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1. WO2020195477 - POLY(3-HYDROXYBUTYRATE)-BASED RESIN SHEET FOR HEAT MOLDING, MOLDED BODY OF SAME AND METHOD FOR PRODUCING SAME

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明 細 書

発明の名称 ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シート、その成形体、及び製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

非特許文献

0010  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0011   0012  

課題を解決するための手段

0013   0014   0015   0016   0017  

発明の効果

0018  

図面の簡単な説明

0019  

発明を実施するための形態

0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032   0033   0034   0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045  

実施例

0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8  

図面

1  

明 細 書

発明の名称 : ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シート、その成形体、及び製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シート、その成形体、及び製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 近年、欧州を中心に生ゴミの分別回収やコンポスト処理が進められており、生ゴミと共にコンポスト処理できるプラスチック製品が望まれている。そのようなプラスチック製品の一例として、特許文献1では、ポリ乳酸系重合体からなるシートを熱成形した加工品が開示されている。
[0003]
 一方で、廃棄プラスチックが引き起こす環境問題がクローズアップされ、特に海洋投棄や河川などを経由して海に流入したプラスチックが、地球規模で多量に海洋を漂流していることが判ってきた。この様なプラスチックは長期間にわたって形状を保つため、海洋生物を拘束、捕獲する、いわゆるゴーストフィッシングや、海洋生物が摂取した場合は消化器内に留まり摂食障害を引き起こすなど、生態系への影響が指摘されている。
[0004]
 更には、プラスチックが紫外線などで崩壊・微粒化したマイクロプラスチックが、海水中の有害な化合物を吸着し、これを海生生物が摂取することで有害物が食物連鎖に取り込まれる問題も指摘されている。
[0005]
 この様なプラスチックによる海洋汚染に対し、生分解性プラスチックの使用が期待されるが、国連環境計画が2015年に取り纏めた報告書(非特許文献1)では、ポリ乳酸などのコンポストで生分解可能なプラスチックは、温度が低い実海洋中では短期間での分解が期待できないために、海洋汚染の対策にはなりえないと指摘されている。
[0006]
 この様な中、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は海水中でも生分解が進行しうる材料であるため、上記課題を解決する素材として注目されている。
[0007]
 特許文献2では、2種のポリヒドロキシアルカノエートを含有するポリエステル樹脂組成物が記載されており、その成形品の一例としてフィルムやシートが挙げられ、厚さ100μmのシートを製造したことが記載されている。
[0008]
 一方、樹脂シートを、真空成形などの熱成形に付すことによって、例えば食品容器など、中央に凹部を有する容器に成形する方法が知られている。前述の特許文献2では熱成形について言及はあるが、実際に熱成形を実施したことは記載されておらず、全く検討はされていない。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特開2002-248677号公報
特許文献2 : 国際公開第2015/146194号

非特許文献

[0010]
非特許文献1 : 国連環境計画2015,BIODEGRADABLE PLASTICS & MARINE LITTER

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0011]
 本発明者らが検討したところ、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂からなるシートは、これを熱成形に付して、深い凹部を有する形状の容器等の成形体に成形しようとすると、局部的に厚みが薄い箇所が生じて、強度が高い成形体を提供するには十分ではなかったり、また、得られた成形体に付型不良や表面荒れなどの外観不良が生じたりする場合があることが判明した。
[0012]
 本発明は、上記現状に鑑み、海水中でも速やかに分解し得、かつ、熱成形によって、比較的均一な肉厚を有し且つ外観も良好な成形体に成形され得る、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0013]
 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂からなるシートであって、該樹脂が特定の結晶融解挙動を有し且つ所定の厚みを有するシートは、海水中でも速やかに分解し得、深い凹部を有するような形状の成形体であっても比較的均一な肉厚を有し且つ外観が良好な成形体に熱成形することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
[0014]
 即ち、本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂からなる、熱成形用樹脂シートであって、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の示差走査熱量分析における融点ピーク温度と、融点ピークの高温側の終了温度の差が10℃以上であり、前記シートの肉厚が0.15~1mmである、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートに関する。また、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の160℃における溶融粘度が10000poise以上であることが好ましい。また、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)であることが好ましい。
[0015]
 また、本発明は、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートを製造する方法であって、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を押出機中で溶融した後、Tダイから押出してシートを得る工程を含む、製造方法に関する。
[0016]
 また、本発明は、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートを製造する方法であって、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を加熱ロール間で溶融した後、シートを得る工程を含む、製造方法に関する。
[0017]
 また、本発明は、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートが熱成形によって成形された成形体にも関し、また、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートを、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の示差走査熱量分析における融点ピーク温度と、融点ピークの高温側の終了温度の間の温度に予備加熱した後に、成形する工程を含む、成形体の製造方法にも関する。好ましくは、前記成形を、真空成型方法、圧空成型方法、又は、真空圧空成型方法により行う。

発明の効果

[0018]
 本発明によれば、海水中でも速やかに分解し得、かつ、熱成形によって、比較的均一な肉厚を有し且つ外観も良好な成形体に成形され得る、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートを提供することができる。

図面の簡単な説明

[0019]
[図1] 実施例及び比較例で熱成形を行った際に使用した金型の形状を示す上面図と縦断面図

発明を実施するための形態

[0020]
 以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[0021]
 本発明におけるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂とは、微生物から生産され得る脂肪族ポリエステル樹脂であって、3-ヒドロキシブチレートを繰り返し単位とするポリエステル樹脂である。当該ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、3-ヒドロキシブチレートのみを繰り返し単位とするポリ(3-ヒドロキシブチレート)であってもよいし、3-ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体であってもよい。また、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、単独重合体と1種または2種以上の共重合体の混合物、又は、2種以上の共重合体の混合物であってもよい。
[0022]
 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の具体例としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)等が挙げられる。中でも、工業的に生産が容易であることから、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましい。
[0023]
 更には、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、ヤング率、耐熱性などの物性を変化させることができ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であること、また上記したように工業的に生産が容易であり、物性的に有用なプラスチックであるという観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)が好ましい。特に、180℃以上の加熱下で熱分解しやすい特性を有するポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)は融点を低くすることができ、低温での成形加工が可能となる観点からも好ましい。
[0024]
 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)の繰り返し単位の組成比は、柔軟性と強度のバランスの観点から、3-ヒドロキシブチレート単位/3-ヒドロキシヘキサノエート単位の組成比が80/20~99/1(mol/mol)であることが好ましく、75/15~97/3(mo1/mo1)であることがより好ましい。その理由は、柔軟性の点から99/1以下が好ましく、また樹脂が適度な硬度を有する点で80/20以上が好ましいからである。
[0025]
 ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)の市販品としては、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマーPHBH」(登録商標)などが挙げられる。
[0026]
 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)は、3-ヒドロキシブチレート成分と3-ヒドロキシバレレート成分の比率によって融点、ヤング率などが変化するが、両成分が共結晶化するため結晶化度は50%以上と高く、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)に比べれば柔軟ではあるが、脆性の改良は不充分である。
[0027]
 一般に、樹脂シートを容器等の成形体に成形するには、予熱したシートに型で付型する熱成形が適用される。この様な熱成形においては、シート端部をクランプやピンで固定し、遠赤外線ヒーターなどを用いてシートを予熱して軟化させた後、真空、圧空、又は真空と圧空の併用でシートを型に沿わせることで実施される。この様な成形において、予熱が不充分であると、シートを型に充分に沿わせることができず、いわゆる型決まりが悪い成形体となる。しかし、充分に予熱を行った時に軟化した樹脂の張力が低下しすぎると、特に延伸が大きくなる深い凹部を有する容器等の成形体に熱成形する場合に、局部的に肉薄部が発生し、そのために成形体の強度が損なわれるといった課題があった。
[0028]
 優れた熱成形性を付与するため、本発明では、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂として、示差走査熱量分析における融点ピーク温度と、融点ピークの高温側の終了温度の差が10℃以上であるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を用いることを特徴とする。当該温度差が10℃以上であると、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を溶融させると同時に、一部の結晶を溶融させずに残存させることが容易になるためである。これによって、シートを熱成形する際に、シートを付型するのに充分な予熱を行いつつ、残存する結晶により保持される張力によって付型の際に均一な伸びを実現することができる。そのため、シートの熱成形によって、厚みが比較的均一な成形体を提供することが可能となる。
[0029]
 前記温度差は、12℃以上であることがより好ましく、15℃以上であることがさらに好ましく、18℃以上であることがよりさらに好ましい。前記温度差の上限は70℃以下であり、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の製造の容易さの観点から、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、35℃以下であることがさらに好ましく、30℃以下であることがよりさらに好ましい。
[0030]
 本発明において、示差走査熱量分析における融点ピーク温度と、融点ピークの高温側の終了温度は、以下の様に定義される。樹脂試料4~10mgをアルミパンに充填し、示差走査熱量分析器を用いて、窒素気流下、30℃から180℃まで10℃/分の速度で昇温して前記樹脂試料を融解した時に得られる吸熱曲線において、吸熱量が最大となった温度を融点ピーク温度とし、融点ピーク温度よりも高温側で融点ピークが終了し吸熱が認められなくなった温度を、融点ピークの高温側の終了温度とした。なお、前記融点ピーク温度及び融点ピークの高温側の終了温度は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂シートに含まれるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂全体について測定される。
[0031]
 前記融点ピーク温度と融点ピークの高温側の終了温度の温度差が10℃以上であるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂としては、融点ピークがブロードで高融点成分を含むポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を使用することができる。また、当該融点ピークがブロードで高融点成分を含むポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と、該樹脂と融点特性が異なる他のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂とを組み合わせて使用することもできる。
[0032]
 前記融点ピークがブロードで高融点成分を含むポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の具体的な製造方法は、例えば、国際公開第2015/146194号に記載されている。
[0033]
 また、本発明のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、160℃における溶融粘度が10000poise以上であることが好ましい。このように溶融粘度が高いポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を用いることによって、本発明のシートを熱成形する際の予熱工程において、シートが自重で垂れ下がるドローダウン現象を低減することができ、これによって、大面積のシートからも外観が優れた成形体を製造することができる。前記溶融粘度は、11000poise以上であることがより好ましく、12000poise以上であることがさらに好ましく、13000poise以上であることがよりさらに好ましい。前記溶融粘度の上限は特に限定されないが、シートの表面平滑性や後述する押出機や加熱ロールの過負荷防止の観点から、30000poise以下であることが好ましい。
[0034]
 本発明のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートには、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂以外の他の樹脂が含まれていてもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバテートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレートなどの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。他の樹脂としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
[0035]
 前記他の樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対して、30重量部以下が好ましく、より好ましくは20重量部以下である。他の樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部であってもよい。
[0036]
 また、本発明のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートには、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と共に使用可能な添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、シリカなどの無機充填剤、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。添加剤としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
[0037]
 また本発明のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートの厚みは、熱成形において均一な予熱が行いやすく、比較的均一な肉厚を有し且つ外観が良好な成形体を製造できる観点、また、得られる成形体の剛性や軽量性の観点から、0.15~1mmである。シートの厚みが前記範囲より薄くなると、シートの熱成形により得られる成形体に皺や表面荒れなどの外観不良が発生し、また、逆に厚くなると、付型可能な程度の充分な予熱を行うと同時に、比較的均一な肉厚を有し且つ外観が良好な成形体を得ることが困難となる。前記シートの厚みは、0.16~0.8mmが好ましく、0.2~0.6mmがより好ましい。
[0038]
 次に、本発明のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートを製造する方法について説明する。
[0039]
 本発明のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートは、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を押出機中で溶融混錬した後、押出機出口に接続されているTダイから押出した後、冷却ロール上で冷却する、または2本の冷却ロールの間で挟み込む、ことで製造することができる。
[0040]
 また本発明のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートは、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を複数の加熱ロール間で溶融混錬した後、例えば、1本または2本以上の冷却ロール間を通す、プレスするなどの手段でシートを得る、ことで製造することができる。
[0041]
 一般的に、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、ポリプロピレンなど他の結晶性樹脂と比べて、結晶化速度が極めて遅い。そのため、冷却ロール表面で充分に結晶固化せず冷却ロールに粘着しやすい傾向がある。そこで、前記冷却ロールの温度は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の結晶化を促進し、短時間での固化を達成する目的で、40~60℃であることが好ましい。
[0042]
 本発明のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートは、熱成形によって、容器等の成形体に成形するために使用される。熱成形は、上述のように、予備加熱して軟化したシートを、真空および/または圧空を利用して型に沿わせることで実施することができる。前記熱成形の具体例としては、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、マッチド・モールド成形、プラグアシスト成形、TOM成形などの方法が挙げられるが、簡便で金型費用が安価であることから、真空成形、圧空成形、または真空圧空成形が好ましい。
[0043]
 前記予備加熱により達成するシートの温度は当業者が適宜設定することができるが、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の示差走査熱量分析における融点ピーク温度と、融点ピークの高温側の終了温度の間の温度であることが好ましい。このような温度までシートを予備加熱することで、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を溶融させると同時に、一部の結晶を溶融させずに残存させ、これによって、付型可能な程度の充分な予熱と、残存する結晶に起因した均一な伸びを両立でき、厚みが比較的均一な成形体を製造することが可能となる。
[0044]
 なお、前記温度にシートを予備加熱するために使用する装置としては特に限定されず、遠赤外線ヒーター、熱線ヒーター、温風ヒーターなどが例示されるが、これらの内、早く均一に加熱しやすいことから、遠赤外線ヒーターが好ましい。遠赤外線ヒーターを使用する場合、一般には目的のシート温度よりも高くヒーターの温度を設定し、ヒーターとシートまでの距離や予熱時間でシートの温度をコントロールする。例えば、300~350℃に設定した遠赤外線ヒーターをシートから10~50cmの距離に設置し、5~30秒間加熱する方法などが挙げられる。前記シートの実際の温度は、赤外線を用いた非接触温度計で測定する方法や、温度により色が変わるサーモラベルをシートに貼付して予熱条件を設定する方法などが挙げられる。
[0045]
 本発明のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートを熱成形して得られる成形体としては特に限定されないが、例えば、中央に凹部を有する容器、仕切りを有する容器、開口部周辺に折り返し部を有する容器、中央部に凹部や凸部を有する蓋、端部の一部または全周にわたり曲線や階段状の構造が設けられている蓋、等が挙げられる。
実施例
[0046]
 以下に実施例と比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[0047]
 (使用した樹脂原料)
 樹脂原料1:カネカ製、カネカ生分解性ポリマーPHBH TM 151C 〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)〕
 樹脂原料2:カネカ製、カネカ生分解性ポリマーPHBH TM X131A 〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)〕
[0048]
 (示差走査熱量分析評価)
 樹脂試料4~10mgをアルミパンに充填し、示差走査熱量分析器を用いて、窒素気流下、30℃から180℃まで10℃/分の速度で昇温して樹脂試料が融解した時に得られる吸熱曲線において、吸熱量が最大となった温度を融点ピーク温度とし、融点ピーク温度よりも高温側で融点ピークが終了し吸熱が認められなくなった温度を融点ピークの高温側の終了温度とした。
[0049]
 (溶融粘度の測定方法)
 口径1mm、長さ10mm、流入角45°のオリフィスを装着し、160℃に加熱したキャピログラフ(シリンダー径10mm)に樹脂試料15gを充填し、5分間予熱した後に、ピストンを10mm/minの速度で降下させて前記オリフィスから溶融樹脂を押出す際の、ピストンにかかる応力から、剪断速度122/sでの溶融粘度を算出した。
[0050]
 (シート厚の評価)
 シートの厚みは、シート幅方向の端部及び中央部の3箇所をノギスで測定し、算術平均で算出した。
[0051]
 (シートの海水中での生分解性評価)
 目開き80μのメッシュで異物を除去した海水(兵庫県高砂市の港湾部から採取)6Lと、ASTM D-7081に準じて3gの塩化アンモニウムと、0.6gのリン酸2カリウムとをプラスチックコンテナに入れ、50mm角に切り出したシートを投入し、3ヵ月後の重量保持率を算出した。なお、海水は水温を23℃に保った。
[0052]
 (シートの熱成形方法)
 真空成形機を用いてシートの熱成形を行った。まず、シートを一辺200mmまたは300mmの正方形の型枠に固定し、シート中央にサーモラベルを貼付した後、遠赤外線ヒーターを350℃に設定した予熱室にて、サーモラベルの表示(予熱温度)が所定温度に到達するまでシートの予熱を行った。次いで、シート下方より金型を突き上げ、金型をシートと接触させた後、金型底部に設けられた孔から真空引きを行い、シートを金型に沿わせることで容器形状に成形し、離型して成形体を得た。なお、本評価に使用した金型は、開口部が110mm角で深さ35mmの角丸容器のものであり、底部は80mm角でR=10mmの角丸形状で、底部と側壁部にもR=10mmの曲線部を有していた。金型の形状の概略図を図1に示す。
[0053]
 (シートの熱成形性評価)
 上記熱成形で得られた成形体は、底角部が最も延伸され厚みが薄くなったことから、当該底角部、及び、容器底の平面部中央を切り出し、各々の厚みをノギスで測定し、以下の式1にて厚み比を算出し、以下の基準で評価した。
   式1: 厚み比=(底角部の厚み)/(底平面部の厚み)
 ○:前記厚み比が0.5以上
 ×:前記厚み比が0.5未満
[0054]
 (成形体評価)
 上記熱成形で得られた成形体の外観を観察し、以下の基準で評価した。
 ○:成形体が金型形状に付型され、皺や表面荒れなどの外観不良が無い
 △:成形体に、若干の皺がある
 ×:成形体に、付型不良や、皺や表面荒れなどの外観不良がある
[0055]
 [ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂ペレットの製造]
 樹脂原料1と樹脂原料2を表1に示す配合比で混合し、両樹脂原料の合計100重量部に対しペンタエリスリトール1重量部を配合してドライブレンドした。得られた樹脂材料を、シリンダー温度及びダイ温度を150℃に設定したφ26mmの同方向二軸押出機に投入して押出し、45℃の湯を満たした水槽に通してストランドを固化し、ペレタイザーで裁断することにより、樹脂ペレット1、2及び4を得た。
[0056]
 また、上記と同様に得られた樹脂材料を、シリンダー温度を190℃、ダイ温度を150℃に設定した前記二軸押出機に投入して押出し、45℃の湯を満たした水槽に通してストランドを固化し、ペレタイザーで裁断することにより、樹脂ペレット3を得た。
 各樹脂ペレットの製造条件及び融点特性を表1に示す。
[0057]
[表1]


[0058]
 <実施例1>
 幅500mmのTダイを接続したφ40mmの単軸押出機のシリンダー温度及びダイ温度をそれぞれ160℃に設定し、樹脂ペレット1を投入してシート状に押出し、Tダイ下に配された2本の冷却ロールで挟み込み、幅方向端部をスリットすることで、幅310mm、厚み0.31mのシートを得た。シートの熱成形評価には、一辺300mmの型枠を用い、予熱温度が140℃になるようシートの予熱を行い、熱成形を実施した。評価結果を表2に示す。
[0059]
 <実施例2>
 加工に用いる樹脂ペレットを樹脂ペレット2に変更した以外は実施例1と同様にしてシートを得、シートの熱成形評価を行った。評価結果を表2に示す。
[0060]
 <実施例3>
 シート厚みを0.16mmとした以外は実施例2と同様にしてシートを得、シートの熱成形評価を行った。評価結果を表2に示す。
[0061]
 <実施例4>
 加工に用いる樹脂ペレットを樹脂ペレット3に変更し、押出機のシリンダー温度及びダイ温度をそれぞれ155℃に設定した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。シートの熱成形評価は、一辺300mmの型枠の他に一辺200mmの型枠を用いて成形を行った他は、実施例1と同様にして実施した。評価結果を表2に示す。
[0062]
 <実施例5>
 8インチ径の二本ロールを用い、ロール設定温度を145℃、ロール回転速度を20rpmと18rpmとし、樹脂ペレット2をロールに供給し、ロールに巻き付いてから2分間混錬後に切り出し、2枚の鉄板に挟み込み、冷却後に310mm角に切り出すことで、厚み0.71mmのシートを得た。シートの熱成形性評価は、シートの予熱温度を150℃に変更した以外は実施例1と同様にして行った。評価結果を表2に示す。
[0063]
 <比較例1>
 加工に用いる原料をポリ乳酸(ネイチャーワークス製Ingeo10361D)に変更し、押出機のシリンダー温度及びダイ温度をそれぞれ170℃に設定した以外は実施例1と同様にしてシートを得た。シートの熱成形性評価は、シートの予熱温度を150℃に変更した以外は実施例1と同様にして行った。得られたシートの評価結果を表2に示す。
[0064]
 <比較例2>
 樹脂ペレット4を用いた以外は実施例1と同様にしてシートを得、シートの熱成形性を評価した。評価結果を表2に示す。
[0065]
 <比較例3>
 樹脂ペレット2を用い、スクリュー回転数を調節してシート厚みを0.10mmとした以外は実施例1と同様にしてシートを得、シートの熱成形性を評価した。評価結果を表2に示す。
[0066]
 <比較例4>
 樹脂ペレット2を用い、シート引取速度を調節してシート厚みを1.13mmとした以外は実施例1と同様にしてシートを得た。シートの熱成形評価において、シートの予熱温度を150℃として予熱を行った場合と、160℃として予熱を行った場合でそれぞれ成形を実施した。評価結果を表2に示す。
[0067]
[表2]


[0068]
 ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂で得た実施例1~5、及び比較例2~4の熱成形用樹脂シートは海水中で生分解するのに対し、ポリ乳酸を用いた比較例1のシートは海水中で生分解が全く進行しなかったことが判る。
[0069]
 また、各実施例及び比較例より、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートは、肉厚であるほど海水中での生分解が遅くなることが判る。
[0070]
 使用した樹脂原料の融点ピーク温度と、融点ピークの高温側の終了温度の差が10℃以上ある実施例1~5の熱成形用樹脂シートから得られた成形体では、熱成形において最も延伸される底角部であっても、厚みが他の部位と比べて極端に薄くなっておらず、容器として好適に使用しうることが判る。また、各実施例では成形体の外観評価も良好であった。
[0071]
 ただし、溶融粘度が10000poise未満と低い樹脂を用いた実施例4では、一辺200mmの型枠での熱成形では良好な外観の成形体が得られたが、一辺300mmと大きな型枠を用いた場合は予熱時のドローダウンが比較的大きく、成形体に若干の皺が見られた。これより、実施例1、2、3及び5のように溶融粘度が10000poiseと高いポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を用いることで、大面積での熱成形を良好に実施しうることが判る。
[0072]
 一方、使用した樹脂原料の融点ピーク温度と、融点ピークの高温側の終了温度の差が10℃未満である比較例2の熱成形用樹脂シートでは、得られた成形体の底角部の厚みが、他の部位に比べて大幅に薄くなった。
[0073]
 また、熱成形用樹脂シートの厚みが0.10mmと薄い比較例3では、成形で最も厚みが薄くなる底角部で離型の際に皺が発生し、良好な成形体が得られなかった。
[0074]
 一方、熱成形用樹脂シートの厚みが1.13mmと厚い比較例4では、肉厚であるために表面に貼付したサーモラベルが150℃になるまで予熱しても内部が予熱不足となるためか充分な付型に至らず、また、予熱温度を更に昇温して160℃とすると、表面が溶融して荒れた部位が見られ、外観と熱成形性を両立することが困難だった。

請求の範囲

[請求項1]
 ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂からなる、熱成形用樹脂シートであって、
 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の示差走査熱量分析における融点ピーク温度と、融点ピークの高温側の終了温度の差が10℃以上70℃以下であり、前記シートの肉厚が0.15~1mmである、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シート。
[請求項2]
 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の160℃における溶融粘度が10000poise以上である、請求項1に記載のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シート。
[請求項3]
 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)である、請求項1または2に記載のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シート。
[請求項4]
 請求項1~3のいずれか1項に記載のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートを製造する方法であって、
 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を押出機中で溶融した後、Tダイから押出してシートを得る工程を含む、製造方法。
[請求項5]
 請求項1~3のいずれか1項に記載のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートを製造する方法であって、
 前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を加熱ロール間で溶融した後、シートを得る工程を含む、製造方法。
[請求項6]
 請求項1~3のいずれか1項に記載のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートが熱成形によって成形された成形体。
[請求項7]
 請求項1~3のいずれか1項に記載のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系熱成形用樹脂シートを、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の示差走査熱量分析における融点ピーク温度と、融点ピークの高温側の終了温度の間の温度に予備加熱した後に、成形する工程を含む、成形体の製造方法。
[請求項8]
 前記成形を、真空成型方法、圧空成型方法、又は、真空圧空成型方法により行う、請求項7に記載の成形体の製造方法。

図面

[ 図 1]