明 細 書
[0001]
本出願は2019年5月16日に出願された日本出願番号2019-92902号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
技術分野
[0002]
本開示は、二次電池の充放電制御装置に関する。
背景技術
[0003]
従来、車両に搭載された二次電池を含む電源装置において、二次電池の劣化を抑制して長寿命化することなどを目的として、二次電池の温度を制御することが行われている。二次電池は充電時に発熱して温度が上昇するため、温度が過度に上昇しないように充電を制御することが行われている。特許文献1に開示の構成では、予め定められた二次電池ごとの電池温度の上限値と、充電開始時に検出された電池温度との差に基づいて、充電レートを設定して充電を行うように構成されている。
先行技術文献
特許文献
[0004]
特許文献1 : 特許第5598601号公報
発明の概要
[0005]
近年の二次電池の大容量化に伴って、充電時間短縮のニーズが一層高まっている。しかしながら、特許文献1に開示の構成では、温度上昇にともなって充電レートを低下させることとなるため、単位時間当たりの充電量が低下し、その結果、所定の充電量に達するまでの時間が延び、充電時間短縮のニーズに応えることができない。
[0006]
本開示は、二次電池の劣化を抑制しつつ、充電時間の短縮を図ることができる二次電池の充放電装置を提供しようとするものである。
[0007]
本開示の一態様は、車両に搭載された二次電池の充放電制御装置であって、
上記二次電池の劣化情報を推定する劣化情報推定部と、
上記二次電池において予め設定された入出力許容領域を上記劣化情報推定部の推定結果に基づいて拡大して拡大許容領域を設定する入出力領域設定部と、
上記拡大許容領域内で上記二次電池の充放電を行うように制御する充放電制御部と、を備える二次電池の充放電制御装置にある。
[0008]
上記二次電池の充放電制御装置においては、二次電池の劣化情報を推定して推定結果に基づいて予め設定された許容領域を拡大するように制御し、拡大した許容領域内で充放電を行うように構成されている。これにより、劣化情報に応じた電流値で充放電が行われることにより充電電流が過度に抑制されないため、二次電池の劣化を抑制しつつ、充電時間の短縮を図ることができる。
[0009]
以上のごとく、上記態様によれば、二次電池の劣化を抑制しつつ、充電時間の短縮を図ることができる二次電池の充放電制御装置を提供することができる。
[0010]
なお、請求の範囲に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
図面の簡単な説明
[0011]
本開示についての上記目的及びその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
[図1] 図1は実施形態1における二次電池の充放電制御装置の構成を示す図であり、
[図2] 図2(a)は実施形態1における二次電池の電池温度の変化、図2(b)は実施形態1における二次電池の容量維持率、図2(c)は実施形態1における二次電池の入出力の許容領域を示す概念図であり、
[図3] 図3(a)は実施形態1における冷却要求の出力タイミング、図3(b)は実施形態1における二次電池の容量維持率、図3(c)は実施形態1における二次電池の冷却性能引き上げ量を示す概念図であり、
[図4] 図4(a)は他の実施形態における二次電池の入出力の許容領域を示す概念図であり、図4(b)はさらに他の実施形態における二次電池の入出力の許容領域を示す概念図であり、
[図5] 図5は実施形態1における二次電池の充放電制御装置の制御態様を示すフロー図であり、
[図6] 図6(a)は変形形態1における二次電池の電池温度の変化、図6(b)は変形形態1における二次電池の容量維持率、図6(c)は変形形態1における二次電池の入出力電力の変化を示す概念図であり、
[図7] 図7は実施形態2における二次電池の充放電制御装置の構成を示す図であり、
[図8] 図8は実施形態2における二次電池の充放電制御装置の制御態様を示すフロー図であり、
[図9] 図9は実施形態2における二次電池の入出力許容領域の拡大量を示す概念図である。
発明を実施するための形態
[0012]
(実施形態1)
上記二次電池の充放電制御装置の実施形態について、図1~図5を用いて説明する。
本実施形態の二次電池2の充放電制御装置1(以下、「充放電制御装置1」ともいう)は、車両に搭載される。そして、充放電制御装置1は、劣化情報推定部20、入出力領域設定部30、充放電制御部50を備える。
劣化情報推定部20は、二次電池2の劣化情報を推定する。
入出力領域設定部30は、二次電池2において予め定められた入出力の初期許容領域を、劣化情報推定部20の推定結果に基づいて拡大するように制御する。
充放電制御部50は、入出力領域設定部30により初期許容領域が拡大されてなる拡大許容領域内で行うように制御する。
[0013]
以下、本実施形態の充放電制御装置1について、詳述する。
本実施形態の充放電制御装置1は車両に搭載され、車両の電源を構成する二次電池2の温度を制御する。二次電池2の種類は特に限定されず、本実施形態では、二次電池2はリチウムイオン二次電池であって、複数備えられて電池パックを構成している。
[0014]
図1に示すように、充放電制御装置1は、電池情報取得部10、劣化情報推定部20、入出力領域設定部30、操作入力部40、充放電制御部50、冷却性能制御部60を備える。
[0015]
図1に示す電池情報取得部10は、二次電池2の電池情報を取得する。電池情報としては、二次電池2における温度、電圧、電流、抵抗、充電状態などとすることができる。電池情報取得部10が取得した電池情報は、書き換え可能なメモリからなる図示しない記憶部に格納される。
[0016]
図1に示す劣化情報推定部20は、電池情報取得部10により取得された電池情報に基づいて、二次電池2の劣化情報を推定する。二次電池2の劣化情報の推定方法は公知の技術を用いることができ、例えば、モデル電池で加速試験を行って電池電圧と充電状態と容量維持率との対応関係を示すマップや関係式を予め作成しておき、これらに基づいて劣化情報として容量維持率を推定することができる。また、これに替えて、二次電池の劣化情報を推定するための論理式を用意し、これに基づいて劣化情報を推定することとしてもよい。当初の満充電容量に対する容量維持率は、使用に伴って徐々に低下していく。そして、容量維持率が所定値を下回ったときを寿命とすることができる。本実施形態では、図2(b)、図3(b)に示すように、劣化情報推定部20は、劣化情報として容量維持率を推定して、当該推定値を容量維持率の現在値Pnとして取得する。なお、図2(b)、図3(b)において容量維持率の想定値P0は、予めシステム上で設定されている。
[0017]
図1に示す入出力領域設定部30は、二次電池2における入出力許容領域を設定する。二次電池2における入出力許容領域は、二次電池2の入出力値の許容範囲、又は二次電池2の電池温度の許容範囲として設定することができる。なお、二次電池2における入出力許容領域として、予め定められた初期許容領域が設定されている。初期許容領域は、二次電池2における電池性能や設計要件に基づいて定まる二次電池2の寿命からシステム上で適宜設定されるものである。通常、システム上で初期許容領域は、個々の二次電池2における使用制限に対して所定のマージンを設けて設定されている。
[0018]
そして、入出力領域設定部30は、劣化情報推定部20による推定結果としての劣化情報に基づいて、初期許容領域を拡大した拡大許容領域を設定する。初期許容領域の拡大は、予め設定された二次電池2の電池温度又は入出力値の絶対値の許容範囲の上限を引き上げることにより行うことができる。本実施形態では、図2(a)に示すように、急速充電期間R1において、二次電池2の電池温度における初期許容領域の上限値L1を引き上げて拡大許容領域の上限値L2を設定することとしている。すなわち、図2(c)に示すように、初期許容領域A0から上限値L2に対応する領域A1が拡大されて拡大許容領域A0+A1が設定される。なお、上限値L1の引き上げ量は限定されないが、本実施形態では、上限値L1の引き上げ量は、拡大許容領域の上限値L2が二次電池2において電池設計等から定められた使用可能な範囲である制限温度、制限入出力値となるように設定する。なお、急速充電とは、普通充電よりも高い電流値で充電することにより普通充電よりも充電速度を速めたものであって、例えば、普通充電の2倍以上の充電速度を呈することができる。
[0019]
図1に示すように、充放電制御装置1は操作入力部40を有しており、操作入力部40は、ユーザからの操作の入力が可能に構成されている。操作入力部40の構成は特に限定されない。本実施形態では、操作入力部40は、ユーザ4が初期許容領域の拡大の要否、すなわち、拡大許容領域の設定の要否を入力することができるように構成されている。
[0020]
図1に示す充放電制御部50は、二次電池2の充放電を制御する。入出力領域設定部30により拡大許容領域が設定されている場合には、充放電制御部50は当該拡大許容領域内で充放電を行う。図2(a)に示すように、拡大許容領域内で充放電を行うことにより、電池温度は時間t1以降において初期許容領域の上限値L1を超えて符号Uで示す領域分の劣化が促進される。これにより、図2(b)に示すように、時間t1以降において容量維持率の低下割合が上昇することとなる。一方、拡大許容領域が設定されていない場合には、充放電制御部50は初期許容領域内で充放電を行う。
[0021]
図1に示す冷却性能制御部60は、二次電池2に接続された冷却部3の冷却性能を制御する。冷却部3の構成は特に限定されず、空冷、水冷など公知の構成とすることができる。そして、冷却性能制御部60においてもその構成は特に限定されず、冷却部3の構成に合わせて適宜設定することができる。冷却性能制御部60は、入出力領域設定部30による拡大許容領域が設定された場合に、冷却部3の冷却性能を引き上げるように制御する。
[0022]
図1に示す冷却性能制御部60による冷却性能の引き上げを反映させるタイミングは適宜設定することができる。例えば、冷却性能制御部60において冷却部3の冷却性能を引き上げるように制御することが決定された後の所定のタイミングとすることができる。本実施形態では、図2(a)に示すように、車両において二次電池2の急速充電期間R1において冷却性能を高めることが決定された場合、図3(a)及び図3(b)に示すように、急速充電後の車両走行中である非急速充電期間R2において冷却要求を出力して、冷却部3の冷却性能の引き上げを反映させる。冷却性能の引き上げ量は限定されないが、例えば、図3(c)に示すように、図3(b)に示す容量維持率の想定値P0と現在値Pnとの差分に応じて設定することができる。
[0023]
次に、充放電制御装置1による制御フローについて、図5を参照して説明する。
まず、図5に示すステップS1において、充放電制御部50により二次電池2が急速充電状態であるか否かを判断する。ステップS1において、二次電池2が急速充電状態ではないと判断された場合はステップS1のNoに進み、この制御フローを終了する。
[0024]
一方、図5に示すステップS1において、二次電池2が急速充電状態であると判断された場合はステップS1のYesに進む。そして、ステップS2において、操作入力部40によりユーザ4から入出力許容領域の拡大を行うことを示す操作が入力されたか否かを判断する。ステップS2において、入出力許容領域の拡大を行うことを示す操作が入力されていないと判断された場合は、ステップS2のNoに進み、この制御フローを終了する。
[0025]
図5に示すステップS2において、入出力許容領域の拡大を行うことを示す操作が操作入力部40に入力されたと判断された場合は、ステップS2のYesに進む。そして、ステップS3において、劣化情報推定部20により、二次電池2の劣化情報としての容量維持率を推定して、当該推定値を容量維持率の現在値Pnとして取得する。
[0026]
その後、図5に示すステップS4において、入出力領域設定部30により、予め設定された容量維持率の想定値P0と容量維持率の現在値Pnとを比較する。本実施形態では、想定値P0に対して所定のマージンを考慮するために、現在値Pnからマージンαを差し引いたものと想定値P0とを比較して、現在値Pn-αが想定値P0よりも大きいか否かを判断する。ステップS4において、容量維持率の現在値Pn-αが想定値P0よりも大きくないと判断された場合は、ステップS4のNoに進む。そして、ステップS5において、入出力領域設定部30は二次電池2における入出力の初期許容領域の拡大を行わず、すなわち拡大許容領域を設定せずに、充放電制御部50により充放電を行い、この制御フローを終了する。
[0027]
一方、図5に示すステップS4において、容量維持率の現在値Pn-αが想定値P0よりも大きいと判断された場合は、ステップS4のYesに進む。そして、ステップS6において、入出力領域設定部30は二次電池2における入出力の初期許容領域の拡大を行い、拡大許容領域を設定して充放電制御部50により充放電を行う。この場合、例えば、図2(a)に示すように、時間t1において電池温度が初期許容領域の上限値L1を超えて上昇し、時間t2において拡大許容領域の上限値L2までの電池温度で急速充電が行われる。これにより、図2(b)に示すように、時間t1以降の充電維持率の現在値Pnの低下割合は想定値P0の低下割合よりも大きくなって、劣化が促進されることとなる。
[0028]
その後、図5に示すステップS7において、再度、劣化情報推定部20により劣化情報として二次電池2の容量維持率の現在値Pnを推定する。そして、ステップS8において、予め設定された容量維持率の想定値P0と現在値Pnとを比較し、容量維持率の現在値Pnが想定値P0よりも小さいか否かを判断する。容量維持率の現在値Pnが想定値P0よりも小さいと判断された場合は、ステップS8のYesに進み、ステップS9において、冷却性能制御部60により、二次電池2の非急速充電期間R2において、冷却性能制御部60による冷却部3の冷却性能を引き上げる制御を行うことを決定し、制御フローを終了する。
[0029]
一方、図5に示すステップS8において、容量維持率の現在値Pnが想定値P0よりも小さくないと判断された場合は、ステップS8のNoに進み、ステップS10において、冷却性能制御部60による冷却部3の冷却性能を引き上げる制御を行わない、すなわち冷却性能を維持することを決定し、制御フローを終了する。
[0030]
図5に示すステップS9において、冷却性能制御部60による冷却部3の冷却性能を引き上げる制御を行うことを決定した場合には、制御フローの終了後、非急速充電期間R2が到来した時点で、冷却部3の冷却性能を引き上げる。この場合、例えば、図3(a)に示すように、走行中などの非急速充電期間R2において、Q0で示す冷却部3の冷却性能の引き上げをさせない場合の冷却要求出力の時間t4よりも早い時間t3で、引き上げ後の冷却性能で冷却要求を行う。これにより、図3(b)に示すように、時間t3以降において、二次電池2が一層冷却されて劣化の進行が抑制され、充電維持率の現在値Pnの低下割合は想定値P0の低下割合よりも小さくなる。その結果、充電維持率は想定値P0と同等又は想定値P0よりも大きい値となる。なお、当該冷却性能の引き上げは、非急速充電期間R2の少なくとも一部において行うことができる。当該冷却性能の引き上げを行う期間は、二次電池2の劣化度合いに基づいて適宜決定することができる。
[0031]
次に、本実施形態の充放電制御装置1における作用効果について、詳述する。
本実施形態の充放電制御装置1においては、予め設定された許容領域を二次電池2の劣化情報の推定結果に基づいて拡大するように制御し、拡大した許容領域内で充放電を行うように構成されている。これにより、劣化情報に応じた電流値で充放電が行われることにより充電電流が過度に抑制されないため、二次電池2の劣化を抑制しつつ、充電時間の短縮を図ることができる。
[0032]
さらに本実施形態では、入出力領域設定部30は、予め設定された二次電池2の電池温度の上限値を引き上げることにより、図2(c)に示すように、拡大許容領域を設定する。これにより、二次電池2の充電時間の短縮化を図ることが容易となる。なお、入出力領域設定部30は、図2(c)に示すように予め設定された二次電池2の電池温度の上限値を引き上げることに替えて、図4(a)に示すように予め設定された二次電池2の入出力値の絶対値の上限値を引き上げることとしてもよい。この場合には初期許容領域A0から当該上限値の引き上げ量に応じた領域A2が拡大されて拡大許容領域A0+A2が設定される。なお、この場合も、二次電池2の充電時間の短縮化を図ることが容易となる。さらに、入出力領域設定部30は、図4(b)に示すように予め設定された二次電池2の電池温度の上限値を引き上げるとともに、予め設定された二次電池2の入出力値の絶対値の上限値を引き上げることの両方を行うこととしてもよい。この場合には、入出力領域設定部30により、初期許容領域A0から、各上限値の引き上げ量に応じた領域A1、A2に加えて、両上限値の引き上げに応じた領域A3が拡大されて拡大許容領域A0+A1+A2+A3が設定される。この場合には、二次電池2の充電時間の一層の短縮化を図ることが容易となる。
[0033]
さらに本実施形態では、入出力領域設定部30は、二次電池2の劣化情報としての容量維持率の現在値Pnと所定の劣化基準値である容量維持率の想定値P0との比較結果に基づいて、拡大許容領域を設定する。これにより、二次電池2の寿命をより高精度に想定の範囲内に納めつつ、二次電池2の充電時間の短縮化を図ることができる。
[0034]
さらに本実施形態では、充放電制御部50は、拡大許容領域内で二次電池2の急速充電を行うように制御をする。これにより、二次電池2の寿命をより高精度に想定の範囲内に納めつつ、二次電池2の急速充電に要する時間の短縮化を図ることができるため、急速充電に要する時間の短縮化というユーザのニーズに確実に応えることができる。
[0035]
さらに本実施形態では、二次電池2を冷却する冷却部3の冷却性能を制御する冷却性能制御部60を有し、冷却性能制御部60は、入出力領域設定部30が拡大許容領域を設定した場合に冷却部3の冷却性能を引き上げる。これにより、二次電池2の劣化を遅延させることができる。そのため、拡大許容領域において、初期許容領域よりも拡大された範囲で二次電池2の充電を行った場合に促進された二次電池2の劣化量を、当該冷却部3の冷却性能の引き上げによる劣化の遅延で相殺して、二次電池2の劣化を初期の想定内に納めることができる。
[0036]
さらに本実施形態では、冷却性能制御部60は、二次電池2が普通充電よりも高い電流値で充電する急速充電が行われていない非急速充電期間R2の少なくとも一部において、冷却部3の冷却性能を引き上げる。これにより、急速充電期間R1の短縮化を図りつつ、二次電池2の劣化を想定内に納めることができる。
[0037]
さらに本実施形態では、入出力領域設定部30は、ユーザ4による入力が可能な操作入力部40を有し、操作入力部40に入力された操作に基づいて、許容領域の拡大の要否を判断する。これにより、ユーザ4の希望に応じて充電時間の短縮を行うことができ、ユーザ4のニーズに一層応えることができる。
[0038]
なお、本実施形態では、充放電制御部は、急速充電期間R1において拡大許容領域で充放電を行うこととしたが、これに替えて、図6(a)、図6(b)に示す変形形態1のように、車両の走行中の非急速充電期間R2における時間t5~t6で二次電池2の充放電を拡大許容領域内で行うように制御をすることとしてもよい。例えば、走行中の場合には、出力できる電池温度範囲が拡大するため、ドライバビリティの向上に寄与できる。また、入力できる電池温度範囲が拡大するため、ドライバビリティの向上に寄与できると共に、油圧ブレーキの長寿命化、小型化などを図ることができる。なお、時間t5以降において符号Uで示す領域分の劣化が促進されるが、時間t5~t6以外の期間において、実施形態1の場合と同様に冷却部3による冷却性能の引き上げによって劣化を遅延させて、促進された劣化分Uを相殺することができる。
[0039]
以上のごとく、本実施形態及び変形形態によれば、二次電池2の劣化を抑制しつつ、充電時間の短縮を図ることができる二次電池2の充放電制御装置1を提供することができる。
[0040]
(実施形態2)
実施形態1では、入出力領域設定部30は、初期許容領域の上限値L1の引き上げ量を、拡大許容領域の上限値L2が二次電池2における使用可能な範囲である制限温度、制限入出力値となるように設定した。本実施形態では、図7に示すように、図1に示す冷却性能制御部60を有しておらず、図7に示す拡大量設定部35を有しており、拡大量設定部35が劣化情報推定部20により取得された劣化情報に基づいて、入出力領域設定部30が設定する拡大許容領域における拡大量を設定する。また、本実施形態2では、図7に示すように、図1に示す操作入力部40を備えていない。その他の構成要素は実施形態1の場合と同様であり、本実施形態においても実施形態1の場合と同一の符号を用いてその説明を省略する。
[0041]
本実施形態の充放電制御装置1による制御フローについて説明する。
まず、図8に示すステップS21において、電池情報取得部10により二次電池2の現在の電池温度を取得する。その後、ステップS22において、入出力領域設定部30により、予め設定された二次電池2の電池温度の上限値と、電池情報取得部10により取得した現在の電池温度との差が所定値以上であるか否かを判断する。ステップS22において、二次電池2における電池温度の上限値と現在の電池温度との差が所定値以上でないと判断された場合は、ステップS22のNoに進み、この制御フローを終了する。
[0042]
一方、図8に示すステップS22において、二次電池2における電池温度の上限値と現在の電池温度との差が所定値以上であると判断された場合は、ステップS22のYesに進む。そして、ステップS23において、劣化情報推定部20により二次電池2の劣化情報として容量維持率の現在値Pnを取得する。
[0043]
その後、図8に示すステップS24において、入出力領域設定部30により、容量維持率の現在値Pn-αが想定値P0よりも大きいか否かを判断する。ステップS24において、容量維持率の現在値Pn-αが想定値P0よりも大きくないと判断された場合は、ステップS24のNoに進む。そして、ステップS25において、拡大許容領域を設定せずに充放電制御部50により充放電を行って、この制御フローを終了する。
[0044]
一方、図8に示すステップS24において、容量維持率の現在値Pn-αが想定値P0よりも大きいと判断された場合は、ステップS24のYesに進む。そして、ステップS26において、拡大量設定部35により、図9に示すように劣化情報推定部20により取得された容量維持率の想定値P0と現在値Pnとの差に基づいて、電池温度の上限値の拡大量を設定する。その後、ステップS27において、入出力領域設定部30により拡大許容領域を設定し、充放電制御部50により充放電を行って、この制御フローを終了する。
[0045]
本実施形態の充放電制御装置1によれば、劣化情報を考慮した電池温度で充放電が行われることにより充電電流が過度に抑制されないため、二次電池2の劣化を抑制しつつ、充電時間の短縮を図ることができる。なお、実施形態1では入出力許容領域の拡大を急速充電時に行うことしたが、本実施形態ではこれに限らず、普通充電においても入出力許容領域の拡大を行うことが可能となっている。
そして、本実施形態においても、実施形態1において冷却性能制御部60及び操作入力部40を備えることによる作用効果を除いて、実施形態1の場合と同様の作用効果を奏する。
[0046]
本開示は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。例えば、実施形態2において、実施形態1における操作入力部40を備える構成としてもよい。
[0047]
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形形態や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
請求の範囲
[請求項1]
車両に搭載された二次電池(2)の充放電制御装置(1)であって、
上記二次電池の劣化情報を推定する劣化情報推定部(20)と、
上記二次電池において予め設定された入出力許容領域を、上記劣化情報推定部の推定結果に基づいて拡大して拡大許容領域を設定する入出力領域設定部(30)と、
上記拡大許容領域内で上記二次電池の充放電を行うように制御する充放電制御部(50)と、を備える二次電池の充放電制御装置。
[請求項2]
上記入出力領域設定部は、予め設定された上記二次電池の電池温度の上限値及び入出力値の絶対値の上限値の少なくとも一方を引き上げることにより、上記拡大許容領域を設定する、請求項1に記載の二次電池の充放電制御装置。
[請求項3]
上記入出力領域設定部は、上記二次電池の劣化情報と所定の劣化基準値との比較結果に基づいて、上記拡大許容領域を設定する、請求項1又は2に記載の二次電池の充放電制御装置。
[請求項4]
上記充放電制御部は、上記拡大許容領域内で上記二次電池の急速充電を行うように制御をする、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池の充放電制御装置。
[請求項5]
上記充放電制御部は、上記車両の走行中の充放電を上記拡大許容領域内で行うように制御をする、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池の充放電制御装置。
[請求項6]
上記二次電池を冷却する冷却部(3)の冷却性能を制御する冷却性能制御部(60)を有し、該冷却性能制御部は、上記入出力領域設定部が上記拡大許容領域を設定した場合に上記冷却部の冷却性能を引き上げる、請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の充放電制御装置。
[請求項7]
上記冷却性能制御部は、上記二次電池の急速充電が行われていない非急速充電期間内において、上記冷却部の冷却性能を引き上げる、請求項6に記載の二次電池の充放電制御装置。
[請求項8]
上記入出力領域設定部は、ユーザによる操作の入力が可能な操作入力部(40)を有し、該操作入力部に入力された操作に基づいて、上記拡大許容領域の設定の要否を判断する、請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池の充放電制御装置。
図面