Processing

Please wait...

Settings

Settings

Goto Application

1. WO2020196460 - CARBOXYLIC ACID PRODUCTION METHOD

Document

明 細 書

発明の名称 カルボン酸の製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002  

先行技術文献

特許文献

0003  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0004   0005  

課題を解決するための手段

0006   0007  

発明の効果

0008  

図面の簡単な説明

0009  

発明を実施するための形態

0010   0011   0012   0013   0014   0015   0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055  

実施例

0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102  

請求の範囲

1   2   3   4   5  

図面

1   2  

明 細 書

発明の名称 : カルボン酸の製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、カルボン酸含有発酵液から、カルボン酸を製造する方法に関する。

背景技術

[0002]
 従来、カルボン酸を含有する発酵液からカルボン酸を回収する手段として、アニオン交換樹脂による吸着分離、電気透析、晶析等と並び、抽出分離がしばしば用いられる。カルボン酸を含有する発酵液からのカルボン酸の抽出においては、発酵液(水相)と抽出溶剤(有機相)の相界面に水相にも有機相にも溶解しない固形分を含む中間相が生成するという現象が知られており、この現象が、抽出時の相分離を阻害するため、固形物除去工程を加える必要が生じる等の弊害を生じさせる課題があることが知られている。これを解決する手段として、膜濾過を用いる方法がすでに提案されている。例えば、特許文献1では、アミノ酸発酵液から抽出によりアミノ酸を回収する場合において、抽出の前段階でアミノ酸発酵液を分子量1000以下の分子が透過する限外濾過膜(UF膜)に通じることにより細胞質やその他の固形物が除去され、アミノ酸発酵液と抽出溶剤の相分離が早くなると記載されている。また、特許文献2では、脂肪族ジカルボン酸発酵液から抽出により脂肪族ジカルボン酸を回収する場合において、精密濾過膜(MF膜)に通じることにより微生物が除去され、脂肪族ジカルボン酸発酵液と抽出溶剤の相分離が早くなること、また、限外濾過膜よりも精密濾過膜が濾過膜として好適であることが記載されている。その他、特許文献3には、モノカルボン酸発酵液をナノ濾過膜に通じることにより、不純物が除去され、回収されるモノカルボン酸の純度が高められることが記載されている。

先行技術文献

特許文献

[0003]
特許文献1 : 特開昭62-277349号公報
特許文献2 : 特開2015-119738号公報
特許文献3 : 特開2010-095450号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0004]
 特許文献1及び2にはそれぞれ限外膜濾過、精密膜濾過を通じることにより抽出の際の相分離が早くなることが記載されている。しかしながら、本発明者が検討したところによれば、カルボン酸含有発酵液を精密濾過膜、限外濾過膜のいずれに通じた場合でも、抽出時の水相と有機相の相分離は十分でないという課題があることが分かった(本願比較例1)。
[0005]
 そのため、本発明ではカルボン酸含有発酵液からカルボン酸を抽出する際の水相と有機相の相分離性を高める方法を見出すことを課題とする。

課題を解決するための手段

[0006]
 前述の通り、従来技術としてモノカルボン酸含有発酵液をナノ濾過膜に通じてモノカルボン酸の純度を高める方法が知られているが、ナノ濾過膜処理がカルボン酸の抽出工程に与える影響については何ら示唆されておらず、むしろ、限外濾過膜よりも目開きが小さいナノ濾過膜は限外濾過膜よりも不適であることが示唆されていた。しかしながら、本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、カルボン酸発酵液をナノ濾過膜に通じてからカルボン酸の抽出工程に供することにより、抽出後の水相と有機相の相分離が促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0007]
 すなわち、本発明は、次の(1)~(5)から構成される。
(1)以下の工程(A)及び(B)を含む、カルボン酸の製造方法。
(A)カルボン酸含有発酵液をナノ濾過膜に通じて濾過して、透過側からカルボン酸含有濾液を得る工程
(B)工程(A)より得たカルボン酸含有濾液から該濾液と相分離する抽出溶剤にてカルボン酸を抽出し、水相と相分離したカルボン酸抽出液を回収する工程
(2)前記カルボン酸含有発酵液及び/又は前記カルボン酸含有濾液のpHを4.5以下に調整する、(1)に記載の方法。
(3)工程(A)において、カルボン酸含有発酵液をナノ濾過膜に通じる前に不溶物質を除去する工程を含む、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記不溶物質を除去する工程がカルボン酸含有発酵液を精密濾過膜に通じる工程である、(3)に記載の方法。
(5)前記カルボン酸の分子量が200以下である、(1)から(4)のいずれかに記載の方法。

発明の効果

[0008]
 本発明により、カルボン酸含有発酵液から抽出によりカルボン酸を回収する場合において、抽出後の水相と有機相の相分離が促進され、効率的にカルボン酸を製造することができる。

図面の簡単な説明

[0009]
[図1] ナノ濾過膜を通じて得たカルボン酸含有濾液からのカルボン酸抽出試験における、カルボン酸含有濾液と抽出溶剤を接触させた直後の写真である。
[図2] ナノ濾過膜を通じていないカルボン酸含有発酵液からのカルボン酸抽出試験における、カルボン酸含有発酵液と抽出溶剤を接触させた直後(a)と12時間後(b)の写真である。

発明を実施するための形態

[0010]
 以下、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。
[0011]
 本発明において、カルボン酸とは分子中にカルボキシル基(COOH基)を一つ又は複数持つ化合物の総称である。本発明におけるカルボン酸は特に限定されないが、分子量約200以下程度のカルボン酸であれば後述のナノ濾過膜の透過性が高いことから好ましい。好ましいカルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、グリコール酸、グルコン酸、アクリル酸、酪酸、イソ酪酸、γ-アミノ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピルビン酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、リンゴ酸、酒石酸、オキサロ酢酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、アジピン酸、アジピン酸セミアルデヒド、3-オキソアジピン酸、3-ヒドロキシアジピン酸、3-ヒドロキシアジピン酸-3,6-ラクトン、α-ヒドロムコン酸、β-ヒドロムコン酸、ムコン酸、ムコノラクトン、2-ケト-L-グロン酸、6-アミノカプロン酸、アコニット酸、安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、テレフタル酸、イソフタル酸、シキミ酸、フェニルアラニン、チロシン、ヒスチジン等を例示することができる。
[0012]
 本発明において、カルボン酸含有発酵液とは、微生物の作用により炭素源、窒素源、無機塩類、アミノ酸、ビタミンなどの発酵原料を含有する液体培地中でカルボン酸が生成された培養液だけでなく、発酵原料を含有する液体培地中で微生物を培養させた培養液に別途化学的又は生物学的に合成されたカルボン酸を添加したものもカルボン酸含有発酵液に含む。
[0013]
 微生物の培養に用いる炭素源としては、グルコース、シュクロース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース等の単糖類、これら単糖類が結合した二糖類や多糖類、これら糖類を含有する糖蜜、甜菜糖蜜、ケーンモラセス、廃糖蜜、デンプン糖化液、セルロース含有バイオマス糖化液等が挙げられる。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他の補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母又は酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類が使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加できる。その他、これら炭素源、窒素源、無機塩、アミノ酸、ビタミンなどを含む発酵原料として、廃棄物系バイオマスを用いることもできる。廃棄物系バイオマスとしては、食品廃棄物、家畜糞尿、下水汚泥、農業残渣、木質系廃棄物などを例示することができる。
[0014]
 カルボン酸含有発酵液の調製に用いる微生物は特に限定されないが、パン酵母などの酵母、大腸菌、コリネ型細菌などのバクテリア、糸状菌、放線菌等が挙げられる。使用する微生物は自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。
[0015]
 [工程(A)]
 本発明においては、まず工程(A)として、カルボン酸含有発酵液をナノ濾過膜に通じることにより、カルボン酸含有濾液を得る。
[0016]
 本発明において「ナノ濾過膜に通じる」とは、カルボン酸含有発酵液を、ナノ濾過膜に通じて、透過液側からカルボン酸を含む透過液を回収することを意味する。また、本明細書では、カルボン酸を含有するナノ濾過膜の透過液を、カルボン酸含有濾液と記載する。
[0017]
 カルボン酸含有発酵液をナノ濾過膜に通じることにより、後段の工程(B)においてカルボン酸を抽出後、水相にも有機相にも溶解しない固形分を含む中間相の生成が抑制され、水相と有機相の相分離が促進される。
[0018]
 カルボン酸含有発酵液中のカルボン酸は、カルボン酸又はカルボン酸の塩として水に溶解していてもよい。カルボン酸の塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの異なる塩の混合物であってもよい。
[0019]
 ナノ濾過膜に通じて濾過するカルボン酸含有発酵液中のカルボン酸濃度は、特に限定されないが、高濃度であれば、カルボン酸含有濾液中のカルボン酸濃度も高いため、濃縮する場合のエネルギー削減に好適である。カルボン酸の濃度を高める方法、すなわち、濃縮する方法としては、水分を蒸発除去する蒸発濃縮法、逆浸透膜に通じることにより水分を除去する逆浸透膜濃縮法、又はこれらを組み合わせた方法を用いることができる。
[0020]
 本発明で使用されるナノ濾過膜の素材には、酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができるが、前記1種類の素材で構成される膜に限定されず、複数の膜素材を含む膜であってもよい。またその膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のどちらでもよい。複合膜としては、例えば、特開昭62-201606号公報に記載の、ポリスルホンを膜素材とする支持膜にポリアミドの機能層からなるナノ濾過膜を構成させた複合膜を用いることができる。
[0021]
 本発明においてはこれらの中でも高耐圧性と高透水性、高溶質除去性能を兼ね備え、優れたポテンシャルを有する、ポリアミドを機能層とした複合膜が好ましい。さらに操作圧力に対する耐久性と、高い透水性、阻止性能を維持できるためには、ポリアミドを機能層とし、それを多孔質膜や不織布からなる支持体で保持する構造のものが好ましい。ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜において、ポリアミドを構成する単量体の好ましいカルボン酸成分としては、例えば、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸、ピリジンカルボン酸などの芳香族カルボン酸が挙げられるが、製膜溶媒に対する溶解性を考慮すると、トリメシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、又はこれらの混合物がより好ましい。
[0022]
 前記ポリアミドを構成する単量体の好ましいアミン成分としては、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ベンジジン、メチレンビスジアニリン、4,4’-ジアミノビフェニルエーテル、ジアニシジン、3,3’,4-トリアミノビフェニルエーテル、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニルエーテル、3,3’-ジオキシベンジジン、1,8-ナフタレンジアミン、m(p)-モノメチルフェニレンジアミン、3,3’-モノメチルアミノ-4,4’-ジアミノビフェニルエーテル、4,N,N’-(4-アミノベンゾイル)-p(m)-フェニレンジアミン-2,2’-ビス(4-アミノフェニルベンゾイミダゾール)、2,2’-ビス(4-アミノフェニルベンゾオキサゾール)、2,2’-ビス(4-アミノフェニルベンゾチアゾール)等の芳香環を有する一級ジアミン、ピペラジン、ピペリジン又はこれらの誘導体等の二級ジアミンが挙げられ、中でもピペラジン又はピペリジンを単量体として含む架橋ポリアミドを機能層とするナノ濾過膜は耐圧性、耐久性の他に、耐熱性、耐薬品性を有していることから好ましく用いられる。より好ましくは前記架橋ピペラジンポリアミド又は架橋ピペリジンポリアミドを主成分とするナノ濾過膜である。ピペラジンポリアミドを含有するポリアミドを機能層とするナノ濾過膜としては、例えば、特開昭62-201606号公報に記載のものが挙げられ、具体例としては、東レ株式会社製の架橋ピペラジンポリアミド系半透膜のUTC-60、UTC-63が挙げられる。
[0023]
 本発明で用いるスパイラル型のナノ濾過膜エレメントとしては、例えば、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とする、東レ株式会社製のUTC-60、UTC-63を含む同社製ナノフィルターモジュールSU-210、SU-220、SU-600、SU-610も使用することができる。また、架橋ピペラジンポリアミドを機能層とするフィルムテック社製ナノ濾過膜のNF-45、NF-90、NF-200、NF-400、あるいはポリアミドを機能層とするアルファラバル社製ナノ濾過膜のNF99、NF97,NF99HF、酢酸セルロース系のナノろ過膜であるGE Osmonics社製ナノ濾過膜のGEsepaなどが挙げられる。
[0024]
 本発明において、カルボン酸含有発酵液のナノ濾過膜による濾過は、圧力をかけて行ってもよい。その濾過圧は、特に限定されないが、0.1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるため、0.1MPa以上8MPa以下の範囲で好ましく用いられるが、0.5MPa以上7MPa以下で用いれば、膜透過流束が高いことから、カルボン酸を効率的に透過させることができるためより好ましい。
[0025]
 本発明において、カルボン酸含有発酵液のナノ濾過膜による濾過は、非透過液を再び原水に戻し、繰り返し濾過することでカルボン酸の回収率を向上させることができる。
[0026]
 ナノ濾過膜は、溶液中でイオン化していない(非解離)物質の方が、イオン化している(解離)物質に比べて透過しやすい特性から、カルボン酸含有発酵液のpHを酸性にすることで、カルボン酸塩ではないカルボン酸状態のカルボン酸が増加し、ナノ濾過膜を透過しやすくなる。一方、pHが低すぎると装置の腐食が懸念されるようになり、工業的には不利である。これらの観点から、ナノ濾過膜に通じるカルボン酸含有発酵液のpHは、pH4.5以下に調整されることが好ましく、pH1.5以上4.5以下に調整されることがより好ましく、pH2.0以上4.0以下に調整されることがさらに好ましい。
[0027]
 ナノ濾過膜に通じるカルボン酸含有発酵液のpHを調整する際に用いる酸は、pHを酸性にすることができれば特に限定されないが、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸を好ましく用いることができる。
[0028]
 カルボン酸含有発酵液には、菌体や資化されない発酵原料等由来の不溶物質、微生物から分泌されたタンパク質等の生体物質が含まれている。ナノ濾過膜の目詰まりを抑制するという観点から、前述のナノ濾過膜処理に先立ち、カルボン酸含有発酵液中の不溶物質を除去することが好ましく、また、不溶物質の除去と併せてカルボン酸含有発酵液中のタンパク質等の生体物質を除去することがより好ましい。
[0029]
 カルボン酸含有発酵液中の不溶物質を除去する方法としては、例えば、カルボン酸含有発酵液を精密濾過膜(MF膜)に通じることにより、透過液側から不溶物質を除去したカルボン酸含有発酵液を得ることができる。又は、カルボン酸含有発酵液を、遠心処理することにより不溶物質を沈降させ、上清を回収することにより、不溶物質を除去したカルボン酸含有発酵液を得ることができる。本発明においては、精密濾過膜により不溶物質を除去する工程が好ましく採用される。
[0030]
 精密濾過膜は、菌体や資化されない発酵原料等由来の不溶物質を分離する機能を有するものであれば特に限定はなく、材質としては、例えば、多孔質セラミック膜、多孔質ガラス膜、多孔質有機高分子膜、金属繊維編織体、不織布などを用いることができるが、これらの中で特に多孔質有機高分子膜もしくはセラミック膜が好適である。
[0031]
 精密濾過膜の構成としては、例えば、耐汚れ性の点から、多孔質樹脂層を機能層として含むことが好ましい。
[0032]
 多孔質樹脂層を含む精密濾過膜は、好ましくは、多孔質基材の表面に、機能層として作用とする多孔質樹脂層を有している。
[0033]
 多孔質基材の材質は、有機材料及び/又は無機材料等からなり、有機繊維が望ましく用いられる。好ましい多孔質基材は、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維及びポリエチレン繊維などの有機繊維を用いてなる織布や不織布であり、より好ましくは、密度の制御が比較的容易であり製造も容易で安価な不織布が用いられる。
[0034]
 多孔質樹脂層は、有機高分子膜を好適に使用することができる。有機高分子膜の材質としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂及びセルローストリアセテート系樹脂などが挙げられる。有機高分子膜は、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物であってもよい。ここで主成分とは、その成分が50重量%以上、好ましくは60重量%以上含有することをいう。有機高分子膜の材質は、溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂及びポリアクリロニトリル系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂又はそれを主成分とする樹脂が最も好ましく用いられる。
[0035]
 ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体も好ましく用いられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及び三塩化フッ化エチレンなどが例示される。
[0036]
 カルボン酸含有発酵液中のタンパク質等の生体物質を除去する方法としては、例えば、カルボン酸含有発酵液を、限外濾過膜(UF膜)に通じることにより、透過液側からタンパク質等の生体物質を除去したカルボン酸含有発酵液を得ることができる。
[0037]
 限外濾過膜の分画分子量は、2,000~100,000の範囲であれば特に限定されないが、分画分子量5,000~100,000の範囲が好ましく、より好ましくは分画分子量5,000~30,000の範囲である。
[0038]
 限外濾過膜の素材としては、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニルデン、再生セルロース、セルロース、セルロースエステル、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリ4フッ化エチレンなどを使用することができる。
[0039]
 本発明で用いる限外濾過膜の具体例としては、GE W&PT社製DESALブランドのMシリーズ、Pシリーズ、GシリーズのGH(G-10)タイプ、GK(G-20)タイプ、GM(G-50)タイプ、“DURATHERM”(登録商標)シリーズのHWS UFタイプ、STD UFタイプや、Synder社製のVT、MT、ST、SM、MK、MW、LY、BN、BY、旭化成株式会社製の“マイクローザ”(登録商標)UFシリーズ、日東電工株式会社製のNTR-7410、NTR-7450などがある。
[0040]
 菌体や発酵原料等由来の不溶物質、タンパク質等の生体物質を除去する順番は、特に限定されないが、サイズの大きな菌体や発酵原料等由来の不溶物質を先に除去する方が、限外濾過膜の目詰まりを抑制できるため好ましい。
[0041]
 [工程(B)]
 本発明においては、工程(B)として、工程(A)より得たカルボン酸含有濾液から該濾液と相分離する抽出溶剤にてカルボン酸を抽出し、水相と相分離したカルボン酸抽出液を回収する。
[0042]
 工程(B)に用いる抽出溶剤としては、工程(A)より得たカルボン酸含有濾液と相分離し、カルボン酸を抽出することができれば特に限定されないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系抽出溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系抽出溶剤、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン等の塩素系抽出溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系抽出溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系抽出溶剤、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系抽出溶剤、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、オレイルアルコール等の炭素数4以上アルコール系抽出溶剤、クロロホルム/イソプロパノール混合溶液、ジクロロメタン/イソプロパノール混合溶液、酢酸エチル/イソプロパノール混合溶液等のイソプロパノール混合系抽出溶剤、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン等の長鎖アミン系抽出溶剤、トリブチルホスフィンオキサイド、トリオクチルホスフィンオキサイド等のアルキルホスフィンオキサイド系抽出溶剤、アンモニウム系、イミダゾリウム系、ホスホニウム系、ピリジニウム系、ピロリジニウム系、スルホニウム系等のイオン液体系抽出溶剤を例示することができる。これらの抽出溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
[0043]
 抽出溶剤としてクロロホルム/イソプロパノール混合溶液、ジクロロメタン/イソプロパノール混合溶液、酢酸エチル/イソプロパノール混合溶液を用いる場合、イソプロパノールを混合する割合は、40体積%以下であることが好ましい。イソプロパノールを混合する割合が多いと、カルボン酸含有濾液との相分離性が低下する傾向がある。
[0044]
 工程(B)の抽出温度は特に限定されないが、カルボン酸含有濾液及び抽出溶剤が凝固又は沸騰しない温度範囲であることが好ましいという観点から、5℃以上100℃以下であることがより好ましく、10℃以上90℃以下であることがさらに好ましく、20℃以上80℃以下であることが特に好ましい。
[0045]
 工程(B)においてカルボン酸含有濾液のpHは、酸性条件であるpH7未満であれば特に限定されないが、カルボン酸塩状態ではないカルボン酸のほうが、抽出溶剤へ抽出されやすい傾向があるため、pHは低い方が好ましい。一方、pHが低すぎると装置の腐食が懸念されるようになり、工業的には不利である。これらの観点から、工程(B)におけるカルボン酸含有濾液のpHは、pH4.5以下に調整されることが好ましく、より好ましくはpH1.5以上4.5以下に調整されることであり、さらに好ましくはpH2.0以上4.0以下に調整されることである。
[0046]
 工程(B)においてカルボン酸含有濾液のpHを調整する際に用いる酸は、pHを酸性にすることができれば、特に限定されないが、工程(A)でのpH調整に好ましく用いられる硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸を好ましく用いることができる。
[0047]
 工程(B)に供するカルボン酸含有濾液中のカルボン酸濃度は、特に限定されないが、該濃度が高い方がカルボン酸が抽出溶剤に移動しやすくなる傾向がある。具体的には、0.01重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、1重量%以上であることがさらに好ましく、20重量%以上であることが特に好ましい。カルボン酸の濃度を高める方法、すなわち、濃縮する方法としては、水分を蒸発除去する蒸発濃縮法、逆浸透膜に通じることにより水分を除去する逆浸透膜濃縮法、又はこれらを組み合わせた方法を用いることができる。また、工程(A)に供するカルボン酸含有発酵液の濃度を適宜調整することで、カルボン酸含有濾液の濃度を所望の濃度に調整してもよい。
[0048]
 カルボン酸が抽出溶剤により抽出された後の水相である抽残液とフレッシュな抽出溶剤を接触させることにより、抽残液中に残されたカルボン酸をさらに回収することができ、カルボン酸の回収率を高めることができる。カルボン酸濃度が十分に低下した抽残液は、水としてカルボン酸含有発酵液の調整に用いられてもよいし、系外にパージしてもよい。
[0049]
 抽出は、バッチ式抽出、並流多回抽出、向流多段抽出等により行うことができる。工業規模で連続的に抽出を行うには、ミキサーセトラー型抽出装置や多孔板抽出塔、脈動塔、ミキサーセトラー塔等の塔型抽出装置を用いることができる。
[0050]
 [後続工程]
 カルボン酸抽出液からのカルボン酸の回収は、単に抽出溶剤を留去する方法や、カルボン酸を蒸留する方法、カルボン酸を析出させた後に固液分離する方法、カルボン酸を水に逆抽出させてから蒸留、濃縮、又は析出により水と分離する方法、等の常法を用いて実施することができる。
[0051]
 抽出液から除去された抽出溶剤は、そのまま工程(B)の抽出溶剤として再利用してもよいし、蒸留により精製してから工程(B)の抽出溶剤として再利用してもよい。蒸留により精製する場合には、該抽出溶剤中に含まれる微量のカルボン酸を回収することで、カルボン酸の回収量を増加することができる。
[0052]
 [その他の工程]
 本発明においては、工程(A)に供するカルボン酸含有発酵液、工程(B)に供するカルボン酸含有濾液、工程(B)の後工程において生じうるカルボン酸を含有する水溶液等を、逆浸透膜(RO膜)に通じることにより、カルボン酸を濃縮することができる。ここで「逆浸透膜に通じる」とは、逆浸透膜に通じて濾過し、透過液側から水を除去し、非透過液側からカルボン酸濃度が高められたカルボン酸を含有する水溶液を回収することを意味する。
[0053]
 本発明で使用する逆浸透膜の膜素材としては、一般に市販されている酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができるが、該1種類の素材で構成される膜に限定されず、複数の膜素材を含む膜であってもよい。膜形態としては、平膜型、スパイラル型、中空糸型など適宜の形態のものが使用できる。
[0054]
 本発明で使用される逆浸透膜の具体例としては、例えば、東レ株式会社製ポリアミド系逆浸透膜(UTC)SU-710、SU-720、SU-720F、SU-710L、SU-720L、SU-720LF、SU-720R、SU-710P、SU-720P、SU-810、SU-820、SU-820L、SU-820FA、同社酢酸セルロース系逆浸透膜SC-L100R、SC-L200R、SC-1100、SC-1200、SC-2100、SC-2200、SC-3100、SC-3200、SC-8100、SC-8200、日東電工(株)製NTR-759HR、NTR-729HF、NTR-70SWC、ES10-D、ES20-D、ES20-U、ES15-D、ES15-U、LF10-D、アルファラバル製RO98pHt、RO99、HR98PP、CE4040C-30D、GE製GE Sepa、Filmtec製BW30-4040、TW30-4040、XLE-4040、LP-4040、LE-4040、SW30-4040、SW30HRLE-4040などが挙げられる。
[0055]
 逆浸透膜による濾過は、圧力をかけて行うが、その濾過圧は、1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるため、1MPa以上8MPa以下の範囲であることが好ましい。また、濾過圧が1MPa以上7MPa以下の範囲であることがより好ましく、2MPa以上6MPa以下の範囲であることがさらに好ましい。
実施例
[0056]
 以下、参考例、実施例、比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下のこれら結果に限定されるものではない。
[0057]
 [HPLC分析条件]
HPLC分析は以下の分析条件により行った。
カラム1:Synergi Polar-RP (Phenomenex社製)
カラム2:Synergi Hydro-RP (Phenomenex社製)
カラム温度:45℃
移動相1:5mMギ酸水溶液/アセトニトリル=98/2(vol/vol)、1mL/min
移動相2:(5mM ギ酸、20mM Bis-Tris、0.1mM EDTA-2Na)水溶液/アセトニトリル=98/2(vol/vol)、1mL/min
検出:電気伝導度。
[0058]
 [pH分析方法]
Horiba pHメーター F-52(株式会社堀場製作所製)を用いた。pH校正はpH4.01標準液(富士フイルム和光純薬株式会社製)、pH6.86標準液(富士フイルム和光純薬株式会社製)、pH9.18標準液(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いて行った。
[0059]
 (参考例1)カルボン酸含有発酵液(酢酸、コハク酸)の調製
 次の手順によりカルボン酸含有発酵液(モデル発酵液)を調製した。Escherichia coli NBRC3301株を試験管中、5mLのLB培地に植菌し一晩振とう培養した(前培養)。前培養液を以下に示した組成の培地1Lに植菌し、坂口フラスコ(容積2L)で24時間振とう培養した。この培養液に酢酸、コハク酸がそれぞれ10g/Lとなるように酢酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)及びコハク酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加し、カルボン酸含有発酵液とした。
[0060]
 [培地組成]
グルコース10g/L
硫酸アンモニウム0.5g/L
リン酸カリウム50mM
硫酸マグネシウム0.013g/L
硫酸鉄0.032mg/L
硫酸マンガン1.35mg/L
塩化カルシウム0.17mg/L
塩化ナトリウム1.25g/L
Bactoトリプトン2.50g/L
酵母エキス1.25g/L
pH6.5。
[0061]
 (参考例2~5)
 参考例1で調製したカルボン酸含有発酵液を精密濾過膜(細孔径0.01μm以上1μm未満の多孔性膜;東レ株式会社製)に通じて、続いて、限外濾過膜(分画分子量10000;東レ株式会社製)に通じた。このカルボン酸含有発酵液1Lを原水タンクに移し、以下のナノ濾過膜処理条件1にてナノ濾過膜に1回通じた。得られたカルボン酸含有濾液は色味がなくなり、清澄な水溶液であった。カルボン酸濃度をHPLCで分析し、以下の式に従って透過率を算出した。透過率の算出結果を表1に示す。
[0062]
 透過率(%)=(透過液中の化合物濃度)/(原水中の化合物濃度)×100。
[0063]
 (参考例6~9)
 限外濾過膜に通じた後のカルボン酸含有発酵液に濃硫酸(シグマ-アルドリッチ社製)を加えてpHを4.0に調整した以外は、参考例2~5と同様に実験を行った。得られたカルボン酸含有濾液は色味がなくなり、清澄な水溶液であった。透過率の算出結果を表1に示す。
[0064]
 (参考例10~13)
 pHを2.0に調整した以外は、参考例6~9と同様に実験を行った。得られたカルボン酸含有濾液は色味がなくなり、清澄な水溶液であった。透過率の算出結果を表1に示す。
[0065]
 [ナノ濾過膜処理条件1]
分離膜:UTC-63(東レ株式会社製)
膜分離装置:“SEPA”(登録商標)CF-II(GE W&PT社製)
操作温度:25℃
濾過圧:0.21~2.03MPa。
[0066]
 参考例2~13より、カルボン酸含有発酵液をナノ濾過膜に通じることにより、カルボン酸を含有する透過液であるカルボン酸含有濾液が得られることが示された。また、ナノ濾過膜に通じる前段において、酸を加えることでカルボン酸の透過率が向上することが示された。
[0067]
[表1]


[0068]
 (参考例14)
 参考例1で調製したカルボン酸含有発酵液1Lを精密濾過膜(細孔径0.01μm以上1μm未満の多孔性膜;東レ株式会社製)に通じて、続いて、限外濾過膜(分画分子量10000;東レ株式会社製)に通じてから、濃硫酸(シグマ-アルドリッチ社製)を加えてpHを4.0に調整した。このカルボン酸含有発酵液を原水タンクに移し、以下のナノ濾過膜処理条件2にてナノ濾過膜に通じた。
[0069]
 [ナノ濾過膜処理条件2]
分離膜:UTC-63(東レ株式会社製)
膜分離装置:“SEPA”(登録商標)CF-II(GE W&PT社製)
操作温度:25℃
濾過圧:0.5MPa。
[0070]
 カルボン酸含有濾液をロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製)を用いて100mLになるまで濃縮した。濃縮した水溶液のpHは4.6であった。該水溶液0.5mLとジクロロメタン(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.5mLを2mLエッペンドルフチューブに添加し、キュートミキサーCM-1000(東京理化器械株式会社製)を用いて室温で1時間、1500rpmで振とうした。振とう後、水相中のカルボン酸濃度をHPLCにより測定し、以下の式に従って抽出率を算出した。結果を表2に示す。
[0071]
 抽出率(%)=(1-(抽残液中の抽出対象化合物濃度)/(抽出前の抽出対象化合物濃度))×100。
[0072]
 (参考例15)
 ジクロロメタンの代わりに、酢酸エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた以外は、参考例14と同様に実験を行った。結果を表2に示す。
[0073]
 (参考例16)
 ジクロロメタンの代わりに、メチルイソブチルケトン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた以外は、参考例14と同様に実験を行った。結果を表2に示す。
[0074]
 (参考例17)
 カルボン酸含有濾液の濃縮液に濃硫酸(シグマ-アルドリッチ社製)を加えてpHを4.0に調整した以外は参考例14と同様に実験を行った。結果を表2に示す。
[0075]
 (参考例18)
 ジクロロメタンの代わりに、酢酸エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた以外は、参考例17と同様に実験を行った。結果を表2に示す。
[0076]
 (参考例19)
 ジクロロメタンの代わりに、メチルイソブチルケトン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた以外は、参考例17と同様に実験を行った。結果を表2に示す。
[0077]
[表2]


[0078]
 参考例14~19から、カルボン酸含有濾液からカルボン酸を抽出溶剤に抽出できることが示された。また、この際、カルボン酸含有濾液のpHが4.5以下である方が、抽出率が高くなる傾向があることが示された。
[0079]
 (実施例1)
 参考例1で調製したカルボン酸含有発酵液1Lを精密濾過膜(細孔径0.01μm以上1μm未満の多孔性膜;東レ株式会社製)に通じて、続いて、限外濾過膜(分画分子量10000;東レ株式会社製)に通じてから、濃硫酸(シグマ-アルドリッチ社製)を加えてpHを4.0に調整した。このカルボン酸含有発酵液を原水タンクに移し、前記ナノ濾過膜処理条件2にてナノ濾過膜に通じた。非透過液は原水タンクに戻し、液量が不足すれば純水を原水タンクに加えてナノ濾過膜処理を継続し、カルボン酸全量を透過液側に回収したカルボン酸含有濾液を得た。このカルボン酸含有濾液をロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製)を用いて100mLになるまで濃縮し、濃硫酸(シグマ-アルドリッチ社製)を加えてpHを4.0に調整した。この水溶液10mLをガラス製分液漏斗(容量50mL)に移し、酢酸エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)10mLを加えて30回振とうした。酢酸エチル相を回収し、抽残液にさらに酢酸エチル10mLを加えて30回振とうし、酢酸エチル相を回収した。同様の操作を繰り返し、合計100mLの酢酸エチルを用いてカルボン酸の抽出を行い、カルボン酸抽出液を得た(酢酸抽出率95%、コハク酸抽出率73%)。この抽出において、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相の形成はほぼ観察されず、十秒以内に極めて速やかに相分離した(図1)。
[0080]
 (比較例1)
 カルボン酸含有発酵液をナノ濾過膜に通じなかった以外は、実施例1と同様にカルボン酸抽出液を得た(酢酸抽出率70%、コハク酸抽出率55%)。この抽出においては、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相が生じ、振とう直後は全く相分離しなかった(図2)。さらに12時間静置した後でも、水相と酢酸エチル相の界面は視認できるものの明瞭ではなかった(図2)。中間相を巻き込まないように酢酸エチル相を回収する必要があったため、カルボン酸抽出液の回収量が実施例1と比較して減少した。
[0081]
 (実施例2)
 酢酸エチルの代わりにメチルイソブチルケトンを抽出溶剤とした以外は、実施例1と同様にカルボン酸抽出液を得た(酢酸抽出率85%、コハク酸抽出率60%)。この抽出においては、水相とメチルイソブチルケトン相の間に固形分を含む中間相の形成はほぼ観察されず、十秒以内に極めて速やかに相分離した。
[0082]
 (比較例2)
 カルボン酸含有発酵液をナノ濾過膜に通じなかった以外は、実施例2と同様にカルボン酸抽出液を得た(酢酸抽出率63%、コハク酸抽出率41%)。この抽出においては、水相とメチルイソブチルケトン相の間に固形分を含む中間相が生じ、振とう直後は全く相分離しなかった。さらに12時間以上静置した後でも、水相とメチルイソブチルケトン相の界面は視認できるものの明瞭ではなかった。中間相を巻き込まないようにメチルイソブチルケトン相を回収する必要があったため、カルボン酸抽出液の回収量が実施例2と比較して減少した。
[0083]
 実施例1、2及び比較例1、2より、ナノ濾過膜に通じることにより、抽出を行う際の相分離が明確かつ素早くなり、水相と相分離したカルボン酸抽出液を回収できることが示された。
[0084]
 (実施例3)
 参考例1で調製したカルボン酸含有発酵液1Lを精密濾過膜(細孔径0.01μm以上1μm未満の多孔性膜;東レ株式会社製)に通じてから、濃硫酸(シグマ-アルドリッチ社製)を加えてpHを4.0に調整し、続いて、限外濾過膜(分画分子量10000;東レ株式会社製)に通じた。以降は実施例1と同様にナノ濾過膜処理、抽出を行い、カルボン酸抽出液を得た(酢酸抽出率99%、コハク酸抽出率90%)。この抽出において、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相の形成は観察されず、十秒以内に極めて速やかに相分離した。
[0085]
 (比較例3)
 ナノ濾過膜処理を行わなかったこと以外は実施例3と同様に操作を行い、カルボン酸抽出液を得た(酢酸抽出率90%、コハク酸抽出率65%)。この抽出において、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相が生じた。また、明確な相分離を視認するのに10分を要した。
[0086]
 実施例3及び比較例3より、カルボン酸含有発酵液のpHを調整するタイミングが限外濾過膜に通じる前であっても、ナノ濾過膜の効果が鮮明であることが示された。
[0087]
 以下に示す参考例20で用いた3-ヒドロキシアジピン酸-3,6-ラクトンとα-ヒドロムコン酸は、国際公開第2016/068108号明細書に記載の方法で製造した。
[0088]
 (参考例20)様々なカルボン酸含有発酵液の調製
 参考例1で酢酸、コハク酸を添加する代わりに、イタコン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)、アジピン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)、3-ヒドロキシアジピン酸-3,6-ラクトン、α-ヒドロムコン酸、cis,cis-ムコン酸(シグマ-アルドリッチ社製)、4-ヒドロキシ安息香酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)、L-フェニルアラニン(富士フイルム和光純薬株式会社製)をそれぞれ添加し、カルボン酸含有発酵液を調製した。イタコン酸、アジピン酸、3-ヒドロキシアジピン酸-3,6-ラクトン、L-フェニルアラニンの濃度はそれぞれ10g/Lとした。α-ヒドロムコン酸、cis,cis-ムコン酸の濃度はそれぞれ0.2g/Lとした。4-ヒドロキシ安息香酸濃度は2g/Lとした。
[0089]
 (参考例21~41)
 参考例20で調製したカルボン酸含有発酵液を精密濾過膜(細孔径0.01μm以上1μm未満の多孔性膜;東レ株式会社製)に通じて、続いて、限外濾過膜(分画分子量10000;東レ株式会社製)に通じた。このカルボン酸含有発酵液1Lを原水タンクに移し、前記ナノ濾過膜処理条件1にてナノ濾過膜に1回通じた。得られたカルボン酸含有濾液は色味がなくなり、清澄な水溶液であった。カルボン酸濃度をHPLCで分析し、以下の式に従って透過率を算出した。透過率の算出結果を表3に示す。
[0090]
 透過率(%)=(透過液中の化合物濃度)/(原水中の化合物濃度)×100。
[0091]
[表3]


[0092]
 (参考例42~48)
 参考例22、25、28、31、34、37、40で調製したカルボン酸含有濾液20mLをガラス製分液漏斗(容量100mL)に移し、酢酸エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)20mLを加えて30回振とうした。振とう後、水相中のカルボン酸濃度をHPLCにより測定し、以下の式に従って抽出率を算出した。結果を表4に示す。
[0093]
 抽出率(%)=(1-(抽残液中の抽出対象化合物濃度)/(抽出前の抽出対象化合物濃度))×100。
[0094]
[表4]


[0095]
 (実施例4)
 参考例20で調製したイタコン酸含有発酵液を用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、イタコン酸抽出液を得た(抽出率45%)。この抽出において、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相の形成はほぼ観察されず、十秒以内に極めて速やかに相分離した。
[0096]
 (実施例5)
 参考例20で調製したアジピン酸含有発酵液を用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、アジピン酸抽出液を得た(抽出率90%)。この抽出において、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相の形成はほぼ観察されず、十秒以内に極めて速やかに相分離した。
[0097]
 (実施例6)
 参考例20で調製した3-ヒドロキシアジピン酸-3,6-ラクトン含有発酵液を用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、3-ヒドロキシアジピン酸-3,6-ラクトン抽出液を得た(抽出率99%)。この抽出において、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相の形成はほぼ観察されず、十秒以内に極めて速やかに相分離した。
[0098]
 (実施例7)
 参考例20で調製したα-ヒドロムコン酸含有発酵液を用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、α-ヒドロムコン酸抽出液を得た(抽出率99%)。この抽出において、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相の形成はほぼ観察されず、十秒以内に極めて速やかに相分離した。
[0099]
 (実施例8)
 参考例20で調製したcis,cis-ムコン酸含有発酵液を用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、cis,cis-ムコン酸抽出液を得た(抽出率85%)。この抽出において、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相の形成はほぼ観察されず、十秒以内に極めて速やかに相分離した。
[0100]
 (実施例9)
 参考例20で調製した4-ヒドロキシ安息香酸含有発酵液を用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、4-ヒドロキシ安息香酸抽出液を得た(抽出率99%)。この抽出において、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相の形成はほぼ観察されず、十秒以内に極めて速やかに相分離した。
[0101]
 (実施例10)
 参考例20で調製したL-フェニルアラニン含有発酵液を用いた以外は実施例1と同様に実験を行い、L-フェニルアラニン抽出液を得た(抽出率99%)。この抽出において、水相と酢酸エチル相の間に固形分を含む中間相の形成はほぼ観察されず、十秒以内に極めて速やかに相分離した。
[0102]
 実施例1~10より、本発明は様々なカルボン酸の回収に用いることができることが示された。

請求の範囲

[請求項1]
 以下の工程(A)及び(B)を含む、カルボン酸の製造方法。
(A)カルボン酸含有発酵液をナノ濾過膜に通じて濾過して、透過側からカルボン酸含有濾液を得る工程
(B)工程(A)より得たカルボン酸含有濾液から該濾液と相分離する抽出溶剤にてカルボン酸を抽出し、水相と相分離したカルボン酸抽出液を回収する工程
[請求項2]
 前記カルボン酸含有発酵液及び/又は前記カルボン酸含有濾液のpHを4.5以下に調整する、請求項1に記載の方法。
[請求項3]
 工程(A)において、カルボン酸含有発酵液をナノ濾過膜に通じる前に不溶物質を除去する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
[請求項4]
 前記不溶物質を除去する工程がカルボン酸含有発酵液を精密濾過膜に通じる工程である、請求項3に記載の方法。
[請求項5]
 前記カルボン酸の分子量が200以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]