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1. WO2020183748 - PALLADIUM-COATED COPPER BONDING WIRE, METHOD FOR PRODUCING PALLADIUM-COATED COPPER BONDING WIRE, WIRE JUNCTION STRUCTURE USING SAME, SEMICONDUCTOR DEVICE, AND METHOD FOR PRODUCING SAME

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明 細 書

発明の名称 パラジウム被覆銅ボンディングワイヤ、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの製造方法、及びこれを用いたワイヤ接合構造、半導体装置並びにその製造方法

技術分野

0001  

背景技術

0002   0003   0004   0005   0006   0007   0008  

先行技術文献

特許文献

0009  

発明の概要

発明が解決しようとする課題

0010   0011   0012   0013   0014   0015  

課題を解決するための手段

0016   0017   0018   0019   0020   0021   0022   0023   0024   0025   0026   0027   0028   0029   0030   0031   0032  

発明の効果

0033  

図面の簡単な説明

0034  

発明を実施するための形態

0035   0036   0037   0038   0039   0040   0041   0042   0043   0044   0045   0046   0047   0048   0049   0050   0051   0052   0053   0054   0055   0056   0057   0058   0059   0060   0061   0062   0063   0064   0065   0066   0067   0068   0069   0070   0071   0072   0073   0074   0075   0076   0077   0078   0079   0080   0081   0082   0083   0084   0085   0086   0087   0088   0089   0090   0091   0092   0093   0094   0095   0096   0097   0098   0099   0100   0101   0102   0103   0104   0105   0106   0107   0108   0109   0110   0111   0112   0113   0114   0115   0116   0117   0118   0119   0120   0121   0122   0123   0124   0125   0126   0127   0128   0129   0130   0131   0132  

実施例

0133   0134   0135   0136   0137   0138   0139   0140   0141   0142   0143   0144   0145   0146   0147   0148   0149   0150   0151   0152   0153   0154   0155   0156   0157   0158   0159   0160   0161   0162   0163   0164   0165   0166   0167   0168   0169   0170   0171   0172   0173   0174   0175  

請求の範囲

1   2   3   4   5   6   7   8   9   10   11   12   13   14   15   16   17   18   19   20  

図面

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明 細 書

発明の名称 : パラジウム被覆銅ボンディングワイヤ、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの製造方法、及びこれを用いたワイヤ接合構造、半導体装置並びにその製造方法

技術分野

[0001]
 本発明は、半導体素子の電極と外部電極のボールボンディングに好適なパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ、その製造方法、及びこれを用いたワイヤ接合構造、半導体装置並びにその製造方法に関する。

背景技術

[0002]
 一般に、半導体素子の電極と半導体用回路配線基板上の外部電極は、ワイヤボンディングにより接続される。ワイヤボンディングは、半導体素子の電極と接続される一端と、外部電極と接続される他端と、を有する。一端は、半導体素子の電極と、ボール接合と呼ばれる方式によって接合され(第一接合)、他端は、外部電極と、ウェッジ接合と呼ばれる方式によって、接合される(第二接合)。
 ボール接合では、ボンディングワイヤの先端に溶融ボールを形成し、この溶融ボールを介してボンディングワイヤを、例えば、半導体素子上のアルミニウム電極表面に接続する。
[0003]
 溶融ボールの形成では、まず、ボンディングワイヤの先端を鉛直方向にして、エレクトロン・フレーム・オフ(EFO)方式により、放電トーチとの間でアーク放電を形成する。その放電電流により,ボンディングワイヤの先端が加熱されて溶融する。溶融金属は、その表面張力によってワイヤを伝って上昇し、真球状の溶融ボールがワイヤ先端に形成される。これが凝固して,フリーエアーボール(FAB)が形成される。半導体素子の電極を140~300℃程度に加熱しながら超音波を印加した状態で、電極上にフリーエアーボールを圧着することで、ボンディングワイヤの一端がアルミニウム電極上に接合される。
[0004]
 ワイヤボンディングには、線径が10~30μm程度の金線が用いられていたが,金は非常に高価なため、一部代替可能なところでは銅線が用いられてきた。しかし、銅線は、酸化しやすく、酸化防止のために、表面にパラジウムを被覆したパラジウム被覆銅ワイヤが用いられるようになってきた。
[0005]
 しかしながら、パラジウム被覆銅ワイヤでは、例えばボール表面の酸化によるアルミニウム電極への接合安定性とループ安定性の両立の課題がある。これに対して、例えば銅の芯材に硫黄を含有させたパラジウム被覆銅ワイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
[0006]
 パラジウム被覆銅ワイヤは、銅そのものが有するワイヤやフリーエアーボールの酸化の問題や、被覆によって損なわれがちな特性改良の問題を抱えているものの、金より安価である。このため、パラジウム被覆銅ワイヤは、パーソナルコンピューターやその周辺機器、通信用機器等の民生機器等の比較的緩やかな条件下での使用において急速に普及してきた。さらに、近年では、パラジウム被覆銅ワイヤの改良が進められ、車載用デバイスなど、過酷な条件下で使用されるボンディングワイヤについても、パラジウム被覆銅ワイヤへの移行が進んできている。そのため、パラジウム被覆銅ワイヤに対しては、車載用デバイスに適するように、極めて過酷でかつ変化の激しい条件に耐え得ることが求められるようになってきた。具体的には、熱帯地方や砂漠などの高温、高湿の地域から寒冷地まで、また、山岳地域から臨海地域までに至る幅広い自然環境やその変化に耐え、さらには、道路事情や交通事情によって生じる衝撃や振動に耐え得ることが要求される。さらに近年では、自動車のエンジンルーム内のみならず航空機に搭載される半導体製品への適用も検討されるようになってきた。そのため、接合信頼性において、民生用途の比較的緩やかな条件から、過酷な条件下の使用まで耐え得る、従来よりも高いレベルの信頼性の要求を満たすパラジウム被覆銅ボンディングワイヤが求められるに至った。
[0007]
 このような高信頼性の要求を満たすパラジウム被覆銅ワイヤの開発の過程において、フリーエアーボール表面にパラジウム濃度が高い合金層や濃化層を形成することで接合寿命を向上させる試みがなされている(例えば、特許文献2、3参照。)。
[0008]
 また、ボール部の形成性や接合性を高めるなどの目的で、ボール接合部近傍における組成を調節することも行われている(例えば、特許文献4参照。)。

先行技術文献

特許文献

[0009]
特許文献1 : 特開2012-156307号公報
特許文献2 : 国際公開2016/189758号
特許文献3 : 特開2017-92078号公報
特許文献4 : 特開2011-146754号公報

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0010]
 パラジウム被覆銅ワイヤは、フリーエアーボール表面のパラジウム濃度を高くすることで、従来のワイヤ(比較的緩やかな条件の用途に用いられ、フリーエアーボール表面のパラジウム濃度を高くしないワイヤ)よりも、接合寿命は向上した。しかし、このようなパラジウム被覆銅ワイヤを過酷な条件で使用すると、それほど接合寿命が伸びない場合がしばしばあることがわかってきた。
[0011]
 本発明者等は、このような接合寿命の伸びなくなったパラジウム被覆銅ワイヤでは、フリーエアーボールの表面に大きな引け巣が生じていることを観察し、これが、接合寿命の延長を阻害する要因となっていると推定した。つまり、フリーエアーボールに引け巣を有する状態でアルミニウム電極上に接合されると、接合界面に隙間が生じ、この隙間が起点となり腐食が進行することで結果として接合寿命を低下させると考えた。
[0012]
 その原因について、発明者らが鋭意検討した結果、第二接合後に引きちぎったワイヤの端部に、外部電極表面にめっきされた金や銀の一部が付着し、この金や銀が起点となってフリーエアーボールに引け巣を生じていると結論付けた。
[0013]
 また、近年著しい半導体素子の高集積化、高密度化に伴い、ワイヤボンディングの狭ピッチ化、細線化、多ピン・長ワイヤ化等への要求が厳しくなってきた。中でも、狭ピッチ化は急激に加速しており、現行の量産レベルでは、60μmピッチが実現され、50μmピッチの開発が行われている。さらには、45μmや40μmなどの極狭ピッチの実用化が期待されている。極狭ピッチ接合では通常接合に比べて第一接合部のボール径の小さい小径ボールが用いられ、狭ピッチ接合になるほど、第一接合の高度な真円性が求められる。第一接合の真円性が低下して異方性が増大すると、隣り合う配線が接触してショート不良が発生するためである。
[0014]
 また、パラジウム被覆銅ワイヤを電極上に接合した際のボール接合部の組成を制御しようとしても、組成の安定的な制御が極めて困難であるという問題があった。
[0015]
 本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであって、ボール形成時のボール表面に問題となる大きな引け巣を生じず、高温、高湿の環境においてもボールボンディングの接合信頼性を安定的に維持することができ、狭ピッチ接合においても、第一接合形状の真円性を向上することのできるパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ及びその製造方法を提供することを目的とする。
 また、本発明は、高温、高湿の環境においても接合信頼性を安定的に維持することができ、狭ピッチ接合においても、第一接合形状の真円性を向上することのできる半導体装置、特には、QFP(Quad Flat Packaging)、BGA(Ball Grid Array)、QFN(Quad For Non-Lead Packaging)のパッケージに好適で、車載用途に使用できる半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

[0016]
 本発明のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、銅を主成分とする芯材と、前記芯材上のパラジウム層と、を有し、かつ硫黄族元素を含有する。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、銅、パラジウム、および硫黄族元素の合計に対して、1.0質量%以上4.0質量%以下のパラジウム、および合計で50質量ppm以下の硫黄族元素(5.0質量ppm以上12.0質量ppm以下の硫黄、5.0質量ppm以上20.0質量ppm以下のセレン、または15.0質量ppm以上50.0質量ppm以下のテルル)を含む。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<100>方位比率の総計が15%以上であり、かつ<111>方位比率が50%以下である。前記<100>および<111>方位は、前記ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内の方位を含む。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤに、フリーエアーボールを形成したときに、前記フリーエアーボールの先端部分の表面から5.0nm以上100.0nm以下の深さ方向の範囲で、銅とパラジウムの合計に対して、パラジウムを6.5原子%以上30.0原子%以下含むパラジウム濃化領域が観測される。
[0017]
 本発明のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、前記芯材が、前記芯材の全体に対して、合計1質量ppm以上3質量%以下の、P、Au、Pd、Pt、Ni、Ag、Rh、In、Ga及びFeから選ばれる、1種以上の微量元素を含むことが好ましい。また、微量元素として、Au、Pd、Pt、Ni及びRhから選ばれる1種以上を含む場合にこれらの含有量は合計で0.05質量%以上3質量%以下、InとGaのうち1種以上を含む場合にこれらの含有量は合計で0.01質量%以上0.7質量%以下、Pを含む場合にその含有量は5質量ppm以上500質量ppm以下、AgとFeのうち1種以上を含む場合にこれらの含有量は合計で1質量ppm以上100質量ppm以下であることが好ましい。
[0018]
 本発明のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、銅とパラジウムと硫黄族元素の合計に対して、前記パラジウム層由来のパラジウム濃度が1.0質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。
[0019]
 本発明のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの線径は10μm以上25μm以下であることが好ましい。
[0020]
 本発明のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤにおいて、前記パラジウム濃化領域を検出する際のフリーエアーボールの形成条件は、放電電流値が65mA、ボール径がワイヤ線径の1.8倍で、窒素と水素の混合ガスの存在下であることが好ましい。
[0021]
 本発明のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤにおいて、前記パラジウム濃化領域のパラジウム濃度は、オージェ電子分光分析条件が装置の設定条件として、一次電子線の加速電圧10kV、設定値から算出される測定領域が15μm 以上20μm 以下、アルゴンイオンスパッタの加速電圧1kV、スパッタ速度2.5nm/分(SiO 換算)で測定したときの濃度であることが好ましい。
[0022]
 本発明のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは前記パラジウム層上に金の層を有することが好ましい。
[0023]
 本発明のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの製造方法は、銅を主成分とする芯材と、前記芯材上のパラジウム層とを有し、硫黄族元素を含有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを製造する。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤが、銅、パラジウム、および硫黄族元素の合計に対して、1.0質量%以上4.0質量%以下のパラジウム、および合計で50質量ppm以下の硫黄族元素(5.0質量ppm以上12.0質量ppm以下の硫黄(S)、5.0質量ppm以上20.0質量ppm以下のセレン(Se)、または15.0質量ppm以上50.0質量ppm以下のテルル(Te))を含む。前記製造方法は、銅を主成分とする銅線材を準備する工程と、前記銅線材の表面に前記硫黄族元素を含むパラジウム層を形成する工程と、前記パラジウム層を形成した銅線材を50%以上伸ばす工程と、前記伸ばした銅線材の伸び率が5%以上15%以下となるように熱処理する工程と、を有する。
[0024]
 本発明のワイヤ接合構造は、半導体チップのアルミニウムを含む電極と、ボンディングワイヤと、前記電極及び前記ボンディングワイヤの間のボール接合部とを有する。前記ボンディングワイヤは、銅を主成分とする芯材と、前記芯材上のパラジウム層とを有し、かつ硫黄族元素を含有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤである。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、銅、パラジウム、および硫黄族元素の合計に対して、1.0質量%以上4.0質量%以下のパラジウム、および合計で50質量ppm以下の硫黄族元素(5.0質量ppm以上12.0質量ppm以下の硫黄(S)、5.0質量ppm以上20.0質量ppm以下のセレン(Se)、または15.0質量ppm以上50.0質量ppm以下のテルル(Te))を含む。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<100>方位比率が15%以上であり、かつ<111>方位比率が50%以下である。前記<100>および<111>方位は、前記ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内の方位を含む。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤをアルミニウム電極上にボール接合したワイヤ接合構造を作製すると、前記アルミニウム電極上の前記ボール接合の接合面近傍に、パラジウム濃度が、アルミニウムとパラジウムと銅の合計に対して2質量%以上となるパラジウム濃化接合領域を有する。
[0025]
 本発明のワイヤ接合構造において、前記パラジウム濃化接合領域は、前記ボール接合の最大幅の、両端から8分の1の距離の位置を通る、ワイヤ長手方向に平行なライン上に少なくとも配置されることが好ましい。
[0026]
 本発明のワイヤ接合構造において、前記接合面近傍の前記パラジウム濃化接合領域の占有率が25%以上であることが好ましい。
[0027]
 本発明の半導体装置は、半導体チップと、半導体チップ上に配置される、アルミニウムを含有するアルミニウム電極と、半導体チップの外部に配置され、金又は銀の被覆を有する外部電極と、前記アルミニウム電極と前記外部電極表面を接続するボンディングワイヤと、を有する。前記ボンディングワイヤがパラジウム被覆銅線からなる。前記アルミニウム電極と前記ボンディングワイヤの接合面近傍に、上記本発明のワイヤ接合構造を有する。
[0028]
 本発明の半導体装置は、半導体チップと、半導体チップ上に配置される、アルミニウムを含有するアルミニウム電極と、半導体チップの外部に配置され、金又は銀の被覆を有する外部電極と、前記アルミニウム電極と前記外部電極表面を接続するボンディングワイヤとを有する。前記ボンディングワイヤが、上記本発明のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤからなる。
[0029]
 本発明の半導体装置は、QFP(Quad Flat Packaging)、BGA(Ball Grid Array)又はQFN(Quad For Non-Lead Packaging) であることが好ましい。また、本発明の半導体装置は、車載用途であることが好ましい。
[0030]
 本発明のワイヤ接合構造は、上記の構成のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを用い、フリーエアーボールを形成して半導体チップのアルミニウムを含む電極上にボール接合することで形成できる。このとき、ボール接合の接合面近傍に、上記特定の組成のパラジウム濃化接合領域が形成される。このため、第一接合(ボール接合)の接合信頼性を著しく向上させることができる。言い換えると、上記の構成のパラジウム被覆銅ワイヤは、上記ボール接合によってワイヤ接合構造を作製する接合試験を行った場合に、ボール接合の接合面近傍に、上記の特定の組成のパラジウム濃化接合領域が形成される。この結果、第一接合(ボール接合)の接合信頼性を著しく向上させることができる。
[0031]
 本発明の半導体装置の製造方法は、半導体チップと、半導体チップ上に配置され、アルミニウムを含有するアルミニウム電極と、半導体チップの外部に配置され、金又は銀の被覆を有する外部電極と、前記アルミニウム電極と前記外部電極表面を接続するボンディングワイヤとを有する半導体装置を製造する。前記ボンディングワイヤは、銅を主成分とする芯材と、前記芯材上のパラジウム層と、を有し、かつ硫黄族元素を含有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤである。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、銅、パラジウム、および硫黄族元素の合計に対して、1.0質量%以上4.0質量%以下のパラジウム、および合計で50質量ppm以下の硫黄族元素(5.0質量ppm以上12.0質量ppm以下の硫黄、5.0質量ppm以上20.0質量ppm以下のセレン、または15.0質量ppm以上50.0質量ppm以下のテルル)を含む。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<100>方位比率の総計が15%以上であり、かつ<111>方位比率が50%以下である。前記<100>および<111>方位は、前記ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内の方位を含む。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤに、フリーエアーボールを形成したときに、前記フリーエアーボールの先端部分の表面から5.0nm以上100.0nm以下の深さ方向の範囲で、銅とパラジウムの合計に対して、パラジウムを6.5原子%以上30.0原子%以下含むパラジウム濃化領域が観測される。前記製造方法は、前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの先端に、フリーエアーボールを形成する工程と、前記フリーエアーボールを介して、前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤを前記アルミニウム電極にボール接合する工程と、前記フリーエアーボールから前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの長さ分、離間した箇所を前記外部電極表面に接合する工程と、を有する。
[0032]
 本明細書において「~」の符号はその左右の数値を含む数値範囲を表す。硫黄族元素は硫黄(S)、セレン(Se)及びテルル(Te)のうち少なくとも1種以上である。また、特に断らない限り、<111>結晶方位比率(<111>方位比率)は、ワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内までを含むものの比率を意味する。<100>結晶方位比率(<100>方位比率)も同様に、角度差が15°以内までを含むものの比率を意味する。

発明の効果

[0033]
 本発明のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ及びワイヤ接合構造によれば、ボール形成時のボール表面に問題となる大きな引け巣を生じず、狭ピッチ接合においても、第一接合形状の真円性を向上することができる。そのため、ボールボンディングに使用した場合に、狭ピッチ接合においてもショート不良の発生を抑制でき、また、高温、高湿の環境においても長期間優れた接合信頼性を安定的に維持することができる。
 また、本発明の半導体装置及びその製造方法によれば、狭ピッチ接合のショート不良の発生を抑制でき、高温、高湿の環境においても長期間優れた接合信頼性を安定的に維持することができる。

図面の簡単な説明

[0034]
[図1] パラジウム濃化接合領域の形成箇所を説明するための図である。
[図2] 実施例で観察される問題とならない小さな引け巣を有するフリーエアーボールの写真である。
[図3] 比較例で観察される大きな引け巣を有するフリーエアーボールの写真である。
[図4] 実施例の、フリーエアーボール先端部表面のオージェ(FE-AES)分析プロファイルである。
[図5] 実施例の接合構造の、電解放出形走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光分析(FE-SEM/EDX)プロファイルである。
[図6] 実施例の接合構造の他の箇所のFE-SEM/EDXプロファイルである。
[図7] 実施形態の半導体装置を示す模式図である。
[図8] 実施例の接合構造の電子線マイクロアナライザ(EPMA)画像である。
[図9] 接合面近傍にパラジウムが存在しない接合構造のEPMA画像である。

発明を実施するための形態

[0035]
 以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
[0036]
 本実施形態のパラジウム(Pd)被覆銅ボンディングワイヤは、銅を主成分とする芯材と、前記芯材上のパラジウム層とを有する。パラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、硫黄族元素を含み、銅とパラジウムと硫黄族元素の合計に対する、パラジウムの濃度が1.0~4.0質量%であり、硫黄族元素を2種以上含む場合に、その濃度が合計で50質量ppm以下である。パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの芯材の断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<100>方位比率が15%以上であり、かつ、<111>方位比率が50%以下である。<100>方位および<111>方位は、ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内までの方位を含む。
[0037]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、硫黄族元素のうち、硫黄濃度が5質量ppm以上12質量ppm以下であるか、セレン濃度が5質量ppm以上20質量ppm以下であるか又はテルル濃度が15質量ppm以上50質量ppm以下である。
[0038]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの属性は、これを用いて作成したフリーエーボール先端の分析(FAB付きワイヤ分析)によって確認することができる。つまり、本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、上記の組成であることで、フリーエアーボール(FAB)を形成してその先端部分を分析したときに、FABの先端部分の表面から5.0nm以上100.0nm以下の深さ方向の範囲で、銅とパラジウムの合計に対して、パラジウムを6.5~30.0原子%含むパラジウム濃化領域が観測される。また、本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、上記の組成のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤによりボール接合して接合構造を形成したときに、接合面近傍、すなわち、アルミニウムとパラジウムが共存する領域において、パラジウム濃化接合領域(パラジウム、銅及びアルミニウムの合計に対するパラジウムの質量割合が2.0質量%以上、好ましくは5.0質量%以上となる領域)が形成される。このボール接合条件及び分析条件は後に詳述する。
[0039]
 言い換えれば、パラジウム被覆銅ワイヤが、上記したような長期間の高信頼性を発揮するかどうかは、パラジウム被覆銅ワイヤを用意し、これを用いて、例えば上述の条件でフリーエアーボール(FAB)を形成し、第一接合せずにその先端部分を分析して、上記パラジウム濃化領域が観測されるかどうか、で判断することができる。つまり、用意したパラジウム被覆銅ワイヤが上記した所定の濃度でパラジウムと硫黄族元素を含有しており、これを用いてFAB付きワイヤ分析したときに、FABの先端部分にパラジウム濃化領域が観測されれば、その用意したパラジウム被覆銅ワイヤは、パラジウム層中に硫黄族元素を含有しており、長期高信頼性を発揮する本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの構成を満たすと判断することができる。
[0040]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤにおいて、銅の芯材はパラジウムを含んでいてもよい。パラジウム被覆銅ボンディングワイヤが、パラジウム層上にその他の層を有せず、かつ銅の芯材がパラジウムを含む場合、ワイヤ全体としてのパラジウムの濃度は、パラジウム層由来のパラジウム濃度と、銅の芯材由来のパラジウム濃度の合計である。パラジウム層上にその他の層を有しない場合、ワイヤ全体の銅とパラジウムと硫黄族元素の合計に対する、パラジウム層由来のパラジウムの濃度は、1.0~2.5質量%であることが好ましい。本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤが、パラジウム層上にその他の層を有する場合、パラジウム層から拡散等によってその他の層内に染み出したパラジウムも、パラジウム層由来のパラジウムとして、パラジウム濃度を求めることができる。
[0041]
 本実施形態のパラジウム(Pd)被覆銅ボンディングワイヤが、パラジウムの濃度が1.0質量%以上であり、硫黄族元素を各元素につき所定量含むことで、ボール接合の信頼性を高めることができるので、高温、高湿下においても長期間優れたボール接合性が維持される。パラジウムの濃度が4.0質量%以下、特に、パラジウム層由来のパラジウム濃度が2.5質量%以下であることで、フリーエアーボール(FAB)の引け巣の発生を抑制することができる。このように、パラジウムの濃度が1.0~4.0質量%で、かつ硫黄族元素を各元素につき所定量含むことで、ボール接合の高信頼性と、フリーエアーボール形成時の引け巣発生の抑制とを両立することができる。
[0042]
 ボール接合の高信頼性を得る観点から、パラジウム層由来のパラジウムの濃度は、1.3質量%以上であることが好ましい。引け巣発生の抑制の点では、パラジウム層由来のパラジウムの濃度は、2.3質量%以下であることが好ましい。
[0043]
 パラジウム層由来のパラジウム濃度は、ワイヤ全体のパラジウム濃度と銅の芯材中のパラジウム濃度をそれぞれ測定し、これらを用いて算出することができる。具体的には、二次イオン質量分析(SIMS)によって次のように分析することができる。まず、測定対象のワイヤをプレスして平坦化させる。これをSIMS分析装置(例えば、CAMECA製IMS-7f二次イオン質量分析装置)を使用し、銅(Cu)芯材中のパラジウムの濃度測定を行う。上記平坦化させたワイヤの表面のパラジウム層を上記分析装置内でスパッタリングにより除去し、銅を露出させる。銅(Cu)を露出させるために、例えば線径が10μm~30μmのワイヤでは、パラジウム(Pd)換算で表面から少なくとも0.5μm以上スパッタリングし、パラジウム層を除去した後、SIMS分析を開始し、深さ方向に2.0μmまで分析する。分析開始点から分析終了点(深さ2.0μm)までは、例えば100点以上測定を行い、この100点の平均濃度を算出する。分析条件は、例えば、SIMS装置の設定条件として、一次イオン種Cs 、一次イオン加速電圧15.0keV、一次イオン照射領域約30μm×30μm、分析領域約12μm×12μmである。SIMS分析は、Cs 等の一次イオンを用いてスパッタリングにより放出された二次イオンを質量分析計により検出し、元素分析を行う。パラジウム濃度は、測定したパラジウム(Pd)の二次イオン強度を用いて、パラジウム(Pd)濃度既知の銅(Cu)ワイヤを標準試料として、濃度換算して求めることができる。
[0044]
 硫黄族元素は、主にパラジウム層内に含有される。しかしながら、硫黄族元素が極微量であるため、特にパラジウム層が非常に薄い構成では、現状では、各種分析手法により、硫黄族元素の存在箇所とその濃度を正確に測定できないことがあり得る。そのため、硫黄族元素の量は、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤ全体に対する量として上記範囲としている。
[0045]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<100>方位(ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内までの方位を含む)の比率が15%以上であり、かつ<111>方位(ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内までの方位を含む)の比率が50%以下である。これにより、ボール接合(第一接合)部の形状が楕円状になるなど真円からずれる異形形状が低減され、ボール接合部を安定的に真円に近づけることができる。真円性が良好であればフリーエアーボールや第一接合の小径ボール化に有利となり、接合工程の製造管理が容易となる。例えば、フリーエアーボール径/線径の比率が1.5~1.7の範囲である小径ボールを接合する場合に、ボール接合部の真円性が安定的に向上される。そのため、電極間隔が例えば40μm以下の狭ピッチ接合でもショート不良を起こすことなく高信頼性を維持しやすくなる。
[0046]
 さらに、ボール接合部の真円性を高める点で、ワイヤ断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<100>方位比率は30%以上であることが好ましく、<111>方位比率は40%以下であることが好ましい。また、<100>方位比率の上限及び<111>方位比率の下限は特に限定されないが、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの製造時の結晶方位の制御が比較的容易となる点から、<100>方位比率は85%以下であることが好ましく、<111>方位比率は15%以上であることが好ましい。さらに、<111>+<100>の方位比率の総計が30%以上であることがより好ましく、90%以下であることがより好ましい。この範囲であると、接合の真円性をさらに向上することができる。
[0047]
 被覆を有するワイヤのボール接合部は、単層ワイヤより、接合の異形形状が生じやすいが、電極間距離(ピッチ)が概ね60μmを超えていた従来の接合工程では、厳しく管理する必要はなかった。しかし、ボール径が小さいほど、ボール接合部の形状が真円からずれて異形形状になりやすく、狭ピッチになるほど、電極からボール接合部の一部がはみだしたり、ボール接合部が隣接の電極と接触したりして、ショート不良が発生しやすくなる。
[0048]
 本発明者らは、狭ピッチ接合におけるボール接合部の真円性の劣化によるショート不良への対応を検討した結果、ワイヤ断面の結晶面の結晶方位に着目し、第一接合時のフリーエアーボールの圧縮変形、超音波印加による変形挙動を調査した。その結果、被覆を有するボンディグワイヤでは、ワイヤ断面の結晶面の<111>と<100>の結晶方位比率の制御により、ボール接合部の真円性を向上させ、異形形状が低減できること見出した。特に、上記組成のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤによれば、フリーエアーボール径/ワイヤ線径の比率が1.5~1.7の小径ボールを接合したときにも、真円性を向上でき、狭ピッチ接合のショート不良が低減できることが分かった。
[0049]
 これは次の理由によると推測される。本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤによると、第一接合時に形成されるフリーエアーボールの表面近傍にパラジウムが所定濃度で含有されるパラジウム濃化領域が層状に形成される。アーク放電によるワイヤの溶融から凝固を経て溶融ボールを形成し、ボール接合されるまでの極めて短時間に、ボール表面のこのパラジウム濃化領域より内部の組織が均等な組織を形成し、ボンダー装置の荷重や超音波印加による変形をより均一化すると考えられる。これにより、狭ピッチの第一接合においても真円性が向上されると考えられる。
[0050]
 ワイヤ断面の結晶面の結晶組織の測定には、後方電子散乱図形(Electron Back Scattering Pattern、以下「EBSP」という。)法を用いることができる。EBSP法による集合組織の測定により、ボンディングワイヤのような細線でも、その断面の集合組織を精度良く、しかも十分な再現性をもって測定することができる。
[0051]
 ワイヤ断面の結晶方位を測定する場合は、ワイヤ長手方向の垂直断面又は、ワイヤ長手方向と平行でワイヤ中心近傍の平行断面のどちらの測定も可能である。EBSP法では、通常、試料の凹凸や曲面が大きい場合は、結晶方位を高精度測定するのが難しくなる。そのため、ワイヤ断面をEBSPで観察するために断面の表面を滑らかに処理することが有用である。断面の表面を滑らかに処理する方法としては、機械研磨、化学研磨、FIB加工法などがある。これらの方法によれば、断面の表面の残留歪みを除去し、滑らかな表面を得ることができる。また、結晶方位の測定には、ワイヤ長手方向に垂直な断面の方が平滑な断面を得易いため好ましい。
[0052]
 上記のように、試料の前処理を適正化すれば、EBSP法でワイヤ断面の結晶方位は、高精度の測定、解析が可能である。結晶方位の測定は、3箇所以上の異なる箇所で行うことで、ばらつきを考慮した平均情報を得ることが可能となる。
[0053]
 また、EBSP法では、測定対象の組織と同様の組成の材料の標準データ(標準パターンファイル)を用いる。しかし、本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤでは、ワイヤ全体に対する硫黄族元素濃度、パラジウム濃度、銅中の微量元素濃度は極めて小さいため、EBSP法によってワイヤ断面の結晶組織を測定する場合に、標準データとして純銅のデータを用いてもよい。
[0054]
 次に、本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤのその他の構成について説明する。本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの線径は通常10~30μmであり、好ましくは25μm以下である。パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの線径は細い方が、狭ピッチ接合に適している。
[0055]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤにおける芯材は、銅を主成分として構成される銅又は銅合金である。ここでの主成分は、量又は特性において中心的であることを意味し、含有量であれば少なくとも50.0質量%である。主成分としての特性は、その構成に求められる特性であり、例えば、銅の芯材ではワイヤの破断力や伸び率等の機械的性質である。主成分は、例えば、このような特性に中心的に影響を与える成分ということができる。
[0056]
 銅の芯材は、銅(Cu)以外にも、不可避不純物や添加元素などの微量元素を含んでいてもよい。添加元素は、一般的にパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの、耐酸化性、強靭性などの特性向上等を目的として微量に添加される元素である。このような微量元素は、例えば、リン(P)、金(Au)、白金(Pt)、Pd(パラジウム)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、鉄(Fe)等である。銅の芯材に微量元素を含むことで、第一接合信頼性がより向上でき、かつ、第一接合のボール接合部の真円性が向上できる。第一接合の高信頼性に寄与する前記微量元素を含有する芯材は、純銅より適度に硬質となるため、フリーエアーボールの硬さが純銅を用いる場合よりやや硬くなり、第一接合時の圧着荷重、超音波印加によるフリーエアーボールの変形がより均一になるため、ボール接合部の真円性が向上できると考えられる。ボール接合部の真円性が向上することにより狭ピッチ接合のショート不良を抑制することができる。銅の芯材が微量元素を含む場合、その合計の量は芯材の全体に対して1質量ppm以上であることが好ましい。微量元素の割合は、3.0質量%以下であることが好ましく、この範囲であれば、接合信頼性を得た上に、コストの増大を押さえた上で、良好なワイヤの伸線加工性が維持でき、ワイヤの抵抗率の上昇が抑えることができる。また、ボール接合時にチップダメージが生じにくくなる。微量元素の割合は、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましい。
[0057]
 具体的に、銅の芯材が微量元素として、Au、Pt、Pd、Ni及びRhから選ばれる1種以上を含む場合、その含有割合は芯材の全体に対して合計で0.05質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下であることがさらに好ましい。また、銅の芯材が微量元素としてAu、Pt、Pd、Ni及びRhのうちNiを含む場合、その含有割合は芯材の全体に対して0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましい。
[0058]
 銅の芯材が微量元素として、InとGaのうち1種以上を含む場合、その量は合計で0.01質量%以上0.7質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.6質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがさらに好ましい。銅の芯材が、微量元素として、Pを含む場合、5質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましく、20質量ppm以上400質量ppm以下であることがより好ましく、50質量ppm以上250質量ppm以下であることがさらに好ましい。銅の芯材が微量元素として、AgとFeのうち1種以上を含む場合は、その量は合計で、1質量ppm以上100質量ppm以下であることが好ましく、3質量ppm以上60質量ppm以下であることがより好ましく、5質量ppm以上30質量ppm以下であることがさらに好ましい。
[0059]
 銅中の微量元素やワイヤに含有される元素の含有割合は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析等の化学分析で測定されるのが一般的であるが、これに限定されない。例えば銅の芯材中の金属元素の含有割合は、上記銅芯材中のパラジウムと同様にSIMS分析によって測定することができる。
[0060]
 パラジウム層は、ワイヤの表面から深さ方向のオージェ(FE-AES)分析プロファイルにおいて、銅とパラジウムとの合計に対してパラジウムの割合が50.0原子%となる箇所からパラジウム層表面までの領域として分析することができる。パラジウムの割合が50.0原子%となる箇所が銅の芯材とパラジウム層との境界である。パラジウム層が薄いことで、FE-AES分析によってもパラジウム層の厚さや特定の箇所のパラジウムの存在割合を明確に測定することが困難な場合には、FE-AES分析にさらに、透過型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光分析(TEM/EDX)による分析や、球面収差補正透過型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光分析(STEM/EDX)による分析、原子番号コントラスト像(HAADF像)などを適宜併用してもよい。
[0061]
 パラジウム層の厚さは、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの線径にもよるが、線径が10μm~30μmでは、0.020μm以上0.150μm以下であることが好ましく、0.030μm以上0.130μm以下であることがより好ましい。パラジウム層の厚さは上記範囲内で均一であるほうがボンディングワイヤを接合したときの耐リーニング性やループ高さの安定性などループ特性の品質が向上するためである。パラジウム層の厚さの測定手法としては上述したFE-AES分析を用いることができ、上述と同様に、測定精度を上げるために、TEM/EDXによる分析、STEM/EDXによる分析、HAADF像などを適宜併用してもよい。
[0062]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、硫黄族元素(硫黄、セレン及びテルルの1種以上)を含み、硫黄族元素を2種以上含む場合、ワイヤ全体に占める硫黄族元素濃度が合計で50.0質量ppm以下である。ワイヤ全体に占める硫黄族元素濃度が合計で5.0質量ppm以上であることが好ましく、これによりボール接合の信頼性が得易い。ボール接合の信頼性の観点から、ワイヤ全体に占める硫黄族元素濃度の濃度は、合計で6.0質量ppm以上が好ましい。また、硫黄族元素濃度が50.0質量ppmを超えると、パラジウム層が脆くなり、伸線加工中のパラジウム層に割れが生じたり、その割れが起点となってワイヤが断線したりして伸線加工性が悪くなる。伸線加工性を向上させるために、硫黄族元素濃度は、45.0質量ppm以下が好ましく、41.0質量ppm以下がより好ましい。
[0063]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、上記硫黄族元素の中でも、硫黄(S)濃度がワイヤ全体の5.0質量ppm以上であり、6.0質量ppm以上であることが好ましい。硫黄(S)濃度が5.0質量ppm以上であることで、ボール接合の信頼性を高めることができる。一方、硫黄(S)濃度はワイヤ全体の12.0質量ppm以下であり、これを超えるとパラジウム層が脆くなり、パラジウム層に割れが生じたり、その割れが起点となってワイヤが断線したりして伸線加工性が悪化する。硫黄(S)濃度はワイヤ全体の10.0質量ppm以下であることが好ましい。
[0064]
 また、セレン(Se)濃度がワイヤ全体の5.0質量ppm以上であり、6.0質量ppm以上であることが好ましく、8.0質量ppm以上であることがより好ましい。セレン(Se)濃度が5.0質量ppm以上であることで、ボール接合の信頼性を高めることができる。一方、セレン(Se)濃度はワイヤ全体の20.0質量ppm以下であり、これを超えるとパラジウム層が脆くなり、パラジウム層に割れが生じたり、その割れが起点となってワイヤが断線したりして伸線加工性が悪化する。セレン(Se)濃度はワイヤ全体の15.0質量ppm以下であることが好ましい。
[0065]
 また、テルル(Te)濃度がワイヤ全体の15.0質量ppm以上であり、16.0質量ppm以上であることがより好ましい。テルル(Te)濃度が15.0質量ppm以上であることで、ボール接合の信頼性を高めることができる。一方、テルル(Te)濃度はワイヤ全体の50.0質量ppm以下であることが好ましく、これを超えるとパラジウム層が脆くなり、パラジウム層に割れが生じたり、その割れが起点となってワイヤが断線したりして伸線加工性が悪化する。テルル(Te)濃度はワイヤ全体の45.0質量ppm以下であることが好ましく、41.0質量ppm以下であることがより好ましい。
[0066]
 本実施形態で使用するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは硫黄族元素濃度が合計で50質量ppm以下の範囲で、硫黄、セレン、テルルのいずれかが上記濃度範囲を満たしていれば、硫黄族元素を1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。このように、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤが、上記の濃度で各硫黄族元素を含有することで、フリーエアーボールの先端部表面にパラジウム濃化領域を形成するという特性を有し、ボール接合部に上記のパラジウム濃化接合領域をボール形成条件によらずに安定的に形成しやすく、接合信頼性が著しく向上され得る。
[0067]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、パラジウム層上にパラジウム以外の金属からなる第二層を有していてもよい。第二層の金属は純金属であっても、2種以上の金属が混ざり合った合金であってもよい。パラジウム被覆銅ボンディングワイヤがパラジウム層上に第二層を有する場合、パラジウム層と第二層の境界は、第二層の主成分金属濃度が最大濃度に対して50.0%となる部分として測定することができる。第二層表面上に第三層、第四層を有する場合にも上記に準じて分析することができる。
[0068]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤはパラジウム層以外の層として、最外層に金の層を有することが好ましい。本実施形態のパラジウム被覆銅ワイヤは、金の層を有することで、第二接合の接合性を向上させるとともに、伸線加工時のダイス摩耗を低減することができる。金の層は、金を主成分として形成される層である。金の層はパラジウム層表面にわたって形成されていれば、その一部が途切れていてもよく、金の層中にパラジウムが含有されていても構わない。金の層中にパラジウムが含有される場合、パラジウム濃度は厚さ方向に均一であっても表面に向かって減衰する濃度勾配を有していてもよい。また、金の層が2種以上の金属が混ざり合った合金で構成される場合、金の層は本発明の効果を損なわない限り、パラジウムと金以外にも銀、銅などを含んでいてもよい。この場合の金の層中のパラジウム以外の金属元素の量は、例えば、50.0質量%未満である。
[0069]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは金の層を有する場合、ワイヤ全体に占める当該金の層由来の金の濃度が0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。金の層由来の金の濃度が0.01質量%以上であると、第二接合性が良好となりやすく、伸線加工時のダイス摩耗を低減しやすい。ワイヤ全体に占める金の層由来の金の濃度は0.20質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましい。金の層由来の金の濃度が0.20質量%以下であればワイヤ性能に悪影響を及ぼしにくく、また、フリーエアーボールの真球性を損ないにくい。なお、銅の芯材に金を含む場合にはワイヤ全体としての金の濃度は、上記金の層由来の金の濃度と銅の芯材中の金の濃度の合計である。そのため、金の層由来の金の濃度を測定する場合には、ワイヤ全体の金の濃度と銅の芯材中の金の濃度をそれぞれ測定し、これらを用いて金の層由来の金の濃度を算出することができる。金の層由来の金の濃度は具体的には上記パラジウム層由来のパラジウム濃度と同様にSIMS分析によって測定することができる。
[0070]
 金の層の厚さは、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの線径にもよるが、8nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。金の層の厚さが8nm以下であると、金の層を有する場合にも、フリーエアーボールの真球性を損なうことなく、ボール接合の高信頼性を維持し易い。金の層の厚さの下限は特に限定されないが、後述する濃度換算の平均膜厚で、1nm以上であれば十分である。金の層の厚さの測定手法としては、パラジウム層と同様に、FE-AES分析を用いることができる。
[0071]
 なお、金の層の厚さは、ワイヤ全体に占める金の濃度が上記した好ましい範囲であると、著しく薄くなる。このように金の層の厚さが著しく薄くなる場合には、現状では、金の層の厚さを一般的な測定手法で正確に測定することが困難である。そのため、金の層の厚さが著しく薄くなる場合には、金の層の厚さを、ワイヤ全体に占める金の濃度をとワイヤ線径を用いて算出される濃度換算平均膜厚で評価することができる。この濃度換算平均膜厚は、金の濃度と金の比重から単位長さ当たりの金の質量を算出し、ワイヤ断面が真円であり、金が最表面に均一に存在すると仮定してその膜厚を求める方法や、めっき線径での金被覆の厚さ(設計値でよい。)と最終線径を用いて比例計算する方法がある。
[0072]
(フリーエアーボール(FAB)の分析)
 次に、フリーエアーボールの分析について説明する。上述したように本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、FAB付きワイヤ分析を行ったとき(すなわち、実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを用いてフリーエアーボールを形成して、第一接合せずに先端部分を分析したとき)、フリーエアーボールの先端部分の表面から5.0nm以上100.0nm以下の深さ方向の範囲で、銅とパラジウムの合計に対して、パラジウムを6.5~30.0原子%含むパラジウム濃化領域が観測される。本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、本実施形態の特定の濃度でパラジウムと硫黄族元素を含有することで、フリーエアーボールの先端部表面近傍にパラジウム濃化領域が安定的に形成され、第一接合の接合信頼性の長期維持を阻害するような、問題となる大きな引け巣の発生を抑制することができる。
[0073]
 FAB付きワイヤ分析におけるフリーエアーボールの形成条件は、通常第一接合で採用される条件と同様である。具体的に例えば、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの線径が10~30μmである場合に、放電電流値が30~90mA、フリーエアーボール径がワイヤ線径の1.7倍を超え2.3倍以下となるようにアーク放電条件を設定する。ボンダー装置は、例えば、ケー・アンド・エス社製のボンダー装置(全自動Cu線ボンダー;IConn ProCu PLUS)などの市販品を使用することができる。当該ボンダー装置を使用する場合、装置の設定として放電時間が50~1000μs、EFO-Gapが25~45mil(約635~1143μm)、テール長さが6~12mil(約152~305μm)であることが好ましい。当該ボンダー装置以外のその他のボンダー装置を用いる場合、上記と同等の条件、例えばフリーエアーボール径が上記と同等の大きさになる条件であればよい。また、ワイヤ先端部を窒素と水素の混合ガス雰囲気又は窒素ガス雰囲気にするために、上記のガスをガス流量が0.2~0.8L/分、好ましくは0.3~0.6L/分で吹き付ける。フリーエアーボール形成時のガスは、窒素95.0体積%と水素5.0体積%の混合ガスであることが好ましく、フリーエアーボール径は狙い値として上記の範囲であればよい。
[0074]
 所定のワイヤについて、パラジウム濃化領域を形成するか否かを観測する際には、上記範囲のうち代表して、放電電流値が65mA、ボール径がワイヤ線径の1.8倍で、窒素と水素の混合ガスの存在下で形成したフリーエアーボールによって上記濃化領域を測定してもよい。ボール径は狙い値又は実測値であるが実測値であることが好ましい。また、通常想定される誤差の範囲として、分析時のフリーエアーボール径は、ワイヤ線径の1.8±0.05倍の範囲であって構わない。
[0075]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを用いてフリーエアーボールを形成すると、ボール溶融時に、バラジウムの大部分がボール内部に拡散吸収されずに表面近傍に残る。この表面近傍に残ったパラジウムが、凝固後のボール表面にパラジウム濃化領域を形成する。そのため、パラジウム濃化領域は、凝固前のフリーエアーボール表面近傍に残ったパラジウムの痕跡として上記組成を有する。フリーエアーボールの先端部表面に、パラジウム濃化領域が観測されれば、ボール表面近傍全体又は先端部分を含む部分的範囲にパラジウムリッチな状態となったパラジウム濃化領域が層状に形成されていると推定できる。アルミニウム電極との接合に際して、フリーエアーボールの、電極との接合箇所にパラジウム濃化領域があることで、ボール接合(第一接合)の接合信頼性を高めることができる。
[0076]
 フリーエアーボール分析を行なったときに、パラジウム濃化領域を形成する構成のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤによれば、フリーエアーボール形成時における引け巣を防止することができる。また、上記のようなパラジウム濃化領域を有するフリーエアーボールを介してアルミニウム等の電極にボール接合されることで、ボール接合の信頼性を極めて高めることができる。
[0077]
 パラジウム濃化領域に含有されるパラジウムは、芯材由来であっても、パラジウム層由来であっても、両者であってもよい。このようなパラジウム濃化領域が形成されると、ボール接合の接合信頼性を向上させるとともに、フリーエアーボールの引け巣の発生を抑制できるという優れた効果が得られる。具体的には、本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤによれば、高温、高湿の環境においても長期間優れた接合信頼性を維持することができる。パラジウム濃化領域のパラジウム濃度は7.0~25.0原子%であることが好ましい。この範囲であると、さらに、チップダメージを抑制して、半導体装置の歩留まりを向上させることができる。パラジウム濃化領域は、後述するように、オージェ(FE-AES)分析によって観測することができる。
[0078]
 本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、典型的には、パラジウム層中に上記特定の量で硫黄族元素を含有することで、パラジウム濃化領域を形成することができる。
[0079]
 パラジウム濃化領域をFE-AES分析によって測定する場合の測定条件は代表的には、線径が10~30μm、好ましくは15~25μm、より好ましくは18~20μmのワイヤでは、FE-AES電子分光装置によってフリーエアーボールの先端部を表面から深さ方向に100.0nmまで分析する。この時の測定条件は、例えば、FE-AES電子分光装置の設定として、一次電子線の加速電圧10kV、電流50nA以下(好ましくは50nA)、アルゴンイオンスパッタの加速電圧1kV、スパッタ速度2.5nm/分(SiO 換算)である。設定値から算出される測定領域の面積は15μm 以上20μm 以下であり、例えば、略円形又は略正方形とする。具体的には、測定領域は直径5μmの略円形、あるいは4μm×4μmの略正方形を用いることができる。なお、設定値である分析領域は、上記の面積で外周長さがより小さくなる領域、例えば正方形あるいは円形が好ましい。より具体的には、少なくとも分析領域の外周線により形成される平面図形の重心から、外周線までの最大距離が3μm以下になるように調整するほうが、より適正な分析が可能となる。分析精度を上げるために、オージェ分析は深さ方向に均等な間隔の9点以上で行い、その平均値として算出する。また、測定領域は、試料の傾きを考慮せず、ビームが所定の平面に垂直に照射されたと仮定した領域として評価することができる。
[0080]
 パラジウム濃化領域は、この表面から5.0~100.0nmの深さのFE-AESプロファイルの各深さにおいて、銅とパラジウムの合計に対して、パラジウムが6.5~30.0原子%となる深さの範囲を含む領域として測定することができる。このとき、測定箇所によっては、パラジウムが6.5~30.0原子%となる領域が連続しないこともありうるが、このような場合には、パラジウムが6.5~30.0原子%となる領域を全て含む範囲をパラジウム濃化領域として特定することができる。なお、FE-AESプロファイルには、付着物などによるノイズが含まれ得るため、表面からの深さが5.0nmの箇所から中心に向けて測定するものとしている。
[0081]
 上記実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを用いると、フリーエアーボールのパラジウム濃化領域のパラジウム濃度は、表面から深さ方向に略一定であるか、パラジウム濃度が漸減する態様で形成されるのが通常である。そのため、パラジウム濃化領域は、5nm以上300nm以下の範囲が好ましく、400nm以下の範囲がより好ましい。つまり、表面から該好ましい厚さの範囲内の、パラジウムの平均濃度が上記特定の濃度であるパラジウム濃化領域が観測されることが好ましい。パラジウム濃化領域が厚い方が、接合信頼性向上効果が得易くなるためである。一方、パラジウム濃化領域の厚さは、ワイヤ全体に対するパラジウム濃度が上記特定の濃度であるため、ワイヤ径が10~30μmであるときに、概ね1.5μm以下、好ましくは1.0μm以下に抑えられると考えられる。パラジウム濃化領域が上記の厚さに抑えられるので、半導体チップにダメージを与えにくくなる。
[0082]
(ワイヤ接合構造)
 次に、本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを用いて作製されるワイヤ接合構造及び接合構造分析について説明する。図1は、本実施形態のワイヤ接合構造10の一例を示す断面模式図である。図1に示すワイヤ接合構造10は、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤをシリコン(Si)基板51上のアルミニウムを含む電極52表面にボール接合して形成される。図1はこのワイヤ接合構造10を、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤのワイヤ長手方向の中心線Lを通り中心線Lに平行な面で切断した断面を表している。ワイヤ接合構造10は、ボール接合部20と、接合面21と、上記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤからなるワイヤ部22とを有している。ワイヤ部22の線径φはパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの線径と等しい。
[0083]
 ボール接合部20はその上側の第1ボール圧縮部20aと、その下側の第2ボール圧縮部20bから構成される。ボール接合に際しては、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤ先端に形成されたフリーエアーボールが電極52上に圧接される。第1ボール圧縮部20aは、ボール接合前のフリーエアーボールの形状を比較的維持した部位であり、第2ボール圧縮部20bは、フリーエアーボールが潰され、変形して形成された部位である。また、表面23は第2ボール圧縮部20bの表面である。図中のX は、第2ボール圧縮部20bの接合面21に平行方向(ワイヤ中心線Lに垂直方向)の最大幅であり、Yは第2ボール圧縮部20bの、接合面21に対する最大高さである。P 、P はライン分析部であり、第2ボール圧縮部20bの、接合面21に平行方向の最大幅X を8等分した点のうち、外側の点(各々の端に近い点)を通る、接合面21に垂直な方向(ワイヤ中心線Lに平行方向)である。なお、接合面21を特定し難い場合、X は、第2ボール圧縮部20bの、ワイヤ中心線Lに垂直方向の最大幅で測定しても、同等の値となるため、構わない。Yはフリーエアーボールと電極52の接触点を基準とした最大高さで算出してもよい。なお、ボール接合部20における各部分の大きさや方向などは、測定などの誤差の範囲は当然に許容される。
[0084]
 本実施形態のワイヤ接合構造10は、電極52上の接合面21近傍に、パラジウム濃度が、アルミニウムと銅とパラジウムの合計に対して2.0質量%以上、好ましくは5.0質量%となるパラジウム濃化接合領域を有する。
[0085]
 パラジウム濃化接合領域は、フリーエアーボールと電極とが接触して接合された接合面近傍、すなわち、アルミニウムとパラジウムが共存する領域において、パラジウム、銅及びアルミニウムの合計に対するパラジウムの質量割合が2.0質量%以上、好ましくは5.0質量%以上となる所定の範囲として評価することができる。具体的には、上記ボール接合部20の断面の所定の箇所を、ボール接合部20側から接合面21に向けてワイヤ中心線に平行方向に電界放出形走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光分析(FE-SEM/EDX)によってライン分析する。このとき、アルミニウムが0.5質量%を超え95.0質量%以下の範囲内の各測定点で、パラジウム、銅及びアルミニウムの合計に対するパラジウムの質量割合が2.0質量%以上、好ましくは5.0質量%以上となる所定の範囲をパラジウム濃化接合領域として評価することができる。ここで、アルミニウム濃度が0.5質量%を超え95.0質量%以下の範囲で測定する理由は、分析におけるノイズ等の影響でアルミニウムが存在しない箇所の分析値が0質量%にならないことや、アルミニウムのみの箇所の分析値が100.0質量%にならないことがあるからである。
[0086]
 このような組成のパラジウム濃化接合領域を有することで、ボール接合部の腐食を抑制することができ、破断や剥離を防止し、接合信頼性を向上させることができる。電極は、例えば、シリコン(Si)母材表面にAl、AlSiCu(例えば、Al-Cu(0.2~0.9質量%)-Si(0.5~1.5質量%))、AlCu(例えば、Al-Cu(0.2~0.9質量%))などの電極材料を被覆して形成される。また、ボール接合時の電極の温度は例えば140~200℃である。
[0087]
 パラジウム濃化接合領域におけるパラジウム濃度は高い方がよく、例えばFE-SEM/EDXのライン分析の各測定点において、50.0質量%以下、通常30.0質量%以下、あるいは20質量%以下である。
[0088]
 ここで、例えば、上述のライン分析において、線径が10~30μmのワイヤでは、例えば、FE-SEM/EDX分析の濃度プロファイルにおける、アルミニウム、パラジウム及び銅の合計を100質量%とした場合に、パラジウム濃度が2.0質量%以上の範囲が50nm以上あればパラジウム濃化接合領域が存在すると評価できる。
[0089]
 接合面21内にパラジウム濃化接合領域を有することの効果は、上述のライン分析部(P 、P )における濃度分析によって評価してもよい。つまり、図1において、第2ボール圧縮部20bの接合面に略平行方向の最大幅X を8等分した点のうち外側の点(端に近い各々の点)を通り、接合面21に垂直方向の直線を2箇所のライン分析部P 、P として、それぞれ上記同様にFE-SEM/EDXによって、ボール側から電極側に向けライン分析する。このとき各々のライン分析部P 、P において、パラジウム濃度が、アルミニウムと銅とパラジウムの合計に対して2質量%以上となるパラジウム濃化接合領域が検出されれば、接合面21近傍にパラジウム濃化接合領域が存在するとみなすことができる。これによって、接合信頼性を長期にわたって維持すると評価できる。封止樹脂等からのハロゲン元素や水分は、ボール接合面近傍の両端、すなわち、ボールと電極の接合部の際付近のわずかな隙間等から浸入してくる可能性が高い。このため、両端付近に耐腐食性の高いパラジウム濃化接合領域があることがハロゲン等の浸入を阻止するという意味で非常に重要な役割を果たすからである。
[0090]
 ワイヤ接合構造における電極とフリーエアーボールとの接合面21近傍におけるパラジウム濃化接合領域の占有率が25%以上であることが好ましい。これにより、優れた高信頼性を維持できる。パラジウム濃化接合領域の接合面内の占有率は、50%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましい。
[0091]
 接合面21内におけるパラジウム濃化接合領域の占有率は、切断面におけるパラジウム濃化接合領域の接合面21方向の幅の、ボール接合部の最大幅(図1で示すX )に対する割合として次のように算出することができる。上記と同様の方法で、図1に示すような切断面を形成した後、この切断面を電子線マイクロアナライザ(EPMA)の面分析(例えば、加速電圧15kV、照射電流290nA。)によって観察する。この観察画像内で、パラジウム(Pd)の強度として、パラジウム濃度がアルミニウムと銅とパラジウムの合計に対して2.0質量%以上の箇所よりも高く検出される部分を、パラジウム濃化接合領域を反映しているとみなして、その強度が強くなっている部分の幅の合計X を測定する。この幅X はワイヤ中心線Lに垂直方向の幅として測定する。切断面における第2ボール圧縮部20bの最大幅X と、パラジウム濃化接合領域が検出された範囲の幅の合計(合計幅X )とを測定し、占有率を(X /X )×100(%)として算出する。なお、第2ボール圧縮部20bの電極側(図1の下側)で直接電極に接合していない曲線部は、曲線部を最大幅X に投影させた幅を測定することでパラジウム濃化接合領域の占有率を算出することができる。
[0092]
 例えば、EPMA測定(面分析)では、通常、測定対象の元素の存在率を、測定対象に電子線を照射したときに当該元素から発せられるX線強度として測定し、その強度を色彩に反映させたカラーマッピング画像で表示するのが一般的である。つまり、カラーマッピング画像では、測定対象の元素が存在しない点は真っ黒に表示され、元素の存在確率が高い順に一例として「白、赤、黄、緑、青、黒」などのグラデーションで表示される。このようなEPMAのカラーマッピング画像上の接合面21近傍において、最もパラジウム強度が小さい点(カラーマッピング画像上に真っ黒ではないがパラジウムによる強度が観測される箇所のなかで一番暗い箇所、例えば、上記グラデーションの場合、黒に近い青色の箇所)でのパラジウム濃度が2.0質量%以上あれば、より強度の強い色彩で表示される領域をパラジム濃化接合領域として特定することができる。また、ライン分析とEPMAのカラーマッピング画像(面分析)の結果を重ね合わせて、ライン分析でパラジウム濃度が2.0質量%あるいはこれ以上に観測された、カラーマッピング画像上の測定点と強度が同等かそれ以上の箇所を、強度差(画像上での色彩)として識別できる設定にするか、目視で判定する。これにより、パラジウム濃化接合領域の有無及び占有率が算出できる。
[0093]
 なお、パラジウム濃化接合領域の占有率を、EPMAのカラーマッピング画像を用いて算出する場合、カラーマッピング画像を拡大すればするほどパラジウム濃化接合領域が「疎」な状態に見えることがある。そのため、少なくともボール接合部の第2ボール圧縮部が1枚の画像に収まる程度の倍率で占有率を算出するのが好ましい。また、カラーマッピング画像の拡大などにより、画像上のパラジウム濃化接合領域にパラジウムが「疎」な状態、あるいはEPMA画像上の接合部に黒い箇所があっても、当該箇所におけるライン分析結果でパラジウム濃度が2.0質量%以上検出されれば、当該箇所はパラジウム濃化接合領域であると見なしてよい。
[0094]
 実施形態のパラジウム濃化接合領域を形成することで、ボール接合部の腐食を抑制し、また、長期使用によるボール接合部の破断や剥離を防止し、接合信頼性を向上させることができる。さらに、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤが上記の所定の濃度で各硫黄族元素を含有することで、後述するようなボール接合条件の範囲内でどのような条件を採った場合も、安定的にパラジウム濃化接合領域を形成することができる。そのため、例えば、ボール形成条件を操作すれば、ボール接合部に上記のようなパラジウム濃度を実現できるという従来のものに比べて接合信頼性向上効果が著しい。
[0095]
 また、本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの属性として、ワイヤ接合構造におけるパラジウム濃化接合領域を確認することができる。すなわち、用意したパラジウム被覆銅ワイヤを用いて接合構造を作製して、その接合構造が上記のようなパラジウム濃化接合領域を有していることが観測される場合に、用意したパラジウム被覆銅ワイヤは、パラジウム層中に硫黄族元素を含有しており、長期高信頼性を発揮する本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの構成を満たすと判断することができる。
[0096]
 パラジウム被覆銅ワイヤを用いた接合構造分析を行う場合の分析方法を、接合対象として純アルミニウム電極を採用した場合を例に、詳細に説明する。アルミニウムとアルミニウム以外の元素を含む電極を用いる場合も同様である。パラジウム被覆銅ボンディングワイヤを用いてフリーエアーボールを形成し、アルミニウム電極上にボールボンディングする。ボール接合部をワイヤ長手方向の中心線Lに平行な面が露出するように切断する。これにより、図1に示すような切断面が得られる。この切断面を、ワイヤ側の所定箇所から接合面21に略垂直方向(深さ方向)にライン分析する。ライン分析としては、上記したFE-SEM/EDXが好適である。なお、当該分析に係る切断面は、図1に示すように、ワイヤ長手方向の中心線Lを含むか、中心線Lにできるだけ近づけるように形成することが好ましい。
[0097]
 フリーエアーボールは、FAB付きワイヤ分析と同様の条件で形成することができる。パラジウム被覆ボンディングワイヤの線径が10~30μm、好ましくは15~25μm、より好ましくは18~20μmである場合に、放電電流値が30~90mA、フリーエアーボール径がワイヤ線径の1.7倍を超え2.3倍以下となるようにアーク放電条件を設定する。ボンダー装置は、例えば、ケー・アンド・エス社製のボンダー装置(IConn ProCu PLUS)などの市販品を使用することができる。当該ボンダー装置を使用する場合、装置の設定として放電時間が50~1000μs、EFO-Gapが25~45mil(約635~1143μm)、テール長さが6~12mil(約152~305μm)であることが好ましい。当該ボンダー装置以外のその他のボンダー装置を用いる場合、狙いのボール径に応じて装置の設定条件を調整し、上記同様のボール径を得ればよい。また、ワイヤ先端部を窒素と水素の混合ガス雰囲気又は窒素ガス雰囲気にするために、上記のガスをガス流量が例えば0.2~0.8L/分、好ましくは、0.3~0.6L/分、より好ましくは0.5L/分で吹き付ける。フリーエアーボール形成時のガスは、窒素95.0体積%と水素5.0体積%の混合ガスであることが好ましく、フリーエアーボール径は狙い値として上記の範囲とするのがよい。
[0098]
 また、ボール接合条件(第一接合の条件)は、例えばワイヤ線径φが18μmでボール径が32μmのフリーエアーボールを形成したものについては、第2ボール圧縮部20bの高さYが略10μm、第2ボール圧縮部20bの接合面21に略平行方向の最大幅X が略40μmとなるように、ボンダー装置にて調節することができる。具体的には、ボンダー装置の設定として、ボール圧着力7.5gf、超音波印加出力70mA、ボール圧着時間15ms、圧着温度150℃などである。また、第二接合の条件は、例えば、スクラブモードで、圧着力70gf、圧着時間20ms、圧着温度150℃、周波数200kHz、振幅3.0μm、サイクル2回である。なお、第一接合部から第二接合部までのループ長さは2.0mmにてボンディングすることができる。
[0099]
 ボール接合部の分析試験において、切断面は次のように作成することができる。リードフレームとして、例えばPBGA32PINフレームを用い、このフレーム中央部に略正方形の半導体チップを接合する。半導体チップ上のアルミニウム電極とフレーム上の外部電極を、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤによってワイボンディングして測定サンプルを作成する。この、半導体チップ上にあるアルミニウム電極にパラジウム被覆銅ボンディングワイヤワイヤをボール接合(第一接合)し、リードフレームにウェッジ接合(第二接合)する。通常チップには、多くの電極が複数列に列設されているので、例えばそのうちの一列(8個)の電極にボンディングワイヤを等間隔で接合し、他の3列(3辺)も同様に接合する。合計で32個のアルミニウム電極にボール接合する。リードフレームへのウェッジ接合を含めると合計で32組のワイヤボンディングとなる。
[0100]
 次に、上記で形成された合計32組の接合部を含む半導体チップを封止樹脂によってモールド機でモールドする。モールドが固まったらモールドした部分をフレームからカットし、さらに、モールド部分の中にあるボール接合部の一列(一辺)の近傍を切断する。切断したモールドは円筒状の型(かた)にボール接合部の断面(図1に示すような断面。)が研磨できる方向に置き、埋め込み樹脂を流し込み硬化剤を添加して硬化させる。そのあと、この半導体チップ入の硬化させた円筒状の樹脂をなるべくボール接合部の中心付近が露出するように研磨器にて粗研磨する。おおよそボール接合部の中心断面近くまで研磨したら、最終研磨仕上げおよびボール中心部を含む面(ワイヤ部の中心線Lを通り、中心線Lに平行な面)がちょうど露出して分析面の位置になるようにイオンミリング装置にて微調整する。ワイヤ部断面のワイヤ幅がワイヤ直径の長さになれば切断面がボール中心部を含む面になっている目安となる。切断面を分析する面として、その所望の箇所を、電解放出形走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光分析(FE-SEM/EDX)によって、ボール側から電極側に向けてライン分析する。ライン分析条件は、例えば、加速電圧6keV、測定領域φ0.18μm、測定間隔0.02μmである。
[0101]
 次に、本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの各構成が奏する作用について説明する。上記実施形態の構成によりボール接合の信頼性と引け巣発生の抑制とを両立することができる理由は、一例として次のように推測される。ボール接合においては、放電トーチからワイヤ先端にアーク放電を形成し、アーク電流の熱によりボール先端が溶融し、フリーエアーボールが形成される。このとき、これまでの、ボール接合部のパラジウム濃度が高くならないパラジウム被覆銅ワイヤでは、アーク入熱により溶融したワイヤの金属及び添加元素がフリーエアーボールを形成する過程で、ワイヤの外側のパラジウムが溶融ボール内部に拡散吸収される。このような従来のワイヤがアルミニウムを含む電極上にボール接合されると、接合面近傍がパラジウムリッチにならないため、アルミニウムを含む電極とボール接合部との接合界面に銅とアルミニウムの金属間化合物、例えばCu9Al4などが腐食されやすくなる。
[0102]
 半導体製品では、ワイヤボンディングの全体が樹脂などにより封止されるのが通常である。この封止樹脂由来の塩素、臭素等のハロゲン元素や、雰囲気中からの水分や硫黄等がボール接合界面に侵入し、ボール接合界面の銅とアルミニウムの金属間化合物を腐食することが問題となっている。そして、半導体素子の雰囲気が高温高湿になるほど腐食が拡大される傾向である。ボール接合界面の腐食が進むとボール接合界面が剥離や破断を起こし、電気抵抗の上昇を招き、通電不良が生じることが問題となる。
[0103]
 これに対し、本実施形態の、特定の組成及び構成のワイヤでは、フリーエアーボールの形成過程で溶融ボール内へのパラジウムの拡散吸収が抑制され、吸収されないパラジウムがボール表面近傍に濃縮分布してボール表面を覆うと考えられる。この吸収されないパラジウムがフリーエアーボールの表面を覆った状態で、アルミニウムを含む電極上にボール接合されると、接合界面において耐腐食性の強いパラジウムがリッチな状態となる。そのため、銅とアルミニウムの金属間化合物の形成が抑制され、また、外部から侵入するハロゲン(特に塩素)、硫黄、水などによる腐食が抑えられると推測される。その結果、ボール接合の信頼性が向上し、特に高温高湿の条件における信頼性を著しく向上させることができる。このような観点から、ボール接合の信頼性を向上させる範囲としてワイヤ中のパラジウム濃度の下限を決定した。
[0104]
 特に、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤのパラジウム層を形成する際に、パラジウム被覆材料に、所定濃度となるような硫黄族元素を含有させると、フリーエアーボール表面のパラジウム濃化領域が極めて安定的に形成される。また、硫黄族元素の所定量の存在により、パラジウム濃化領域が、アルミニウム電極との接合時に至るまで、フリーエアーボール表面に安定的に維持され、実施形態のパラジウム濃化接合領域を形成しやすいと考えられる。そのため、ワイヤ部に上記のとおりに硫黄族元素を含有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを用いたワイヤ接合構造によれば、高温高湿下での接合信頼性を著しく向上させることができる。
[0105]
 一方で、上述したように、フリーエアーボール表面をパラジウムリッチにした構成であっても、過酷な条件下での使用を目指す場合、しばしば接合信頼性の向上が得られないことがあった。その理由は、ワイヤボンディングの第二接合対象物は表面に金めっきや銀めっき等が施されている場合が多いところ、このめっき由来の金や銀が、ワイヤボンディングの第二接合後にワイヤを切断した際に、ワイヤのテール部(引きちぎったワイヤの端部)に付着し、引け巣の原因になると考えられる。
[0106]
 「引け巣」は、凝固後のフリーエアーボール表面に観察されるしわ状の溝である。凝固後のフリーエアーボール表面に引け巣がある場合、半導体チップ上の電極におけるボール接合の接合面の、上記溝に対応する箇所に空隙が生じる。そのため、空隙の大きさによっては、この空隙を起点として経時的に接合面の接合強度が弱くなったり、腐食が生じやすくなり、接合信頼性を低下させると考えられる。
[0107]
 発明者らは鋭意研究した結果、上記の引け巣の中にも、問題になる大きな引け巣と問題にならない小さな引け巣があることが分かった。つまり、凝固後のフリーエアーボールの表面に、所定の大きさ以上の引け巣がある場合、電極とボール接合部との界面の空隙が大きくなりやすく、これに起因する接合信頼性の低下が著しい。これに対し、上記大きさよりも小さい引け巣であれば、空隙が小さいため接合信頼性への影響は問題とならない。このような問題とならない引け巣の大きさとしては、引け巣のSEM観察写真において、引け巣の最大長がワイヤの直径の3分の2以下の長さであればよい。例えばワイヤの直径が18μmの場合、引け巣の最大長が12μmを超える長さの引け巣を、問題となる大きな引け巣として十分に判別することができる。この大きさ以下の引け巣では、接合信頼性への影響はほとんどないと推定される。
[0108]
 そして、問題となる大きな引け巣が生じる原因は、フリーエアーボールの表面を覆うパラジウム濃化領域(実際にはパラジウムと銅の混合された領域)のパラジウム濃度に依存することを見出した。すなわち、フリーエアーボール表面のパラジウム濃化領域のパラジウム濃度がある一定の濃度を超えると、パラジウム濃化領域が凝固するときは、まだボール内部が軟化状態である。このため、フリーエアーボール表面付近の金の付着した箇所と、金の付着のない領域との組成の差などの要因により、凝固速度の差が広がって、金の付着部が最終凝固部分となる。そして溶融ボールが固体になるとき、収縮が集中する金の付着部分がボール内側まで収縮し、問題となる大きな引け巣になると推定した。これは、テール部に銀が付着する場合も同様である。
[0109]
 反対に、パラジウム濃化領域のパラジウム濃度が十分に低いと、パラジウム濃化領域とボール内部の銅の凝固との時間差が小さくなると考えられる。その結果、金が付着していたとしても、ボール内側まで収縮しないので、問題となるような大きな引け巣は生じない。このような観点でフリーエアーボールの表面のパラジウム濃度の上限を決定した。フリーエアーボールに大きな引け巣が生じた状態で、アルミニウムを含む電極上にボール接合されると、電極とボール接合部との界面に空隙が生じる。その結果、ボール接合界面の接合強度が弱くなったり、腐食が生じやすくなることが問題である。
[0110]
 パラジウム被覆銅ボンディングワイヤ中の硫黄族元素は、上述したフリーエアーボール表面近傍のパラジウム分布領域の形成に寄与する。硫黄族元素は銅との反応性が高いため、主としてワイヤの金属が溶融する初期の段階で、銅とパラジウムの接触する領域に集中すると考えられる。この銅とパラジウムの接触領域に集中した硫黄族元素と銅との反応生成物が、パラジウムの溶融銅中への溶け込みを遮蔽すると考えられる。このような観点で硫黄族元素量が決定されている。
[0111]
 上記の効果を得るために、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤ全体に含有される硫黄族元素の50.0%以上は、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの表面から、パラジウムと銅の合計に対してパラジウムが50.0原子%となる部位との間に含有されることが好ましい。これにより、フリーエアーボール表面近傍のパラジウム分布領域が形成しやすくなると考えられ、ボール接合の接合信頼性をさらに向上させることができる。
[0112]
(パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの製造方法)
 次に、本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの製造方法について説明する。本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、芯材となる銅を主成分とする銅線材表面にパラジウムが被覆され、伸線加工及び、必要に応じて熱処理されることで得られる。パラジウム被覆後に金が被覆されてもよく、また、パラジウム又は金が被覆された後に、段階的に伸線や、熱処理が施されてもよい。
[0113]
 芯材として銅を用いる場合、所定の純度の銅を溶解させ、また、銅合金を用いる場合、所定の純度の銅を、添加する微量元素とともに溶解させることで、銅芯材材料又は銅合金芯材材料が得られる。溶解には、アーク加熱炉、高周波加熱炉、抵抗加熱炉、連続鋳造炉等の加熱炉が用いられる。大気中からの酸素や水素の混入を防止する目的で、加熱炉において、銅溶解時の雰囲気は、真空あるいはアルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気に保持することが好ましい。溶解させた芯材材料は、加熱炉から所定の線径となるように鋳造凝固させるか、溶融した芯材材料を鋳型に鋳造してインゴットを作り、そのインゴットを繰返しロール圧延したあと、所定の線径まで伸線して銅線材が得られる。
[0114]
 銅線材の表面にパラジウム又は金を被覆する方法としては、めっき法(湿式法)と蒸着法(乾式法)がある。めっき法は電解めっき法と無電解めっき法のいずれの方法であってもよい。ストライクめっきやフラッシュめっきなどの電解めっきでは、めっき速度が速く、パラジウムめっきに使用すると、パラジウム層の芯材への密着性が良好であるため好ましい。めっき法によってパラジウム層内に硫黄族元素を含有させる手法としては、上記電解めっきにおいて、パラジウムめっき液に、硫黄、セレン又はテルルを含むめっき添加剤を含有させためっき液を用い、めっき添加剤の種類や量を調整する手法がある。これにより、ワイヤ中の硫黄族元素の濃度を調整することもできる。
[0115]
 蒸着法としては、スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着等の物理吸着と、プラズマCVD等の化学吸着を利用することができる。これらの方法によれば、形成後のパラジウム被覆や金被覆の洗浄が不要であり、洗浄時の表面汚染等の懸念がない。蒸着法によってパラジウム層内に硫黄族元素を含有させる手法としては、硫黄族元素を含有させたパラジウムターゲットを用い、マグネトロンスパッタリングなどによってパラジウム層を形成する手法がある。
[0116]
 このようにして、パラジウム被覆と必要に応じて金などのその他の被覆を施した銅線材が、続いて最終線径まで伸線され、熱処理される。この伸線加工と熱処理は、段階的に行われてもよい。また上記では、パラジウム被覆と金被覆を施した銅線材を最終線径に伸線する方法について説明したが、パラジウム被覆した銅線材を所定の線径に伸線した後に金被覆を施して、その後、最終線径まで伸線してもよい。
[0117]
 銅線材の伸線の工程では加工集合組織が形成され、熱処理工程では回復、再結晶が進行して再結晶集合組織が形成され、これらの集合組織が相互に関連して、最終的にワイヤの集合組織及び結晶方位が決定する。パラジウム被覆と必要に応じて形成されるその他の被覆の形成後に加工率と熱処理条件を適正化することで、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの断面の<111>と<100>の方位比率を調整することができる。通常、加工率が高いほど<111>方位比率は多くなり、<100>方位比率は減少する傾向である。また、方位比率の制御には熱処理条件よりも加工率の方が支配的であるが、熱処理温度を高くすることで、<100>比率を増加させることができ、特に加工率の低い範囲で熱処理温度による方位比率の制御に有効である。
[0118]
 さらに、熱処理温度が同じであっても、熱処理装置の構造や速度によってワイヤの特性が影響されることがある。また、同一の装置で熱処理条件が同じであっても芯材中の微量元素の種類や量によって、ワイヤの特性が影響されることもある。この点、本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの製造工程において、上記加工率に加えて、歪取り熱処理における伸び率を調整することで、ワイヤ断面の結晶方位比率を制御することが可能である。この伸び率は、主に、歪取り熱処理の温度と時間によって制御することができる。ワイヤ断面の結晶方位比率として<100>を15%以上、<111>が50%以下を得るためには、伸び率として5~15%の範囲に調節することが好ましい。この伸び率の範囲内で、加工率が低い方では伸び率を高く、加工率が高い方では伸び率を低く調整することが、<100>を15%以上、<111>が50%以下の制御に有効である。
[0119]
 伸線加工は、複数のダイヤモンドダイスを用いて、段階的に行われることが好ましい。ダイヤモンドダイス1つあたりの減面率は、ワイヤ断面の<111>及び<100>の方位比率への影響は、加工率に比べて少ないが、減面率が5%よりも小さいと伸線工程が増えすぎ、減面率が15%よりも大きくなると伸線時の引張力が大きくなり、断線が発生しやすくなる。それらを考慮し、ダイヤモンドダイス1つあたりの減面率(加工率)は5.0~15.0%が好ましい。
[0120]
 最終熱処理は、最終線径において、ワイヤ内部に残留する金属組織の歪みを除去する歪み取り熱処理が実行される。歪み取り熱処理(調質熱処理)は、ワイヤ断面の結晶方位と、ワイヤ特性を考慮しながら伸び率が5%~15%の範囲となるように、温度及び時間が決定される。伸び率はボンディングワイヤの引張試験によって得られた値とした。伸び率は、例えば、引張実験装置(例えば、株式会社 TSE製オートコム)にて、長さ10cmのボンディングワイヤに速度20mm/min、ロードセル定格2Nで引っ張ったとき、破断に至ったときの伸張長さの割合として算出される。伸び率は、測定結果のばらつきを考慮し、5本の平均値を求めることが望ましい。
[0121]
 その他、ワイヤ製造の任意の段階で、目的に応じた熱処理が施されてもよい。このような熱処理としては、パラジウム被覆又は金被覆後に、隣り合う金属同士を拡散させて接合強度を上げる拡散熱処理がある。拡散熱処理を行うことで、異種金属間の接合強度を向上させることができる。拡散熱処理条件についても、必要とされるワイヤ特性を考慮して、温度及び時間が決定される。
[0122]
 熱処理の方法は、所定の温度に加熱された加熱用容器雰囲気の中にワイヤを通過させ熱処理を行う走間熱処理が、熱処理条件を調節しやすいため好ましい。走間熱処理の場合、熱処理時間は、ワイヤの通過速度と加熱用容器内のワイヤの通過距離によって算出することができる。加熱用容器としては管状電気炉などが使用される。
[0123]
 以上説明した本実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤによれば、ボール形成時の引け巣が抑制されるとともに、高温高湿下においてもボール接合信頼性に優れ、さらに、狭ピッチ接合においても第一接合形状の真円性を向上することができる。そのため、長期信頼性の極めて高いワイヤ接合構造を形成できるので、QFP(Quad Flat Packaging)、BGA(Ball Grid Array)、QFN(Quad For Non-Lead Packaging) に好適である。また、信頼性の高いワイヤ接合構造を形成できるので車載用デバイスなどの、高温、高湿の環境での使用に適している。さらに、第一接合の真円性が向上されるため、小型半導体デバイスなどの狭ピッチ接合構造にも適している。
[0124]
(半導体装置及びその製造方法)
 次に、上記実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを用いた半導体装置について説明する。図7に示すように、本実施形態の半導体装置1は、半導体チップ2と、半導体チップ2上に設けられた、アルミニウムを含有するアルミニウム電極3と、半導体チップ2の外部に設けられた、金被覆を有する外部電極4と、アルミニウム電極3と外部電極4表面を接続するボンディングワイヤ5を有する。なお、図7では外部電極上に金被覆を有する場合を例に説明するが、金被覆に代えて、又は金被覆とともに銀被覆を有していても同様である。
[0125]
 半導体装置1において、ボンディングワイヤ5は、上記実施形態のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤからなる。また、アルミニウム電極3とボンディングワイヤ5の接合面に、パラジウム濃度が、アルミニウム電極3の表面の構成元素と、銅とパラジウムの合計に対して2.0質量%以上となるパラジウム濃化接合領域を有する。
[0126]
 半導体チップ2は、シリコン(Si)半導体或いは化合物半導体等からなる集積回路(IC)を備えてなる。アルミニウム電極は、例えば、シリコン(Si)母材の表面にAl、AlSiCu、AlCuなどの電極材料を被覆して形成される。外部電極4は、半導体チップ2に外部から電力を供給するための電極である。外部電極4からの電力は、ボンディングワイヤ5を介して半導体チップ2に供給される。
[0127]
 本実施形態の半導体装置1の製造において、ボンディグワイヤ5によるアルミニウム電極3と外部電極4の接続は、例えば、次のように行われる。ボンディング装置や、ボンディングワイヤをその内部に通して接続に用いるキャピラリ冶具等を用い、例えばキャピラリで把持したワイヤ先端にアーク放電によって入熱し、ワイヤ先端を加熱溶融させる。これにより、ワイヤ先端にフリーエア-ボールが形成される。その後、例えば、半導体チップ2を140~200℃の範囲内で加熱した状態で、アルミニウム電極3上に、このフリーエア-ボールを圧着接合させてボール接合(第一接合)が形成される。その後で、ボンディングワイヤ5の第一接合と所定の間隔で離間した反対側の端を直接、外部電極4に超音波圧着によりウェッジ接合(第二接合)させる。
[0128]
 本実施形態の半導体装置の製造方法においては、フリーエアーボールの形成条件は、上述したのと同様の条件である。具体的に例えば、ボンダー装置を用いて、ボンディングワイヤ5の線径が10~30μm、好ましくは15~25μm、より好ましくは18~20μmである場合に、アーク放電電流値が30~90mAである。通常接合では、フリーエアーボール径がワイヤ線径の1.7倍を超え2.3倍以下となるようにアーク放電条件を設定する。狭ピッチ接合の際には、電極間隔の幅にもよるが、例えば、ボンディングワイヤ5の線径が18μmである場合に、フリーエアーボール径がワイヤ線径の1.5~1.7倍となるようにアーク放電条件を設定する。ボンダー装置は、例えば、ケー・アンド・エス社製のボンダー装置(全自動Cu線ボンダー;IConn ProCu PLUS)などの市販品を使用することができる。当該ボンダー装置を使用する場合、装置の設定として放電時間が50~1000μs、EFO-Gapが25~45mil(約635~1143μm)、テール長さが6~12mil(約152~305μm)であることが好ましい。当該ボンダー装置以外のその他のボンダー装置を用いる場合、上記と同等の条件、例えばフリーエアーボール径が上記と同等の大きさになる条件であればよい。また、ワイヤ先端部を窒素と水素の混合ガス雰囲気又は窒素ガス雰囲気にするために、上記のガスをガス流量が0.2~0.8L/分、好ましくは0.3~0.6L/分で吹き付ける。フリーエアーボール形成時のガスは、窒素95.0体積%と水素5.0体積%の混合ガスであることが好ましく、フリーエアーボール径は狙い値として上記の範囲であればよい。
[0129]
 また、ボール接合及びウェッジ接合の条件は、半導体装置の構造や用途によって適宜調節でき、例えば、ワイヤ線径φが18μmでボール径が32μmのフリーエアーボールを形成したものについては、ボンダー装置の設定として、ボール圧着力7.5gf、超音波印加出力70mA、ボール圧着時間15ms、圧着温度150℃である。これにより、第2ボール圧縮部20bの高さYが略10μm、第2ボール圧縮部20bの接合面21に略平行方向の最大幅X が略40μmでボール接合を形成することができる。ウェッジ接合は、スクラブモードにて圧着力70gf、圧着時間20ms、圧着温度150℃、周波数200kHz、振幅3.0μm、サイクル2回の条件にてループ長さ2mmとしてウェッジ接合することができる。
[0130]
 実施形態の半導体装置の製造方法は、半導体チップと、半導体チップ上に設けられた、アルミニウムを含有するアルミニウム電極と、半導体チップの外部に設けられ、金被覆又は銀被覆を有する外部電極と、前記アルミニウム電極と前記外部電極表面を接続するボンディングワイヤとを有する半導体装置を製造する。前記ボンディングワイヤは、銅を主成分とする芯材と、前記芯材上のパラジウム層とを有し、硫黄族元素を含有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤである。前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの銅とパラジウムと硫黄族元素の合計に対してパラジウムの濃度が1.0質量%以上4.0質量%以下であり、硫黄族元素濃度が合計で5.0質量%以上50質量ppm以下である。前記製造方法は、前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤ先端に、ボール先端部表面から5.0nm以上100.0nm以下の範囲内で、銅とパラジウムの合計に対して、パラジウムの濃度が平均6.5原子%以上30.0原子%以下となるパラジウム濃化領域を有するフリーエアーボールを形成する工程と、前記フリーエアーボールを介して前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤを前記アルミニウム電極に接合する工程と、前記フリーエアーボールから略前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの長さ分離間した箇所を前記外部電極表面に接合する工程と、を有する。
[0131]
 実施形態の半導体装置は、例えば、プリント配線板等に用いられるQFP(Quad Flat Packaging)、BGA(Ball Grid Array) 、QFN(Quad For Non-Lead Packaging) に好適である。
[0132]
 以上説明した本実施形態の半導体装置によれば、ワイヤボンディングにおいて、ボール接合時のボールの引け巣が抑制され、高温高湿下においてもボール接合信頼性に優れ、第一接合形状の真円性を向上することができる。そのため、長期信頼性の極めて高い接合構造を形成できるので、車載用デバイスなどの、高温、高湿の環境での使用に適している。また、本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、通常接合だけでなく狭ピッチ接合においても、長期信頼性の高い接合構造が形成されるので、車載用デバイスなどの、高温、高湿の環境での使用に適した半導体装置を得ることができる。また、信頼性が極めて高い、狭ピッチ接合の小型半導体装置を提供することができる。
実施例
[0133]
 次に、実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。例1~17及び例31~39は実施例であり、例18~30及び例40~43は比較例である。
[0134]
 芯材は純度99.99質量%以上の銅(Cu)を用い、これを連続鋳造し、前熱処理をしながら圧延し、その後一次伸線して線径18~500μmの銅線材を得た。銅芯材に微量元素(P、Pt、Pd、Rh、Ni、Inのうち1種以上)を含むワイヤについては、各表に記載した所定濃度となるように各微量元素を加えた銅合金を用いて上記同様に銅合金線材を得た。微量元素は各々純度99.99質量%以上の原料を用いた。以下、銅線材を用いたパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを製造した場合について説明するが、銅合金線材を用いた場合も同様である。
[0135]
 パラジウム被覆層は次のようにして形成した。市販のパラジウム電気めっき浴に硫黄、セレン、テルルを含む添加剤を添加して、ワイヤ全体(銅、パラジウム及び硫黄族元素の合計)に対する濃度が下記表に記載された濃度となるように、めっき浴中の硫黄、セレン、テルルの濃度を制御し、めっき浴をそれぞれ作製した。このめっき浴中に銅線材を浸漬した状態で、銅線材に電流密度0.75A/dm で電流を流し、硫黄、セレン又はテルルを含むパラジウム被覆を形成した。硫黄、セレン及びテルルのうち2種以上を含むパラジウム被覆を形成する場合には、上記添加剤の2種以上を添加しためっき浴を用いた。
[0136]
 その後、ベーキング処理をせずに湿式でダイヤモンドダイスにより連続二次伸線した。最終線径にて、伸び率が実施例では6%~14%の範囲の各値となるように熱処理温度及び熱処理時間を調節した調質熱処理を行って、線径18μm又は25μmのパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを得た。
[0137]
 なお、被覆後のワイヤから最終線径までの、伸線前後のワイヤ断面積で算出される各例の加工率は実施例では52%~99.9%の範囲であり、伸線加工における線速は100~1000m/分である。
[0138]
 金の層を有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤは次のように作製した。上記のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの製造過程で、パラジウムを被覆した後、さらに、市販の金めっき浴を用いて金めっきを施した。なお、表の各元素の濃度については、金層の金濃度をワイヤ全体に含めずに算出した。
[0139]
 パラジウム被覆銅ボンディングワイヤ中のパラジウム濃度は次のように測定した。製造したワイヤを1000mほど王水で溶解し、その溶液中のパラジウム(Pd)の濃度を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(株式会社島津製作所のICPS-8100)により求めた。求めた値を下記の表の「Pd(Pd層由来)」の欄に示す。なお、下記表において、「mass」の略称は質量を意味する。
[0140]
 パラジウム被覆銅ボンディングワイヤ中の硫黄族元素の濃度は次のように測定した。製造したワイヤを100mほど王水で溶解し、その溶液中の硫黄(S)、セレン(Se)、又はテルル(Te)濃度を誘導結合プラズマ質量分析計(アジレント・テクノロジー株式会社製Agilent8800)で求めた。求めた値を下記の表の「硫黄族元素」の欄に示す。
[0141]
 上記で得られた実施例及び比較例のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤの組成を表1、2、5に示す。金の層の厚さは、金の濃度と金の比重から単位長さ当たりの金の質量を算出し、単位長さのワイヤについて、ワイヤ断面が真円であり、金が最表面に均一に存在すると仮定して求めた値である。次に、上記で得られたパラジウム被覆銅ボンディングワイヤについて次の特性評価を行なった。
[0142]
(ワイヤ表面割れの観察)
 パラジウムめっき後(金の層を有するものは金被覆後)の銅線材について稔回試験を行い、稔回試験後の線材表面の外観を光学実体顕微鏡(オリンパス社製、製品名:SZX16)で観察し、パラジウムの亀裂が芯材の銅まで達しているかどうかで評価した。亀裂が銅まで達していないものをワイヤ表面割れ無し(○)、亀裂が銅まで達しているものをワイヤ表面割れ有(×)と評価した。稔回試験は、前川試験機製作所製の装置(装置名:TO-202)を用いて、約20cmサンプリングしたワイヤの両端を固定して、時計回りに180度、反時計回りに180度回転させ、それを7セット行ったあと、外観を観察した。結果を表3、4に示す。なお、亀裂が銅まで達していたワイヤについては、これ以降の伸線加工のほか、引け巣やHAST評価等を実施しなかったので表中には未実施(-)と示した。
[0143]
(ワイヤ断面の結晶方位の測定)
 ワイヤ断面の結晶方位は次のように測定した。作製したパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを、数センチ長さに切り出したワイヤ試料を複数本用意した。ワイヤ試料が伸びたりたるんだりしないように考慮しながら、金属(Agめっきフレーム)板上に真っ直ぐかつ平坦に貼り付けた。その後、金属板ごとワイヤ試料を円筒状の型(かた)に金属板が円筒の底面となるように入れ、型内に埋め込み樹脂を流し込んで、その後、硬化剤を添加して樹脂を硬化させた。続いて、硬化させたワイヤ試料入りの円筒状の樹脂を、ワイヤ長手方向の垂直断面が露出するように研磨器にて粗研磨した。その後、最終研磨によって切断面の仕上げをし、続いて、イオンミリングにより、研磨面の残留歪みを除去し、滑らかな表面を得た。なお、ワイヤ切断面がワイヤ長手方向と垂直になるようにイオンミリング装置を微調整した。
[0144]
 電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM)の試料台に、ワイヤ試料の横断面(即ち、試料の研磨面)が試料台と平行になるように貼り付け、FE-SEMによって2500倍の観察倍率、加速電圧20keV、測定領域約21×21μm、測定間隔(Step Size)0.06μm、標準位相(Phase)Copperを設定して断面の結晶方位を測定した。こうして得られた結晶方位は結晶方位解析専用ソフト(TSL製 OIM analysis)を用いて解析した。EBSP法で得られたパターンデータを用いた結晶方位解析では、そのパターンデータを取得した試料の結晶系(標準位相)を予め専用ソフトに設定することが必要であり、専用ソフトに付属された解析対象元素の標準パターンファイル(マテリアルファイル)を選択して行う。つまり、純金族以外の合金などの場合、通常、試料と同様な組成のマテリアルファイルが必要となるが、本実施例で用いた銅合金からなる銅の芯材の微量元素量が極めて少ないため、銅合金を材料とした銅の芯材ものその結晶系は加工条件が同様の純銅とほぼ同じであることが確認できた。また、ワイヤ全体のパラジウム濃度も低濃度であるため、パラジウム層の断面面積はワイヤ断面に占める割合が低く、本発明にパラジウム層の組織がワイヤ断面の結晶方位比率にほとんど影響しないことも確認された。そのため、結晶方位解析では、専用ソフトのマテリアルパターンの標準位相(Phase)として銅(Copper)を選択した。また、EBSP法では、倍率、加速電圧、測定領域、測定間隔は、ワイヤ試料のサイズや解析の目的によって設定できるが、本実施例では、測定時間と測定精度を考慮して効率的に測定できる条件を選定したが、この条件の前後では、ワイヤ断面の結晶方位の測定結果に対して影響がないことも確認した。
[0145]
 専用ソフトの結晶粒の判別条件を設定し、測定した試料の結晶方位を解析した。専用ソフトの結晶粒の判別条件は、通常解析の目的によって設定できるが、結晶方位の分析結果にはほとんど影響しないので、本実施例では、方位差が15°以下で5つ以上のピクセルが繋がっていることを1つ結晶粒として認識すると設定し、その内<111>、<100>方位等所定の方位の結晶粒の割合を求めた。ワイヤ長手方向を基準に方位を決定し、それぞれの結晶方位の角度差が15°以内の<111>と<100>方位の割合を求めた。
[0146]
 また、EBSP測定データの解析では、測定面の、粗さ、研磨等による残留歪み、コンタミネーション、酸化膜の存在などによって、結晶方位が測定できない領域がありうる。このため、信頼度を設定し、この信頼度を基準として、測定エリア内で同定できた結晶方位だけの面積を母集団として各方位の割合(以下、方位比率と呼ぶ。)を専用ソフトにより自動で算出した。つまり、結晶方位が測定できない部位、あるいは測定できても方位解析の信頼度が低い部位等は除外して方位比率を求めた。ここで、信頼度とは、解析ソフトにパラメータが用意されている場合があり、例えばConfidential Index(CI値)、Image Quality(IQ値)等数種のパラメータを利用して、試料状態、解析目的等に応じて判定基準を選定することができる。例えば、CI値は0.1以上を設定し、CI値が0.1より小さい部位を除外した。さらに、解析ソフトに用意されているクリーンアップ処理機能を利用し、うまく測定できなかった点の方位データ等を、その周辺の正常な測定がなされたピクセルのデータで置き換え、測定の不完全部位を補完した。この方法は、うまく測定できなかった点がまばらにあるときに、その除去に有効である。ただ、クリーンアップ処理が過剰になるとアーティフォクトを作ってしまうことがあるので、例えば、結晶粒の認識について方位差が15°以下で5つ以上のピクセルが繋がっていることとし、Grain Dilation法を1回実施し、さらに、Grain CI Standardization法を1回実施した。
[0147]
(フリーエアーボール分析)
 例1で得られた線径18μmのパラジウム被覆銅ボンディングワイヤをケイ・アンド・エス社製の装置(全自動Cu線ボンダー;IConn ProCu PLUS)型超音波装置にてアーク放電電流値(エレクトロン・フレーム・オフ(EFO)電流値)を65mAにして、放電時間を50~1000μsの範囲で調節し、ボール径(FAB径)約32μm(ワイヤ線径の約1.8倍)のフリーエアーボールを形成した。フリーエアーボール形成雰囲気は、窒素ガス95.0体積%と水素ガス5.0体積%の混合ガスで、ガス流量5.0L/分でワイヤ先端にガスを吹き付けた。形成したフリーエアーボールの先端側(ワイヤネック部と反対側)の略中心を走査型オージェ電子分光分析装置(日本電子社製のJAMP-9500F(装置名))によって深さ方向分析した。オージェ電子分光分析装置の設定条件は、一次電子線の加速電圧10kV、電流50nA、ビーム径5μm、アルゴンイオンスパッタの加速電圧1kV、スパッタ速度2.5nm/分(SiO 換算)である。フリーエアーボールの先端部表面から深さ方向に5.0~100.0nmまでに等間隔で9点以上分析したときの銅とパラジウムの合計に対する、パラジウムの平均濃度を求めた。分析箇所は具体的には、表面から略0~30.0nmまでは、1.0nmごとに31箇所、31.0~60.0nmまでは6nmごとに5箇所、61.0~480.0nmまでは12.0nmごとに35箇所である。
[0148]
 その他の例では、上記で得られたパラジウム被覆銅ボンディングワイヤを、例1と同様の全自動Cu線ボンダーを用いて、表に記載したように、ボール径が線径の1.8~2.3倍の範囲の所定の大きさになるように、例1と同様のエレクトロン・フレーム・オフ(EFO)電流を30~90mAの範囲、放電時間を50~1000μsの範囲でそれぞれ所定の値に調節して、その他は例1と同様の条件でフリーエアーボールを形成した。例10及び例31については、芯材の全体に対してパラジウムを1.3質量ppm含む銅の芯材を用いた。得られた各例のフリーエアーボールについて、例1と同様にボール先端部表面から深さ方向に5.0~100.0nmまでのパラジウムの平均濃度を求めた。結果を、ワイヤの組成、フリーエアーボール形成条件と併せて表のFAB付きワイヤ分析の「表面Pd濃度」の欄に示す。また、図4に、例14のフリーエアーボールの、先端部から深さ方向のオージェ分析プロファイルを示す。なお、例2~17、例31~39においては、ボール先端部表面から深さ方向に5.0~100.0nmまでのパラジウムの平均濃度を求めたが、パラジウムの平均濃度は、5.0~400.0nmの範囲であっても、下記表の値と同等程度の濃度である。
[0149]
(引け巣評価)
 また、上記と同じ条件で作成した30個のフリーエアーボールについてボール表面の、大きな引け巣の有無をSEMによって観察した。SEM観察写真において、引け巣の最大長が、12μmを超えるものを問題となる引け巣、12μm以下のものを問題とならない引け巣として評価した。なお、図2に問題とならない小さな引け巣のあるフリーエアーボール、図3に問題となる大きな引け巣のあるフリーエアーボールを表し、引け巣を写真中に破線で囲って示した。問題となる大きな引け巣は、図3に示されるように、フリーエアーボール表面に形成される大きなしわのような溝である。引け巣のないもの及び問題とならない程度の小さな引け巣を生じたものを引け巣無し(○)、問題となる引け巣が1個でもあったものを引け巣有り(×)と評価した。
[0150]
(真円性)
 第一接合の真円性は次のように通常接合の場合と狭ピッチ接合の場合に分けて行なった。通常接合の場合、フリーエアーボール径が32μmの例1において、上記と同様にフリーエアーボールを形成した。そして、第2ボール圧縮部20bの高さYが10μm、第2ボール圧縮部20bの接合面21に平行方向の最大幅X が40μmとなるように、ボールボンディングの条件(ボール圧着力7.5gf、超音波印加出力70mA、ボール圧着時間15ms、圧着温度150℃)をボンダー装置にて調節し、チップのアルミニウム電極上にボールボンディングを形成した。他の実施例において、前記の接合面の最大幅X がボール径の約1.2~1.3倍となるように、ボールボンディング条件を調整した。
[0151]
 通常接合でのボール部の真円性の評価は、100本の第一接合について、接合されたボールを上部から観察し、圧着ボールの最大幅とこれに直交する幅を測定し、最大幅とこれに直交する幅の比(最大幅/直交する幅)を求めた。この比の値の、上記100本の平均値が1.15以上であれば不良(「D」と表記)、1.1以上、1.15以下であれば、量産での改善が望ましい(「C」と表記)と判定した。この比が、1.1以下の場合は二つに分類し、比(最大幅/直交する幅)の値が1.1以上のボールがある場合を良好(「B」と表記)、1.1以上のボールが無い場合を非常に良好(「A」と表記)と判定した。
[0152]
 狭ピッチ接合の真円性は次のように行なった。上記フリーエアーボール分析と同様の全自動Cu線ボンダーを用いて、表に記載したように、ボール径が線径の1.5~1.7倍の範囲の所定の大きさになるように、エレクトロン・フレーム・オフ(EFO)電流を65mA、放電時間を50~1000μsの範囲でそれぞれ所定の値に調節して、フリーエアーボールを形成し、電極上に圧着した。第一接合では、接合ボールの最大幅X がボール径の約1.2~1.3倍となるように、上記通常接合のボンディグ条件の範囲内で調整した。接合ボールの最大幅X は例1では約35μmであった。
[0153]
 狭ピッチ接合で使用される小径ボールのボール接合部の真円性の評価は、100本の第一接合について接合されたボールを上部から観察し、圧着ボールの最大幅とこれに直交する幅を測定し、最大幅とこれに直交する幅の比(最大幅/直交する幅)を求めた。この比の値の、上記100本の平均値が1.1以上であれば不良(「D」と表記)、1.05以上、1.1以下であれば要改善(「C」と表記)と判定した。この比が、1.05以下の場合は二つに分類し、比(最大幅/直交する幅)の値が1.05以上のボールがある場合を良好(「B」と表記)、1.05以上のボールがない場合を非常に良好(「A」と表記)と判定した。
[0154]
(HAST及びHTS用の試験片作製)
 各例で得られたパラジウム被覆銅ボンディングワイヤについて、次のように試験片を作製して、通常接合及び狭ピッチ(小径ボール)接合の接合信頼性評価を行った。上記同様の全自動Cu線ボンダー装置にて、BGA(ball grid array)基板上の厚さ400μmのSiチップ上の厚さ2μmのAl-1.0質量%Si-0.5質量%Cu合金電極上に、それぞれ真円性評価における通常接合、狭ピッチ接合のフリーエアーボール、ボール接合及び第二接合と同様の条件でワイヤボンディングを行なった。
[0155]
 第一接合の条件は、例えば、ワイヤ線径φが18μmの実施例1については、ボール径が32μmのフリーエアーボールを形成した。そして、第2ボール圧縮部20bの高さYが10μm、第2ボール圧縮部20bの接合面21に平行方向の最大幅X が40μmとなるように、上記全自動Cu線ボンダー装置にて、ボール圧着力7.5gf、超音波印加出力70mA、ボール圧着時間15ms、圧着温度150℃に調節して、電極にボール接合した。また、第二接合は、スクラブモードにて圧着力70gf、圧着時間20ms、圧着温度150℃、周波数200kHz、振幅3.0μm、サイクル2回の条件にてウェッジボンディングし、ループ長さ2mmで1,000本のワイヤボンディングを行った。
[0156]
 この際、チップ上のAl-1.0質量%Si-0.5質量%Cu合金電極は隣り合うボンド部のみが電気的に接続されて、隣り合う2本のワイヤ同士で電気的に1つの回路を形成しており、計500回路が形成される。その後、このBGA基板上のSiチップを市販のトランズファーモールド機(第一精工製株式会社、GPGP-PRO-LAB80)を使って樹脂封止して試験片を得た。なお、封止した樹脂は市販されているハロゲンフリーではない樹脂を使用した。また、実施例1以外の試験片については第2ボール圧縮部20bの高さYが7~13μm、第2ボール圧縮部20bの接合面21に平行方向の最大幅X は形成されたフリーエアーボールの1.2倍となるようにボール接合した。
[0157]
 狭ピッチ(小径ボール)接合の条件は、例えば、ワイヤ線径φが18μmの例1については、第一接合においてボール径が30μmのフリーエアーボールを形成した。そして、第2ボール圧縮部20bの高さYが9μm、第2ボール圧縮部20bの接合面21に平行方向の最大幅X が35μmとなるように、上記全自動Cu線ボンダー装置にて、ボール圧着力7gf、超音波印加出力65mA、ボール圧着時間15ms、圧着温度150℃に調節して、電極にボール接合した。また、第二接合は、スクラブモードにて圧着力70gf、圧着時間20ms、圧着温度150℃、周波数200kHz、振幅3.0μm、サイクル2回の条件にてウェッジボンディングし、ループ長さ2mmで1,000本のワイヤボンディングを行った。例1以外の試験片については第2ボール圧縮部20bの高さYが6~12μm、第2ボール圧縮部20bの接合面21に平行方向の最大幅X は形成されたフリーエアーボールの1.2倍となるように第一(ボール)接合した。なお、フリーエアーボールの形成は上記のフリーエアーボール分析と同様に、フリーエアーボール径がワイヤ線径の約1.5~1.7倍になるように、前記全自動Cu線ボンダー装置の条件を調整した。
[0158]
<HAST(Highly Accelerated Temperature and Humidity Stress Test)(高温高湿環境暴露試験)>
 この試験片についてHAST装置(株式会社平山製作所、PCR8D)を用いて、130℃×85.0%RH(相対湿度)で400時間及び600時間保持した。各々の時間において保持前後に上記500回路の電気抵抗値を測定し、保持後の電気抵抗値が保持前の電気抵抗値の1.1倍を超えた回路が一つでもあると不良(×)、500回路全てにおいて抵抗値が1.1倍未満であった場合は優良(◎)と評価した。400時間保持後では、すべてのサンプルで電気抵抗は1.1倍未満であった。
[0159]
<HTS(High Temperature Storage Test)(高温放置試験)>
 また、試験片についてHTS装置(アドバンテック社製、DRS420DA)を用いて、220℃で2000時間保持した。保持前後に上記同様に500回路の電気抵抗値を測定し、保持後の電気抵抗値が保持前の電気抵抗値の1.1倍を超えた回路が一つでもあると不良(×)、500回路全てにおいて抵抗値が1.1倍未満であった場合は優良(◎)と評価した。HAST試験及びHTS試験の評価結果を表3、4、6に示す。表4中の「不良数」は、保持後の電気抵抗値が保持前の電気抵抗値の1.1倍を超えた回路の数である。
[0160]
<ワイヤ接合構造の分析>
 パラジウム濃化接合領域の観測は次のように行なった。例31で作製したワイヤを用いて、上記HAST及びHTS用の試験片作製の条件と同様にフリーエアーボールを形成した。そして、第2ボール圧縮部20bの高さYが10μm、第2ボール圧縮部20bの接合面21に平行方向の最大幅X が40μmとなるように、ボールボンディングの条件をボンダー装置にて調節し、チップのアルミニウム電極上にボールボンディングを形成した。得られたボール接合部を、上述の方法でモールドし、ワイヤ長手方向の中心線に平行な面が露出するようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製 IM4000)を用いて切断した。切断面を、ワイヤ側の所定箇所から接合面に垂直方向に電解放出形走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光分析(FE-SEM/EDX)によってライン分析した。分析条件は、FE-SEM/EDXの設定として、加速電圧6keV、測定領域φ0.18μm、測定間隔0.02μmである。このライン分析箇所は図1に示すP 、P と同様である。すなわち、第2ボール圧縮部の、接合面に平行方向の最大幅に対して、両端から8分の1の距離に位置する点を通るようにライン分析を行った。得られたFE-SEM/EDXプロファイルを図5及び図6に示す。図5、6より、アルミニウムが0.5質量%を超え95.0質量%以下の接合面近傍において、アルミニウム、銅及びパラジウムの合計に対して、パラジウムの割合2.0質量%以上のパラジウム濃化接合領域が存在することが分かる。また、パラジウム濃化接合領域の幅(深さ)は2点の平均で約220nmであった。
[0161]
 上記と同様に、例32~39についても上記同様の2か所のライン分析部をライン分析した。パラジウム濃度が、アルミニウムと銅とパラジウムの合計に対して2.0質量%以上となるパラジウム濃化接合領域が2箇所両方で観測された場合は「有」、2箇所両方で観測されない場合は「無」とした。なお、一方のみで観測された例はなかった。それらの結果を表6に示す。封止樹脂等からのハロゲン元素や水分は、ボール接合面近傍の両端のわずかな隙間等から浸入してくる可能性が高い。このため、分析した箇所の両端付近に耐腐食性の高いパラジウム濃化接合領域が存在することがハロゲン等の浸入を阻止するという意味で非常に重要な役割をはたすことができる。なお、表6に示すパラジウム濃化接合領域が観測されたライン分析部の深さ(深さ方向の幅)はいずれも、50nm以上であった。
[0162]
<パラジウム濃化接合領域の占有率>
 パラジウム濃化接合領域の占有率は上述の方法で求めた。すなわち、切断面を電子線マイクロアナライザ(EPMA)の面分析(加速電圧15kV、電流値290nA)によって観察し、パラジウム元素の強度差にてパラジウム濃化接合領域を特定し、それが検出された範囲の合計幅X とした。接合面における第2ボール圧縮部20bの最大幅X と、上記合計幅X を用いて、占有率((X /X )×100(%))を算出した。また、EPMAの面分析において接合面21近傍のパラジウム強度が一番低い点(画像上一番薄い色の部分)をFE-SEM/EDXにてライン分析を行ったところパラジウム濃度がアルミニウム、銅及びパラジウムの合計に対して、2.0質量%以上あることを確認した。すなわち、占有率として算出した箇所はすべてパラジウム濃化接合領域であることが分かる。
[0163]
 なお、例18~20は、銅線材が500μmのめっき線径において、パラジウム被覆層の厚さを例18は1.8μm、例19は2.1μm、例20は1.9μmとなるようにPdめっきした。めっき後の稔回試験でワイヤ表面の亀裂が芯材の銅まで達し、ワイヤ表面割れが生じたため、以降の加工、及び評価を行わなかった。また、フリーエアーボールの引け巣評価で大きな引け巣が観察された例は不適合品とし、それ以上の評価はしていない。また、通常接合の評価において、600時間HAST又はHTSの評価が「不良(×)」の例についての、狭ピッチ接合の真円性、及び信頼性評価も行っていない。例17も同様に接合構造を観測し、図8に例17のEPMA画像を、図9に、接合面近傍にパラジウムが存在しない接合構造のEPMA画像を示す。なお、EPMA画像は実際にはカラー写真として取得することができる。
[0164]
[表1]


[0165]
[表2]


[0166]
[表3]


[0167]
[表4]


[0168]
[表5]


[0169]
[表6]


[0170]
 表1~6より、ワイヤ全体に占めるパラジウムの濃度が1.0~4.0質量%で、硫黄、セレン、テルルをそれぞれ所定の範囲の濃度で含み、凝固後のフリーエアーボール表面にパラジウムを6.5~30.0原子%含むパラジウム濃化領域を有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤによれば、引け巣の発生を抑制できるとともに、HAST及びHTSによる信頼性が優れている。さらに、ワイヤ断面の<100>方位比率が15%以上であり、かつ、<111>方位比率が50%以下である(<100>、<111>いずれの方位もワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内までを含む)パラジウム被覆銅ボンディングワイヤによれば、小径ボールにおける真円性が極めて優れており、ショート不良が低減され得ることがわかる。
[0171]
 例えば、上述した車載用デバイスでは、特にフリーエアーボールと電極を接合したボール接合部(第一接合)の接合寿命が最大の問題となる。車載用デバイスではアルミ電極とボール接合し、樹脂封止した半導体装置をHASTにて長時間暴露した後の抵抗値が、暴露する前の1.1倍以下の上昇までに抑えなければならないという条件に適合することが求められている。接合寿命すなわち抵抗値の上昇に悪影響を及ぼすのは、ボール接合後に実施される封止樹脂に含有している塩素などのハロゲン元素や水分である。これらの塩素や水分がボール接合部に生じた金属間化合物を腐食することで、接合部の抵抗値を上昇させる。抵抗値の上昇は通電不良や電気信号の伝達を阻害し、車載用ともなると自動車事故にもつながるおそれがある。上記した実施例のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤでは、HAST試験の結果が600時間暴露した後もすべて良好であるため、接合信頼性が高く、車載用デバイスに使用した場合も上記のような深刻な問題を生じないことが分かる。
[0172]
 表6に示されるように、金の層を有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤにおいて、引け巣、HAST、HTSの評価は、金の層を有しないパラジウム被覆銅ボンディングワイヤと同様に良好であった。これは、金の層由来の金の量は、第二接合時に付着する金に比べて非常に微量であることと、金がワイヤ全体を覆っており、局所的に凝集することがないので、引け巣が起きなかったと考えられる。
[0173]
<過酷仕様のHAST試験>
 次に、所定の実施例のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤについて、チップダメージの評価、及び、設定温度を5℃上昇させ、135℃で600時間の過酷仕様にしたHAST試験評価を行った。チップダメージ性能評価は、表7に示した各例で得られたパラジウム被覆銅ボンディングワイヤによって上記と同様の条件でボール接合を行い、ボール接合部直下の基板を光学顕微鏡で観察することによって行った。ボール接合部を100箇所観察した。例17は、特に使用上問題とならない小さな亀裂が1箇所あったため良(○)と表記した。その他の例は、亀裂が全く発生しなかったので優良(◎)と表記した。過酷仕様のHAST試験では、通常のHAST試験と同様に、試験後の電気抵抗の値が、試験前の1.1倍未満の例を◎、1.1倍以上1.2倍以下のものがあった例を○として評価した。なお、例1では、500回路中5回路で試験後の電気抵抗の値が、試験前の1.1倍以上1.2倍以下となったが、その他は全て1.1倍未満であった。また、総合評価としてチップダメージの評価と過酷仕様のHAST試験の結果がいずれも◎の例を◎、いずれか一方が○で他方が◎の例を○と評価した。結果を表7に示す。
[0174]
[表7]


[0175]
 表7より、フリーエアーボールの先端部表面(パラジウム濃化領域)のパラジウム濃度が、7.0原子%以上の例2、4、11~15、17では、HAST試験の温度を135℃と、通常より過酷な条件にした試験にも耐え得ることがわかる。フリーエアーボールの先端部表面のパラジウム濃度が6.8原子%の例1は抵抗値が試験後1.1倍以上1.2倍以下になったものがあり、パラジウム濃化領域のパラジウム濃度が7.0原子%以上の例に比べてやや劣ることが分かる。また、フリーエアーボールの先端部表面のパラジウム濃度が23.0原子%以下の例はチップダメージも生じておらず、25.0質量%を超えた例17では問題とならないがチップダメージが微量に発生した。これらのことから、フリーエアーボールの表面パラジウム濃度は、7.0原子%以上25.0原子%以下が好ましいことが分かる。フリーエアーボールの表面パラジウム濃度が、7.0原子%以上25.0原子%以下のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤでは、車載用デバイスに適しているとともに、歩留まりも向上させることができる。

請求の範囲

[請求項1]
 銅を主成分とする芯材と、前記芯材上のパラジウム層と、を有し、かつ硫黄族元素を含有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤであって、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、銅、パラジウム、および硫黄族元素の合計に対して、
   1.0質量%以上4.0質量%以下のパラジウム、および
   合計で50質量ppm以下の硫黄族元素を含み、かつ
     5.0質量ppm以上12.0質量ppm以下の硫黄、
     5.0質量ppm以上20.0質量ppm以下のセレン、または
     15.0質量ppm以上50.0質量ppm以下のテルルを含み、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<100>方位比率の総計が15%以上であり、かつ<111>方位比率が50%以下であり、前記<100>および<111>方位は、前記ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内の方位を含み、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤに、フリーエアーボールを形成したときに、前記フリーエアーボールの先端部分の表面から5.0nm以上100.0nm以下の深さ方向の範囲で、銅とパラジウムの合計に対して、パラジウムを6.5原子%以上30.0原子%以下含むパラジウム濃化領域が観測される、
パラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
[請求項2]
 前記芯材が、前記芯材の全体に対して、合計1質量ppm以上3質量%以下の、P、Au、Pd、Pt、Ni、Ag、Rh、In、Ga及びFeから選ばれる、1種以上の微量元素を含む、
請求項1に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
[請求項3]
 前記芯材が、P、Au、Pd、Pt、Ni、Ag、Rh、In、Ga及びFeから選ばれる1種以上の微量元素を含み、かつ
 前記芯材が、
   0.05質量%以上3質量%以下の、Au、Pd、Pt、Ni及びRhの少なくともいずれかを含む、前記微量元素、
   0.01質量%以上0.7質量%以下の、In、Gaの少なくともいずれかを含む、前記微量元素、
   5質量ppm以上500質量ppm以下の、Pを含む、前記微量元素、または
   1質量ppm以上100質量ppm以下の、Ag、Feの少なくともいずれかを含む、前記微量元素、を含む、
請求項1又は2に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
[請求項4]
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤが、銅、パラジウム、および硫黄族元素の合計に対して、1.0質量%以上2.5質量%以下の、前記パラジウム層由来のパラジウムを含む、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
[請求項5]
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、10μm以上25μm以下の、直径を有する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
[請求項6]
 前記フリーエアーボールは、窒素と水素の混合ガスの存在下で、前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤに65mAの放電電流を印加することで形成され、かつ前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの直径の1.8倍の直径を有する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
[請求項7]
 前記パラジウム濃化領域のパラジウム濃度は、次の条件下でのオージェ電子分光分析によって測定される、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
 一次電子線の加速電圧:10kV、
 設定値から算出される測定領域:15μm 以上20μm 以下、
 スパッタリング用アルゴンイオンの加速電圧:1kV、
 スパッタリング速度:2.5nm/分(SiO 換算)
[請求項8]
 前記パラジウム層上に金の層を有する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
[請求項9]
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤが、このワイヤ全体に対して、6.0質量ppm以上10.0質量ppm以下の、硫黄(S)を含む、
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
[請求項10]
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤが、このワイヤ全体に対して、6.0質量ppm以上15.0質量ppm以下のセレン(Se)を含む、
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
[請求項11]
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤが、このワイヤ全体に対して、16.0質量ppm以上45.0質量ppm以下のテルル(Te)を含む、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤ。
[請求項12]
 パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの製造方法であって、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤが、銅を主成分とする芯材と、前記芯材上のパラジウム層と、を有し、硫黄族元素を含有し、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤが、銅、パラジウム、および硫黄族元素の合計に対して、
   1.0質量%以上4.0質量%以下のパラジウム、および
   合計で50質量ppm以下の硫黄族元素を含み、かつ
     5.0質量ppm以上12.0質量ppm以下の硫黄、
     5.0質量ppm以上20.0質量ppm以下のセレン、または
     15.0質量ppm以上50.0質量ppm以下のテルルを含み、
 前記製造方法が、
   銅を主成分とする銅線材を準備する工程と、
   前記銅線材の表面に前記硫黄族元素を含むパラジウム層を形成する工程と、
   前記パラジウム層を形成した銅線材を50%以上伸ばす工程と、
   前記伸ばした銅線材の伸び率が5%以上15%以下となるように熱処理する工程と、を具備する、
パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの製造方法。
[請求項13]
 半導体チップのアルミニウムを含む電極と、ボンディングワイヤと、前記電極及び前記ボンディングワイヤの間のボール接合部とを有するワイヤ接合構造であって、
 前記ボンディングワイヤは、銅を主成分とする芯材と、前記芯材上のパラジウム層と、を有し、かつ硫黄族元素を含有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤであり、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、銅、パラジウム、および硫黄族元素の合計に対して、
   1.0質量%以上4.0質量%以下のパラジウム、および
   合計で50質量ppm以下の硫黄族元素を含み、かつ
     5.0質量ppm以上12.0質量ppm以下の硫黄、
     5.0質量ppm以上20.0質量ppm以下のセレン、または
     15.0質量ppm以上50.0質量ppm以下のテルルを含み、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<100>方位比率が15%以上であり、かつ<111>方位比率が50%以下であり、前記<100>および<111>方位は、前記ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内の方位を含み、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤをアルミニウム電極上にボール接合したワイヤ接合構造を作製すると、前記アルミニウム電極上の前記ボール接合の接合面近傍に、パラジウム濃度が、アルミニウム、パラジウム、および銅の合計に対して2質量%以上となるパラジウム濃化接合領域を有する、
ワイヤ接合構造。
[請求項14]
 前記パラジウム濃化接合領域は、前記ボール接合の最大幅の、両端から8分の1の距離の位置を通る、ワイヤ長手方向に平行なライン上に少なくとも配置される、
請求項13に記載のワイヤ接合構造。
[請求項15]
 前記接合面近傍での前記パラジウム濃化接合領域の占有率が25%以上である、
請求項13又は14に記載のワイヤ接合構造。
[請求項16]
 半導体チップと、前記半導体チップ上に配置される、アルミニウムを含有するアルミニウム電極と、前記半導体チップの外部に配置され、金又は銀の被覆を有する外部電極と、前記アルミニウム電極と前記外部電極表面を接続するボンディングワイヤと、を有する半導体装置であって、
 前記ボンディングワイヤがパラジウム被覆銅線からなり、
 前記アルミニウム電極と前記ボンディングワイヤの接合面近傍に、請求項13乃至15のいずれか1項に記載のワイヤ接合構造を有する、
半導体装置。
[請求項17]
 半導体チップと、前記半導体チップ上に配置される、アルミニウムを含有するアルミニウム電極と、前記半導体チップの外部に配置され、金又は銀の被覆を有する外部電極と、前記アルミニウム電極と前記外部電極表面を接続するボンディングワイヤとを有する半導体装置であって、
 前記ボンディングワイヤが、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のパラジウム被覆銅ボンディングワイヤからなる、
半導体装置。
[請求項18]
 前記半導体装置が、QFP(Quad Flat Packaging)、BGA(Ball Grid Array)又はQFN(Quad For Non-Le ad Packaging)である、
請求項16又は17に記載の半導体装置。
[請求項19]
 前記半導体装置が、車載用である、
請求項16乃至18のいずれか1項に記載の半導体装置。
[請求項20]
 半導体チップと、前記半導体チップ上に配置され、アルミニウムを含有するアルミニウム電極と、前記半導体チップの外部に配置され、金又は銀の被覆を有する外部電極と、前記アルミニウム電極と前記外部電極表面を接続するボンディングワイヤとを有する半導体装置の製造方法であって、
 前記ボンディングワイヤは、銅を主成分とする芯材と、前記芯材上のパラジウム層と、を有し、かつ硫黄族元素を含有するパラジウム被覆銅ボンディングワイヤであって、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤは、銅、パラジウム、および硫黄族元素の合計に対して、
   1.0質量%以上4.0質量%以下のパラジウム、および
   合計で50質量ppm以下の硫黄族元素を含み、かつ
     5.0質量ppm以上12.0質量ppm以下の硫黄、
     5.0質量ppm以上20.0質量ppm以下のセレン、または
     15.0質量ppm以上50.0質量ppm以下のテルルを含み、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの断面の結晶面におけるワイヤ長手方向の結晶方位<hkl>の内、<100>方位比率の総計が15%以上であり、かつ<111>方位比率が50%以下であり、前記<100>および<111>方位は、前記ワイヤ長手方向に対して角度差が15°以内の方位を含み、
 前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤに、フリーエアーボールを形成したときに、前記フリーエアーボールの先端部分の表面から5.0nm以上100.0nm以下の深さ方向の範囲で、銅とパラジウムの合計に対して、パラジウムを6.5原子%以上30.0原子%以下含むパラジウム濃化領域が観測され、
 前記製造方法は、
   前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの先端に、フリーエアーボールを形成する工程と、
   前記フリーエアーボールを介して、前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤを前記アルミニウム電極にボール接合する工程と、
   前記フリーエアーボールから前記パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの長さ分、離間した箇所を前記外部電極表面に接合する工程と、を有する、
半導体装置の製造方法。

図面

[ 図 1]

[ 図 2]

[ 図 3]

[ 図 4]

[ 図 5]

[ 図 6]

[ 図 7]

[ 図 8]

[ 図 9]