明 細 書
発明の名称 : ケーブル牽引機及びケーブル敷設方法
技術分野
[0001]
本開示は、ケーブルを空中に引き上げるケーブル牽引機及び空中にケーブルを架け渡すケーブル敷設方法に関する。
背景技術
[0002]
図1は、電柱10から家屋11へケーブル12を引き入れる、道路横断を伴う工事を説明する図である。このような工事を行うとき、道路17を車両通行止とし、道路17にケーブル12を這わせ、やり取り綱をケーブル12に接続し、作業者21が高所作業車22等で高所に上がり、人力でケーブル12を牽引して高所に固定する。その際、道路17を走る車両23が止まらず作業エリアに侵入すれば、車両23がケーブル12を引っかけて事故が発生する。
[0003]
図2は、電柱10から道路横断を伴う家屋11へケーブル12を引き入れる工事であって、作業者21がケーブル12を牽引しない工事を説明する図である。図2の工事では、非特許文献1のようなケーブル牽引機25を使用する。しかし、図2のような工事でも、道路17と家屋11の間において地面に沿ってケーブル12を横断させるだけである。このため、ケーブル12を高所に引き上げる作業は作業者21の人力となり、上述の事故を防ぐことは困難である。
先行技術文献
非特許文献
[0004]
非特許文献1 : http://www.hct.ecl.ntt.co.jp/panel/pdf/2_Ea_3_1-1.pdf(2019年4月17日検索)
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0005]
当該事故を回避するためには、作業者を介さずにケーブルを引き上げることができる牽引機が必要である。図3は、そのような牽引機100を説明する図である。牽引機100を高所に設置し、ケーブルを牽引すれば作業者を介さずにケーブルを引き上げることができる。牽引機100は、2つのローラ部(c)を有しており、ローラ部(c)でケーブル(a)や牽引ヒモ(b)を挟み込み、ローラ部(c)を回転させることでケーブル(a)や牽引ヒモ(b)を方向(e)へ牽引する。しかし、高所に牽引機100を設置すると、牽引時に、塑性変形し難い硬いケーブル(a)と塑性変形し易い牽引ヒモ(b)の接続部(d)がローラ部(c)に引っ掛かり牽引が停止することがある。その理由は、非特許文献1のケーブル牽引機(地上)とは異なり、接続部(d)が鋭角にローラ部(c)を通過しようとするためである。
なお、「鋭角」とは、ローラ部(c)の中心(o)を結ぶ直線とケーブル(a)との成す角度θが45°未満の状態である。
[0006]
つまり、図3のような牽引機を高所に設置すれば、前記のような事故は防ぐことができるが、牽引停止という新たな課題が発生する。そこで、本発明は、前記課題を解決するために、高所に設置しても牽引停止を回避できるケーブル牽引機及びケーブル敷設方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007]
上記目的を達成するために、本発明に係るケーブル牽引機は、ケーブル導入部にガイドを設け、接続部が鋭角にローラ部に導入されないようにした。
[0008]
具体的には、本発明に係るケーブル牽引機は、外周でケーブルを挟み込む2つのローラ部と、前記ケーブルを前記ローラ部へ導入するガイドと、を備えるケーブル牽引機であって、
前記ガイドは、前記ローラ部の中心を結ぶ直線と前記ローラ部に導入される前記ケーブルとが成す角度を45°以上90°以下とすることを特徴とする。
[0009]
高所に設置しても、ガイドにより接続部がローラ部に導入される角度が大きくなるため、接続部がローラ部に引っかかる事態の発生が低減する。従って、本発明は、高所に設置しても牽引停止を回避できるケーブル牽引機を提供することができる。
[0010]
本発明に係るケーブル牽引機の前記ガイドは、前記ケーブルを前記ローラ部の前記外周の中央へ導く溝を有することを特徴とする。ケーブル牽引時にケーブルが蛇行せずローラ部の力をケーブルに伝えやすくなる。
[0011]
本発明に係るケーブル牽引機の前記ガイドは、前記溝内に凹凸部を有することを特徴とする。ケーブル牽引時にケーブルが蛇行せずローラ部の力をケーブルに伝えやすくなる。凹凸部によりケーブルの付着物を除去できる。
[0012]
本発明に係るケーブル牽引機の少なくとも一方の前記ローラ部は、前記外周の中央に前記ケーブルが填まる窪みが複数形成されていることを特徴とする。ケーブル牽引時にケーブルが蛇行せずローラ部の力をケーブルに伝えやすくなる。
[0013]
本発明に係るケーブル牽引機は、既存の架空ケーブルに掛けられるフックをさらに備える。本ケーブル牽引機を高所に設置しやすくなる。
[0014]
本発明に係るケーブル敷設方法は、前記ケーブル牽引機を使用してケーブルを空中に引き上げるケーブル敷設方法であって、
前記ケーブルの先端に牽引紐を接続し、
前記ケーブル牽引機の2つの前記ローラ部に前記牽引紐を挟み込むとともに前記牽引紐を前記ガイドに配置し、
前記フックを前記架空ケーブルに掛けて前記ケーブル牽引機を空中に配置し、
前記ケーブル牽引機の前記ローラ部を回転させて前記牽引紐を牽引し、さらに前記牽引紐に引っ張られた前記ケーブルを前記ローラ部に引き込むことで、前記ケーブルを所定高さ以上に引き上げることを特徴とする。
[0015]
本ケーブル敷設方法は、前記ケーブル牽引機を使用するため、高所に設置しても牽引停止を回避でき、且つ作業者の人力不要でケーブルを高所に引き上げることができ、上述の事故を防ぐことができる。従って、本発明は、高所に設置しても牽引停止を回避できるケーブル敷設方法を提供することができる。
[0016]
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
発明の効果
[0017]
本発明は、高所に設置しても牽引停止を回避できるケーブル牽引機及びケーブル敷設方法を提供することができる。
図面の簡単な説明
[0018]
[図1] 電柱から家屋へケーブルを引き入れる工事を説明する図である。
[図2] ケーブル牽引機を使用して電柱から家屋へケーブルを引き入れる工事を説明する図である。
[図3] 本発明に関連するケーブル牽引機を説明する図である。
[図4] 本発明に係るケーブル牽引機を説明する図である。
[図5] 本発明に係るケーブル牽引機を説明する図である。
[図6] 本発明に係るケーブル牽引機のガイドを説明する図である。
[図7] 本発明に係るケーブル牽引機を説明する図である。
[図8] 本発明に係るケーブル牽引機を説明する図である。
[図9] 本発明に係るケーブル牽引機の操作方法を説明する図である。
[図10] 本発明に係るケーブル牽引機を使用して電柱から家屋へケーブルを引き入れる工事を説明するフロー図である。
[図11] 本発明に係るケーブル牽引機を使用して電柱から家屋へケーブルを引き入れる工事を説明する図である。
発明を実施するための形態
[0019]
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
[0020]
(実施形態1)
図4は、本実施形態のケーブル牽引機101を説明する図である。ケーブル牽引機101は、外周でケーブルaを挟み込む2つのローラ部cと、ケーブルaをローラ部cへ導入するガイドfと、を備えるケーブル牽引機であって、
ガイドfは、ローラ部cの中心oを結ぶ直線とローラ部cに導入されるケーブルaとが成す角度θを45°以上90°以下とすることを特徴とする。
[0021]
ケーブル牽引機101を高所へ設置したとしても、ガイドfの存在により角度θを図3のケーブル牽引機100より大きくすることができる。このため、ローラ部cに接続部dが鋭角に導入されなくなる。つまり、ケーブルa、牽引ヒモb及び接続部dが両ローラ部cの中心を結ぶ直線の垂直方向に近い方向から導入されることで、両ローラ部cに負荷なく導入(牽引)されるため、接続部dがローラ部cに引っかかることを抑制できる。
[0022]
(実施形態2)
ローラ部cで牽引するとき、ケーブルa、牽引ヒモb、又は接続部dが左右に蛇行し、ローラ部cの力を十分にこれらに伝えられないことがある。従って、ローラ部cで牽引するときにこれらを蛇行させない機能部が必要となる。実施形態では、当該機能部の第1形態を説明する。
[0023]
図5は、本実施形態のケーブル牽引機102を説明する図である。ケーブル牽引機102は、図4のケーブル牽引機101に対し、ガイドfが、ケーブルaをローラ部cの外周の中央へ導くガイド溝gを有することを特徴とする。ガイド溝gの幅は、牽引対象(ケーブルa、牽引ヒモb、及び接続部d)が填まるように牽引対象の直径ないし太さより若干大きくしておく。
[0024]
このように、ガイドfにガイド溝gを設けることで、牽引対象がローラ部cに導入されるときに蛇行せずにガイド溝gに沿ってローラ部cに導入される。このため、牽引物がローラ部cの適切な位置(牽引力を伝えやすい場所)に誘導されるため、牽引が容易になる。つまり、動力源を大きくする必要が無い。
[0025]
また、図6のように、ガイドfは、ガイド溝g内に凹凸部jを有することを特徴とする。ガイド溝(g)の入線側の先端の一部に細かい凹凸(凹凸部j)を設置することで、牽引時にケーブルaにこびりついた付着物を除去することができる。
[0026]
(実施形態3)
本実施形態は、前記機能部の第2形態を説明する。図7は、本実施形態のケーブル牽引機103を説明する図である。ケーブル牽引機103は、図4のケーブル牽引機101に対し、少なくとも一方のローラ部cは、外周の中央にケーブルaが填まる窪みhが複数形成されていることを特徴とする。窪みhの幅は、牽引対象(ケーブルa、牽引ヒモb、及び接続部d)が填まるように牽引対象の直径ないし太さより若干大きくしておく。
[0027]
なお、窪みhはローラ部cの外周を一周する溝ではない。窪みhはローラ部cの外周を一周するように整列されている。その理由は、ケーブルaの牽引のためにローラ部cには窪みhが無い平らな部分も必要となるからである。
[0028]
このように、ローラ部cに窪みhを設けることで、牽引対象がローラ部cに導入されるときに窪みhに填まり、牽引対象が蛇行せずにローラ部cに導入される。このため、牽引物がローラ部cの適切な位置(牽引力を伝えやすい場所)に誘導されるため、牽引が容易になる。つまり、動力源を大きくする必要が無い。なお、図7では一方のローラ部cに窪みhが設置されているが、両方のローラ部cに窪みhがあってもよい。
[0029]
(実施形態4)
図8は、本実施形態のケーブル牽引機104を説明する図である。図8(A)はケーブル牽引機104の正面図、図8(B)はケーブル牽引機104の側面図である。ケーブル牽引機104は、図4、図5、又は図7のケーブル牽引機(101~103)に対し、既存の架空ケーブル15に掛けられるフックkをさらに備えることを特徴とする。
[0030]
筐体pは、動力源、制御基板、その他のパーツが格納されている。また、フックkは、牽引機104を既存架空ケーブル15に引掛けるために使用する工具(図9参照)を引掛ける牽引機設置フックk1を有する。
[0031]
図9は、ケーブル牽引機104を架空ケーブル15に設置する作業を説明する図である。図9(A)はフックkを架空ケーブル15に掛けようとしているときの図、図9(B)はフックkを架空ケーブル15に掛け終わったときの図である。まず、図9(A)のように、工具31のフック32を牽引機設置フックk1に引掛けて上側に持上げれば、フックkの開閉部k2が開く。この開いた開閉部k2から架空ケーブル15を入れてケーブル牽引機104を架空ケーブル15に掛ける。続いて図9(B)のように、工具31を下側に引くことでフック32が牽引機設置フックk1から抜け、フックkの開閉部k2が閉じる。作業者は、図9のように工具31を用いてケーブル牽引機104を架空ケーブル15に設置する。
[0032]
(実施形態5)
図10及び図11は、ケーブル牽引機104を用いてケーブルを敷設する方法を説明する図である。本実施形態のケーブル敷設方法は、
ケーブルaの先端に牽引紐bを接続し、
ケーブル牽引機(101、102又は103)の2つのローラ部cに牽引紐bを挟み込むとともに牽引紐bをガイドfに配置し、
図9のようにして、フックkを架空ケーブル15に掛けてケーブル牽引機(101、102又は103)を空中に配置し、
ケーブル牽引機のローラ部cを回転させて牽引紐bを牽引し、さらに牽引紐bに引っ張られたケーブルaをローラ部cに引き込むことで、ケーブルaを所定高さ以上に引き上げることを特徴とする。
[0033]
図10及び図11を用いてより詳細に説明する。
作業者21は屋内および家屋壁面作業を完了する(ステップS01)。
作業者21は家屋にてケーブルaを任意の長さで切断する(ステップS02)。
作業者21は家屋にて牽引ヒモbを任意の長さで切断する(ステップS03)。
作業者21はケーブルaと牽引ヒモbを接続する(ステップS04)。
作業者21は牽引ヒモを道路17に這わせながら横断する(ステップS05)。
作業者21は牽引ヒモbをケーブル牽引機104の両ローラ部cの間に挿入する(ステップS06)。
作業者21は工具31のフック32をケーブル牽引機104の牽引設置フックk1に引っ掛ける(ステップS07)。
作業者21は工具31を伸ばし、架空ケーブル15にケーブル牽引機104のフックkを引っかけて設置する(ステップS08)。
作業者21は工具31を縮める(ステップS09)。
作業者21は無線リモコンスイッチ33でケーブル牽引機104を操作し、牽引作業を開始する(ステップS10)。
牽引ヒモbおよびケーブルaが所定の高さ(道路17を通行する車両に引っ掛からない高さ)以上に張りあがる(ステップS11)。
作業者21は無線リモコンスイッチ33でケーブル牽引機104を操作し、牽引作業を停止する(ステップS12)。
作業者21は高所作業車等、高所作業するための準備を行う(ステップS13)。
作業者21は高所作業車等で高所にあがる(ステップS14)。
作業者21はケーブル牽引機104からケーブルaを外す(ステップS15)。
作業者21はケーブルaを電柱10等の金具に固定する(ステップS16)。
作業者21はケーブル牽引機104を架空ケーブル15から外す(ステップS17)。
作業者21は高所作業車等で降下する(ステップS18)。
[0034]
本ケーブル敷設方法は、ケーブル牽引機104を使用するため、高所に設置しても牽引停止を回避でき、且つ作業者21の人力不要でケーブルaを高所に引き上げることができ、上述の事故を防ぐことができる。
符号の説明
[0035]
a:ケーブル
b:牽引ヒモ
c:ローラ部
d:接続部
e:牽引方向
f:ガイド
g:ガイド溝
h:窪み
j:凹凸部
k:フック
k1:牽引設置フック
k2:開閉部
10:電柱
11:家屋
12:ケーブル
15:架空ケーブル
17:道路
21:作業者
22:高所作業車
23:車両
25:ケーブル牽引機
31:工具
32:フック
33:無線リモコンスイッチ
100~104:ケーブル牽引機
請求の範囲
[請求項1]
外周でケーブルを挟み込む2つのローラ部と、
前記ケーブルを前記ローラ部へ導入するガイドと、
を備えるケーブル牽引機であって、
前記ガイドは、前記ローラ部の中心を結ぶ直線と前記ローラ部に導入される前記ケーブルとが成す角度を45°以上90°以下とすることを特徴とするケーブル牽引機。
[請求項2]
前記ガイドは、前記ケーブルを前記ローラ部の前記外周の中央へ導く溝を有することを特徴とする請求項1に記載のケーブル牽引機。
[請求項3]
前記ガイドは、前記溝内に凹凸部を有することを特徴とする請求項2に記載のケーブル牽引機。
[請求項4]
少なくとも一方の前記ローラ部は、前記外周の中央に前記ケーブルが填まる窪みが複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル牽引機。
[請求項5]
請求項1から4のいずれかに記載のケーブル牽引機を既存の架空ケーブルに掛けられるフックをさらに備えることを特徴とするケーブル牽引機。
[請求項6]
請求項5に記載のケーブル牽引機を使用してケーブルを空中に引き上げるケーブル敷設方法であって、
前記ケーブルの先端に牽引紐を接続し、
前記ケーブル牽引機の2つの前記ローラ部に前記牽引紐を挟み込むとともに前記牽引紐を前記ガイドに配置し、
前記フックを前記架空ケーブルに掛けて前記ケーブル牽引機を空中に配置し、
前記ケーブル牽引機の前記ローラ部を回転させて前記牽引紐を牽引し、さらに前記牽引紐に引っ張られた前記ケーブルを前記ローラ部に引き込むことで、前記ケーブルを所定高さ以上に引き上げる
ことを特徴とするケーブル敷設方法。
図面