mLとを加えた。ケルダール専用試験管をケルダール分解装置ケルダーム(ゲルハルトジャパン株式会社、東京)にセットし、420℃で1.5時間加熱した。30分間放冷した後、蒸留水を加えて適宜希釈した。この希釈液を100 mL三角フラスコにろ過し、蒸留水を加えて100 mLにメスアップした。これより得た溶液を全成分分解抽出液として、全窒素濃度、全リン濃度、全カリウム濃度の測定に用いた。
[0091]
  (3) 全窒素濃度(TN)の測定
 ケルダール法によって調製した全成分分解抽出液を試料として、インドフェノール青法で全成分分解抽出液中のアンモニウムイオン濃度を定量した。全成分分解抽出液1.0 mLと蒸留水1.0 mL (ブランク)とをそれぞれ別の試験管に加えた。各試験管にフェノールニトロプルシッド溶液(表2、3) 400μLと次亜塩素酸ナトリウム溶液(表4) 600μLとを加えて静置した(室温、45 min)。分光光度計 U-1900 (株式会社日立ハイテクノロジーズ、東京)で635 nmでの吸光度をブランクで0調節して測定した。検量線に代入して全炭素濃度(TN)を決定した。検量線は、硫酸アンモニウムから調整したアンモニウムの希釈系列(0、0.1、0.2、0.4、0.8、1.6 mg/L)から作成した。
[0092]
[表2]


[0093]
[表3]


[0094]
[表4]


[0095]
  (4) 全リン濃度(TP)の測定
 ケルダール法によって調製した全成分分解抽出液を試料として、モリブデン酸アンモニウム法で全成分分解抽出液中のリン酸イオン濃度を定量した。全成分分解抽出液1.0 mLと蒸留水1.0 mL (ブランク)とをそれぞれ別の試験管に加えた。各試験管にモリブデン酸アンモニウム溶液(表5)とアスコルビン酸溶液(表6)とを5:1の割合で混合し、その混合溶液100μL加えて静置した(30℃、30 min)。分光光度計U-1900で710 nmでの吸光度をブランクで0調節して測定した。検量線に代入して全リン濃度(TP)を決定した。
[0096]
[表5]


[0097]
[表6]


[0098]
  (5) 全カリウム濃度(TK)の測定
 ケルダール法によって調製した全成分分解抽出液を試料として、全成分分解抽出液中に含まれる全カリウム濃度(TK)を原子吸光光度計Z-2300 (株式会社日立ハイテクサイエンス、東京)で測定した。
[0099]
 改質木質2-60%の成分量についてまとめた結果を以下の表7に示す。
[0100]
[表7]


[0101]
  (6) 改質木質の無機化率解析
 SOFIX標準培土に含水率が30%になるように水を加え、室温で1週間放置した(毎日、水分量を調整)。細菌数が、6×10 cells/g以上になったことを確認後、全炭素量(TC)を測定し、初期TCとした。その後、改質木質、堆肥又は有機資材を1%(w/w)加え、1週間毎にTCを測定し(初期TC+各資材のTC)、投入した資材の残存するTCを求めた(表8)。この結果から、改質木質は、ほとんど分解しないことが明らかとなった。したがって、本発明では、改質木質の炭素量は、土壌分析された成分としては算入しないこととする。
[0102]
[表8]


[0103]
  試験例2:改質木質混合による土壌物性の改善
  2.1 実験方法
 SOFIX標準培土は、バーミキュライト(以下、「V」)、山土(以下、「M」)、ピートモス(以下、「P」)、黒土(以下、「B」)を5 : 3 : 1 : 1で配合したものに、有機資材を必要量混合した。ここでは、SOFIX標準培土の一部成分を改質木質と置き換えた時の土壌物性の改善効果を評価した。
[0104]
 具体的には、バーミキュライトの全量を改質木質と置き換えた場合、及びバーミキュライトの全量及びピートモスを改質木質と置き換えた場合について、改質木質1及び改質木質2のそれぞれについて評価した(詳細は表9に示す)。
[0105]
 SOFIX標準培土と、SOFIX標準培土の一部成分を2種類の改質木質と置き換えた土壌をそれぞれ混合し、そこに有機資材を施肥したものをそれぞれ作製土壌とした(表9)。作製土壌に有機肥料成分を、牛糞堆肥5%、油かす及び大豆かす0.25%、骨粉0.05%(w/w)となるように添加した。各作製土壌について、最大保水容量及び密度を測定した。
[0106]
 (1) 最大保水容量の測定
 土壌試料を60℃の乾熱滅菌器SH400 (ヤマト科学株式会社、東京)で1日乾燥させ、乾燥土壌を準備した。ロートによく濡らした濾紙をセットし、乾燥した土壌10.0 gを濾紙にのせ、そのロートを重量を測定したコニカルビーカー(A)にセットした。土壌に蒸留水30 mLを加え、蒸留水がロート及び濾紙から落ち切るのを待ってロートを取り外し、水の入ったコニカルビーカーの重量を測定した(B)。最大保水容量(mL/kg)=[30-((B)-(A))]/10×100で、最大保水容量を算出した。
[0107]
 (2) 密度の測定
 重量を測定した100 mL容メスシリンダーに、風乾させた土壌を100 mLまで定容し、重量を測定した。
[0108]
  2.2 結果
 作製土壌の最大保水容量、密度についてまとめた結果を以下の表9に示す。改質木質を混合することで、バーミキュライトと比較すると、最大保水容量は向上し、密度は低下し軽くなった。
[0109]
[表9]


[0110]
  試験例3:微生物量の向上
  3.1 実験方法
 作製土壌を一週間静置した後、7日間の総細菌数の変化を観察した。土壌中の総細菌数をeDNA法により定量した。
[0111]
 (1) 環境DNA (eDNA)の抽出
 50 mL容ファルコンチューブに、土壌1.0 gを量り取り、DNA抽出緩衝液(表10) 8.0 mL及び20%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液を加えた。微生物DNA抽出前処理装置IMC-1001 (株式会社井元製作所、京都)にファルコンチューブをセットし、撹拌(1,500 rpm、20 min)した。得られた混合液1.5 mLを2.0 mL容マイクロチューブに分取し、遠心分離(8,000 rpm、20℃、10 min)した。有機溶媒耐性マイクロチューブに水層700μLを取り、クロロホルム・イソアミルアルコール(24:1, v/v) 700μLを加えて混和した後、遠心分離(14,000 rpm、20℃、20 min)した。1.5 mL容マイクロチューブに水層500μLを分取し、2-プロパノールを300μL加えて混和した後、遠心分離(14,000 rpm、20℃、20 min)した。水層を除去した後、70% (v/v)エタノール1.0 mLを加えて遠心分離(14,000 rpm、20℃、5 min)した。水層を除去した後、自然乾燥(室温、1 day)した。これに、10:1 TE緩衝液(表11)を50μL加えてよく懸濁し、これをeDNA溶液とした。
[0112]
[表10]


[0113]
[表11]


[0114]
 (2) アガロースゲル電気泳動
 蒸留水にアガロース2.0及び50×TAE緩衝液(pH 8.0)(表12) 4.0 mLを加えて200 mLとし、加熱溶解させて1.0 %アガロースゲルを作製した。eDNA抽出溶液10μLにLodading Dye (bromophenol blue) 2μLを混合して作製した溶液、及び既知量のDNAを含むSmart Ladder 1.5μLをアガロースゲルのウェルにアプライした。泳動用緩衝液に1×TAE緩衝液を用いて、電気泳動装置Mupid (商標)-exU (株式会社アドバンス、東京)でアガロースゲル電気泳動(100V、30 min)を行った。アガロースゲルをエチジウムブロマイド溶液に15分間浸して染色した後、蒸留水に10分間浸して洗浄した。
[0115]
[表12]


[0116]
 (3) 土壌中の総細菌数の定量
 ゲル撮影装置WSE-5200 Printgraph 2M (アトー株式会社、東京)を用いてアガロースゲルにUVを照射し、エチジウムブロマイドを標識としたDNAバンドを確認した。KODAK 1D Image Analysis software (KODAK、東京)を用いて、DNAバンドの蛍光強度を測定した。Smart LadderのDNAバンドにおける蛍光強度に対するDNA量の検量線を作成し、各土壌eDNA溶液のDNAバンドの蛍光強度からDNA量を求め、土壌1.0 g当たりの総細菌数を算出した。eDNA量をDAPI染色による総細菌数に換算する検量線によって土壌総細菌数を求めた。定量したeDNA量を関係式Y = 1.7×10 8X (R 2 = 0.96)[Y: 土壌総細菌数(cells/g-soil), X: eDNA量(μg/g-soil)]を用いて土壌総細菌数を算出した。
[0117]
  3.2 結果
 土壌総細菌数の結果を表13に示す。0日目の総細菌数は、改質木質を用いた作製土壌は、バーミキュライトを用いた作製土壌よりも2.81~3.63倍であった。改質木質を用いることで、土壌総細菌数が顕著に向上した。
[0118]
[表13]


[0119]
  試験例4:植物生長の向上
  4.1 実験方法
 総細菌数の増加率、上記の作製土壌を用いて、コマツナの栽培実験を行った。
[0120]
 コマツナの種子を36穴セルトレイに市販の化学土壌として花ちゃん培養土(株式会社花ごころ、愛知)を用いて播種し、7日間生育させて苗を作出した。各作製土壌が150 g入った育苗用ポリポットを用意し、苗を3本ずつ定植した。実験は3連で行った。栽培は植物工場(12時間:明、12時間:暗、23℃)で4週間行い比較した。植物体を20~100 gをとり、5倍量水を添加した。その後、ミキサーで1分間粉砕後、20,000gで10分間遠心分離し、上清をサンプルとした。
[0121]
 硝酸イオン濃度は、ブリシン・4-アミノベンゼンスルホン法により測定し、1 kg (湿重量)当たりの濃度を算出した。植物から得られた抽出液200μLにブルシン・4-アミノベンゼンスルホン酸溶液(表14) 100μLを加え混和した。これに、硫酸(水:濃硫酸=3:20) 1.0 mlを加え攪拌し、静置(冷暗所, 10分間)した。水1.0 mLを加え攪拌し、静置(冷暗所, 30分間)した後、410 nmでの吸光度を測定し、硝酸態窒素の定量を行った。検量線は、硝酸カリウムから調整した硝酸イオンの希釈系列(0、1、5、10、25、50 mg/L)から作成した。得られた硝酸態窒素含量の値を硝酸イオン含量(mg/kg)に換算した。
[0122]
[表14]


[0123]
  4.2 結果
 各土壌で栽培したコマツナの地上部重量、収量及び硝酸イオン含量について、表15に示す。バーミキュライト条件の収量を100%とした時、改質木質を使った場合、顕著な収量増が認められた。また、硝酸イオンは、いずれも低い値を示し、特に改質木質を用いたものはさらに低い値を示した。同時に行った化学肥料土壌(花ちゃん培養土)を用いた場合のコマツナの硝酸イオン濃度は、1,177 mg/kg‐FWを示した。
[0124]
 その他にもミズナ、キャベツ、イチゴ、ブロッコリー、ホウレンソウ、ブドウ、メロン及びブルーベリーでも同様の結果を確認した。
[0125]
[表15]


[0126]
  試験例5:菌叢解析
  5.1 実験方法
 eDNA抽出液を適宜希釈し、表の組成(表16及び表17)と条件(表18)とでPCRによる16S rRNA遺伝子の増幅を行った。
[0127]
[表16]


[0128]
[表17]


[0129]
[表18]


[0130]
 DCode System (Bio-Rad、カリフォルニア州)を用いて、PCR-DGGE分析を行った。
[0131]
 40%アクリルアミド(表19)、尿素、ホルムアミド、50×TAE緩衝液を用いて変性剤濃度勾配27.5%~67.5%のアクリルアミドゲル(表20)を作製した。アクリルアミドのウェルに1×TAE緩衝液を入れた後、上記PCR産物23μLとLoading Dye (東洋紡株式会社、大阪) 10μLとを混合した溶液をアプライした。ゲルのゆがみ及び異なる泳動間でバンドの比較を行うため、ゲルの両端にはDGGE Marker II (株式会社ニッポンジーン、東京)を5μLずつアプライした。7.0 Lの1×TAE緩衝液を電気泳動用タンクに入れ、電気泳動温度制御モジュール(Bio-Rad、カリフォルニア州)を被せて水温を60℃にした。
[0132]
 アクリルアミドゲルがセットされたサンドイッチコアユニットを電気泳動タンク(Bio-Rad、カリフォルニア州)に入れ、パワーサプライヤー(Power Pac、Bio-Rad、カリフォルニア州)で電流を流し電気泳動した(60℃、15 hr、70V)。電気泳動後、アクリルアミドゲルを蒸留水に30分間浸し、変性剤を蒸留水中に溶出した。その後、蒸留水で5,000倍に希釈したエチジウムブロマイドで染色(30 min)後、トランスイルミネーターWSE-5200 Printgraph 2M (アトー株式会社)を用いて、UV照射し、DNAバンドを確認した。
[0133]
[表19]


[0134]
[表20]


[0135]
  5.2 結果
 PCR-DGGE解析の結果を図2に示す。その結果、改質木質を用いた場合、バンド数が顕著に増えており、菌叢が増していることが明らかとなった。

請求の範囲

[請求項1]
 乾燥した木質培地と乾燥した有機資材と乾燥した堆肥とを含有する乾燥有機土壌であって、
該木質培地が針葉樹の木材砕片で構成され、該木材砕片が10 mm以下のメッシュを通過する範囲の大きさであり、
該木質培地が10~90容量%含まれる、乾燥有機土壌。
[請求項2]
 前記木材砕片が鉄塩との接触により黒変しているものであって、乾燥有機土壌中に30~90容量%含まれる、請求項1に記載の乾燥有機土壌。
[請求項3]
 全炭素量が12,000~35,000 mg/kg、全窒素量が900~1,800 mg/kg、全リン量が800~1,600 mg/kg、全カリウム量が900 mg/kg以上、且つC/N比が10~25である、請求項1又は2に記載の乾燥有機土壌。
[請求項4]
 前記木材砕片が、界面活性剤を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の乾燥有機土壌。
[請求項5]
 更に乾燥した土を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の乾燥有機土壌。
[請求項6]
 以下の工程を含む、乾燥した木質培地と乾燥した有機資材と乾燥した堆肥とを含有する乾燥有機土壌の製造方法:
(A) 乾燥した木質培地を準備する工程、
(B) 乾燥した有機資材を準備する工程、
(C) 乾燥した堆肥を準備する工程、
(D) 該木質培地、該有機資材、及び該堆肥の各々に含まれる全炭素量、全窒素量、全リン量、及び全カリウム量を測定する工程、並びに
(E) 全炭素量、全窒素量、全リン量、全カリウム量、及びC/N比が所定の値になり、且つ該木質培地が10~90容量%含まれるように該木質培地、該有機資材、及び該堆肥を混合する工程。
[請求項7]
 前記A工程が、針葉樹の木材を粉砕して、10 mm以下のメッシュを通過する範囲の大きさにする工程と、得られた木質砕片に鉄塩水溶液を接触させ黒変させる工程とを含む、請求項6に記載の製造方法。
[請求項8]
 前記E工程における所定の値が、全炭素量が12,000~35,000 mg/kg、全窒素量が900~1,800 mg/kg、全リン量が800~1,600 mg/kg、全カリウム量が900 mg/kg以上、且つC/N比が10~25であり、前記木質培地が30~90容量%含まれるように混合される、請求項6又は7に記載の製造方法。
[請求項9]
 請求項1~5のいずれか一項に記載の乾燥有機土壌を使用することを特徴とする植物の栽培方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]