明 細 書
発明の名称 : 電動機運転システムおよびその電動機ならびに電動機の駆動方法
[0001]
本願は、2019年5月10日に日本国において出願された特許出願番号2019-89570号に基づくものであって、その優先権の利益を主張するものであり、その特許出願の全ての内容が、参照により、本願明細書に組み入れられる。
技術分野
[0002]
本開示は、多相の電動機を運転する電動機運転システムおよびその電動機、並びに電動機駆動方法に関する。
背景技術
[0003]
多相の電動機において、運転可能なトルクと回転数の範囲を拡げることを目的として、極数を切換え可能とするものが提案されている。例えば、米国特許公報第7,928,683号公報(以下、特許文献1という)に記載のモータでは、巻線ピッチγを値1より小さくして、電動機に通電される電流の高調波次数hが値2の場合に対する特性を改善する試みがなされている。
発明の概要
[0004]
しかしながら、特許文献1では、毎極毎相のスロット数qが値1の場合しか考慮しておらず、極数切換えを行なった場合、高調波磁束によりモータの特性が悪化してしまうことがあり得た。
[0005]
本開示の実現態様として、電動機と電動機を運転する駆動部とからなる電動機運転システムが提供される。この電動機運転システムにおいて、前記電動機は、m相巻線(mは5以上の奇数の整数)の各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θが、電動機におけるm相巻線のセット数を示す変数pを値1以上の任意の正の整数として、
θ=360°/(m・p)
の関係を満たし、前記各相の巻線の結線はスパンL(Lはm/2以下の正の整数)の値に対して、L・θ離れた機械的位相角度差となる相の巻線同士を結線した星形環状結線され、通電次数h(h≧1の任意の整数)が値1の時の極数を基にした毎極毎相のスロット数qが、6≧q≧2であり、前記駆動部は、前記各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気的位相差δが、
δ=h・360°/m
となるよう前記m相巻線への通電を行なうものとすることができる。
[0006]
この電動機運転システムは、電動機における正相磁束密度と逆相磁束密度との差分を大きくすることができる。このため、前記毎極毎相のスロット数q=1の電動機と比べて、電動機の特性を改善することができる。
図面の簡単な説明
[0007]
[図1] 図1は、実施形態の電動機運転システムを示す概略構成図であり、
[図2] 図2は、電動機の軸方向に沿った断面図であり、
[図3] 図3は、図2における電動機の3-3断面図であり、
[図4] 図4は、5相の巻線をスパンL=2で星形環状結線した様子を示す説明図であり、
[図5] 図5は、5相の巻線をスパンL=1で星形環状結線した様子を示す説明図であり、
[図6] 図6は、極数切換を伴うモータ制御ルーチンを示すフローチャートであり、
[図7] 図7は、通電次数を切換えることによる電動機の運転領域を示す説明図であり、
[図8] 図8は、端子T1からの電流を例示する説明図であり、
[図9] 図9は、4極の場合と8極の場合での線電流とコイル電流との関係を示す模式図であり、
[図10A] 図10Aは、4極(通電次数h=1)での各相コイルの電流分布を示すグラフであり、
[図10B] 図10Bは、8極(通電次数h=2)での各相コイルの電流分布を示すグラフであり、
[図11A] 図11Aは、通電次数h=1において、磁束密度が正相成分となる次数と逆相になる次数とを、相数m毎に例示する説明図であり、
[図11B] 図11Bは、通電次数h=2において、磁束密度が正相成分となる次数と逆相になる次数とを、相数m毎に例示する説明図であり、
[図12A] 図12Aは、通電次数h=2の場合の毎極毎相のスロット数ごとの正逆相磁束密度の実効値の差分を示すグラフであり、
[図12B] 図12Bは、通電次数h=1の場合の毎極毎相のスロット数ごとの正逆相磁束密度の実効値の差分を示すグラフであり、
[図13A] 図13Aは、通電次数h=2の場合の毎極毎相のスロット数ごとの正逆相磁束密度の実効値の正規化済の差分を示すグラフであり、
[図13B] 図13Bは、通電次数h=1の場合の毎極毎相のスロット数ごとの正逆相磁束密度の実効値の正規化済の差分を示すグラフであり、
[図14] 図14は、5相巻線において、毎極毎相のスロット数を値2とした場合の電動機の構成を示す説明図であり、
[図15] 図15は、5相巻線において、毎極毎相のスロット数を値3とした場合の電動機の構成を示す説明図であり、
[図16] 図16は、5相巻線をγ=3/5で短節巻きとした電動機の構成を示す説明図であり、
[図17] 図17は、第2実施形態としての13相分の巻線を備えた電動機の構成を示す説明図であり、
[図18] 図18は、13相の巻線をスパン5で星形環状結線した様子を示す説明図であり、
[図19] 図19は、2極の場合と6極の場合での線電流とコイル電流との関係を示す模式図であり、
[図20A] 図20Aは、2極(通電次数h=1)での各相コイルの電流分布を示すグラフであり、
[図20B] 図20Bは、6極(通電次数h=3)での各相コイルの電流分布を示すグラフであり、
[図21] 図21は、13相の巻線を各スパンで星形環状結線した例を示す説明図であり、
[図22] 図22は、他の実施形態としてアウタロータタイプの電動機の構成を示す説明図であり、
[図23] 図23は、電動機の他の形態であるコンシクエント型SPMモータの構成を例示する説明図であり、そして
[図24] 図24は、電動機の他の形態であるコンシクエント型IPMモータの構成を例示する説明図である。
発明を実施するための形態
[0008]
A.第1実施形態の装置構成:
第1実施形態の電動機運転システム20は、図1に示すように、m相巻線(m=5)の電動機30と、この電動機30への通電を制御する駆動装置60とを備える。駆動装置60は、m相のインバータ70、インバータ70に電力を供給するバッテリ72、バッテリ72からの供給電圧Vinを測定する電圧センサ74、インバータ70のm相の電流を測定する5個の電流センサ81,82,83,84,85、インバータ70の動作を制御するコントローラ88、を備える。コントローラ88は、電動機30の出力軸32に設けられた回転角度センサ35からの角度信号αと、電圧センサ74からの供給電圧Vinの信号、電流センサ81から85からの各巻線を流れる線電流It1,It2,It3,It4,It5 の信号を入力し、上位のECU90からの指示に基づき、インバータ70の各スイッチング素子のオン・オフを制御する。インバータ70の各スイッチング素子のオフ・オフにより、電動機30の各相の巻線には、所望の電流が流れ、電動機30は、ECU90より求められたトルクNqおよび回転数Rtで運転され、出力軸32に結合された負荷LDを駆動する。インバータ70と電動機30の各相巻線との接続については、後述する。
[0009]
第1実施形態の電動機30は、誘導機であり、出力軸32の軸方向に沿った断面図である図2、および図2において出力軸32に垂直な平面で破断した3-3矢視図である図3に示すように、ケース36に収容されており、その出力軸32は、ケース36に固定された2つの軸受37,38により回転自在に支持されている。電動機30は、この出力軸32に固定されたロータ40と、ケース36に固定されたステータ50とを備える。ロータ40は、円盤形状のロータコア41と、このロータコア41の外周に所定の間隔で設けられた複数の2次導体43と、複数の2次導体43をロータコア41の軸方向両面で短絡する短絡環45とを備える。他方、ステータ50は、ロータコア41を僅かなエアギャップを介して取り囲むステータコア51と、このステータコア51の内側に設けられた複数のティース53と、ティース53の間に収容されたコイル55とを備える。
[0010]
第1実施形態の電動機30は、m=5相の誘導機であり、図3には、5相の巻線(コイルとも呼ぶ)の区別を符号A,B,C,D,Eにより示し、各巻線の巻き始めと巻き終わりを、「A」および「-A」のように、符号なしとマイナス符号付きとで示すものとした。第1実施形態の電動機30は、5相の巻線を1セット備えることから、電動機におけるm相巻線のセット数を示す変数pは値1である。このため、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θが、次式(1)
θ=360°/(m・p) …(1)
で表わされることから、第1実施形態では、
θ=72°
となる。また、巻線のピッチγは、図示するように、3/5、つまり0.6である。更に、毎極毎相のスロット数qは値2である。
[0011]
電動機30の巻線の接続の様子を図4に示した。各巻線A,B,C,D,EはスパンL(Lはm/2以下の正の整数)の値に対して、L・θ離れた機械的位相差角度となる相の巻線同士を結線した星形環状結線され、本実施形態では、接続のスパンLはL=2とされている。これは、図1に示したインバータ70の5本の出力端子T1,T2,T3,T4,T5の各々から見て、各巻線AからEの接続が、一つおきになっていることを意味する。スパンLが値1の場合の接続例を図5に示した。5相の場合は、スパンLは、値1か値2に限られる。L=3は、L=2と実質的に同じだからである。相数が増えるにつれて取り得るスパンLは増えていくこととなり、m=13相の場合、スパンL=6まで取り得る。なお、後述する図21ではL=1~4までを例示した。
[0012]
B.駆動装置60による運転:
上記電動機30を駆動する駆動装置60のコントローラ88は、CPUを内蔵しており、図6に示した極数の切り替えを伴うモータ制御ルーチンを実行する。この処理は、駆動装置60に電源が投入された時から繰り返し実行される。コントローラ88は、図6に示した処理を開始すると、まで上位のECU90からの指令を入力する(ステップS100)。ECU90は、負荷LDの状態に基づき、電動機30が出力すべきトルクNqと回転数Rtを求め、このトルクNqおよび回転数Rtを出力可能な極数に電動機30を切換えるかを指令する。
[0013]
この指令を受けて、コントローラ88は、極数の切り替えが必要かを判断する(ステップS110)。電動機30の極数とトルクNqおよび回転数Rtとの関係を図7に示した。図7において、実線J8は、電動機30を8極とした場合のトルク-回転数の関係を示し、実線J4は、電動機30を4極とした場合のトルク-回転数の関係を示す。図示するように、第1実施形態の電動機30は、8極で運転する場合には低回転数域で高トルクを出力でき、4極で運転する場合には、低トルク域で高回転数とすることができる。
[0014]
ECU90から極数の切り替えの指示がなければ、何も行なわず、本ルーチンを一旦終了する。他方、4極での運転が指示されていれば、通電次数hは値1であり、電動機30を4極で運転するものとし、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気的位相差δが、次式(2)
δ=h・θ・p=h・360°/m …(2)
となるようm相巻線への通電を制御する(ステップS120)。この場合は、h=1、m=5なので、δ=72°である。
[0015]
また、8極での運転が指示されていれば、通電次数hは値2であり、電動機30を8極で運転する(ステップS130)。このとき、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気的位相差δは、h=2、m=5であることから、位相差δ=144°となる。
[0016]
この制御の様子を図8から図10Bを用いて説明する。図8に示すように、インバータ70からの出力のうちの1つが、電動機30の端子T1に接続されているとする。本実施形態では、電動機30の5相の巻線はスパンL=2で星形環状結線されているので、この端子T1には、コイルAおよびDが接続されている。このときの位相差δと線電流Itの振幅との関係を図9に示した。この場合、インバータ70から端子T1に流れ込む電流を線電流It1と呼び、コイルA,Dに流れる電流をコイル電流IA 、ID と呼ぶと、線電流It1は、コイルAおよびDに流れ、コイル電流IA 、ID を合成したものが、線電流It1と等しくなる。端子T1からの電流が流れる巻線間の機械的位相角度差は、最小の機械的位相角度差θに対して、スパンLにより変わるので、2つのコイルA,Dの機械的位相角度差は、(m-L)・θ=216°である。図9に示したように、4極(h=1)の場合には、コイル電流IA 、IDの電気的位相差は、h・(m-L)・θ・p=216°となり、8極(h=2)の場合には、コイル電流IA 、IDの電気的位相差はh・(m-L)・θ・p=432°=72°となる。また、この場合の巻線Aを流れるコイル電流の電流振幅|IA |は、次式(3)、
|IA |=|{It1/sin(h・(m-L)・θ・p・2π/360°/2)}/2| …(3)
として求められる。具体的にコイル電流IA の電流振幅を求めると、
通電次数h=1の場合、
|IA |=|{It1/sin(144°・2π/360°/2)}/2|
=0.52573・|It1|
通電次数h=2の場合、
|IA |=|{It1/sin(432°・2π/360°/2)}/2|
=0.85065・|It1|
となる。このため、同じ線電流It1に対するコイル電流IA 、IDの電流振幅、つまりモータのトルクは、通電次数h=1の時の方が小さい。この結果、通電次数h=1、つまり4極の場合の方が、トルクNqが小さく、回転数Rtが高い特性(図7)となる。
[0017]
各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の位相差δが、72
°の場合(h=1)と、144°の場合(h=2)とのコイル電流の振幅を、図10A,図10Bに示した。図において、横軸は、巻線AからEの配列を示す。図において、「○」に「×」のマークは巻線の始まりを示し、「○」に「・」のマークは巻線の終わりを示す。図示するように、第1実施形態の電動機運転システム20では、駆動装置60は、極数の切換え(4極,8極)を行なうと、通電次数hを切換え(h=1,2)、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間、例えば、コイルAとコイルBとに流れる電流の電気的位相差δが、
δ=h・360°/m
となるようm相巻線への通電を行なう。
[0018]
かかる通電を行なったときに、電動機30のロータ40を回転させる力(トルク)について検討する。インバータ70から通電次数hの電流を通電したときに電動機30のロータ40とステータ50とのエアギャップ部に発生する磁束密度の理論式に基づいて、磁束密度Bの振幅を決める係数項のみを取り出すと、磁束密度Bの中のn次の磁束密度振幅Bnは、以下の関係(4)
Bn∝sin{(1-γ/2)n・π}・cos{(1/(2・m・q))n・π}/n …(4)
の関係にある。ここで、
γ:相巻線の巻線ピッチと磁極ピッチの比
m:巻線の相数
q:h=1の時の極数を基にした毎極毎相のスロット数(q>1)
n:起磁力分布の次数(極対数)
である。上記式の右辺は、n以外は、電動機30において確定しているから、関係(4)の右辺を、表示を簡略にするために、関数fを用いた表現に改め、
Bn∝f(n)
と表わすことにする。
[0019]
ロータ40とステータ50とのエアギャップに働くn次成分の磁束密度Bnは、lを任意の整数(0を含む)として、
n+h=l・m
が成り立つときには逆相成分の磁束が支配的となり、n次の磁束密度Bnによる電動機30のトルクは負トルクとなる。他方、
n-h=l・m
が成り立つときには正相成分の磁束が支配的となり、n次の磁束密度Bnによる電動機30のトルクは正トルクとなる。
[0020]
ロータ40とステータ50とのエアギャップに働くn次成分の磁束密度Bnは、lを任意の整数(0を含む)として、
n+h≠l・m またはn-h≠l・m
となる場合、回転磁場成分を含まないので、そのn次成分の磁束密度Bnは、無視することができる。例えば相数m=5、通電次数h=1であれば、n=2、3などの場合の磁束密度Bnは無視することができる。
[0021]
図11A,図11Bに、m相誘導機において、磁束密度Bが正相成分となる次数をn1 として、磁束密度Bが逆相成分となる次数をn2 として、通電次数h=1およびh=2の場合に分けて、それぞれ示した。通電次数h=1または2の一方において、ロータ40に加わる力、つまりトルクを考えると、電動機30が5相モータであれば、正トルクは、n1=1、6、11、16、21、26・・・の場合の磁束密度の実効値に比例し、負トルクは、n2=4、9、14、19、24、29・・・の場合の磁束密度の実効値に比例する。従って、正のトルクを生じる正相磁束の実効値BPと逆相磁束の実効値BNとの差分ΔBが、その通電次数におけるトルクの大きさに比例する。図11A,図11Bに示した次数n1,n2を用いて表わせば、正相磁束の実効値Bpは、次の関係(5)、
BP∝√[Σ{f(n1)}
2 ] …(5)
として表わすことができ、逆相磁束の実効値Bnは、次の関係(6)、
BN∝√[Σ{f(n2)}
2 ] …(6)
で表わすことができる。ここで式(5)における「Σ」は、図11A,図11Bに示した該当相数でのn1 における磁束の実効値の和を取る演算を示す。具体的には、相数m=5、つまり5相電動機30であれば、n1 =1、6、11、16、21、26、31・・・の場合の磁束の実効値の累積値を求めることになる。他方、式(6)における「Σ」は、図11A,図11Bに示した該当相数でのn2 における磁束の実効値の和を取る演算を示す。具体的には、5相電動機30であれば、n1 =4、9、14、19、24、29、34・・・の場合の磁束の実効値の累積値を求めることになる。
[0022]
このため、ロータ40に加わるトルクNqは、
Nq∝ΔB=BP-BN
として求めることができる。図11A,図11Bには、上記条件を満たす全ての次数nを掲載したが、実際には、このうちの一部の次数nについて、求めればよい、演算に用いられる次数nは、正相成分、逆相成分のいずれにおいても、各通電次数h=1または2において発生する磁極数Qは、Q=2×p×nであり、ステータ50の総スロット数S=2・n・m・p・qより多い磁極は生じないので、Q≦Sの条件となるn≦m・qを満たすn(図11A,図11Bでは、n1 ,n2 )が演算の対象となる。この次数nについての正相および逆相磁束の実効値BP,BNの差分ΔBを求めれば、電動機30において、通電次数h=1または2におけるトルクを求めることができる。
[0023]
実際に第1実施形態の電動機30において、通電次数h=2とh=1において、正逆相磁束密度の実効値BP,BNの差分ΔBを求めたグラフを図12A,図12Bとして示した。図において、横軸は、毎極毎相のスロット数qである。またグラフは、電動機30の相数、5相、7相、9相、11相、13相、15相をパラメータとしている。相数によらず、通電次数2の場合、毎極毎相のスロット数q=2である場合に、正逆相磁束密度の実効値BP,BNの差分ΔBが最大になっていることが理解できる。この点を、更に理解し易くするために、毎極毎相のスロット数qが値1である場合を基準として、図12A,図12Bの内容を正規化したのが、図13A,図13Bである。図13Aによれば、5相電動機では、毎極毎相のスロット数qが値2から値6の間では、通電次数h=2において、毎極毎相のスロット数qが値1の場合より、正逆相磁束密度の実効値BP,BNの差分ΔBが大きくなる、つまり電動機30の出力するトルクが大きくなることが分かる。
[0024]
以上説明した様に、第1実施形態の電動機運転システム20によれば、電動機30として5相の誘導機を用い、5相の各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差θを、θ=360°/5=72°、とし、インバータ70による通電次数hが値1の場合の毎極毎相のスロット数qを2とし、コントローラ88がインバータ70を介して、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気角位相差δが、通電次数h=1または2において、δ=h・360°/5、つまり通電次数h=1で72°、通電次数h=2で144°となるよう5相巻線への通電を行なっている。この結果、図13A,図13Bに示したように、特に通電次数h=2の場合、5相巻線の電動機30では、正逆相磁束密度の実効値BP,BNの差分ΔBが、毎極毎相のスロット数qが値1の場合より、10%程度大きくできる。このため、毎極毎相のスロット数qが値2以上6以下であっても、通電次数の切換えによる効率の低下を招くことがない。従って、通電次数hを切換えることで、図7に示したように、高トルク低回転の運転領域から、低トルク高回転の運転領域までの運転領域を拡大することができる。特に、通電次数hを値2に切換えた場合の8極運転時の最大トルクを、毎極毎相のスロット数qが値1の場合より、高くすることができる。なお、上述したように、この効果は、毎極毎相のスロット数qが値2に限定されず、5相巻線の電動機30では、毎極毎相のスロット数qが値2から6の範囲で、通電次数hが値2の場合に、得ることができる。また、本実施形態では、相巻線の巻線ピッチと磁極ピッチの比γを0.6としている。従って、関係(4)において、ピッチの比γが小さくなると、磁束密度の実効値を大きくでき、この結果、正相磁束密度と逆相磁束密度の差分ΔBを大きくすることができる。
[0025]
C.第1実施形態のバリエーション:
上述した第1実施形態では、電動機30として5相の誘導機を用いたが、巻線の相数は5相に限らず、5相以上の奇数相であれば、採用することができる。また、スパンLも、1以上、いずれの値にすることも可能である。更に、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θが、電動機におけるm相巻線のセット数を示す変数pを値1以上の任意の正の整数として、
θ=360°/(m・p)
と定めるに当たって、p=1以外の正の整数とすることも可能である。例えば、図14は、この電動機30のロータ40は、第1実施形態と同様、ロータコア41と2次導体43とが設けられている。また、ステータ50には、ステータコア51と40個のティース53と5相2組のコイル55とが設けられている。相巻線の巻線ピッチと磁極ピッチの比γは、3/5、つまり0.6、毎極毎相のスロット数qは値2である。
[0026]
この電動機30では、5相の各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θは、pが値2であることから、θ=360°/(5・2)=36°であり、通電次数h(h≧1の任意の整数)が値1の場合の毎極毎相のスロット数qが値2であり、インバータ70は、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気的位相差δが、通電次数h=1では、δ=1・360°/5=72°であり、通電次数h=2では、δ=2・360°/5=144°であるように、5相巻線への通電を行なう。こうしても上記第1実施形態とほぼ同様の効果を奏する。
[0027]
また、図15に示すように、毎極毎相のスロット数qを値3としてもよい。図15に示した電動機30では、相数m=5、p=1、γ=5/5、q=3である。あるいは、図16に示すように、図15とほぼ同様の構成で、γ=3/5で短節巻きとして、電動機30を構成することも可能である。この電動機30でも、上述した第1実施形態とほぼ同様の作用効果を奏する。
[0028]
D.第2実施形態:
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の電動機運転システム20は、第1実施形態とほぼ同様に構成を備えるが、電動機30が相数13の誘導機であること、インバータ70の出力が電動機30の相数に合わせて、13相分の出力を有する点で相違する。電動機30の端子数も、これに応じて13となっていること、インバータ70やコントローラ88も13相分の用意されていることなどで相違するが、これらは相数が単にスケールアップされただけなので、図1に対応する図面は省略した。
[0029]
図17は、13相分の巻線AないしMを備えた電動機30の構成を示す。この電動機30の各パラメータは、相数m=13、p=1、γ=7/13、q=2である。また巻線AないしMの結線は、図18に示すように、スパンL=5である。この電動機30では、13相の各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θは、pが値1であることから、θ=360°/(13・1)=360°/13であり、通電次数h(h≧1の任意の整数)が値1の場合の毎極毎相のスロット数qが値2であり、インバータ70は、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気角位相差δが、通電次数h=1では、δ=360°/13であり、通電次数h=3では、δ=1080°/13であるように、13相巻線への通電を行なう。
[0030]
この電動機30では、例えば端子T1を例に取ると、図19に示すように、スパンLが値5であることから、端子T1における線電流It1は、コイルAとコイルIとに流れる。コイルIに流れる電流の振幅は、式(3)として記載した式に従う。この結果、通電次数h=3、つまり6極の場合の方が、通電次数h=1、つまり2極の場合より、コイル電流IA の振幅は大きくなる。通電次数hが値1の場合と、値3の場合の相電流の一例を図20A,図20Bにそれぞれ示した。第1実施形態で示した図10A,図10Bと同様に、図20A,図20Bにおいて、横軸は、巻線AからMの配列を示す。図において、「○」に「×」のマークは巻線の始まりを示し、「○」に「・」のマークは巻線の終わりを示す。図示するように、第2実施形態の電動機運転システム20では、駆動装置60は、極数の切換え(2極/6極)を行なうと、通電次数hを切換え(h=1,3)、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間、例えば、コイルAとコイルBとに流れる電流の電気角位相差δが、
δ=h・360°/m
となるようm相巻線への通電を行なう。
[0031]
各相コイルに流れる電流を用いて、正相および逆相磁束密度の差分ΔBを求めてトルクを演算できることは、第1実施形態と同様である。第2実施形態の電動機運転システム20によれば、電動機30として13相の誘導機を用い、13相の各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差θを、θ=360°/13とし、インバータ70による通電次数hが値1の場合の毎極毎相のスロット数qを2とし、コントローラ88がインバータ70を介して、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気角位相差δが、通電次数h=1または3において、δ=h・360°/13、つまり通電次数h=1で約41.5°、通電次数h=3で約83°となるよう13相巻線への通電を行なっている。この結果、通電次数h=3の場合、13相巻線の電動機30では、正逆相磁束密度の実効値BP,BNの差分ΔBが、毎極毎相のスロット数qが値1の場合より、僅かだが大きくできる(図13A参照)。このため、通電次数hを切換えることで、図7に示したように、高トルク低回転の運転領域から、低トルク高回転の運転領域までの運転領域を拡大することができる。
[0032]
E.第2実施形態のバリエーション:
上述した第2実施形態では、電動機30として13相、スパン5の誘導機を用いたが、巻線の相数は13相に限らず、13相以上の奇数相であれば、採用することができる。また、スパンLも、1以上、いずれの値にすることも可能である。図21は、13相巻線のスパンLを、値1、2、3、4とした場合の星形環状結線を示す模式図である。スパンL=2以上では、図示の都合上、コイルの形状を省略している。いずれの場合も、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θは、
θ=360°度/13
である。もとより、こうしたm相巻線を、2セット以上(p≧2)設けることも可能である。また、各コイルのピッチγも7/13に限定されず、他の値の短節巻きとしてもよい。更に、毎極毎相のスロット数qを値3~6の値としてもよい。こうした構成を採用しても、上述した第2実施形態とほぼ同様の作用効果を奏する。
[0033]
F.その他の実施形態:
(1)本開示の電動機30および電動機運転システム20は、上記の実施形態の他、種々の形態で実施可能である。例えば、アウタロータタイプの電動機として実施することも可能である。こうした電動機130の構成例を図22に示した。図示するように、この電動機130は、中心にステータ150を備え、その外周に回転自在にロータ140が配置されている。ステータ150は、ステータコア151の外周に放射線状に52個のティース153が設けられ、ティース153が形成する空間に、13相分のコイル55が巻き取られている。他方、このステータ150の外周に配置されたロータ140は、アウターロータコア141と、その内周に等間隔に配置された複数の2次導体143とを備える。この電動機130の各パラメータは、相数m=13、p=1、γ=7/13、q=2である。こうしたアウタロータタイプの電動機130において、巻線の相数mなどは、他の実施形態として示したように、m=13以外であっても差し付かないことは勿論である。これは、他のパラメータについても同様である。
[0034]
また、電動機は誘導機に限る必要はない。電動機は、例えばコンシクエント型SPMモータであっても、差し支えない。このコンシクエント型SPMモータは、図23に例示した様に、ロータコア241の外周表面に、径方向に着磁された複数の永久磁石247を備える。図23にロータコア241を示したコンシクエント型SPMモータの場合、通電次数h=2での極数は8極である。
[0035]
あるいは、図24ら示すように、ロータコア341の内部に径方向に着磁された複数の永久磁石347を埋め込んだコンシクエント型IPMモータとして実施することも可能である。ロータコア341の内部に埋め込まれた永久磁石347の両側方には、フラックスバリア348が設けられる。フラックスバリア348は、空気または非磁性体から構成される。
[0036]
こうしたコンシクエント型モータでも、誘導機と同様に、毎極毎相のスロット数q=2とし、通電次数hを切換えることにより、図7に示したように、高トルク低回転の運転領域から、低トルク高回転の運転領域までの運転領域を拡大することができる。
[0037]
(2)電動機と電動機を運転する駆動部とからなる電動機運転システムであって、
前記電動機は、m相巻線(mは5以上の奇数の整数)の各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θが、電動機におけるm相巻線のセット数を示す変数pを値1以上の任意の正の整数として、
θ=360°/(m・p)
の関係を満たし、前記各相の巻線の結線はスパンL(Lはm/2以下の正の整数)の値に対して、L・θ離れた機械的位相角度差となる相の巻線同士を結線した星形環状結線であり、通電次数h(h≧1の任意の整数)が値1の場合の毎極毎相のスロット数qが、6≧q≧2であり、前記駆動部は、前記各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気的位相差δが、
δ=h・360°/m
となるよう前記m相巻線への通電を行なうものとし、更に、この電動機運転システムにおいて、前記電動機の前記m相巻線は、各相巻線の巻線ピッチと磁極ピッチの比γが、0<γ<1となる短節巻きとし、前記駆動部は、前記各相巻線に、前記通電次数h=1またはh=2の電流を切換えて通電するものとしてもよい。
[0038]
こうすれば、通電次数hを切換えることで、毎極毎相のスロット数が6≧q≧2の電動機において、通電次数h=2の場合の正相磁束の実効値を大きくでき、電動機の出力を高めることができる。従って、通電次数の切換えによる効率の低下を招くことなく、高トルク低回転の運転領域から、低トルク高回転の運転領域までの運転領域を拡大することができる。
[0039]
(3)こうした電動機運転システムにおいて、前記電動機の前記m相巻線は、各相巻線の巻線ピッチγが、1>γ>0となる短節巻きであり、前記駆動部は、前記各相巻線に、前記通電次数h=1およびh=2の電流を通電するものとしてもよい。こうすれば、通電次数h=2の場合の正相磁束の実効値を大きくでき、電動機の出力を高めることができる。
[0040]
(4)こうした電動機運転システムにおいて、前記電動機の前記巻線ピッチγを値0.4~0.6としてもよい。こうすれば、通電次数hをh=1とh=2との間で切換えたとき、通電次数h=2の場合の正相磁束の実効値を最大値またはこれに近い値にすることができる。
[0041]
(5)こうした電動機運転システムにおいて、電動機が、5相巻線(m=5)を備えるものとしてもよい。通電次数の切換えを行なうためには、巻線の相数mは、5以上の奇数の整数である必要があるが、相数が少ないほど、毎極毎相のスロット数qが値1の時の逆相磁束の実効値が大きいため、相数mが最も小さい5相巻線とすれば、毎極毎相のスロット数qを値2以上としやすいという効果が得られる。
[0042]
(6)こうした電動機運転システムにおいて、前記電動機が、前記通電次数h=1のときの毎極毎相のスロット数q=2としてもよい。こうすれば、正相磁束密度と逆相磁束密度との差分が最も大きくなり、電動機の特性を改善することができる。
[0043]
(7)こうした電動機運転システムにおいて、前記電動機は誘導機としてもよい。誘導機の場合、高周波磁束の影響が大きいため、逆相磁束による影響を減らすことによる効果は大きい。もとより、電動機は誘導機に限らず、コンシクエント型SPMモータやコンシクエント型IPMモータなどを用いた電動機運転システムも可能である。
[0044]
(8)m相巻線(mは5以上の奇数の整数)の各相の巻線が星形環状結線された電動機の態様を採用してもよい。この電動機は、前記各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θが、電動機におけるm相巻線のセット数を示す変数pを値1以上の任意の整数として、
θ=360°/(m・p)
の関係を満たし、前記各相の巻線の結線はスパンL(Lはm/2以下の正の整数)の値に対して、L・θ離れた機械的位相角度差となる相の巻線同士を結線した星形環状結線であり、前記各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の電流の電気的位相差δが、通電次数h(h≧1の任意の整数)を用いて、
δ=h・360°/m
を満たし、h=1の場合の毎極毎相のスロット数qが、6≧q≧2である。
[0045]
この電動機は、正相磁束密度と逆相磁束密度との差分を大きくすることができる。このため、毎極毎相のスロット数q=1の電動機と比べて、電動機の特性を改善することができる。
[0046]
(9)電動機の駆動方法としての態様も可能である。この電動機の駆動方法は、
(a)m相巻線(mは5以上の奇数の整数)の各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θが、電動機におけるm相巻線のセット数を示す変数pを値1以上の任意の整数として
θ=360°/(m・p)
の関係を満たし、 (b)前記各相の巻線の結線はスパンL(Lはm/2以下の正の整数)の値に対して、L・θ離れた機械的位相角度差となる相の巻線同士を結線した星形環状結線であり、かつ
(c)通電次数h(h≧1の任意の整数)が値1の場合の毎極毎相のスロット数qが、6≧q≧2となる
電動機の前記各相の巻線に、前記電動機に対する要求に従って、前記電動機の前記通電次数hを切換え、前記通電次数hを切換えた場合に、前記各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気的位相差δが、
δ=h・360°/m
となるように、前記各相の巻線への通電を行なう。
[0047]
こうすれば、電動機の正相磁束密度と逆相磁束密度との差分を大きくすることができので、毎極毎相のスロット数q=1の電動機と比べて、電動機の特性を改善することができ、通電次数を切換えることで、高トルク低回転数の運転領域から、低トルク高回転数の運転領域まで、電動機を駆動することができる。
[0048]
(10)上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。ソフトウェアによって実現されていた構成の少なくとも一部は、ディスクリートな回路構成により実現することも可能である。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
[0049]
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
請求の範囲
[請求項1]
電動機(30)と電動機を運転する駆動部(60)とからなる電動機運転システム(20)であって、
前記電動機は、
m相巻線(mは5以上の奇数の整数)の各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θが、電動機におけるm相巻線のセット数を示す変数pを値1以上の任意の正の整数として、
θ=360°/(m・p)
の関係を満たし、
前記各相の巻線の結線は、スパンL(Lはm/2以下の正の整数)の値に対して、L・θ離れた機械的位相差角度となる相の巻線同士を結線した星形環状結線であり、
通電次数h(h≧1の任意の整数)が値1のときの極数を基にした毎極毎相のスロット数qが、6≧q≧2であり、
前記駆動部は、各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気角位相差δが、
δ=h・360°/m
となるよう前記m相巻線への通電を行なう、
電動機運転システム。
[請求項2]
請求項1記載の電動機運転システムであって、
前記電動機の前記m相巻線は、各相巻線の巻線ピッチと磁極ピッチの比γが、0<γ<1となる短節巻きであり、
前記駆動部は、前記各相巻線に、前記通電次数h=1またはh=2の電流を切換えて通電する
電動機運転システム。
[請求項3]
請求項1記載の電動機運転システムであって、
前記電動機の前記m相巻線は、各相巻線の巻線ピッチγが、1>γ>0となる短節巻きであり、
前記駆動部は、前記各相巻線に、前記通電次数h=1およびh=2の電流を通電する
電動機運転システム。
[請求項4]
前記電動機の前記巻線ピッチγが値0.4~0.6である、請求項2または請求項3に記載の電動機運転システム。
[請求項5]
前記電動機が、5相巻線(m=5)を備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電動機運転システム。
[請求項6]
前記電動機が、前記通電次数h=1のときの極数を基にした毎極毎相のスロット数q=2である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電動機運転システム。
[請求項7]
前記電動機が誘導機である、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電動機運転システム。
[請求項8]
m相巻線(mは5以上の奇数の整数)の各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θが、電動機におけるm相巻線のセット数を示す変数pを値1以上の任意の正の整数として、
θ=360°/(m・p)
の関係を満たし、
前記各相の巻線の結線が、スパンL(Lはm/2以下の正の整数)の値に対して、L・θ離れた機械的位相差角度となる相の巻線同士を結線した星形環状結線の電動機であり、
前記各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の電流の電気的位相差δが、通電次数h(h≧1の任意の整数)を用いて、
δ=h・360°/m
を満たし、
h=1のときの極数を基にした毎極毎相のスロット数qが、6≧q≧2である
電動機。
[請求項9]
電動機の駆動方法であって、
(a)m相巻線(mは5以上の奇数の整数)の各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間の機械的位相角度差の平均θが、電動機におけるm相巻線のセット数を示す変数pを値1以上の任意の整数として、次式(1)、
θ=360°/(m・p)
の関係を満たし、
(b)前記各相の巻線の結線がスパンL(Lはm/2以下の正の整数)の値に対して、L・θ離れた機械的位相角度差となる相の巻線同士を結線した星形環状結線であり、かつ
(c)通電次数h(h≧1の任意の整数)が値1の時の極数を基にした毎極毎相のスロット数qが、6≧q≧2となる
電動機の前記各相の巻線に、
前記電動機に対する要求に従って、前記電動機の前記通電次数hを切換え、
前記通電次数hを切換えた場合に、前記各相で隣接する機械的位相角度となる巻線間に流れる電流の電気的位相差δが、
δ=h・360°/m
となるように、前記各相の巻線への通電を行なう、
電動機の駆動方法。
図面