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1. (WO2019066037) DOPE LIQUID AND PRODUCT USING SAME, AND STRUCTURAL PROTEIN FIBER AND METHOD FOR PRODUCING SAME
Document

明 細 書

発明の名称 ドープ液及びそれを用いた製品、並びに、構造タンパク質繊維及びその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007   0008   0009   0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020  

発明の効果

0021  

図面の簡単な説明

0022  

発明を実施するための形態

0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090  

実施例

0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132   0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141  

産業上の利用可能性

0142  

符号の説明

0143  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15  

図面

1   2   3   4   5  

明 細 書

発明の名称 : ドープ液及びそれを用いた製品、並びに、構造タンパク質繊維及びその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、ドープ液及びそれを用いた製品に関する。本発明はまた、構造タンパク質繊維及びその製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 従来から、構造タンパク質繊維として、再生絹繊維である絹フィブロイン繊維、人工クモ糸繊維等が知られている。これらの製造方法もいくつか提案されている。例えば、絹フィブロインを含む構造タンパク質を無機塩及びジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶解性に優れた極性溶媒に溶解させて構造タンパク質繊維を製造する方法(特許文献1)や、天然型クモ糸構造タンパク質由来の構造タンパク質繊維を湿熱における一段目延伸と乾熱における2段目延伸で延伸することにより、350MPa以上の応力を有する構造タンパク質繊維を製造する方法が提案されている(特許文献2)。さらに、構造タンパク質繊維をカルボジイミドやグルタルアルデヒド等の架橋剤と反応させて応力を向上させる方法も提案されている(特許文献3)。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 国際公開第2013/065651号
特許文献2 : 特開2014-129639号公報
特許文献3 : 国際公開第2012/165477号

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 多様な用途への展開のため、更に高い応力を有する構造タンパク質繊維が求められている。
[0005]
 本発明は、高い応力を有する構造タンパク質繊維の製造に有用なドープ液を提供することを目的とする。また、本発明は、高い応力を有する構造タンパク質繊維を容易に製造することが可能な、構造タンパク質の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記ドープ液を用いて形成された製品、特に、高い応力を有する構造タンパク質繊維を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を重ねた結果、有機基を有する金属化合物と構造タンパク質とを含むドープ液を用いることで、応力の向上した構造タンパク質繊維を製造することが可能となることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、例えば、以下の各発明に関する。
[0007]
 本発明の一側面は、構造タンパク質と、金属原子及び有機基を有する金属化合物と、溶媒と、を含む、ドープ液に関する。
[0008]
 一態様において、金属原子の価数は、2~6価であってよい。
[0009]
 一態様において、金属原子は、チタン、ジルコニウム、クロム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種であってよい。
[0010]
 一態様において、ドープ液の粘度は、3,000mPa・sec以上60,000mPa・sec以下であってよい。
[0011]
 一態様において、金属化合物の含有量は、構造タンパク質1当量に対して0.5当量以上20当量以下であってよい。
[0012]
 一態様において、溶媒は、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、N-メチルモルホリンN-オキシド、水、及びヘキサフルオロイソプロノールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであってよい。
[0013]
 一態様において、ドープ液は、無機塩をさらに含んでよい。
[0014]
 一態様において、無機塩は、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属硝酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
[0015]
 一態様において、構造タンパク質は、絹フィブロイン、クモ糸フィブロイン、コラ-ゲン、レシリン、エラスチン、及びケラチンからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
[0016]
 一態様において、構造タンパク質は、クモ糸フィブロインであってよい。
[0017]
 本発明の他の一側面は、上記ドープ液を凝固液中に押し出して凝固させる凝固工程を含む、構造タンパク質繊維の製造方法に関する。
[0018]
 一態様に係る構造タンパク質繊維の製造方法は、凝固工程を経て得られた構造タンパク質繊維を乾熱処理する乾熱工程を更に含んでよい。
[0019]
 本発明の他の一側面は、上記ドープ液の凝固物を含む製品に関する。この製品は、長繊維、短繊維、糸、紡績糸、フィラメント、フィルム、発泡体、球体、ナノフィブリル、ヒドロゲル、樹脂、紙及びそれら等価物からなる群から選択されてよい。
[0020]
 本発明の他の一側面は、クモ糸フィブロインと、当該クモ糸フィブロインに結合した金属原子と、を含む構造タンパク質繊維に関する。

発明の効果

[0021]
 本発明によれば、高い応力を有する構造タンパク質繊維の製造に有用なドープ液を提供することができる。また、本発明は、高い応力を有する構造タンパク質繊維を容易に製造することが可能な、構造タンパク質の製造方法を提供することができる。また、本発明は、上記ドープ液を用いて形成された製品、特に、高い応力を有する構造タンパク質繊維を提供することができる。

図面の簡単な説明

[0022]
[図1] 構造タンパク質繊維を製造するための紡糸装置の一例を示す概略図である。
[図2] 構造タンパク質繊維を加熱処理に供するための加熱装置の一例を示す概略図である。
[図3] 溶液中における構造タンパク質の H-NMRスペクトルの図である。
[図4] 溶液中における構造タンパク質の 13C-NMRスペクトルの図である。
[図5] SEM-EDSエネルギー分散型X線分光法による、構造タンパク質繊維の元素分析の図である。

発明を実施するための形態

[0023]
 以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[0024]
<ドープ液>
 本実施形態に係るドープ液は、構造タンパク質と、金属原子及び有機基を有する金属化合物と、溶媒と、を含む。本実施形態に係るドープ液は、構造タンパク質及び金属化合物を溶媒に溶解させたドープ液ということもできる。
[0025]
 ドープ液に含まれる溶媒の種類は、特に限定されず、構造タンパク質の種類等によって適宜選択すれば良い。溶媒としては、構造タンパク質を溶解することのできるものであればいずれも使用することができ、例えば、非プロトン性溶媒、プロトン性溶媒等を挙げることができる。非プロトン性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン(DMI)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、アセトニトリル、N-メチルモルホリンN-オキシド(NMO)等、又はこれらの組み合わせであってもよい。プロトン性溶媒としては、例えば、水、ヘキサフルオロイソプロノール(HFIP)等が挙げられる。本実施形態においては、非プロトン性溶媒が好ましい。
[0026]
<金属化合物>
 本実施形態に係る金属化合物は、金属原子及び有機基を有する。なお、本実施形態において有機基とは、有機化合物から水素原子の一部を除いた原子団、又は、金属原子と錯体を形成する有機配位子を示す。
[0027]
 金属原子としては、第1族元素のアルカリ金属元素、第2族元素、第4族元素、第5族元素、第6族元素、第7族元素、第8族元素、第9族元素、第10族元素、第11族元素、第12族元素の金属元素等を挙げることができる。金属原子の種類は、特に限定されないが、チタン、ジルコニウム、クロム、モリブデン、タングステン等が好ましく、チタン、ジルコニウム、クロムが更に好ましい。
[0028]
 金属原子の価数は1~6価であればよく、2~6価であってよく、3~6価であってよく、3~4価であってよく、4~6価であってもよい。
[0029]
 第1族元素としては、リチウム(I)(Li )、ナトリウム(I)(Na )、カリウム(I)(K )、ルビジウム(I)(Rb )、セシウム(I)(Cs )、フランシウム(I)(Fr )等が挙げられる。第2族元素としては、ベリリウム(I)(Be )、ベリリウム(II)(Be 2+)、ベリリウム(III)(Be 3+)、マグネシウム(I)(Mg )、マグネシウム(II)(Mg 2+)、カルシウム(I)(Ca )、カルシウム(II)(Ca 2+)、ストロンチウム(I)(Sr )、ストロンチウム(II)(Sr 2+)、バリウム(II)(Ba 2+)等が挙げられる。第4族元素としては、チタン(I)(Ti )、チタン(II)(Ti 2+)、チタン(III)(Ti 3+)、チタン(IV)(Ti 4+)、ジルコニウム(IV)(Zr 4+)、ハフニウム(IV)(Hf 4+)等が挙げられる。第5族元素としては、バナジウム(I)(V )、バナジウム(II)(V 2+)、バナジウム(V)(V 5+)、ニオブ(V)(Nb 5+)、タンタル(V)(Ta 5+)等が挙げられる。第6族元素としては、クロム(III)(Cr 3+)、クロム(VI)(Cr 6+)、モリブデン(I)(Mo )、モリブデン(II)(Mo 2+)、モリブデン(III)(Mo 3+)、モリブデン(IV)(Mo 4+)、モリブデン(V)(Mo 5+)、モリブデン(VI)(Mo 6+)、タングステン(VI)(W 6+)等が挙げられる。第7族元素としては、マンガン(II)(Mn 2+)、マンガン(IV)(Mn 4+)等が挙げられる。第8族元素としては、鉄(II)(Fe 2+)、鉄(III)(Fe 3+)、ルテニウム(II)(Ru 2+)、ルテニウム(III)(Ru 3+)、ルテニウム(IV)(Ru 4+)等が挙げられる。第9族元素としては、コバルト(III)(Co 3+)等が挙げられる。第10族元素としては、ニッケル(II)(Ni 2+)、パラジウム(II)(Pd 2+)、白金(II)(Pt 2+)等が挙げられる。第11族元素としては、銅(I)(Cu )、銅(II)(Cu 2+)、銀(I)(Ag )、金(I)(Au )、金(III)(Au 3+)等が挙げられる。第12族元素としては、亜鉛(II)(Zn 2+)等が挙げられる。第13族元素としては、アルミニウム(III)(Al 3+)、ガリウム(III)(Ga 3+)、インジウム(III)(In 3+)、タリウム(I)(Tl )、タリウム(III)(Tl 3+)等が挙げられる。第14族元素としては、スズ(IV)(Sn 4+)、鉛(II)(Pb 2+)等が挙げられる。第15族元素としては、ビスマス(III)(Bi 3+)等が挙げられる。
[0030]
 金属化合物が金属原子と有機配位子とを有する化合物である場合、有機配位子としては、例えば単座配位子、多座配位子が挙げられる。多座配位子としては、例えば、二座配位子、三座配位子、六座配位子が挙げられる。配位子としては、例えば、シクロペンタジエニルアニオン、アセチルアセトナート(以下、「acac」と称する。)、エチレンジアミン、グリシン、シュウ酸、2,2’-ビピリジン、1,2-(ビスホスフィノ)エタン、グリシナト、ジエチレントリアミン、エチレンジアミンテトラアセタト等が挙げられる。
[0031]
 金属化合物は、例えば、金属キレート、金属アルコキシド、メタロセン等であってもよい。金属キレートの配位子は特に限定されず、使用する溶媒に合わせて適宜選択すればよい。
[0032]
 金属キレートとしては、金属アセチルアセトナート等が挙げられる。金属アセチルアセトナートの例としては、リチウムアセチルアセトナート(Li(acac))、カリウムアセチルアセトナート(K(acac))、ナトリウムアセチルアセトナート(Na(acac))、ルビジウムアセチルアセトナート(Rb(acac))、セシウムアセチルアセトナート(Cs(acac))、ベリリウム(II)アセチルアセトナート(Be(acac) )、マグネシウム(II)アセチルアセトナート(Mg(acac) )、カルシウム(II)アセチルアセトナート(Ca(acac) )、ビス(アセチルアセトナート)ジアクアストロンチウム(II)(Sr(acac) (H O) )、ビス(アセチルアセトナート)ジアクアバリウム(II)(Ba(acac) (H O) )、バリウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、チタニウム(IV)アセチルアセトナート(Ti(acac) )、チタニウム(IV)オキシアセチルアセトナート、チタニウム(IV)(ジイソプロポキシド)ビス(アセチルアセトナート)、ヘキサクロロチタン酸ビス[トリス(アセチルアセトナート)チタン(IV)]、ジルコニウム(IV)アセチルアセトナート(Zr(acac) )、ジルコニウム(IV)トリブトキシモノアセチルアセトナート、ジルコニウム(IV)ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、バナジウム(IV)ビス(アセチルアセトナート)オキシド、バナジウム(IV)オキシアセチルアセトナート、ニオブトリアセチルアセトナート、タンタル(I)アセチルアセトナート(Ta(acac))、クロム(III)アセチルアセトナート(Cr(acac) )、ビス(2,4-ペンタンジオナト)モリブデン(VI)ジオキシド、タングステン(II)ビス(アセチルアセトナート)、マンガン(III)アセチルアセトナート(Mn(acac) )、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac) )、ルテニウム(III)アセチルアセトナート(Ru(acac) )、コバルト(II)アセチルアセトナート(Co(acac) )、ロジウム(III)アセチルアセトナート、イリジウム(III)アセチルアセトナート、ニッケル(II)アセチルアセトナート(Ni(acac) )、パラジウム(II)アセチルアセトナート(Pd(acac) )、白金(II)アセチルアセトナート(Pt(acac) )、銅(II)アセチルアセトナート(Cu(acac) )、ビニルトリエチルシラン(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)銀(I)、ジメチルアセチルアセトナート金(III)、ジメチル(トリフルオロアセチルアセトナート)金(III)、亜鉛(II)アセチルアセトナート(Zn(acac) )、アルミニウム(III)アセチルアセトナート(Al(acac) )、ガリウム(III)アセチルアセトナート、インジウム(III)アセチルアセトナート、タリウム(I)アセチルアセトナート、スズ(IV)アセチルアセトナートジクロリド、鉛(II)アセチルアセトナート、及びビスマス(III)-2,4-ペンタンジオネート等が挙げられる。
[0033]
 金属アルコキシドの例としては、リチウムメトキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウム-tert-ブトキシド、リチウム-tert-ペントキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-tert-ブトキシド、セシウムエトキシド、マグネシウムエトキシド、カルシウムメトキシド、ストロンチウム(IV)オキシイソプロポキシド、バリウムエトキシド、チタン(IV)イソプロポキシド、チタン(IV)テトラプロポキシド、ジルコニウム(IV)テトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ハフニウム-tert-ブトキシド、バナジウム(IV)オキシイソプロポキシド、ニオブ(V)エトキシド、タンタル(V)エトキシド、タンタル(V)ブトキシド、クロム(III)テトラブトキシド、タングステン(VI)エトキシド、マンガンメトキシド、鉄(III)エトキシド、コバルト(II)イソプロポキシド、ニッケル2-メトキシエトキシド、白金エトキシド、銅(II)エトキシド、トリメトキシアルミニウム、アルミニウムエトキシド、ガリウムエトキシド、スズ(II)エトキシド、テトラノルマルブトキシスズ(IV)、テトラ-tert-ブトキシスズ(IV)、又はビスマス(IV)ノルマルブトキシド等が挙げられる。
[0034]
 メタロセンの例としては、チタノセンジクロリド(Ti(C Cl )、ジルコノセンジクロリド(Zr(C Cl )、トリクロロ(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド、ジルコノセンクロリドヒドリド、トリクロロ(シクロペンタジエニル)チタニウム(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム(IV)、バナジノセンジクロリド、クロモセン、フェロセン、1,1‘-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン、1,1‘-ビス(ジイソプロピルホスフィノ)フェロセン、シクロペンテニルフェロセン、ルテノセン、シクロペンタジエニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)クロリド、シクロペンタジエニル(ジメチルフマラート)(トリエチルホスファイト)コバルト(I)、シクロペンタジエニルタリウム、コバルトセン(III)ヘキサフルオロホスファート、シクロペンタジエニルコバルトジカルボニル、ニッケロセン等が挙げられる。
[0035]
 ドープ液の調整方法は、特に限定されないが、通常、ドープ液は、構造タンパク質と、金属化合物と、必要によりその他の成分と、を溶媒に溶解させることを含む方法により、調製される。ドープ液は、ある程度の時間、撹拌又は振とうしてもよい。その際、ドープ液は、必要により加熱してもよい。例えば、ドープ液は、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、又は120℃以上に加熱してもよい。加熱温度の上限は、特に制限されないが、通常、130℃以下、又は85℃程度で十分である。
[0036]
 ドープ液の粘度は、紡糸可能な粘度であれば特に限定する必要はないが、工業的生産性を考慮すると、3,000~70,000mPa・sec、3,000~60,000mPa・secが好ましく、3,000~55,000mPa・secがより好ましく、3,000~50,000mPa・secがさらに好ましい。
[0037]
 ドープ液に含まれる金属化合物の量は、特に限定されず、構造タンパク質の分子量、構造タンパク質の濃度等に応じて適宜に決定すればよい。例えば、金属化合物の含有量は、構造タンパク質1当量に対して0.5当量以上、1当量以上、2当量以上、3当量以上、4当量以上、5当量以上、6当量以上、7当量以上、10当量以上、13当量以上、15当量以上、17当量以上、20当量以上等であってよい。金属化合物の含有量は、ゲル化が生じない濃度であればよく、使用する構造タンパク質の分子量に応じて適宜決定することができる。また、金属化合物の含有量は、構造タンパク質1当量に対して、例えば28当量以下、26当量以下、24当量以下又は20当量以下であってよい。ここで、金属化合物の当量は、構造タンパク質1当量(mol)に対する金属化合物に含まれる金属原子の量(mol)の比率を意味する。
[0038]
 ドープ液における構造タンパク質の濃度は、特に限定されず、例えば、ドープ液の質量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、17質量%以上、20質量%以上、22質量%以上等であってよい。また、ドープ液における構造タンパク質の濃度は、例えば、ドープ液の質量を基準として、35質量%以下、30質量%以下、28質量%以下、26質量%以下等であってよい。
[0039]
 ドープ液は、無機塩を更に含有してもよい。無機塩は、構造タンパク質の溶解促進剤として機能し得る。無機塩としては、例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属硝酸塩等が挙げられる。無機塩の具体例としては、炭酸リチウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、臭化リチウム、臭化バリウム、臭化カルシウム、塩素酸バリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸カルシウム、過塩素酸マグネシウムが挙げられる。これらのうちの少なくとも1種類の無機塩を溶媒に添加してもよい。
[0040]
 ドープ液に含まれる無機塩の量は、特に限定されず、無機塩の種類、構造タンパク質の量等に応じて適宜に決定される。無機塩の含有量は、例えば、構造タンパク質の全量100質量部に対して、1.0質量部以上、2.0質量部以上、4.0質量部以上、5.0質量部以上、9.0質量部以上、15質量部以上、20質量部以上であってもよい。また、無機塩の量は、例えば、構造タンパク質の全量100質量部に対して、40質量部以下、35質量部以下、30質量部以下であってもよい。
[0041]
<構造タンパク質>
[0042]
 本実施形態に係る構造タンパク質は、特に限定されるものではなく、遺伝子組換え技術により微生物等で製造したものであってもよく、合成により製造されたものであってもよい。あるいは、構造タンパク質は、天然由来の構造タンパク質を精製したものであってもよい。
[0043]
 上記構造タンパク質は、例えば、構造タンパク質及び当該構造タンパク質に由来する人造構造タンパク質であってもよい。構造タンパク質とは、生体内で構造及び形態等を形成又は保持する構造タンパク質を意味する。すなわち、構造タンパク質は、天然由来の構造タンパク質であってよく、天然由来の構造タンパク質のアミノ酸配列に依拠してそのアミノ酸配列の一部(例えば、当該アミノ酸配列の10%以下)を改変した改変タンパク質であってもよい。構造タンパク質としては、例えば、フィブロイン、ケラチン、コラーゲン、エラスチン及びレシリン等を挙げることができる。
[0044]
 構造タンパク質は、フィブロインであってもよい。フィブロインは、例えば、絹フィブロイン、クモ糸フィブロイン、及びホーネットシルクフィブロインからなる群より選択される1種以上であってよい。特に、構造タンパク質は、絹フィブロイン、クモ糸フィブロイン又はこれらの組み合わせであってもよい。絹フィブロインとクモ糸フィブロインとを併用する場合、絹フィブロインの割合は、例えば、クモ糸フィブロイン100質量部に対して、40質量部以下、30質量部以下、又は10質量部以下であってよい。
[0045]
 絹糸は、カイコガ(Bombyx mori)の幼虫である蚕の作る繭から得られる繊維(繭糸)である。一般に、1本の繭糸は、2本の絹フィブロインと、これらを外側から覆うニカワ質(セリシン)とから構成される。絹フィブロインは、多数のフィブリルで構成される。絹フィブロインは、4層のセリシンで覆われる。実用的には、精練により外側のセリシンを溶解して取り除いて得られる絹フィラメントが、衣料用途に使用されている。一般的な絹糸は、1.33の比重、平均3.3decitexの繊度、及び1300~1500m程度の繊維長を有する。絹フィブロインは、天然若しくは家蚕の繭、又は中古若しくは廃棄のシルク生地を原料として得られる。
[0046]
 絹フィブロインとしては、セリシン除去絹フィブロイン、セリシン未除去絹フィブロイン、又はこれらの組み合わせであってもよい。セリシン除去絹フィブロインは、絹フィブロインを覆うセリシン、及びその他の脂肪分などを除去して精製したものである。このようにして精製した絹フィブロインは、好ましくは、凍結乾燥粉末として用いられる。セリシン未除去絹フィブロインは、セリシンなどが除去されていない未精製の絹フィブロインである。
[0047]
 クモ糸フィブロインは、天然クモ糸構造タンパク質、及び天然クモ糸構造タンパク質に由来するポリペプチド(人造クモ糸構造タンパク質)からなる群より選ばれるクモ糸ポリペプチドを含有していてもよい。
[0048]
 天然クモ糸構造タンパク質としては、例えば、大吐糸管しおり糸構造タンパク質、横糸タンパク質、及び小瓶状腺構造タンパク質が挙げられる。大吐糸管しおり糸は、結晶領域と非晶領域(無定形領域とも言う。)からなる繰り返し領域を持つため、高い応力と伸縮性を併せ持つ。クモ糸の横糸は、結晶領域を持たず、非晶領域からなる繰り返し領域を持つという特徴を有する。横糸は、大吐糸管しおり糸に比べると応力は劣るが、高い伸縮性を持つ。
[0049]
 大吐糸管しおり糸構造タンパク質は、クモの大瓶状腺で産生され、強靭性に優れるという特徴を有する。大吐糸管しおり糸構造タンパク質としては、例えば、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する大瓶状腺スピドロインMaSp1及びMaSp2、並びに二ワオニグモ(Araneus diadematus)に由来するADF3及びADF4が挙げられる。ADF3は、ニワオニグモの2つの主要なしおり糸タンパク質の一つである。天然クモ糸構造タンパク質に由来するポリペプチドは、これらのしおり糸構造タンパク質に由来するポリペプチドであってもよい。ADF3に由来するポリペプチドは、比較的合成し易く、また、強伸度及びタフネスの点で優れた特性を有する。
[0050]
 横糸構造タンパク質は、クモの鞭毛状腺(flagelliform gland)で産生される。横糸構造タンパク質としては、例えばアメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する鞭毛状絹構造タンパク質(flagelliform silk protein)が挙げられる。
[0051]
 天然クモ糸構造タンパク質に由来するポリペプチドは、組換えクモ糸構造タンパク質であってよい。組換えクモ糸構造タンパク質としては、天然型クモ糸構造タンパク質の変異体、類似体又は誘導体等が挙げられる。このようなポリペプチドの好適な一例は、大吐糸管しおり糸タンパク質の組換えクモ糸構造タンパク質(「大吐糸管しおり糸構造タンパク質に由来するポリペプチド」ともいう。)である。
[0052]
 フィブロイン様構造タンパク質である大吐糸管しおり糸由来の構造タンパク質及びカイコシルク由来の構造タンパク質としては、例えば、式1:[(A)nモチーフ-REP1]mで表されるドメイン配列を含むタンパク質が挙げられる。ここで、式1中、(A)nモチーフの、Aはアラニン残基を示し、nは2~27の整数が好ましく、4~20、8~20、10~20、4~16、8~16、10~16の整数であって良く、かつ(A)nモチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数は40%以上であれば良く、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%(アラニン残基のみで構成されることを意味する)であっても良い。REP1は10~200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは10~300の整数を示す。複数存在する(A)nモチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREP1は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。
[0053]
 上記において、式1中の(A)nモチーフを欠失させることにより、強度と伸度を維持したまま、工業的生産性を向上させた構造タンパク質でもよい。欠失させる頻度としては、例えば、N末端側からC末端側に向かって、隣合う2つの[(A)nモチーフ-REP1]ユニットのREPのアミノ酸残基数を順次比較して、アミノ酸残基数が少ないREPのアミノ酸残基数を1としたとき、他方のREPのアミノ酸残基数の比が1.8~11.3となる上記隣合う2つの[(A)nモチーフ-REP1]ユニットのアミノ酸残基数を足し合わせた合計値の最大値をxとし、上記ドメイン配列の総アミノ酸残基数をyとしたときに、x/yが50%以上となる構造タンパク質があげられる。
[0054]
 また、式1中のREPにおいて、少なくともREP中の1又は複数のグリシン残基を別のアミノ酸残基に置換したことに相当する、グリシン残基の含有量が低減されたアミノ酸配列を有する構造タンパク質でもよい。このような構造タンパク質として、グリシン残基が別のアミノ酸残基に置換されたモチーフ配列の割合が、全モチーフ配列に対して、10%以上である構造タンパク質があげられる。
[0055]
 大吐糸管しおり糸由来の構造タンパク質の具体例としては、配列番号1及び配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む構造タンパク質を挙げることができる。
[0056]
 横糸構造タンパク質に由来する構造タンパク質としては、例えば、式2:[REP2] で表されるドメイン配列を含む構造タンパク質(ここで、式2中、REP2はGly-Pro-Gly-Gly-Xから構成されるアミノ酸配列を示し、Xはアラニン(Ala)、セリン(Ser)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群から選ばれる一つのアミノ酸を示す。oは8~300の整数を示す。)を挙げることができる。具体的には配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む構造タンパク質を挙げることができる。配列番号3で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したアメリカジョロウグモの鞭毛状絹構造タンパク質の部分的な配列(NCBIアクセッション番号:AAF36090、GI:7106224)のリピート部分及びモチーフに該当するN末端から1220残基目から1659残基目までのアミノ酸配列(PR1配列と記す。)と、NCBIデータベースから入手したアメリカジョロウグモの鞭毛状絹構造タンパク質の部分配列(NCBIアクセッション番号:AAC38847、GI:2833649)のC末端から816残基目から907残基目までのC末端アミノ酸配列を結合し、結合した配列のN末端に配列番号4で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
[0057]
 コラーゲン由来の構造タンパク質として、例えば、式3:[REP3] で表されるドメイン配列を含む構造タンパク質(ここで、式3中、pは5~300の整数を示す。REP3は、Gly一X一Yから構成されるアミノ酸配列を示し、X及びYはGly以外の任意のアミノ酸残基を示す。複数存在するREP3は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含む構造タンパク質を挙げることができる。配列番号5で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したヒトのコラーゲンタイプ4の部分的な配列(NCBIのGenBankのアクセッション番号:CAA56335.1、GI:3702452)のリピート部分及びモチーフに該当する301残基目から540残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号4で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
[0058]
 レシリン由来の構造タンパク質として、例えば、式4:[REP4] で表されるドメイン配列を含む構造タンパク質(ここで、式4中、qは4~300の整数を示す。REP4はSer一J一J一Tyr一Gly一U-Proから構成されるアミノ酸配列を示す。Jは任意のアミノ酸残基を示し、特にAsp、Ser及びThrからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。Uは任意のアミノ酸残基を示し、特にPro、Ala、Thr及びSerからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。複数存在するREP4は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には、配列番号6で示されるアミノ酸配列を含む構造タンパク質を挙げることができる。配列番号6で示されるアミノ酸配列は、レシリン(NCBIのGenBankのアクセッション番号NP 611157、Gl:24654243)のアミノ酸配列において、87残基目のThrをSerに置換し、かつ95残基目のAsnをAspに置換した配列の19残基目から321残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号9で示されるアミノ酸配列(タグ配列)が付加されたものである。
[0059]
 エラスチン由来の構造タンパク質として、例えば、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395(ヒト)、I47076(ヒツジ)、NP786966(ウシ)等のアミノ酸配列を有する構造タンパク質を挙げることができる。具体的には、配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む構造タンパク質を挙げることができる。配列番号7で示されるアミノ酸配列は、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395のアミノ酸配列の121残基目から390残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号4で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
[0060]
 ケラチン由来の構造タンパク質として、例えば、カプラ・ヒルクス(Capra hircus)のタイプIケラチン等を挙げることができる。具体的には、配列番号8で示されるアミノ酸配列(NCBIのGenBankのアクセッション番号ACY30466のアミノ酸配列)を含む構造タンパク質を挙げることができる。
[0061]
 上述した構造タンパク質及び当該構造タンパク質に由来する構造タンパク質は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[0062]
 ドープ液に含まれる構造タンパク質は、例えば、当該構造タンパク質をコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主により、当該核酸を発現させることにより生産することができる。
[0063]
 構造タンパク質をコードする核酸の製造方法は、特に制限されない。例えば、天然の構造タンパク質をコードする遺伝子を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などで増幅しクローニングする方法、又は、化学的に合成する方法によって、当該核酸を製造することができる。核酸の化学的な合成方法も特に制限されず、例えば、NCBIのウェブデータベースなどより入手した構造タンパク質のアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)などで自動合成したオリゴヌクレオチドをPCRなどで連結する方法によって遺伝子を化学的に合成することができる。この際に、構造タンパク質の精製及び/又は確認を容易にするため、上記のアミノ酸配列のN末端に開始コドン及びHis10タグからなるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列からなる構造タンパク質をコードする核酸を合成してもよい。
[0064]
 調節配列は、宿主における組換え構造タンパク質の発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとして、宿主細胞中で機能し、目的とするタンパク質を発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いてもよい。誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
[0065]
 発現ベクターの種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主の染色体中への組込みが可能で、目的とする構造タンパク質をコードする核酸を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。
[0066]
 宿主として、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。
[0067]
 原核生物の宿主の好ましい例として、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する細菌を挙げることができる。エシェリヒア属に属する微生物として、例えば、エシェリヒア・コリ等を挙げることができる。ブレビバチルス属に属する微生物として、例えば、ブレビバチルス・アグリ等を挙げることができる。セラチア属に属する微生物として、例えば、セラチア・リクエファシエンス等を挙げることができる。バチルス属に属する微生物として、例えば、バチルス・サチラス等を挙げることができる。ミクロバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム等を挙げることができる。ブレビバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ブレビバクテリウム・ディバリカタム等を挙げることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物として、例えば、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス等を挙げることができる。シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物として、例えば、シュードモナス・プチダ等を挙げることができる。
[0068]
 原核生物を宿主とする場合、目的構造タンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、pBTrp2(ベーリンガーマンハイム社製)、pGEX(Pharmacia社製)、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold、pUB110、pNCO2(特開2002-238569号公報)等を挙げることができる。
[0069]
 真核生物の宿主としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属等に属する酵母を挙げることができる。糸状真菌としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ(Trichoderma)属等に属する糸状真菌を挙げることができる。
[0070]
 真核生物を宿主とする場合、目的構造タンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)等を挙げることができる。上記宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110(1972)〕、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、コンピテント法等を挙げることができる。
[0071]
 発現ベクターで形質転換された宿主による核酸の発現方法としては、直接発現のほか、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
[0072]
 構造タンパク質は、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主を培養培地中で培養し、培養培地中に当該構造タンパク質を生成蓄積させ、該培養培地から採取することにより製造することができる。宿主を培養培地中で培養する方法は、宿主の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
[0073]
 宿主が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、培養培地として、宿主が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、宿主の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
[0074]
 炭素源としては、上記形質転換微生物が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
[0075]
 大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15~40℃である。培養時間は、通常16時間~7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0~9.0に保持することが好ましい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
[0076]
 また、培養中、必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
[0077]
 発現させた構造タンパク質の単離、精製は通常用いられている方法で行うことができる。例えば、当該構造タンパク質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、宿主細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により宿主細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、構造タンパク質の単離精製に通常用いられている方法、すなわち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)-セファロース、DIAION HPA-75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の方法を単独又は組み合わせて使用し、精製標品を得ることができる。
[0078]
 また、構造タンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に宿主細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として構造タンパク質の不溶体を回収する。回収した構造タンパク質の不溶体は構造タンパク質変性剤で可溶化することができる。該操作の後、上記と同様の単離精製法により構造タンパク質の精製標品を得ることができる。当該タンパク質が細胞外に分泌された場合には、培養上清から当該構造タンパク質を回収することができる。すなわち、培養物を遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、その培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
[0079]
<構造タンパク質繊維の製造方法>
 構造タンパク質繊維を製造する方法の一例について、以下に説明する。
[0080]
 本実施形態に係る構造タンパク質繊維の製造方法は、凝固工程を含む。凝固工程は、上記実施形態に係るドープ液を凝固液中に押し出して凝固させる工程であってよく、上記実施形態に係るドープ液を空気中に押し出して溶媒を加熱して気化させて凝固させる工程であってよい。図1は、構造タンパク質繊維を製造するための紡糸装置の一例を示す概略図である。図1に示す紡糸装置10は、乾湿式紡糸用の紡糸装置の一例であり、押出し装置1と、凝固浴槽20を有する凝固装置2と、洗浄浴槽21を有する洗浄装置3と、加熱装置17を有する乾燥装置4とを上流側から順に有している。
[0081]
 押出し装置1は貯槽7を有しており、ここに紡糸原液6が貯留される。紡糸原液6として、上述の実施形態に係るドープ液が用いられる。凝固浴槽20に凝固液11(例えば、メタノール)が貯留される。紡糸原液6は、貯槽7の下端部に取り付けられたギヤポンプ8により、凝固液11との間にエアギャップ19を開けて設けられたノズル9から押し出される。押し出された紡糸原液6は、エアギャップ19を経て凝固液11内に供給される。凝固液11内で紡糸原液6から溶媒が除去されて構造タンパク質が凝固し、構造タンパク質繊維が形成される。形成された構造タンパク質繊維は、糸ガイド18a、18b、18c及び18dを経て洗浄浴槽21に導かれ、洗浄浴槽21内の洗浄液12により洗浄される。洗浄された構造タンパク質繊維は、洗浄浴槽21内に設置された第一ニップローラ13と第二ニップローラ14により送られて、糸ガイド18e、18f及び18gを経て加熱装置17へと導入される。このとき、例えば、第二ニップローラ14の回転速度を第一ニップローラ13の回転速度よりも速く設定すると、回転速度比に応じた倍率で延伸された、構造タンパク質繊維36が得られる。洗浄液12中で延伸された構造タンパク質繊維36は、洗浄浴槽21を離脱してから、加熱装置17内の経路22を通過する際に乾燥され、その後、ワインダー23にて巻き取られる。このようにして、構造タンパク質繊維36が、紡糸装置10により、最終的にワインダー23に巻き取られた巻回物5として得られる。
[0082]
 凝固液は、紡糸原液を脱溶媒できる溶液であればよい。凝固液としては、例えば、メタノール、エタノール及び2-プロパノール等の炭素数1~5の低級アルコール、並びにアセトンを挙げることができる。凝固液は、水を含んでいてもよい。凝固液の温度は、0~30℃であることが好ましい。凝固液槽の長さは、脱溶媒が効率的に行える長さであればよく、例えば、200~500mmである。凝固によって形成された構造タンパク質繊維の凝固液中の滞留時間は、例えば、0.01~3分であってよく、0.05~0.15分であることが好ましい。構造タンパク質繊維を凝固液中で延伸(又は前延伸)してもよい。前延伸によって前延伸糸が形成される。前延伸では、未延伸糸を、例えば、1倍~10倍に延伸することができ、2~8倍に延伸することが好ましい。
[0083]
 構造タンパク質繊維の延伸は、洗浄浴槽21内で洗浄液を加温しながら行う。洗浄液は、例えば、水、又は、水と有機溶剤との混合溶媒であってもよい。加温した洗浄液(又は溶媒)中で行う延伸は、湿熱延伸と当業者に称されることがある。湿熱延伸の温度(洗浄液の温度)は、例えば、50~90℃であってよく、75~85℃が好ましい。湿熱延伸では、未延伸糸(又は前延伸糸)を、例えば、1倍~10倍に延伸することができ、2~8倍、5~10倍、6~10倍、5~8倍、又は6~8倍に延伸することが好ましい。
[0084]
 構造タンパク質繊維の最終的な延伸倍率の下限値は、未延伸糸(又は前延伸糸)に対して、好ましくは、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、又は9倍のうちの何れかである。構造タンパク質繊維の最終的な延伸倍率の上限値は、好ましくは40倍、30倍、20倍、15倍、14倍、13倍、12倍、11倍、又は10倍のうちの何れかである。
[0085]
本実施形態に係る構造タンパク質繊維の製造方法は、凝固工程の後に、乾熱工程をさらに含んでいてもよい。乾熱工程は、凝固工程を経て得られた構造タンパク質繊維を乾熱処理する工程である。図2は、上述のようにして得られた構造タンパク質繊維を、後処理としての加熱(乾熱)処理に供するための加熱装置の一例を示す概略図である。図2に示す加熱装置62は、フィードローラ42及びワインダー44と、これらの間に設けられた乾熱板64とを有している。乾熱板64は、フィードローラ42からワインダー44に向かう方向に延在する乾熱面66を有する。
[0086]
 構造タンパク質繊維36がフィードローラ42から連続的に送り出され、送り出された構造タンパク質繊維36が乾熱面66に沿って移動しながら加熱される。この乾熱処理の条件は特に限定されず、金属化合物の種類、構造タンパク質の種類等に応じて適宜に決定される。例えば、乾熱温度は150℃、180℃、200℃、220℃、240℃であってもよく、乾熱時間は10秒以上、20秒以上、30秒以上、1分間以上、2分間以上、3分間以上であってもよい。図1の紡糸装置10と図2の加熱装置62とを組み合わせて、ドープ液から加熱処理後の構造タンパク質繊維を連続的に製造することも可能である。この場合、紡糸後の構造タンパク質繊維をワインダーに巻き取らず、そのまま加熱(乾熱)処理に供してもよく、また、紡糸後の構造タンパク質繊維36に対して、乾燥を経ることなく、そのまま加熱(乾熱)による後処理を行ってもよい。
[0087]
<製品>
 本実施形態に係るドープ液から形成された構造タンパク質繊維は、繊維又は糸として、織物、編物、組み物、不織布等に応用できる。また、ロープ、手術用縫合糸、電気部品用の可撓性止め具、さらには移植用生理活性材料(例えば、人工靭帯及び大動脈バンド)等の高強度用途にも応用できる。これらは、特許第5427322号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。
[0088]
 また、本実施形態に係る構造タンパク質繊維は、長繊維、短繊維、紡績糸、フィラメント、フィルム、紙、発泡体、球体、ナノフィブリル、ヒドロゲル、樹脂及びその等価物にも応用でき、これらは、特開2009-505668号公報、特開2009-505668号公報、特許第5678283号公報、特許第4638735号公報等に記載の方法に準じて製造することができる。
[0089]
 これらの製品は、本実施形態に係るドープ液の凝固物を含む製品ということができ、構造タンパク質と構造タンパク質に結合した金属原子とを含む製品ということもできる。
[0090]
 以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
実施例
[0091]
1.クモ糸構造タンパク質(クモ糸フィブロイン:PRT799)の製造
(クモ糸構造タンパク質をコードする遺伝子の合成、及び発現ベクターの構築)
 ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列に基づき、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する分子量約200KDaの改変フィブロイン(以下、「PRT799」ともいう。)を設計した。
[0092]
 配列番号1で示されるアミノ酸配列は、ネフィラ・クラビペス由来のフィブロインのアミノ酸配列に対して、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施したアミノ酸配列と、そのN末端に付加された配列番号4で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)とを有する。
[0093]
 設計したPRT799をコードする核酸を合成した。当該核酸には、5’末端にNdeIサイト及び終止コドン下流にEcoRIサイトを付加した。当該核酸をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした。その後、同核酸をNdeI及びEcoRIで制限酵素処理して切り出した後、構造タンパク質発現ベクターpET-22b(+)に組換えて発現ベクターを得た。
[0094]
 得られたpET22b(+)発現ベクターによって、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。当該形質転換大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養した。当該培養液を、アンピシリンを含む100mLのシード培養用培地(表1)にOD 600が0.005となるように添加した。培養液温度を30℃に保ち、OD 600が5になるまで約15時間、フラスコ培養を行って、シード培養液を得た。
[0095]
[表1]


[0096]
 500mlの生産培地(下記表2)を添加したジャーファーメンターに、OD 600が0.05となるように当該シード培養液を添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持した。
[0097]
[表2]


[0098]
 生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持しながら、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、PRT799を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS-PAGEを行い、IPTG添加に依存したPRT799に相当するサイズのバンドの出現により、PRT799の発現を確認した。
[0099]
(クモ糸フィブロインの精製)
 IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris-HCl buffer(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのPMSFを含む20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8M グアニジン塩酸塩、10mM リン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris-HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集構造タンパク質(PRT799)を遠心分離により回収した。回収した凝集構造タンパク質から凍結乾燥機で水分を除き、PRT799の凍結乾燥粉末を得た。
[0100]
 得られた凍結乾燥粉末におけるPRT799の精製度は、粉末のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果をTotallab(nonlinear dynamics ltd.)を用いて画像解析することにより確認した。その結果、PRT799の精製度は約85%であった。
[0101]
2.構造タンパク質繊維の製造
(実施例1)
<ドープ液の調製>
 溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)を用いた。DMSOに金属化合物としてジルコニウム(IV)アセチルアセトナートZr(acac) を添加し、メカニカルスターラーを使用して撹拌させながら、80℃に加熱して溶解させた。さらに、クモ糸フィブロイン(PRT799)の乾燥粉末を濃度11質量%となるように添加し、120℃に加熱してクモ糸フィブロインを溶解させた。3μmのメッシュサイズの金属フィルターで濾過した後、脱泡してZr 4+含有ドープ液(Zr 4+含有ドープ液)を得た。Zr(acac) の添加量は、クモ糸フィブロイン(PRT799)の1当量(1mol)に対して5当量(5mol)とした。また、調製したドープ液の90℃における粘度を測定した。結果を表3に示した。なお、当該紡糸原液の粘度は、電気磁気紡糸粘度計(京都電子工業株式会社)を用いて、密封下、回転速度1000rpmの条件で測定した。なお、Zr 4+添加によるドープ液の着色は生じなかった。
[0102]
<紡糸>
 得られたドープ液を紡糸原液とし、図1に示される紡糸装置10を用いた乾湿式紡糸によって、紡糸及び延伸された構造タンパク質繊維を形成させた。形成された構造タンパク質繊維を乾燥してから巻き取った。乾湿式紡糸の条件は以下のとおりである。
 押出しノズル直径:0.2mm
 凝固液(メタノール)の温度:5℃
 凝固浴延伸倍率:1.06倍
 水洗浄浴延伸倍率:5倍
 総延伸倍率:6.56倍
 乾燥温度:60℃
[0103]
<繊維の物性測定>
 得られた構造タンパク質繊維の機械的強度を、20℃、相対湿度65%の恒温恒湿槽(エスペック製LHL-113型)中に24時間静置後、INSTRON(登録商標)のFORCE TRANSDUCER 2519-101を用いて測定した。
[0104]
(比較例1)
 Zr(acac) を添加しなかった他は、実施例1と同様にしてドープ液を調製し、得られたドープ液の90℃における粘度を測定した。また、得られたドープ液を用いて、実施例1と同様にして構造タンパク質繊維を形成し、得られた構造タンパク質繊維の機械的強度を測定した。実施例1における構造タンパク質繊維の最大応力値を100%とした場合の、相対応力値を表3に示した。
[0105]
 比較例1のドープ液の粘度90℃における粘度は1,000mPa・secであり、実施例1のドープ液の粘度90℃における粘度は5,000mPa・secであった。比較例1のドープ液は、比較例1のドープ液と比較して曳糸性が格段に向上した。
[0106]
 実施例1と比較例1とを比較すると、比較例1の構造タンパク質繊維の相対応力値は、100%より低かった。言い換えると、金属化合物を添加していないドープ液を用いて形成した構造タンパク質繊維に比べて、金属化合物を添加したドープ液を用いて形成した構造タンパク質繊維では最大応力値の向上が確認された。
[0107]
[表3]


[0108]
(実施例2)
<ドープ液の調製>
 溶媒として、LiClを溶解させたジメチルスルホキシド(LiCl/DMSO)を使用した他は、実施例1と同様にして、ドープ液を調製した。LiClの添加量は、クモ糸フィブロイン1当量(1mol)に対して630当量(630mol)とした。また、実施例1と同様にして、得られたドープ液の90℃における粘度を測定した。得られたドープ液の90℃における粘度は、4,940mPa・secであった。
[0109]
<紡糸>
 得られたドープ液を紡糸原液とし、実施例1と同様にして構造タンパク質繊維を形成した。
[0110]
<繊維の物性測定>
 得られた構造タンパク質繊維の機械的強度を、実施例1と同様にして測定した。実施例1における構造タンパク質繊維の最大応力値を100%とした場合の、相対応力値を表4に示した。
[0111]
[表4]


[0112]
 表4に示される様に、ドープ液がLiClを含む場合、ドープ液がLiClを含まない場合と比較して、構造タンパク質繊維の最大応力値の更なる向上がみられた。
[0113]
(実施例3)
<ドープ液の調製>
 クモ糸フィブロイン(PRT799)の濃度を24質量%とした他は、実施例2と同様にして、ドープ液を調製し、得られたドープ液の90℃における粘度を測定した。測定結果を表5に示した。
[0114]
<紡糸>
 得られたドープ液を紡糸原液とし、実施例1と同様にして構造タンパク質繊維を形成した。
[0115]
<繊維の物性測定>
 得られた構造タンパク質繊維の機械的強度を、実施例1と同様に測定した。後述の比較例2における構造タンパク質繊維の最大応力値を100%とした場合の、相対応力値を表5に示した。
[0116]
(実施例4)
<ドープ液の調製>
 金属化合物としてチタノセンジクロリド(Ti(C Cl )を用いた他は、実施例3と同様にして、ドープ液を調製し、得られたドープ液の90℃における粘度を測定した。結果を表5に示した。
[0117]
<紡糸>
 得られたドープ液を紡糸原液とし、実施例1と同様にして構造タンパク質繊維を形成した。
[0118]
<繊維の物性測定>
 得られた構造タンパク質繊維の機械的強度を、実施例1と同様に測定した。後述の比較例2における構造タンパク質繊維の最大応力値を100%とした場合の、相対応力値を表5に示した。
[0119]
(実施例5)
<ドープ液の調製>
 金属化合物として、クロムアセチルアセトナート(III)(Cr(acac) )を用いた他は、実施例3と同様にして、ドープ液を調製し、得られたドープ液の90℃における粘度を測定した。結果を表5に示した。
[0120]
<紡糸>
 得られたドープ液を紡糸原液とし、実施例1と同様に構造タンパク質繊維を形成した。
[0121]
<繊維の物性測定>
 得られた構造タンパク質繊維の機械的強度を、実施例1と同様に測定した。後述の比較例2における構造タンパク質繊維の最大応力値を100%とした場合の、相対応力値を表5に示した。
[0122]
(比較例2)
<ドープ液の調製>
 ドープ液が金属化合物を添加しなかった他は、実施例3と同様にして、ドープ液を調製し、得られたドープ液の90℃における粘度を測定した。結果を表5に示した。
[0123]
<紡糸>
 得られたドープ液を紡糸原液とし、実施例1と同様に構造タンパク質繊維を形成した。
[0124]
<繊維の物性測定>
 得られた構造タンパク質繊維の機械的強度を、実施例1と同様に測定した。
[0125]
[表5]


[0126]
 実施例3~6のドープ液では、比較例2のドープ液と比較して曳糸性が格段に向上した。また、表5に示される様に、金属化合物を添加していない比較例2では、5倍までの延伸が可能であったが、金属化合物を添加した実施例3~5では、7倍まで延伸倍率を高めることができた。また、比較例2と比較して、実施例3~5では、最大応力値の向上が認められた。
[0127]
(実施例6~18)
<ドープ液の調製>
 クモ糸フィブロイン(PRT799)の濃度、Zr(acac) の添加量を表6中に示す濃度に変更した以外は、実施例2と同様にして、ドープ液を調製した。
[0128]
<紡糸>
 得られたドープ液を紡糸原液とし、水洗浄浴延伸倍率を表6中に示す倍率とした他は、実施例1と同様に構造タンパク質繊維を形成した。
[0129]
<繊維の物性測定>
 得られた構造タンパク質繊維の機械的強度を、実施例1と同様に測定した。比較例2における構造タンパク質繊維の最大応力値を100%とした場合の、相対応力値を表6及び7に示した。
[0130]
[表6]


[0131]
[表7]


[0132]
 表6及び表7に示される様に、Zr(acac) 添加量を5当量、クモ糸フィブロイン(PRT799)の濃度を24質量%としたドープ液を用いて形成した構造タンパク質繊維において、最大の応力値が得られた。
[0133]
(実施例19~21)
<乾熱処理>
 実施例2で得られたZr 4+を添加したドープ液を用いて形成した構造タンパク質繊維を、図2に示される加熱装置62を用いて後処理としての乾熱処理に供し、乾熱処理後の構造タンパク質繊維を巻き取った。乾熱処理の条件は以下のとおりである。なお、処理温度(乾熱板温度)は、それぞれ、表8に示す温度とした。
 送り出し速度:100cm/min
 巻取り速度:100cm/min
 乾熱板長さ:100cm
[0134]
<繊維の物性測定>
 得られた構造タンパク質繊維の機械的強度を、実施例1と同様に測定した。結果を表8に示した。表8の相対応力値は、実施例2にて得られた構造タンパク質繊維の応力値を100%とした時の相対値[%]で表した。
[0135]
[表8]


[0136]
 表8に示される様に、乾熱処理により構造タンパク質繊維の最大応力値が向上した。150℃で乾熱処理した構造タンパク質繊維では、最大応力値が1.5倍に向上した。
[0137]
(実施例22)
 構造タンパク質とZr 4+との解析を行うため、クモ糸フィブロイン(PRT799)を2wt%になるようにZr(acac) を含むDMSO-d に溶解させ400MHzで H-NMRを測定した。タンパク質の各アミノ酸のケミカルシフトに大きな変化はなかったものの、5.65ppm付近にZr(acac) から遊離したアセチルアセトンに帰属される特徴的なシグナルが観測された(図3中、星印により示されるシグナル)。また、高磁場側でも同じ化合物に由来するシグナルが1.99、2.10、3.65ppmに観測されている。同じサンプルの 13C-NMRでも204、190、58、31ppmにシグナルが現れ、これらのケミカルシフトはアセチルアセトンの文献値とほぼ一致した(図4)。以上より、溶液中にアセチルアセトンが存在するため、構造タンパク質に対してZr 4+が配位していることが確認された。
[0138]
<繊維の元素分析(SEM-EDSエネルギー分散型X線分光法)>
 Phenom-world社製Pro-Xに内蔵されているエネルギー分散型X線分光器を用いて、実施例2で得られた構造タンパク質繊維の元素分析を行った。構造タンパク質繊維をピンスタブホルダーに固定し、4000~6000倍の反射電子像(SEM像)を確認した後、加速電圧を15kVとして電子線を照射し、EDS(エネルギー分散型X線分光器:Energy dispersive spectrometer)で測定して元素分析を行った。試料から発せられるZrのLα線(2.04kV)の強度からZrの半定量分析を行った。
[0139]
 図5に示される様に、構造タンパク質繊維にZrが含まれていることが確認された。
[0140]
<繊維の無機分析(ICP発光分光分析法)>
 株式会社日立ハイテクサイエンス社製のICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析装置を用いて、実施例2で得られた構造タンパク質繊維のLiの残存量を測定した。
 具体的には、マイルストーンゼネラル株式会社製のマイクロ波試料前処理装置を用いて、構造タンパク質繊維(試料)の前処理を行った。前処理後の試料0.3gに硝酸7ml、過酸化水素1mlを加えて溶解して溶液を調製し、ICP発光分光分析を行った(検出限界:5mg/kg)。
[0141]
 構造タンパク質繊維からLiは検出されず、無機塩として添加したLiClが残存していないことが確認された。

産業上の利用可能性

[0142]
 本発明によれば、高い応力を有する構造タンパク質繊維の製造に有用なドープ液を提供することができる。

符号の説明

[0143]
 1…押出し装置、2…凝固装置、3…洗浄装置、4…乾燥装置、6…紡糸原液、10…紡糸装置、12…洗浄液、13…第一ニップローラ、14…第二ニップローラ、19…エアギャップ、20…凝固浴槽、64…乾熱板、36…構造タンパク質繊維、42…フィードローラ、44…ワインダー、62…加熱装置。

請求の範囲

[請求項1]
 構造タンパク質と、金属原子及び有機基を有する金属化合物と、溶媒と、を含む、ドープ液。
[請求項2]
 前記金属原子の価数が、2~6価である、請求項1に記載のドープ液。
[請求項3]
 前記金属原子が、チタン、ジルコニウム、クロム、モリブデン、及びタングステンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のドープ液。
[請求項4]
 前記ドープ液の粘度が、3,000mPa・sec以上60,000mPa・sec以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のドープ液。
[請求項5]
 前記金属化合物の含有量が、前記構造タンパク質1当量に対して0.5当量以上20当量以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載のドープ液。
[請求項6]
 前記溶媒が、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリドン、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、N-メチルモルホリンN-オキシド、水、及びヘキサフルオロイソプロノールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のドープ液。
[請求項7]
 前記ドープ液が、無機塩をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のドープ液。
[請求項8]
 前記無機塩が、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、及びアルカリ土類金属硝酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載のドープ液。
[請求項9]
 前記構造タンパク質が、絹フィブロイン、クモ糸フィブロイン、コラーゲン、レシリン、エラスチン、及びケラチンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~8のいずれか1項に記載のドープ液。
[請求項10]
 前記構造タンパク質が、クモ糸フィブロインである、請求項1~9のいずれか1項に記載のドープ液。
[請求項11]
 請求項1~10のいずれか1項に記載のドープ液を使用した構造タンパク質繊維の製造方法であって、
 前記ドープ液を凝固液中に押し出して凝固させる凝固工程を含む、構造タンパク質繊維の製造方法。
[請求項12]
 前記凝固工程を経て得られた構造タンパク質繊維を乾熱処理する乾熱工程を更に含む、請求項11に記載の構造タンパク質繊維の製造方法。
[請求項13]
 請求項1~10のいずれか1項に記載のドープ液の凝固物を含む製品であって、
 長繊維、短繊維、糸、紡績糸、フィラメント、フィルム、発泡体、球体、ナノフィブリル、ヒドロゲル、樹脂、紙及びそれらの等価物からなる群から選択される、製品。
[請求項14]
 クモ糸フィブロイン及び金属原子を含む構造タンパク質繊維。
[請求項15]
 前記金属原子が前記クモ糸フィブロインと結合している、請求項14に記載の構造タンパク質繊維。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]